(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】一酸化炭素の生成
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20230209BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230209BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20230209BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20230209BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20230209BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B9/00 Z
C25B9/19
C25B9/67
C25B15/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521234
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020078128
(87)【国際公開番号】W WO2021069498
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019127037.5
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522140563
【氏名又は名称】フォルシュンクスツェントラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォワ,ゼーフェリン
(72)【発明者】
【氏名】ディットリヒ,ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】デ ハールト,エル.ジー.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アイヒェル,リュディガー-エー.
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AB25
4K021BB05
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC15
(57)【要約】
本発明は、一酸化炭素を生成する方法であって、
a)二酸化炭素を含む反応物ガスを、水により加湿するステップと、
b)ステップa)からの加湿された反応物ガスを、電解槽(1)に供給するステップと、
c)ステップb)により供給された加湿された反応物ガスを電解槽(1)において電解して、一酸化炭素を得るステップとを含む方法に関する。
本方法及び装置(12)を用いれば、CO
2電解により、一酸化炭素を特に高い効率で生成することができる。これは、電解前に加湿された、二酸化炭素を含む反応物ガスにより実現される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素を生成する方法であって、
a)二酸化炭素を含む反応物ガスを、水で加湿するステップと、
b)ステップa)からの前記加湿された反応物ガスを、電解槽(1)に供給するステップと、
c)ステップb)により供給された前記加湿された反応物ガスを前記電解槽(1)において電解して、一酸化炭素を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記反応物ガスは、ステップa)において、前記水に通される
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
ステップa)における前記水は、18℃から25℃の範囲内の温度である
方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、
ステップa)における前記水は、25℃から40℃の範囲内の温度である
方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
ステップa)で使用された前記水は、ステップc)における前記電解の生成物の熱によって加熱される
