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特表2023-506365咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメント
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  • 特表-咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523201
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2020017370
(87)【国際公開番号】W WO2021118146
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0164054
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522142350
【氏名又は名称】ジャン,チョン ソク
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,チョン ソク
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA44
(57)【要約】
本発明による咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントは、人工歯牙と結合する上側部位である上側結合部と、フィクスチャと結合する下側部位である下側結合部と、前記上側結合部及び下側結合部の間で外部に露出された部位である露出部と、前記上側結合部の外周面に形成され、前記上側結合部の内側に陥入した調節溝と、を含むことを特徴とする。本発明による咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントによれば、高さの低い上側結合部を有するアバットメントであっても人工歯牙との安定的な結合力をはかることができ、究極的にアバットメントの高さ寸法調節の容易性を確保することができる効果を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントであって、
人工歯牙と結合する上側部位である上側結合部と、
フィクスチャと結合する下側部位である下側結合部と、
前記上側結合部及び下側結合部の間で外部に露出された部位である露出部と、
前記上側結合部の外周面に形成され、前記上側結合部の内側に陥入した調節溝と、を含み、
前記調節溝は、2個の側面、前記2個の側面の下端を連結する底面、前記底面及び前記2個の側面の内側に接し、前記調節溝の導入部位の対抗側に位置するベース面、及び前記調節溝の導入部位側の仮想面からなり、
前記側面の4個の辺の中で上側辺が下側辺より短くなり、前記ベース面は、上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面の方向に行きながら前記仮想面の方向に傾くように延びたことを特徴とする、インプラントのアバットメント。
【請求項2】
前記調節溝は、前記上側結合部の外周面に一定の間隔で放射状に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項3】
前記調節溝は、前記上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面に至る高さを有することを特徴とする、請求項1に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項4】
前記調節溝は、前記上側結合部の上面一部が開放するように形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項5】
前記仮想面は、前記上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面の方向に行きながら外側に傾くように延びたことを特徴とする、請求項1に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項6】
前記ベース面は、前記ベース面の人工歯牙側辺から垂直に延びた仮想の垂直線を基準に2°~7°の角度に傾くように延び、
前記仮想面は、前記仮想面の人工歯牙側辺から垂直に延びた仮想の垂直線を基準に7°~12°の角度に傾くように延び、前記ベース面の傾斜角より大きい傾斜角を有することを特徴とする、請求項5に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項7】
