(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】タンパク質のバイオプロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 1/34 20060101AFI20230208BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230208BHJP
B01D 61/24 20060101ALI20230208BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230208BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C07K1/34
B01D61/14 500
B01D61/24
B01D69/02
B01D61/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535473
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 US2020063720
(87)【国際公開番号】W WO2021118963
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522224494
【氏名又は名称】ニュートリション アンド バイオサイエンシス ユーエスエー 1,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,ジョシュア ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,スーザン リン
【テーマコード(参考)】
4D006
4H045
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA13
4D006KA33
4D006KA52
4D006KA54
4D006KA57
4D006KD04
4D006MB05
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB12
4D006PB52
4D006PC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA75
4H045GA10
(57)【要約】
本開示は:(a)タンパク質及び一般式(I):
【化1】
(式中、R
1-C(=O)は、脂肪酸アシル基であり、R
2は、H又は置換若しくは無置換ヒドロカルビル基であり、X
1は、S、O、又はNHであり、X
2は、S、O、又はNHであり、nは、0又は1~5の整数であり、R
3は、一般式(II)及び(III):
【化2】
の重合単位を含む重合体基である)のポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む水溶液を提供するステップと、(b)この水溶液を分離膜と接触させるステップと、(c)この水溶液を、タンパク質を含む水溶液である保持液生成物を生成するために、透析濾過ステップ及び/又は限外濾過ステップに付すステップと、を含む方法であって、式(I)の化合物は、方法のステップ(a)~(c)におけるタンパク質の凝集を低減し、且つ式(I)の化合物は、ステップ(c)において分離膜を通過する、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の精製及び/又は濃縮時に水溶液中の前記タンパク質を安定化する方法であって:
(a)タンパク質及び一般式I:
【化1】
(式中、R
1-C(=O)は、脂肪酸アシル基であり、R
2は、H又は置換若しくは無置換ヒドロカルビル基であり、X
1は、S、O、又はNHであり、X
2は、S、O、又はNHであり、nは、0又は1~5の整数であり、R
3は、一般式II及びIII:
【化2】
の重合単位を含む重合体基である)のポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む水溶液を提供するステップと、
(b)前記水溶液を分離膜と接触させるステップと、
(c)前記水溶液を、可溶性低分子成分の濃度を低下させるか若しくは1種若しくは複数種の可溶性低分子量成分をその中に導入するために透析濾過ステップに付す、及び/又は前記水溶液を、前記タンパク質を含む水溶液である保持液生成物を生成するために、前記タンパク質が濃縮されるように限外濾過ステップに付す、ステップと、を含む方法であって、
式Iの化合物は、方法のステップ(a)~(c)における前記タンパク質の凝集を低減し、且つ式Iの化合物は、ステップ(c)において前記分離膜を通過する、方法。
【請求項2】
ステップ(c)の終了時に生成する前記保持液生成物の前記水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される前記水溶液中の前記界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%低下している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)で提供される前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約5mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離膜の分画分子量は、約100kDaであり、ステップ(a)の前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.005mg/ml~約1mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記分離膜の分画分子量は、約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)は、限外濾過ステップを含み、ステップ(c)において、前記限外濾過の前にも後にも透析濾過は行われず、前記分離膜の分画分子量は、約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約0.025mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)は、その後に限外濾過ステップが続く透析濾過ステップを含み、前記分離膜の分画分子量は、約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)は、透析濾過ステップを含み、ステップ(c)において、前記透析濾過の前にも後にも限外濾過は行われず、前記分離膜の分画分子量は、約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の前記水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/mlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
式Iの化合物において、X
1及びX
2はどちらもNHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式Iの化合物において、nは1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式Iの化合物において、R
1は、10~16個の炭素原子を有する直鎖状無置換アルキル基であり、R
2は、水素、メチル、及び-CH
2-(C
6H
5)(ここで、-(C
6H
5)はベンゼン環である)からなる群から選択され、R
3は、数平均分子量が800~3000である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの化合物において、R
1は、CH
3-(CH
2)
11-CH
2-であり、nは、1であり、X
1及びX
2は、どちらもNHであり、R
2は、-CH
2-(C
6H
5)であり、R
3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO:EO比が約3:19である、CH
3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式Iの化合物において、R
1は、CH
3-(CH
2)
11-CH
2-であり、nは、0であり、X
2は、NHであり、R
3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO:EO比が約3:19である、CH
3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
開示の分野
本開示は、タンパク質の精製及び/又は濃縮時、特に限外濾過及び/又は透析濾過処置時に水溶液中のタンパク質を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
タンパク質又は他の生体由来高分子から誘導される医薬品である生物製剤が医薬の重要な分野として急速に発展している。タンパク質物質は比較的破壊されやすい性質を有することから、治療に有益であり、且つ加工、流通、及び投与に耐えるのに充分な安定性を有する生物活性物質の開発は依然としてかなりの難題である。生物学的薬物であるタンパク質の製造者及び調合者(formulator)は、生物製剤を最終剤形にするための精製及び調合に様々な処理技法を用いている。そのようなものとして、タンパク質の精製及び濃縮又は緩衝液交換によく用いられている限外濾過(UF)及び透析濾過(DF)処置がある。しかしながら、限外濾過及び透析濾過を行うと、限外濾過又は透析濾過操作中の剪断応力、タンパク質と界面との接触、又は濾過膜表面におけるタンパク質の高濃度化に起因するタンパク質の変性、凝集、又は析出も起こり得る。
【0003】
