IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クロメック リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-シンチレーション検出器 図1
  • 特表-シンチレーション検出器 図2
  • 特表-シンチレーション検出器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】シンチレーション検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20230209BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/202
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533596
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 GB2020053182
(87)【国際公開番号】W WO2021116698
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1918337.5
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513066122
【氏名又は名称】クロメック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KROMEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】エドワード マースデン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アトキンズ
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA10
2G188BB04
2G188BB09
2G188CC09
2G188CC15
2G188CC23
2G188DD11
2G188DD42
2G188DD45
(57)【要約】
シンチレータと、光検出器と、シンチレータ及び光検出器を収容する筐体容積を取り囲んで画定する気密筐体と、を備える放射線検出器組立体であって、筐体が、金属層でコーティングされたプラスチック材料の壁を備える、放射線検出器組立体が記載されている。また、放射線検出器組立体の組立方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータと、
光検出器と、
前記シンチレータ及び前記光検出器を収容する筐体容積を取り囲んで画定する気密筐体と、を備える放射線検出器組立体であって、
前記筐体が、金属層でコーティングされたプラスチック材料の壁を備える、放射線検出器組立体。
【請求項2】
前記プラスチック材料の壁が金属層で電気メッキされている、請求項1に記載の放射線検出器組立体。
【請求項3】
前記プラスチック材料の壁が、光硬化性ポリマーから製作される、請求項1又は2に記載の放射線検出器組立体。
【請求項4】
前記プラスチック材料の壁が、光造形印刷によって製作される、に記載の放射線検出器組立体。
【請求項5】
金属コーティングが、前記筐体の外面に施されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項6】
金属コーティングが、薄膜として形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項7】
金属コーティングが、1mm以下の厚さである、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項8】
金属コーティングが、5μm~300μmの厚さである、請求項7に記載の放射線検出器組立体。
【請求項9】
金属コーティングが、同じ又は異なる組成の複数の層を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項10】
金属コーティングが、銅、亜鉛、クロム、銀、金及びこれらの合金、並びにこれらの層の組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項11】
前記筐体は、一緒に組み立てられる本体と蓋とを備え、
前記本体は、主に前記筐体容積を画定する基部と側壁とを備え、
前記本体の上に前記蓋が適用され、所定の位置に封止され得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の放射線検出器組立体。
