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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】医薬組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/245 20060101AFI20230209BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230209BHJP
   C07K 14/03 20060101ALN20230209BHJP
   C12N 15/117 20100101ALN20230209BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
A61K39/245
A61K39/39
A61P31/22
A61P37/04
A61P25/04
C07K14/03 ZNA
C12N15/117 Z
C12N15/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535203
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2020135571
(87)【国際公開番号】W WO2021115409
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】201911279536.0
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521271680
【氏名又は名称】遠大賽威信生命科学(南京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRAND THERAVAC LIFE SCIENCE (NANJING) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 30, No. 699-18, Xuanwu Avenue, Xuanwu District Nanjing, Jiangsu 210042 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】葛君
(72)【発明者】
【氏名】李建強
(72)【発明者】
【氏名】孫嬌嬌
(72)【発明者】
【氏名】任蘇林
(72)【発明者】
【氏名】周童
(72)【発明者】
【氏名】王世偉
(72)【発明者】
【氏名】王曉東
(72)【発明者】
【氏名】黄精俸
(72)【発明者】
【氏名】陳悦
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA79
4C085BB11
4C085BB23
4C085CC21
4C085EE06
4C085FF14
4C085FF18
4H045AA11
4H045CA03
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
医薬組成物であって、i)ヘルペスgEタンパク質、前記タンパク質の活性フラグメント、前記タンパク質の変異体、又はそれらの少なくとも2つの混合物と、ii)サポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとを含み、又はサポニンを含むアジュバントとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとからなる免疫刺激性組成物とを含む。水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における前記医薬組成物の用途を提供する。医薬組成物は、予期しなかった技術的効果を得、より強い免疫応答を媒介することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ヘルペスgEタンパク質、前記タンパク質の活性フラグメント、前記タンパク質の変異体、又はそれらの少なくとも2つの混合物と、
ii)サポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとを含み、又はサポニンを含むアジュバントとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとからなり、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド配列は2つ又は2つ以上のコピーの5’-TTCGTT-3’モチーフ又は5’-TCGTCGTCG-3’モチーフを有する免疫刺激性組成物とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドの配列は、CpG T1:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)、CpG T2:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT CGT T(配列番号3)、CpG T3:TCG TCG TCG TCG TCG TCG TCG(配列番号4)から選ばれるいずれか1つであり、
好ましくは、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドの配列はCpG T1:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記サポニンはキラヤサポニン、ギンセノシド、プラチコジン、アストラガロシド、ノトギンセノシド、グリチルリチン、ジュリブロシド、オフィオポゴニン、サイコシド又はチクセツサポニンから選ばれる1つ又は複数である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記キラヤサポニンはQS-7、QS-17、QS-18又はQS-21であり、好ましくは、前記サポニンはQS-21であり、前記ギンセノシドはギンセノシドRg1、ギンセノシドRg3、ギンセノシドRb1又はギンセノシドReであり、前記プラチコジンはプラチコジンD、プラチコジンD2又はその両方の混合物であり、前記アストラガロシドはアストラガロシドA、アストラガロシドI、アストラガロシドII又はそれらの2つ若しくは2つ以上のサポニンモノマーの混合物であり、前記ノトギンセノシドはノトギンセノシドR1であり、前記オフィオポゴニンはオフィオポゴニンDであり、前記サイコシドはサイコシドa、サイコシドd又はその両方の混合物であり、前記ジュリブロシドはゴウカンヒの総サポニンであり、前記グリチルリチンはカンゾウの総サポニンであり、前記チクセツサポニンはチクセツニンジンの総サポニンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
