(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(54)【発明の名称】液滴のための基板
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20230208BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230208BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230208BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230208BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20230208BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
G01N1/28 U
C03C23/00 D
C03C15/00 Z
C12Q1/02
C12M1/34 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537163
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086577
(87)【国際公開番号】W WO2021122847
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019219913.5
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505469573
【氏名又は名称】エルペーカーエフ レーザー ウント エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】マルテ・シュルツ-ルーテンベルク
(72)【発明者】
【氏名】オクタヴィア・オスターマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・レーゼナー
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B063
4G059
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD09
2G052AD29
2G052AD49
2G052CA02
2G052CA18
2G052CA39
2G052DA05
2G052GA11
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA03
4B029FA04
4B063QA18
4B063QQ01
4B063QR71
4B063QS39
4G059AA01
4G059AC01
4G059BB04
4G059BB16
(57)【要約】
本発明は、ガラス板の形状の基板を供給し、ガラス板には、凹部が形成されており、凹部は、基板の厚さ全体にわたって延在し、その互いに向かい合う末端の横断面は、ガラス板の互いに向かい合う表面の平面において開かれている。従って、凹部は、ガラス板を通る通り穴を形成し、5μmから1000μmの内径を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液体の滴(10)を、第1のガラス板(1)の凹部(2)に導入するステップを有する、液滴(10)を処理するための方法であって、前記凹部は、前記第1のガラス板(1)の厚さ全体にわたって延在し、5μmから1000μmの内径を有しており、前記凹部(2)がV字形に延在しているか、又は、前記内径は、前記第1のガラス板(1)の互いに向かい合う表面の平面に位置する末端の横断面から、前記第1のガラス板(1)の表面の平面とは間隔を置いて位置している、より小さい内径の方に向かって先細になっている方法。
【請求項2】
前記液体が、ガラスと反応する成分を含んでおり、前記液体の残留成分を除去するために、前記第1のガラス板(1)の洗浄又は乾燥が引き続いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
洗浄又は乾燥の後で、少なくとも1つのさらなる液体の滴が、前記凹部(2)に導入されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記凹部(2)に導入された液体の内少なくとも1つの液体が、反応性成分(20)として、前記凹部(2)内で結合される結合分子を含んでおり、引き続いて、前記反応性成分(20)によって結合される、前記反応性成分(20)に類似した検体を含むさらなる液体が前記凹部(2)に導入されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記凹部(2)に導入された液体の内少なくとも1つの液体が、少なくとも1つの生体細胞(11)を含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のガラス板(1)の互いに向かい合う表面が、塗布された疎水性コーティングを有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ガラスと反応する前記成分が、シラン基に加えて反応基を含むシラン化合物であることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のガラス板(1)の表面全体に液体が塗布されることによって洗浄が行われ、前記第1のガラス板(1)に圧力勾配が加えられることを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体の滴の導入が、前記凹部(2)の末端の横断面(3a)への各滴(13)の選択的な滴下によって行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各滴(13)の選択的な滴下が、供給管(12)からの各滴(13)の押し出しによって行われ、前記供給管は、前記第1のガラス板(1)と間隔を置いて延在し、それぞれ前記凹部(2)の末端の横断面(3a)の上方に位置していることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体の滴(10)の前記凹部(2)への導入が、滴状の液体(13)を陽圧を用いて、前記第1のガラス板(1)と間隔を置いて位置する供給管(12)から押し出すことによって行われることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体の滴(10)の前記凹部(2)への導入が、前記第1のガラス板(1)の表面にエッチングされた流路(19)を用いて行われ、前記流路は、専ら前記第1のガラス板(1)の表面の平面から、前記ガラス板(1)の厚さの好ましくは10%から50%である前記平面に隣接する厚さ部分内まで延在し、前記凹部(2)の内の少なくともそれぞれ1つの凹部に合流することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