界面活性剤は、タンパク質をベースとする生物製剤の最終製剤に、該生物製剤を界面との相互作用(interfaces)や剪断などの様々な不安定化力から保護することを目的として一般に使用されている。この種の力は、生物製剤の作製(development)におけるより早い段階にも存在しているが(上流側及び下流側の処理時など)、界面活性剤が処理設備と相互作用(例えば、膜のファウリング)することや、タンパク質濾過時、緩衝液交換時、及び濃縮時に界面活性剤を確実に除去することが困難であるという理由から、界面活性剤の使用が制限されている。
【0004】
ポリソルベート80は、生物製剤に最も一般的に使用されている界面活性剤である。Callahan, Stanley, and Li, JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES 103:862-869, 2014には、ポリソルベート80が限外濾過及び透析濾過プロセスにおいてタンパク質を安定化させる能力が示されているのみならず、ポリソルベート80が濃縮されて、限外濾過器及び透析濾過器を有効に通過しないことも述べられている。
【0005】
Tween80(ポリソルベート80)は膜に吸着されるため、透析濾過後に添加を行うべきであることがウェブサイト(https://www.researchgate.net/post/How_to_add_TWEEN_80_after_protein_ultrafiltration_diafiltration) that Tween 80 (polysorbate 80)において述べられている。
【0006】
米国特許出願公開第20130195888A1号には、ポリソルベート80を透析濾過プロセスにおいて0.1mg/mLの濃度で使用することが教示及び例示されている。タンパク質は凝集から保護されるが、限外濾過による濃縮ステップ中のポリソルベート80含有量の変化に関しては評価が行われていない。
【0007】
Lei et al, Biotechnol. Prog., 2013, Vol. 29, No. 6においては、30kDa(分画分子量)の限外濾過膜を使用した場合にポリソルベート20の組成及び濃度が変化することが示されている。ポリソルベート20の濃度が臨界ミセル濃度を上回っているか下回っているかに関わらず、ポリソルベート20は膜に保持される。
【0008】
ポロキサマー188は、上流側のバイオプロセシングにおいて、生物製剤を産生する細胞の安定化剤としてよく使用されている。しかし、ポロキサマーは、限外濾過及び透析濾過プロセスの上流側でProtein Aクロマトグラフィーを行う際に除去されるため、下流側の処理(限外濾過及び透析濾過など)中に生物製剤を安定化させるために存在する訳ではない。その例が、Xu, et al. Bioprocess Biosyst Eng (2017) 40:1317-1326に示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の概要
本開示は、タンパク質の精製及び/又は濃縮時に水溶液中のタンパク質を安定化させる方法を提供する。本方法は、(a)タンパク質及び一般式I:
【化1】
(式中、R
1-C(=O)は、脂肪酸アシル基であり、R
2は、H又は置換若しくは無置換ヒドロカルビル基であり、X
1は、S、O、又はNHであり、X
2は、S、O、又はNHであり、nは、0又は1~5の整数であり、R
3は、一般式II及びIII:
【化2】
の重合単位を含む重合体基である)のポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む水溶液を提供するステップと、(b)水溶液を分離膜と接触させるステップと、(c)水溶液を、可溶性低分子成分の濃度を低下させるか若しくは1種若しくは複数種の可溶性低分子量成分をその中に導入するために、透析濾過ステップに付す、及び/又は水溶液を、タンパク質を含む水溶液である保持液生成物を生成するために、タンパク質が濃縮されるように限外濾過ステップに付す、ステップと、を含む方法であって、式Iの化合物は、方法のステップ(a)~(c)におけるタンパク質の凝集を低減し、且つ式Iの化合物は、ステップ(c)において分離膜を通過する、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
前述の概要及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的であるに過ぎず、添付の特許請求の範囲において定義する本発明を限定するものではない。任意の1つ又は複数の実施形態の他の特徴及び利点が、以下の詳細な説明から、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0011】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図している。例えば、構成要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもこれらの構成要素のみに限定されず、明示的にリスト化されていないか、又はこのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に本来備わっている他の構成要素を含んでもよい。さらに、それとは反対であることが明示的に述べられていない限り、「又は」は、包括的な又はを意味し、排他的な又はを意味しない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真である(又は存在する)、並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0012】
また、「1つの(a、an)」の使用は、本明細書に記載する構成要素及び成分を記載するために用いられる。これは、便宜上及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われるに過ぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを包含すると解釈すべきであり、単数はまた、それが別の意味を有することが明らかでない限り複数も含む。
【0013】
他に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先される。本明細書に記載するものと類似の又は均等な方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。さらに、材料、方法、及び実施例は、説明に過ぎず、限定を意図していない。
【0014】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び/又は好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられている場合、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲の上限又は好ましい値と、任意の範囲の下限又は好ましい値との任意の対から形成されるあらゆる範囲を具体的に開示していると理解すべきである。本明細書においてある数値の範囲が記載されている場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。例えば、「1~10」という範囲が記載されている場合、この記載されている範囲は、「1~8」、「3~10」、「2~7」、「1.5~6」、「3.4~7.8」、「1~2及び7~10」、「2~4及び6~9」、「1~3.6及び7.2~8.9」、「1~5及び10」、「2及び8~10」、「1.5~4及び8」の範囲、及び同種の範囲を包含すると解釈すべきである。
【0015】
本明細書においては、組成物及び方法を、様々な成分又はステップを「含む(comprising)」という用語で記載するが、特に記載しない限り、この組成物及び方法は、該様々な成分又はステップ「から本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」こともできる。
【0016】
後述の実施形態の詳細を扱う前に、いくつかの用語を定義又は明確化する。
【0017】
本明細書において使用される「水溶液」という用語は、溶媒が、水を、溶媒の総重量を基準として少なくとも90重量%含む溶液を意味する。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトン、エタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、2-ブタノン、カプリル酸エチル、及びラウリン酸エチルなどの有機溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、水及び有機溶媒を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、溶媒は、溶媒の総重量を基準として、水を少なくとも92重量%、又は少なくとも94重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、水から本質的になるか又は水からなる。いくつかの実施形態では、溶媒は水である。いくつかの実施形態では、水溶液は、有機溶媒を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、水溶液の液体媒体は、水から本質的になるか又は水からなる。
【0018】
本明細書において使用される「限外濾過」という用語は、タンパク質の溶液を、タンパク質を保持(保持液)しながら、溶媒及び溶解している塩や糖などの低分子量成分を通過(透過液)させることが可能な半透膜(即ち、分離膜)を通過させるプロセスを意味する。こうすることにより、タンパク質溶液が濃縮される。
【0019】
