(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】連続固相重合方法及びそこで使用するための反応器カラム
(51)【国際特許分類】
C08G 69/30 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
C08G69/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532149
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2020087099
(87)【国際公開番号】W WO2021123222
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】グロルマン, エリック
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001EB37
4J001EB46
4J001EB56
4J001EC07
4J001EC08
4J001FA01
4J001FB03
4J001FB05
4J001FC03
4J001FC05
4J001GA15
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB05
4J001GB11
4J001GC10
4J001JB04
4J001JB06
4J001JC02
(57)【要約】
本発明は、ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法に関し、ここで、塩は加熱区画とガス出口区画とを含む連続多機能領域と、少なくとも1つのガス入口区画を含む滞留領域とを含む反応器カラム内で重合され、加熱区画は静止熱交換器を含む。また、本発明は、反応器カラム及び連続固相重合方法におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法であって、前記方法が、
- 加熱区画とガス出口区画とを含む連続多機能領域と、少なくとも1つのガス入口区画を含む滞留領域とを含む反応器カラム内に固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩を供給する工程と、
- 前記塩、又は該当する場合にはその得られた重合混合物又はポリアミドを移動充填層として前記連続多機能領域を通って移動させる工程であって、他方、
〇 前記塩と、前記重合混合物及びポリアミドそれぞれとを前記加熱区画内で加熱し、それによって前記塩を重縮合させて重合混合物を形成し、前記重合混合物をそれぞれ追加に重縮合させてポリアミドを形成し、任意選択的に前記ポリアミドを追加に重縮合させてより高分子量のポリアミドを形成し、水蒸気を生成する工程、並びに
〇 前記水蒸気をガス出口区画経由で除去する工程と、
- 前記ポリアミドを移動充填層として前記滞留領域を通ってさらに移動させる工程であって、他方、
〇 気体ジアミンを前記滞留領域内に前記滞留領域内の第1のガス入口区画経由で導入する工程、
〇 並びに不活性ガスを反応器内に前記第1のガス入口区画の下の第2のガス入口区画経由で任意選択的に導入する工程と、
- 得られたポリアミドを前記反応器カラムから排出する工程とを含み、
前記塩、前記重合混合物及びポリアミドが固体状態に維持され且つ前記加熱区画が静止熱交換器を含む、方法。
【請求項2】
前記固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩が充填区画経由で前記反応器カラムに供給され且つ得られたポリアミドが排出区画経由で前記反応器カラムから排出され、不活性ガスのパージが前記充填区画内に、又は前記排出区画内に、又は両方に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-0.1~+0.5BarGの範囲のガス圧力で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記静止熱交換器が、前記塩の融解温度(Tm-塩)、反応混合物の融解温度(Tm-混合物)、及び前記ポリアミドの融解温度(Tm-ポリアミド)のうちの最も低い温度よりも少なくとも15℃低い温度T
HEに加熱され、前記融解温度(Tm)が、第1の加熱サイクルにおいて20℃/分の加熱速度で窒素雰囲気中でISO-11357-3.2、2009によるDSC方法によって測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器カラムが、加熱区画とガス出口区画とを含む少なくとも3つの連続多機能領域を含み、好ましくはこれらの多機能領域の少なくとも4つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応器カラム内に供給される前記固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩が、0.05~5mm、好ましくは0.1~3mm、より好ましくは0.2~1mmの範囲のメジアン粒子サイズ(d50)の粒子サイズ分布を有する粒状材料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩が脂肪族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸を含み、前記方法によって調製される前記ポリアミドが、20℃/分の加熱及び冷却速度で窒素雰囲気中でISO-11357-3.2、2009によるDSC方法によって測定される場合少なくとも280℃の融解温度を有する半結晶性半芳香族ポリアミドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応器カラムから排出される前記ポリアミドの、ISO307、第4版による方法によって25℃の96%硫酸(0.005g/ml)中で測定される粘度数が少なくとも20ml/g、好ましくは少なくとも50ml/gであり、又は前記ポリアミドの、アミド基へのカルボン酸基の変換が、前記固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩中の前記カルボン酸基に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも3つの連続多機能領域と下流の滞留領域とを含む、連続固相重縮合方法のための反応器カラムであって、
- 前記多機能領域の各々が、静止熱交換器を含む加熱区画とガス出口デバイスを含むガス出口区画とを含み、及び
- 前記滞留領域が、ガス入口デバイスを含む少なくとも1つのガス入口区画を含む、反応器カラム。
【請求項10】
前記静止熱交換器が、縦向きの又は本質的に縦向きの管状熱交換器及び縦向きの又は本質的に縦向きのプレート熱交換器から選択される、請求項9に記載の反応器カラム。
【請求項11】
前記加熱区画が、互いに規則的に離隔され且つ前記加熱区画の横断面にわたって均一に分散されるプレート熱交換要素の1つ又は複数のアレイを含む、請求項9~10のいずれか一項に記載のカラム。
【請求項12】
2つの加熱区画の間に配置されたガス出口区画が、前記ガス出口区画の横断面にわたって実質的に均一に広がったガス出口デバイスの2つのアレイを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の反応器カラム。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の反応器カラムを含む装置。
【請求項14】
重縮合方法においての、より詳しくはジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法においての、請求項13に記載の装置、又は請求項9~12のいずれか一項に記載の反応器カラムの使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリアミドを調製するための方法、より詳しくは、ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法に関する。
【0002】
ジアミン及びジカルボン酸からのポリアミドの調製はジアミンのアミン基とジカルボン酸のカルボン酸基との間の反応を必要とし、副生成物として水を形成すると共にアミド基をもたらす。この反応は縮合反応であり、方法は重縮合を含む重合方法として知られている。ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドもまた、AA-BBポリアミドとして知られている。
【0003】
ジアミン及びジカルボン酸からポリアミドを製造する様々な方法がある。公知の方法には、溶融重合、溶液重合、懸濁重合、及び固相重合、及びそれらの組合せが含まれる。ジアミン及びジカルボン酸から調製されるポリアミドはしばしば、ジアミン及びジカルボン酸の適切な塩を溶融状態で、又は塩が水に溶解される液体状態で縮合させることによって製造される。しかしながら、塩が溶融状態で又は水に溶解されて重合されるこのような手順は、より温度感受性の及び高溶融性のポリアミドにはそれほど適しておらず、これは一般的に、ポリマーの分解又は枝分れ及びゲル生成の原因となる副反応をもたらす。したがって、それらの調製のための低温方法に関心が集まっている。ポリアミドの調製のための公知の及び広範囲に適用される方法は、追加的な又は最終的な工程として固相後縮合を含む複数段階方法である。その例には、第1の工程においてプレポリマーが水溶液として、不活性液体中の懸濁液として、又は溶融体として製造される方法が含まれる。そのように形成されるプレポリマーは溶液又は懸濁液から単離され、固化されるか、又は溶融体から直接に固化され、固体状態にある間により高分子量のポリマーにさらに重合される。固体状態のプレポリマーの追加的な重合を含むこのようなプロセス工程もまた、本明細書において後SSPと称される、固相後縮合(又はSSPC)方法として知られている。
【0004】
AA-BBポリアミドについてはジアミン及びジカルボン酸の塩が所望の分子量のポリアミドポリマーに直接に重合される固相重合方法もまた公知であり、全ての工程が固体状態にあり、例えば、粉末の形態の塩から出発する。また、このような完全な固相重合は、明細書において直接SSPと称される、直接固相重合として知られる。
【0005】
ポリアミドの固相重合方法は、後SSP及び直接SSPの両方とも、文献“Solid-state Polymerization”(C.D.Papaspyrides and S.N.Vouyiouka,Wiley,2009)に説明されている。
【0006】
