(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ポリウレタン/ポリイソシアヌレート含有フォームに使用するための火炎・煙・毒性抑制剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230209BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20230209BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230209BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/09 020
C08G18/67
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531017
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020087586
(87)【国際公開番号】W WO2021130205
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500030150
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ルネ・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エスマイリ,ニマ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ナジャ・カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ガジェンドラン,ラジェシュ・クマル
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンシュレ,トーマス・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】バンデンブルーク,ヤン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034AA04
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(57)【要約】
ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン(PIR/PUR)含有材料を製造するための、火炎、煙、および毒性抑制剤(FST)組成物を含んでなる反応性混合物であって、前記FST組成物が、a)160g/モル未満の数平均当量を有していて、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1種の化合物、およびb)ラジカル開始剤の有無に関係なく、エチレン性不飽和化合物のラジカル重合の開始温度(Tonset)が、PIR/PUR含有材料の製造工程時に達成される最高反応温度であるTreaction(反応発熱)より2℃~40℃低いことを特徴とする、必要に応じた1種以上のラジカル開始剤化合物、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン含有材料(PIR/PUR含有材料)を製造するための反応性混合物であって、
(a)160g/モル未満の数平均当量を有していて、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1種の化合物と、(b)必要に応じた1種以上のラジカル開始剤化合物と、を含む火炎抑制剤組成物であって、ラジカル開始剤の有無に関係なく、エチレン性不飽和化合物のラジカル重合の開始温度(T
onset)が、PIR/PUR含有材料の製造工程時に達成される最高反応温度であるT
reaction(反応発熱)より2℃~40℃低いことを特徴とする火炎抑制剤組成物;
1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
1種以上のイソシアネート反応性化合物を含むイソシアネート反応性組成物;
PIR/PUR含有材料を製造するのに適した少なくとも1種の触媒化合物;
必要に応じた1種以上の発泡剤;および
必要に応じた1種以上の界面活性剤、1種以上の酸化防止剤、もしくはそれらの組み合わせ;
を含む、上記反応性混合物。
【請求項2】
火炎抑制剤組成物中のエチレン性不飽和化合物とラジカル開始剤との組み合わせのラジカル重合の開始温度(T
onset)が、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度であるT
reaction(反応発熱)より、好ましくは2~40℃、さらに好ましくは5~30℃、さらに好ましくは5~15℃低い、請求項1に記載の反応性混合物。
【請求項3】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アリルアルコール、マレイン酸、これらの混合物、およびこれらの誘導体から選ばれる、請求項1~2のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項4】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を、好ましくは2つから8つのエチレン性不飽和部分を含む、請求項1~3のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項5】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、120g/モル未満の当量を有する、請求項1~4のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項6】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、1つ以上のイソシアネート反応性基をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項7】
ラジカル開始剤化合物の存在下または非存在下にて、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度より、好ましくは2~40℃、さらに好ましくは5~30℃、さらに好ましくは5~15℃低い開始温度(Tonset)を有する、請求項1~6のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項8】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETRA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、およびジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)から選ばれる、請求項1~7のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項9】
ラジカル開始剤が、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度より、好ましくは2~40℃、さらに好ましくは5~30℃、さらに好ましくは5~15℃低い活性化温度(T
activation)を有する、請求項1~8のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項10】
ラジカル開始剤が過酸化物化合物から、好ましくはベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、およびt-ブチルペルオキシベンゾエートから選ばれる、請求項1~9のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項11】
少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、大気圧下にて150℃より高い、好ましくは200℃より高い沸点を有する、請求項1~10のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項12】