方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、
ステップa)は、前記加湿された反応物ガスの水分含量がステップa)の後において2%から6%となるような仕方で、行われる
方法。
【請求項7】
一酸化炭素を生成する装置(12)であって、
電解槽(1)であって、
少なくとも1つの電解質(10)によって互いに分離された陽極(2)及び陰極(3)と、
前記陰極(3)に隣接する陰極室(5)と
を有する電解槽(1)と、
加湿器(11)を有する、前記陰極室(5)への供給路(13)と
を備える装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置(12)であって、
前記装置(12)は、加熱手段(15)をさらに備え、
前記加熱手段(15)は、前記電解槽(1)で生じる電解の生成物によって、前記加湿器(11)内の水を加熱するためのものである
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素を生成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー生成プロセスの多くは、二酸化炭素を放出する。大気中の二酸化炭素による気候に有害な影響を低減するために、二酸化炭素を他の物質に変換することが可能である。しかしながら、これは、二酸化炭素は安定しており反応性が低いということからさらに困難になる。また、二酸化炭素分子中の炭素は、その最も酸化された状態となっている。したがって、二酸化炭素は、燃焼によりエネルギーを生成するために使用することはもうできない。
【0003】
しかしながら、二酸化炭素は、エネルギーを供給することによって一酸化炭素に還元することができる。一酸化炭素中の炭素は、二酸化炭素中の炭素よりも低い酸化状態にある。したがって、一酸化炭素は、二酸化炭素よりも多くの用途に使用することができる。二酸化炭素を一酸化炭素へ変換することによって、気候に有害な二酸化炭素の量を削減するだけではなく、一酸化炭素から価値のある化学原料も得られる。
【0004】
例えば、一酸化炭素が水素と結合して、重要な有機化学物質の生成に必要な元素である炭素、酸素及び水素を含む合成ガスを生成する。そのため、この合成ガスは、多くの石油化学処理に適しており、例えば、合成燃料、天然ガス、メタノール、ホルムアルデヒドの生成に適している。水素は、さまざまな方法を使用して比較的容易に得ることができる。したがって、一酸化炭素の生成は、特に重要である。
【0005】
エネルギーを使用した化学物質の生成は、エネルギー(「Power」)を使用して化学物質(「X」)を得ることができるため「Power-to-X」としても知られている。この発想は、気候に有害な二酸化炭素を出発材料として使用することによって、地球温暖化を緩和する一助となる可能性がある。さらに、得られた一酸化炭素から合成燃料を生成することによって化石燃料を節約することができる。合成燃料は、自動車の設計に大きな変更を必要とすることなく、自動車を環境にやさしい態様で駆動するために使用することができる。このような理由で、二酸化炭素を一酸化炭素へ変換することは、エネルギー転換の一助となる可能性があり、特に、二酸化炭素を一酸化炭素に変換するために再生可能エネルギーが使用される場合にその可能性がある。
【0006】
電解プロセスが先行技術から知られており、これを用いて、エネルギーを供給することにより二酸化炭素を一酸化炭素に変換することができる。しかしながら、これらのプロセスは、効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それを推し進めて、先行技術に関連した前述の問題を少なくとも部分的に解決することが本発明の目的である。特に、一酸化炭素を生成する方法及び装置を提示することを目的とするものであり、この方法及び装置により、効率を向上することができる。
【0008】
これらの目的は、独立請求項の特徴により達成される。本発明のさらに有利な実施形態は、従属請求項において規定される。従属請求項において個々に列挙されている特徴は、技術的に有意な態様で互いに組み合わせることができ、本発明のさらなる実施形態を定めることができる。さらに、請求項において特定される特徴は、本明細書において、本発明のさらなる好適な実施形態を呈示して、より詳細に記載し且つ説明される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、一酸化炭素を生成する方法を提示する。本方法は、