サポニンを含む前記アジュバントはIscomアジュバントである、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはホスホロチオエート結合を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはチオオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはペルチオオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
CpGオリゴデオキシヌクレオチドとサポニンの重量比は1~40:0.1~2であり、好ましくは、2~40:0.1~2である、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
CpGオリゴデオキシヌクレオチドとサポニンの重量比は2:1である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、iii)薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ヘルペスgEタンパク質は配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、又はそれからなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ヘルペスgEタンパク質の活性フラグメントは配列番号1における1位~X位の連続のアミノ酸を含み、又はそれからなり、Xは507~518との間の整数である、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記成分i)とii)の重量比は1:1.1~42であり、好ましくは、1:2.1~42である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記成分i)とii)の重量比は1:3である、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、帯状疱疹ワクチン又は水痘ワクチン。
【請求項17】
水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物の用途。
【請求項18】
前記水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患は水痘、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛から選ばれる、請求項17に記載の用途。
【請求項19】
対象において水痘・帯状疱疹ウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫応答を産生させるための薬物の製造における請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物の用途。
【請求項20】
前記薬物は帯状疱疹ワクチン又は水痘ワクチンである、請求項19に記載の用途。
【請求項21】
それを必要とする被験者に有効量の請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患を予防及び/又は治療する方法。
【請求項22】
前記水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患は水痘、帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛から選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする被験者に有効量の請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象において水痘・帯状疱疹ウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫応答を産生させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品分野に属する。具体的には、本発明は、ヘルペスgEタンパク質と、免疫刺激性組成物とを含む医薬組成物に関する。前記免疫刺激性組成物はサポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとを含み、又は前記免疫刺激性組成物は、サポニンを含むアジュバントとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとからなり、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド配列は2つ又は2つ以上のコピーの5’-TTCGTT-3’モチーフ又は5’-TCGTCGTCG-3’モチーフを有する。本発明は、さらに、帯状疱疹、水痘又は帯状疱疹後神経痛を予防するための前記医薬組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、VZV)が引き起こすウイルス性皮膚疾患である。VZVの一次感染時は、呼吸器粘膜上皮を介して局所リンパ節に入って複製し、その後、ウイルスに感染したリンパ球がリンパ循環を介して血液循環に入り末梢血単核白血球に感染し、ウイルスが血流に流されて皮膚に到達し、臨床では水痘として発症する。水痘が完治した後、ウイルスが脳神経節に潜伏して複製し、末梢神経に沿って皮膚に到達し、臨床では帯状疱疹として発症する。帯状疱疹の主な合併症は帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia、PHN)で、50歳以上の成人では約20%にPHNが発症し、しかも年齢の増加につれて、PHNが発生する可能性が高くなり、痛みが数か月から数年間続く。
【0003】