前記ベース面の人工歯牙側辺から垂直に延びた仮想の垂直線を基準に前記ベース面の傾斜角と前記調節溝の数は、前記上側結合部が人工歯牙の内部に挿入された部分の高さによって異なるように調節されることを特徴とする、請求項1に記載のインプラントのアバットメント。
【請求項8】
前記ベース面の傾斜角は、次の式1によって得られることを特徴とする、請求項7に記載のインプラントのアバットメント。
【数1】
【請求項9】
咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントであって、
人工歯牙と結合する上側部位である上側結合部と、
フィクスチャと結合する下側部位である下側結合部と、
前記上側結合部及び下側結合部の間で外部に露出された部位である露出部と、
前記上側結合部の外周面に形成され、前記上側結合部の内側に陥入した調節溝と、を含み、
前記調節溝は、2個の側面、前記2個の側面の下端を連結する底面、前記底面及び前記2個の側面の内側に接し、前記調節溝の導入部位の対抗側に位置するベース面、及び前記調節溝の導入部位側の仮想面からなり、
前記底面は、前記ベース面と接する内側辺が前記仮想面と接する外側辺より短く、前記側面が前記上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面の方向に行きながら前記ベース面側に傾くように延びたことを特徴とする、インプラントのアバットメント。
【請求項10】
咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントであって、
人工歯牙と結合する上側部位である上側結合部と、
フィクスチャと結合する下側部位である下側結合部と、
前記上側結合部及び下側結合部の間で外部に露出された部位である露出部と、
前記上側結合部の外周面に形成され、前記上側結合部の内側に陥入した調節溝と、を含み、
前記調節溝は、2個の側面、前記2個の側面の下端を連結する底面、前記底面及び前記2個の側面の内側に接し、前記調節溝の導入部位の対抗側に位置するベース面、及び前記調節溝の導入部位側の仮想面からなり、
前記ベース面及び前記仮想面は、前記上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面に行きながら幅が小さくなるようにテーパー処理され、
前記底面は、前記ベース面と接する内側辺から前記仮想面と接する外側辺に延びるのに伴い前記仮想面の高さが減るように傾斜処理されたことを特徴とする、インプラントのアバットメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントに関し、より詳しくはアバットメントの高さを低める方式で調節してインプラントの全体的な審美感を強化させながらも人工歯牙との結合力を安定的に維持させることができるインプラントのアバットメントに関する。
【背景技術】
【0002】
インプラントとは人体に無害な素材または自然歯牙と類似している機能を果たすことができる素材から形成され、虫歯や歯槽骨の病によってなくなった歯牙、または事故または腫瘍などによって骨や歯茎がない部位に挿入することによって自然歯牙の機能の代わりをするだけでなく、美しさを回復させることができる治療を意味する。
【0003】
一般に、歯科で主に使用するこのようなインプラントは、人工歯牙、アバットメント及びフィクスチャからなっていることが一般的である。ここで、人工歯牙は自然歯牙に代わって人工で製作した歯牙であり、フィクスチャは歯槽骨に挿入固定される部分であり、アバットメントは人工歯牙とフィクスチャを連結する部分である。
【0004】
このようなインプラントは咬合高径によって多様な寸法に具現されることができる。咬合高径とは、歯牙同士噛み合った状態で歯茎から対合歯の咬合面までの垂直距離を意味するものであり、一般的に6~9mm程度の寸法を有する。
【0005】
通常インプラントのアバットメントが人工歯牙内に挿入される部分の寸法は4~7mm程度である。ここで、咬合高径が6mmであれば人工歯牙内に挿入される部分が4mm程度であるアバットメントを選択し、咬合高径が7mmであれば人工歯牙内に挿入される部分が5mm程度のアバットメントを選択する。ここで、2mm程度の余裕を与える理由は、この寸法が存在しない場合、人工歯牙の破切可能性が高くなるからである。言い換えれば、人工歯牙の破切を防ぐために、2mm程度の寸法余裕をもって咬合面を形成することが一般的であると言える。
【0006】
咬合高径が大きい場合、人工歯牙の長さは長くなり、よって人工歯牙の内部に挿入されるアバットメントの長さも長くなる。反対に、咬合高径が小さい場合、人工歯牙の長さが短くなるのに伴い人工歯牙の内部に挿入されるアバットメントの長さもやはり短くなるが、アバットメントの長さが短くなれば、人工歯牙とアバットメントとの結合力は弱化することができる。言い換えれば、人工歯牙に外力が加われば、人工歯牙とアバットメントとが分離される問題が発生することがあり、咬合高径が6mmより小さい場合、2mm程度の寸法余裕を置くこと自体も不可能である。
