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特表2023-506353医学的介入のための軌道を自動的に計画する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】医学的介入のための軌道を自動的に計画する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20230209BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230209BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230209BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20230209BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/20
G06T7/00 350C
G06V10/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519599
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 FR2020052513
(87)【国際公開番号】W WO2021123651
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1914780
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA06
5L096BA13
5L096FA69
5L096GA30
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
本発明は、患者(110)の対象の解剖学的構造(130)を標的とする医療器具(120)による医学的介入中に辿るべき軌道を自動的に計画する方法(200)に関し、前記自動計画方法は、対象の解剖学的構造(130)の少なくとも1つの医用画像を取得するステップと、先行して取得された画像において標的点(145)を決定するステップと、対象の解剖学的構造の医用画像及び先行して決定された標的点から一組の軌道計画パラメータを生成するステップとを含み、計画パラメータの組は、医用画像における進入点の座標を含む。パラメータの組は、ニューラルネットワークタイプの機械学習方法を使用して生成される。本発明は、得られた計画パラメータの組を実施する誘導装置(150)にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(110)の対象の解剖学的構造(130)を標的とする医療器具(120)による医学的介入中に辿るべき軌道を自動的に計画する方法(200)であって、
前記対象の解剖学的構造の少なくとも1つの医用画像(300)を取得するステップ(210)と、
先行して取得された画像(300)において標的点(145)を決定するステップ(220)と、
前記対象の解剖学的構造の前記医用画像から、且つ前記先行して決定された標的点から、一組の軌道計画パラメータを生成するステップ(240)であって、前記計画パラメータの組が、前記医用画像(300)における進入点(140)の座標を含む、ステップ(240)と、
を含み、
前記パラメータの組が、一組の医用訓練画像と称されるものに対して先行して訓練された、ニューラルネットワークタイプの機械学習方法(530)を使用して生成され、各医用訓練画像が、前記患者(110)の前記対象の解剖学的構造(130)に類似する対象の解剖学的構造を含み、各医用訓練画像が、先行して決定された標的点及び少なくとも1つの進入点の座標に関連付けられることを特徴とする、自動計画方法。
【請求項2】
前記機械学習方法が、前記取得された医用画像から、且つ前記取得された医用画像において先行して決定された前記標的点から、前記進入点の座標を決定する、請求項1に記載の自動計画方法。
【請求項3】
前記機械学習方法が、最初に、2次元又は3次元でそれぞれ取得された前記医用画像の各ピクセル又はボクセルに対して進入点である確率を生成し、前記進入点の座標が、最大の確率を有する前記ピクセル又はボクセルの座標に対応する、請求項1又は2に記載の自動計画方法。
【請求項4】
前記類似する医用画像の組が、複数の同一画像を含み、各同一画像が異なる進入点に関連付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項5】
前記類似する医用画像の組が、複数の同一画像を含み、各同一画像が、異なるオペレータによって選択された異なる進入点に関連付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項6】
前記対象の解剖学的構造に関連する情報が、前記医用画像の組の各医用画像に関連付けられ、前記情報が、前記対象の解剖学的構造又は前記対象の解剖学的構造に存在する腫瘍のタイプを含み、前記機械学習方法が、同じタイプの解剖学的構造又は腫瘍に関連する画像に制限された複数の前記医用画像の組に対して訓練される、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項7】
前記計画パラメータの組の前記進入点と前記取得された画像において先行して決定された前記標的点との間で画定された軌道に対してスコアを割り当てるステップも含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項8】
前記取得された画像がマッピングされ、前記軌道スコアの前記割当てが、以下の基準、
血管の近接性、
臓器の近接性、
骨構造の近接性、
組織界面に対する入射角、
前記軌道の長さ、
