(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/29 20060101AFI20230209BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C12N15/29 ZNA
C12N15/09 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555847
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2020141383
(87)【国際公開番号】W WO2022052380
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】202010943795.5
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520465253
【氏名又は名称】浙江師範大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG NORMAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.688 Yingbin Road, Wucheng District Jinhua, Zejiang 321004 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】馬 伯軍
(72)【発明者】
【氏名】陳 析豊
(72)【発明者】
【氏名】劉 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】梅 樂
(72)【発明者】
【氏名】劉 輝
(72)【発明者】
【氏名】冀 占東
(72)【発明者】
【氏名】陳 龍
(72)【発明者】
【氏名】鄭 茜茜
(72)【発明者】
【氏名】張 裕晨
(57)【要約】
本発明は、イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の機能及びその使用に関し、植物遺伝学の分野。本発明は、イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7を開示する。遺伝子Xa7のヌクレオチド配列は配列番号1に示される。本発明は、白葉枯病に対するイネの抵抗性を向上させるイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の使用をさらに提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子Xa7のヌクレオチド配列は配列番号1に示されることを特徴とする、イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7。
【請求項2】
アミノ酸配列は配列番号2に示されることを特徴とする、請求項1に記載のイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7によってコードされるタンパク。
【請求項3】
白葉枯病に対するイネの抵抗性を向上させることを特徴とする、請求項1に記載のイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の使用。
【請求項4】
Xa7遺伝子の発現担体を構築し、
前記Xa7遺伝子の発現担体は配列番号3に示される配列を含むことを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
遺伝子編集された標的配列Target-1:5’-CGTATGCCCGTTGCAGTTGCAGG-3’を設計し、Xa7遺伝子Target-1ノックアウト担体を得ることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
遺伝子編集された標的配列Target-2:5’-CCAGTTCCCGCGCGCCGCTGGGG-3’を設計し、Xa7遺伝子Target-2ノックアウト担体を得ることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
異なるタイプのXa7遺伝子ノックアウト植物体ko-1、ko-2、ko-3、ko-4を得ることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の機能及びその使用に関し、植物遺伝学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