帯状疱疹ワクチンの接種は帯状疱疹を予防し、PHNなどの合併症を軽減する効果的な手段である。現在販売されている帯状疱疹ワクチンは、主にメルクのゾスタバックス(Zostavax)、グラクソ・スミスクラインのシングリックス(Shingrix)である。その中で、ゾスタバックスは弱毒生ワクチンで2006年より発売され、シングリックスは組換え帯状疱疹ワクチンで2017年10月より発売された。
【0004】
本発明者は従来の技術について踏み入った研究を行ったところ、アジュバントが帯状疱疹ワクチンの治療効果に重要な役割を果たすことを見出した。アジュバントとしてのオリゴデオキシヌクレオチド(CpG)は近年発見された新規な免疫刺激薬であり、その化学的本質がシトシングアニンジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチドで、天然のCpGパターン認識受容体と似ている免疫応答を有し、細胞膜におけるToll様受容体と結合して、TLR9シグナル伝達経路を介して哺乳類において効果的に免疫応答を誘発することができる。CpGが引き起こす免疫応答はTh1型を主とし、Th2型免疫応答のTh1への変換を誘導して、細胞性免疫を生じさせることができる。T細胞、B細胞、NK細胞などの免疫活性細胞を活性化することにより、種々のサイトカインを産生させて、身体の特異的・非特異的免疫効果を強化させ、自然免疫と獲得免疫をつなげる重要な一環である。
【0005】
サポニンは、トリテルペン又はスピロステラン系化合物をアグリコンとするグリコシドで、植物由来のアジュバントに属する。現在よく使用されるサポニンアジュバントとしては、キラヤから抽出されるサポニンであるQSシリーズがあり、当該シリーズで最もよく用使用されるのはQS-21アジュバントであるが、細胞の溶血を誘発する可能性があり、全身的・局所的な毒性副作用がある。Alvingら(ALVING CR,MATYAS G,BECK Z,et al.Revue Roumaine de Chimie,2016,61(8):631-635.)の研究により、ALFリポソームがアジュバントとしてMPLAとQS-21と結合してHIVgp140タンパク質に対抗する場合に血清中の抗体価を効果的に高められることが分かった。
【0006】
従来の技術(WO2001051083A3)にはサポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとを含む免疫刺激性組成物が報告され、そのなか、CpGアジュバントは主にCpG1826、CpG7909である。しかし、CpGオリゴデオキシヌクレオチドの構造の多様性により、異なる配列のCpGアジュバントは効果が大きく異なる。
【0007】
したがって、今は免疫効果のより強いアジュバントと薬物が要望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は従来技術の欠点について、多くの研究を行ったところ、免疫効果のより強い免疫刺激性組成物、前記免疫刺激性組成物を含む医薬組成物を発見した。本発明に係る医薬組成物は二重アジュバントを含み、且つその中のサポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドが効率的な相乗効果を表すため、より強い免疫応答を媒介することができる。本発明は、さらに、水痘、帯状疱疹又は帯状疱疹後神経痛を予防及び/又は治療するための前記医薬組成物の用途を提供する。従来の技術と比べ、本願に係る医薬組成物は優れた免疫予防と治療効果を表している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は下記の技術的解決手段により達成される。
本発明は、一態様において、
i)ヘルペスgEタンパク質、前記タンパク質の活性フラグメント、前記タンパク質の変異体、又はそれらの少なくとも2つの混合物と、
ii)サポニンとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとを含み、又はサポニンを含むアジュバントとCpGオリゴデオキシヌクレオチドとからなり、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチド配列は2つ又は2つ以上のコピーの5’-TTCGTT-3’モチーフ又は5’-TCGTCGTCG-3’モチーフを有する免疫刺激性組成物とを含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明に係る医薬組成物において、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドの配列は、CpG T1:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)、CpG T2:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT CGT T(配列番号3)、CpG T3:TCG TCG TCG TCG TCG TCG TCG(配列番号4)から選ばれるいずれか1つであり、
好ましくは、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドの配列はCpG T1:TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)である。
【0011】
本発明に係る医薬組成物において、前記サポニンはキラヤサポニン、ギンセノシド、プラチコジン、アストラガロシド、ノトギンセノシド、グリチルリチン、ジュリブロシド、オフィオポゴニン、サイコシド又はチクセツサポニンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは、前記サポニンはキラヤサポニン、ギンセノシド、プラチコジン又はアストラガロシドAであり、より好ましくは、前記キラヤサポニンはQS-7、QS-17、QS-18又はQS-21であり、さらに好ましくは、前記キラヤサポニンはQS-21であり、前記ギンセノシドはギンセノシドRg1、ギンセノシドRg3、ギンセノシドRb1又はギンセノシドReであってもよく、前記プラチコジンはプラチコジンD、プラチコジンD2又はその両方の混合物であってもよく、前記アストラガロシドはアストラガロシドA(アストラガロシドIV)、アストラガロシドI、アストラガロシドIIなどのモノマー又はそれらの2つの若しくは2つ以上のサポニンモノマーの混合物であってもよく、前記ノトギンセノシドはノトギンセノシドR1であってもよく、前記オフィオポゴニンはオフィオポゴニンDなどであってもよく、前記サイコシドはサイコシドa、サイコシドd又はその両方の混合物であってもよく、前記ジュリブロシドはゴウカンヒの総サポニンなどであってもよく、前記グリチルリチンはカンゾウの総サポニンであってもよく、前記チクセツサポニンはチクセツニンジンの総サポニンであってもよい。
