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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】蒸気動力式舷外共形冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/10 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B63H21/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528162
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2021073229
(87)【国際公開番号】W WO2022088530
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011174103.1
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370916
【氏名又は名称】武漢第二船舶設計研究所
【氏名又は名称原語表記】WUHAN 2ND SHIP DESIGN AND RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No. 19 Yangqiaohu Avenue, Canglongdao Development Zone, Jiangxia District Wuhan, Hubei 430205, China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】王葦
(72)【発明者】
【氏名】邱志強
(72)【発明者】
【氏名】柯志武
(72)【発明者】
【氏名】労星勝
(72)【発明者】
【氏名】李勇
(72)【発明者】
【氏名】李邦明
(72)【発明者】
【氏名】魏志国
(72)【発明者】
【氏名】柳勇
(72)【発明者】
【氏名】戴春輝
(72)【発明者】
【氏名】李少丹
(57)【要約】
本発明は、船舶の舷外冷却の技術分野に関し、特に、蒸気動力式舷外共形冷却システムに関する。当該蒸気動力式舷外共形冷却システムは、蒸気タービン、冷却器及び共形熱交換器を含む。共形熱交換器は、熱交換器ハウジング、下キャップ、上キャップ及び複数の熱交換パイプを含む。熱交換器ハウジングは、船体板の外側壁に設置される外殻板を含み、外殻板と船体板の間に海水熱交換室が囲繞及び形成される。各熱交換パイプの第1端は冷却水入水室とそれぞれ連通しており、各熱交換パイプの第2端は冷却水吐水室とそれぞれ連通している。冷却水入水室と冷却器は入水配管を介して連通しており、冷却水吐水室と冷却器は吐水配管を介して連通している。本発明では、舷外空間を十分に利用可能とすることで、船体における冷却器の配置位置がより柔軟になるとともに、システムの熱交換過程における安全性及び信頼性も向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン、冷却器及び共形熱交換器を含み、前記蒸気タービンと前記冷却器とは蒸気ダクトを介して連通しており、
前記共形熱交換器は、熱交換器ハウジング、前記熱交換器ハウジングの底部に設置される下キャップ、前記熱交換器ハウジングの上部に設置される上キャップ、及び、前記熱交換器ハウジングの内部に設置される複数の熱交換パイプを含み、前記熱交換器ハウジングは、船体板の外側壁に設置される外殻板を含み、前記外殻板と前記船体板との間に海水熱交換室が囲繞及び形成され、
前記上キャップには冷却水入水室が設けられており、前記下キャップには冷却水吐水室が設けられており、各前記熱交換パイプの第1端は前記冷却水入水室とそれぞれ連通しており、各前記熱交換パイプの第2端は前記冷却水吐水室とそれぞれ連通しており、
前記冷却水入水室と前記冷却器とは入水配管を介して連通しており、前記冷却水吐水室と前記冷却器とは吐水配管を介して連通していることを特徴とする蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項2】
前記外殻板における前記下キャップ寄りの位置に海水入口が設けられており、前記海水入口に海水入口格子が設けられており、
前記外殻板における前記上キャップ寄りの位置に海水出口が設けられており、前記海水出口に海水出口格子が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項3】
前記船体板の外周に船舶外殻体が設けられており、前記船体板と前記船舶外殻体との間に舷外空洞が形成され、前記共形熱交換器は前記舷外空洞の内部に設置されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項4】
前記海水入口の上方には入水ガードプレートが設けられており、前記入水ガードプレートは、前記外殻板と前記船舶外殻体の間に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項5】