滴(10)の体積の一部が、前記第1のガラス板(1)の表面にエッチングされた流路(19)を用いて前記凹部(2)から除去され、前記流路は、専ら前記第1のガラス板(1)の表面の平面から、前記ガラス板(1)の厚さの好ましくは10%から50%である前記平面に隣接する厚さ部分内まで延在し、前記凹部(2)の内の少なくともそれぞれ1つの凹部を始点とすることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液滴の導入に続いて、前記第1のガラス板(1)の表面に少なくとも1つの第2のガラス板(5)が配置され、前記液滴(10)によって放出されるビームの検出が行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
供給管(12)を用いて、気体状又は液状の流体が、選択的に前記凹部(2)の内少なくとも1つの凹部に向かって加速し、滴が、前記供給管(12)の反対側で、前記第1のガラス板(1)と間隔を置いて配置されたパッド(14)に移されることによって、前記滴が前記凹部(2)から除去されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
それぞれ最大で前記凹部(2)の容積が有する体積である体積を有する前記液滴(10)が導入され、前記凹部(2)の末端の横断面(3a、3b)が、最大で前記液滴(10)の表面張力によって保持される程度において突出していることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
検出のために、励起放射が前記凹部(2)に照射されることを特徴とする、請求項1から16にいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記凹部(2)に光が照射され、前記凹部(2)内に配置された前記液滴(10)を始点とするビームが検出されることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体の滴(10)の導入後に、前記第1のガラス板(1)が、変化した湿度、変化した温度及び/又は変化した組成を有する雰囲気に曝露され、導入された前記液滴(10)の体積が、水の蒸発によって減少する、又は、水の吸収によって増大することを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液滴(10)の導入後に、第2の板(5)が、前記第1のガラス板(1)の少なくとも1つの表面に配置され、これによって、前記第1のガラス板(1)の前記凹部(2)が間隔を置いて覆われることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第2の板(5)が、前記第1のガラス板(1)の少なくとも1つの表面に配置されており、前記第2の板は、前記第1のガラス板(1)の前記凹部(2)を間隔を置いて覆っており、前記第2の板(5)は温度調節が行われ、並びに/又は、液体及び/若しくは気体が、前記第1のガラス板(1)と前記第2の板(5)との間の間隔に導入されることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液滴(10)の導入前に、第2の板(5)が、前記第1のガラス板(1)の表面に配置されており、前記液滴(10)の導入後に、前記第1のガラス板(1)と前記第2のガラス板(5)との間の空間に陰圧が加えられることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第2の板(5)が通り穴を有さないことを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第2の板(5)が第2の凹部(6)を有しており、前記第2の凹部は、それぞれ前記第1のガラス板(1)の前記凹部(2)の末端の各横断面(3a、3b)を、間隔を置いて覆っていることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のガラス板(1)が、励起放射に関して不透過であることを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第2の板(5)が、ガラス板、ケイ素から成る板、又は、プラスチックから成る板であることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
別個の液滴(13)内の反応性成分(20、21、22a、22b、22c)が、連続的に前記凹部に導入され、任意で反応性成分を含む液滴の各導入の後に、フラッシング液として、前記反応性成分(20、21、22a、22b、22c)を含まない前記滴(13)が前記凹部(2)に導入されること、及び/又は、前記反応性成分(20、21、22a、22b、22c)に関する励起放射が、前記凹部(2)に照射されることを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
凹部(2)を有する第1のガラス板(1)の使用であって、前記凹部は、前記第1のガラス板(1)の厚さ全体にわたって延在し、5μmから1000μmの内径を有しており、前記凹部(2)が、前記凹部(2)に保持される液滴(10)に関する保持装置として、V字形に延在しているか、又は、前記内径が、前記第1のガラス板(1)の互いに向かい合う表面の平面に位置する末端の横断面から、前記第1のガラス板(1)の表面の平面と間隔を置いて位置している、より小さい内径の方に向かって先細になっており、前記凹部(2)の壁は、親水性であり、任意で前記第1のガラス板(1)の表面の内少なくとも1つの表面が、疎水性コーティングを有している、使用。