イネ(Oryza sativa L.)は、世界で最も重要な食用作物の一つであり、世界の人口の半数以上が主食としてイネを食べている。しかし、稲は生産中にしばしば各種の病原物質による被害を受け、その多収型安定収量と米の品質に深刻な影響を与え、世界とわが国の食糧安全保障を脅かしている。
【0003】
グラム陰性黄色単胞菌のイネ病原性病変種(Xanthomonasoryzaepv.oryzae)によって引き起こされる白葉枯病(bactialblight)は中国イネの生産において最も深刻な細菌性病害の一つであり、いもち病、紋枯病とともにイネの「三大病害」と呼ばれる。20世紀80年代前に、枯葉病はしばしば災害を引き起こし、通常、イネの生産量が20~30%減少し、深刻な時は50%に達し、さらには収穫が途絶えた場合もあった(Nino-Liu et al.2006)。中国の主要栽培品種にXa4、Xa21などの耐性遺伝子が導入されたため、白葉枯病が効果的に抑制され、発病状況は次第に軽くなった。しかし、地球環境の温暖化に伴い、枯葉病菌の絶え間ない変異により、次々と新型病原菌が出現し、主栽培イネ品種の耐病性が徐々に失われている(章埼,2009)。近年、イネの枯葉病は年々深刻化する傾向にあり、「老病の新発」問題は日増しに深刻化している。統計によると、2017年以来、中国のイネ白葉枯病の発生面積は1000万ムーを超え(陳功友ら、2019年)、生産量の損失は非常に大きく、食糧安全を深刻に脅かしており、新しい白葉枯病菌耐性遺伝子資源の導入が求められている。現在、植物から広範囲かつ持続的な抗病特性を持つ新しい遺伝子を同定し、その抗病分子メカニズムを解析し、育種実践に使用されることは、植物免疫分野の研究ホットスポット及び全世界の作物育種の重要な目標となっている(Xu et al.2019;Li et al.2020)。
【0004】
Xa7はイネの白葉枯病に対する耐性が高く、スペクトルが広く、持続性が高く、高温に強い優性遺伝子であり、現在国際的に認められている枯れ白葉枯病に対する耐性が最も持続的な「スター遺伝子」であり、育種価値と応用展望を持っている(Vera-Cruz et al.2000;White et al,2009;Zhang et al.2015)。Xa7遺伝子はバングラデシュのイネ品種DV85から初めて報告され(Sidhuetal.1978)、現在から40年余りが経過している。この遺伝子は非常に独特な抗病作用を示すため、過去数十年間、国内外の多くの研究機関がXa7遺伝子のクローン研究を行ってきた。Kajiら(1995)は、Xa7遺伝子をイネ第6号染色体の107.5cm位置に初めて位置づけ、Porterら(2003)はこの遺伝子を2.7cm区間にさらに精密に位置づけ、Chenら(2008)はこの位置づけ区間を118.5kbに縮小した。しかし、まだこの遺伝子のクローニングを成功させることができず、その抗病分子メカニズムという科学的な問題が長い間未解決のまま残っている。本発明者らは2006年からXa7遺伝子の研究を開始し、この遺伝子をイネ第6染色体の200kb区間に位置決めした(Zhang et al.2009)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、イネ抗白葉枯病に対して高抵抗性を有する新しい遺伝子及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によれば、イネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7が提供される。この遺伝子のヌクレオチド配列は配列番号1に示され、そのタンパク質をコードするアミノ酸配列は配列番号2に示される。
【0007】
本発明によれば、白葉枯病に対するイネの抵抗性を顕著に向上させる上記遺伝子の使用がさらに提供される。
【0008】
本発明のイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の使用の改良として、Xa7遺伝子の発現担体を構築し、上記Xa7遺伝子の発現担体は、配列番号3に示される配列を含む。
【0009】
本発明のイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の使用の改良として、遺伝子編集された標的配列Target-1:5’-CGTATGCCCGTTGCAGTTGCAGG-3’を設計し、Xa7遺伝子Target-1ノックアウト担体を得る。
