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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】熱交換器および吸着機
(51)【国際特許分類】
   F25B 37/00 20060101AFI20230209BHJP
   F28F 1/30 20060101ALI20230209BHJP
   F28F 19/02 20060101ALI20230209BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F25B37/00
F28F1/30 A
F28F19/02 501
F28F19/02 501Z
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536586
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2020085594
(87)【国際公開番号】W WO2021122327
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019134587.1
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507141011
【氏名又は名称】ファーレンハイト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピシェル、ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミッテルバッハ、ヴァルター
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103DD08
3L103DD34
(57)【要約】
本発明は、蒸気フローダクト(18)として設計されている少なくとも1つの隙間を形成するような様式で互いから距離(A)をおいて配置されている、少なくとも2つの熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションと、熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体(20)と、を備える、吸着機の熱交換器(10)に関する。本発明によれば、管付属体(20)は隙間内に配置されており、かつ、直接適用されるバインダ不使用の活性物質コーティング(25)用の基材として設計されており、熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションを伴う、コーティングされた管付属体(20)から成る熱伝達グリッド(50)は、500~3600m/mの蒸気側外面を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気フローダクト(18)として設計されている少なくとも1つの隙間を形成するように互いに距離(A)をおいて配置されている、少なくとも2つの熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションと、
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体(20)とを備える、吸着機の熱交換器(10)において、
前記管付属体(20)は、前記隙間内に配置されており、かつ、直接適用されるバインダ不使用の活性物質コーティング(25)用の基材として設計されており、
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションを伴う、コーティングされた管付属体から成る熱伝達グリッド(50)が、500~3,600m/mの、特に800~3,200m/mの蒸気側外表面を有することを特徴とする、吸着機の熱交換器(10)。
【請求項2】
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションは、へん平なダクトおよび/または矩形の断面を有するダクトとして設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱交換器(10)。
【請求項3】
前記管付属体は、フィン(35)および/または薄層(30)および/または織物層および/または編物層および/または繊維層および/またはチップ層として設計されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱交換器(10)。
【請求項4】
前記活性物質コーティング(15)は、20~500μmの、特に30~300μmの中間層厚、および、30~500g/mの、特に50~250g/mの活性物質質量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項5】
