(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】高靭性熱間圧延焼鈍鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230209BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20230209BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20230209BHJP
C21D 8/02 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C22C38/00 301A
C22C38/38
C21D9/46 S
C21D9/46 E
C21D8/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529851
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 IB2020062004
(87)【国際公開番号】W WO2021124132
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/061092
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルラド,アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,カンイン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,コラリ
(72)【発明者】
【氏名】ケーゲル,フレデリク
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA17
4K032AA19
4K032AA21
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4K032AA27
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4K037EA01
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4K037FA03
4K037FC03
4K037FC04
4K037FE01
4K037FE06
4K037FF01
4K037FF02
4K037FG00
4K037FG01
4K037JA07
(57)【要約】
本発明は、熱間圧延焼鈍鋼板であって、重量パーセントで、C:0.1~0.25%、Mn:3.00~5.00%、Si:0.80~1.60%、B:0.0003~0.004%、S≦0.010%、P≦0.020%、N≦0.008%を含み、組成の残部は、鉄及び製錬から生じる不可避的不純物である組成を有し、表面分率で20%以上の再結晶フェライトと、未再結晶フェライトである残部と、15%以上の5μmより大きい粒径を有する前記再結晶フェライトと、再結晶フェライトの粒界における炭化物の密集度が10μmの粒界長当たり5つ未満の炭化物であることとからなるミクロ組織を有する、熱間圧延焼鈍鋼板に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延焼鈍鋼板であって、重量パーセントで、以下の組成:
C:0.1~0.25%
Mn:3.00~5.00%
Si:0.80~1.60%
B:0.0003~0.004%
S≦0.010%
P≦0.020%
N≦0.008%
を含み、
及び任意に、重量パーセントで以下の元素;
Ti≦0.04%
Nb≦0.05%
Mo≦0.3%
Al≦0.90%
Cr≦0.80%
の1つ以上を含み、
前記組成の残部は、鉄及び製錬から生じる不可避的不純物である組成を有する鋼からできており、
前記鋼板が、表面分率で
- 20%以上の再結晶フェライトを含み、
- 残部が未再結晶フェライトであり、
- 前記再結晶フェライトの15%以上が5μmより大きい粒径を有し、
- 及び、再結晶フェライトの粒界における炭化物の密集度が、10μmの粒界長当たり5つ以下の炭化物である
ミクロ組織を有する、熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項2】
前記再結晶フェライトが40%~60%の間である、請求項1に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項3】
前記再結晶フェライトが80%~100%の間である、請求項1に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項4】
マンガン含有量が3.50%~4.50%の間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項5】
ケイ素含有量が1.00%~1.60%の間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項6】
規格ISO 148-1:2006(F)及びISO 148-1:2017(F)に従って測定して、20℃で0.40J/mm
2より高いシャルピー衝撃エネルギーを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項7】
