(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】癌のイメージングおよび治療のための修飾されたGRPRアンタゴニストペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20230208BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20230208BHJP
C07K 5/078 20060101ALI20230208BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20230208BHJP
A61K 41/17 20200101ALI20230208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230208BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230208BHJP
【FI】
C07K7/00
C07K1/13 ZNA
C07K5/078
A61K51/08 200
A61K41/17
A61P35/00
A61K38/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537116
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020079627
(87)【国際公開番号】W WO2021121734
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504150162
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ウェスター,ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA12
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA17
4C084BA32
4C084CA59
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA15
4H045BA50
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA50
4H045EA51
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、内因性受容体に結合する化合物であって、(i)TrpがジペプチドのC末端アミノ酸である前記ジペプチドを含むオリゴペプチドであって、前記Trpがαアミノ酸Xaa
2で置換されており、これにより、Xaa
2とN末端隣接アミノ酸を連結するペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、TrpとN末端隣接アミノ酸を連結する、その他の点では同一の化合物におけるペプチド結合と比較して増加する、オリゴペプチド、および(ii)治療上有効な放射線を発生させることができる部分であって、前記オリゴペプチドに共有結合している、前記部分、を含む前記化合物に関する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性受容体に結合する化合物であって、
(i)TrpがジペプチドのC末端アミノ酸である前記ジペプチドを含むオリゴペプチドであって、前記Trpがα-アミノ酸Xaa
2で置換されており、これにより、Xaa
2とN末端隣接アミノ酸を連結するペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、TrpとN末端隣接アミノ酸を連結する、その他の点では同一の化合物におけるペプチド結合と比較して増加する、オリゴペプチド、および
(ii)治療上有効な放射線を発生させることができる部分であって、前記オリゴペプチドに共有結合している、前記部分、
を含む前記化合物。
【請求項2】
前記ジペプチド中の前記N末端隣接アミノ酸が、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisまたはGly、好ましくはL-Glnである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記内因性受容体が、ニューロメジンB受容体(ボンベシン1受容体、NMBR)、ガストリン放出ペプチド受容体(ボンベシン2受容体、GRPR)、ボンベシン受容体サブタイプ3(BRS-3)またはコレシストキニン2受容体(CCK-2R)のような、癌疾患で過剰発現するペプチド受容体であり、さらに、好ましくは、
(a)前記結合は、15nM以下のK
Dを有し、および/または
(b)前記化合物は、GRPRアンタゴニストであり、好ましくは、IC
50が15nM以下である、
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)の化合物であって、
S-Y-Xaa
1-Xaa
2-L-Ala-L-Val-Xaa
5-L-His-T(I)
式中、
Sは、治療上活性な放射線を発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa
1は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または
(ii)Xaa
1-Xaa
2ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
1がGlnでありXaa
2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
Xaa
2はTrpまたはXaa
1-Xaa
2ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
1がGlnでありXaa
2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa
1は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa
2はTrpではないことが条件であり、
Xaa
5は、Gly、N-Me-Gly、D-Ala、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
前記化合物。
【請求項5】
Xaa
2は、
(a)(i)α炭素に結合したC1~C4の任意に置換されたアルキル部分であって、置換基はハロゲンおよびヒドロキシルから選択される、アルキル部分、および/または
(ii)インドール環に結合した置換基であって、置換基はN-(2,2,2-トリフルオロメチル)、N-メチル、N-アセチル、5-フルオロ、5-ブロモ、5-ヨード、5-クロロ、5-ヒドロキシ、5-メトキシ、5-メチル、6-クロロ、7-クロロおよび7-アザから選択される、置換基
を含むように修飾されたTrp、
(b)1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(L-Tpi)、
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記任意に置換されたアルキル部分が、-CH
3、-CH
2CH
3、およびCH
nHal
3-n(式中、nは0、1または2であり、Halは、F、Cl、Brおよび/またはIである)、例えば-CF
3から選択され、好ましくは-CH
3である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Xaa
2は、α-Me-Trpである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式(II)の化合物であって、
S-Y-Xaa
3-Xaa
4-L-Ala-L-Val-Xaa
5-L-His-T(II)
式中、
Sは検出可能なシグナルを発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa
3は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または
(ii)Xaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
3がGlnでありXaa
4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して減少するα-アミノ酸であり、
Xaa
4はTrpまたはXaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
3がGlnでありXaa
4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して減少するα-アミノ酸であり、
Xaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性を減少させる、位置Xaa
4の前記α-アミノ酸は、タンパク質構成アミノ酸ではなく、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa
3は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa
4はTrpではないことが条件であり、
Xaa
5は、Gly、N-Me-Gly、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
前記化合物。
【請求項9】
Xaa
3がHseであり、および/またはXaa
4がBtaである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Sが放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される、請求項4~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Sが蛍光性部分、放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項12】
Yが存在し、
(a)1、2、3、4、5または6個の正および/または負の電荷を含む、
(b)1、2、3、4、5または6個のアミノ酸、好ましくは前記アミノ酸中のD-アミノ酸、より好ましくはD-α-アミノ酸を含む、またはそれからなる
(c)PEG
n(式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される整数である)を含む、またはそれからなる、および/または
(d)検出可能なシグナルを発生させることができる部分を含み、
好ましくは、前記リンカーYは、
(i)D-Glu-ウレア-D-Glu、
(ii)任意に、検出可能なシグナルを発生させることができる部分で置換されている、1つまたは2つの2,3-ジアミノプロピオン酸部分、
(iii)D-/L-アスパラギン酸、D-/L-オルニチン、4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン(Pip)、D-/L-2,3-ジアミノプロピオン酸、D-/L-セリン、D-/L-シトルリン部分、L-システイン酸(Ala(SO
3H))、アミノ吉草酸(Ava)、4-アミノ安息香酸(PABA)およびD-Pheから選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、またはそれからなる1、2、3、4、5または6個の連続したアミノ酸、および/または
(iv)p-アミノメチルアニリン-ジグリコール酸(pABza-DIG、AMA-DGA)、および/またはジグリコレート(DIG、DGA)、
を含む、またはそれらからなる、
請求項4~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Tが存在し、
(a)スタチン(Staまたは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、2,6-ジメチルヘプタン、Leuまたはβ-チエニル-L-アラニン(Thi)、
(b)Leu、ノルロイシン(Nle)、Pro、Met、または1-アミノ-1-イソブチル-3-メチル-ブタン、ここで、前記Leuのアミドアミン基はエチル(NH-エチル)またはNH
2(NH-NH
2)で修飾されていてもよい、および/または
(c)(S)-1-((S)-2-アミノ-4-メチルペンチル)ピロリジン-2-カルボキサミド(Leu-ψ(CH
2N)Pro-NH
2)、
を含むかまたはそれからなり、
ただし、Tがアミノ酸であるか、またはアミノ酸で終わる場合、前記アミノ酸のカルボン酸はアミド化されている、
請求項4~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項10~13が請求項1~7のいずれか一項に戻って参照する範囲において、請求項1~7または10~13のいずれか一項に記載の化合物を含むか、またはそれらからなる医薬組成物。
【請求項15】
請求項10~13が請求項8または9に戻って参照する範囲において、請求項8、9または10~13のいずれか一項に記載の化合物を含むか、またはそれらからなる診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
欧米では男性に多い悪性疾患の一つである前立腺癌(PCa)は、病期が進行すると生存率が悪くなるため、依然として医学的処置の難題となっている。診断が早ければ早いほど治療の成功率が高くなることが分かっており、新たな治療法が必要とされている。この数十年、ほぼ腫瘍部位にのみ高速で蓄積する放射性トレーサーに基づいた核医学による癌の診断と治療への関心が高まっている。
【0002】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)トレーサーは、前立腺癌で過剰発現する一方、健康な組織では低発現、クリアランス速度が早い、発生率が高い(全前立腺癌の92%)などの優れた特性を示しており、内部放射線治療やPCaのイメージングによく使用される。しかし、PSMAは、腎臓や唾液腺に取り込まれやすいという欠点があるほか、疾患の初期には発現が少ないという欠点がある。
【0003】
興味深い代替案として、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)もPCaで良好な発現を示し(早期ステージでは最大100%、後期ステージでは60%)、悪性組織で過剰発現し、1つの健康組織(膵臓)でのみ高い発現を示す。これは、腎臓への転移の場合、腎臓での取り込みが高いため、PSMAトレーサーを使用しても適切に検出できない場合に、PSMAと比較して有利になる。さらに、PSMAトレーサーの高濃度蓄積による唾液腺や腎臓へのダメージが、高用量での治療において懸念されていると思われる。
【0004】
GRPRはPCaの早期ステージで高い発現を示すのに対し、PSMAの過剰発現は疾患の後期ステージでより多く観察されることが分かっている。さらに、GRPRの過剰発現は、エストロゲン受容体(ER)に富む乳癌においても認められ、異なる癌や性別に対して同じトレーサーを使用することが可能である。したがって、GRPRトレーサーは、PSMAの発現が低い患者の代替や、腎臓領域にある転移の診断に有用なツールとなる。また、前立腺癌(早期ステージ)の偶発的治療は、発現率が高く、副作用(唾液腺障害)が少ないことから、PSMAトレーサーの代わりにGRPRトレーサーを用いることが有益である。さらに、GRPRは前立腺癌や乳癌で過剰発現しているため、GRPRアンタゴニストは性別に関係なく使用できる可能性がある。
【0005】
現在までに、GRPRのアゴニストとアンタゴニストの両方が臨床の場で使用されてきており、現在も使用されている。アゴニストは患者に適用した後に痛みを伴う副作用を示す一方、非腫瘍組織からの洗い流しが著しく遅いため薬物動態が悪いことから、アンタゴニストの開発が進んでいる。臨床で使用されているGRPR誘導体は、PSMAリガンドに比べて明らかに少ない。しかし、すべてのPCa腫瘍の92%のみがPSMAを発現し、GRPRもすべてのエストロゲン受容体(ER)に富む乳癌の約85%において過剰発現していることから、臨床上の利点があると考えられる。