a)二酸化炭素を含む反応物ガスを、水で加湿するステップと、
b)ステップa)からの加湿された反応物ガスを、電解槽に供給するステップと、
c)ステップb)により供給された加湿された反応物ガスを電解槽において電解して、一酸化炭素を得るステップと
を含む。
【0010】
一酸化炭素は、本方法を使用して生成することができる。一酸化炭素は、水素とともに先行技術に示されている合成ガスを生成する。本方法は、「Power-to-X」の一部である。しかしながら、共電解とは対照的に、本方法は、一酸化炭素及び水素から合成ガスを直接生成することを目的としているのではなく、一酸化炭素の生成を第一としている。本方法では水素も生成可能であるが、共電解と比較してその量は少ない。
【0011】
本方法において、一酸化炭素は、電解によって、好ましくは高温電解方式で、二酸化炭素から得られる。これは、電解槽で行われる。電解槽は、好ましくは陽極と陰極とを有し、これらは少なくとも電解質によって互いに分離されている。陽極と陰極との間には、電解質に加えて、さらに層が配置されていてもよい。電解槽は、基体支持型又は電解質支持型であることが好ましい。基体支持型構成としては、陰極がNi・YSZ電極として形成されており、電解質がYSZから形成されており、CGOのバリア層が電解質と陽極の間に挿入されており、陽極がLSCから形成されていることが好ましい。これの代わりに、電解質支持型構成として、陰極がNi・CGO電極として形成されており、電解質がYSZから形成されており、CGOのバリア層が電解質と陽極の間に挿入されており、陽極がLSCFから形成されているのが好ましい。
【0012】
さらに、電解槽は、陽極に隣接する陽極室を有するのが好ましい。ガスは、陽極室内を、陽極に沿って流れることができる。さらに、電解槽は、陰極に隣接する陰極室を有するのが好ましい。ガスは、陰極室内を、陰極に沿って流れることができる。陽極室又は陰極室又はその両方はそれぞれ、好ましくは、入口及び出口を有する。
【0013】
本方法に使用される二酸化炭素は、いかなる供給源由来であってもよい。二酸化炭素は、特に燃焼の生成物として生じてもよい。燃焼中に生成された二酸化炭素含有ガスは、電解槽に供給される前に精製されるのが好ましい。特に、硫黄化合物類、ケイ素化合物類、ハロゲン化合物類、芳香属化合物類及び多環芳香族化合物類などの特定の炭化水素類は、ガスから除去されるのが好ましい。このように精製されたガスが、電解に直接供給されてもよい。あるいは、燃焼中に生成されたガスは、(精製の前又は後に)容器中で一時的に保存されたり、精製するため又は電解槽に供給するために輸送されたりしてもよい。
【0014】
本方法は、二酸化炭素を含む反応物ガスから開始する。反応物ガスは、純粋な二酸化炭素であってもよく、又は、その他の構成成分、特に一酸化炭素又は水蒸気又はその両方を含んでもよい。反応物ガスは、好ましくは、5から15%の一酸化炭素を含む。結果として、例えば、電解質中でニッケルが再び酸化することが、妨げられる又は少なくとも低減されることができる。一酸化炭素を生成するために本方法が使用されるということは、反応物として一酸化炭素を使用することを除外するものではない。したがって、反応物として一酸化炭素を使用した場合、本方法によりさらに一酸化炭素を生成することができる。したがって、量及び一酸化炭素は、本方法によって増加させることができる。反応物として使用される一酸化炭素は、少なくとも本方法が開始された後は、生成物ガスからの一酸化炭素であってもよい。この場合、得られた一酸化炭素の一部が本方法に戻される。
【0015】
二酸化炭素を含む反応物ガスは、反応物ガスが陰極に沿って流れることができるように、陰極室の入口を介して、気体の状態で陰極室に導入されることが好ましい。陽極と陰極の間に電流が印加される場合、反応物ガスからの二酸化炭素は、以下の化学反応式に従って陰極で還元される。
CO2(g)+2e-→CO(g)+O2- (1)
【0016】
この反応式に基づいて、気体の二酸化炭素分子(CO2)は、2つの電子(e-)を取り込むことによって気体の一酸化炭素分子(CO)と酸素イオン(O2-)とに変換される。
【0017】