【0007】
このために、従来のインプラントは、咬合高径の短い部位に上述した構造を有する一般的なアバットメントとは違う構造を有するUCLAアバットメントを使う。UCLAアバットメントは、アバットメントの長さは固定されており、アバットメントの上端にワックスを用いて人工歯牙を彫刻した後、咬合高径に合わせてサイズ及び長さを整えて使用するアバットメントである。このようなUCLAアバットメントは、人工歯牙とアバットメントが一体に結合されることにより、咬合高径の短い部位でも人工歯牙とアバットメントとが外力によってやすく分離されないが、UCLAアバットメントは施術過程が複雑であり、人工歯牙の上面にアバットメントとフィクスチャを結合させるためのスクリューが挿入されるホールが形成されているから美観上良くなくて多くの患者が施術されることを憚るという問題点がある。
【0008】
また、韓国特許第10-1577746号公報の‘歯槽骨のフィクスチャ設置用ホール内の無タップ設置型インプラント及びその施術方法’によれば、歯槽骨に人工歯牙を埋植するためにフィクスチャサーチ用ホールを穿孔し、フィクスチャ設置用ホールの底面両側の内面にのみ螺糸山が形成された分離型フィクスチャの三日月形係止板が係合される弧形の係合溝を形成することにより、人工歯牙結合用フィクスチャを設置するとき、フィクスチャ設置用ホールに別途のフィクスチャ結合用タップを形成せずに単に平断面がそれぞれ1/4の円弧形を有する一対の分離型フィクスチャを互いに対向するように挿入して三日月形係合板が弧形係合溝に係合されるようにする。また、公知の技術によれば、一対の分離型フィクスチャの間には、内面に螺糸山が形成され、平断面がそれぞれ1/4の円弧形を有する柱の底面が円板を介して一体に連結された一体型フィクスチャを挿入して、一対の分離型フィクスチャと一体型フィクスチャが単一の円筒状を成すようにした後、相互結合によって円筒状を有する一対の分離型フィクスチャと一体型フィクスチャ内の螺糸山に人工歯牙に一体に固定されたスクリューを結合させる方式でインプラントの施術を完成すると開示している。
【0009】
このような公知の技術は人工歯牙とスクリューを一体に固定してフィクスチャの内部に挿入することにより、人工歯牙とスクリューとが分離される危険を防止することができるが、咬合高径の短い部位で人工歯牙に外力が発生すれば、人工歯牙の搖れによって人工歯牙がスクリューで破切されることがあるさらに他の問題点が発生することができる。
【0010】
したがって、咬合高径の短い部位でも外力によって人工歯牙とアバットメントとが分離されずに堅たく結合されることができ、美観上格好よい新規で進歩したインプラントの開発が至急な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許第10-1577746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記技術の問題点を克服するために案出されたものであり、アバットメントの上側結合部に調節溝を形成することによって高さが低くなった上側結合部が人工歯牙との結合維持力が低くなる問題を補うことができるアバットメントを提供することを主目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、調節溝の内外側に傾斜を形成して人工歯牙の外力がフィクスチャの方向の指向性を有するようにすることにより、上側結合部と人工歯牙との間の結合力を保存することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、調節溝または仮想面の傾斜角を調節して上側結合部と人工歯牙との間の結合力をより効率的に精密に保存することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明による咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントは、人工歯牙と結合する上側部位である上側結合部と、フィクスチャと結合する下側部位である下側結合部と、前記上側結合部及び下側結合部の間で外部に露出された部位である露出部と、前記上側結合部の外周面に形成され、前記上側結合部の内側に陥入した調節溝とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、前記調節溝は、前記上側結合部の外周面に一定の間隔で放射状に形成されるか、前記上側結合部の上面から下面までの高さを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記調節溝は、2個の側面、前記2個の側面の下端を連結する底面、前記底面及び前記2個の側面の内側に接し、前記調節溝の導入部位の対抗側に位置するベース面、及び前記調節溝の導入部位側の仮想面からなり、前記側面の4個の辺の中で上側辺が下側辺より短くなり、前記ベース面は、上側結合部において人工歯牙に向かう面からフィクスチャに向かう面の方向に行きながら前記仮想面の方向に傾くように延びたことを特徴とする。
