(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】脂肪族ポリケトン強化剤を含む硬化性樹脂組成物及び該組成物から製造される複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20230208BHJP
C08L 73/00 20060101ALI20230208BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20230208BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20230208BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L73/00
C08G59/50
C08K7/04
C08J5/04 CER
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535494
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 US2020063265
(87)【国際公開番号】W WO2021118875
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509282365
【氏名又は名称】ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワッカー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ドン
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド,デレク
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB02
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD23
4F072AE01
4F072AE06
4F072AG02
4F072AH04
4F072AH31
4F072AJ04
4F072AL02
4J002CD05Y
4J002CD13W
4J002CD13X
4J002CJ005
4J002CN034
4J002DA018
4J002DJ017
4J002EN076
4J002EV216
4J002FA048
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD146
4J002GF00
4J002GQ01
4J036AA06
4J036AD08
4J036AH02
4J036AH07
4J036DC03
4J036DC10
4J036DD04
4J036FA05
4J036FB06
4J036FB15
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】
本開示は、熱硬化性樹脂、強化剤としての脂肪族ポリケトン、及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を提供する。硬化性樹脂組成物は、強化繊維と組み合わされた後、硬化して、高いガラス転移温度、卓越した機械的特性及び低い吸湿を有する繊維強化複合材料物品を形成する場合がある。繊維強化複合材料物品は、航空宇宙、航空、航海及び陸上車両を含む輸送用途等の様々な用途に使用される場合がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱硬化性樹脂、(b)硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約1重量%~約30重量%の脂肪族ポリケトン、及び(c)硬化剤を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂が、二官能性エポキシ樹脂、三官能性エポキシ樹脂、四官能性エポキシ樹脂及びそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪族ポリケトンが、一酸化炭素及びエチレンの線状交互ポリマーである、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリケトンが、一酸化炭素と、エチレンと、プロピレン、n-ブテン、n-オクテン又はn-ドデセンのうちの1つとの、ターポリマーである、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド又はそれらの混合物を含む、更なる強化剤を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
約10重量%~約90重量%のエポキシ樹脂及び約1重量%~約30重量%の脂肪族ポリケトン及び約5重量%~約60重量%の硬化剤を一緒に混合することを含む、硬化性樹脂組成物の調製方法であって、重量%は硬化性樹脂組成物の総重量を基準とする、方法。
【請求項8】
約0.5重量%~約30重量%の、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド及びそれらの混合物から選択される更なる強化剤が、エポキシ樹脂、脂肪族ポリケトン及び硬化剤と混合される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
強化繊維及び請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を含む繊維強化樹脂組成物。
【請求項10】
強化繊維が、グラファイト繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素から形成される繊維、アルミナから形成される繊維、ホウ素から形成される繊維、石英から形成される繊維、有機ポリマーから形成される繊維、及びそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項11】
強化繊維が、繊維強化樹脂組成物の総重量を基準として、約50重量%~約90重量重量%の量で存在する、請求項9に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項12】
(i)強化繊維を鋳型内で請求項1に記載の硬化性樹脂組成物と接触させて、強化繊維を被覆及び/又は含浸する工程と;(ii)被覆及び/又は含浸した強化繊維を、少なくとも約60℃の温度で硬化させる工程とを含む、繊維強化複合材料物品の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法に従って製造された繊維強化複合材料物品。
【請求項14】
複合材料物品が1次又は2次航空宇宙構造材料である、請求項13に記載の繊維強化複合材料物品。
【請求項15】