前記軌道が通過する組織の脆弱性
のうちの少なくとも1つの関数である、請求項7に記載の自動計画方法。
【請求項9】
前記軌道スコアの前記割当てが、前記医療器具が組織界面と接触したときに変形する確率を考慮する、請求項7又は8に記載の自動計画方法。
【請求項10】
前記軌道スコアの前記割当てが、前記計画された軌道に類似する軌道に関連する再発率を考慮する、請求項7~9のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項11】
前記軌道スコアの前記割当てが、前記計画された軌道に類似する軌道に関連する回復時間を考慮する、請求項7~10のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項12】
前記軌道に割り当てられた前記スコアが閾値スコアと比較されるステップも含み、前記軌道スコアが前記閾値スコア以上である場合に前記軌道が検証される、請求項7~11のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項13】
前記軌道に割り当てられた前記スコアが前記閾値スコアを下回る場合、前記進入点を修正するステップも含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の自動計画方法。
【請求項14】
医療器具を誘導する装置であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の自動計画方法によって得られた計画パラメータの組に従って医療器具を誘導する手段を備える、装置。
【請求項15】
ロボット誘導装置、ロボット装置に関連するか又は関連しないナビゲーションシステム、拡張現実装置、患者固有のガイド、又は前記患者の前記解剖学的構造の3次元モデルのいずれかである、請求項14に記載の誘導する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術的分野
本発明の分野は、医学的介入の計画を支援する分野である。
【0002】
より具体的には、本発明は、医学的介入中に実施される医療器具の軌道を自動的に計画する方法と、関連する誘導装置とに関する。
【0003】
本発明は、例えば、臓器内の腫瘍を焼灼するために、生検を実施するために、椎体形成術若しくは骨セメント療法(cementoplasty)を実施するために、又は解剖学的ゾーンを刺激するために、医療器具が対象の解剖学的構造内に挿入される、医学的介入の状況において、特に適用される。こうした介入は、任意選択的に、医療用ロボットにより及び/又は拡張現実装置により支援することができる。
【背景技術】
【0004】
従来技術
従来技術は、肺、腎臓、肝臓、脳、脛骨、膝、椎骨等、患者の対象の解剖学的構造における標的解剖学的ゾーンに達することを目的とする医学的介入を準備するのを可能にする技法を開示している。
【0005】
従来、医学的介入の計画は、従来の医療撮像法によって得られる医用画像に基づき、オペレータにより手動で行われてきた。
【0006】
計画中、オペレータは、対象の解剖学的構造における標的点と、対象の解剖学的構造に近接する患者の皮膚の進入点とを画定し、これらの2つの点は、医学的介入中に使用される医療器具の直線の軌道を画定する。こうした器具は、例えば、針、プローブ又は電極であり得る。
【0007】
医療器具が辿る軌道は、医学的介入が円滑に行われるために必要な多くの制約を考慮しなければならないため、オペレータは、そうした軌道に注意を払わなければならない。例えば、医療器具は、骨又は血管、特に、3ミリメートルを超える直径を有する血管を通過しないこと、又は重要臓器を通過しないことが重要である場合がある。
【0008】
オペレータが標的点に従って進入点を選択するのを支援するために、事前定義された基準に従って対応する各軌道にスコアを関連付けることにより、先行して定義された制約に応じて、1つ又は複数の進入点がオペレータに自動的に提案される、計画技法が開発された。
【0009】
この種の技法は、例えば、「低侵襲療法のための計画、ナビゲーション、シミュレーションシステム及び方法(Planning, navigation and simulation systems and methods for minimally invasive therapy)」と題する米国特許出願公開第2017/0148213A1号の番号の下で公開された特許出願に記載されている。前記特許出願に記載されている方法は、軌道に関連する制約を最小限にすることができるように画像がセグメント化される従来の画像処理アルゴリズムを使用して、軌道を決定する。例えば、脳に対する手術中、影響を受ける線維の数、皮質溝の境界と標的との間の距離、軌道によって変位する白質及び/又は灰白質の体積を最小化する等、いくつかのパラメータの最適化によって軌道を決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術における技法の主な不都合は、それら技法が、一般に、不十分及び不完全であることが多い、理論的モデルを作成するためにオペレータによって選択される制約の最小化に基づくということである。加えて、それら技法は、異なるあり得る軌道を最適に計算することができるために、画像の系統的なセグメンテーションを必要とする。このセグメンテーションは、場合により不正確及び不完全であることが判明しており、医療器具によって使用される軌道に誤りをもたらす可能性がある。
【0011】
さらに、これらの技法は、医療器具、例えば針の、その端部が患者の体内に挿入されるときのあり得る変形を考慮しない。
【0012】
最後に、医療器具の最適な軌道を決定するために、画像から、血管等、回避すべき領域と、医療器具が通過しなければならない領域とを選択するために、熟練したオペレータもまた定期的に介入する。