【0006】
拮抗型GRPR分子の一般的な必要構造は、サブナノモル親和性を持つ天然ボンベシンまたはガストリン放出ペプチド(GRP)のC末端部をベースとした結合ユニットを含む。薬理作用部とN末端キレート剤との間のリンカー部分は、それでも良好な性能を示すトレーサーが存在するため必ずしも必要ではないが、リンカーユニットを用いることで薬物動態の面で有益な効果を示す報告も多くある。
【0007】
GRPRアンタゴニストの中で、誘導体RM2(DOTA-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH2)は、選択的GRPRイメージングおよび治療に最もよく使用される薬剤である。これは、イメージング用に68Ga(88.9%β+、Eβ+,max=1.89MeV、t1/2=68分)で、内部放射線治療用に177Lu(78.6%β-、Eβ,max=0.498MeV、t1/2=6.7日)で主にラベルされており、PCaやERに富む乳癌に適用できるため、今のところGRPRアンタゴニストのゴールデンスタンダードとして考えられている。
【0008】
68Ga-RM2、177Lu-RM2ともに、ヒトにおいて、腫瘍への高い集積、非腫瘍組織からの速いクリアランス、腫瘍内での長時間滞留という良好な薬物動態を示し、それぞれ高いコントラストと良好な治療効果をもたらす。
【0009】
それにもかかわらず、ある種のボンベシンアナログは動物では代謝的に不安定であり、腫瘍組織における必要な蓄積に限界がある。
【0010】
一方、より安定なGRPR誘導体は、GRPRが豊富な膵臓からの洗い流しが遅く、膵炎の可能性があるため、ヒトの治療に使用する前に考慮する必要があることに言及しなければならない。
【0011】
他の悪性適応では、さらに多くのマーカーや標的が注目されている。ニューロメジンB受容体(ボンベシン1受容体、NMBR)、ボンベシン受容体サブタイプ3(BRS-3)およびコレシストキニン2受容体(CCK-2R)などが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、本発明の基礎となる技術的課題は、特に癌の分野において、改善された放射性医薬品および放射性診断薬、薬物動態学的特性を含む改善を提供することにあると考えられる。
【0013】
この技術的課題は、以下に開示する課題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様では、本発明は、内因性受容体に結合する化合物であって、(i)Trpが前記ジペプチドのC末端アミノ酸であるジペプチドを含むオリゴペプチドであって、前記Trpがα-アミノ酸Xaa2で置換されており、これにより、Xaa2とN末端隣接アミノ酸を連結するペプチド結合の血清または血漿(好ましくは哺乳動物の血清または血漿)中での安定性が、TrpとN末端隣接アミノ酸を連結する、その他の点では同一の化合物におけるペプチド結合と比較して増加する、オリゴペプチド、および(ii)治療上有効な放射線を発生させることができる部分であって、前記オリゴペプチドに共有結合している、前記部分、を含む前記化合物に関する。
【0015】
受容体は、その同族リガンドを特異的に結合することができる分子である。「同族リガンド」という用語は、分子の属を指定し、天然リガンドおよび本発明の化合物を包含する。受容体は、好ましくは、ポリペプチドまたはタンパク質である。それは、互いに非共有結合的または共有結合的に連結されてもよい複数のサブユニットを含んでもよい。好ましくは、前記受容体は、膜貫通タンパク質または膜結合タンパク質である。好ましくは、リガンド結合部位は、細胞外に位置する。
【0016】
「内因性」という用語は、ヒトまたは動物体、哺乳動物を含む動物、げっ歯動物を含む哺乳動物における受容体の出現を意味する。好ましい受容体は、以下にさらに開示される好ましい実施形態の対象である。
【0017】
第1の態様の化合物は、2つの部分を含む、またはそれからなる。第1の部分は、標的部分である。それは、上記に開示されたオリゴペプチドを含む、またはそれからなる。第2の部分は、意図された治療効果を伝達する部分であり、それは、第1の態様に従う化合物の場合、放射線である。このように、一般に、標的組織は悪性組織のような過剰増殖組織であるか、またはそれらを含むため、治療には標的組織の破壊が含まれると理解される。
【0018】
以下でさらに明らかになるように、本発明の他の態様において、第2の部分は診断の目的に役立つ。
【0019】
その最も広い定義において、第2の部分は、治療上有効な放射線を発生する能力がなければならないこと以外には特に限定されない。本発明に従って、この能力は、放射性核種によって伝達される。そのような放射性核種は、前記化合物中に存在してもよく、または代替的に、化合物は部分を備えてもよく、前記部分は、今度は放射性核種を担持することが可能である。
【0020】
「オリゴペプチド」という用語は、その技術的に確立された意味を有する。それは、主鎖ペプチド結合によって互いに連結されているアミノ酸の直鎖状配列である。長さの点では、5~20個のアミノ酸が好ましい。これには、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19個のアミノ酸を有するオリゴペプチドが含まれる。好ましいのは、6、7、8、9または10個のアミノ酸である。特に好ましいのは、9または10個のアミノ酸であり、最も好ましいのは9個のアミノ酸である。「オリゴペプチド」という用語は、ペプチド性を意味するが、この用語は、本質的に排他的に優勢なペプチド性ではない化合物も包含する。好ましくは、前記オリゴペプチドがN個のアミノ酸を有すると仮定すると、前記アミノ酸を連結する少なくとも(N-1)/2個の結合は、ペプチド結合である。例えば、前記アミノ酸を連結するN-1、N-2またはN-3個の結合がペプチド結合である。
【0021】
オリゴペプチドのビルディングブロックについても、同様の考察が準用される。すなわち、少なくともN/2個のビルディングブロックはアミノ酸である。例えば、N、N-1、N-2またはN-3のビルディングブロックはアミノ酸である。
【0022】
「アミノ酸」という用語は、カルボキシル基とアミノ基を有する分子を指定する。好ましいアミノ酸は、タンパク質構成アミノ酸を含むα-アミノ酸であるが、β-、γ-またはδ-アミノ酸のような他のアミノ酸も使用してもよい。特に、分子のC末端領域では、γ-アミノ酸が採用されてもよく、さらに以下の好ましい実施形態を参照されたい。
【0023】
全体として、天然に存在する、好ましくはタンパク質構成α-アミノ酸が好ましい。そうは言っても、以下にさらに詳述するように、特定の技術的効果を付与する目的で、1つまたは複数の位置、一般にオリゴヌクレオチドの位置の半分以下は、天然に存在しないアミノ酸または部分である。これらは、本明細書では、修飾アミノ酸または修飾部分とも呼ばれる。このような修飾は、例えば、天然に存在するL-カウンターパートの代わりにD-アミノ酸を使用すること、ならびに/または構成および組成に関する修飾など、立体化学に影響を与える場合がある。
【0024】
アミノ酸が分子の末端に位置しない限り、所与のアミノ酸は主鎖ペプチド結合を介して隣接部位に連結されると理解され、その結果、そのような場合には、遊離カルボン酸および一級アミンが存在しないことになる。
【0025】
前記オリゴペプチドの中で、特に関連しているのは、ジペプチド単位である。前記オリゴペプチド内のジペプチド単位の位置は、特に限定されない。しかし、前記ジペプチド単位がオリゴペプチドのN末端半分の範囲内に位置することが好ましい。
【0026】
前記ジペプチド内では、C末端アミノ酸はトリプトファン誘導体である。多くの場合、言及された内因性受容体の天然に存在するリガンドもまた、本質的にペプチド性であり、対応する位置にトリプトファンを有している。対応する位置とは、天然に存在するリガンドと第1の態様の化合物との配列のアラインメントにおいて整列する位置のことである。
【0027】
本発明に従って、そのようなトリプトファンは修飾される。以下でさらに明らかになるように、好ましい修飾は、インドール環を維持するものである。さらに、アミノ官能基およびカルボキシ官能基は保持される。その意味で、「誘導体」という用語の意味は、それに応じて限定され、誘導体は、芳香族アミノ酸でなければならず、好ましくは2員環、より好ましくはインドール環を有していなければならない。さらに、本発明に従って、トリプトファン誘導体は、α-アミノ酸である。
【0028】
本発明に従って、トリプトファンの修飾は、トリプトファン誘導体(Xaa2とも呼ばれる)をN末端に隣接するアミノ酸と連結するペプチド結合の血清または血漿中での安定性を増加させるのに役立つ。
【0029】
本明細書では、「ペプチド結合の血清または血漿中での安定性の増加」および「ペプチド結合の血清または血漿中での切断の減少」という用語が同等に用いられる。
【0030】
血清または血漿中における安定性は、好ましくは哺乳動物の血清または血漿中における安定性である。特に好ましいのは、好ましい用途の観点から、血清または血漿中の安定性は、ヒト血清または血漿中の安定性である。試験および開発の目的のために、好ましい血清または血漿は、マウス血清または血漿のようなげっ歯動物の血清または血漿である。血清または血漿中の安定性を決定するために、本発明の化合物は、例えば、37℃で3日間(例えば、72±2時間)インキュベートされる。
【0031】
血清または血漿中の安定性を決定するためのアッセイは、当技術分野において十分に確立されており、in vitroおよびin vivoアッセイを含む。例示的または好ましいアッセイは、本明細書に包含される実施例の一部である。安定性が増加するかどうかを決定する目的で、参照化合物が使用される。第1の態様の化合物を評価するための参照化合物は、検討中の化合物と参照化合物との間の唯一の違いが位置Xaa2であるように選択される。参照化合物において、前記位置はトリプトファンである。
【0032】
安定性の増加は、統計的に有意に増加した安定性および/または少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍の安定性増加を意味すると理解されている。言及された増加を決定するための好ましいパラメータは、血清/血漿半減期である。言及された増加を決定するための好ましいパラメータは、ヒト/マウスの血清または血漿中で72±2時間インキュベートした後の未変化の放射性標識化合物の量である。
【0033】
代替の手法では、前記内因性受容体のそれぞれの同族リガンド、または同じ受容体(GRPRが受容体である場合のRM2など、下記も参照)に結合する確立した治療薬を参照化合物として使用してもよい。
【0034】
第1の態様に従う化合物は、向上した薬物動態学的特性を示す。比較のための参照化合物は、上記に規定され、第1の態様に従う化合物がTrp誘導体を有する位置において、未修飾のトリプトファンが前記参照化合物に存在することのみが考慮中の第1の態様に従う化合物から逸脱する化合物である。あるいは、増強は、それぞれの天然リガンドおよび/または同じ受容体を標的とする技術的に確立された治療薬と比較した場合である。GRPRリガンドである第1の態様の化合物が考慮される範囲において、好ましい技術的に確立された化合物は、RM2(DOTA-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH2、ここでキレート剤の略語、ならびに非タンパク質構成アミノ酸は以下でさらに説明する)である。
【0035】
本発明に従う好ましい受容体の天然リガンド、以下にさらに開示される好ましい実施形態の主題である前記好ましい受容体は、以下の通りであり、ニューロメジンB受容体の場合にはニューロメジンB、ガストリン放出ペプチド受容体の場合にはガストリン放出ペプチド、コレシストキニン2受容体の場合にはガストリンである。
【0036】
治療の文脈では、高い腫瘍取り込みおよび/または腫瘍保持が望ましいと理解される。その点に関する証拠は、本明細書に包含される実施例に示されている。
【0037】
高い腫瘍取り込みと保持を達成するための技術的手段は、上に示した通りであり、第1の態様に従う化合物に含まれるジペプチド単位内のペプチド結合を安定化させることである。
【0038】
第1の態様の化合物の好ましい実施形態では、前記ジペプチド中の前記N末端隣接アミノ酸は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisまたはGly、好ましくはL-Glnである。
【0039】
さらに好ましい実施形態では、前記内因性受容体が、ニューロメジンB受容体(ボンベシン1受容体、NMBR)、ガストリン放出ペプチド受容体(ボンベシン2受容体、GRPR)、ボンベシン受容体サブタイプ3(BRS-3)またはコレシストキニン2受容体(CCK-2R)のような、癌疾患で過剰発現するペプチド受容体であり、さらに、好ましくは、(a)前記結合は、50nM以下、15nM以下、5nM以下または1nM以下のKDを有し、および/または(b)前記化合物は、GRPRアンタゴニストであり、好ましくは、IC50が50nM以下、15nM以下、5nM以下または1nM以下である。
【0040】
第1の態様に関連する第2の態様では、本発明は、式(I)の化合物であって、
S-Y-Xaa1-Xaa2-L-Ala-L-Val-Xaa5-L-His-T(I)
式中、
Sは、治療上活性な放射線を発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa1は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または(ii)Xaa1-Xaa2ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa1がGlnでありXaa2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
Xaa2はTrpまたはXaa1-Xaa2ペプチド結合の血清もしくは血漿中での安定性が、Xaa1がGlnでありXaa2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa1は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa2はTrpではないことが条件であり、
Xaa5は、Gly、N-Me-Gly、D-Ala、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
化合物を提供する。
【0041】
第2の態様の化合物は、GRPRである特定の内因性受容体に合わせたものである。そのため、ガストリン放出ペプチド(GRP)である天然の同族リガンドから受け継いだいくつかの特徴を含む。
【0042】
第2の態様に従って、治療上活性な放射線を発生させることができる部分は、N末端に位置する。第2の態様の化合物のコアは、6個のアミノ酸を有するオリゴペプチドであり、本発明に従って安定化されるべきペプチド結合を規定するジペプチドは、コアオリゴペプチドの1位および2位に位置する。
【0043】
任意のリンカーYは、存在してもしなくてもよく、存在する限りにおいて、第2の態様の化合物にさらなるアミノ酸を組み込むための手段であってもよい。
【0044】
また、任意の末端基Tは、第2の態様の化合物のペプチド部分を伸長する手段であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0045】
血清または血漿中の安定性が増加するかどうかを決定するための参照化合物は、Xaa1がGlnであり、Xaa2がTrpであるという点で検討中の式(I)の化合物から逸脱している化合物である。第1の態様の化合物との関連で上述したように、代替の参照化合物を採用してもよく、この代替の参照化合物には、RM2などのGRPRに結合する天然リガンドおよび技術的に確立された医薬品が含まれる。
【0046】