前記管付属体(20)は、アルミニウムから形成されており、前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションにはんだ付けおよび/または焼結および/または接着されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項6】
前記管付属体(20)の厚さは、50μmより大きく、特に100μmより大きく、かつ、500μm未満であり、特に250μm未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項7】
前記蒸気フローダクト(18)内の前記管付属体(20)は、互いからの中間距離(mA)が0.2~3.0mmであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項8】
前記蒸気フローダクト(18)内の前記管付属体(40)は、800~4.000m/mの、特に1.100~3.200m/mの面積を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項9】
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクション同士の間の距離(A)は、4.0~30.0mm、特に8.0~15.0mmであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項10】
前記隙間内に配置されている管付属体の、特に互いに隣り合って配置されているフィン(35)のピッチ数が、0.7から2.5の間であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の、特に請求項3から9のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項11】
前記管付属体(20)の、特に互いに隣り合って配置されているフィン(35)の中間距離レベル(HA)において、対向する活性物質表面の間の中間距離(AA)が、前記活性物質コーティング(25)の中間層厚さよりも少なくとも1.5倍大きいことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の、特に請求項3から10のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項12】
前記活性物質は、ゼオライトおよび/または多孔質リン酸アルミニウムおよび/または有機金属構造体であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項13】
前記活性物質コーティング(25)の表面から最も近い熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションの内面(60)までの最大熱輸送経路の長さ(LW)は、2.5~8.0mm、特に3.0~5.0mmであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの熱輸送管(15)および/または少なくとも1つの熱輸送管セクションと、
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体(20)と、を備え、
前記熱輸送管(15)および/または前記熱輸送管セクションの少なくとも一方の側に蒸気フローエリアが設計されているかまたは設計可能であり、
前記管付属体(20)は、前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションの少なくとも前記側に配置されており、かつ、直接適用されるバインダ不使用の活性物質コーティング(25)の基材として設計されており、
前記熱輸送管(15)および/または熱輸送管セクションを伴う、コーティングされた管付属体から得られる熱伝達グリッド(50)が、500~3,600m/mの、特に800~3,200m/mの蒸気側外面を有することを特徴とする、吸着機の熱交換器(10)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の熱交換器(10)を有する吸着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文のように、蒸気フローダクトとして設計されている少なくとも1つの隙間を形成するように互いに距離をおいて配置されている、少なくとも2つの熱輸送管または熱輸送管セクションと、熱輸送管および/または熱輸送管セクションに接続されている更なる管付属体と、を備える、吸着機の熱交換器に関する。