反応性混合物中の少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物の量が、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲、好ましくは2重量%~20重量%の範囲、さらに好ましくは2重量%~15重量%の範囲である、請求項1~11のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項13】
反応性組成物中のラジカル開始剤化合物の量が、反応性フォーム組成物の総重量を基準として0.01重量%~1重量%の範囲、好ましくは0.03重量%~0.5重量%の範囲である、請求項1~12のいずれかに記載の反応性混合物。
【請求項14】
PIR/PUR含有材料を製造するための、請求項1~13のいずれかに記載の反応性混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアヌレート(PIR)および/またはポリウレタン(PUR)含有フォームを製造するための、火炎(Flame)、煙(Smoke)および/または毒性(Toxicity)というFSTの抑制組成物を含んでなる反応性混合物に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1種の化合物と、必要に応じて使用されるラジカル開始剤とを含んでなるFST低減組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ハロゲン含有添加剤は、従来から有機樹脂における難燃剤として使用されている。すなわち、添加剤化合物は、フッ素、塩素、または臭素を含有する。最も一般的なのが臭素系樹脂であって、強力な酸化剤である。熱にさらされると、臭素と樹脂の原子構造の残部との間の弱い結合が開裂して臭素ラジカルを形成し、これが極めて高発熱性の酸化反応を妨害して、結果的に火炎が抑制されるのである。臭素系樹脂に難燃性を付与するのがこの反応であるが、この反応によって除去された臭素が水素と反応して臭化水素(HBr)を形成する。臭素系樹脂が、より多くのおよび/またはより高温の火炎にさらされると、HBrの濃度が上昇する可能性がある。その結果として生じる煙は、非ハロゲン系樹脂からの煙よりもかなり毒性が高い。
【0004】
例えば硬質ポリウレタン(PU)フォームでは、TCPP(トリクロロプロピルホスフェート)が広く使用されている。近年、多くのPU用途において、家具・寝具用途に使用する上でカナダ等の国から規制が提案されている。米国環境保護庁(EPA)からも同様の取り組みが進められている。米国消費者製品安全委員会(CPSC)は、有機塩素系物質の難燃剤として使用規制の可能性を評価しており、あるいは使用禁止も検討している。欧州化学品局(ECHA)は、子供用品や住宅用家具向けのPU軟質フォーム中に含まれるTCEP、TCPP、及びTDCPの規制に関して公聴会を開き、今後は他の用途にも拡大されるであろうと述べている。さらに、「難燃剤を含まない成形品」を推進することで、難燃剤に対する圧力が高まっている。例えば、カリフォルニア州では、難燃剤非含有断熱ボードへの取り組みが進んでいる。
【0005】
最近の開発状況を見ると、ポリイソシアヌレート(PIR)および/またはポリウレタン(PUR)含有材料の難燃性と耐燃性を向上させるだけでなく、煙と毒性を低減させる新しい溶液を開発することが求められている。こうした代替溶液および/または代替化合物は、TCPPや有機ハロゲン物質に依存してはならず、ポリイソシアヌレート(PIR)および/またはポリウレタン(PUR)含有材料の製造に使用される反応性混合物における添加剤としての使用に適していなければならず、また最終的に得られるPIRおよび/またはPUR含有材料の特性に悪影響を及ぼしてはならない。本明細書では、該化合物を火炎・煙・毒性(FST)低減化合物と呼ぶ。
【発明の概要】
【0006】
発明の目的
本発明の目的は、ポリイソシアヌレート(PIR)および/またはポリウレタン(PUR)含有材料を造るための反応性混合物において使用するための火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制剤組成物を提供し、それによって最先端の有機ハロゲン難燃剤の使用を回避するか又は少なくとも最小限に抑え、火災にさらされたときの前記材料の難燃性をさらに向上させることである。
【0007】
この目的は、PIR/PUR含有材料を造るのに使用される反応性混合物に、本発明の火炎、煙および/または毒性(FST)抑制剤組成物を加えることによって達成される。
【0008】
驚くべきことに、必要に応じてラジカル開始剤の存在下にて、ある特定のエチレン性不飽和化合物をPIR/PUR含有材料における添加剤として使用して、前記PIR/PUR含有材料が火災にさらされたときの、前記材料からの火炎、煙、及び毒性の発生を低減させることができる、ということを本発明者らは見出した。
【0009】
用語の意味
本発明の文脈においては、以下の用語は下記の意味を有する。
【0010】
(1) 「イソシアネートインデックス」または「NCOインデックス」または「インデックス」とは、配合物中に存在するイソシアネート反応性水素原子に対するNCO基の比率を表し、[NCO]×100/[活性水素原子]としてパーセント値として表示される。
【0011】
言い換えると、NCOインデックスは、配合物中の使用されるイソシアネート反応性水素の量と反応するために理論的に必要とされるイソシアネートの量に対する、配合物中の実際に使用されるイソシアネート量のパーセント値を表す。
【0012】
留意しておかねばならないことは、本明細書で使用されるイソシアネートインデックスは、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分とを含む材料を調製する実際の重合プロセスの観点から考慮されている、という点である。変性ポリイソシアネート(当業界でプレポリマーと呼ばれるようなイソシアネート誘導体を含む)を製造するための予備工程において消費されるイソシアネート基、また予備工程(例えば、イソシアネートと反応させて変性ポリオールや変性ポリアミンを得る工程)において消費される活性水素は、イソシアネートインデックスを算出する上で考慮されない。実際の重合段階で存在する遊離イソシアネート基と遊離イソシアネート反応性水素(水が使用される場合は、水の活性水素も含む)のみが考慮される。
【0013】
(2) 本明細書においてイソシアネートインデックスを算出するために使用される「イソシアネート反応性化合物」および「イソシアネート反応性水素原子」とは、イソシアネート反応性化合物中に存在するヒドロキシル基とアミン基における活性水素原子の合計を意味する。このことはすなわち、実際の重合工程でのイソシアネートインデックスを算出する上で、1つのヒドロキシル基が1つの反応性水素を含み、1つの第一アミン基が1つの反応性水素を含み、1つの水分子が2つの活性水素を含むものとする、ということを意味する。
【0014】
(3) 「OH価」または「ヒドロキシル価」とは、化学物質中の遊離ヒドロキシル基含量の程度を示しており、通常は化学物質1g中のヒドロキシル基含量に相当するミリグラム表示での水酸化カリウム(KOH)の質量という単位(mgKOH/g)で表示される。ヒドロキシル価を測定するのに使用される分析法では通常、該物質の遊離ヒドロキシル基をピリジン溶媒中にて無水酢酸でアセチル化するというプロセスが含まれる。反応終了後、水を加えて残存する未反応の無水酢酸を酢酸に転化させ、水酸化カリウムによる滴定によって測定する。
【0015】
(4) 「平均公称ヒドロキシル官能価」(または略して「官能価」)という用語は、本明細書では、この用語が、調製に使用される開始剤の数平均官能価(1分子当たりの活性水素原子の数)であると仮定して(実際には、幾らかの末端不飽和のために若干低い)、ポリオールまたはポリオール組成物の1分子当たりのヒドロキシル基の数平均を示すのに使用される。
【0016】
(5) 「平均」とは、特に明記しない限り数平均を表す。