【請求項12】
シンチレーション材料が、無機結晶性シンチレーション材料である、請求項1~11のいずれか一項に記載の放射線検出器。
【請求項13】
無機シンチレーション材料が、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、LiI(Eu)等のドープされたハロゲン化アルカリ、BGO、CdWO、ZnS(Ag)等の他の低速無機物、塩化ランタン(LaCl(Ce))、臭化ランタン(LaBr(Ce))、CLLB(CsLiLaBr(Ce))、GSO(GdSiO(Ce)、YAP、YAG、LSO、LuAP等のCe3+活性化高速無機物などのうちの1つ以上から選択される、請求項12に記載の放射線検出器。
【請求項14】
シンチレータ、光検出器及び任意の付加的な構成要素を提供するステップと、
筐体容積を取り囲んで画定するように適合される気密筐体をプラスチック材料から製作するステップと、
前記プラスチック材料の壁を金属層でコーティングするステップと、
前記シンチレータ及び前記光検出器、並びに前記任意の付加的な構成要素を前記筐体容積内に位置決めするステップと、
前記筐体容積を気密封止するステップと、を含む、放射線検出器組立体の組立方法。
【請求項15】
前記プラスチック材料の壁を金属層でコーティングするステップが、電気メッキするステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスチック材料の壁を金属層でコーティングするステップが、外壁をコーティングするステップを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
プラスチック筐体が、光造形印刷法によって製作される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記筐体が、封止前に一緒に組み立てられる複数の構成要素から最初に製作される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記筐体が、本体と蓋とを備えるように最初に製造され、
前記本体が、基部と、前記基部から上方に延びる側壁と、を備え、
製作方法が、
前記シンチレータ、前記光検出器及び任意のさらなる構成要素を、前記本体によって画定される前記筐体容積内に位置決めするステップと、
前記蓋を所定の位置に置くステップと、
前記蓋を気密封止するステップと、を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高エネルギー電磁放射線、特にガンマ線を含む電離放射線の検出、又は中性子を含む亜原子粒子放射線の検出のために使用され得るシンチレーション検出器に関する。特に、本発明は、シンチレーション検出器を組み込んだ放射線検出器組立体のための筐体システム及び方法に関する。とりわけ、本発明は、携帯型放射線検出装置において又は携帯型放射線検出装置として使用するために適合させることを目的とした、シンチレーション検出器筐体システムの修正に関する。本発明はさらに、このような密閉シンチレーション検出器組立体を含む携帯型放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電離放射線によって励起されたときにシンチレーションを示し、その結果光子を放出するシンチレータ材料と、これらの光子を検出する光検出器とを組み合わせて使用することで、高エネルギー電離放射線を検出するための効率的な放射線検出器を構築できることは長年にわたって確立されている原理である。光検出器は、シンチレータの応答を示す電気信号を取得可能であり、その結果、シンチレータに入射する入射放射線を検出し、特徴付けることができる。
【0003】
シンチレータと適切な光検出器とを備えるシンチレーション検出器を使用することは、放射線検出及び監視の分野において広く普及しており、コンパクトで携帯可能な、例えば手持ち式の放射線監視計の開発において特に用途を見出し得る。このような計器は、放射性汚染の検出及び定量化/特徴付け、放射性物質及び放射線源の監視、汚染されているおそれのある環境の監視、並びに同様の用途などに使用され得る。したがって、シンチレータ及び検出器、並びに他の適切な検出制御システム及び電子機器を、例えばこのような携帯型システムにおいて、コンパクトかつ効率的な方法で一緒に関連付けることができるシンチレーション検出器を開発することが一般的に望まれている。
【0004】
