(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】透析濾過緩衝液を用いて増強したウイルス濾過
(51)【国際特許分類】
C07K 1/14 20060101AFI20230209BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230209BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20230209BHJP
C07K 14/005 20060101ALI20230209BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C07K1/14
C07K1/22
C07K1/34
C07K14/005
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535551
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020064466
(87)【国際公開番号】W WO2021119404
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ,ハーバート
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ブルース,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カニンガム,クリスティナ
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB13
4B029BB15
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045GA26
(57)【要約】
目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法及びシステムであって、バイオリアクター内で目的の生体分子を発現させて、目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;生成物サンプルを濾過し、清澄化生成物サンプルを形成すること;清澄化生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供し、不純物を除去すること;その後、生成物サンプルを透析濾過に供し、それに続く、ウイルス濾過及び任意選択的な濃縮を含む。透析濾過工程の間(及びしたがってウイルス濾過工程において)使用された緩衝液は、生成物の最終処方物のために望ましい緩衝液である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法であって、バイオリアクター内で前記目的の生体分子を発現させて、前記目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;前記生成物サンプルを濾過し、生成物サンプルを形成すること;前記生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供し、前記生成物サンプルから不純物を除去すること、及びその後、前記生成物サンプルをウイルス濾過する前に、透析濾過に供することを含む、方法。
【請求項2】
前記アフィニティクロマトグラフィーが、プロテインAアフィニティリガンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濃縮された前記生成物サンプルを、前記透析濾過の上流で、ウイルス不活性化工程に供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物サンプルを、前記ウイルス不活性化工程の下流かつ前記透析濾過の上流で、磨き上げ工程に供することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記磨き上げ工程が、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーの1以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体分子が、組換え抗体、組換えモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体及び抗体断片からなる群から選択される抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生体分子が、タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生体分子が、ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記透析濾過工程が、透析濾過緩衝液を含み、そして前記ウイルス濾過が、前記透析濾過緩衝液と実質的に同じ組成を有するウイルス濾過ウイルス濾過緩衝液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
