(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】IL-7バリアントを含む二機能性分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230208BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230208BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230208BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230208BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230208BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230208BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230208BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230208BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230208BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230208BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230208BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230208BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230208BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230208BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230208BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230208BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P31/00
A61K39/395 N
A61K47/65
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/12
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537155
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020086600
(87)【国際公開番号】W WO2021122866
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】オロール・モレロ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF34
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IL-7バリアント、それを含む二機能性分子、及びそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合性部分にコンジュゲートされたインターロイキン7(IL-7)バリアントを含む二機能性分子であって、
- 前記結合性部分は、免疫細胞表面に特異的に発現される標的に結合し、
- 前記IL-7バリアントは、配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、前記バリアントは、(i)W142H、W142F、若しくはW142Y、(ii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、アミノ酸付番は、配列番号1に示されている通りであり、前記少なくとも1つのアミノ酸変異は、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対する前記IL-7バリアントの親和性を低下させ、ii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、前記IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる、二機能性分子。
【請求項2】
前記IL-7バリアントは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含み、アミノ酸付番は、配列番号1に示される通りである、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、並びにC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含み、アミノ酸付番は、配列番号1に示される通りである、請求項1又は2に記載の分子。
【請求項4】
前記IL-7バリアントは、D74E、D74Q、及びD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換を含み、アミノ酸付番は、配列番号1に示される通りである、請求項1から3のいずれか一項に記載の分子。
【請求項5】
前記IL-7バリアントは、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項6】
前記結合性部分は、任意選択で、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の分子。
【請求項7】
前記結合性部分は、任意選択で、S228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E.17、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の分子。
【請求項8】
前記免疫細胞は、T細胞、好ましくは疲弊したT細胞である、請求項1から7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項9】
前記標的は、T細胞により発現され、前記結合性部分は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される標的に結合する、請求項8に記載の分子。
【請求項10】
前記標的は、T疲弊細胞により発現され、前記結合性部分は、好ましくは、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3からなる群から選択される標的に結合する、請求項8に記載の分子。
【請求項11】
前記結合性部分は、抗体又はその抗原断片であり、前記IL-7バリアントのN末端は、前記抗体又はその抗体断片の重鎖定常ドメイン又は軽鎖定常ドメインのC末端に、好ましくは、前記重鎖定常ドメインのC末端に、任意選択でペプチドリンカーを介して融合されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の分子。
【請求項12】
前記IL-7バリアントは、GGGGS(配列番号68)、GGGGSGGGS(配列番号67)、GGGGSGGGGS(配列番号69)、及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号70)からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)
3であるペプチドリンカーにより前記結合性部分に融合されている、請求項11に記載の分子。
【請求項13】
前記分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、前記第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端が前記IL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、前記第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の分子。
【請求項14】
前記第2の単量体では、前記相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖は、前記IL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、好ましくは、C末端が前記IL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている、請求項13に記載の分子。
【請求項15】
前記分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、前記第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖はIL-7バリアントを欠き、前記第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、前記第2のヘテロ二量体Fc鎖は、前記IL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で、好ましくは、C末端が前記IL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して連結されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の分子。
【請求項16】
前記分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、前記第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、前記第2の単量体は、C末端が相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、ヘテロ二量体Fc鎖の1つのみ、好ましくは第1のものは、C末端が前記IL-7バリアントのN末端に共有結合で連結されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の分子。
【請求項17】
前記抗原結合性ドメインは、Fabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項13から16のいずれか一項に記載の分子。
【請求項18】
前記抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64又は配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる、請求項13から17のいずれか一項に記載の分子。
【請求項19】
前記抗原結合性ドメインは、
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる、請求項13から17のいずれか一項に記載の分子。
【請求項20】
前記抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる、請求項13から19のいずれか一項に記載の分子。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子をコードする単離された核酸配列又は単離された核酸分子の群。
【請求項22】
請求項21に記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項21に記載の核酸、又は請求項22に記載の宿主細胞を、任意選択で薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項24】
医薬として使用するための、特にがん又は感染性疾患の治療に使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の分子、請求項21に記載の核酸、又は請求項22に記載の宿主細胞、又は請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、IL-7バリアントを含む二機能性分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-7は、IL-2スーパーファミリーの免疫賦活性サイトカインメンバーであり、免疫応答を促進することにより適応免疫系において重要な役割を果たす。このサイトカインは、T細胞及びB細胞の生存及び分化、リンパ球細胞の生存、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の刺激により、免疫機能を活性化する。また、IL-7は、リンパ組織インデューサー(LTi)細胞を介してリンパ節の発達を調節し、ナイーブT細胞又はメモリーT細胞の生存及び分裂を促進する。更に、IL-7は、IL-2及びインターフェロン-γの分泌を促進することにより、ヒトの免疫応答を増強する。IL-7の受容体は、ヘテロ二量体であり、IL-7Rα(CD127)及び共通γ鎖(CD132)からなる。γ鎖は全ての造血細胞タイプで発現されるが、IL-7Rαは、主に、B及びTリンパ球前駆細胞、ナイーブT細胞、並びにメモリーT細胞を含むリンパ球により発現される。調節性T細胞でのIL-7Rα発現は、より高いレベルを発現するエフェクター/ナイーブT細胞と比較して低いことが観察されている。そのため、こうした2つの集団を区別するための表面マーカーとしてCD127が使用される。IL-7Rαは、NKとしての自然リンパ球細胞及び腸管関連リンパ組織(GALT)由来T細胞でも発現される。IL-7Rα(CD127)鎖は、TSLP(腫瘍間質リンホポエチン)と共有されており、CD132(γ鎖)は、IL-2、IL-4、IL-9、IL-15、及びインターロイキン-21と共有されている。2つの主要なシグナル伝達経路:(1)ヤヌスキナーゼ/STAT経路(つまり、Jak-Stat-3及び5)並びに(2)ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ経路(つまり、PI3K-Akt)が、CD127/CD132により誘導される。IL-7投与は、患者の耐容性が良好であり、CD8細胞及びCD4細胞の拡大増殖、並びにCD4+ T調節性細胞の相対的減少に結び付く。組換えネイキッドIL-7又は抗体のFcのN末端ドメインに融合されたIL-7が、臨床で試験されている。後者は、Fcドメインとの融合によりIL-7半減期が延長され、治療の長期持続効率が増強されるという理論的根拠に基づく。
【0003】
組換えIL-7サイトカインは、薬物動態特性が不良であり、臨床での使用が制限されている。注射後、組換えIL-7は急速に分布及び排除され、IL-7の半減期は、ヒト(6.8~9.5時間の範囲)(Sportesら、Clin Cancer Res.2010年1月15日;16巻(2号):727~35頁)又はマウス(2.5時間)(Hyo Jung Namら、Eur. J. Immunol.2010年.40巻:351~358頁)では不良となる。IL-7にIgG Fcドメインを融合させると、IL-7の半減期が延長される。これは、IgGが、新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、分子のトランスサイトーシス及びエンドソームリサイクルに関与することができるためである。IL-7 Fc融合分子の場合、マウスでは、循環半減期の延長が観察され(t1/2=13時間)、IL-7 Fc融合分子は投与の8日後まで検出可能なレベル(200pg/mL)で維持される(Hyo Jung Namら、Eur. J. Immunol.2010年.40巻:351~358頁)。Fcドメインに融合されたIL-7サイトカインは半減期が増加するものの、生物学的効果を得るにはこの分子を高頻度でin vivo注射することが必要だった。免疫サイトカイン分子の文脈では、サイトカインは、サイトカインを標的抗原発現細胞に対して優先的に濃縮させる抗体(例えば、がん抗原、免疫チェックポイント遮断、共刺激分子...を標的とする)に融合されている。しかしながら、CD127/CD132受容体に対するIL-7サイトカインの親和性(ナノモル~ピコモルの範囲)は、標的に対する抗体の親和性よりも高い場合がある。その場合、サイトカインが製品の薬物動態を駆動することになり、標的媒介性薬物体内動態(TMDD)機序により、in vivoにおける利用可能な薬物の急速な枯渇に結び付くことになる。この急速な排除は、IL-2又はIL-15のような免疫サイトカインについて記載されており、融合タンパク質の薬物動態特性が薬物性能に直接的に影響を及ぼし得ることを示している(List et Neri Clin Pharmacol. 2013年;5巻(補遺1):29~45頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006061219号
【特許文献2】国際公開第19222294号
【特許文献3】国際公開第19215510号
【特許文献4】国際公開第19178362号
【特許文献5】国際公開第19178364号
【特許文献6】国際公開第19144309号
【特許文献7】国際公開第19046313号
【特許文献8】国際公開第18215937号
【特許文献9】国際公開第18201047号
【特許文献10】国際公開第18064611号
【特許文献11】国際公開第17216223号
【特許文献12】米国特許出願第2018319858号
【特許文献13】国際公開第17158436号
【特許文献14】国際公開第16200219号
【特許文献15】国際公開第05063820号
【特許文献16】国際公開第2014/194302号
【特許文献17】国際公開第2017/040790号
【特許文献18】国際公開第2017/19846号
【特許文献19】国際公開第2017/024465号
【特許文献20】国際公開第2017/025016号
【特許文献21】国際公開第2017/132825号
【特許文献22】国際公開第2017/133540号
【特許文献23】国際公開第2006/121168号
【特許文献24】国際公開第2013006490号
【特許文献25】国際公開第2016/161270号
【特許文献26】国際公開第2018/085469号
【特許文献27】国際公開第2018/129553号
【特許文献28】国際公開第2011/155607号
【特許文献29】米国特許第8,552,156号
【特許文献30】欧州特許第2581113号
【特許文献31】米国特許出願第2014/044728号
【特許文献32】国際公開第18025178号
【特許文献33】国際公開第19179388号
【特許文献34】国際公開第19179391号
【特許文献35】国際公開第19174603号
【特許文献36】国際公開第19148444号
【特許文献37】国際公開第19120232号
【特許文献38】国際公開第19056281号
【特許文献39】国際公開第19023482号
【特許文献40】国際公開第18209701号
【特許文献41】国際公開第18165895号
【特許文献42】国際公開第18160536号
【特許文献43】国際公開第18156250号
【特許文献44】国際公開第18106862号
【特許文献45】国際公開第18106864号
【特許文献46】国際公開第18068182号
【特許文献47】国際公開第18035710号
【特許文献48】国際公開第18025178号
【特許文献49】国際公開第17194265号
【特許文献50】国際公開第17106372号
【特許文献51】国際公開第17084078号
【特許文献52】国際公開第17087588号
【特許文献53】国際公開第16196237号
【特許文献54】国際公開第16130898号
【特許文献55】国際公開第16015675号
【特許文献56】国際公開第12120125号
【特許文献57】国際公開第09100140号
【特許文献58】国際公開第07008463号
【特許文献59】国際公開第2008132601号
【特許文献60】欧州特許第2320940号
【特許文献61】国際公開第19152574号
【特許文献62】国際公開第08076560号
【特許文献63】国際公開第10106051号
【特許文献64】国際公開第11014438号
【特許文献65】国際公開第17096017号
【特許文献66】国際公開第17144668号
【特許文献67】国際公開第19232484号
【特許文献68】国際公開第16028656号
【特許文献69】国際公開第16106302号
【特許文献70】国際公開第16191643号
【特許文献71】国際公開第17030823号
【特許文献72】国際公開第17037707号
【特許文献73】国際公開第17053748号
【特許文献74】国際公開第17152088号
【特許文献75】国際公開第18033798号
【特許文献76】国際公開第18102536号
【特許文献77】国際公開第18102746号
【特許文献78】国際公開第18160704号
【特許文献79】国際公開第18200430号
【特許文献80】国際公開第18204363号
【特許文献81】国際公開第19023504号
【特許文献82】国際公開第19062832号
【特許文献83】国際公開第19129221号
【特許文献84】国際公開第19129261号
【特許文献85】国際公開第19137548号
【特許文献86】国際公開第19152574号
【特許文献87】国際公開第19154415号
【特許文献88】国際公開第19168382号
【特許文献89】国際公開第19215728号
【特許文献90】国際公開第06015886号
【特許文献91】国際公開第10006071号
【特許文献92】国際公開第10084158号
【特許文献93】国際公開第18077926号
【特許文献94】国際公開第01/58957号
【特許文献95】国際公開第96/34103号
【特許文献96】国際公開第94/04678号
【特許文献97】国際公開第2014/145806号
【特許文献98】米国特許第8,216,805号
【特許文献99】米国特許出願公開第2012/0149876号
【特許文献100】国際公開第2020/127366号
【特許文献101】国際公開第2018/053106号、36~43頁
【非特許文献】
【0005】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野には、分布を向上させ、IL-7製品の、特にIL-7を含む二機能性分子の排除を低減することを可能にする新しい向上されたIL-7バリアントに対する重要な必要性が依然として存在する。本発明者らは、本明細書で開示の発明により著しい進歩を成し遂げた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、二機能性分子の分布及び排除を向上させてin vivoでの生物学的効果を増強するために、IL-7の変異及び最適化されたFc骨格を提供する。本発明者らは、IL-7の変異体が、特にIgGアイソタイプ及びリンカー長と組み合わせると、二機能性分子のより良好な分布及びより長いin vivo半減期を可能することを観察した。
【0008】
特に、本明細書で提供される二機能性分子は、特にIL-7野生型を含む二機能性分子と比較して、in vivoにおいて良好な薬物動態及び薬理学を示す。加えて、「発明を実施するための形態」における「緒言」及び実施例にて詳述されている通り、こうした新しい分子には、有利で予想外の特性が関連付けられている。
【0009】
第1の態様では、本発明は、結合性部分にコンジュゲートされたインターロイキン7(IL-7)バリアントを含む二機能性分子であって、
- 結合性部分は、免疫細胞表面上に特異的に発現される標的に結合し、
- IL-7バリアントは、配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、バリアントは、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低下させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、
二機能性分子に関する。
【0010】
特に、少なくとも1つの変異は、(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群である(つまり、アミノ酸付番は、配列番号1に示されている通りである)。
【0011】
特に、本発明は、結合性部分にコンジュゲートされたインターロイキン7(IL-7)バリアントを含む二機能性分子であって、
- 結合性部分は、免疫細胞表面上に特異的に発現される標的に結合し、
- IL-7バリアントは、配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、バリアントは、(i)W142H、W142F、若しくはW142Y、(ii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、アミノ酸付番は、配列番号1に示されている通りであり、少なくとも1つのアミノ酸変異は、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減させ、ii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる、
二機能性分子に関する。
【0012】
一態様では、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、並びにC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む(つまり、アミノ酸付番は、配列番号1に示されている通りである)。
【0013】
別の態様では、IL-7バリアントは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む(つまり、アミノ酸付番は、配列番号1に示されている通りである)。
【0014】
別の態様では、IL-7バリアントは、D74E、D74Q、及びD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む(つまり、アミノ酸付番は、配列番号1に示される通りである)。
【0015】
特に、IL-7バリアントは、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0016】
一態様では、結合性部分は、任意選択で、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む。
【0017】
特に、結合性部分は、任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E.17、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む。
【0018】
好ましくは、免疫細胞はT細胞であり、好ましくは疲弊したT細胞である。
【0019】
一態様では、標的は、T細胞により発現され、結合性部分は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される標的に結合する。
【0020】
好ましくは、標的は、T疲弊細胞により発現され、結合性部分は、好ましくは、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3からなる群から選択される標的に結合する。
【0021】
一態様では、結合性部分は、抗体又はその抗原断片であり、IL-7バリアントのN末端は、抗体又はその抗体断片の重鎖又は軽鎖定常ドメインのC末端に、好ましくは、重鎖定常ドメインのC末端に、任意選択でペプチドリンカーを介して融合されている。
【0022】
別の態様では、IL-7バリアントは、GGGGS(配列番号68)、GGGGSGGGS(配列番号67)、GGGGSGGGGS(配列番号69)、及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号70)からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3(配列番号70)であるペプチドリンカーにより結合性部分に融合されている。
【0023】
一態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。好ましくは、第2の単量体では、相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖は、IL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、好ましくは、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。
【0024】
別の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖はIL-7バリアントを欠き、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖は、IL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で、好ましくは、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して連結されている。
【0025】
別の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第2の単量体は、C末端が相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、ヘテロ二量体Fc鎖の1つのみ、好ましくは第1のものは、C末端がIL-7バリアントのN末端に共有結合で連結されている。
【0026】
特に、二機能性分子の抗原結合性ドメインは、Fabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)である。
【0027】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64又は配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0028】
特に、抗原結合性ドメインは、
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる。
【0029】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。
【0030】
また、本発明は、本発明による二機能性分子をコードする単離された核酸配列又は単離された核酸分子の群に関する。
【0031】
また、本発明は、本発明による単離された核酸を含む宿主細胞に関する。
【0032】
また、本発明は、本発明による二機能性分子、核酸、又は宿主細胞を、任意選択で薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物に関する。
【0033】
最後に、本発明は、医薬として使用するための、特にがん又は感染性疾患の治療に使用するための、本発明による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。A. 抗PD1抗体及びアミノ酸D74、Q22、M17、Q11、K81で変異したIL-7を含む二機能性分子のPD-1結合。B. アミノ酸W142Cで変異したIL-7を含む二機能性分子のPD-1結合。C. IL-7のジスルフィド結合で変異した(SS1、SS2及びSS3変異)二機能性分子のPD-1結合。この図において試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図2】変異したIL-7に融合したIgGのCD127結合ELISAアッセイ。PD-1組換えタンパク質を、プレート上に固定化し、次に、二機能性抗PD-1 IL-7分子を、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino照会10975-H08H)と予めインキュベートし、ウェルに加えた。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体+ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。A. アミノ酸D74、Q22、M17、Q11、K81で変異したIL-7を含む二機能性分子のCD127結合。B. アミノ酸W142で変異したIL-7を含む二機能性分子のCD127結合。
【
図3】STAT5リン酸化により測定した、異なる二機能性分子のIL-7Rシグナル伝達経路。健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、二機能性抗PD-1 IL-7分子と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。CD3 T細胞におけるMFI pSTAT5を計算することにより、データを得た。A. アミノ酸D74、Q22、M17、Q11、K81で変異したIL-7を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5活性化。B. アミノ酸W142Cで変異したIL-7を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT活性化。C. 抗PD-1 IL-7 WT(●灰色)と比較した、IL-7のジスルフィド結合、SS2(●黒色)及びSS3(▲)におけるIL-7変異を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5活性化。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図4】抗PD-1 IL-7二機能性分子のマウスにおける薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを1回用量静脈内注射した。血清中における分子の濃度を、ELISAにより、注射後の複数の時間ポイントで評価した。A. IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色);IgG4-G4S3 IL7 D74E(●黒色)の注射。B. IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色)又はIgG4-G4S3 IL7 W142H(●黒色)の注射。C. IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色);IgG4-G4S3 IL7 SS2(●)又はIgG4-G4S3 IL7 SS3(▲)の注射。D. 各分子のPK対ED50 pSTAT5(nM)から計算した曲線下面積(AUC)間の相関。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図5】抗PD-1とIL-7の間のジスルフィド結合の付加は、pSTAT5活性化を減少させ、一方、in vivoで薬物曝露を増加させる。A. 抗PD-1 IL-7二機能性分子WT(灰色●)又は追加のジスルフィド結合を有する抗PD-1 IL-7二機能性分子(黒色●)での処理後の、ヒトPBMCでのpSTAT5活性化により測定したIL7Rシグナル伝達。B. 抗PD-1 IL-7二機能性分子WT(灰色●)又は追加のジスルフィド結合分子を有する抗PD-1 IL-7二機能性分子(黒色●)のマウスにおける薬物動態。マウスに、抗PD-1 IL7二機能性分子を含む1回用量を静脈内注射した。血清中の分子の濃度を、注射後複数の時間ポイントでELISAにより評価した。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図6】PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を、異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。A. IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7WT二機能性分子(▲黒色)、IgG1mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子(■)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(◇)のPD-1結合。B. 別の実験では、IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(■)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(▲)のPD-1結合を試験した。
