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特表2023-506375選択性、活性及び耐毒性を改善するための区分化アンモニアスリップ触媒
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  • 特表-選択性、活性及び耐毒性を改善するための区分化アンモニアスリップ触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】選択性、活性及び耐毒性を改善するための区分化アンモニアスリップ触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20230209BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20230209BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230209BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230209BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230209BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230209BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230209BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J29/80 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 A
F01N3/28 301F
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527181
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 GB2020053160
(87)【国際公開番号】W WO2021116683
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,070
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、アレクサンダー、ニコラス、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グリーンハム、ネイル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、マシュー イーベン
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA14
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4G169ZF05B
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4G169ZF07B
(57)【要約】
軸長さLを有する入口端部及び出口端部を備える基材;第1の白金族金属(PGM)成分及び担体を含む第1の触媒領域;アンモニア吸蔵性が低い担体表面の第2のPGM成分及び第1のSCR触媒を含む第2の触媒領域を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、第1の触媒領域が、少なくとも別の触媒領域によって被覆されている、触媒物品。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸長さLを有する、入口端部及び出口端部を備える基材と、
第1の白金族金属(PGM)成分及び担体を含む第1の触媒領域と、
アンモニア吸蔵性が低い担体表面の第2のPGM成分及び第1のSCR触媒を含む第2の触媒領域と、
を備え、
前記第1の触媒領域が、少なくとも別の触媒領域によって被覆されている、
触媒物品。
【請求項2】
前記第1のPGM成分がPtである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第2のPGM成分がPtである、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第2のPGM成分に対する前記第1のPGM成分の比が5:1~1:5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記担体が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの物理混合物又は複合材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記第1の触媒領域が、前記軸長さLの30~99パーセント分、延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第2の触媒領域が、前記アンモニア吸蔵性が低い担体表面の前記第2のPGMと第1のSCR触媒とのブレンドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記アンモニア吸蔵性が低い担体が、シリカ又はゼオライトを含むシリカ担体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記ゼオライトが、≧100、好ましくは≧500のシリカ対アルミナ比を有する、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第2の触媒領域が、前記軸長さLの30~99パーセント分、延在している、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第2の触媒領域が、前記第1の触媒領域の少なくとも10%を被覆している、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第2の触媒領域が、前記第1の触媒領域の100%を被覆している、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第1のSCR触媒が、第1の遷移金属及び第1のモレキュラーシーブを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1の遷移金属が、Cu、Fe、Mn又はそれらの混合物である、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第1のモレキュラーシーブが、小細孔、中細孔若しくは大細孔モレキュラーシーブ、又はそれらの混合物である、請求項13又は14に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記アンモニア吸蔵性が低い担体表面の前記第2のPGMの量に対する前記第1のSCR触媒の量の比が、これらの成分の重量に基づき、0:1~300:1の範囲、好ましくは3:1~300:1(これらを含む)の範囲にある、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