【0018】
さらに、前記仮想面は、前記上側結合部の上面から下面の方向に行きながら外側に傾くように延びたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による咬合高径の安定的な寸法調節が可能なインプラントのアバットメントによれば、
1)高さの低い上側結合部を有するアバットメントであっても人工歯牙との安定的な結合力をはかることができ、究極にはアバットメントの高さ寸法調節の容易性を確保することができる。
2)調節溝の特定の面に傾斜を付与することにより、人工歯牙の運動性をフィクスチャの方向にガイドすることにより、人工歯牙が外方に離脱しようとする問題を遮断することができる。
3)調節溝の形状を拡開するか上側と下側の体積変化を引き起こすことにより、人工歯牙から作用する力のベクターを特定の方向にガイドすることができる効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のアバットメントに調節溝が形成された状態を示すインプラントの分解斜視図である。
図2】調節溝が形成されたアバットメントの部分拡大斜視図である。
図3】本発明の調節溝の多様な形状を例示する概念図である。
図4図1の平面図である。
図5】調節溝のベース面及び仮想面が傾いた状態を示す縦断面図である。
図6】調節溝がフィクスチャの方向の指向性を有する変形実施例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を詳細に説明する。添付図面は一定の縮尺によって示されていなく、各図で同じ参照番号は同じ構成要素を指称する。
【0022】
図1は本発明のアバットメントに調節溝が形成された状態を示すインプラントの分解斜視図である。
【0023】
周知の事実のように、インプラント1は人工歯牙20を歯槽骨に挿入することにより、虫歯や歯槽骨病によってなくなった歯牙に代わる機能を提供するものであり、人工歯牙20、この人工歯牙20と連結されるアバットメント100、及び歯槽骨に挿入されるフィクスチャ30から構成される。これは公知のインプラントと同様であるので別途の説明を省略するが、本発明によるアバットメント100について手短に説明すると次のようである。
【0024】
一般的なアバットメントは全体的に円筒状を成し、内部に中空130が形成されたものであり、上側結合部110、下側結合部120及び露出部200からなる。本発明のアバットメント100もこれと同様である。
【0025】
まず、上側結合部110はアバットメント100の上側部を成す部位で、人工歯牙20の内部に挿合される部位である。このような上側結合部110は、上側結合部110の下側部位を上側結合部110の上側部位より大きく形成することにより、すなわち上側結合部110は内部に中空130が形成された円筒状を成し、断面を台形に形成することにより、人工歯牙20の重さを安定的に支持することができる構造を提供することが好ましい。ここで、中空130は上側結合部110だけでなく後述する下側結合部120及び露出部200に至るまで貫設されている。
【0026】
ここで、アバットメント100はワンピース型とツーピース型とに区分されるが、ワンピース型の場合、中空を備えていなくてこのような中空130は必須構成要素ではないと言えるので、ツーピース型を例示的に説明したものであると理解することができる。
【0027】
下側結合部120はアバットメント100の下側部を成す部位で、歯槽骨に挿入されたフィクスチャ30と結合する部位である。このような下側結合部120はフィクスチャ30の上端に形成された六角ヘッドに対応する形状に形成されることによりフィクスチャ30に装着されることができる。また、六角ヘッドと六角孔は、スクリューが挿入することができるように、スクリューの直径に対応するサイズにホールが形成されている。ここで、六角ヘッドと六角孔は一例に過ぎないもので、他の多様な形状に形成されることもできるというのは言うまでもない。
【0028】
露出部200はアバットメント100において上側結合部110及び下側結合部120を除いた残りの部位であり、人工歯牙20及びフィクスチャ30によって遮られずに外部に露出される部位を意味する。このような露出部200の上部から露出部200の下部に行くほど徐々に直径が小さくなるようにテーパー処理することにより、上側結合部110と、上側結合部110の下側部位より相対的に小さな直径に形成された下側結合部120とを自然に連結して人工歯牙20の荷重を充分に支持することができるとともに構造的安定性を確保することができる。