【請求項29】
前記第1のガラス板(1)の少なくとも1つの表面に、第2の板(5)が配置されており、前記第2の板は、前記第1のガラス板(1)と間隔を置いて、前記第1のガラス板の凹部(2)を覆っていることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記第1のガラス板(1)の両方の表面に、それぞれ第2の板(5)が配置されており、前記第2の板は、それぞれ第2の凹部(6)を有しており、前記第2の凹部は、前記第1のガラス板(1)の前記凹部(2)を、前記凹部(2)の末端の横断面(3a、3b)と位置合わせして、かつ、間隔を有して覆っていることを特徴とする、請求項28又は29に記載の使用。
【請求項31】
前記凹部(2)が、前記凹部の横断面が最小である領域において結合された反応性分子、特に少なくとも1つのシラン化合物を有することを特徴とする、請求項28から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記凹部(2)の横断面が最小である領域が、前記第1のガラス板(1)の疎水性コーティングが設けられた表面の平面に位置することを特徴とする、請求項28から31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記第1のガラス板(1)の表面が、前記表面上に配置された部材から自由であり、前記部材は、隣り合う凹部(2)の間に配置されている、及び/又は、隣り合う前記凹部(2)間の間隔よりも近くに配置されていることを特徴とする、請求項28から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記第1のガラス板(1)の表面の内少なくとも1つの表面において、流路(19)がエッチングされ、前記流路は、専ら前記第1のガラス板(1)の表面の平面から、前記ガラス板(1)の厚さの好ましくは10%から50%である前記平面に隣接する厚さ部分内まで延在し、前記凹部(2)の内の少なくともそれぞれ1つの凹部に合流することを特徴とする、請求項28から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記第1のガラス板(1)の、前記凹部の内の少なくともそれぞれ1つの凹部に合流する前記流路(19)がエッチングされた表面とは反対側の表面に、専ら前記第1のガラス板(1)の表面の平面から、前記ガラス板(1)の厚さの好ましくは10%から50%である前記平面に隣接する厚さ部分内まで延在し、前記凹部(2)の内の少なくともそれぞれ1つの凹部を始点とする流路がエッチングされることを特徴とする、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
供給管(12)を用いて、気体状又は液状の流体が、選択的に前記凹部(2)の内少なくとも1つの凹部に向かって加速し、滴(15)が、前記供給管の反対側で、凹部(1)から排出され、前記第1のガラス板(1)と間隔を置いて配置されたパッド(14)に移されることを特徴とする、請求項28から35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
液滴(10)を受容するための凹部(2)を有する、第1のガラス板(1)で基板を製造するための方法であって、前記凹部(2)は、当初の第1のガラス板(1)にレーザービームを点状に照射した後、前記第1のガラス板(1)を、前記凹部(2)の内径が5μmから1000μmになるまで、かつ、前記凹部(2)が前記第1のガラス板(1)の厚さ全体にわたって延在するまでエッチングすることによって形成され、エッチングは、前記第1のガラス板(1)が100μmから1000μmの厚さを有するまで行われ、前記第1のガラス板(1)のエッチングは、前記凹部(2)の内径が、前記第1のガラス板(1)の互いに向かい合う表面の平面に位置する末端の横断面から、前記第1のガラス板(1)の表面の平面と間隔を置いて位置している、より小さい内径の方に向かって先細になるまで行われ、エッチングの後、任意で、前記第1のガラス板(1)の少なくとも1つの表面が、疎水性コーティングでコーティングされる、方法。
【請求項38】
V字形の凹部(2)を形成するために、前記第1のガラス板(1)の表面の内1つの表面が、エッチングの前にエッチングレジストでコーティングされ、エッチングの後に前記エッチングレジストが除去されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
エッチングの後で、前記凹部(2)に、ガラスと反応する成分を含む液体の体積が導入され、前記体積は、前記凹部の末端の横断面開口部の間における前記凹部の容積と最大で同じであるか、又は、前記容積よりも小さいことを特徴とする、請求項37又は38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴のための多数の凹部を有するガラス製の基板と、凹部に配置された液滴の光検出を伴う分析方法と、に関する。さらに本発明は、励起ビーム若しくは検出ビームの照射、並びに/又は、液体内への成分の導入及び/若しくは液体内からの成分の排出による液滴の任意の処理を伴う、液滴をガラスの凹部に配置するための方法に関する。当該凹部は、小さい容積を有しており、体積の小さい液滴を保持するという利点を有しているので、凹部内で保持される液滴の位置は容易に決定可能であり、各液滴は容易に光学的に検出され得る。
【背景技術】
【0002】