第3の触媒領域を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記第3の触媒領域が第2のSCR触媒を含む、請求項17に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記第2のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、貴金属、モレキュラーシーブ、第2の遷移金属交換モレキュラーシーブ又はそれらの混合物を含む、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記第2のSCR触媒が、前記第2の遷移金属交換モレキュラーシーブである、請求項19に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記第2の遷移金属が、Cu、Fe、Mn又はそれらの混合物である、請求項20に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記第3の触媒領域が、別の担体を更に含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記第3の触媒領域が、前記第1の触媒領域の100%を被覆している、請求項17~22のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項24】
第4の触媒領域を更に含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記第4の触媒領域が第3のSCR触媒を含む、請求項24に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記第3のSCR触媒が、卑金属、卑金属の酸化物、貴金属、モレキュラーシーブ、第3の遷移金属交換モレキュラーシーブ又はそれらの混合物を含む、請求項25に記載の触媒物品。
【請求項27】
前記第4の触媒領域が、入口端部で始まり、前記軸長さL未満の分、延在している、請求項24~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項28】
前記第1の触媒領域が、前記出口端部で始まり、前記軸長さL未満、延在している、請求項27に記載の触媒物品。
【請求項29】
前記第2の触媒領域が、前記出口端部で始まり、前記軸長さL未満、延在している、請求項27又は28に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記第2の触媒領域が、前記入口端部で始まり、前記軸長さL未満、延在している、請求項27~29のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項31】
前記第3の触媒領域が、前記出口端部で始まり、前記軸長さL未満、延在している、請求項27~30のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項32】
前記第3の触媒領域が、前記入口端部で始まり、前記軸長さL未満、延在している、請求項27~31のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項33】
前記基材がフロースルーモノリスである、請求項1~32のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
前記第1の触媒領域が、前記基材表面に直接、担持されている/堆積されている、請求項1~33のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガス流を処理するための、排出物処理システム。
【請求項36】
DOC、DPF、少なくとも1種の追加のSCR、少なくとも1種のASC又はそれらの組合せを更に含む、請求項35に記載の排出物処理システム。
【請求項37】
前記排気ガスを請求項1~34のいずれか一項に記載の触媒物品に接触させることを含む、内燃エンジンからの排気ガスを処理する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアスリップ触媒(ASC)、アンモニアスリップ触媒を含有する物品、並びにアンモニアスリップを低減するためのこのような物品を製造及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、固定ガスタービン及び他のシステムにおける炭化水素燃焼により、NO(一酸化窒素)及びNO(二酸化窒素)を含む窒素酸化物(NO)を除去するために処理しなければならない排気ガスが生成する(形成されるNOの大部分がNOである)。NOは、人々に多くの健康問題を引き起こすだけでなく、スモッグや酸性雨の形成などの多くの有害な環境影響を引き起こすことが知られている。排気ガス中のNOによる人と環境の両方の影響を軽減するために、好ましくは他の有害物質又は有毒物質を生成しないプロセスによって、これらの望ましくない成分を除去することが望ましい。
【0003】
リーンバーンエンジン及びディーゼルエンジンで生成される排気ガスは、概して酸化性である。NOを単体窒素(N)及び水に変換する選択的接触還元(SCR)として知られるプロセスにおいて、触媒及び還元剤を用いてNOを選択的に還元する必要がある。SCRプロセスでは、ガス状還元剤、通常、無水アンモニア、アンモニア水溶液又は尿素を排気ガス流に添加した後、排気ガスを触媒に接触させる。還元剤は触媒上に吸収され、NOは、ガスが触媒された基材の中又はその上を通過する際に還元される。NOの変換を最大化するためには、多くの場合、化学量論量を超えるアンモニアをガス流に加える必要がある。しかし、大気中に過剰なアンモニアを放出すると、人々の健康及び環境に有害である。更に、アンモニアは、とりわけその水性形態で苛性である。排気触媒下流の排気ラインの領域におけるアンモニアと水との凝縮により、排気システムに損傷を与えるおそれのある腐食性混合物が生じ得る。したがって、排気ガス中のアンモニアの放出を無くすべきである。従来の排気システムの多くにおいて、アンモニア酸化触媒(アンモニアスリップ触媒又は「ASC」としても知られる)が、SCR触媒の下流に設けられており、アンモニアを窒素に変換することによって排気ガスからアンモニアを除去する。アンモニアスリップ触媒を使用することにより、典型的なディーゼル動作サイクルにわたって90%を超えるNO変換率を可能にすることができる。
【0004】
本分野においてさまざまな努力が行われてきたにもかかわらず、技術的利益の改善された、良好なASC触媒が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、軸長さLを有する入口端部及び出口端部を備える基材;第1の白金族金属(PGM)成分及び担体を含む第1の触媒領域;アンモニア吸蔵性が低い担体表面の第2のPGM成分及び第1のSCR触媒を含む第2の触媒領域を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、第1の触媒領域が、少なくとも別の触媒領域によって被覆されている、触媒物品に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、第1の態様において記載されている触媒物品を含む排気システムに関する。
【0007】
更に別の態様では、本発明は、排気ガスを第1の態様において記載されている触媒物品に接触させることによる、内燃エンジンからの排気ガスを処理する方法に関する。
【0008】
更に別の態様では、本発明は、アンモニアを含む排気ガスを第1の態様において記載されている触媒物品に接触させることを含む、排気ガス中のNHに由来するNO形成を低減する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図2】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆している、構成を図示する。
図3】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域を被覆しており、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図4】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、構成を図示する。
図5】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、構成を図示する。