第1および第2の態様の化合物の好ましい実施形態では、Xaa2は、(a)(i)α炭素に結合したC1~C4の任意に置換されたアルキル部分であって、置換基はハロゲンおよびヒドロキシルから選択される、アルキル部分、および/または(ii)インドール環に結合した置換基であって、置換基はN-(2,2,2-トリフルオロメチル)、N-メチル、N-アセチル、5-フルオロ、5-ブロモ、5-ヨード、5-クロロ、5-ヒドロキシ、5-メトキシ、5-メチル、6-クロロ、7-クロロおよび7-アザから選択される、置換基を含むように修飾されたTrp、(b)1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(L-Tpi)である。
【0047】
この好ましい実施形態は、第1および第2の態様の化合物に存在するジペプチド部分の主鎖ペプチド結合の安定性の増加を達成するための特定の構造的手段に関する(第2の態様の化合物の場合、Xaa1-Xaa2と指定される)。
【0048】
これらの構造的基準のうち特に好ましいものは、この好ましい実施形態のパート(a)(i)で規定されるものである。
【0049】
そのより好ましい実施態様は、前記任意に置換されたアルキル部分が、-CH3、-CH2CH3、およびCHnHal3-n(式中、nは0、1または2であり、Halは、F、Cl、Brおよび/またはIである)、例えば-CF3から選択され、好ましくは-CH3である。
最も好ましいのは、Xaa2がα-メチルトリプトファンであることである。
【0050】
第1および第2の態様の好ましい実施形態は、表1Aおよび/またはBの化合物の誘導体である。表1AおよびBの化合物の「誘導体」という用語の説明として、表1AおよびBを以下にさらに提示する。
【0051】
第1および第2の態様の化合物の特に好ましい実施形態は、以下にさらに開示する式(IIIaおよびIIIb)の化合物である。
【0052】
本発明の第3の態様は、式(II)の化合物であって、
S-Y-Xaa3-Xaa4-L-Ala-L-Val-Xaa5-L-His-T(II)
式中、
Sは検出可能なシグナルを発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa3は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または(ii)Xaa3-Xaa4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa3がGlnでありXaa4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して減少するα-アミノ酸であり、
Xaa4はTrpまたはXaa3-Xaa4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa3がGlnでありXaa4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して減少するα-アミノ酸であり、
Xaa3-Xaa4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性を減少させる、位置Xaa4の前記α-アミノ酸は、タンパク質構成アミノ酸ではなく、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa3は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa4はTrpではないことが条件であり、
Xaa5は、Gly、N-Me-Gly、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
化合物に関する。
【0053】
式(II)の化合物は、第2の態様に従う式(I)の化合物と構造的な類似性を示す一方で、オリゴペプチドに含まれるジペプチド部分のペプチド結合が血清または血漿中での安定性で劣る点で区別される。
【0054】
これは、異なるが関連する技術的効果を提供するものである。当技術分野でよく確立されているように、放射性標識化合物は治療だけでなく、診断目的にも有用である。診断の場では、より迅速な分解が望まれる。これは、腫瘍における代謝活性が一般に周囲の正常組織よりも低いためであり、その結果、より迅速な分解はより高い腫瘍/バックグラウンド比を伴い、そのような高い腫瘍/バックグラウンド比は、腫瘍および転移のより高い感度、より詳細なおよび/またはより正確な検出を可能にする。
【0055】
2つの位置Xaa3とXaa4は、第2の態様の化合物の位置Xaa1とXaa2に対応し、整列し、明確にするために単に区別して表示されていることが理解される。具体的な構造的な実装になると、一方ではXaa1とXaa2、他方ではXaa3とXaa4が一般に区別されることになる。このことは、以下にさらに開示される第3の態様の好ましい実施形態の文脈でより明らかになるであろう。
【0056】
安定性の減少を決定する目的では、第1および第2の態様の化合物に関連して上記で説明したことが準用される。したがって、in vitroおよびin vivoの血清または血漿アッセイを使用してもよい。好ましい読み取りは、血清/血漿の半減期である。より好ましい読み取りは、ヒト/マウスの血漿中で72±2時間インキュベートした後の未変化の放射性標識化合物の量である。減少した安定性を決定する目的のための参照化合物は、上記に記載したように、位置Xaa3およびXaa4がそれぞれGlnおよびTrpであるという点においてのみ式(II)の化合物と異なる化合物が含まれる。
【0057】
当技術分野で確立されているように、アミノ酸を指定するために3文字コードが一般に使用される。最初の文字が大文字の場合、L型が意図され、一方、最初の文字が小文字の場合、D型が意図される。例えば、TrpはL-トリプトファンを指し、trpはD-トリプトファンを指す。また、本明細書では、立体化学の明示的な表示を用いる(L-Trp、D-Trpなど)。
【0058】
代替参照化合物は、受容体がGRPRの場合はGRPであるそれぞれの天然リガンド、またはRM2(これはアンタゴニストである)である。
【0059】
式(II)の化合物の好ましい実施形態では、Xaa3はHseであり、および/またはXaa4はBta(3-ベンゾチエニルアラニン)である。
【0060】
第2の態様の化合物の好ましい実施形態では、Sは放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される。
【0061】
第3の態様の化合物の好ましい実施形態では、Sは蛍光性部分、放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される。
【0062】
先の2つの好ましい実施形態は、治療用化合物または診断用化合物のいずれが検討されているかに応じて、部分Sの好ましい実施態様に関する。
【0063】
放射性核種を担持することができる部分の使用がなされる範囲において、前記部分は、好ましくは、金属イオンキレート剤であり、好ましくは、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸または2-[1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-4,7,10-三酢酸]-ペンタンジオ酸(DOTAGA)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスファット)(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボキシ)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(TMT)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6(H2macropa)、4-アミノ-4-{2-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}ヘプタンジオ酸ビス-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-アミド](THP)、6-カルボキシ-1,4,8,11-テトラアザウンデカン(N4)、6-{p-[(カルボキシメトキシ)アセチル]-アミノベンジル}-1,4,8,11-テトラアザウンデカン(N4’)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4.7-三酢酸(DO3A)、S-アセチルメルカプトアセチルトリセリン(MAS3)、メルカプトアセチルトリグリシン(MAG3)、1,4-ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)-6-[ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン(AAZTA)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-2,10-ジオン(TBPD)、9-オキサ-3,6,12,15,21-ペンタアザトリシクロ[15,3,2,1]トリエイコサ-1(21),17,19-トリエン-2,7,11,16-テトラジオン(OPTT)、2-[ビス(カルボキシメチル)アミノメチル]-2-[(4-イソチオシアナトベンジル)オキシ-メチル]プロピレン-1,3-ジニトリロ四酢酸(TAME-Hex)、4-((4-(3-(ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)-2-((ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)メチル)プロピル)フェニル)アミノ)-4-オキソブタン酸(Me-3,2-HOPO)、2,20-(6-((カルボキシメチル)アミノ)-1,4-ジアゼパン-1,4-ジイル)二酢酸)(DATA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](TRAP)およびその機能的誘導体、例えばNOPO(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸])、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](DOTPI)、6,6’-({9-ヒドロキシ-1,5-ビス(メトキシカルボニル)-2,4-ジ(ピリジン-2-イル)-3,7-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-3,7-ジイル}ビス(メチレン))ジピコリン酸(H2bispa2)、1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’-五酢酸(PEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’’-六酢酸(HEHA)、1,2-[{6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル}-メチルアミノ]エタン(H2dedpa)、N,N’-ビス{6-カルボキシ-2-ピリジルメチル}-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(H4octapa)、4,10-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン(CB-DO2A)、1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(TCMC)、1,8-ジアミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]イコサン(sar)およびその機能的誘導体、{4-[2-(ビスカルボキシメチルアミノ)-エチル]-7-カルボキシメチル-[1,4,7]トリアゾナン-1-イル}-酢酸(NETA)、N,N’,N’’,トリス(2-メルカプトエチル)1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN-TM)、2-(p-イソチオシアナトベンジル)-シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CHX-A’’-DTPA)、N,N’-[1-ベンジル-1,2,3-トリアゾール-4-イル]メチル-N,N’-[6-(カルボキシ)ピリジン-2-イル]-1,2-ジアミノエタン(H2azapa)、N,N’-[[6-(カルボキシ)ピリジン-2-イル]メチル]ジエチレントリアミン-N,N’,N’’-三酢酸(H5decapa)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシ-5-スルホベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(SHBED)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、およびN,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]メチル-1,2-ジアミノエタン(H6phospa)、より好ましくはDOTAまたはDOTAGA、から選択され、好ましくは、放射性カチオンが前記キレート剤に結合し、前記放射性カチオンは、好ましくは、43Sc、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、68Ga、67Ga、89Zr、90Y、86Y、94mTc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag、110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、140La、142La、142Pr、143Pr、147Nd、149Gd、149Pm、151Pm、149Tb、152Tb、155Tb、153Sm、156Eu、157Gd、161Tb、164Tb、161Ho、166Ho、157Dy、166Dy、165Dy、160Er、165Er、169Er、171Er、166Yb、169Yb、175Yb、167Tm、172Tm、177Lu、186Re、188Re、188W、191Pt、195mPt、194Ir、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、224Ra、225Ac、および227Th、または18F-[AlF]2+のような18Fを含むカチオン性分子から選択される。
【0064】
治療用化合物の場合、好ましい核種は、177Luである。診断用化合物に好ましい核種の例は、68Gaである。
【0065】
第2および第3の態様の化合物の好ましい実施形態では、リンカーYが存在し、(a)1、2、3、4、5または6個の正および/または負の電荷を含む、(b)1、2、3、4、5または6個のアミノ酸、好ましくは前記アミノ酸中のD-アミノ酸、より好ましくはD-α-アミノ酸を含む、またはそれからなる、(c)PEGn(式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される整数である)を含む、またはそれからなる、および/または(d)検出可能なシグナルを発生させることができる部分を含む。
【0066】
上記好ましい実施形態の項目(d)に従って検出可能なシグナルを発生することができる適切な部分は、蛍光性である部分、または放射性核種を含むかもしくは担持することができる部分であってもよい。後者の例は、フッ化ケイ素アクセプター部分(SiFA)であり、これは、18F標識に使用することができる。このようなSiFA部分を含む本発明の化合物がさらにキレート剤(DOTAまたはDOTAGAなど)を含む限り、このような化合物は2つの放射性核種を含み、したがって診断と治療の両方に使用することが可能である。
【0067】
好ましい実施形態では、前記SiFA部分は、式(VI)で表される構造を有する。
【化1】
式中、
