(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】多活性領域をカスケードした半導体レーザー
(51)【国際特許分類】
H01S 5/34 20060101AFI20230209BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01S5/34
H01S5/183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519550
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2021095515
(87)【国際公開番号】W WO2021249169
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010526713.7
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522121322
【氏名又は名称】▲蘇▼州▲長▼光▲華▼芯光▲電▼技▲術▼股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521354086
【氏名又は名称】蘇州長光華芯半導体激光創新研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 俊
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲ギョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲譚▼ 少▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 恒
(72)【発明者】
【氏名】李 泉▲霊▼
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC02
5F173AC12
5F173AC35
5F173AC48
5F173AC52
5F173AC53
5F173AF08
5F173AF20
5F173AR23
(57)【要約】
本願は半導体光電子の技術分野に関し、具体的には、多活性領域をカスケードした半導体レーザーに関する。前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、それぞれ多活性領域を含む複数のカスケードされた活性領域と、前記カスケードされた活性領域の少なくとも一方側に設けられ、前記カスケードされた活性領域に電気的に接続されるトンネル接合と、を備え、前記カスケードされた活性領域では、少なくとも1組の隣接する前記活性領域はバリア層によって接続される。このようにより多くの活性領域を周期的ゲイン構造に追加でき、デバイスの内部量子効率を向上させるとともに、キャリアの密度を低減させることで、より多くのゲインを得る。バリア層による接続は新しいpn接合を導入する特性がないため、該層はデバイスの動作の開始電圧を上げないとともに、エピタキシャル成長もトンネル接合よりも簡単になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多活性領域をカスケードした半導体レーザーであって、
それぞれ複数の活性領域を含む複数のカスケードされた活性領域と、
前記カスケードされた活性領域の少なくとも一方側に設けられ、前記カスケードされた活性領域に電気的に接続されるトンネル接合(10)と、を備え、
前記カスケードされた活性領域では、少なくとも1組の隣接する前記活性領域はバリア層によって接続されることを特徴とする多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項2】
前記カスケードされた活性領域では、複数組の隣接する前記活性領域はいずれもバリア層によって接続されることを特徴とする請求項1に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項3】
各々の前記活性領域は複数の量子井戸を積層することによって成形されるか、又は1つの量子井戸によって成形され、或いは、各々の前記活性領域は複数の量子細線を積層することによって成形されるか、又は1つの量子細線によって成形され、或いは、各々の前記活性領域は複数の量子ドットを積層することによって成形されるか、又は1つの量子ドットによって成形されることを特徴とする請求項1に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項4】
前記複数の量子井戸の積層では、複数の量子井戸はトンネル接合(10)及び/又はバリア層を介して接続されることを特徴とする請求項3に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項5】