目的の生体分子を精製するためのシステムであって、
a. バイオリアクター;
b. 前記バイオリアクターを出た生成物サンプルを清澄化するための、前記バイオリアクターの下流にある濾過ユニット;
c. 前記濾過ユニットの下流に直列するよう構成された、清澄化した生成物流を前記濾過ユニットから受け止めるための、少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラム;
d. 前記少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラムの下流に配置された、ウイルス不活性化フィルター;
e. 前記ウイルス不活性化フィルターの下流に配置された、1以上の陰イオン交換、陽イオン交換又は疎水性相互作用交換クロマトグラフィーカラム;
f. 前記1以上の陰イオン交換、陽イオン交換又は疎水性相互作用交換クロマトグラフィーカラムの下流に配置された、透析濾過ユニット;及び
g. 前記透析濾過ユニットの下流に配置された、ウイルス濾過ユニット
を備える、システム。
【請求項11】
前記少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラムが、それぞれプロテインAアフィニティリガンドを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
バッチモードで操作されるように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
連続モードで操作されるように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
目的の生体分子を精製するためのシステムであって、
a. バイオリアクター;
b. 前記バイオリアクターを出た生成物サンプルを清澄化するための、前記バイオリアクターの下流にある濾過ユニット;
c. 前記濾過ユニットの下流に直列するよう構成された、清澄化した生成物流を前記濾過ユニットから受け止めるための、少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィー膜ユニット;
d. 前記少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィー膜ユニットの下流に配置された、ウイルス不活性化フィルター;
e. 前記ウイルス不活性化フィルターの下流に配置された、1以上の陰イオン交換、陽イオン交換又は疎水性相互作用交換クロマトグラフィー膜ユニット;
f. 前記1以上の陰イオン交換、陽イオン交換又は疎水性相互作用交換クロマトグラフィー膜ユニットの下流に配置された、透析濾過ユニット;及び
g. 前記透析濾過ユニットの下流に配置された、ウイルス濾過ユニット
を備える、システム。
【請求項15】
前記少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーユニットが、それぞれプロテインAアフィニティリガンドを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
バッチモードで操作されるように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
連続モードで操作されるように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月12日に出願された米国仮特許出願第62/947,082号及び2020年7月8日に出願された同第63/049,293号の優先権の利益を主張する。各出願の全体は、本明細書中で参照として組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、治療用抗体及びFc含有タンパク質を含む生体分子の精製のための、効率的なプロセス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生体分子、例えばタンパク質又はウイルス、特に組換えタンパク質の製造のための一般的プロセスは、代表的に2つの主な工程を含む:(1)宿主細胞におけるタンパク質の発現、及びその後の(2)タンパク質の精製。第1工程は、バイオリアクターにおいて所望の宿主細胞を増殖して、タンパク質の発現を誘導することを含む。この目的のために使用される細胞株のいくつかの例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫(NSO)、大腸菌(e-coli)などの細菌細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。一旦、タンパク質が所望のレベルで発現すると、タンパク質は、宿主細胞から取り除かれて、回収される。浮遊している粒子、例えば細胞、細胞断片、脂質及び他の不溶性の物質は、代表的に、下流の精製プロセスにおいてタンパク質含有液から除去され、溶液中に目的のタンパク質及び他の可溶性の不純物を含む、清澄化した液を生じる。
【0004】