電解質は、好ましくは、酸素イオン(O2-)は透過可能であるが、CO2、CO、H2O又はH2などの気体分子は透過可能ではない。これにより、酸素イオン(O2-)は、陰極室から陽極室へ到達可能となる。そこで以下の酸化反応が起こることが可能である。
2O2-→O2(g)+4e- (2)
【0018】
この反応式に基づいて、2つの酸素イオン(O2-)が気体の酸素分子(O2)に変換され、4つの電子(e-)が放出される。電子は、電圧源を介して、陽極から陰極に移動することができる。反応式(1)及び(2)は、電解槽に関する以下のバランスがとれた方程式をもたらす。
xCO2 → xCO + 1/2xO2 (3)
【0019】
したがって、電解槽によってエネルギーを供給することにより、二酸化炭素から一酸化炭素を得ることができる。一酸化炭素は、陰極で生成され、陰極室の出口を介して排出することができる。さらに、酸素は、陽極室で生成され、その酸素は、陽極室の出口を介して排出することができる。酸素は、本方法を使用して生成することも可能である。このように、一酸化炭素及び酸素は、それぞれ別々に得ることができる。
【0020】
陽極室は、洗浄ガスで洗浄されるのが好ましい。例えば、空気、酸素(O2)、窒素(N2)の少なくとも1つを洗浄ガスとして考えることができる。陽極で生成された酸素は、洗浄ガスによって陽極から離れる方へ送ることができる。したがって、陽極における酸素の分圧を低下させることができる。この結果、電解のために陽極と陰極の間に印加される電圧が低下し、これは、エネルギーを節約できることを意味する。このように、洗浄ガスによって、効率を高めることができる。洗浄ガスは、陽極室に導入される前に、800から900℃までの範囲内の温度に加熱されることが好ましい。この結果、電解槽内の熱応力を回避することができる。
【0021】
電解は、電解槽に気体の状態で供給される、反応物としての二酸化炭素を用いて行われる。これは、電解をステップc)に従って行うことができるよう、ステップb)に従って本方法で行われる。電解は、好ましくは、800から900℃までの温度で行われる。このために、反応物ガスは、ステップb)でこの温度に加熱されるのが好ましい。ステップc)における電解中において、温度は、800から900℃まで範囲内に維持されることが好ましい。
【0022】
反応物ガスを電解前に加湿する、特に加熱前に加湿することによって、電解の効率を高めることができることがわかった。さらに、反応物ガスは、加湿によって浄化できることがわかった。二酸化炭素の供給源により、反応物ガスは、不純物を含む場合があり、この不純物は、加湿によって少なくとも部分的に除去することができる。
【0023】
よって、本方法においては、反応物ガスは、ステップa)で加湿される。反応物ガスは、加湿する前に存在するガスを意味すると理解されるものであり、これは、いかなる場合も二酸化炭素を含む。加湿することにより、反応物ガスは、「反応物ガス」よりも高い割合の水を含む「加湿された反応物ガス」となる。加湿は、加湿された反応物ガスが加熱されるように、電解のための加熱の前に行われることが好ましい。
【0024】
加湿された反応物ガスは電解槽に供給され、特に、陰極室に導入されることによって供給される。そして、ステップc)において行われる電解において、高い効率を達成することができる。これは、加湿された反応物ガス中の水分によって説明することができる。反応物ガス中の水は、以下の化学反応式に基づいて陰極で還元することができる。
H2O(g)+2e-→H2(g)+O2- (4)
【0025】
この反応式に基づいて、水蒸気分子(H
2O)は、2つの電子(e
-)を取り込むことによって、気体の水素分子(H
2)及び酸素イオン(O
2-)に変換される。さらに、反応物ガス中の水分は、以下の反応式に従って、一酸化炭素と反応して二酸化炭素と水素とを生成することができる。
【0026】
「可逆性の水性ガスシフト反応」としても知られているこの反応は、二酸化炭素と水素とが反応して一酸化炭素と水を生成することも可能な平衡反応である。電解により、反応式(1)に基づいて二酸化炭素(CO2)が一酸化炭素に還元され、反応式(4)に基づいて水蒸気(H2O)が水素(H2)に還元される。これにより、反応式(5)における割合が変化し、その結果、化学平衡が崩れる。これにより、水素(H2)及び二酸化炭素(CO2)から、水蒸気(H2O)及び一酸化炭素(CO)の生成を引き起こすことができる。したがって、加湿された反応物ガスを用いた電解は、二酸化炭素の一酸化炭素への変換が電解中に生成された水素によりさらに助けられ得るため、特に効率的である。