t-Buはtert-ブチル基を示し、
破線は、その部位と化合物の残りの部分をつなぐ結合を示す。
【0068】
リンカーY内のSiFA部分の好ましい付着部位は、2,3-ジアミノプロピオン酸の側鎖であり、前記側鎖は、-CH2-NH2からなり、前記側鎖の末端アミノ基は、式(VI)におけるSiFA部分の自由原子価に結合したカルボキシル基とアミド結合を形成していることが好ましい。
【0069】
フッ化ケイ素アクセプター部分を有するリンカーYは、本発明の全ての態様の化合物の好ましいリンカーYである。
【0070】
さらに好ましい実施形態では、前記リンカーYは、(a)D-Glu-ウレア-D-Glu、(b)任意に、検出可能なシグナルを発生させることができる部分で置換されている、1つまたは2つの2,3-ジアミノプロピオン酸部分、(c)D-/L-アスパラギン酸、D-/L-オルニチン、4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン(Pip)、D-/L-2,3-ジアミノプロピオン酸、D-/L-セリン、D-/L-シトルリン部分、L-システイン酸(Ala(SO3H))、アミノ吉草酸(Ava)、4-アミノ安息香酸(PABA)およびD-Pheから選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、またはそれからなる1、2、3、4、5または6個の連続したアミノ酸、および/または(d)p-アミノメチルアニリン-ジグリコール酸(pABza-DIGまたはAMA-DGAと略記)、および/またはジグリコレート(DIGまたはDGAと略記)、を含むまたはそれからなる。
【0071】
特に好ましいのは、YがPip-pheであることである。
【0072】
この好ましい実施形態の項目(a)に従ったD-Glu-ウレア-D-Glu部分は、化合物をより親水性にするための手段であると考えられる。
【0073】
第2および第3の態様の化合物のさらに好ましい実施形態では、すなわち治療活性剤と診断活性剤の両方では、末端基Tが存在し、(a)スタチン(Staまたは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、2,6-ジメチルヘプタン、Leuまたはβ-チエニル-L-アラニン(Thi)、および/または(b)Leu、ノルロイシン(Nle)、Pro、Met、または1-アミノ-1-イソブチル-3-メチル-ブタン、ここで、前記Leuのアミドアミン基はエチル(NH-エチル)またはNH2(NH-NH2)で修飾されていてもよい、および/または(c)(S)-1-((S)-2-アミノ-4-メチルペンチル)ピロリジン-2-カルボキサミド(Leu-ψ(CH2N)Pro-NH2)、を含むまたはそれからなり、ただし、Tがアミノ酸であるか、またはアミノ酸で終わる場合、前記アミノ酸のカルボン酸はアミド化されている。
【0074】
特に好ましいのは、TがSta-Leu-NH2であることである。
【0075】
部分YおよびTの好ましい選択に関しては、一般に、本発明の治療用化合物と診断用化合物との間に区別はない。
【0076】
すでに上記でさらに述べたように、本発明のすべての態様の化合物の好ましい実施形態では、前記血清または血漿は、ヒト血清または血漿である。すなわち、特に重要なのは、それぞれヒト血清または血漿中での安定性の増加または減少である。
【0077】
以下の表1Aは、既知のGRPR結合剤の配列を示す。式(I)の化合物の場合にはXaa1で始まりL-Hisで終わり、式(II)の化合物の場合にはXaa3で始まりL-Hisで終わるヘキサペプチド配列は、以下の表の7位から12位に対応する。認識できるように、この表に全体的に示されるGRPR結合剤は、8位(これは、Xaa2およびXaa4の位置にそれぞれ対応する)にトリプトファンを有する。7位(Xaa1、Xaa3にそれぞれ対応する)は高度に保存されている。以下の表から明らかなように、当技術分野では、7位と8位(表中の番号)を連結するペプチド結合が、薬物動態学的特性を微調整するための標的部位であることは認識されていない。
【0078】
表1Bおよび1Cは、修飾GRPRに作用するリガンドの配列、ならびに異なるGRPR標的化合物への8位のα-Me-TrpもしくはBta部分または7位のHse部分のいずれかの導入の効果を示す。表1Aと同様に、式(I)の化合物の場合にはXaa1で始まりL-Hisで終わり、式(II)の化合物の場合にはXaa3で始まりL-Hisで終わるヘキサペプチド配列は、7位から12位に対応する。
【0079】
GRPR標的直鎖ペプチドの代謝分解から生じる問題は、疎水性アミノ酸(例えばトリプトファン)のN末端側で直鎖ペプチドを切断することが知られている中性エンドペプチダーゼ(NEP、EC3.4.24.11)によるものと示唆されている。したがって、これらのペプチドは、ほとんどすべてのGRPRに作用する化合物に存在するジペプチド性Gln7-Trp8モチーフで切断されると推測される(表1A)。上記の位置にα-Me-TrpまたはHseを導入した場合に、ヒト血清または血漿中での代謝安定性が増加することを証明するために、異なるGRPR標的リガンドを合成し、上記の修飾を導入した。表1Bに示すほぼすべての評価済みGRPR標的ペプチドについて、Trp8をα-Me-Trp8で置換またはGln7をHse7で置換すると、それぞれのGln7-Trp8を含む誘導体と比較して代謝安定性が増加した(表1C)。これらの誘導体の多くでは、α-Me-Trpの添加によってGRPRの親和性が劇的に低下することはなかった。しかし、Gln7をHse7で置換すると、ほとんどのリガンドに対してGRPRの親和性が明らかに低下した。しかし、Hse部分による安定化効果も認められた。
【0080】
同様に、ヒト血清または血漿中の代謝安定性の減少を証明するために、Btaを上記の位置に導入した。表1Bに示す評価済みのGRPRに作用する化合物のほとんどについて、Trp8をBta8で置換すると、それぞれのGln7-Trp8を含む誘導体と比較して、実際に代謝安定性が減少した(表1C)。GRPR親和性は、表1Bに示したほとんどの誘導体において、Btaの添加による劇的な影響は受けなかった。
【0081】
したがって、GRPR標的リガンドに関しては、Gln7-Trp8ジペプチドのN末端およびC末端側にどのアミノ酸が配置されているかは重要ではない、と結論づけられる。一般に、Bta8を導入すると代謝安定性が減少するが、α-Me-Trp8またはHse7を導入するとヒト血清または血漿中の代謝安定性が増加する。したがって、これらの修飾(α-Me-Trp8、Bta8、Hse7)により、GRPR標的化合物全般の幅広い応用が可能になる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
本発明の好ましい化合物には、表1Aおよび1Bに示される化合物の誘導体が含まれる。前記誘導体は、好ましくは表1Aおよび1Bの化合物と異なり、7位および/または8位(表中の番号付け)が本発明に従って修飾されていることのみ異なる。
【0088】
一例を挙げると、表1Aのいずれかの化合物において、トリプトファンをα-メチルトリプトファンで置換することにより、本発明の第1および第2の態様に従う好ましい化合物を得ることができる。
【0089】
同様に、表1Aの化合物の7位において、Gln(またはこれが適用される場合、Hisまたはgln)をHseで置換してもよく、表1Aの化合物の8位において、TrpをBtaで置換してもよく、それにより、本発明の第3の態様に従う好ましい化合物を得ることができる。
【0090】
Xaa1からXaa4の特に好ましい修飾に適用されることは、第1、第2または第3の態様の化合物と関連してであっても、本明細書で上記に開示されるこれらの4つの位置での修飾のいずれにも準用される。
【0091】
第4の態様-これは第1および第2の態様の好ましい実施形態でもある-では、本発明は、式(IIIa)または(IIIb)の化合物を提供する。
【化2】
【0092】
第5の態様-これは第3の態様の好ましい態様でもある-では、本発明は、式(IV)または(V)の化合物を提供する。
【化3】
【0093】
第6の態様では、本発明は、医薬に使用するための、前述の請求項のいずれか一項に記載の化合物を提供する。
【0094】
第7の態様では、本発明は、第1、第2または第4の態様の化合物を含むか、またはそれからなる医薬組成物を提供する。
【0095】
第8の態様では、本発明は、第3または第5の態様の化合物を含むか、またはそれからなる診断用組成物を提供する。
【0096】
あまり好ましくはないが、本発明は、さらなる態様として、第1、第2または第4の態様の化合物を含むか、またはそれからなる診断用組成物を提供する。また、あまり好ましくないが、さらなる態様は、第3または第5の態様の化合物を含むか、またはそれからなる医薬組成物に関する。
【0097】
本発明の医薬組成物および診断用組成物では、前記化合物は唯一の活性剤であってもよい。また、本発明の医薬組成物において、第1、第2または第4の態様の化合物を2つ以上利用することも可能であり、本発明の診断用組成物において、第3または第5の態様の化合物を2つ以上利用することも可能である。
【0098】
また、あまり好ましくないが、1つまたは複数の本発明の化合物に加えて、さらなる薬学的活性剤または診断活性剤が存在する、本発明の医薬組成物および診断用組成物も想定される。
【0099】
医薬組成物または診断用組成物は、薬学的または診断学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含んでもよい。適切な担体、賦形剤および/または希釈剤の例は当技術分野でよく知られており、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルションなどのエマルション、様々な種類の湿潤剤、無菌溶液などが含まれる。このような担体を含む組成物は、よく知られた従来の方法によって製剤化することができる。これらの医薬組成物および診断用組成物は、適切な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与は、異なる方法、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻内または気管支内投与によって行うことができ、静脈内投与が好ましい。特に、前記投与が注射によって行われることが好ましい。組成物はまた、標的部位に直接、例えば、外部または内部の標的部位への微粒子銃送達によって投与してもよい。投与レジメンは、主治医および臨床的要因によって決定される。医療技術においてよく知られているように、任意の1人の患者に対する投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全身状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む多くの要因に依存する。
【0100】
本発明の放射性標識(例えば、177Luで)化合物の好ましい投与量は、1~100GBq、2~60GBq、2~50GBq、2~10GBq、または3~6GBqである。
【0101】
本発明に従う好ましい医療適用は、過剰増殖疾患、より好ましくは悪性疾患である。
【0102】
したがって、第9の態様では、本発明は、癌を処置する方法において使用するための、第7の態様の医薬組成物または第1、第2もしくは第4の態様のいずれか1つの化合物を提供し、前記癌は、(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられ、および/または(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択される。
【0103】
同様に、本発明は、第10の態様では、癌を診断する方法において使用するための、第8の態様の診断用組成物または第3もしくは第5の態様の化合物を提供し、前記癌は、(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられ、および/または(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択される。
【0104】
第11の態様では、本発明は、癌を診断するin vitro方法を提供し、前記癌は、(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられ、および/または(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択され、前記方法は第8の態様の診断用組成物または第3もしくは第5の態様の化合物を、対象から得た試料に接触させることを含む。
【0105】
本明細書、特に特許請求の範囲において特徴付けられる実施形態に関して、従属請求項に記載された各実施形態は、当該従属請求項が依存する各請求項(独立または従属)の各実施形態と組み合わされることが意図される。例えば、3つの選択肢A、BおよびCを記載する独立請求項1、3つの選択肢D、EおよびFを記載する従属請求項2、ならびに請求項1および2に依存し3つの選択肢G、HおよびIを記載する請求項3の場合、この明細書は、特に明記しない限り、組合せA、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iに対応する実施形態を明確に開示すると理解されよう。
【0106】
同様に、独立請求項および/または従属請求項が代替案を記載していない場合にも、従属請求項が複数の先行請求項を参照している場合には、それによってカバーされる主題の任意の組合せが明示的に開示されているとみなされることが理解される。例えば、独立請求項1、請求項1を参照する従属請求項2、ならびに請求項2および1の両方を参照する従属請求項3の場合、請求項3および1の主題の組合せは、請求項3、2および1の主題の組合せと同様に明瞭にはっきりと開示されているということになる。請求項1から3のいずれか一項を参照するさらなる従属請求項4が存在する場合、請求項4および1、請求項4、2および1、請求項4、3および1、ならびに請求項4、3、2および1の主題の組合せは、明瞭にはっきりと開示されているということになる。
【0107】
本発明は、以下の項目を含む。
1.内因性受容体に結合する化合物であって、
(i)Trpが前記ジペプチドのC末端アミノ酸であるジペプチドを含むオリゴペプチドであって、前記Trpがα-アミノ酸Xaa
2で置換されており、これにより、Xaa
2とN末端隣接アミノ酸を連結するペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、TrpとN末端隣接アミノ酸を連結する、その他の点では同一の化合物におけるペプチド結合と比較して増加する、オリゴペプチド、および
(ii)治療上有効な放射線を発生させることができる部分であって、前記オリゴペプチドに共有結合している、前記部分、
を含む前記化合物。
2.前記ジペプチド中の前記N末端隣接アミノ酸が、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisまたはGly、好ましくはL-Glnである、項目1に記載の化合物。
3.前記内因性受容体が、ニューロメジンB受容体(ボンベシン1受容体、NMBR)、ガストリン放出ペプチド受容体(ボンベシン2受容体、GRPR)、ボンベシン受容体サブタイプ3(BRS-3)またはコレシストキニン2受容体(CCK-2R)のような、癌疾患で過剰発現するペプチド受容体であり、さらに、好ましくは、
(a)前記結合は、15nM以下のK
Dを有し、および/または
(b)前記化合物は、GRPRアンタゴニストであり、好ましくは、IC
50が15nM以下である、
項目1または2に記載の化合物。
4.式(I)の化合物であって、
S-Y-Xaa
1-Xaa
2-L-Ala-L-Val-Xaa
5-L-His-T(I)
式中、
Sは、治療上活性な放射線を発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa
1は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または
(ii)Xaa
