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特表2023-506187LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストとの併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストとの併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230208BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535539
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 US2020063976
(87)【国際公開番号】W WO2021119105
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】63/076,664
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/945,885
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/031,528
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/110,692
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514076560
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522230026
【氏名又は名称】メルク・シャープ・エンド・ドーム・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヅージン
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】サスマン,ジャンゴ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、一般に、抗LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)を、抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストと組み合わせて投与することを含む、LIV-1発現がんを治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有するか、またはがんのリスクがある対象を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)ならびに抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体からなる群から選択されるPD-1アンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記対象が、乳がんを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER2陽性乳がん、またはホルモン受容体陽性がんである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、トリプルネガティブ乳がんを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、肺がん、子宮頸がん、黒色腫、または扁平上皮細胞がんを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、以前に細胞傷害性療法を受けていない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.5mg/kgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.0mg/kgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに1回投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記LIV-1-ADCが、静脈内注射によって投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PD-1アンタゴニストが、ペムブロリズマブまたはニボルマブからなる群から選択される抗PD-1抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記PD-1アンタゴニストが、抗PD-1抗体のペムブロリズマブである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記PD-1アンタゴニストが、抗PD-1抗体のペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、100~300mgの投与量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗PD-1抗体が、静脈内注入によって投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
トリプルネガティブ乳がんを有するか、またはトリプルネガティブ乳がんのリスクがある対象を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)ならびに抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体からなる群から選択されるPD-1アンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記対象が、切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、以前に細胞傷害性療法を受けていない、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kg~4.0mg/kgの投与量で投与される、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.5mg/kgの投与量で投与される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.0mg/kgの投与量で投与される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに1回投与される、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体が、モノクローナル抗LIV-1抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記LIV-1-ADCの前記抗LIV-1抗体が、ヒト化hLIV22抗体を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記LIV-1-ADCの前記抗LIV-1抗体が、
i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、
ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体薬物複合体が、モノメチルオーリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチン(ladiratuzumab vedotin)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
(i)前記抗PD-1抗体が、ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)前記抗PD-1抗体が、ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)前記抗PD-1抗体が、ニボルマブであるか、(iv)前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであるか、または(v)前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブバリアントである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブまたはニボルマブである、請求項20~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブである、請求項20~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、100~300mgの投与量で投与される、請求項20~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗PD-1抗体が、静脈内注入によって投与される、請求項20~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、PD-L1、PD-L2、またはPD-L1およびPD-L2の両方を発現する1つ以上の細胞を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、2.5mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、2.0mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、1.0mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、1.25mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ペムブロリズマブが、3週間ごとに1回、200mgの用量で投与される、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに1回投与される、請求項43~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、請求項43~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記LIV-1-ADCが、約30分の期間にわたる静脈内注入によって投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗PD-1抗体が、静脈内注入によって、約30分または約60分の持続期間にわたって投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
デノボ転移性トリプルネガティブ乳がんを有する対象を治療するための方法であって、前記方法が、前記対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)ならびに抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体からなる群から選択されるPD-1アンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記対象が、以前に細胞傷害性療法を受けていない、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kg~4.0mg/kgの投与量で投与される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される、請求項52または54に記載の方法。
【請求項56】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される、請求項52または54に記載の方法。
【請求項57】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.5mg/kgの投与量で投与される、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.0mg/kgの投与量で投与される、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに1回投与される、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体が、モノクローナル抗LIV-1抗体である、請求項52~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記LIV-1-ADCの前記抗LIV-1抗体が、ヒト化hLIV22抗体を含む、請求項52~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記LIV-1-ADCの前記抗LIV-1抗体が、
i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、
ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、を含む、請求項52~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗体薬物複合体が、モノメチルオーリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む、請求項52~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記プロテアーゼ切断可能リンカーが、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンである、請求項52~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
(i)前記抗PD-1抗体が、ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)前記抗PD-1抗体が、ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)前記抗PD-1抗体が、ニボルマブであるか、(iv)前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであるか、または(v)前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブバリアントである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブまたはニボルマブである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、100~300mgの投与量で投与される、請求項68~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記抗PD-1抗体が、静脈内注入によって投与される、請求項52~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記がんが、PD-L1、PD-L2、またはPD-L1およびPD-L2の両方を発現する1つ以上の細胞を含む、請求項52~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、2.5mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、2.0mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、1.0mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記LIV-1-ADCが、ラジラツズマブベドチンであり、1.25mg/kgで投与され、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される、請求項52~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記ペムブロリズマブが、3週間ごとに1回、200mgの用量で投与される、請求項74~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに1回投与される、請求項74~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、請求項74~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記LIV-1-ADCが、約30分の期間にわたる静脈内注入によって投与される、請求項52~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記抗PD-1抗体が、静脈内注入によって、約30分または約60分の持続期間にわたって投与される、請求項52~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