【0027】
反応式(5)のため、生成物ガスは、ある割合の気体の二酸化炭素又はある割合の水蒸気又はその両方を含む可能性がある。陰極室の出口から出た後、生成物ガスは、一方の一酸化炭素と他方のその他すべての物質とに分離されるのが好ましい。その他の物質は、主に二酸化炭素又は水又はその両方でありうる。分離された二酸化炭素又は水又はその両方が電解に戻されてもよい。
【0028】
ステップa)における加湿は、水により行われる。これは、反応物ガスに加えられる水蒸気だけではない。水を蒸発させるためにはかなりのエネルギーを投入することが必要とされるであろうため、エネルギーの点においては、これは不利である。本方法は、特にこの点において共電解とは異なる。加湿された反応物ガスは、水分を含む。反応物ガスを加湿するためにさまざまな方法を使用することができる。例えば、反応物ガスは、供給路にある加湿器を経て陰極室に通されてもよい。
【0029】
本方法の好適な実施形態によると、反応物ガスは、ステップa)で水に通される。
【0030】
本方法では反応物ガスを水に通すのが特に効率的であることがわかった。この文脈において、「に通すこと」とは、反応物ガスが水に入れられ、水と直接接触する状態になり、その後、回収されることを意味する。よって、反応物ガスを、反応物ガスと水とが直接接触しないように水に取り囲まれた流路に通すのでは不十分である。反応物ガスは、好ましくは、泡の形態で水に通される。例えば、反応物ガスは、水面下の多数のノズル開口部から水に入れられてもよい。そうすると、反応物ガスが水中に泡として生じる。その後、反応物ガスは、液体の水から出た後、回収されてからホースや管を介して送られてもよく、又は、ホースや管を介して直接送られてもよい。加湿された反応物ガスは、ポンプにより圧縮されてもよいが、必須ではない。
【0031】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップa)における水は、18℃から25℃の範囲内の温度である。
【0032】
特定された温度範囲は、通常の室温に相当する。二酸化炭素がステップa)においてこのような温度の水に通される場合、効率を上げることは既に達成可能である。したがって、水を加熱するは必要ない。また、水を加熱するためにエネルギーを使用する必要もない。
【0033】
18~25℃の範囲内の温度の水を使用する場合、3~5%の二酸化炭素湿度レベルを達成することができる。
【0034】
例えば、気体の二酸化炭素90%と気体の一酸化炭素10%との混合物が反応物ガスとして使用され、且つ、ステップa)において18~25℃の水により加湿される場合、87.3%の気体の二酸化炭素と、9.7%の気体の一酸化炭素と、3.0%の水蒸気とを含む加湿された反応物ガスを得ることができる。そして、上記の加湿された反応物ガスは、電解に加えることができる。この場合、陰極で得られる生成物ガスは、1%未満の水素を含む可能性がある。これは、反応式(5)の平衡のシフトによって説明することができる。
【0035】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップa)における水は、25℃から40℃の範囲内の温度である。
【0036】
この実施形態において、水は、室温まで加温される。二酸化炭素の湿度レベルの増加は、加熱した水を使用することによって実現できる。例えば、33℃の水温では、5%の二酸化炭素湿度レベルを達成できる。
【0037】
例えば、気体の二酸化炭素90%と気体の一酸化炭素10%との混合物が反応物ガスとして使用され、且つ、ステップa)において33℃の水により加湿される場合、85.5%の気体の二酸化炭素と、9.5%の気体の一酸化炭素と、5.0%の水蒸気とを含む加湿された反応物ガスを得ることができ、これは、電解に加えることができる。陰極で得られる生成物ガスは、この場合も1%未満の水素を含む可能性がある。これも反応式(5)の平衡のシフトによって説明することができる。
【0038】
水を加熱するためにさまざまな方法を使用することができる。例えば、ヒーターや、投げ込みヒーターや熱交換器が使用可能である。
【0039】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップa)で使用された水は、ステップc)における電解の生成物からの熱によって加熱される。