ポリアミドの固相重合方法は長い間知られており、後SSP法は工業規模で広範囲にわたって世界的に利用されているが、直接SSP法は依然として第一に技術的及び科学的研究の課題にとどまっており、仮にそうなったとしても、工業規模ではほとんど利用されていない。この直接SSPは、塩だけが加熱され、塩及びポリアミドの融点より低い温度までしか加熱されないので、エネルギー的に非常に魅力的ではあるが。これは、溶融工程と、その後の後SSPとを含む方法と対照的であり、ここでは塩が塩及びポリアミドプレポリマーの融点を超える温度に最初に加熱され、その後にプレポリマーが冷却されて粒体に変換されるが、水溶液中又は懸濁液中での重合と、その後の後SSPとを必要とする方法と対照的であり、ここでは塩は最初に水又は不活性液体に溶解又は懸濁され、溶液又は懸濁液はポリアミドプレポリマーを調製するために十分高温及び圧力に加熱され、その後に水又は不活性液体が除去されなければならず且つプレポリマーが単離及び冷却されて粒体に変換され、その後に後SSP工程において粒体は再び加熱されてプレポリマーをさらに重合させ、ポリアミドを得る。
【0007】
直接SSPを工業規模に拡大する際の大きな問題は、重合の間に生成される縮合水の量である。この量は、ジアミン及びジカルボン酸の出発原料の重量に対して10~15重量%の範囲内に収まり得る。この縮合水は、反応混合物又は反応媒体から除去されなければならない。プレポリマーが水溶液として、不活性液体中の懸濁液として、又は溶融体として製造され、その後に固相後縮合工程が行われる方法において、縮合水の最大部分は、反応混合物がまだ移動可能な液体状態にある最初の工程においてすでに生成されて除去される。直接SSP法において、これは、粒状材料の撹拌層を使用するか又は、非常に小さな規模で、粒状材料の静止充填層を使用する回分法において行なうことができる。撹拌層を使用するか、又は非常に小規模の静止層回分法を使用するか両方の場合において、生成した縮合水及び初期に形成される低分子量プレポリマーが粒状材料の粘着及び凝集を引き起こさないように反応速度は非常に緩慢でなければならず且つ注意深く制御されなければならない。粘着及び凝集のこれらの問題は、例えば、“Solid-state Polymerization”(C.D.Papaspyrides and S.N.Vouyiouka,Wiley,2009)に説明されている。これらの態様は、反応時間が長く、反応器の容量を低下させ且つ装置が高価なものになるので、工業規模まで拡大するのを難しくし、プロセスを経済的に非効率的なものにする。
【0008】
また、固相重合装置及び組立体、並びにその適性及び欠点は、“Solid-state Polymerization”(C.D.Papaspyrides and S.N.Vouyiouka,Wiley,2009(page26-28))に説明されている。粘着又は焼結のこのような問題を防ぐために、固相重合は、撹拌又は機械攪拌の他の形態のどちらかで行われる。これらの方法は窒素ガス流下で実施することができる。好適には、撹拌と窒素ガス流との組合せが利用される。
【0009】
全プロセスの間、粒子を相対的に移動させ続けるために反応混合物を撹拌する。このような方法は回分法として、例えば垂直型反応器の上面に取り付けられた回転羽根で撹拌しながら反応が進む固定装置内で、又は出発原料をその中で反応器内に導入し、その上部及び下部の両方が円錐形であり、反応器を封止し、その後に、真空下で反応器の全体を回転させながら反応を行なうタンブラー型装置内で実施することができる。
【0010】
このような装置は回分法において使用することができるが、しかしながら、1バッチサイクル当たりの低い生産量、長いサイクル時間、及び反応のための加熱及び冷却プロセスの連続的繰り返しによる大きなエネルギー損失という不利な点があり、それらの全てが、製造コストの増加をもたらす。可動部分、封止部分及び加熱要素を有する装置を使用する、大規模製造のためのこのような装置の規模拡大は全て非常にコストが大きい。
【0011】
他方、連続法はしばしば後縮合において適用され、プレポリマーの分子量及び極限粘度数を増加させる。ここで固体ポリアミドプレポリマーは撹拌せずに反応器を通って供給され、粒状材料の充填層として下方に移動し、その間に加熱不活性ガスの向流を適用して、粒状ポリアミド材料を加熱すると共に固相後縮合反応から生じる水蒸気を除去する。プラグ流れ特性を有する充填層を維持することは、適度な滞留時間内に安定した且つ所望の最終粘度を有する生成物を得るために必須である。
【0012】
直接SSP法において、生成した水の量は典型的には後縮合方法におけるよりもずっと多く、それは約10倍、又はさらにそれを超え得る。縮合反応から生じる水蒸気は、撹拌せずに反応器から連続的に且つ有効に除去されない場合、固体粒状材料が固まり、大きい塊を形成する。これを防ぐには、非常に大きなガス流を必要とするので、それは塩粒子の流動化及び反応器の頂部からの同伴をもたらすこともあり得、他の場合なら非常に大きい装置を必要とし、ガス速度を低減して、非常に長い滞留時間をもたらす。さらに、これはまた、装置の拡張投資並びに不活性ガスの流れの清浄化、乾燥、再加熱及び再循環のための巨額のコストを必要とする。要するにこれはこのような方法を非常に非経済的なものにする。
【0013】
上記を別として、モノマーの一部分の揮発性と関係がある、直接SSP法に関する他の問題がある。直接SSPにおいて、ジアミンモノマーはしばしば、特に高いガス流量によって気相となって部分的に失われることは公知の事実である。実際のところ、反応中のガス流がより大きくなるとより多量の揮発性成分を除去する傾向があり、したがって直接SSPによってポリアミドを製造する作業に好ましくない。特に、AA-BB型ポリアミド中のジアミンのストリッピングは酸塩基平衡のアンバランスを増加させ、それによって分子量の増大を著しく制限する。自生圧下の密閉容器内での重合からジアミンのin-situ補給まで多岐にわたる様々な解決策が提案された。
【0014】
最初の解決策の例は米国特許第3232909号明細書に記載されている。この特許は、ジアミンの減損の問題に取り組むが、粘着の問題を克服する解決策を提供しない。ここでヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸のポリアミド前駆体塩は、前記前駆体の粒子に相対運動を生じさせながら、重合中に密閉反応空間に流出蒸気を保持することによって生じた自生圧下で重合される。前記方法によって、加熱及び重合の間に生成され、反応水と揮発性ジアミンから生じる蒸気が、反応器内に保持される。モノマー反応体の化学量論が実質的に維持され、有害なジアミンの減損が克服されているという事実のために、わずかな超過テレフタル酸が使用される場合でも、良い特性を有するポリアミドが得られるということが権利請求される。本質的に乾燥した塩が、すなわち、可視的な液相が存在しない場合反応器に充填される米国特許第3232909号明細書の方法において、重合温度は生成されるポリマーの温度未満に維持され、前記方法において消費される熱は、重合質量の粒子を完全に溶融するために不十分であると言われている。しかしながら、重合中の特定の時点で、反応水は、低重合体、すなわち、低分子量ポリマーが溶解される液相を形成し、それによって反応器内の質量が水中の固体ポリマーの懸濁液になり且つ撹拌が可能なままである。
【0015】
他方、ジアミンの補給は、後SSP法のための公知の解決策である。しかしながら、多量のジアミンが吸収されないので、このようなプロセスの間に又は終わりに添加されるジアミンは非能率という難点がある。回分法において実施される場合、それは高温ポリマー粒子と接触するとすぐに蒸発し、完全に吸収されてポリマーと反応させられるのが難しく且つ時間がかかるであろう。加熱のために不活性ガス流下で実施される連続法において、ジアミンの大部分はガス流と共に追い出される。さらに、それは多量の水及び反応の揮発性副生成物と混合されるので、排気流からの回収は複雑になる。
【0016】
上記の点を考慮して、直接SSPの粘着及び凝集のリスクを抑えながらエネルギーコスト及び拡大縮小可能性に関して経済的な方法であって、且つモノマーのバランスを維持又は調節する有効な方法を可能にする経済的な方法が必要とされている。
【0017】
したがって、本発明の目標は、経済的に魅力的であり且つ大きな工業規模に拡大可能であり、粘着及び凝集のリスクが最小に抑えられ、且つモノマーのバランスを有効な方法で維持又は調節することができる、ポリアミドを調製するための固相重合方法を提供することである。
【0018】
この目標は、ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法である、本発明による方法によって達成されており、この方法は、異なった区画を有する連続領域を含む反応器カラムを含むフロースルー反応器内で実施される。本発明による方法は、
- 固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩を加熱区画とガス出口区画とを含む連続多機能領域と、少なくとも1つのガス入口区画を含む滞留領域とを含む反応器カラム内に供給する工程と、
- 塩、又は該当する場合にはその得られた重合混合物又はポリアミドを移動充填層として連続多機能領域を通って移動させる工程であって、他方、
〇 塩と、重合混合物及びポリアミドそれぞれとを加熱区画内で加熱し、それによって塩を重縮合させて重合混合物を形成し、重合混合物をそれぞれ追加に重縮合させてポリアミドを形成し、任意選択的にポリアミドを追加に重縮合させてより高分子量のポリアミドを形成し、水蒸気を生成する工程、並びに
〇 水蒸気をガス出口区画経由で除去する工程と、
- ポリアミドを移動充填層として滞留領域を通ってさらに移動させる工程であって、他方、
〇 気体ジアミンを滞留領域内に滞留領域内の第1のガス入口区画経由で導入する工程、
- 得られたポリアミドを反応器カラムから排出する工程とを含み、
塩、重合混合物及びポリアミドが固体状態に維持され且つ加熱区画が静止熱交換器を含む。
【0019】
任意選択的にこの方法は、ポリアミドを移動充填層として滞留領域を通ってさらに移動させながら、不活性ガスを滞留領域内に第2のガス入口区画経由で導入する工程を含む。ここで第2のガス入口区画は、滞留領域内の第1のガス入口区画の下に、好適には滞留領域の終わりに配置される。第1のガス入口区画の下に第2のガス入口区画を配置することによって、第2のガス入口区画は第1のガス入口区画に対して下流に配置され、移動充填層は最初に、第1のガス入口区画を通過し、その後に第2のガス入口区画を通過する。
【0020】
本発明による方法において、固体材料は実質的に重力によって移動させられ、反応器カラムを通って移動充填層として移動しており、多機能領域を通過し、その後、多機能領域の下又は下流に配置された滞留領域を通過する。固体材料は、加熱区画内の静的加熱要素によって加熱される。加熱区画とガス出口区画とを含む連続多機能領域を含む反応器カラムを使用することによって、プロセスにおいて使用される固体材料は、加熱区画とガス出口区画と交互の順序を通って移動される。したがって、加熱区画内に生成される水蒸気は第一に、ガス出口区画経由で、又は前記加熱区画に隣接した又はその近傍のガス出口区画経由で除去される。隣接した又は近傍のガス出口区画又は加熱区画のすぐ次のガス出口デバイスの近傍アレイとは、本明細書において、前記加熱区画のすぐ上流の又はすぐ下流の、したがって前記加熱区画と第1のすぐ次の上流又は下流の加熱区画との間に配置されたガス出口区画、ガス出口デバイスのアレイそれぞれを意味する。