繊維強化複合材料物品の製造方法であって:強化繊維を請求項1に記載の硬化性樹脂組成物と接触させて、強化繊維を被覆及び/又は含浸する工程と、被覆及び/又は含浸した強化繊維を硬化させる工程とを含む、方法。
【請求項16】
RIMシステムにおける繊維強化複合材料物品の製造方法であって:a)強化繊維を含む繊維プレフォームを鋳型内に導入する工程と;b)請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を鋳型内に射出する工程と;c)硬化性樹脂組成物を繊維プレフォームに含浸させる工程と;d)含浸させた繊維プレフォームを少なくとも約60℃の温度で少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を生成する時間の間加熱する工程と;e)任意的に、部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を約100℃~約350℃までの温度での後硬化操作に供する工程とを含む、方法。
【請求項17】
VaRTMシステムにおける繊維強化複合材料物品の製造方法であって:a)強化繊維を含む繊維プレフォームを鋳型内に導入する工程と;b)請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を鋳型内に射出する工程と;c)鋳型内の圧力を低下させる工程と;d)鋳型をほぼその減圧に維持する工程と;e)硬化性樹脂組成物を繊維プレフォームに含浸させる工程と;f)含浸させた繊維プレフォームを少なくとも約60℃の温度で少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を生成する時間の間加熱する工程と;任意的に、少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を約100℃~約350℃の温度での後硬化操作に供する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、その全内容が参照により本明細書に明白に組み込まれる、2019年12月10日出願の米国仮特許出願第62/946,085号による利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、硬化性樹脂組成物の特性、例えば衝撃後の圧縮及び湿潤性を変更するための脂肪族ポリケトンの使用に関する。本開示はまた、強化繊維の存在下で硬化して、繊維強化複合材料物品、及び繊維強化複合材料物品から製造される航空宇宙構造部分を形成する場合がある、そのような硬化性樹脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化したエポキシ樹脂等の熱硬化性材料は、それらの耐熱性及び耐薬品性について知られている。それらはまた、良好な機械的特性を示すが、靭性を欠くことが多く、非常に脆い傾向がある。これは特に、それらの架橋密度が増大し、又はモノマー官能基が2を超えて増加する場合に当てはまる。多様な強化剤材料をその中に組み込むことによって、エポキシ樹脂及び他の熱硬化性材料(例えば、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂)を強化し又は頑健にする試みが為されている。
【0004】
そのような強化剤は、それらの構造的、形態学的、又は熱的特性によって互いに比較される場合がある。強化剤の構造主鎖は、芳香族、脂肪族、又は芳香族及び脂肪族の両方である場合がある。芳香族強化剤、例えばポリエーテルエーテルケトン又はポリイミドは、強靭化、即ち衝撃後の圧縮において理想的な改善を提供し、また強化剤の芳香族構造に起因して、高温・湿潤環境に供された際に低い吸湿を示す熱硬化性材料を提供する。逆に、脂肪族強化剤、例えばナイロン(別名ポリアミド)は、衝撃後の圧縮において有意な改善を示すが、高温・湿潤環境に供された際に、圧縮強度及び圧縮弾性率を減少させ得る、所望よりも高い吸湿を示す熱硬化性材料を提供する。他の強化剤、例えばコアシェルポリマーは、良好な耐損傷性を示す熱硬化性材料を提供することができる。しかしながら、この強化剤は、熱硬化性材料の加工性及びガラス転移温度に悪影響を与える傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、樹脂組成物の硬化後に、硬化製品が、高いガラス転移温度、卓越した機械的特性、及び、高温・湿潤環境に供された際に、その熱機械的特性が低下しないように、低い吸湿を示す、新しい強化剤を硬化性樹脂組成物中に使用することによる、先端技術に対する更なる改善が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一般に、(a)熱硬化性樹脂(b)脂肪族ポリケトン強化剤、及び(c)硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を提供する。本開示はまた、強化繊維及び本開示の硬化性樹脂組成物を含む繊維強化樹脂組成物を提供する。繊維強化樹脂組成物は、硬化して、例えば輸送用途(航空宇宙、航空、航海及び陸上車両を含む、並びに自動車、鉄道及びバス(coach)業界を含む)、建築/建設用途、又は他の商業的用途等の多様な用途に利用される場合がある繊維強化複合材料物品を形成する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、一般に、(a)熱硬化性樹脂、(b)強化剤としての脂肪族ポリケトン、及び(c)硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を提供する。硬化性樹脂組成物は単独で使用されてもよいが、該組成物は強化繊維と組み合わされて繊維強化樹脂組成物を形成し、硬化して繊維強化複合材料物品を形成してもよい。驚くべきことに、脂肪族ポリケトン強化剤の存在は、複合材料物品が1次及び2次航空宇宙構造用途、並びに自動車、船及び鉄道車両を含む他の移動体における構造材料に特に適切な化学的及び機械的特性を示すことを可能にする場合があることが見出された。とりわけ、繊維強化複合材料物品は、良好な衝撃後の圧縮(CAI)、少なくとも190℃のガラス転移温度、及び高温・湿潤コンディショニング後に重要な機械的特性を保持する能力を示す場合がある。
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
用語「硬化する」、「硬化した」又は「硬化すること」若しくは「硬化する」のような類似の用語は、化学的架橋による熱硬化性樹脂の硬化を指す。用語「硬化性」は、組成物が該組成物を硬化した又は熱硬化性の有様又は状態にする条件に供されることが可能であることを意味する。
【0009】