【0017】
(6) 本明細書で使用する「三量化触媒」または「PIR触媒」とは、ポリイソシアネートからのイソシアヌレート基の形成を触媒する(促進する)ことのできる触媒を表す。このことはすなわち、イソシアネートは、互いに反応してイソシアヌレート構造を有する高分子(ポリイソシアヌレート=PIR)を形成することができる、ということを意味している。
【0018】
(7) 本明細書で使用する「ポリウレタン触媒」または「PU触媒」とは、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との反応(ポリイソシアネートからのポリウレタン基の形成等があるが、これに限定されない)を触媒する(促進する)ことのできる触媒を表す。
【0019】
(8) 本明細書で使用する「ポリイソシアヌレート含有材料」および「PIR含有材料」とは、50重量%超の、好ましくは70重量%超の、そして最も好ましくは85重量%超のポリイソシアヌレートを含んでなる材料を表す。PIR含有材料は一般に、180超の、好ましくは250超のイソシアネートインデックスを使用して製造される。
【0020】
(9) 本明細書で使用する「ポリウレタン含有材料」および「PUR含有材料」とは、50重量%超の、好ましくは70重量%超の、そして最も好ましくは85重量%超のポリウレタンを含んでなる材料を表す。PUR含有材料は一般に、180未満のイソシアネートインデックスを使用して、好ましくは80~180の範囲のイソシアネートインデックスを使用して、さらに好ましくは90~150の範囲のイソシアネートインデックスを使用して製造される。
【0021】
(10) 「官能価」とは一般に、化合物中に官能基が存在することを示している。単量体アクリレート化合物の場合には、官能価は、重合可能なアクリレート基の量を表し、イソシアネート反応性化合物の場合には、イソシアネート反応性水素原子を含有する基の量を表す。
【0022】
(11) 本発明による少なくとも1つの非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物(本明細書ではエチレン性不飽和化合物とも呼ぶ)と組み合わせて開示するときの「数平均当量」とは、エチレン性不飽和化合物のモル質量を該化合物中の不飽和部分の数で除して得られる値であり、g/モル不飽和部分で表示される。
【0023】
(12) 「フリーライズ密度」とは、ISO845に従って大気圧条件下にて(発泡剤の存在下にて)作製したフォームサンプルに対して測定された密度を表す。
【0024】
(13) 「エチレン性不飽和化合物」または「エチレン性不飽和部分を有する化合物」は、ラジカル重合(ラジカル開始剤を使用してもしなくても)が、大気圧下にて50℃~160℃の温度範囲で、好ましくは90℃~160℃の範囲で起こるような化合物(に限定される)として特徴づけられる。
【0025】
(14) 「ラジカル開始剤」とは、温和な条件下(例えば熱を加えることにより)にてラジカル種を生成することができ、ラジカル重合反応のようなラジカル反応を促進することができる物質を表す。これらの物質は一般に、結合解離エネルギーの低い弱い結合を有する。代表的な例としては、アゾ化合物、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル(TBPB)等のペルオキソ化合物、および過酸化物などがある。
【0026】
(15) 「活性化温度」、「オンセット温度」、および「Tonset」とは、エチレン性不飽和化合物のホモ重合(ラジカル重合)が始まる温度を表し、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる。
【0027】
(16) 「ラジカル重合」は、光、温度、または酸化還元反応による開始剤の分解を介したフリーラジカルの生成を含み、こうした反応によりポリマーネットワークが形成される。開始剤は、エチレン性不飽和化合物それ自体であっても(自家重合)、あるいは必要に応じて系に添加される別のラジカル形成化合物(本明細書ではラジカル開始剤と呼ぶ)であってもよい。本発明の文脈においては、アクリレートのラジカル重合は、材料(例えば発泡体)の作製工程時における反応性化合物の発熱等の温度によって、あるいはラジカル開始剤によって必要に応じてさらに活性化される火炎への暴露によって開始されるのが好ましい。
【0028】
(17) 「反応発熱」および「Treaction」は、反応の発熱によってプロセス(例えば、本発明によるPURおよび/またはPIR含有フォームを作製するためのプロセス)中に発生する温度を表す。
【0029】
(18) 「DIN4102-1」とは、建材に対する火災挙動等級を定義し、各等級に対する要件と試験方法を規定した標準試験を表す。基準に従って材料の火災挙動が決定されると、AクラスとBクラスの建材に分類される。
【0030】
【化1】
(19) 「ISO 11925」および「EN ISO 11925-2」とは、垂直配向の試験片を用いたゼロ印加放射照度下での、直接小火炎衝突による製品の着火性を決定するための標準試験を表す。
【0031】
(20) 「クラインブレンナー試験」(本明細書ではB2試験とも言う)とは、EN ISO 11925-2に基づいて(発泡体)サンプルの下端部に小さな火炎を15秒間当てる、という小火炎試験である。所定の寸法(例えば19cm×9cm×2.5cm)のサンプル(
図1の2を参照)を切断し、切断時の全てのサンプル残差を加圧空気で除去する。試験は、試験片を垂直に取り付けた試験チャンバー内で行われる。発泡体を金属製ホルダー(
図1の1を参照)中に入れたら、2cmの火炎を、発泡体の底部にて45°の角度で当てて、発泡体に着火させる。
【0032】
【化2】
火炎をそのまま15秒間保持して、サンプルがどの程度燃えるかを観察する。本明細書ではさらに、火炎暴露後の質量損失を算出して難燃性を定量化するためにクラインブレンナー試験のセットアップを使用した。理想的には、信頼できる平均値を得るために、試験をさらに5回繰り返すべきである。本発明による難燃性は、火炎暴露後の(PIR/PUR)材料の質量損失(重量%表示)として測定され、該重量損失は、火炎暴露前の(PIR/PUR)材料の総重量を基準として算出される。
【0033】
(21) 「コーン熱量測定試験」とは、火災に対する材料の反応を評価するための試験方法を表す。この方法は、国際規格ISO 5660-1:1993(E)に記載の手順に従う。さらに、試験中における煙や毒性ガスの発生量を測定することもできる。本明細書では、所定の寸法(例えば100mm×100mm)の試験サンプル(発泡体)を特定の放射照度量にさらす。サンプルの厚さは50mm以下とし、照射レベルは通常、25、35、または50mWに設定する。サンプルの表面を加熱すると、熱分解ガスが発生し始め、これが着火する。
【0034】
(22) 「室温」とは約20℃の温度を表し、これは18℃~25℃の範囲の温度を指すことを意味している。このような温度には、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、および25℃が含まれる。
【0035】
(23) 特に明記しない限り、組成物中のある成分の重量%(%wtやwt%と表示)は、それが存在する組成物の総重量に対する該成分の重量を表し、パーセント値として表示される。
【0036】
(24) 「連続気泡」および「連続気泡含量」とは、発泡材料の連続気泡含量を表し、発泡体の総体積を基準として算出される容量%(vol%)で表示され、ASTM D6226-10(Open-cell Content by Pycnometer)に従って測定される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本発明を特定の実施態様に関して説明する。
【0038】