液滴のための基板としては、V字形、円筒形又は角を有する止まり穴を有するガラス板及びプラスチック板が知られている。光検出のために、当該止まり穴は、板の上面又は下面から照射される。この際、板の下面は、高い透過率を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、液滴を受容し得る凹部を有する代替的な基板を提供すること、並びに、光検出のため、及び/又は、液体を当該基板内の凹部に導入するための代替的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、本課題を、請求項に記載の特徴によって解決し、特に、ガラス板の形の基板を提供する。ガラス板には、凹部が形成されており、当該凹部は、基板の厚さ全体にわたって延在しており、その互いに向かい合う末端にある横断面は、ガラス板の互いに向かい合う表面の平面において開かれている。従って、当該凹部は、ガラス板を通る通り穴を形成している。凹部は、例えば5μmから1000μm、例えば10μmから又は20μmから、800μmまで又は500μmまで又は200μmまでの内径を有している。一般的に、凹部の長手方向中心軸に対して垂直な横断面は、好ましくは円形である。
【0005】
内径は、ガラス板の厚さを通じて一定であってよいか、又は、ガラス板の互いに向かい合う表面の平面に位置する末端の横断面から、ガラス板の表面の平面から間隔を置いて位置している、例えばガラス板の厚さの10%から50%だけ表面の内の1つから離れて位置している、より小さい内径の方へ先細になっていてよい。この際、当該凹部は、ガラス板の表面から、より小さい内径の方へ、円錐形に延在し得る。代替的に、当該凹部は、V字形に延在することが可能であり、従って、そのより小さい内径は、ガラス板の表面の平面において、末端の横断面開口部を形成し、より大きい内径は、反対側の末端の横断面開口部を形成している。この際、エッチングパラメータとガラスの種類とは、ガラス板の第1の表面を始点として、ガラス板の表面の間の点まで減少した後、第2の表面に向かって再び増大する直径を有する凹部が生じるように、互いに調整される。
【0006】
その厚さ全体にわたって貫通する凹部を有するガラス板は、凹部の内壁が、検出のための液滴を保持するという利点を有しており、光検出は、ガラス板の一部を通過するように照射せずとも、液滴を通じて機能し得る。なぜなら、ガラス板に通り穴として形成された凹部は、ガラス板の一部が凹部の横断面を覆うことなく、液滴を保持するからである。凹部を片側で閉じる底部が存在しないことによって、ガラス板を通る光学的な影響を受けずに、例えば凹部の長手軸に対して平行又は長手軸に沿って中央で、又は、ガラス板の表面に対して垂直に、凹部を通過する照射が可能になる。
【0007】
凹部の内径が、ガラス板の表面と間隔を置いて位置している、より小さい内径に向かって先細になっている実施形態は、液滴の体積が、その末端の横断面開口部の間における凹部の容積より小さい場合でも、液滴をより小さい内径の領域に配置するという利点を有している。
【0008】
総じて、当該方法において、液滴の体積は、凹部の末端の横断面開口部の間における凹部の容積よりも大きくてよい。なぜなら、液滴は、その表面張力によって、その凹部又はガラス板の表面から突出する体積部分においても保持されるからである。凹部の横断面開口部が配置されたガラス板の少なくとも一方の表面、好ましくは両方の表面が、疎水性コーティングを有している実施形態においても、液滴の体積は、凹部の容積よりも大きくてよい。疎水性コーティングは、例えばガラス板の表面の疎水性シラン処理によって得られる。これによって、液滴が他の凹部に「あふれ出る」こと、従って、凹部間のクロスコンタミネーションも防止される。
【0009】
当該方法における使用に関して、当該ガラス板は、凹部を区切る壁が親水性であり、特にコーティングされていないガラスから構成されているという利点を有している。凹部の均質な親水性の壁に関しては、凹部が形成されるべき連続的な表面を有する当初のガラス板のあらゆる領域が、レーザービームによって通過された後、当該ガラス板がエッチングされるというエッチング方法によって、凹部が形成されていることが好ましい。なぜなら、当該方法では、凹部が、当初のガラス板を通るように放射されたレーザービームの光路に沿って、エッチング浴による機械的影響を受けずに形成されるからである。
【0010】
任意で、凹部の末端の横断面開口部が配置されたガラス板の少なくとも一方の表面又は両方の表面には、好ましくは疎水性であるコーティングが設けられている。当該コーティングは、例えばガラス表面で結合したフルオロアルキルシラン及び/又はアルキルシランから構成され得る。この際、シランのケイ素原子は、ガラス表面の1つ、2つ又は3つの化合物と共有結合していてよい。シランの有機側基は、飽和していてもよいし、又は、不飽和でもよく、例えば少なくとも1つのアルケニル残基又はアルキニル残基を含み得る。側基は、脂肪族(非環式及び/又は環式)であってよく、少なくとも単純に不飽和及び/又は芳香族であってよい。好ましくは、ガラス板の少なくとも一方の表面のコーティングは疎水性であり、例えばヘキサメチルジシラザン、(3,3,3‐トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、ジ‐n‐オクチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ‐1,1,2,2‐テトラ‐ヒドロデシル)トリクロロシラン、ヘキサデカフルオロドデカン‐11‐en‐1‐yl‐トリクロロシラン、又は、これらの内少なくとも2つの混合物のコーティングによって形成され得る。ガラス板の表面の疎水性コーティングは、部分的に凹部から突出する液滴が、隣接する表面にわたってまでは大きく広がらないという利点を有している。任意で、ガラス板は、専ら貫通する凹部が、そのより大きな末端の横断面開口部を有している表面上に、疎水性コーティングを有しており、例えばガラス板の表面の平面におけるより大きな末端の横断面開口部から、ガラス板の反対側の表面の平面に位置する、より小さな末端の横断面開口部に向かって延在する円錐形の凹部の場合である。
【0011】
任意で、ガラス板は、例えば液滴から放出される、検出のために照射される波長、又は、検出のために吸収される波長に関して不透過であるガラスから構成されていてよい。例えば、ガラス板は、アルカリシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルカリホウ酸塩ガラス又はアルミノケイ酸ガラスから構成可能であり、並びに/又は、例えば顔料の成分、鉄、及び/若しくは金属酸化物によって着色されていてよい。
【0012】