【
図7】IgG1N298A又はIgG4アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のCD127結合ELISAアッセイ。抗体骨格により標的化される組換えタンパク質を、固定化し、次に、IL-7に融合した抗体を、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino照会10975-H08H)と予めインキュベートした。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。A. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(▲黒色)、又はIgG1mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●黒色)のCD127結合。B. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(▲黒色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●黒色)のCD127結合。C. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS3 二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子(▲黒色)又は抗PD-1 IL-7 WT 二機能性分子IgG1m(●黒色)のCD127結合。D. アイソタイプIgG1mを含む抗PD-1 W142H二機能性分子(●黒色)又はアイソタイプIgG1m+YTE(●灰色)のCD127結合。アイソタイプIgG1mを含む抗PD-1 D74E二機能性分子(▲黒色)又はアイソタイプIgG1m+YTE(▲灰色)のCD127結合も試験した。この図で試験した全ての分子を、FcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図8】IgG1N298A又はIgG4アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のIL-7Rシグナル伝達解析。ヒトPBMC又はジャーカットPD1+CD127+細胞を、抗PD-1 IL7二機能性分子と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。CD3 T細胞におけるpSTAT5の%を計算することにより、データを得た。A. IgG4mアイソタイプ(●灰色)又はIgG1mアイソタイプ(▲黒色)を含む変異D74Eを有する二機能性分子抗PD-1 IL-7の処理後の、ヒトPBMC上のpSTAT5シグナル伝達。B. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2(●灰色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2(▲黒色))の処理後のヒトPBMC上でのpSTAT5シグナル伝達。C. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS3(●灰色)又はIgG1m(▲黒色)の処理後のヒトPBMC上でのpSTAT5シグナル伝達。D. (左パネル)IgG4m(●灰色)又はIgG1m(▲黒色)アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7 WT又は抗PD-1 IL-7 SS2の処理後の、ジャーカットPD1+CD127+細胞におけるpSTAT5シグナル伝達。(右パネル)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2(●灰色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2(▲黒色)の処理後のpSTAT5シグナル伝達。
【
図9】抗PD-1 IL-7変異二機能性分子は、in vitroでT細胞活性化を増強する。Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を共培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを添加後、発光を定量し、T細胞活性化を表す。連続モル濃度の抗PD1抗体+/-組換えIL-7(rIL-7)又は抗PD1IL7二機能性分子を試験した。各ドットは、1回の実験のEC50を表す。A. IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色)又は抗PD-1(▲)又は抗PD-1+rIL-7(○)のNFAT活性化。B. 抗PD-1 IL-7 D74E IgG4m(●)、PD-1 IL-7 D74E IgG1m(▲点線)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。C. IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 W142H 二機能性分子(●)、IgG1mを含むPD-1 IL-7 W142H二機能性分子(▲点線)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。D. IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(●)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。
【
図10】IgG1m又はIgG4mアイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子の薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを含む1回用量を静脈内注射した。血清中の薬物の濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。A. IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色の実線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色の破線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子(▲黒色の破線)、IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(○黒色の実線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(●破線の黒色の実線)、IgG4を含む抗PD-1 IL-7 SS3(■実線)、及びIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS3(■破線)の薬物動態。B. IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 D74E、D74Q、W142H、D74E+W142H変異二機能性分子の薬物動態。
【
図11】IgG1 N298A+K444Aアイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子の薬物動態。マウスに、アイソタイプIgG1N298A(■)又はアイソタイプIgG1m+K444A変異アイソタイプ(●)を含む抗PD-1 IL7 D74E二機能性分子を含む1回用量を静脈内注射した。抗体の濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。
【
図12】リンカーの長さは、薬物動態に有意に影響しないが、IL-7Rシグナル伝達の刺激を減少させる。A. 異なるリンカー(GGGGS)、(GGGGS)2、(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子の薬物動態。B. 異なるリンカー(GGGGS)、(GGGGS)2。(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 D74二機能性分子の薬物動態。C. 異なるリンカー((GGGGS)2、(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子の薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを含む1回用量を静脈内注射した。IL-7に融合したIgGの濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。D. リンカーなし又はGGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)3リンカーで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5シグナル伝達。
【
図13】抗PD-1 IL-7変異は、PD-1-CD127+細胞よりPD-1+CD127+細胞を優先的に標的にする。CD127+を発現するジャーカット細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するジャーカット細胞を、45nM 抗PD-1 IL-7二機能性分子で染色し、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で明らかにした。データは、PD1-細胞CD127+ジャーカット細胞上で得た平均蛍光に対するPD-1+CD127+ジャーカット細胞上の平均蛍光の比を表す。このアッセイにおいて、抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7W142H二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子IgG1mを試験した。
【
図14】共培養アッセイでは、抗PD-1 IL-7変異体は、PD-1- CD127+細胞よりもPD-1+ CD127+細胞を優先的に標的とする。A. 発現を、CD127受容体のみを又はCD127受容体及びPD-1受容体の両方を形質導入したCHO細胞に対するヒトCD127及びヒトPD-1のフローサイトメトリーにより、分析した。B. 共培養アッセイにおける、CD127+を発現するCHO細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するCHO細胞に対する抗PD-1 IL-7変異の結合。細胞を、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で染色し、次いで1:1比で共培養した後、異なる濃度の抗PD-1 IL-7二機能性分子と共にインキュベートした。顕色を、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で行い、フローサイトメトリーにより分析した。各細胞型(CHO PD-1+ CD127+(白色ヒストグラム)及びCHO PD-1- CD127+(黒色ヒストグラム))に対する各構築物の結合EC50(nM)を計算及び報告した。ヒストグラムは、3回の独立した実験の平均+/-SDを表す。このアッセイでは、無関係なmAb IL7 WT(アイソタイプ対照)分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子IgG1mを試験した。これらは、FcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図15】抗PD-1 IL-7変異は、共培養アッセイでは、PD-1- CD127+細胞よりもPD-1+ CD127+細胞内へのpSTAT5シグナル伝達を優先的に活性化する。A. 発現を、CD127受容体のみを又はCD127受容体及びPD-1受容体を形質導入したU937細胞に対するヒトCD127、ヒトPD-1、及びヒトCD132のフローサイトメトリーにより、分析した。B. CD127+を発現するU937細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するU937細胞との共培養アッセイにおける抗PD-1 IL-7変異のpSTAT5活性。細胞を、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で染色し、1:1比で共培養した後、異なる濃度の抗PD-1 IL-7二機能性分子と共にインキュベートした(15分間、37℃)。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694)で染色した。pSTAT5活性化EC50(nM)を、各構築物及び各細胞タイプについて計算した(CHO PD-1+ CD127+(白色ヒストグラム)及びCHO PD-1- CD127+(黒色ヒストグラム))。ヒストグラムは、4回の独立した実験の平均+/-SDを表す。このアッセイでは、rIL-7(組換えヒトIL-7サイトカイン)、無関係なmAb IL7 WT(アイソタイプ対照)分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子IgG1mを試験した。これらは、FcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図16】抗PD-1 IL-7 W142H変異は、PD-1+ CD127+ヒトT細胞内へのpSTAT5シグナル伝達を優先的に活性化し、PD-1+ CD127+疲弊ヒトT細胞の増殖を相乗的に増加させる。ヒトPBMCをCD3/CD28コーティング(3μg/mL OK3及びCD28.2抗体)で刺激してPD-1発現を誘導し、次に、pSTAT5活性及び増殖を、抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子IgG1mで評価した。A.左側のグラフ. フローサイトメトリーにより分析した活性化ヒトT細胞(CD3+集団)に対するヒトCD127、ヒトPD-1の代表的な発現;A.右側のグラフ. ヒト活性化T細胞をアイソタイプ対照又は抗PD-1競合抗体(200μg/mL)と予めインキュベートした後、組換えIL-7又は抗PD-1 IL-7 W142H変異分子と共にインキュベーションした。IL-7 Rシグナル伝達pSTAT5を、固定しAF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した後で、フローサイトメトリーにより定量化した。pSTAT5活性化(EC50)を、アイソタイプ対照で用いた条件及び抗PD-1競合抗体で用いた条件で計算した。データは、こうした2つの条件間の倍加変化の相違を表す;n=独立した実験で試験した5人の異なるドナー。B.アイソタイプ対照、抗PD-1+アイソタイプIL7 W142H IgG1m、又は抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子IgG1m(3nM)によるヒト疲弊PD-1+ T細胞の増殖。増殖を、αCD3/PD-L1組換えタンパク質コーティングプレートで再刺激した後の5日目に測定した。増殖を、click-it EDUアッセイ(幾何平均及びclick-it EDU+細胞%)を使用してフローサイトメトリーにより定量化した;n=4人の独立したT細胞ドナーを、独立した実験で試験した。試験した全ての構築物は、FcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図17】実施例8及び9で使用した様々な分子の概略図である。
【
図18】抗PD-1 IL7 W142H変異は、PD-1に対する高い結合効率を示し、PDL1結合と拮抗する。A. PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を、異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。1つの(抗PD-1*1 ▲灰色)又は2つの抗PD-1アーム(抗PD-1*2 ◆)を有する抗PD-1を対照として試験した。IL7バリアント(抗PD-1*2 IL7 W142H*2 ●黒色)、(抗PD-1*2 IL7 W142H*1 ■黒色)、(抗PD-1*1 IL7 W142H*2 ●灰色)、(抗PD-1*1 IL7 W142H*1 ▼灰色)を含む二機能性分子も試験した。B. ELISAにより測定したPD-1/PD-L1を遮断する拮抗能力。PD-L1を固定化し、複合体抗体+ビオチン化組換えヒトPD-1を添加した。この複合体は、一定濃度のPD1(0.6μg/mL)及び異なる濃度の抗PD1*2 IL7 W142H*1(■実線)、抗PD1*2 IL7 W142H*2(○破線)、抗PD-1*1(灰色▲ 灰色の破線)、抗PD1*1 IL7 W142H*2(灰色● 灰色の実線)、又は抗PD1*1 IL7 W142H*1(灰色▼ 灰色の実線)。試験した構築物は全て、FcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図19】1価又は2価の抗PD-1及び1つのIL-7 W142Hサイトカインで構築した抗PD-1 IL7分子は、pSTAT5を高い有効性で活性化する。A.抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子のPD-1/CD127結合。PD-1組換えタンパク質を固定化し、次に異なる濃度の二機能性分子及び一定量のCD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ付き、Sino社 参照番号10975-H08H)を添加した。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。抗PD1*2 IL7 W142H1*1(■)又は抗PD1*2 IL7 W142H*2(●灰色)を試験した。B. IL-7 W142*1サイトカインに融合した抗PD-1*2骨格を用いたpSTAT5シグナル伝達アッセイ。健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、抗PD1*2 IL7 WT*2(▼)又は抗PD1*2 IL7 W142H*1(■破線)と共に15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、抗CD3-BV421及び抗pSTAT5 AF647(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、CD3+集団に対するMFI pSTAT5+細胞%を計算することにより、得た。C. 抗PD-1*1 IL7 W142H*1(●)抗PD-1*2 IL7WT*2(■)又は抗PD1*2 IL7 W142H*1(▲)による処置後のpSTAT5シグナル伝達アッセイ。試験したW142H構築物は全て、IgG1m及びFcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図20】1つの2価で構築した抗PD-1 IL7分子は、in vivoでのT細胞増殖を有意に促進する。マウスに、1用量(34nM/kg)の抗PD-1 IL-7 W142H分子(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*2)又はアイソタイプ対照を腹腔内注射した。4日目に採血し、T細胞を、抗CD3、抗CD8、抗CD4、及びki67増殖マーカーで染色した。CD3 CD4+及びCD3 CD8+集団におけるKI67のパーセンテージを定量化した。統計的有意性(*p<0.05)は、対照マウス、2つの独立した実験の1群あたりn=2~8匹のマウスとの多重比較のために一元配置NOVAを使用して計算した。
【
図21】抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2は、TCRシグナル伝達を相乗的に活性化する。Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を共培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを添加後、発光を定量し、T細胞活性化を反映する。A.抗PD1*2(●黒色)、抗PD-1*2 IL7 W142H*1(○白色)を系列濃度で添加した。アイソタイプ抗体を、活性化の陰性対照(■)として使用した。B.抗PD1*1+アイソタイプIL7 W142H*2対照の組合せ(○白色破線)、抗PD-1*1 IL7 W142H*2(●灰色)、抗PD-1*1 IL7 W142H*1(○灰色)を系列濃度で添加した。試験したW142H構築物は全て、IgG1m及びFcドメインとIL-7ドメインとの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図22】抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2 W142H変異は、PD-1- CD127+細胞よりもPD-1+ CD127+細胞に優先的に結合してpSTAT5シグナル伝達を活性化する。CD127+を発現するU937細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現する細胞を、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で染色し、1:1比で共培養した後、異なる濃度の抗PD-1 IL-7二機能性分子と共にインキュベートした。インキュベーションした後で、抗ヒトIgG PEで染色し、pSTAT5活性化をフローサイトメトリーにより定量化した。A. 結合EC50(nM)を、各細胞タイプ及び各構築物について計算した。B. pSTAT5 EC50(nM)を、各細胞タイプ及び各構築物について計算した。二機能性分子で処置した後、次に細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694)で染色した。pSTAT5活性化。EC50(nM)を、各構築物及び各細胞タイプU937 PD-1+ CD127+(白色ヒストグラム)及びU937 PD-1- CD127+(黒色ヒストグラム)について計算した。n=2の独立した実験。このアッセイでは、抗PD-1*2 IL7 W142*1、抗PD-1*1 IL7 W142*1、及び抗PD-1*1 IL7 W142*2を試験した。これらは、IgG1mアイソタイプ、及びFcドメインとIL-7ドメインと間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
【
図23】腹腔内注射後の抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2 W142H変異分子の薬物動態。ヒト化PD1マウスに、1用量(34nM/kg)の抗PD-1*2 IL7 IL7*2 IgG4m(△)、抗PD-1*2 IL7 W142H*1 IgG1m(▼)、抗PD-1*1 IL7 W142H*1 IgG1m(●灰色)、又は抗PD-1*1 IL7 W142H*2 IgG1m(○灰色)を腹腔内注射した。血清中の薬物濃度を、注射48時間後まで、ELISAにより評価した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
緒言
本発明による分子は二機能性であり、それは、ヒトインターロイキン7バリアントの特異的効果と免疫細胞上に発現される特異的標的の標的化とを関連付ける組合せであるからである。
【0036】
当業者に公知であるように、腫瘍細胞は、多数のがんで観察されるT細胞疲弊と呼ばれる現象のため、T細胞により十分に排除されない場合がある。例えば、Jiang, Y.、Li, Y.、及びZhu, B(Cell Death Dis 6巻、e1792(2015年))により説明されているように、腫瘍微小環境における疲弊したT細胞は、阻害性受容体の過剰発現、エフェクターサイトカイン産生及び細胞溶解活性の減少に結び付き、がん排除の失敗、及び一般にはがんの免疫回避に結び付く場合がある。したがって、疲弊したT細胞の回復は、がん治療のために起想される臨床戦略である。
【0037】
当技術分野では、免疫細胞、特にT細胞の表面に発現されるプログラム細胞死タンパク質1(PD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、T細胞膜タンパク質-3(TIM3)、及びリンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG3)等の、数多くの疲弊因子が公知である。免疫抑制環境は、特に、そのような分子と、腫瘍細胞の表面に発現されるそれらの対応物との相互作用により誘導される。より詳細には、PD-1は、T細胞疲弊を調節する主要な阻害性受容体の1つである。実際、高PD-1発現を示すT細胞は、がん細胞排除能力の減少を示す。抗PD1治療用化合物、特に抗PD1抗体は、PD1-PDL1相互作用(T細胞上のPD1及び腫瘍細胞上のPDL1)の阻害効果及びT細胞疲弊を阻止するためのがん治療に臨床使用されている。しかしながら、抗PD1抗体は、疲弊したT細胞の「再」活性化を可能にするのに必ずしも十分に効率的ではない。
【0038】
本発明者らは、本発明によるIL-7バリアント及び免疫抑制相互作用を遮断する結合性部分(チェックポイント阻害剤)を含む二機能性分子が、驚くべきことに、T細胞活性化に必要な主要経路であるNFAT経路を相乗的に活性化することを実証した。実際に、TCRシグナル伝達によるT細胞の相乗的活性化を観察した。より詳細には、二機能性IL-7バリアント-抗PD-1分子は、抗PD-1単独と比較して、T細胞、特に疲弊したT細胞のより良好な活性化に結び付くことを示した。
【0039】
本発明者らは、本明細書において新たに、二機能性分子と、i)PD1、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3等の、T細胞の表面に発現される疲弊因子(結合性部分に対する)及びii)同じT細胞上のIL7受容体(IL7バリアント側に対する)との相互作用が、この予期しないNFAT経路(TCRシグナル伝達)の活性化に結び付き、T細胞、特にそうでなければ腫瘍細胞を排除することができないと考えられる疲弊したT細胞の活性化にポジティブな効果を有することを示した。この効果は、以前に開示されたことは全くない。
【0040】
加えて、二機能性分子におけるIL-7バリアントの使用は、in vivoでの薬物動態を増加させるために重要である。更に、その受容体に対するIL-7バリアントの親和性を減少させることにより、二機能性分子が、他のものと比較して標的免疫細胞に優先的に結合し、そうした細胞に対して特異的な効果を提供する能力だけでなく、同じ免疫細胞に対する二機能性分子の2つの部分の作用に関連付けられる相乗効果を活用する能力も増加する。より詳細には、IL-7バリアント及び疲弊因子を標的とする結合性部分を含む二機能性分子は、T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積及びT細胞上のIL-7の再局在化を可能にすることになると考えられる。こうしたT細胞付近にIL-7が蓄積されることは、こうしたT細胞を活性化又は再活性化するために高用量のIL-7を必要とする疲弊したT細胞の状況では、特に興味深い。
【0041】
驚くべきことに、本発明者らは、IgG1重鎖定常ドメインを有する二機能性分子が、IgG4重鎖定常ドメインを有する同じ分子と比較して、IL-7バリアントの活性向上(pStat5シグナル、相乗効果、及びCD127結合)を示すことを観察した。この向上は、IL-7変異体に特異的であり、野生型IL-7では観察されていない。加えて、抗体とIL-7との間にリンカー(GGGGS)3を使用すると、IL-7バリアントの活性(pStat5シグナル及びCD127結合)が最大化される。
【0042】
本発明の二機能性分子は、特に、以下の利点の1つ又は幾つかを有する:
- 二機能性分子は、IL-7バリアントを、T細胞又はPD-1+細胞等の免疫細胞付近へと、特に腫瘍内へと特異的に局在化させ、より高濃度のIL-7を必要とする細胞の標的化を可能にする。
- IL-7バリアントの変異は、IL-7野生型と比較して、その固有の生物学的活性を完全に又は著しく喪失することなく、IL-7Rに対するIL-7バリアントの親和性を減少させる。
- IL-7バリアントの変異は、特にIL-7野生型を含む二機能性分子と比較して、in vivoでの薬物動態及び薬理学を向上させる。より詳細には、分子の薬物動態及び薬理学(pharmacodynamics)を向上させることにより、二機能性分子は、標的細胞に到達し、免疫細胞の表面に発現されている標的に作用することが可能になる。
- 本発明による二機能性分子は、IL7変異体の相乗的活性(NFATシグナル伝達)を示す。
- 本発明による二機能性分子は、野生型IL7を含む抗体と比較して、PD-1(-)細胞よりもPD-1(+)細胞に対して最も高い選択的活性を有する。
- 変異型IL-7 W142H分子を含む二機能性分子は、PD-1(+)CD127(+)疲弊T細胞を選択的及び相乗的にシス活性化する。
- IL-7バリアントは、標的(例えば、PD-1)に結合してIL7R経路を活性化する能力を維持しつつ、1つ又は2つのIL-7分子及び1つ又は2つの抗原結合性断片を有する二機能性分子の幾つかの構造に含めることができる。特に、1つ又は2つのIL7 W142Hバリアントを有する二機能性分子は、in vivoで良好な薬物動態特性を有する。
- 本発明者らは、驚くべきことに、単一のIL-7バリアントを含む構築物が、活性及び薬物動態の両方の観点から、2つのIL7バリアントを含む構築物と比較して特性の向上を有することを示している。
【0043】
定義
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を本明細書の下記で定義する。追加の定義は、詳細な説明全体にわたって示されている。
【0044】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語は、本発明が関する当業者が一般的に理解する意味を有することが意図されている。一部の場合では、明瞭性のため及び/又は容易な参照のため、一般的に理解されている意味を有する用語も本明細書で定義されている。本明細書にそのような定義が含まれている場合でも、当技術分野で一般に理解されている意味と必ずしも異なることを表すとは解釈されるべきではない。本明細書で記載又は参照されている技法及び手順は、一般によく理解されており、当業者により従来の方法論を使用して広く使用されている。
【0045】
本明細書で使用される場合、「野生型インターロイキン-7」、「wt-IL-7」、及び「wt-IL7」という用語は、哺乳動物内因性分泌性糖タンパク質、特に、野生型機能性哺乳動物IL-7と実質的なアミノ酸配列同一性を有し、例えば、IL-7受容体結合親和性の標準的なバイオアッセイ又はアッセイにおいて実質的に等価な生物学的活性を有するIL-7ポリペプチド、それらの誘導体及びアナログを指す。例えば、wt-IL-7は、i)天然又は天然に存在するIL-7ポリペプチド、ii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な断片、iii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドアナログ、又はiv)生物学的に活性なIL-7ポリペプチドのアミノ酸配列を有する組換え又は非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を指す。IL-7は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。この分子の代替名称は、「プレB細胞増殖因子」及び「リンホポエチン-1」である。好ましくは、「wt-IL-7」という用語は、ヒトIL-7(wth-IL7)を指す。例えば、ヒトwt-IL-7アミノ酸配列は、約152個アミノ酸(シグナルペプチドが存在しない場合)であり、Genbank受入番号はNP_000871.1であり、遺伝子は染色体8q12-13に位置する。ヒトIL-7は、例えば、UniProtKB-P13232に記載されている。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のタイプを記述し、その最も広い意味で使用される。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、つまり抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであってもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。別様に具体的に示されていない限り、「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、並びに「抗体断片」又は「抗原結合性断片」(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等)、単鎖(scFv)、それらの変異体、抗体部分を含む分子、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体、及び抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアントを含む、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構成を含む。好ましくは、抗体という用語は、ヒト化抗体を指す。