前記舷外空洞の内部における前記海水出口に対応する位置には噴射装置が設けられており、前記噴射装置は、排気ダクトを介して前記蒸気ダクトに連なっていることを特徴とする請求項3に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項6】
前記噴射装置は、ノズル、吸入口、流動ダクト及び拡散口を含み、前記吸入口及び前記拡散口は、それぞれ前記流動ダクトの両端に対応して接続され、前記吸入口は前記海水出口に対応しており、前記ノズルの入口は前記排気ダクトに連なっており、前記ノズルの出口は前記吸入口の内部に位置していることを特徴とする請求項5に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項7】
前記吸入口は、第1端から第2端に向かって徐々に縮小する円錐形の筒体であり、前記吸入口の第1端は前記海水出口に対応しており、前記吸入口の第2端は前記流動ダクトに連なっており、
前記拡散口は、第1端から第2端に向かって徐々に拡大する円錐形の筒体であり、前記拡散口の第1端は前記流動ダクトに連なっていることを特徴とする請求項6に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項8】
前記拡散口の上方には海水格子が設けられており、前記海水格子は前記船舶外殻体の内側壁に装着されていることを特徴とする請求項7に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項9】
前記下キャップは、前記船体板の外側壁に設置される下キャップ殻板を含み、前記熱交換器ハウジングの底部は前記下キャップ殻板に連なっており、前記下キャップ殻板と前記船体板の間に前記冷却水吐水室が囲繞及び形成され、
前記上キャップは、前記船体板の外側壁に設置される上キャップ殻板を含み、前記熱交換器ハウジングの上部は前記上キャップ殻板に連なっており、前記上キャップ殻板と前記船体板の間に前記冷却水入水室が囲繞及び形成されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【請求項10】
前記船体板は円弧状をなしており、前記外殻板は前記船体板の形状に適合する円弧状をなしており、各前記熱交換パイプは、いずれも前記外殻板の形状に適合する円弧状のパイプであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の蒸気動力式舷外共形冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2020年10月28日に提出された出願番号第202011174103.1号、発明の名称「蒸気動力式舷外共形冷却システム」の中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照によって本文に組み入れられる。
【0002】
本発明は、船舶の舷外冷却の技術分野に関し、特に、蒸気動力式舷外共形冷却システムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、船舶の舷外冷却器は、一般的にシーチェストに配置されている。舷外海水は、底部の入口を通じて舷外冷却器に進入し、舷外冷却器内の熱媒体と熱交換を行って加熱されたあと、密度の減少に伴って冷却器ボックスの高位置の出口から導出される。そのため、舷外冷却器の配置位置には制限がある。且つ、海水は舷外冷却器と直接熱交換を行う必要があるが、海水と舷外冷却器の間には格子が存在するのみである。このことから、舷外冷却器が海水の汚染物質によって詰まりやすく、舷外冷却器の熱交換能力が低下する結果、船倉内に冷却装置による過熱事故が容易に発生する。また、従来の舷外冷却器と海水との熱交換は自然対流形式のため、熱交換効率が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する技術的課題の1つを少なくとも解決することを主旨とする。
【0005】
そこで、本発明は、舷外空間を十分に利用可能とすることで、冷却器の配置がより柔軟となり、安全性及び信頼性が向上する蒸気動力式舷外共形冷却システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例に基づく蒸気動力式舷外共形冷却システムは、蒸気タービン、冷却器及び共形熱交換器を含む。前記蒸気タービンと前記冷却器は蒸気ダクトを介して連通している。前記共形熱交換器は、熱交換器ハウジング、前記熱交換器ハウジングの底部に設置される下キャップ、前記熱交換器ハウジングの上部に設置される上キャップ、及び、前記熱交換器ハウジングの内部に設置される複数の熱交換パイプを含む。前記熱交換器ハウジングは、船体板の外側壁に設置される外殻板を含み、前記外殻板と前記船体板の間に海水熱交換室が囲繞及び形成される。前記上キャップには冷却水入水室が設けられており、前記下キャップには冷却水吐水室が設けられている。各前記熱交換パイプの第1端は前記冷却水入水室とそれぞれ連通しており、各前記熱交換パイプの第2端は前記冷却水吐水室とそれぞれ連通している。前記冷却水入水室と前記冷却器は入水配管を介して連通しており、前記冷却水吐水室と前記冷却器は吐水配管を介して連通している。