用語「含むこと」及びその派生語は、いずれの更なる成分、工程又は手順の存在も、それらが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、排除することを意図するものではない。いずれの疑いも避けるために、本明細書に特許請求される全組成物は、反対の記載がない限り、用語「含むこと」の使用によりいずれかの更なる添加剤又は化合物を含む場合がある。対照的に、用語「から本質的になる」は、本明細書に現れる場合、操作性に本質的ではないものを除いて、いずれの後続の引用の範囲からも、いずれの他の成分、工程又は手順も排除し、用語「からなる」は、使用される場合、特に記述又は列挙されていない、いずれの成分、工程又は手順も排除する。用語「又は」は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個々に及びいずれかの組み合わせで指す。
【0010】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つの又は1つを超える(即ち、少なくとも1つの)、冠詞の文法的対象の指すために使用される。例として、「anエポキシ樹脂」は、1つのエポキシ樹脂又は1つを超えるエポキシ樹脂を意味する。
【0011】
表現「一態様では」、「一態様によれば」等は、一般に、その表現に続く特定の特徴、構造又は特性が、本開示の少なくとも1つの局面に含まれることを意味し、本開示の1つを超える態様に含まれる場合がある。重要なことに、このような表現は、必ずしも同じ態様を指すものではない。
【0012】
明細書が、成分又は特徴が含まれる「場合がある」、「できる」、「し得る」若しくは「可能性がある」又は特性を有すると述べる場合、その特定の成分又は特徴は、含まれ、又は特性を有する必要はない。
【0013】
本明細書で使用される用語「約」は、値又は範囲にある程度の変動性を可能にし得、例えば、「約」は、明示した値又は明示したした範囲の限界の10%以内、5%以内、又は1%以内である場合がある。
【0014】
範囲形式で表される値は、範囲の限界として明示的に引用された数値のみでなく、各数値及び下位範囲が明示的に引用されるが如く、その範囲内に包含される個々の数値又は下位範囲の全ても含むとして柔軟に解釈される必要がある。例えば、1~6等の範囲は、1~3、2~4、3~6等の、詳細に開示される下位範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5及び6を有すると見なすべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0015】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益を提供する場合がある態様を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で他の態様も好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい態様の引用は、他の態様が有用ではないことを示唆するものではなく、他の態様を本開示の範囲から排除することを意図するものではない。
【0016】
第1の態様によれば、本開示は、一般に(a)熱硬化性樹脂、(b)脂肪族ポリケトン、及び(c)硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
一態様において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂又はそれらの混合物である場合がある。特定の一態様では、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。
【0018】
一般に、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,476,748号に開示されているエポキシ含有化合物等の、いずれのエポキシ含有化合物も、本開示におけるエポキシ樹脂としての使用に適している。一態様によれば、エポキシ樹脂は、二官能性(従って2つのエポキシド基を有する)、三官能性(従って3つのエポキシド基を有する)、四官能性(従って4つのエポキシド基を有する)及びそれらの混合物から選択される。
【0019】
二官能性エポキシ樹脂の実例的な非限定例は:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びそれらの混合物である。
【0020】
三官能性エポキシ樹脂の実例的な非限定例は:パラ-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、メタ-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンベースのエポキシ樹脂、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-m-又は-5-アミノ-o-クレゾール型エポキシ樹脂、及び1,1,1-(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂である。
【0021】
四官能性エポキシ樹脂の実例的な非限定例は:N,N,N’,N’-テトラグリシジルメチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン及びテトラグリシジルグリコールウリルである。
【0022】
一態様において、硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の量は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約10重量%~約90重量%、又は約15重量%~約75重量%、又は約20重量%~約60重量%、又は約25重量%~約55重量%の量である場合がある。
【0023】
更に別の態様では、エポキシ樹脂は、少なくとも1つの三官能性エポキシ樹脂又は四官
能性エポキシ樹脂又はそれらの混合物と、少なくとも1つの二官能性エポキシ樹脂からなる場合がある。そのような態様では、二官能性エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中に、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約10重量%~40重量%、又は約12重量%~約25重量%、又は約15重量%~20重量%の量で存在する場合があり、三官能性エポキシ樹脂及び/又は四官能性エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物中に、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約15重量%~50重量%、又は約20重量%~約40重量%、又は約25重量%~35重量%の量で存在する場合がある。特定の一態様では、硬化性樹脂組成物は、二官能性樹脂を上記の量で、三官能性エポキシ樹脂を、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約5重量%~約30重量%の量で、及び四官能性エポキシ樹脂を約10重量%~約35重量%の量で含む場合がある。