前記カスケードされた活性領域は複数であり、隣接する2つの前記カスケードされた活性領域は前記トンネル接合(10)によって接続されることを特徴とする請求項1に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項6】
前記活性領域の外側に設けられる電流閉じ込め層(16)をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項7】
前記電流閉じ込め層(16)の数は1層又は複数層であり、前記活性領域の上層領域、下層領域又は中間領域に設けられることを特徴とする請求項6に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項8】
前記電流閉じ込め層(16)はアルミニウム及びヒ素材料を含有する酸化層を使用するか、又は前記電流閉じ込め層(16)はイオン注入層を使用するか、又は前記電流閉じ込め層(16)は高抵抗層を使用することを特徴とする請求項6に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項9】
前記半導体レーザーの出光口の位置に設けられる反射防止層(18)をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項10】
前記半導体レーザーの出力端の前記活性領域に近接して設けられる回折格子層(20)をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項11】
上反射層(17)及び下反射層(3)を含む反射層をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項12】
前記上反射層(17)及び前記下反射層(3)は分布ブラッグ反射構造、サブ波長回折格子構造、金属膜反射構造及び誘電体膜反射構造のうちの1種の構造又は任意の2種を組み合わせた構造であることを特徴とする請求項11に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項13】
前記反射層は、高/低屈折率材料を積層することによって成形されるか、又は高/低屈折率材料を積層し、高/低屈折率材料の間に遷移層が存在することによって成形されることを特徴とする請求項11に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【請求項14】
多活性領域を備えた垂直面発光レーザーであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした半導体レーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は半導体光電子の技術分野に関し、具体的には多活性領域をカスケードした半導体レーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型面発光レーザーは半導体微小共振器レーザーであり、従来のエッジ発光レーザーと比較して、垂直共振器型面発光レーザーは閾値電流が低く、体積が小さく、スポットが円対称で光ファイバーと結合しやすく、ビーム品質が高く、縦モードが単一であり、面発光で集積しやすい等の利点を持つため、近年、急速な発展を遂げており、顔認識等の三次元センサ、光通信、レーザレーダー、無人運転等の分野に広く適用されている。
【0003】
現在、垂直共振器型面発光レーザーの構造は、上反射面、及び下反射面で形成される共振器と、量子井戸構造を積層したゲイン領域と、電流閉じ込め層(例えば、酸化閉じ込め層、イオン注入閉じ込め層等)とを備える。上記垂直共振器型面発光レーザーは1組の量子井戸を積層することでゲイン領域を形成し、このような垂直共振器型面発光レーザーはシングルポイント電力が一般的には10mW(駆動電流10mA)、効率が一般的には50%に近く、所要の電力が小さいインテリジェント機器に適用される場合が多く、三次元構造光技術を利用して近距離の顔認識を行う。しかしながら、たとえばレーザレーダーに基づく無人運転分野のような大型三次元センシングの応用シーンでは、上記構造の垂直共振器型面発光レーザーは需要に対応できず、高電力及び高効率のレーザーは必要である。
【0004】
このような需要に基づいて、現在最も広く使用されている方法は垂直共振器型面発光レーザーの構造では活性領域の数を増やすことによって実現され、それにより複数のゲイン領域を形成してデバイスの電力及び効率を高める。一般的な量子井戸は、ゲインを生成するために周期的共振構造のピーク位置に配置する必要があり、通常、外部電界がキャリアを駆動して1番目の活性領域を流れた後、十分な量子井戸積層の数を設計する必要があり、キャリアを完全に複合した後、トンネル接合構造によってキャリアを再活性化する必要があり、それにより次の活性領域で放射光子を複合し続け、トンネル接合を介して複数の量子井戸積層の活性領域を接続し、更により高い電力及び効率の目的を実現する。