【0047】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちのより大きい方を指す。抗体重鎖のCDRは、典型的には、「HCDR1」、「HCDR2」、及び「HCDR3」と呼ばれる。抗体重鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「HFR1」、「HFR2」、「HFR3」、及び「HFR4」と呼ばれる。
【0048】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ軽鎖及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。抗体軽鎖のCDRは、典型的には、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」と呼ばれる。抗体軽鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「LFR1」、「LFR2」、「LFR3」、及び「LFR4」と呼ばれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合性断片」は、抗体の一部、つまり、おそらくはその天然形式において、特定の抗原に対して抗原結合能を呈する、本発明の抗体の構造の部分に対応する分子を意味する。特に、そのような断片は、対応する4本鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、その抗原に対して同じ又は実質的に同じ抗原結合特異性を呈する。有利には、抗原結合性断片は、対応する4本鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかしながら、対応する4本鎖抗体と比べて低減された抗原結合親和性を有する抗原結合性断片も、本発明内に包含される。抗原結合能は、抗体と標的断片との間の親和性を測定することにより決定することができる。こうした抗原結合性断片も、抗体の「機能的断片」と称することができる。抗体の抗原結合性断片は、CDR(相補性決定領域)と称される超可変性ドメイン又はそれらの一部を含む断片である。
【0050】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体(例えば、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体)を指すことが意図されている。また、抗体の「ヒト化形式」、例えば非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。ヒト化抗体は、一般に、1つ又は複数のCDRに由来する残基が、元の抗体の所望の特異性、親和性、及び容量を維持しつつ、非ヒト抗体(ドナー抗体)の少なくとも1つのCDRに由来する残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ヒトフレームワーク配列内には、追加のフレームワーク領域修飾がなされていてもよい。好ましくは、ヒト化抗体は、80%、85%、又は90%よりも大きなT20ヒト性スコアを有する。「ヒト性」は、例えば、Gao S H、Huang K、Tu H、Adler A S.、BMC Biotechnology. 2013年:13巻:55頁に記載のような、抗体の可変領域のヒト性を定量化するためのT20スコアアナライザー(T20 score analyzer)又はT20カットオフデータベース(T20 Cutoff Human Databases)を使用して抗体配列のT20スコアを計算するためのウェブベースツール:http://abAnalyzer.lakepharma.comを使用して測定することができる。
【0051】
「キメラ抗体」は、好ましくはマウス等の非ヒト供給源に由来する遺伝物質を、ヒトに由来する遺伝物質と組み合わせることにより製作される抗体を意味する。そのような抗体は、キメラ領域により連結されたヒト抗体及び非ヒト抗体の両方に由来する。キメラ抗体は、一般に、ヒト由来の定常ドメイン及び別の哺乳動物種由来の可変ドメインを含み、療法的治療に使用した場合、非ヒト動物に由来する外来抗体に対する反応のリスクを低減する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「結晶化可能断片領域」、「Fc領域」、又は「Fcドメイン」という用語は、同義的であり、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体と相互作用する抗体の尾部領域を指す。Fc領域又はドメインは、典型的には、抗体の2つの重鎖の第2の及び第3の定常ドメイン(つまり、CH2ドメイン及びCH3ドメイン)に由来する2つの同一ドメインで構成される。Fcドメインの部分は、CH2ドメイン又はCH3ドメインを指す。任意選択で、Fc領域又はドメインは、任意選択で、CH1とCH2との間のヒンジ領域の全て又は部分を含んでいてもよい。任意選択で、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来するものであり、任意選択で、IgG1ヒンジ-CH2-CH3及びIgG4ヒンジ-CH2-CH3を有する。
【0053】
IgG抗体の状況では、IgGアイソタイプは、各々3つのCH領域を有する。したがって、IgGの状況における「CH」ドメインは、以下の通りである:「CH1」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる118~215位を指す。「ヒンジ」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる216~230位を指す。「CH2」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる231~340位を指し、「CH3」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる341~447位を指す。
【0054】
「アミノ酸変化」又は「アミノ酸修飾」とは、本明細書では、ポリペプチドのアミノ酸配列の変化を意味する。「アミノ酸修飾」としては、ポリペプチド配列における置換、挿入、及び/又は欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」又は「置換」とは、本明細書では、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を別のアミノ酸と置き換えることを意味する。「アミノ酸挿入」又は「挿入」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にアミノ酸を付加すること意味する。「アミノ酸欠失」又は「欠失」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を除去することを意味する。アミノ酸置換は、保存的であってもよい。保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、嵩高さ、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。本明細書で使用される場合、「アミノ酸位置」又は「アミノ酸位置番号」は、同義的に使用され、アミノ酸配列中の特定のアミノ酸の位置を指し、一般にアミノ酸の一文字コードで指定される。アミノ酸配列の最初のアミノ酸が(つまり、N末端から開始して)、1位であるとみなされるべきである。
【0055】
保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、嵩高さ、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないだろう。保存的置換及び対応する規則は、技術水準で十分に記載されている。例えば、保存的置換は、以下の表に反映されているアミノ酸の群内の置換により規定することができる。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の「配列同一性」は、パラメーター「配列同一性」、「配列類似性」、又は「配列相同性」により説明される。本発明の目的では、2つの配列(A)と(B)との間の「同一性パーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって最適な様式でアラインされた2つの配列を比較することにより決定される。配列のアラインメントは、例えば、ニードルマン-ブンシュのグローバルアラインメントのアルゴリズムを使用して、当技術分野で周知の方法により実施することができる。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠失、及び他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を使用して、類似の配列を照合する。全体のアラインメントが得られたら、アラインされた同一アミノ酸残基の総数を、配列(A)と(B)との間の最長配列に含まれる残基の総数で割ることにより、同一性パーセンテージを得ることができる。配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して決定される。2つのアミノ酸配列を比較するには、例えば、EMBL-EBIにより提供されるか、又はwww.ebi.ac.uk/Tools/services/web/toolform.ebi?tool=emboss_needle&context=proteinで利用可能なタンパク質のペアワイズ配列アラインメント用のツール「Emboss needle」を、例えば、初期設定:(I)マトリックス:BLOSUM62、(ii)ギャップオープン:10、(iii)ギャップ伸長:0.5、(iv)出力形式:ペア、(v)エンドギャップペナルティ:偽、(vi)エンドギャップオープン:10、(vii)エンドギャップ伸長:0.5を用いて、使用することができる。
【0060】
或いは、配列同一性は、典型的には、HHalignアルゴリズム及びその初期設定をそのコアアライメントエンジンとして使用する配列分析ソフトウェアClustal Omegaを使用して決定することもできる。このアルゴリズムは、初期設定とともに、Soding, J.(2005年)「Protein homology detection by HMM-HMM comparison」、Bioinformatics 21巻、951~960頁に記載されている。
【0061】
「から派生する(derive from)」及び「に由来する(derived from)」という用語は、本明細書で使用される場合、親化合物又は親タンパク質の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書に開示のものと十分に類似しており、当業者であれば、その類似性に基づき、特許請求されている化合物と同じ又は同様の特性、活性、及び有用性を呈することが予想されることになる化合物を指す。
【0062】
「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、生理学的に好適な担体及び賦形剤等の任意選択の他の化学成分と共に本発明による二機能性分子を含むもの等、活性物質の1つ又は複数の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への活性物質の投与を容易にすることである。本発明の組成物は、任意の従来の投与経路又は使用に好適な形態であってもよい。一実施形態では、「組成物」は、典型的には、活性物質、例えば化合物又は組成物と、薬学的に許容される担体を含む、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、保存剤、又はアジュバント等の不活性(例えば、検出可能な物質又は標識)又は活性の天然に存在する又は天然に存在しない担体との組合せが意図される。「許容されるビヒクル」又は「許容される担体」は、本明細書で言及される場合、医薬組成物の製剤化に有用であることが当業者に公知である任意の公知の化合物又は化合物の組合せである。
【0063】
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は1つ若しくは複数の他の活性物質との組合せのいずれかで、対象に治療効果を付与するのに必要な活性物質の量、例えば、標的の疾患若しくは障害を治療するために、又は所望の効果を生み出すために必要とされる活性物質の量を指す。「有効量」は、物質、疾患及びその重症度、年齢、身体状態、大きさ、性別、及び体重を含む、治療しようとする対象の特徴、治療の期間、併用療法の性質(該当する場合)、特定の投与経路、並びに医療従事者の知識及び専門性の範囲内の類似要因に応じて様々であろう。こうした要因は、当業者に周知であり、単なる日常的実験作業で対処することができる。一般に、個々の成分又はそれらの組合せの最大用量、つまり、健全な医学的判断による最も高い安全な用量を使用することが好ましい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「医薬」という用語は、障害又は疾患に対する治癒的又は防止的特性を有する任意の物質又は組成物を指す。
【0065】
「治療」という用語は、疾患又は疾患の症状の療法、防止、予防、及び緩徐等の、患者の健康状態を改善することを目的としたあらゆる行為を指す。この用語は、疾患の治癒的治療及び/又は予防的治療の両方を指す。治癒的治療は、疾患若しくは疾患の症状又はそれが直接若しくは間接に引き起こす苦難を軽減、好転、及び/又は消失、低減、及び/又は安定化する治癒又は治療をもたらす治療であると定義される。予防的治療は、疾患の防止をもたらす治療、並びに疾患の進行及び/若しくは発症又はその発生リスクを低減及び/又は遅延させる治療の両方を含む。ある特定の実施形態では、そのような用語は、疾患、障害、感染症、又はそれと関連する症状の好転又は根絶を指す。他の実施形態では、この用語は、がんの広がり又は悪化を最小限に抑えることを指す。本発明による治療は、必ずしも100%又は完全な治療を示唆するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は療法効果を有すると認識する様々な度合いの治療が存在する。好ましくは、「治療」という用語は、1つ又は複数の活性物質を含む組成物を、障害/疾患を有する対象に適用又は投与することを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「障害」又は「疾患」という用語は、遺伝的若しくは発生上の誤謬、感染、毒、栄養不足若しくは偏り、毒性、又は好ましくない環境要因に起因して、身体の臓器、一部分、構造、又は系が正しく機能しないことを指す。好ましくは、こうした用語は、健康障害又は疾患、例えば、正常な身体的又は精神的機能を妨害する疾病を指す。より好ましくは、障害という用語は、がん等の、動物及び/又はヒトに影響を及ぼす免疫疾患及び/又は炎症性疾患を指す。
【0067】
「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球細胞(白血球)、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)、及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)等の、自然免疫及び適応免疫に関与する細胞を指す。特に、免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、樹状細胞、並びに単球を含む非網羅的リストにおいて選択することができる。「T細胞」としては、本明細書で使用される場合、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞、及び阻害性T細胞が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「Tエフェクター細胞」、「Teff」、又は「エフェクター細胞」という用語は、共刺激等の刺激に活性に応答する幾つかのT細胞型を含む免疫細胞の群を記述する。この用語は、特に、抗原を排除するように機能するT細胞を含む(例えば、他の細胞の活性化をモジュレートするサイトカインの産生により、又は細胞傷害活性により)。この用語は、特に、CD4+細胞、CD8+細胞、細胞傷害性T細胞、及びヘルパーT細胞(Th1及びTh2)を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「調節性T細胞」、「Treg細胞」、又は「Treg」という用語は、免疫系をモジュレートし、自己抗原に対する耐容性を維持し、自己免疫疾患を防止するT細胞の部分集団を指す。Tregは、免疫抑制性であり、一般にエフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制又は下方制御する。Tregは、バイオマーカーCD4、FOXP3、及びCD25を発現し、ナイーブCD4細胞と同じ系列に由来すると考えられている。
【0070】
「疲弊したT細胞」という用語は、機能不全(つまり「疲弊」)の状態にあるT細胞の集団を指す。T細胞疲弊は、機能の進行性喪失、転写プロファイルの変化、及び阻害性受容体の持続的発現により特徴付けられる。疲弊したT細胞は、サイトカイン産生能力、高い増殖能力、及び細胞傷害能力を喪失し、それにより最終的には自身の除去がもたらされる。疲弊したT細胞は、典型的には、CD62L及びCD127の発現がより低いこと併せて、より高いレベルのCD43、CD69、及び阻害性受容体を提示する。
【0071】
「免疫応答」という用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合は正常なヒト細胞若しくは組織に対する選択的損傷、破壊、又はヒト身体からの排除をもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記の細胞又は肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0072】
「アンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、別の物質の活性又は機能性を阻止又は低減する物質を指す。特に、この用語は、参照物質(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)としての細胞受容体(例えば、PD-1)に結合し、それがその通常の生物学的効果(例えば、免疫抑制性微小環境の生成)の全て又は一部を生み出すことを妨げる抗体を指す。本発明によるヒト化抗体のアンタゴニスト活性は、競合ELISAにより評価することができる。
【0073】
「アゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、活性化受容体の機能を活性化する物質を指す。特に、この用語は、参照物質として細胞活性化受容体に結合し、生物学的に天然のリガンドと少なくとも部分的に同じ効果を有する(例えば、受容体の活性化効果を誘導する)抗体を指す。
【0074】
薬物動態(PK)は、身体内での薬物の動きを指し、薬理学(PD)は、薬物に対する身体の生物学的反応を指す。PKは、吸収、分布、生物学的利用能、代謝、及び排泄を時間の関数として特徴付けることにより、薬物曝露を記述する。PDは、生化学的相互作用又は分子的相互作用の観点から薬物応答を記述する。PK分析及びPD分析を使用して、薬物曝露を特徴付け、投薬量の変化を予測及び評価し、排除速度及び吸収速度を推定し、製剤の相対的生物学的利用能/生物学的同等性を評価し、対象内変動性及び対象間変動性を特徴付け、濃度-効果関係性を理解し、安全域及び有効性特徴を確立する。「PKの向上」とは、例えば、分子の半減期の増加、特に対象に注射した際に分子がより長い血清半減期を示す等、上記の特徴の1つが向上されることを意味する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、記載されている物質(例えば、抗体、ポリペプチド、核酸等)が、自然界ではそれらと共に存在する他の物質から実質的に分離されているか、又はそれらと比べて濃縮されていることを示す。特に、「単離された」抗体は、その天然環境の成分から同定、分離、及び/又は回収されているものである。
【0076】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合、他方の有無に関わらず、2つの指定の特徴又は成分の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々があたかも個々に示されているような、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の具体的な開示として解釈されるべきである。
【0077】
「a」又は「an」という用語は、要素の1つ又は要素の1つよりも多くのいずれかが記載されていることが状況から明らかでない限り、それが修飾する要素の1つ又は複数を指すことができる(例えば、「試薬」は、1つ又は複数の試薬を意味することができる)。
【0078】
「約」という用語は、ありとあらゆる値(数値範囲の下限及び上限を含む)に関連して本明細書で使用される場合、最大で+/-10%(例えば、+/-0.5%、+/-1%、+/-1.5%、+/-2%、+/-2.5%、+/-3%、+/-3.5%、+/-4%、+/-4.5%、+/-5%、+/-5.5%、+/-6%、+/-6.5%、+/-7%、+/-7.5%、+/-8%、+/-8.5%、+/-9%、+/-9.5%)の許容可能な逸脱範囲を有するあらゆる値を意味する。値の文字列の先頭における「約」という用語の使用は、値の各々を修飾する(つまり、「約1、2、及び3」は、約1、約2、及び約3を指す)。更に、値のリストが本明細書に記載されている場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%、又は86%)、リストは、その全ての中間値及び小数値(例えば、54%、85.4%)を含む。
【0079】
IL-7変異体
本開示は、インターロイキン7変異体(IL-7m)、並びにインターロイキン7変異体(IL-7m)を含む第1の実体及び結合性部分を含む第2の実体を含む二機能性分子を提供する。
【0080】
「インターロイキン-7変異体」、「変異型IL-7」、「IL-7変異体」、「IL-7バリアント」、「IL-7m」、又は「IL-7v」という用語は、本明細書では同義的に使用される。IL-7タンパク質の「バリアント」又は「変異体」は、1つ又は複数のアミノ酸が変更されているアミノ酸配列であると定義される。バリアントは、「保存的」修飾又は「非保存的」修飾を有していてもよい。そのような修飾としては、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を挙げることができる。好ましくは、修飾は、置換、特に保存的置換である。本発明内に含まれるバリアントIL-7タンパク質は、特に、野生型IL-7と比較して実質的に等価な生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を保持しないIL-7タンパク質に関する。IL-7タンパク変異体又はバリアントは、少なくとも1つの変異を含む。特に、少なくとも1つの変異は、IL-7mのIL-7Rに対する親和性を減少させるが、IL-7R認識の喪失には結び付かない。したがって、IL-7変異体又はバリアントは、例えば、Bitarら、Front. Immunol.、2019年、10巻等に開示の通り、例えば、pStat5シグナルにより測定して、IL-7Rを活性化する能力を保持する。IL-7タンパク質の生物学的活性は、in vitro細胞増殖アッセイを使用して、又はELISA若しくはFACSでT細胞のP-Stat5を測定することにより測定することができる。好ましくは、本発明によるIL-7バリアントは、生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を、野生型IL-7、好ましくはwth-IL7と比較して、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、100分の1、250分の1、500分の1、750分の1、1000分の1、2500分の1、5000分の1、又は8000分の1に低減させる。より好ましくは、IL-7バリアントは、IL-7受容体に対する結合の低減を示すが、IL-7Rを活性化する能力を保持する。例えば、IL-7受容体に対する結合は、野生型IL-7と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。好ましくは、IL-7mは、例えば、配列番号1に記載のもの等、ヒト野生型IL-7のバリアントである。
【0081】
一実施形態では、本発明によるIL-7バリアントは、野生型ヒトIL-7と比較して少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%の、好ましくは、野生型IL-7と比較して少なくとも80%、90%、95%、更により好ましくは99%の生物学的活性を維持する。
【0082】
一態様では、IL-7バリアント又は変異体は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して低減させ、ii)IL7バリアントの薬物動態をwt-IL7と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。
【0083】
別の態様では、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対する二機能性分子の親和性を、wt-IL-7を含む二機能性分子のIL-7Rに対する親和性と比較して低減させ、ii)IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wt-IL-7を含む二機能性分子と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。例えば、IL-7受容体に対する、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の結合は、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。
【0084】
本発明によると、IL-7mは、IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対する親和性の低減を示す。特に、IL-7mは、それぞれ、CD127及び/又はCD132に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127及び/又はCD132に対する親和性の低減を示す。好ましくは、IL-7mは、CD127に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127に対する親和性の低減を示す。
【0085】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対する、特にCD132又はCD127に対するIL-7mの親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して、少なくとも10分の1、100分の1、1000分の1、10000分の1、又は100000分の1に減少させる。そのような親和性比較は、ELISA又はBiacore等の、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0086】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7mの親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7mの生物学的活性を、IL-7 wtと比較して減少させない。
【0087】
或いは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7mの親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7mの生物学的活性をIL-7 wtと比較して著しくは減少させない。
【0088】
それに加えて又はその代わりに、IL-7mは、それぞれ、野生型IL-7又は野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアント若しくは変異体又はIL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。特に、本発明によるIL-7mは、IL-7バリアントの薬物動態を、wth-IL-7と比較して、少なくとも10倍、100倍、又は1000倍向上させる。特に、本発明によるIL-7mは、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10倍、100倍、又は1000倍向上させる。薬物動態プロファイル比較は、例えば、実施例2に示されているように、薬物をin vivo注射し、複数時点で血清中薬物の投与量ELISA(dosage ELISA)を行うこと等、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「薬物動態」及び「PK」という用語は、同義的に使用され、生体生物に投与される化合物、物質、又は薬物の運命を指す。薬物動態は、特に、解放(つまり、組成物からの物質の放出)、吸収(つまり、血液循環への物質の進入)、分布(つまり、身体にわたる物質の分散又は拡散) 代謝(つまり、物質の変換又は分解)、及び排泄(つまり、生物からの物質の除去又はクリアランス)を表すADME又はLADMEスキームを含む。代謝及び排泄の2つの段階は、消失という表題下で一緒にグループ化することもできる。当業者であれば、中でも、消失半減期、消失定率(elimination constant rate)、クリアランス(つまり、単位時間当たりに薬物がクリアランスされる血漿の容積)、Cmax(最大血清中濃度)、及び薬物曝露(曲線下面積により決定される。Scheffら、Pharm Res. 2011年5月;28巻(5号):1081~9頁を参照)等、様々な薬物動態パラメーターをモニターすることができる。
【0090】
したがって、特に二機能性分子におけるIL-7mの使用による薬物動態の向上は、上記で言及されているパラメーターの少なくとも1つの向上を指す。好ましくは、向上は、二機能性分子の消失半減期の向上、つまり半減期持続期間又はCmaxの増加を指す。
【0091】
特定の実施形態では、IL-7mの少なくとも1つの変異は、IL-7 wtを含む二機能性分子と比較して、IL-7mを含む二機能性分子の消失半減期を向上させる。
【0092】
一実施形態では、IL-7mは、配列番号1に開示されているもの等、152個アミノ酸の野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)タンパク質と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。好ましくは、IL-7mは、配列番号1と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。
【0093】
特に、少なくとも1つの変異は、IL-7のアミノ酸74位及び/又は142位に生じる。それに加えて又はその代わりに、少なくとも1つの変異は、アミノ酸2位及び141位、34位及び129位、並びに/又は47位及び92位で生じる。こうした位置は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。
【0094】
特に、少なくとも1つの変異は、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、K81R、D74E、D74Q、並びにD74N、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群である。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。したがって、例えば、変異W142Hは、アミノ酸142位にヒスチジンを有するIL-7mを得るために、wth-IL7のトリプトファンをヒスチジンに置換することを表す。そのような変異体は、例えば、配列番号5に記載されている。
【0095】
一実施形態では、IL-7mは、C2とC141との間、C47とC92との間、及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために置換のセットを含む。特に、IL-7mは、C2とC141との間及びC47とC92との間;C2とC141との間及びC34~C129の間;又はC47とC92との間及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために2セットの置換を含む。例えば、ジスルフィド結合形成を防止するために、システイン残基をセリンに置換してもよい。したがって、アミノ酸置換は、C2S-C141S及びC47S-C92S(「SS2」と称する)、C2S-C141S及びC34S-C129S(「SS1」と称する)、及びC47S-C92S及びC34S-C129S(「SS3」と称する)からなる群から選択することができる。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7mは、配列番号2~4(それぞれ、SS1、SS2、及びSS3)に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、アミノ酸置換C2S-C141S及びC47S-C92Sを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号3に示されている配列を示す。
【0096】
別の実施形態では、IL-7mは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7mは、それぞれ配列番号5~7に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、変異W142Hを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号5に示されている配列を示す。
【0097】