対象にLIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)を投与することを含む、転移したまたは転移のリスクがある固形腫瘍を治療する方法であって、前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される、方法。
【請求項84】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記固形腫瘍が、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃/食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮細胞がん、および頭頸部扁平上皮細胞がんからなる群から選択される、請求項83~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
対象にLIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)を投与することを含む、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃/食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮細胞がん、および頭頸部扁平上皮細胞がんからなる群から選択される固形腫瘍を治療する、方法。
【請求項88】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記LIV-1-ADCが、毎週1回投与される、請求項83~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記LIV-1-ADCが、前記対象の体重の2.0~2.5mg/kgの用量で投与される、請求項83または87に記載の方法。
【請求項93】
前記LIV-1-ADCが、3週間ごとに投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療が、腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞、樹状細胞、および/またはマクロファージのレベルを増加させる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療が、前記腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるマクロファージの前記レベルを増加させる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療が、前記腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞の前記レベルを増加させる、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療が、前記腫瘍および/または腫瘍微小環境における樹状細胞の前記レベルを増加させる、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療が、腫瘍の細胞における免疫活性化遺伝子の発現を増加させる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
免疫活性化遺伝子が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、および樹状細胞からなる群から選択される細胞内にある、請求項98に記載の方法。
【請求項99】
前記免疫活性化遺伝子が、MHC遺伝子、サイトカイン遺伝子、ケモカイン遺伝子、レクチン遺伝子、SIGLEC1、MS4A4A、CD163、CXCL12、IL-18、および/またはAPOEである、請求項98または99に記載の方法。
【請求項100】
前記免疫活性化遺伝子が、HLA-DMA、HLA-DOAおよびIL-18である、請求項99に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/945,885号、2020年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/031,528号、2020年9月10に出願された米国仮特許出願第63/076,664号、および2020年11月6日に出願された米国仮特許出願第63/110,692号に対する優先権の利益を主張するものであり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表を明細書と同時にテキストファイルとして提出する。配列表を含むテキストファイルの名称は、「55109_Seqlisting.txt」であり、これは2020年12月7日に作成され、サイズは31,310バイトである。配列表の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、一般に、LIV-1-ADCおよび抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストを投与することを含む、がんの治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
LIV-1は、亜鉛トランスポータータンパク質のLZT(LIV-1-ZIP亜鉛トランスポーター)サブファミリーのメンバーである。Taylor et al.,Biochim.Biophys.Acta 1611:16-30(2003)。LIV-1タンパク質のコンピューター解析は、亜鉛メタロプロテアーゼの触媒亜鉛結合部位モチーフのコンセンサス配列に適合する可能性のあるメタロプロテアーゼモチーフを明らかにする。LIV-1 mRNAは、主に乳房、前立腺、下垂体、および脳組織で発現される。
【0005】
LIV-1タンパク質は、乳がんおよび前立腺がんなどの特定のがん性状態にも関係している。LIV-1の検出は、エストロゲン受容体陽性の乳がんに関連しており(McClelland et al.,Br.J.Cancer 77:1653-1656(1998))、これらのがんの局所リンパ節への転移性の広がりに関与している。Manning et al.,Eur.J.Cancer 30A:675-678(1994)。
【0006】
SGN-LIV1Aは、3つの成分:1)ヒトLIV-1に特異的なヒト化抗体hLIV22、2)微小管破壊剤モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、および3)MMAEをhLIV22に共有結合させる安定したリンカーであるバリン-シトルリン(vc)からなる、LIV-1に向けられた抗体薬物複合体(ADC)である。提案された作用機序(MOA)は、SGN-LIV1Aが細胞表面のLIV-1に結合し、続いてADCが内在化することによって模倣される。リソソームに輸送されると、送達された薬物(MMAE)は、vcリンカーのタンパク質分解によって放出される。放出された薬物がチューブリンに結合すると、微小管ネットワークが破壊され、細胞周期の停止およびアポトーシスを引き起こす。SGN-LIV1Aは、ラジラツズマブベドチン(Ladiratuzumab Vedotin)(LV)としても知られている。ラジラツズマブベドチンによる治療は、有糸分裂の停止、マクロファージの浸潤、およびサイトカインシグナル伝達の上方調節に関連している(Specht et al.,Ann Oncol.2018;29(Suppl 8):viii92)。
【0007】
SGN-LIV1Aは、インビボで腫瘍体積を減少させることが示されており、現在、LIV-1陽性転移性乳がん患者を対象とした第1相臨床試験で評価されている。前臨床報告は、LV単剤療法による治療が免疫原性細胞死(ICD)を誘発することを示している(Schmid et al.,N Engl J Med.2018;379(22):2108-21)。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、がん、例えば、LIV-1発現またはチェックポイントタンパク質発現がんを治療するために、PD-1アンタゴニストと組み合わせて抗LIV1抗体薬物複合体を投与することを含む、がん、特に乳がんを治療するための方法を提供する。
【0009】
様々な実施形態では、本開示は、がんを有するか、またはがんのリスクがある対象を治療するための方法を提供し、この方法は、対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)および抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体からなる群から選択されるPD-1アンタゴニストを投与することを含む。
【0010】
様々な実施形態では、対象は乳がんを有する。一実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER2陽性乳がん、またはホルモン受容体陽性がんである。一実施形態では、対象はトリプルネガティブ乳がんを有している。様々な実施形態では、対象は、切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有している。
【0011】
様々な実施形態では、本開示は、トリプルネガティブ乳がんを有するか、またはがんのリスクがある対象を治療するための方法を提供し、この方法は、対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)および抗PD-1アンタゴニストを投与することを含み、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0012】
デノボ転移性トリプルネガティブ乳がんを有する対象を治療するための方法がさらに企図され、この方法は、対象に、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)およびPD-1アンタゴニストを投与することを含み、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0013】
様々な実施形態では、対象は、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、肺がん、子宮頸がん、黒色腫、または扁平上皮細胞がんを有する。
【0014】
様々な実施形態では、対象は、以前に細胞傷害性療法を受けたことがない。
【0015】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.5mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.75mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の2.0mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の2.5mg/kgの投与量で投与される。
【0016】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、毎週1回投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、3週間ごとに1回投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、静脈内注射によって投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、静脈内注入によって投与される。様々な実施形態では、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニスト療法は、少なくとも3サイクル、および最大6、8、または10サイクル、例えば、3~6サイクル、または3~8サイクル、または3、4、5、6、7、8、9もしくは10サイクルの間投与される。様々な実施形態では、サイクルは3週間のサイクルである。
【0017】
様々な実施形態では、PD-1アンタゴニストは、ペムブロリズマブまたはニボルマブからなる群から選択される抗PD-1抗体である。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体のペムブロリズマブである。様々な実施形態では、ペムブロリズマブは、100~300mgの投与量で、例えば、3週間ごとに1回投与される。
【0018】
様々な実施形態では、PD-1アンタゴニストは、静脈内注入によって投与される。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、静脈内注入によって3週間ごとに投与される。
【0019】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、モノクローナル抗LIV-1抗体である。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、ヒト化hLIV22抗体を含む。
【0020】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)hLIV22抗体の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と、ii)hLIV22抗体の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と、を含む。
【0021】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と、を含む。可変領域バリアント抗体は、親抗体の重鎖および軽鎖CDR配列を保持することが企図される。
【0022】
様々な実施形態では、抗体薬物複合体は、モノメチルオーリスタチンEおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含む。様々な実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性スペーサーおよびジペプチドを含む。様々な実施形態では、プロテアーゼ切断可能リンカーは、チオール反応性マレイミドカプロイルスペーサー、バリン-シトルリンジペプチド、およびp-アミノ-ベンジルオキシカルボニルスペーサーからなる。
【0023】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、ラジラツズマブベドチンである。
【0024】