第2工程は、回収したタンパク質を精製して、このプロセスに固有の不純物を取り除くことを含む。回収及び下流の操作の主な目標は、生成物(例えば、発現されたタンパク質)を可溶性/不溶性の不純物から単離することである。不純物の例としては、宿主細胞タンパク質(HCP、所望のすなわち標的したタンパク質以外のタンパク質)、核酸、内毒素、ウイルス、タンパク質バリアント、タンパク質凝集物、及び細胞培養培地構成成分/添加剤が挙げられる。この精製は、代表的に、いくつかのクロマトグラフィー工程を含み、これは、アフィニティクロマトグラフィー、結合/溶出モードでの陽イオン交換クロマトグラフィー、フロースルーモード陰イオン交換クロマトグラフィー、多孔性アガロース、ポリマー性もしくはガラス、又は膜ベースの吸着剤などの固体マトリックス上での疎水性相互作用などの1以上を含み得る。
【0005】
プロセスひな型の1つの例としては、遠心分離による第一次清澄化、濾過による第二次清澄化、ならびに、結合/溶出モードでのタンパク質-Aアフィニティ、それに続く結合/溶出モードでの陽イオン交換、それに続くフロースルーモードでの陰イオン交換を含む、クロマトグラフィープロセスの連続が挙げられる。タンパク質-Aカラムは、アフィニティメカニズムによって目的のタンパク質又は標的タンパク質を捕捉するが、他方で、大量の不純物が、このカラムを通過して捨てられる。次いで、タンパク質は、カラムからの溶出によって回収される。目的のタンパク質のほとんどが、塩基性の範囲(8~9)内の等電点(PI)を有するので、したがって、正常な処理条件(タンパク質のPIを下回るpH)下で正に荷電しており、これらは、第二カラム内の陽イオン交換樹脂に結合する。他の正に荷電した不純物もまた、この樹脂に結合する。次いで、目的のタンパク質は、このカラムから、タンパク質は溶出するが不純物は樹脂に結合したままである条件(pH、塩濃度)下での溶出によって回収される。陰イオン交換カラムは、代表的に、フロースルーモードで行われ、それにより、任意の負に荷電した不純物が樹脂に結合するが、他方で正に荷電した目的のタンパク質は、フロースルーの流れの中に回収される。下流の精製プロセスの後、ウイルス濾過が実施されてもよく、続いて、緩衝液系を調整して生成物を濃縮するための限外濾過/透析濾過を行った後、最終充填ユニット操作を行って、製造プロセスを完了する。このプロセスは、高純度かつ濃縮されたタンパク質溶液を生じ、これは、治療用タンパク質がヒトにおける使用を意味しそして衛生当局(例えば、食品医薬品局(FDA))によって認可されなければならない場合、特に重要であり得る。
【0006】
図1は、1つの従来型プロセスを図示する。このプロセスは、細胞収集工程を含み、これは、細胞及び細胞屑を細胞培養ブロスから取り出すための遠心分離の使用、及びその後の深層濾過を含んでもよい。細胞収集工程には、通常、その次にプロテインAアフィニティ精製工程などの捕捉工程が続き、その後、ウイルス不活性化が続く。ウイルス不活性化には、代表的に、その次に、1以上のクロマトグラフィー工程(磨き上げ工程とも呼ばれる)が続き、これは、通常、陽イオン交換クロマトグラフィー及び/又は陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィー及び/又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの1以上を含む。磨き上げ工程には、ウイルス濾過及び限外濾過/透析濾過が続き、これによってプロセスが完了する。
【0007】
捕捉工程は、タンパク質-A樹脂、例えばEshmuno(登録商標)A樹脂(剛性のプロテインAアフィニティクロマトグラフィー樹脂)又はProSep(登録商標)Ultra Plus媒体(両方とも、特にFc領域を含む抗体のために、EMD Millipore Corporationから市販されている)を使用し得る。結合及び溶出モードで操作された他の樹脂もまた、捕捉のために好適であり得る。結合及び溶出クロマトグラフィーは、(1)標的結合容量への生成物の負荷、(2)カラムからの生成物の溶出、及び(3)洗浄して再利用のために樹脂を調製することを、含む。
【0008】
ウイルス濾過の間の1つの問題は、L/m2のフィルタースループットで供給流量を濾過する過程の間で、フィルター抵抗(psi/LMH)が増大すること(又は、透過性(LMH/psi)が低下すること、ここで、LMHはリットル/m2/hである)である。言い換えると、一定供給流量操作の間上がる圧力を、一定圧力濾過の間に下がる流量と比較することができる。これらの変化は、一般に、フィルター詰まりと説明され、L/m2フィルタースループットを有意に制限し得、それにより、処理費用($/L)を増大させる。詰まりを起こし得るいくつかのメカニズムとしては、高分子量(HMW)不純物の残留、又は治療用タンパク質生成物の凝集物の残留が挙げられる。凝集物のサイズが大きくなり、ウイルスの大きさに近づくと、ウイルス濾過のために使用される膜に残留することとなり、これは、膜の表面上及び孔の中に堆積し得る。この堆積は、透過性の喪失に関連し得る。タンパク質はまた、フィルターに部分的に残留し得、フィルター内でその内部濃度、粘度、及び浸透圧を上昇させて、詰まり効果を生み出す。