別の実施形態では、IL-7mは、D74E、D74Q、及びD74N、好ましくはD74E及びD74Qからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7mは、それぞれ配列番号12~14に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、変異D74Eを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号12に示されている配列を示す。
【0098】
別の実施形態では、IL-7mは、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/又はK81Rからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7mは、それぞれ、配列番号8、9、10、11、及び15に示されている配列に具体的に記載されている。
【0099】
一実施形態では、IL-7mは、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はiii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異を含む。
【0100】
一実施形態では、IL-7mは、W142H置換と、i)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0101】
一実施形態では、IL-7mは、D74E置換と、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0102】
一実施形態では、IL-7mは、変異C2S-C141S及びC47S-C92Sと、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、及び/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Qからなる少なくとも1つの置換とを含む。
【0103】
一実施形態では、IL-7mは、i)D74E及びW142H置換、並びにii)変異C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129Sを含む。
【0104】
IL-7mタンパク質は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく又はそれを欠いていてもよい。また、IL-7のバリアントは、IL-7の変更されたポリペプチド配列(例えば、酸化形態、還元形態、脱アミノ形態、又は短縮形態)を含んでいてもよい。
【0105】
一態様では、本発明に使用されるIL-7バリアント又は変異体は、組換えIL-7である。「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、組換え発現系から、つまり宿主細胞(例えば、微生物又は昆虫又は植物又は哺乳動物)の培養から、又はIL-7mポリペプチドをコードする核酸分子を含有するように遺伝子操作されたトランスジェニック植物又は動物から得られるか又は由来することを意味する。好ましくは、組換えIL-7は、ヒト組換えIL-7m(例えば、組換え発現系で産生されるヒトIL-7m)である。
【0106】
一実施形態では、IL-7mは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15に示されている配列を示す。好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。更により好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号3、5、又は12に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。
【0107】
一実施形態では、本発明は、特に、免疫応答を刺激する可能性のある、IL-7内のT細胞エピトープを除去することにより、野生型IL-7タンパク質と比較して免疫原性の低下を示すIL-7バリアント及びIL-7バリアントを含む二機能性分子を提供する。そのようなIL-7の例は、国際公開第2006061219号に記載されている。
【0108】
また、本発明は、本明細書に開示の通りのIL-7バリアント又は変異体を含む任意の融合タンパク質、及び本明細書に開示の通りのIL-7バリアント又は変異体を含む任意のコンジュゲートに関する。IL-7バリアント又は変異体は、N末端又はC末端が融合されていてもよい。IL-7バリアント又は変異体は、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、その断片及び誘導体、抗体模倣物、サイトカイン又はサイトカイン受容体、腫瘍抗原又はウイルス抗原、アルブミン又はアルブミン結合タンパク質)、ポリマー(例えば、PEG)、薬物(例えば、抗がん剤又は抗ウイルス剤)等の化学的化合物、炭水化物、及び核酸分子(例えば、siRNA、shRNA、アンチセンス、ギャップマー)に融合又はコンジュゲートされていてもよい。
【0109】
IL-7バリアント又は変異体にコンジュゲート又は融合することができる分子の非網羅的なリストには、抗CD19、抗カルレティキュリン、抗腫瘍抗原等の抗体:IL-15又はIL-15R等のサイトカイン又はサイトカイン受容体;免疫グロブリンのFc領域又はその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのベータサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖非構造化アミノ酸親水性配列(XTEN、long unstructured hydrophilic sequences of amino acids)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、アルブミン結合性小分子、及びそれらの組合せ等の、IL-7バリアントの半減期を延長するドメイン;並びにフィブロネクチン結合性ペプチドが含まれていてもよい。
【0110】
IL-7を含む融合タンパク質又はコンジュゲートの特定の例は、例えば、国際公開第19222294号、国際公開第19215510号、国際公開第19178362号、国際公開第19178364号、国際公開第19144309号、国際公開第19046313号、国際公開第18215937号、国際公開第18201047号、国際公開第18064611号、国際公開第17216223号、米国特許出願第2018319858号、国際公開第17158436号、国際公開第16200219号、国際公開第05063820号に開示されている。
【0111】
特定の態様では、IL-7バリアント又は変異体は、結合性部分を含む二機能性分子に含まれていてもよい。
【0112】
結合性部分
本発明による二機能性分子は、本明細書に開示の通りのIL-7バリアント又は変異体、及び結合性部分を含む追加の又は第2の実体を含む。
【0113】
二機能性分子に含まれる結合性部分は、インターロイキンではなく、特にIL-7でもIL-7Rでもないことが理解される。
【0114】
本明細書で使用される場合、「結合性部分」という表現は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、及び抗体等の、標的に結合する能力を有する任意の部分に関する。特に、結合性部分としては、抗体又はその抗原結合性断片並びに抗体模倣物又は抗体ミメティックが挙げられる。結合性部分の標的は、本明細書の下記でより詳細に規定されている。
【0115】
一実施形態では、結合性部分は、抗体又はその断片並びに抗体模倣物又は抗体ミメティックからなる群から選択される。生化学分野の当業者であれば、Gebauer及びSkerra、2009年、Curr Opin Chem Biol 13巻(3号): 245~255頁で考察されている通りの抗体模倣物又は抗体ミメティックに精通している。抗体模倣物の例としては、以下のものが挙げられる:アフィボディ(トリネクチンとも呼ばれる;Nygren、2008年、FEBS J、275巻、2668~2676頁;CTLD(テトラネクチンとも呼ばれる;Innovations Pharmac. Technol.(2006年)、27~30頁);アドネクチン(adnectin)(モノボディとも呼ばれる;Meth、Mol. Biol.、352巻(2007年)、95~109頁);アンチカリン(Drug Discovery Today (2005年)、10巻、23~33頁);DARPins(アンキリン;Nat. Biotechnol. (2004年)、22巻、575~582頁);アビマー(Nat. Biotechnol.(2005年)、23巻、1556~1561頁);ミクロボディ(FEBS J、(2007年)、274巻、86~95頁);アプタマー(Expert. Opin. Biol. Ther.(2005年)、5巻、783~797頁);クニッツドメイン(J. Pharmacol. Exp. Ther.(2006年)318巻、803~809頁);アフィリン(Trends. Biotechnol.(2005年)、23巻、514~522頁);アフィチン(Krehenbrinkら、2008年、J. Mol. Biol. 383巻(5号):1058~68頁)、アルファボディ(alfabody)(Desmet, J.ら、2014年、Nature Communications.5巻:5237頁)、フィノマー(fynomer)(Grabulovski Dら、2007年、J Biol Chem.282巻(5号):3196~3204頁)、及びアフィマー(Avacta Life Sciences、ウェザビー、英国)。
【0116】
したがって、結合性部分は、好ましくは、免疫グロブリン、scFv、又はVHH、Fab、単一ドメイン抗体、及び抗体模倣物等の、好ましくは、アフィボディ、CTLD、アドネクチン、アンチカリン、DARPins、アビマー、ミクロボディ、アプタマー、クニッツドメイン、アフィリン、アフィチン、アルファボディ、フィノマー、及びアフィマー等の、抗体又はその抗体断片からなる群から選択することができる。
【0117】
好ましくは、結合性部分は、抗体又はその抗体断片である。更により好ましくは、結合性部分は、ヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗体、又はそれらの抗原結合性断片である。
【0118】
結合性部分の標的
本発明によると、結合性部分は、免疫細胞表面に発現される標的に、特に免疫細胞上にのみ又は特異的に発現される標的に特異的に結合する。特に、結合性部分は、腫瘍細胞上に発現される標的に対するものでない。
【0119】
結合性部分の「結合能力」に関して、「結合する」又は「結合」という用語は、別のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は分子を認識し、それらと接触するペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、分子、及び抗体(抗体断片及び抗体模倣物を含む)を指す。一実施形態では、この用語は、抗原-抗体型の相互作用を指す。特定の標的に関して、「特異的結合」、「特異的に結合する」、「に特異的な」、「選択的に結合する」、及び「に選択的な」という用語は、結合性部分が、特異的な抗原を認識してそれと結合するが、試料内の他の分子を実質的に認識せず結合もしないことを意味する。例えば、抗原に特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他の分子との結合よりも、この抗原に、例えば、より高い親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより長期間にわたって、結合する抗体である。好ましくは、「特異的結合」という用語は、10-7Mと等しいか又はそれよりも低い結合親和性を有する、抗体と抗原との接触を意味する。ある特定の態様では、抗体は、10-8M、10-9M、又は10-10Mと等しいか又はそれよりも低い親和性で結合する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「標的」という用語は、本発明による結合性部分により特異的に認識又は標的化され、免疫細胞の外側表面に発現される炭水化物、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、又はエピトープを指す。免疫細胞の表面での標的の発現に関して、「発現される」という用語は、細胞の外側表面に存在するか又は提示される炭水化物、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、又はエピトープ等の標的を指す。「特異的に発現される」という用語は、標的が、免疫細胞上に発現されるが、他の細胞タイプ、特に腫瘍細胞等では実質的に発現されないことを意味する。
【0121】
一実施形態では、標的は、健康な対象、又は疾患、特にがん等に罹患している対象の免疫細胞により特異的に発現される。これは、標的が、他の細胞よりも免疫細胞でより高い発現レベルを示すこと、又は標的を発現する免疫細胞の、全ての免疫細胞に対する比が、標的を発現する他の細胞の、全ての他の細胞に対する比よりも高いことを意味する。好ましくは、発現レベル又は比は、2、5、10、20、50、又は100倍高い。発現レベル又は比は、より具体的には、特定のタイプの免疫細胞、例えばT細胞、より具体的にはCD8+ T細胞、エフェクターT細胞、若しくは疲弊したT細胞について、又は特定の状況では、例えば、がん若しくは感染症等の疾患に罹患している対象について決定することができる。
【0122】
「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球細胞(白血球)、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びナチュラルキラーT細胞(NKT))、及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)等の、自然免疫及び適応免疫に関与する細胞を指す。特に、免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、マクロファージ、樹状細胞、並びに単球を含む非網羅的リストにおいて選択することができる。
【0123】
好ましくは、結合性部分は、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー、樹状細胞、単球、及び自然リンパ球(ILC)からなる群から選択される標的発現免疫細胞に特異的に結合する。
【0124】
更により好ましくは、免疫細胞はT細胞である。「T細胞」又は「Tリンパ球」としては、本明細書で使用される場合、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、T制御性細胞(T regulator)、Tヘルパー17型T細胞、及び阻害性T細胞が挙げられる。非常に特定の実施形態では、免疫細胞は、疲弊したT細胞である。
【0125】
標的は、免疫細胞、特にT細胞の表面に発現される受容体であってもよい。受容体は、阻害剤受容体であってもよい。或いは、受容体は、活性化受容体であってもよい。
【0126】
一態様では、標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される。そのような標的は、下記のTable D(表4)により詳細に記載されている。
【0127】
【0128】
【0129】
したがって、この態様では、結合性部分は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される標的に特異的に結合する。
【0130】
特定の態様では、免疫細胞は、疲弊したT細胞であり、結合性部分の標的は、疲弊したT細胞の表面に発現される疲弊因子である。T細胞疲弊は、T細胞が、機能、増殖能力、及び細胞傷害能力を進行性に喪失する状態であり、それにより最終的には自身の除去がもたらされる。T細胞疲弊は、持続的な抗原曝露、又はPD-1、TIM3、CD244、CTLA-4、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160等の阻害性受容体等の幾つかの要因により誘発され得る。好ましくは、そのような疲弊因子は、PD-1、TIM3、CD244、CTLA-4、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される。
【0131】
好ましい実施形態では、結合性部分は、標的に対してアンタゴニスト活性を有する。
【0132】
当技術分野では、PD-1、TIM3、CD244、CTLA-4、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160に対する抗体が既に数多く記載されている。
【0133】
幾つかの抗PD-1は既に臨床的に承認されており、他のものは依然として臨床開発中である。例えば、抗PD1抗体は、以下のものからなる群から選択することができる:ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、ニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)、ピジリズマブ(CT-011)、セミプリマブ(Libtayo)、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317(チスレイズマブ(Tisleizumab))、PDR001(スパルタリズマブ)、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゴノリムズマブ(genolimzumab)(CBT-501)、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103(HX-008)、MEDI-0680(AMP-514としても知られている)、MEDI0608、JS001(Si-Yang Liuら、J. Hematol. Oncol.10巻:136頁(2017年)を参照)、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210(SHR-1210としても知られている)、TSR-042(ANB011としても知られている)、GLS-010(WBP3055としても知られている)、AM-0001(Armo社)、STI-1110(国際公開第2014/194302号を参照)、AGEN2034(国際公開第2017/040790号を参照)、MGA012(国際公開第2017/19846号を参照)、又はIBI308(国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号、及び国際公開第2017/133540号を参照)、国際公開第2006/121168号に記載のモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4。RG7769(Roche社)、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)、FS118(F-star社)、SL-279252(Takeda社)、及びXmAb23104(Xencor社)等の、PD-1を標的とする二機能性又は二重特異性分子も知られている。
【0134】
特定の実施形態では、抗PD1抗体は、ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)又はニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)であってもよい。
【0135】
また、Sym023、TSR-022、MBG453、LY3321367、INCAGN02390、BGTB-A425、LY3321367、RG7769(Roche社)等の、TIM3に対する抗体及びTIM3を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。一部の実施形態では、TFM-3抗体は、国際公開第2013006490号、国際公開第2016/161270号、国際公開第2018/085469号、又は国際公開第2018/129553号、国際公開第2011/155607号、米国特許第8,552,156号、欧州特許第2581113号、及び米国特許出願第2014/044728号に記載の通りである。
【0136】
また、イピリムマブ、トレメリムマブ、MK-1308、AGEN-1884、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)等の、CTLA-4に対する抗体及びCTLA-4を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。抗CTLA-4抗体は、国際公開第18025178号、国際公開第19179388号、国際公開第19179391号、国際公開第19174603号、国際公開第19148444号、国際公開第19120232号、国際公開第19056281号、国際公開第19023482号、国際公開第18209701号、国際公開第18165895号、国際公開第18160536号、国際公開第18156250号、国際公開第18106862号、国際公開第18106864号、国際公開第18068182号、国際公開第18035710号、国際公開第18025178号、国際公開第17194265号、国際公開第17106372号、国際公開第17084078号、国際公開第17087588号、国際公開第16196237号、国際公開第16130898号、国際公開第16015675号、国際公開第12120125号、国際公開第09100140号、及び国際公開第07008463号にも開示されている。
【0137】
また、BMS-986016、IMP701、MGD012、又はMGD013(二重特異性PD-1及びLAG-3抗体)等の、LAG-3に対する抗体及びLAG-3を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。抗LAG-3抗体は、国際公開第2008132601号、欧州特許第2320940号、国際公開第19152574号にも開示されている。
【0138】
当技術分野では、hu Mab8D5、hu Mab8A3、hu Mab21H6、hu Mab19A7、又はhu Mab4C7等の、BTLAに対する抗体も公知である。BTLAに対する抗体TAB004は、進行悪性腫瘍を有する対象にて現在臨床治験中である。抗BTLA抗体は、国際公開第08076560号、国際公開第10106051号(例えば、BTLA8.2)、国際公開第11014438号(例えば、4C7)、国際公開第17096017号、及び国際公開第17144668号(例えば、629.3)にも開示されている。
【0139】
当技術分野では、国際公開第19232484号に開示の通りの、BMS-986207又はAB154、BMS-986207 CPA. 9.086、CHA.9.547.18、CPA.9.018、CPA.9.027、CPA.9.049、CPA.9.057、CPA.9.059、CPA.9.083、CPA.9.089、CPA.9.093、CPA.9.101、CPA.9.103、CHA.9.536.1、CHA.9.536.3、CHA.9.536.4、CHA.9.536.5、CHA.9.536.6、CHA.9.536.7、CHA.9.536.8、CHA.9.560.1、CHA.9.560.3、CHA.9.560.4、CHA.9.560.5、CHA.9.560.6、CHA.9.560.7、CHA.9.560.8、CHA.9.546.1、CHA.9.547.1、CHA.9.547.2、CHA.9.547.3、CHA.9.547.4、CHA.9.547.6、CHA.9.547.7、CHA.9.547.8、CHA.9.547.9、CHA.9.547.13、CHA.9.541.1、CHA.9.541.3、CHA.9.541.4、CHA.9.541.5、CHA.9.541.6、CHA.9.541.7、及びCHA.9.541.8等の、TIGITに対する抗体も公知である。抗TIGIT抗体は、国際公開第16028656号、国際公開第16106302号、国際公開第16191643号、国際公開第17030823号、国際公開第17037707号、国際公開第17053748号、国際公開第17152088号、国際公開第18033798号、国際公開第18102536号、国際公開第18102746号、国際公開第18160704号、国際公開第18200430号、国際公開第18204363号、国際公開第19023504号、国際公開第19062832号、国際公開第19129221号、国際公開第19129261号、国際公開第19137548号、国際公開第19152574号、国際公開第19154415号、国際公開第19168382号、国際公開第19215728号にも開示されている。
【0140】
当技術分野では、国際公開第06015886号に開示の通りのCL1-R2 CNCM I-3204、又は国際公開第10006071号、国際公開第10084158号、国際公開第18077926号に開示されている通りの他のもの等の、CD160に対する抗体も公知である。
【0141】
好ましい態様では、二機能性分子の結合性部分は、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3に特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。
【0142】
別の特定の態様では、標的はPD-1であり、二機能性分子の結合性部分は、PD-1に特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗PD1抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗PD1抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、PD-1のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とPD-1の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0143】
別の特定の態様では、標的はCTLA-4であり、二機能性分子の結合性部分は、CTLA-4に特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗CTLA-4抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、CTLA-4のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とCTLA-4の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0144】
別の特定の態様では、標的はBTLAであり、二機能性分子の結合性部分は、BTLAに特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗BTLA抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗BTLA抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、BTLAのアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とBTLAの阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0145】
別の特定の態様では、標的はTIGITであり、二機能性分子の結合性部分は、TIGITに特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、TIGITのアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とTIGITの阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0146】
別の特定の態様では、標的はLAG-3であり、二機能性分子の結合性部分は、LAG-3に特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗LAG-3抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、又はキメラ抗LAG-3抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、LAG-3のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とLAG-3の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0147】
別の特定の態様では、標的はTIM3であり、二機能性分子の結合性部分は、TIM3に特異的な抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。したがって、特定の実施形態では、本発明による二機能性分子に含まれる結合性部分は、抗TIM3抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗TIM3抗体又はその抗原結合性断片である。好ましくは、結合性部分は、TIM3のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とTIM3の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0148】
Fcドメイン
本開示の特定の態様では、二機能性分子は、IL-7バリアント又は変異体、結合性部分、及びFcドメインを含む。この結合部分が抗体、特にIgG免疫グロブリンである場合、Fcドメインは、結合性部分の一部であってもよい。しかしながら、二機能性分子は、Fcドメインを含む他の構造を有してもよい。例えば、二機能性分子は、scFv等の抗体誘導体又はダイアボディに連結されたFcドメインを含んでいてもよい。
【0149】
本発明による二機能性分子の薬物動態を向上させるための1つの手法は、その半減期血清残留性を増加させることであり、それにより高い循環レベル、より少ない投与頻度、及び用量の低減が可能になる。この必要性は、例えば、本発明による二機能性分子にFcドメイン又はその部分を含めることにより満たすことができる。
【0150】
したがって、一実施形態では、本発明による二機能性分子、特に結合性部分は、Fcドメイン又はその部分を含む。
【0151】
特に、本発明による結合性部分は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的には、哺乳動物免疫グロブリンの、更により好ましくは、キメラ免疫グロブリン、ヒト免疫グロブリン、又はヒト化免疫グロブリンの免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも部分を含む。結合性部分は、免疫グロブリンの定常領域、又は定常領域の断片、アナログ、バリアント、変異体、又は誘導体を含んでいてもよい。当業者であれば周知であるように、重鎖定常ドメインのIgGアイソタイプの選択は、特定の機能が必要か否かにとって、及び好適なin vivo半減期の必要性にとって、中心的な関心事である。
【0152】
好ましい実施形態では、結合性部分に含まれるFcドメイン又はその断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスに由来する重鎖定常ドメインを含む。更なる態様では、ヒト定常ドメインは、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。好ましくは、結合性部分は、IgG1重鎖定常ドメイン又はIgG4重鎖定常ドメインを含む。
【0153】
一実施形態では、結合性部分は、短縮型Fc領域又はそのFc領域の断片を含む。このようなFc断片では、定常領域は、CH2ドメイン又はCH3ドメインを含む。別の実施形態では、定常領域は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。或いは、定常領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及び/又はCH3ドメインの全て又は部分を含んでいてもよい。一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4又はIgG1重鎖に由来するCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含有する。
【0154】
好ましくは、定常領域は、ヒンジ領域の全て又は部分を含む。ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスに由来してもよい。好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に由来する。より好ましくは、ヒンジ領域は、ヒト又はヒト化IgG1又はIgG4重鎖に由来する。
【0155】
IgG1ヒンジ領域は3つのシステインを有し、そのうちの2つは、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合に関与している。こうした同じシステインは、Fc部分間の効率的で一貫したジスルフィド結合形成を可能にする。したがって、本発明の好ましいヒンジ領域は、IgG1、より好ましくはヒトIgG1に由来する。一部の実施形態では、ヒトIgG1ヒンジ領域内の第1のシステインは、別のアミノ酸、好ましくはセリンに変異されている。
【0156】
IgG4のヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合の形成が非効率的であることが知られている。しかしながら、本発明の好適なヒンジ領域は、IgG4ヒンジ領域に由来してもよく、好ましくは、重鎖由来部分間のジスルフィド結合の正しい形成を増強する変異を含有する(Angal Sら(1993年)Mol. Immunol.、30巻:105~8頁)。より好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG4重鎖に由来する。
【0157】
細胞表面分子、特に免疫細胞上の分子を標的とする二機能性分子の場合、エフェクター機能を無効にする必要がある。また、抗体のエフェクター機能の低減又は増加のいずれかのために、Fc領域を遺伝子操作することが望ましい場合がある。
【0158】
ある特定の実施形態では、Fc領域にアミノ酸修飾を導入して、Fc領域バリアントを生成してもよい。ある特定の実施形態では、Fc領域バリアントは、全てではないが一部のエフェクター機能を有する。そのような抗体は、例えば、in vivoでの抗体の半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能は不必要であるか又は有害である応用において有用であり得る。エフェクター機能を変更する数多くの置換又は欠失が、当技術分野で公知である。