【0007】
本発明の一実施例によれば、前記外殻板における前記下キャップ寄りの位置に海水入口が設けられており、前記海水入口に海水入口格子が設けられている。また、前記外殻板における前記上キャップ寄りの位置に海水出口が設けられており、前記海水出口に海水出口格子が設けられている。
【0008】
本発明の一実施例によれば、前記船体板の外周に船舶外殻体が設けられている。前記船体板と前記船舶外殻体の間には舷外空洞が形成されており、前記共形熱交換器は前記舷外空洞の内部に設置される。
【0009】
本発明の一実施例によれば、前記海水入口の上方には入水ガードプレートが設けられており、前記入水ガードプレートは、前記外殻板と前記船舶外殻体の間に接続されている。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記舷外空洞の内部における前記海水出口に対応する位置には噴射装置が設けられている。前記噴射装置は、排気ダクトを介して前記蒸気ダクトに連なっている。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記噴射装置は、ノズル、吸入口、流動ダクト及び拡散口を含む。前記吸入口及び前記拡散口は、それぞれ前記流動ダクトの両端に対応して接続されている。前記吸入口は前記海水出口に対応している。前記ノズルの入口は前記排気ダクトに連なっており、前記ノズルの出口は前記吸入口の内部に位置している。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記吸入口は、第1端から第2端に向かって徐々に縮小する円錐形の筒体である。前記吸入口の第1端は前記海水出口に対応しており、前記吸入口の第2端は前記流動ダクトに連なっている。前記拡散口は、第1端から第2端に向かって徐々に拡大する円錐形の筒体である。前記拡散口の第1端は前記流動ダクトに連なっている。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記拡散口の上方には海水格子が設けられている。前記海水格子は前記船舶外殻体の内側壁に装着されている。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記下キャップは、前記船体板の外側壁に設置される下キャップ殻板を含む。前記熱交換器ハウジングの底部は前記下キャップ殻板に連なっており、前記下キャップ殻板と前記船体板の間に前記冷却水吐水室が囲繞及び形成される。前記上キャップは、前記船体板の外側壁に設置される上キャップ殻板を含む。前記熱交換器ハウジングの上部は前記上キャップ殻板に連なっており、前記上キャップ殻板と前記船体板の間に前記冷却水入水室が囲繞及び形成される。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記船体板は円弧状をなしており、前記外殻板は前記船体板の形状に適合する円弧状をなしている。各前記熱交換パイプは、いずれも前記外殻板の形状に適合する円弧状のパイプである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施例における上記1又は複数の技術方案は、少なくとも以下の技術的効果の1つを有する。
【0017】
本発明の実施例における蒸気動力式舷外共形冷却システムは、蒸気タービン、冷却器及び共形熱交換器を含む。蒸気タービンと冷却器は蒸気ダクトを介して連通しており、共形熱交換器は、熱交換器ハウジング、下キャップ、上キャップ及び複数の熱交換パイプを含む。熱交換器ハウジングは、船体板の外側壁に設置される外殻板を含む。これにより、外殻板と船体板の間に海水熱交換室を囲繞及び形成可能となり、海水熱交換室における舷外海水の流動が実現される。各熱交換パイプの第1端は上キャップの冷却水入水室とそれぞれ連通しており、冷却水入水室と前記冷却器は入水配管を介して連通している。また、各熱交換パイプの第2端は下キャップの冷却水吐水室とそれぞれ連通しており、冷却水吐水室と前記冷却器は吐水配管を介して連通している。動作時には、冷却器内の冷却水が、入水配管を通じて冷却水入水室に進入したあと、冷却水入水室を通過して各熱交換パイプに進入し、舷外海水と熱交換することで冷却される。そして、冷却水吐水室、吐水配管を順に通過して冷却器に戻り、蒸気タービンから排出された排気を冷却するために用いられる。また、舷外海水流は、共形熱交換器の海水熱交換室に進入し、熱交換パイプ内の冷却水と熱交換することで加熱されたあと、海水熱交換室から排出される。このように、本発明の実施例における蒸気動力式舷外共形冷却システムは、共形熱交換器と船体板の間に共形構造を形成することで、舷外海水を共形熱交換器のハウジング側で流動可能とし、冷却器内の冷却水を共形熱交換器のパイプ側で流動可能とする。これにより、舷外海水を利用して、蒸気タービンから排出された排気を冷却可能となる。また、舷外空間を十分に利用することで、船体における冷却器の配置位置がより柔軟になるだけでなく、システムの熱交換過程における安全性及び信頼性も向上する。