【0024】
硬化性樹脂組成物はまた、強化剤としての脂肪族ポリケトンを含む。そのような脂肪族ポリケトンは、一酸化炭素及び少なくとも1つのエチレン性不飽和炭化水素の線状交互ポリマーであり、ポリマー主鎖に沿った芳香族基の非存在により区別される。いくつかの態様では、脂肪族ポリケトンは、エチレン性不飽和炭化水素の各分子について、一酸化炭素の1分子を実質的に含むであろう。
【0025】
同じ脂肪族ポリケトン中で、多数の異なるエチレン性不飽和炭化水素をモノマーとして使用することが可能である。一態様によれば、エチレン性不飽和炭化水素は、完全に脂肪族である化合物を含み、いくつかの態様では、約20個までの炭素原子、又は他の態様では、約10個までの炭素原子を有する場合がある。エチレン性不飽和炭化水素の非限定例は、エチレン、プロピレン、n-ブテン、n-オクテン、n-ドデセン、及び他のα-オレフィンを含む。従って、例えば、脂肪族ポリケトンは、一酸化炭素及びエチレンのコポリマー、又は一酸化炭素と、エチレンと、少なくとも3個の炭素原子の第2のエチレン性不飽和炭化水素、例えばプロピレンとの、ターポリマーである場合がある。更なるモノマーを使用することができ、尚、本明細書に記載される脂肪族ポリケトンの範囲内に含まれる。即ち、脂肪族ポリケトンは、エチレン性不飽和炭化水素モノマーの4、5又はそれを超える組み合わせから作製される場合がある。
【0026】
脂肪族ポリケトンがターポリマーである場合、ターポリマー中に、各単位についてエチレンの部分を組み込む少なくとも約2単位が存在し、これらは第2の又は続くエチレン性不飽和炭化水素の部分を組み込む。いくつかの態様では、第2のエチレン性不飽和炭化水素の部分を組み込む約10単位~約100単位が存在する場合がある。
【0027】
従って、脂肪族ポリケトンのポリマー鎖は、反復式-[CH2-CH2-CO]x-[G-CO]y-で表される場合があり、式中、Gは、エチレン性不飽和を介して重合した少なくとも3個の炭素原子のエチレン性不飽和炭化水素の部分であり、y:xの比は約0.5以下である。一酸化炭素及びエチレンのコポリマーが使用される場合、第2のエチレン性不飽和炭化水素は存在せず、脂肪族ポリケトンは、yが0である上記の式で表される。yが0以外、即ちターポリマーが使用される場合、[CH2-CH2-CO]単位及び[G-CO]単位は、ポリマー鎖全体にランダムに分布し、y:xの比は約0.01~約0.1である場合がある。いくつかの態様では、脂肪族ポリケトンは、約1000~約200,000又は約20,000~約90,000の数平均分子量を有する場合がある。他の態様では、脂肪族ポリケトンは、約50℃、又は約40℃未満、又は約35℃未満、又は約25℃未満のガラス転移温度を有する場合がある。
【0028】
脂肪族ポリケトンは、一酸化炭素とエチレン性不飽和炭化水素を、重合条件下で、触媒量の触媒(第VIII族金属の化合物(例えば、パラジウム、コバルト及びニッケル)、約6未満のpKaを有する非ハロゲン化水素酸のアニオン、及びリン、硫黄、ヒ素、又はアンチモンの二座配位子から形成される)の存在下、接触させることによって生成される
場合がある。重合の範囲は広範であるが、説明のために、適切な第VIII族金属化合物は酢酸パラジウムであり、適切なアニオンはトリフルオロ酢酸アニオン又はパラ-トルエンスルホン酸アニオンであり、適切な二座配位子は1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン又は1,3-ビス[ジ(2-メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンである。
【0029】
脂肪族ポリケトンの重合は、従来の重合条件下、典型的には高温及び高圧で行うことができる。重合は、不活性希釈剤、例えばメタノール又はエタノール等の低級アルコールの存在下、気相中又は液相中で行うことができる。反応関与体は、撹拌又は振盪等の従来の方法によって接触し得、反応の後、脂肪族ポリケトン生成物は、例えばデカンテーション又は濾過によって回収され得る。生成物は、触媒からの金属残渣を含む場合があり、これは残渣に選択的な溶媒との接触によって除去することができる。脂肪族ポリケトンの調製に関する更なる詳細は、例えば、各々の開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,808,699号;第4,868,282号;第4,761,449号;第4.885,328号;第4,921,897号;第4,935,304号;及び第5,648,117号に示されている。
【0030】
従って、一態様では、本開示の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約1重量%~約30重量%、又は約2重量%~約25重量%、又は約3重量%~約20重量%、又は約4重量%~約17.5重量%、又は約5重量%~約15重量%、又は更には約6重量%~約12.5重量%の量の脂肪族ポリケトンを含む場合がある。
【0031】
別の態様によれば、硬化性樹脂組成物の硬化は、そのような接着剤を硬化させることに関して当技術分野で公知のいずれかの化学材料の添加によって達成される場合がある。そのような材料は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応できる反応性部分を有する化合物であり、本明細書では「硬化剤(hardener)」と称されるが、硬化剤(curing
agent)、硬化剤(curatives)、活性剤、触媒又は促進剤として当業者に公知の材料も含む。特定の硬化剤は触媒作用によって硬化を促進するが、その他は樹脂の反応に直接参加し、樹脂の縮合、鎖延長及び/又は架橋によって形成される熱可塑性ポリマーネットワークに組み込まれる。硬化剤に応じて、有意な反応が起こるのに熱が必要であり又は必要でない場合がある。エポキシ樹脂用の硬化剤は、芳香族アミン、環式アミン、脂肪族アミン、アルキルアミン、ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシドから誘導され得るポリエーテルアミンを含むポリエーテルアミン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン(CAF)、酸無水物、カルボン酸アミド、ポリアミド、ポリフェノール、クレゾール及びフェノールノボラック樹脂、イミダゾール、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、第3級アミン、例えば三フッ化ホウ素及び三塩化ホウ素等のルイス酸複合体、並びにポリメルカプタンを含むがこれらに限定されない。上記の硬化剤のいずれかのエポキシ変性アミン生成物、マンニッヒ変性生成物、及びマイケル変性付加生成物も使用される場合がある。上述した硬化剤の全ては、単独又はいずれかの組み合わせで使用される場合がある。
【0032】