様々なシンチレータ材料がよく知られている。既知のシンチレータ材料としては、有機シンチレータ及び無機シンチレータが挙げられる。特定の無機シンチレータは、コンパクトな検出器、例えば携帯型検出器における使用に特に適し得る。無機シンチレータの既知のクラスとしては、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、LiI(Eu)等のドープされたハロゲン化アルカリ、BGO、CdWO、ZnS(Ag)等の他の低速無機物、塩化ランタン(LaCl(Ce))、臭化ランタン(LaBr(Ce))、CLLB(CsLiLaBr(Ce))、GSO(GdSiO(Ce))、YAP、YAG、LSO、LuAP等のCe3+活性化高速無機物などが挙げられる。特にこの最後のクラスは、吸湿性が高いものが多い。
【0005】
適切な光検出器、特にコンパクトで例えば携帯動作のための光検出器は、光電子増倍管を含む。適切な光電子増倍管としては、光電子増倍チューブ(PMT)及びフォトダイオードが挙げられる。シリコン光電子増倍管(SiPM)を含む固体光電子増倍管は、コンパクトで例えば携帯可能な検出器への適用に特に適している。
【0006】
効果的な無機シンチレーション材料の多くは吸湿性があり、その中には例えばNaI、LaCl、LaBr及びCLLBを含む吸湿性の高いものがある。これらの材料を長期間使用する場合、湿気による汚染から十分に保護する必要がある。
【0007】
このような無機シンチレータをシリコン光電子増倍管(SiPM)のようなコンパクトな固体光検出器と併せて使用するとき、好都合には、シンチレータと光検出器とを単一の気密封止筐体にともにパッケージしてもよい。さらに好都合には、検出器に関連する信号処理回路及び電源回路も、この組立体内に集積してもよい。
【0008】
大きさ及び重量が重要な用途に使用する場合、特に例えばコンパクトな組立体が望まれる手持ち式検出器又は他の検出器に使用する場合、このような検出器組立体を収納するために使用される筐体は、コンパクトで、軽く、堅牢でなければならない。また、光検出器及び関連する回路に信号接続及び電力接続を供給するための信頼性の高い方法を提供しなければならない。最後に、特に最も吸湿性の高いシンチレーション材料については、必要があれば不活性大気グローブボックスを使用するなどの不活性大気中で、簡単な工具及び技術によって組み立てられるものでなければならない。
【0009】
このような検出器組立体を囲むための従来の方法は、時に缶詰化(canning)と呼ばれ、一般的には機械加工されたアルミニウム部品を用いて達成される。しかし、これは通常、機械加工の限界(例えば内角の半径の制限)により妥協が必要である。強度を得るために必要な壁厚がしばしば理想より大きくなること、これら及び他の考慮事項により、筐体に必要な容積及び重量が理想よりも大きくなり、これは特に低エネルギーで入射するガンマ放射線を著しく減衰させる場合がある。
【0010】
上記の欠点の1つ以上を緩和する、シンチレーション検出器組立体のための筐体システム及び方法を提供することが一般に望まれている。
【0011】
特に、吸湿性のシンチレーション材料を効果的に保護して気密封止する、シンチレーション検出器組立体のための筐体システム及び方法を提供することが望ましい。
【0012】
特に、コンパクトで例えば携帯型及び手持ち式の検出器を製造するのに適した、シンチレーション検出器組立体のための筐体システム及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、
シンチレータと、
光検出器と、
シンチレータ及び光検出器を収容する筐体容積を取り囲んで画定する気密筐体と、を備える放射線検出器組立体であって、
筐体は、金属層でコーティングされ、例えば電気メッキされたプラスチック材料の壁を備える、放射線検出器組立体。
【0014】
シンチレータは材料を含み、この材料は、入射する高エネルギー電磁放射線、特にガンマ線又は中性子を含む亜原子粒子放射線に対してシンチレーション応答を示し、それによって、例えば可視範囲内又は可視範囲に近い光子を放出するように適合される。光検出器は、シンチレータに対して位置決めされて、当該放出された光子の少なくとも一部を受け取り、それに応答して電気信号を生成するという意味で、シンチレータに光学的に結合される。この電気信号を使用して、シンチレータに入射する放射線に関する推論を行ってもよく、それによって、シンチレータに入射する入射放射線を検出し、特徴付けることができる。この限りにおいては、これは一般的に従来のシンチレーション検出器である。
【0015】
少なくともシンチレータと光検出器は、気密筐体によって気密封止される筐体容積内に収容される。この場合も、このような筐体は知られている。
【0016】