【0010】
本発明のイネ白葉枯病高抵抗性遺伝子Xa7の使用の改良として、遺伝子編集された標的配列Target-2:5’-CCAGTTCCCGCGCGCCGCTGGGG-3’を設計し、Xa7遺伝子Target-2ノックアウト担体を得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らは2006年Xa7遺伝子の研究を開始し、10年にわたって様々な技術的方法で困難を克服し、ついにXa7遺伝子をクローニングした。
【0012】
本発明の技術的手段は以下のとおりである。
本発明者らは、初期に位置決めされた作業に基づいて、マップベースクローニング技術により白葉枯病高抵抗性イネ品種「鎮恢084」(Xa7遺伝子を含む)と白葉枯病高感受性イネ品種「成恢448」とを交雑し、得られたF1を自己交配し、1万本以上の単株を含むF2位置決め集団を獲得し、白葉枯病菌株PXO86の接種同定後、この集団中の2000本以上の感受性単株に対して染色体の遺伝子分析を行い、さらにXa7遺伝子を50kbに位置決めした(イネシーケンシング品種「日本晴」ゲノムを参照)。しかし、位置決め区間では「日本晴」の配列でプライマーを設計し、「鎮恢0084」、「IRBB7」などXa7遺伝子を含むイネ品種をPCR増幅してもバンドを得ることができず、この領域に多くの未知の配列が存在する可能性があると推測した。したがって、本発明者らは「鎮恢084」、「IRBB7」及びその感受性遺伝子系「IR24」的ゲノムライブラリーを構築し、各品種のライブラリーからXa7遺伝子の位置付け区間をカバーするクロスオーバークローンを選別した。シーケンシングの結果、「鎮恢084」及び「IRBB7」の位置決め区間の実際の物理距離は120kbであり、大量の繰り返し配列が存在し、かつ両品種の120kb配列は完全に一致し、「IR24」のこの区間における物理距離は50kbであり、「日本晴」の配列とほぼ一致することが分かった。しかし、Xa7遺伝子を含むイネ品種の120kbは、「日本晴」、「IR24」の50kbとほとんど相同性がないため、マップベースクローニング技術によりこれ以上位置決め区間を狭めることができない。
【0013】
Xa7遺伝子のクローニングと同時に、本発明者らは「鎮恢084」種子に対して放射線変異誘発を行い、2万以上の変異誘発株からXa7遺伝子の変異抑制因子をスクリーニングし、白葉枯病高感受性PXO86株の変異体を多数得た。これらの変異体をXa7位置決め区間でPCR増幅することにより、そのうちの1つの変異体zsm-2の染色体が欠失したことを発見した。ハイパスシーケンシングにより、欠失断片のサイズは106kbであり、Xa7遺伝子を位置決めした120kbと25kb重なっているため、Xa7遺伝子はさらに25kbの範囲内に位置決めされた。その上で、本発明者らは25kb区間をカバーする4つのサブクローン発現担体を構築し、そしてイネの感受性品種「中花11」を遺伝的に形質転換して安定した遺伝子組み換え株を獲得した結果、2つのサブクローン断片の組み換え株はPXO86高抵抗株であり、重なっている部分には未知機能を有する新しい遺伝子(配列番号1)を1つのみ含み、既知の遺伝子のDNAおよびそのタンパク質をコードするアミノ酸配列と何ら相同性がないことがわかった。この遺伝子の機能を検証するために、本発明者らはPCR増幅により耐病性品種「鎮恢084」からこの遺伝子の配列を取得し、発現担体に構築して白葉枯病高感受性イネ品種「中花11」に形質転換した結果、遺伝子組み換え陽性植物体が白葉枯病に対して高抵抗性であることが分かった(
図3)。また、CRISPR/Cas9技術により耐病性品種「鎮恢084」からこの遺伝子をノックアウトした結果、ノックアウト植物体が白葉枯病に対して高感受性であることが分かった(
図4)。したがって、本発明では、順遺伝学及び逆遺伝学の両方からこの遺伝子が白葉枯病に対して高抵抗性を有するXa7遺伝子であることが証明されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態をさらに詳しく説明する。
【0015】
【
図1】「中花11」Xa7遺伝子組み換え陽性植物体のPCR同定を示す。MはMarker DL5000である。「鎮恢084」は陽性対照である。「中花11」は陰性対照である。T-1からT-4は遺伝子組み換え陽性植物体である。T-5及びT-6は遺伝子組み換えが成功していない陰性植物体である。
【
