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特表2023-506193様々なミトコンドリアを標的とする抗酸化物の組成物のための重合体の基質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】様々なミトコンドリアを標的とする抗酸化物の組成物のための重合体の基質
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20230208BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230208BHJP
   C08K 5/08 20060101ALI20230208BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230208BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230208BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230208BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230208BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61K31/122
C08L101/00
C08K5/08
C08K5/00
A61K47/12
A61P39/06
A61P43/00 105
A61K8/55
A61K8/365
A61Q19/00
A61K47/54
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535691
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 US2020064334
(87)【国際公開番号】W WO2021119330
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/945,939
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522231207
【氏名又は名称】マイトテック エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】MITOTECH S.A.
【住所又は居所原語表記】42,Rue de la Vallee,L-2661 Luxembourg, Luxembourg
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクラーチェフ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】マルミー,ナターリア
(72)【発明者】
【氏名】タシュリツキー,ヴァディム
(72)【発明者】
【氏名】フリートホフ,ローレンス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA71
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC41
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD43Q
4C076DD63
4C076DD67
4C076DD69
4C076EE09
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE59
4C076FF63
4C083AA032
4C083AA112
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC692
4C083AC852
4C083AC862
4C083AC891
4C083AC892
4C083AD092
4C083AD192
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD332
4C083BB47
4C083CC02
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE01
4C206AA01
4C206AA10
4C206CB27
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA03
4C206NA14
4C206ZB21
4C206ZC21
4J002AA001
4J002AB051
4J002BG031
4J002EC047
4J002EC057
4J002EE056
4J002EF007
4J002FD076
4J002GB00
4J002HA04
(57)【要約】
組成物は、ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物と、安定性が良好な医薬品組成物、薬品組成物、及び化粧品組成物の製造に有用であるポリアクリレート、アガロース、寒天、又はヒアルロン酸の重合体とを含む。当該組成物は、乳酸を含むことが有用となりうる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一般式1が