【0013】
オペレータによる介入は、そうした介入がこの種の介入においてオペレータの側に多大な注意及び経験を必要とするため、面倒であるとともに制約の多いものであることが判明している。
【0014】
現行のシステムのいずれも、要求される必要のすべてを同時に満たすことができず、すなわち、より正確であるとともにより信頼性の高い計画を可能にしながら、患者の対象の解剖学的構造における標的に到達することを目的とする医学的介入を自動的に計画する改善された技法であって、オペレータから独立している技法を利用可能にすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の開示
本発明は、上述した従来技術の不都合のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【0016】
このために、本発明は、患者の対象の解剖学的構造を標的とする医療器具による医学的介入中に辿るべき軌道を自動的に計画する方法に関し、前記自動計画方法は、
-対象の解剖学的構造の少なくとも1つの医用画像を取得するステップと、
-先行して取得された画像において標的点を決定するステップと、
-対象の解剖学的構造の画像と先行して決定された標的点とに基づき、一組の軌道計画パラメータを生成するステップであって、計画パラメータの組が、医用画像における進入点の座標を含む、ステップと、
を含む。
【0017】
こうした方法は、医学的介入の前に使用され、患者の体内に挿入することができる針、プローブ、電極又は他の任意の医療器具であり得る医療器具の操作中に、患者に関連付けられた基準点を使用して、医師又は外科医を誘導する一組のパラメータを提供することを可能にする。この基準点は、空間的に医療器具を誘導するために、概して3次元である。
【0018】
医学的介入の目的は、例えば、臓器内の腫瘍を焼灼するために、生検を実施するために、椎体形成術若しくは骨セメント療法を実施するために、又は解剖学的ゾーンを刺激するために、患者の身体の標的解剖学的ゾーンに達することである。標的解剖学的ゾーンは、患者の対象の解剖学的構造内に又はその表面に位置する。こうした対象の解剖学的構造は、例えば、肺、腎臓、肝臓、脛骨、膝、椎骨又は脳である。
【0019】
計画に使用される医用画像は、例えば、コンピュータ断層撮影法により、磁気共鳴画像法により、超音波により、陽電子放出断層撮影法により、又は他の任意の医用撮像方法により得られている。
【0020】
本発明によれば、パラメータの組は、一組の医用訓練画像と称されるものに対して先行して訓練された、ニューラルネットワークタイプの機械学習方法を実施することにより生成され、各医用訓練画像は、患者の対象の解剖学的構造に類似する対象の解剖学的構造を含み、各医用訓練画像は、予め決定された標的点及び少なくとも1つの進入点の座標に関連付けられる。
【0021】
したがって、本計画方法は、いかなるオペレータも使用することができ、オペレータは、医用画像において標的点を選択するだけでよい。
【0022】
本計画方法は、類似する医用画像の機械学習に基づき、それらの医用画像の各々は、進入点及び標的点が関連付けられることが留意されるべきである。
【0023】
類似する医用画像とは、同一の又は同等の撮像方法によって取得されるとともに、任意の個人に対して撮影された医用画像における同じ対象の解剖学的構造を含む画像を意味するものと理解される。医学的介入のタイプ、医療器具のタイプ、又は標的とされる対象の解剖学的構造は、得られる計画パラメータの精度を損なうことなく、別個であり得ることが留意されるべきである。学習により、患者の対象の解剖学的構造の医用画像においてオペレータによって選択された標的点までの最適な軌道を決定するために、新たな画像を分析することが実際に可能になる。
【0024】
医用訓練画像は、概して、個人が受ける医学的介入の間に実際に使用される進入点と、器具の挿入に続いて器具が実際に到達する標的点とに関連付けられることが留意されるべきである。医用訓練画像の組を完成させるために、オペレータによって選択された、想定された進入点に関連する医用画像を、その組に追加することができる。
【0025】
加えて、自動計画方法は、有利には、非セグメント化医用画像、すなわち、画像のすべて又は一部が、その画像の一部に存在する組織、臓器又は血管のタイプに従って特徴付けられる画像の、学習に基づく。したがって、本計画方法による画像の処理は、より迅速である。
【0026】
医用訓練画像の組は、概して、データベースに、又は医用画像バンクに含まれる。
【0027】
自動計画方法は、概して、少なくとも1つのあり得る軌道に対する計画パラメータを提供する。自動計画方法がいくつかのあり得る軌道に対する計画パラメータを提供する場合、オペレータは、通常、自身に最良と思われる軌道を手動で選択する。軌道は、概して、組織界面(例えば、皮膚、肝被膜等)に対する入射角、軌道における血管、臓器又は骨構造の近接性等、医学的介入に特有の多くの基準を満たすとき、最良であるとみなされることが留意されるべきである。
【0028】
自動計画方法は、任意の医療行為、手術行為又は治療行為の前に実施されることが留意されるべきである。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、機械学習方法は、取得された医用画像と取得された医用画像において先行して決定された標的点とに基づき、進入点の座標を決定する。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、機械学習方法は、最初に、2次元又は3次元でそれぞれ取得された医用画像の各ピクセル又はボクセルに対して進入点である確率を生成し、進入点の座標は、最大の確率を有するピクセル又はボクセルの座標に対応する。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、類似する医用画像の組は、複数の同一画像を含み、各同一画像は異なる進入点に関連付けられる。