留意しておかねばならないことは、特許請求の範囲において使用されている「~を含む」(comprising)という用語は、そのあとに記載された手段に限定されると解釈すべきではなく、他の要素または工程を除外してはいない、という点である。従って、言及されているような記載の特徴、工程、または構成要素の存在は特定しているが、1つ以上の他の特徴、工程、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除してはいない、と解釈されなければならない。従って、「手段AおよびBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素AとBだけからなる装置に限定されるべきではない。前記の表現は、本発明に関して、装置の必須の構成要素がAとBであるということを意味している。
【0039】
本明細書全体を通して、「一実施態様」または「ある実施態様」への言及がなされている。このような言及は、該実施態様に関して説明される特定の特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様中に含まれる、ということを示す。従って、本明細書中の様々な場所において「一実施態様において」または「ある実施態様において」という語句が出てきても、必ずしも全てが同じ実施態様に言及しているわけではない(その可能性もあるが)。さらに、当業者であれば明らかなように、特定の特徴または特性を、1つ以上の実施態様において任意の適切なやり方で組み合わせることができる。
【0040】
理解しておかねばならないことは、本発明に従った実施態様を提供するために好ましい実施態様および/または材料が説明されているが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の改良や変更を行うことができる、という点である。
【0041】
本発明は、改良された火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制作用を有していて、それにより最先端の有機ハロゲン難燃剤の使用を避けることができるか又は少なくとも最小限にすることができる、ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン(PIR/PUR)含有材料を作製するための反応性混合物に使用するための火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制剤組成物を提供する。
【0042】
驚くべきことに、エチレン性不飽和部分を有する特定の選択された化合物を添加することが、PIR/PUR含有材料中の火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制剤化合物として極めて適している、ということが観察された。
【0043】
本発明によれば、これらの特定の化合物が、PIR/PUR含有材料を製造するための反応性混合物に火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制剤組成物として加えられる。
【0044】
従って本発明は、火災にさらされたときに、PIR/PUR含有材料中の火炎、煙、および/または毒性(FST)抑制剤化合物として作用する、エチレン性不飽和部分を有する特定のクラスの化合物を開示する。この特定のクラスの化合物は、エチレン性不飽和部分を有するこれら化合物が、―PIR/PUR材料を製造するプロセスの後に―PIR/PUR含有材料中の少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する前記化合物に由来する全ての化合物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%の非重合エチレン性不飽和部分を有するように選択される。このことは、PIR/PUR含有材料を製造する工程の後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の少なくとも10重量%が、依然として非重合エチレン性不飽和部分を有することを意味する。
【0045】
エチレン性不飽和部分を有する特定のクラスの化合物は、PIR/PUR含有材料を製造するプロセスの後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の少なくとも10重量%、好ましくは10重量%~90重量%、さらに好ましくは20重量%~80重量%、さらに好ましくは30重量%~70重量%が非重合エチレン性不飽和部分を有するように選択される。
【0046】
ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン(PIR/PUR)含有材料を製造するための反応性混合物において使用するための、本発明による火炎、煙、及び毒性(FST)抑制剤組成物(本明細書では短く火炎抑制剤組成物とも呼ぶ)は、
(a) 160g/モル未満の、好ましくは120g/モル未満の数平均当量を有する、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1種の化合物;および、
(b) 必要に応じた1種以上のラジカル開始剤化合物;
を含み、エチレン性不飽和化合物のラジカル重合(ラジカル開始剤の有無に関係なく)の開始温度(Tonset)が、PIR/PUR含有材料の製造工程時に達成される最高反応温度より2℃~40℃低いことを特徴とする。
【0047】
従って本発明は、ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン(PIR/PUR)含有材料を製造するための反応性混合物を開示し、ここで前記反応性混合物は、
■ (a)160g/モル未満の数平均当量を有する、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1種の化合物と、(b)必要に応じた1種以上のラジカル開始剤化合物と、を含む火炎抑制剤組成物であって、エチレン性不飽和化合物のラジカル重合(ラジカル開始剤の有無に関係なく)の開始温度(Tonset)が、PIR/PUR含有材料の製造工程時に達成される最高反応温度〔反応発熱(Treaction)〕より2℃~40℃低いことを特徴とする火炎抑制剤組成物;
■ 1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
■ 1種以上のイソシアネート反応性化合物を含むイソシアネート反応性組成物;
■ PIR/PUR含有材料を製造するのに適した少なくとも1種の触媒化合物;
■ 必要に応じた1種以上の発泡剤;および
■ 必要に応じた1種以上の界面活性剤、1種以上の酸化防止剤、もしくはそれらの組み合わせ;
を含んでなる。
【0048】
幾つかの実施態様によれば、エチレン性不飽和化合物とラジカル開始剤との組み合わせのラジカル重合開始温度(Tonset)は、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度〔反応発熱(Treaction)〕よりも2℃~40℃低く、5℃~30℃低いのが好ましく、5℃~15℃低いのがさらに好ましい。
【0049】
幾つかの実施態様によれば、本発明による火炎抑制剤(FST)組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有していて、160g/モル未満の、好ましくは120g/モル未満の数平均当量を有する化合物を主成分として含む。
【0050】
幾つかの実施態様によれば、本発明による火炎抑制剤(FST)組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有していて、160g/モル未満の、好ましくは120g/モル未満の数平均当量を有する化合物を、FST組成物の総重量を基準として少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%含む。
【0051】
本発明に従った、エチレン性不飽和部分を有する特定のクラスの化合物は、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度〔反応発熱(Treaction)〕よりも2℃~40℃低い、エチレン性不飽和化合物のラジカル重合開始温度(Tonset)を有するのが好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和部分を有する化合物の他にラジカル開始剤が使用される場合、ラジカル開始剤(存在する場合)の存在下でのエチレン性不飽和化合物のラジカル重合開始温度(Tonset)は、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度〔反応発熱(Treaction)〕よりも2℃~40℃低いのが好ましい。
