IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワシントン・ユニバーシティの特許一覧

特表2023-506501キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)ならびにこれを作製および使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)ならびにこれを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230209BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20230209BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20230209BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K39/00 H
A61K35/15 Z
A61P35/00
C12N5/0784 ZNA
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/0789
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536775
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020065378
(87)【国際公開番号】W WO2021127024
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/948,612
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】デセルム,カール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示の様々な態様の中で、改変キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)を作製する組成物および方法ならびにその使用方法が提供される。CAR-DCは、腫瘍およびがん、特に固形腫瘍(ならびに液性腫瘍、血液のがんおよび転移性がん)の処置のために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変細胞であって、前記CARが、
抗原結合ドメインと、
膜貫通ドメインと、
FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと
を含み、
前記改変細胞が、樹状細胞またはその前駆体もしくはプロジェニター細胞である、
改変細胞。
【請求項2】
(i)抗原結合ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインと
を含むキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトであって、
樹状細胞(DC)またはその前駆体もしくはプロジェニター細胞において発現または機能することが可能であるCARコンストラクト。
【請求項3】
請求項2に記載のCARコンストラクトを含む改変樹状細胞であって、cDC1細胞またはその前駆体もしくはプロジェニターから選択される改変樹状細胞。
【請求項4】
請求項2に記載のCARをコードする第1の核酸配列、または抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインをコードする第2の核酸配列を含む改変細胞。
【請求項5】
第1の細胞内核酸配列が、Flt3もしくはFlt3ベースのタンパク質産物を含むタンパク質産物をコードするか、または後続の細胞内核酸配列が、Flt3もしくはFlt3ベースのタンパク質産物を含むタンパク質産物をコードする、請求項4に記載の改変細胞。
【請求項6】
前記CARが、シグナルペプチドまたは追加の細胞外ドメインをさらに含む、請求項1に記載の改変細胞。
【請求項7】
標準型1型樹状細胞(cDC1)である、請求項1に記載の改変細胞。
【請求項8】
前記プロジェニター細胞が、末梢血単核球(PBMC)、単球および樹状細胞プロジェニター(MDP)、骨髄系共通プロジェニター(CMP)、リンパ球系へとプライミングされた複能性プロジェニター(LMPP)もしくは樹状細胞共通プロジェニター(CDP)または幹細胞から選択される、請求項1または3に記載の改変細胞。
【請求項9】
抗原交差提示、適応抗腫瘍免疫応答または抗腫瘍T細胞の活性化が可能である、請求項1に記載の改変細胞。
【請求項10】
前記抗原結合ドメインが、抗体またはその断片を含む、請求項1に記載の改変細胞。
【請求項11】
前記抗体が、腫瘍細胞抗原への結合親和性を有する、請求項10に記載の改変細胞。
【請求項12】