【0032】
したがって、医用画像の組は医療器具に対するあり得る軌道変形を含むため、学習が改善される。
【0033】
有利には、類似する医用画像の組は、複数の同一画像を含み、各同一画像は、異なるオペレータによって選択された異なる進入点に関連付けられる。
【0034】
したがって、得られる計画パラメータは、特定のオペレータの選択の影響を受けにくいため、より高精度になる。得られる計画パラメータの精度は、学習段階の間に同じ医用画像の解析に関与するオペレータの数によって決まることが留意されるべきである。
【0035】
好ましくは、類似する医用画像の組は、少なくとも3つの同一画像を含み、各同一画像は、異なるオペレータにより異なる進入点に関連付けられる。
【0036】
したがって、学習段階の間に使用される医用画像の組を含むデータベースの生成に、少なくとも3人のオペレータが関与する。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、対象の解剖学的構造に関連する情報は、医用画像の組の各医用画像に関連付けられ、情報は、対象の解剖学的構造又は対象の解剖学的構造に存在する腫瘍のタイプを含み、機械学習方法は、同じタイプの解剖学的構造又は腫瘍に関連する画像に制限された複数の医用画像の組に対して訓練される。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、自動計画方法は、計画パラメータの組の進入点と取得された画像において予め決定された標的点との間で画定された軌道に対してスコアを割り当てるステップも含む。
【0039】
したがって、オペレータは、自動計画方法によって提供されるあり得る軌道の中からの軌道の自身の選択が支援される。スコアは、概して、医学的介入に特有である基準に従って割り当てられる。
【0040】
計画パラメータの組の進入点と取得された画像において先行して決定された標的点との間で画定された軌道は、概して直線である。しかしながら、医療器具の剛性を考慮するために、軌道が曲線である、例えば、最大曲率半径を有する円の弧に実質的に沿うことを想定することができる。概して、曲線軌道は、凹状又は凸状のいずれかである。言い換えれば、曲線軌道の微分は、概して、進入点と標的点との間で負又は正の一定の符号を有する。
【0041】
好ましくは、軌道スコアの割当ては、以下の基準、
-血管の近接性、
-臓器の近接性、
-骨構造の近接性、
-組織界面に対する入射角、
-軌道の長さ、
-軌道が通過する組織の脆弱性
のうちの少なくとも1つによって決まる。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、軌道スコアの割当ては、医療器具が組織界面と接触したときに変形する確率を考慮する。
【0043】
この変形は、概して、医療器具が可撓性部分、すなわち、患者の皮膚を通して医療器具を挿入する間に組織界面と接触したときに変形する可能性がある部分を有する場合に発生する。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、軌道スコアの割当ては、計画された軌道に類似する軌道に関連する再発率又は回復時間を考慮する。
【0045】
したがって、計画された軌道により、患者にとって高すぎる再発率又は長すぎる回復時間がもたらされる場合、軌道に割り当てられるスコアはマイナスの影響を受ける。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、自動計画方法は、軌道に割り当てられたスコアが閾値スコアと比較されるステップも含み、軌道は、軌道スコアが閾値スコア以上である場合に検証される。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、自動計画方法は、軌道に割り当てられたスコアが閾値スコアを下回る場合、進入点を修正するステップも含む。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、取得された医用画像は2次元又は3次元である。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、医用画像は、磁気共鳴により、超音波により、コンピュータ断層撮影法により、又は陽電子放出断層撮影法により取得される。
【0050】
本発明はまた、医療器具を誘導する装置であって、先行する実施形態のうちの任意の1つによる自動計画方法によって得られた計画パラメータの組に従って医療器具を誘導する手段を備える装置に関する。
【0051】
誘導装置は、ロボット装置、ロボット装置に関連するか又は関連しないナビゲーションシステム、拡張現実装置、患者固有のガイド、又は患者の解剖学的構造の3次元モデルであり得る。
【0052】
医療器具を誘導する装置により、医学的介入を実施する医師に同行することが可能になることが留意されるべきである。
【0053】
図面の簡単な説明
本発明の他の利点、目的及び特定の特徴は、添付図面を参照して、本発明の主題である装置及び方法の少なくとも1つの特定の実施形態の以下の非限定的な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による自動計画方法によって確立された一組のパラメータに従って医療器具が誘導される、医学的介入の概略図である。
図2】本発明の特定の実施形態による自動計画方法のブロック図である。
図3図2の計画方法の第1ステップ中に取得された医用画像の一例である。
図4図2の方法によって実施されるニューラルネットワークの訓練中に使用される医用画像の一例である。