【0053】
幾つかの実施態様によれば、エチレン性不飽和部分を有する化合物のラジカル重合(ラジカル開始剤の有無に関係なく)の開始温度(Tonset)は、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度〔反応発熱(Treaction)〕よりも2℃~40℃低いのが好ましく、5℃~30℃低いのがさらに好ましく、5℃~15℃低いのが最も好ましい。エチレン性不飽和部分を有する化合物のラジカル重合(ラジカル開始剤の有無に関係なく)の開始温度(Tonset)は、PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に達成される最高反応温度よりも5℃~10℃、10℃~15℃、15℃~20℃、20℃~25℃、25℃~30℃、または30℃~35℃低くてもよい。
【0054】
幾つかの実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和部分を、好ましくは2~8個のエチレン性不飽和部分を含む。
【0055】
幾つかの実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物はモノマー化合物である。
【0056】
幾つかの実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物は、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸アリルアルコール、および/またはマレイン酸、ならびにこれらの誘導体もしくは混合物から選択される。
【0057】
幾つかの実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETRA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、およびこれらの混合物から選ばれる。
【0058】
幾つかの実施態様によれば、ラジカル開始剤化合物は、過酸化ベンゾイル、t-ブチルペルオキシベンゾエート〔Luperox(登録商標)P〕、ジ-t-ブチルペルオキシド〔Luperox DI〕、tert-ブチル-ヒドロキシペルオキシド〔Luperox TBH 70X〕、およびこれらの混合物から選ばれる。低すぎる温度(例えば、室温に近い温度)において活性であるラジカル開始剤は、取り扱い上の安全性の問題に加えて、泡の流れが悪くなる可能性が高いので、使用を避けるべきである。
【0059】
ある好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物は、反応性OH基をもたず、352g/モルの分子量(88g/eqの当量)を有する四官能アクリレートであるPETRA〔ペンタエリスリトールテトラアクリレート、以下の式Iを参照〕から選ばれる。
【0060】
【化3】
別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、PETRA〔ペンタエリスリトールテトラアクリレート(式Iを参照)〕から選ばれ、PETRAと組み合わせて使用されるラジカル開始剤が、10時間半減期温度が121℃であるLuperox DI〔tert-ブチルペルオキシド(式IIを参照)〕または10時間半減期温度が103℃であるLuperox P〔t-ブチルペルオキシベンゾエート(式IIIを参照)〕から選ばれる。
【0061】
【化4】
ある好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、少なくとも1つのイソシアネート反応性部分をさらに含む。PIR/PUR含有材料の製造プロセス時に、イソシアネート反応性部分がポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応する場合があり、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物が、PIR/PUR含有材料のPIR/PURマトリックスに組み込まれる(架橋する)。
【0062】
幾つかの実施態様によれば、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物は、大気圧下にて150℃超の、好ましくは200℃超の沸点を有する。
【0063】
幾つかの実施態様によれば、反応性混合物中の火炎抑制剤(FST)組成物の量は、反応性混合物中の少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物の量が、反応性混合物中の全成分総重量を基準として少なくとも2重量%となるような量である。
【0064】
幾つかの実施態様によれば、反応性混合物中の少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲、好ましくは2重量%~20重量%の範囲、さらに好ましくは2重量%~15重量%の範囲である。
【0065】
幾つかの実施態様によれば、反応性混合物中のラジカル開始剤化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として0.01重量%~1重量%の範囲、好ましくは0.03重量%~0.5重量%の範囲である。
【0066】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物に加えられる、本発明に従ったエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲であり、好ましくは2重量%~20重量%の範囲であり、さらに好ましくは2重量%~15重量%の範囲である。反応性混合物に加えられるエチレン性不飽和部分を有する化合物の好ましい量は、例えば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物の総重量を基準として8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、および12重量%である。
【0067】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物に加えられる、本発明に従ったエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲であり、該反応性混合物を使用して製造されるPIR/PUR含有材料は、少なくとも1つの非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物を、PIR/PUR含有材料の総重量を基準として0.2重量%から27重量%含む(これにより、PIR/PUR含有材料の製造プロセス後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の10重量%~90重量%が非重合のエチレン性不飽和部分を有する、ということが考慮されている)。
【0068】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物に加えられる、本発明に従ったエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲であり、該反応性混合物を使用して製造されるPIR/PUR含有材料は、少なくとも1つの非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物を、PIR/PUR含有材料の総重量を基準として0.4重量%から24重量%含む(これにより、PIR/PUR含有材料の製造プロセス後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の20重量%~80重量%が非重合のエチレン性不飽和部分を有する、ということが考慮されている)。