【0012】
本発明に係る医薬組成物において、サポニンを含む前記アジュバントは免疫刺激性複合体アジュバント(Iscomアジュバント)である。
【0013】
本発明に係る医薬組成物において、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはホスホロチオエート結合を含み、好ましくは、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはチオオリゴデオキシヌクレオチドであり、より好ましくは、ペルチオオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0014】
本発明に係る医薬組成物において、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドと前記サポニンの重量比は1~40:0.1~2であり、好ましくは、2~40:0.1~2である。
【0015】
本発明に係る医薬組成物において、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドと前記サポニンの重量比は2:1である。
【0016】
本発明に係る医薬組成物において、iii)薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0017】
本発明に係る医薬組成物において、前記ヘルペスgEタンパク質は配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、又はそれからなり、好ましくは、前記ヘルペスgEタンパク質の活性フラグメントは配列番号1における1位~X位の連続のアミノ酸を含み、又はそれからなり、Xは507~518との間の整数である。
【0018】
本発明に係る医薬組成物において、前記医薬組成物の成分i)とii)の重量比は1:1.1~42であり、好ましくは、1:2.1~42である。
【0019】
本発明に係る医薬組成物において、前記医薬組成物の成分i)とii)の重量比は1:3である。
【0020】
本発明は、別の態様において、前記医薬組成物を含む帯状疱疹ワクチン又は水痘ワクチンを提供する。
【0021】
本発明は、更なる態様において、水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における前記医薬組成物の用途を提供し、好ましくは、前記水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患は水痘、帯状疱疹又は帯状疱疹後神経痛から選ばれる。
【0022】
本発明は、更なる態様において、対象において水痘・帯状疱疹ウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫応答を産生させるための薬物の製造における前記医薬組成物の用途を提供する。前記薬物は帯状疱疹ワクチン又は水痘ワクチンであり、好ましくは、帯状疱疹ワクチンである。
【0023】
本発明は、更なる態様において、それを必要とする被験者に予防及び/又は治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患を予防及び/又は治療する方法を提供し、好ましくは、前記水痘・帯状疱疹ウイルス感染及び/又は水痘・帯状疱疹ウイルス媒介性疾患は水痘、帯状疱疹又は帯状疱疹後神経痛から選ばれる。
【0024】
本発明は、更なる態様において、それを必要とする被験者に有効量の医薬組成物を投与することを含む、対象において水痘・帯状疱疹ウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫応答を産生させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る免疫刺激性組成物は予期しなかった技術的効果を得、より強い免疫応答を媒介することができる。CpG T1、CpG T2、CpG T3単独使用の免疫刺激効果はCpG1018、CpG7909、CpG1826などより弱いが、QS-21と併用すると、前記免疫刺激性組成物は予期しなかった相乗効果を表し、免疫効果が明らかに増強する。
【0026】
CpG T1、CpG T2、CpG T3に対する初歩的な実験検証により、帯状疱疹抗原において同等な使用効果が確認された。CpG T1、CpG T2が同じモチーフの5’-TTCGTT-3’を含有し、CpG T3の方は他の抗原(例えば、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原など)を用いる実験において、CpG T1、CpG T2と同等な免疫効果が確認された。
【0027】
従来の技術と比べ、本発明に係る免疫刺激剤を含む帯状疱疹ワクチンは優れた免疫刺激効果を有し、細胞性免疫実験で当該ワクチンは強いヘルペスgEタンパク質特異的IFN-γレベルを誘導産生できることが証明され、タンパク質による免疫効果が明らかに単独のアジュバントより優れている。体液性免疫実験からも当該ワクチンは高いヘルペスgEタンパク質特異的IgG/IgG1/IgG2a抗体レベルを産生できることが証明され、しかも効果が単独のアジュバントより優れ、他のCPGアジュバントとQS21の組み合わせより明らかに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、各図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1】異なるCPGオリゴデオキシヌクレオチドのヘルペスgE抗原特異的IFN-γの分泌レベルに対する影響を示す。
図2】異なる免疫刺激性組成物の用量のヘルペスgE抗原特異的IFN-γの分泌レベルに対する影響を示す。
図3】本発明に係る帯状疱疹ワクチンのヘルペスgE抗原特異的IFN-γの分泌レベルに対する影響を示す。
図4】本発明に係る帯状疱疹ワクチンのマウス血清中の抗原特異的IgG抗体とそのサブタイプレベルに対する影響を示す。 図中、パネルAは各群のマウスの血清IgGレベルである。パネルBは各群のマウスの血清IgG1レベルである。パネルCは各群のマウスの血清IgG2aレベルである。パネルDは各群のマウスの血清IgG2aとIgG1の比の値である。