【0029】
一般的なインプラント1を施術する原理を簡単に説明すると、まず、フィクスチャ30を歯槽骨に挿入した後、アバットメント100の下側結合部120の六角孔とフィクスチャ30の六角ヘッドとが噛み合うように位置を調整してアバットメント100とフィクスチャ30とを安定的に結合させる。次いで、アバットメント100の中空130にスクリューを貫通させてスクリューのヘッドが下側結合部120の六角孔と結合するように締め付けることにより、アバットメント100とフィクスチャ30を回転しないように堅く結合することができる。最後に、アバットメント100の上側結合部110に人工歯牙20を結合することでインプラント1の施術を仕上げることが一般的である。
【0030】
前述したように、公知のアバットメントは、咬合高径の短い部位に挿入される場合、上側結合部110の長さが短くなって人工歯牙20との結合力が弱化することがある。したがって、本発明は、これを改善するために、アバットメント100、特にアバットメント100のうち咬合高径の短い部位にも人工歯牙20と上側結合部110との結合力を安定的に確保することができる特別に構成された上側結合部110の構造を提示することを核心とする。
【0031】
図2は調節溝が形成されたアバットメントの部分拡大斜視図、図3は本発明の調節溝の多様な形状を例示する概念図、図4図1の平面図である。
【0032】
具体的に図1図4を参照すると、上側結合部110には、好ましくは均衡のために互いに向き合う位置に、または一定の間隔で少なくとも一対以上の調節溝300が形成されていることが分かる。
【0033】
本発明の調節溝300は上側結合部110の外周面から内側に陥入して形成された溝を意味する。
【0034】
このような調節溝300の機能について、上側結合部110及びこの上側結合部110の外周面を取り囲んでアバットメント100に結合された人工歯牙20との結合関係に作用する力の方向及び原理を基準に説明する。
【0035】
人工歯牙20には人工歯牙20を動かすことができる多様な外力が加わることができる。このような外力は日常生活で多様な方向に作用するが、主に人工歯牙20がアバットメント100から離脱することを促進する力と言える。このような外力のうち人工歯牙20に最も大きな影響を与えることができる慣性モーメント及び遠心力を中心に説明する。
【0036】
人工歯牙20の動きの観点で、人工歯牙、具体的には上側結合部110の外周面との接触部位に作用する慣性モーメントは、人工歯牙20が揺れれば人工歯牙20の搖れを持続させようとする性質を有する。特に、人工歯牙20の動きのうち人工歯牙20が上側結合部110の外周面に沿って回転しようとする役割を果たす。ここで、慣性モーメントはI=mrの式(Iは慣性モーメント、mは質量、r半径)で表現される。質量、すなわち人工歯牙20または上側結合部110の重さが変わらないという前提の下で、半径、すなわち上側結合部の直径に比例する。
【0037】
また、人工歯牙20が上側結合部110の外周面に沿って動く力のうち上述した慣性モーメントによって回転する場合、人工歯牙20に遠心力が作用し、この遠心力も質量及び角速度が固定されているという仮定の下で上側結合部110の直径に比例する。言い換えれば、人工歯牙20は、慣性モーメント及び遠心力の観点で、上側結合部110の中心から遠くなるほど上側結合部110から離脱しようとする力が加重するので、上側結合部110の直径が小さいほどこのような離脱力を減らすことができるが、上側結合部110の直径を必要以上に減らす場合、アバットメント100の固有の支持力及び構造的安全性を阻害するという問題がある。
【0038】
本発明の調節溝300はこのように人工歯牙20の離脱力弱化の防止とアバットメント100の固有の支持力向上を同時に具現するために形成されたものである。
【0039】
すなわち、調節溝300は、形成された上側結合部110の円周部の直径を減らして人工歯牙20が離脱しようとする慣性を弱化させるだけでなく、人工歯牙20が上側結合部110の周囲に回転するという観点でその回転半径を減少させて遠心力を減らす機能を果たす。
【0040】
また、調節溝300の陥入深さ及び個数は上側結合部110の高さが低いほど必要によって増加させることができ、調節溝300の形成位置及び間隔は特に制限がないが、一例として上側結合部110の中心を基準に等角度で2個以上を放射状に配置して構造的安全性を追い求めることもできる。
【0041】
言い換えれば、調節溝300は上側結合部110の外周面に一定の間隔で放射状に形成されるか、それとも必ずしも等間隔ではなく外力の方向性を考慮して不規則な間隔で複数設計することができる。