一態様において、硬化剤は、多官能性アミンである。本明細書で使用される用語「多官能性アミン」は、少なくとも2つの第1級及び/又は第2級アミノ基を分子内に有するアミンを指す。例えば、多官能性アミンは、オルト、メタ及びパラのいずれか1つの位置関係でベンゼンに結合した2つのアミノ基を有する芳香族多官能性アミン、例えばフェニレンジアミン、キシレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン及び3,5-ジアミノ安息香酸、脂肪族多官能性アミン、例えばエチレンジアミン及びプロピレンジアミン、脂環式多官能性アミン、例えば1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3-ビスピペリジルプロパン及び4-アミノメチルピペラジン等である場合がある。これらの多官能性アミンは、
単独で又はそれらの混合物で使用される場合がある。
【0033】
例示的な芳香族アミンは、1,8ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、ジエチレングリコールトルエンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4'-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]ビスアニリン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを含むがこれらに限定されない。更に、芳香族アミンは、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,427,802号及び第4,599,413号に開示されている複素環式多官能性アミン付加物を含む場合がある。
【0034】
環式アミンの例は、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、m-キシレンジアミン、イソホロンジアミン、メンテンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)-フェノール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾールを含むが、これらに限定されない。
【0035】
例示的な脂肪族アミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)-プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン;3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、及びテトラメチル-エチレンジアミン;エチレンジアミン;3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルアミン);アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、及びポリオキシプロピレントリアミンを含むが、これらに限定されない。
【0036】
例示的なアルキルアミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン及びジ-2-エチルヘキシルアミンを含むが、これらに限定されない。
【0037】
例示的な酸無水物は、シクロヘキサン-l,2-ジカルボン酸無水物、l-シクロキセン-l,2-ジカルボン酸無水物、2-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、l-メチル-2-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-メチル-4-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、コハク酸無水物、4-メチル-1-シクロキセン-1,2
-ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック(nadic)メチル無水物、ドデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物及びそれらのいずれかの誘導体又は付加物を含むが、これらに限定されない。
【0038】
例示的なイミダゾールは、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-イソプロピル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1,2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチルイミダゾール及び1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾールを含むが、これらに限定されない。
【0039】
例示的な置換グアニジンは、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン及びシアノグアニジン(ジシアンジアミド)である。言及される場合があるグアナミン誘導体の代表は、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂又はメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンである。置換尿素は、p-クロロフェニル-N、N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1、1-ジメチル尿素(フェヌロン)又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)を含む場合がある。
【0040】
例示的な第3級アミンは、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-ベンジルアミン、ピリジン、メチルピペリジン、メチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、モルホリンの誘導体、例えばビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン、ビス(2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノ)エチル)-(2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノ)エチル)アミン、トリス(2-(4-モルホリノ)エチル)アミン、及びトリス(2-(4-モルホリノ)プロピル)アミン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、並びにアミジン結合を有する複素環式化合物、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含むが、これらに限定されない。