【0018】
本発明の付加的局面及び利点については、一部を以下の記載で提示するが、一部は以下の記載から明らかであるか、本発明の実践を通じて理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施例で提供する蒸気動力式舷外共形冷却システムの概略構造図である。
図2図2は、本発明の実施例における噴射装置の概略構造図である。
図3図3は、本発明の実施例における海水入口格子の概略構造図である。
図4図4は、本発明の実施例における海水出口格子の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面と実施例を組み合わせて、本発明の実施形態につき更に詳細に記載する。以下の実施例は本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を制限することはない。
【0021】
本発明の実施例の記載において、説明すべき点として、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「天井」、「底」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の実施例の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明の実施例を制限するものと理解すべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」との用語は記載を目的としたものにすぎず、相対的な重要性を明示又は暗示するものと理解すべきではない。
【0022】
本発明の実施例の記載において、説明すべき点として、別途明確に規定及び限定している場合を除き、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。更には、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明の実施例における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0023】
本発明の実施例では、別途明確に規定及び限定している場合を除き、第1の特徴が第2の特徴「上」又は「下」に位置するとは、第1及び第2の特徴が直接接触していてもよいし、第1及び第2の特徴が中間媒体を介して間接的に接触していてもよい。且つ、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」及び「上面」に位置するとは、第1の特徴が第2の特徴の真上又は斜め上方に位置していてもよいし、単に、第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも高いことを示していてもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」及び「下面」に位置するとは、第1の特徴が第2の特徴の真下又は斜め下方に位置していてもよいし、単に、第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも低いことを示していてもよい。
【0024】
本明細書の記載において、「一の実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体例」又は「いくつかの例示」等の用語を引用する記載は、その実施例又は例示を組み合わせて記載する具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の実施例の少なくとも1つの実施例又は例示に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語についての概略的記載は必ずしも同じ実施例又は例示を対象とするものではない。且つ、記載する具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例或いは例示において適切な方式で組み合わせ可能である。このほか、互いに矛盾しない場合、当業者は、本明細書で記載する異なる実施例又は例示、及び異なる実施例又は例示の特徴を結合及び組み合わせることが可能である。
【0025】
図1図4に示すように、本発明の実施例は、蒸気動力式舷外共形冷却システムを提供する。図中の矢印方向は液体の流動方向を示している。当該蒸気動力式舷外共形冷却システムは、蒸気タービン1、冷却器2及び共形熱交換器3を含み、蒸気タービン1と冷却器2は蒸気ダクト4を介して連なっている。即ち、蒸気タービン1から排出された排気は、蒸気ダクト4を通じて冷却器2に搬送され、冷却器2内の冷却水と熱交換を行う。これにより、排気を降温させる。
【0026】