【0159】
一実施形態では、定常領域は、Fc受容体に対する親和性を低減するか又はFcエフェクター機能を低減する変異を含有する。例えば、定常領域は、IgG重鎖の定常領域内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有してもよい。好ましくは、CH2ドメインは、CH2ドメイン内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有する。
【0160】
特定の態様では、Fcドメインは、FcRnへの結合を増加させ、それにより二機能性分子の半減期を増加させるように修飾されている。別の態様では又は追加の態様では、Fcドメインは、FcγRに対する結合を減少させ、それによりADCC又はCDCを低減させるか、又はFcγRに対する結合を増加させ、それによりADCC又はCDCを増加させるように修飾されている。
【0161】
Fc部分及び非Fc部分の接合部付近のアミノ酸の変更は、国際公開第01/58957号に示されているように、Fc融合タンパク質の血清半減期を劇的に増加させることができる。したがって、本発明のタンパク質又はポリペプチドの接合領域は、免疫グロブリン重鎖及びエリスロポエチンの天然に存在する配列と比べて、好ましくは、接合点の約10個アミノ酸以内に入る変更を含有してもよい。こうしたアミノ酸変化は、疎水性の増加を引き起こす場合がある。一実施形態では、定常領域は、C末端リジン残基が置き換えられているIgG配列に由来する。好ましくは、IgG配列のC末端リジンは、血清半減期を更に増加させるために、アラニン又はロイシン等の非リジンアミノ酸に置き換えられている。
【0162】
一実施形態では、定常領域は、下記のTable E(表5)に記載されている変異の1つ又はそれらの任意の組合せを有するCH2及び/又はCH3を含有してもよい。
【0163】
【0164】
特定の態様では、二機能性分子、好ましくは結合性部分は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するヒトIgG1重鎖定常ドメイン又はIgG1 Fcドメインを含む。
【0165】
別の態様では、結合性部分は、任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4重鎖定常ドメイン又はヒトIgG4 Fcドメインを含む。更により好ましくは、二機能性分子、好ましくは結合性部分は、IgG4を安定させるS228Pを有するIgG4 Fc領域を含む。
【0166】
ヒトIgGのサブクラスは全て、循環中で切断され易い、抗体重鎖のC末端リジン残基(K444)を有する。血中でのこの切断は、IgGに連結されているIL-7を放出することにより、二機能性分子の生物活性を損なうか又は減少させる可能性がある。この問題を回避するために、IgGドメインのK444アミノ酸をアラニンで置換して、タンパク分解切断を低減させることができる。これは、抗体に一般的に使用される変異である。したがって、一実施形態では、結合性部分が抗体である場合、抗体は、K444Aからなる少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を含む。
【0167】
一実施形態では、結合性部分が抗体である場合、抗体は、追加のジスルフィド結合を生成し、二機能性分子の可撓性を潜在的に制限するために、IgGのC末端ドメインに追加のシステイン残基を含む。
【0168】
一実施形態では、結合性部分は抗体を含む。そのような実施形態では、そのような抗体は、配列番号39又は52の重鎖定常ドメイン及び/又は配列番号40の軽鎖定常ドメイン、特に配列番号39又は52の重鎖定常ドメイン及び配列番号40の軽鎖定常ドメイン、特に以下のTable F(表6)に開示されているもの等を有する。
【0169】
好ましい実施形態では、結合性部分は、配列番号52の重鎖定常ドメイン及び/又は配列番号40の軽鎖定常ドメイン、特に、配列番号52の重鎖定常ドメイン及び配列番号40の軽鎖定常ドメインを有する抗hPD-1抗体を含む。
【0170】
【0171】
ペプチドリンカー
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、結合性部分及びIL-7mを接続するペプチドリンカーを更に含む。ペプチドリンカーは、通常、IL-7m及びその間がリンカーで接続されている結合性部分が、それらの機能を発揮するのに十分な空間的自由度を有することを保証するのに十分な長さ及び可撓性を有する。
【0172】
本開示の態様では、結合性部分は、好ましくは、ペプチドリンカーによりIL-7に連結されている。本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、IL-7m及び結合性部分を連結する少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。そのようなリンカーは、立体障害の防止に有用であり得る。リンカーは、通常、長さが3~44個のアミノ酸残基である。好ましくは、リンカーは、3~30個のアミノ酸残基を有する。一部の実施形態では、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基を有する。
【0173】
リンカー配列は、天然に存在する配列であってもよく又は天然に存在しない配列であってもよい。療法目的で使用される場合、リンカーは、好ましくは、二機能性分子が投与される対象において非免疫原性である。リンカー配列の1つの有用な群は、国際公開第96/34103号及び国際公開第94/04678号に記載の通りの、重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。リンカー配列の更に好ましい例は、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3、特に(Gly4Ser)3を含む、様々な長さのGly/Serリンカーである。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。更により好ましくは、リンカーは(GGGGS)3である。
【0174】
一実施形態では、二機能性分子に含まれるリンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3からなる群において選択され、好ましくは、(Gly4Ser)3である。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。
【0175】
二機能性分子
本発明は、特に、IL-7m、結合性部分を含み、任意選択でFc断片及び任意選択で本明細書の上記に記載の通りのペプチドリンカーを含む二機能性分子を提供する。
【0176】
特に、二機能性分子は、本明細書の上記に開示の通りの結合性部分及びIL-7mを含むか又はからなり、結合性部分は、好ましくは、本明細書の上記に開示の通りのペプチドリンカーにより、IL-7に共有結合でコンジュゲートされている(例えば、遺伝子融合又は化学的カップリングにより)。
【0177】
特に、IL-7mと結合性部分とのコンジュゲーションは、直接的若しくは非直接的な(つまり、リンカーを介して)共有結合、及び/又は化学的、酵素的、若しくは遺伝子的である。コンジュゲーションは、結合性部分の化学的性質を考慮して、当技術分野で公知の任意の許容可能な結合手段により実施することができる。したがって、この点に関して、カップリングは、生理学的媒体中で又は細胞内で切断可能又は切断不能な、1つ又は複数の共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性結合、又はファンデルワールス結合により実施することができる。
【0178】
特に、化学的コンジュゲーションは、露出したスルフヒドリル基(Cys)、親和性タグ(例えば、6ヒスチジン、Flagタグ、Strepタグ、SpyCatcher等)と結合性部分若しくはIL7-mのいずれかとの付着、又はクリックケミストリーコンジュゲーションのための非天然アミノ酸又は化合物の組み込みにより実施することができる。
【0179】
好ましい実施形態では、コンジュゲーションは、遺伝子融合により(つまり、結合性部分及びIL-7をコードする遺伝子融合物としての核酸構築物を好適な系で発現させることにより)得られる。
【0180】
一態様では、本発明は、免疫グロブリン(Ig)鎖、特にFcドメインを含む第1の部分、及びインターロイキン-7(IL-7)を含む第2の部分を含む融合タンパク質を特徴とする。
【0181】
一実施形態では、本発明は、IL-7mに融合された結合性部分を含む二機能性分子に関する。特に、そのような融合分子では、結合性部分は抗体であり、抗体の鎖、例えば軽鎖又は重鎖、好ましくは重鎖、更により好ましくは重鎖又は軽鎖のC末端は、IL-7mに、好ましくはIL-7mのN末端に、任意選択でペプチドリンカーにより連結されている。
【0182】
特定の態様では、本発明は、抗体又はその抗原結合性断片及びIL-7mを含む二機能性分子であって、IL-7mは、好ましくはペプチドリンカーにより、上記抗体の重鎖のC末端(例えば、重鎖定常ドメインのC末端)に連結されている、二機能性分子に関する。
【0183】
好ましくは、抗体の重鎖、好ましくは重鎖のC末端は、可撓性(Gly4Ser)3リンカーを介してIL-7mのN末端に遺伝子的に融合されている。融合接合部では、抗体重鎖のC末端リジン残基をアラニンに変異させて(つまりK444A)、タンパク質分解切断を低減することができる。
【0184】
一実施形態では、本発明による二機能性分子は、1つ又は複数のIL-7m分子を含む。好ましくは、本発明による二機能性分子は、1つ、2つ、3つ、又は4つのIL-7m分子を含んでいてもよい。特に、二機能性分子は、抗体の1つの軽鎖又は重鎖にのみ連結された1分子のみのIL-7を含んでいてもよい。好ましくは、二機能性分子は、好ましくは抗体の1つの重鎖にのみ連結された、より好ましくは抗体のFcドメインのC末端に連結された1つのIL-7m分子のみを含んでいてもよい。また、二機能性分子は、抗体の軽鎖又は重鎖のいずれかに連結された2つのIL-7m分子を含んでいてもよい。また、二機能性分子は、2つのIL-7m分子を含んでいてもよく、第1の分子は抗体の軽鎖に連結されており、第2の分子は抗体の重鎖に連結されている。
【0185】
一実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)本明細書の上記に記載のもの等、免疫細胞表面に発現される標的に特異的に結合する結合性部分、それにコンジュゲートされている
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、IL-7m
を含むか又はからなる。
【0186】
特に、少なくとも1つのアミノ酸変異は、本明細書の上記の「IL-7変異体」の段落に説明されている通りである。
【0187】
好ましくは、本発明による二機能性分子は、
(a)本明細書の上記に記載のもの等、免疫細胞表面に発現される標的に特異的に結合する結合性部分、それにコンジュゲートされている
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、IL-7m
を含むか又はからなる。
【0188】
より好ましくは、そのような変異体は、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減し、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。より好ましくは、そのような変異体は、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減し、ii)IL-7Rを活性化する能力を保持し、及びiii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。
【0189】
特定の態様では、免疫細胞表面に発現される標的は、T細胞表面に発現される疲弊因子である。
【0190】
好ましくは、結合性部分は、抗体又はその抗体断片である。
【0191】
好ましくは、結合性部分は、遺伝子融合によりIL-7mにコンジュゲートされており、二機能性分子は、任意選択で、IL-7mのN末端を抗体の重鎖のC末端に接続する少なくとも1つのペプチドリンカーを含み、ペプチドリンカーは、好ましくは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは、(GGGGS)3である。
【0192】
好ましくは、本発明による二機能性分子は、
(a)免疫細胞表面に、好ましくはT細胞上に発現される標的に特異的に結合する、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、アミノ酸置換(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R、又はそれらの任意の組合せを含む、IL-7m、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる融合タンパク質である。
【0193】
好ましくは、抗体は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される標的に対する抗体である。
【0194】
好ましくは、抗体又はその抗体断片は、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを有する。
【0195】
一態様では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でK444A、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;及びK322Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメイン、更により好ましくは、本明細書の上記に記載のもの等の、変異N297Aを有するIgG1 Fcドメインを有する。
【0196】
驚くべきことに、本発明者らは、IgG1重鎖定常ドメインを有する二機能性分子が、IgG4重鎖定常ドメインを有する同じ分子と比較して、IL-7バリアントの活性(pStat5シグナル、相乗効果、及びCD127結合)の向上を示すことを観察した。この向上は、IL-7バリアントに特異的であり、野生型IL-7では観察されていない。加えて、抗体とIL-7との間に(GGGGS)3等の長いリンカーを使用すると、IL-7バリアントの活性(pStat5シグナル及びCD127結合)が最大化される。
【0197】
したがって、より詳細には、本発明は、二機能性分子に関し、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片は、免疫細胞表面に、好ましくはT細胞上に発現される標的と特異的に結合し、より好ましくは標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択され、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメイン、更により好ましくは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有するIgG1 Fcドメインを有する。好ましくは、抗体又はその断片は、(GGGGS)3、(GGGGS)4、及び(GGGS)3からなる群から選択されるリンカーにより、より好ましくは(GGGGS)3により、IL-7又はそのバリアントに連結されている。好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。より好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。更により好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、並びにD74Eからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。
【0198】
別の態様では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でK444A、S228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256Eからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG4 Fcドメイン、更により好ましくは、上記に記載のもの等の、変異S228Pを有するIgG4 Fcドメインを有する。
【0199】
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、
(a)免疫細胞表面に、好ましくはT細胞上に発現される標的に特異的に結合する、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片であって、より好ましくは、標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される、抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、アミノ酸置換(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R、又はそれらの任意の組合せを含む、IL-7m、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択される、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる融合タンパク質である。
【0200】
この態様の好ましい実施形態では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメイン、更により好ましくは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有するIgG1 Fcドメインを有する。
【0201】
或いは、本発明による二機能性分子は、
(a)免疫細胞表面に、好ましくはT細胞上に発現される標的と特異的に結合する、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片であって、より好ましくは、標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される、抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、アミノ酸置換W142H、W142F、又はW142Y、好ましくはW142Hを含む、IL-7m、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる融合タンパク質である。
【0202】
好ましくは、抗体又はその抗体断片は、任意選択で上記に詳述されている通りの置換を有するIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを有する。
【0203】
この態様の好ましい実施形態では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメイン、更により好ましくは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有するIgG1 Fcドメインを有する。
【0204】
或いは、本発明による二機能性分子は、
(a)免疫細胞表面に、好ましくはT細胞上に発現される標的と特異的に結合する、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片であって、より好ましくは標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される、抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、アミノ酸置換D74E、D74Q、又はD74N、好ましくはD74Eを含む、IL-7m、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる。
【0205】
好ましくは、抗体又はその抗体断片は、任意選択で上記に詳述されている通りの置換を有するIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを有する。
【0206】
この態様の好ましい実施形態では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメイン、更により好ましくは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有するIgG1 Fcドメインを有する。
【0207】
或いは、本発明による二機能性分子は、
(a)PD-1と特異的に結合する抗PD1抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7mであって、そのようなIL-7バリアントは、アミノ酸置換D74E、W142H、及び/又はC2S-C141S+C47S-C92Sを含む、IL-7m、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる。
【0208】
好ましくは、抗体又はその抗体断片は、任意選択で上記に詳述されている通りの置換を有するIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを有する。
【0209】
好ましくは、抗体の重鎖のC末端は、可撓性リンカー、好ましくは(Gly4Ser)3を介してIL-7mのN末端に遺伝子的に融合されている。融合接合部では、抗体重鎖のC末端リジン残基(つまり、K444)をアラニンに変異させて、タンパク質分解切断を低減することができる。
【0210】
任意選択で、二機能性分子は、他のサイトカイン又は他の結合性部分等の、追加の部分を更に含んでいてもよい。
【0211】
特定の態様では、分子は、単一のIL-7バリアント及び単一の抗原結合性ドメインが連結されている二量体Fcドメインを有する。別の特定の態様では、分子は、単一のIL-7バリアント及び2つの抗原結合性ドメインが連結されている二量体Fcドメインを有する。抗原結合性ドメインは、本明細書に開示の通りの、免疫細胞表面に特異的に発現される任意の標的に結合する。より具体的には、標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から、より具体的には、PD-1、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3からなる群から選択することができる。非常に特定の態様では、抗原結合性ドメインは、PD-1に結合する。
【0212】
特定の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のFc鎖はIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、好ましくは抗原結合性ドメイン及び/又はIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含み、第1の及び第2のFc鎖は、二量体Fcドメインを形成する。任意選択で、二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体Fcドメインである。より詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。任意選択で、第2の単量体は、IL-7バリアントを欠く、好ましくはあらゆる他の分子を欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。任意選択で、第2の単量体は、任意選択でFc鎖のC末端のN末端でIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。更により詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く、好ましくはあらゆる他の分子を欠く、相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。このような分子は、例えば、
図17に「構築物3」として示されている。
【0213】
別の特定の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠き、任意選択でFc鎖のC末端のN末端でIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。このような分子は、例えば、
図17に「構築物4」として示されている。
【0214】
任意選択で、相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。
【0215】
追加の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のFc鎖は任意選択でIL-7バリアントを欠き、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のFc鎖を含み、第2のFc鎖は、IL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第1の及び第2のFc鎖は、二量体Fcドメインを形成する。任意選択で、二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体Fcドメインである。より詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、IL-7バリアントを欠き、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。更により詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、IL-7バリアントを欠き、第2の単量体は、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。
【0216】
別の特定の態様では、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のFc鎖はIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、IL-7バリアントを欠き、抗原結合性ドメインに連結されている相補的な第2のFc鎖を含み、第1の及び第2のFc鎖は、二量体Fcドメインを形成する。そのような分子は、例えば、
図17に「構築物2」として示されている。任意選択で、二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体Fcドメインである。より詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、IL-7バリアントを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む。より詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、IL-7バリアントを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含み、C末端が第2のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む。
【0217】
リンカーは、存在する場合、本明細書で開示のリンカーの中から選択することができる。
【0218】
好ましくは、2つの単量体は、各々が1つのFc鎖を含み、Fc鎖は、二量体Fcドメインを形成することができる。
【0219】
一態様では、二量体Fc融合タンパク質は、ホモ二量体Fc融合タンパク質である。別の態様では、二量体Fc融合タンパク質は、ヘテロ二量体Fc融合タンパク質である。
【0220】
より具体的には、Fcドメインはヘテロ二量体Fcドメインである。ヘテロ二量体Fcドメインは、各単量体のアミノ酸配列を変更することにより製作される。ヘテロ二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体の形成が促進され、及び/又はホモ二量体よりもヘテロ二量体の精製が容易になるように、定常領域におけるアミノ酸バリアントが各鎖で異なることに依存する。本発明のヘテロ二量体を生成するために使用することができる少なからぬ機序が存在する。加えて、当業者であれば理解することになるように、そうした機序を組み合わせて、高度なヘテロ二量体化を保証することができる。したがって、ヘテロ二量体の産生に結び付くアミノ酸バリアントは、「ヘテロ二量体化バリアント」と呼ばれる。ヘテロ二量体化バリアントとしては、立体的バリアント(例えば、下記に記載の「ノブアンドホール(knobs and holes)」バリアント又は「スキュー(skew)」バリアント、及び下記に記載の「電荷対」バリアント)、並びにホモ二量体をヘテロ二量体から分離して精製することを可能にする「パイバリアント(pi variant)」を挙げることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/145806号には、「ノブアンドホール」バリアント、「静電ステアリング(electrostatic steering)」バリアント、又は「電荷対」バリアント、パイバリアント、及び一般的な追加のFcバリアントを含む、ヘテロ二量体化のための有用な機序が開示されている。Ridgwayら、Protein Engineering 9巻(7号):617頁(1996年);Atwellら、J. Mol. Biol.1997年、270巻:26頁;米国特許第8,216,805号、Merchantら、Nature Biotech.16巻:677頁(1998年)も参照されたい。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。「静電ステアリング」については、Gunasekaranら、J. Biol. Chem.285巻(25号):19637頁(2010年)を参照されたい。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。パイバリアントについては、米国特許出願公開第2012/0149876号を参照されたい。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
したがって、好ましい態様では、ヘテロ二量体Fcドメインは、「ノブアンドホール」技術に基づく、第1のFc鎖及び相補的な第2のFc鎖を含む。例えば、第1のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖であり、これは第1のFc鎖がノブ鎖を特徴付ける置換を含むことを意味し、第2のFc鎖は「ホール鎖」又はH鎖であり、これは第2のFc鎖がホール鎖を特徴付ける置換を含むことを意味する。その逆も同様であり、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、これは第1のFc鎖がホール鎖を特徴付ける置換を含むことを意味し、第2のFc鎖は「ノブ鎖」又はK鎖であり、これは第2のFc鎖がノブ鎖を特徴付ける置換を含むことを意味する。好ましい態様では、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、第2のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖である。
【0222】
本発明による二機能性分子構造の例は、
図17に提供されている。
【0223】
任意選択で、ヘテロ二量体Fcドメインは、以下の表に示されている通りの置換を含む一方のヘテロ二量体Fc鎖、及び以下の表に示されている通りの置換を含む他方のヘテロ二量体Fc鎖を含んでいてもよい。
【0224】
【0225】
好ましい態様では、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349Cを含み、第2のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354Cを含む。
【0226】
任意選択で、Fc鎖は、追加の置換を更に含んでいてもよい。
【0227】
一態様では、本発明による二機能性分子は、上記に記載のもの等の、「ノブイントゥホール(knob into holes)」修飾を含むFcドメインのヘテロ二量体を含む。好ましくは、そのようなFcドメインは、上記に記載のもの等のIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインであり、更により好ましくは、上記に開示のもの等の、変異N297Aを含むIgG1 Fcドメインである。
【0228】
例えば、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及びN297Aを含み、第2のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及びN297Aを含む。より詳細には、第2のFc鎖は、配列番号75を含むか若しくはからなっていてもよく、及び/又は第1のFc鎖は、配列番号77を含むか若しくはからなっていてもよい。
【0229】
より具体的には、本発明によるIL7バリアントは、ヘテロ二量体Fcドメインのノブ鎖及び/又はホール鎖に連結されている。したがって、本発明による二機能性分子は、i)Fcドメインのホール鎖若しくはノブ鎖のいずれかに連結されている単一のIL7バリアント、又はii)1つはFcドメインのホール鎖に連結されており、1つはノブ鎖に連結されている2つのIL7バリアントを含んでいてもよい。好ましくは、本発明による二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖に連結されている単一のIL7バリアントを含む。
【0230】
第1の態様では、二機能性分子は、ノブ鎖FcドメインのC末端又はN末端に連結されているIL7バリアントを含む。任意選択で、そのようなFcドメインは、抗原結合性ドメインに連結されていない。或いは、そのようなFcドメインは、抗原結合性ドメインに連結されている。
【0231】
第2の態様では、二機能性分子は、ホール鎖FcドメインのC末端に連結されているIL7バリアントを含む。好ましくは、そのようなFcドメインは、そのN末端で抗原結合性ドメインに連結されている。
【0232】
任意選択で、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のC末端に連結されている単一のIL7バリアントを含み、その場合、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のN末端に連結された単一の抗原結合性ドメインのみを含む。そのような態様では、ノブ鎖ドメインは、IL7バリアントを欠いており、抗原結合性ドメインを欠いているか又は欠いていない。