図5図2の方法によって実施されるニューラルネットワークの訓練段階の概略図である。
図6図2の方法によって実施されるとともに図5の訓練段階に従って訓練されたニューラルネットワークの展開の概略図である。
図7図2の方法によって実施されるとともに代替的な訓練段階に従って訓練されたニューラルネットワークの展開の概略図である。
図8】同じ患者の2つの医用画像を示し、一方は医療器具が挿入されており、他方は医療器具なしの同じ図に対応し、前記画像は、医療器具の曲線軌道を画定するように構成されたニューラルネットワークを学習しているときに使用される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
発明の詳細な説明
この説明は限定なしに与えられ、ある実施形態の各特徴は、他の任意の実施形態の他の任意の特徴と、有利な様式で組み合わせることができる。
【0056】
ここでは、図は正確な尺度ではないことが留意されよう。
【0057】
特定の実施形態の例
図1は、台115の上に横たわっている患者110が医療器具120を採用して治療される医学的介入の概略図である。本発明の本非限定的例では、医学的介入は、この場合、半硬質針である医療器具120による、ここでは患者110の肝臓である、対象の解剖学的構造130における腫瘍のアブレーションに対応する。ここでの医学的介入は、患者110の身体が切開されない経皮的処置である。加えて、医学的介入は、異なる治療パラメータに従って実施することができる。こうした治療パラメータは、例えば、アブレーション治療の持続時間及び出力、エレクトロポレーションによる治療の場合に印加される電圧、又は高周波による治療の場合に印加される周波数である。本例は、例示として与えられることと、当業者であれば、患者の対象の解剖学的構造を目標とする任意の医療器具を使用する任意のタイプの医学的介入に対して後述する発明を実施することができることとが留意されるべきである。
【0058】
本例における医療器具120は、予め決定された標的点145を目標とするために、患者110の皮膚のレベルの進入点140の座標、又はさらには患者110に関連付けられた3次元基準系において辿るべき角度を含む、一組の計画パラメータの事前の確立により、直線経路に沿って装置150により有利に誘導される。計画パラメータの組は、図2においてブロック図の形態で示すような、本発明による自動計画方法200によって確立される。
【0059】
医学的介入中に医療器具120が辿るべき軌道を自動的に計画する方法200は、患者110の対象の解剖学的構造130の少なくとも1つの医用画像を取得する第1ステップ210を含む。
【0060】
医用画像は、概して、磁気共鳴画像(MRI)装置、CTスキャナ、スペクトルスキャナ又は超音波装置等の医療撮像専用の機器を使用して、医学的介入の前に撮影される。
【0061】
図3に、コンピュータ断層撮影法によって取得され、患者110の対象の解剖学的構造130に対応する、一般にファントムと称するモデルを示す、医用画像300の一例を提示する。医用画像300は、患者110の脊柱の軸に対して実質的に垂直な平面による患者110の断面図に対応する。対象の解剖学的構造130に加えて、医用画像300は、脊柱の椎骨310と6本の肋骨320も特に明らかにする。
【0062】
先行して取得された医用画像300において、標的点145は、自動計画方法200の第2ステップ220中に、オペレータにより手動で又は画像解析により自動的に決定される。
【0063】
標的点145は、医用画像300における座標に関連付けられている。これらの座標は、取得される医用画像のタイプに応じて2次元又は3次元である。2次元医用画像300の場合、標的点145は、画像の1つのピクセルに実質的に対応する。3次元医用画像300の場合、標的点145は、画像の1つのボクセルに実質的に対応する。
【0064】
医用画像300から、且つ標的点145から、医療器具120が辿るべき軌道を計画するための一組のパラメータの進入点の座標を決定するために、ここではニューラルネットワークタイプの機械学習アルゴリズムが、自動計画方法200の第3ステップ230中にロードされる。
【0065】
ニューラルネットワークは、学習段階290の間に一組の医用訓練画像に対して予め訓練されており、医用訓練画像の各々は、対象の解剖学的構造130と同様の対象の解剖学的構造を含む。医用訓練画像は、概して、個々のコホートに対して取得されており、各医用訓練画像は、概して少なくとも1人のオペレータによって先行して決定されている標的点及び進入点の座標に関連付けられている。
【0066】
有利には、医用訓練画像の組は、同じであるが、概して少なくとも3人のオペレータによって決定される異なる進入点に関連付けられた医用画像を何回か含む。
【0067】
図4は、毎回同じ標的点420を含む同じ医用画像400の一例を示す。この医用画像400は、医用訓練画像の組に9回含まれており、3人の別々のオペレータ01、02及び03によって処理され、オペレータ01、02及び03は各々、3つの進入点、それぞれ41001、41002、41003を提供している。
【0068】
ニューラルネットワークの訓練は、ニューラルネットワークが得ることができる計画パラメータの組の変動性を低減させることにより一貫性を向上させるために、対象の解剖学的領域、又は対象の解剖学的構造に存在する腫瘍のタイプ等、所与の情報項目に関連する画像に、有利に制限することができる。
【0069】
特に、医用訓練画像の組が対象の解剖学的構造の3次元画像を含む場合、ニューラルネットワークの訓練に対してハードウェアの制限がある可能性があることが留意されるべきである。これらのハードウェアの制限を克服するために、各医用画像の解像度を低下させることが可能であるが、それには、ニューラルネットワークによって得られるパラメータの精度が低下する危険性がある。患者の脊柱の軸に対して垂直な平面等、所定の平面に対して平行な軌道に訓練を制限することも可能である。ハードウェアの制限を克服する別の解決法は、機械学習に専用である、一般にテンソルプロセッサユニットと称されるチップを使用することであり得る。