共形熱交換器3は、熱交換器ハウジング、熱交換器ハウジングの底部に設置される下キャップ31、熱交換器ハウジングの上部に設置される上キャップ32、及び、熱交換器ハウジングの内部に設置される複数の熱交換パイプ33を含む。熱交換器ハウジングは、船体板34の外側壁に設置される外殻板35を含み、外殻板35と船体板34の間に海水熱交換室36が囲繞及び形成される。即ち、船体板34の一部を共形熱交換器3の内殻板として使用し、外殻板35と組み合わせて共形構造を形成する。
【0027】
上キャップ32には冷却水入水室321が設けられており、下キャップ31には冷却水吐水室311が設けられている。各熱交換パイプ33の第1端は冷却水入水室321とそれぞれ連通しており、各熱交換パイプ33の第2端は冷却水吐水室311とそれぞれ連通している。冷却水入水室321と冷却器2の冷却水出口は入水配管5を介して連通している。また、冷却水吐水室311と冷却器2の冷却水入口は吐水配管6を介して連通している。
【0028】
動作時には、冷却器2内の冷却水が、入水配管5を通じて上キャップ32に設けられた冷却水入水室321に進入したあと、冷却水入水室321を通過して各熱交換パイプ33に進入し、舷外海水と熱交換することで冷却される。そして、下キャップ31の冷却水吐水室311に進入したあと、吐水配管6を通過して冷却器2に戻り、蒸気タービン1から排出された排気を冷却するために用いられる。また、これと同時に、舷外海水流が共形熱交換器3の海水熱交換室36に進入し、熱交換パイプ33内の冷却水と熱交換することで加熱されたあと、海水熱交換室36から排出される。
【0029】
こうして、本発明の実施例における蒸気動力式舷外共形冷却システムは、共形熱交換器3と船体板34の間に共形構造を形成することで、舷外海水を共形熱交換器3のハウジング側で流動可能とし、冷却器2内の冷却水を共形熱交換器3のパイプ側で流動可能とする。これにより、舷外海水を利用して、蒸気タービン1から排出された排気を冷却可能となる。また、舷外空間を十分に利用することで、船体における冷却器2の配置位置がより柔軟になるだけでなく、システムの熱交換過程における安全性及び信頼性も向上する。
【0030】
具体的に、船体板34は円弧状をなしており、外殻板35は船体板34の形状に適合する円弧状をなしている。また、各熱交換パイプ33は、いずれも外殻板35の形状に適合する円弧状のパイプである。即ち、熱交換パイプ33は、下から上に湾曲して設置される円弧状をなしている。
【0031】
具体的に、船体板34の外周には船舶外殻体7が設けられている。船体板34と船舶外殻体7の間には舷外空洞8が形成されており、共形熱交換器3が舷外空洞8の内部に設置される。即ち、共形熱交換器3を船体板34と船舶外殻体7の間の舷外空洞8内に設置することで、共形熱交換器3を効果的に保護し得るため、システムの熱交換過程における安全性及び信頼性が更に向上する。
【0032】
本発明のいくつかの実施例において、外殻板35における下キャップ31寄りの位置には海水入口が設けられており、当該海水入口が海水熱交換室36と連通している。当該海水入口には海水入口格子351が設けられている。当該海水入口格子351は、舷外海水を海水熱交換室36に引き込む傾斜角を有している。また、外殻板35における上キャップ32寄りの位置には海水出口が設けられており、当該海水出口が海水熱交換室36と連通している。当該海水出口には海水出口格子352が設けられている。当該海水出口格子352は、舷外海水を海水熱交換室36から引き出す傾斜角を有している。即ち、舷外海水流は、海水入口から共形熱交換器3の海水熱交換室36に進入し、熱交換パイプ33内の冷却水と熱交換することで加熱されたあと、海水出口を通じて海水熱交換室36から排出される。海水入口格子351及び海水出口格子352を設置することで、共形熱交換器3を保護可能であり、海水熱交換室36に対する汚染物質の進入が効果的に防止される。これにより、汚染物質による海水熱交換室36の詰まりが回避されるため、システムの安全性及び信頼性が更に向上する。
【0033】
海水入口を外殻板35の下部に設置し、海水出口を外殻板35の上部に設置することで、海水熱交換室36内における舷外海水の流動経路は、低い側から進入して高い側から排出される形式となる。
【0034】
本発明のいくつかの実施例において、海水入口の上方には入水ガードプレート10が設けられている。当該入水ガードプレート10は、外殻板35と船舶外殻体7の間に接続されている。海水入口格子351と連携して作用可能な入水ガードプレート10を設置することで、舷外海水を海水熱交換室36に引き込むのに有利となる。
【0035】
本発明のいくつかの実施例において、舷外空洞8の内部における海水出口に対応する位置には噴射装置9が設けられている。当該噴射装置9は、排気ダクト11を介して蒸気ダクト4に連なっている。排気ダクト11には、排気ダクト11内の排気の流動状態を制御するための排気制御弁12が設けられている。前記噴射装置9は、蒸気タービン1から排出された排気を作動流体として利用し、共形熱交換器3の海水出口から流出した海水を吸い込んだあとジェット排出する。これにより、蒸気タービン1から排出される排気を合理的に利用して、共形熱交換器3と舷外海水との強制対流熱交換を実現することで、システムの熱交換効率を向上させる。