であるミトコンドリアを標的とする抗酸化物であって、
Aは、構造が、
であるキノンの抗酸化物及び/又はその還元(キノール)形態であり、
mは、1~3の整数であり、
Yは、低級アルキル又は低級アルコキシであり、
Lは、連結基であり、1以上の置換基で置換可能であり、かつ、1以上の二重結合又は三重結合を含むことが可能な直鎖式又は分鎖式の炭化水素鎖を含み、
nは、1~40の整数であり、
Bは、SkZを含む標的指向化された官能基であり、Skは、親油性の陽イオンであり、Zは、薬理学的に許容される陰イオンである
ミトコンドリアを標的とする抗酸化物と、
(ii)重合体と
を含み、
前記重合体は、ポリアクリレート(カルボキシビニル重合体)、アガロース、寒天、又はヒアルロン酸から選択される
組成物。
【請求項2】
前記ミトコンドリアを標的とする抗酸化物は、SkQ1である
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
5%のイソペンチルジオールと、
3%のアクアキシル(キシリチルグルコシド、無水キシリトール、及びキシリトール)と、
3%のプロピレングリコールと、
0.9%のポリアクリル酸ナトリウムと、
0.3%のエチルヘキシルグリセロールと、
0.2%の乳酸と、
6ug/mlのSkQ1と
を含む
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
乳酸を医薬品組成物又は化粧品組成物に添加することによる、医薬品組成物又は化粧品組成物におけるSkQ1の安定化方法。
【請求項5】
乳酸を含む、SkQ1の安定化された医薬品組成物又は化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/945,939号の利益を主張し、当該出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、医薬品、薬品、及び化粧品に関する。本開示は、ミトコンドリアを標的とする抗酸化物と、重合体の基質と、選択的に更なる成分とを含む、いくつかの安定な組成物を記載する。
【背景技術】
【0003】
ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物(SkQ、一般式1を参照)は、医薬品組成物又は化粧品組成物に共通の多くの材料を含む組成物において不安定である。上述により、SkQは、医薬品及び/又は化粧品の多くの典型的な成分に対して(適度な貯蔵期間に必須の安定性の観点において)不適合となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物を含む適度に安定した組成物を提供し、ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物の一般式1は、以下のとおりである。
【0005】
【化1】
【0006】
Aは、構造が以下のキノンの抗酸化物及び/又はその還元(キノール)形態である。
【0007】
【化2】
【0008】
mは1~3の整数であり、Yは、低級アルキル又は低級アルコキシであり、Lは、連結基であり、1以上の置換基で置換可能であり、かつ、1以上の二重結合又は三重結合を含むことが可能な直鎖式又は分鎖式の炭化水素鎖を含む。nは1~40の整数であり、Bは、SkZを含む標的指向化された官能基であり、Skは、親油性の陽イオンであり、Zは、薬理学的に許容される陰イオンである。
【0009】
SkQ1は、SkQ型の化合物類(SkQ類)の非限定的な例である。SkQ1(酸化物形態)の式は、以下のとおりである。
【0010】
【化3】
【発明を実施するための形態】
【0011】
SkQ1は、臭化物又は塩化物の形態で以下の実験において用いられた。
【0012】
本開示者の実験においては、本開示者は、医薬品及び化粧品の多くの一般的な成分が、SkQを不安定化するゆえに、対応する組成物の貯蔵時間が短くなるため、SkQと適合しないことを実証した。しかしながら、本開示者は、以下の重合体及び他の成分を、組成物においてミトコンドリアを標的とする抗酸化物と組み合わせた場合、SkQが有意に不安定化しないことを見出した(表1参照)。
【0013】
【表1】
【0014】
一部の組成物におけるSkQ1の安定性は、本開示者の実験においては高くなった(実験例1を参照)。当該組成物は以下のとおりである。
【0015】
[組成物1]
3%のプロピレングリコール
5%のペンチレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
様々な濃度、例えば6ug/mlのSkQ1
100%以下の水
【0016】
安定性試験は、実験例1において呈示する。
【0017】
[組成物2]
5%のイソペンチルジオール
3%のアクアキシル(キシリチルグルコシド、無水キシリトール、及びキシリトール)
3%のプロピレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
様々な濃度、例えば6ug/mlのSkQ1
100%以下の水
【0018】
[実験例1]SkQのための適切な重合体の基質としてのポリアクリレート
(A)Carbomer640及びCarbomer641に基づく化粧品配合物の安定性試験
[試料の調製]