図5】異なるサポニンのヘルペスgE抗原特異的IFN-γの分泌レベルに対する影響を示す。
【0029】
「定義」
特に定義がない限りは、本明細書で使用する全ての技術用語は当業者が理解しているのと同じ意味である。本分野の定義と用語に関して、当業者はCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照することができる。アミノ酸残基の略号は本分野で通常の20のL-アミノ酸の1つを指す標準的な3文字及び/又は1文字コードである。
【0030】
本発明において広い範囲で数値範囲とパラメータの近似値を示しているが、具体例で数値はなるべく正確に記載する。しかし、いずれの数値もその測定に標準偏差があるため、程度の差こそあれ必ず誤差がある。また、本明細書において開示される範囲はいずれも、その中に含まれる任意の又は全ての部分範囲をカバーしていると理解される。例えば、「2~40」と記載される範囲は最小値2と最大値40の間(端点を含む)の任意の又は全ての部分範囲であって、つまり、全ての、最小値2又はそれより大きい数値から始まる部分範囲(例えば、2~6.1)、最大値40又はそれより小さい数値で終わる部分範囲(例えば、5.5~40)を含むと見なされる。また、参照文献が「本明細書に組み込まれる」とは、全体として組み込まれると理解される。
【0031】
なお、本明細書で使用する単数形は、1つの指示対象との明確な限定がない限りは、指示対象の複数形を含む。用語「又は」は、文脈において明示がない限り、用語「及び/又は」と入れ替えて使用される。
【0032】
本明細書で用語「医薬組成物」、「組み合わせ薬物」と「薬物組み合わせ」は、組み合わせて特定の目的を達成する少なくとも1つの薬物と任意選択で薬学的に許容される賦形剤又は添加物との組み合わせを表すように入れ替えて使用される。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、共に機能して本発明の目的を達成できるものであれば、時間的及び/又は空間的に分離した組み合わせを含む。例えば、前記医薬組成物に含まれる成分(例えば、gEタンパク質、QS-21、CpGオリゴデオキシヌクレオチド)は全体として対象に投与されてもよいし、又は別々に対象に投与されてもよい。前記医薬組成物に含まれる成分が別々に対象に投与される場合に、前記成分は同時に又は順次対象に投与されることができる。
【0033】
本明細書で使用する用語「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」又は「CpG-ODN」とは、1つ又はそれ以上の「CpG」単位を含む、短い一本鎖合成DNA分子を指し、ここでCはシトシンを、Gはグアニンを、pはホスホジエステル結合を表す。特に、前記CpGオリゴデオキシヌクレオチドはメチル化されていない。一部の実施形態において、前記CpG-ODNはホスホロチオエート結合又はホスホロチオエート骨格を含む。つまり、一部の実施形態において、前記CpG-ODNはホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(即ちチオオリゴデオキシヌクレオチド)である。好ましくは、前記CpG-ODNにおいてヌクレオチド同士の結合は全てホスホロチオエート結合であり、つまり前記CpG-ODNはペルチオオリゴデオキシヌクレオチドである。他の一部の実施形態において、前記CpG-ODNは2つ又は2つ以上のコピーの5’-TTCGTT-3’モチーフ又は5’-TCGTCGTCG-3’モチーフを含む。特に、前記CpG-ODNは、TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)、TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT CGT T(配列番号3)、TCG TCG TCG TCG TCG TCG TCG(配列番号4)から選ばれる配列を有し、好ましくは、TCG TTC GTT CGT TCG TTC GTT(配列番号2)である。
【0034】
本明細書で使用する「ギンセノシド、プラチコジン、アストラガロシド、ノトギンセノシド、グリチルリチン、ジュリブロシド、オフィオポゴニン、サイコシド又はチクセツサポニン」とは対応の植物に存在する活性成分を指し、例えば、ギンセノシドは主にジンセン属生薬に存在するステロール化合物であり、ジンセンにおける活性成分である。一部の実施形態において、前記ギンセノシドは、ギンセノシドRg1、ギンセノシドRg3、ギンセノシドRb1、ギンセノシドReなどのモノマー又はそれらの2つ若しくは2つ以上のサポニンモノマーの混合物であることが好ましく、プラチコジンはプラチコジンD、プラチコジンD2又はその両方の混合物であることが好ましく、アストラガロシドはアストラガロシドA(アストラガロシドIV)、アストラガロシドI、アストラガロシドIIなどのモノマー又はそれらの2つ若しくは2つ以上のサポニンモノマーの混合物であることが好ましく、ノトギンセノシドはノトギンセノシドR1などであることが好ましく、オフィオポゴニンはオフィオポゴニンDなどであることが好ましく、サイコシドはサイコシドa、サイコシドd又はその両方の混合物であることが好ましく、ジュリブロシドはゴウカンヒの総サポニンなどであることが好ましく、グリチルリチンはカンゾウの総サポニンなどであることが好ましく、チクセツサポニンはチクセツニンジンの総サポニンなどであることが好ましい。
【0035】
本明細書で使用される「Iscomアジュバント」は免疫刺激性複合体アジュバントであり、具体的には、抗原を含まないIscomマトリックス(ISCOM MATRIX)で、リン脂質、サポニン、コレステロールからなるケージ様構造のアジュバントである。
【0036】
本明細書で使用する「治療及び/又は予防有効量」又は「有効量」とは、投与対象にメリットを表すのに十分な用量を指す。投与に係る実際の用量、投与速度と持続時間は治療対象自身の状況と疾患の程度により決定される。治療処方(例えば、用量の決定など)は最終的には一般開業医又は他の医師が責任を持って決定を下し、一般に考慮するのは治療の対象疾患、患者個体の状況、送達部位、投与方法、医師にとって既知の他の要因である。
【0037】