【0070】
図5により詳細に示すように、ニューラルネットワークを訓練する段階290は、概して、繰り返すことができる2つの主なステップ510、520を含み、一組の医用画像を含むデータベース501を必要とし、各画像は、進入点及び標的点に関連付けられている。任意選択的に、器具の長さ又は器具の剛性係数等、介入を実施するために使用される器具の特性に関する情報もまた、データベース501の各医用画像に関連付けられる。訓練段階290の後、あり得るテスト段階550を実施することができる。
【0071】
医用画像のデータベース501は、異なる医用画像を含む3つのデータベース502、503、504に分割される。3つのデータベース502、503、504は、それぞれ、訓練ベース、検証ベース及びテストベースと称される。
【0072】
本発明の本非限定的例では、データベース501の医用画像の60~98%は、訓練ベース502に、1~20%は検証ベース503に、1~20%はテストベース504に合わせてグループ化される。パーセンテージは、概してデータベース501における画像の数の関数であり、ここでは、表示のために与えられる。
【0073】
訓練段階の第1ステップ510の間、訓練ベース502の医用画像515を使用して、軌道計画パラメータの組の進入点の座標を得るために使用されるニューラルネットワーク530の各ニューロンに対する重みW及びバイアスbが決定される。
【0074】
各ニューロンの重みW及びバイアスbを決定するために、訓練ベース502の各医用画像515は、2つの変形、すなわち、標的点Cのみを含む第1変形515と、標的点C及び所定の進入点pの両方を含む第2変形515とに従って、ニューラルネットワーク530に提案される。次いで、ニューラルネットワーク530は、医用画像の第1変形515から、進入点p’の位置に関して予測535を行う。予測された進入点p’の座標は、医用画像の第2変形515に関連付けられた所定の進入点pの位置の座標と比較される。そして、予測された進入点p’の座標と所定の進入点pの座標との誤差を使用して、ニューラルネットワーク530の各ニューロンのパラメータW及びbが調整される。訓練段階の第1ステップ510の最後に、モデル518が得られる。
【0075】
訓練段階の第2ステップ520の間、有利には医用画像515とは異なる検証ベース503の医用画像525を使用して、ニューラルネットワーク530の各ニューロンの重みW及びバイアスbが検証される。
【0076】
訓練段階290のこの第2ステップ520の間、標的点cの位置のみを含む各医用画像の変形525が、ニューラルネットワーク530に提案される。次いで、ニューラルネットワーク530は、進入点d’の位置に関して予測536を行う。予測された進入点d’の座標は、検証に使用された医用画像525に関連付けられた所定の進入点dの位置の座標と比較される。そして、予測された進入点d’の座標と所定の進入点dの座標との誤差を使用して、第1ステップ510で決定されたニューラルネットワーク530の各ニューロンのパラメータW及びbが検証される。
【0077】
この第2ステップ520の最後に、ニューラルネットワークの予測誤差が大きすぎる場合、同じ医用訓練画像515及び検証画像525を再使用することにより、上述した訓練段階290の2つのステップ510及び520に従って、ニューラルネットワーク530が再訓練される。
【0078】
別法として、ニューラルネットワーク530の再訓練の間、第1ステップ510は、検証画像525のすべて又は一部を使用する。ニューラルネットワークを再訓練する第2ステップ520は、再訓練の第1ステップ510に使用された検証画像525の数と同じ数の訓練画像515を使用する。
【0079】
ニューラルネットワーク530は、予測誤差を低減させるために必要な回数だけ再訓練することができることが留意されるべきである。
【0080】
訓練段階290の2つのステップ510、520が少なくとも1回実施されると、あり得るテスト段階550の間、テストベース504の医用画像555を用いてニューラルネットワークの最終的な性能をテストすることができる。有利には画像515及び525とは異なるこれらの医用画像555により、各ニューロンに対するパラメータW及びbで構成されたニューラルネットワーク530によって、ニューラルネットワーク530が直面する可能性が高いすべての状況において進入点の座標を良好な精度で予測することができることを、検証することができる。したがって、ニューラルネットワーク530によって予測されるような進入点f’の座標と、いわゆるテスト医用画像555における所定の進入点fとの比較が行われる。この比較は、訓練段階の第2ステップ520中に実行されるものと同一である。しかしながら、ステップ520とは対照的に、このテスト段階550は、ニューラルネットワーク530の新たな訓練サイクルをもたらさない。ステップ550の最後においてニューラルネットワーク530の性能が良好でない場合、訓練段階290は、新たな訓練されていないニューラルネットワークで再開される。
【0081】
テスト段階550で使用される画像555は、概して、訓練ネットワーク530の予測能力を最適にテストするために、対象の解剖学的構造における標的点cの種々の位置を包含するように、注意深く選択されることが留意されるべきである。
【0082】