1Vの試料と1Vの0.5MのNaBrとを、70℃で振とう機で15分間混合し、9Vのエタノールを添加して、1Vにつき96%分画し、遠心分離した。500mclの上清に、500mclの0.1Mのリン酸を水中において添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は22倍であった。
【0019】
注入量は100μlであり、検出は260nmであった。
【0020】
【表2】
【0021】
60℃でのインキュベーション後の分析結果は以下のとおりである。
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
組成物03及び組成物05は、顕著な(二相性動態の)分解を示した。
【0025】
【表5】
【0026】
特定の安定性は、C088-060819-05-60の組成物についてのみ、初期濃度が10マイクログラム以下である場合に観察される。
【0027】
(プラスチックゼロの新規組成物の安定性実験)
[試料の調製方法]
200mgの試験用ポリアクリレート組成物(正確な重量)をエッペンドルフ試験管に配置し、2容量の水(約400μl)を添加し、30分間(70℃の恒温振とう機で)加熱した。1容量の1MのNaBrを水(約200μl)に添加し、更に30分間(70℃の恒温振とう機で)混合しながら加熱した。2容量の96%エタノール(約400μl)を添加し、渦流で混合し、遠心分離した。900μlの上清を選択し、エタノールに300μlのリン酸溶液を添加し、混合し、遠心分離した。
【0028】
最終希釈比は8倍であった。
【0029】
注入量は100μlであった。
【0030】
試験用ポリアクリレート組成物は以下のとおりである。
【0031】
【表6】
【0032】
安定性の加速試験は60℃で行った。試料は上述のように調製し、HPLC法(100ulの注入量、260nmでの検出)により、SkQ1の濃度について分析した。
【0033】
分析結果は以下のとおりである。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
実際の貯蔵条件まで速度定数を外挿した。
【0037】
【表9】
【0038】
[結論]
ポリアクリレート組成物におけるSkQ1は、許容可能な安定性を呈示する。
【0039】
(B)グリセロールの存在下におけるCarbomer980に基づくゲル(10uM及び50mMの濃度のSkQ1)の安定性試験
【0040】
【表10】
【0041】
60℃における安定性曲線は以下のとおりである。
【0042】
【表11】
【0043】
Carbomer980に基づくゲルの組成物における60℃でのSkQ1の分解の速度を呈示する。
【0044】
実際の貯蔵条件まで平均速度を外挿した。
【0045】
【表12】
【0046】
[結論]
分解率は初期濃度にわずかに依存し、自己触媒分解機構の欠如を示している。必要な安定性は観察されていない。
【0047】
更なる実験においては、高温での組成物におけるSkQ1の安定性を調査した。対照組成物とともに、以下の組成物(コード:MitoVitan-1-3)を試験した。
【0048】
5%のイソペンチルジオール
3%のアクアキシル(キシリチルグルコシド、無水キシリトール、及びキシリトール)
3%のプロピレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
6ug/mlのSkQ1
最大100%の水
【0049】
実際の貯蔵条件まで速度定数を外挿した。
【0050】
【表13】
【0051】
MitoVitan-1-3の組成物は、(高温での)加速貯蔵のモデル実験において、許容可能な安定性を呈示している。37℃及び室温での更なる実験は、計算されたものと比較して、当該組成物において、SkQの安定性が更に大きくなることを示した。
【0052】
[上述の実験による更なる結論]
C088-060819-03及びC088-060819-04の組成物の安定性の比較によって、SkQ1が乳酸の添加により安定化することが呈示された。上述の実験は更に、C088-060819-05の組成物に存在する界面活性剤(エチルヘキシルグリセロール)が予想外に不安定化させる効果があることを明らかにし、エチルヘキシルグリセロールのない同一の組成物(C088-060819-03)と比較して、安定性を劇的に悪化させることを明らかにした。
【0053】
本開示者の実験の結果に基づいて、本開示者は、様々なポリアクリレートが、SkQ1と良好に適合し、ミトコンドリアを標的とする抗酸化物の化粧品組成物及び医薬品組成物のための重合体の基剤として作用しうるとの結論づけが可能となる。同時に、最良の適合性(SkQ1の安定性)は、Carbomer640、Carbomer641、及びCarbomer974によって示された。予想外に、Carbomer980は上述より悪化した。
【0054】
ペンチレングリコール及びグリセロールの安定化効果は、更に明らかになった。
【0055】
[実験例2]
(SkQに好適な天然の重合体基質としての寒天及びアガロース)
(А)アガロース及び寒天に基づく組成物
60℃での安定性試験を行った。組成物は以下のとおりである。
5%の寒天(又はアガロース)
1%の乳酸(乳酸ナトリウム)
20%のプロピレングリコール
50ミクロンのSkQ1
【0056】
[試料の調製(試料重量300~500mg)]