しかしながら、トンネル接合は実質的に非常に薄い高濃度ドープ層から構成されたpn接合であり、エピタキシャル成長では正確な高濃度ドープを実現することはほかの普通のエピタキシャル層の成長よりも困難であり、半導体のカスケードされた活性領域のトンネル接合は逆方向バイアス状態でデバイスの構造に設計され、トンネル接合の導入によりデバイスの動作の開始電圧が上げられ、さらに動作電圧が上げられる。また、レーザーの電力及び効率の需要の向上に伴って、空間及び放熱性能の制限により、上記多活性領域を備えた垂直共振器型面発光レーザーはレーザーの電力及び効率の需要を満たすことがますます困難になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、従来技術では多活性領域をカスケードした半導体レーザーの効率が低い問題を解決するために、多活性領域をカスケードした半導体レーザーを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本願は多活性領域をカスケードした半導体レーザーを提供し、
それぞれ多活性領域を含む複数のカスケードされた活性領域と、
前記カスケードされた活性領域の少なくとも一方側に設けられ、前記カスケードされた活性領域に電気的に接続されるトンネル接合と、を備え、
前記カスケードされた活性領域では、少なくとも1組の隣接する前記活性領域はバリア層によって接続される。
【0007】
更に、前記カスケードされた活性領域では、複数組の隣接する前記活性領域はいずれもバリア層によって接続される。
【0008】
更に、各々の前記活性領域は複数の量子井戸を積層することによって成形されるか、又は1つの量子井戸によって成形され、或いは、各々の前記活性領域は複数の量子細線を積層することによって成形されるか、又は1つの量子細線によって成形され、或いは、各々の前記活性領域は複数の量子ドットを積層することによって成形されるか、又は1つの量子ドットによって成形される。
【0009】
更に、前記複数の量子井戸積層では、複数の量子井戸はトンネル接合及び/又はバリア層を介して接続される。
【0010】
更に、前記カスケードされた活性領域は複数であり、隣接する2つの前記カスケードされた活性領域は前記トンネル接合によって接続される。
【0011】
更に、前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、前記活性領域の外側に設けられる電流閉じ込め層をさらに備える。
【0012】
更に、前記電流閉じ込め層の数は1層又は複数層であり、前記活性領域の上層領域、下層領域又は中間領域に設けられる。
【0013】
更に、前記電流閉じ込め層はアルミニウム及びヒ素材料を含有する酸化層を使用するか、又は前記電流閉じ込め層はイオン注入層を使用するか、又は前記電流閉じ込め層は高抵抗層を使用する。
【0014】
更に、前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、前記半導体レーザーの出光口の位置に設けられる反射防止層をさらに備える。
【0015】
更に、前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、前記半導体レーザーの出力端の前記活性領域に近接して設けられる回折格子層をさらに備える。
【0016】
更に、前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、上反射層及び下反射層を含む反射層をさらに備える。
【0017】
更に、前記上反射層及び前記下反射層は分布ブラッグ反射構造、サブ波長回折格子構造、金属膜反射構造及び誘電体膜反射構造のうちの1種の構造又は任意の2種を組み合わせた構造である。
【0018】
更に、前記反射層は、高/低屈折率材料を積層することによって成形されるか、又は高/低屈折率材料を積層し、高/低屈折率材料の間に遷移層が存在することによって成形される。
【0019】
更に、前記多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、多活性領域を備えた垂直面発光レーザーである。
【発明の効果】
【0020】
本願の技術的解決手段は以下の利点を有する。
【0021】
本願に係る多活性領域をカスケードした半導体レーザーでは、各少数の量子井戸積層が周期的光場の各ピークの中心に周期的に分布しており、このようにして、各組の量子井戸積層は光場のピークにより近い位置を占めていることで、キャビティ内ゲインを増加させ、デバイスの閾値を低下させ、材料の内部損失を増加しなく、それによりレーザーの電力及び効率を向上させる。隣接する2つの前記活性領域はバリア層によって接続されることで、更にキャリアを十分に複合した後、トンネル接合構造を追加することでキャリアは再活性化され、次のカスケードされた活性領域に流れてゲインを生成し続き、キャリアが次の活性領域で複合し続けて光子を生成することを実現でき、このようにより多くの活性領域が周期的ゲイン構造に追加されることで、デバイスの内部量子効率を向上させるとともに、キャリアの密度を低減させ、それにより、より多くのゲインを得ることができる。バリア層による接続は新しいpn接合を導入する特性がないため、該層はデバイスの動作の開始電圧を上げないとともに、エピタキシャル成長もトンネル接合よりも遥かに簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の具体的な実施形態又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明し、明らかなように、以下で説明される図面は本願のいくつかの実施形態であり、当業者であれば、創造的な努力をせずに、これらの図面に基づいてほかの図面を想到し得る。