好ましくは、ガラス板の厚さ全体にわたって貫通する凹部が形成されているガラス板の一方の表面、又は向かい合う両方の表面には、それぞれ第2の板が配置されており、第2の板は、例えばガラス板、ケイ素から成る板、又は、プラスチックから成る板であってよい。ここでは、その厚さ全体にわたって貫通する凹部が形成されているガラス板は、第1のガラス板とも称される。第1のガラス板、特にその向かい合う表面は、ガラスから構成されているか、又は、表面にコーティングを有さなくてよく、これら向かい合う表面の間には、貫通する凹部が延在している。
【0013】
第1のガラス板の表面に接して配置された第2の板、例えばガラス板、ケイ素板又はプラスチック板は、第2の凹部を有することが可能であり、第2の凹部はそれぞれ、第1のガラス板の凹部の末端の横断面開口部を、間隔を有して覆っている。好ましくは、第2の板の第2の凹部は、末端の横断面開口部を、末端の横断面の縁部から第1のガラス板の凹部に関して径方向の間隔と、第1のガラス板の末端の横断面の平面から、又は、第1のガラス板の表面の平面から第1のガラス板の凹部に関して軸方向の間隔とを有して覆っている。第2の凹部と末端の横断面の縁部との径方向間隔は、例えば5μmから500μmであり得る。第2の凹部と末端の横断面の平面との軸方向間隔は、例えば5μmから500μmであり得る。第2の凹部は、第2の凹部が形成されるべき領域における第2の当初の板、特に第2の当初のガラス板の領域のレーザー照射と、引き続いて行われるエッチングとによって形成され得る。
【0014】
一般的に、第2の板の第2の凹部及び/又は第1のガラス板に隣接する表面は、好ましくは疎水性であるコーティングを有することが可能であり、例えばアルキルシランでコーティングされる。代替的に、第2の板は、疎水性プラスチックから構成されていてもよい。
【0015】
第2の板の第2の凹部は、通り穴として構成されていてよく、第2の凹部は、第2のガラス板の第1のガラス板に対向する表面の平面において、第1のガラス板の凹部の末端の横断面の直径よりも大きな直径を有している。任意で、ガラス板、ケイ素又はプラスチックから成る板であり得る、第1のガラス板とは反対側で、第2の板と接触するか、又は、接続されている第3の板は、第2の板の通り穴を覆って閉じることが可能である。
【0016】
このような第2の板の第2の凹部は、それぞれ第1のガラス板の各凹部の末端の横断面のみを覆う形状を有し得る。この際、第2の板は、第1のガラス板に直接載置可能であり、任意で、これらの板の間に配置され、軟化の後で凝固するフリットガラスを用いて、例えばガラス-フリット接合によって、陽極接合又は融着によって、第1のガラス板と接続されていてよい。
【0017】
代替的に、第2の板の第2の凹部は、互いに接続されていてよく、例えば第2の板が第1のガラス板と間隔を置いて配置されていることによって接続され得る。このような間隔は、第2の板が、第1のガラス板に当接し、スペーサとして作用する突出した部分を有することによって形成されていてよい。代替的に、このような間隔は、第1のガラス板と第2の板との間に、例えばフリットガラス等のスペーサ材料が配置されていることによって形成されていてよく、フリットガラスは、好ましくはガラス板である第1及び/又は第2の板にペーストとして塗布された後加熱され、これによって、板、好ましくは両方のガラス板が互いに接続される。第2の板が第1のガラス板と間隔を置いて配置されている、及び/又は、第1のガラス板と接続されている実施形態において、第2の板の第1のガラス板に対向する第2の表面は、平らで閉じられていてよく、任意で疎水性コーティングが施されている。
【0018】
ガラス板内の凹部、特に第1のガラス板を完全に通過する凹部は、第1のガラス板を透過する波長のレーザービームを、第1のガラス板の表面の、それぞれ凹部が形成されるべき場所に点状に照射し、ガラス板をエッチングすることによって形成される。第2の板の第2の凹部に関して、凹部が第2の板の厚さの一部にわたってのみ延在し、従って、第2の凹部が、第2の板と一体的に構成された底部を有する場合に、エッチングは任意で終了し得る。
【0019】
当初のガラス板の表面、及び、エッチングレジストから成るコーティングが存在しない場合には、当該表面とは反対側の第2の表面も、エッチングに際して、レーザーがガラス板に照射され、レーザービームが向かって放出された場所において、隣接する領域よりも明らかに速く腐食する。従って、ガラス板の第1の表面及び場合によって第2の表面の領域は、例えばエッチングレジストから成るコーティングが存在しないので、点状のレーザー照射の場所とは間隔を置いて、比較的ゆっくりと、同形に腐食する。従って、第1のガラス板の互いに向かい合う表面は、当該表面に形成される凹部を除いて、それぞれ凹部が第1のガラス板のガラス容積内に延在する際の始点となる平面に配置された表面部分によって形成される。共通の平面に配置され、それぞれ凹部が除外された表面を形成する表面部分は、凹部の間に位置する壁の端面によって形成される。例えばエッチングレジストから成るコーティングが第1のガラス板の表面の内の1つに存在する場合、凹部は、反対側の表面を始点として、レーザービームが点状に照射された、又は、通過した場所に沿って、V字形を成して、第1のガラス板のガラス容積内に延在することも可能である。第1のガラス板の表面のいずれもがエッチングレジストでコーティングされていない場合、ガラス板の厚さにわたって砂時計形の縦断面を有する凹部が形成され得る。当該凹部は、好ましくは、例えば1°から15°の角度で、第1のガラス板の表面を始点としてその容積内に円錐形に延在している。
【0020】
レーザービームは、好ましくは、第1のガラス板上のレーザービームが照射される場所のいずれにおいても、例えば1064nmの波長を有し、好ましくは最大100ps又は最大50ps、好ましくは最大10psのパルス長を有するパルス状である。総じてレーザーは、レーザービームが当該場所の間で第1のガラス板に衝突しないように調整されている。好ましくは、レーザービームは、第1のガラス板の表面上に点状に、かつ、垂直に照射される。
【0021】
エッチングは、例えば1重量%から48重量%のフッ化水素酸、及び/又は、硫酸、及び/又は、塩酸、及び/又は、リン酸、及び/又は、硝酸、又は、水酸化カリウムを用いて、例えば140℃までの温度で行われる。