【0040】
この実施形態においては、電解の生成物の熱を回収して利用してもよい。陰極で生成される生成物及び陽極で生成される生成物の両方が生成物として考慮すべき対象となる。陰極では、一方で、本方法により生成される一酸化炭素がこれに該当する。さらに、陰極では、水素が生成されることがある。酸素は、陽極で生成される。電解の生成物は、利用可能な熱エネルギーを含むことがあり、特に電解前に反応物ガスを加熱するために熱エネルギーを含むことがある。化学反応に関与することなく陰極室に再び残される反応物ガス中の構成成分も、これに該当する。これらの部分も電解前に加熱された場合、それらの熱エネルギーは、ステップa)に使用される水を加熱するために電解後に回収されてもよい。この生成物も、生じている化学反応により、加熱されることがある。
【0041】
電解生成物からの熱は、ステップa)で用いる水を加熱するために、さまざまな方法で使用することができる。例えば、生成物ガス流が、水中の流路に通されてもよい。可能な限り長い流路長さに亘って熱を放散させることができるように、流路は、らせん状に設計されることが好ましい。
【0042】
好ましくは、陰極からの生成物のみ又は陽極からの生成物のみ流路を通過させ、生成物が混合されないようにする。一方で陽極の生成物用の流路及び他方で陰極の生成物用の流路をそれぞれ設けることも可能である。この方法では混合することも防ぐことができる。
【0043】
あるいは、生成物の熱又は一部の生成物の熱が、熱交換器により伝熱媒体に放出されてもよい。伝熱媒体は、さらなる熱交換器に運搬されてもよく、そこで、伝熱媒体がその熱をステップa)に使用される水に放出する。好ましくは、陰極からの生成物のみ又は陽極からの生成物のみを熱交換器に通過させ、生成物が混合されないようにする。一方で陽極の生成物用の熱交換器及び他方で陰極の生成物用の熱交換器それぞれ、又は、陽極の生成物と陰極の生成物とに共通の熱交換器のそれぞれの枝部、又は、その両方を設けることも可能である。
【0044】
本方法のさらなる好適な実施形態においては、ステップa)は、加湿された反応物ガスの水分含量がステップa)の後において2%から6%となるような仕方で、行われる。
【0045】
ステップa)の後の加湿された反応物ガスの水分含量は、さまざまな手段によって調節することができる。例えば、二酸化炭素を泡として水に通す場合、より高い水温、より高い二酸化炭素温度、より低い二酸化炭素流量、より小さな泡サイズ、水面からのより大きな距離、これらのいずれか又は組み合わせにより、より多くの水が吸収され得る。加湿された反応物ガスの水分含量は、これらパラメーターや他のパラメーターを変えることによって調節することができる。特定の所望の水分含量に対するパラメーターは、実験的に決定することができる。
【0046】
一酸化炭素の収率は、加湿された反応物ガス中の水分含量が低いほど高くなる。効率は、約20%の加湿された反応物ガスの水分含量までは、加湿された反応物ガスの水分含量に伴い増加する。加湿された反応物ガス中の水分含量が2~6%であることが、これら2つの側面の間の程よい妥協点であることがわかった。
【0047】
本発明のさらなる態様として、一酸化炭素を生成するための装置が提示される。本装置は、
- 電解質によって互いに分離された陽極及び陰極と、陰極に隣接する陰極室とを有する電解槽と、
- 加湿器を有する、陰極室への供給路と
を備える。
【0048】
本方法の上記の特別な利点及び設計特徴を、装置に使用し且つ導入することが可能であり、逆もまた同様である。本方法は、本装置を使用して行われるのが好ましい。本装置は、好ましくは、本方法を行うことを意図し且つそのように構成されている。二酸化炭素を含む反応物ガスは、加湿され(本方法のステップa))、加湿器を有する供給路を介して電解槽に供給することができる(ステップb))。電解は、電解槽で行うことができる(ステップc))。このために、電解槽は、好ましくは、電流電圧源を有し、それによって、電流を陰極と陽極の間に印加することができる。電解槽は、好ましくは、高温電解槽として設計される。
【0049】
ガスは、陰極室内で、陰極に沿って流れることが可能である。さらに、電解槽は、陽極に隣接する陽極室を有するのが好ましい。ガスは、陽極室内で、陽極に沿って流れることが可能である。陽極室又は陰極室又はその両方はそれぞれ、好ましくは、入口及び出口を有する。電解槽は、好ましくは、陰極室への供給路も有し、この供給路を通して洗浄ガスを陽極室に導入することができる。