図6】第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、構成を図示する。
図7】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域を被覆しており、かつ第4の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図8】第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域を被覆しており、かつ第4の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図9】第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第3の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図10】第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1及び第2の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第3の触媒領域を部分的に被覆している、構成を図示する。
図11】比較例システム1及びシステム2のエンジン試験のための、WHTCサイクルの間の第2のNO排出による累積秒数を示す図である(580℃/100時間での水熱オーブンエージング後に、ANR1.2を投入)。
図12】比較例触媒1及び触媒2に関する、NH酸化及びNOスリップを示す図である。500ppm NHの一定流中、150~500℃から温度を傾斜させた、合成ガスのテストベンチ下で試験した場合。
図13】500ppm NH及び500ppm NOの一定流中、150~500℃の温度を傾斜させた、合成ガステストベンチ下で試験した場合の、比較例触媒1及び触媒2の、NH+NO活性(SCR反応)及びそれに伴うNOスリップを示す図である。
図14】500ppm NHの一定流中、150~500℃から温度を傾斜させた、合成ガステストベンチ下で試験した場合の、比較例触媒3及び触媒4の、NH酸化及びNOスリップを示す図である。
図15】500ppm NH及び500ppm NOの一定流中、150~500℃から温度を傾斜させた、合成ガステストベンチ下で試験した場合の、比較例触媒3及び触媒4の、NH酸化+NO活性(SCR反応)及びNOスリップを示す図である。
図16】ドープした硫黄の燃料中で長時間の低温エンジンエージング後の、比較例システム1及びシステム2の反復WHTCサイクル中に、システムが排出するNOを示す図である。参照システムは、DOC-CSF触媒及びSCR触媒からASCへのスリップを示している。比較例システム1は、比較例触媒1を用いる参照システムを示し、システム2は、触媒2を用いて試験した参照システムを示す。
図17】500ppm NHの一定流中、150~500℃から温度を傾斜させた、合成ガステストベンチ下で試験した場合の、比較例触媒3及び触媒4の、NH酸化及びNOスリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さないかぎり、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「触媒(a catalyst)」への言及には、2種以上の触媒(catalysts)の混合物などを含む。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「アンモニアスリップ」は、SCR触媒を通過する未反応アンモニアの量を意味する。
【0012】
用語「担体」は、触媒が固定されている物質を意味する。
【0013】
用語「アンモニア吸蔵性が低い担体」は、担体mあたり0.001mmol未満のNHしか吸蔵しない担体を意味する。アンモニア吸蔵性が低い担体は、好ましくは、AEI、ANA、ATS、BEA、CDO、CFI、CHA、CON、DDR、ERI、FAU、FER、GON、IFR、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRY、ISV、ITE、ITG、ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JOZ、LTA、LTF、MEL、MEP、MFI、MRE、MSE、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWW、NON、NSI、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SGT、SOD、SSF、SSO、SSY、STF、STO、STT、SVR、SVV、TON、TUN、UOS、UOV、UTL、UWY、VET、VNIからなる群から選択される、骨格型を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトである。より好ましくは、アンモニア吸蔵性が低い担体は、BEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI及びMWWからなる群から選択される骨格型を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトであり、更により好ましくは、骨格型は、BEA及びMFIからなる群から選択される。
【0014】
用語「焼成する」(又は「焼成」)は、空気又は酸素中で、物質を加熱することを意味する。この定義は、焼成のIUPAC定義と一致する。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」).Compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson.Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997))。M.Nic、J.Jirat、B.Kosataにより作成された、XMLオンライン修正版:http://goldbook.iupac.org(2006~);A.Jenkinsによってまとめられたアップデート、ISBN 0-9678550-9-8.doi:10.1351/goldbook)。焼成は、金属塩を分解し、触媒内の金属イオンの交換を促進し、やはりまた触媒を基材に付着させるために行われる。焼成に使用される温度は、焼成される材料中の成分に依存し、一般に、約1~8時間、約400℃~約900℃である。一部の場合、焼成は、約1200℃の温度まで焼成を行うことができる。本明細書に記載されているプロセスを伴う用途では、焼成は、一般に、約1~8時間、約400℃~約700℃の温度で、好ましくは約1~4時間、約400℃~約650℃の温度で行われる。
【0015】
用語「約」は、おおよそを意味し、用語が関連する値の、任意選択で±25%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、又は最も好ましくは±1%である範囲を指す。
【0016】
さまざまな数値要素の1つの範囲又は複数の範囲が指定されている場合、特に指定しないかぎり、1つの範囲又は複数の範囲に値を含めることができる。
【0017】
用語「N選択性」は、アンモニアの窒素への変換率を意味する。
【0018】
用語「白金族金属」又は「PGM」は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、及びイリジウムを指す。白金族金属は、好ましくは白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウムである。
【0019】
本発明の第1の態様では、排気ガスを処理するための触媒物品は、軸長さLを有する入口端部及び出口端部を備える基材;第1の白金族金属(PGM)成分及び担体を含む第1の触媒領域;アンモニア吸蔵性が低い担体表面の第2のPGM成分及び第1のSCR触媒を含む第2の触媒領域を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、第1の触媒領域が、少なくとも別の触媒領域によって被覆されている。