しかし、この気密筐体は、プラスチック材料の壁を備える壁構造によって形成され、このプラスチック材料の壁は、金属層でコーティングされ、例えば電気メッキされているという点が明確に特徴的である。したがって、筐体の壁の主要な構造部分は、より薄くてより複雑な形状に容易に形成されるプラスチック材料で形成されて、軽量、高強度、コンパクト性及び設計上の完全な柔軟性を提供し、ほぼ全てのシンチレータ形状に最小の全体サイズで適合する。コーティングされ、例えば電気メッキされた金属層は、効果的な気密シールを完成させ、単独ではこのようなシールに影響を与えないプラスチック材料を使用することができるが、プラスチック材料は構造強度の主要部分を担うので、金属層は薄膜であってもよく、全体的な構造が入射放射線の重量及び減衰を最小限に抑えるようにする。これら両方の理由から、本発明の気密筐体を使用することは、従来の機械加工された金属の缶詰と比較して技術的利点をもたらす可能性がある。
【0017】
特に、筐体の壁の主要な形状を構成するプラスチック材料は、コンパクトな検出器又は組立体、例えば手持ち式又はその他の携帯型検出器組立体において使用することを意図した、シンチレータ結晶のための環境筐体を提供するのに適し得るような、効率的でコンパクトな設計に付加的に役立つ複雑な幾何学形状を生成することができる多数の既知の技術のうちの1つを用いて製作されてもよい。
【0018】
適切なプラスチック製作方法としては、機械加工、射出成形又はブロー成形等の成形、熱成形及び光造形印刷が挙げられ得るが、これらに限定されるものではない。可能な実施形態では、特に複雑な幾何学的形状が望まれる場合、光造形印刷法が好ましい場合があるが、他の状況では他の製造方法も適用可能であり得る。このような製造方法は、機械加工アルミニウム筐体のような従来技術の機械加工された金属筐体に内在しがちな妥協点の一部又は全てを回避し得る。
【0019】
適切なプラスチック材料は、選択される成形方法に応じて当業者に容易に示唆され、一連の熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーを含むだろう。筐体がSLA印刷される好ましい場合には、適切な光硬化性ポリマーが好ましいと考えられる。
【0020】
金属コーティングは、筐体にいくらかの付加的な強度を与えるが、その主な役割は気密環境シールを確実にすることである。これにより、金属の薄膜と組み合わせて、単独ではこのようなシールに影響を与えず、したがって、シンチレータ及び光検出器の環境の缶詰化には通常適さないと考えられる種類及び厚さの筐体の本体に対して、プラスチック材料を使用することができる。複合構造は、複雑な形状への成形性及び軽量化等のプラスチック材料の利点と、効果的に封止することができる金属材料の利点とを相乗的に組み合わせ、同時にいずれかを単独で使用する場合の欠点を緩和する。
【0021】
金属コーティングは、例えば筐体の外面に施される。金属コーティングは、好ましくは、例えば1mm以下の厚さの薄膜として形成されて、入射放射線が筐体を通過して筐体内に収容されるシンチレータに向かうように、入射放射線の減衰を最小限に抑える。
【0022】
金属コーティングの適用には、物理的又は化学的な堆積方法を含む、任意の適切な薄膜堆積方法を考慮し得る。金属コーティングは、好ましい実施形態では、電気メッキされる。
【0023】
金属コーティングは、任意に、同じ又は異なる組成の複数の層を備える。例えば、異なる特性を有する異なる組成の複数の層を施し得る。可能な場合には、プラスチック材料の表面上に良好な接着特性を示すように材料的に選択される、気密筐体のプラスチック材料の外部表面上に、内側金属層を直接配置してもよい。可能な場合には、耐食性及び/又は耐擦傷性等の良好な環境特性を示すように材料的に選択される、複合筐体の最外面を含むように、外側金属層を設けてもよい(例えば内層がそのような特性を示さない場合)。さらなる中間層を設けてもよい。
【0024】
プラスチック上にコーティングするのに適した金属としては、銅、亜鉛、クロム、銀、金及びこれらの合金、並びにこれらの層の組み合わせが挙げられる。
【0025】
好ましいコーティングの厚さは、5μm~300μmである。
【0026】
気密筐体は、筐体容積を取り囲んで画定する。この筐体容積は、シンチレータと光検出器とを収容し、使用時に筐体容積内に気密隔離された環境を提供するように適合されている。これは、特にシンチレータ結晶を保護する目的を有する。とりわけ多くの無機シンチレータ結晶は、構造的に繊細であり、かつ/又は吸湿性がある。筐体は、このような結晶を機械的及び環境的に保護する。
【0027】