前記腫瘍細胞抗原が、EphA2である、請求項11に記載の改変細胞。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、EphA2、EGFRviii、AFP、CEA、CA-125、MUC-1、CD123、CD30、SlamF7、CD33、EGFRvIII、BCMA、GD2、CD38、PSMA、B7H3、EPCAM、IL-13Ra2、PSCA、メソテリン、Her2、CD19、CD20、CD22、シアリルルイスA、ルイスY、CIAXまたは腫瘍で富化されている別のタンパク質から選択される疾患関連抗原に対するドメインである、請求項1または3に記載の改変細胞。
【請求項14】
腫瘍細胞を選択的に貪食すること、腫瘍抗原を交差提示すること、およびT細胞を活性化して前記腫瘍抗原に応答することが可能である、請求項1または3に記載の改変細胞。
【請求項15】
腫瘍抗原を交差提示すること(または腫瘍抗原交差提示を有すること)が可能であり、抗原交差提示が、腫瘍細胞に対する効率的な適応免疫応答に必要である、内部移行した抗原を1型主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC I)上に提示する、細胞の能力である、請求項1または3に記載の改変細胞。
【請求項16】
前記CARにより標的化された抗原陽性(Ag)腫瘍を除去することが可能であり、エピトープ拡大を通して、CAR-Ag固形腫瘍細胞(前記CARにより認識されない)を間接的に除去する、請求項1又は3に記載の改変細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の改変細胞を含む医薬組成物。
【請求項18】
対象において適応抗腫瘍T細胞応答を刺激する方法であって、
前記対象に、治療有効量の、キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)を含む医薬組成物を投与すること
を含み、
前記CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、
前記細胞内ドメインが、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含み、
前記細胞が、樹状細胞またはそのプロジェニター細胞である、
方法。
【請求項19】
前記対象が、増殖性疾患、障害または状態(例えばがん)を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象においてがん細胞のファゴサイトーシスを誘導する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記CAR-DCが、抗腫瘍T細胞応答をクロスプライミングする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記CAR-DCが、腫瘍除去免疫応答を生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記増殖性疾患、障害または状態が、悪性腫瘍、固形腫瘍または液性腫瘍である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
改変細胞が、
除去のために抗原陽性(Ag)腫瘍細胞を直接的に標的化するか、または
交差提示およびエピトープ拡大を通して、除去のためにCAR-抗原陰性(Ag)腫瘍細胞を間接的に標的化する、
請求項19に記載の方法。
【請求項25】
改変免疫細胞(例えばDC、cDC1)集団を作製する方法であって、
(i)対象からの細胞(例えば、循環、脊髄または骨髄からの単核球または幹細胞)集団を提供するかまたは提供されていることと、
(ii)前記細胞集団をFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)アゴニストを含む培地において少なくとも約1日間培養することと、
(iii)Flt3ベースのキメラ抗原受容体(CAR)を(ii)の細胞に導入することと、
(iv)(iii)の前記細胞をFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)アゴニストを含む培地において、改変細胞を形成するのに十分な時間の間培養することと
を含み、
前記CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、前記細胞内ドメインが、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含む、
方法。
【請求項26】