【0020】
第1の触媒領域
第1の触媒領域は、約250℃未満、約200℃未満又は約150℃未満などの低温での完全な酸化を含む、NHをNO及びHOに完全に酸化することができる。第1のPGMは、Pt、又はPtとPdとの組合せとすることができる。好ましくは、第1のPGMはPtである。ある種の実施形態では、第1の触媒領域は、第1の触媒領域に存在する貴金属の総重量に基づき、少なくとも約30重量パーセント、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約60重量パーセント、少なくとも約75重量パーセント又は少なくとも約90重量パーセントのPtを含有することができる。
【0021】
担体は、好ましくは、高表面積担体である。担体のタイプは、特に限定されないが、ただし、担体は、大きな表面積を有する粒子であり、不活性であり、処理後システムで使用するのに好適であることを条件とする。担持材料の例としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの物理混合物又は複合材などの耐熱性金属酸化物が挙げられ、アルミナが特に好ましい。ある種の実施形態では、担体は、幅広い細孔(例えば、100~350Å)を有する、又は幅広い細孔と狭い細孔の両方を有する。ある種の実施形態では、担体は、少なくとも50m/g、好ましくは約50~500m/g、より好ましくは約50~300m/g又は約150~250m/gのBET表面積を有する。耐熱性金属酸化物担体は、好ましくは水銀圧入ポロシメトリーによって測定すると、約0.1~0.5g/cc、例えば約0.2~0.4g/ccの細孔体積を好ましくは有する。粒子数に基づく、担持材料の平均粒子サイズは、好ましくは約0.01~10μm、例えば、約0.5~5μm、約0.1~1μm又は約5~10μmであり、好ましくは、これらの範囲のうち1つの範囲内に粒子数の大部分を有する。ある種の実施形態では、担体のD90粒子サイズは、これらの範囲のうち1つの範囲内にある。
【0022】
第1の触媒領域は、軸長さLの30~99パーセント分、延在することができ、好ましくは、軸長さLの40~95パーセント分又は45~90パーセント分、延在することができ、より好ましくは、軸長さLの50~85パーセント分、延在することができ、更により好ましくは、軸長さLの65~80パーセント分、延在することができる。
【0023】
第2の触媒領域
アンモニア吸蔵性が低い担体表面における第2のPGMと第1のSCR触媒との組合せは、(a)アンモニア吸蔵性が低い担体表面における第2のPGMと第1のSCR触媒とのブレンド、又は(b)第1のSCR触媒を含む上部層及びアンモニア吸蔵性が低い担体表面における第2のPGMを含む底部層を有する二層であって、底部層が基材表面に位置することができる二層、のどちらか一方である。好ましくは、第2の触媒領域は、アンモニア吸蔵性が低い担体表面における第2のPGMと第1のSCR触媒とのブレンドである。
【0024】
アンモニア吸蔵性が低い担体は、シリカ担体とすることができる。シリカ担体は、シリカ対アルミナ比が、≧100、好ましくは≧200、より好ましくは≧250、更により好ましくは≧300、とりわけ≧400、よりとりわけ≧500、及び更によりとりわけ≧750を有するシリカ又はゼオライトを含むことができる。本発明の各態様では、第1のSCR触媒は、好ましくはCu-SCR触媒又はFe-SCR触媒、より好ましくはCu-SCR触媒である。第2のPGMは、好ましくはPtである。
【0025】
ブレンド中のアンモニア吸蔵性が低い担体表面の第2のPGM(例えば、Pt)の量に対する第1のSCR触媒の量の比は、これらの成分の重量に基づき、0.1~300:1(これらを含む)、好ましくは3:1~300:1(これらを含む)、より好ましくは7:1~100:1(これらを含む)の範囲、更により好ましくは10:1~50:1(これらを含む)の範囲にあることができる。
【0026】
用語「活性成分担持量」とは、ブレンド中の白金の担体の重量+白金の重量+第1のSCR触媒の重量を指す。白金は、約0.01~約0.3重量%(これらを含む)、好ましくは、約0.03~0.2重量%(これらを含む)、より好ましくは約0.04~0.17重量%(これらを含む)、最も好ましくは、約0.05~0.15重量%(これらを含む)の活性成分担持量で触媒中に存在することができる。
【0027】
白金が、二層の底部層に存在する場合、白金は、これらの層の重量に対して、約0.1重量%~2重量%(これらを含む)、好ましくは0.1~1重量%(これらを含む)、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%(これらを含む)で存在することができる。パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)又はロジウム(Rh)などの追加触媒が、好ましくはPtとのブレンド中に、Ptと共に存在することができる。
【0028】
SCR触媒
さまざまな実施形態では、本組成物は、1種、2種又は3種のSCR触媒を含むことができる。本組成物中に常に存在する、第1のSCR触媒は、(1)アンモニア吸蔵性が低い担体表面におけるPtとのブレンド中に存在する、又は(2)触媒が二層中に存在し、Ptが底部層中に存在する場合、上部層中に存在する、のどちらか一方とすることができる。第1のSCR触媒は、第1の遷移金属及び第1のモレキュラーシーブを含むことができる。第1の遷移金属は、Cu、Fe、Mn又はそれらの組合せとすることができる。第1のSCR触媒は、好ましくはCu-SCR触媒又はFe-SCR触媒、より好ましくはCu-SCR触媒である。Cu-SCR触媒は、銅及びモレキュラーシーブを含む。Fe-SCR触媒は、鉄及びモレキュラーシーブを含む。モレキュラーシーブは、以下に更に記載されている。モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩(AlPO)、シリコ-アルミノリン酸塩(SAPO)、又はそれらの混合物とすることができる。銅又は鉄は、モレキュラーシーブの骨格内、及び/又はモレキュラーシーブ内部の骨格外(交換可能)部位に位置することができる。
【0029】
第2及び第3のSCR触媒は、同じとすることができる、又は異なることができる。第2及び第3のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、貴金属、モレキュラーシーブ、金属交換モレキュラーシーブ又はそれらの混合物とすることができる。卑金属は、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)、並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの組合せなどの耐熱性金属酸化物表面に担持されているバナジウムからなるSCR組成物は、周知であり、車両用途において商業的に幅広く使用されている。典型的な組成物は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,010,238号及び同第4,085,193号に記載されている。とりわけ、車両用途において商業的に使用されている組成物はTiOを含み、この表面に、WO及びVがそれぞれ、5~20重量%及び0.5~6重量%の範囲の濃度で分散されている。貴金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)若しくはロジウム(Rh)、又はそれらの混合物とすることができる。第2のSCR触媒は、促進されたCe-Zr又はMnOを含むことができる。これらの触媒は、結合剤及び促進剤として作用するSiO及びZrOなどの他の無機物質を含有してもよい。
【0030】