【0022】
エッチング前の当初のガラス板は、例えば800μmまで、好ましくは100μmから800μmまで、例えば300μmから500μmまでの厚さを有し、エッチング後には、50μmから700μm小さい厚さ、例えば200μmまで小さい厚さを有し得る。
【0023】
凹部がV字形又は円錐形にガラス板を通っている実施形態では、凹部のより小さい横断面開口部が配置される当初のガラス板の表面は、エッチングレジストでコーティングされていてよい。任意で、エッチングレジストを、レーザービームの照射の後又は前に、第1のガラス板の、レーザービームが照射された表面とは反対側の表面の全面に塗布してもよい。
【0024】
任意で、総じて当初の第1のガラス板は、例えばマスク及び/又はエッチングレジスト等をコーティングせずにエッチングされ得るので、当該方法は、ガラス板にエッチングレジストを塗布せず、かつ、ガラス板からエッチングレジストを除去せずに実施されるという利点を有している。総じて少なくとも第1のガラス板の第1の表面は、エッチングレジスト及びマスクを有さないままであり、エッチングレジストを用いずにエッチングされる。
【0025】
総じて好ましくは、第1のガラス板は、一体構造を有しており、凹部は、専ら第1のガラス板にわたって延在しており、好ましくは各凹部の長手方向中心軸は、第1のガラス板の互いに向かい合う両方のそれぞれ平らな表面に対して垂直である。好ましくは、第1のガラス板には、第1のガラス板の表面の平面に単独の又は少なくとも2つの凹部を含むさらなる部材は接していない。例えば、第1のガラス板の表面の平面では、隣り合う凹部の間に部材は配置されておらず、及び/又は、隣り合う凹部の間隔よりも近くには部材が配置されていない。好ましくは、第1のガラス板の表面は、当該表面上に配置された、隣り合う凹部の間に配置された、及び/又は、隣り合う凹部の間隔よりも近くに配置された部材から自由である。
【0026】
分析方法において基板を用いることは、第1のガラス板のいずれの凹部も、その横断面が第1のガラス板の材料では覆われていない液滴を受容することができるという利点を有している。従って、分析方法では、液滴は、専らその末端の横断面が開かれているか、又は、専ら凹部の壁と接触している凹部によって保持可能であり、壁によって形成される横断面は、第1のガラス板によっては覆われない。従って、分析方法では、液滴は、専らその横断面が完全に開かれている凹部によって保持されていてよい。従って、光検出のために、ビームが凹部が形成されているガラス板と相互作用を有さずに、凹部に保持された液滴を通過するようにビームが照射される。
【0027】
例えば分析方法等の方法では、例えば生体細胞と作用物質とを培養媒体に含み得る液滴は、例えば印刷方法、又は、ポンプを用いたピペットチップ等の疎水性導管を通る送出等の、液滴を形成する方法によって、第1のガラス板の凹部に導入され得る。この際、基板が、特に液体が塗布される少なくとも1つの表面に疎水性コーティングを有する場合、液体が毛管効果によっても凹部内に移動するという利点を有している。任意で、液滴は、液体が陽圧で、特に水撃を用いて、供給管から第1のガラス板の凹部の横断面開口部に向かってに加速し、これによって各液滴が凹部の末端の横断面に選択的に滴下されることで導入され、好ましくは供給管は、第1のガラス板と間隔を置いて延在しており、及び/又は、第1のガラス板と同じ若しくは異なる間隔を置いて配置される。代替的又は付加的に、液体、特にフラッシング液は、好ましくは例えば陰圧を加えること等によって、液体を反対側の表面から除去するステップを用いて、第1のガラス板の表面全体に塗布可能である。
【0028】
代替的又は付加的に、液体を、第1のガラス板の表面に形成された流路を通って凹部に導入することが可能であり、液体は、例えば流路の凹部から離れた領域に向けられている供給管を用いて供給され得る。好ましくは、このような流路は、第1のガラス板の表面の平面においてのみ開かれている横断面を有しており、少なくとも1つの凹部に合流している。流路は、例えばガラス板の表面において、エッチングによって形成されている。
【0029】
第1のガラス板の一方の表面又は両方の表面において、同一平面上に、又は、間隔を置いて配置された第2の板は、第1のガラス板の凹部に保持された液滴の隔離と、例えば細胞培養に適した雰囲気を調整するための、液滴に隣接する雰囲気の制御とを可能にする。
【0030】
総じて、エッチングの後、例えば第1のガラス板の表面の内の少なくとも1つの表面に疎水性コーティングを塗布する前又は後に、凹部には、ガラスと反応する成分を含有する液体が導入可能であり、これによって、凹部の壁との化学結合が生じる。この際、好ましくは、少なくとも第1のガラス板の、凹部のより小さい末端の横断面開口部が配置されている表面に、疎水性コーティングが設けられる。液体の成分の反応に関して、液体は、凹部内にある場合、反応を開始する、又は、加速させるために、例えば加熱され、及び/又は、照射され得る。引き続いて、任意で、液体の残留分を除去するために、第1のガラス板を洗浄する、及び/又は、乾燥させることが可能である。反応性成分として、液体は、例えばシラン基に加えて、チオール基、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、酸性基、カルボニル基、アルケン基、又は、アルキン基等の反応基を含むシラン化合物を有することが可能であり、アルケン又はアルキンは、例えばC2~C12アルケン又はアルキンである。このような反応性成分は、シラン基によってガラスと結合する反応基を生じさせ、当該反応基は、さらなる分子の結合のために利用され得る。
【0031】
任意で、反応性成分を含む液体が、凹部の末端の横断面開口部間における凹部の容積と最大で同じであるか、又は、当該容積よりも小さい体積として、凹部に導入される。凹部の容積よりも小さい液体の体積は、液体が凹部の最も横断面が小さい領域に配置され、対応して、当該領域において、反応性成分が、内壁に、任意で第1のガラス板の最も小さい横断面に隣接する表面の一部に結合することをもたらす。この際、液体の体積は、例えば凹部の容積の20%から80%、又は、30%から60%であり得る。
【0032】