【0041】
アミン-エポキシ付加物は、当技術分野で周知であり、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,756,984号、第4,066,625号、第4,268,656号、第4,360,649号、第4,542,202号、第4,546,155号、第5,134,239号、第5,407,978号、第5,543,486号、第5,548,058号、第5,430,112号、第5,464,910号
、第5,439,977号、第5,717,011号、第5,733,954号、第5,789,498号、第5,798,399号及び第5,801,218号に記載されている。このようなアミン-エポキシ付加物は、1つ以上のアミン化合物と1つ以上のエポキシ化合物の間の反応の生成物である。好ましくは、付加物は、室温でエポキシ樹脂に不溶性であるが、加熱により可溶性となり、硬化速度を増加させるための促進剤として機能する固体である。いずれのタイプのアミンも使用することができるが(複素環式アミン、及び/又は少なくとも1つの第2級窒素原子を含むアミンが好ましい)、イミダゾール化合物が特に好ましい。実例的なイミダゾールは、2-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等を含む。他の適切なアミンは、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾール、プリン、及びトリアゾールを含むがこれらに限定されない。付加物用の他方の出発材料として、一官能性、及び、エポキシ樹脂成分について前述したもの等の多官能性エポキシ化合物を含む、いずれの種類のエポキシ化合物も使用することができる。
【0042】
一態様において、本開示の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約5重量%~約60重量%、又は約10重量%~約50重量%、又は約15重量%~約45重量%、又は約20重量%~約40重量%の量の硬化剤を含む場合がある。
【0043】
別の態様では、硬化性樹脂組成物は、脂肪族ポリケトン以外の更なる強化剤を含む場合がある。そのような更なる強化剤の例は、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド(PPO)、変性PPO及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの態様では、硬化性組成物中に存在するそのような更なる強化剤の量は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約0.5重量%~約30重量%、又は約1重量%~約25重量%、又は約2重量%~約20重量%又は約5重量%~約15重量%の量である場合がある。
【0045】
更に別の態様では、硬化性樹脂組成物は、それらの意図される使用に有用な1つ以上の他の添加剤も含む場合がある。例えば、有用な任意的な添加剤は、希釈剤、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、離型剤、艶消し剤、脱ガス剤、熱可塑性粒子(例えば、カルボキシル末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(CTBN)、アクリル末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(ATBN)、エポキシ末端液体ブタジエンアクリロニトリルゴム(ETBN)、エラストマーの液体エポキシ樹脂(LER)付加物、及び予備成形されたコアシェルゴム)、硬化開始剤、硬化阻害剤、湿潤剤、加工助剤、蛍光化合物、UV安定剤、抗酸化剤、耐衝撃性改良剤、腐食防止剤、粘着付与剤、高密度微粒子充填剤(例えば、天然に存在する様々な粘土、例えばカオリン、ベントナイト、モンモリロナイト又は修飾モンモリロナイト、アタパルジャイト及びBuckminsterfullerの土;他の天然に存在する又は天然由来の材料、例えば雲母、炭酸カルシウム及び炭酸アルミニウム;様々な酸化物、例えば酸化第二鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素(例えば、砂);様々な人工材料、例えば沈降炭酸カルシウム;並びに様々な廃棄材料、例えば破砕溶鉱炉スラグ)、導電性粒子(例えば、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、並びに炭素及びカーボンナノチューブの導電性グレード)並びにそれらの混合物を含む場合があるが、これらに限定されない。
【0046】
存在する場合、硬化性樹脂組成物に含まれる添加剤の量は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、少なくとも約0.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%の量である場合がある。他の態様では、硬化性樹脂組成
物に含まれる添加剤の量は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準として、約30重量%以下、又は25重量重量%以下、又は20重量%以下又は15重量%以下である場合がある。
【0047】
硬化性樹脂組成物は、例えば、個々の成分を予備混合した後、これらのプレミックスを混合することによって、又は、全ての成分を慣習的な装置、例えば撹拌容器、撹拌棒、ボールミル、サンプルミキサー、静的ミキサー、高剪断ミキサー、リボンブレンダーを使用して、若しくはホットメルティングによって一緒に混合することによって調製される場合がある。
【0048】
従って、別の態様によれば、本開示の硬化性樹脂組成物は、約10重量%~約90重量%のエポキシ樹脂と、約1重量%~約30重量%の脂肪族ポリケトンと、約5重量%~約60重量%の硬化剤を一緒に混合することによって調製される場合があり、ここで重量%は、硬化性樹脂組成物の総重量を基準とする。
【0049】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、脂肪族ポリケトン及び硬化剤を前述した割合で混合した後、硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、本開示の硬化性樹脂組成物から形成することができる。いくつかの態様では、一般に、急速な硬化を得るために、組成物を高温で加熱する必要がある場合がある。成型プロセス、例えば繊維強化複合材料物品の作製のためのプロセスでは、硬化性樹脂組成物は、鋳型内に収容される場合があるいずれかの強化繊維及び/又はインサートと共に、鋳型内に導入される場合がある。硬化温度は、例えば、約60℃~約190℃までである場合がある。長い(少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間)ゲル時間が望ましい場合、硬化温度は、好ましくは150℃以下である。長いゲル時間と短い離型時間の両方を望む場合、適切な硬化温度は、約100℃~約150℃、好ましくは110~150℃、特に120~150℃である場合がある。いくつかの態様では、得られる複合材料が、硬化温度を超えるガラス転移温度に達するまで、硬化を継続することが好ましい場合がある。離型時のガラス転移温度は、少なくとも約100℃、又は少なくとも約110℃、又は少なくとも約120℃又は更には少なくとも約130℃である場合がある。約95℃~約120℃、特に約105℃~約120℃の硬化温度での離型時間は、典型的には350秒以下、好ましくは300秒以下、及びより好ましくは240秒以下である。