SCR触媒が卑金属である場合、本触媒物品は、少なくとも1種の卑金属促進剤を更に含むことができる。本明細書で使用する場合、「促進剤」は、触媒中に添加されると、触媒の活性を高める物質を意味すると理解される。卑金属促進剤は、金属、金属の酸化物、又はそれらの混合物の形態となり得る。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、ストロンチウム(Sr)、及びこれらの酸化物から選択されてもよい。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、好ましくは、MnO、Mn、Fe、SnO、CuO、CoO、CeO、及びこれらの混合物とすることができる。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、硝酸塩又は酢酸塩などの塩の形態で水溶液中の触媒に添加されてもよい。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤及び少なくとも1種の卑金属触媒、例えば銅は、水溶液から酸化物担持材料上に含浸されてもよく、酸化物担持材料を含むウォッシュコートに添加されてもよく、又はウォッシュコートであらかじめコーティングされた担体に含浸されてもよい。
【0031】
SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属交換モレキュラーシーブを含むことができる。本明細書において使用されるとおり、「モレキュラーシーブ」は、ガス又は液体に対する吸着剤として使用することができる、精密かつ一様なサイズからなる小さな細孔を含有する、準安定物質を意味することが理解される。細孔を通過するのに十分に小さな分子は吸着される一方、より大きな分子は吸着されない。モレキュラーシーブは、ゼオライト系モレキュラーシーブ、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、又はそれらの混合物とすることができる。
【0032】
ゼオライト系モレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会(IZA:International Zeolite Association)によって公開されたゼオライト構造のデータベースに列挙される骨格構造のうちのいずれか1つを有する微孔性アルミノケイ酸塩である。骨格構造としては、以下に限定されないが、CHA、FAU、BEA、MFI、MOR型のものが挙げられる。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例としては、チャバザイト、フォージャサイト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、シリカライト、X型ゼオライト、及びZSM-5が挙げられる。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、少なくとも約5から、好ましくは少なくとも約20から、有用な範囲が約10~200のSiO/Alとして定義されるシリカ/アルミナモル比(SAR)を有することができる。
【0033】
SCR触媒のいずれも、小細孔、中細孔若しくは大細孔モレキュラーシーブ、又はそれらの混合物を含むことができる。「小細孔モレキュラーシーブ」は、最大で8個の四面体原子の環サイズを含有するモレキュラーシーブである。「中細孔モレキュラーシーブ」は、最大で10個の四面体原子の環サイズを含有するモレキュラーシーブである。「大細孔モレキュラーシーブ」は、最大で12個の四面体原子の環サイズを有するモレキュラーシーブである。第2及び/又は第3のSCR触媒は、アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、金属置換アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、アルミノリン酸塩(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換アルミノリン酸塩(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコ-アルミノリン酸塩(SAPO)モレキュラーシーブ、及び金属置換シリコ-アルミノリン酸塩(MeAPSO)モレキュラーシーブ、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含むことができる。
【0034】
SCR触媒のいずれも、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物、並びに/又は連晶からなる骨格型の群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含むことができる。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、及びITEからなる骨格型の群から選択される。
【0035】
SCR触媒のいずれも、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、並びにこれらの混合物、並びに/又は連晶からなる骨格型の群から選択される中細孔モレキュラーシーブを含むことができる。好ましくは、MFI、FER及びSTTからなる骨格型の群から選択される中細孔モレキュラーシーブ。
【0036】
SCR触媒のいずれも、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、並びにこれらの混合物、並びに/又は連晶からなる骨格型の群から選択される大細孔モレキュラーシーブを含むことができる。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、MOR、OFF及びBEAからなる骨格型の群から選択される。
【0037】
Cu-SCR及びFe-SCR触媒中のモレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、BEA、MFI及びFER、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる群から好ましくは選択される。より好ましくは、Cu-SCR及びFe-SCR中のモレキュラーシーブは、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LEV、SFW、BEA、MFI及びFER、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる群から選択される。
【0038】
金属交換モレキュラーシーブは、外表面上の骨格外部位上に、又はモレキュラーシーブのチャネル、空洞、若しくはケージ内に堆積された、周期表のVB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、IB族、又はIIB族のうちの1つから少なくとも1つの金属を有することができる。金属は、ゼロ価の金属原子若しくはクラスター、孤立したカチオン、単核若しくは多核オキシカチオン、又は拡張金属酸化物を含むがこれらに限定されない、いくつかの形態のうちの1つであってもよい。好ましくは、金属は、鉄、銅、及びそれらの混合物又は組合せであり得る。
【0039】