【0042】
もしくは、調節溝300は上側結合部110の上面(人工歯牙に向かう面)から下面(フィクスチャに向かう面)に至る高さまたはこれより短い高さを有するように形成することも可能である。
【0043】
ここで、調節溝300が上側結合部110の高さに相応する高さを有する場合、上側結合部110の上面及び下面の一部も開放する。上側結合部110の下面には一般的に上側結合部110より直径が大きい露出部200が連結されるので、上側結合部110の下面の下方は、上側結合部110の上面の上方が開放することとは違い、露出部200によって塞がっている状態を有する。
【0044】
さらに、上側結合部110の上面一部が開放するように上側結合部の内側(中心)に向かって陥入していることも可能である。これは、上側結合部110の上面に作用する外力を調節溝300でより適切に収容するためである。
【0045】
このような調節溝300はインプラント1の咬合高径が低い、すなわちアバットメント100の高さが低くて人工歯牙20との結合力が弱化するおそれがある構造に特に有用である。言い換えれば、咬合高径が低い程度によって調節溝300の個数を変更することができるので、結果的に咬合高径の寸法を安定的に調節(主に咬合咬痙の寸法を低める方向への調節)する役割を提供するものであると説明することができる。
【0046】
調節溝300が半球形、楕円体形のように湾曲して陥入することもできるが、直方体または直方体と類似している構造に陥入している場合、再び図2及び図3を参照して調節溝300の詳細構造を面を中心に区分すれば、調節溝300は、2個の側面310、この2個の側面310の下端を連結する底面320、及び調節溝300の導入部位の対向側面であって、底面320及び2個の側面310の内側に接したベース面330からなることが分かる。
【0047】
すなわち、調節溝300は、一般的な直方体と比較すると、上面及び1個の側面が開放した状態を有し、結果的に4個の面を有する。ここで、実際の面ではないが調節溝300の導入部位側でその周辺の上側結合部110の境界に形成された開放部位を本発明では仮想面340といい、この仮想面340を含めば調節溝300は総5個の面からなっていると説明することができる。
【0048】
また、後述する説明で、“上部”/“上側”または“下部”/“下側”という用語は下顎に装着されたインプラントを正面から見た時を基準に説明するものであり、添付図面はこのような下顎に装着されたインプラントを基準に示すものである。仮に、上顎に装着されたインプラントの場合、その反対方向に類推して理解することができる。言い換えれば、本発明で上側結合部の上面とは上側結合部から人工歯牙に向かう面を意味し、上側結合部の下面とは上側結合部からフィクスチャに向かう面を意味すると理解しなければならない。
【0049】
調節溝300が半球形ではない六面体と類似している形状を有する場合、側面310及びベース面330の物理的体積及びこれによって形成される空間により、上述したように人工歯牙20が離脱しようとする慣性を弱化させるのみならず、外力の吸収及び分散の役割をより効率的に提供することができる。
【0050】
さらに、調節溝300は、追加的にその側面を基準に上下左右の4個の辺で下顎に装着されたインプラントを基準に上側辺が下側辺より短く形成されることが可能である。この場合、ベース面330は上側結合部110の上面(人工歯牙に向かう面)から下面(フィクスチャに向かう面)の方向に行きながら仮想面340の方向に斜めに延びた構造を有するようになる。
【0051】
このように、ベース面330が傾斜構造を有すれば、上側結合部110の中心からベース面330までの距離、すなわち上側結合部110の直径が上下側との間に差を有する。言い換えれば、相対的に上側結合部110の上側直径が最も短く、上側結合部110の下側直径が最も長くなる。
【0052】
この場合、直径差によって結合力を異にすることができるという上述した原理によって、人工歯牙20の動きが上側結合部110の上側で最も鈍化し、相対的に上側結合部110の下側でこれよりは活性化することができる。このように、上側結合部110との結合領域によって人工歯牙20の動き程度が下側方向に偏れば人工歯牙20の動きが自然に下方に指向性を有し、これにより人工歯牙20がフィクスチャの方向に相応する方向性を有し、人工歯牙20が上方に離脱しようとする性質を減らすことができ、結果的に人工歯牙20が上側結合部110から離脱しようとする問題を減らす機能を効率的に提供することができる。
【0053】
図5は調節溝のベース面及び仮想面が傾いた状態を示す断面図である。
【0054】
図5を参照すると、調節溝300から仮想面340は、上述したベース面330と同様に、上側結合部110の上面(人工歯牙に向かう面)から下面(フィクスチャに向かう面)の方向に行きながら外側に傾くように延びることが可能である。