【0050】
従って、一態様によれば、一般に:(i)強化繊維を鋳型内で硬化性樹脂組成物と接触させて、強化繊維を被覆及び/又は含浸する工程と;(ii)被覆及び/又は含浸した強化繊維を、少なくとも約120℃又は少なくとも約170℃~約190℃の温度で硬化させる工程とを含む、繊維強化複合材料物品の製造のためのプロセスが提供される。
【0051】
従って、高性能の複合材料材料及びプレプレグを作製するために、強化繊維を硬化性樹脂組成物と組み合わせて繊維強化樹脂組成物を形成する場合があり、この組成物は次いで硬化される場合がある。硬化性樹脂組成物は、既知のプレプレグ製造技術のいずれかに従って強化繊維と組み合わされる場合がある。強化繊維は、硬化性樹脂組成物で完全又は部分的に含浸される場合がある。代わりの態様では、硬化性樹脂組成物は、別個の層として強化繊維に適用される場合があり、該層は、強化繊維に近接し、及び強化繊維と接触しているが、強化繊維を実質的に含浸しない。プレプレグは、典型的には保護フィルムで両面を覆われ、典型的には時期尚早の硬化を避けるために室温よりかなり低く保たれた温度での保管及び出荷のために巻き上げられる。所望により、他のプレプレグ製造プロセス及び保管/出荷システムのいずれかを使用する場合がある。
【0052】
適切な強化繊維は、高い引張強度、例えば500ksi(即ち3447MPa)を超える引張強度を有する繊維を含む場合があるがこれに限定されない。この目的に有用な繊維は、炭素又はグラファイト繊維、ガラス繊維、及び炭化ケイ素、アルミナ、ホウ素、石英
から形成される繊維等、並びに、例えばポリオレフィン、ポリ(ベンゾチアゾール)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、ポリアリレート、ポリ(ベンゾオキサゾール)、芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテル等の有機ポリマーから形成された繊維を含み、そのような繊維の2つ以上を有する混合物を含む場合がある。好ましくは、繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び芳香族ポリアミド繊維から選択される。強化繊維は、多数のフィラメントから構成される不連続又は連続トウの形態で、連続一方向若しくは多方向テープとして、又は織布、ノンクリンプト(noncrimped)織物、若しくは不織布として、使用される場合がある。織布形態は、平織、繻子、又は斜文織様式から選択される場合がある。ノンクリンプト織物は、多数のプライ及び繊維配向を有する場合がある。
【0053】
強化繊維は、サイジングされ又はされない場合があり、繊維強化樹脂組成物の総重量を基準として、約50重量%~約90重量%、好ましくは少なくとも55重量%の含有率で存在する場合がある。構造用途の場合、繊維強化樹脂組成物の全体積を基準として、特に30体積%~70体積%、より特には50体積%~7体積%の連続繊維、例えばガラス又は炭素繊維を使用することが好ましい。
【0054】
繊維強化複合材料物品を形成するために、複数の硬化性、可撓性プレプレグプライを工具上に積み重ねの連続で積層してプレプレグレイアップを形成する場合がある。レイアップ内のプレプレグプライは、互いに対して、例えば0°、±45°、90°等の選択された配向で配置される場合がある。プレプレグレイアップは、ハンドレイアップ、自動テープ積層(ATL)、先進繊維配置(AFP)、及びフィラメントワインディングを含む場合があるがこれらに限定されない技術によって製造される場合がある。
【0055】
各プレプレグは、その体積の少なくとも一部分内で硬化性樹脂組成物を含浸させた強化繊維のシート又は層から構成されている。一態様において、プレプレグは、プレプレグの全体積を基準として、約0.50~0.60の繊維体積分率を有する。
【0056】
航空宇宙構造の製造に有用なプレプレグは、通常、一方向強化繊維、典型的には炭素繊維の樹脂含浸シートであり、これは多くの場合、「テープ」又は「一方向テープ」又は「ユニテープ(unitape)」と称されている。プレプレグは、完全含浸プレプレグ又は部分含浸プレプレグである場合がある。強化繊維を含侵する硬化性樹脂組成物は、部分的に硬化した又は未硬化状態にある場合がある。
【0057】
典型的には、プレプレグは、積層し及び3次元構造に成型した後、硬化させて最終的な繊維強化複合材料部分となる準備が整っている柔軟性又は可撓性形態にある。このタイプのプレプレグは、耐荷重構造部分、例えば航空機の翼、胴体、隔壁及び操縦翼面の製造に特に適している。硬化プレプレグの重要な特性は、重量が減少した高い強度及び剛性である。
【0058】
上記のように、プレプレグレイアップの硬化は、一般に、約190℃まで、好ましくは約170℃~約190℃の範囲の高温で、及び逃げるガスの変形効果を抑制するため又はボイド形成を抑制するために高圧を用いて、適切には10bar(1MPa)まで、好ましくは3bar(0.3MPa)~7bar(0.7MPa)の範囲の圧力で行われる。好ましくは、硬化温度は、5℃/分まで、例えば2℃/分~3℃/分で加熱することによって達成され、9時間まで、好ましくは6時間まで、例えば2時間~4時間の必要な期間維持される。硬化性樹脂組成物中での触媒の使用により、さらに低い硬化温度が可能となる場合がある。圧力は全体を通して解放され得、温度は5℃/分まで、例えば3℃/分までで冷却することによって低下され得る。適切な加熱速度を用いて、約190℃~約350℃までの範囲の温度及び大気圧で後硬化を行う場合がある。
【0059】
被覆及び/又は含浸は、湿式法又はホットメルト法のいずれかによって作用する場合がある。湿式法の場合、硬化性樹脂組成物を最初に溶媒に溶解して粘度を低下させ、その後、強化繊維の被覆及び/又は含浸を行い、炉等を使用して溶媒を蒸発させる。ホットメルト法の場合、被覆及び/又は含浸は、強化繊維に硬化性樹脂組成物を直接被覆及び/又は含浸することによって行われる場合があり、該硬化性樹脂組成物は加熱されてその粘度が低下しており、又は代替的に、硬化性樹脂組成物の被覆フィルムを最初に剥離紙等の上に生成する場合があり、強化繊維の片面又は両面にフィルムを配置し、熱及び圧力を適用して被覆及び/又は含浸を達成する。
【0060】