前記改変細胞を形成するのに十分な前記時間が、約5日間~約15日間である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記CARを骨髄細胞に導入することが、Flt3またはFlt3様細胞内ドメインを含むタンパク質産物をコードする細胞内核酸配列を、前記細胞に導入することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記改変細胞が、抗原交差提示、適応抗腫瘍免疫応答または抗腫瘍T細胞の活性化が可能である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記改変細胞が、樹状細胞または標準型1型樹状細胞(cDC1)である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月16日出願の米国仮出願第62/948,612号の利益を主張し、当該出願は、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国国立衛生研究所により授与されたOD026427の下、政府の後援により行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
技術分野
対象において適応免疫応答を生じる組成物および方法が、本明細書において開示される。特に、本開示は、1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)を発現するように遺伝子改変された樹状細胞、およびがんの処置のためにこれを使用する方法に関する。
【0004】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式において提出されており、その全体が参照によりこれにより本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2020年12月14日に作出されたASCII複製物は、675958_ST25と命名され、サイズが7.64KBバイトである。
【背景技術】
【0005】
がんなどの疾患と戦うために生物の免疫系を利用することは、強力な手法である。最近の研究により、T細胞表面上に提示される2つの鍵となる免疫チェックポイントタンパク質が特定された。これらの細胞表面受容体は、抗原提示細胞(APC:antigen-presenting cell)などの他の細胞上に提示されるある特定のリガンドに結合し、それらを自己として認識し、このことは、T細胞活性の減弱をもたらし、免疫応答にブレーキをかける。研究者らにより、数十年の研究の間に、T細胞上のこれらの受容体が、APCまたは腫瘍細胞上のそれらのリガンドに結合することを防止することは、遮断を解除し、腫瘍細胞に対する攻撃を誘発することが示されている。
【0006】
T細胞の完全活性化のために、負の免疫モジュレーションに対するこのブレーキは、必要であるが十分ではない。別の表面受容体であるT細胞受容体(TCR:T cell receptor)が、腫瘍細胞に特異的に由来し、かつAPC上に提示されるリガンドを認識および結合することも必要である。転移性がんは、患者が抗腫瘍T細胞を所有する場合、ときには治癒可能であるという証拠がここで存在する。抗腫瘍T細胞に対する「ブレーキを解放する」チェックポイント阻害剤は、転移性黒色腫およびいくつかの他の型のがんの最大で10~15%において完全奏効(CR:complete response)を誘導し、そのうちの一部は、持続的である。
【0007】
キメラ抗原受容体(CAR)療法は、血液悪性腫瘍に対する大きな臨床的成功を達成している。それは、抗原認識およびシグナル伝達機能の両方を有する合成受容体に基づく。CARにおける単鎖可変断片(scFv:single-chain variable fragment)は、元のモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域からのその抗原認識特異性を保持する。一方、CARコンストラクトのシグナル伝達は、元の免疫受容体のシグナル伝達ドメインに大いに依存する。CAR T細胞は、末期再発性急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)患者において注目すべき80~100%のCRを呈するが、固形腫瘍においては1%のCRを呈する。
【0008】
各療法の失敗を理解および克服することは、残りのがん患者に持続的な寛解をもたらす助けとなり得る。失敗の理由は多因子的であるが、患者が最初に適応抗腫瘍T細胞応答を有しない場合、チェックポイント阻害剤は、ベースラインにおいて無効であり、このことはより高い突然変異量を有する腫瘍においてはより起こりやすい。固形腫瘍は、すべての細胞が標的抗原を発現しない場合、CAR T認識を回避する。患者において適応免疫応答を生じることの成功は、両方の型の免疫療法の失敗を克服し得る。しかしながら、これを達成する手立ては明らかになっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、様々ながんまたは腫瘍細胞を特に標的化し、一方で、抗腫瘍T細胞を利用することにより適応免疫応答を生じるための組成物および方法が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の様々な態様の中で、キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC:chimeric antigen receptor dendritic cell)ならびにCAR-DCを作製および使用する方法が提供される。
【0011】