【0009】
サイズベースの膜濾過は、ほとんどの生物製剤分子生成プロセスにおいて、重要なウイルス除去保証を提供する。衛生当局は、哺乳動物のウイルスにおいて生成される全ての治療用タンパク質が、販売承認を認可するために、ウイルス濾過工程を使用して、ウイルス汚染の危険を管理することを期待している。多くの研究が、生成物凝集物の形成の後ろにあるメカニズム、これらの凝集物がいかにしてウイルス除去フィルターを詰まらせるのか、及び吸着性のプレフィルターによって凝集物を取り除くことによりいかにフィルター流動を維持するかを、研究してきた。いくらかのスループットの後、プレフィルターは、凝集物又はHMWによって飽和しだす場合があり、そしてこれらの種は、通り抜け始め、そしてフィルターを詰まらせ始める。新しい様態(例えば二重特異性抗体)が、増強した処理に関連するより高い生成物濃度と相まって、吸着性プレフィルターの実施にもかかわらず、早すぎるフィルター詰まりの発生を、より多く引き起こしてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バイオ療法処方物は、長期貯蔵寿命用のバイアル内での安定性を促進しそして凝集を避ける透析濾過緩衝溶液条件を見出すことに関わる。タンパク質の凝集する性質に関する小容量分析技術を用い、バイオ療法処方物化学者は、適切な透析濾過溶液を開発するため、複数の緩衝液系及び賦形剤濃度を急速にふるい分けしている。これらの目的は、ウイルスフィルター詰まりを避けるウイルスフィルター供給溶液条件を見つけることの目的を反映している。したがって、DF緩衝液安定化効果及び詰まりの低減の利益を得るために、ウイルス濾過工程の位置を、UF/DFの前(すなわち、上流)からUF/DFの後(すなわち、下流)に移動することを考えてもよい。これは、前より高いスループットを、又は、前より高い濃度で、実施することにより、モノクローナル抗体(Mab)などの生体分子を、より効率よくかつ費用効果のあるモードで製造することを可能にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
先行技術の問題は、生体分子の製造のための方法及びシステムを提供する、本明細書中で開示される実施形態によって克服されている。特定の実施形態において、ウイルス濾過は、透析濾過緩衝液中の生体分子によって実施される。好ましくは、透析濾過緩衝液は、生成物の最終処方物において使用されるものと同じ緩衝液であり、生成物の安定性及び長い貯蔵寿命を確実にする。ウイルス濾過面積の縮小が、達成され得る。
【0012】
本明細書中で開示される実施形態は、細胞培養液に由来する目的の生体分子の精製及び単離を含む。特定の実施形態において、本開示の方法及びシステムは、濃縮及びそれに続く下流精製プロセスを含む。特定の実施形態において、下流精製プロセスは、1以上のクロマトグラフィーカラムによる連続的な精製を含んでもよい。
【0013】
特定の実施形態において、目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法が開示され、この方法は、バイオリアクター内で目的の生体分子を発現させて、目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;生成物サンプルを濾過し、生成物サンプルを清澄化すること;濃縮された生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供し、濃縮された生成物サンプルから不純物を除去することを、含む。特定の実施形態において、バイオリアクターからの生成物サンプル(例えば、収集された細胞培養)は、アフィニティクロマトグラフィーに供される前に、1以上の清澄化工程に供される。1以上の清澄化工程は、遠心分離、接線流濾過、深層濾過、及び滅菌濾過の1以上を含み得る。
【0014】
特定の実施形態において、アフィニティクロマトグラフィーは、プロテインAアフィニティリガンドを用いる。
【0015】
特定の実施形態において、本方法は、濃縮された生成物サンプルをウイルス不活性化工程に供することを、さらに含む。
【0016】
特定の実施形態において、本方法は、濃縮された生成物サンプルを磨き上げ工程に供することを含む。いくつかの実施形態において、磨き上げ工程は、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーの1以上を含む。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化及び磨き上げの両方が、実施されてもよい。
【0017】
特定の実施形態において、透析濾過工程が、ウイルス濾過の前に実施される。いくつかの実施形態において、透析濾過工程は、ウイルス濾過のすぐ上流で、その間にユニット操作を挟まずに実施される。種々の実施形態において、透析濾過工程において使用される単数又は複数の緩衝液は、生成物の最終処方物のために望ましい単数又は複数の緩衝液と一致するように選択される。結果として、続いて行うウイルス濾過工程の間に使用される緩衝液は、最終処方物のために望ましい緩衝液と同じものである。