本発明はまた、少なくとも1つの熱輸送管および/または1つの熱輸送管セクションと、熱輸送管および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体と、を備え、熱輸送管および/または熱輸送管セクションの少なくとも一方側に蒸気フローエリアが設計されているかまたは設計可能である、請求項14に記載の吸着機の熱交換器に関する。更に、本発明は、本発明に係る熱交換器を有する吸着機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばゼオライト層などの吸着性活性層を有する三次元熱交換器構造または熱交換器を設計することが、従来技術から知られている。吸着ヒートポンプにおける吸着活性物質の質量は、製造時及び運転時の最も近い熱交換機表面上のそれらの高さ、つまり面積当たりの質量における材料及び熱輸送の理由から制限される。このことに起因して、これまでに知られている吸着ヒートポンプは、用途上コンパクトに調整されている場合に十分な性能を達成しない。
【0003】
これまでに知られている利用可能な吸着装置熱交換器は多くの場合、いわゆる活性物質によるコーティングを不均質にしか実現できないという欠点を有する。
【0004】
更に、吸着装置熱交換器内に形成される蒸気ダクトが活性物質によって閉塞されることが知られている。この結果、吸着装置熱交換器の活性物質への接触が困難になり、更には焼成が不十分となる。
【0005】
アルミニウム薄層を備えた通常の銅管熱交換器は同じく不利であるが、その理由は、小さい容積比表面しか実現できず、薄層および管の間の熱的接続が不十分だからである。管付属体として繊維充填材を有する公知の更なる熱交換器もやはり不利であると指摘せねばならないが、その理由は、大部分は熱伝導方向を横切る方向に設置される繊維の無秩序な配置のために、関連する熱輸送ダクトとの接触が不十分になるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の技術から出発して、本発明の課題は、吸着機の熱交換器を更に改善して、用途上コンパクトに調整されている場合に、関連する吸着機の性能を向上させることである。更に、本発明に係る熱交換器は、活性物質を結晶化プロセスで熱交換器のエリア上に適用できるように構成されることである。これは蒸気ダクトが閉塞されないように形成されることである。
【0007】
更に、特に熱交換器に関して更に改善されている、更に改善された吸着機を提案することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、熱交換器に関しては請求項1の主題および請求項14の主題によって、吸着機に関しては請求項15の主題によって解決される。従属請求項は、少なくとも適切な構成および更なる改善を含む。
【0009】
まず吸着機の熱交換器を基本とするが、その場合熱交換器は、
蒸気フローダクトとして設計されている少なくとも1つの隙間を形成するように互いに距離をおいて配置されている、少なくとも2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションと、
熱輸送管および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体と、を備える。
【0010】
本発明によれば、管付属体は隙間内に配置されており、かつ、直接適用される、特に成長式の、バインダ不使用の活性物質コーティング用の基材として設計されており、熱輸送管および/または熱輸送管セクションを伴う、コーティングされた管付属体から成る熱伝達グリッドは、500~3,600m/mの、特に800~3,200m/mの蒸気側外表面を有する。
【0011】
熱交換器の前面側に実質的に設計される回収器または回収器の管は、結果として熱伝達グリッドに含める必要はない。好ましくは、そのような回収器は、熱輸送管および/または熱輸送管セクションに対して実質的に垂直になり、熱輸送管および/または熱輸送管セクションを通って流れる熱輸送媒体の流入および流出に役立つように設計される。
【0012】
言い換えれば、熱交換器は少なくとも2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションを備え、管付属体はこれらの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間に設計されている。これらの管付属体は特に、熱輸送管および/または熱輸送管セクションに接続されている。
【0013】
そしてこれらの管付属体上に、活性物質コーティングを適用してもよい。この結果得られるコーティングされた熱輸送管および/または熱輸送管セクションの表面には、蒸気フローダクトを通って流れる蒸気が接触可能であり、この表面によって熱交換器の蒸気側外表面が形成される。活性物質コーティングの適用は、特に活性物質コーティングを成長させることに関連している。