300HVより低い硬度レベルを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱間圧延焼鈍鋼板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱間圧延焼鈍鋼板の冷間圧延から得られた、冷間圧延鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高靭性及び低硬度を有する高強度鋼板及びそのような鋼板を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の車体構造部材及び車体パネルの部品などの様々なアイテムを製造するために、DP(二相)鋼又はTRIP(変態誘起塑性)鋼から製造された鋼板を使用することが知られている。
【0003】
自動車産業における主要な課題の1つは、安全要件を無視することなく、地球環境保全の観点から車両の燃料効率を改善するために車両の重量を減少させることである。これらの要件を満たすために、新しい高強度鋼が、改善された降伏強度及び引張強度、並びに良好な延性及び成形性を備えた鋼板を有するように、製鋼産業によって継続的に開発されている。
【0004】
機械的特性を改善するためになされた開発の1つは、鋼中のマンガンの含有量を増加させることである。マンガンの存在は、オーステナイトの安定化により鋼の延性を高めるのに役立つ。しかし、これらの鋼は脆性の弱点を示す。この課題を克服するために、ホウ素のような元素が添加される。これらのホウ素添加の化学的性質は、熱間圧延段階では非常に強靭であるが、ホットバンドは硬すぎてそれ以上処理することができない。ホットバンドを軟化させる最も効率的な方法はバッチ焼鈍であるが、靭性の損失につながる。
【0005】
例えば、米国特許出願公開第2005/0199322号明細書には、優れた延性及び伸びフランジ成形性を有する高炭素熱間圧延鋼板が開示されており、この熱間圧延鋼板は、鋼板の硬度を低下させるために焼鈍される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0199322号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、さらなる処理に適合する高靭性及び低硬度を有する熱間圧延鋼板を得るためには、従来技術における未解決の課題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上述の課題を解決し、300HVより低い硬度レベルと、20℃で0.40J/mm2より高いシャルピー衝撃エネルギーを有する高靭性との組み合わせを有する鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の鋼板を提供することによって達成される。鋼板はまた、請求項2~7のいずれか一項に記載の特徴を含むことができる。本発明の目的はまた、請求項8に記載の鋼を提供することでもある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明を詳細に説明し、制限を導入することなく実施例によって例示する。
【0011】
以下、Msは、マルテンサイト変態開始温度、すなわち、オーステナイトが冷却時にマルテンサイトに変態し始める温度を示す。これらの温度は、以下の式から計算することができる。
【0012】
Ms=560-(30*%Mn+13*%Si-15*%Al+12*%Mo)-600*(1-exp(-0,96*C))
【0013】
次に、本発明による鋼の組成を説明し、含有量を重量パーセントで表す。
【0014】
本発明によれば、炭素含有量は0.1%~0.25%の間である。炭素が0.25%を超えると、鋼板の溶接性が低下する可能性がある。炭素含有量が0.1%未満である場合、オーステナイト部分は、焼鈍後に目標とするミクロ組織を得るのに十分に安定化されない。本発明の好ましい実施形態では、炭素含有量は0.15%~0.20%の間である。
【0015】
マンガン含有量は3.00%~5.00%の間に含まれる。添加量が5.00%を超えると、中心偏析のリスクが増大し、靭性が損なわれる。最小値はオーステナイトを安定化させ、焼鈍後に目標とするミクロ組織を得るために定義される。好ましくは、マンガン含有量は3.50%~5.00%の間である。本発明の好ましい実施形態では、マンガン含有量は3.50%~4.50%の間である。
【0016】
本発明によれば、ケイ素含有量は0.80%~1.60%の間に含まれる。1.60%を超えると、ケイ素は靭性に有害である。さらに、酸化ケイ素が表面に形成され、鋼の被覆性が損なわれる。少なくとも0.80%のケイ素添加量は、十分な量のオーステナイトを安定化させて、焼鈍後に本発明によるミクロ組織を得るのに役立つ。本発明の好ましい実施形態では、ケイ素含有量は1.00%~1.60%の間である。
【0017】
本発明によれば、ホウ素含有量は0.0003%~0.004%の間に含まれる。ホウ素の存在は、より低い温度までベイナイト変態を遅延させ、低温で形成されたベイナイトは、靭性を高めるラス形態を有する。0.004%を超えると、旧オーステナイト粒界でのホウ炭化物の形成が促進され、鋼がより脆くなる。0.0003%未満では、旧オーステナイト粒界に偏析して鋼の靭性を高める十分な濃度の遊離Bが存在しない。本発明の好ましい実施形態では、ホウ素含有量は0.001%~0.003%の間である。