本明細書において使用される「透析濾過」という用語は、タンパク質の溶液を、タンパク質を保持(保持液)しながら、一部の溶媒及び溶解している塩や糖などの低分子量成分を通過(透過液)させることが可能な半透膜(即ち、分離膜)を用いて濾過を行う、濾過及び溶媒交換プロセスを意味する。失われた溶媒(即ち、分離膜を通過した溶媒)は、その中に溶解している新たな低分子量成分を任意選択的に含む新たな溶媒に交換され、結果として得られた新たな溶液は、再び、タンパク質を保持(保持液)しながら、溶媒及び溶解している塩や糖などの低分子量成分を通過(透過液)させることが可能な半透膜(即ち、分離膜)を用いる濾過に付される。
【0020】
透析濾過は連続式又は回分式で行うことができる。いくつかの実施形態では、透析濾過は連続方式で実施され、透過液が生成する速度と等しい速度で新たな溶媒が保持液に連続的に追加される。そのような実施形態では、タンパク質溶液中に溶解している塩や糖などの低分子量成分の濃度を、溶液中のタンパク質濃度を実質的に変化させることなく低下させることが可能である。いくつかの実施形態では、新たな溶媒は、その中に溶解している、元のタンパク質溶液に含まれていた低分子量成分とは異なる塩や糖などの低分子量成分を含む。そのような実施形態においては、透析濾過を用いてタンパク質溶液に1種又は複数種の低分子量成分を導入することができる。
【0021】
本明細書において使用される「分離膜」という用語は、水溶液中の成分をその分子量又はサイズに基づき分離するための限外濾過(UF)又は透析濾過(DF)に使用される多孔質膜又はフィルターを意味する。膜の細孔よりも大きなタンパク質などの分子は保持され、細孔よりも小さな低分子量化合物は通過する。
【0022】
本明細書において使用される「界面活性剤/タンパク質濃度比」という用語は、水溶液中の式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤の濃度対タンパク質の濃度の比を意味する。本開示においては、式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤の濃度及びタンパク質の濃度を重量/体積比(例えば、mg/ml)で表す。
【0023】
ポリアルコキシ化合物は、構造-(-A-O)m-(式中、mは3以上であり、Aは無置換アルキル基である)を有する1つ又は複数の基を含む化合物である。A基は直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組合せであってもよい。各種-(-A-O)-基中の各種A基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
脂肪酸化合物は、1つ又は複数の脂肪酸基を含む化合物である。脂肪酸基は、8個以上の炭素原子を含み、そのそれぞれが該基の1個又は複数個の他の炭素原子に結合している基である。ポリアルコキシ脂肪酸化合物は、ポリアルコキシ化合物と脂肪酸化合物の両方である化合物である。
【0025】
数平均分子量は、試料の総重量を試料に含まれる分子の個数で除したものと定義される。
【0026】
ヒドロカルビル基は、水素原子及び炭素原子を含む基である。無置換ヒドロカルビル基は、水素原子及び炭素原子のみを含む。置換ヒドロカルビル基は、水素及び炭素以外の1個又は複数個の原子を含む1つ又は複数の置換基を含む。
【0027】
タンパク質は、重合単位がアミノ酸である重合体である。アミノ酸は、ペプチド結合によって互いに結合されている。タンパク質は、1種又は複数種のアミノ酸残基の重合単位を20個以上含む。タンパク質という用語は、直鎖状ポリペプチド鎖だけでなく、ポリペプチド鎖を含むより複雑な構造も包含する。
【0028】
タンパク質の分子が、連続液体媒体全体に溶解した個々の分子の形態で分布している場合、タンパク質は、該液体媒体中の溶液である(又は、同義として、液体媒体中に溶解されている)とみなされる。連続液体媒体が、連続液体媒体の重量を基準として60重量%以上の量の水を含有する場合、タンパク質は水中に溶解しているとみなされる。
【0029】
化学基は、4.5~8.5のpH値が存在する場合、化学基がそのpH値の水と接触すると、存在するこの化学基の50モル%以上がイオン性形態をとることにより、イオン性基となる。
【0030】
緩衝剤は、(i)プロトンを受け取ってその化合物の共役酸を形成する能力を有し、その化合物の共役酸のpKaが10未満である化合物、又は(ii)プロトンを放出する能力を有し、その化合物のpKaが4を超える化合物のどちらかである。
【0031】
ここで、驚くべきことに、国際公開第2017/044367号(当該明細書全体をあらゆる目的のために参照により援用する)に開示されているように、水性製剤中のタンパク質を安定化させることが既に見出されている特定の種類の界面活性剤化合物は、タンパク質溶液を限外濾過及び/又は透析濾過プロセスに付すと、タンパク質溶液から効率的且つ効果的に除去できることが見出された。それにより、この種類の界面活性剤をタンパク質製造の上流段階で(製剤化段階そのものではなく)使用することが可能になり、ここでこれらは、タンパク質溶液の精製及び/又は濃縮時に起こるタンパク質の凝集及び粒子形成を軽減することができ、それによりタンパク質の収率が向上する。ポリソルベートとは異なり、この種類の界面活性剤は、依然としてタンパク質を保護する濃度であっても、分離膜で容易に濾過され、したがって、タンパク質が濾過時に変性及び凝集する問題を軽減することが可能である。
【0032】
したがって本開示は、タンパク質の精製及び/又は濃縮時に、水溶液中のタンパク質を安定化する方法を提供する。本方法は、(a)タンパク質及び一般式I:
【化3】
(式中、R
1-C(=O)は、脂肪酸アシル基であり、R
2は、H又は置換若しくは無置換ヒドロカルビル基であり、X
1は、S、O、又はNHであり、X
2は、S、O、又はNHであり、nは、0又は1~5の整数であり、R
3は、一般式II及びIII:
【化4】
の重合単位を含む重合体基である)のポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む水溶液を提供するステップと、(b)水溶液を分離膜と接触させるステップと、(c)水溶液を、可溶性低分子成分の濃度を低下させるか若しくは1種若しくは複数種の可溶性低分子量成分をその中に導入するために、透析濾過ステップに付す、及び/又は水溶液を、タンパク質を含む水溶液である保持液生成物を生成するために、タンパク質が濃縮されるように限外濾過ステップに付す、ステップと、を含む方法であって、式Iの化合物は、方法のステップ(a)~(c)におけるタンパク質の凝集を低減し、且つ式Iの化合物は、ステップ(c)において分離膜を通過する、方法である。
【0033】
式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤は、ポリソルベートやポロキサマー188などの従来の界面活性剤よりも低い臨界ミセル濃度(その濃度を超えると界面活性剤が自発的に集合してミセルとなる濃度)を示すことが判明した。J.S.Katz et al., Mol.Pharmaceutics 2019, 16, pp. 282-291.を参照されたい。臨界ミセル濃度がより低いことは、集合に対する駆動力がより強いことを表し、界面の安定化が速くなると解釈することができる。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、臨界ミセル濃度がより低いことは、式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤が従来の界面活性剤よりも1~2桁速く表面を平衡状態に近づけ、界面でタンパク質に打ち勝ち、したがってタンパク質の凝集しやすさを低下させるという発見の説明となり得る。
【0034】
ステップ(a)で提供される水溶液は、その中に溶解している(例えば、水中に溶解している)タンパク質及び一般式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む。任意選択的に、この水溶液は、糖、糖アルコール、塩、緩衝剤、アミノ酸、アミノ酸の塩、及びこれらの混合物などの低分子量成分をさらに含む。低分子量成分も水溶液に溶解している。低分子量成分が存在する場合、全ての低分子量成分の総量は、好ましくは300mg/mlを超えない。
【0035】
好ましい糖は、スクロース、グルコース、マンノース、トレハロース、マルトース、デキストロース、デキストラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい糖アルコールは、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい塩は、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される陽イオンを有する。好ましい塩は、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、リン酸塩、カルボン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、及びこれらの混合物から選択される陰イオンを有する。好ましい緩衝剤は、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される陽イオンを有する。好ましいアミノ酸は、リジン、グリシン、プロリン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
ステップ(c)においては、ステップ(a)で提供された水溶液が透析濾過ステップ及び/又は限外濾過ステップに付される。透析濾過ステップにおいては、少なくとも一部の溶媒及び式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤が分離膜を通過する。その結果として、生成した保持液(タンパク質を含む水溶液)に含まれる式Iの化合物の量が低減されるか又は濃度が低下する。透析濾過ステップにおいては、水溶液中に溶解している少なくとも一部の低分子量成分も分離膜を通過し得る。その結果として、生成した保持液に含まれる低分子量成分は、ステップ(a)で提供された水溶液中に最初に存在していた量よりも低下するか又は濃度が低下している。透析濾過ステップにおいて、タンパク質を含む水溶液(例えば、ステップ(a)で提供されたもの)は、少なくとも一部の式Iの化合物及び望ましくない低分子量成分を水溶液から除去することにより精製される。