【0023】
【
図1】本願の実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーの正面構造模式図である。
【
図2】
図1に示す多活性領域をカスケードした半導体レーザーの反射層の正面構造模式図である。
【
図3】
図1に示す多活性領域をカスケードした半導体レーザーのゲイン領域の構造模式図であり、ゲイン領域の光場分布を模式的に示す。
【
図4】
図1に示す多活性領域をカスケードした半導体レーザーに表面回折格子を追加して偏光入力を実現する構造模式図である。
【
図5】
図3に示すゲイン領域の周期的共振の定在波場の図である。
【
図6】本願の実施例における量子井戸積層の周期的共振の定在波場の図である。
【
図7】従来の量子井戸積層の周期的共振の定在波場の図である。
【
図8】本願の変形実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーの構造図である。
【
図9】本願の別の変形実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーの構造図であり、半導体レーザーはボトムエミッション型半導体レーザーである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本願の技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかなように、説明される実施例はすべての実施例ではなく、本願の一部の実施例である。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力をせずに相当し得るほかの実施例はすべて本願の保護範囲に属する。
【0025】
なお、本願の説明では、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」等で指示される方位又は位置関係は図示に基づく方位又は位置関係であり、単に本願の説明の便宜上及び簡略化のために使用され、係る装置又は素子が特定の方位を有したり、特定の方位で構成及び操作されたりしなければならないことを指示又は暗示せず、従って本願を限定するものとして理解すべきではない。また、用語「第1」、「第2」、「第3」は目的を説明することにのみ使用され、相対重要性を指示又は暗示するものとして理解すべきではない。
【0026】
図1~
図6に示すように、本実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、それぞれ多活性領域を含む複数のカスケードされた活性領域と、前記カスケードされた活性領域の少なくとも一方側に設けられ、カスケードされた活性領域に電気的に接続されるトンネル接合10と、を備え、カスケードされた活性領域では、少なくとも1組の隣接する活性領域はバリア層によって接続される。
【0027】
更に、本実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーによれば、隣接する2つの前記活性領域はバリア層によって接続され、更にキャリアを十分に複合した後、トンネル接合10の構造を追加することでキャリアは再活性化され、次のカスケードされた活性領域に流れてゲインを生成し続き、キャリアが次の活性領域で複合し続けて光子を生成することを実現でき、このようにより多くの活性領域が周期的ゲイン構造に追加されることで、デバイスの内部量子効率を向上させるとともに、キャリアの密度を低減させ、それにより、より多くのゲインを得ることができる。全過程では、ゲインを実現するとともに、トンネル接合10の使用を削減させ、一方、トンネル接合10はpn接合の特性を有するため、デバイスの動作の開始電圧が上げられ、さらに動作電圧が上げられる。バリア層による接続は新しいpn接合を導入する特性がないため、開始電圧を上げないとともに、エピタキシャル成長もトンネル接合10よりも簡単になり、レーザキャビティの空間的位置をより十分に利用してより大きなゲインを実現することによって、多活性領域をカスケードした半導体レーザーはより大きな電力及び効率を提供することができる。
【0028】
なお、本実施例における活性領域は量子構造であり、垂直共振器型レーザーのモードフィールドのピーク位置にあるかぎりゲインを生成でき、カスケードされた活性領域は2つ以上の活性領域の組み合わせであり、本実施例におけるカスケードされた活性領域は2つに限定されず、3つ、4つ又はそれ以上であってもよい。