様々な実施形態では、(i)抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)抗PD-1抗体は、ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)抗PD-1抗体は、ニボルマブであるか、または(iv)抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブである。
【0025】
様々な実施形態では、(i)抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)抗PD-1抗体は、ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)抗PD-1抗体は、ニボルマブであるか、(iv)抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブであるか、または(v)抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブバリアントである。
【0026】
ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブまたはニボルマブである。
【0027】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブである。様々な実施形態では、抗PD-1抗体はペムブロリズマブであり、100~300mgの投与量で3週間ごとに投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間ごとに200mgの投与量で投与される。
【0028】
様々な実施形態では、LIV1-ADCは、静脈内注入によって、約30分の期間にわたって投与される。様々な実施形態では、抗PD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1抗体は、静脈内注入によって、約30分または約60分の持続期間にわたって投与される。
【0029】
様々な実施形態では、がんは、PD-L1、PD-L2、またはPD-L1およびPD-L2の両方を発現する1つ以上の細胞を含む。様々な実施形態では、腫瘍のPD-L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。
【0030】
様々な実施形態では、腫瘍細胞の少なくとも約0.01%、少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%がLIV-1を発現する。
【0031】
様々な実施形態では、LIV-1発現は、米国食品医薬品局(FDA)承認試験によって測定される。
【0032】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、ラジラツズマブベドチンであり、2.5mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間ごとに200mgの用量で投与される。別の実施形態では、ペムブロリズマブは、6週間ごとに400mgの用量で投与される。
【0033】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、ラジラツズマブベドチンであり、2.0mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間ごとに1回、200mgの用量で投与される。別の実施形態では、ペムブロリズマブは、6週間ごとに400mgの用量で投与される。
【0034】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、ラジラツズマブベドチンであり、1.0mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間ごとに1回、200mgの用量で投与される。別の実施形態では、ペムブロリズマブは、6週間ごとに400mgの用量で投与される。
【0035】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、ラジラツズマブベドチンであり、1.25mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブであり、3週間ごとに1回、1~2mg/kg、または100~300mgの用量で投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間ごとに1回、200mgの用量で投与される。別の実施形態では、ペムブロリズマブは、6週間ごとに400mgの用量で投与される。
【0036】
様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストと組み合わせて投与される場合、3週間ごとに与えられる。
【0037】
様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストと組み合わせて投与される場合、毎週1回与えられる。
【0038】
様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、3週間サイクルの1日目、8日目、および15日目に投与され、ペムブロリズマブは、各3週間サイクルの1日目に投与される。様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、3週間サイクルの1日目、8日目、および15日目に1.0mg/kgまたは1.25mg/kgで投与され、ペムブロリズマブは、各3週間サイクルの1日目に200mgで投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、3週間サイクルの1日目、8日目、および15日目に1.75mg/kgの投与量で投与され、任意選択的に、ペムブロリズマブは、各3週間サイクルの1日目に200mgで投与される。
【0039】
対象にLIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)を投与することを含む、転移したまたは転移のリスクがある固形腫瘍を治療する方法も提供され、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kgの投与量で、または対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される。
【0040】
様々な実施形態では、固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃/食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮細胞がん、および頭頸部扁平上皮細胞がんからなる群から選択される。
【0041】
本明細書でさらに企図されるのは、対象にLIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC)を投与することを含む、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃/食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮細胞がん、および頭頸部扁平上皮細胞がんからなる群から選択される固形腫瘍を治療する方法である。
【0042】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kg~4mg/kgの投与量で投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の1.0mg/kgの投与量で、または対象の体重の1.25mg/kgの投与量で投与される。
【0043】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、対象の体重の2.0~2.5mg/kgの用量で投与される。
【0044】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、毎週1回または3週間ごとに1回投与される。
【0045】
様々な実施形態では、対象は、成人患者である。
【0046】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療は、腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞、樹状細胞、および/またはマクロファージのレベルを増加させる。様々な実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療は、腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるマクロファージのレベルを増加させる。様々な実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療は、腫瘍および/または腫瘍微小環境におけるCD8+T細胞のレベルを増加させる。様々な実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療は、腫瘍および/または腫瘍微小環境における樹状細胞のレベルを増加させる。様々な実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0047】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストによる治療は、例えば、腫瘍または腫瘍のより多く細胞において、免疫活性化遺伝子の発現を増加させる。免疫活性化遺伝子には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、および樹状細胞などの免疫細胞に関連する遺伝子が含まれる。様々な実施形態では、免疫活性化遺伝子は、MHC遺伝子、サイトカイン遺伝子、ケモカイン遺伝子、レクチン遺伝子、SIGLEC1、MS4A4A、CD163、CXCL12、IL-18、および/またはAPOEである。様々な実施形態では、免疫活性化遺伝子は、HLA-DMA、HLA-DOAおよびIL-18である。
【0048】
本明細書では、治療の方法を伴う上記に記載される開示のすべての態様が、上記に記載される適応症のいずれかにおける使用のための抗LIV-1抗体薬物複合体併用療法に適用可能であることが具体的に提供される。
【0049】
本明細書に記載される、各特徴もしくは実施形態、または組み合わせは、本開示の態様のいずれかの非限定的で例示的な例であり、そのようなものとして、本明細書に記載される、任意の他の特徴もしくは実施形態、または組み合わせと組み合わせ可能であることを意味することが理解される。例えば、特徴が、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「ある特定の実施形態」、「さらなる実施形態」、「具体的な例示的な実施形態」、および/または「別の実施形態」などの言葉を用いて説明される場合、これらの種類の実施形態の各々は、あらゆる可能な組み合わせを列挙する必要なく、本明細書に説明される何らかの他の特徴または特徴の組み合わせと組み合わされることが意図される特徴の非限定的な例である。そのような特徴または特徴の組み合わせは、本開示の態様のいずれかに適用される。範囲内に収まっている値の例が開示される場合、これらの例はいずれも、ある範囲に関する可能な終点として企図されており、このような終点の間の任意かつすべての数値が企図されており、上限終点および下限終点のありとあらゆる組み合わせが想定されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】ベースラインからの変化%で測定した、治療を受けた患者の腫瘍組織量の最大変化を示す。
図2】腫瘍組織量の経時変化(ベースラインからの変化%)を示す。
図3図3Aおよび図3Bは、以前に治療を受けたことがないデノボ患者(図3B)と比較して、以前に療法を受けた(図3A、以前の(ネオ)アジュバント療法)対象におけるLIV1-ADC+ペムブロリズマブ治療の有効性を示す。
図4】LV単剤療法によって誘導された腫瘍組織で差次的に発現された遺伝子を示すボルケーノ(volcano)プロットである。
図5-1】図5A図5Cは、マクロファージ浸潤およびPD-L1発現の増加、ならびにLV単剤療法によるMHCおよび共刺激分子の誘導を示す。図5A:CD68 IHCの結果(腫瘍間質におけるCD68に対して陽性細胞の%)を示す要約グラフであり、p=9.1e-07である。図5B:評価可能な試料を含むすべてのLVA-001患者のPD-L1 CPSスコア(CD68についてはN=79であり、PD-L1についてはN=73である)であり、p=0.0068である。
図5-2】図5C:RNAseq解析による腫瘍組織におけるMHCII遺伝子(HLA-DRB1(FDR=3.76e-5)およびHLA-DQA1(FDR=0.005))ならびに共刺激分子(CD80(FDR=0.002)およびCD86(FDR=1.69e-6))の誘導を示す要約グラフである。
図6】LV+ペムブロリズマブによって誘導された腫瘍組織で差次的に発現された遺伝子を示すボルケーノプロットである。
図7-1】LVA-001(LVのみ)およびLVA-002(LV+ペムブロリズマブ)における腫瘍浸潤免疫細胞(マクロファージ、DC、およびCD8 T細胞)およびCD274(PD-L1)遺伝子発現に関するxCell分析(RNAseq)結果の比較を示す。xCell遺伝子シグネチャーについてのp値は、対応のあるt検定を使用して計算された。PD-L1の場合、FDRは、C1D5/C1D15とベースラインとを比較する差次的発現解析から導き出される。LVA-001についてはN=59であり、LVA-002についてはN=16である。
図7-2】図7-1の続き。
図8A図8Aおよび図8Bは、LVA-001およびLVA-002における腫瘍浸潤免疫細胞(CD3+T細胞およびCD68+マクロファージ)(図8A)ならびにCD8+T細胞およびCD274(PD-L1 CPS)(図8B)染色に関するIHC分析の比較を示す。P値は、R9の「コイン」順列フレームワークを使用してウィルコクソンの符号順位和によって計算された。治療中の生検は、LVA-001ではC1D5付近、LVA-002ではC1D5またはC1D15付近で採取された。
図8B図8Aの説明と同じ。
図9】RNAseqデータのxCell遺伝子シグネチャー解析が、CD4 T細胞(特にエフェクターメモリーCD4 T細胞)および従来のDC(cDC)に関連する遺伝子の誘導が臨床反応に関連することを示したことを表示する。P値は、2つのネスト線形モデルの尤度比検定を使用して計算された。
図10】MHCI遺伝子(HLA-DMAおよびHLA-DOA)およびIL-18の誘導が臨床反応に関連していることを示す。FDRは、2つのネストモデルのDESeqベースの尤度比検定によって生成されたp値の多重検定のBenjamini-Hochberg補正によって計算される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示は、PD-1アンタゴニストと組み合わせた抗LIV1抗体薬物複合体(LIV1-ADC)でがんを治療するための方法を提供する。本開示は、LIV1-ADC+PD-1アンタゴニスト併用療法ががんの治療において安全かつ有効であることを初めて示している。
【0052】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本開示で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994)、THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988)、THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、およびHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0053】