金属は、好適な溶媒中の金属前駆体の混合物又は溶液を使用してゼオライトと一緒にすることができる。用語「金属前駆体」は、触媒活性金属成分を得るためにゼオライト上に分散され得る任意の化合物又は複合体を意味する。好ましくは、溶媒は、他の溶媒を使用する経済的側面及び環境的側面の両方により水である。銅の場合、好ましい金属が使用され、好適な複合体又は化合物には、以下に限定されないが、無水及び水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、アセチルアセトナート銅、酸化銅、水酸化銅、並びに銅アンミン(例えば、[Cu(NH2+)の塩が含まれる。本発明は、特定の種類、組成物又は純度の金属前駆体に制限されない。モレキュラーシーブを金属成分の溶液に添加して懸濁液を形成し、次いで、金属成分がゼオライト上に分布されるよう、懸濁液を反応させることができる。金属は、細孔チャネル及びモレキュラーシーブの外側表面に分布され得る。金属は、イオン形態又は金属酸化物として分布され得る。例えば、銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオンとして又は酸化銅として分布され得る。金属を含有するモレキュラーシーブは、懸濁液の液相から分離されて、洗浄及び乾燥が行われ得る。次いで、得られた金属含有モレキュラーシーブを焼成し、モレキュラーシーブ中の金属を固定することができる。好ましくは、第2及び第3の触媒は、銅及びモレキュラーシーブを含むCu-SCR触媒、鉄及びモレキュラーシーブを含むFe-SCR触媒、バナジウムをベースとする触媒、促進Ce-Zr又は促進MnOを含む。
【0040】
金属交換モレキュラーシーブは、外表面上の骨格外部位上に、又はモレキュラーシーブのチャネル、空洞若しくはケージ内に位置する、VB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、IB族又はIIB族の金属を約0.10重量%~約10重量%の範囲で含有することができる。好ましくは、骨格外金属は、約0.2重量%~約5重量%の範囲の量で存在することができる。
【0041】
金属交換モレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1~約20.0重量%の銅又は鉄を有する銅(Cu)又は鉄(Fe)担持モレキュラーシーブとすることができる。より好ましくは、銅又は鉄は、触媒の総重量の約0.5重量%~約15重量%、存在する。最も好ましくは、銅又は鉄は、触媒の総重量の約1重量%~約9重量%、存在する。
【0042】
本組成物は、第2のPGMと組み合わせた1種以上の更なる金属を含むことができる。これらの追加の1種以上の金属は、金(Au)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)又は銀(Ag)とすることができる。これらの金属は、約0.1重量%~約20重量%(これらを含む)、好ましくは約0.3重量%~約10重量%(これらを含む)で存在することができる。
【0043】
第2の触媒領域は、軸長さLの30~99パーセント分、延在することができ、好ましくは、軸長さLの40~95パーセント分又は45~90パーセント分、延在することができ、より好ましくは、軸長さLの50~85パーセント分、延在することができ、更により好ましくは、軸長さLの65~80パーセント分、延在することができる。
【0044】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域の少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%を被覆することができる。他の実施形態では、第2の触媒領域は、第1の触媒領域の少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%を被覆することができる。
【0045】
第1の触媒領域は、入口端部又は出口端部で始まることができる。及び第2の触媒領域は、入口端部又は出口端部で始まることができる。一部の実施形態では、第1及び第2の触媒領域は、異なる端部で始まる。他の実施形態では、第1及び第2の触媒領域は、同じ端部(すなわち、入口端部又は出口端部)で始まることができる。
【0046】
第2のPGM成分に対する第1のPGM成分の比は、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3、最も好ましくは3:2~2:3とすることができる。
【0047】
第3の触媒領域
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第3の触媒領域を更に含むことができる。第3の触媒領域は、第2のSCR触媒とすることができる。第2のSCR触媒は、上記の第1のSCR触媒と同じとすることができる。代替的に、第2のSCR触媒は、第1のSCR触媒と異なり得る。
【0048】
第3の触媒領域は、別の担体を更に含んでもよい。別の担持材料の例としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの物理混合物又は複合材などの耐熱性金属酸化物が挙げられ、アルミナが特に好ましい。
【0049】
第3の触媒領域は、軸長さLの20~100パーセント分又は30~95パーセント分、延在することができ、好ましくは、軸長さLの40~90パーセント分、延在することができ、より好ましくは、軸長さLの50~80パーセント分、延在することができる。
【0050】
ある種の実施形態では、第3の触媒領域は、第1の触媒領域のいずれも被覆していない。他の実施形態では、第3の触媒領域は、第1の触媒領域の少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%、60%、70%、80%、90%又は100%を被覆することができる。
【0051】
第1、第2、第3の触媒領域は、入口端部又は出口端部で始まることができる。一部の実施形態では、第1、第2及び/又は第3の触媒領域は、異なる端部で始まることができる。他の実施形態では、第1、第2及び/又は第3の触媒領域は、同じ端部(すなわち、入口端部又は出口端部)で始まることができる。
【0052】
第4の触媒領域
一部の実施形態では、本発明の触媒物品は、第4の触媒領域を更に含むことができる。第4の触媒領域は、第3のSCR触媒とすることができる。第3のSCR触媒は、上記の第1及び/又は第2のSCR触媒と同じとすることができるか、又はこれらと異なることができる。
【0053】
第4の触媒領域は、軸長さLの20~100パーセント分又は30~99パーセント分、延在することができ、好ましくは、軸長さLの40~95パーセント分、延在することができ、より好ましくは軸長さLの45~85パーセント分、延在することができ、更により好ましくは、軸長さLの50~80パーセント分、延在することができる。
【0054】
ある種の実施形態では、第4の触媒領域は、第1の触媒領域のいずれも被覆していない。他の実施形態では、第4の触媒領域は、第1の触媒領域の少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%、60%、70%、80%、90%又は100%を被覆することができる。
【0055】
第1、第2、第3又は第4の触媒領域は、入口端部又は出口端部で始まることができる。一部の実施形態では、第1、第2、第3及び/又は第4の触媒領域は、異なる端部で始まることができる。他の実施形態では、第1、第2、第3及び/又は第4の触媒領域は、同じ端部(すなわち、入口端部又は出口端部)で始まることができる。
【0056】
本発明の一態様では、第1、第2、第3及び/又は第4の触媒領域を含む触媒物品のさまざまな構成を以下のとおり、調製することができる。
【0057】
図1は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆している、第1の構成を図示する。
【0058】
第1の構成では、好ましくは、第1、第2及び第3の触媒領域は、それぞれが独立して、軸長さLの40~95パーセント分又は45~90パーセント分、延在することができ、より好ましくは、軸長さLの50~85パーセント分、延在することができ、更により好ましくは、軸長さLの65~80パーセント分、延在することができる。一部の実施形態では、第1の触媒領域と第2の触媒領域との間の重なりは、軸長さLの少なくとも5%、10%又は15%とすることができる。ある種の実施形態では、第2の触媒領域と第3の触媒領域との間の重なりは、軸長さLの少なくとも5%、10%又は15%とすることができる。