【0037】
透析濾過中にタンパク質水溶液(保持液)から除去された溶媒及び低分子量成分(透過液)の分は、新たな溶媒が補充される。いくつかの実施形態では、新たな溶媒は、その中に溶解している1種又は複数種の新たな低分子量成分を含み、この種の1種又は複数種の新たな低分子量成分がタンパク質水溶液に導入される。新たな溶媒及びその中に溶解している1種又は複数種の新たな低分子量成分は、独立に、ステップ(a)で提供された水溶液中に最初に存在していた溶媒及び低分子量成分と同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、透析濾過終了時に生成する保持液生成物は、濃度が低下した式Iポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、透析濾過終了時に生成する保持液生成物中のタンパク質濃度は、ステップ(a)で提供された水溶液のタンパク質濃度と実質的に等しい。いくつかの実施形態では、透析濾過終了時に生成する保持液生成物中のタンパク質濃度は、ステップ(a)で提供された水溶液のタンパク質濃度から±5%の範囲内、又は±10%の範囲内、又は±15%の範囲内にある。
【0038】
限外濾過ステップにおいては、一部の溶媒及び式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤が分離膜を通過する。その結果として、生成した保持液生成物(タンパク質を含む水溶液)のタンパク質濃度は、ステップ(a)で提供された水溶液のタンパク質濃度よりも高い、即ち、水溶液中のタンパク質は濃縮されている。いくつかの実施形態では、生成した保持液生成物中の式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤の濃度は、ステップ(a)で提供された水溶液中のその濃度と比較して、実質的に等しいままである。
【0039】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、順次実施される透析濾過ステップ及び限外濾過ステップの両方を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、その後に限外濾過ステップが続く透析濾過ステップを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる、即ち、透析濾過により生成した保持液が限外濾過に付される。いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、限外濾過ステップを含むか、限外濾過ステップから本質的になるか、又は限外濾過ステップからなり、ステップ(c)において透析濾過は行われない。いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、透析濾過ステップを含むか、透析濾過ステップから本質的になるか、又は透析濾過ステップからなり、ステップ(c)において、別個の限外濾過ステップは行われない。
【0040】
ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物は、その中に溶解しているタンパク質を含む水溶液である。いくつかの実施形態では、保持液生成物の水溶液中のタンパク質濃度は、0.01mg/ml~700mg/ml、好ましくは5mg/ml~300mg/mlである。いくつかの実施形態では、保持液生成物の水溶液は、式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、保持液生成物の水溶液生成物は、その中に溶解している式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、保持液生成物の水溶液中の式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤の濃度は、1mg/ml以下、又は0.1mg/ml以下、又は0.05mg/ml以下、又は0.01mg/ml以下、又は0.005mg/ml以下、又は0.001mg/ml以下である。
【0041】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液は、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、単量体タンパク質を少なくとも80重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも85重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも90重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも92重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも94重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも96重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも98重量%、又は単量体タンパク質を少なくとも99重量%含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供された水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0043】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)で提供される水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約5mg/ml、好ましくは約0.005mg/ml~約1mg/ml、好ましくは約0.01mg/ml~約0.5mg/ml、より好ましくは約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、より好ましくは約0.01mg/ml~約0.05mg/mlである。
【0044】
いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップa)で提供される水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlであり、保持液生成物中の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0045】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)の水溶液中のタンパク質の濃度は、0.0001mg/ml~150mg/ml、好ましくは0.1mg/ml~50mg/ml、より好ましくは1mg/ml~20mg/mlである。
【0046】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は限外濾過ステップを含み、ステップc)における限外濾過後の水溶液中のタンパク質の濃度は、0.01mg/ml~700mg/ml、好ましくは5mg/ml~300mg/mlである。
【0047】
いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約10kDa~約100kDaである、即ち、分画分子量よりも大きなタンパク質を保持することができ(保持液中に)、その一方で、それよりも小さいタンパク質及び他の分子は分離膜を通過して透過液を形成することができる。分離膜を介するタンパク質の損失を最小限に抑えることが好ましい。したがって、分離膜は、保持すべきタンパク質の分子量の3分の1を超えない分画分子量を有するものを選択すべきである。分画分子量が約30kDa~約50kDaの範囲にあれば、生物製剤として使用される抗体などの大きなタンパク質の大部分を保持する役割を果たすことができる。いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaである。
【0048】
いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約100kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.005mg/ml~約1mg/ml、又は約0.05mg/ml~約1mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.5mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlである。
【0049】
いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約100kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は約0.05mg/ml~約1mg/mlであり、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0050】
いくつかの実施形態では、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.05mg/ml、又は約0.001mg/ml~約0.025mg/ml、又は約0.001mg/ml~約0.01mg/mlである。
【0051】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、限外濾過ステップを含むか、限外濾過ステップから本質的になるか、又は限外濾過ステップからなり、ステップ(c)において、限外濾過の前にも後にも透析濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約0.025mg/ml、好ましくは約0.001mg/ml~約0.01mg/mlである。