300~500mgの組成物(正確な重さ)は、60℃の温度でインキュベートした後に試験管に配置された。収集した試料は、恒温振とう機で70℃で10分間溶融し、約300~500μlの容量のアセトニトリルを添加した(容量は、正確な重量に等しい)。混合物は完全に混合され、14000rpmで10分間遠心分離され、次いで、400μlの上清が、1.5mlの管に移され、600μlのアセトニトリルが添加され、混合され、14000rpmで30分間、完全に遠心分離された。最後に、400μlの上清は、クロマトグラフィのバイアルに移され、600μlの水が添加され、混合物は完全に混合された。3つの試料は、各々の時点において採取された。
【0057】
様々な時点での測定結果は以下のとおりである。
【0058】
【表14】
【0059】
【表15】
【0060】
実際の貯蔵条件まで速度曲線の初期部分を外挿した。
【0061】
【表16】
【0062】
[結論]
分解の初期段階は、濃度が一定となる第二段階に置き換わる。軟膏は、2~8℃の貯蔵に必要な安定性がない可能性が非常に高い。当該形式の重合体については、用いられる重合体の特性のため、60℃での保存中に得られたデータを、著しく低い温度(25℃、2~8℃)まで外挿することは、完全には正確でない可能性がある。低温下で長時間の実験を行う必要がある(下記参照)。
【0063】
(B)アガロースに基づく組成物
25℃で貯蔵した。組成物は以下のとおりである。
5%の寒天(又はアガロース)
1%の乳酸(乳酸ナトリウム)
20%のプロピレングリコール
50ミクロンのSkQ1
【0064】
試料は、時点あたり3個のエッペンドルフ試験管から25℃で月1回採取した。
【0065】
[試料の調製(試料重量300~500mg)]
試験管は、300~500mgの組成物(正確な重量)を含んだ。25℃でインキュベートした後、試料を恒温振とう機において70℃で10分間溶融し、約300~500μlの容積のアセトニトリルを添加した(容積は正確な質量に等しい)。混合物は完全に混合され、14000rpmで10分間遠心分離された。400μlの上清は、1.5mlの管に移され、600μlのアセトニトリルが添加され、混合され、14000rpmで30分間完全に遠心分離された。400μlの上清は、クロマトグラフィーバイアルに移され、600μlの水が添加され、次いで混合された。最終希釈は12.5倍であり、HPLC注入量は20μlであり、検出は260nmであった。
【0066】
選択した試料の測定結果は、以下のとおりである。
【0067】
【表17】
【0068】
【表18】
【0069】
[結論]
25℃での6か月間の分解は検出されなかった。
【0070】
同様の結果は、アガロースを寒天に置き換えた場合に25℃で得られた。
【0071】
(B)多重有効性のある化粧用マスクにおけるSkQ1の安定性の実験
【0072】
概要は、以下の表のとおりである。
【0073】
【表19】
【0074】
[全てのマスクの試料の調製]
1Vの試料(約200mg)に1Vの0.5Mの臭化ナトリウムを添加し、混合しながら15分間加熱し、100μlの得られた溶液を取得し、900μlの96%エタノールを徐々に添加し、エタノールを各々に添加した後に混合し、遠心分離した。500mlの上清を取得し、500mlのリン酸を水に添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は40倍であり、HPLC注入量は100μlであった。検出は、260nmで行った。
【0075】
60℃での安定性を試験した。分解曲線(60℃におけるSkQ1の分解速度)は以下のとおりである。
【0076】
【表20】
【0077】
速度定数を実際の貯蔵条件まで外挿した。
【0078】
【表21】
【0079】
[結論]
組成物2及び組成物3は、安定性が最良となる。
【0080】
更なる試験により、37Cで貯蔵した場合、C088-140219-02の組成物及びC088-140219-03の組成物におけるSkQ1の安定性が確認された(SkQ1分解の徴候は、6ヶ月間検出されなかった)。
【0081】
以下の組成物は更に試験された(pHは中性に近い)。
【0082】
C088-160419-07の組成物は以下のとおりである。
【0083】
【表22】
【0084】
C088-160419-08の組成物は以下のとおりである。
【0085】
【表23】
【0086】
60CでのSkQ1の安定性を実験した結果は以下のとおりである(SkQ1の濃度は、μg/mlで示される)。
【0087】
【表24】
【0088】
予測される分解度は以下に示す。
【0089】
【表25】
【0090】
37Cでの安定性は、C088-160419-07の組成物について実験された。
【0091】
[試料の調製]
1Vの試料に1Vの0.5Mの臭化ナトリウムを添加して、混合しながら15分間加熱し、+9Vの96%エタノールを混合し、遠心分離した。500mlの上清に、水中において500mlの0.1Mリン酸を添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は22倍であった。HPLCの試料容量は100μlであり、検出は260nmでされた。
【0092】
結果は以下のとおりである。
【0093】
【表26】
【0094】