当該方法は、合成方法又は分析方法であってよく、別個の液滴における反応性成分が、連続的に凹部に導入される。任意で、反応性成分を含む液滴をそれぞれ導入した後で、例えば反応性成分を含まない液滴が、フラッシング液として凹部に導入される。代替的又は付加的に、反応性成分に関する励起放射が、凹部に照射される。この際、それぞれ別個の液滴における連続する異なる反応性成分が、凹部に導入され得る。反応性成分は、例えば核酸の反応性モノマー、ヌクレオシド化合物等の、例えば合成のための成分、又は、例えば反応性アミノ酸化合物等のペプチドのモノマーであってよい。分析方法に関しては、反応性成分は、例えば結合分子等の連続的に検体を結合するようなもの、特に抗体であり、同じ又は異なる、例えば励起放射の照射に際して放出される、又は、吸収されるビームを検出することができる、結びつけられたインジケータを有する、又は、当該インジケータを有さないものであってよい。
【0033】
当該方法は、第1のガラス板の各凹部内に配置された液滴内の細胞の培養を含むことが可能であり、任意で、液滴を導入するステップ、及び/又は、凹部から液体を排出するステップを有している。この際、導入及び/又は排出される液体は、細胞培養のための媒体を含み得る。凹部に細胞を導入するために、細胞を含む媒体が、例えば供給管を用いて凹部に導入され得る。
【0034】
総じて、供給管は、細胞の検出装置を有することが可能であり、各凹部内で所定の数の細胞を有する媒体を計量するように設定されていてよい。細胞の検出装置は、例えばフローサイトメータによって形成されていてよい。
【0035】
液滴を凹部から排出するために、凹部に隣接して延在可能かつ配置可能であり、制御下で陰圧を加えられ得る導管が設けられていてよい。この際、このような導管は、第1のガラス板の表面に接して延在可能かつ配置可能であり、例えば第1のガラス板の、液体が凹部の横断面開口部に導入又は計量された表面に接して、又は、第1のガラス板の当該表面とは反対側の表面に向かって延在可能かつ配置可能である。
【0036】
代替的に、第1のガラス板は、その表面の内の一方又は両方に形成された流路を有することが可能であり、当該流路はそれぞれ、少なくとも1つの凹部に合流する。このような流路は、ガラス板の表面に対して開かれた横断面を有することが可能であり、横断面、特にその互いに向かい合う側壁は、液体を毛管効果によって吸い込むように設定されている。このような横断面は、例えば100μmから1000μm、例えば200μmから500μmの間隔で側壁を有している。
【0037】
本発明の実施形態を、図面を用いてより正確に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第1のガラス板からの本発明に係る基板の製造を、基板内に形成された凹部と共に概略的に示す図である。
【
図2】基板のさらなる実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】基板のさらに別の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4】基板のさらに別の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】基板の凹部内で細胞を培養するための方法の実施形態を概略的に示す図である。
【
図6A】液滴を選択的に導入するための方法を概略的に示す図である。
【
図6B】液滴を選択的に導入するための方法を概略的に示す図である。
【
図6C】液滴を選択的に導入するための方法を概略的に示す図である。
【
図7A】基板の実施形態と、凹部に液体を導入し、凹部から液体を排出するための方法の実施形態とを概略的に示す図である。
【
図7B】基板の実施形態と、凹部に液体を導入し、凹部から液体を排出するための方法の実施形態とを概略的に示す図である。
【
図8A】反応性成分を、それぞれ連続するステップにおいて、凹部に導入するための方法を概略的に示す図である。
【
図8B】反応性成分を、それぞれ連続するステップにおいて、凹部に導入するための方法を概略的に示す図である。
【
図8C】反応性成分を、それぞれ連続するステップにおいて、凹部に導入するための方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には、第1のガラス板1が、第1のガラス板1内に形成された凹部2に対して平行な断面において示されている。凹部2は、ガラス板1へのレーザー照射の後、ガラス板1を通るレーザー照射の経路に沿ったエッチングによって形成され、ガラス板1の厚さを完全に貫通する。末端の横断面3a、3bは、第1のガラス板1の互いに向かい合う表面の平面において開かれている。好ましい実施形態に従って、ガラス板1の少なくとも1つの表面、本図ではガラス板1の互いに向かい合う両方の表面に、例えばフルオロアルキルシラン又はメチルシラン又はエチルシランを専らガラス板の表面に、例えばミクロ接触プリンティング、パッド印刷、シルクスクリーン又はインクジェット印刷を用いて塗布することによって、疎水性コーティング4が設けられている。
【0040】
末端の横断面3aに隣接して、又は、凹部2内に配置された液滴10は、凹部2内に移動し、凹部2の末端の横断面3a、3bの間の容積がより小さい場合、末端の横断面3a、3bから突出する。
【0041】
図2は、例として、凹部2内の液滴10を示しており、液滴10は、生体細胞11を含んでいる。図示された実施形態では、第1のガラス板1のいずれの表面にも、好ましくはガラス板である第2の板5が配置されており、第2の板5は、第1のガラス板1の凹部2と位置合わせして配置された第2の凹部6を有している。それぞれ第2の凹部6を有する2つの第2のガラス板5を、その第2の凹部6で、第1のガラス板1の末端の開かれた横断面3a、3bの上方に配置する場合、凹部2と、凹部2内に保持された液滴10とは、周囲から隔離される。第2のガラス板5の第2の凹部6は、凹部2の長手方向中心軸7から径方向に間隔を置いて、かつ、長手方向中心軸7に沿って、末端の開かれた横断面3a、3bから軸方向に間隔を置いて離間しており、これによって、液滴10は、非接触に第2のガラス板5によって覆われる。
図2は、第2のガラス板5の第1のガラス板1に対向する表面が疎水性コーティングを有し得る実施形態を示している。