【0052】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、限外濾過ステップを含むか、限外濾過ステップから本質的になるか、又は限外濾過ステップからなり、ステップ(c)において、限外濾過の前にも後にも透析濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は約0.001mg/ml~約0.025mg/ml又は約0.001mg/ml~約0.01mg/mlであり、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0053】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、その後に限外濾過ステップが続く透析濾過ステップを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlであり、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0054】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、透析濾過ステップを含むか、透析濾過ステップから本質的になるか、又は透析濾過ステップからなり、ステップ(c)において、透析濾過の前にも後にも限外濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は約0.01mg/ml~約0.1mg/mlである。
【0055】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、透析濾過ステップを含むか、透析濾過ステップから本質的になるか、又は透析濾過ステップからなり、ステップ(c)において、透析濾過の前にも後にも限外濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は約0.01mg/ml~約0.1mg/mlであり、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している。
【0056】
式Iのポリアルコキシ脂肪酸アシル化合物において、R1は、好ましくは、置換若しくは無置換脂肪族基である。置換脂肪族基の中でも、好ましい置換基はヒドロキシルである。より好ましくは、R1は無置換脂肪族基であり;より好ましくは、R1は無置換アルキル基である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR1は、C9~22直鎖状アルキルである、即ち、R1は、9~22個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR1は、C10~18直鎖状アルキル基である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR1は、C10~16直鎖状アルキル基である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR1は、C11~15直鎖状アルキル基である。
【0057】
好ましくは(nが0ではない場合)、X1はO又はNHである。より好ましくは、X1はNHである。好ましくは、X2は、O又はNHである。より好ましくは、X2はNHである。
【0058】
nは、0、又は1、2、3、4、若しくは5である。好ましくは、nは0又は1である。より好ましくは、nは1である。
【0059】
好ましくは、R2は、20個以下;より好ましくは15個以下の原子を有する。好ましくは、R2が水素ではない場合、R2は1個又は複数個の炭素原子を含む。好ましくは、R2は、水素又は無置換炭化水素基であり;より好ましくは、R2は、水素、無置換アルキル基、又はその唯一の置換基が無置換の芳香族炭化水素基であるアルキル基である。無置換アルキル基の中では、メチルが好ましい。その唯一の置換基が無置換芳香族炭化水素基であるアルキル基の中では、-CH2-(C6H5)が好ましく、ここで-(C6H5)はベンゼン環である。好ましくは、R2は、天然に存在するアミノ酸の側鎖を表す。いくつかの実施形態では、nは1であり、式Iの化合物のR2は、天然に存在するアミノ酸の側鎖を表す。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR2は、H、無置換C1~4アルキル、又は-CH2-(C6H5)である。
【0060】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物のR3の数平均分子量は、600~5000ダルトン、好ましくは800~3000ダルトンである。いくつかの実施形態では、R3基は、構造(II)及び構造(III)の単位の統計的共重合体又は構造(II)及び構造(III)の単位のブロック共重合体のいずれかである。好ましくは、R3基は、構造(II)及び構造(III)の単位の統計的共重合体である。
【0061】
好ましくは、-R3は、構造-R4-CH3(式中、R4は、構造(II)及び構造(III)の重合単位を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる、重合体基である)を有する。好ましくは、R4は、構造(II)及び構造(III)以外の他の重合単位を含まない。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1は、10~16個の炭素原子を有する直鎖状無置換アルキル基であり、R2は、水素、メチル、及び-CH2-(C6H5)(ここで-(C6H5)はベンゼン環である)からなる群から選択され、R3の数平均分子量は800~3000である。
【0063】
構造(II)の単位の構造(III)の単位に対するモル比(本明細書において、「PO/EO比」)を特徴付けることは有用である。POは構造(II)であり、EOは構造(III)である。いくつかの実施形態では、PO/EO比は、0.01:1~2:1の範囲、又は0.05:1~1:1の範囲、又は0.1:1~0.5:1の範囲にある。
【0064】
式(I)の化合物の特に好ましい実施形態において、R1はCH3-(CH2)11-CH2-であり、nは1であり、X1及びX2はどちらもNHであり、R2はCH2(C6H5)であり、R3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO/EO比が約3:19である、CH3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である。そのような式(I)の化合物を、本明細書の実施例においてFM1000と称する。
【0065】
式(I)の化合物の他の好ましい実施形態において、R1はCH3-(CH2)11-CH2-であり、nは0であり、X2はNHであり、R3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO/EO比が約3:19である、CH3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である。
【0066】
好ましくは、式(I)の化合物はイオン性基を持たない。
【0067】
式(I)の化合物は、国際公開第2017/044366号に開示されている方法により作製することができ、当該明細書全体をあらゆる目的で参照により本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0068】
本開示の方法に使用するのに好ましいタンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体薬物複合体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、成長因子、インスリン、免疫グロブリン、ペプチドホルモン、酵素、ポリペプチド、融合タンパク質、グリコシル化タンパク質、抗原、抗原のサブユニット、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0069】
好ましいタンパク質は、疾患若しくは病状を治療する、又ワクチンとして機能する、治療有効性を有する。治療用タンパク質の例は、免疫グロブリン-g、アダリムマブ、インターフェロンα、ベバシズマブ、ヒト成長ホルモン、リツキシマブ、ヒト血清アルブミン、インスリン、エリスロポエチンα、ペムブロリズマブ、エタネルセプト、フィルグラスチム、ニボルマブ、トラスツズマブ、デュルバルマブ、インターロイキン-2、インフリキシマブ、絨毛性ゴナドトロピン、アベルマブ、デノスマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、トレメリムマブ、第VIII因子、インターフェロンβ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ペグフィルグラスチム、セクキヌマブ、ストレプトキナーゼ、セツキシマブ、オマリズマブ、ラムシルマブ、ウロキナーゼ、セルトリズマブペゴル、デュピルマブ、ゴリムマブ、アルデスロイキン、モルグラモスチム、ペグインターフェロンα-2b、チスレリズマブ、フォリトロピンα、ゲボキスマブ、ゴリムマブ、スパルタリズマブ、カナキヌマブ、フォラルマブ、バルリルマブ(varlilumab)、ニモツズマブ、エリスロポエチンβ、エボロクマブ、ペガルギミナーゼ(pegargiminase)、ベルメキマブ、カロツキシマブ、ダラツムマブ、エクリズマブ、オンツキシズマブ、アダリムマブ、カムレリズマブ、エノブリツズマブ、インターロイキン-12、リリルマブ、パニツムマブ、ガチポツズマブ(gatipotuzumab)、レラトリマブ、アンデカリキシマブ、ベリムマブ、カビラリズマブ、サシツズマブゴビテカン(isactuzumab govitecan)、モナリズマブ、パンクレアチン、パーツズマブ、トリパリマブ、イネビリズマブ、オファツムマブ、ペピネマブ、シンチリマブ、アリロクマブ、ミラツズマブ、ニダニリマブ(nidanilimab)、ソタテルセプト、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベバシズマブβ、イサツキシマブ、オルロタマブ(orlotamab)、チソツマブベドチン、ベンラリズマブ、コシベリマブ、エマクツズマブ、ガニツマブ、ナルソプリマブ、ピディリズマブ、サリルマブ、トラスツズマブエムタンシン、アネツマブラブタンシン、ベルチリムマブ、ブリナツモマブ、グセルクマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、アレムツズマブ、エミベツズマブ、フィクラツズマブ、イファボツズマブ、ミリキズマブ、ナタリズマブ、ラコツモマブ、シルツキシマブ、チミグツズマブ(timigutuzumab)、トラスツズマブデルクステカン、ビメキズマブ、ブロダルマブ、セトレリマブ、ファーレツズマブ、オピネルセプト、リロナセプト、トムゾツキシマブ(tomuzotuximab)、ウレルマブ、アスクリンバクマブ、ブロルシズマブ、クラザキズマブ、クサツズマブ(cusatuzumab)、ダロツズマブ、イナルマブ、イトリズマブ、及びマルゲツキシマブである。