【0018】
特定の実施形態において、生体分子は、組換え抗体、組換えモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体及び抗体断片からなる群から選択される抗体である。いくつかの実施形態において、生体分子は、タンパク質である。他の実施形態において、生体分子は、遺伝子治療のために使用されるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスである。このような場合、AAV生成物を通すがより大きな外来性又は内在性のウイルス夾雑物は留める、ウイルス濾過を用いてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、目的の生体分子を精製するためのシステムが開示され、このシステムは、以下を含む:バイオリアクター;バイオリアクターの下流の、清澄化のための深層フィルターなどのフィルター;フィルターの下流に直列するよう構成された、少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラム;少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラムの下流の、ウイルス不活性化工程又はウイルス濾過除去工程;ウイルス不活性化工程又はウイルス濾過除去工程の下流に配置された、精製/磨き上げのための、1以上の陰イオン交換、陽イオン交換又は疎水性相互作用交換クロマトグラフィーカラム;単数又は複数の精製/磨き上げユニットの下流に配置された、濃縮モード又は透析濾過モードで実施するよう構成された1以上の限外濾過フィルター(例えば、バッチTFF操作のためには、同じフィルターを連続的に異なる方法で実施することができ、単経路TFFのためには、直列するフィルターを異なるモードで実施することができる);1以上の限外濾過フィルターの下流のウイルス濾過;ならびに任意選択的に、ウイルス濾過の下流の、目的の生体分子を濃縮するための限外濾過ユニット。
【0020】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つのアフィニティクロマトグラフィーカラムは、各々、プロテインAアフィニティリガンドを含む。いくつかの実施形態において、正確に2つのアフィニティクロマトグラフィーカラムが存在する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】産業界で使用されている従来の精製プロセスの模式図。
【
図2】特定の実施形態にしたがう精製システムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の説明において、用語「選択された生体分子」、「標的生体分子」もしくは「分子」、「標的タンパク質」、「生体分子又は目的のタンパク質」又は類似の用語は全て、生体分子製造プロセスの生成物をいう。
【0023】
用語「夾雑物」、「不純物」及び「屑」は、本明細書中で相互交換可能に使用されてもよく、任意の外来性の又は不都合な分子をいい、これは、外来性のまたは不都合な分子の1以上から分離されようとしている目的の生成物を含むサンプル中に存在し得る、DNA、RNA、1以上の宿主細胞タンパク質、内毒素、脂質、タンパク質凝集物及び1以上の添加剤などの、生体高分子を含む。さらに、このような夾雑物は、分離プロセスの前に起こり得る工程において使用される任意の試薬を含み得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、精製される標的分子、例えば標的タンパク質を含む、任意の組成物又は混合物をいう。サンプルは、生物学的供給源又は他の供給源に由来し得る。生物学的供給源としては、真核生物供給源及び原核生物供給源、例えば植物及び動物の細胞、組織及び器官が挙げられる。いくつかの実施形態において、サンプルは、精製される目的のタンパク質を含む、生物製剤調製物を含む。詳細な実施形態において、サンプルは、精製される目的のタンパク質を含む、細胞培養フィードである。サンプルは、希釈液、緩衝液、洗剤及び標的タンパク質すなわち目的のタンパク質と混ざって見いだされる夾雑物種、屑などをも含み得る。サンプルは、「部分的に精製されて」いても(すなわち、濾過工程などの1以上の精製工程に供されている)、又は標的分子を産生する宿主細胞もしくは生物から直接得られてもよい(例えば、サンプルが、収集された細胞培養液を含んでもよい)。
【0025】