上述のデータに基づき、以下の安定性は、長期貯蔵中の組成物について予測された。
【0095】
【表27】
【0096】
[結論]
組成物の安定性は、特に2~8℃での貯蔵について許容される。結果は、25℃でデータを分析した後に改善できる。
【0097】
更に、本開示者の実験においては、本開示者は、ポリビニルアルコール又はアクアキシルを含む組成物において、SkQ1の許容可能な安定性を実証するデータを得た。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/945,939号の利益を主張し、当該出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、医薬品、薬品、及び化粧品に関する。本開示は、ミトコンドリアを標的とする抗酸化物と、重合体の基質と、選択的に更なる成分とを含む、いくつかの安定な組成物を記載する。
【背景技術】
【0003】
ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物(SkQ、一般式1を参照)は、医薬品組成物又は化粧品組成物に共通の多くの材料を含む組成物において不安定である。上述により、SkQは、医薬品及び/又は化粧品の多くの典型的な成分に対して(適度な貯蔵期間に必須の安定性の観点において)不適合となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物を含む適度に安定した組成物を提供し、ミトコンドリアを標的とするSkQ型の抗酸化物の一般式1は、以下のとおりである。
【0005】
【化1】
【0006】
Aは、構造が以下のキノンの抗酸化物及び/又はその還元(キノール)形態である。
【0007】
【化2】
【0008】
mは1~3の整数であり、Yは、低級アルキル又は低級アルコキシであり、Lは、連結基であり、1以上の置換基で置換可能であり、かつ、1以上の二重結合又は三重結合を含むことが可能な直鎖式又は分鎖式の炭化水素鎖を含む。nは1~40の整数であり、Bは、SkZを含む標的指向化された官能基であり、Skは、親油性の陽イオンであり、Zは、薬理学的に許容される陰イオンである。
【0009】
SkQ1は、SkQ型の化合物類(SkQ類)の非限定的な例である。SkQ1(酸化物形態)の式は、以下のとおりである。
【0010】
【化3】
【0011】
SkQ1は、臭化物又は塩化物の形態で以下の実験において用いられた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、SkQ1を含む化粧品組成物を示すプロット図である。
図2図2は、特異的なSkQ1を含むポリアクリレート組成物の安定性を示すプロット図である。
図3図3は、Carbomer980に基づくゲルの組成物における60℃でのSkQ1の分解の速度を示すプロット図である。
図4図4は、特異的な組成物においてSkQ1の濃度が経時変化する様子を、標準偏差とともに示すプロット図である。
図5図5は、別個の組成物においてSkQ1の濃度が経時変化する様子を、標準偏差とともに示すプロット図である。
図6図6は、様々な組成物におけるSkQ1の分解を経時的に示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示者の実験においては、本開示者は、医薬品及び化粧品の多くの一般的な成分が、SkQを不安定化するゆえに、対応する組成物の貯蔵時間が短くなるため、SkQと適合しないことを実証した。しかしながら、本開示者は、以下の重合体及び他の成分を、組成物においてミトコンドリアを標的とする抗酸化物と組み合わせた場合、SkQが有意に不安定化しないことを見出した(表1参照)。
【0014】
【表1】
【0015】
一部の組成物におけるSkQ1の安定性は、本開示者の実験においては高くなった(実験例1を参照)。当該組成物は以下のとおりである。
【0016】
[組成物1]
3%のプロピレングリコール
5%のペンチレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
様々な濃度、例えば6ug/mlのSkQ1
100%以下の水
【0017】
安定性試験は、実験例1において呈示する。
【0018】
[組成物2]
5%のイソペンチルジオール
3%のアクアキシル(キシリチルグルコシド、無水キシリトール、及びキシリトール)
3%のプロピレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
様々な濃度、例えば6ug/mlのSkQ1
100%以下の水
【0019】
[実験例1]SkQのための適切な重合体の基質としてのポリアクリレート
(A)Carbomer640及びCarbomer641に基づく化粧品配合物の安定性試験
[試料の調製]
1Vの試料と1Vの0.5MのNaBrとを、70℃で振とう機で15分間混合し、9Vのエタノールを添加して、1Vにつき96%分画し、遠心分離した。500mclの上清に、500mclの0.1Mのリン酸を水中において添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は22倍であった。
【0020】
注入量は100μlであり、検出は260nmであった。
【0021】
【表2】
【0022】