【0069】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物に加えられる、本発明に従ったエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲であり、該反応性混合物を使用して製造されるPIR/PUR含有材料は、少なくとも1つの非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物を、PIR/PUR含有材料の総重量を基準として0.6重量%から21重量%含む(これにより、PIR/PUR含有材料の製造プロセス後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の30重量%~70重量%が非重合のエチレン性不飽和部分を有する、ということが考慮されている)。
【0070】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料を製造するのに使用される反応性混合物に加えられる、本発明に従ったエチレン性不飽和部分を有する化合物の量は、反応性混合物の総重量を基準として2重量%~30重量%の範囲であり、好ましくは2重量%~20重量%の範囲であり、さらに好ましくは2重量%~15重量%の範囲であり、該反応性混合物を使用して製造されるPIR/PUR含有材料は、少なくとも1つの非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物を、PIR/PUR含有材料の総重量を基準として0.2重量%から27重量%、好ましくは0.2重量%から18重量%、さらに好ましくは0.2重量%から13.5重量%含む(これにより、PIR/PUR含有材料の製造プロセス後に、エチレン性不飽和部分を有する化合物の総添加量の10重量%~90重量%が非重合のエチレン性不飽和部分を有する、ということが考慮されている)。
【0071】
幾つかの実施態様によれば、本発明に従ったポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;より好ましくは、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、およびジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-2,3-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、これらの混合物、およびビス-(イソシアナートシクロヘキシル)-メタン等の脂環式ジイソシアネート;ならびに、2,4,6-トリイソシアナートトルエンおよび2,4,4’-トリイソシアナートジフェニルエーテル等のトリイソシアネート;を含めた複数のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート化合物から選ばれる。
【0072】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネートの混合物から選択することができる。例えば、トリレンジイソシアネート異性体の混合物(2,4-異性体と2,6-異性体との市販混合物など)や、アニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化によって得られるジイソシアネートと高級ポリイソシアネートとの混合物などであってよい。このような混合物は当業界においてよく知られており、メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネート(ジイソシアネート、トリイソシアネート、および高級ポリイソシアネートを含む)と任意のホスゲン化副生物との混合物を含有する粗ホスゲン化生成物が含まれる。
【0073】
本発明の好ましいポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートが芳香族ジイソシアネートまたはより高い官能価のポリイソシアネートである場合の、特に、ジイソシアネート、トリイソシアネート、およびより高い官能価のポリイソシアネートを含有するメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの粗混合物である場合のポリイソシアネート組成物である。メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネート(例えばメチレンジフェニルジイソシアネート、MDIと略記される)は、当業界においてよく知られており、一般式I(式中、nは1以上であり、粗混合物の場合は1超の平均を表す)を有する。メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートは、アニリンとホルムアルデヒドの縮合によって得られる対応するポリアミン混合物のホスゲン化によって作製される。
【0074】
【化5】
他の適切なポリイソシアネート化合物としては、過剰のジイソシアネートまたはより高官能価のポリイソシアネートとヒドロキシル末端ポリエステルまたはヒドロキシル末端ポリエーテルとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマー、および過剰のジイソシアネートまたは高官能価ポリイソシアネートとモノマーポリオールまたはモノマーポリオール(例えばエチレングリコール、トリメチロールプロパン、またはブタンジオール等)の混合物とを反応させることによって得られる生成物を含んでよい。イソシアネート末端プレポリマーの1つの好ましい種類は、ジイソシアネート、トリイソシアネート、およびより高官能価のポリイソシアネートを含有するメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの粗混合物のイソシアネート末端プレポリマーである。
【0075】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、またはメチレンジフェニルジイソシアネートもしくはこのようなポリイソシアネートの混合物を含むポリイソシアネート組成物から選ばれる。
【0076】
幾つかの実施態様によれば、1種以上のイソシアネート反応性化合物は、ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレタン含有硬質フォームを作製する上で当業界に公知のいかなる反応性化合物も含む。硬質フォームを作製する上で特に重要なのは、50~1000mgKOH/g(特に150~700mgKOH/g)の平均ヒドロキシル価および2~8(特に3~8)のヒドロキシル(OH)官能価を有するポリオールおよびポリオール混合物である。好適なポリオールは、先行技術において充分に説明されており、アルキレンオキシド(例えばエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)と、1分子当たり2~8個の活性水素原子を含有する開始剤との反応生成物であるポリエーテル系ポリオールが含まれる。好適な開始剤としては、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびスクロース等のポリオール;例えばエチレンジアミン、トリレンジアミン(TDA)、ジアミノジフェニルメタン(DADPM)、およびポリメチレンポリフェニレンポリアミン等のポリアミン;例えばエタノールアミンやジエタノールアミン等のアミノアルコール;ならびにこのような開始剤の混合物;などがある。他の好適なポリオールとしては、適切な割合のグリコールおよび高官能価ポリオールと、ジカルボン酸もしくはポリカルボン酸との縮合反応によって得られるポリエステル系ポリオールがある。さらに好適なポリマーポリオールとしては、ヒドロキシル末端ポリチオエーテル、ヒドロキシル末端ポリアミド、ヒドロキシル末端ポリエステルアミド、ヒドロキシル末端ポリカーボネート、ヒドロキシル末端ポリアセタール、ヒドロキシル末端ポリオレフィン、およびヒドロキシル末端ポリシロキサンなどがある。