本明細書で使用する用語「哺乳類」とはヒトを指し、他の動物、例えば、野生動物(例えば、アオサギ、コウノトリ、ツルなど)、家畜(例えば、アヒル、ガチョウなど)又は実験動物(例えば、オランウータン、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、マーモット、ジリスなど)であってもよい。
【0038】
他の一部の実施形態において、本発明に係る組成物は薬学的に許容される担体又は添加物など他の添加物を含んでもよく、特に、薬物製剤として存在する場合はそうである。
【0039】
医薬担体として特に好ましいのは水、水系緩衝液であり、PBS(リン酸塩緩衝液)などの等張塩溶液、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール、又はポリアルキレングリコール(例えばポリプロピレングリコール)、トリグリセリドなどが好ましい。使用される医薬担体のタイプは、特に、本発明に係る組成物が経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内又は静脈内投与用に製剤化されるかどうかにより決定される。本発明に係る組成物は、湿潤剤、乳化剤又は液体緩衝物質を添加物として含んでもよい。
【0040】
本発明に係る医薬組成物、ワクチン又は薬物製剤は、任意の適切な経路投与により、例えば、経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内又は静脈内にて投与されることができる。
【0041】
以下、各図を参照して具体的な実施形態で本発明をさらに説明するが、これは本発明への限定ではない。当業者は本発明の趣旨に基づいて、様々な修正又は改善を行うことができ、本発明の趣旨から逸脱していなければ、本発明の範囲に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、特定の実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例が本発明を説明するものに過ぎず、何らかの形で本発明の範囲を限定するものではないことは、当業者にとって理解できるであろう。
【0043】
下記の実施例における実験方法は、特段の説明がない限り、いずれも従来の方法である。下記の実施例で使用する原料、試薬材料などは、特段の説明がない限り、いずれも市販品である。
【0044】
実施例1:組換え帯状疱疹ワクチン組成物の調製方法
1.1 ヘルペスgEタンパク質の調製:アミノ酸配列は配列番号1に示すとおりである。
【0045】
文献「『Journal of Virological Methods』2011,vol175,No.1,pp53-59」におけるThomsson E,Persson L,et al.による報告を参照し、ステップの詳細は次のとおりである。
目的タンパク質配列に基づいてその核酸配列を、そのコドンが哺乳類発現系に適合するように最適化し、目的遺伝子を合成した。合成した目的遺伝子を制限酵素消化とライゲーションによりpcDNA3.1(+)プラスミドに接続させて、Top10コンピテントになるよう形質転換し、陽性シングルクローンをピックアップして、陽性シングルクローンに対し配列決定で検証を行った。シングルクローン菌体を大量に増幅し、内毒素のないプラスミド抽出キットを用いて細胞トランスフェクションに適合するプラスミドを大量に抽出した。一過性トランスフェクションによりプラスミドでCHO浮遊細胞をトランスフェクションし、CHO細胞の活力が70%未満となり又は発酵時間が7日を超えると、4℃下5000rpmで30分間遠心分離して発酵ブロスの上清を収集した。発酵ブロスを4℃下クロマトグラフィーキャビネットにおいて50mM Tris-HCl、500mM NaCl、20mMイミダゾールを含む溶液に透析し、透析比は1:100で、4時間ごとに透析し、合計3回透析した。収集したサンプルをニッケルカラムによって精製し、収集した目的タンパク質のピークサンプルに対しSDS-PAGE検出を行い、比較的純粋な精製液を合わせ、20mMリン酸塩、150mM NaClを含む溶液で4℃下クロマトグラフィーキャビネットにおいて24時間透析し、透析比は1:100で、8時間ごとに液を交換した。サンプルを0.22μm滅菌フィルターメンブレンで濾過し、4℃の冷蔵庫に保管しておいた。
【0046】
1.2 CPGオリゴデオキシヌクレオチド原料の調製:
オリゴデオキシヌクレオチドは合成的に調製されたオリゴデオキシヌクレオチド配列フラグメントで、1つ又は複数のCpGモチーフを含み、本実施例で使用するCPG配列は表1を参照する。
【0047】
【表1】
【0048】
調製方法の詳細は次のとおりである。従来の固相ホスホロアミダイトトリエステル法という化学合成法を用いて調製する。3’末端から開始し、1)脱保護基であって、次のステップの縮合反応への使用に備えるために、最初にトリクロロ酢酸でCpGと結合したヌクレオチドの保護基DMT(ジメトキシトリチル基)を除去して、遊離5’ヒドロキシ基を得た。2)活性化であって、ホスホロアミダイトで保護したヌクレオチドモノマーとテトラゾリウム活性化因子とを混合し合成カラムに入れて、ホスホロアミダイトテトラゾール活性中間体を生成し、当該中間体がCpGにおける脱保護されたヌクレオチドと縮合反応する。3)接続であって、ホスホロアミダイトテトラゾール活性中間体がCpGにおける脱保護されたヌクレオチドと遭遇すると、その5’ヒドロキシ基と求核反応を行い、縮合してテトラゾールを除去し、この時にオリゴヌクレオチド鎖が前方に1塩基延長した。4)酸化であって、縮合反応時はヌクレオチドモノマーが亜リン酸エステル結合を介してCpGと結合したオリゴヌクレオチドと接続するが、亜リン酸エステル結合が安定せず、酸又は塩基によって加水分解されやすいので、この場合にチオ試薬を使用してホスホロアミダイトを酸化して硫黄-リン二重結合リン酸トリエステルを得て、安定的なオリゴヌクレオチドを得た。5)ブロッキングであって、縮合反応後はCpGと結合した未反応の5’ヒドロキシ基が次の循環反応において伸長されることを防ぐために、一般にアセチル化によって当該末端ヒドロキシ基をブロッキングする。この5つのステップを経て、1つのデオキシヌクレオチドがCpGのヌクレオチドに接続される。上記の脱保護基、活性化、接続、酸化、ブロッキングのプロセスを繰り返すと粗DNAフラグメントを得ることができる。最後にそれに切断、脱保護基、精製、定量などの合成後処理を行って完了した。
【0049】
実施例2:CPGオリゴデオキシヌクレオチドのスクリーニング実験