【0014】
熱輸送管および/または熱輸送管セクションを、バインダ不使用の活性物質でコーティングすることも可能である。言い換えれば、バインダ不使用の活性物質コーティングを、熱輸送管および/または熱輸送管セクション上に設置してもよい。このことは、熱輸送管および/または熱輸送管セクションの、蒸気フローダクトの一部として設計される部分に特に関連している。
【0015】
それ以外の管から分離されて配置されているような管を、熱輸送管として理解すべきである。折り曲げ部の構成によってそれ以外の熱輸送管セクションから離間させて設計されているような熱輸送管のセクションを、熱輸送管セクションとして理解すべきである。特に、2つの熱輸送管セクションが互いに対して実質的に平行に延びることが可能であり、熱輸送管セクションは流体工学的に共通の熱輸送管を形成しているか、または熱輸送管の一部である。
【0016】
本発明の可能な実施形態では、上記した熱伝達グリッドは、活性物質コーティングによって形成される外表面のみから成る。この活性物質コーティングはこの場合、管付属体上と、熱輸送管および/または熱輸送管セクションの蒸気フローダクトの方に面した部分の少なくとも一部の両方に形成される。
【0017】
好ましくは、これらの熱輸送管および/または熱輸送管セクションは、へん平なダクトおよび/または矩形の断面を有するダクトとして設計される。したがって、標準的なものとして知られている丸管から逸脱し、へん平なダクトおよび/または矩形の断面を有するダクトが形成されることが好ましい。例えば圧縮された管を構成するようなダクトを、へん平なダクトとして理解すべきである。へん平なダクトはまた、内部ウェブによっていくつかの個々のダクトに分割されてもよい。そのようなへん平なダクトまたは矩形の断面を有するダクトによって、隙間およびその中に収容される管付属体が更に改善された好ましい形態の熱交換器を提供することが可能である。そのようなへん平なダクトおよび/または矩形の断面を有するダクトにより、熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間に管付属体をより安定的に取り付け、固定することができる。
【0018】
本発明によれば、外側寸法が限定されているにも関わらず収着側の熱交換器表面が大きくなって、好ましい活性物質の質量が達成でき、この結果、吸着機における熱交換器の性能が改善される。
【0019】
コーティングが可能な熱交換器の容積あたりの面積、すなわち容積面積は、可能な限りの大きさにまで最大化され、形成された蒸気ダクトを閉塞することなく同時に活性物質でのコーティング、特に結晶化を行うことが可能となっている。
【0020】
熱輸送管および/または熱輸送管セクションは、押出成形またははんだ付けされたへん平管から形成されてもよい。更に、熱輸送管および/または熱輸送管セクションが互いに配置されたプレートから形成することもできる。
【0021】
管付属体は例えば、フィンおよび/または薄層および/または織物層および/または編物層および/または繊維層および/またはチップ層として設計され得る。用語「フィン」(Finne)は、英語で知られている技術用語「フィン」(fin)のドイツ語翻訳として理解すべきである。
【0022】
管付属体を表面拡張要素または表面拡張付属体と呼ぶこともできる。
【0023】
フィンおよび/または薄層の形成において、それらを金属フィルムから形成することも可能である。管付属体が薄層として設計される場合、複数の短冊状の金属フィルムが互いに離間されて配置される。管付属体がフィンとして設計される場合、金属フィルムは複数回折り畳まれ、および/または屈曲され、および/または折り曲げられて、例えばジグザグ構造、または波形構造、または曲がりくねった構造、または蛇行構造が形成される。
【0024】
特に、薄層は、個々のストリップ状要素から形成される管付属体として理解され、これらのストリップ状要素は、隙間内に互いから離間されて配置される。
【0025】
フィンは、好ましくは、複数回折り畳まれ、および/または折り曲げられた、2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間の隙間内に形成された、まとまった要素から成る管付属体と理解できる。フィンに折り曲げられる要素は、例えばジグザグ状に推移し得る。さらに、この要素を複数の折り曲げ部分が形成されるように蛇行状に折り曲げることが可能であり、その結果これらの部分がフィンを形成することもできる。
【0026】
織物層は、金属繊維から形成される繊維品に関連するような層であってもよい。また編物層も、金属製の連続繊維からできる層である。言い換えれば、このような織物層および/または編物層は、短繊維の配列に関係しない。短繊維とは、例えば1cmの長さを有する繊維をいう。
【0027】