本明細書に引用される各刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示と矛盾しない範囲で、その全体が参照により組み込まれる。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「および」、ならびに「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「誘導体」への言及は、複数のこのような誘導体を含み、「対象」への言及は、1以上の対象への言及を含むなどである。
【0055】
様々な実施形態の説明が「を含む」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの具体的な例では、実施形態が「から本質的になる」または「からなる」という言葉を使用して代替的に説明されることができることを理解するであろうということはさらに理解されるべきである。
【0056】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者にとって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に説明するものと類似または同等の方法および材料は、開示された方法および組成物の実施において使用することができるが、例示的な方法、デバイス、および材料が、本明細書で説明される。
【0057】
本明細書で使用される「がん」は、特定のタイプの細胞、例えば、乳房細胞が異常な細胞増殖を示し、腫瘍、もしくは異常に分裂している細胞の大きな凝集をもたらす疾患または障害を指す。がんは、1つ以上の腫瘍、腫瘍を取り巻く腫瘍微小環境、ならびに1つの部位で初発の腫瘍から分離し、体の別の部分に移動または転移するがんもしくは腫瘍の細胞を包含する。
【0058】
「治療」とは、予防的治療または治療的治療または診断的治療を指す。ある特定の実施形態において、「治療」は、治療的、予防的または診断的目的のための対象への化合物または組成物の投与を指す。
【0059】
「予防的」治療は、病状を発症するリスクを減少させる目的で、疾患の徴候を示さないか、または疾患の初期徴候のみを示す対象に施される治療である。本開示の化合物または組成物は、病状を発症する可能性を低減するため、または病状が発症した場合はその重症度を最小限に抑えるための予防的治療として与えられ得る。
【0060】
「治療的」治療は、それらの徴候または症状を軽減または排除する目的で、病状の徴候または症状を示す対象に施される治療である。徴候または症状は、生化学的、細胞的、組織学的、機能的または物理的、主観的または客観的である可能性がある。
【0061】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象におけるLIV-1関連障害の1つ以上の臨床的もしくは診断的症状の発生を阻害するか、または改善するのに十分なLIV-1-ADC、例えば、SGN-LIV1Aの量を指す。有効量の薬剤は、本明細書に記載の「有効なレジメン」の方法に従って投与される。「有効なレジメン」という用語は、高いLIV-1占有率を維持するのに適切な薬剤の量および投薬頻度の組み合わせを指し、これは、LIV-1関連障害の治療または予防を達成し得る。好ましい実施形態では、有効なレジメンは、投与間隔の間、LIV-1発現細胞上でほぼ完全な、例えば、90%を超えるLIV-1占有率を維持する。有効量はまた、対象におけるPD-1/PD-L1関連障害の1つ以上の臨床的もしくは診断的症状の発生を阻害するか、または改善するのに十分なPD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1または抗PDL1抗体の量も指す。
【0062】
「細胞傷害性効果」は、標的細胞の枯渇、排除、および/または殺傷を指す。「細胞傷害性剤」は、細胞に対して細胞傷害性効果を有する薬剤を指す。細胞傷害性剤は、抗体に結合させるか、または抗体と組み合わせて投与されることができる。「細胞傷害性療法」は、細胞傷害性剤による治療を指す。
【0063】
「細胞増殖抑制効果」は、細胞増殖の阻害を指す。「細胞増殖抑制剤」は、細胞に対して細胞増殖抑制効果を有し、それにより細胞の特定のサブセットの成長および/または増殖を阻害する薬剤を指す。細胞増殖抑制剤は、抗体に結合させるか、または抗体と組み合わせて投与されることができる。
【0064】
本明細書で使用される「PD-1アンタゴニスト」は、がん細胞で発現されるPD-L1の免疫細胞(T細胞、Bc細胞またはNKT細胞)で発現されるPD-1への結合を遮断し、好ましくは、がん細胞で発現されるPD-L2の免疫細胞で発現されたPD-1への結合も遮断する、任意の化学的化合物または生物学的分子を指す。PD-1およびそのリガンドの別名または同義語としては、Pd-1についてはPDCD1、PD1、CD279およびSLEB2;PD-L1については、PDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274およびB7-H;ならびにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-Dc、BtdcおよびCD273が挙げられる。ヒト個体が治療されている治療方法および開示された使用のいずれにおいても、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断し、好ましくは、ヒトPD-L1およびPD-L2の両方のヒトPD-1への結合を遮断する。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI遺伝子座番号:NP005009に見出すことができる。ヒトPD-L1およびPD-L2アミノ酸配列は、それぞれ、NCBI遺伝子座番号:NP054862およびNP079515に見出すことができる。
【0065】
本明細書で使用される「チェックポイント阻害剤」という用語は、T細胞などの、いくつかのタイプの免疫系細胞、およびいくつかのがん細胞によって作製される特定のタンパク質を遮断する分子または治療剤を指す。これらのタンパク質は、免疫応答を抑制するのに役立ち、T細胞ががん細胞を殺滅するのを防止することができる。T細胞またはがん細胞上に見られるチェックポイントタンパク質の例は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CD28、CTLA-4、B7-1、B7-2(National Cancer Institute Dictionary of Cancer Termsを参照されたい)ならびにICOS、BTLA、TIM3およびLAG3が挙げられる。
【0066】
「プログラム死-1」(PD-1)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で発現し、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。完全ヒトPD-1配列は、GenBankアクセッション番号U64863下で見ることができる。
【0067】
「プログラム死リガンド-1」(PD-L1)およびPD-L2は、PD-1への結合後にT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方調節するPD-1の細胞表面リガンドである。完全ヒトPD-L1配列は、GenBankアクセッション番号Q9NZQ7下で見ることができる。
【0068】
「特異的結合」および「特異的に結合する」という用語は、本明細書に記載される抗体、例えば、抗LIV-1抗体または抗PD-1抗体が、非常に選択的な様式で、その対応する標的と反応し、他の多数の抗原とは反応しないことを意味する。
【0069】
「モノクローナル抗体」という用語は、何らかの真核生物または原核生物の細胞クローンを含む単細胞クローンに由来する抗体を指し、それが産生される方法を指すものではない。したがって、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を経て産生される抗体に限定されない。
【0070】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のない、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに好適である化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。「薬学的に適合性のある成分」という用語は、抗LIV-1抗体とともに投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0071】
「薬学的に許容される塩」という句は、本明細書に記載の抗体、例えば、抗LIV-1抗体もしくはその複合体、または抗LIV-1抗体もしくはLIV1-ADCとともに投与される薬剤の薬学的に許容される有機または無機塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、pトルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))の塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子の封入を伴い得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合には、複数の対イオンが発生し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子および/または1つ以上の対イオンを有することができる。「薬学的に適合性のある成分」という用語は、抗体-薬物複合体とともに投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0072】
特に記載のない限り、「対象」または「患者」という用語は互換的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、および他の動物などの実験動物を指す。したがって、本明細書で使用される「対象」または「患者」という用語は、本開示のLIV1-ADCを投与することができる任意の哺乳動物患者または対象を意味する。好ましい実施形態では、対象または患者という用語は、ヒトの患者を指すために使用される。本発明の対象には、例えば、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、肺がん、子宮頸がん、黒色腫、または扁平上皮細胞がんを含む、LIV-1発現がんと診断されたものが含まれる。ある特定の実施形態では、対象は、難治性もしくは再発性のLIV-1発現がんまたは転移性LIV-1発現がんを有するであろう。
【0073】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」組成物または方法は、具体的に引用されていない他の要素を含み得る。例えば、抗体を含む組成物は、抗体を単独で、または他の成分と組み合わせて含有することができる。
【0074】
「同一」または「同一性パーセント」という用語は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の状況において、最大の一致のために比較および整列したときに、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の明示した百分率を有する、2つ以上の配列もしくは部分配列を指す。同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較目的のために整列させられる(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。次に、相応のアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。最初の配列の位置が2番目の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複位置)×100)。ある特定の実施形態では、2つの配列は、同じ長さである。
【0075】
「実質的に同一」という用語は、2つの核酸またはポリペプチドの状況において、少なくとも70%または少なくとも75%の同一性、より典型的には、少なくとも80%または少なくとも85%の同一性、さらにより典型的には、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性(例えば、以下に明らかにされる方法のうちの1つを使用して決定されるように)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0076】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2264-2268のアルゴリズムであり、これは、Karlin and Altschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873-5877のように修正されている。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施して、目的のタンパク質をコードする核酸と相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施して、目的のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップのある整列を得るためには、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載のように、ギャップのあるBLASTを利用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用して、分子間の遠い関係を検出する反復検索を実施することができる(Id.)。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(第2.0版)に組み込まれている。配列分析のための追加のアルゴリズムは、当該技術分野で既知であり、Torellis and Robotti,1994,Comput.Appl.Biosci.10:3-5に記載のADVANCEおよびADAM、ならびにPearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444-8に記載のFASTAが挙げられる。あるいは、タンパク質配列のアラインメントは、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383-402に記載されているように、CLUSTAL Wアルゴリズムを使用して実行できる。
【0077】
「MMAE」という略語は、モノメチルオーリスタチンEを指す。
【0078】
「vc」および「val-cit」という略語は、ジペプチドのバリン-シトルリンを指す。
【0079】
「PAB」という略語は、自己犠牲スペーサーを指す。
【化1】
【0080】
本開示の抗体は、それらが含んでいる特定のCDRまたは可変領域に関して説明または明示されることができる。加えて、本開示の抗体はまた、それらの一次構造に関しても説明または明示され得る。本明細書に記載される可変領域と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも98%の同一性(当該技術分野で既知であり、かつ本明細書に記載の方法を使用して計算される)を有する抗体もまた本開示に含まれる。本方法の開示において有用な抗体はまた、それらの結合親和性に関して説明または明示され得る。好ましい結合親和性は、5×10M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M未満の解離定数またはKdを有するものを含む。
【0081】