図2】Xa7遺伝子CRISPR/Cas9ノックアウト標的の配列及び遺伝子組み換えノックアウト植物体の変異タイプを示す。Aは2つのXa7遺伝子CRISPR/Cas9ノックアウト標的Target-1、Target-2の位置及びその配列である。Bは標的Target-1ノックアウト担体を用いて得られた2種のXa7遺伝子変異植物体である。WTは未編集の野生型(wild type)配列である。ko-1ノックアウト植物体のXa7遺伝子サイトの1つの染色体に1つの塩基Cが挿入され、もう1つの染色体に2つ塩基TTが欠失した。ko-2ノックアウト植物体のXa7遺伝子サイトの1つの染色体に1つの塩基Tが挿入され、もう1つの染色体に14個の塩基が欠失した。Cは標的Target-2ノックアウト担体を用いて得られた2種のXa7遺伝子変異植物体である。WTは未編集の野生型(wild type)配列である。ko-3ノックアウト植物体のXa7遺伝子サイトの1つの染色体に1つの塩基Cが挿入され、もう1つの染色体に30個の塩基が欠失した。ko-4ノックアウト植物体のXa7遺伝子サイトの1つの染色体に4つの塩基が欠失し、もう1つの染色体に1つの塩基Tが挿入された。
【
図3】「中花11」Xa7遺伝子組み換え陽性植物体の白葉枯病抵抗性同定を示す。「中花11」は、Xa7遺伝子を含まない感受性対照品種である。T-1、T-2、T-3、T-4は、Xa7遺伝子組み換え陽性植物体の異なる株である。白葉枯病PXO86のレースを接種した2週間後に観察及び測定する。Aは接種葉の病斑の長さを示す写真である。Bは接種葉の病斑の長さの測定統計である。
【
図4】「鎮恢084」Xa7遺伝子ノックアウト植物体の白葉枯病抵抗性同定を示す。鎮恢084は、Xa7遺伝子を含む耐病性対照品種である。ko-1、ko-2、ko-3、ko-4は、Xa7遺伝子の異なるタイプのノックアウト植物体である。白葉枯病PXO86のレースを接種した2週間後に観察及び測定する。Aは接種葉の病斑の長さを示す写真である。Bは接種葉の病斑の長さの測定統計である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施例1 感受性イネ品種「中花11」への遺伝子組み換えによるXa7遺伝子の導入>
(1) Xa7遺伝子のPCR増幅
PCRプライマー:上流5’-cggccagtgccaagcttGTTCGGCTGCGGCCTGCAG-3’、下流5’-tgaccacccggggatccAATCAGTTGTGAGGCCGGTT-3’(下線付きの配列はベクター相同組換え配列である)を設計して合成した。イネ「鎮恢084」ゲノムDNAをテンプレートとし、ハイフィデリティTaq酵素PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(TaKaRa、日本)を用いてXa7遺伝子に対してPCR増幅を行った。PCR増幅システムは、50μlであり、PrimeSTAR HS(Premix)25μl、上、下流プライマー(10μM)それぞれ1μl、テンプレートDNA 2μl(<200ng)、滅菌水21μlを含む。PCR増幅プログラムは、予備変性:95℃、5min;変性:98℃、10sec;アニーリング:58℃、15秒;伸長:72℃、90秒;30×サイクル;伸長:72℃、5分間であった。Xa7遺伝子(配列番号1)を含む配列番号3に示される配列を得た。
【0017】
(2) Xa7遺伝子の発現担体の構築
制限酵素Hind III及びBamH I(TaKaRa,日本)を用いてpCAMBIA-1300発現担体に対して二重酵素消化を行った。反応系は、Hind III及びBamH I:それぞれ1μl;4μlのBuffer(製品付属品)、15μlのpCAMBIA-1300発現担体プラスミドが含まれ、ddH2Oで40μlまで補充し、37℃で酵素で4h処理した。AxyPrep PCRクリーニングキット(Axygen,米国)を用いて製品マニュアルに従って酵素切断産物を精製した。同じ方法によりXa7遺伝子の増幅生成物を精製した。さらに、全式金社の相同組換えキット(pEASY(登録商標)-Uni Seamless Cloning and Assembly Kit)を用いてシームレス結合を行った。反応系では、1.25μlの担体生成物、3.75μlのPCR生成物、5μlのAssembly mixが含まれ、50℃で15分間反応させた。反応生成物を熱励起によりJM109コンピテントセルを変換し、陽性クローンを得た後、担体に挿入された断片の配列(配列番号3)を確認するためにバイオテクノロジー企業にシーケンシング分析してもらい、Xa7遺伝子の発現担体を得た。