【0018】
任意に、いくつかの元素を本発明による鋼の組成に添加することができる。
【0019】
チタンは、析出強化をもたらすために、最大で0.04%添加することができる。好ましくは、BNの形成からホウ素を保護するために、ホウ素に加えて最低0.01%のチタンが添加される。
【0020】
ニオブは、任意に、熱間圧延中にオーステナイト粒を微細化し、析出強化をもたらすために、最大で0.05%添加することができる。好ましくは、添加されるニオブの最小量は0.0010%である。
【0021】
モリブデンは、任意に、リン偏析を減少させるために、最大で0.3%添加することができる。0.3%を超えると、モリブデンの添加は費用がかかり、必要とされる特性を考慮すると非効果的である。
【0022】
アルミニウムは、精錬中に液相中の鋼を脱酸するための非常に有効な元素である。アルミニウム含有量は、介在物の発生を回避し、酸化の問題を回避するために、最大0.90%まで添加することができる。
【0023】
最大0.80%のクロムが許容され、それを超えると、飽和効果が顕著となり、クロムの添加は役に立たず、費用もかかる。
【0024】
鋼の組成の残部は、鉄及び製錬から生じる不純物である。この点で、少なくともP、S及びNは、不可避的不純物である残留元素とみなされる。それらの含有量は、Sについては0.010%未満、Pについては0.020%未満、Nについては0.008%未満である。特に、リンは粒界に偏析し、0.020%を超えるリン含有量では、鋼の靭性が低下する。
【0025】
次に、本発明による熱間圧延焼鈍鋼板のミクロ組織について説明する。
【0026】
熱間圧延焼鈍鋼板は、表面分率で、20%以上の再結晶フェライト、未再結晶フェライトである残部(0%を含む)、15%以上の5μmより大きい粒径を有する前記再結晶フェライト、及び再結晶フェライトの粒界における炭化物の密集度が、10μmの粒界長当たり5つ以下の炭化物であることからなるミクロ組織を有する。
【0027】
再結晶フェライトは、ホットバンド焼鈍中に再結晶したフェライトの結晶粒に相当する。熱間圧延中、オーステナイト粒は伸びており、いわゆるパンケーキ形状を示す。熱間圧延は、エネルギーを蓄積する転位を発生させる。焼鈍中、そのような蓄積エネルギーは、結晶粒内の転位密度が非常に低いフェライト結晶粒を形成するための駆動力である。再結晶が進行するにつれて、鋼の硬度は低下する。20%未満の再結晶フェライトでは、目標とする特性に達しない。本発明の好ましい実施形態では、前記再結晶フェライトは40%~60%の間である。本発明の別の好ましい実施形態では、前記再結晶フェライトは80%~100%の間である。
【0028】
15%以上の再結晶フェライトは、低い硬度レベルに達するために、5μmより大きい粒径を示す。
【0029】
再結晶フェライトは、等軸形状であるその形態のために、未再結晶フェライトと区別することができる。SEM(走査型電子顕微鏡)においてBSE(後方散乱電子)モードで観察された再結晶フェライトは、低い転位密度のために均一なコントラストを示す。
【0030】
ミクロ組織の残部は、0%(含む)~80%の間である未再結晶フェライトである。ホットバンド焼鈍中に再結晶できないベイナイト及びマルテンサイトの部分が未再結晶フェライト(non-recrystalized ferrite)の部分である。
【0031】
再結晶フェライトの粒界における炭化物の密集度は、鋼の靭性を改善するために、10μmの粒界長当たり5つ以下の炭化物である。
【0032】
本発明による熱間圧延焼鈍鋼板は、規格ISO 148-1:2006(F)及びISO 148-1:2017(F)に従って測定して、20℃で0.40J/mm2より高いシャルピー衝撃エネルギーEを有する。
【0033】
本発明による熱間圧延焼鈍鋼板は、300HVより低いビッカース硬さレベルを有する。
【0034】
本発明による鋼板は、任意の適切な製造方法によって製造することができ、当業者はその方法を定義することができる。しかしながら、以下の工程を含む本発明による方法を使用することが好ましい。
【0035】
さらに熱間圧延が可能な半製品には、上記の鋼組成が提供される。半製品は、鋼の化学組成に応じた最終熱間圧延温度FRTで熱間圧延を容易にすることができるように、1150℃~1300℃の間に含まれる温度まで加熱される。
【0036】
目標とする特性を得るために、当業者は、ホットバンド焼鈍後のマトリックスの再結晶を促進する仕上げ圧延温度FRTを選択しなければならない。鋼の化学組成に直接依存するFRTの特定の値を超えると、蓄積エネルギーはもはやホットバンド焼鈍後にフェライトを再結晶するのに十分ではない。好ましくは、FRTは、750℃~1000℃の間に含まれる。より好ましくは、FRTは、800℃~950℃の間に含まれる。
【0037】
次いで、熱間圧延鋼を冷却し、20℃~550℃の間に含まれる温度Tcoilで巻き取る。好ましくは、Tcoil温度は、(Ms-100℃)~550℃に含まれる。
【0038】
巻き取り後、鋼板を酸洗して、酸化を除去することができる。
【0039】
次いで、巻き取りした鋼板は、Ac1未満である焼鈍温度Taに焼鈍される。鋼板は、熱間圧延鋼板の靭性を0.4J/mm2超に維持しながら硬度を低下させるために、前記温度Taで0.1~100時間の間に含まれる保持時間taにわたって維持される。目標とする特性を得るために、当業者は、フェライトの再結晶に有利なTaを選択しなければならない。低すぎる温度での焼鈍は、フェライトの再結晶を制限し、粒界における炭化物を促進し、鋼板の靭性を低下させる。好ましくは、Taは、500℃~Ac1の間に含まれる。