隙間内にいくつかの織物層およびまたは編物層を互いに隣り合わせて配置することが可能であり、この結果、織物層同士および/または編物層同士の間に間隔を作り出すことができる。本発明の更なる実施形態では、織物層および/または編物層で隙間を完全に充填することが可能であり、織物層および/または編物層は、蒸気ダクトが閉塞されないような多孔質の様式で形成される。そのような織物層および/または編物層は特に、活性物質の適用後であっても蒸気ダクトが閉塞されないような多孔質の様式で形成されるべきである。
【0028】
更に、管付属体を繊維層および/またはチップ層として形成することが可能である。そのような繊維層および/またはチップ層は、これらが繊維またはチップの緊密でない充填材とは関連しないように形成されている。むしろ、これらの繊維層および/またはチップ層は、金属繊維または金属チップを圧着および/または焼結して形成される、フェルト層の一種として理解される。
【0029】
本発明の可能な実施形態では、チップ層を形成する金属チップはらせん形のチップであり得る。これらの繊維および/またはチップは、繊維層および/またはチップ層が形成されるように、一体に押圧および/または焼結および/または結合される。
【0030】
前述した隙間は、いずれの場合も単一の繊維層および/またはチップ層によって完全に充填することが可能である。また、繊維層および/またはチップ層を、互いに離間して複数形成することもできる。ただし、本発明のそのような実施形態の場合、活性物質の適用後であっても蒸気ダクトが閉塞されないように、繊維層および/またはチップ層は多孔質の様式で形成されることに注意せねばならない。
【0031】
好ましくは、管付属体はアルミニウムから形成される。また、熱輸送管および/または熱輸送管セクションもアルミニウムから製造されてもよい。好ましくは、管付属体は、熱輸送管および/または熱輸送管セクションにはんだ付けおよび/または焼結および/または接着される。熱輸送管および/または熱輸送管セクションが管付属体と同じ材料、例えばアルミニウムから形成される場合は、管付属体を熱輸送管および/または熱輸送管セクションに簡単に固定できる。
【0032】
また、材料を揃えることで、活性物質の適用中に別の反応が生じることがなくなるので、活性物質層の適用および活性物質層の形成の工程を簡略化できる。
【0033】
管付属体は金属製の条片として設計され得る。そのような条片は切り込みのある(incised)構造を有することができる。
【0034】
管付属体は、液体および/または気体および/または蒸気に対して、蒸気フロー開口部を起点として熱交換器の深さ全体にわたって開放されるように構成される。
【0035】
活性物質コーティングは、20μm~500μmの、特に30μm~300μmの中間層厚を有することができる。
【0036】
活性物質の質量は30~500g/m、特に50~250g/mが特に有利であると分かっている。吸着ヒートポンプに使用する場合、所定の層厚および/または活性物質の質量を有する活性物質コーティングが、特に有利であると分かっている。
【0037】
管付属体の、特にフィンおよび/または薄層の厚さは、好ましくは50μmよりも大きく、特に100μmよりも大きい。更に、管付属体の、特にフィンおよび/または薄層のこの厚さは、500μm未満、特に250μm未満である。言い換えれば、管付属体の、特にフィンおよび/または薄層の厚さは、好ましくは50μm~500μm、特に100μm~250μmである。
【0038】
好ましくは、蒸気フローチャネル内の管付属体の互いからの中間距離は、0.2mm~3.0mmである。言い換えれば、フィンおよび/または薄層は、中間距離で0.2~3.0mm互いから離間されている。特にフィンが形成される場合、中間距離は、フィンが2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションに対して垂直方向に延びているときの、平均中間距離として理解すべきである。この距離は、2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間のほぼ中央に形成される。言い換えれば、中間距離は、2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間の距離の約半分となるように形成される。
【0039】
蒸気フローダクト内の管付属体は、好ましくは800~4.000m/mの、特に1.100~3.200m/mの面積を有する。
【0040】
熱輸送管および/または熱輸送管セクション同士の間の距離は、好ましくは4.0~30.0mm、特に8.0~15.0mmである。このことにより、一方で熱交換器のコンパクトな設計が可能になり、他方で管付属体を形成するのに十分な隙間が実現される。
【0041】