本開示の一態様は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変細胞であって、CARが、抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3:FMS-like tyrosine kinase 3)シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインとを含み、かつ/または改変細胞が、樹状細胞またはその前駆体もしくはプロジェニター細胞である、改変細胞を提供する。
【0012】
本開示の別の態様は、(i)抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、および/または(iii)FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトであって、樹状細胞(DC)またはその前駆体もしくはプロジェニター細胞において発現または機能することが可能である、CARコンストラクトを提供する。
【0013】
一部の実施形態において、樹状細胞は、cDC1細胞またはその前駆体もしくはプロジェニターから選択される。
【0014】
本開示の別の態様は、CARをコードする第1の核酸配列、または抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインをコードする第2の核酸配列を含む改変細胞を提供する。
【0015】
一部の実施形態において、第1の細胞内核酸配列が、Flt3もしくはFlt3ベースのタンパク質産物を含むタンパク質産物をコードするか、または後続の細胞内核酸配列が、Flt3もしくはFlt3ベースのタンパク質産物を含むタンパク質産物をコードする。
【0016】
一部の実施形態において、CARは、シグナルペプチドまたは追加の細胞外ドメインをさらに含む。
【0017】
一部の実施形態において、改変細胞は、標準型1型樹状細胞(cDC1:conventional type 1 dendritic cell)である。
【0018】
一部の実施形態において、改変細胞は、抗原交差提示、適応抗腫瘍免疫応答または抗腫瘍T細胞の活性化が可能である。
【0019】
一部の実施形態において、抗原結合ドメインは、抗体またはその断片を含む。
【0020】
一部の実施形態において、抗体は、腫瘍細胞抗原への結合親和性を有する。
【0021】
一部の実施形態において、腫瘍細胞抗原は、EphA2である。
【0022】
一部の実施形態において、抗原結合ドメインは、EphA2、EGFRviii、AFP、CEA、CA-125、MUC-1、CD123、CD30、SlamF7、CD33、EGFRvIII、BCMA、GD2、CD38、PSMA、B7H3、EPCAM、IL-13Ra2、PSCA、メソテリン、Her2、CD19、CD20、CD22、シアリルルイスA(sial-LewisA)、ルイスY、CIAXまたは腫瘍で富化されている別のタンパク質から選択される疾患関連抗原に対するドメインである。
【0023】
一部の実施形態において、改変細胞は、腫瘍細胞を選択的に貪食すること、腫瘍抗原を交差提示すること、および/またはT細胞を活性化して腫瘍抗原に応答することが可能である。
【0024】
一部の実施形態において、改変細胞は、腫瘍抗原を交差提示すること(または腫瘍抗原交差提示を有すること)が可能であり、抗原交差提示は、腫瘍細胞に対する効率的な適応免疫応答に必要である、内部移行した抗原を1型主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC I:type I major histocompatibility complex molecule)上に提示する、細胞の能力である。
【0025】
一部の実施形態において、改変細胞は、CARにより標的化された抗原陽性(Ag)腫瘍を除去することが可能であり、エピトープ拡大を通して、Ag固形腫瘍細胞(CARにより認識されない)を間接的に除去する。
【0026】
本開示の別の態様は、本明細書において説明される改変細胞を含む医薬組成物である。
【0027】
本開示の別の態様は、対象において適応抗腫瘍T細胞応答を刺激する方法であって、対象に、治療有効量の、キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)を含む医薬組成物を投与することを含み、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、細胞内ドメインが、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含み、かつ/または細胞が、樹状細胞もしくはそのプロジェニター細胞である、方法である。
【0028】
一部の実施形態において、対象は、増殖性疾患、障害または状態(例えばがん)を有する。
【0029】
一部の実施形態において、方法は、対象においてがん細胞のファゴサイトーシスを誘導する。
【0030】