抗体はまた、すなわち、共有結合が、抗体のLIV-1への結合を、または腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制性もしくは細胞傷害性効果を発揮するのを防止しないように、抗体への何らかの種類の分子の共有結合によって修飾された誘導体も含む。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合によって修飾されている抗体が含まれる。特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されない、多数の化学修飾のいずれかが、既知の技術によって実行されてもよい。加えて、誘導体は、1つ以上の非古典的なアミノ酸を含有してもよい。
【0082】
本明細書に記載される抗体は、当該技術分野で知られる任意の適切な方法によって生成され得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、LIV-1抗体薬物複合体(LIV-1-ADC;LV)は、細胞傷害性剤に結合されたヒトLIV-1タンパク質に特異的な抗体を含む。例示的なヒトLIV-1配列には、Swiss Protアクセッション番号Q13433が割り当てられている。Q13433は、配列番号1として本明細書に含まれる。3つのバリアントアイソフォームおよび1つの多型が知られている。ヒトLIV-1タンパク質の第2のバージョン、アクセッション番号AAA96258.2は、本明細書に配列番号2として含まれている。4つの細胞外ドメインは、それぞれQ13433の残基29~325、377~423、679~686、および746~755によって区切られている。
【0084】
SGN-LIV1Aは、ヒト化抗体hLIV22への薬物リンカーvcMMAE(バリン-シトルリンリンカ-を有するモノメチルオーリスタチンE)の結合によって生成されるLIV-1に向けられた抗体-薬物複合体(ADC)である。hLIV22は、米国特許第9,228,026号に記載されているマウスBR2-22a抗体のヒト化形態である。hLIV22抗体は、実験誤差の範囲内でBR2-22aと本質的に同じであり、7つの逆変異を含有する。hLIV22抗体を作製する方法は、米国特許第9,228,026号にも開示されている。hLIV22の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、本明細書において配列番号3として提供される。hLIV22の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、本明細書において配列番号4として提供される。
【0085】
hLIV22の可変領域と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも98%の同一性(当該技術分野で既知であり、かつ本明細書に記載の方法を使用して計算される)を有する抗体もまた本開示に含まれ、好ましくは、hLIV22のCDRを含む。
【0086】
様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)hLIV22抗体の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と、ii)hLIV22抗体の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と、を含む。
【0087】
様々な実施形態では、LIV1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも85%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、を含む。様々な実施形態では、LIV-1-ADCの抗LIV-1抗体は、i)配列番号4に記載される重鎖可変領域アミノ酸配列と、ii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域アミノ酸配列と、を含む。
【0088】
様々な実施形態では、抗LIV-1抗体は、LIV-1に結合するために、(i)配列番号4に記載される重鎖可変領域およびii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域を含む抗体と交差競合するか、またはLIV-1に結合するために、(ii)配列番号4に記載される重鎖可変領域およびii)配列番号3に記載される軽鎖可変領域を含む抗体と同じエピトープに結合する。
【0089】
薬物リンカーvcMMAE(以下に示す;1006とも呼ばれる)の合成および結合は、米国特許第9,228,026号および米国特許公開第2005/0238649号にさらに記載されている。
【化2】
【0090】
ラジラツズマブベドチンは、3つの成分:(i)ヒトLIV-1に特異的なヒト化抗体hLIV22、(ii)微小管破壊剤MMAE、および(iii)MMAEをhLIV22に共有結合させるプロテアーゼ切断可能なリンカーからなる、LIV-1に向けられた抗体薬物複合体である。薬物対抗体比または薬物負荷は、ラジラツズマブベドチンの構造では「p」によって表される。
【0091】
様々な実施形態では、LIV-1抗体薬物複合体は、ラジラツズマブベドチンである。
【0092】
化学療法剤およびLIV-1-ADCとの併用療法
がんは、LIV1-ADCとPD-1アンタゴニストとの組み合わせを使用して治療することができる。PD-1アンタゴニストの例としては、抗PD-1抗体(例えば、MED10680、AMP-224、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピジリズマブ)ならびに抗PD-L1抗体(例えば、MED14736およびMPDL3280A)などの抗体が挙げられる。WO2017/161007は、がんを治療するためのLIV-ADCと化学療法剤との組み合わせの使用について記載している。
【0093】
LIV1-ADCとの併用療法は、他のチェックポイント阻害剤と一緒に実行することもできると企図される。使用できる追加のチェックポイント阻害剤(免疫チェックポイントを遮断する阻害剤)の例としては、抗CTLA4抗体(例えば、イピリムマブおよびトレメリムマブ)、B7-DC-Fc、LAG3およびTIM3が挙げられる。WO2017/161007は、がんを治療するためのLIV-ADCと化学療法剤との組み合わせの使用を記載している。
【0094】
PD-1に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第8,008,449号、同第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号、同第8,354,509号、およびPCT公開第2012/145493号に開示されている。
【0095】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブである。ペムブロリズマブ(「KEYTRUDA(登録商標)」、ランブロリズマブ、MK-3475)は、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に向けられたヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペムブロリズマブは、例えば、PCT国際出願公開第2008/156712号に記載されており、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,pages 161-162(2013)に記載されている構造を有している。ペムブロリズマブは、再発した、または難治性黒色腫、および進行したNSCLCの治療についてFDAによって承認されている。様々な実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ペムブロリズマブと交差競合する。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブと同じエピトープに結合する。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブと同じCDRを有する。
【0096】
本明細書で使用される「ペムブロリズマブバリアント」は、軽鎖CDRの外側に位置する位置での3、2または1つの保存的アミノ酸置換および重鎖CDRの外側に位置する6、5、4、3、2または1つの保存的アミノ酸置換を有する(例えば、バリアント位置は、フレームワーク(FR)領域または定常領域に位置し、任意選択的に重鎖のC末端リジン残基が欠失している)以外は、ペムブロリズマブのものと実質的に同一である重鎖および軽鎖配列を含むモノクローナル抗体を指す。言い換えれば、ペムブロリズマブおよびペムブロリズマブバリアントは、同一のCDR配列を含むが、それらの完全長の軽鎖配列および重鎖配列において、それぞれ3つまたは6つ以下の他の位置に保存的アミノ酸置換を有しているため、互いに異なる。ペムブロリズマブバリアントは、PD-1への結合親和性、ならびにPD-L1およびPD-L2のそれぞれのPD-1への結合を遮断する能力という点で、ペムブロリズマブと実質的に同じである。
【0097】
表1は、本明細書に開示される方法で使用するための例示的な抗PD1抗体のアミノ酸配列のリストを提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0098】
表1に記載される上記の抗PD-1抗体重鎖および軽鎖領域のバリアントも企図され、バリアントは、例えば、表1に開示されるように、親可変領域内のCDRの配列を保持する。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、i)表1に記載される重鎖可変領域と少なくとも85%、90%、または95%同一のアミノ酸配列と、ii)表1に記載される軽鎖可変領域と少なくとも85%、90%、または95%同一のアミノ酸配列と、を含む。
【0099】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブである。ニボルマブ(「OPDIVO(登録商標)」としても知られ、以前に5C4、BMS-936558、MDX-1106、またはONO-4538と指定されていた)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に防止し、抗腫瘍T細胞機能の下方調節を遮断する完全なヒトIgG4(S228P))PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号、Wang et al.,2014 Cancer Immunol Res.2(9):846-56)。ニボルマブは、参照により本明細書に組み込まれる、WHO Drug Information,Vol.27,No.1,pages 68-69(2013)に記載されている構造を有している。別の実施形態では、抗PD-1抗体またはその断片は、ニボルマブと交差競合する。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じCDRを有する。
【0100】
本明細書における使用が企図される追加の抗PD-1抗体としては、MEDI0680(米国特許第8609089号)、BGB-A317(米国特許公開第2015/0079109号)、INCSHR1210(SHR-1210)(WO2015/085847)、REGN-2810(WO2015/112800)PDR001(WO2015/112900)、TSR-042(ANB011)(WO2014/179664)、およびSTI-1110(WO2014/194302)が挙げられる。
【0101】
様々な実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化、もしくはヒトモノクローナル抗体、またはその一部分である。様々な実施形態では、抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する抗体が企図される。
【0102】
様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)ニボルマブであるか、または(iv)ペムブロリズマブである。
【0103】
様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)ヒトPD-1への結合についてニボルマブもしくはペムブロリズマブと交差競合するか、(ii)ニボルマブもしくはペムブロリズマブと同じエピトープに結合するか、(iii)ニボルマブであるか、(iv)ペムブロリズマブであるか、または(v)ペムブロリズマブバリアントである。
【0104】
本発明のLIV1-ADC+PD-1アンタゴニスト併用療法による治療は、追加の化学療法、放射線、幹細胞治療、治療されている障害に対して有効な外科的な他の治療とさらに組み合わせることができる。本発明の併用療法とともに投与することができる他の薬剤の有用なクラスとしては、例えば、HER2受容体に対する抗体(例えば、トラスツズマブ、ラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA)、抗チューブリン剤(例えば、オーリスタチン)、ペルツズマブ(PERJETA(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA))を含む、がん性細胞上で発現される他の受容体に対する抗体、またはサシツズマブゴビテカン、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤などの他の抗体薬物複合体(例えば、シス-プラチン、モノ(プラチナ)、ビス(プラチナ)ならびに三核プラチナ錯体およびカルボプラチンなどのプラチナ錯体)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗薬、代謝抑制剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、予備成形化合物、プリン抗体代謝物、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが挙げられる。
【0105】
様々な実施形態では、LIV-1-ADC+PD-1アンタゴニストを用いる治療は、カルボプラチン、ドキソルビシンまたはパクリタキセル、トラスツズマブ、mTOR阻害剤(エベロリムスなど)を含むがこれらに限定されない、追加の化学療法剤をさらに含む。カルボプラチン(PARAPLATIN(登録商標);Bristol Myers Squibb,New York,NY)はアルキル化剤である。ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、RUBEX(登録商標)、DOXIL(登録商標)、MYOCEL(登録商標)、またはCAELYX(登録商標))は、抗腫瘍活性を有するアントラサイクリン系抗生物質である。パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標);Celgene,Summit,NJ)は、微小管の破壊を阻害するタキサンである。
【0106】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1抗体の組み合わせは、がん細胞の増殖を阻害するレベルで対象に供与することができるが、同時に対象に忍容される。いくつかの実施形態では、LIV1-ADCとチェックポイント阻害剤との組み合わせは、相乗的または相加的である。いくつかの組み合わせでは、組み合わせの各薬剤は、単独で投与される場合よりも低いレベルで効果的に投与することができる。
【0107】
使用方法