60℃でのインキュベーション後の分析結果は以下のとおりである。
【0023】
【表3】
【0024】
上述のデータのプロット図を図1に示す。
【0025】
組成物03及び組成物05は、顕著な(二相性動態の)分解を示した。
【0026】
【表4】
【0027】
特定の安定性は、C088-060819-05-60の組成物についてのみ、初期濃度が10マイクログラム以下である場合に観察される。
【0028】
(プラスチックゼロの新規組成物の安定性実験)
[試料の調製方法]
200mgの試験用ポリアクリレート組成物(正確な重量)をエッペンドルフ試験管に配置し、2容量の水(約400μl)を添加し、30分間(70℃の恒温振とう機で)加熱した。1容量の1MのNaBrを水(約200μl)に添加し、更に30分間(70℃の恒温振とう機で)混合しながら加熱した。2容量の96%エタノール(約400μl)を添加し、渦流で混合し、遠心分離した。900μlの上清を選択し、エタノールに300μlのリン酸溶液を添加し、混合し、遠心分離した。
【0029】
最終希釈比は8倍であった。
【0030】
注入量は100μlであった。
【0031】
試験用ポリアクリレート組成物は以下のとおりである。
【0032】
【表5】
【0033】
安定性の加速試験は60℃で行った。試料は上述のように調製し、HPLC法(100ulの注入量、260nmでの検出)により、SkQ1の濃度について分析した。
【0034】
分析結果は以下のとおりである。
【0035】
【表6】
【0036】
上述のデータのプロット図を図2に示す。
【0037】
実際の貯蔵条件まで速度定数を外挿した。
【0038】
【表7】
【0039】
[結論]
ポリアクリレート組成物におけるSkQ1は、許容可能な安定性を呈示する。
【0040】
(B)グリセロールの存在下におけるCarbomer980に基づくゲル(10uM及び50mMの濃度のSkQ1)の安定性試験
【0041】
【表8】
【0042】
Carbomer980に基づくゲルの組成物における60℃でのSkQ1の分解の速度図3に示す
【0043】
実際の貯蔵条件まで平均速度を外挿した。
【0044】
【表9】
【0045】
[結論]
分解率は初期濃度にわずかに依存し、自己触媒分解機構の欠如を示している。必要な安定性は観察されていない。
【0046】
更なる実験においては、高温での組成物におけるSkQ1の安定性を調査した。対照組成物とともに、以下の組成物(コード:MitoVitan-1-3)を試験した。
【0047】
5%のイソペンチルジオール
3%のアクアキシル(キシリチルグルコシド、無水キシリトール、及びキシリトール)
3%のプロピレングリコール
0.9%のポリアクリル酸ナトリウム
0.3%のエチルヘキシルグリセロール
0.2%の乳酸
6ug/mlのSkQ1
最大100%の水
【0048】
実際の貯蔵条件まで速度定数を外挿した。
【0049】
【表10】
【0050】
MitoVitan-1-3の組成物は、(高温での)加速貯蔵のモデル実験において、許容可能な安定性を呈示している。37℃及び室温での更なる実験は、計算されたものと比較して、当該組成物において、SkQの安定性が更に大きくなることを示した。
【0051】
[上述の実験による更なる結論]
C088-060819-03及びC088-060819-04の組成物の安定性の比較によって、SkQ1が乳酸の添加により安定化することが呈示された。上述の実験は更に、C088-060819-05の組成物に存在する界面活性剤(エチルヘキシルグリセロール)が予想外に不安定化させる効果があることを明らかにし、エチルヘキシルグリセロールのない同一の組成物(C088-060819-03)と比較して、安定性を劇的に悪化させることを明らかにした。
【0052】
本開示者の実験の結果に基づいて、本開示者は、様々なポリアクリレートが、SkQ1と良好に適合し、ミトコンドリアを標的とする抗酸化物の化粧品組成物及び医薬品組成物のための重合体の基剤として作用しうるとの結論づけが可能となる。同時に、最良の適合性(SkQ1の安定性)は、Carbomer640、Carbomer641、及びCarbomer974によって示された。予想外に、Carbomer980は上述より悪化した。
【0053】
ペンチレングリコール及びグリセロールの安定化効果は、更に明らかになった。
【0054】
[実験例2]
(SkQに好適な天然の重合体基質としての寒天及びアガロース)
(А)アガロース及び寒天に基づく組成物
60℃での安定性試験を行った。組成物は以下のとおりである。
5%の寒天(又はアガロース)
1%の乳酸(乳酸ナトリウム)
20%のプロピレングリコール
50ミクロンのSkQ1
【0055】
[試料の調製(試料重量300~500mg)]
300~500mgの組成物(正確な重さ)は、60℃の温度でインキュベートした後に試験管に配置された。収集した試料は、恒温振とう機で70℃で10分間溶融し、約300~500μlの容量のアセトニトリルを添加した(容量は、正確な重量に等しい)。混合物は完全に混合され、14000rpmで10分間遠心分離され、次いで、400μlの上清が、1.5mlの管に移され、600μlのアセトニトリルが添加され、混合され、14000rpmで30分間、完全に遠心分離された。最後に、400μlの上清は、クロマトグラフィのバイアルに移され、600μlの水が添加され、混合物は完全に混合された。3つの試料は、各々の時点において採取された。