熱交換器の特に有効な形状は、隙間内に配置されている管付属体の、特に互いに隣り合って配置されているフィンのピッチ数が、0.7から2.5の間である場合に形成され得る。ピッチ数は、1ミリメートルあたりのフィンの湾曲部の構成に関する。ピッチ数をそのように構成することによって、フィン同士の間の十分な距離および活性物質コーティングの対応する層厚が実現される。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、管付属体の、特に互いに隣り合って配置されているフィンの中間距離レベルにおいて、対向する活性物質表面の間の中間距離が、活性物質コーティングの中間層厚さよりも少なくとも1.5倍大きくてもよい。対向する活性物質表面の中間距離と中間層厚さの間にそのような関係が形成されるとき、十分大きい蒸気ダクトが開放される。
【0043】
管付属体の、特に互いに隣り合って配置されているフィンの中間距離のレベルは、管付属体のパターンに、特に配置されたフィンのパターンに応じて、異なる位置を有し得ることを指摘すべきである。
【0044】
活性物質は例えば、ゼオライトおよび/または多孔質リン酸アルミニウムおよび/または有機金属構造体(MOF)であり得る。高い吸着能力を有し迅速な吸着および脱着プロセスが実現できる活性物質が特に適している。
【0045】
好適な吸収性活性物質の選択とは別に、気体吸着材が活性物質の外面にスムーズに到達できることと、細孔系に非常に良好に到達できることと、活性物質と管付属体の直接接触によるバインダ材の排除と、が前提条件である。細孔系に非常に良好に到達できることは、物質輸送の意味において理解すべきである。管付属体と活性物質の直接接触によって熱輸送が改善できる。
【0046】
活性物質が直接コーティングプロセスによって、特に結晶化プロセスによって管付属体上に適用され、その結果活性物質コーティングが生成されるのが好ましい。このことは、知られている吸着性充填材またはバインダコーティングと比較した場合に本質的な利点となっている。そのような吸着性充填材またはバインダコーティングの場合、本発明に係る熱交換器によって可能になるような良好な収着性能を達成することはできない。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態では、活性物質は、その場のプロセスとしての結晶化によって適用される。欧州特許第EP1 761 657 B1号には、そのようなゼオライト成長について記載されている。この記載によりこの文献の開示の内容が完全に参照される。
【0048】
好ましくは、活性物質コーティングの表面から最も近い熱輸送管および/または熱輸送管セクションの内面までの最大熱輸送経路の長さは、2.5~8.0mm、特に3.0~5.0mmである。最大熱輸送経路に関するこの値は、吸着装置または吸着機の熱交換の性能最適化に関する重要なパラメータである。
【0049】
熱輸送経路は、吸着質の導入と同時の吸着エンタルピーの放出から、生成された熱の温度制御流体への伝導までの経路であり、したがって、吸着材から温度制御流体までの経路である。
【0050】
熱交換の構造は、管付属体が少なくとも2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間に形成され、活性物質コーティングが管付属体上に形成されることに基づいているので、最大熱輸送経路は好ましくは、少なくとも2つの熱輸送管および/または熱輸送管セクションの間の中心に形成される、活性物質コーティングの表面または表面部分と関連付けて与えられる。
【0051】
この場合、熱輸送経路は、最大で熱輸送管同士および/または熱輸送管セクション同士の間の距離の半分のレベルから始まり、最も近い熱輸送管および/または熱輸送管セクションの内面上で終わる。最も近い熱輸送管および/または熱輸送管セクションは、活性物質コーティングの対応する表面または対応する表面部分からの距離が最も小さい熱輸送管および/または熱輸送管セクションである。
【0052】
記載した2.5~8.0mm、特に3.0~5.5mmである最大熱輸送経路の長さは、本発明に係る熱交換器の高効率および高性能に関して関連する値である。熱交換器の高い性能は短いサイクル時間を意味する。
【0053】
本発明の更なる従属的態様は、
少なくとも1つの熱輸送管および/または少なくとも1つの熱輸送管セクションと、
熱輸送管および/または熱輸送管セクションに接続されている管付属体と、を備え、
熱輸送管および/または熱輸送管セクションの少なくとも一方の側に蒸気フローエリアが設計されているかまたは設計可能であり、
管付属体は、熱輸送管および/または熱輸送管セクションの少なくとも上記の側に配置されており、かつ、直接適用されるバインダ不使用の活性物質コーティングの基材として設計されており、熱輸送管および/または熱輸送管セクションを伴う、コーティングされた管付属体から得られる熱伝達グリッドが、500~3,600m/mの、特に800~3,200m/mの蒸気側外表面を有する、吸着機の熱交換器に関する。