【0055】
これは、調節溝300の内側部位(ベース面側)だけでなく外側部位(仮想面側)でも同様に直径差による結合力の差別性を強化するための役割を提供する。
【0056】
言い換えれば、下顎インプラントを基準にベース面330より直接的に人工歯牙20に接する部位と言える仮想面340を下方に傾斜処理して人工歯牙20の上側部位の動きを鈍化させることにより、人工歯牙20の動きが発生するとき、できるだけフィクスチャの方向である下方指向性を有するようにして、人工歯牙20が垂直抗力の方向である上方に離脱しようとする性質を効率的に緩和させることができる特性を付与する。もちろん、下顎インプラントと反対の上顎インプラントの場合、ベース面330または仮想面340を上方に傾斜処理して上述した機能と同じ機能を提供することができる。
【0057】
このように、ベース面330と仮想面340が共に人工歯牙側からフィクスチャ側に傾くように延びることができる。さらに、仮想の垂直線、すなわちベース面330を基準にするときにはベース面330の上側辺(人工歯牙側辺)から垂直に延びる線であり、仮想面340を基準にするときには仮想面340の上側辺(人工歯牙側辺)から垂直に延びる線(本発明では、これらを一緒に‘仮想の垂直線’通称する)を基準にベース面330と仮想面340がそれぞれ特定の傾斜角を有するように傾斜処理することができる。
【0058】
具体的には、ベース面330は仮想の垂直線を基準に2°~7°の傾斜角をもって斜めに延び、仮想面340は仮想の垂直線を基準に7°~12°の傾斜角をもって斜めに延びることができる。ここで、仮想面340がベース面330の傾斜角より大きくなるように斜めに延びることがより好ましい。
【0059】
まず、このようにベース面330及び仮想面340の傾斜角は上側結合部110の高さ寸法と人工歯牙20内に挿入される寸法とによって変わることができる。上側結合部110が人工歯牙20内に挿入される寸法(高さ)が1.5~3.9mmであり、上側結合部110の高さ寸法が2~6mmであるときを基準に試行錯誤を経験しながら実験した結果、経験的に前記のようなベース面330及び仮想面340のそれぞれの傾斜角を得たものであると言える。
【0060】
特に、仮想面340の傾斜角がベース面330の傾斜角より大きい理由は、仮想面340が直接的に人工歯牙20に接触する部位であるので、ベース面330より傾斜角を大きくして人工歯牙20の動きを減らし、人工歯牙20と上側結合部110との間の結合状態をより円滑に維持するためである。
【0061】
追加的に、ベース面330において仮想の垂直線を基準にベース面330の傾斜角と調節溝300の個数は上側結合部110が人工歯牙の内部に挿入された高さによって異なるように調節することができる。
【0062】
言い換えれば、上側結合部110が人工歯牙20の内部に挿入された高さが低いほど人工歯牙20との結合維持力が低くなるので、このように損失された結合維持力を償うためにベース面330の傾斜角を、例えば2°~5°程度の補償角を加えて増加させるか、調節溝300の個数を概略的に2個または3個増加させることができる。ここで、調節溝300の個数は、上述した説明のように、上側結合部110の直径が小さくなる詳細領域をその分だけ増加させるという次元であると理解することができる。
【0063】
また、ベース面330の傾斜角は次の式1によって補正することができる。
【0064】
【数1】
【0065】
式1は上側結合部110の全高と上側結合部110において人工歯牙20に挿入された部分の高さとの関係によってベース面330の初期傾斜角に補償された傾斜角を加えて最終的にベース面330の傾斜角を補正したものである。ここで、ベース面330の初期傾斜角は、上述したように、仮想の垂直線を基準に2°~7°の角度を意味する。これは補正前の角度なので、3°~6°に初期設定して、後述する補正の後に最終傾斜角が2°~7°の角度を有するようにすることも可能である。
【0066】
式1に対する基本的な原理を説明すると、dはdより大きい値を有し、これらの間の差が小さいほど人工歯牙20の結合維持力が弱化するのでベース面330の傾斜角を増加させるように設定し、d-dの差値の逆数と傾斜角が線形的に比例する場合、傾斜角が不必要に大きくなり、上側結合部110の上下傾斜の差によってむしろ結合維持力を弱化させることがあるので、数値の高低にかかわらず1より小さいハイパボリックタンジェント(tanh)処理で補正される傾斜角が特定の角に収斂することができるように補完及び調節処理したものである。
【0067】