【0021】
本発明による方法において、有効に、アミンと酸基との間の縮合反応から生じる水は、キャリヤーガスとしての不活性ガスを必要とせずに、上向き及び下向き方向の及び複数の領域に分けられた出口経由で、多機能領域の限られた流体力学的上向き力、及び充填層のゼロ又はほとんどゼロの正味流体力学的な力によって過熱蒸気として除去され、撹拌を使用せずに粘着及び凝集のリスクを徹底的に抑えつつ、したがって移動充填層の一定の下向き流れを促進し、その間にまた、反応器全体にわたって全体的に非常に良い温度制御を有すると共に粒子の流動化及び反応器からの同伴のリスクを徹底的に抑えるか又はさらに除去する。さらに、本発明による方法において、多機能領域における重縮合中のジアミンの減損は抑えられ、他方同時に、多機能領域の下流に配置される滞留領域に比較的少量のジアミンを導入することによって、排気流の広範な回収も後処理の必要もなくモノマーのバランスを有効に操作又は調節することができる。また、隣接したという用語は本明細書において多機能領域に関して用いられ、すぐ隣同士に上流に又は下流に配置される多機能領域を本明細書において意味する。
【0022】
下流にとは本明細書において、移動充填層の流れ方向に対して下流にを意味する。
【0023】
「固相重合」、「固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩」及び「塩、重合反応混合物及びポリアミドを固体状態に維持する」という表現における固相、固体状態(solid state)に関して本明細書において、出発原料である鍵成分、すなわち塩、及び主反応生成物、すなわち重合反応混合物中のオリゴマー及びその他の成分、及びポリアミドが固体状態を保持することを意味する。これは、質量の大部分を構成する鍵成分の固体性質を変化させずに、揮発成分が固体材料から形成され且つ放出されるか又はこれによって吸収され得るということを排除しない。固体状態の保持のため、塩は粒状物質材料、例えば粉末又は粒状材料として供給され得、塩、重合混合物及びポリアミドは、それらの粒状物質の形態を保持する固体粒状物質材料として反応器カラムを通って下方に、重力によって、又は少なくとも実質的にそのように移動され得る。
【0024】
本発明による方法の利点はまず第一に、それは、回分法よりも操作上の利点があるので、溶解及び溶融工程及び中間体の単離又は冷却工程を必要とせずに、1つの完全な順序で塩の取扱、(プレ)ポリマーの調製及び後縮合の全ての工程の統合を可能にする連続法であること、さらに、この方法は加熱のためのエネルギーコストが低く、大きい高価な撹拌装置を必要とせず、大きな工業規模に拡大可能であり、且つ重縮合工程において生成した多量の縮合水にもかかわらず、粘着及び凝集のリスクが低いことである。より詳しくは、縮合反応が主に起こる加熱セグメントのセグメント化によって、仮にそうなったとしても、加熱セグメントからの縮合水の有効な除去が比較的低量の不活性ガスで達成され、同時に、冷却後の他のセグメントの塩出発原料又はポリアミド生成物のどちらかである、低温材料上の水の凝縮によって湿潤し、それによって粘着及び凝集を引き起こすリスクが最小限度に抑えられる。
【0025】
本発明による方法の利点はさらに、水蒸気を同伴する不活性ガスの大きな体積を必要としたり又は熱を壁から反応塊に伝達する塩及び重合混合物を撹拌するための高価な反応器又は装置を必要としたりせずに水蒸気が除去されることであり、塩を加熱するために必要とされるエネルギー及び不活性ガスのストリームによるエネルギー損失が最小限度に抑えられるという点で、及び大きな製造サイズに調整することができるという点でこの方法は経済的に都合がよい。さらに、本発明による方法は、小さな温度勾配での効率的な熱伝達、及び低い静圧を可能にし、それによって粘着及び凝集の可能性を最小限度に抑える。
【0026】
それぞれ加熱区画及びガス出口区画を含む、反応器カラム内の複数の多機能領域を利用し、それによって反応器カラムを加熱区画とガス出口区画と交互に含む連続区画に分けることによって、各加熱区画当たり生成される水蒸気の量は、制限維持され、水蒸気を同伴及び除去する不活性ガスのストリームを必要とせずに、同時に、粘着及び凝集を防ぎながら、重縮合反応による水蒸気の生成により生じる超過圧力によって加熱区画から簡単に押し出されて近傍のガス出口区画経由で除去され、したがって、塩、重合混合物及びポリアミドが固体状態に維持される直接SSP法において、大きな且つ容易に移動する充填層の使用を可能にする。
【0027】
さらに別の利点は、キャリヤーガスを使用せずに、本質的に大気圧にある時でも水蒸気を逃散させることができるので、本発明による方法は大気圧又は大気圧に近い条件で実施され得、他方、水蒸気の上向き及び下向きin-situ除去を使用して、本発明におけるガス速度はさらに低減され、それによって大きな範囲の粒子サイズを可能にし、したがって、塩前駆体粒子を製造するための利用可能な技術を他の場合なら著しく制限するであろう、大きなサイズの粒子に対する装置の使用を制限する必要がないということである。典型的な場合は長い滞留時間(しばしば≧24時間)を必要とする、ガスで加熱されるカラムを含む従来の後SSP法において、温度の予期せぬ結果が長時間続いて、多数の規格外材料の原因になり得る。1つのフロースルーカラムにおいていくつかの接触加熱区画を複数のガス出口区画と組み合わせて使用する、本発明による方法は、反応器カラム内の(局所)温度のずっと良い操縦及び制御を可能にし、始動、グレード変更及び予期せぬ結果の状態の間に生成される規格外生成物をずっと少なくすることができる。
【0028】
本発明による方法において、多機能領域内の縮合反応によって生成される水蒸気は、多機能領域内のガス出口区画経由で及び任意選択的に隣接した多機能領域内の近傍のガス出口区画経由で少なくとも部分的に除去される。この方法は、多機能領域内に供給される不活性ガスを全く必要とせずに実施され得、他の場合なら、不活性ガスが少しでも添加される場合、不活性ガスの量を非常に低く維持することができる。好適には、反応器カラムは、多機能領域の加熱区画の何れの中にも間にもガス入口を含まない。
【0029】
本発明による方法における重縮合は好適には、不活性雰囲気中で実施される。これは、プロセスの始動時の反応器カラム内への不活性ガスのパージ、及び塩の入口位置付近及びポリマーの排出位置付近など、適した位置で反応器カラム内に供給される不活性ガスの小さな流れを用いることによって行なうことができる。
【0030】
不活性ガスとしてポリアミドに不活性な任意のガスを使用することができる。このようなガスの例は窒素、二酸化炭素及びアルゴンである。好ましくは、窒素が不活性ガスとして使用される。縮合反応によって形成される水蒸気もまた、反応器の内容物を不活性化するのに役立つことが指摘される。
【0031】
本発明による方法は、不活性ガスを多機能領域内に供給する間に又は不活性ガスを多機能領域内に供給せずに実施することができる。好適には、多機能領域内に供給される不活性ガスの質量流量は、もしあるとすれば、反応器カラム内に供給される固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩の質量流量に対して、質量基準で、最大で50%である。もしあるとすればという表現によって、量がゼロであり得ること、すなわち不活性ガスが多機能領域内に供給されないことがあり得ることを意味する。好ましくは、多機能領域内に供給される不活性ガスの質量流量は、反応器カラム内に供給される固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩の質量流量の最大で40%、より好ましくは最大で25%、さらにより好ましくは最大で10%である。不活性ガスの質量流量が低いか又はゼロである利点は、窒素のコスト、構築のコスト及び揮発性モノマーの損失が全て低減され、したがって加工コストが低くなり、縮合反応から生じる水蒸気の、他の領域への輸送(そこでそれは凝縮し得る)が低減されるということである。別の利点は、ガス流を最小にすることによって、したがって不活性ガスの質量流量を低下させることによって反応器を通る固形分の均一な流れ(すなわちプラグ流れ)が最も妨げられないということである。
【0032】
最終的に、不活性ガスを使用しないことは、粉末充填層中の粉末粒子の流動化のリスク及びガス出口内への粉末粒子の同伴がさらに低減されるという利点、前記加熱区画又は複数加熱区画のエネルギー入力を上げることによって、重縮合反応を促進することができ、他方、流動化の前記リスクを高めずに加熱区画内の前記反応によって生成される水蒸気は、2つの近傍のガス出口区画経由で反応器カラムから依然として逃散することができるという利点を有する。
【0033】
さらに、滞留領域のガス入口を多機能領域のガス出口から分離することには、キャリヤーガスを必要とせずに重合の間に縮合反応から得られる水蒸気を除去することができ、比較的低いガス速度でin-situ流体力学上の圧力で追い出すことができるという利点がある。随伴する効果は、多機能領域での重縮合中のジアミンの減損が抑えられるということである。同時に、ジアミンは、反応器から未使用で追い出されるか又は排出されるリスクを低減しながら、このような低いガス速度で反応器カラム内に導入され得、且つ滞留領域の充填層を通って広がり得るので、滞留領域でポリアミドと反応する十分長めの時間を有する。また、これは、追い出された量を補償するための過剰ジアミンの必要性を低減し、それによって、追い出されたジアミンを含む排気ガスを再循環又は加工する必要性を低減する。したがって、本発明による方法は、向流ガス流を用いる従来の後SSP連続操作と比較して、特に従来の(大気圧)回分法と比較した場合ジアミンの減損の低下をもたらす。
【0034】
本発明による方法において、固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩は好適には、充填区画経由で反応器カラム内に供給され且つ得られたポリアミドが排出区画経由で反応器カラムから排出され、他方、不活性ガスは充填区画内に若しくは充填区画の近傍の区画内に、又は排出区画内に若しくは排出区画の近傍の区画内に、又は両方に供給される。これは、充填区画及び排出区画それぞれが不活性ガスでパージされるか又はガスシールされ(blanketed)、したがって酸素が反応器カラムに入るのを防ぎ、重縮合反応がそこで起こる、加熱区画内で又はこれを通して不活性ガスでパージして酸素が加熱区画に入るのを防ぐ必要をなくすという利点を有する。充填区画を不活性ガスでガスシールするために、例えば、固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩を反応器カラムの充填区画内に充填する供給装置に不活性ガスのパージを適用することが十分であり得る。