【0040】
ホットバンド焼鈍後、粒界における炭化物の密集度は、鋼の靭性を改善するために、10μmの粒界長当たり5つ未満の炭化物である。次いで、熱間圧延焼鈍鋼板は、室温に冷却される。
【0041】
熱間圧延焼鈍鋼板は、靭性及び硬度の良好な特性を有し、さらなる処理を可能にする。例えば、熱間圧延焼鈍鋼板は、次いで、例えば、0.7mm~3mmの間、又はさらに良好には0.8mm~2mmの範囲であり得る厚さを有する冷間圧延鋼板を得るために、冷間圧延することができる。冷間圧延圧下率は、好ましくは20%~80%の間に含まれる。
【0042】
次に、本発明を以下の実施例によって例示するが、これらは決して限定的なものではない。
【実施例】
【0043】
[実施例1]
表1に組成をまとめた3つのグレードを半製品に鋳造し、表2にまとめた処理パラメータに従って鋼板に加工した。
【0044】
<表1-組成>
試験した組成を次の表にまとめ、元素含有量を重量パーセントで表す。
【0045】
【0046】
Ac1温度は、膨張率測定試験及び金属組織分析により決定した。
【0047】
<表2-処理パラメータ>
鋳放しの鋼半製品を1200℃で1800秒間再加熱し、熱間圧延し、次いでホットバンド焼鈍前に巻き取った。次の特定の条件を適用した。
【0048】
【0049】
次に、熱間圧延焼鈍鋼板を分析し、対応するミクロ組織要素及び機械的特性をそれぞれ表3及び4にまとめた。
【0050】
<表3-熱間圧延焼鈍鋼板のミクロ組織>
得られた熱間圧延焼鈍鋼板のミクロ組織の相の割合を決定した。
【0051】
【0052】
表面分率は、以下の方法を通じて決定される。試験片を熱間圧延焼鈍したものから切り出し、研磨し、それ自体が既知の試薬でエッチングして、ミクロ組織を暴露する。その後、切片を、走査型電子顕微鏡、例えば、電界放射型電子銃を備えた走査型電子顕微鏡(「FEG-SEM」)を用いて、5000倍を超える倍率で、二次電子モード及び後方散乱電子モードの両方で検査する。
【0053】
<表4-熱間圧延焼鈍鋼板の機械的特性>
試験した試料の機械的特性を決定し、次の表にまとめた。
【0054】
【0055】
目標とする特性を得るために、当業者は、焼鈍後のマトリックス再結晶を有利にするために仕上げ圧延温度FRTを選択しなければならない。
【0056】
20%を超える再結晶フェライトを有し、残部は未再結晶フェライトである最終熱間圧延焼鈍鋼板を得るために、800℃、850℃、900℃及び950℃のFRTで試験を実施し、その後23時間の時間taの間に620℃の温度Taで焼鈍した。
【0057】
試験1~4では、鋼Aをそれぞれ950℃、900℃、850℃及び800℃のFRTで熱間圧延する。これらの実施例は、それらの特定の組成及びミクロ組織により、すべての目標とする特性を示す。
【0058】
試験5~8では、鋼Bを800℃、850℃、900℃及び950℃のFRTで熱間圧延する。
【0059】
試験5及び6のそれぞれ950℃及び900℃の高いFRTは、所望のレベルよりも小さい5%及び10%の焼鈍後の再結晶フェライトのレベルをもたらす。試験7~8では、850℃及び800℃の低レベルのFRTにより、98%を超えるフェライトが再結晶する。
【0060】
試験9~12では、鋼Cを800℃、850℃、900℃及び950℃のFRTで熱間圧延する。
【0061】
この場合、900℃より高いFRTは、本発明の範囲外のミクロ組織を示す。試験9~11の場合、粒界における炭化物の密集度が所望のレベルよりも高く、鋼の靭性が低くなる。
【0062】
[実施例2]
表6に組成をまとめた1つのグレードを半製品に鋳造し、表7にまとめた処理パラメータに従って鋼板に加工した。
【0063】
<表6-化学組成>
【0064】
【0065】
<表7-処理パラメータ>
鋳放しの鋼半製品を1200℃で1800秒間再加熱し、熱間圧延し、次いでホットバンド焼鈍前に巻き取った。次の特定の条件を適用した。
【0066】
【0067】
次に、熱間圧延焼鈍鋼板を分析し、対応するミクロ組織要素及び機械的特性をそれぞれ表8及び9にまとめた。
【0068】
<表8-熱間圧延焼鈍鋼板のミクロ組織>
得られた熱間圧延焼鈍鋼板のミクロ組織の相の割合を決定した。
【0069】
【0070】
表面分率は、以下の方法により決定される。試験片を熱間圧延焼鈍したものから切り出し、研磨し、それ自体が既知の試薬でエッチングして、ミクロ組織を暴露する。その後、切片を、走査型電子顕微鏡、例えば、電界放射型電子銃を備えた走査型電子顕微鏡(「FEG-SEM」)を用いて、5000倍を超える倍率で、二次電子モード及び後方散乱電子モードの両方で検査する。
【0071】
<表9-熱間圧延焼鈍鋼板の機械的特性>
試験した試料の機械的特性を決定し、次の表にまとめた。
【0072】
【0073】
試験13~17は、20%を超える再結晶フェライトを有し、残部は未再結晶フェライトである最終焼鈍鋼板を得るために、及び結晶粒界における炭化物を制限するために、845℃のFRTで、焼鈍温度Taを変化させることにより実行した。
【0074】
試験13及び14のようにTaが低すぎる場合、フェライトが十分に再結晶されず、鋼が硬すぎる。粒界において形成される多量の炭化物は、鋼の靭性を低下させる。
【国際調査報告】