上述のように、本開示の併用療法は、がんを治療するために使用することができる。いくつかのそのようながんは、タンパク質(例えば、例示された抗体のうちの1つを使用するイムノアッセイによって)またはmRNAレベルのいずれかで測定された検出可能なレベルのLIV-1を示す。いくつかのそのようながんは、同じタイプの、好ましくは同じ患者からの非がん性組織と比較して、LIV-1のレベルの上昇を示す。治療に適したがん細胞上のLIV-1の例示的なレベルは、細胞当たり5000~150,000個のLIV-1分子であるが、より高いまたはより低いレベルを治療することができる。任意選択的に、治療を実施する前に、がんのLIV-1のレベルが測定される。
【0108】
様々な実施形態では、対象は、LIV-1を発現する1つ以上の細胞を含む腫瘍を有する。様々な実施形態では、腫瘍細胞の少なくとも約0.01%、少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%がLIV-1を発現する。
【0109】
LIV-1-ADCについての例示的な投与量は、患者の体重の0.1mg/kg~50mg/kg、より典型的には、1mg/kg~30mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~12mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、2mg/kg~30mg/kg、2mg/kg~20mg/kg、2mg/kg~15mg/kg、2mg/kg~12mg/kg、2mg/kg~10mg/kg、3mg/kg~30mg/kg、3mg/kg~20mg/kg、3mg/kg~15mg/kg、3mg/kg~12mg/kg、または3mg/kg~10mg/kgである。いくつかの方法では、患者は、少なくとも約1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kgまたは3mg/kgの用量で投与され、毎週1回、または3週間ごとに1回、またはそれ以上で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、1.0mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、1.25mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、1.5mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、1.75mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、2.0mg/kgの投与量で投与される。一実施形態では、LIV-1-ADCは、2.5mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、1.0mg/kgまたは1.25mg/kgの容量で毎週投与される。さらなる実施形態では、LIV-1-ADCは、0.5mg/kg~2.8mg/kgの用量で投与され、毎週または3週間ごとに投与される。さらなる実施形態では、LIV-1-ADCは、1.0mg/kg~1.75mg/kgの用量で投与され、毎週または3週間ごとに投与される。さらなる実施形態では、LIV-1-ADCは、2.0mg/kgまたは2.5mg/kgの用量で投与され、3週間ごとに1回投与される。投与量は、とりわけ、投与の頻度、患者の状態、および前の治療に対する反応(ある場合)、治療が予防的であるかまたは治療的であるか、および障害が急性であるかまたは慢性であるかの要因に依存する。
【0110】
対象がPD-1またはPD-1のリガンド、例えば、PD-L1またはPD-L2を発現する腫瘍を有することも企図される。当該技術分野で知られているPD-1、PD-L1、またはPD-L2のレベルを測定する方法は、腫瘍細胞における分子のレベルを決定するために本明細書で企図される。例えば、WO2017/210473を参照されたい。
【0111】
様々な実施形態では、腫瘍のPD-L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。
【0112】
様々な実施形態では、抗PD-1抗体の用量は、少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg、または約7.5mg/kg~約12.5mg/kgで投与され得る。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、用量に基づいて与えられる。様々な実施形態では、抗PD-1抗体の用量は、約100~600mg、約400~500mg、約100~200mg、約200~400mg、または約100~300mgである。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、約60mg、約80mg、約100mg、約120mg、約130mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mg、少なくとも約300mg、約320mg、約360mg、約400mg、約440mg、約480mg、約500mg、約550mg、または約600mgの用量で投与される。
【0113】
様々な実施形態では、抗LIV-1-ADC+PD-1アンタゴニスト療法は、別の化学療法剤を投与することをさらに含む。様々な実施形態では、追加の化学療法剤は、カルボプラチン、ドキソルビシンまたはパクリタキセルである。PD-1アンタゴニストと組み合わせて、また任意選択的にカルボプラチン、ドキシルビシン、またはパクリタキセルと組み合わせて、LIV1-ADCは0.5mg/kg~6mg/kgの用量で投与される。組み合わせにおけるLIV1-ADCの他の適切な用量範囲は、1mg/kg~5mg/kg、および2mg/kg~3mg/kgである。実施形態では、LIV1-ADCは、カルボプラチン、ドキソルビシン、またはパクリタキセルなどの化学療法剤と組み合わせて、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2.0mg/kg、または2.5mg/kgの用量で投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、カルボプラチン、ドキシルビシン、またはパクリタキセルなどの化学療法剤と組み合わせて、0.5mg/kg~2.8mg/kgの用量、または1.0mg/kg~1.75mg/kgの用量で投与される。LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、カルボプラチンは、100mg/m~950mg/mの用量で投与される。組み合わせにおけるカルボプラチンの他の適切な用量範囲は、200mg/m~750mg/m、および300mg/m~600mg/mである。実施形態では、カルボプラチンは、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、300mg/mの用量で投与される。別の実施形態では、カルボプラチンは、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、AUC6 IVの用量で投与される。
【0114】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、ドキソルビシンは、30mg/m~90mg/mの用量で投与される。組み合わせにおけるドキソルビシンの他の適切な用量範囲は、40mg/m~80mg/m、および60mg/m~75mg/mである。実施形態では、ドキソルビシンは、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、60mg/mの用量で投与される。LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、パクリタキセルは、50mg/m~300mg/mの用量で投与される。組み合わせにおけるパクリタキセルの他の適切な用量範囲は、100mg/m~260mg/m、および135mg/m~175mg/mである。実施形態では、パクリタキセルは、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、175mg/mの用量で投与される。別の実施形態では、パクリタキセルは、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニストと組み合わせて、80mg/mの用量で投与される。
【0115】
LIV-1発現に関連し、LIV-1-ADCまたは本開示の併用療法による治療に適しているがんの例には、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、膵臓がん、子宮頸部がん、肝臓がん、胃がん、腎臓がん、および扁平上皮細胞がん(例えば、膀胱がん、頭頸部がん、および肺がん)、皮膚がん、例えば、黒色腫、小肺細胞がんまたは肺カルチノイド、非小細胞肺がん(NSCLC)-扁平または非扁平上皮、食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮がん、および頭頸部扁平上皮がんが挙げられる。この治療は、これらの種類の原発性または転移性腫瘍を有する患者に適用することができる。この治療は、従来の治療(例えば、乳がんの場合:ホルモン、タモキシフェン、HERCEPTIN(登録商標))に不応性である患者、またはそのような治療に応答した後に再発した患者にも適用することができる。この方法は、トリプルネガティブ乳がんにも使用できる。トリプルネガティブ乳がんは、検出可能なエストロゲンおよびプロゲステロン受容体を欠き、実施例に記載されているように、これらの受容体のいずれかに対する抗体で染色した場合にHER2/neuの過剰発現を欠くがんについての専門用語である。この方法は、トリプルポジティブ乳がん、ホルモン受容体陽性乳がん、およびHER2陽性乳がんにも使用することができる。染色は、無関係な対照抗体、および実験誤差内で対照のものと同じまたは類似の染色バックグラウンドレベルから示された発現の欠如と比較して実施することができる。同様に、過剰発現の欠如は、好ましくは同じ患者から得られた非がん性乳房組織の実験誤差内で同じまたは同様のレベルで染色することによって示される。代替的または追加的に、トリプルネガティブ乳がんは、これらの受容体と相互作用するホルモンに対する応答性の欠如、攻撃的な挙動、および明確な転移パターンを特徴とする。
【0116】
いくつかの実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストは、組み合わせが、患者におけるLIV-1関連がんの治療において相乗効果または相加効果を提供するような方法で投与される。投与は、投与が所望の治療効果を提供するという条件で、任意の適切な手段によることができる。好ましい実施形態では、LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストは、同じ療法サイクルの間に、例えば、1サイクルの療法の間に、例えば、3週間または4週間の期間投与される。
【0117】
LIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニストの投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内または筋肉内で行うことができる。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、腹腔内注射によって投与される。別の実施形態では、LIV-1-ADCは、静脈内注射によって投与される。PD-1アンタゴニスト、例えば、ペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体は、静脈内または皮下で投与されることが企図される。投与は、腫瘍に直接局在化させることもできる。静脈内または皮下投与による体循環への投与が好ましい。静脈内投与は、例えば、30~90分などの期間にわたる注入によるか、または単回ボーラス注射によることができる。
【0118】
投与の頻度は、毎週、隔週、3週間ごと、毎月、四半期ごと、または患者の状態の変化もしくは治療中のがんの進行に応じて不規則な間隔で行うことができる。実施形態では、組み合わせの一方または両方の薬剤は、3週間ごとに1回投与される。別の実施形態では、組み合わせの一方または両方の薬剤は、4週間ごとに1回投与される。皮下投与の場合には、例示的な投与頻度は毎日から毎月であるが、多かれ少なかれ頻繁な投薬も可能である。
【0119】
様々な実施形態では、LIV1-ADCおよびPD-1アンタゴニスト療法は、少なくとも3サイクル、および最大6、8、または10サイクル、例えば、3~6サイクル、または3~8サイクル、または3、4、5、6、7、8、9もしくは10サイクルの間投与される。様々な実施形態では、サイクルは3週間のサイクルである。
【0120】
様々な実施形態では、LIV-1-ADC、例えば、ラジラツズマブベドチン療法は、約30分間にわたって静脈内注入によって施される。様々な実施形態では、抗PD-1抗体は、約30分または約60分間にわたる静脈内注入によって投与される。
【0121】
様々な実施形態では、本開示は、有効量の、ラジラツズマブベドチン(A)および抗PD-1抗体を含む組成物を投与することを含む、以前に細胞傷害性療法を受けたことがない切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する対象を治療する方法を提供し、ラジラツズマブベドチンは、2.0または2.5mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は100~300mg/用量で投与され、任意選択的に、ラジラツズマブベドチンは、抗PD-1療法の30分または1時間以内に投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、3週間ごとに1回投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、毎週1回投与される。様々な実施形態では、抗PD-1療法は、3週間ごとに1回施される。
【0122】
様々な実施形態では、本開示は、有効量の、ラジラツズマブベドチン(A)および抗PD-1抗体を含む組成物を投与することを含む、以前に細胞傷害性療法を受けたことがない切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する対象を治療する方法を提供し、ラジラツズマブベドチンは、1.0mg/kg、1.25mg/kg、または1.75mg/kgで投与され、抗PD-1抗体は100~300mg/用量で投与され、任意選択的に、ラジラツズマブベドチンは、抗PD-1療法の30分または1時間以内に投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、毎週1回投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADCは、3週間ごとに1回投与される。様々な実施形態では、抗PD-1療法は、3週間ごとに1回施される。
【0123】
様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、3週間サイクルの1日目、8日目、および15日目に投与され、ペムブロリズマブは、各3週間サイクルの1日目に投与される。様々な実施形態では、LIV-1-ADC中の抗LIV-1抗体は、hLIV22抗体である。
【0124】
様々な実施形態では、LIV-1 ADCは、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃腺がん、食道胃接合部(GEJ)腺がん、食道扁平上皮細胞がん、および頭頸部扁平上皮細胞がんなどの固形腫瘍を有する対象に、1.0、1.25、1.5、1.75mg/kg、2.0または2.5mg/kgの用量で投与されることが企図される。任意選択的に、治療は、本明細書に記載の抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストとともに施される。LIV-1-ADCは、毎週または3週間ごとに投与することができる。