【0042】
図3は、第1のガラス板1の凹部2が、ガラス板1の表面の平面に位置するその末端の横断面から、当該表面と間隔を置いて位置している、より小さい内径の方に向かって先細になっている実施形態を示している。概略的な描写から明らかになるのは、導入された液滴が、毛管力によって、凹部2の最も内径の小さい領域に移動するということである。凹部2の容積を満たす液滴10は、第1のガラス板を、変化した湿度、変化した温度及び/又は変化した組成を有する雰囲気に曝露し、水を蒸発させることによって、その体積を減少させられ得る。この際、濃縮された液滴10は、液滴10内に含まれる生体細胞11と共に、凹部2の内径が最小である領域に移動することが明らかになっている。
【0043】
図4は、第1のガラス板1から成る基板の単純な実施形態を部分的に示しており、当該実施形態では、代わりに、第1のガラス板1の厚さを完全に貫通する円錐形の凹部2が形成されている。任意で、凹部2が形成されるべき場所においてレーザーパルスによって通過されたガラス板1、凹部2のより小さい末端の横断面3bが配置されているべき第1のガラス板1の表面は、エッチングの前にエッチングレジストでコーティングされ得る。凹部2に接して、又は、凹部2内に導入される液滴10が、貫通する円錐形の凹部2の実施形態においても、より小さい末端の横断面開口部の領域に配置されていることが明らかになっている。当該実施形態においても、第1のガラス板1の互いに向かい合う表面の内の一方又は両方が、疎水性コーティング4を有し得る。
【0044】
図5は、貫通する凹部2を有する第1のガラス板1を示しており、凹部2内には、例えば細胞培養のための媒体等の液体が、液体内の細胞11と共に配置されている。第1のガラス板1とは間隔を置いて、例えばガラス又はプラスチックから成る第2の板5が配置されており、間隔を置いて、又は、第2の板5上に、例えば媒体又は水等のさらなる液体17が配置されている。第2の板5と、従ってさらなる液体17とは、好ましくは特に、気体が第1のガラス板1と第2の板5との間で水蒸気飽和している温度に温度制御されている。第2の板5の温度調節のために、第2の板5に、制御された加熱装置18が配置されていてよい。
【0045】
図6はA)において、第1のガラス板1を貫通する凹部2を、凹部2内に選択的な滴下によって導入された液滴10と共に示しており、液滴10は例えば細胞11を含み得る。液滴10は、毛管力によって凹部2内に保持される。例えば細胞培養のための媒体等の液体を導入するために、供給管がノズル又はピペット12の形で、凹部2の末端の横断面3aと間隔を置いて配置されており、例えば陽圧を用いて、液滴13を横断面3aの方向に押し出す。第1のガラス板1と間隔を置いて、パッド14が配置されており、パッド14は、凹部2から流出する液体15を受容する。パッド14は、例えば
図6B)に示されているように、ウェル、好ましくは凹部2に位置を合わせてそれぞれ1つのウェル16を有することが可能であるか、又は、
図6C)に示されているように、パッドは、平らな表面を有し得る。パッド14は、第2の板5によって構成されていてよい。液体を凹部2から排出するために、第1のガラス板1とパッド又は第2の板との間の空間には、陰圧を加えることが可能であり、及び/又は、第1のガラス板1のパッド14に向かい合う表面に陽圧を加えることが可能である。
【0046】
図7は、A)において、第1のガラス板1を、横断面で、凹部2と間隔を置いて配置された、液体10、13を凹部2に導入するためのノズル又は供給管12と共に示している。凹部2内には、液滴10がその内に含まれる細胞11と共に配置されている。第1のガラス板1の表面には、例えばエッチングによって流路が形成されている。流路19は凹部2に合流し、これによって、液体は流路19から凹部2に流入可能である。第1のガラス板1又は流路19を、流路19がガラス板1の下側表面に配置されているように配置する場合、下側表面に配置された流路19が、液体を凹部2から排出するために適している。
【0047】
図7B)は、上面図において、ガラス板1を流路19と共に示しており、流路19の横断面は、表面からガラス板1内に延在している。流路19は、貫通する凹部2に合流している。
【0048】
図8A)から
図8C)は、第1のガラス板1の凹部2への反応性成分の連続する段階的な導入を示している。
図8A)では、第1のガラス板1の凹部2の表面に結合した第1の反応性成分20が示される。次に、
図8B)では、液体内の第2の反応性成分21が凹部2に導入され、第2の成分21は、第1の成分と結合する。結合していない第2の成分21aは、任意でフラッシング液の導入によって、凹部から排出される。凹部2内でガラス基板1に結合した成分20、21のさらなる反応のために、
図8C)では、それぞれ別個の液滴におけるさらなる反応性成分22a、22b、22cが連続して凹部に導入され得る。
【0049】
反応性成分20、21、22a、22b、22cは、互いに反応する、オリゴマーを形成するモノマーであってよく、例えばそれぞれペプチド又は反応性ヌクレオチドを生成するためのアミノ酸、例えばオリゴヌクレオチドを生成するためのヌクレオチド三リン酸であってよい。
【0050】
代替的に、反応性成分20、21、22a、22b、22cは、検出反応の成分であってよく、例えば第1の反応性成分20としての第1の抗体、第2の反応性成分21としての、第1の抗体に関して特異である検体、さらなる反応性成分21aとしての、同様に第2の反応性成分21に関して特異である少なくとも1つの第2の抗体があり得るが、第2の抗体は、さらなる反応性成分22aとして、さらなる成分22bである色素等の光検出可能なマーカー分子と結合されており、任意でさらなる別の成分22cである付加的な結合分子と結合されている。
【符号の説明】
【0051】
1 第1のガラス板
2 貫通する凹部
3a、3b 末端の横断面
4 疎水性コーティング
5 第2の板
6 第2の凹部
7 長手方向中心軸
10 液滴
11 細胞
12 ノズル/ピペット/供給管
13 滴
14 パッド
15 排出された液体
16 ウェル
17 液体
18 加熱装置
19 流路
20 第1の反応性成分
21 第2の反応性成分
21a 結合していない第2の反応性成分
22a、22b、22c さらなる反応性成分
【国際調査報告】