【0059】
図2は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆している、第2の構成を図示する。
【0060】
図3は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域を被覆しており、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆している、第3の構成を図示する。
【0061】
図4は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、第4の構成を図示する。
【0062】
図5は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、第5の構成を図示する。
【0063】
図6は、第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が軸長さLの100%分、延在する、第6の構成を図示する。
【0064】
図7は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域を被覆しており、かつ第4の触媒領域を部分的に被覆している、第7の構成を図示する。
【0065】
図8は、第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、第3の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域を被覆しており、かつ第4の触媒領域を部分的に被覆している、第8の構成を図示する。
【0066】
図9は、第1の触媒領域が出口端部から延在し、第2の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1の触媒領域を被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第3の触媒領域を部分的に被覆している、第9の構成を図示する。
【0067】
図10は、第2の触媒領域が出口端部から延在し、第1の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第2の触媒領域を部分的に被覆しており、第3の触媒領域が出口端部から延在し、かつ第1及び第2の触媒領域を被覆しており、第4の触媒領域が入口端部から延在し、かつ第3の触媒領域を部分的に被覆している、第10の構成を図示する。
【0068】
本発明の触媒物品のための基材は、ハニカム構造、押出し担体、金属製基材又はSCRFなどの、フロースルー構造又はフィルタ構造を含む、自動車用触媒を調製するために通常、使用される任意の物質であってもよい。好ましくは、基材は、基材の入口面から出口面まで延在する、複数の微細な並行ガス流路を有し、こうして、その通路は、流体流に対して開口している。このようなモノリシックな担体は、断面1平方インチあたり最大で約700以上の流路(又は「小区画」)を含有してもよいが、はるかに少ないものが使用されてもよい。例えば、担体は、1平方インチあたり(「cpsi」)、約7~600個、より通常は、約100~400個の小区画を有してもよい。それらの流体入口からそれらの流体出口まで実質的に直線の経路である流路は、この流路を通って流れるガスが触媒物質と接触するように、触媒(例えば、ASC又はSCR)が「ウォッシュコート」としてコーティングされる壁によって画定される。モノリシック基材の経路は、台形、長方形、正方形、三角形、正弦波、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状となり得る、薄壁チャネルである。本発明は、特定の基材タイプ、物質又は幾何学的形状に限定されない。
【0069】
セラミック製基材は、コーディエライト、コーディエライト-αアルミナ、α-アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ケイ酸ジルコニウム、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタルライト、アルミノケイ酸塩、及びそれらの混合物などの任意の好適な耐火性材料から作製されてもよい。
【0070】
ウォールフロー基材はまた、コーディエライト及び炭化ケイ素から形成されたものなどの、セラミック製繊維複合材材料から形成されてもよい。このような材料は、環境、特に排気ストリームを処理する際に遭遇する高温に耐えることができる。
【0071】
基材は、高多孔性基材とすることができる。用語「高多孔性基材」は、約40~約80%の多孔度を有する基材を指す。高多孔性基材は、好ましくは少なくとも約45%、より好ましくは少なくとも約50%の多孔度を有することができる。高多孔性基材は、好ましくは約75%未満、より好ましくは約70%未満の多孔度を有することができる。多孔度という用語は、本明細書で使用する場合、好ましくは水銀ポロシメトリーで測定すると、総多孔度を指す。
【0072】
好ましくは、基材は、コーディエライト、高多孔性コーディエライト、金属性基材、押出しSCR、ウォールフローフィルタ、フィルタ又はSCRFとすることができる。
【0073】
別の態様では、本発明は、上記の10種の構成の1つを有する触媒物品、及び排気ガス中でNHを形成するための手段を備えることが可能な排気システムであって、排気ガスが触媒と接触する前に、NHが排気ガス中で形成される、上記の排気システムに関する。
【0074】
排気システムは、(1)上記の触媒物品、及び(2)排気ガス中でNHを形成するための手段を備えることができ、NHは、排気ガスが触媒物品と接触した状態となる前に、排気ガス中で形成される。排気システムは、DOC、DPF、少なくとも1種の追加のSCR、少なくとも1種の追加のASC又はそれらの組合せを更に含むことができる。
【0075】
一部の実施形態では、本システムは、以下に示されている構成を有することができる:
(1) SCR+ASC+DPF+本発明の触媒物品
(2) SCR+本発明の触媒物品+DPF+SCR ASC
(3) DOC/PNA又はLNT>DPF>SCR>本発明の触媒物品
【0076】
更に別の態様では、本発明は、排気ガスを第1の態様において記載されている触媒物品に接触させることによる、内燃エンジンからの排気ガスを処理する方法に関する。
【0077】
更に別の態様では、本発明は、アンモニアを含む排気ガスを第1の態様において記載されている触媒物品に接触させることを含む、排気ガス中のNHに由来するNO形成を低減する方法に関する。
【0078】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例
【0079】
比較例触媒1
アルミナ上のPtのウォッシュコートを含む底部層を、セラミック製基材の前面に適用した。このウォッシュコートを、真空を使用して基材の長さの約50%の距離まで、真空を使用して基材から引き下げた。物品を乾燥し、ブリック全体が小さな重なり領域を有する底部層でコーティングされるようにするため、プロセスをブリックの後部にも繰り返した。このブリックを約1時間、約500℃で焼成した。この物品表面のPt及びアルミナの担持量は、それぞれ、2g/ft及び0.35g/inであった。
【0080】
Cu-AEIを含む第2のウォッシュコートを備える上部層を、底部層でコーティングされた基材に適用し、次に、このウォッシュコートを、真空を使用して基材の長さの約50%の距離まで、基材から引き下げた。物品を乾燥し、ブリック全体が上部層の小さな重なり領域を有する上部層でコーティングされるようにするため、プロセスをブリックの後部にも繰り返した。この物品を乾燥して、約1時間、約500℃で焼成した。上部層におけるCu-AEIの担持量は、1.8g/inであった。最終物品は、比較例触媒1である。
【0081】
触媒2