筐体の目的は、使用中の組立体完成品に気密封止された内部環境を提供することである。したがって、筐体が完全に組み立てられると、完全に封止されることが必要である。
【0028】
好都合には、気密筐体は多数の構成要素を備えてもよく、この構成要素は、このような完全な封止された全体に一緒に組み立てられ、このように組み立てられたときにこのようなシールをもたらす。このような実施形態の好都合な例では、気密筐体は、一緒に組み立てられる本体と蓋とを備えてもよく、本体は、主に筐体容積を画定する基部と側壁とを備え、それによって、シンチレータと、光検出器と、検出器組立体内に置くことが望ましい場合がある検出器組立体の任意の他の構成要素と、を受け入れるように適合され、次いで、その上に蓋が適用され封止される。適切な封止接着剤、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような硬化性樹脂接着剤を使用してもよい。
【0029】
筐体壁又は筐体の構成要素の壁に開口部を設けて、使用中の筐体内の構成要素に外部接続、例えば電力接続又は通信接続を提供することが望ましい場合があることが理解されよう。筐体の組立完了前にこのような開口部を設けることは、想定されることであり、本発明の範囲内に包含されることが理解されるであろう。このような開口部は、製作プロセスの完了時に封止されて、組立体の気密筐体を完成させることになる。適切な封止接着剤、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような硬化性樹脂接着剤を使用してもよい。
【0030】
最も一般的な本発明の第1の態様によれば、気密筐体を備える放射線検出器組立体が提供され、気密筐体は、少なくともシンチレータと光検出器とを収容する筐体容積を画定し、組み立てられるときに環境的に分離するように封止可能である。シンチレータと光検出器は、任意の適切な設計であってもよく、特に、適切なコンパクト設計の好ましい場合には、組立体がコンパクトで、例えば携帯可能な手持ち式の機器に組み込まれることができるようになっている。
【0031】
適切なシンチレータ材料としては、有機シンチレータ及び無機シンチレータが挙げられ得る。特定の無機シンチレータは、本発明による組立体で使用するのに特に適し得る。無機シンチレータの既知のクラスとしては、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、LiI(Eu)等のドープされたハロゲン化アルカリ、BGO、CdWO、ZnS(Ag)等の他の低速無機物、塩化ランタン(LaCl(Ce))、臭化ランタン(LaBr(Ce))、CLLB(CsLiLaBr(Ce))、GSO(GdSiO(Ce))、YAP、YAG、LSO、LuAP等のCe3+活性化高速無機物などが挙げられる。特にこの最後のクラスは、吸湿性が高いものが多い。
【0032】
適切な光検出器、特にコンパクトで例えば携帯動作のための光検出器は、光電子増倍管を含む。適切な光電子増倍管としては、光電子増倍チューブ及びフォトダイオードが挙げられる。シリコン光電子増倍管(SiPM)を含む固体光電子増倍管は、コンパクトで例えば携帯可能な検出器への適用に特に適している。
【0033】
筐体の目的は、特にシンチレータを環境的及び機械的に保護することである。効果的な結晶性無機シンチレーション材料の多くは、吸湿性があり、かつ/又は機械的に壊れやすい。例としては、NaI、LaCl、LaBr、CLLBが挙げられる。これらの材料を長期間使用する場合、湿気による汚染から十分に保護しなければならないことが知られており、従来は機械アルミニウム容器のような機械加工された金属容器に缶詰にすることによって保護してきた。本発明は、このような材料に特に有利に適用され、したがって、本発明による組立体におけるシンチレータは、このような材料を都合よく含む。
【0034】
シンチレーション材料は、好ましくは結晶性シンチレーション材料を含む。シンチレーション材料は、例えば無機結晶シンチレーション材料である。シンチレーション材料は、例えば単結晶である。
【0035】
筐体は、他の適切な構成要素をさらに収容して、検出器装置内の検出器組立体の機能を促進してもよい。構成要素としては、例えば、電池などの電源と、シンチレータに入射する放射線を示す光検出器からの電子信号を収集すること、収集したデータを処理すること、収集したデータを分析して入射放射線に関する推論を引き出すこと、のうちの1つ以上に対して構成されるデータ処理モジュールと、収集したデータ及び/又は収集したデータの分析結果を外部受信機、例えば外部プロセッサに送信するように構成されるデータ送信モジュールと、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。制御及び処理電子機器は、例えば適切なASICによって実行されてもよく、データ処理モジュールは、それに対応して適切なASICを備えてもよく、筐体は、それに対応して適切なASICを収容してもよい。