1-Xaa
2ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
1がGlnでありXaa
2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
Xaa
2はTrpまたはXaa
1-Xaa
2ペプチド結合の血清もしくは血漿中での安定性が、Xaa
1がGlnでありXaa
2がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa
1は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa
2はTrpではないことが条件であり、
Xaa
5は、Gly、N-Me-Gly、D-Ala、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
化合物。
5.Xaa
2は、
(a)(i)α炭素に結合したC1~C4の任意に置換されたアルキル部分であって、置換基はハロゲンおよびヒドロキシルから選択される、アルキル部分、および/または
(ii)インドール環に結合した置換基であって、置換基はN-(2,2,2-トリフルオロメチル)、N-メチル、N-アセチル、5-フルオロ、5-ブロモ、5-ヨード、5-クロロ、5-ヒドロキシ、5-メトキシ、5-メチル、6-クロロ、7-クロロおよび7-アザから選択される、置換基、
を含むように修飾されたTrp、
(b)1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸(L-Tpi)
である、項目1から4のいずれか一項に記載の化合物。
6.前記任意に置換されたアルキル部分が、-CH
3、-CH
2CH
3、およびCH
nHal
3-n(式中、nは0、1または2であり、Halは、F、Cl、Brおよび/またはIである)、例えば-CF
3から選択され、好ましくは-CH
3である、項目5に記載の化合物。
7.Xaa
2は、α-Me-Trpである、項目1から6のいずれか一項に記載の化合物。
8.式(II)の化合物であって、
S-Y-Xaa
3-Xaa
4-L-Ala-L-Val-Xaa
5-L-His-T(II)
式中、
Sは検出可能なシグナルを発生させることができる部分であり、
Yは任意のリンカーであり、
Xaa
3は、(i)L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisもしくはGly、好ましくはL-Glnであり、または
(ii)Xaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
3がGlnでありXaa
4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して減少するα-アミノ酸であり、
Xaa
4はTrpまたはXaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性が、Xaa
3がGlnでありXaa
4がTrpである、その他の点では同一の化合物における場合と比較して増加するα-アミノ酸であり、
Xaa
3-Xaa
4ペプチド結合の血清または血漿中での安定性を減少させる、位置Xaa
4の前記αアミノ酸は、タンパク質構成アミノ酸ではなく、
ただし、同時にそれぞれ、Xaa
3は、L-Gln、D-Gln、L-His、D-HisおよびGlyのいずれか一つではなく、Xaa
4はTrpではないことが条件であり、
Xaa
5は、Gly、N-Me-Gly、β-Alaまたは2-アミノイソ酪酸(Aib)、好ましくはGlyであり、
Tは任意の末端基である、
化合物。
9.Xaa
3がHseであり、および/またはXaa
4がBtaである、項目8に記載の化合物。
10.Sが放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される、項目4から7のいずれか一項に記載の化合物。
11.Sが蛍光性部分、放射性部分および放射性核種を担持可能な部分から選択される、項目8または9に記載の化合物。
12.放射性核種を担持することができる前記部分は、金属イオンキレート剤であり、好ましくは、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸または2-[1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-4,7,10-三酢酸]-ペンタンジオ酸(DOTAGA)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスファット)(DPDP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボキシ)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(TMT)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6(H
2macropa)、4-アミノ-4-{2-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバモイル]-エチル}ヘプタンジオ酸ビス-[(3-ヒドロキシ-1,6-ジメチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-イルメチル)-アミド](THP)、6-カルボキシ-1,4,8,11-テトラアザウンデカン(N4)、6-{p-[(カルボキシメトキシ)アセチル]-アミノベンジル}-1,4,8,11-テトラアザウンデカン(N4’)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4.7-三酢酸(DO3A)、S-アセチルメルカプトアセチルトリセリン(MAS3)、メルカプトアセチルトリグリシン(MAG3)、1,4-ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)-6-[ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン(AAZTA)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-2,10-ジオン(TBPD)、9-オキサ-3,6,12,15,21-ペンタアザトリシクロ[15,3,2,1]トリエイコサ-1(21),17,19-トリエン-2,7,11,16-テトラジオン(OPTT)、2-[ビス(カルボキシメチル)アミノメチル]-2-[(4-イソチオシアナトベンジル)オキシ-メチル]プロピレン-1,3-ジニトリロ四酢酸(TAME-Hex)、4-((4-(3-(ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)-2-((ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)メチル)プロピル)フェニル)アミノ)-4-オキソブタン酸(Me-3,2-HOPO)、2,20-(6-((カルボキシメチル)アミノ)-1,4-ジアゼパン-1,4-ジイル)二酢酸)(DATA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](TRAP)およびその機能的誘導体、例えばNOPO(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸])、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](DOTPI)、6,6’-({9-ヒドロキシ-1,5-ビス(メトキシカルボニル)-2,4-ジ(ピリジン-2-イル)-3,7-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-3,7-ジイル}ビス(メチレン))ジピコリン酸(H2bispa2)、1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’-五酢酸(PEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’’-六酢酸(HEHA)、1,2-[{6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル}-メチルアミノ]エタン(H
2dedpa)、N,N’-ビス{6-カルボキシ-2-ピリジルメチル}-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(H
4octapa)、4,10-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン(CB-DO2A)、1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(TCMC)、1,8-ジアミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]イコサン(sar)およびその機能的誘導体、{4-[2-(ビスカルボキシメチルアミノ)-エチル]-7-カルボキシメチル-[1,4,7]トリアゾナン-1-イル}-酢酸(NETA)、N,N’,N’’,トリス(2-メルカプトエチル)1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN-TM)、2-(p-イソチオシアナトベンジル)-シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(CHX-A’’-DTPA)、N,N’-[1-ベンジル-1,2,3-トリアゾール-4-イル]メチル-N,N’-[6-(カルボキシ)ピリジン-2-イル]-1,2-ジアミノエタン(H
2azapa)、N,N’-[[6-(カルボキシ)ピリジン-2-イル]メチル]ジエチレントリアミン-N,N’,N’’-三酢酸(H
5decapa)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシ-5-スルホベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(SHBED)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、およびN,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]メチル-1,2-ジアミノエタン(H
6phospa)、より好ましくはDOTAまたはDOTAGA、から選択され、
好ましくは、放射性カチオンが前記キレート剤に結合し、
前記放射性カチオンは、好ましくは、
43Sc、
44Sc、
47Sc、
51Cr、
52mMn、
58Co、
52Fe、
56Ni、
57Ni、
62Cu、
64Cu、
67Cu、
66Ga、
68Ga、
67Ga、
89Zr、
90Y、
86Y、
94mTc、
99mTc、
97Ru、
105Rh、
109Pd、
111Ag、
110mIn、
111In、
113mIn、
114mIn、
117mSn、
121Sn、
127Te、
140La、
142La、
142Pr、
143Pr、
147Nd、
149Gd、
149Pm、
151Pm、
149Tb、
152Tb、
155Tb、
153Sm、
156Eu、
157Gd、
161Tb、
164Tb、
161Ho、
166Ho、
157Dy、
166Dy、
165Dy、
160Er、
165Er、
169Er、
171Er、
166Yb、
169Yb、
175Yb、
167Tm、
172Tm、
177Lu、
186Re、
188Re、
188W、
191Pt、
195mPt、
194Ir、
197Hg、
198Au、
199Au、
212Pb、
203Pb、
211At、
212Bi、
213Bi、
223Ra、
224Ra、
225Ac、および
227Th、または
18F-[AlF]
2+のような
18Fを含むカチオン性分子から選択される。
13.Yが存在し、
(a)1、2、3、4、5または6個の正および/または負の電荷を含む、
(b)1、2、3、4、5または6個のアミノ酸、好ましくは前記アミノ酸中のD-アミノ酸、より好ましくはD-αアミノ酸を含む、またはそれからなる、
(c)PEG
n(式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される整数である)を含む、またはそれからなる、および/または
(d)検出可能なシグナルを発生させることができる部分を含む、
項目4から12のいずれか一項に記載の化合物。
14.前記リンカーYは、
(a)D-Glu-ウレア-D-Glu、
(b)任意に、検出可能なシグナルを発生させることができる部分で置換されている、1つまたは2つの2,3-ジアミノプロピオン酸部分、
(c)D-/L-アスパラギン酸、D-/L-オルニチン、4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン(Pip)、D-/L-2,3-ジアミノプロピオン酸、D-/L-セリン、D-/L-シトルリン部分、L-システイン酸(Ala(SO
3H))、アミノ吉草酸(Ava)、4-アミノ安息香酸(PABA)およびD-Pheから選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、またはそれからなる1、2、3、4、5または6個の連続したアミノ酸、および/または
(d)p-アミノメチルアニリン-ジグリコール酸(pABza-DIG、AMA-DGA)、および/またはジグリコレート(DIG、DGA)、
を含む、またはそれからなる、項目13に記載の化合物。
15.Tが存在し、
(a)スタチン(Staまたは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、2,6-ジメチルヘプタン、Leuまたはβ-チエニル-L-アラニン(Thi)、
(b)Leu、ノルロイシン(Nle)、Pro、Met、または1-アミノ-1-イソブチル-3-メチル-ブタン、ここで、前記Leuのアミドアミン基はエチル(NH-エチル)またはNH
2(NH-NH
2)で修飾されていてもよい、および/または
(c)(S)-1-((S)-2-アミノ-4-メチルペンチル)ピロリジン-2-カルボキサミド(Leu-ψ(CH
2N)Pro-NH
2)、
を含むかまたはそれからなる、
ただし、Tがアミノ酸であるか、またはアミノ酸で終わる場合、前記アミノ酸のカルボン酸はアミド化されている、
項目4から14のいずれか一項に記載の化合物。
16.前記血清または血漿は、ヒト血清または血漿である、項目1から15のいずれか一項に記載の化合物。
17.式(IIIa)または(IIIb)の化合物。
【化4】
18.式(IV)または(V)の化合物。
【化5】
19.医薬に使用するための、項目1から18のいずれか一項に記載の化合物。
20.項目10から16が項目1から7のいずれか一項に戻って参照する範囲において、項目1から7または10から17のいずれか一項に記載の化合物を含むか、またはそれからなる医薬組成物。
21.項目10から16が項目8または9に戻って参照する範囲において、項目8、9、10から16または18のいずれか一項に記載の化合物を含むか、またはそれからなる診断用組成物。
22.癌を処置する方法において使用するための、項目20の医薬組成物または項目10から16が項目1から7のいずれか一項に戻って参照する範囲において、項目1から7または10から17のいずれか一項に記載の化合物であって、前記癌は、
(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられる、および/または
(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択される。
23.癌を診断する方法において使用するための、項目21の診断用組成物または項目10から16が項目8または9に戻って参照する範囲において、項目8、9、10から16または18のいずれか一項に記載の化合物であって、前記癌は、