【0035】
充填区画、充填区画近傍の区画、滞留領域、排出区画及び排出区画近傍の区画内に供給される不活性ガスの量は、該当する場合には、酸素が反応器カラムに入るのを防ぎ且つ揮発成分(水、ジアミン)が充填区画及び排出区画経由で反応器カラムを出るのを防ぎつつ充填区画及び排出区画をガスシールするのに依然として十分であるようにしながら、低く維持され得る。
【0036】
本発明による方法は、大気圧よりかなり低い圧力からはるかに高い圧力まで広範囲にわたって変化する圧力で実施され得る。好適にはこの方法は、大気圧(0BarG、典型的に約1bara)又はわずかに低いか若しくは超える圧力で実施される。この方法は、大気圧より低い圧力で実施され得るが、その場合好ましくは空気が反応器カラムに入るのを避けるための及び水蒸気を反応器カラムから逃散させるための処置が講じられる。また、この方法は大気圧よりかなり高い圧力で実施され得る。これは、空気が反応器カラムに入るリスクが低減されるという利点を有する。もちろん、超過圧力の設計は、反応器の構造により高い要求を課する。好ましくは、この方法は、0.9~1.5bara、より好ましくは0.95~1.2bara、さらにより好ましくは1.0~1.1baraの範囲のガス圧力で実施される。ここで圧力はbars単位で絶対数で表される。代わりに、この方法は好ましくは、-0.1~+0.5BarG、より好ましくは-0.05~+0.2BarG、さらにより好ましくは0BarG~0.1BarGの範囲のガス圧力で実施される。ここで圧力は大気圧に対してbars単位で表される。ここで圧力は、多機能領域のガス出口区画の出口で測定される圧力である。
【0037】
本発明による方法は好適には、塩が追加的に加熱され重縮合される多機能領域に入る前に、塩が予備加熱若しくは乾燥される、又はそれらの組合せである工程を含む。このような予備加熱及び乾燥工程は、塩が遊離水又は結晶水などのいくつかの揮発物を含むときに望ましい場合がある。縮合反応が起こるプロセスのそれらの段階の間、多量の水が縮合反応から生じることが指摘される。この量は、モノマーの分子量に応じて、塩の重量に対して10~15重量%もあり得、例えば12重量%又は13重量%、及びさらにより少ないか又はより多いことがあり得る。その次に、塩を含む出発原料は、その固体粒状形状を保持する塩に影響を及ぼさずに、塩で結晶化されているか、又は塩によって吸収されているか又は塩に付着されている若干の水を含有し得る。このような結晶化、吸収又は付着された水は、塩の重量に対して、例えば、1.0又は1.5重量%であり得、結局約0~2.5重量%に達し、さらに高くなり得る。このような水は好適には、例えば、塩を100℃を超える温度に加熱することによって、又は真空を適用することによって、又はそれらの組合せによって除去される。乾燥は、塩を加熱することによって反応器カラム内で又は反応器カラムの外側で、又は他の手段によって反応器カラムの外側で行われ得る。
【0038】
好適には、この方法は、塩が反応器カラムに供給されてこれに入る前に予備加熱及び乾燥工程の組合せを含む。好ましくは、予備加熱及び乾燥は反応器カラム内で行われる。加熱及び乾燥工程に反応器カラム内の付加的な加熱工程を組み込むことができ、それによってプロセス設計を簡単にし、それがそれほど複雑でなくなり、したがって必要とされる設備を分解し、その結果、必要とされる補助装置が小さくなり、投資コストが低減されるという利点をこれは有する。ここで、この方法は、別個の塩予備加熱及び乾燥工程、又は予備加熱及び乾燥が塩の重縮合の第1の部分と組み合わせられる工程を含むことができる。
【0039】
特定の実施形態において、この方法は、
- 塩を充填区画から加熱区画と隣接ガス出口区画とを含む第1の多機能領域に及びこれを通って移動させる工程であって、他方、
〇 塩を加熱区画内で加熱し、それによって任意選択的に、もし存在しているとすれば、水を塩から少なくとも部分的に蒸発させ、及び塩を乾燥させて、予備加熱された塩を形成し、及び塩を固体状態に維持しながら、任意選択的に水蒸気を生成する工程、並びに
〇 もしあるとすれば、水蒸気を隣接したガス出口区画を通って放出する工程と、
- 予備加熱された塩を第1の多機能領域から追加の多機能領域に移動させる工程とを含む、予備加熱及び乾燥工程を含む。
【0040】
第1の多機能領域の熱交換器は、T1と称される温度に加熱される。
【0041】
この予備加熱及び乾燥工程において、第1の多機能領域の熱交換器は好適には、100~220℃、好ましくは110~210℃、より好ましくは120~200℃の範囲の温度T1に加熱される。また好適には、T1は、Tonsetより低い、好ましくは{Tonset-5℃}より低い、より詳しくはTonsetより10℃超低い温度に維持される。より低い加熱温度T1の利点は、加熱工程の間に塩をより速く加熱することができ、もしあるとすれば、初期縮合反応から生成される水蒸気を抑えながら乾燥させることができるということである。
【0042】
オンセット温度Tonsetという用語は本明細書において、30℃~150℃の第1の加熱工程の間15℃/分の第1の加熱速度、15分間150℃の保持、その後に、150℃~250℃の第2の加熱工程の間10℃/分の第2の加熱速度、及び360分間250℃の保持によってISO-11358による方法で窒素下でTGAによって測定される温度であると理解され、ここで、T-onsetは、出発質量ラインと最大勾配の点におけるTG曲線に対する正接との交点によって決定される。
【0043】
本発明による方法の別の実施形態において、予備加熱及び乾燥はまた、塩の縮合の第1の部分と組み合わせることができる。好適には、この方法はここで、
- 塩を充填区画から加熱区画と隣接ガス出口区画とを含む第1の多機能領域に及びこれを通って移動させる工程であって、他方、
〇 塩を加熱区画内で加熱し、それによって、もし存在しているとすれば、水を塩から少なくとも部分的に蒸発させ、塩の少なくとも第1の部分を縮合させて第1の重合混合物を形成し、及び塩及び第1の重合混合物を固体状態に維持しながら、水蒸気を生成する工程、並びに
〇 水蒸気を隣接したガス出口区画を通って放出する工程と、
- 第1の重合混合物を第1の多機能領域から追加の多機能領域に移動させる工程とを含む、予備加熱及び乾燥が塩の縮合の第1の部分と組み合わせられる、第1の加熱工程を含む。
【0044】
この組み合わせられた予備加熱、乾燥及び縮合工程において、熱交換器は好適には、210℃を超える温度T1まで、好ましくは220~260℃、より好ましくは220~240℃の範囲で加熱される。ここでT1はまた好適には、少なくともTonsetに等しく、好ましくは少なくとも{Tonset+5℃}に等しく、より詳しくはT1はTonsetよりも10℃超である。より高い加熱温度T1の利点は、加熱工程の間に塩を乾燥させることができ、同時に初期縮合反応が行われ得るということである。
【0045】
この実施形態は好適には、充填区画内に又は充填区画の近傍の区画内に供給されている不活性ガスと組み合わせられる。その利点は、不活性ガス、又はその少なくとも一部が、第1の多機能領域の加熱区画を通って流れ、蒸発水を同伴し、ガス出口区画経由で放出され得、それによって低温固体材料上の水蒸気の凝縮及び前記低温固体材料の過度の湿潤のリスクを低減し得るということである。
【0046】
カラム内の固体材料を固体状態に維持するために、塩、重合混合物及びポリマーは好適には、塩、重合混合物及びポリマーそれぞれの融点以上の温度に加熱されない。塩、重合混合物及びポリマーそれぞれの温度をその融点未満に維持するために、多機能領域内の静止熱交換器は好適には、反応が起こり得るように十分に高いが、塩の融解温度(Tm-塩)、重合混合物の融解温度(Tm-混合物)、及びポリアミドの融解温度(Tm-ポリアミド)それぞれよりも依然として低い温度(熱交換器の温度、又は「THE’」と称される)に加熱される。好ましくは、第1の多機能領域における及び任意選択的に1つの直後の又は複数の直後の連続多機能領域における静止熱交換器のTHEは、塩の融解温度(Tm-塩)よりも少なくとも15℃低く、より好ましくは少なくとも25℃低く維持される。また、最後の多機能領域における及び任意選択的に1つ又は複数の直前の多機能領域における静止熱交換器のTHEは好ましくは、ポリアミドの融解温度(Tm-ポリアミド)よりも少なくとも15℃低く、より好ましくは少なくとも25℃低く維持される。より好ましくは、全ての多機能領域における静止熱交換器のTHEは、塩の融解温度(Tm-塩)、重合混合物の融解温度(Tm-混合物)、及びポリアミドの融解温度(Tm-ポリアミド)のうちの最も低い温度よりも少なくとも15℃低く、さらにより好ましくは少なくとも20℃低く、最も好ましくは少なくとも25℃低く維持される。ここで融解温度(Tm)は、第1の加熱サイクルにおいて20℃/分の加熱速度で窒素雰囲気中でISO-11357-3.2、2009によるDSC方法によって測定されるピーク温度である。
【0047】
この方法が実施される反応器カラム内の空間は、反応器カラムの壁によって限定される。この方法において固体材料はカラムを通って移動させられ、複数の連続加熱区画及びガス出口区画を通過する。ここで、区画の各々は、反応器カラムの壁の区画によって限定される。好適には、複数の連続加熱区画及びガス出口区画を限定する壁区画が加熱される。壁区画の温度はまた、本明細書においてTWSとも称される。カラム内の区画がカラムの壁区画によって限定される、本発明による方法の特定の実施形態において、加熱区画の壁区画は、{THE-10℃}から{THE+10℃}まで(これを含む)の範囲の温度TWSに加熱される。好ましくは、TWSは、{THE-5℃}から{THE+5℃}まで(これを含む)の範囲である。
【0048】
本発明による方法は、加熱区画とガス出口区画とを含む多機能領域を含む反応器カラム内で実施される。ここでこのような多機能領域の数は一般に変化し得、例えば3つしかないこともあり得、10も、又さらに多くあり得る。好適には、反応器カラムは、加熱区画とガス出口区画とを含む少なくとも3つの連続多機能領域を含む。これは、予備加熱及び乾燥と縮合の第1の部分とが第1の多機能領域で第1の工程において行われ、追加の重縮合が2つの連続多機能領域で行われる場合十分であり得る。加熱区画の各々の必要な熱入力容量はここで、十分な接触面を使用することによって、及び必要な場合、接触面、特に静止熱交換器の長さを増加させることによって、又はプレート熱交換器間の距離又は多管式熱交換器の場合は管の直径を低減することによって達することができる。
【0049】