2.1 実験動物:
C57BL/6(N)マウス、雌、5週齢、42匹、上海斯莱克実験動物有限責任公司より購入。
【0050】
2.2 試薬材料:
PBS溶液(Hyclone社より購入)を使用して実施例1で得たヘルペスgEストック溶液をそれぞれ50μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用して実施例1で得たCpGをそれぞれ100μg/mLに希釈した。
【0051】
2.3 実験群設定:
表2を参照し、各マウスへの1回の注射量は100μL/匹であり、コントロール群にPBS溶液を100μL/匹注射した。
【0052】
【表2】
【0053】
2.4 動物の免疫化:
全ての群は2週間ごとに1回筋肉内注射を行い、接種部位は右後腿で、2回の連続投与として、それぞれ0週目、2週目に注射投与し、4週目に全てのマウスを殺した。
【0054】
2.5 検出ステップ:
免疫後7日目にマウスから脾臓を摘出し、従来の方法で次のとおりに脾臓リンパ球を用意した。無菌操作による脾臓の摘出であって、滅菌鉗子とはさみで脾臓を取り出して、70μmセルストレーナーに入れ、2mLの予冷後の2%FBS(GIBCO社より購入)-PBSを含むプレートに置いた。乳棒で脾臓を研磨し、脾臓細胞がメッシュからプレートに入って、細胞懸濁液を得、パスツールピペットで懸濁液を40μmセルストレーナーで濾過した(BD社より購入)50mL滅菌遠心管に入れた。500×gで、4℃下5分間遠心分離した。上清を捨て、2mLの1×赤血球破壊剤(BD社より購入)を加えて細胞を再懸濁し、4℃下で暗所に5分間静置して、赤血球を破砕させた。10mLの2%FBS-PBSを加えて赤血球破壊反応を停止させた。500×gで、4℃下5分間遠心分離した。上清を捨て、5mLの2%FBS-PBSを加えて細胞を再懸濁させておいた。
【0055】
刺激剤としてgE特異的ペプチドプールを使用して脾細胞を刺激した。キットの取扱説明書に従って、ELISPOTキット(BD社)を使用してgE抗原特異的IFN-γの分泌レベルを検出した。ImmunoSPOT Series 3エリスポットアナライザーを用いてELISPOTキットで測定したスポット数を読み取った(操作ステップの詳細は中国特許CN104043120Bの実施例7を参照する)。その中、gE特異的ペプチドプールの配列は配列番号7~21を参照する。
【0056】
【表3】
【0057】
2.6 評価指標:
コントロールウェルのスポット数が5SFC以下で、サンプルウェルのスポット数が10SFC以上である場合に、陽性とする。コントロールウェルのスポット数が5SFCを超えていて10SFC以下であり、サンプルウェルのスポット数/コントロールウェルのスポット数が2以上である場合に、陽性とする。コントロールウェルのスポット数が10SFCを超えており、サンプルウェルのスポット数/コントロールウェルのスポット数が3以上である場合に、陽性とする。
【0058】
2.7 実験結果:
ELISPOTスポット結果は図1を参照し、結果に示すように、CPGアジュバントの異なるワクチン組成物は免疫効果が似ており、CpG7909は効果がCpG T1~T3よりやや高く最良で、CpG1018はCpG T1~T3と免疫効果が同等であった。本発明に係る3つの配列において、CpG T1は効果がCpGT2、CpG T3より高く最良であった。したがって、後の実験では主にCpG T1、CpG7909で比較した。
【0059】
実施例3:用量の異なる免疫刺激性組成物の組換え帯状疱疹ワクチン組成物の有効性に対する影響
3.1 実験動物とモデル確立:
C57BL/6(N)マウス、雌、5週齢、72匹、上海斯莱克実験動物有限責任公司より購入。
【0060】
3.2 試薬材料:
1)ヘルペスgEタンパク質、CpG T1、CpG 7909はいずれも実施例1より調製した。
2)QS-21(CAS番号A010-023、BRENNTAG社より購入)。
3)次のステップへの使用に備えるために、PBS溶液(Hyclone社より購入)を使用してヘルペスgEストック溶液を50μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用してQS-21をそれぞれ5μg/mL、50μg/mL、100μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用してCpG T1を溶解しそれぞれ50μg/mL、100μg/mL、2mg/mLに希釈し、PBS溶液を使用してCPG7909を溶解し100μg/mLに希釈した。
【0061】
3.3 実験群設定:
表4を参照し、1回の注射量は100μL/匹であった。コントロール群にPBS溶液を100μL/匹注射した。
【0062】
3.4 実験ステップ:実施例2.5と同じであった。
【0063】
3.5 実験結果:
ELISPOTスポット結果は図2を参照し、結果に示すように、CpG T1とQS21の用量変化はワクチン組成物の治療効果に明らかな影響があり、ヘルペスgEタンパク質と免疫刺激性組成物(CpG T1+QS-21)の比が1:2.1より高いワクチン組成物が誘導産生させたヘルペスgEタンパク質特異的IFN-γのレベルはCPG7909群より明らかに高く、例えば、表4の用量5~用量9の免疫刺激性組成物であった。しかし種間差異により、アジュバント用量がさらに増えると誘導効果には明らかな増加が認められず、その理由としてマウスにおいてはアジュバントの免疫強度が正しく反映されないことが想定される。
【0064】
表4における用量1、2、4がコントロールのCPG7909群の免疫刺激効果と同等であるものの、アジュバントの使用量は同等なCPG7909群より低いため、予期しなかった技術的効果がある。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例4:組換え帯状疱疹ワクチン組成物による細胞性免疫の有効性検証
4.1 実験動物:
C57BL/6(N)マウス、雌、5週齢、48匹、上海斯莱克実験動物有限責任公司より購入。
【0067】
4.2 試薬材料:
PBS溶液(Hyclone社より購入)を使用して実施例1で得たヘルペスgEストック溶液をそれぞれ50μg/mL、10μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用してQS-21(BRENNTAG社より購入され、CAS番号はA010-023である)をそれぞれ50μg/mL、10μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用して実施例1で得たCpGをそれぞれ100μg/mL、20μg/mLに希釈した。