【0233】
より詳細には、二機能性分子は、好ましくはN末端が、Fcドメインのホール鎖のC末端に任意選択でリンカーを介して連結されている単一のIL7バリアントを含み、その場合、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のN末端で連結されている単一の抗原結合性ドメイン、並びにIL7バリアント及び抗原結合性ドメインを欠いているノブ鎖のみを含む。
【0234】
したがって、本発明の目的は、N末端からC末端へと、抗原結合性ドメイン(又は重鎖に対応する少なくともその一部)、Fc鎖(ノブFc鎖又はホールFc鎖)、好ましくはFcドメインのホール鎖、及びIL7バリアントを含むポリペプチドに関する。相補的鎖は、IL7バリアント及び抗原結合性ドメインを欠く相補的Fc鎖、好ましくはFcドメインのノブ鎖を含む。
【0235】
別の特定の態様では、二機能性分子は、そのN末端が、Fcドメインのホール鎖のC末端に任意選択でリンカーを介して連結されている単一のIL7バリアントを含み、その場合、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のN末端で連結されている抗原結合性ドメイン、及びIL7バリアントを欠き、C末端がノブ鎖のN末端に連結されている抗原結合性ドメインを含むノブ鎖を含む。
【0236】
したがって、本発明の目的は、N末端からC末端へと、抗原結合性ドメイン(又は重鎖に対応する少なくともその一部)、Fc鎖(ノブFc鎖又はホールFc鎖)、好ましくはFcドメインのホール鎖、及びIL7バリアントを含むポリペプチドに関する。相補的鎖は、N末端からC末端へと、抗原結合性ドメイン(又は重鎖に対応する少なくともその一部)、及びIL7バリアントを欠く相補的Fc鎖、好ましくはFcドメインのノブ鎖を含む。
【0237】
別の特定の態様では、二機能性分子は、ノブ鎖のN末端又はC末端に任意選択でリンカーを介して連結されている単一のIL7バリアントを含み、二機能性分子は、C末端が、Fcドメインのホール鎖のN末端で連結されている抗原結合性ドメインを含み、ホール鎖は、IL7バリアントを欠いている。
【0238】
任意選択で、抗原結合性ドメインは、Fabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)であってもよい。抗原結合性ドメインは、好ましくは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合性ドメインがFab又はFab'である場合、分子は、重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメイン(つまり、CH及びCL)を更に含む。
【0239】
抗原結合性ドメインがFab又はFab'である場合、二機能性分子は、抗原結合性ドメインのVLドメインのC末端に連結されているIL-7バリアントを更に含んでいてもよい。
【0240】
本発明による二機能性分子は、1つ又は2つの抗原結合性ドメインを含んでいてもよい。任意選択で、1つの抗原結合性ドメインは、ノブFc鎖のN末端に連結されていてもよく、1つの抗原結合性ドメインは、ホールFc鎖のN末端に連結されていてもよい。或いは、単一の抗原結合性ドメインは、ノブFc鎖又はホールFc鎖のいずれかのN末端に連結されている。好ましくは、IL-7バリアントは、抗原結合性ドメインに連結されているFc鎖に連結されている。特定の態様では、抗原結合性ドメインは、PD-1を標的とする。
【0241】
例えば、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、以下のものからなる群から選択される抗PD1抗体に由来してもよい:ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、ニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)、ピジリズマブ(CT-011)、セミプリマブ(Libtayo)、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317(チスレイズマブ)、PDR001(スパルタリズマブ)、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゴノリムズマブ(CBT-501)、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103(HX-008)、MEDI-0680(AMP-514としても知られている)、MEDI0608、JS001(Si-Yang Liuら、J. Hematol. Oncol.10巻:136頁(2017年)を参照)、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210(SHR-1210としても知られている)、TSR-042(ANB011としても知られている)、GLS-010(WBP3055としても知られている)、AM-0001(Armo社)、STI-1110(国際公開第2014/194302号を参照)、AGEN2034(国際公開第2017/040790号を参照)、MGA012(国際公開第2017/19846号を参照)、又はIBI308(国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号、及び国際公開第2017/133540号を参照)、国際公開第2006/121168号に記載のモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4。PD-1を標的とする二機能性又は二重特異性分子は、RG7769(Roche社)、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)、FS118(F-star社)、SL-279252(Takeda社)、及びXmAb23104(Xencor社)等も知られている。特に、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、このリストにおいて選択される抗PD1抗体の6つのCDR又はVH及びVLを含む。そのような抗原結合性ドメインは、特に、この抗体に由来するFab又はsvFcドメインであってもよい。好ましい態様では、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られる)又はニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)から選択される抗PD1抗体の6つのCDR又はVH及びVLを含み、例えば、Fab又はscFcドメインであってもよい。
【0242】
特定の態様では、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、国際公開第2020/127366号に開示の抗体に由来する。この文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0243】
したがって、抗原結合性ドメインは、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号51のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号51の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号53の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号54のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号54の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号63の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号66のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1、4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0244】
一態様では、抗原結合性ドメインは、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号51のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号51の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号53の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号54のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択されるかのいずれかであり、任意選択で、配列番号54の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号63の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号66のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1、4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0245】
別の実施形態では、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64又は配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0246】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号56のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号57のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号58のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号59のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号60のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号62のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号56のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号57のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号58のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号59のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号60のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号62のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖
を含むか又はから本質的になる。
【0247】
一態様では、本発明による抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、フレームワーク領域、特に重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4、並びに軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含む。
【0248】
好ましくは、本発明による抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、ヒトフレームワーク領域又はヒト化フレームワーク領域を含む。「ヒトアクセプターフレームワーク」は、本明細書の目的では、下記で規定されている通りの、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するヒトアクセプターフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列変化を含有してもよい。一部の実施形態では、アミノ酸変化の数は、10個若しくはそれよりも少ないか、9個若しくはそれよりも少ないか、8個若しくはそれよりも少ないか、7個若しくはそれよりも少ないか、6個若しくはそれよりも少ないか、5個若しくはそれよりも少ないか、4個若しくはそれよりも少ないか、3個若しくはそれよりも少ないか、又は2個若しくはそれよりも少ない。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0249】
特に、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号41、42、43、及び44のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4を含み、任意選択で、HFR3の、つまり配列番号43の27、29、及び32位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、配列番号41のHFR1、配列番号42のHFR2、配列番号43のHFR3、及び配列番号44のHFR4を含む。
【0250】
或いは又はそれに加えて、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号45、46、47、及び48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含み、任意選択で、置換、追加、削除、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、ヒト化抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、配列番号45のLFR1、配列番号46のLFR2、配列番号47のLFR3、及び配列番号48のLFR4を含む。
【0251】
本発明による二機能性分子に含まれる抗hPD1抗体のVLドメイン及びVHドメインは、好ましくは、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(アミノ末端からカルボキシ末端に)で作動可能に連結している、3つの相補性決定領域により隔てられている4つのフレームワーク領域を含んでいてもよい。
【0252】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、以下のものを含むか又はから本質的になる:
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0253】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH)、
(b)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる。
【0254】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の以下の組合せのいずれかを含むか又はから本質的になる。
【0255】
【0256】
非常に特定の態様では、抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。
【0257】
特定の実施形態では、二機能性分子は、
(a)配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、それぞれ、配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖であって、置換は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table G(表7)に開示の通りであり、特に配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36における、T363S/L365A/Y4047V/Y346C又はT363W/S351Cのいずれか、好ましくはT363S/L365A/Y4047V/Y346Cであり、任意選択で配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおけるN294Aである、重鎖;
(b)配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号37又は配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖
を含む。
【0258】
別の態様では、二機能性分子は、重鎖(CH)及び軽鎖(CL)の以下の組合せのいずれかを含むか又はからなり、
【0259】
【0260】
重鎖は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table G(表7)に開示の通りであり、特に配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36における、特にT366S/L368A/Y407V/Y349C又はT366W/S354Cのいずれか、好ましくはT366S/L368A/Y407V/Y349Cであり、任意選択で配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおけるN297Aである置換を含み、置換の位置は、EU付番に従って規定されている。
【0261】
したがって、一態様では、本発明による二機能性分子は、
(a)(i)第1のFc鎖を有する1つの重鎖及び(ii)1つの軽鎖を含む抗ヒトPD-1抗原結合性ドメイン、
(b)IL-7バリアント、並びに
(c)相補的な第2のFc鎖
を含むから又はからなり、IL-7バリアントは、好ましくはそのN末端が、第1のFc鎖のC末端に及び/又は第2のFc鎖のN末端若しくはC末端に、任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。
【0262】
IL-7バリアントは、上記に開示の通りの任意のIL-7バリアントであってもよい。
【0263】
第1の及び第2のFc鎖は、上記に開示の通りであってもよい。好ましくは、Fc鎖は、好ましくはIgG1抗体又はIgG4抗体に由来するFc鎖である。
【0264】
抗ヒトPD-1抗原結合性ドメインは、上記に開示の通りである。
【0265】
一態様では、二機能性分子は、単一の抗ヒトPD-1抗原結合性ドメイン(1つのみ)を含む。好ましくは、二機能性分子は、抗ヒトPD-1 Fab、抗ヒトPD-1 Fab'、抗ヒトPD-1 scFV、及び抗ヒトPD-1 sdAbからなる群から選択される単一の抗ヒトPD-1抗原結合性ドメインを含む。
【0266】
二機能性分子は、1つ又は2つのIL-7バリアント、好ましくは単一のIL-7バリアントを含む。
【0267】
二機能性分子は、配列番号37又は38を含むか又はからなる軽鎖を含んでいてもよい。
【0268】
二機能性分子は、配列番号29、30、31、32、33、34、35、及び36のいずれかを含むか又はからなる重鎖を含んでいてもよく、Fc鎖は、任意選択で、Fc鎖のヘテロ二量体化を促進してヘテロ二量体Fcドメインを形成するように修飾されている。より具体的には、重鎖は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table G(表7)に開示の通りであり、特に、配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおける、T366S/L368A/Y407V/Y349C又はT366W/S354Cのいずれか、好ましくはT366S/L368A/Y407V/Y349Cであり、任意選択でN297Aである置換を含み、置換の位置は、EU付番に従って規定されている。
【0269】
非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号38を含むか又はからなる軽鎖、及び配列番号35を含むか又はからなる重鎖を含み、Fc鎖は、任意選択で、Fc鎖のヘテロ二量体化を促進して、ヘテロ二量体Fcドメインを形成するように修飾されている。
【0270】
非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号75の第1の単量体、並びにN末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより、及びC末端で本明細書に開示の通りの任意のIL-7バリアントに任意選択でリンカーにより連結されているFc鎖配列番号77を含む第2の単量体を含んでいてもよい。より詳細には、二機能性分子は、配列番号75の第1の単量体、配列番号83の第2の単量体、及び配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体を含む。
【0271】
別の非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号77の第1の単量体、並びにN末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより、及びC末端で本明細書に開示の通りの任意のIL-7バリアントに任意選択でリンカーにより連結されているFc鎖配列番号75を含む第2の単量体を含んでいてもよい。より詳細には、二機能性分子は、配列番号77の第1の単量体、配列番号82の第2の単量体、及び配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体を含む。
【0272】
別の非常に特定の態様では、二機能性分子は、N末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより連結されている配列番号75の第1の単量体、並びにN末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより、及びC末端で本明細書に開示の通りの任意のIL-7バリアントに任意選択でリンカーにより連結されているFc鎖配列番号77を含む第2の単量体を含んでいてもよい。より詳細には、二機能性分子は、配列番号81の第1の単量体、配列番号83の第2の単量体、及び配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体を含む。
【0273】
別の非常に特定の態様では、二機能性分子は、N末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより連結されている配列番号77の第1の単量体、並びにN末端で抗原結合性ドメイン(特に配列番号79の)に任意選択でリンカーにより、及びC末端で本明細書に開示の通りの任意のIL-7バリアントに任意選択でリンカーにより連結されているFc鎖配列番号75を含む第2の単量体を含んでいてもよい。
【0274】
二機能性分子の調製 - IL-7バリアント若しくは変異体を、又はIL-7バリアント若しくは変異体を含む融合タンパク質及び二機能性分子をコードする核酸分子、それら核酸分子を含む組換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明によるIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子を特に哺乳動物細胞で産生するために、IL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸配列又は核酸配列の群を、1つ又は複数の発現ベクターにサブクローニングする。そのようなベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクトするために一般に使用される。抗体配列を含む分子を産生するための基本技法は、Coliganら(編)、Current protocols in immunology、10.19.1~10.19.11頁(Wiley Interscience社、1992年)(この文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に、及び分子の産生に関連する論評が、対応する本文に散在している、W. H. Freeman and Company社の「Antibody engineering: a practical guide」(1992年)に記載されている。
【0275】
一般に、そのような方法は、
(1)適切な宿主細胞に、本発明のIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は組換え二機能性分子をコードするポリヌクレオチド又はそのバリアント、或いは上記ポリヌクレオチドを含有するベクターをトランスフェクト又は形質転換する工程、
(2)宿主細胞を適切な培地で培養する工程、及び
(3)任意選択で、タンパク質を、培地又は宿主細胞から単離又は精製する工程
を含む。
【0276】
本発明は、上記に開示の通りのIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸、本発明の核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクター、本発明のベクターで或いはIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は組換え二機能性分子をコードする配列で直接的に形質転換された遺伝子操作宿主細胞、及び組換え技法により本発明のタンパク質を産生するための方法に更に関する。
【0277】
核酸、ベクター、及び宿主細胞は、本明細書の下記により詳細に記載されている。
【0278】
核酸配列
また、本発明は、上記で規定の通りのIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸分子、或いは上記で規定の通りのIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸分子の群に関する。本明細書に開示のIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸は、PCR等の、当技術分野で公知の任意の技法により増幅することができる。そのような核酸は、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定することができる。
【0279】
特に、上記に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 本明細書に開示の通りの結合性部分をコードする第1の核酸分子、及び
- IL-7m、好ましくはヒトIL-7mをコードする第2の核酸分子
を含む。
【0280】
非常に特定の実施形態では、結合性部分をコードする核酸分子は、配列番号73に示されている配列を有する可変重鎖ドメイン、及び/又は配列番号74に示されている配列を有する可変軽鎖ドメインを含む。
【0281】
一実施形態では、第2の核酸分子は、任意選択でペプチドリンカーをコードする核酸を介して、第1の核酸に作動可能に連結されている。作動可能に連結されているとは、核酸がタンパク質融合物をコードすることが意図される。したがって、特定の態様では、核酸は、結合性部分、任意選択でペプチドリンカー、及び本明細書に開示のIL-7バリアントを含む融合タンパク質をコードする。好ましくは、そのような核酸分子では、結合性部分がFcドメインを含む場合、IL-7バリアントのN末端は、重鎖定常ドメインのC末端に好ましくはペプチドリンカーを介して融合されている。
【0282】
一実施形態では、核酸分子は、単離された、特に非天然の核酸分子である。
【0283】
一態様では、核酸は、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を有するIL-7mをコードする。
【0284】
ベクター
別の態様では、本発明は、上記で規定の通りの核酸分子又は核酸分子の群を含むベクターに関する。
【0285】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、遺伝物質を細胞内へと移行させるためのビヒクルとして使用される核酸分子である。「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド、及び人工染色体を包含する。一般に、遺伝子操作されたベクターは、複製起点、マルチクローニングサイト、及び選択可能なマーカーを含む。ベクターはそれ自体が、概して、インサート(導入遺伝子)、及びベクターの「骨格」としての役目を果たすより大きな配列を含むヌクレオチド配列、一般的にはDNA配列である。現代的なベクターは、導入遺伝子インサート及び骨格の他の追加特徴:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、標的指向性配列、タンパク質精製タグを包含してもよい。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、特に、標的細胞において導入遺伝子を発現させるためのものであり、一般に、制御配列を有する。
【0286】
二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、又はIL-7バリアントをコードする核酸分子は、当業者であれば、ベクターにクローニングし、次いで宿主細胞へと形質転換することができる。こうした方法としては、in vitro組換えDNA技法、DNA合成技法、in vivo組換え技法等が挙げられる。当業者に公知である方法を使用して、本明細書に記載の二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、又はIL-7バリアントの核酸配列及び転写/翻訳のための適切な調節性成分を含有する発現ベクターを構築することができる。
【0287】
したがって、本発明は、本発明による二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、又はIL-7バリアントをコードする核酸分子を含む組換えベクターも提供する。1つの好ましい実施形態では、発現ベクターは、プロモーター、及び分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列、及び任意選択で、スクリーニングのための少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を更に含む。発現ベクターは、翻訳を開始するためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーター等を更に含んでいてもよい。
【0288】
好適な発現ベクターは、典型的には、(1)細菌複製起点をコードする原核生物DNAエレメント並びに細菌宿主での発現ベクターの成長及び選択を提供するための抗生物質耐性マーカー;(2)プロモーター等の、転写開始を制御する真核生物DNAエレメント;(3)転写終結/ポリアデニル化配列等の、転写物のプロセシングを制御するDNAエレメントを含有する。
【0289】
発現ベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、及びエレクトロポレーション等を含む様々な技法を使用して宿主細胞に導入することができる。好ましくは、発現ベクターが、安定形質転換体を産生するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれたトランスフェクト細胞を選択し、増殖させる。
【0290】
宿主細胞
別の態様では、本発明は、例えば、二機能性分子を産生する目的のための、上記で規定の通りのベクター又は核酸分子又は核酸分子の群を含む宿主細胞に関する。
【0291】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明による二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、又はIL-7バリアントをコードするベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか又はレシピエントである任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図される。また、「宿主細胞」という用語は、単一細胞の子孫又は潜在的な子孫を含むことが意図されている。好適な宿主細胞としては、原核細胞又は真核細胞が挙げられ、これらに限定されないが、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、並びに昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばマウス、ラット、ウサギ、マカク、又はヒト等の動物細胞も挙げられる。
【0292】
好適な宿主細胞は、特に、グリコシル化等の好適な翻訳後修飾を提供する真核生物宿主である。好ましくは、そのような好適な真核生物宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の真菌;ミチムナ・セパラテ(Mythimna separate)等の昆虫細胞;タバコ等の植物細胞;並びにBHK細胞、293細胞、CHO細胞、NSO細胞、及びCOS細胞等の哺乳動物細胞であってもよい。
【0293】
好ましくは、本発明の宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、及びHEK細胞からなる群から選択される。
【0294】
したがって、宿主細胞は、本発明による二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、及び/又はIL-7バリアントを安定的に又は一過性に発現する。そのような発現方法は、当業者に公知である。
【0295】