【0054】
先行する説明と関連する熱交換器と比較すると、本発明の更なる従属的態様に係る熱交換器は、少なくとも1つの熱輸送管のみを、および/または、少なくとも1つの熱輸送管セクションのみを有する。
【0055】
本発明のこの態様では、例えば開放式熱交換器を設計することができ、結果として管付属体は1つの熱輸送管および/または熱輸送管セクション上にのみ形成され、その場合管付属体は密閉ハウジング内には設置されない。
【0056】
更に、管付属体を、熱輸送管および/または熱輸送管セクションと、例えばハウジング部分との間に形成することが可能である。ハウジング部分の代わりに、金属シート状要素を形成してもよい。
【0057】
請求項14の従属的態様に係る熱交換器と関連して、従属請求項2~14の特徴のうちの少なくとも1つを更に形成することが可能である。
【0058】
請求項14記載の熱交換器は例えば、
熱輸送管のおよび/もしくは熱輸送管セクションの既に記載した形態、
ならびに/または
管付属体の既に記載した実施形態、
ならびに/または
活性物質コーティングの既に記載した実施形態、
ならびに/または
管付属体の厚さの既に記載した実施形態、
ならびに/または
管付属体の互いに対する配置の既に記載した実施形態、
ならびに/または
活性物質の既に記載した実施形態、
ならびに/または
最大熱輸送経路の長さの既に記載した実施形態、を有し得る。
【0059】
請求項14記載の熱交換器は、請求項2~13のうちの少なくとも1つと明示的に組み合わせることができる。
【0060】
本発明の更なる従属的態様は、本発明に係る熱交換器を有する吸着機に関する。
【0061】
本発明に係る吸着機と関連して、本発明に係る熱交換器と関連して既に示したものと同様の利点が得られる。
【0062】
この進歩性を備えた解決法の例示的な実施形態について、添付の概略的な図面に基づいて以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1a】本発明に係る熱交換器の様々な実施形態を示す側面図である。
図1b】本発明に係る熱交換器の様々な実施形態を示す側面図である。
図2】本発明に係る熱交換器の一実施形態の斜視図である。
図3】熱伝達グリッドの図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下では、同一の部分または作用が同一の部分には、同じ参照符号を使用する。
【0065】
図1aおよび図1bには、本発明に係る熱交換器10または本発明に係る熱交換器10の少なくともあるセクションが示されている。
【0066】
熱交換器10または熱交換器10の部分的セグメントは、互いから距離Aをおいて配置されている2つの熱輸送管15を実質的に備える。熱輸送管15同士の間の距離は好ましくは4.0mm~30.0mm、特に8.0mm~15.0mmである。
【0067】
この距離Aに起因して、2つの熱輸送管15の間に隙間が構築される。この隙間は蒸気フローダクト18として形成されている。図1aにおける熱交換器10への視線の方向において、蒸気はこのように蒸気フローダクト18内へと流れることができる。
【0068】
更に、熱輸送管15同士の間に管付属体20が形成されていることが認識できる。管付属体20は隙間内に、およびしたがって蒸気フローダクト18内に配置され、直接適用されるバインダ不使用の活性物質コーティング25の基材の役割を果たす。
【0069】
図1aの実施形態によれば、管付属体20は薄層30から形成されている。薄層30は実質的に、2つの熱輸送管15の間に配置されている金属条片から形成される。好ましくは、薄層30はアルミニウム材で製作される。熱輸送管15も好ましくはアルミニウムから形成される。この例示的な実施形態では、薄層30は互いから均一に離間されるように配置される。薄層30は、例えば熱輸送管15と一体にはんだ付けされる。
【0070】
薄層30は、2つの大きい側面31および32を実質的に有する。両方の面31および32には、活性物質コーティング25が施されている。更に、熱輸送管15の表面部分40もまた活性物質でコーティングされており、したがって活性物質コーティング25を有する。
【0071】
コーティングされた薄層30は熱輸送管15と共に、500~3,600m/mの蒸気側外面を有する熱伝達グリッドを構築する。
【0072】
活性物質コーティング25は好ましくは、30~300μmの層厚さを有する。更に、活性物質質量は好ましくは30~500g/mである。
【0073】
管付属体20の、この場合薄層30の厚さは、好ましくは50μmから500μmの間、特に100μm~250μmである。管付属体の、特に薄層30の厚さは、図1aでは側面31と側面32の間に形成されている。2つの薄層30の各々の間に、0.2~3.0mmの中間距離mAが特に形成される。
【0074】