【0077】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料は発泡材料であり、発泡剤は、イソブテン、ジメチルエーテル、水、塩化メチレン、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、およびペンタン等の炭化水素から選択することができる。発泡剤の使用量は、例えば、フォーム製品の意図する使い方や用途、所望するフォーム剛性、および所望する密度に基づいて変わってよい。発泡剤は、イソシアネート反応性化合物(ポリオール)100重量部当たり0.5~60重量部(pbw)、より好ましくは1~45重量部の量にて存在してよい。
【0078】
幾つかの実施態様によれば、PIR/PUR含有材料は発泡材料であり、発泡剤が水を含み/含有し、水の量は最大で15pbwの量に制限するのが好ましい。
【0079】
幾つかの実施態様によれば、触媒化合物は、反応性混合物中に触媒有効量にて存在すべきであり、イソシアネート当量数に対する触媒当量数が0.001~0.4(好ましくは0.01~0.26、または0.01~0.24、または0.02~0.2)の範囲となるような量で存在するのが好ましい。
【0080】
幾つかの実施態様によれば、本明細書での使用に適した1つ以上のポリウレタン触媒化合物としては、有機スズ等の金属塩触媒;ならびに、トリエチレンジアミン(TEDA)、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-メチルジシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)-エチル-ピペラジン、トリブチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘプタメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリス(3-ジメチルアミノ)プロピルアミンもしくはその酸ブロック誘導体、およびこれらの任意の混合物等のアミン化合物;などがあるが、これらに限定されない。こうした触媒化合物は、反応性組成物中に触媒有効量にて存在すべきである。
【0081】
幾つかの実施態様によれば、本明細書での使用に適した1つ以上のポリイソシアヌレート触媒化合物(三量化触媒)としては、第四アンモニウム水酸化物と第四アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物、アルコキシドとカルボキシレート(例えば酢酸カリウムや2-エチルヘキサン酸カリウム)、特定の第三アミン、および非塩基性金属カルボキシレートなどがあるが、これらに限定されない。こうした触媒化合物は、反応性組成物中に触媒有効量にて存在すべきである。
【0082】
幾つかの実施態様によればさらに、トリエチレンホスフェートや発泡性グラファイト等の最先端の火炎抑制剤化合物を、PIR/PUR含有材料を作製するのに使用される反応性混合物に加えることができる。
【0083】
PIR/PUR含有材料を作製するための成分を添加・混合する順序には、多くの異なる順序がある。当業者には言うまでもないことであるが、化合物の添加順序を変えることも本発明の範囲内である。
【0084】
幾つかの実施態様によれば、火炎抑制剤(FST)組成物は、イソシアネート組成物とは別の、そしてイソシアネート反応性組成物とは別の、別個のストリームとして反応性混合物に加えることができる。
【0085】
反応性混合物中の、1つ以上のポリイソシアネート化合物および1つ以上のイソシアネート反応性化合物の量は、作製しようとするPIR/PUR含有材料の特性により異なり、当業者であれば容易に決定することができる。
【0086】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、180以上のイソシアネートインデックス(さらに好ましくは250超のイソシアネートインデックス)を有する反応性混合物を使用して作製されるポリイソシアヌレート(PIR)含有フォーム〔好ましくはポリイソシアヌレート(PIR)含有硬質フォーム〕であり、反応性混合物中に使用される触媒化合物は、少なくとも1種の三量化触媒から選択される。
【0087】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、80~180の範囲のイソシアネートインデックス(さらに好ましくは90~150の範囲のイソシアネートインデックス)を有する反応性混合物を使用して作製されるポリウレタン(PUR)含有フォーム〔好ましくはポリウレタン(PUR)含有軟質もしくは半硬質〕であり、触媒化合物は、少なくとも1種のポリウレタン触媒から選択される。
【0088】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、PIR/PUR含有塗料またはPIR/PUR含有接着剤である。
【0089】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーである。
【0090】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、ISO845に従った測定にて200kg/m3未満の見かけ密度を有し、そしてASTM D6226-10(Open-cell Content by Pycnometer)に従った測定にて、フォームの総体積を基準として50体積%未満の、好ましくは30体積%未満の、さらに好ましくは20体積%未満の連続気泡含量を有するPIR/PUR含有材料である。
【0091】
幾つかの実施態様によれば、本発明の火炎抑制剤(FST)組成物を含む反応性混合物を使用して作製されるPIR/PUR含有材料は、断熱や防音において、および/または、例えば断熱パネルにおける建築用断熱フォームや家電用断熱フォーム等の構造用パネルにおいて使用することができる。
【実施例】
【0092】
使用した化学物質
■ Daltolac(登録商標)R517: Huntsman社のポリエーテルポリオール
■ Daltolac R251: Huntsman社のポリエーテルポリオール
■ Daltolac R630: Huntsman社のポリエーテルポリオール
■ Daltolac XR159: Huntsman社のポリエーテルポリオール
■ シクロペンタン(ドイツ、Merck社)
■ n-ペンタン(ドイツ、Merck社)
■ Jeffcat(登録商標)BDMA: Huntsman社のアミン触媒
■ Jeffcat ZF22: Huntsman社のアミン触媒
■ Jeffcat TR90: Huntsman社のアミン触媒
■ K-ZERO 3000: Momentive Performance Materials社のDMSO中カリウム触媒
■ TEP: Sigma-Aldrich社のトリエチルホスフェート
■ Neopolyol 240FR: Huntsman社の芳香族ポリエステルポリオール
■ Tegostab(登録商標)B8484: ドイツ、Evonic社のシリコーン界面活性剤気泡安定剤
■ Tegostab B8485: ドイツ、Evonic社のシリコーン界面活性剤気泡安定剤
■ SR444D: Sartomer社のペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)
■ SR295: Sartomer社のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETRA)
■ Sigma-Aldrich社のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
■ SR351: Sartomer社のトリメチロールプロパントリアクリレート(TTA)
■ Sigma-Aldrich社のヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)
■ SR350D: Sartomer社のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TTMA)
■ Genomer(登録商標)4302: RAHN社のイソシアヌレート三官能性アクリレート
■ Genomer4622: RAHN社の芳香族六官能性ウレタンアクリレート
■ Genomer4691: RAHN社の脂肪族六官能性ウレタンアクリレート