医療用診断薬として使用することができる、又は食品組成物に有益な作用を有する、又は洗浄用組成物若しくはコーティング配合物に組み込むことができるタンパク質も考えられている。
【0070】
多くの態様及び実施形態を上に説明してきたが、これらは例示に過ぎず、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様及び実施形態が可能であることを理解する。
【実施例】
【0071】
実施例
本明細書に記載する概念を以下の実施例においてさらに説明するが、実施例は、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
材料
別段の指定がない限り、すべての材料はSigma-Aldrich又はFisherから入手し、さらに精製することなく使用した。Jeffamine M-1000は、Huntsmanによって提供された。ポリソルベート80(PS80)は、シグマ・アルドリッチ社の「欧州薬局方準拠(tested according to Ph.Eur.)」グレードである製品番号59924とした。これを、酸化を最小限に抑えるために窒素ヘッドスペース下にて保管した。工業グレードのウシIgG(免疫グロブリンG)は、MP Biomedicals(Santa Ana,CA)から購入した。
【0073】
FM1000は、式(I)の界面活性剤化合物であり、式(I)中、R1はCH3-(CH2)11-CH2-であり、nは1であり、X1及びX2はどちらもNHであり、R2は-CH2(C6H5)であり、ここで、-(C6H5)はベンゼン環であり、R3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO/EO比が約3:19である、CH3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である。FM1000は、国際公開第2017/044366号に報告されているように製造した。簡潔には、塩化ミリストイルを、水中で、水酸化ナトリウム及びトリエチルアミンの存在下に、フェニルアラニンでアミド化した。得られた懸濁液を濃塩酸でpH2に酸性化し、濾過した。次いで、濾過された粉末をヘキサンで再結晶した。ミリストイルフェニルアラニンをJeffamine M-1000と溶融縮合することによってアミド化した。粗製FM1000生成物をメタノールに溶解し、DuPont Amberlite(商標)IRN 77及びIRN78イオン交換樹脂上で攪拌することにより、出発物質を除去した。最終生成物を真空下で乾燥させた。
【0074】
実施例1:遠心濾過時のFM1000の保持。
FM1000の1mg/mlの脱イオン水溶液又は0.9%生理食塩水溶液を調製した。試料の半量は冷蔵庫から直接取り出し、残りの半量は遠心分離を行う前に短時間で60℃まで加熱した。各溶液2mlをAmicon Ultra-4遠心チューブに投入し、3000rpmで2分間遠心分離した。フィルター(分離膜)の分画分子量(MWCO)を、30、50、又は100kDaとした。透過液のFM1000濃度をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
どの試験条件においても、30又は50kDaのMWCOフィルターを通過した透過液中にはFM1000は検出されなかった。これらのデータから、FM1000は、1mg/mlの濃度では、100kDaのMWCOの分離膜を効果的に通過することができたが、30又は50kDaのMWCO分離膜を効果的に通過できないことが示された。
【0077】
実施例2~5
実施例2~5においては、標準的な限外濾過(UF)装置のリザーバー内に1mg/mlの濃度のIgG及びFM1000を含む200mlの水溶液を準備した。透析濾過(DF)の場合は、主リザーバーは、限外濾過リザーバー中の水溶液と同じ水溶液(濃度1mg/mlのIgG及びFM1000を含む)を含むものとした。第2リザーバーは交換用水溶液を含むものとし、交換用水溶液は、FM1000及びIgGを含まないことを除いて主リザーバーの水溶液と同一とした。主リザーバーの水溶液を濾過して廃棄する速度と同じ速度で交換用水溶液を抜き出し、主リザーバーに流入させた。即ち、透過液が形成される速度と同じ速度で交換用水溶液を抜き出し、主リザーバーに流入させた。このようにして、透析濾過中は、水溶液中のタンパク質濃度を基本的に一定に維持した。分析用の分取液は全て限外濾過のリザーバー又は透析濾過の主リザーバーから採取した。フィルター(分離膜)は、MWCOが30kDaであるPall Minimate Capsuleとし、流量を120ml/分に設定した。
【0078】
実施例2(比較):0.05mg/mlのFM1000及び1mg/mlのIgGを含む水溶液のUF。
濃度1mg/mlのIgG及び濃度0.05mg/mlのFM1000を含む水溶液(0.9%生理食塩水)200mlをUFのみに付し、約5ml(保持液の体積)に濃縮した。分離膜のMWCOは30kDaとした。濃縮の様々な時点(即ち、保持液が様々な体積となった時点)で試料を採取し、UV/Vis(A280nm、10倍希釈)にてIgG濃度を、及びHPLC(A210nm)にてFM1000濃度を分析した。結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
これらのデータから、濃度0.05mg/mlのFM1000は、限外濾過プロセスにおいて、30kDa MWCOの分離膜を効果的に通過できないことが示された。
【0081】
実施例3:0.05mg/mlのFM1000及び1mg/mlのIgGを含む水溶液のDF/UF。
実施例3においては、濃度1mg/mlのIgG及び濃度0.05mg/mlのFM1000を含む水溶液200mlをDFに付し、続いてUFに付した。即ち、DF終了時に生成した保持液生成物の水溶液をUFに付した。200mlの水溶液(DFに付したもの)は、0.9%生理食塩水の溶液又は25mM(ミリモル濃度)のpH6.5のヒスチジン緩衝液の溶液のいずれかとした。200mlの水溶液(DFに付すもの)が0.9%生理食塩水の溶液(IgG及びFM1000を含む)である場合、第2リザーバーの交換用水溶液は、IgG及びFM1000を含まない純粋な0.9%生理食塩水溶液とした。200mlの水溶液(DFに付すもの)が25mMのpH6.5のヒスチジン緩衝液の溶液(IgG及びFM1000を含む)である場合、第2リザーバーの交換用水溶液は、IgG及びFM1000を含まない純粋な25mMのpH6.5のヒスチジン緩衝液とした。
【0082】
DF中は、主リザーバー内の200mlの0.9%生理食塩水溶液(IgG及びFM1000を含む)を、1.6リットルの純粋な0.9%生理食塩水溶液(IgG及びFM1000を含まない)と透析濾過により交換し、また、200mlの25mMのpH6.5のヒスチジン緩衝液の溶液(IgG及びFM1000を含む)を、1.0リットルの純粋な25mMのpH6.5のヒスチジン緩衝液(IgG及びFM1000を含まない)と透析濾過により交換した。DF終了時に生成した保持液生成物のそれぞれの水溶液を、その中に含まれるタンパク質であるIgGが濃縮されるようにさらにUFに付すことにより、保持液を約25mlまで減量した。
【0083】
実施例3においては、DF及びUFにMWCOが30kDaの分離膜を使用した。DF及びUFプロセスの様々な時点で試料を採取し、IgG濃度をUV/Vis(A280nm、10倍希釈)で、及びFM1000濃度をHPLC(A210nm)で分析した。表3に結果を示すが、「生理食塩水HPLC」の欄には、0.9%生理食塩水溶液のDF及びUFの様々な時点におけるHPLCシグナル強度(FM1000濃度を示す)を示し、「生理食塩水UV/Vis」の欄には、0.9%生理食塩水溶液のDF及びUFの様々な時点におけるUV/Visシグナル強度(IgG濃度を示す)を示し、「ヒスチジンHPLC」の欄には、25mMヒスチジン緩衝液溶液のDF及びUFの様々な時点におけるHPLCシグナル強度を示し、「ヒスチジンUV/Vis」の欄には、25mMヒスチジン緩衝液溶液のDF及びUFの様々な時点におけるUV/Visシグナル強度(IgG濃度を示す)を示す。
【0084】
【0085】
これらのデータから、濃度0.05mg/mlのFM1000は、その後に限外濾過ステップが続く透析濾過ステップを含む、30kDaのMWCOの分離膜をDF及びUFの両方に使用するプロセスにおいて、効果的に除去できることが示された。これらのデータから、濃度0.05mg/mlのFM1000は、透析濾過プロセスにおいて、30kDaのMWCOの分離膜を効果的に通過できることも示された。