管付属体20の全部、すなわちこの場合には薄層30の全部によって、蒸気フローダクト18内に800~4.000m/mの面積が形成される。
【0075】
図1aは更に、最大熱輸送経路LWの長さを示す。この最大熱輸送経路LWは、活性物質コーティング25の表面から、それぞれの最も近い熱輸送管15の内面60まで延びている。長さは2.5~8.0mm、特に3.0~5.0mmである。
【0076】
熱交換器10の構造は、管付属体20が少なくとも2つの熱輸送管15の間に形成され、活性物質コーティング25が管付属体20上に形成されることに基づいているので、最大熱輸送経路LWは、少なくとも2つの熱輸送管15の間の中央に、または熱輸送管15同士の間の距離Aの半分のレベルに形成される、活性物質コーティング25の表面部分と関連付けて与えられる。その他の表面部分は、それぞれの熱輸送管15、ひいてはそれぞれの内面60からの距離が短くなるように配置されており、それぞれの伝熱経路は、図示の最大伝熱経路よりも短くなっている。
【0077】
図1bには、管付属体20に関する代替の実施形態が示されている。
【0078】
これらの管付属体はフィン35によって形成される。フィン35は特に、金属シートまたは金属層を折り曲げることによって形成される。これらのフィン35は2つの側面31、32を有し、次いでそれらには活性物質コーティング25が施される。
【0079】
フィン35は特に、熱輸送管15と一体にはんだ付けされる。この目的のためにフィン35は、例えば頂部36において熱輸送管15に接続されている。これらの頂部36を頂点と呼称する場合もある。実際の構成は必ずしも尖鋭ではない。実際は、これらのエリア36は、熱輸送管15への接続が容易に可能になるように、へん平に丸められて形成され得る。
【0080】
レベルHAのエリアに中間フィン距離mAが形成される。フィン35の互いからの中間距離mAは、好ましくは0.2から3.0mmの間である。レベルHAはこの場合、2つの熱輸送管15の互いからの中間距離と概ね関連している。
【0081】
フィン35は、2未満のピッチ数が形成されるような互いからの距離mAを有して形成される。ピッチ数とはこの場合、1mmあたりのフィン湾曲部の、すなわち2つの個々のフィンの数を記述するものである。ピッチ数は特に0.7から2.5の間である。
【0082】
中間フィン距離のレベルHAにおいて、対向する活性物質表面の間の距離AAは、活性物質コーティング25の中間層厚さよりも少なくとも1.5倍大きい。対向する活性物質表面の間の距離AAは、図1bに示されているように、中間距離mA以下である。この距離AAは、活性物質コーティング25の中間層厚さよりも1.5倍大きい。
【0083】
図1bでは、最大熱輸送経路LWの長さが更に図示されている。この最大熱輸送経路LWは、活性物質コーティング25の表面から、対応する最も近い熱輸送管15の内面60まで延びている。その長さは2.5~8.0mmであり、特に3.0~5.0mmである。
【0084】
最大熱輸送経路LWは、少なくとも2つの熱輸送管15の間の中央に形成される、活性物質コーティング25の表面部分と関連付けて与えられる。フィン35としての管付属体20の示されている構成では、これらは、中間フィン距離のレベルHAに形成される表面部分である。
【0085】
図2には、熱交換器10の一部が斜視図で示されている。この図では、熱輸送管15がへん平なダクトとしてまたは矩形の断面を有するダクトとして形成されることが認識できる。蒸気フローダクト18が同様に示されている。蒸気はフィン35によって形成されるダクトの間を流れることができ、蒸気フローダクト18内を示されている深さに沿って流れる。
【0086】
更に、蒸気フロー出口も示されている。へん平なダクトとしての熱輸送管15の構成に起因して、示した例における管付属体20またはフィン35は、熱輸送管15に容易に取り付けることができる。この目的のために、頂部36のエリアにおいて接続が行われる。
【0087】
図3には、熱伝達グリッド50において熱交換器10の構成要素のうちの重要なものが概略的に示されている。この場合、全ての熱輸送管15および熱輸送管15同士の間に配置されている管付属体20が関与している。
【0088】
図示されておらず熱伝達グリッド50に属してもいないが、いわゆる回収器が存在し、図3の図であれば左右で垂直方向に延びることになる。熱伝達グリッド50は、(図2に示すように)熱交換器10の深さ全体にわたって延びている。
【符号の説明】
【0089】
10 熱交換器
15 熱輸送管
18 蒸気フローダクト
20 管付属体
25 活性物質コーティング
30 薄層
31、32 側面
35 フィン
36 頂部、頂点
40 表面部分
50 熱伝達グリッド
60 内面
A 熱輸送管の距離
AA 活性物質表面の距離
HA 中間フィン距離のレベル
LW 最大熱輸送経路の長さ
mA 中間距離
図1a
図1b
図2
図3
【国際調査報告】