また、IL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子を産生するための方法が、本明細書で提供される。この方法は、上記で提供されている通りの二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、及び/又はIL-7バリアントをコードする核酸を含む宿主細胞を、その発現に好適な条件下で培養する工程、及び任意選択で二機能性分子、融合タンパク質、結合性部分、及び/又はIL-7バリアントを宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。特に、二機能性分子の組換え産生の場合、例えば上記に記載の通りの二機能性分子をコードする核酸分子を単離し、宿主細胞での更なるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入する。次いで、IL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、二機能性分子を、当技術分野で公知の任意の方法により単離及び/又は精製する。こうした方法としては、これらに限定されないが、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩沈殿等)、遠心分離、浸透による細胞溶解、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー又はゲルクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、任意の他の液体クロマトグラフィー、及びそれらの組合せが挙げられる。例えばColiganよる記載の通り、二機能性分子単離技法としては、特に、プロテインAセファロースによる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを挙げることができる。本発明の二機能性分子の単離には、好ましくは、プロテインAが使用される。
【0296】
医薬組成物及びその投与方法
また、本発明は、本明細書に記載のIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、本明細書の上記に記載の通りの核酸分子、核酸分子の群、ベクター、及び/又は宿主細胞のいずれかを、好ましくは活性成分又は化合物として含む医薬組成物に関する。製剤は、滅菌することができ、所望の場合は、本発明の二機能性分子、本発明の核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞と有害な相互作用をせず、望ましくない毒物学的効果を一切与えない薬学的に許容される担体、賦形剤、塩、抗酸化剤、及び/又は安定化剤等の助剤と混合することができる。任意選択で、医薬組成物は、追加の療法剤を更に含んでいてもよい。
【0297】
特に、本発明による医薬組成物は、局所投与、経腸投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、又は眼内投与等を含む、任意の従来の投与経路用に製剤化することができる。投与を容易にするために、本明細書に記載の通りの二機能性分子を、in vivo投与用の医薬組成物へと製作することができる。そのような組成物を製作するための手段は、当技術分野に記載されている(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins社、第21版(2005年)を参照)。
【0298】
医薬組成物は、所望の純度を有する二機能性分子を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、抗酸化剤、及び/又は安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態に調製することができる。そのような好適な担体、賦形剤、抗酸化剤、及び/又は安定剤は、当技術分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980年)に記載されている。
【0299】
送達を容易にするために、二機能性分子又はそのコード核酸のいずれかを、シャペロン剤とコンジュゲートしてもよい。シャペロン剤は、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、低密度リポタンパク質、又はグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、又はヒアルロン酸)、又は脂質等の天然に存在する物質であってもよい。また、シャペロン剤は、合成ポリマー、例えば合成ポリペプチド等の、組換え又は合成分子であってもよい。
【0300】
本発明による医薬組成物は、投与の実質的直後に、又は投与後の任意の所定の時点若しくは期間に、有効成分(例えば、本発明の二機能性分子)を放出するように製剤化してもよい。一部の態様では、医薬組成物には、組成物の送達が、治療しようとする部位の感作の前に及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるように、時限放出送達系、遅延放出送達系、及び持続放出送達系を使用することができる。当技術分野で公知の手段を使用して、標的組織又は臓器に到達するまで組成物の放出及び吸収を防止又は最小化するか、又は組成物の時限放出を保証することができる。そのような系は、組成物の反復投与を回避することができ、それにより対象及び医師の利便性を高める。
【0301】
当業者であれば、本発明の製剤はヒト血液と等張性であってもよく、つまり、本発明の製剤はヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを理解するだろう。そのような等張性製剤は、一般に、約250mOSm~約350mOSmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧型又は氷点降下型(ice-freezing type)浸透圧計により測定することができる。
【0302】
医薬組成物は、典型的には、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。微生物存在の防止は、滅菌手順(例えば、精密濾過による)、並びに/又は種々の抗細菌剤及び抗真菌剤の含有の両方により保証することができる。
【0303】
担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される対象、及び特定の投与様式に応じて様々であろう。担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、一般に、療法効果を生み出す組成物の量であろう。
【0304】
対象、レジメン、及び投与
本発明は、医薬として使用するための、又は疾患の治療に使用するための、又は対象に投与するための、又は医薬として使用するための、本明細書で開示の通りのIL-7バリアント又変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子;それらをコードする核酸若しくはベクター、宿主細胞、又は医薬組成物、核酸、ベクター、又は宿主細胞に関する。また、本発明は、対象における疾患又は障害を処置するための方法であって、治療有効量の医薬組成物又は二機能性分子を対象に投与する工程を含む方法に関する。治療の例は、本明細書の下記の「方法及び使用」のセクションでより詳細に説明されている。
【0305】
治療する対象は、ヒト、特に出生前段階のヒト、新生児、子供、乳児、青年、又は成人、特に、少なくとも30歳、40歳の成人、好ましくは少なくとも50歳の成人、更により好ましくは少なくとも60歳の成人、更にいっそう好ましくは少なくとも70歳の成人であってもよい。
【0306】
特定の態様では、対象は、免疫抑制状態又は免疫無防備状態であってもよい。
【0307】
医学分野の当業者に公知である従来法を使用して、治療しようとする疾患のタイプ又は疾患の部位に応じて、本明細書で開示の通りの二機能性分子又は医薬組成物を対象に投与することができ、例えば、経口的に、非経口的に、経腸的に、吸入スプレーで、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は移植リザバーを介して投与することができる。好ましくは、二機能性分子又は医薬組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、腫瘍内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内注射若しくは輸注技法により投与される。
【0308】
医薬組成物の形態、本発明による医薬組成物又は二機能性分子の投与経路及び投与用量は、当業者であれば、感染症のタイプ及び重症度、患者、特に患者の年齢、体重、大きさ、性別、及び/又は全身健康状態に応じて調整することができる。本発明の組成物は、局所的治療が所望であるか又は全身的治療が所望であるかに応じて、幾つかの様式で投与することができる。
【0309】
疾患の処置における使用
本発明の二機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物及び方法は、多数のin vitro及びin vivoでの有用性並びに適用を有する。特に、本明細書において提供されるIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、二機能性分子、核酸分子、核酸分子の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物のいずれかが、治療方法において、及び/又は治療目的のため使用されてもよい。
【0310】
本発明はまた、対象における障害及び/若しくは疾患の処置において使用するための、並びに/又は医薬若しくはワクチンとして使用するための、IL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、それらをコードする核酸又はベクター、或いはそれらを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、対象における疾患及び/又は障害を処置するための、本明細書において記載されるIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子;それらをコードする核酸又はベクター、或いはそれらを含む医薬組成物の使用に関する。最後に、本発明は、対象における疾患又は障害を処置する方法であって、治療有効量の医薬組成物、或いはIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、或いはそれらをコードする核酸又はベクターを、対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0311】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象におけるがん、感染性疾患、及び慢性ウイルス感染症からなる群から選択される疾患及び/又は障害の処置の方法であって、当該対象に、有効量の上で定義されたIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、又は医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。このような疾患の例は、本明細書において以下でより具体的に記載される。
【0312】
一態様では、処置方法は、(a)処置を必要とする患者を同定する工程;及び(b)患者に、治療有効量の本明細書において記載されるIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、核酸、ベクター、又は医薬組成物のいずれかを投与する工程を含む。
【0313】
処置を必要とする対象は、疾患を有する、有するリスクのある、又は有することが疑われるヒトであってもよい。このような患者は、慣習的な検診により同定することができる。
【0314】
別の態様では、本明細書において開示される二機能性分子は、免疫を増強するために、好ましくは、障害及び/又は疾患を処置するために、対象に、例えば、in vivoで投与することができる。したがって、一態様では、本発明は、対象における免疫応答を修正する方法であって、対象における免疫応答が修正されるように、対象に、本発明の二機能性分子、核酸、ベクター又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。好ましくは、免疫応答は、増強されるか、増大されるか、刺激されるか又は上方調節される。二機能性分子又は医薬組成物を使用して、処置を必要とする対象におけるT細胞活性化のような免疫応答を増強することができる。特定の実施形態では、二機能性分子又は医薬組成物を使用して、T細胞疲弊を低減すること、又は疲弊したT細胞を再活性化することができる。
【0315】
本発明は、特に、対象における免疫応答を増強する方法であって、対象における免疫応答が増強されるように、対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。特定の実施形態では、二機能性分子又は医薬組成物を使用して、T細胞疲弊を低減すること、又は疲弊したT細胞を再活性化することができる。
【0316】
本発明による二機能性分子は、CD127+免疫細胞、特に、CD127+T細胞を標的にする。このような細胞は、以下の具体的な対象範囲:リンパ節中の常在性リンパ球系細胞(主に、傍皮質内、濾胞における時々の細胞を含む)、扁桃腺(濾胞間領域)、脾臓(主に、白色髄の細動脈周囲のリンパ球系鞘(PALS)及び赤色髄における一部の点在する細胞)、胸腺(主に、髄質中;又は皮質中)、骨髄(点在して分布)、消化管(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、直腸)中のGALT(腸管関連リンパ組織、主に、濾胞間領域及び粘膜固有層中)、胆嚢のMALT(粘膜関連リンパ組織)において見られ得る。それ故、本発明の二機能性分子は、これらの範囲、特に、がんに位置するか、又はそれらが関与する疾患を処置するのに特に興味深い。
【0317】
がん
別の実施形態では、本発明は、がんを処置するための、例えば、対象における腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬の製造における本明細書において開示されるIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0318】
「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、異常細胞の急速で未制御の成長により特徴付けられる疾患であると定義される。がん細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分へと広がる場合がある。
【0319】
したがって、一実施形態では、本発明は、対象におけるがんを処置する、例えば、腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、対象に、治療有効量の本発明による二機能性分子又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。特に、本発明は、がん性細胞の成長が阻害されるように、二機能性分子を使用した対象の処置に関する。
【0320】
本開示の一態様では、処置されるべきがんは、疲弊したT細胞と関連する。
【0321】
本明細書において提供されるもので処置され得る任意の適当な癌がんは、造血系のがん又は固形がんであり得る。このようながんは、癌腫、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、胃がん、尿道がん、環境で誘導されたがん及び当該がんの任意の組合せを含む。加えて、本発明は、難治性又は再発性悪性腫瘍を含む。好ましくは、処置される、又は予防されるべきがんは、転移性又は非転移性、メラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0322】
特定の態様では、がんは、血液系腫瘍又は固形腫瘍である。このようながんは、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病からなる群から選択することができる。
【0323】
特定の態様では、がんは、ウイルスにより誘導されるがん、又は免疫不全と関連するがんである。このようながんは、カポジ肉腫(例えば、カポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);子宮頸部、肛門、陰茎及び外陰部の扁平上皮細胞がん及び中咽頭がん(例えば、ヒトパピローマウイルスと関連する);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、及びリンパ増殖性障害(例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);肝細胞癌(例えば、肝炎B及び/又はCウイルスと関連する);メルケル細胞癌(例えば、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連する);並びにヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)感染と関連するがんからなる群から選択することができる。
【0324】
処置に好ましいがんは、典型的には、免疫療法に応答性のがんを含む。或いは、処置に好ましいがんは、免疫療法に応答性でないがんである。
【0325】
感染性疾患
本発明の二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物を使用して、特定の毒素又は病原体に曝露された患者を処置することができる。したがって、本発明の態様は、好ましくは、対象が、感染性疾患について処置されるように、対象に、本発明による二機能性分子、又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む対象における感染性疾患を処置する方法を提供する。
【0326】
任意の適当な感染症は、本明細書において提供される、二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物で処置されてもよい。
【0327】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスの一部の例は、HIV、肝炎(A、B、又はC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスを含む。
【0328】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性細菌の幾つかの例は、クラミジア、リケッチア性細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、テタヌス、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、及びライム疾患の細菌を含む。
【0329】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性真菌の幾つかの例は、カンジダ(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラータ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)等)、ケカビ属(ムコール(mucor)、アブシディア(absidia)、リゾプス(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)並びにヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。
【0330】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫の幾つかの例は、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Bal抗dium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondi)、及びブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0331】
併用療法
本発明による二機能性分子は、臨床開発中又はすでに市場にある物質を用いた、免疫回避機序を克服するための幾つかの他の可能性のある戦略と組合せることができる(Antoniaら、Immuno-oncology combinations: a review of clinical experience and future prospects. Clin. Cancer Res. Off. J. Am. Assoc. Cancer Res. 20、6258~6268、2014のTable 1(表17)参照)。本発明による二機能性分子とのこのような組合せは、
1-適応免疫の阻害を逆転させること(T細胞チェックポイント経路を遮断すること);
2-適応免疫をスイッチングすること(アゴニスト分子、特に、抗体を使用してT細胞共刺激受容体シグナル伝達を促進すること)、
3-自然免疫細胞の機能を改善すること;
4-例えば、ワクチンベースの戦略を通じて、免疫系を活性化すること(免疫-細胞エフェクター機能を増強すること)、
に明白に有用であり得る。
【0332】
したがって、本明細書において記載される二機能性分子又はそれを含む医薬組成物のいずれか及び適当な第2の物質を用いた、疾患又は障害を治療するための併用療法も、本明細書において提供される。態様では、二機能性分子及び第2の物質は、上で記載された固有の医薬組成物に存在することができる。或いは、本明細書において使用される、用語「組合せ療法」又は「併用療法」は、連続する様式でのこれらの2つの物質(例えば、本明細書において記載される二機能性分子及び追加又は第2の適当な療法剤)の投与を包含し、すなわち、各療法剤は、異なる時間に投与され、並びにこれらの療法剤、又は物質の少なくとも2つの投与が、実質的に同時の様式である。各物質の連続する又は実質的に同時の投与は、任意の適当な経路により影響され得る。物質は、同じ経路により、又は異なる経路により投与することができる。例えば、第1の物質(例えば、二機能性分子)は、経口投与することができ、追加の療法剤(例えば、抗がん剤、抗感染症剤;又は免疫モジュレーター)は、静脈内投与することができる。或いは、選択された組合せの物質は、静脈注射により投与されてもよく、一方、組合せの他の物質は、経口投与されてもよい。
【0333】
態様では、追加の療法剤は、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、ペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せを含む、非包括的リストにおいて選択することができる。
【0334】
例えば、追加の療法剤は、化学療法、放射線療法、標的化療法、抗血管新生薬、低メチル化剤、がんワクチン、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、骨髄チェックポイント阻害剤、他の免疫療法、及びHDAC阻害剤からなる群において選択することができる。
【0335】
本発明はまた、対象における疾患を処置する方法であって、当該対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物及び治療有効量の追加又は第2の療法剤を投与する工程を含む方法に関する。
【0336】
追加又は第2の療法剤の具体例は、国際公開第2018/053106号、36~43頁において提供される。
【0337】
好ましい実施形態では、第2の療法剤は、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、細胞療法剤(例えば、CAR-T細胞)、抗生物質及びプロバイオティクスからなる群から選択される。
【0338】
組合せ療法はまた、外科手術との二機能性分子の投与の組合せに依拠し得る。
【0339】
キット
本明細書において記載される二機能性分子又は組成物のいずれかは、本発明により提供されるキットに含まれてもよい。本開示は、特に、免疫応答の増強及び/或いは疾患又は障害(例えば、がん及び/又は感染症)の処置において使用するためのキットを提供する。
【0340】
本発明の文脈において、用語「キット」は、容器、レシピエント又はその逆にパッケージされた2つ以上の成分(そのうち1つが、本発明の二機能性分子、核酸分子、ベクター又は細胞に対応する)を意味する。キットは、1回単位として市販することができる、ある特定の目標を達成するのに十分である製品及び/又は用具のセットとして本明細書において記載することができる。本発明のキットは、適当なパッケージ中にある。
【0341】
具体的には、本発明によるキットは、
- 上で定義されたIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、
- 当該IL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子をコードする核酸分子又は核酸分子の群、
- 当該核酸分子又は核酸分子の群を含むベクター、及び/或いは
- 当該ベクター又は核酸分子又は核酸分子の群を含む細胞
を含んでもよい。
【0342】
したがって、キットは、適当な容器手段において、本発明の医薬組成物、及び/或いはIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、及び/或いは宿主細胞、及び/或いは本発明の核酸分子をコードするベクター、及び/或いは本発明の核酸分子又は関連する試薬を含んでもよい。一部の実施形態では、試料を個体から採取する手段及び/又は試料をアッセイする手段が、提供されてもよい。本発明によるキットに含まれる組成物は、特に、シリンジと適合可能な組成物に製剤化されてもよい。
【0343】
一部の実施形態では、キットは、がん又は感染性疾患を処置するための追加の物質を更に含み、追加の物質は、本発明のキットのIL-7バリアント若しくは変異体、融合タンパク質、又は二機能性分子、又は他の成分と組み合わされてもよく、或いはキットにおいて別々に提供されてもよい。特に、本明細書において記載されるキットは、本明細書において上で記載された「併用療法」において記載されたもののような1つ又は複数の追加の療法剤を含んでもよい。キットは、個体のための特定のがんに合わせられ、本明細書において上で記載された個体のためのそれぞれの第2のがん療法を含んでもよい。
【0344】
本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物の使用に関する指示書は、一般的に、投薬量、投与スケジュール、意図される処置の投与経路、二機能性分子を再構成するための手段及び/又は本発明の二機能性分子を希釈するための手段に関する情報を含む。本発明のキットにおいて提供される指示書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、リーフレット又は指示マニュアルの形態でキットに含まれるペーパーシート)上に書かれた指示書である。
【実施例】
【0345】
(実施例1. Fcに融合したIL-7の変異体がIL-7Rへの結合及びpSTAT5シグナル伝達を修飾し、in vivoの薬物動態を向上させる)
IL-7変異体を得るために、IL7のCD127への相互作用に関与するアミノ酸を、類似の性質及び特性を有するアミノ酸で置換した。幾つかの変異、すなわち、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、D74E、D74Q、D74N、K81R、W142H、W142F及びW142Yを生成した。
【0346】
置換C2S-C141S+C34S-C129S(<<SS1>>と命名した変異)、又はC2S-C141S+C47S-C92S(「SS2」と命名した変異)、又はC47S-C92S+C34S-C129S(「SS3」と命名した変異)を導く、システイン残基をセリン残基で置換することにより、IL-7ジスルフィド結合を破壊させた。
【0347】
【0348】
【0349】
【0350】
【0351】
【0352】
IL7配列中の1個のアミノ酸の置換は、PD-1受容体に結合するその能力を修飾しなかった(
図1A、
図1B及び
図1C)。しかしながら、これらの変異は、生体外(ex vivo)でのT細胞アッセイにおけるCD127結合及びpSTAT5シグナル伝達により示される通り、その生物学的活性を修飾する(
図2及び
図3並びにTable 1(表10)及びTable 4(表13))。変異D74E及びW142Hは、Tリンパ球におけるCD127へのIL-7結合とpStat5の活性化の両方を減少させるのに最も効率的な変異である(
図2A、
図2B及び
図3A、
図3B並びにTable 1(表10)及びTable 5(表14))。別の実験において、ジスルフィド結合崩壊の効果を、解析した(
図2C)。高濃度(10μg/ml)で、SS2又はSS3は、IL-7WTから3log偏差で、Tリンパ球においてpStat5を活性化することができた(
図2C及びTable 4(表13))。
【0353】
これらの変異の結合能を確認するために、ビアコア(Biacore)アッセイを行い、KDを決定した(受容体とその抗原の間の平衡解離定数、Table 2(表11)を参照)。変異SS2及びW142Hは、7~57nMに近いKDで、CD127へのより低い親和性を有する。SS3変異は、3μMに近いKDで、CD127に対して最も低い親和性を有する。CD132受容体に対する親和性も、Table 3(表12)に示した通り評価した。この実験において、CD127は、IL-7の不存在下でCD132と二量体を形成するので、IgG4単独を、ベースラインKD親和性として使用した。IL-7変異体W142Hは、CD132に結合するが、IgG IL-7WTと比較して5倍高い親和性である。このデータは、変異W142Hが、CD127への結合を減少させ、CD132受容体に対するIL-7の結合を再指示することを示し、これは、
図2に示す通り、T細胞におけるpSTAT5活性化の喪失を導く。対照的に、本発明者らは、試験した条件において、SS2変異が、CD132受容体に結合する能力を失うことを観察し、これは、SS2変異が、CD132受容体よりCD127に優先的に結合し、T細胞におけるpSTAT5活性の減少を導くことを示唆している(
図3)。
【0354】
in vivoで抗PD-1 IL-7の薬物動態/薬理学を決定するために、マウスに、1回用量のIgG-IL-7(34.4nM/kg)を静脈内注射した。血漿薬物濃度を、ヒトIgGに特異的なELISAにより解析した。
図3及びTable 5(表14)は、得られたCmax(注射の15分後の最大濃度)が、理論的濃度より30倍低いので、IgG4 IL-7 WT分子が、迅速な分布を有することを示す。試験した全W142Y、F、H変異は、IL-7WTより5~10倍高いCmaxで、より良好な分布特性を示した(
図3A及びTable 5(表14))。W142H変異は、最大のCmaxを示す。抗PD-1 IL-7 D74E変異はまた、良好なCmaxを示した。変異SS2及びSS3は、IL-7WTより7~13倍高いCmaxの最善のPK特性及び良好な直線性特性曲線を示す。同時に、AUC(曲線下面積)を決定し(Table 5(表14)及び
図4D)、AUCは、薬物曝露及び身体からのそのクリアランス速度の程度への洞察を与える。これらのデータは、AUCは、IL-7変異で増大することを示し、これは、IL-7変異が、向上した薬物曝露を有することを意味している。
図4Dにおいて表す通り、本発明者らは、薬物曝露は、変異体のIL-7効力(pSTAT5 EC50により測定)と相関することを観察した。まとめると、IL-7の親和性は、製品の薬物動態と相関する。それらの受容体CD127及びCD132に対するIL-7の親和性の減少は、in vivoでIL-7二機能性分子の吸収及び分布を向上させる。
【0355】
(実施例2:IgGのC末端ドメインでのC末端ドメインでのシステインの付加は、IL7分子の可撓性を減少し、in vivoでの薬物動態を向上させる)
IgGのC末端ドメインでのC末端ドメインでのシステインの付加も試験して、追加のジスルフィド結合を生成し、IL-7分子の可撓性を潜在的に制限した。この変異を、「C-IL-7」と命名した。
図5は、IgG構造におけるジスルフィド結合の付加が、抗PD-1 IL7 WT二機能性分子と比較して、IL-7のpSTAT5活性を減少させ(
図5A)、in vivoでの薬物動態アッセイにおいてCmax(5倍)を増加させる(
図5B)ことを示す。
【0356】
(実施例3:IgG1N298Aアイソタイプと共に構築した抗PD-1 IL-7変異体は、IL-7Rへの良好な結合、より良好なpSTAT5シグナル伝達及びin vivoでの良好な薬物動態特性を有する)
異なるアイソタイプの抗PD-1 IL-7二機能性分子を、IgG4m(S228P)又はIgG1m (ナンバリング方法によってN298A又はN297A)で試験した。IgG4アイソタイプは、in vivoでのFabアーム交換を防ぐためのS228P変異を含み、IgG1アイソタイプは、免疫サイトカインの非特異的結合を低減し得るFcγR受容体へのIgG1アイソタイプ結合を抑制するN298A変異を含む(「IgG4m」又は「IgG1N298A」と命名した変異)。次に、抗PD-1 IL-7二機能性分子を、2つの異なるアイソタイプ、N297Aにおいて変異したIgG1(IgG1mと呼ぶ)アイソタイプ対IgG4 S288Pアイソタイプ (IgG4mと呼ぶ)で構築して、アイソタイプ構造が、IL-7の生物学的活性及びその薬物動態特性を修飾するかどうかを決定することを示す。
【0357】
図6A及び
図6Bは、IgG4m又はIgG1mアイソタイプで構築した抗PD-1 IL7二機能性分子が、PD-1受容体への同じ結合特性を有することを示し、これは、アイソタイプが、VH及びVLのコンフォメーション並びにPD-1に対する抗PD-1抗体の親和性を修飾しないことを示している。しかしながら、本発明者らは、IgG1mアイソタイプが、予想外に、CD127上でのIL-7 D74、SS2及びわずかに、SS3の結合(
図7A、
図7B、
図7C及び
図7D)並びにヒトPBMC上でのpSTAT5活性化(
図8A、
図8B及び
図8C)を向上させることを観察した。pSTAT5シグナル伝達のこの増加を、別のT細胞株(PD-1及びCD127を発現するジャーカット細胞、
図8Dを参照)上でのSS2変異について確認したが、驚くべき様式で、IgG1mアイソタイプは、抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子のpSTAT5活性を修飾せず、これは、IgG1mアイソタイプが、IL-7変異体の活性を向上させるのみであることを示唆している。抗PD1抗体及びIL7変異を含む二機能性分子の反応性TCRが仲介するシグナル伝達を再活性化させる能力を決定するために、NFATバイオアッセイを行った。結果は、二機能性分子が、TCRが仲介するシグナル伝達(NFAT)を活性化するのに、抗PD1又は抗PD1+rIL7(別々の化合物として)より良好であることを示す
図9Aを示し、これは、PD1+T細胞上での二機能性分子の相乗効果を示している。次に、本発明者らは、IgG4m対IgG1mアイソタイプで構築した抗PD-1抗体及びIL-7変異(変異D74E、W142H又はSS2を含む)を含む二機能性分子の相乗的な能力を評価した(
図9B、
図9C、
図9D)。試験した全ての変異は、NFATシグナル伝達の活性化に対する相乗効果を保存し、活性化のレベルは、特にIgG4mとのIL-7 D74Eを含む二機能性分子について、pSTAT5シグナル伝達を活性化するそれらの能力と相関する。
【0358】