【0029】
本実施例におけるゲイン領域4は量子井戸構造、量子細線、量子ドット構造であってもよい。具体的には、本実施例では、各々の活性領域は複数の量子井戸を積層することによって成形されるか、又は1つの量子井戸によって成形され、或いは、各々の活性領域は複数の量子細線を積層することによって成形されるか、又は1つの量子細線によって成形され、或いは、各々の活性領域は複数の量子ドットを積層することによって成形されるか、又は1つの量子ドットによって成形される。活性領域を量子井戸構造とすることを例として、設計時、量子井戸の中心位置を近接場分布のピークに設定し、2つの活性領域は1つのカスケードされた活性領域を形成し、トンネル接合10は2つのカスケードされた活性領域の間に位置する。
【0030】
本願の原理について、更に説明する必要があることとして、現在、量子井戸は一般的には光場のピーク位置にあることで、より大きなゲインを生成でき、従来の構造では1つの活性領域が1組の量子井戸の積層のみを有し、一般的には量子井戸積層をできるだけ多く設計することで、キャリアを完全に複合し、その後、トンネル接合10によってキャリアを再活性化し、更に次の活性領域の量子井戸積層で複合し続ける。しかしながら、1組の量子井戸積層中の各々の量子井戸は光場との重なり程度が異なり、最も中間の量子井戸はピークにあり、エッジにある量子井戸は光場の強度が低い位置にあり、このように、量子井戸の数を増やし続けるとしても、エッジにある量子井戸は光場のより低い位置にあるため、提供できるゲインは非常に限られている。
【0031】
本願の実施例に係る多活性領域をカスケードした半導体レーザーでは、各少数の量子井戸積層が周期的光場の各ピークの中心に周期的に分布しており、このようにして、各組の量子井戸積層は光場のピークにより近い位置を占めていることで、キャビティ内ゲインを増加させ、デバイスの閾値を低下させ、材料の内部損失を増加しなく、それによりレーザーの電力及び効率を向上させる。隣接する2つの前記活性領域はバリア層によって接続されることで、更にキャリアを十分に複合した後、トンネル接合10の構造を追加することでキャリアは再活性化され、次のカスケードされた活性領域に流れてゲインを生成し続き、キャリアが次の活性領域で複合し続けて光子を生成することを実現でき、このようにより多くの活性領域が周期的ゲイン構造に追加されることで、デバイスの内部量子効率を向上させるとともに、キャリアの密度を低減させ、それにより、より多くのゲインを得ることができる。バリア層による接続は新しいpn接合を導入する特性がないため、該層はデバイスの動作の開始電圧を上げないとともに、エピタキシャル成長もトンネル接合10よりも遥かに簡単になる。
【0032】
本実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーは具体的には、多活性領域を備えた垂直共振器型面発光レーザーである。更に
図1及び
図3に示すように、発光レーザーのゲイン領域4が2つのカスケードされた活性領域を備えることを例として、一方のカスケードされた活性領域は第1活性領域6及び第2活性領域8を備え、他方のカスケードされた活性領域は第3活性領域12及び第4活性領域14を備え、2つのカスケードされた活性領域はトンネル接合10によって接続される。第1活性領域6と第2活性領域8は第1バリア層7によって接続され、第2活性領域8とトンネル接合10は第2導波路層9によって接続される。第3活性領域12とトンネル接合10は第3導波路層11によって接続され、第3活性領域12と第4活性領域14は第2バリア層13によって接続される。
【0033】
更に
図1に示すように、本実施例の半導体レーザーでは、ゲイン領域4の一方側には、第1電極1と、電極と合わせる基板2と、基板2上に設けられる上反射層17及び下反射層3と、上反射層17及び下反射層3上に設けられる第1導波路層5と、を備え、第1導波路層5はゲイン領域4と合わせる。ゲイン領域4の他方側には、第2電極19、反射防止層18、上反射層17、電流閉じ込め層16及び第4導波路層15をさらに備え、第4導波路層15はゲイン領域4と合わせる。
【0034】
更に
図3に示すように、好適には、本実施例におけるカスケードされた活性領域では、複数組の隣接する活性領域はいずれもバリア層によって接続されることで、多活性領域を備えた垂直共振器型面発光レーザーの確実な運転を確保するとともに、トンネル接合10の使用をできるだけ削減し、更に多活性領域をカスケードした半導体レーザーはより大きな電力及び効率を提供することができる。
【0035】
具体的には、各々の活性領域は複数の量子井戸を積層することによって成形されるか、又は1つの量子井戸によって成形される。複数の量子井戸積層では、複数の量子井戸はバリア層を介して接続される。勿論、複数の量子井戸はトンネル接合10を介して接続されるか、又はトンネル接合10とバリア層は交互に接続されるようにしてもよい。
【0036】