好ましくは、反応器カラムは少なくとも4つの連続多機能領域を含む。これは、予備加熱及び乾燥が第1の多機能領域で第1の工程において行われ、重縮合が3つの連続多機能領域において行われる場合十分であり得る。その利点は、水蒸気の除去容量を増加させ、それによって反応器カラムの処理能力を増加させることである。
【0050】
より好ましくは、反応器カラムは、少なくとも5つの連続多機能領域、より一層好ましくは少なくとも6つ、さらに良くは少なくとも7つの連続多機能領域を含む。その利点は、重縮合はより多くの連続多機能領域内で行われてこれらで分けられ得、それによって、移動充填層中の固体材料の粘着及び凝集のリスクを高めずに及びより多くのガス除去区画にわたって形成される水蒸気を分散させずにカラムを通ってより高い処理量を可能にし、したがって固体材料をガス除去区画内に同伴するリスクを低減するということである。
【0051】
多機能領域の後、ポリアミドを固体粒子の移動充填層として滞留領域を通ってさらに移動させ、他方、気体ジアミンを滞留領域内の第1のガス入口区画経由で滞留領域内に導入する。
【0052】
ここで気体ジアミンは好適にはジアミンの混合物を含む。また、気体ジアミンは、気体混合物の一部であり得、気体混合物は、例えば、ジアミンと水蒸気との混合物を含み得る。好適には、気体ジアミンは、水を含むジアミンの供給原料を加熱及び蒸発させることによって調製される。好適には、気体混合物中のジアミンと異なった他の揮発性成分の量は制限される。好ましくは、量は、ジアミンと他の揮発性成分との全質量に対して最大でも50重量%、より好ましくは最大でも20重量%、さらにより好ましくは0~10重量%の範囲である。
【0053】
滞留領域に導入した後、ジアミンをポリアミドと反応させることができる。第1のガス入口区画の上及び下の滞留領域の長さを伸ばすことによって、ジアミンは、反応するのにより時間がかかり、未反応ジアミンが反応器から未使用で追い出されるか又は排出されるリスクがより少なくなる。
【0054】
好ましくは、滞留領域の終わりに第2のガス入口区画経由で反応器内に導入される不活性ガスは、ジアミンが導入される第1のガス入口区画内のガスの圧力に少なくとも等しい圧力を有する。
【0055】
好ましい実施形態では、不活性ガスの圧力は、第1のガス入口区画内のガスの圧力に等しい。これは、反応器内にジアミンを有効に保持しながら、滞留領域内のガス速度を制限する。
【0056】
他の好ましい実施形態では、不活性ガスは、ジアミン入口区画内のガスの圧力に対してわずかに超過圧力で導入される。好適には超過圧力は最大でも50ミリバール、好ましくは最大でも20ミリバール、より好ましくは最大でも10ミリバールである。これは、ジアミンガスとポリマー粒子との間の向流接触パターンを維持するために、及び気相からポリマーへのジアミンの有効な質量移動のために有益である。
【0057】
第1のガス入口区画と、該当する場合には、第2のガス入口区画との両方が、好適には滞留領域の断面にわたって均一に導入されるガスを広げるための複数のガス入口デバイスのアレイを含む。このようなアレイのガス入口デバイスは好ましくは互いに規則的に離隔され且つガス入口区画の断面にわたって均一に分散される。好ましくはガスと固形分の両方の均一な分散を促進する方法で。
【0058】
滞留領域は、滞留領域.内のポリアミド粒子の温度を制御するための接触熱交換器を含む加熱又は冷却区画を任意選択的に含み得る。
【0059】
滞留領域で導入されるジアミンの量は、反応器に供給される塩の質量流と適切にバランスをとられる。好適には、ジアミンの質量流は、反応器に供給される塩の質量流に対して0~5重量%の間の範囲、より詳しくは0.1~3重量%、好ましくは0.5~2.5重量%の範囲である。特定の場合、滞留領域で導入されるジアミンの質量流は、反応器に供給される塩の質量流に対して、1.0~2.0重量%の範囲であり得る。
【0060】
ポリアミドが製造されると、ポリアミドは好適には、収集又は充填又はさらに加工される前に前もって冷却される。この冷却は、ポリアミドを反応器カラムから排出した後に反応器カラムの外側で、或いは代わりにポリアミドを反応器カラムから排出する前に反応器カラム内で行われ得る。好ましい実施形態において、ポリアミドは反応器カラム内で冷却される。その目的のために、反応器カラムは好適には、静止熱交換器を含む少なくとも1つの冷却区画を含む冷却領域を含み、方法は、ポリアミドを冷却区画に及びこれを通って移動させ、他方、ポリアミドを冷却区画内で冷却する工程と、冷却されたポリアミドを排出区画に移動させる工程とを排出工程の前に含む、冷却工程を含む。この実施形態の利点は、この方法が、付加的な高価な又は複雑な気密装置を必要とせずに、固体材料を反応器カラムを通って移動させる、1つに組み合わせられる複数のプロセス工程を可能にすることである。
【0061】
冷却工程を任意選択的に乾燥工程と組み合わせることができる。好適には、ここで乾燥ガスは1つ又は複数のガス入口区画の冷却領域内に供給され、乾燥ガスは1つ又は複数のガス出口区画経由で除去される。この方法は水蒸気を逃がすのに非常に効率的であるので、冷却工程において必要とされる乾燥ガスの量をかなり抑えておくことができ、それによってコストを省くことができる。好適には、冷却領域内に供給される乾燥ガスの質量流は、反応器カラム内に供給されるジカルボン酸ジアンモニウム塩の質量流の半分以下、より詳しくは半分未満である。
【0062】
その目的のために、反応器カラムは好適には、静止熱交換器を含む第1の冷却区画と、ガス入口区画と、熱交換器を含む第2の冷却区画とを含む冷却領域を含み、この方法は、この順に、
a.ポリアミドを第1の冷却区画に及びこれを通って移動させ、他方、ポリアミドを第1の冷却区画内で冷却する工程、
b.ポリアミドをガス入口区画に及びこれを通って移動させる工程、
c.ポリアミドを第2の冷却区画に及びこれを通って移動させ、他方、ポリアミドを第2の冷却区画内でさらに冷却する工程、
d.及び冷却されたポリアミドを排出区画に移動させ、
他方、乾燥ガスを反応器カラム内に1つ又は複数のガス入口区画経由で供給し、及び乾燥ガスを1つ又は複数の上流及び/又は下流のガス出口区画経由で除去する工程を排出工程の前に含む、冷却工程を含む。
【0063】
本発明による方法において使用され反応器カラム内に供給される固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩は、広範囲にわたって変化する粒子サイズ及び粒子サイズ分布を有する粒状材料であり得る。塩は、例えば、粉末、より詳しくは小さな粒子サイズを有する粉末、又は粒状材料、より詳しくは中程度又はより大きいサイズの粒体を有する粒状材料であり得る。好適には、固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩は、20℃でISO13320-1による方法によってレーザー粒度測定法で測定されたメジアン粒子サイズ(d50)が0.05~10mm、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.2~3mmの範囲の粒子サイズ分布を有する。少なくとも0.2mm以上のメジアン粒子サイズの利点は、流動特性がより良く、粉末の嵩密度がより高く、粉末がガス出口内に同伴される傾向が抑えられていることである。最大で3mmのメジアン粒子サイズの利点は、上記の他に、粒子が、均一且つ不撹乱方法でカラム内の比較的狭い熱交換器の通路を通過するのにまだ十分に小さいこと、及びそれらは後で押出機で容易に加工され得ることである。
【0064】
1mm未満のメジアン粒子サイズ(d50)を有する粒状材料については、粒子サイズ分布及びメジアン粒子サイズは好適には20℃でISO13320-1による方法によってレーザー粒度測定法で測定される。1mm以上のメジアン粒子サイズ(d50)を有する粒状材料については、粒子サイズ分布及びメジアン粒子サイズは好適にはDIN 66165(2016)Part 1&2による篩方法で測定される。
【0065】
本発明による方法において使用される固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩は基本的には、直接固相重合によって重合され得る任意のジカルボン酸ジアンモニウム塩であり得る。本発明による方法は、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド及び完全芳香族ポリアミドなど、広範囲のポリアミドについて適用することができる。ここで、半芳香族ポリアミド及び完全芳香族ポリアミド、より詳しくは半芳香族ポリアミドが好ましい。脂肪族ポリアミドについては、塩は、完全脂肪族成分、すなわち脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸をベースとすることができる。完全芳香族成分、すなわち芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸をベースとした塩は、完全芳香族ポリアミドをもたらす。最も好ましくは、塩、並びにその誘導された半芳香族ポリアミドは、脂肪族モノマー及び芳香族モノマーの両方を含むジアミン及びジカルボン酸をベースとしている。このような半芳香族ポリアミドについては、芳香族成分と脂肪族成分との組合せは、例えば、脂肪族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸、又は芳香族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。この方法によって調製されるポリアミドは好適には半結晶性ポリアミドである。このようなポリアミドは、隣同士に非晶相と結晶相とを含む。
【0066】
本発明による方法の特定の実施形態において、この方法において製造されるポリアミドは半芳香族ポリアミドであり、この方法において使用されるジカルボン酸ジアンモニウム塩は、脂肪族ジアミンを含むジアミンと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸との塩である。その好ましい実施形態において、固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩は脂肪族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸を含み、ここで調製されるポリアミドは、少なくとも280℃、好ましくは少なくとも290℃の融解温度を有する半結晶性半芳香族ポリアミドである。ここで、融解温度は、第1の加熱サイクルにおいて20℃/分の加熱速度で窒素雰囲気中でISO-11357-3.2、2009によるDSC方法によって測定される。
【0067】
好適には、このような半結晶性半芳香族ポリアミドを調製する方法において使用されるジカルボン酸ジアンモニウム塩は、4~12個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジアミン少なくとも70モル%を含むジアミンと、テレフタル酸、ナフタレン、ナフタリンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸から選択される芳香族ジカルボン酸少なくとも70モル%を含むジカルボン酸との塩である。これらのポリアミドは溶融方法で製造するのがいっそう難しいので、この方法はこれらには特に有利である。