更に別の態様では、一般に、反応射出成型(RIM)システムにおける繊維強化複合材料物品の製造方法が提供される。このプロセスは:a)強化繊維を含む繊維プレフォームを鋳型内に導入する工程と;b)硬化性樹脂組成物を鋳型内に射出する工程と;c)硬化性樹脂組成物を繊維プレフォームに含浸させる工程と;d)含浸させた繊維プレフォームを少なくとも約100℃又は少なくとも約150℃の温度で少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を生成する時間の間加熱する工程と;e)任意的に、部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を約100℃~約350℃の温度での後硬化操作に供する工程とを含む。
【0061】
代替的な態様では、本開示は一般に、真空樹脂含浸成型(VaRTM)システムにおける繊維強化複合材料物品の製造方法を提供する。このプロセスは:a)強化繊維を含む繊維プレフォームを鋳型内に導入する工程と;b)硬化性樹脂組成物を鋳型内に射出する工程と;c)鋳型内の圧力を低下させる工程と;d)鋳型をほぼその減圧に維持する工程と;e)硬化性樹脂組成物を繊維プレフォームに含浸させる工程と;f)含浸させた繊維プレフォームを少なくとも約100℃又は少なくとも約150℃の温度で少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を生成する時間の間加熱する工程と;任意的に、少なくとも部分的に硬化した繊維強化複合材料物品を約100℃~約350℃の温度での後硬化操作に供する工程とを含む。
【0062】
本発明のプロセスは、様々なタイプの航空宇宙構造及び自動車、鉄道及び船舶構造を含む、非常に様々な繊維強化複合材料物品の製造に有用である。航空宇宙構造の例は、1次及び2次航空宇宙構造材料(翼、胴体、隔壁、フラップ、補助翼、カウル、フェアリング、内装品等)、ロケットモーターケース、並びに人工衛星用の構造材料を含む。自動車構造の例は、垂直及び水平車体パネル(フェンダー、ドア外板、ボンネット、ルーフ外板、デッキリッド、テールゲート等)並びに自動車及びトラックシャーシ構成要素を含む。
【0063】
本発明の様々な態様の製造及び使用を上記に詳述してきたが、本発明は、非常に様々な特定の状況に具体化できる適用可能な本発明の多数の概念を提供することを理解するべきである。本明細書に論じた特定の態様は、本発明を製造及び使用するための特定の方法の実例にすぎず、本発明の範囲を定めるものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1
表1の「実施例1」に列挙した成分を使用して、例示的な樹脂配合物を調製した。配合物は、各エポキシ樹脂(Huntsman International LLC又はその関連会社から入手可能なAraldite(登録商標)GY 285、Araldite(登録商標)MY 0610、Araldite(登録商標)MY 721)を室温(即ち、約23℃)で一緒にブレンドした後、樹脂を70℃に加熱し、Virantage(登録商標)VW-10200 RFPとして市販されているポリエーテルスルホン(Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能)を加えることによって調製した。次いで、混合物を120℃に加熱し、真空を約30分間適
用してポリエーテルスルホンを溶解し、揮発性物質を除去した。次いで、この混合物を90℃に冷却し、表1に示される実施例1の残りの成分を樹脂中に徹底的に混合した。
【0065】
上述した例示的な配合物を一方向炭素繊維(12K、185グラム/m2、gsm)と共に使用してプレプレグを調製して、未硬化の全プレプレグ中の36重量%樹脂を達成した。未硬化レイアップを調製して、表1に示すラミネート特性についてASTM方法(下記に記載する)に従ってラミネートを試験した。レイアップを、典型的な製造技術を用いて、オートクレーブ内で約180℃の温度で2時間硬化させた。
【0066】
一方向レイアップを有し、約2.1mmの厚さを有するいくつかの12プライラミネートを形成し、以下の試験に供した:引張強度を測定するためのASTM D3039;圧縮強度を測定するためのASTM D6641;及び層間剪断強度を測定するためのASTM D2344。
【0067】
衝撃後の圧縮強度を測定するために、構造(+45、0、-45、+90)nに従うレイアップと、約5.5mm厚の厚さとを有する32プライのラミネートを、ASTM D7136に従って30Jで衝突させ、ASTM D7137に従って評価した。
【0068】
サンプルを100℃の水中に3日間浸した後、高温・湿潤機械的評価を行うことによって、複合材料の環境コンディショニングを行った。
比較例1~3
比較例1~3(比較例1、比較例2及び比較例3)を調製し、硬化させ、上述した実施例1と同じ方法で評価した。各プレプレグは、脂肪族ポリケトン強化剤を化学的にユニークな強化剤(即ち、ポリアミド/ナイロン、芳香族ポリケトン、及びコアシェルゴム)で置き換えることによって、異なる配合物を使用した。同じ炭素繊維及び製造方法を用いてプレプレグラミネートを生成した。同じASTM試験方法及びラミネート配向/厚さを用いて引張強度、圧縮強度、及び層間強度を評価した。
【0069】
【0070】
表1を参照すると、ARADURE(登録商標)4,4’-DDSは、Huntsman International LLC又はその関連会社から入手可能なエポキシ硬化剤である。Ketoprix(登録商標)EK 63は、Esprix Technologiesから市販されているポリケトン強化剤である。Orgasol(登録商標)1002及びOrgasol(登録商標)3502は、Arkemaから市販されている球状ポリアミドである。Ketaspire(登録商標)KT 820 SFPは、Solvayから市販されている、補強されていないポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。Clearstrength(登録商標)XT 100は、Arkemaから市販されているメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(「MBS」)コアシェル添加剤粉末である。
【0071】
表1の結果は、高温・湿潤コンディショニングの後、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン及びコアシェルゴム強化剤を使用した比較例と比較して、脂肪族ポリケトンを使用した例示的な配合物の圧縮強度、特に圧縮及び層間剪断強度の明らかな増加を示す。加えて、衝撃後の圧縮強度により測定した高い耐損傷性が観察された。このより高い性能は、ガラス転移温度(Tg)、加工、又はプレプレグの粘着性等の他の有益な特性に悪影響を与えない。当業者は、本明細書に開示した硬化性樹脂組成物の様々な態様について同様の利益を期待するであろう。
【国際調査報告】