■ アリルアルコール(Merck社)
■ MA: ドイツ、Merck社の無水マレイン酸
■ SA: ドイツ、Merck社の無水コハク酸
■ TATA: Sigma-Aldrich社の1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン,97%
■ 乳酸: Sigma-Aldrich社のDL-乳酸(水中88%)
■ Luperox(登録商標)P: Sigma-Aldrich社のt-ブチルペルオキシベンゾエート
■ Luperox Di: Sigma-Aldrich社のジ-tert-ブチルペルオキシド
■ Luperox TBH70X: Sigma-Aldrich社のtert-ブチルヒドロペルオキシド(水中70%)
■ ベンゾイルペルオキシド: Sigma-Aldrich社のジベンゾイルペルオキシド(水中75%)
■ S5025〔Suprasec(登録商標)5025〕: Huntsman社のポリメリックメチレンジフェニルイソシアネート(MDI)
ポリウレタン(PUR)フォームの作製
ポリオール混合物(あらかじめ調製、イソシアネートを除いた表に記載の全ての化学物質を含む)とイソシアネートを、Heidolphミキサー(~2500 rpm)を使用して高剪断下にて5秒間ミキシングすることによって、ポリウレタンフォームをフリーライズ条件にて作製した。エチレン性不飽和化合物を添加していないPUR配合物に対する発泡プロセスの最高発熱温度(Treaction)を記録するために、直径1.5mmの熱電対を、発泡金型の中央部で底部から5cmの場所に設置した。PURフォームは全て、ドラフト中に一晩保管してから切断して特性決定を行った。
【0093】
MDI-HEAおよびMDI-PETAの合成
メカニカルスターラーと窒素パージを取り付けた三つ口丸底フラスコ中にMDIを入れ、3ppmの塩化チオニルを三量化阻害剤として添加した。フラスコを油浴中にて70℃に加熱し、イソシアネート反応性基を有するエチレン性不飽和化合物(HEAおよびPETA)を30分で滴下した。フラスコ内容物を70℃で1時間保持した後、生成物を室温に冷却し、密閉容器中に保存した。
【0094】
クラインブレンナー試験(B2試験)
クラインブレンナー試験は、異なるサンプルの火炎抑制(FR)性能を比較するために使用される試験であり、該試験によれば、EN ISO 11925-2に従ってフォームサンプルの下端に小さな火炎を15秒間当てる。19cm×9cm×2.5cmの寸法のフォーム片(
図1の2参照)をカットする。試験は、試験片を垂直に取り付けた試験チャンバー内で行われる。フォームを金属製のホルダー(
図1の1参照)に設置したら、2cmの火炎を45°の角度(
図1のA参照)にてフォームの底部に当てて着火させる。
【0095】
火炎を15秒間保持し、フォームが燃焼する場合は、どの程度高くフォームが燃焼するかを観察する。種々のシステムの火炎抑制性能を比較するためにクラインブレンナー試験を行い、試験前後のフォームサンプルを計量して、質量損失(%)を火炎抑制性能の指標として求めた。質量損失が少ないほど、火炎抑制性能が高いことを示す。
【0096】
DSCによるエチレン性不飽和化合物の重合開始温度(T
onset
)の測定
エチレン性不飽和化合物の重合開始温度(Tonset)を決定するために、定昇温速度示差走査熱量測定(DSC)を行った。DSCによる実験は、Q2000TA機器を使用して実施した。エチレン性不飽和化合物をラジカル開始剤(適用可能な場合)と予備混合し、3~5mgのサンプルを密閉アルミニウムパン中に封入し、10℃/分の加熱速度にて0℃から280℃まで加熱した。
【0097】
DSCによるエチレン性不飽和化合物の転化率(α)の測定
PURフォーム中の未反応エチレン性不飽和化合物(本明細書では、非重合エチレン性不飽和部分を有する化合物とも言う)の量を決定するために、等温示差走査熱量測定(DSC)を行った。DSCによる実験は、Q2000TA機器を使用して実施した。3mg(±5%)の粉砕サンプルを密閉アルミニウムパン中に封入し、60℃/分の加熱速度にて70℃に加熱し、15秒間等温に保持した。次いでDSC炉を230℃にて平衡化し、20分間等温に保持した。正の熱流量値を数値積分して総残留発熱量を推定した。転化率は式1を使用して算出した。
【0098】
【化6】
上記式中、αは、エチレン性不飽和化合物(EUMs)の転化率であり;RE
sは、サンプルの残留発熱量であり;RE
refは、対照標準フォーム〔エチレン性不飽和化合物(EUMs)を添加していない同一処方〕の残留発熱量であり;C
EUMsは、エチレン性不飽和化合物(EUMs)の重量%であり;そしてRE
EUMsは、ニートのエチレン性不飽和化合物(EUMs)に1重量%のLuperox(登録商標)Diを加えたものの残留発熱量である。
【0099】
60%の転化率(α)とは、反応性組成物に加えたエチレン性不飽和化合物の総量を基準として、エチレン性不飽和化合物の40%が非重合のエチレン性不飽和化合物である、ということを意味する。
【0100】
本発明による実施例1~25および比較例1
表1は、本発明による実施例1~12と比較例1を作製するのに使用した反応性組成物および成分の量〔重量部(pbw)にて表示〕、ならびにクラインブレンナー(B2)質量損失%、コーン熱量測定試験のTHR(総熱放出量)とPHRR(ピーク熱放出率)とTSP(総煙生成量)、ベース処方(比較例1)のTreaction、および[エチレン性不飽和化合物(EUMs)+開始剤(使用する場合)]のTonsetをまとめて示したものである。
【0101】
【化7】
表2は、本発明による実施例13~25と比較例1を作製するのに使用した反応性組成物および成分の量〔重量部(pbw)にて表示〕、ならびにクラインブレンナー(B2)質量損失%、ベース処方(比較例1)のT
reaction、および[エチレン性不飽和化合物(EUMs)+開始剤(使用する場合)]のT
onsetをまとめて示したものである。
【0102】
【化8】
本発明による実施例26~27および比較例2
表3は、本発明による実施例26と27および比較例3を作製するのに使用した反応性組成物および成分の量〔重量部(pbw)にて表示〕、ならびにクラインブレンナー(B2)質量損失%、ベース処方(比較例2)のT
reaction、および[エチレン性不飽和化合物(EUMs)+開始剤(使用する場合)]のT
onsetをまとめて示したものである。
【0103】
【化9】
表1から、検討したアクリレートはいずれも(実施例1~12)、熱開始剤の存在下と非存在下の両方において、比較例1と比較してB2における質量損失を減少させることが明らかである。PETRAの場合、さまざまな装入量のラジカル開始剤を試験し(実施例1~4)、転化率(α)を評価したところ、T
onsetがT
reactionより5℃低い処方(0.1% Luperox Di)において最良の結果(B2試験における最小の質量損失)が得られ、転化率が約59%であった(このことは、反応性混合物に加えたPETRAの総量を基準として41%の非重合PETRAが残存していることを意味している)。使用した他の全てのアクリレート(実施例5~12)に対しては、Luperoxを0.1%添加すると、B2の質量損失が減少した。コーン熱量測定の結果も、総煙生成量(TSP)とピーク熱放出率(PHRR)に関して著しい改善を示している。
【0104】
表2から明らかなように、検討したエチレン性不飽和化合物はいずれも、0.1%のLuperox Diの存在下でB2に対する質量損失を減少させた。TATAの場合、ラジカル開始剤が存在しないと、Treaction(130℃)と比較してTonset(216℃)が著しく高くなったが、Luperox Diが存在すると火炎抑制性能が向上し、TonsetがTreaction(130℃)に近い136℃に低下した。
【0105】
表3から、無水コハク酸(SA)を、SAと同様の構造を有し、エチレン性不飽和を有する無水マレイン酸(MA)に置き換えることにより、B2の質量損失が、比較例2に対する17%から実施例26に対する約9%に減少していることがわかる。また、熱開始剤であるLuperox Diを添加すると、実施例27では質量損失が約8%にさらに減少する。
【国際調査報告】