(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられる、および/または
(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択される。
24.癌を診断するin vitroの方法であって、前記癌は、
(a)前記受容体の過剰発現によって特徴付けられる、および/または
(b)前立腺癌、乳癌、神経内分泌腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、頭頚部扁平上皮癌、神経/膠芽腫、大腸癌および、前記受容体がCCK-2Rの範囲では甲状腺髄様癌(MTC)から選択され、
前記方法が、項目20の診断組成物または項目10から16が項目8または9に戻って参照する範囲において、項目8、9、10から16または18のいずれか一項に記載の化合物を、対象から得られたサンプルと接触させるステップを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】ヒト血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]RM2(t
R=15.3分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、2つの重要な代謝物(t
R=2.9分、54%およびt
R=8.5分、9%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=15.3分、36%)が表示される。
【
図2】ヒト血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(t
R=16.1分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、2つの重要な代謝物(t
R=3.4分、30%およびt
R=8.6分、8%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=15.3分、56%)が表示される。
【
図3】ヒト血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(t
R=17.9分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、2つの代謝物(t
R=3.1分、79%およびt
R=12.3分、8%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=17.9分、12%)が表示される。
【
図4】ヒト血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]AMTG(t
R=17.0分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、2つの代謝物(t
R=1.7分、2%およびt
R=8.0分、5%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=17.0分、92%)が表示される。
【
図5】マウス血漿中、37℃で6±0.5時間インキュベートした後の[
177Lu]RM2(t
R=15.5分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、3つの代謝物(t
R=3.1分、2%、t
R=8.2分、2%およびt
R=17.3分、4%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=17.0分、92%)が表示される。
【
図6】マウス血漿中、37℃で6±0.5時間インキュベートした後の[
177Lu]AMTG(t
R=17.0分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、3つの代謝物(t
R=2.6分、2%、t
R=13.7分、2%およびt
R=18.8分、5%)と、残存する未変化のトレーサー(t
R=17.0分、89%)が表示される。
【
図7】マウス血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]RM2(t
R=15.5分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、いくつかの少量の代謝物と、残存する未変化のトレーサー(t
R=15.5分、67%)が表示される。
【
図8】マウス血漿中、37℃で72±2時間インキュベートした後の[
177Lu]AMTG(t
R=17.0分、20分間で20→35%)の分析結果の図である。クロマトグラムには、いくつかの代謝物と、残存する未変化のトレーサー(t
R=17.0分、59%)が表示される。
【
図9】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の1時間p.i.における選択された器官での[
177Lu]RM2(白)、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(黒)および[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(斜線)の生体分布(%ID/gで)を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図10】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウスの1時間p.i.における[
177Lu]RM2(白)、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(黒)および[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(斜線)の選択された器官の腫瘍/バックグラウンド比を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図11】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の24時間p.i.における選択された器官での[
177Lu]RM2(白)、[
177Lu]NeoBOMB1(灰色)、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(黒)、[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(斜線)、[
177Lu]AMTG(点)および[
177Lu]AMTG2(四角)の生体分布(%ID/gで)を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図12】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウスの24時間p.i.における[
177Lu]RM2(白)、[
177Lu]NeoBOMB1(灰色)、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(黒)、[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(斜線)、[
177Lu]AMTG(点)および[
177Lu]AMTG2(四角)の選択された器官の腫瘍/バックグラウンド比を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図13】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の1時間p.i.における選択された器官での[
99mTc]N
4-asp-MJ9(灰色、斜線)、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9(灰色、点)、[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9(灰色、れんが)および[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9(灰色、四角)の生体分布(%ID/gで)を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図14】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の4時間p.i.における選択された器官での[
99mTc]N
4-asp-MJ9(灰色、斜線)、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9(灰色、点)、[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9(灰色、れんが)および[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9(灰色、四角)の生体分布(n=1)(%ID/gで)を示す図である。
【
図15】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウスの1時間p.i.における[
99mTc]N
4-asp-MJ9(灰色、斜線)、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9(灰色、点)、[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9(灰色、れんが)および[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9(灰色、四角)の選択された器官の腫瘍/バックグラウンド比を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図16】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウスの1時間p.i.における[
99mTc]N
4-asp-MJ9(灰色、斜線)、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9(灰色、点)、[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9(灰色、れんが)および[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9(灰色、四角)の選択された器官の腫瘍/バックグラウンド比(n=1)を示す図である。
【
図17】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各200pmol)の1時間p.i.(上)および4時間p.i.(下)における[
99mTc]N
4-asp-MJ9、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9、[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9および[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9の最大強度投影(背側)を示す図である。PC-3腫瘍は白い矢印で表されている。
【
図18】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の24時間p.i.における選択された器官での[
177Lu]GT50(濃灰色、斜線)、[
177Lu]GT51(濃灰色、点)、[
177Lu]GT52(濃灰色、れんが)、[
177Lu]GT53(濃灰色、四角)の生体分布(%ID/gで)を示す図である。データを平均±SDで表す(n=4)。
【
図19】PC-3腫瘍保持CB17-SCIDマウス(各100pmol)の1、4、8、24および28時間p.i.における[
177Lu]RM2(上)および[
177Lu]AMTG(下)の最大強度投影(背側)を示す図である。PC-3腫瘍は白い矢印で表されている。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0109】
実施例は、本発明を説明するものである。
実施例1
材料及び方法(一般)
Fmoc-(9-フルオレニルメトキシカルボニル-)および他のすべての保護されたアミノ酸アナログは、Bachem(Bubendorf、Switzerland)、Sigma-Aldrich(Munich、Germany)またはIris Biotech(Marktredwitz、Germany)から購入する。H-RinkアミドChemMatrix(登録商標)樹脂(35~100メッシュ粒子サイズ、0.4~0.6mmol/g充填)は、Sigma-Aldrich(Munich、Germany)から購入する。Chematech(Dijon、France)は、キレート剤であるDOTA(tBu)3とDOTAGA(tBu)4を送達する。
【0110】
必要な溶媒およびその他の有機試薬は、Alfa Aesar(Karlsruhe、Germany)、Sigma-Aldrich(Munich、Germany)またはVWR(Darmstadt、Germany)のいずれかから購入する。ペプチドの固相合成は、Scilogex MX-RL-E Analog Rotisserie Tube Rotator(Scilogex、Rocky Hill、CT、USA)を用いた手動操作により実施する。
【0111】
分析および分取用逆相高圧クロマトグラフィー(RP-HPLC)は、SPD-20A UV/Vis検出器(220nm、254nm)を備えたShimadzuグラジエントシステム(Shimadzu Deutschland GmbH、Neufahrn、Germany)により実施する。すべてのHPLC操作の溶出液として、水(0.1%TFA)中のアセトニトリル(0.1%TFA)の異なるグラジエントを使用した。
【0112】
分析測定には、Nucleosil 100 C18(125×4.6mm、5μm粒子サイズ)カラム(CS GmbH、Langerwehe、Germany)を流速1mL/分で使用する。比勾配とそれに対応する保持時間tRの両者および容量係数K’は本文中に引用する。
【0113】
分取HPLC精製は、Multospher 100 RP 18(250×10mm、5μm粒子サイズ)カラム(CS GmbH、Langerwehe、Germany)を用いて、5mL/分の定流速で行う。
【0114】
分析および分取用放射性RP-HPLCは、Nucleosil 100 C18(5μm、125×4.0mm)カラム(CS GmbH、Langerwehe、Germany)を用いて実施する。
【0115】
物質の特性評価のためのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトルは、expressionLCMS質量分析計(Advion Ltd.、Harlow、UK)で取得される。放射活性は、紫外線光度計の出口をEG&G Ortec(Munich、Germany)のNaI(Tl)ウェル型シンチレーションカウンターに連結することで検出する。
【0116】
放射活性プローブは、WIZARD2(登録商標)2480 Automatic γ-Counter(Perkin Elmer、Waltham、MA、USA)で測定し、IC50値の決定はGraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA、USA)を用いて行った。
【0117】
放射性TLCには、Laura(商標)ソフトウェア(LabLogic SystemsLtd.、Broomhill、Sheffield、United Kindom)付きScan-RAM(商標)Scannerを使用する。
【0118】
実施例2
合成プロトコール
Fmoc戦略による固相ペプチド合成
樹脂上でのペプチド形成