代替的な訓練段階では、ニューラルネットワークを訓練して、医用画像の各ピクセル又はボクセルに対して、実際に進入点に対応する確率を提供することができる。この代替的な訓練に使用される医用画像の組は、以前に使用された医用画像の組と同一であり得る。しかしながら、この代替的な訓練に対して、同じ画像にいくつかの進入点を有する医用画像を使用することが好ましい場合がある。有利には、同じ画像に表示される進入点は、少なくとも3人の異なるオペレータによって決定される。ニューラルネットワークの代替的な訓練は、上述した訓練段階と同様の3つのステップで行われる。
【0083】
先行して訓練されたニューラルネットワークにより、自動計画方法200の第4ステップ240の間、分析に基づいて医療器具120が辿るべき軌道を計画するための少なくとも一組のパラメータを決定することができる。
【0084】
訓練段階290に従ってニューラルネットワークが訓練される場合、ニューラルネットワーク530は、図6に示すように、医用画像Iから且つ標的点Tの座標から、取得された医用画像における進入点の3次元座標(x,y,z)を提供する。
【0085】
代替的な訓練段階に従ってニューラルネットワークが訓練される場合、ニューラルネットワーク530は、図7に示すように、医用画像Iから且つ標的点Tの座標から、医用画像の各ピクセル又はボクセルについて、進入点である確率を提供する。そして、最も高い確率を有するピクセル又はボクセルが、進入点であるとして選択される。
【0086】
図2に示す自動計画方法200は、ニューラルネットワークによって生成される一組の計画パラメータを用いて軌道が決定されるときに実施される第5ステップ250を含む。この第5ステップ250の間、進入点と標的点とを結ぶ直線によって画定される軌道に、スコアが割り当てられる。
【0087】
例えば、軌道に割り当てられるスコアは、0~100であり、100のスコアは理想的な軌道のスコアに対応する。
【0088】
本発明のこの特定の実施形態の変形では、軌道は曲線であり、例えば、事前にセグメント化された取得された医用画像における最も可能性の高い軌道を計算することにより、又は、特に剛性及び長さに関して同様の又は同一の医療器具が以前の医学的介入中に辿った軌道を先行して学習したニューラルネットワークにより、得られる。そして、パラメータの組は、進入点と標的点との間の予測された軌道を画定するのを可能にする追加のパラメータを含む。
【0089】
本発明のこれらの代替実施形態の例示のために、図8は、医療器具840があるか又はない、患者830の2つの医用画像810、820を示す。2つの医用画像810及び820の差を付けることにより、医療器具8840が実際に辿った軌道を決定することができる。この軌道は、医用画像810における医療器具840の認識を実行することにより、例えば、医用画像810において医療器具840の経路を定めるために、医用画像810のピクセル/ボクセルにおける強度又はコントラストの強い変動を検出することによってもまた、決定することができる。
【0090】
軌道スコアは、概して、重要性の順序でランク付けすることができる基準に基づいて決定される。以下に記載する基準の例は限定的ではなく、所与の医学的介入に特有の他の基準を使用して軌道スコアを決定することができることが留意されるべきである。
【0091】
軌道スコアは、例えば、血管への軌道の近接性の関数として計算することができる。これは、医療器具の軌道が血管を通過する可能性が高いとき、出血が発生する危険性があるためである。したがって、軌道に存在する血管の数が多いほど、その軌道に割り当てられるスコアは低くなる。
【0092】
このスコアの評価において、血管のサイズを考慮することができることが留意されるべきである。例えば、3mm以上の直径を有する血管が、ニューラルネットワークによって計算された軌道上に又はその近くに位置する場合、これらの血管は患者にとって重要である可能性があるため、0~100のスケールで例えば50点、スコアから自動的に点数が差し引かれる。通過する血管が、大静脈、門脈又は大動脈であることが判明した場合、スコアは自動的に0に等しく、これは、特に肝臓から腫瘍を除去する場合にあり得る。
【0093】
軌道スコアは、臓器及び/又は骨構造に対する軌道の近接性に従って計算することもできる。
【0094】
実際には、いくつかの介入、例えば軟組織に対する介入では、軌道に骨構造が位置してはならない。位置する場合、その軌道に割り当てられるスコアはゼロである。
【0095】
他の介入、例えば、膝又は肩等の骨構造に対する介入では、骨構造を通過することは、割り当てられたスコアにマイナスの影響を与えない。より正確には、軌道が所定の骨構造を通過する場合、割り当てられたスコアが増加する場合がある。
【0096】
臓器に関して、肺、腸又は筋肉等、危険な臓器が、少なくとも軌道に近接して位置している場合、軌道スコアは概して減少する。これは、神経、胆管、靭帯、腱、又は対象の解剖学的構造の隣接する臓器が、少なくとも軌道に近接して位置している場合にも当てはまる。
【0097】
軌道スコアは、軌道の進入点における組織界面への入射角に従って計算することもできる。
【0098】
例えば、皮膚又は肝被膜等の組織界面に対して接線方向の軌道に沿って半硬質針を挿入する場合、針が曲がって、計画された軌道を辿らない危険性がある。軌道と組織界面との間の角度が小さいほど、軌道スコアは低くなる。この基準には、最適な軌道が、20°超の組織界面と軌道との間の角度に対応するという事実が反映される可能性がある。
【0099】
軌道スコアは、軌道の骨構造への入射角によって計算することもできる。
【0100】
例えば、骨構造に対する介入の場合、医療器具が、骨に対して接線方向に挿入されるときに骨の上で滑る危険性がある。そのため、基準には、軌道と骨構造との間の角度が大きいほど軌道スコアが低いという事実が反映される。
【0101】
軌道スコアは、軌道の長さに従って、軌道の長さと患者の体内に損傷をもたらす固有の危険性とを最小限にするように計算することもできる。
【0102】
軌道スコアは、通過する組織の脆弱性に従って計算することもできる。
【0103】