具体的には、本実施例では、電流閉じ込め層16はゲイン領域4の外側に設けられ、その位置はゲイン領域4に近接しており、ゲイン領域4の上であってもよく、ゲイン領域4の下であってもよく、2種の位置の組み合わせであってもよい。電流閉じ込め層16の数は1層又は複数層である。電流閉じ込め層16はアルミニウム及びヒ素材料を含有する酸化層を使用して成形され、たとえば、アルミニウムガリウムヒ素、アルミニウムカドミウムヒ素、アルミニウムヒ素材質を使用して成形され、それにより半導体レーザーは優れた電流閉じ込め効果を持つ。勿論、本実施例では、電流閉じ込め層16はイオン注入層又は高抵抗層を使用してもよい。
【0037】
具体的には、本実施例における半導体レーザーは、半導体レーザーの出光口の位置に設けられる反射防止層18をさらに備える。
【0038】
更に
図4に示すように、具体的には、本実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーは、半導体レーザーの出力端の活性領域に近接して設けられる回折格子層20をさらに備え、それにより偏光の出力を実現することができる。
【0039】
更に
図2に示すように、具体的には、多活性領域をカスケードした半導体レーザーの反射層は上反射層17及び下反射層3を備え、本実施例における上反射層17及び下反射層3は分布ブラッグ反射構造、サブ波長回折格子構造、金属膜反射構造及び誘電体膜反射構造のうちの1種の構造又は任意の2種を組み合わせた構造である。たとえば、本実施例における上反射層17及び下反射層3はいずれも分布ブラッグ反射構造であってもよい。又は上反射層17は分布ブラッグ反射構造、下反射層3はサブ波長回折格子構造であり、ここでは一々列挙しない。
【0040】
本実施例における反射層は高屈折率材料層201、低屈折率材料層203を積層することによって成形される。又は、高屈折率材料層201、低屈折率材料層203を積層し、高屈折率材料層201と低屈折率材料層203の高/低屈折率材料間に第1高/低屈折率材料層遷移層202及び第2高/低屈折率材料層遷移層204を設けることによって間隔をあけて成形される。
【0041】
更に
図5に示すように、6つの活性領域をカスケードしたゲイン領域4の定在波場の図を示しており、図中の各々の量子井戸堆積層は周期的共振光場のピーク位置に1つの活性領域を形成し、量子井戸堆積層で複合されるキャリアを完全に複合できるだけでなく、なるべく光場のピークで複合でき、より大きなゲインを生成するために、本実施例では、2組の量子井戸堆積層、すなわち、2つのカスケードされた活性領域を設計し、各組の堆積層内に複数の量子井戸が含まれ、量子井戸同士がバリア層によって接続され、これら2組の量子井戸堆積層で複合した後、トンネル接合10を利用してキャリアを再活性化し、第3及び第4量子井戸積層に流れて複合し続ける。それによりデバイスの内部量子効率を向上させるとともに、キャリアの密度を低減させることで、より多くのゲインを得ることができる。バリア層による接続は新しいpn接合を導入する特性がないため、該層はデバイスの動作の開始電圧を上げないとともに、エピタキシャル成長もトンネル接合10よりも遥かに簡単になる。
【0042】
図7は一般的な設計及び本設計に係る1つの活性領域の量子井戸堆積層の定在波場の拡大図であり、ここで非常に明らかなように、一般的にはできるだけ多くの量子井戸積層をともに1つの定在波ピークに配置することでキャリアをできるだけ完全に複合し、そのエッジにある量子井戸の位置は定在波場のピーク位置から離れたことがわかる。
図6に示すように、本実施例では、少数の量子井戸積層が複数のピーク位置に分布することで、キャリアを十分に複合できるとともに、各組の量子井戸積層がピーク位置に非常に近く、より大きなゲイン効果を発生させる。
【0043】
図8は本願の変形実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーの構造図であり、上記実施例と比べて、第1電極1の位置が下反射層3の上方にあるという点を除き、本実施例は同様に上記実施例の利点を有し、同様に本願の出願目的を実現できる。
【0044】
図9は本願の別の変形実施例における多活性領域をカスケードした半導体レーザーの構造図であり、上記実施例と比べて、本実施例における半導体レーザーはボトムエミッション型半導体レーザーであるという点を除き、本実施例は同様に上記実施例の利点を有し、同様に本願の出願目的を実現できる。
【0045】
明らかなように、上記実施例は単に挙げられた例を説明するためのものであり、実施形態を限定しない。当業者であれば、上記説明をもとにほかの様々な変化や変更を行うことができる。ここではあらゆる実施形態を例示する必要も可能性もない。ここから派生される明らかな変化や変更も本願の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0046】
1、第1電極
2、基板
3、下反射層
4、ゲイン領域
5、第1導波路層
6、第1活性領域
7、第1バリア層
8、第2活性領域
9、第2導波路層