【0056】
様々な時点での測定結果は以下のとおりである。
【0057】
【表11】
【0058】
上述のデータのプロット図を図4に示す。
【0059】
実際の貯蔵条件まで速度曲線の初期部分を外挿した。
【0060】
【表12】
【0061】
[結論]
分解の初期段階は、濃度が一定となる第二段階に置き換わる。軟膏は、2~8℃の貯蔵に必要な安定性がない可能性が非常に高い。当該形式の重合体については、用いられる重合体の特性のため、60℃での保存中に得られたデータを、著しく低い温度(25℃、2~8℃)まで外挿することは、完全には正確でない可能性がある。低温下で長時間の実験を行う必要がある(下記参照)。
【0062】
(B)アガロースに基づく組成物
25℃で貯蔵した。組成物は以下のとおりである。
5%の寒天(又はアガロース)
1%の乳酸(乳酸ナトリウム)
20%のプロピレングリコール
50ミクロンのSkQ1
【0063】
試料は、時点あたり3個のエッペンドルフ試験管から25℃で月1回採取した。
【0064】
[試料の調製(試料重量300~500mg)]
試験管は、300~500mgの組成物(正確な重量)を含んだ。25℃でインキュベートした後、試料を恒温振とう機において70℃で10分間溶融し、約300~500μlの容積のアセトニトリルを添加した(容積は正確な質量に等しい)。混合物は完全に混合され、14000rpmで10分間遠心分離された。400μlの上清は、1.5mlの管に移され、600μlのアセトニトリルが添加され、混合され、14000rpmで30分間完全に遠心分離された。400μlの上清は、クロマトグラフィーバイアルに移され、600μlの水が添加され、次いで混合された。最終希釈は12.5倍であり、HPLC注入量は20μlであり、検出は260nmであった。
【0065】
選択した試料の測定結果は、以下のとおりである。
【0066】
【表13】
【0067】
上述のデータのプロット図を図5に示す。
【0068】
[結論]
25℃での6か月間の分解は検出されなかった。
【0069】
同様の結果は、アガロースを寒天に置き換えた場合に25℃で得られた。
【0070】
(B)多重有効性のある化粧用マスクにおけるSkQ1の安定性の実験
【0071】
概要は、以下の表のとおりである。
【0072】
【表14】
【0073】
[全てのマスクの試料の調製]
1Vの試料(約200mg)に1Vの0.5Mの臭化ナトリウムを添加し、混合しながら15分間加熱し、100μlの得られた溶液を取得し、900μlの96%エタノールを徐々に添加し、エタノールを各々に添加した後に混合し、遠心分離した。500mlの上清を取得し、500mlのリン酸を水に添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は40倍であり、HPLC注入量は100μlであった。検出は、260nmで行った。
【0074】
60℃での安定性を試験した。分解曲線(60℃におけるSkQ1の分解速度)図6に示す
【0075】
速度定数を実際の貯蔵条件まで外挿した。
【0076】
【表15】
【0077】
[結論]
組成物2及び組成物3は、安定性が最良となる。
【0078】
更なる試験により、37Cで貯蔵した場合、C088-140219-02の組成物及びC088-140219-03の組成物におけるSkQ1の安定性が確認された(SkQ1分解の徴候は、6ヶ月間検出されなかった)。
【0079】
以下の組成物は更に試験された(pHは中性に近い)。
【0080】
C088-160419-07の組成物は以下のとおりである。
【0081】
【表16】
【0082】
C088-160419-08の組成物は以下のとおりである。
【0083】
【表17】
【0084】
60CでのSkQ1の安定性を実験した結果は以下のとおりである(SkQ1の濃度は、μg/mlで示される)。
【0085】
【表18】
【0086】
予測される分解度は以下に示す。
【0087】
【表19】
【0088】
37Cでの安定性は、C088-160419-07の組成物について実験された。
【0089】
[試料の調製]
1Vの試料に1Vの0.5Mの臭化ナトリウムを添加して、混合しながら15分間加熱し、+9Vの96%エタノールを混合し、遠心分離した。500mlの上清に、水中において500mlの0.1Mリン酸を添加し、遠心分離し、バイアルに移した。最終希釈は22倍であった。HPLCの試料容量は100μlであり、検出は260nmでされた。
【0090】
結果は以下のとおりである。
【0091】
【表20】
【0092】
上述のデータに基づき、以下の安定性は、長期貯蔵中の組成物について予測された。
【0093】
【表21】
【0094】
[結論]
組成物の安定性は、特に2~8℃での貯蔵について許容される。結果は、25℃でデータを分析した後に改善できる。
【0095】
更に、本開示者の実験においては、本開示者は、ポリビニルアルコール又はアクアキシルを含む組成物において、SkQ1の許容可能な安定性を実証するデータを得た。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】追加
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】