アルミナ上のPtのウォッシュコートを含む層を、セラミック製基材の後面に適用した。このウォッシュコートを、真空を使用して基材の長さの約70%の距離まで、真空を使用して基材から引き下げた。この物品を乾燥して、約1時間、約500℃で焼成した。この物品表面のPt及びアルミナの担持量は、それぞれ、1g/ft及び0.35g/inであった。
【0082】
ZSM-5(SAR=2100を有するMFI骨格)表面の3重量%のPt及びCu-AEIのブレンドを含むウォッシュコートを備える第2の層をセラミック製基材の前面に適用し、次に、このウォッシュコートを、真空を使用して基材の長さの約70%の距離まで基材から引き下げた。物品を乾燥した。物品上のPt、高SARゼオライト及びCu-AEIの担持量は、それぞれ、1g/ft3、0.02g/in及び1.05g/inであった。
【0083】
Cu-AEIを含む第2のウォッシュコートを備える上部層を、記載されている二層でコーティングされた基材に適用し、次に、このウォッシュコートを、真空を使用して基材の長さの約70%の距離まで、基材から引き下げた。この物品を乾燥して、約1時間、約500℃で焼成した。上部層におけるCu-AEIの担持量は、1.05g/inであった。最終物品は触媒2である。
【0084】
触媒2の構成は、図1に示されている。
【0085】
比較例触媒3
比較例触媒3は、Pt担持量を除いて、比較例触媒1と同じ方法で作製した。底部層における比較例触媒3のPt担持量は、3g/ftであった。
【0086】
触媒4
触媒4は、Pt担持量を除いて、触媒2と同じ方法で作製した。底部層に関するPt担持量(アルミナ表面のPt)は、1.5g/ftであり、第2の層のPt担持量は、1.5g/ftであった。
【0087】
実施例1
表1は、10.5×3インチ、400/4のセラミック製ブリック表面に調製する場合、1400m/時で測定した、比較例触媒1及び触媒2のコールドフロー背圧を比較している。表1に示されるとおり、触媒2は、比較例触媒1よりも約16%低い背圧を示した。
【0088】
【表1】
【0089】
参照システム
DOC-CSF-SCRのみ
【0090】
比較例システム1
DOC-CSF-SCR、次に比較例触媒1
【0091】
システム2
DOC-CSF-SCR、次に触媒2
【0092】
実施例2
実施例2は、本システムに1.2のNOに対するアンモニアの比で投入した場合の、世界統一過渡サイクル(WHTC)の間の、エンジン試験床における、参照システム、比較例システム1及びシステム2に関して測定した、排気管排出を比較している。
【0093】
SCR及びASC触媒作用を、調製直後(fresh)、及び580℃/100時間/10%の水とシミュレーションした寿命エージング後に試験した。同じDOC及びCSFを、調製直後のもの及びエージング試験の両方で使用した。
【0094】
表2に示されるとおり、比較例システム1と比較すると、触媒2を含有するシステム2は、一層低いNO(約60%の低下)及び一層低いNOスリップ(約5%の低下)をもたらした。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例3
実施例3は、本システムに1.2となるNOに対するアンモニアの比で投入した場合の、WHTCサイクルの間の、エンジン試験床における、比較例システム1及びシステム2に関して測定した、NOの排気管排出を比較している。触媒作用は、寿命エージングをシミュレーションするため、580℃/100時間/10%の水での水熱エージング後に試験した。
【0097】
図11に示されているとおり、驚くべきことに、システム2(エージング後)は、比較例システム1(エージング後)と比べて、かなり低い累積NOスリップとなることを実証している。
【0098】
実施例4
実施例4は、180kの空間速度において、500ppm NH又は500ppm NH/500ppm NO(ANR=1.0)のどちらか一方のガス条件下、SCATで試験したときの、比較例触媒1、触媒2、比較例触媒3及び触媒4の、NO生成を伴うNH酸化及び選択的接触還元(「SCR」)を比較する。触媒は、調製直後のもの、及び550℃/100時間/10%水での水熱エージング後の両方で試験した。
【0099】
図12は、比較例触媒1及び触媒2に関する、NH酸化及びNOスリップを示している。
【0100】
図13は、比較例触媒1及び触媒2に関する、NH+NO活性(SCR反応)及び付随するNOスリップを示している。
【0101】
図14は、比較例触媒3及び触媒4に関する、NH酸化及びNOスリップを示している。
【0102】
図15は、比較例触媒3及び触媒4に関する、NH+NO活性(SCR反応)及び付随するNOスリップを示している。
【0103】
図12及び図14に示されるとおり、触媒2及び4は、NHの酸化の際に、NOの生成が一層低いことを実証している。触媒をNH及びNO(SCR反応)に供すると、図13及び15において、NOの生成がより少ないことも観察された。更に、触媒2及び4は、250~350℃の温度範囲において、NO変換率が改善されたことを示した。
【0104】
実施例5
インフィールド硫酸化(in-field sulfation)をシミュレーションするために、比較例触媒1及び触媒2に、硫黄をドープした燃料中で長時間にわたる低温エンジンエージングを施した。これに続いて、比較例触媒1及び触媒2を、それぞれ、比較例システム1及びシステム2において試験した。システムにそれぞれ、温度350℃~500℃に昇温して、30分間、4回のWHTCを施し、次に、4×WHTCを繰り返した。一連の4回のWHTCはそれぞれ、250℃/ANR=1.2での、定常状態での試験点も含んだ。WHTCサイクルは、性能チェックとして働く一方、昇温してのエンジンの駆動は、触媒を二硫酸化するため、エンジン管理制御をシミュレーションするものである。清浄な熱水オーブンでのエージング済み試料も試験した。比較例触媒1及び触媒2に入る汚染物質を理解するため、参照システム(DOC-CSF及びV-SCR)を同じ4回のWHTCレジメンにわたり試験し、すべての場合において同じ成分を使用した。
【0105】
図16に示されるとおり、システム2は、比較例システム1と比べて、一層迅速/良好なNO性能回復(1回のWHTCサイクル後にほとんど回復した)を実証している。これは、表3に示されているとおり、定常状態の点での結果における更なる証拠となる。これは、ある程度のNH酸化活性を依然として保持すると同時に実現された(表4を参照されたい)。
【0106】
【表3】
250℃/NOに対するアンモニアの比(ANR)=1.2での定常状態の間
【0107】
【表4】
250℃/NOに対するアンモニアの比(ANR)=1.2での定常状態の間
【0108】
実施例6
実施例6は、180kの空間速度において、500ppm NHのガス条件下、SCATで試験したときの、比較例触媒3及び触媒4の、NO生成を伴うNH酸化を比較する。触媒は、調製直後のものとエンジンでのエージング後の両方で試験した。触媒は、V-SCRの下流のSCR/受動ディーゼル微粒子捕集フィルタ/V-SCR/ASC構成でエージングした。比較例触媒3及び触媒4の1×3インチのコアを大型試験用ブリックの内側に設置した。実際の駆動条件はテストベンチでの過渡サイクルによって表され、調節後負荷点が加速熱エージング及び化学エージングを模倣するようやはり考慮した(すなわち、定常状態の条件を過渡サイクルに追加した)。エージング条件は、150℃~470℃の温度範囲内の過渡サイクルを含み、この場合、連続的に駆動した全サイクルの各々の長さをほぼ45分間とした。エンジンエージングの全長は1000時間とした。
【0109】
図17は、比較例触媒3及び触媒4に関する、NH酸化及びNOスリップを示している。
【0110】
図17に示されるとおり、触媒4は、NHの酸化の際、NOの生成が一層低くなることを実証した。
【0111】
前述の実施例は、例示として意図されているに過ぎない。以下の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】