ここで、調節値aはdまたはdの自体値を考慮した状態でこれらの間の差値を区間別に区分した後、各区間に予め付与した数値に設定することができる。特に、例えばハイパボリックタンジェントtanh(x)においてx値が3以上の場合、ほぼ1に収斂するので、調節値を0.5~2の範囲に調節してx値が0.5~2程度になるようにすることが好ましい。
【0068】
この式1に対する例を挙げると、ベース面330の初期傾斜角が4°、上側結合部110の全高が4mm、上側結合部110において人工歯牙20に挿入された部分が2mm、調節値が2であると仮定する。この場合、式1によってベース面330の補正された傾斜角は、数2の値であり、他の変数は上記のようであり、上側結合部110において人工歯牙に挿入された部分のみが3mmの場合にベース面330の補正された傾斜角は、数3の値になる。
【0069】
【数2】
【0070】
【数3】
【0071】
すなわち、上側結合部110及び上側結合部110において人工歯牙20に挿入された部分の高さ差が小さくても傾斜角を差値の逆数に比例するように上昇させずに補償値を1より小さく収斂させることにより、ベース面330の大きな傾斜角によってむしろ上側結合部110と人工歯牙20との結合維持力を阻害する問題を効率的に防止するように処理したものである。
【0072】
図6は調節溝がフィクスチャの方向の指向性を有する変形実施例を示す概念図である。
【0073】
図6に示すように、追加的に底面320の辺の中でベース面330と接する内側辺が仮想面340と接する外側辺より短くなることが可能である。これは、上述したようにベース面330及び仮想面340が傾斜角を有するとき、特に調節溝300のベース面330が2°~7°の傾斜角を有するとともに仮想面340がベース面330より大きい7°~12°の傾斜角を有する場合より有用に適用することができる。
【0074】
このような構造によれば、側面310は下顎に装着されたインプラントを基準に自然に上側結合部110の上面(人工歯牙に向かう面)から下面(フィクスチャに向かう面)の方向に行きながらベース面330側に傾くように延び、これにより調節溝300の側面310が内部から外部に互いに広がるように、言い換えれば調節溝300の下部(フィクスチャ側)領域が内部から外部に拡開した形状を有するようになる。
【0075】
このような調節溝300の形状によれば、ベース面330と仮想面340がそれぞれ傾斜処理された状態で調節溝300の下部領域を拡開させることにより、人工歯牙20の動きによる力のベクター、すなわち力の大きさと方向を調節溝300の下部(フィクスチャ側)領域に自然に移動させることができ、結果的に前述した人工歯牙20の外力をフィクスチャの方向にガイドすることにより、人工歯牙20がフィクスチャの反対方向に浮き上がるか動こうとする性質を合理的に減らすことができる機能を果たす。
【0076】
さらに、ベース面330と仮想面340は下顎に装着されたインプラントを基準に上側結合部110の上面から下面に行きながら幅が小さくなるようにテーパー処理されるとともに、底面320はベース面330と接する内側辺から仮想面340と接する外側辺に延びながら上方に傾いた(すなわち、仮想面の高さが減るように傾いた)形状を有することができる。これも、上述したように、ベース面330及び仮想面340が傾斜角を有するとき、特に調節溝300のベース面330が2°~7°の傾斜角を有するとともに仮想面340がベース面330より大きな7°~12°の傾斜角を有する場合より有用に適用することができる。
【0077】
すなわち、ベース面330と仮想面340を下顎に装着されるインプラントを基準に正面から見たとき、上広下狭の形状を有して外力を調節溝300の下方に自然にガイドするだけでなく、底面320も内側から外側に上方に傾斜処理して調節溝300の下部領域に進入した外力を調節溝300の内側下方に誘導して、人工歯牙200に作用した外力をより確かにフィクスチャの方向に案内することにより、人工歯牙20がアバットメント100から逸脱しようとする方向に遊動するか浮き上がる問題を遮断することができる。
【0078】
このような構造により、人工歯牙20の動きとこれに作用した外力をフィクスチャの方向に自然に誘導することにより、効率的な外力分散の機能だけでなく、外力のフィクスチャの方向の指向性によって人工歯牙20が外側に逸脱しようとする性質を遮断させる特性を提供することができる。
【0079】
これまで説明したように、本発明による咬合高径寸法の安定的な調節が可能なインプラントのアバットメントの構成及び作用を前記説明及び図面で表現したが、これは例として説明したものに過ぎなく、本発明の思想が前記説明及び図面に限定されないし、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な変化及び変更が可能であるというのは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】