それぞれの側鎖が保護されたFmoc-AA-OH(1.5当量)をNMPに溶解し、TBTU(1.5当量)、HOAt(1.5当量)およびDIPEA(4.5当量)を加えて予備活性化させる。10分間活性化した後、この溶液を樹脂に結合した遊離アミンペプチドに加え、室温で1.5時間振盪する。続いて、樹脂をNMPで洗浄し、Fmoc脱保護後、次のアミノ酸を同様に結合させる。
【0119】
樹脂上でのFmoc脱保護
樹脂に結合したFmocペプチドをNMP中20%ピペリジン(v/v)で5分間、続いて15分間処理する。その後、樹脂をNMPで十分に洗浄する。
【0120】
樹脂上でのDde脱保護
NMP(7mL)中、イミダゾール(75当量)、塩酸ヒドロキシルアミン(100当量)の溶液およびDCM(3mL)を加えることにより、室温で3時間かけてDde脱保護を行う。脱保護後、樹脂をNMPで洗浄する。
【0121】
DOTA(tBu)3またはDOTAGA(tBu)4のコンジュゲーション
保護されたキレート剤であるDOTA(tBu)3またはDOTAGA(tBu)4(1.5当量)をNMPに溶解し、TBTU(1.5当量)、HOAt(1.5当量)およびDIPEA(4.5当量)を加えて予備活性化させる。10分間活性化した後、この溶液を樹脂結合N末端脱保護ペプチドに加え、室温で3時間振盪する。続いて、樹脂をNMPおよびDCMで洗浄する。
【0122】
酸不安定性の保護基をさらに脱保護した樹脂からのペプチド切断
完全に保護された樹脂結合ペプチドをDCMで洗浄した後、TFA/TIPS/DCM(v/v/v;95/2.5/2.5)の混合液に溶解し、30分間振盪する。この溶液を濾過し、樹脂をさらに30分間同じように処理する。両方の濾液を合わせ、窒素気流下で濃縮する。残渣をMeOHに溶解し、ジエチルエーテルで沈殿させた後、液体をデカンテーションし、残留固体を乾燥させる。
【0123】
残留tBu/Bocの脱保護
樹脂からのペプチド切断後の残留tBu/Boc保護基の除去(上記参照)は、粗生成物をTFAに溶解し、室温で6時間攪拌することにより行う。窒素気流下でTFAを除去した後、粗非保護生成物を得る。
【0124】
実施例3
材料および方法(標識実験)
非放射性錯体生成
[natGa]ガリウム錯体生成
精製したキレート剤含有リガンド(Tracepur H2O中10-3M、1.00当量)および[natGa]Ga(NO3)3・6H2O(Tracepur H2O中10mM、1.50当量)をTracepur水で最終濃度10-4Mまで希釈して、70℃に30分間加熱する。室温まで冷却後、粗生成物を得る。
【0125】
[natLu]ルテチウム錯体生成
精製したキレート剤含有リガンド(Tracepur H2O中10-3M、1.00当量)および[natLu]LuCl3(Tracepur H2O中20mM、2.50当量)をTracepur水で最終濃度10-4Mまで希釈して、95℃に30分間加熱する。室温まで冷却後、粗生成物を得る。
【0126】
放射能標識
[125I]ヨウ素標識
IC50研究のための参照リガンド([D-3-[125I]I-Tyr6]MJ9)は、以前に発表された手順に従って調製する。簡潔には、0.2mgの[D-Tyr6]MJ9を20μLのTracepur水および280μLのTRIS緩衝液(25mM TRIS HCl、0.4MNaCl、pH=7.9)に溶解する。150μg Iodo-Gen(登録商標)(1,3,4,6-テトラクロロ-3α,6α-ジフェニルグリコリル、表面結合型)を含むバイアルに溶液を添加後、5.0μL(16MBq)[125I]NaI(74TBq/mmol、3.1GBq/mL、40mMNaOH、Hartmann Analytic、Braunschweig、Germany)を添加する。反応溶液を室温で15分間インキュベートし、RP-HPLC(20分間で20→35%):tR=18.9分、K’=10.46、によって精製した。
【0127】
[177Lu]ルテチウム標識
[177Lu]ルテチウムによる標識は、グループ内で開発された手順で行われる。したがって、精製したキレート剤含有リガンド(Tracepur H2O中10-3M、1μL)、酢酸ナトリウム緩衝液(1M、pH=5.50、10μL)および約10~30MBq[177Lu]LuCl3(HCl中0.04M)の溶液をHCl(0.04M)で総量90μLに希釈し、95℃に10分間加熱する。標識後すぐにアスコルビン酸ナトリウム(0.1M、10μL)を加え、放射線分解を防止する。[177Lu]ルテチウムの取り込みは、放射性TLC(ITLC-SGクロマトグラフィー紙、移動相:0.1Mクエン酸三ナトリウム)により決定する。標識化合物の放射化学的純度は、放射性RP-HPLCで決定する。
【0128】
[99mTc]テクネチウム標識
[99mTc]テクネチウムによる標識は、グループ内で開発された手順で達成される。したがって、精製したキレート剤含有リガンド(Tracepur H2O中10-3M、5μL)、NaHPO4緩衝液(0.05M、pH=11.5、25μL)、クエン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、3μL)、SnCl2溶液(アスコルビン酸ナトリウム溶液(3g/L)中1g/L、5μL)、および約50~150MBq[99mTcO4]-の溶液を95℃に10分間加熱する。[99mTc]テクネチウムの取り込みは、放射性TLC(ITLC-SGクロマトグラフィー紙、移動相:等張NaCl)により決定する。標識化合物の放射化学的純度は、放射性RP-HPLCで決定する。
【0129】
実施例4
材料および方法(in vitro実験)
n-オクタノール-PBS分配係数、logD7.4
約1MBqの標識トレーサーを、エッペンドルフチューブ中のリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH=7.4)とn-オクタノールの1:1混合物(v/v)1mLに溶解した。懸濁液を室温で3分間激しく混合した後、バイアルを9000rpmで5分間遠心分離し(Biofuge 15、Heraus Sepatech、Osterode、Germany)、両層の200μLのアリコートをγ-カウンターで測定した。この実験は少なくとも4回繰り返した。
【0130】
IC50の決定
GRPR陽性PC-3細胞は、10%ウシ胎児血清を添加したDublecco改変Eagle培地/Nutrition Mixture F-12 with Glutamax-I(1:1)(Invitrigon)で培養し、5%CO2の加湿雰囲気中で37℃に維持した。GRPR親和性(IC50)の決定のために、細胞を実験の24±2時間前に回収し、24ウェルプレートに播種する(1mL/ウェル中に1.5×105個の細胞が入っている)。
【0131】
培養液を除去した後、細胞を500μLのHBSS(Hank’s平衡塩溶液、Biochrom、Berlin、Germany、1%ウシ血清アルブミン(BSA)添加)で一度洗浄し、200μLのHBSS(1%BSA)中に9分間室温で放置して平衡化させる。次に、コントロールとしてのHBSS(1%BSA)または濃度を増加させたそれぞれのリガンド(HBSS中10-10M~10-4M)を含む溶液をウェルあたり25μL加え、その後HBSS(1%BSA)中の[D-3-[125I]I-Tyr6]MJ9(2.0nM)25μLを添加する。
【0132】
すべての実験は、各濃度について3連で行う。室温で2時間インキュベートした後、培地を除去し、300μLのHBSSで連続的にすすぐことで実験を終了させる。両ステップの培地を1つのフラクションに合わせ、遊離の放射性標識された参照の量を表す。その後、細胞を300μLの1M NaOHで少なくとも15分間溶解し、次の洗浄ステップの300μLNaOHと合流させる。結合した放射性標識参照と遊離の放射性標識参照の定量は、γ-カウンターで行う。
各リガンドに対するIC50の決定を2回繰り返した。
【0133】
内在化
内在化研究のために、PC-3細胞を実験の24±2時間前に回収し、24ウェルプレートに播種する(1.5×105細胞/ウェル)。培養液を除去した後、細胞を500μL DMEM/F-12(5%BSA)で1回洗浄し、200μL DMEM/F-12(5%BSA)中、37℃で少なくとも15分間放置して平衡化させる。各ウェルは、25μL DMEM/F-12(5%BSA)または25μLの[natLu]RM2(10-3M)で処理し、遮断する。次に、25μLの125I/177Lu標識GRPRリガンド(10nM)を加え、細胞を37℃で60分間インキュベートする。
【0134】
24ウェルプレートを氷上に1分間置き、培地を連続的に除去することで実験を終了する。各ウェルを300μLの氷冷したPBSですすぎ、この最初の2ステップからのフラクションを合わせて、遊離の放射性標識参照の量として表す。300μLの氷冷した酸性洗浄溶液(0.02M NaOAc、pH=5.0)で、10分間室温でインキュベートし、300μLの氷冷したPBSで再度すすぐことで表面結合活性を除去する。300μL NaOH(1M)でインキュベートし、その後の300μL NaOH(1M)による洗浄ステップのフラクションと合わせて、内在化活性を決定する。
【0135】
各実験(コントロールと遮断)は6回行う。遊離、表面結合、内在化の活性をγ-カウンターで定量する。データは非特異的内在化について補正されている。
【0136】
血漿研究
Linderらによって発表された手順を若干修正して適用し、in vitroでの代謝安定性を決定した。標識後すぐに、ヒト(200μL)またはマウス(100μL)血漿を加え、混合物を37℃で72±2時間(または6±0.5時間)インキュベートした。氷冷EtOH(150μL[ヒト]、100μL[マウス])および氷冷MeCN(450μL[ヒト]、300μL[マウス])で処理し、13000rpmで20分間遠心分離して、タンパク質を沈殿させた。上清をデカンテーションし、さらに放射性RP-HPLCで分析した。
【0137】
実施例5
材料および方法(in vitro実験)
すべての動物実験は、ドイツの一般的な動物保護規定(2018.05.18に改正されたドイツの動物保護法、Art.141Gv.29.3.2017I626、承認番号ROB-55.2-2532.Vet_02-18-109)および動物の世話と使用に関する機関指針に従った。腫瘍異種移植片を樹立するために、PC-3細胞(200μLあたり5×106細胞)を、Glutamax-I(1:1)を含むダルベッコ改変イーグル培地/ハムF-12(DMEM/F-12)とCultrex(登録商標)Basement Membrane Matrix Type3(Trevigen Inc.、Gaithersburg、MD、USA)との1:1混合物(v/v)中に懸濁し、6~10週齢の雌のCB17-SCIDマウス(Charles River Laboratories International Inc.、Sulzfeld、Germany)の右肩に皮下接種した。マウスは、腫瘍体積が125~500mm3(接種後2~3週間)になった時点で実験に使用した。
【0138】
生体分布
放射性標識GRPRアンタゴニストの約1~5MBq(100~200pmol)をPC-3腫瘍担持マウスの尾静脈に注射し、1、4または24時間p.i.で屠殺した(n=4)。選択した器官を摘出し、重量を測定し、γ-カウンター(Perkin Elmer、Waltham、MA、USA)で測定した。
【0139】
μSPECT/CTイメージング
イメージング研究はMILabs VECTor4小動物SPECT/PET/OI/CT装置(MILabs、Utrecht、the Netherlands)で実施した。データを、MILabs Recソフトウェア(バージョン10.02)およびピクセルベースのSimilarity-Regulated Ordered Subsets Expectation Maximization(SROSEM)アルゴリズムを用いて再構築し、その後PMOD4.0ソフトウェア(PMOD TECHNOLOGIES LLC、Zurich、Switzerland)を用いてデータ解析した。SPECT研究のために、マウスをイソフルランで麻酔し、尾静脈に2~4MBq(100~200pmol)の放射性標識トレーサーを注射した。静止画像をHE-GP-RMコリメータと段階的多平面ベッド移動を用いて、45~60分の取得時間で1時間と28時間p.iに記録した。
【0140】
【0141】
本発明の例示的な合成拮抗型GRPRリガンド
【化7】
【0142】
HPLC
[natGa]RM2(15分間で10→90%MeCN):tR=6.7分、K’=3.47。
計算されたモノ同位体質量(monoisotopic mass)(C78H115GaN20O19):1704.8、検出:m/z=1706.6[M+H]+、854.1[M+2H]2+。
[natGa]DOTA-[Hse7]MJ9(15分間で10→90%MeCN):tR=6.8分、K’=3.53。
計算されたモノ同位体質量(C77H114GaN19O19):1677.8、検出:m/z=1679.3[M+H]+、840.4[M+2H]2+。
[natGa]DOTA-[Bta8]MJ9(15分間で10→90%MeCN):tR=7.0分、K’=3.67。
計算されたモノ同位体質量(C78H114GaN19O19S):1721.7、検出:m/z=1723.7[M+H]+、862.3[M+2H]2+。
[natGa]AMTG(15分間で10→90%MeCN):tR=6.9分、K’=3.60。
計算されたモノ同位体質量(C79H117GaN20O19):1718.8、検出:m/z=1720.0[M+H]+、860.6[M+2H]2+。
[natGa]AMTG2(15分間で10→90%MeCN):tR=6.9分、K’=3.31。
計算されたモノ同位体質量(C82H121GaN20O21):1790.8、検出:m/z=896.3[M+2H]2+、1792.6[M+H]+。
[natLu]RM2(15分間で10→90%MeCN):tR=6.6分、K’=3.40。
計算されたモノ同位体質量(C78H115LuN20O19):1810.8、検出:m/z=1812.2[M+H]+、906.8[M+2H]2+。
[natLu]DOTA-[Hse7]MJ9(15分間で10→90%MeCN):tR=6.8分、K’=3.53。
計算されたモノ同位体質量(C77H114LuN19O19):1783.8、検出:m/z=1784.9[M+H]+、893.6[M+2H]2+。
[natLu]DOTA-[Bta8]MJ9(15分間で10→90%MeCN):tR=7.0分、K’=3.67。
計算されたモノ同位体質量(C78H114LuN19O19S):1827.8、検出:m/z=1828.9[M+H]+、915.1[M+2H]2+。
[natLu]AMTG(15分間で10→90%MeCN):tR=6.8分、K’=3.53。
計算されたモノ同位体質量(C79H117LuN20O19):1824.8、検出:m/z=1826.3[M+H]+、913.6[M+2H]2+。
[natLu]AMTG2(15分間で10→90%MeCN):tR=7.0分、K’=3.38。
計算されたモノ同位体質量(C82H121LuN20O21):1896.8、検出:m/z=949.5[M+2H]2+、1897.6[M+H]+。
[natLu]NeoBOMB1(15分間で10→90%MeCN):tR=9.6分、K’=5.00。
計算されたモノ同位体質量(C77H107LuN18O18):1746.7、検出:m/z=874.5[M+2H]2+、1747.3[M+H]+。
【0143】
親水性の決定(n-オクタノールl-PBS分配係数、logD7.4)
177Lu標識化合物の決定したn-オクタノール/PBS分配係数(logD7.4)を表2に示す。すべての化合物について、DOTAまたはDOTAGAのいずれかをキレート剤として使用した。177Lu標識GRPRリガンドでは、参照RM2が最も親水性であり、3-ベンゾチエニルアラニン(Bta)修飾誘導体が最も親油性であることが判明した。
【0144】
【0145】
GRPRの親和性の決定
合成された化合物は同程度の親和性を示したが、ホモセリン誘導体は親和性が若干低下した。また、[natGa]ガリウム錯体リガンドは、[natLu]ルテチウム錯体カウンターパートと同様に高い親和性を示した(表3)。非放射性スタンダードである[D-3-I-Tyr6]MJ9は特に高い親和性を示し、すべてのIC50実験の競合放射性標識参照として適していることが示唆された。