【0086】
実施例4:0.1mg/mlのFM1000及び1mg/mlのIgGを含む水溶液のDF/UF。
実施例4においては、濃度1mg/mlのIgG及び濃度0.1mg/mlのFM1000を含む0.9%の生理食塩水溶液200mlをDFに付し、続いてUFに付した。200mlの水溶液のFM1000の初期濃度を0.1mg/mlとし、このプロセスでは0.9%生理食塩水溶液のみを使用/試験し、透析濾過では1.5リットルの純粋な0.9%生理食塩水溶液(IgG及びFM1000を含まない)をDFにより交換し、UFでは保持液の体積を約50mlまで減量したことを除いて、DF/UFプロセスを実施例3と同様に実施した。実施例4においては、DF及びUFにMWCOが30kDaの分離膜を使用した。結果を表4に示す。
【0087】
【0088】
これらのデータから、MWCOが30kDaの分離膜を使用することにより、濃度0.1mg/mlのFM1000は、ゆっくりと透析濾過されることによって一部が水溶液(保持液)から除去されることが示された。それに続くMWCOが30kDaの分離膜を用いた限外濾過により、IgG及びFM1000は両方とも濃縮されたが、保持液生成物の50mlの水溶液中のFM1000/タンパク質濃度比は、200mlの0.9%生理食塩水溶液よりもはるかに小さくなった。
【0089】
実施例5:0.01mg/mlのFM1000及び1mg/mlのIgGを含む水溶液のUF。
濃度1mg/mlのIgG及び濃度0.01mg/mlのFM1000を含む水溶液(0.9%生理食塩水)200mlをUFのみに付し、約2ml(保持液の体積)まで濃縮した。分離膜のMWCOは30kDaとした。濃縮の様々な時点(即ち、保持液が様々な体積となった時点)で試料を採取し、IgG濃度をUV/Vis(A280nm、10倍希釈)で、及びFM1000濃度をHPLC(A210nm)で分析した。結果を表5に示す。
【0090】
【0091】
<LLDは検出限界を下回ることを意味する。これらのデータは、タンパク質であるIgGが濃縮されたことを示している。一方、FM1000は全く検出されず、UF中に濃縮されなかったことを示している。したがって、これらのデータから、0.01mg/mlの濃度のFM1000は、限外濾過プロセスにおいてMWCOが30kDaの分離膜を効果的に通過できることが示された。
【0092】
実施例6:FM1000及びポリソルベート80(どちらも濃度0.01mg/ml)が水溶液中のタンパク質セツキシマブの安定性に及ぼす影響
セツキシマブはErbitux(登録商標)の商品名で市販されており、薬局で入手可能であった。これを、10mMのリン酸緩衝液及び145mMの塩化ナトリウム中の2mg/ml水溶液(pH7.2)として配合した。
【0093】
この溶液にFM1000又はポリソルベート80を添加するためにErbitux(登録商標)溶液(セツキシマブ2mg/ml)を再配合し、目標のセツキシマブ濃度が達成されるようにした。Erbitux(登録商標)溶液を希釈することにより、1.5mg/mlのセツキシマブ試料を調製した。Erbitux(登録商標)溶液を遠心濾過することにより10mg/mlに濃縮し、次いで7.5mg/mlに希釈することより、7.5mg/mlのセツキシマブ試料を調製した。セツキシマブ試料中の界面活性剤(FM1000又はポリソルベート80)濃度を0.01mg/mlとした。試料9及び10には界面活性剤を添加しなかった。セツキシマブ試料は、分析前に振盪を行う(振盪後)か又は振盪を行わない(振盪前)かのいずれかとした。Wheatonからの5ml容の血清バイアル(serum vial)内に各振盪試料3.0mlを投入した。振盪前試料には、振盪試料体積を3mlにするために取り除いた分取物を用いた。振盪試料は、往復式振盪機にて150往復/分で一晩振盪した。
【0094】
試料溶液中に存在している粒子(タンパク質セツキシマブが凝集していることを示す)を、粒子の量(粒子数)及び粒子のサイズ(粒子の半径で表す)などに関し分析した。結果を表6に示す。肉眼で見えない粒子を定量化するために、Biotechne Microflow Imaging装置にてマイクロフローイメージングを実施した。粒子の計数は、ソフトウェアにより自動で行った。Agilent 1260 Bioinert液体クロマトグラフィーシステムによりサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、UV検出を行った。カラムはAgilent AdvanceBio 300A SECカラムとし、流通させる緩衝液はリン酸緩衝液とした。紫外線吸光度をMolecular Devices M3プレートリーダーで測定した。動的光散乱(DSC)をWyatt DynaPro IIで測定した。
【0095】
【0096】
表6中、Sampは試料を意味し、CTXはセツキシマブを意味し、Concは濃度を意味し、Surfは界面活性剤を意味する。これらのデータから、界面活性剤の量が0.01mg/mlの場合、FM1000はタンパク質であるセツキシマブの凝集をポリソルベート80よりもはるかに大幅に低減できることが示された。
【0097】
概要又は実施例において上に記載された行為の全てが必要であるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされない場合があること及び1つ以上のさらなる行為が、記載されているものに加えて行われ得ることに留意されたい。さらにまた、行為が列挙される順番は、必ずしも行為が行われる順番ではない。
【0098】
上述の本明細書では、概念を特定の実施形態に関連して記載してきた。しかしながら、当業者であれば、様々な修正形態及び変更形態が、以下の特許請求の範囲に示した本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解するであろう。したがって、本明細書は、限定的意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、こうした改変は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0099】
利益、他の利点、及び問題の解決策について、上記では特定の実施形態に関して記載してきた。しかしながら、利益、利点、問題の解決策、及び任意の利益、利点、又は解決策を生じさせ得る又はより顕著にならせ得る任意の特徴は、特許請求の範囲のいずれか又は全ての決定的に重要な、必要な、又は不可欠な特徴として解釈されるべきではない。
【0100】
明確にするために、特定の特徴は、別個の実施形態との関連で本明細書に記載され、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることも十分に理解されるべきである。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で記載した様々な特徴は、個別に又は任意の部分的な組合せでも提供され得る。
【0101】
実施形態
さらなる説明のために、本開示のさらなる非限定的な実施形態を以下に示す。
【0102】
例えば、実施形態1は、タンパク質の精製及び/又は濃縮時に水溶液中のタンパク質を安定化させる方法である。本方法は、(a)タンパク質及び一般式I:
【化5】
(式中、R
1-C(=O)は、脂肪酸アシル基であり、R
2は、H又は置換若しくは無置換ヒドロカルビル基であり、X
1は、S、O、又はNHであり、X
2は、S、O、又はNHであり、nは、0又は1~5の整数であり、R
3は、一般式II及びIII:
【化6】
の重合単位を含む重合体基である)のポリアルコキシ脂肪酸アシル界面活性剤を含む水溶液を提供するステップと、(b)水溶液を分離膜と接触させるステップと、(c)水溶液を、可溶性低分子成分の濃度を低下させるか若しくは1種若しくは複数種の可溶性低分子量成分をその中に導入するために、透析濾過ステップに付す、及び/又は水溶液を、タンパク質を含む水溶液である保持液生成物を生成するために、タンパク質が濃縮されるように限外濾過ステップに付す、ステップと、を含む方法であって、式Iの化合物は、方法のステップ(a)~(c)におけるタンパク質の凝集を低減し、且つ式Iの化合物は、ステップ(c)において分離膜を通過する、方法である。
【0103】
実施形態2は、保持液生成物中の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、実施形態1に記載の方法である。
【0104】
実施形態3は、ステップ(c)は、順次実施される透析濾過ステップ及び限外濾過ステップの両方を含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0105】
実施形態4は、ステップ(a)で提供される水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約5mg/ml、好ましくは約0.005mg/ml~約1mg/ml、好ましくは約0.01mg/ml~約0.5mg/ml、より好ましくは約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、より好ましくは約0.01mg/ml~約0.05mg/mlである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0106】
実施形態5は、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップa)で提供される水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlであり、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0107】
実施形態6は、ステップ(a)の水溶液中のタンパク質の濃度は、0.0001mg/ml~150mg/ml、好ましくは0.1mg/ml~50mg/ml、より好ましくは1mg/ml~20mg/mlである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0108】