マウスにおける薬物動態研究は、IgG1アイソタイプが、IL7WT及びSS3分子についての薬物曝露及びW142H分子に対する最小の影響を修飾しないことを示す(
図10A)。これらのデータ全体は、最適化したアイソタイプ(IgG1m)が、in vivoでの生成物の良好な薬物動態を保存しながら、変異の生物学的活性を増強するのに十分であることを示す。IgG1mアイソタイプと共に、他のIL-7変異:D74N、D74Q及びD74E+W142H変異の組合せを試験した。抗PD-1 IL-7 D74E変異との相違を、pSTAT5活性化(
図9B)及び薬物動態(
図10B)で観察しなかった。
【0359】
本発明者らは、特に、異なるアミノ酸置換D74E、D74Q、及びD74Nを有するIL-7 D74変異を含む抗PD-1二機能性分子を試験した。これらの構築物は、GGGGSリンカー及びIgG1N298Aアイソタイプを含む。Table 6(表15)に詳細が示されているように、構築物は全て、PD-1に対する結合の有効性は同様であるが、二重PD-1/CD127に対する結合は、D74Q及びD74N変異ではD74E変異体と比較して減少している。これは、置換Q及びNが、CD127受容体に対する変異体の親和性をわずかに減衰させることを示唆する。
【0360】
【0361】
二重変異D74E+W142Hは、W124H IgG1と比較して、同様の特性を示し、D74Qは、D74E変異と比較して、同様の特性を示した。本発明者らはまた、IgG1mアイソタイプ+YTE変異(M252Y/S254T/T256E)を有する二機能性分子を構築した。この変異は、FcRn受容体への結合を増加させることにより、抗体の半減期を増加させることを記載した。
図7Dに示す通り、YTE変異は、D74又はW142H変異を含む二機能性分子のpSTAT5シグナル伝達を修飾しない。
【0362】
(実施例4:C末端のリジン残基への変異K444Aはin vivoで薬物動態に影響を与えない)
ヒトIgGの全てのサブクラスは、循環中に切断され得る抗体重鎖のC末端のリジン残基(K444)を有する。血中でのこの切断は、IgGに結合したIL-7を放出させることにより、免疫サイトカインの生物活性を損なう可能性がある。この問題を回避するために、IgGドメイン中のK444アミノ酸をアラニンで置換して、タンパク分解切断を低減した。これは、抗体について一般的に使用される変異である。
図11に示す通り、同様の曲線が、IgG WT IL-7対IgG K444A IL-7の間で得られた。これは、変異が、薬物の薬物動態特性に影響しないことを示唆している。
【0363】
(実施例5:IgG抗体間のリンカーは、in vivoで薬物動態を修飾しないが、pSTAT5シグナル伝達の活性化を向上させる)
IgG FcドメインとIL-7mの間の異なるリンカーを試験して、可撓性を修飾した。幾つかの条件を試験した(例えば、リンカーなし、GGGGS、GGGGSGGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS)。
【0364】
実施例1及び2について、FcのC末端ドメインとIL-7のN末端ドメインの間のリンカー(G4S)3を、それぞれ、IgG4m-IL7及びIgG1m-IL-7構築に使用した。このリンカーは、高い可撓性及びIL7活性化シグナルの向上を可能にした。IL7のCD127への親和性を低減し、薬物動態を向上させるために、異なる構築を行い、リンカーの長さを変動させて(リンカーなし、G4S、(G4S)2又は(G4S)3)試験した。比較のため、IgG1m又はIgG4m Fc IL-7 WTも、様々なリンカーで生成した。
【0365】
薬物動態研究は、リンカーの長さが、試験した構築物:抗PD-1 IL7 WT(
図12A)、抗PD-1 IL-7 D74(
図12B)及び抗PD-1 IL-7 W142H(
図12C)について生成物の分布、吸収及び排出に影響を有さないことを示す。しかしながら、リンカーの長さは、
図12Dに示す通り、pStat5の活性化に影響する。実際、リンカー(G4S)3で構築した抗PD-1 IL7は、(G4S)2又はG4S3リンカーで構築した抗PD-1 IL-7と比較してpSTAT5シグナル伝達の活性化においてより効力があり、リンカーなしで構築した抗PD-1 IL-7と比較してなおより効力がある。これらのデータは、(G4S)3リンカーの使用が、in vivoでの薬物の薬物動態を損なうことなく、IL-7の可撓を可能にすることを強調する。
【0366】
(実施例6:抗PD-1 IL-7変異体は、PD-1-CD127+細胞よりPD-1+CD127+細胞への優先的結合を可能にする)
次に、本発明者らは、PD-1+T細胞を標的とする抗PD-1 IL-7二機能性分子の能力を評価した。CD127+を発現するジャーカット細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するジャーカット細胞を、45nMの以下の二機能性分子:抗PD-1 IL-7 WT、D74、W142H、SS2及びSS3で染色した。結合を、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で検出し、フローサイトメトリーにより解析した。
【0367】
結果:
図13は、抗PD-1 IL-7 WT及びD74変異が、PD-1+/CD127+細胞対PD-1-/CD127+細胞に対して同様の有効性で結合し、一方、抗PD-1 IL-7変異SS2、SS3が、PD-1+/CD127+細胞対PD-1-/CD127+細胞に2~3倍高い有効性で結合することを示す。抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子は、中間の効果を示し、PD-1+/CD127+細胞に1.4倍高い有効性で結合することを示す。
【0368】
次に、PD-1+ T細胞に対する抗PD-1 IL-7変異の特異的標的化を異種細胞モデルにおいて確認するために、本発明者らは、次に、PD-1(+)細胞及びPD-1(-)細胞を混合し、各細胞サブセットに対するそれらの結合を解析した。このアッセイでは、ヒトCD127+及びヒトPD-1+細胞を共発現するCHO細胞を、ヒトCD127+受容体のみを発現するCHOと1:1比で共培養し(
図14A)、次いで漸増用量の二機能性抗PD-1 IL-7変異D74E、W142H、SS2、及びSS3分子、抗PD-1単独、又は無関係なアイソタイプIL-7抗体で染色した。結合を、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で明らかにし、フローサイトメトリーにより解析した。結合EC50(nM)を、各構築物並びに各PD-1(+)及びPD-1(-)細胞集団について決定した(
図14B)。無関係なアイソタイプIL-7対照を陰性対照として使用し、これは、PD-1(+)細胞とPD-1(-)細胞とで等しい結合を示す。この共培養アッセイでは、二機能性抗PD-1 IL-7分子は全て、PD-1(-)細胞よりもPD-1(+)細胞に対して優先的に結合するが、本発明者らは、IL-7変異が、PD-1+細胞に対するこの分子の選択的シス結合を向上させることを観察した。
図14Bに示されているように、抗PD-1 IL-7 W142H、SS2、及びSS3変異は、抗PD-1 IL-7野生型と比較してPD-1(-)CD127(+)細胞に対する結合の強い減衰を示したが、抗PD-1 IL-7変異は、抗PD-1 IL-7野生型と同様のPD-1(+)CD127(+)細胞に対する強力な結合(EC50、約300pM)を保持した。特に、抗PD-1 IL-7 W142H及びSS3変異は、最も高い選択的活性を示し、PD-1(+)細胞とPD-1(-)細胞との間で、結合にそれぞれ62倍及び311倍の差があった。
【0369】
まとめると、これらのデータは、Il-7変異が、薬物の良好な薬物動態を可能にするばかりでなく、PD-1+細胞に対するIL-7の優先的な結合、すなわち、同じ細胞での薬物の標的化を可能にすることを示す。抗PD-1 IL-7は、CD127+ナイーブT細胞よりPD-1+CD127+疲弊したT細胞上で腫瘍微小環境内におけるIL-7を濃縮するので、この態様は、in vivoでの薬物の生物学的活性についての対象となる。
【0370】
(実施例7:抗PD-1 IL-7変異二機能性分子は、PD-1+細胞上のIL7Rを優先的に活性化し、ヒト活性化T細胞の増殖を相乗的に促進する)
また、IL-7Rシグナル伝達活性化(pSTAT5)を、混合U937 PD-1(+)CD127(+)及びPD-1(-)CD127(+)細胞の共培養モデルで試験した。U937細胞は、IL-7Rシグナルの伝達に必要な内因性CD132受容体も発現した(
図15A)。pSTAT5シグナル伝達データは、PD-1 IL-7変異W142H、SS2、及びSS3が、PD-1(-)細胞よりもPD-1(+)細胞において非常により高い選択的活性を有することを示している。抗IL7変異を含む抗PD-1二機能性分子では、IL-7野生型を含む抗PD-1二機能性分子と比べて、PD-1(-)細胞で10倍~50倍減少した活性が観察される(
図15B)。PD-1(-)細胞では、誘導されたpSTAT5活性は非常に低かったが、PD-1(+)細胞では、IL-7変異を含む抗PD-1二機能性分子の活性回復が、組換えIL-7野生型サイトカインと同様の程度まで得られ、pSTAT5活性のEC50は10pMに近かった。特に、W142H変異は、PD1+細胞ではPD-1-細胞と比較して450倍よりも大きな結合/活性を示す。
【0371】
抗PD-1 IL-7二機能性分子は、非常に有利に、特にPD-1(+)CD127(+)疲弊T細胞を標的とするように設計されていたため、本発明者らは、次に、抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子がpSTAT5シグナル伝達及び初代ヒト疲弊T細胞への増殖を優先的に活性化する能力を解析した。PD-1(+)CD127(+)疲弊T細胞を生成するため、ヒト末梢血T細胞を、in vitroで反復刺激に供して(αCD3/αCD28)、腫瘍微小環境で生じる慢性抗原刺激を模倣した。
【0372】
PD-1(+)T細胞に対する二機能性抗PD-1 IL-7分子の標的効果を評価するため、疲弊したT細胞を高濃度の抗PD-1競合抗体とインキュベートして、抗PD-1 IL-7二機能性分子の抗PD-1部分の結合を遮断した。インキュベーション後、疲弊したT細胞を抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子又は組換えIL-7野生型サイトカインで処理した。次いで、pSTAT5活性化をフローサイトメトリーにより定量化した。2つの条件(PD-1遮断対非遮断アイソタイプ)間のpSTAT5活性化比(EC50)を計算し、
図16Aに報告した。このアッセイでは、非標的化IL-7組換えサイトカインを陰性対照として使用し、比1を得た。これは、PD-1(+)細胞及びPD-1(-)T細胞での非標的化IL-7の活性が同様だったことを示す。抗PD-1 IL-7 W142H分子で処理したところ、活性に有意差が得られた(2分の1~4分の1の活性)。これは、この分子が、PD-1(-)疲弊T細胞よりもPD-1(+)疲弊初代T細胞へのIL-7Rシグナル伝達の優先的なシス活性化を可能にすることを示唆する。
【0373】
加えて、本発明者らは、抗PD-1 IL-7 W142Hの特異的シス標的化は、疲弊したT細胞の相乗的増殖をin vitroで可能にするが、2つの別々の物質(抗PD-1抗体+アイソタイプIL-7 W142H)の組合せは、疲弊したT細胞の増殖刺激の有意な低下を誘導したことを示した(
図16B)。まとめると、こうしたデータは、変異型IL-7 W142H分子及び抗PD-1抗体を含む二機能性分子が、PD-1(+)CD127(+)疲弊T細胞を選択的及び相乗的にシス活性化するという利点を裏付ける。
【0374】
(実施例8:1つのIL-7 W142Hサイトカイン及び1つ又は2つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL-7分子は、PD-1+ IL-7R+細胞へのシス活性を促進し、IL-7R T細胞増殖をin vivoで刺激する高い有効性、及びTCRシグナル伝達を再活性化する相乗的能力を示した)
次に、本発明者らは、
図17に記載の通りの、1つ又は2つの抗PD-1結合ドメイン及び1つ又は2つのIL7 W142H変異を含む二機能性分子の複数の構造の生物学的活性を設計及び比較した。
【0375】
構築物1は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含み(構築物1は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2とも呼ばれる)、この分子は、実施例1~7で試験した構築物に対応する。この分子は、BICKI-IL-7 W142Hとも呼ばれる。実施例では、BICKI-IL-7 WTと呼ばれる対照分子は、構築物1に対応するが、野生型IL-7を有する。
【0376】
構築物2は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物2は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。
【0377】
構築物3は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物3は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。抗PD-1*1と呼ばれる対照構築物は、構築物3と類似しているが、IL-7バリアントを欠いている。
【0378】
構築物4は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物4は、抗PD-1*1 IL- W142H*2とも呼ばれる)。
【0379】
構築物2、3、及び4は、IgG1 N298Aアイソタイプを有するように遺伝子操作し、重鎖AのCH2及びCH3にノブを、重鎖BのCH2及びCH3にホールを作出するために、Fc部分のアミノ酸配列を変異させた。
【0380】
抗PD-1 IL7構築物は全て、ELISAアッセイで示されているように、PD-1受容体に対して高い親和性を有する(
図18A及びTable 7(表16))。2つの抗PD-1アーム(抗PD-1*2)を有する抗PD-1 IL-7分子は、IL-7を有しない抗PD-1*2と比較して同じ結合有効性(等しいEC50)を有する。同様に、1つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL-7分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL7 W142H*2)は、IL-7を有しない抗PD-1*1と比較して同じ結合有効性を示し、抗PD-1 IL7のEC50は86及び111nMに等しいのに対して、抗PD-1のEC50は238nMであった。こうしたデータにより、IL-7の融合は、試験した構築物に関わりなく、PD-1結合を妨害しないと考えられることが示される。
【0381】
【0382】
更に、PD-L1/PD-1アンタゴニストバイオアッセイ(
図18B)は、1つ又は2つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL7分子が、PD-L1とPD-1受容体との結合を遮断する有効性が高いことを示している。構築物3及び4から抗PD-1の一方のアームを除去したが、抗PD-1*1 IL7構築物は全て、高いアンタゴニスト特性を示す。構築物3及び4のEC50は、抗PD-1*2 IL7構築物と比較して2.5倍減少した活性が計算されたに過ぎなかった(Table 8(表17))。
【0383】
【0384】
次に、本発明者らは、Biacoreアッセイ及びELISAアッセイを使用して、CD127受容体に対する異なる構築物の親和性を評価した。構築物2及び3から1つのIL-7分子を除去したため、IL-7ヘテロ二量体構築物と比較して、こうした分子では、CD127受容体に対する結合能力がより低く、pSTAT5の活性化がより低いことが予想された。しかしながら、本発明者らは、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1分子が、CD127受容体に対して、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2(BICKI-IL-7 W142H)と比較して同様の親和性、及びIL-7野生型形態を含む抗PD-1 IL7二機能性分子と比較してより低い親和性を有することを観察した(
図19A及びTable 9(表18))。驚くべきことに、抗PD-1*2 IL7 W142H*1分子は、IL-7野生型形態を含むPD-1 IL7二機能性分子と同様の高いpSTAT5活性を示す(
図19B)。こうした観察に基づくと、W142H IL-7変異と組み合わせた単量体形態のIL-7が、ヒトT細胞へのIL-7シグナル伝達を促進するためのIL-7分子の最適な立体構造を可能にするという仮説を立てることができる。IL7が1つしかない場合でも、W142H IL-7変異を有する分子は、2つのサイトカインを有するIL7 wtを有する分子と同様に良好な活性化効果(pSTAT5)を示す。この結果は、野生型IL-7よりも受容体に対する親和性がより低いIL-7バリアントの文脈で驚くべきものである。
【0385】
1つのIL-7 W142H変異に融合された1つの抗PD-1アームで構築された抗PD-1 IL7分子でも同様の結論が導き出された。抗PD-1*2 IL-7 WT*2構築物、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1構築物、及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*1構築物でも、同様の及び同等の高いpSTAT5活性が得られた(
図19C)。
【0386】
【0387】
様々な抗PD-1 IL-7構築物の有効性を決定するために、in vivo実験を実施した。1用量の抗PD-1 IL-7分子を、同価モル濃度(34nM/kg)でマウスに注射した。処置後4日目に、CD4T細胞増殖及びCD8 T細胞増殖を、Ki67マーカーを使用してフローサイトメトリーにより定量化した。
図20は、単一のW142H変異を有する抗PD-1 IL7分子(抗PD-1*2 IL-7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*1)又は単一のPD-1価及び2つのIL7 W142Hサイトカインを有する抗PD-1 IL7分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*2)は、CD8 T細胞増殖の促進に高い有効性を示し、CD4 T細胞増殖にはより低い程度の有効性を呈することを示す。
【0388】
抗PD1抗体(1価又は2価)及び1つ又は2つのIL7変異サイトカインを含む二機能性分子が、TCR媒介姓シグナル伝達を再活性化する能力を決定するために、NFATバイオアッセイを実施した。
図21Aは、2つの抗PD-1アーム及び1つのIL-7サイトカインで構築された二機能性分子が、抗PD-1抗体単独と比較して、NFATの活性化を増強することを示す。これは、TCR媒介姓シグナル伝達を強化する薬物の相乗的活性が、1つのIL-7サイトカインのみで構築された抗PD-1 IL-7二機能性分子で保存されていることを示す。
図9Aに見られるように、細胞を抗PD1及びIL7の組合せで処置しても、そのような相乗効果はなかった。
【0389】
加えて、本発明者らは、次に、1つの抗PD-1価(抗PD-1*1)のみで設計した抗PD-1 IL-7分子の活性を評価し、抗PD-1*1 IL-7 W142H構築物(抗PD-1*1 IL7 W142H*1及び*2)は相乗的活性を維持するが、PD-1*1+アイソタイプIL-7 W142H*2処置の組合せでは、TCRシグナル伝達(NFAT活性化)刺激の有効性がより低いことを実証した(
図21B)。
【0390】
最後に、異なる抗PD-1 IL-7構築物の特異的なシス標的化及びシス活性を、共培養アッセイで解析した。U937 PD-1+CD127+細胞を、PD-1- CD127+細胞と混合し(1:1比)、次いで漸増用量の異なる構築物と共にインキュベートした。結合及びIL-7Rシグナル伝達(pSTAT5)を、フローサイトメトリーにより定量化した。結合及びpSTAT5活性化のEC50(nM)を、各構築物並びに各PD-1+及びPD-1-細胞集団について決定した(
図22A及び
図22B)。本発明者らは、多様な抗PD-1 IL-7変異型分子(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*2)が、IL-7Rと実質的に優先的に結合してPD-1+細胞内にシグナル伝達し、異なる代表的な構造では、PD-1+細胞内へのIL7Rシグナル伝達pSTAT5を著しく活性化させることを確認した。
【0391】
(実施例9. 1つ又は2つの抗PD-1アーム及び1つ又は2つのIL7 W142Hサイトカインで構築された抗PD-1 IL-7分子は、in vivoで良好な薬物動態特性を有する)
図17に記載のもの等の抗PD-1 IL-7二機能性分子構築物2、3、及び4の薬物動態研究を評価した。ヒト化PD1 KIマウスに、1用量の抗PD-1 IL-7分子(34.4nM/kg)を腹腔内注射した。血漿中薬物濃度を、ヒトIgGに特異的なELISAにより解析した(
図23)。また、曲線下面積を計算した(Table 10(表19)を参照)。曲線下面積は、各構築物の経時的な総薬物曝露量を表す。抗PD-1*2 IL-7 W142H*1、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1、及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*2構築物は、抗PD-1*2 IL7WT*1と比較して非常に有利に増強されたPK特性を示した。抗PD-1*1 IL7WT*2と比較して、2.8~19倍高いCmaxが観察された。重要なことには、抗PD-1*1 IL7 W142H*1分子、抗PD-1*1 IL7 W142H*2分子は、in vivoでの十分なPK値に相当する高い薬物濃度(11~15nM)が、少なくとも96時間維持されるが、抗PD-1*2 IL7WT*2分子は、血漿中ではわずか2nMしか検出されない。抗PD-1*2 IL-7 W142H*1の残留薬物濃度は、抗PD-1*2 IL7WT*2濃度の2.5倍である。血漿中薬物曝露は、多くの場合、in vivoでの有効性と相関する。ここで、本発明者らは、1つアームの抗PD-1で構築されたすべての抗PD-1 IL-7 W142H分子が、単回注射後の長期薬物曝露を可能にすることを実証している。これは、こうした構築物がin vivoでより高い生物活性を誘導することになることを示唆する。
【0392】
【0393】
また、IL7野生型を有するある特定の分子PD-1*2 IL7WT*2は、IL7 W142Hと比較して良好なPK(特に静脈内注射の場合)を示すことができるとしても、IL7 W142Hを有する分子は、更により良好な他の特性:T細胞のより良好な増殖(
図20に示されている通り、CD4、CD8)、及びPD1-細胞と比べて非常により良好なPD1+細胞の特異的標的化(
図15Bで説明されている通り、10~50倍)を示すことも言及される。
【0394】
全体として、効果的な医薬品使用のために十分過ぎる程十分なPK(好ましくは24時間後に少なくとも10nM)を示す、変異型IL7(特にW142H)を有する二機能性分子の複数の構築物が得られ、それらは、更に以下を示す:
- LT増殖に対して実質的な有利な効果を有すること、
- 二機能性分子の抗PD1部分と二機能性分子のIL7部分との間の、T細胞に対する相乗的な驚くべき効果のおかげで、PD-1+細胞へのpSTAT5 IL7Rシグナル伝達によるLT活性化の点での高性能であること、
- PD1- T細胞よりもPD1+ T細胞の特異的標的化が高いこと(変異型IL7を有していない二機能性分子よりも非常に高い)、及びPD-1- T細胞ではなくPD-1+疲弊初代T細胞へのIL-7Rシグナル伝達をシス活性化し、これは腫瘍処置にとって実質的な利点であること、並びに
- PD-1/PD-L1相互作用の効果的なアンタゴニスト効果(PD1に対する結合だけでなく)を有すること。
【0395】
材料及び方法
PD1結合ELISA
活性ELISAアッセイのため、組換えhPD1(Sino Biologicals社、Beijing、China;照会10377-H08H)を、プラスチック上、0.5μg/mlで炭酸塩バッファー(pH9.2)において固定化し、精製した抗体を加えて、結合を測定した。インキュベート及び洗浄後、ペルオキシダーゼ-標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)を加え、従来方法により明らかにした。
【0396】
ビアコア法を使用した親和性測定
CD127(A)又はCD132(B)についてのその重鎖上のIL-7に融合したIgGのビアコアによる親和性評価。CD127(Sinobiological社、10975-H03H-50)を、CM5バイオチップ上に、20μg/mlで固定化し、示したタンパク質を、連続する濃度(0.35;1.1;3.3;10;30nM)で加えた。親和性を、2つの状態反応モデルを使用し、解析した。CD132に対するIL-7の親和性を評価するために、CD127を、CM5バイオチップ上に固定化し、各IL-7構築物を、濃度30nMで注射した。CD132受容体(Sinobiological社10555-H08B)を、異なる濃度、例えば、31.25、52.5、125、250、500nMで加えた。定常状態親和性モデルを、解析のため使用した。
【0397】
CD127結合ELISA
CD127結合を、サンドイッチELISA法により評価した。抗体骨格により標的化した組換えタンパク質を固定化し、次に、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino ref 10975-H08H)と予めインキュベートしたIL-7融合抗体を、インキュベートした。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体(MBL #D291-6)とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(JI 016-030-084)の混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。
【0398】
pSTAT5解析
ヒト健常ボランティアの末梢血から単離したPBMCを、組換えIL-7、又はIL-7融合IgGと15分間インキュベートした。シス活性を決定するため、CD127+ PD-1+を形質導入したU937細胞を、CD127+のみを形質導入したU937細胞と混合した。細胞を1:1比で混合し、組換えIL-7で又は本明細書に記載のIL-7構築物に融合された異なるIgGで処理した。各細胞サブセットを、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で標識してから、共培養した。次に、細胞を固定化し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、CD3+T細胞集団におけるMFI pSTAT5を計算することにより、得た。
【0399】
細胞結合解析
IL-7分子に融合されたIgGのシス結合を決定するため、CD127+ PD-1+を形質導入したU937細胞又はCHO細胞を、CD127+のみを形質導入したCHO又はU937と混合した。細胞を1:1比で混合し、本明細書に記載のIL-7構築物に融合された異なるIgGで処理した。各細胞サブセットを、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で標識してから、共培養した。20分間のインキュベーション後、異なるIgG融合分子の結合を、抗IgG-PE抗体(Biolegend社、クローンHP6017)で検出し、フローサイトメトリーで解析した。
【0400】
in vivoでのIgG融合IL-7の薬物動態
IL-7免疫サイトカインの薬物動態を解析するために、1回用量の分子を、BalbcRJマウス(メス6~9週)又はC57bl6JrJマウス(メス6~9週)に眼窩内又は腹腔内注射した。血漿中の薬物濃度を、Il67融合IgGを含有する固定化抗ヒト軽鎖抗体(クローンNaM76-5F3)希釈血清を使用し、ELISAにより決定した。検出を、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)で行い、従来方法により明らかにした。
【0401】
Promega細胞ベースのバイオアッセイを使用したT細胞活性化アッセイ
T細胞活性化を回復させる抗PD-1抗体の能力を、Promega PD-1/PD-L1キット(照会J1250)を使用し、試験した。2つの細胞株、(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATにより誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを刺激するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を使用した。細胞を共培養するとき、PD-L1/PD-1相互作用は、TCRが仲介する活性化を阻害し、これにより、NFAT活性化及びルシフェラーゼ活性を遮断する。抗PD-1抗体の添加は、PD-1が仲介する阻害性シグナルを遮断し、これが、NFAT活性化及びルシフェラーゼ合成及び生物発光シグナルの放出を導く。実験を、製造元の推奨に従い行った。PD-1抗体の連続希釈液を試験した。PD-L1+標的細胞の共培養の4時間後、PD-1エフェクター細胞及び抗PD-1抗体、BioGlo(商標)ルシフェリン基質を、ウェルに加え、プレートを、Tecan(商標)ルミノメーターを使用し、読み取った。
【0402】
in vivo増殖
二機能性分子の1回用量(34nM/kg)を、皮下MC38腫瘍を有するC57bl6JrJマウス(メス6~9週)に腹腔内注射した。処理後4日目に、血液MC38腫瘍を収集し、T細胞を、抗CD3、抗CD8、抗CD4抗体、及び抗ki67抗体で染色して、フローサイトメトリーにより増殖を定量化した。
【0403】
抗体及び二機能性分子
以下の抗体及び二機能性分子を、本明細書において開示する異なる実験において使用した:ペムブロリズマブ(Keytrudra、Merck社)、ニボルマブ(Opdivo、Bristol-Myers Squibb社)、及び配列番号24において定義する可変重鎖(VH)及び配列番号28において定義する可変軽鎖(VL)を含む抗PD1ヒト化抗体又は配列番号71において定義する重鎖及び配列番号72において定義する軽鎖を含む抗PD1キメラ抗体を含む本明細書において開示する二機能性分子。
【0404】
構築物1は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物1は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2とも呼ばれる)。この分子は、実施例1~7で試験した構築物に対応する。この分子は、BICKI-IL-7 W142Hとも呼ばれる。特に、構築物1は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)、又は配列番号71に規定の通りの重鎖及び配列番号72に規定の軽鎖を含む抗PD1キメラ抗体を含む。また、この分子は、配列番号5に記載のもの等のIL7バリアントを含む。
【0405】
実施例では、BICKI-IL-7 WTと呼ばれる対照分子は、構築物1に対応するが、野生型IL-7を有する。これは、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、IgG4 S288Pアイソタイプを有する。
【0406】
別の対照分子は抗PD1*2である(IL7を一切有さない)。この分子は、配列番号79に規定の通りの重鎖及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0407】
構築物2は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物2は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、構築物2は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、特に、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖(ホール)又は配列番号81に規定の通りの重鎖(ノブ)及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0408】
構築物3は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物3は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、構築物3は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖、配列番号75に規定の通りのFc領域及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0409】
抗PD-1*1と呼ばれる対照構築物は、構造3と類似しているが、IL-7バリアントを欠いている。そのような対照は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号81に規定の通りの重鎖、配列番号75に規定の通りのFc領域、及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0410】
構築物4は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物4は、抗PD-1*1 IL- W142H*2とも呼ばれる)。特に、構築物4は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖、配列番号76に規定の通りのIL-7 W142Hに結合したFc領域、及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0411】
構築物2、3、及び4は、IgG1 N298Aアイソタイプを有するように遺伝子操作し、重鎖AのCH2及びCH3にノブを、重鎖BのCH2及びCH3にホールを作出するために、Fc部分のアミノ酸配列を変異させた。抗PD-1 IL-7及び抗PD-1*1構築物は全て、IgG4 S288Pアイソタイプで構築した抗PD-1*2構築物(IL-7を欠如する)及び抗PD-1*2 IL7wt*2(BICKI-IL-7 WT)を除いて、IgG1N298A変異型アイソタイプを含む。
【配列表】
【国際調査報告】