【0018】
(3) イネの形質転換及び陽性植物体の同定
構築されたXa7遺伝子の発現担体を、Nishimuraらの方法(Nishimura et al,Nat Protoc,2006)によりイネ感受性イネ品種「中花11」に転換し、遺伝子組み換えイネ植物体を得た。
遺伝子組み換え植物体の葉を取り、Panaudらの方法(Mol Gen Genet,1996)によりゲノムDNAを抽出し、プライマー:上流5’-GTTCGGCTGCGGCCTGCAG-3’、下流5’-AATCAGTTGTGAGGCCGGTT-3’を合成し、2×Taq PCR Master Mix(TIANGEN社)試薬によりPCR増幅を行った。
PCR増幅システムは、20μlであり、2×Taq PCR MasterMix10μl、上、下流プライマー(10μM)各1μl、テンプレートDNA 1μl(<1μg)、滅菌水7μlを含む。PCRの反応条件は、予備変性:94℃、5min;変性:94℃、30sec;アニーリング:58℃、30秒;伸長:72℃、90秒;35×サイクル;伸長:72℃、5分間であった。PCR生成物を1%(w/w)アガロースゲル中で30分間電気泳動し、臭化エチジウムで染色した後、紫外線透過機を用いて電気泳動バンドを観察した結果、遺伝子組み換え陽性植物体ではPCR増幅により1325bp断片(配列番号3)が得られた(例えば、T-1、T-2、T-3、T-4に示される)一方、非遺伝子組み換え植物体(陰性)ではPCR生成物が得られなかった(T-5、T-6に示される)(
図1)。
【0019】
<実施例2 耐病性イネ品種「鎮恢084」からの遺伝子組み換えによるXa7遺伝子のノックアウト>
(1) Xa7遺伝子CRISPR/Cas9ノックアウト担体の構築
Xa7遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号1)に応じて、CRISPR標的設計用ウェブサイト(http://www.rgenome.net/cas-designer/)により、遺伝子編集の標的配列Target-1:5’-CGTATGCCCGTTGCAGTTGCAGG-3’を設計し、この配列に基づいてプライマー配列Target-1F:5’-GGCACGTATGCCCGTTGCAGTTGC-3’及びTarget-1R:5’-AAACGCAACTGCAACGGGCATACG-3’を合成した。T4 PNK酵素(NEB,米国)により5’-ヒドロキシル末端のリン酸化を行い、50μL反応系にプライマーTarget-1F(10μM)10μL、Target-1R(10μM)10μL,T4リガーゼ1μL、Buffer(製品付属品)5μL、ddH2O 24μLを加え、37℃で1h反応させた後、NaCl(1M)2.5μLを加え、95℃で5s反応させ、2~3h自然アニーリングし、Target-1アニーリングプローブを得た。
【0020】
Bsa I制限酵素(NEB,米国)を用いて、製品マニュアルに従ってpCAMBIA1300-pYAO-cas9担体を酵素切断し、線形化担体断片をゲル抽出し、AxyPrep DNAゲル回収キット(Axygen,米国)により精製した。上記Target-1アニーリングプローブ及び酵素切断担体断片をT4リガーゼ試薬(NEB,米国)により結合した後、DH5αコンピテントセルに転換し、陽性クローニングを得た後、バイオテクノロジー企業にシーケンシング分析してもらった。担体に挿入された断片が5’-CGTATGCCCGTTGCAGTTGC-3’である場合、担体の構築が成功し、Xa7遺伝子Target-1ノックアウト担体が得られた。即ち、このXa7遺伝子Target-1ノックアウト担体は、CRISPR/Cas9技術によりXa7遺伝子(配列番号1)におけるTarget-1位置に対して特異的に編集し、変異を発生させることができる。
【0021】
上記と同様の方法により、Xa7遺伝子の異なる部位に別の遺伝子編集の標的配列Target-2:5’-CCAGTTCCCGCGCGCCGCTGGGG-3’を設計し、この配列に基づいてプライマー配列Target-2F:5’-GGCACCAGTTCCCGCGCGCCGCTG-3’及びTarget-2R:5’-AAACCAGCGGCGCGCGGGAACTGG-3’を合成し、Xa7遺伝子Target-2ノックアウト担体を構築した。シーケンシング分析した結果、担体に挿入された断片が5’-CCAGTTCCCGCGCGCCGCTG-3’である場合、担体の構築が成功したことを示す。このXa7遺伝子Target-2ノックアウト担体は、CRISPR/Cas9技術によりXa7遺伝子(配列番号1)におけるTarget-2位置に対して特異的に編集し、変異を発生させることができる。