実施形態7は、ステップ(c)は限外濾過ステップを含み、ステップc)における限外濾過後の水溶液中のタンパク質の濃度は、0.01mg/ml~700mg/ml、好ましくは5mg/ml~300mg/mlである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0109】
実施形態8は、分離膜の分画分子量は約10kDa~約100kDa、好ましくは約30kDa~約50kDaである、実施形態1~4及び6~7のいずれか一つに記載の方法である。
【0110】
実施形態9は、分離膜の分画分子量は約100kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.005mg/ml~約1mg/ml、又は約0.05mg/ml~約1mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.5mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlである、実施形態1~4及び6~8のいずれか一つに記載の方法である。
【0111】
実施形態10は、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、実施形態9に記載の方法である。
【0112】
実施形態11は、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は約0.01mg/ml~約0.1mg/mlである、実施形態1~3及び6~7のいずれか一つに記載の方法である。
【0113】
実施形態12は、ステップ(c)は、限外濾過ステップを含むか、限外濾過ステップから本質的になるか、又は限外濾過ステップからなり、ステップ(c)において、限外濾過の前にも後にも透析濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.001mg/ml~約0.025mg/ml、好ましくは約0.001mg/ml~約0.01mg/mlである、実施形態1~2及び6のいずれか一つに記載の方法である。
【0114】
実施形態13は、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、実施形態12に記載の方法である。
【0115】
実施形態14は、ステップ(c)は、その後に限外濾過ステップが続く透析濾過ステップを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml又は約0.01mg/ml~約0.05mg/mlである、実施形態1~2及び6のいずれか一つに記載の方法である。
【0116】
実施形態15は、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、実施形態14に記載の方法である。
【0117】
実施形態16は、ステップ(c)は、透析濾過ステップを含むか、透析濾過ステップから本質的になるか、又は透析濾過ステップからなり、ステップ(c)において、透析濾過の前にも後にも限外濾過は行われず、分離膜の分画分子量は約30kDa~約50kDaであり、ステップ(a)の水溶液中の式Iの化合物の濃度は、約0.01mg/ml~約0.1mg/ml、である、実施形態1~2及び6のいずれか一つに記載の方法である。
【0118】
実施形態17は、保持液生成物の水溶液は、単量体タンパク質を、保持液生成物の水溶液中のタンパク質の総重量を基準として、少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含み、ステップ(c)の終了時に生成する保持液生成物の水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比は、ステップ(a)で提供される水溶液中の界面活性剤/タンパク質濃度比と比較して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%低下している、実施形態16に記載の方法である。
【0119】
実施形態18は、式Iの化合物中、R1は、C9~22直鎖状アルキルである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0120】
実施形態19は、式Iの化合物中、R1は、C11~15直鎖状アルキルである、実施形態18に記載の方法である。
【0121】
実施形態20は、式Iの化合物中、X2は、NHである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0122】
実施形態21は、式Iの化合物中、nは、1、2、3、4、又は5、好ましくは1である、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0123】
実施形態22は、式Iの化合物中、X1は、NHである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0124】
実施形態23は、式Iの化合物中、nは、1であり、R2は、天然に存在するアミノ酸の側鎖を表す、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0125】
実施形態24は、式Iの化合物中、R2は、H、無置換C1~4アルキル、又は-CH2-(C6H5)である、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法である。
【0126】
実施形態25は、式Iの化合物中、R3の数平均分子量は、600~5000ダルトン、好ましくは800~3000ダルトンである、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0127】
実施形態26は、式Iの化合物中、R1は、10~16個の炭素原子を有する直鎖状無置換アルキル基であり、R2は、水素、メチル、及び-CH2-(C6H5)(ここで-(C6H5)はベンゼン環である)からなる群から選択され、R3の数平均分子量は800~3000である、実施形態1~17及び20~22のいずれか一つに記載の方法である。
【0128】
実施形態27は、式Iの化合物中、プロピレンオキシド(PO)単位対エチレンオキシド(EO)単位の比は、0.01:1~2:1の範囲、好ましくは0.05:1~1:1の範囲、より好ましくは0.1:1~0.5:1の範囲にある、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0129】
実施形態28は、式Iの化合物中、R1はCH3-(CH2)11-CH2-であり、nは1であり、X1及びX2はどちらもNHであり、R2は-CH2(C6H5)であり、R3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO/EO比が約3:19である、CH3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法である。
【0130】
実施形態29は、式Iの化合物中、R1はCH3-(CH2)11-CH2-であり、nは0であり、X2はNHであり、R3は、数平均分子量が約1000ダルトンであり、PO/EO比が約3:19である、CH3で末端封止されたPO及びEO単位の共重合体である、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法である。
【0131】
実施例30は、タンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体薬物複合体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、成長因子、インスリン、免疫グロブリン、ペプチドホルモン、酵素、ポリペプチド、融合タンパク質、グリコシル化タンパク質、抗原、抗原のサブユニット、及びこれらの組合せからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0132】
実施形態31は、ステップ(a)の水溶液は、スクロース、グルコース、マンノース、トレハロース、マルトース、デキストロース、デキストラン、及びこれらの混合物からなる群より選択される糖をさらに含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0133】
実施形態32は、ステップ(a)の水溶液は、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、及びこれらの混合物からなる群から選択される糖アルコールをさらに含む、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法である。
【0134】
実施形態33は、ステップ(a)の水溶液は、塩をさらに含み、この塩は、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される陽イオンを有し、この塩は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、硫酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される陰イオンを有する、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0135】
実施形態34は、ステップ(a)の水溶液は、天然に存在するアミノ酸をさらに含む、先行する実施形態のいずれか一つに記載の方法である。
【0136】
実施形態35は、アミノ酸は、リジン、グリシン、プロリン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態34に記載の方法である。
【国際調査報告】