【0068】
本発明による方法によって調製されるポリアミドが少なくとも290℃の融解温度を有する半結晶性半芳香族ポリアミドである実施形態において、塩は好適には、第1の多機能領域において最大で230℃、好ましくは最大で220の温度まで、及び追加の多機能領域においてTonset~265℃の範囲の温度に加熱される。
【0069】
本発明による方法で製造されるポリアミドは、広範囲にわたって変化する重合度を有し得、並びに重合度に関連して、広範囲にわたって変化する粘度を有し得る。好適には、反応器カラムから排出されるポリアミドの、ISO307、第4版による方法によって25℃の96%硫酸(0.005g/ml)中で測定される粘度数が少なくとも20ml/g、好ましくは少なくとも50ml/gである。また好適にはポリアミドの、アミド基へのカルボン酸基の変換が、固体ジカルボン酸ジアンモニウム塩中のカルボン酸基に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%である。ここでポリアミドの酸基の濃度は滴定によって決定され、mmol/kgポリアミドで表され、塩の酸基の濃度は塩中のジアミン及びカルボン酸の分子量から計算され、mmol/kg塩で表される。
【0070】
また、本発明は、反応器カラムに関し、より詳しくは本明細書において上記の連続固相重縮合方法のための反応器カラムに関する。また、本発明による方法は好適には、本明細書において下記の反応器カラムにおいて実施される。
【0071】
本発明による反応器カラムは、静止熱交換器を含む加熱区画とガス出口区画とを各々含む少なくとも3つの連続多機能領域と、少なくとも1つのガス入口区画を含む下流の滞留領域とを含む。
【0072】
反応器カラムは、ポリアミドをジカルボン酸ジアンモニウム塩から調製するためなどの連続固相重縮合方法において使用するために適している。ここで多機能領域は、ポリアミドを調製するための塩の重縮合のために使用され得、滞留領域内の第1のガス入口区画は、気体ジアミンを滞留領域に導入するために使用され得、それによってジアミンをポリアミドと反応させる。それぞれ加熱区画及びガス出口区画を含む、したがって加熱区画とガス出口区画とが交互に並ぶ、多機能領域に反応器カラムを分けることによって、それぞれの加熱区画において連続固相重縮合方法で生成される水蒸気の量は、制限維持され得、不活性ガスのストリームが水蒸気を同伴及び除去する必要がなく、縮合反応によって形成される水蒸気から生じる超過圧力によって、水蒸気は加熱区画から簡単に追い出されて近傍のガス出口区画経由で除去され得、他方、局所的な正確な温度制御及び中圧が粘着及び凝集を有効に防ぐ。これは、塩がポリマーに変換される間にカラムを通って移動する固体状態材料の移動充填層を使用することを可能にする。さらに、本発明による反応器カラムにおいて前記方法を実施することによって、多機能領域での重縮合中のジアミンの減損を抑え、他方同時に、多機能領域の下流に配置される滞留領域に比較的少量のジアミンを導入して、排気流の広範な回収も後処理の必要もなくモノマーのバランスを有効に維持又は調節することができる。
【0073】
好適には、反応器カラム内の少なくとも3つの連続多機能領域はガス入口を含まない。すなわち、多機能領域の加熱区画にもガス出口区画にも、任意の加熱区画の間にも、加熱区画とガス出口区画との間にも含まない。
【0074】
他方、本発明による反応器カラム内の滞留領域は、好適には少なくとも2つのガス入口区画を含む。ここで、滞留領域内の第1のガス入口区画は、気体ジアミンを滞留領域に導入するために使用され得、そして滞留領域内の第1のガス入口区画の下流に配置され、任意選択的に滞留領域の終わりに好適に配置される第2のガス入口区画は、ポリアミドを移動充填層として滞留領域を通ってさらに移動させながら滞留領域内に不活性ガスを導入するために使用される。
【0075】
第1のガス入口区画と、該当する場合には第2のガス入口区画は、滞留領域の断面にわたって均一に導入されるガスを広げるための複数のガス入口デバイスのアレイを各々好適には含む。このようなアレイのガス入口デバイスは好ましくは互いに規則的に離隔され且つガス入口区画の断面にわたって均一に分散される。好ましくは、ガスと固形分の両方の均一な分散を促進する方法で。
【0076】
上記の通り、予備加熱及び乾燥が第1の多機能領域における或る第1の縮合と組み合わせられる場合少なくとも3つの連続多機能領域が十分であり得、追加の重縮合が2つの連続多機能領域において行われる。
【0077】
好ましい実施形態において、反応器カラムは、加熱区画とガス出口区画とを含む少なくとも4つの連続多機能領域、より好ましくは少なくとも5つ、より一層好ましくは少なくとも6つ及びさらにより好ましくは少なくとも7つの多機能領域を含む。
【0078】
本明細書において上記の通り、より多くの連続多機能領域がある利点は、ポリマーを調製するための、例えばポリアミドをジカルボン酸ジアンモニウム塩から調製するための固体出発原料の重縮合は、より多くの連続多機能領域内の及びこれらで分けられる反応器カラム内で行われ得、それによって、固体材料の粘着及び凝集のリスクを高めたり、反応器カラム内の移動充填層内の、塩及びポリアミドなどの出発原料又はポリマーを含む固体材料の同伴のリスクを高めたりせずに、カラムを通ってより高い処理量を可能にするということである。
【0079】
本発明による反応器カラムの好ましい実施形態において、静止熱交換器は、縦向きの又は本質的に縦向きの管状熱交換器及び縦向きの又は本質的に縦向きのプレート熱交換器から選択される。このような静止熱交換器を有する反応器カラムは、非常に効率的な熱伝達を可能にし、さらに、固体材料の移動充填層が重力によって反応器カラムを通って移動されることを可能にし、このような移動をできるだけ妨げないようにするので、本発明による方法において有利に使用される。さらなる利点は、このような管状熱交換器とプレート熱交換器は、互いに規則的に離隔され且つ加熱区画及び該当する場合には、1つ又は複数の冷却区画の横断面にわたって均一に分散され得ることである。
【0080】
その特定の実施形態において、管状熱交換器は、0.5~5cmの範囲の内径及び1~8cmの範囲のコア間距離を有する。ここで固体材料は管を通って流れており、固体材料は、管を囲む間隙空間に流れている熱油によって管経由で加熱され得る。
【0081】
別の特定の実施形態において、プレート熱交換器は、
- 0.2~3cm、好ましくは0.3~2.5mm、より好ましくは0.5~2cmの範囲の厚さ、及び/又は
- 1~12cm、好ましくは2~8cmの範囲のコア間距離、及び/又は
- 0.5mm~8cm、好ましくは1~6cm、より好ましくは2~5cmの範囲のプレートの間のプレート間距離を有する。
【0082】
より小さめの厚さを有するプレート熱交換器は、プレートの間のプレート間距離がより小さくなることによってプレート熱交換器と加熱区画において下方に流れる移動充填層との間のより良い熱伝達を可能にしながら、下方に流れる移動充填層のための反応器カラム内の空間がより大きくなるという利点を有する。加熱プレートの十分な近接によって(小さな通路)、粒子が一緒に粘着するリスクがさらに低減されるという利点がある。小さな距離を有する薄いプレートを使用するさらなる利点は、より大きな伝熱面をもたらし、それによって、粒子がまだ過熱及び粘着しないようにしながら反応器体積の単位当たりの熱伝達及び生産性をさらに高める。一方では、壁の温度は、比較的低く反応塊の温度に非常に近いままであり得、それによって過熱及び壁への粘着を防ぐ。
【0083】
好ましくは、加熱区画の少なくとも1つ、好ましくは加熱区画の各々が、互いに規則的に離隔され且つ加熱区画の横断面にわたって均一に分散されるプレート熱交換要素の1つ又は複数のアレイを含む。その利点は、カラム内の滞留時間の変化が低減された加熱区画の横断面にわたる固体材料のより均一な加熱及び移動充填層のより均一な流れである。
【0084】
1つ又は複数のアレイとは本明細書において、加熱区画が1つのアレイ、又は2つのアレイ、又は3つのアレイ、又はより多く含むことができ、そのための各々のアレイが、互いに規則的に離隔され且つ加熱区画の横断面にわたって均一に分散される平面熱交換要素を含むことを意味する。これらの平面熱交換要素は平行であり且つ縦に配置され得るか、又は本質的にそうであり得る。これは、このようなアレイがカラム内に連続順序で配置され且つ反応器カラムを通って移動されている固体材料の移動充填層がこのようなアレイを通って次から次へと移動されることを意味する。それは、同じ加熱区画に属するアレイが、これらの熱交換器アレイの2つの間に配置されるガス出口区画又はガス出口デバイスのアレイによって互いに分離されていないことをさらに意味する。
【0085】
本発明による反応器カラム内のガス出口区画は好適には、ガス出口デバイスの1つ又は複数のアレイを含み、より詳しくは各々のアレイ内のデバイスがガス出口区画にカラムの横断面にわたって実質的に均一に広げられる。各々のガス出口区画は、互いに独立に、1つ又は2つ、又はさらにより多くのこのようなアレイを含むことができる。
【0086】
1つ又は複数のアレイとは本明細書においてガス出口区画が1つのアレイ、又は2つのアレイ、又は最終的に3つ以上を含むことができ、そのための各々のアレイが互いに規則的に離隔され且つガス出口区画の横断面にわたって均一に分散されるガス出口デバイスを含むことを意味する。これは、このようなアレイはカラム内に連続順序で配置され且つ反応器カラムを通って移動されている固体材料の移動充填層がこのようなアレイを通過して次から次へと移動されることを意味する。それはさらに、同じガス出口区画に属するアレイがガス出口デバイスのこれらのアレイの2つの間に配置される加熱区画又は熱交換体のアレイによって互いに分離されていないことを意味する。
【0087】
好ましくは、相当する多機能領域の加熱区画と連続多機能領域の近傍の加熱区画との間に配置されたガス出口区画は、2つの前記アレイを含む。1つではなく、2つのこのようなアレイを有する利点は、連続固相重合方法における反応器カラムの容量が、反応器カラムのサイズを増加させることを必要とせずに大量に増加されるか、又はさらに本質的に2倍にもなり、ガス出口区画経由で反応器カラムから除去されている水蒸気に固体材料が同伴されることを避けつつ、或いは代わりに、固体材料がガス又は蒸気の流れに同伴されてガス出口区画経由で反応器カラムから除去されるリスクを著しく低減することである。さらに、1つの区画で生成した水蒸気が他の区画へと運ばれるリスクはさらに低減され、それによって、塩がまだ比較的低温である上流区画へと水が運ばれるリスクを低減し、そこでそれによって粒状材料が固体状態に維持されるのを妨げ得るリスクは、したがってさらに低減される。