10、トンネル接合
11、第3導波路層
12、第3活性領域
13、第2バリア層
14、第4活性領域
15、第4導波路層
16、電流閉じ込め層
17、上反射層
18、反射防止層
19、第2電極
20、回折格子層
201、高屈折率材料層
203、低屈折率材料層
202、第1高/低屈折率材料層遷移層
204、第2高/低屈折率材料層遷移層
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザーであって、
複数のカスケードされた活性領域と、
前記カスケードされた活性領域の少なくとも一方側に設けられ、前記カスケードされた活性領域に電気的に接続されるトンネル接合
部と、を備え、
前記カスケードされた活性領域では、少なくとも1組の隣接する前記活性領域はバリア層によって接続され
、
前記複数のカスケードされた活性領域のそれぞれが、複数の活性領域を含み、
前記カスケードされた活性領域では、各組の隣接する前記活性領域はバリア層によって接続され、
前記複数のカスケードされた活性領域のそれぞれが、複数の活性領域でキャリアを十分に複合した後、前のカスケードされた活性領域に複合したキャリアが、トンネル接合部の構造を追加することでキャリアは再活性化され、次のカスケードされた活性領域に流れることを特徴とする、多活性領域をカスケードしたエレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項2】
各々の前記活性領域は複数の量子井戸を積層することによって成形されるか、又は1つの量子井戸によって成形され、或いは、
各々の前記活性領域は複数の量子細線を積層することによって成形されるか、又は1つの量子細線によって成形され、或いは、
各々の前記活性領域は複数の量子ドットを積層することによって成形されるか、又は1つの量子ドットによって成形されることを特徴とする請求項1に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項3】
前記複数の量子井戸の積層では、複数の量子井戸はトンネル接合
部及び/又はバリア層を介して接続されることを特徴とする請求項
2に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項4】
前記カスケードされた活性領域は複数であり、隣接する2つの前記カスケードされた活性領域は前記トンネル接合
部によって接続されることを特徴とする請求項1に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項5】
前記活性領域の外側に設けられる電流閉じ込め
層をさらに備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項6】
前記電流閉じ込め
層の数は1層又は複数層であり、
前記電流閉じ込め層は前記活性領域の上層領域、下層領域又は中間領域に設けられることを特徴とする請求項
5に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項7】
前記電流閉じ込め
層はアルミニウム及びヒ素材料を含有する酸化層を使用するか、又は前記電流閉じ込め
層はイオン注入層を使用するか、又は前記電流閉じ込め
層は高抵抗層を使用することを特徴とする請求項
5に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項8】
前記半導体レーザーの出光口の位置に設けられる反射防止
層をさらに備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項9】
前記半導体レーザーの出力端の前記活性領域に近接して設けられる回折格子
層をさらに備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項10】
上反射
層及び下反射
層を含む反射層をさらに備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項11】
前記上反射
層及び前記下反射
層は分布ブラッグ反射構造、サブ波長回折格子構造、金属膜反射構造及び誘電体膜反射構造のうちの1種の構造又は任意の2種を組み合わせた構造であることを特徴とする請求項
10に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項12】
前記反射層は、高/低屈折率材料を積層することによって成形されるか、又は高/低屈折率材料を積層し、高/低屈折率材料の間に遷移層が存在することによって成形されることを特徴とする請求項
10に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【請求項13】
多活性領域を備えた垂直面発光レーザーであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の多活性領域をカスケードした
エレクトロルミネセンス半導体レーザー。
【国際調査報告】