本明細書中で使用される場合、語句「~から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定の物質又は工程、及び特許請求された主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないものに限定する。この用語は、検討中の装置、システム又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない要素及び工程を入れることは許容する。したがって、表現「~から本質的になる」又は「~から本質的になっている」は、挙げられた実施形態、特徴、構成成分、工程などが存在しなければならず、かつ他の実施形態、特徴、構成成分、工程などは、その存在が挙げられた実施形態、特徴、構成成分、工程などの性能、性質又は効果に実質的に影響を及ぼさない場合に限り、存在してもよいことを意味する。サンプル又は生成物に対し実質的に影響を有さない操作又は工程の存在は、許容される。例えば、バイオリアクター内で上記目的の生体分子を発現させて、上記目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;上記生成物サンプルを濾過し、清澄化した生成物サンプルを形成すること;上記濃縮された生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供し、上記濃縮された生成物サンプルから不純物を除去すること;上記生成物サンプルをウイルス不活性化に供すること;上記生成物サンプルをイオン交換クロマトグラフィーなどにより精製/磨き上げに供すること;上記生成物サンプルを透析濾過による緩衝液交換に供し、その後上記サンプルをウイルス濾過に供することから本質的になる、目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製することから本質的になる方法は、生成物サンプルの組成を実質的に変える他の工程又はユニット操作を、バイオリアクター操作とウイルス濾過操作との間、特に透析濾過とウイルス濾過との間に実施することを排除する。
【0026】
特定の実施形態において、プロセスの開始物質であるサンプルは、サンプルが増殖した細胞株及びサンプルが増殖して収集された条件によって変えられてもよい。例えば、ほとんどのCHO細胞プロセスにおいて、細胞は、細胞壁の外側の培地中に分子を発現する。混合物中の不純物の量を減らすために、収集の間に細胞を破壊しないように努力する。しかしいくつかの細胞は、剪断もしくは他の操作条件に起因して増殖及び収集の間に破裂するか、又は死んで溶解され、その内容物を混合物中にばらまく。細菌細胞系において、生体分子は、多くの場合、細胞壁によって守られているか、又は実際に細胞壁の一部である場合がある(プロテインA)。これらの系において、目的の生体分子を回収するために、細胞壁は、破壊されるか又は溶解される必要がある。
【0027】
精製する標的分子は、任意の生体分子であってよく、好ましくはタンパク質、詳細には、任意の宿主細胞(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Per.C6(登録商標)細胞株(オランダのCrucellから入手可能である)、NSO細胞などの骨髄腫細胞、マウス細胞など他の動物細胞、昆虫細胞、又は大腸菌(E.coli)又は酵母などの微生物細胞が挙げられるが、これらに限定されない)において産生された組換えタンパク質であってもよい。さらに、混合物は、目的の生体分子を含むトランスジェニックな液体(乳汁又は血液など)を産生するように改変された動物由来の液体であってもよい。最適な標的タンパク質は、抗体、イムノアドヘシン及び他の抗体様分子、例えばCH2/CH3領域を含む融合タンパク質である。例えば、この生成物及びプロセスは、組換えヒト化モノクローナル抗体、例えば(RhuMAb)の、RhuMAbを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において増殖した、収集された調整細胞培養液(HCCF)からの精製のために使用されてもよい。
【0028】
特定の実施形態において、所望の化学的官能性を有する一連の精製媒体が、下流精製プロセスにおいて、生成物は溶液中に残しつつ可溶性の不純物の除去をもたらすと同時に、そして精製媒体を通って流れ、生成物を含む精製された流れを生じるために使用される。精製媒体の好適な形態としては、誘導体化膜、官能性付与クロマトグラフィー媒体、又は種々の不純物と相互作用するための所望の化学的官能性を有する任意の他の多孔性物質が、挙げられ、それにより、媒体は、静電性、疎水性、又はアフィニティ相互作用によって、不純物を捕捉することができる。不純物の複雑かつ様々な性質の観点から、種々の化学的官能性を有する多くの精製媒体が、種々の化学的特性を有する様々な不純物を除去するために、直列で並べられてもよい。
【0029】
特定の実施形態において、サンプルから標的分子を精製するためのプロセスが開示され、ここで、このプロセスは、(a)バイオリアクター内でタンパク質を発現させてタンパク質サンプルを形成すること;(b)このタンパク質サンプルを濾過、例えば深層濾過に供すること;(c)得られたタンパク質サンプルを、1以上のアフィニティクロマトグラフィーユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィーに供することを、含む。
【0030】