【0068】
4.3 実験群設定:表5を参照し、各マウスへの1回の注射量は100μL/匹であり、A群は陰性コントロールで、PBS溶液を100μL/匹注射した。
【0069】
【表5】
【0070】
4.4 動物の免疫化:全ての群は2週間ごとに1回筋肉内注射を行い、接種部位は右後腿で、2回の連続投与として、それぞれ0週目、2週目に注射投与し、4週目に全てのマウスを殺した。
【0071】
4.5 検出ステップ:実施例2.5と同じであった。
【0072】
4.6 評価指標:実施例2.6と同じであった。
【0073】
4.7 実験結果:各群のマウスの脾細胞のgE特異的IFN-γを分泌するTリンパ球のスポット数レベルを図3に示し、gE特異的IFN-γの陽転率結果を表6に示す。結果から分かるように、高用量免疫のE、F群に対応する脾細胞のgE特異的IFN-γを分泌するTリンパ球のスポット数レベル(4000SFC/106脾細胞を超えている)がいずれも低用量のG、H群より明らかに高かった。E群、G群(CpG T1+QS-21)に対応する脾細胞のgE特異的IFN-γを分泌するTリンパ球のスポット数レベルは同じ用量のF群、H群(CpG7909+QS-21)より高く、E~H群のIFN-γの陽転率はいずれも100%であった。
【0074】
【表6】
【0075】
実施例5:組換え帯状疱疹ワクチン組成物による体液性免疫の有効性検証
5.1 実験動物:
C57BL/6(N)マウス、雌、5週齢、48匹、上海斯莱克実験動物有限責任公司より購入。
【0076】
5.2 試薬材料:実施例3.2と同じであった。
【0077】
5.3 実験群設定:実施例3.3と同じであった。
【0078】
5.4 動物の免疫化:全ての群は2週間ごとに1回筋肉内注射を行い、接種部位は右後腿で、2回の連続投与として、それぞれ0週目、2週目に注射投与した。
【0079】
5.5 検出ステップ:免疫後28日目に採血し、血清の分離(全血を37℃恒温インキュベーターに40分間静置し、12000rpmで、4℃下10分間遠心分離した。上清を吸い取って、-20℃で冷凍保管しておいた。)を行い、キット取扱説明書に従って、ELISAキット(上海科華)を使用して、産生されたヘルペスgEタンパク質特異的抗体陽転率を検出した。検出ではブランクコントロール、陰性コントロール、被験サンプルを設け、各2つのパラレルウェルとし、そのうち、陰性コントロールは陰性のマウス血清であった。ブランクコントロールを除いて、各ウェルにそれぞれ陰性コントロール又は被験サンプルを加え、そして酵素コンジュゲートを加えて、均一に混合してシールした後、37℃下30分間インキュベートした。洗浄液を使用して各ウェルを洗浄し、各ウェルに発色剤のA液、発色剤のB液を加え、均一に混合してシールした後、37℃下15分間インキュベートした。各ウェルに停止液を加えて均一に混合した。マイクロプレートリーダーを用いて450nmの波長における各ウェルのOD値を読み取った。
【0080】
5.6 実験結果:ELISAによるマウス血清中の抗原特異的IgG抗体とサブタイプレベルの検出を図4に示し、図中、パネルAは各群のマウスの血清IgGレベルである。パネルBは各群のマウスの血清IgG1レベルである。パネルCは各群のマウスの血清IgG2aレベルである。パネルDは各群のマウスの血清IgG2aとIgG1の比の値である。
【0081】
結果から分かるように、本発明に係る免疫刺激剤を含むE群は免疫効果が単独のCpG群(C群)、QS-21群(D群)、二重アジュバントコントロール(F群)より明らかに優れており、しかも対応するIgGとIgG2a抗体レベルは2群と明らかに差があり、つまりQS-21にCpGを加えると対応する体液性免疫レベルを高めることができる。
【0082】
実施例6:組換え帯状疱疹ワクチン組成物の有効性に対する異なるサポニンの影響
6.1 実験動物とモデル確立:
C57BL/6(N)マウス、雌、5週齢、48匹、上海斯莱克実験動物有限責任公司より購入。
【0083】
6.2 試薬材料:
1)ヘルペスgEタンパク質、CpG T1、CpG 7909はいずれも実施例1より調製した。
2)QS-21(CAS番号A010-023、BRENNTAG社より購入)、ギンセノシドRg1(CAS:22427-39-0、南京春秋生物工程有限公司より購入)、アストラガロシドA(CAS:84687-43-4、南京春秋生物工程有限公司より購入)、プラチコジンD(CAS:58479-68-8、湖北雲▲ビ▼科技有限公司より購入)、Iscomアジュバント(上海熹垣生物科技有限公司より購入)。
3)次のステップへの使用に備えるために、PBS溶液(Hyclone社より購入)を使用してヘルペスgEストック溶液を50μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用して各サポニンをそれぞれ50μg/mLに希釈し、PBS溶液を使用してCpG T1、CpG 7909をそれぞれ溶解し100μg/mLに希釈した。
【0084】
6.3 実験群設定:
表7を参照し、1回の注射量は100μL/匹であった。コントロール群にPBS溶液を100μL/匹注射した。
【0085】
6.4 実験ステップ:実施例2.5と同じであった。
【0086】
6.5 実験結果:
ELISPOTスポット結果は図5を参照し、結果に示すように、CpG T1は各サポニンと併用するといずれも効率的な相乗効果が得られ、誘導産生されたgE特異的IFN-γレベルは明らかに他のCpGとサポニンの組成物より高く、そのなか、QS-21の効果が最も優れている。
【0087】
【表7】
【0088】
以上から分かるように、本発明に係る帯状疱疹ワクチンは優れた免疫刺激効果を有し、細胞性免疫実験で当該ワクチンは強いヘルペスgEタンパク質特異的IFN-γレベルを誘導産生でき、タンパク質による免疫効果が明らかに単独のアジュバントより優れていることが証明される。
【0089】
上記で本発明を詳細に説明しているが、当業者は、本発明の趣旨と範囲から逸脱しない限り本発明に様々な修正と変更を行うことが可能であると理解するべきである。本発明の保護範囲は上記の詳細な説明に限定されず、前記修正と変更も特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023506441000001.app
【国際調査報告】