【0088】
ガス出口区画は3つ以上のこのようなアレイを含むことができ、これは、容量を追加的にであるが、1つから2つになることによるよりもはるかに少なく小さい程度で増加させるであろう。
【0089】
ガス出口デバイスは基本的には、任意のデバイスであり得、水蒸気をこれらのデバイス経由で反応器カラムから除去するために適している任意の形態、形状又は構造を有し得る。このようなデバイスは好適には、ガス又は蒸気を受容するための開口と、ガス又は蒸気を出口に導き且つガス又は蒸気を出口経由で反応器カラムから除去するための流路とを含む。
【0090】
ガス出口区画の横断面にわたって実質的に均一に広がったガス出口デバイスのアレイを含むガス出口区画(すなわち、「均一に広がった」は本明細書において、ガス出口デバイスのアレイが互いにほぼ等距離で配置されることを意味する)は、近傍の加熱区画又は2つの近傍の加熱区画からのガス又は蒸気の均一に広がった流れを促進し、反応器カラムの加熱区画内に重縮合方法で生成された蒸気はより均一に除去され、それによって隣接した加熱区画の移動充填層内の流路の形成を防ぎ、固体材料がガス又は蒸気の流れに同伴されてガス出口区画経由で反応器カラムから除去されるリスクを低減するという利点を有する。
【0091】
好ましくは、ガス出口デバイスは、カラムの長さ方向に対して本質的に横方向にガス出口区画内に突き出る細長い要素からなり、細長い要素は各々、細長い要素の長さ方向のガス流路と、細長い要素の長さにわたる溝開口若しくはスリット開口又は細長い要素の長さにわたって分散される一連の開口とを含む。
【0092】
ガス出口デバイスがプレート熱交換器と組み合わせて使用される場合、それらは有利にはプレートの方向に垂直に配置され、移動充填層中の固体材料のプラグ流れを促進する。
【0093】
より好ましくは、細長い要素はV形横断面、U形横断面、半長方形横断面、半円形横断面又は半楕円形横断面、又は任意の他の横断面を有し、ここで開口又は複数開口は固形分の排出区画に向かっての流れの方向に向いている。前記形状を有するこのような細長い要素の利点は、移動充填層として固体材料の流れがそれほど妨げられず、同時に、固体材料がガス又は蒸気の流れと同伴され且つガス出口区画経由で反応器カラムから除去されるリスクが低減されることである。
【0094】
本発明による反応器カラムを様々な方法で造形することができ、例えば、さらなる技術的要求に合わせて又は特定の実施形態と組み合わせて調整することができる。反応器カラム内の空間は反応器壁によって限定され、その中の多機能領域は、反応器壁の区画によって限定される。
【0095】
例えば、反応器カラムは管状形状、又は少なくともその主要部分を有し得る。好適には、多機能領域は円形壁区画によって限定される。一実施形態において、多機能領域は、円形断面を含む壁区画によって限定される。多機能領域を限定するこのような円形壁区画の利点は、反応器がより耐圧性であるということである。さらに、このような円形壁区画は好ましくは、縦向きの又は本質的に縦向きの管状熱交換器を含む加熱区画と組み合わせられる。これは、管状熱交換要素がより容易に互いに規則的に離隔され且つ加熱区画の横断面にわたって均一に分散され得るという利点を有する。
【0096】
別の実施形態において、多機能領域は、2つの本質的に平行な対向した壁区画を含む、好ましくは2対の2つの本質的に平行な対向した壁区画を含む、4つの壁区画によって限定される。この実施形態は好ましくは、本質的に縦向きのプレート熱交換器と組み合わせられる。
【0097】
より好ましくは、多機能領域は、本質的に矩形の横断面を構成する4つの壁区画によって限定される。この実施形態と本質的に縦向きのプレート熱交換器との組合せは、同じ大きさの熱交換要素を使用することができるという利点及び熱交換要素がより容易に互いに規則的に離隔され且つ加熱区画の横断面にわたって均一に分散され得るという利点を有する。
【0098】
さらにより好ましくは、このような矩形横断面を有する反応器カラムは、低圧で、例えば0.9~1.5baraで、又は-0.1BarG及び+0.5BarGの範囲の圧力で行われる重縮合方法と組み合わせられる。利点は、このような矩形横断面を有する反応器カラムを比較的容易に作ることができることである。
【0099】
さらなる実施形態において、反応器カラムは、熱交換器を含むカラム要素とガス出口デバイスを含むカラム要素とを含む、複数のカラム要素から組み立てられる。その利点は、カラムを容易に分解して清浄にすることができることである。
【0100】
また、本発明は、ジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法のための装置(これはまた、本明細書においてプロセス装置とも称され得る)に関する。装置は、本発明による反応器カラム又は本明細書において上記のその任意の特定の又は好ましい実施形態を含む。
【0101】
ここで反応器カラムは好適には縦に、又は本質的に縦に配置される。これは、固体材料が、重力によって移動される間に反応器カラムを通って移動充填層としてより容易に移動しているという利点を有する。
【0102】
縦のとは、カラムが水平に対して直角(90°)に直立して配置されることであると本明細書において理解される。本質的に縦のとは、カラムが直立位置に対してわずかに傾けられるか又は傾斜され得ることであると本明細書において理解される。ここで傾き角又は傾斜角は好適には、水平に対する90°の直角に対して最大で10°、好ましくは最大で5°である。
【0103】
特定の実施形態において、装置は好適には、本発明による反応器カラム又はその任意の特定の又は好ましい実施形態、少なくとも1つの排気ガス回収装置とジアミン供給装置とを含み、ここで多機能領域内のガス出口区画は、排気ガス回収装置に接続されるガス出口を含み、滞留領域内の第1のガス入口区画は、ジアミン供給装置に接続されるガス入口を含む。好ましくは、反応器カラムは、第1のガス入口区画に対して下流の滞留領域内の第2のガス入口区画を含み、ここで第2のガス入口区画は、不活性ガス供給装置に接続されるガス入口を含む。ここで排気ガス回収装置は好適には、冷却器を含む。冷却器は、本明細書において上に説明したようにポリアミドをジカルボン酸ジアンモニウム塩から調製するための連続固相重縮合方法において装置を使用する間に反応器から追い出される水蒸気を液化するために使用することができる。
【0104】
また、本発明は、重縮合方法においての、より詳しくはジアミン及びジカルボン酸に由来するポリアミドを調製するための連続固相重合方法においての本発明による装置の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】本発明によるカラムの実施形態の略図である。図は、充填区画(2)と、排出区画(3)と、4つの多機能領域(4)と、滞留領域(10)とを含むカラム(1)を示す。各々の多機能領域(4)は加熱区画(5)とガス出口区画(6)とを含む。各々の加熱区画(5)は加熱要素(7)を含む。各々のガス出口区画(6)は、ガス出口(9)を有するガス出口デバイス(8)のアレイを含む。滞留領域(10)は、ガス入口(12)とガス入口デバイスのアレイ(13)とを有する第1のガス入口区画(11)と、ガス入口(15)とガス入口デバイスのアレイ(16)とを有する第2のガス入口区画(14)とを含む。本発明によると第1のガス入口区画(11)は、気体ジアミンを滞留領域に導入するために使用される。本発明の好ましい実施形態によると第2のガス入口区画(14)は、より詳しくはジアミン入口区画内のガスの圧力に対してわずかに超過圧力で滞留領域内に不活性ガスを導入するために使用される。
【
図2】本発明によるカラムの別の実施形態の略図である。図は、充填区画(2)と、排出区画(3)と、4つの多機能領域(4)と、滞留領域(10)とを含むカラム(1)を示す。各々の多機能領域(4)は加熱区画(5)とガス出口区画(6)とを含む。各々の加熱区画(5)は加熱要素(7)を含む。5つのガス出口区画(6)のうちの4つは、ガス出口(9)を有するガス出口デバイス(8)の2つのアレイを含む。第5のガス出口区画(6)は、ガス出口(9)を有するガス出口デバイス(8)の1つのアレイを含む。(8a)は、加熱区画7aに関して上流に配置された加熱区画7aに関してガス出口デバイスの近傍アレイを構成する。(8b)は、加熱区画7aに関して下流に配置された加熱区画7aに関してガス出口デバイスの近傍アレイを構成する。滞留領域(10)は、ガス入口(12)とガス入口デバイスのアレイ(13)とを有するガス入口区画(11)と、及び熱交換要素(18)を含む区画(17)とを含む。本発明によるとガス入口区画(11)は、気体ジアミンを滞留領域に導入するために使用される。本発明の好ましい実施形態によると熱交換要素(18)は、接触加熱又は冷却によって滞留領域内の移動充填層の温度をさらに制御又は操作するために使用される。
【
図3】細長い要素(20)からなるガス出口デバイス(19)のアレイの略図であり、ここで、細長い要素は各々、細長い要素の長さ方向のガス流路(21)及び細長い要素の長さにわたるスリット開口(22)を含む。細長い要素が反応器カラムの横断面にわたって均一に広がり、ガス出口区画内に横方向に突き出るか、又は、カラムの長さ方向に対して本質的にそのように細長い要素を反応器カラム内に配置することができる。
【0106】
[本発明による方法の実施例の説明]
本発明による連続固相重合方法は本発明による縦に配置された反応器カラム内で実施された。装置の全高さは約11mであるが(輸送区画、及び充填区画を含む)、この方法のために使用されるカラムは約7mの高さ(排出区画を含む)、及び約0.15m2の略四角形の断面を有する。反応器カラムは、加熱区画と、その後に、ガス出口デバイスの2つのアレイを含むガス出口区画とを各々含む、3つの多機能領域を含む。下向き方向の第3の多機能領域の後に、熱交換器と、滞留区画と、アミン入口デバイスとを含む、アミン投与区画があり、その後に、滞留領域と、別の熱交換区画と、乾燥区画と、最終冷却区画とがある。
【0107】
アミン投与区画の下に配置される滞留領域は、熱交換区画のすぐ上に配置される1つのガス入口区画を有する。滞留領域の機能は、次の(冷却)熱交換器、その後に、乾燥区画及び最終冷却区画に達する前に、カラムの下にいく途中で生成物の分子量を増加させるための十分な時間を可能にすることである。後者の区画はカラムの底部にあり、窒素が生成物を通過して残留水を乾燥除去するのを可能にする付加的なガス入口及び付加的なガス出口を有する。乾燥は、この領域の生成物の約170℃の比較的高温によって促進される。乾燥領域の生成物の温度は、乾燥が十分であり、(水形成)反応が停止されるように、乾燥領域の上に配置される熱交換器で調節され得る。
【0108】