【0050】
好適な実施形態においては、本装置は、加熱手段をさらに備え、この加熱手段は、電解槽で生じる電解の生成物によって、加湿器内の水を加熱するためのものである。
【0051】
加熱手段は、好ましくは、流路を備え、電解の生成物を、この流路を通して、ステップa)に使用される水に通すことができる。あるいは、加熱手段はまた、上記の熱交換器を含んでもよい。
【0052】
以下に、本発明及び技術環境を、図面を参照してさらに詳細に説明する。本発明が、提示される実施形態によって限定されるものと想定していないことに留意すべきである。特に、特段の記載のない限り、図に記載されている事実から部分的な態様を抽出すること、ならびにそれらを本明細書及び図面の少なくとも一方からの他の構成要素及び知見と組み合わせることも可能である。特に、図面、特に示されるサイズ比が概略に過ぎないことに留意すべきである。同一の参照符号は、同一のものを指し、その結果、他の図の説明が、必要に応じて補足の様式で使用されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、一酸化炭素を生成する方法のフローチャートを示す。本方法は、
図2の参照符号を使用して記載される。本方法は、
a)二酸化炭素を含む反応物ガスを、水で加湿するステップと、
b)ステップa)からの加湿された反応物ガスを、電解槽1に供給するステップと、
c)ステップb)により供給された加湿された反応物ガスを電解槽1において電解して、一酸化炭素を得るステップとを含む。
【0055】
図2は、一酸化炭素を生成する装置12を示しており、特に、
図1の方法に従って一酸化炭素を生成する装置12を示す。装置12は、陽極2と陰極3とを有する電解槽1を備え、この陽極2及び陰極3は、電解質10によって互いに分離されている。さらに、電解槽1は、陽極2に隣接する陽極室4を備え、この陽極室内において、ガスは陽極2に沿って流れることができる。さらに、電解槽1は、陰極3に隣接する陰極室5を備え、この陰極室内において、ガスは陰極3に沿って流れることができる。陽極室4は、入口6及び出口7を有する。陰極室5は、入口8及び出口9を有する。加湿器11を有する供給路13は、陰極室5の入口8に接続されている。排出路14は、陰極室5の出口9に接続されている。排出路14は、電解槽1で生じる電解の生成物によって加湿器11を加熱するための加熱手段15を備える。点線は、加熱手段15から加湿器11へ熱を伝達可能であることを示す。
【0056】
二酸化炭素を含む反応物ガスは、陰極室5への供給路13を介して、陰極室5に供給することができる(
図1の方法のステップb))。反応物ガスは、加湿器11により加湿することができる(ステップa))。電解は、電解槽1で行うことができる(ステップc))。加湿された反応物ガスからの二酸化炭素は、陰極3で一酸化炭素に還元される。陽極2では、電解中に生成された酸素イオンが反応して、酸素を生成することができる。洗浄ガスは、陽極室4の入口6に導入され、このように生成された酸素とともに陽極室4の出口7から出されてもよい。提示した実施形態においては、洗浄ガスは、窒素である。ただし、代わりに、洗浄ガスとして、特に酸素を使用することもできる。
【0057】
反応物ガスは、反応物ガスを水に通すことによって、特に、加湿器11の内部で水に通すことによって、ステップa)において加湿することができる。加湿された反応物ガスの水分含有量は、好ましくは、2から6%である。加湿器11の内部の水は、陰極室5から得られた生成物ガスにより、加熱手段15を介して、25℃から40℃に加熱可能であることが好ましい。あるいは、水を、室温で使用することもでき、特に18℃から25℃で使用することができる。
【0058】
本方法及び装置12を用いれば、CO2電解により、一酸化炭素を特に高い効率で生成することができる。これは、電解前に加湿された、二酸化炭素を含む反応物ガスにより実現される。
【符号の説明】
【0059】
1 電解槽
2 陽極
3 陰極
4 陽極室
5 陰極室
6 陽極室の入口
7 陽極室の出口
8 陰極室の入口
9 陰極室の出口
10 電解質
11 加湿器
12 装置
13 陰極室への供給路
14 陰極室からの排出路
15 加熱手段
【国際調査報告】