【0036】
筐体は、任意に、外部制御システムからデータを受信するように構成される手段と、外部電源から電力を受信する手段と、さらに収容してもよい。
【0037】
より完全には、本発明は、好ましくは、本発明の第1の態様による少なくとも1つの放射線検出器組立体を含む放射線検出器を備え、放射線検出器は、適切な制御及び処理電子機器を付加的に含み、かつ/又は適切な制御及び処理電子機器と遠隔通信するように適合される。
【0038】
放射線検出器は、適切な電源を付加的に含んでもよく、かつ/又は適切な電源と遠隔接続するように適合されてもよい。電源は、電池、例えば充電池であってもよい。
【0039】
放射線検出器は、検出された放射線に関する情報を表示するように適合される適切なディスプレイを含んでもよい。
【0040】
放射線検出器は、検出された放射線に関する情報を遠隔データステーションと互いに通信するように適合される有線又は無線の送信機又はトランシーバを含んでもよい。
【0041】
放射線検出器は、適切な収納体を含んでもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、放射線検出器は携帯可能であり、例えば使用時に手で持つことができるように適合される。例えばこれは収納体を備え、収納体は、放射線検出器の構成要素を携帯可能な方法でコンパクトにまとめるように適合され、例えば使用時に手で持つように適合される。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、放射線検出器組立体の組立方法は、
シンチレータ、光検出器及び任意の付加的な構成要素を提供するステップと、
筐体容積を取り囲んで画定するように適合される気密筐体をプラスチック材料から製作するステップと、
プラスチック材料の壁、例えば使用中の外壁を、金属層でコーティング、例えば電気メッキするステップと、
シンチレータ及び光検出器、並びに任意の付加的な構成要素を筐体容積内に位置決めするステップと、
筐体容積を気密封止するステップと、を含む。
【0044】
したがって、本発明のこのさらなる態様は、本発明の第1の態様による放射線検出器組立体の組立方法であり、好ましい構成は、前述の説明との類推によって理解されるであろう。
【0045】
特に、プラスチック筐体を製作するための任意の適切な方法を考慮し得るが、複雑な幾何学的形状については、光造形印刷法が特に好ましくあり得る。したがって、好ましい実施形態では、本方法は気密筐体を光造形印刷するステップを含む。
【0046】
特に、薄膜金属コーティングを堆積させる任意の適切な方法を想定し得るが、電気メッキが特に好ましい。
【0047】
好都合な場合、気密筐体は、封止前に一緒に組み立てられる複数の構成要素から最初に製作される。
【0048】
例えば、気密筐体は、本体と蓋とを備えるように最初に製作され、本体は、基部と、基部から上方に延びる側壁と、を備え、それによって、筐体容積を画定する。次いで、本製作方法は、シンチレータ、光検出器及び任意のさらなる構成要素を、本体によって画定される筐体容積内に位置決めするステップと、蓋を所定の位置に置くステップと、蓋を気密封止するステップと、を含む。蓋は、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような硬化性樹脂系接着剤を塗布し、これを硬化させることによって、封止接着剤で封止してもよい。
【0049】
気密筐体は、好ましくは不活性環境、例えば窒素環境で組み立てられかつ封止される。気密筐体は、例えば、不活性グローブボックス内で組み立てられかつ封止されてもよい。
【0050】
本方法の他の好ましい構成は、類推によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の原理による筐体の第1の実施形態の斜視図である。
図2】本発明の原理による筐体の第2の実施形態の斜視図である。
図3図1に示すような筐体に組み込まれた光検出器とシンチレータとを含む組立体の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明を、添付図面の図1~3を参照して、単に例として説明する。
【0053】