【0036】
具体的に、当該噴射装置9は、ノズル91、吸入口92、流動ダクト93及び拡散口94を含む。吸入口92及び拡散口94は、それぞれ流動ダクト93の両端に対応して接続されている。吸入口92は海水熱交換室36の海水出口に対応している。ノズル91の入口は排気ダクト11に連なっており、ノズル91の出口は吸入口92の内部に位置している。即ち、噴射装置9の作動流体は蒸気ダクト4からの排気であり、被吸入流体は海水熱交換室36の海水出口から流出する加熱された舷外海水である。また、蒸気ダクト4からの排気の温度は約50℃である。排気は凝縮して液状水になることで体積が急激に縮小する。そこで、ノズル91の出口に負圧領域を形成し、更に、海水出口から流出した舷外海水を吸入口92の内部に引き込む。すると、乱流拡散の作用によって、吸入口92から引き込まれた舷外海水は、ノズル91から噴射された排気と混合されたあと、拡散口94を通じて噴射装置9から噴射される。これにより、海水熱交換室36の海水出口における吐水速度が上昇し、更には、海水熱交換室36を通過する舷外海水の流動速度が上昇することで、共形熱交換器3と舷外海水の間の強制対流熱交換が実現される。また、これと同時に、噴射装置9から流出する舷外海水はある度合加熱もされるため、密度の低下により舷外海水の上方への流動速度が上昇する。
【0037】
具体的に、吸入口92は、第1端から第2端に向かって徐々に縮小する円錐形の筒体である。吸入口92の第1端は海水出口に対応しており、吸入口92の第2端は流動ダクト93に連なっている。即ち、吸入口92のこのような構造形式は、海水出口から流出した舷外海水を吸入口92の内部に引き込むのに都合がよい。
【0038】
具体的に、拡散口94は、第1端から第2端に向かって徐々に拡大する円錐形の筒体である。拡散口94の第1端は流動ダクト93に連なっており、拡散口94の第2端は上向きに設置されている。即ち、拡散口94のこのような構造形式は、舷外海水をノズル91から吐出される排気との混合流体として放出するのに都合がよい。
【0039】
具体的に、噴射装置9は、装着フレームを利用して船舶外殻体7の内側壁に装着される。これにより、舷外空洞8の内部における噴射装置9の装着及び固定が実現される。
【0040】
本発明のいくつかの実施例において、拡散口94の上方には海水格子13が更に設けられている。当該海水格子13は、噴射装置9から噴射された舷外海水を最終的に海へ放出するのに都合がよいよう、船舶外殻体7の内側壁に装着されている。
【0041】
本発明のいくつかの実施例において、熱交換器ハウジングの内部には複数のバッフル14が更に設けられている。各バッフル14は、熱交換パイプ33の長さの延伸方向と交差するよう間隔を置いて配置されている。バッフル14を設置することで、海水熱交換室36の内部における舷外海水の流動を案内する。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、上キャップ32は、船体板34の外側壁に設置される上キャップ殻板322を含む。熱交換器ハウジングの上部は上キャップ殻板322に連なっており、上キャップ殻板322と船体板34の間に冷却水入水室321が囲繞及び形成される。冷却水入水室321と海水熱交換室36は互いに独立している。各熱交換パイプ33の第1端は、それぞれ上キャップ殻板322に挿通されて冷却水入水室321と連通している。
【0043】
本発明のいくつかの実施例において、下キャップ31は、船体板34の外側壁に設置される下キャップ殻板312を含む。熱交換器ハウジングの底部は下キャップ殻板312に連なっており、下キャップ殻板312と船体板34の間に冷却水吐水室311が囲繞及び形成される。冷却水吐水室311と海水熱交換室36は互いに独立している。各熱交換パイプ33の第2端は、それぞれ下キャップ殻板312に挿通されて冷却水吐水室311と連通している。
【0044】
以上の実施形態は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を制限するものではない。実施例を参照して本発明につき詳細に説明したが、当業者は、本発明の技術方案について行われる各種の組み合わせ、修正又は同等の置換は、いずれも本発明の技術方案の精神及び範囲を逸脱するものではなく、本発明の特許請求の範囲に含まれると解釈すべきである。
【符号の説明】
【0045】
1 蒸気タービン
2 冷却器
3 共形熱交換器
31 下キャップ
311 冷却水吐水室
312 下キャップ殻板
32 上キャップ
321 冷却水入水室
322 上キャップ殻板
33 熱交換パイプ
34 船体板
35 外殻板
351 海水入口格子
352 海水出口格子
36 海水熱交換室
4 蒸気ダクト
5 入水配管
6 吐水配管
7 船舶外殻体
8 舷外空洞
9 噴射装置
91 ノズル
92 吸入口
93 流動ダクト
94 拡散口
10 入水ガードプレート
11 排気ダクト
12 排気制御弁
13 海水格子
14 バッフル
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】