一部の実施形態において、CAR-DCは、抗腫瘍T細胞応答をクロスプライミングする。
【0031】
一部の実施形態において、CAR-DCは、腫瘍除去免疫応答を生じる。
【0032】
一部の実施形態において、増殖性疾患、障害または状態は、悪性腫瘍、固形腫瘍または液性腫瘍である。
【0033】
一部の実施形態において、改変細胞は、CAR-抗原陽性(Ag)腫瘍細胞を除去のために直接的に標的化するか、または交差提示およびエピトープ拡大を通してCAR-抗原陰性(Ag)腫瘍細胞を除去のために間接的に標的化する。
【0034】
本開示の別の態様は、改変免疫細胞(例えばDC、cDC1)集団を作製する方法であって、(i)対象からの細胞(例えば、循環、脊髄もしくは骨髄からの単核球もしくは幹細胞)集団を提供するかもしくは提供されていること、(ii)細胞集団をFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)アゴニストを含む培地において少なくとも約1日間培養すること、(iii)Flt3ベースのキメラ抗原受容体(CAR)を(ii)の細胞に導入すること、および/または(iv)(iii)の細胞をFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)アゴニストを含む培地において、改変細胞を形成するのに十分な時間の間培養することを含み、CARが、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、細胞内ドメインが、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)シグナル伝達ドメインを含む、方法を提供する。
【0035】
一部の実施形態において、改変細胞を形成するのに十分な時間は、約2日間~約15日間である。
【0036】
一部の実施形態において、CARを骨髄細胞に導入することは、Flt3またはFlt3様細胞内ドメインを含むタンパク質産物をコードする細胞内核酸配列を、細胞に導入することを含む。
【0037】
一部の実施形態において、改変細胞は、抗原交差提示、適応抗腫瘍免疫応答または抗腫瘍T細胞の活性化が可能である。
【0038】
一部の実施形態において、改変細胞は、樹状細胞または標準型1型樹状細胞(cDC1)である。
【0039】
他の目的および特色は、一部には明らかであり、一部には本明細書中以下に指し示される。
【0040】
出願書類は、少なくとも1つのカラーで作成された図面を含む。カラー図面を有するこの特許出願公開の写しは、申請と必要な手数料の支払いに応じて特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1A~1Eは、CARマクロファージが局所的な腫瘍殺滅を発揮するが、臨床的に有意な全身性の抗腫瘍応答を生じないことを示す。図1Aは、マウスの両側脇腹に同系腫瘍を注射し、いったん定着させた後、FcR CARマクロファージを1つの腫瘍に注射したことを示す概略図である。図1Bは、CARを発現する細胞がAg+腫瘍細胞を標的にして貪食する様子を示す模式図である。図1Cは、腫瘍負荷が、注射された腫瘍の両方において経時的に測定されたことを示すグラフである。図1Dは、腫瘍負荷が、注射されていない腫瘍の両方において経時的に測定されたことを示すグラフである。図1Eは、1匹のマウスが注射部位で完全奏効を示したことを示すグラフであり、このマウスは、抗腫瘍免疫について検証するために腫瘍を再注射された。
図2図2はCARの設計を示す。CARベクターは、表面発現を駆動するシグナルペプチド(SP)、腫瘍抗原結合ドメイン(ここでは、EphA2を認識する抗体由来のscFv)、細胞外ドメイン(EC)と膜貫通ドメイン(TM;ここでは、CD8由来)、細胞内ドメイン、P2A切断配列と形質導入効率を評価するRFPが続く。細胞内ドメインはこれらの実験ではCARによって異なり、Fc受容体(1番上)、TLR4(2番目)、またはFlt3(3番目)由来のシグナル伝達ドメインを含む。一番下のコンストラクトは対照CARであり、細胞内シグナル伝達ドメインが欠如している。
図3図3は、CAR発現を示す。骨髄細胞に、空ベクター、Fc受容体ベースのCAR、Flt3LベースのCAR、TLR4ベースのCAR、または細胞内ドメインを欠く対照CARを形質導入した。FACS解析(上段)は、Y軸にCARの発現、X軸にRFPの発現を示す。蛍光顕微鏡では、RFP形質導入マーカーの発現がさらに確認される(下段)。
図4図4Aおよび図4Bは、Ova抗原発現同系腫瘍を、示されたCARと12時間共培養し、続いてCFSE標識OT1 T細胞を添加したことを示す。3日後、抗原交差提示誘導T細胞増殖を、フローサイトメトリーにより評価した。図4Aは、T細胞増殖の定量化を示すグラフである。「対照CAR」は、細胞内ドメインを欠く非シグナル伝達CARである。図4Bは、CD3+ CD8 +T細胞のCFSE増殖ヒストグラムを示すフロープロットである。図4Cは、RFP陽性について選別され、zsGreen発現腫瘍細胞と1:1の比率でインキュベートされた、CAR形質導入骨髄細胞を示す。緑色の腫瘍を内在化した赤色形質導入細胞を示す、赤色/緑色の二重陽性細胞は、示された時点でライブビデオ顕微鏡によって自動的に定量化された。