例えば、患者の脳に対する介入の特定の場合では、計画された軌道が脆弱な組織を通過する場合、軌道スコアが低下する場合がある。
【0104】
半硬質針の挿入の場合、挿入中に針が変形する確率に従ってスコアを計算することもできる。この確率は、長さ、剛性係数、又は針の傾斜の形状等、使用される針のタイプに関する情報と、先行して決定された情報、すなわち、通過した組織のタイプ、入射角及び/又は軌道の長さと組み合わせて計算される。
【0105】
軌道スコアを計算するために、組織、血管、骨構造等、取得された画像に存在し、予測された進入点と所定の標的点との間で画定された軌道上に又は軌道に近接して位置する、異なるタイプの要素を特定するように、取得された医用画像は予めセグメント化されている場合があることが留意されるべきである。この取得された画像のセグメンテーションは、医療器具の軌道が生成されるときにのみ使用され、ニューラルネットワークによる軌道の生成中には使用されない。
【0106】
医学的介入に特有の基準に従って得られた軌道スコアに対して、再発率の関数として及び/又は回復時間により重み付けすることができる。
【0107】
再発率に関して、ニューラルネットワークによって計画された軌道が、同じ医療器具を用いた先行する医学的介入の間に同じ治療パラメータで使用され、これらの医学的介入を受けた個人の再発率が顕著である軌道と類似している場合、得られるスコアが減少する。
【0108】
同様に、回復時間に関して、計画された軌道に類似する軌道で医学的介入を受けた個人に対する先行して観察された回復時間が、長い、例えば3日を超える場合、得られるスコアが減少する。
【0109】
そして、計画された軌道に割り当てられたスコアが、自動計画方法200の第6ステップの間に閾値スコアと比較される。
【0110】
例えば、0~100のスケールで、割り当てられたスコアが50以上である場合のみ、計画された軌道を検証することができる。好ましくは、計画された軌道は、そのスコアが70以上である場合に検証される。
【0111】
軌道に割り当てられたスコアが閾値スコアを下回る場合、オペレータは、自動計画方法200のあり得る第7ステップ270の間に、進入点を手動で修正する選択肢を有する。この修正は、例えば、修正された軌道のスコアが閾値スコアを上回るまで、グラフィカルインタフェースを介して行われる。
【0112】
別法として、軌道は、勾配アルゴリズム、グラフアルゴリズム、又は他の任意の最適化アルゴリズム(Momentum、Nesterov Momentum、AdaGrad、RMSProp、Adam等)を使用して自動的に修正することができる。
【0113】
最後に、場合によっては修正されたニューラルネットワークによって提供された軌道に対するスコアが、閾値スコア以上であるとき、軌道は、自動計画方法200の第8ステップ280の間に検証される。
【0114】
そして、検証された軌道は、患者110の対象の解剖学的構造130内に、非常に良好な精度で、医学的介入がうまくいく可能性が最も高く、医療器具120の挿入を誘導するために、医学的介入中に使用することができる。
【0115】
誘導に使用される基準系は、患者110が横たわっている台115に概して対応することが留意されるべきである。標的点の座標は、患者110の特徴点が予め較正されている誘導基準系に有利に変換される。この誘導基準系の変換及び較正の操作は一般的である。
【0116】
次いで、誘導装置150を使用して、検証された軌道の計画パラメータの組を辿ることにより、医療器具120を誘導することができる。
【0117】
誘導装置150は、ロボット装置、ロボット装置に関連するか又は関連しないナビゲーションシステム、拡張現実装置、患者固有のガイド110、又は患者110の解剖学的構造の3次元モデルであり得る。
【0118】
拡張現実装置は、例えば、眼鏡とすることができ、そこでは、計画された軌道は、眼鏡のレンズのうちの少なくとも一方に投影される。拡張現実装置は、患者110に近接して配置されるスクリーンとすることもでき、スクリーンは、計画された軌道を表示する。拡張現実装置は、計画された軌道を患者110の身体上に投影するプロジェクタを含むこともでき、又は、ホログラフィック装置とすることができる。
【0119】
誘導装置は、光学ナビゲーション手段、電磁ナビゲーション手段、又は加速度センサ及び回転センサを有する慣性ユニットを含むことができる。
【0120】
検証された軌道の計画パラメータの組を使用して、患者固有のガイド110を構築することができる。この固有のガイドは、概して、骨構造に対する切開手術等の医学的介入の状況で使用される。患者固有のガイドは、概して3D印刷された、パーソナライズされた単回使用医療デバイスであることが留意されるべきである。患者固有のガイドは、計画通りに介入を実施するために、手術中の不正確さを防止するのに役立つ。固有のガイドは、概して、対象の解剖学的構造に対応する骨構造の形状に適合し、計画された軌道の向きに従って医療器具の挿入を誘導するのを可能にすることができる。
【0121】
いくつかの医学的介入の場合、医学的介入の前の訓練を可能にするために、一般にファントムと称する患者110の解剖学的構造の3次元モデルが構築される。そして、患者110の解剖学的構造の3次元モデルは、有利に、自動計画方法200によって得られた軌道の計画パラメータの組において定義されたような医療器具の進入点の表示を含むことができる。
【0122】
自動計画方法200によって得られた結果は、医学的介入を、同業者、例えば医師、外科医若しくは放射線技師、又はさらには、医学的介入を受ける患者110に提示するためにも使用することができる。これらの結果を使用して、医学的介入において同業者を訓練することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
【国際調査報告】