カラムは、反応器カラム内に空気が入らないことを確実にする窒素入口を有するカラムの頂部の充填区画と、カラム内に形成されるガスが生成物と共に出ないことを確実にする窒素入口を取り付けられたカラムの底部の排出区画とをさらに有する。
【0109】
この方法のために、固体粒状材料の形態のブタンジアミン(DAB)とヘキサンジアミン(HMDA)とテレフタル酸(TPA)との混合物から製造される塩を使用した。塩粒体は、0.1~0.5mmの範囲の粒子サイズを有した。重合を開始する前に、カラムは、回分反応器設備内で同じ塩粒体を反応させることによって予め得られた、塩粒子として同じ粒子サイズ及び形状の、すでに反応させられたポリマー粒体で満たされた。
【0110】
本明細書の以下の実施例1~3で得られた全ての粘度数は、ISO 307(2019)に従う方法によって25℃の96%硫酸(0.005g/ml)中で測定された。
【0111】
ppm(又はmg/kg)単位で与えられる実施例1~3のあらゆるレベルの水含量は、質量基準であり、ISO15512(2019)に基づいて、カールフィッシャークーロン滴定を使用して決定された。
【0112】
実施例1~3の全ての末端基の濃度値(mEq/kg、又はmmol_末端基/kg)は、乾燥した重水素硫酸中で1HNMR測定を使用して決定された。1HNMR測定は、C.D.Papaspyrides,A.D.Porfyris,R.Rulkens,E.Grolman,A.J.Kolkman in Journal of Polymer SciencePart A.Polymer Chemistry,vol.54,issue 16,2016,pages 2493-2506によって説明されているように実施された。
【0113】
融解温度は、第1の加熱サイクルにおいて20℃/分の加熱速度で窒素雰囲気中でISO-11357-3.2(2009)によるDSC方法によって測定される。
【0114】
[実施例1]
最初、多機能領域の熱交換器をそれらのそれぞれの目標値に加熱し、2時間後、固形分流量を4kg/hにゆっくりと増加させ、各々の多機能領域.の下に配置された温度センサーによって検知されるとき、最も近い位置に配置された熱交換器の温度程度である温度に多機能領域内の及び中間のポリマー粒体が加熱されるまでそれを維持した。さらに、電熱トレースの形態の加熱要素をオンにしてカラムの外側を加熱し、それによって適したミネラルウール断熱材と共に外側からの冷却を防いだ。本明細書の下記の塩について説明したのと同じ方法でポリマー粒体をカラムの頂部のホッパーに添加した。
【0115】
固体粒状塩材料を20kgバッグから地表面の排出キャビネット内に供給し、輸送ガスとして窒素を使用して空気輸送によって、キャビネットの底部排出ポイントからカラムの頂部の受け容器に窒素ガスで輸送した。受け容器から、塩を反応器カラムの頂部に接続された供給ホッパー内に、バルブを通して重力によって不連続に流入させた。カラムの充填ホッパー内にパージされる窒素は、反応器に入る前に粒状塩材料の周りに不活性雰囲気を確保した。粒状塩材料の供給量は、反応器の底部の予め較正された輸送スクリューの回転速度を徐々に増加させることによって、1時間以内にゼロから8kg/hに徐々に増加された。
【0116】
固体材料は、反応器カラムに入った後、第1の多機能領域を通り、ここで、228℃の温度に設定された第1の熱交換器によって加熱された。第1の熱交換器の後、固形分は第1のガス出口区画を通り、ここで、窒素及び水蒸気はガス出口デバイスの第1のアレイ経由でカラムを出た。さらに下へ移動し、固形分は、第1の多機能領域の同じガス出口区画内のガス出口デバイスの次のアレイを通過した。ここで、下からの水蒸気は、固形分に対して向流に流れ、ガス出口デバイスのこの第2のアレイ経由で反応器を出ることができる。さらに下方に進んで、固形分は、244℃の温度に設定された第2の多機能領域を通過した。第2の熱交換器を通り過ぎるとき、固形分(この段階で塩部分及びポリマー部分)がさらに加熱され、吸熱縮合反応が進み、縮合反応からの水蒸気を粒体層内に放出し、次いでこれが高温及び大気圧近傍の圧力の前記条件下で発生した(過熱)スチームのわずかな超過圧力によってガス出口区画に循環した。第2の熱交換器の後、材料は第2のガス出口区画を通過し、上及び下から来るガスはそれを通って反応器カラムを出た。次に、固形分は第3の多機能領域を通過し、ここで、259℃の温度に設定された第3の熱交換器によって固体粒状材料をさらに加熱し、第3の熱交換器の上及び下に配置されたガス出口区画経由で追加の重縮合で生じた水蒸気を再び取り除いた。実施例1について、粒体は、本質的に変えられずに、すなわち、追加の反応又は組成の著しい変化を伴わずに次の加熱区画及びアミン投与区画を通過するが、理由はポリマーがこの段階ですでに酸末端基を末端としているからである(本明細書で下記の末端基分析によって示されるように、全てのアミン末端基が使い尽くされている)。
【0117】
さらに下方に進んで、固形分は冷却熱交換器経由で約170℃の温度の乾燥区画内へ移動した。窒素ガスをガス入口経由で乾燥区画に入れ、1つはガス入口の上にあり1つはその下にある、2つのガス出口区画経由で取り出して、残留水分を飛ばした。乾燥区画を通った後、固体粒状材料は最終冷却区画を通過し、ここで固形分を60℃未満の温度にさらに冷却した。窒素ガスを排出スクリューのすぐ上の窒素入口に供給してカラムの底部部分に窒素の向流上向き流を生じながらホッパーと排出スクリューとを含む排出区画経由で、固形分を排出した。この位置でのカラムの蒸気出口圧力に対してわずかな超過圧力を維持するためにこの時点での窒素の量を調節した。後者は、カラム内に形成されたガスは生成物から蒸発しないことを確実にした。カラムを新しい材料で完全に満たすのに約3日かかり、安定状態に達するのにさらに2日かかった。52~55ml/gの相対粘度(VN)を有する乾燥ポリマー粒状材料が得られた。カラムは、全ての実施例1~3において本質的に大気圧で運転された。
【0118】
このように、塩からポリマーへの重縮合反応が終了し、酸末端基を末端とするポリマーをもたらし、反応中に形成された水は3つの多機能領域において有効に除去された。乾燥区画は、最終生成物において水のレベルを1000及び1500ppmの間にさらに低減した。
【0119】
実施例1~3において生成物が粗い粉状材料であるという事実、及びプロセスが何日間も進むことができるという事実はまた、講じられた処置によって粘着及び塊化が避けられていること、すなわち、より低温の表面及び低温生成物上への水の凝縮を避けながら、多機能領域において水蒸気が放出及び除去されたことを示す。主な変換が行われる多機能領域において、窒素は用いられなかった。これらの領域において、水蒸気は過熱スチームとして逃散し、カラムのガス出口に接続された排気ガス収集チャネルで集められた。
【0120】
実施例1で得られた比較的低い分子量(VN)は、本明細書において上に説明したように、水蒸気と一緒に生成物から蒸発した揮発性ジアミンの減損のためである。これは、生成物の末端基の濃度を定量し、それによって、260mEq/kg酸末端基の濃度と比較して、40mEq未満/kg残留アミン末端基の濃度(使用されるNMR方法の検出限界未満)を得ることによって検証された。酸対アミンのバランスは、本明細書の以下の実施例2及び実施例3に説明されるプロセスを用いることによってさらに制御された。
【0121】
[実施例2]
実施例1におけるような温度及び流量の同じ条件を用いることによって、アミン投与をオンにし、HMDAとDABとの濃水溶液が、ポリマー層の温度に一致するように調節されたヒーター-エバポレーター及びそのすぐ上に配置された熱交換器経由でガス分配デバイスのアレイに供給され、それによって水溶液を予備加熱及び気化させる。ジアミン含有蒸気混合物をアミン入口デバイス経由で反応器のアミン投与区画内に導入した。ジアミン-水-窒素蒸気混合物をアミン供給ポイントの下に配置された窒素入口からの窒素によって、粒状層に対して向流に、上方に流れるようにさせた。したがって、ジアミンは、ポリマー粒体によって向流接触パターンで有効に吸収された。あらゆる吸収されていないジアミン、窒素及び水蒸気は、アミン投与区画の上に配置されたガス出口区画経由でカラムから外に出された。さらに下方に進んで、固形分は、実施例1において説明されたのと同じ乾燥区画及び冷却区画を通過した。アミン投与速度を正確な値に調節したので、得られた材料の粘度は経時的にわずかに変化し、アミン投与を開始した約30時間後にかなり安定した状態に達した。
【0122】
65~80ml/gの間のVNを有し、90~110mEq/kgの間のアミン末端基の濃度及び110~130mEq/kgの間の酸末端基の濃度を有する粗い且つ易流動性のポリアミドポリマー粉末が得られた。水のレベルは1000~1500ppmの範囲であり、ポリマーの融点(Tm)は346℃であった。
【0123】
方法を操作して、異なった用途のために定めた要件に一致する異なった分子量を有する生成物を得ることができることが重要であるので、本発明は、末端基含有量及び分子量を制御して、商業用途に有用な商業的に適切な範囲に達することができることを実施例2は示す。さらに、代替方法は(高価な)付加的な工程段階において再加熱、アミンの添加及び冷却を必要とするので、本発明による方法は、シングルパス装置で達せられるポリマー規格を得ることを可能にし、したがってコスト及びエネルギーの節約を可能にする。
【0124】
[実施例3]
実施例3を実施するために、固形分流量をさらに、3時間で8kg/hから14kg/hに増加させた。アミン投与量を徐々に増加させ、実施例2で説明したのと同じアミン対固形分比に一致させ、すなわち、これを維持した。加熱区画の温度を徐々に増加させて、予備加熱及び反応のために必要とされる増加した熱負荷に一致させ、すなわち、1つの領域を230℃の最終目標値に増加させ、第2の領域を246℃に及び第3の領域を265℃に増加させた。各々の多機能領域の温度センサーを用いて局所的な粒体温度をモニタし、ヒーター温度を調節してかなり安定な粒体温度を維持した。固形分流量を調節した24時間後、2時間間隔でとられた試料は、安定なVNを示した。
【0125】
実施例3に説明されるプロセスによって得られた生成物は、固体粒状材料の形態の半結晶性半芳香族ポリアミドであった。固体粒状材料中の粒子の形状は、カラム内に供給される塩材料の形状と同じであった。ポリアミド生成物は、DSCによって測定される場合345℃の融解温度(Tm)、70~72ml/gの粘度数(VN)、93~97mEq/kgの間のアミン末端基濃度及び118~222mEq/kgの間の酸末端基濃度、並びに1200~1800ppmの範囲の水のレベルを有した。
【0126】
実施例3は、安定な操作によって、VN及び末端基濃度のレベルを狭い範囲内に安定に維持することができ、多機能領域内の熱交換器の温度を調節することによっていっそう高い生産速度に達することができ、且つアミン投与量を調節することによって末端基濃度レベル及びVNを制御して、塩の流量を一致させることができることを示す。
【国際調査報告】