図5図5Aおよび図5Bは、GFP+Ova抗原発現同系腫瘍を、OT1 T細胞に加えて、示されたCARと共にそれぞれ2:1:1の比率でインキュベートしたことを示す。図5Aは、10日後、腫瘍面積が定量化されたことを示すグラフである。図5Bは、個々のウェルを低倍率(2.5倍)で示し、腫瘍は緑色である。
図6図6Aおよび図6Bは、HoxB8複能性細胞を対照非シグナル伝達CAR、またはFlt3 CARで形質導入し、CAR陽性について選別し、次いで外因性Flt3リガンドの非存在下で腫瘍細胞と共培養したことを示す。図6Aは、共培養の2日後に生存HoxB8細胞が定量化されたことを示す。図6Bは、Flt3Lを腫瘍と置換した2日後に対照CAR HoxB8細胞が均一に死滅し、Flt3 CAR HoxB8細胞が生存して腫瘍の周りに塊となっていることを示す代表的な画像を示す。
図7図7Aおよび図7Bは、Flt3ベースのCARがCAR-cDC1の生成を改善することを示す。図7Aは、骨髄細胞を、示されたCARで形質導入し、DCに分化させたことを示す。CARを形質導入したcDC1の割合をフローサイトメトリーにより定量化し、一次、非CAR形質導入DCと比較した。図7Bは、示されたフローサイトメトリー一次ゲート戦略を示し、cDCはB220-、CD11c+、MHC-II+であり、cDC1およびcDC2はそれぞれCD24およびSirpa陽性によってさらに分化された。
図8図8A~8Cは、Flt3 CAR DCが、局所および遠位の疾患部位を除去し、腫瘍の再攻撃から保護する、全身性の抗腫瘍適応応答を誘導することを示す。肉腫を、同系マウスの両側脇腹に同所注射し、いったん定着させた後、各マウスの2つの腫瘍のうちの1つに、対照またはFlt3 CAR DCを注射した。図8Aは、処置された腫瘍について腫瘍負荷が測定されたことを示す。図8Bは、処置されていない腫瘍について腫瘍負荷が測定されたことを示す。すべての対照CARおよび処置されていないマウスが両側性に進行したのに対し、Flt3 CAR DC処置された腫瘍は、局所処置後1~2週間から両側性にゆっくりと退縮した。図8Cは、完全な腫瘍応答を示すFlt3 CAR DC処置マウスに腫瘍を再注射し、腫瘍の再増殖が観察されなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、少なくとも部分的に、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された樹状細胞が、T細胞クロスプライミングによって腫瘍細胞をファゴサイトーシスおよび細胞傷害性のために標的化することができるという発見に基づく。本明細書に示すように、CAR樹状細胞(CAR-DC)を使用して、固形腫瘍を含む様々ながんおよび悪性腫瘍を処置することができる。以前に記載されたCARマクロファージ(CAR-M)は、腫瘍細胞をファゴサイトーシスまたはピノサイトーシス後、T細胞のクロスプライミングに成功しておらず、インビボで固形腫瘍を除去することに成功していない。本開示は、腫瘍細胞を選択的に貪食し、腫瘍抗原反応性T細胞をクロスプライミングする方法で内因性腫瘍抗原を交差提示する、機能的CAR-DCを生成する方法を記載する。本開示は、Flt3ベースのCARに由来するCAR-DCが、DC分化サイトカインFlt3Lの存在下で増殖させた場合でも、骨髄系前駆体細胞に導入した従来のFc受容体ベースのCARがcDC1を形成せず、マクロファージを形成するのに対し、cDC1細胞を正常に生成できることを実証する。非Flt3ベースのCARがDCをうまく生成できないのは、cDC1表現型への適切な分化を損なうCARからの基底シグナル伝達によるものと思われる。したがって、本開示は、CAR DCを使用して適応免疫応答を生成するための組成物および方法を提供する。生成された適応免疫応答は、CAR-AgとCAR-Agの両方の腫瘍またはがん細胞を標的として殺滅し、さらに腫瘍またはがん細胞の再発を防止する免疫記憶を創出するのに有用である。
【0043】
本開示の組成物は、CAR-DCに加えて、1つまたは複数の追加の薬物または治療活性剤を含んでもよい。本開示の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤をさらに含んでもよい。さらに、本開示の組成物は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(本発明の物質は、それ自体が薬学的に許容される塩の形態で提供されてもよい)、緩衝剤、被覆剤、または酸化防止剤を含んでもよい。
【0044】
本発明の他の態様および反復は、以下にさらに詳細に記載される。
【0045】
I.組成物
本明細書に記載されるように、初めて、インビトロおよびインビボで、腫瘍細胞を選択的に貪食し、内因性腫瘍抗原反応性T細胞をクロスプライミングして残存腫瘍を除去する方法で内因性腫瘍抗原を交差提示する、機能的CAR-DCの生成を可能にするCARコンストラクトが挙げられる。