【0022】
(2) イネ形質転換及ノックアウト植物体の同定
構築された上記2つのXa7遺伝子ノックアウト担体を、Nishimuraらの方法(Nishimura et al,Nat Protoc,2006)によりそれぞれイネ耐病性品種「鎮恢084」に転換し、対応する遺伝子組み換えイネ植物体を得た。
遺伝子組み換え植物体の葉を取り、Panaudらの方法(Mol Gen Genet,1996)によりゲノムDNAを抽出し、PCRプライマー:5’-ATGGCGGCCGCTGATCATCC-3’及び5’-TTAATTGCCACCGATGAGGTAATC-3’を合成した。ハイフィデリティTaq酵素PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(TaKaRa,日本)を用いて各遺伝子組み換え植物体のXa7遺伝子配列(配列番号1)に対してPCR増幅を行い、この遺伝子におけるTarget-1及びTarget-2部位の変異状況を分析した。PCR増幅系は、50μlであり、PrimeSTAR HS(Premix)25μl、上、下流プライマー(10μM)各1μl、テンプレートDNA 2μl(<200ng)、滅菌水21μlを含む。PCR増幅プログラムは、予備変性:95℃、5min;変性:98℃、10sec;アニーリング:60℃、15秒;伸長:72℃、30秒;30×サイクル;伸長:72℃、5分間であった。
遺伝子組み換え植物体のPCR生成物をT-Vector PMD18(TaKaRa,日本)に結合した。結合系及び反応条件は按製品マニュアルに従う。10μl結合生成物を取り、熱励起によりJM109コンピテントセルに転換し、陽性クローニングを得た後、バイオテクノロジー企業にシーケンシング分析してもらった。遺伝子組み換え植物体のXa7遺伝子ノックアウト標的位置には、複数の編集タイプが発見され(
図2)、いずれもXa7遺伝子のフレームシフト変異又は断片欠失を引き起こし、最終的にはXa7遺伝子が成功にノックアウトされた4種類の変異植物体-ko-1ノックアウト植物体、ko-2ノックアウト植物体、ko-3ノックアウト植物体、ko-4ノックアウト植物体が得られた。
【0023】
<実施例3 2種類の遺伝子組み換えイネの白葉枯病抵抗性の同定>
以上得られたXa7遺伝子組み換え植物体(実施例1で得られた遺伝子組み換え陽性植物体)及びその対照品種「中花11」、Xa7遺伝子ノックアウト変異植物体(実施例2で得られたko-1ノックアウト植物体、ko-2ノックアウト植物体、ko-3ノックアウト植物体、ko-4ノックアウト植物体)及びその対照品種「鎮恢084」を畑に植え、気温は28~37℃であり、通常の通り水・肥料管理を行い、イネ植物体が分げつ盛期に成長した後、イネ植物体上の完全に展開した新葉を選択し、剪葉法(Kauffman et al.,Plant Dis Rep,1973)により白葉枯病菌(Xanthomonas campestris pv.Oryzae)レースPXO86を接種した。このレースは、Xa7遺伝子耐病性を活性化可能な非毒性因子AvrXa7を含み、Xa7遺伝子の耐病性を同定することができる。接種した2週間後、接種葉の切り口から下へ病斑の長さを測定した((耐病性(≦3.0cmR)、中度耐病性(3.1~6.0cm)、中度感受性(6.1~9.0cm)、感受性(>9.0cm))。
【0024】
同定結果
感受性品種「中花11」はPXO86に対して高感受性である(
図3)。「中花11」にXa7遺伝子を導入した遺伝子組み換え陽性植物体はPXO86に対して高抵抗性である(
図3)。耐病性品種「鎮恢084」はPXO86に対して高抵抗性である(
図4)。「鎮恢084」からXa7遺伝子をノックアウトした変異植物体はPXO86に対して高感受性である(
図4)。これらの結果から明らかなように、Xa7遺伝子を自体に含むか又は外部から導入したイネは、白葉枯病に対して高抵抗性を有し、重大な育種応用価値を持っている。
【0025】
上述したのは、本発明のいくつかの具体的な実施例にすぎない。本発明は、以上の実施例に限定されず、多くの変形を含む。当業者は、本発明に開示の内容からすべての変形を直接導出又は想到することができ、これらの変形は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】