図1及び図2はそれぞれ、円筒缶及び立方缶を示す。これらは、シンチレータ材料、特に壊れやすい及び/又は吸湿性のシンチレータ材料を、適切な光検出器、特にSiPMなどのコンパクトな固体光検出器とともに、単一の気密封止された筐体内に収容するのに適しており、任意に、検出器に関連する適切な信号処理回路及び電源回路を付加的に有する。
【0054】
一実施形態では、CLLBシンチレータ結晶は、SiPM光検出器と共に使用される。
【0055】
例示的な実施形態の各々において、筐体は、最初に、缶本体(13)と缶蓋(11)とを備える2つの部品で製作される。本体と蓋は、薄い壁のプラスチック筐体を備え、この筐体は、薄い金属層でコーティングされ、例えば薄い金属層で電気メッキされて、軽量、高強度、コンパクト性及び設計上の完全な柔軟性を提供し、ほぼすべてのシンチレータ形状に最小の全体サイズで適合する。
【0056】
薄い金属層のコーティングは気密シールを提供し、一方薄い壁のプラスチック材料は筐体の本体及び蓋の主要構造を形成する。これにより、複雑な形状に成形し、軽量化することができる。金属の薄層のみを使用することで、全体の重量を減らすだけでなく、入射ガンマ放射線の減衰も最小限に抑えることができる。
【0057】
組み立てを行うために、シンチレータ結晶、SiPM、並びに検出器に関連する他の信号処理回路及び電源回路を、缶本体によって画定される筐体容積内に置き、例えばエポキシのような適切な高完全性接着剤で、蓋を缶に気密に接着させて筐体を閉じる。この2つの部品からなる缶は、可動機械部品又はネジを用いずにエポキシ樹脂を介して封止され、例えば任意に付加的にスナップフィット位置決め接続構造が設けられているので、容易に組み立てることができる。
【0058】
本実施形態では、図1及び図2の挿入図に示すように、蓋は、エポキシ又は同様のエアシール材料を導入することができるように慎重に設計されたチャネルを含み、缶への接着を最適化する。また、蓋は、信号接続及び電力接続のための入口を提供し、これもエポキシで封止され、組立体の完成により内部密閉容積の気密シールを完成させる。
【0059】
両筐体の実施形態のプラスチック構成要素は、SLA印刷されるが、他の製造方法を適用してもよい。壁は、最小限の薄い壁厚を有するように設計され、例えば、想定されるコンパクトで携帯可能な用途のために、0.5mm~5mmの範囲の壁厚を有する。
【0060】
実施形態では、次いで、3Dプリントを強化する技術的なニッケルコーティングが外面に施され、収容されるシンチレータ結晶のための堅牢な気密筐体が作り出される。
【0061】
得られる組立体は、軽量、コンパクト性及び設計上の柔軟性の可能性とともに、優れた熱安定性、強度及び堅牢性を示す場合がある。これは、従来技術における機械加工されたアルミニウム缶を使用する際の多くの妥協点を回避する。
【0062】
図1に示すような缶本体内に組み立てられる内部構成要素の例を、図3に分解図で示す。
【0063】
この組立体は、上から、収納蓋(101)と、光検出器PCB及びフレックス(103)と、この実施形態ではCLLBである無機結晶シンチレータ(105)と、PTFE包装層(107)及び使用時にPTFE層の外側に位置する反射箔包装層(109)と、PTFE基層(111)と、ネオプレン支持層(113)と、収納本体(115)と、を含む。
【0064】
適切に組み立てられるとき、シンチレータの外側円筒面は、結果として、まずPTFE層によって覆われ、次いで反射箔層によって覆われる。この複合被覆の複合的な効果は、従来必要とされる厚さの欠点なしに従来の膨張PTFE包装の拡散挙動が高いことと、箔層の反射率が高い一方でこのような箔の反射率の鏡面反射特性に通常付随する欠点を緩和することと、の組み合わせで生み出される。その結果、約200~300μmの層厚を達成可能であり、組立体全体は、携帯型検出器、例えば手持ち式検出器に容易に組み込むことができるコンパクトな構造に特に適合される。
【0065】
可撓性ポリマー材料の層と反射箔の層の他の組み合わせ、及び任意のさらなる層が容易に示唆されるだろう。層は、好ましくは、可撓性ポリマー材料が無機結晶シンチレーション材料の外面により近く配置され、層反射箔が無機結晶シンチレーション材料からより離れて配置され、例えば包装の外面を構成するように並置される。
【0066】
このように、本実施形態の複合フィルムは、薄層の鏡面反射箔と薄層の拡散材料とを使用して、必要な厚さがはるかに少ない包装において、高い拡散挙動と高い反射率とを両立させる。
【0067】
次いで、図3の組立体を、図1及び図2に示すような缶本体内に置くことができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】