【0125】
本明細書の方法は、対象における腫瘍サイズおよび/もしくは腫瘍量を低減させ、かつ/または対象における転移を低減させることが企図される。
【0126】
様々な実施形態では、本方法は、腫瘍サイズを約10%、20%、30%または以上低減させる。様々な実施形態では、本方法は、腫瘍サイズを約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%低減させる。
【0127】
様々な実施形態では、本方法は、腫瘍が増殖する能力を低減させ、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)およびirRC(免疫応答基準)を含む当該技術分野における標準的方法によって定義される不変(stable disease)をもたらす。
【0128】
腫瘍微小環境(TME)、免疫細胞浸潤、サイトカイン産生、およびmRNAレベルに対するLIV-1 ADCまたはLIV1-ADC+PD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1抗体の効果もまた測定される。これらのバイオマーカーは、GeneSeqまたは当技術分野で既知の別の方法を使用するmRNA分析、ELISA、FACS分析、および当技術分野において利用可能な他の手順を使用して測定される。
【0129】
腫瘍微小環境の分析としては、腫瘍部位内またはその周辺の免疫細胞、例えば、マクロファージ、単球、樹状細胞(DC)(従来のDCを含む)、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、制御性CD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、制御性CD8+T細胞、および/またはPD-L1+細胞の測定を挙げることができる。腫瘍微小環境はまた、コラーゲン(コラーゲンI、II、III、V、IX、およびXI)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、およびフィブロネクチンを含む、治療前後の腫瘍部位もしくはその近くでの細胞外マトリックスタンパク質の変化および/または細胞外リモデリングについて分析される。腫瘍微小環境の分析には、サイトカインおよびケモカインの測定も含まれ得る。
【0130】
腫瘍内の細胞、共刺激分子(CD80およびCD86)、サイトカインおよびケモカイン産生に発現するMHCのレベルもまた、LIV-1-ADCまたはLIV-1-ADCおよびPD-1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1抗体による治療の前後に測定される。サイトカインとしては、IFN-γ、TNF-α、TGF-β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-13、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-32、およびIL-33が挙げられる。ケモカインとしては、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12が挙げられる。
【0131】
治療の前後で差次的に発現される遺伝子も決定され、それらの有効性との相関も決定することができる。例えば、免疫細胞または免疫細胞機能に関連する遺伝子は、例えば、SIGLEC1、MS4A4A、CD163、CXCL12、および/またはAPOEで差次的に発現され得る。様々な実施形態では、免疫活性化遺伝子は、HLA-DMA、HLA-DOAおよびIL-18である。
【0132】
腫瘍関連抗原はまた、本明細書に記載の治療の結果として差次的に発現され得る。
【0133】
製剤
本明細書で企図される抗体または抗体-薬物複合体を投与するために、様々な送達システムを使用することができる。ある特定の実施形態では、抗体-薬物複合体化合物の投与は、静脈内注入による。いくつかの実施形態では、投与は、30分間、1時間、90分間、または2時間の静脈内注入による。様々な実施形態では、抗体化合物の投与は、静脈内注入による。様々な実施形態では、投与は、30分間、1時間、90分間、または2時間の静脈内注入による。
【0134】
抗体および/または抗体-薬物複合体化合物は、1つ以上の薬学的に適合性のある成分を含む薬学的組成物として投与することができる。例えば、薬学的組成物は、典型的には、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、水系担体(例えば、無菌の液体)を含む。薬学的組成物が静脈内投与されるとき、水は、より典型的な担体である。
【0135】
組成物はまた、所望の場合、例えば、塩類溶液塩、緩衝液、塩、非イオン性界面活性剤、および/または糖も含有することができる。適切な薬学的担体の例は、E.W.Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において説明されている。製剤は、投与様式に相応している。
【0136】
本開示は、例えば、治療有効量の抗体-薬物複合体、緩衝剤、任意選択的に凍結保護物質、任意選択的に増量剤、任意選択的に塩、および任意選択的に界面活性剤を含む、薬学的組成物を提供する。追加の薬剤は、組成物に添加されることができる。単一の薬剤が、複数の機能を担うことができる。例えば、トレハロースなどの糖は、凍結保護物質および増量剤の両方として作用することができる。本開示に従って、任意の好適な薬学的に許容される緩衝剤、界面活性剤、凍結保護物質(cyroprotectant)、および増量剤を使用することができる。
【0137】
有効成分として本明細書に記載されるADCまたは抗体を含有する本開示の薬学的組成物は、投与経路に応じて、薬学的に許容される担体または添加剤を含有し得る。かかる担体または添加剤の例としては、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加剤は、適宜、本開示の剤形に応じて、上記またはそれらの組み合わせから選択されるが、それらに限定されない。
【0138】
薬学的組成物の製剤化は、選択される投与経路によって異なる(例えば、溶液、エマルジョン)。投与される抗体またはADCを含む適切な組成物は、生理学的に許容されるビヒクルまたは担体で調製することができる。溶液またはエマルジョンの場合、好適な担体には、例えば、生理食塩水および緩衝媒質を含む、水溶液もしくはアルコール/水溶液、エマルジョン、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が含まれ得る。静脈内ビヒクルには、様々な添加剤、保存剤、または流体、栄養素、もしくは電解質補充薬が含まれ得る。
【0139】
多様な水性担体、例えば、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなど、および穏やかな化学修飾などに供した、安定性の増強のための他のタンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどが含まれ得る。
【0140】
抗体の治療用製剤は、所望の純度を有するADCまたは抗体を任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保存のために調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、これには、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0141】
様々な実施形態では、抗体薬物複合体製剤は、凍結乾燥、または他のタンパク質保存の方法を受けた薬物複合体製剤、ならびに凍結乾燥を受けていない抗体薬物製剤を含む。
【0142】
インビボ投与のために使用される製剤は、滅菌される必要がある。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。薬学的組成物は、滅菌注射用水溶液、油性懸濁液、分散液、または滅菌注射溶液もしくは分散液の即時調製用の滅菌粉末の形態であり得る。懸濁液は、上述の好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であり得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、植物油、リンゲル液、ならびに等張性塩化ナトリウム溶液を含有する溶媒または分散媒質であり得る。さらに、溶媒または懸濁化媒質として滅菌不揮発性油が慣習的に用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の不揮発性油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製における用途を見出す。
【0143】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造のために好適な賦形剤と混合して、活性化合物を含有し得る。かかる賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガント;トラガカントゴムおよびアカシアゴムであり、分散剤または湿潤剤は、天然に生じるホスファチド、例えばレシチン、または脂肪酸との酸化アルキレンの縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとの酸化エチレンの縮合物、例えばヘプタデカエチル-エネオキシカテノール、または脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの酸化エチレンの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸およびヘキシトール無水物との酸化エチレンの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエートを含有し得る。
【0144】
キット
本開示はまた、LIV-1発現がんの治療のためのキットを提供する。キットは、(a)抗体薬物複合体を含む容器、および任意選択的に、抗PD-1抗体などのPD-1アンタゴニストのうちの1つ以上、および任意選択的に、追加の化学療法剤を含む容器を含むことができる。このようなキットはさらに、所望の場合、当業者に容易に明らかとなるように、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体を有する容器、追加の容器などの、様々な従来の薬学的キット構成要素の1つ以上を含むことができる。挿入物またはラベルとして、投与される構成要素の量、投与のガイドライン、および/または構成要素の混合のガイドラインを示す印刷された説明書もまたキットに含めることができる。
【0145】
実施例1
LV誘発性免疫原性細胞死(ICD)は炎症反応を誘発し、腫瘍免疫細胞浸潤を増加させる(Schmid et al.,N Engl J Med.2018;379(22):2108-21)。LV誘発性ICDは、強化されたチェックポイント阻害剤活性に有利な微小環境を作り出すと仮定される。LVおよびPD-1アンタゴニストの併用療法が安全で有効であるどうかを判断するために、LV+ペムブロリズマブを組み合わせた単群非盲検第1b/2相試験を、切除不能な局所進行性または転移性(LA/M)トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する患者で、進行性疾患に対して細胞傷害性療法を受けたことがない患者で実行した。
【0146】
パートAでは、LVとペムブロリズマブとを組み合わせた場合に安全であり得る用量を決定するために、用量設定試験を実施した。患者に、2.5mg/kgまたは2.0mg/kgのLVを、200mg/kgのペムブロリズマブと組み合わせて、毎週3週間投与した(Q3wk)。パートBでは、追加の患者が用量拡大相に登録され、同じ投与レジメンが続いた。
【0147】
以下の基準が満たされた場合、患者は治療された。
-転移性または局所進行性の組織学的に確認されたTNBC(2014 ASCOガイドラインによるHER2、ER、およびPR発現の欠如)であること
-切除不能なLA/M BCの治療のための以前の細胞傷害性療法がないこと
-以前の抗PD(L)1療法がないこと
-最新の治療的(ネオ)アジュバント治療から6ヶ月以上たっていること
-RECIST第1.1版に準拠する測定可能疾患を有すること
-0または1のECOGであること
-ベースラインの臨床検査基準を満たしていること
-バイオマーカー分析用の組織試料を提供できること
-ニューロパチー≦グレード(Gr)2であること
-適切に治療されたCNS転移およびコルチコステロイド療法を受けていないこと
【0148】
年齢、性別、およびECOGは、他の試験のTNBC集団と一般的に一致している。最前線のTNBCで最近発表されたランダム化試験(Kim et al.,Lancet Oncol.2017;18(10):1360-1372、Yardley et al.,Annals of Oncology.2018;19:1763-1770、Brufsky et al.,J Clin Oncol 37(Suppl 15):Abstract 1013、Cortes et al.,Ann Oncol 30(Suppl 5):v859-60)と比較して、デノボMTNBCに登録された対象は少なかった。対象は、以前に免疫腫瘍学療法を受けた、少なくともグレード2の既存のニューロパチーを有した、活動性のある中枢神経系(CNS)の転移を有した、かつ/または過去2年以内に全身治療を必要とする活動性自己免疫疾患を経験した場合は除外された。
【表2】
【0149】
抗体薬物複合体LVを、2.5または2.0mg/kg IVで3週間ごとに約30分間かけて投与した。ペムブロリズマブを、200mgのIVで3週間ごとに約30分間かけて投与した。予防的G-CSFは、1サイクル当たり200mg以上のLVを受ける場合に必要であった。患者を、ベースラインでの腫瘍生検(パートAおよびB)、C1D5発現(パートA)、およびC1D15発現(パートB)によって分析した。
【0150】
この試験の主要評価項目には、客観的奏効率(ORR)RECIST第1.1版および安全性が含まれた。副次的評価項目には、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、および抗体のPK/PDが含まれた。
【0151】
パートAでは、2.0mg/kgのLVおよび200mgペムブロリズマブで用量制限毒性(DLT)を経験した対象はおらず(0/7人)、2/12人の対象は、2.5mg/kgのLVおよび200mgペムブロリズマブでDLTを経験し、グレード3の大腸炎またはグレード3の下痢のいずれかを示した。
【0152】
有害事象:治療に関連する有害事象は最小限であり、併用療法で新たな安全性シグナルは観察されなかった。ほとんどのAEは重症度が低から中程度(グレード1~2)で、吐き気、倦怠感、および脱毛症が含まれた(表3)。最も一般的な重度(グレード3~4)のAEは好中球減少症(14%)であり、最も一般的な重度のAEは腹痛(5%)、大腸炎(4%)、および発熱(4%)であった。併用療法におけるペムブロリズマブに起因する最も一般的なAEは、斑状丘疹状発疹(9%)、下痢(6%)、大腸炎(4%)、および掻痒症(4%)であり、頻度はペムブロリズマブ単剤療法(USPI)と同様であった。グレード5の治療関連のAEはなかった。
【表3】
【0153】
LV用量の低減につながる最も一般的なAEは、末梢性ニューロパチー(9%)および腹痛(3%)であった。投与中断につながる最も一般的なAEは、末梢性ニューロパチー(3%)であった。AEでの中断率は、LVで14%、ペムブロリズマブで13%であった(表4)
【表4】
【0154】