また、標的分子をサンプルから精製するためのシステムが開示され、これは、バイオリアクター;フィルターユニット、例えば深層濾過ユニット;濾過ユニットに流体連絡した1以上のアフィニティクロマトグラフィーカラム、例えば1以上のプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム;任意選択的に、1以上のアフィニティクロマトグラフィーカラムの下流の1以上のウイルス不活性化ユニット;任意選択的に、アフィニティクロマトグラフィーカラムの下流の磨き上げ相(これは、陰イオン交換クロマトグラフィーカラム、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム及び疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムの1以上を含んでもよい);透析濾過ユニット;ウイルス濾過ユニット;及びウイルス濾過ユニットの下流の限外濾過ユニットを、含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、システム内の種々のデバイスの間に、連結ラインが存在する。システム内の各デバイスが、先行するか又は後続するシステム内のデバイスに流体連絡するように、デバイスは、並んで連結している。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明にしたがってシステム内で使用されるバイオリアクターは、使い捨てすなわち単回使用のバイオリアクターである。いくつかの実施形態において、このシステムは、滅菌環境内に囲まれる。
【0033】
いくつかの実施形態において、開始サンプルは、細胞培養である。このようなサンプルが、バイオリアクター内で提供されてもよい。特定の実施形態において、バイオリアクターは、潅流バイオリアクターである。
【0034】
いくつかの実施形態において、捕捉工程は、各ユニットが同じクロマトグラフィー媒体、例えば、プロテインAアフィニティ媒体を含む、少なくとも2つの分離ユニットを備える結合及び溶出クロマトグラフィー装置を、含んでもよい。詳細な実施形態において、プロテインA媒体は、剛性の親水性ポリビニルエーテルポリマーマトリックスに結合したプロテインAリガンドを含む。他の実施形態において、プロテインAリガンドは、アガロース又は調整された孔ガラスに結合してもよい。プロテインAリガンドは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAの天然に存在するドメイン、又は天然に存在するドメインのバリアントもしくは断片に基づき得る。特定の実施形態において、プロテインAリガンドは、スタフィロコッカス・アウレウス プロテインAのCドメインに由来する。分離ユニットは、1つの分離ユニットから次へと液体が流れるように、互いに直列して流体連絡で繋がっている。
【0035】
透析濾過は、緩衝液交換、脱塩及び/又はサンプル濃縮のために、例えば、目的の生体分子を含む溶液から塩又は溶媒を除去するか、置き換えるか、又はその濃度を低くするために、使用されてもよい。特定の実施形態において、サンプルは、限外濾過膜をまたいで循環しても、濃縮液容器に戻してもよく、ここで、新鮮な緩衝液が加えられて、同時に透過液が除去される。
【0036】
いくつかの実施形態において、
図2で示されるように、ウイルス濾過の上流、好ましくはそのすぐ上流で、標的分子を含むサンプルは、代表的に限外濾過膜の使用を接線流濾過(TFF)モードで用いる透析濾過に供される。接線流濾過(TFF)の場合、流体は、フィルター媒体の表面に沿って接線方向に吸い出され、そして印加圧力は、流体の一部を、フィルター媒体を通って濾過液側へと向かわせるように働く。透析濾過は、標的分子を所望の緩衝液と共に含む流体の置き換えを起こし、pH及び導電性を含む溶液条件の正しい調整又は調節を可能にする。限外濾過フィルターは、濃縮モード又は透析濾過モデルのいずれかで使用され得る。バッチTFF操作のためには、これらは、連続的に異なる方法で実施される同じフィルターであってもよい。単経路TFFのためには、これらは、異なる方法で実施される連続した複数のフィルターであってもよい。
【0037】
透析濾過のための好適な限外濾過膜としては、再生セルロース及びポリエーテルスルホンベースの膜(例えば、MilliporeSigmaから市販されているULTRACEL膜及びBIOMAX膜)が挙げられる。
【0038】
好ましくは、連続的又は一定量の透析濾過が使用され、ここで、緩衝液は、濾過液が生成されるのと同じ速度で加えられる。
【0039】
透析濾過工程のために選択される単数又は複数の緩衝液は、好ましくは、生成物の最終処方物、例えば、薬物製品のために望ましい緩衝液である。この方法において、その後のウイルス濾過工程は、最終処方物緩衝液で行われる。当業者は、どのような緩衝液が、製造される特定の生成物に好適であるかがわかるであろう。例として、I.V.注射用の薬物ERBITUX(セツキシマブ)のために好適な緩衝液は、10mMクエン酸一水和物である。REOPRO(アブシキシマブ)のために緩衝液は、70mMリン酸ナトリウムである。
【0040】
最終処方物緩衝液において、ウイルス濾過後、生成物は、必要な場合、例えば限外濾過によって、濃縮されてもよい。
【国際調査報告】