【0146】
【0147】
内在化
修飾されたスタチン系GRPRリガンドの拮抗作用を証明するために、PC-3細胞への内在化を決定した。すべての177Lu標識化合物は、アンタゴニストから予想されるように低い内在化を示した(表4)。[177Lu]RM2の内在化は、他の発表された研究の結果と良好な相関を示した。
【0148】
【0149】
血漿研究
合成GRPRリガンドのin vitro安定性をヒト血漿中で測定し(
図1~
図4)、一方、安定化リガンド[
177Lu]AMTGおよび参照[
177Lu]RM2をさらにマウス血漿中で解析した。したがって、標識終了直後のトレーサー溶液(最終容量200μL)には、100μLのマウス血漿のみを加えた。Linderら(Bioconjugate Chem.20、1171~1178(2009))によると、ヒト血漿よりもマウス血漿の方が代謝が速いため、37℃で6±0.5時間インキュベートした後に実験を終了した(
図5および
図6)。しかし、マウス混合物は体積が小さいため、37℃で72±2時間インキュベートした後に追加で調べた(
図7および8)。
4つの
177Lu標識GRPRリガンドをヒト血漿中で、37℃で72±2時間インキュベートした後に比較すると(
図1~4)、未変化のトレーサー量に有意な違いが見られた。参照リガンド[
177Lu]RM2(
図1)のin vitro安定性は、その時間帯ではわずか33.5±2.7%と決定されたが、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9(40.1±1.4%)と[
177Lu]AMTG(77.6±10.1%)は、37℃で72±2時間インキュベートした後に高くなった。最も親油性の高い誘導体[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9(19.0±1.7%)は、これら4つの化合物中で最も安定性が低かった。第2の参照リガンドである[
177Lu]NeoBOMB1は、同じ時間帯の後に60.8±1.2%の未変化のトレーサー量を呈した。
【0150】
参照化合物[
177Lu]RM2(
図5および7)と安定化誘導体[
177Lu]AMTG(
図6および8)について、ヒトと動物との間の違いの可能性を調べるために、さらにマウス血漿で調べた。Linderらによると、約6時間後のマウス血漿中の代謝は、約3日後のヒト血漿中の代謝と同等である。したがって、マウス血漿中の6時間後のこれら2つのリガンドの安定性を測定したところ、未変化の[
177Lu]AMTG(tR=17.0分、それぞれ89%、
図6および92%、
図4)は同等量であることが判明したが、[
177Lu]RM2の未変化のリガンドは著しく偏向していた(tR=15.5分、それぞれ92%、
図5および36%、
図1)。
【0151】
より長い時間帯(37℃で72±2時間インキュベート)後のマウス血漿中のこれら2つのトレーサーを調べたところ、[
177Lu]RM2(
図7)は[
177Lu]AMTG(
図8)よりも多くの部分でマウスエンドペプチダーゼによって切断されたが、それでも未変化のトレーサー量は高い(それぞれ67%と59%)と思われ、特に参照化合物についてはヒトと動物の血漿間には大きな違いがあることが推測された。
【0152】
これらの観察から、安定化[177Lu]AMTGは、ヒトではin vivoにおいて参照リガンドより優れた性能を示すが、マウスでは必ずしもそうではないことを示している。
【0153】
生体分布とμSPECT/CT研究
参照化合物[
177Lu]RM2ならびに診断用リガンド[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9および[
177Lu]DOTA-[Bta
8]MJ9のin vivo薬物動態をCB17-SCIDマウスで1時間p.i.および24時間p.i.に調べたのに対し、治療用リガンドの[
177Lu]AMTG、[
177Lu]AMTG2および第2の参照[
177Lu]NeoBOMB1は24時間p.i.に(それぞれ100pmol)調べたのみであった。データは、
図9から
図12に示される参照と比較される。
【0154】
いずれの不安定化化合物も、1時間p.i.でのマウスにおける参照リガンドと比較して、優れた薬物動態プロファイルを示す(
図9および
図10)。どの器官においても、診断用リガンドの取り込みは参照と同等か低く、特にGRPR陽性の膵臓については、不安定化した位置での代謝が高いためと思われる、この器官からの速い洗い流しが強調されている。興味深いことに、両診断用リガンドの腫瘍への取り込みは参照化合物よりも優れており(
図9)、[
177Lu]RM2で達成できたような高いレベルでの腫瘍濃縮が可能であるという仮定に至った。さらに、腫瘍における代謝は非腫瘍器官よりも速くないため、診断用誘導体の結合が不安定化しているにもかかわらず、1時間p.i.で腫瘍からの負の洗い流し効果は見られなかった。
【0155】
腫瘍/バックグラウンド比(
図10)で示されるように、[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9は1時間p.i.で腫瘍と非腫瘍器官との間で最高のコントラストを示したが、参照はこれら3つの中で最も悪かった。
【0156】
治療目的での応用の可能性として、3つのリガンド、[
177Lu]NeoBOMB1、安定化[
177Lu]AMTGおよび[
177Lu]AMTG2をCB17-SCIDマウスで24時間p.i.に調べた(
図11および
図12)。薬物動態プロファイルは、より長い時間帯経過後に腫瘍から不安定化リガンドがより速く洗い流されるという示唆を確認するものである。正常組織では比較した4つのリガンドはすべて同じように保持されていたが、腫瘍では、[
177Lu]RM2、[
177Lu]AMTG、[
177Lu]AMTG2がまだ多量に存在し、不安定化化合物は少量であったため、保持に著しい差があった。[
177Lu]NeoBOMB1も腫瘍で高い腫瘍保持を示したが、膵臓でも高い腫瘍保持を示した。すべての誘導体について骨への取り込みは、それぞれのキレート剤で完全に錯体形成されていない[
177Lu]LuCl
3によって説明できる(
図11)。
【0157】
[
177Lu]RM2、[
177Lu]AMTG、[
177Lu]AMTG2は、このシリーズの他の誘導体よりも24時間p.i.で高い腫瘍保持を示した(
図11)。その時間帯経過後の腫瘍/バックグラウンド比を考慮すると、[
177Lu]AMTGおよび
[177Lu]AMTG2は、優れた腫瘍対血液および腫瘍対筋肉の比率を示した(
図12)。不安定化リガンドと[
177Lu]NeoBOMB1はどちらも腫瘍/バックグラウンド比が参照より小さいことが示された。PC-3腫瘍担持マウス(各100pmol)の1、4、8、24および28時間p.i.における[
177Lu]RM2および[
177Lu]AMTGのイメージング研究は、経時的なin vivoでの分布を示す(
図19)。どちらのコンジュゲートも良好な薬物動態を示し、それぞれGRPR陽性組織(膵臓、腸)から速いクリアランス、腫瘍内の高い保持を示した。バックグラウンド活性は[
177Lu]AMTGの場合、特に膵臓からのクリアランスが遅く、これはin vivoでの代謝安定性が高いためと予想された。
【0158】
結論として、結果を考慮すると、不安定化した両リガンドは、1時間p.i.で、マウスにおいて参照を上回ったが、24時間p.i.で、マウスにおいて顕著に劣っており、このことは、[177Lu]DOTA-[Bta8]MJ9はin vitroで最も代謝安定性が低かったため、血漿研究での観察結果とよく相関していることがわかった。前述したように、非腫瘍組織での代謝は腫瘍組織よりも速く、GRPRアンタゴニストのよく知られた洗い流し効果につながる。Gln7-Trp8結合がさらに不安定化すると、バックグラウンドからはより速く洗い流されるが、腫瘍からは洗い流されず、1時間p.iの参照と比較して優れたコントラストが得られた。しかし、より長い時間帯経過後には、腫瘍から著しく速い洗い流しが観察され、より親油性の[177Lu]DOTA-[Bta8]MJ9の酵素分解が増加するという仮定が確認された。このため、診断薬として有用である可能性がある。
【0159】
もう一つの不安定化誘導体[177Lu]DOTA-[Hse7]MJ9は、ヒト血漿中ではわずかなin vitro安定性を示すにとどまったが、マウスでのin vivo挙動では、非腫瘍組織から1時間p.i.で速いクリアランスを示し、24時間p.iで腫瘍内にわずかに保持されたことから、代謝安定性は小さいことが示唆された。
【0160】
安定化化合物[177Lu]AMTGは、in vitroとin vivoの結果を考慮すると、特に優れた全体的性能を示した。GRPRを発現するPC-3細胞への良好な親和性、適度な親油性、ヒト血漿中での最高の代謝安定性、[177Lu]RM2と同等かそれ以上の薬物動態特性を有していることが確認された。AMTGはヒト血漿中におけるin vitroの代謝安定性が高いため、男性のGRPR発現悪性腫瘍の標的放射線治療において、GRPR標的リガンドの現在のゴールデンスタンダード(RM2、NeoBOMB1)と競合するかそれ以上の可能性を持っている可能性がある。
【0161】
実施例7
[
99mTc]N4含有リガンド
試験化合物
【化8】
【0162】
in vitroデータ
決定したn-オクタノール-PBS分配係数(logD7.4)ならびに99mTc標識化合物のGRPRに対する結合親和性(IC50)を表5に示す。すべての化合物について、N4(6-(カルボキシ))-1,4,4,11-テトラアザウンデカン)をキレート剤として使用した。
【0163】
【0164】
このシリーズでは、[99mTc]N4-asp-MJ9が最も親水性が高いことがわかったが、他の3つの化合物も同様であるが、より親油性が高いことがわかった。すべてのコンジュゲートは、同程度の低ナノモル範囲のIC50値(非標識)を示した。しかし、ホモセリンとα-メチルトリプトファン誘導体は、このシリーズの他の2つのリガンドと比較して、GRPR親和性がわずかに低下していた。
【0165】
in vivoデータ
99mTc標識リガンド(8)、(9)、(10)、(11)のin vivo薬物動態をCB17-SCIDマウスで1時間p.i.および4時間p.i.(各200pmol)で検討した。[
99mTc]N
4-asp-MJ9(8)、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9および[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9は、腫瘍が高く、全体のバックグラウンド蓄積は低く、1時間p.i.で優れた薬物動態を示した(
図13)。GRPR陽性膵臓では、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9が最も低い取り込みを示し、このことは不安定化した位置での高い代謝率によるこの器官からの速い洗い流しを強調している。[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9は、このシリーズの中で腫瘍の取り込みが最も高く、膵臓の取り込みが2番目に低いことがわかった。[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9は膵臓への蓄積が最も高く、これは、すでに前節で述べたように、α-メチルトリプトファンの修飾により代謝安定性が向上したためと推定される。1時間p.i.での腫瘍/バックグラウンド比は、追加のアスパラギン酸修飾により親水性が向上したため、ほとんどが[
99mTc]N
4-asp-MJ9が有利であった(
図14)。しかし、[
177Lu]DOTA-asp-[Bta
8]MJ9および[
177Lu]DOTA-[Hse
7]MJ9が[
99mTc]N4-asp-MJ9と同様の親水性を示した場合、腫瘍/バックグラウンド比が改善されると推測された。
【0166】
4時間p.i.の生体分布研究により、これらの
99mTc標識リガンドのin vivoでの時間経過が明らかになった(
図15)。一方、[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9では、1時間p.i.と比較して腫瘍蓄積が増加したが、このシリーズの他のすべての誘導体は腫瘍値が減少した。このことは、α-メチルトリプトファン修飾による代謝安定性の向上の示唆をさらに強めている。[
99mTc]テクネチウムの場合、診断上の理由から、1時間p.i.(4時間p.i.だけでなく)の高い腫瘍取り込みとバックグラウンド器官からの速いクリアランスが望まれるため、このことは望ましくない。それでも、この修飾は治療用化合物、例えば上述の
177Lu-標識リガンドに非常に役立つ。バックグラウンド器官からのより速いクリアランスは診断用化合物にとって有益であるため、[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9は、4時間p.i.におけるほとんどの器官の取り込み値によって強調されている代謝不安定性の強化により、理想的に使用できる。4時間p.i.における腫瘍/バックグラウンド比は
図16に示されているが、ほとんどの器官の[
99mTc]N
4-asp-MJ9と[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9について最高であることが明らかになっている。
【0167】
不安定化修飾であるホモセリンと3-ベンゾチエニルアラニンによって可能になった1時間p.i.における優れたコントラストは、μSPECT/CTイメージングによってさらに強調された(
図17)。[
99mTc]N
4-asp-[Bta
8]MJ9と[
99mTc]N
4-[Hse
7]MJ9は、親油性が高いにもかかわらず、非修飾の[
99mTc]N
4-asp-MJ9に比べわずかにコントラストが強調された。[
99mTc]N
4-[α-Me-Trp
8]MJ9は、代謝安定性が高く膵臓や腸のクリアランスが遅いので、他の3つの誘導体よりコントラストが劣ることが予想され、このことは、診断には好ましくない。
【0168】
実施例8
ボンベシン-SiFA誘導体
試験化合物
【0169】
【0170】
in vitroデータ
決定したn-オクタノール-PBS分配係数(logD7.4)ならびにボンベシン-SiFA化合物のGRPRに対する結合親和性(IC50)を表6に示す。すべての化合物について、DOTAGAをキレート剤として使用した。
【0171】
【0172】
このシリーズの4つの化合物はすべて同様の親水性を示した。IC50値は、[177Lu]GT50と[177Lu]GT52で同等範囲にあり、[177Lu]GT51と[177Lu]GT53でわずかに増加した。
【0173】
生体分布の研究
4つの化合物はすべて、
18F標識用のSiFA部分と、
68Ga-または
177Lu-標識用のキレート剤を含む。これは、[
18F][
natGa/
natLu]リガンドと[
19F][
68Ga/
177Lu]リガンドのどちらを適用するかに関係なく、化学的に区別がつかないため、放射性ハイブリッドベースのリガンドは理想的なセラノスティックペアとなるため、有用な特徴であると言える。
177Lu標識リガンドGT50、GT51、GT52、GT53の生体分布は、CB17-SCIDマウスに24時間p.i.(各100pmol)で評価した。すべての誘導体は、肝臓と腎臓を除いて、全体的に低いバックグラウンド保持を示した(
図18)。腫瘍の保持は、[
177Lu]RM2、[
177Lu]AMTGおよび[
177Lu]AMTG2と比較して低下した(
図11)。ボンベシン-SiFAコンジュゲートはすべて最適化する必要があり、特に腎臓での保持が高く、肝臓での保持がやや高いことを考慮する必要がある。しかし、このシリーズで評価されたリガンドは、放射性ハイブリッドベースの概念の機能性を証明した。
【国際調査報告】