結果は、LV+ペムブロリズマブがRECIST第1.1版により測定した35%の確認された客観的奏効率を達成したことを示している。不変は、32人の対象(48%)で観察された。試験集団のうち、4人の対象(6%)が確認スキャンを待っている部分奏効(PR)または完全奏効(CR)を示し、10人の対象(15%)がPRの最良の奏効を確認せず(進行性疾患のために8人が治療を中止し、AEのために2人が治療を中止)、および18人の対象(27%)がSDを有した。疾患の進行は、8人の対象(12%)が最良効果(best response)として報告され、最良総合効果(best overall response)(確認済みおよび未確認)は56%であった(表5)。
【表5】
【0155】
治療後の腫瘍組織量の分析は、90%を超える対象が腫瘍の縮小を達成したことを示している(図1)。有効性の評価可能な集団は、RECIST第1.1版に従って少なくとも1つの評価可能なベースライン後の評価を受けるか、または試験を中断したすべての治療対象を含む(N=69)。有効性の評価可能な集団のうち、5人の対象は試験中断前に評価可能な効果評価を受けていなかった。
【0156】
腫瘍組織量は、治療期間中の腫瘍サイズの変化に基づいて測定した。対象の45%が、最初の評価で奏効を達成した。最初の奏効までの期間の中央値は1.4ヶ月であり、奏効期間の中央値は4.4ヶ月(最小、最大:1.4+、8.4+)であり、追跡期間の中央値は3.7ヶ月であった(図2)。
【0157】
デノボ一次選択(1L)転移性トリプルネガティブ乳がん(MTNBC)を有する対象は、試験集団の22%を占めている。ORRは、前処置された対象に対してデノボにおいて、それぞれ26%に対して69%と高く、デノボ患者の大多数は、5ヶ月から開始して最長10ヶ月まで持続する腫瘍制御を達成した(図3)。
【0158】
腫瘍に対するPD-L1のレベルを評価した。38個の腫瘍試料は、35%がPD-L1陽性であり、これらのサンプリングしたものの40%がPD-L1陰性である、PD-L1ステータス(Dako 22C3)の結果をもたらした。PD-L1陽性の頻度は、最近報告されたペムブロリズマブTNBC研究と一致している(Schmid et al.,Ann Oncol 30(Suppl 5):v853-4)。奏効はPD-L1ステータス全体で一貫して観察された。予備分析では、LIV-1の発現に基づく奏効率に差は見られなかった(表6)。
【表6】
【0159】
結論:ペムブロリズマブと組み合わせたLVは、MTNBCにおける安全で忍容性のある一次選択療法である。LVおよびペムブロリズマブの両方は、単剤試験で使用される用量で送達することができる。この組み合わせでは新しい安全信号は観察されず、AEプロファイルは忍容性があり、管理可能であった。
【0160】
併用療法の有効性は有望であり、ORRが試験集団において35%であり、デノボMTNBCを有する対象で69%であったことを示している。対象の90%以上が腫瘍の縮小を達成し、奏効の45%が最初の効果評価で生じた。少数の対象(12%)は、最良の効果として疾患の進行を有していた。ただし、デノボMTNBC対象における治療の持続期間は、有望で驚くべきものである。バイオマーカーの評価は、PD-L1ステータスに関係なく奏効率が一貫していることが示した。対象は、奏効期間、PFSおよびOSについて追跡され続ける。
【0161】
実施例2
有効性を高め、忍容性プロファイルを改善するために、ペムブロリズマブとともに毎週送達されるLVが評価される。切除不能な局所進行性またはmTNBCを有する患者に対する一次選択療法としてのペムブロリズマブと組み合わせたLVの単群非盲検第1b/2相試験を行い(CT.gov:NCT03310957、EudraCT:2017-002289-35)、1日目、8日目、および15日目の1.00または1.25mg/kg/週のいずれかのLVに加えて各サイクルの1日目のペムブロリズマブ200mgの安全性および有効性を評価する。約24人の患者が、LVの毎週のコホートに登録されている。患者は、進行性疾患に対して以前に細胞傷害性または抗PD(L)1治療を受けたことがなく、RECIST第1.1版に従って測定可能な疾患があり、0または1のECOGスコアを有している。
【0162】
主な目的は、毎週のLV+ペムブロリズマブの安全性/忍容性および客観的奏効率を評価することである。二次的な目的には、DOR、DCR、PFS、およびOSの評価が含まれる。
【0163】
実施例3
LIV-1は、がん細胞の転移を促進するシグナル伝達に関与し(Lue et al,PLOS One,6:e27720;2011)、臨床的には、転移への進行に関連する腫瘍におけるLIV-1発現(Manning et al,EJC,5:675-678; 1994)に関与する。非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮および非扁平上皮)、小細胞肺がん、胃/GEJ腺がん、食道扁平上皮がん、および頭頸部扁平上皮がんなどの固形腫瘍におけるLIV-1-ADCの効果を評価するために、第2相試験が行われる。
【0164】
第2相では、小細胞肺がん、またはNSCLC、扁平上皮または非扁平上皮などの切除不能な局所進行/転移性固形腫瘍を有する国際共同単群試験の対象が、3週間ごとに2.5mg/kgのLIV1-ADCで治療するか、投与試験では、治療の安全性を判断するために様々な用量のLIV1-ADCで、例えば、1.0mg/kgまたは1.25mg/kgを毎週投与で治療される。
【0165】
小細胞肺がんの適格な患者は、広範な病期、RECIST第1.1版に基づく測定可能な疾患、広範な病期に対する以前の1つ以下のラインのプラチナベースの化学療法を示し;適格である場合に以前に抗PD(L)1療法を受けており、≦Gr2のニューロパチーであり、NSCLC組織型の混合SCLC/神経内分泌の患者は適格ではない。
【0166】
NSCLC、例えば、扁平上皮または非扁平上皮NSCLCを有する適格な患者は、切除不能な局所進行性または転移性疾患、RECIST第1.1版に基づく測定可能な疾患、進行性疾患に対する以前の1つ以下のラインのプラチナベースの化学療法、進行性疾患の化学療法中または化学療法後の進行、または治癒を目的とした化学療法の最終投与から6ヶ月以内、除外された実行可能な変異のための治療を受けていること、禁忌でない限り以前に抗PD(L)1療法を受けていること、およびGr2以下のニューロパチーを示す。
【0167】
主要評価項目には、客観的応答率(ORR)が含まれるが、副次的評価項目には安全性、DoR、PFS、およびOSが含まれる。バイオマーカーは、LIV1-ADCによる治療の結果としての変化についても評価される。
【0168】
実施例4
腫瘍における細胞活性および遺伝子発現に対するLIV1-ADCと抗PD-1抗体とによる治療の効果を決定するために、相関バイオマーカー試験を実施し、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の腫瘍微小環境(TME)を調節するLIV-1-ADC(LV)の能力を評価した。
【0169】
局所進行性または転移性TNBCの患者を、LVA-001(LV単剤療法、2~2.5mg/kg、3週間ごと[q3w])およびLVA-002[LV+ペムブロリズマブ(抗PD-1)200mg、q3w]に登録した。腫瘍生検を、ベースライン時および最初の治療投与後(LVA-001ではサイクル1の5日目(C1D5)、LVA-002ではC1D5またはC1D15)に採取した。RNA抽出およびRNAseqを、治療前後の遺伝子発現を調べるために実施した。DESeq2パッケージを使用して差次的遺伝子発現を評価した(Love et al.,(2014)Genome Biology,15:550)。遺伝子オントロジー(GO)分析は、フィッシャーの直接確率検定を「重み」スコアリングアルゴリズムと組み合わせて使用する、TopGO Rパッケージ(Alexa A,Rahnenfuhrer J(2020).topGO: Enrichment Analysis for Gene Ontology.R package version 2.40.0)を使用して実行し、大幅に濃縮された生物学的プロセスノードを評価した。潜在的な細胞型濃縮のスコアリングは、Rで実装されたxCellメソッド(Aran,et al.,Genome Biology(2017)18:220)を使用して行った。特に明記しない限り、個々の遺伝子発現比較の偽発見率(FDR)は、Benjamini-Hochberg法およびDESeq p値によって計算した。免疫組織化学(IHC)評価を実施して、対象のCD8、CD68、およびPD-L1(22C3)のレベルを測定した。複合陽性スコア(CPS)を、AgilentのPD-L1 IHC22C3 pharmDx解釈マニュアルに従ってスコアリングした。
【0170】
RNAseq(N=59)については、LVA-001(LV単剤療法)からのベースラインおよび治療中(C1D5)の生検のペアを使用した。差次的発現を、ペアのベースライン-C1D5 RNAseqプロファイルを比較することによって評価した。差次的に発現された遺伝子(図4)を、倍率変化および有意性のカットオフ(絶対倍率変化>2、調整されたp値/FDR<0.01)を使用して特定した。59個の上方調節された遺伝子を、C1D5で特定し、15個の下方調節された遺伝子を、C1D5で特定した。差次的に発現された遺伝子の上位のいくつか(SIGLEC1、MS4A4A、CD163)は、マクロファージ機能に関連している。FDR<1e-7で差次的に発現された遺伝子は、図4にラベルで示され、SIGLEC1、CD163、およびMS4A4A、ならびにAPOE、CXCL12、MRO、およびPDK4などのマクロファージマーカーを含む。
【0171】
解析は、LV療法がマクロファージ浸潤を増加させ、MHC、共刺激分子、およびPD-L1発現を誘導することを示している。IHCを実行して、LVA-001患者のベースラインおよびC1D5での腫瘍生検におけるマクロファージ(CD68)およびPD-L1(22C3)染色を決定した。図5A~5Bは、CD68 IHCの結果(腫瘍間質におけるCD68に対して陽性の細胞の%)および評価可能な試料を含むすべてのLVA-001患者のPD-L1 CPSスコア(CD68の場合はN=79、PD-L1の場合はN=73)を図示しており、治療を受けた患者の腫瘍におけるCD68およびPD-L1染色のレベルが高いことを示している。図5Cは、RNAseq解析(N=59)によるMHCII遺伝子(HLA-DRB1およびHLA-DQA1)および共刺激分子(CD80およびCD86)の誘導を示しており、これらはそれぞれ、治療を受けた対象で増加するようである。MHCI遺伝子、炎症性サイトカインの有意な誘導、および腫瘍炎症スコアの全体的な増加もあった。これらの結果は、LV単剤療法が乳がん患者のTMEにおいて免疫活性化を誘発したことを実証している。
【0172】
TME乳がん患者の免疫活性化に対するLVおよびペムブロリズマブの効果も、LVA-002で評価した。RNAseq(N=16)には、初期データセットのベースラインおよび治療中(C1D15)のペアを使用した。差次的遺伝子発現を、ペアのベースラインC1D15 RNAseqプロファイルを比較することによって評価した(図6)。差次的に発現する遺伝子を、倍率変化および有意性のカットオフ(絶対倍率変化>2、調整されたp値/FDR<0.01)を使用して特定した。342個の上方調節された遺伝子を、C1D15で特定し、192個の下方調節された遺伝子を、C1D15で特定した。ZEB2、L1TD1、DNAJC5B、GAB3、C11orf21、およびTRGV3は、1e-7のFDRで上方調節された(図6に、ラベルで示される)。IHC分析は、LVA-002患者から収集されたベースライン生検と比較して、CD3+およびCD8+T細胞、CD68+マクロファージの浸潤の増加、およびC1D5生検におけるPD-L1染色の増加を示した。
【0173】
免疫組織化学によってRNAレベルと免疫細胞浸潤とを比較することにより、細胞バイオマーカーのさらなる分析を実施した。腫瘍浸潤免疫細胞(マクロファージ、DC、およびCD8 T細胞)のRNAレベルならびにLVA-001(LVのみ)およびLVA-002(LV+ペムブロリズマブ)におけるCD274(PD-L1)遺伝子発現の比較は、ベースラインと比較して、治療を受けた対象のマクロファージとCD8 T細胞の増加を示している(図7)。PD-L1の場合、FDRは、C1D5/C1D15とベースラインとを比較する差次的発現解析から導き出される。LVA-001についてはN=59であり、LVA-002についてはN=16である。これは、RNA分析によるLV+ペムブロリズマブ治療対象におけるDCおよびCD8T細胞シグネチャーのより強力な誘導を示している。LVA-001およびLVA-002対象における腫瘍浸潤免疫細胞(CD3+およびCD8+T細胞、CD68+)ならびにCD274(PD-L1)染色もまたIHCによって実行した。治療中の生検は、LVA-001ではC1D5付近、LVA-002ではC1D5またはC1D15付近で採取された。図8Aおよび8Bは、C1D15でのLV+ペムブロリズマブ治療においてCD8TILのより強い誘導があることを示している。
【0174】
次いで、遺伝子シグネチャーおよび細胞浸潤の変化を、臨床応答に対する影響について、例えば、部分奏効(PR)または完全奏効(CR)を含むレスポンダーとして、および不変(SD)または進行(PD)を有する患者を含む非レスポンダーとして特徴付けられた対象において評価した。LV+ペムブロリズマブ治療により誘発された腫瘍中のCD4 T細胞およびDCの増加は、臨床応答(LVA-002)と関連している。RNAseqデータのxCell遺伝子シグネチャー解析は、CD4 T細胞(特にエフェクターメモリー(EM)CD4 T細胞)および従来のDC(cDC)に関連する遺伝子の誘導が臨床応答に関連することを示した(図9)。完全なモデルでは、xCellスコアは、応答、時点、およびこれら2つの機能の相互作用に依存するとみなされていた。より単純なネストされたモデルでは、xCellスコアは応答および時点のみに依存しているとみなされていた。したがって、結果として得られた尤度比検定は、時間と応答との間の相互作用の重要性、およびxCellシグネチャー値との関係を評価した。より重要なp値は、xCellシグネチャーがレスポンダーと非レスポンダーとの間で時間の経過とともに挙動が異なることを示している。
【0175】
MHC遺伝子およびIL-18の誘導は、治療を受けた対象の臨床応答と関連している(図10)。これら2つのモデル間で試験される用語は、時点と応答との間の相互作用である。レスポンダーと非レスポンダーとの間で経時的に差次的に調節される(FDR<0.05)全体で93個の遺伝子が観察され、LV+ペムブロリズマブを受けた療法に応答する腫瘍を有する患者が、より大きなMHCおよび炎症性サイトカインの誘導を有することを示唆している。
【0176】
LV単剤療法が、マクロファージ浸潤の顕著な誘導、MHCI/II、共刺激分子、炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン、およびPD-L1の増加を伴う転移性TNBCを有する患者のTMEにおける免疫活性化をもたらすことが、本明細書で実証される。がん患者におけるLV誘発性TMEの変化は、LVがICDを誘発するという前臨床の証拠と一致している。上記の結果は、LV+ペムブロリズマブの組み合わせが、マクロファージに加えて、適応免疫応答経路の活性化およびCD8 T細胞の浸潤の増加を伴うTMEにおける強力な免疫活性化をもたらすことを示唆している。予備分析は、T細胞およびDCの浸潤、ならびに免疫活性化遺伝子(MHCおよびサイトカイン)の誘導が、LVおよびペムブロリズマブの併用療法に照らして臨床反応に関連していることを示した。
【0177】
上記の例示的な例に記載される本開示の多数の調整および変形は、当業者に想起されることが予想される。したがって、特許請求の範囲に見られるそのような制限のみが、本発明に課せられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8A
図8B
図9
図10
【配列表】
2023506187000001.app
【国際調査報告】