【0046】
これまでの研究では、CARマクロファージについて記載された。マクロファージは、樹状細胞と同様に、物質を貪食し、抗原を提示することができる。しかし、インビボでは、マクロファージは腫瘍抗原を効果的に交差提示することができず、T細胞クロスプライミングによる腫瘍除去免疫応答を創出することができない。インビボでは、DC、特にcDC1と呼ばれるDCのサブセットが、腫瘍抗原の交差提示とT細胞のクロスプライミングができる唯一の細胞であり、cDC1がなければ、適応抗腫瘍応答は達成できず、抗腫瘍免疫応答を起こすことができず、インビボの免疫系によって腫瘍を除去することができない。したがって、概念的には、CARマクロファージは、腫瘍の直接的なファゴサイトーシスや、場合によっては直接的な細胞傷害性の目標を達成することができる。しかし、抗原の交差提示の目標は達成できず、効果的な適応抗腫瘍T細胞応答を創出することはできない。
【0047】
CARマクロファージは、fc受容体、toll様受容体、またはその他のマクロファーもしくはT細胞ベースの受容体のようなファゴサイトーシスを誘導する様々なマクロファージ受容体の細胞内ドメインと腫瘍認識scFv細胞外ドメインを融合することによって創出されてきた。現在までに、DC能力、すなわち、特にインビボで有効な抗腫瘍T細胞応答をクロスプライミングする能力を細胞に賦与するCARの創出に成功していない。
【0048】
(a)CAR樹状細胞(CAR-DC)
本開示は、キメラ抗原受容体保有樹状細胞(CAR-DC)、それらを含む医薬組成物、およびがんまたは腫瘍の処置のための免疫療法の方法を提供する。CAR-DCは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現している樹状細胞である。本明細書に記載されるように、樹状細胞、またはその前駆体もしくはプロジェニターは、CAR樹状細胞(CAR-DC)を形成するように改変され得る。キメラ抗原受容体(CAR)は、1)細胞外リガンド結合ドメイン、すなわち抗原認識ドメイン、2)膜貫通ドメイン、および3)シグナル伝達ドメイン、を含む組換え融合タンパク質である。
【0049】
Flt3ベースのCARコンストラクトを含むCAR-DCは、CAR依存的に腫瘍細胞を機能的に貪食し、腫瘍の取り込みと抗原の交差提示によって抗腫瘍T細胞をクロスプライミングすることができるが、CARマクロファージは不可能である。したがって、この用語は、免疫応答を開始し、および/またはTリンパ球に抗原を提示し、および/または適応免疫応答の刺激に必要な他の活性化シグナルをT細胞に提供するDCを含む。
【0050】
本明細書に記載されるように、CAR-DCは、幹細胞(多能性、複能性、造血性、または他の幹細胞)、複能性プロジェニター、骨髄系共通プロジェニター(CMP)、骨髄系樹状細胞プロジェニター(MDP)、樹状細胞共通プロジェニター(CDP)、骨髄単核細胞、末梢血単核球(PBMC)、または脾臓細胞のような単離された樹状細胞プロジェニターを、Flt3LのようなDC増殖刺激に曝露することによって生成することができる。次いで、この細胞は、目的のCARで形質導入され、さらに、処置前に樹状細胞様細胞(DC様細胞)を生成するのに十分な時間、DC分化因子Flt3Lに曝露され得る。例えば、細胞は、分化を促進するために、約2~15日間Flt3Lに曝露され得る。
【0051】
本開示は、改変樹状細胞(DC)、ならびにDCの改変された前駆体および改変プロジェニターを提供する。DCは、抗原交差提示が可能な免疫細胞であり、適応免疫応答、特に腫瘍に対する応答を開始する際に重要である。数多くの研究が、腫瘍の微小環境、さらには一般的ながん患者においてさえ、DCは限定的であることを示している。さらに、たとえDCが存在しても、抗原に対する寛容性や拒絶反応を誘発する可能性があり、一般に腫瘍細胞が異物や脅威であり除去する必要があることを指示する強いシグナルを持たないため、全く効果を発揮しないこともある。
【0052】
樹状細胞は、樹状細胞のサブセットであり得る。一例として、DCのサブセットは、例えば、形質細胞様DC(pDC)、骨髄系/標準型/古典型DC1(cDC1)、骨髄系/標準型/古典型DC2(cDC2)、または単球由来DC(moDC)であり得る。
【0053】
プロジェニターは、DCに分化することができる任意の細胞であり得る。例えば、DCプロジェニターは、幹細胞(多能性、複能性、造血性、または他の幹細胞)、複能性プロジェニター、骨髄系共通プロジェニター(CMP)、骨髄系樹状細胞プロジェニター(MDP)、リンパ球系へとプライミングされた複能性プロジェニター(LMPP)、樹状細胞共通プロジェニター(CDP)、骨髄単球、末梢血単核球(PBMC)、または脾臓細胞であり得る。
【0054】
DCの前駆体は、上記のようなプロジェニター、または線維芽細胞のようなDCに分化するように誘導または再プログラムすることができる任意の細胞であり得る。例えば、DCの前駆体は、幹細胞、単球、骨髄系前駆体細胞、骨髄由来前駆体細胞、末梢血単核球(PBMC)、または骨髄単球(BMM)であり得る。
【0055】
CAR-DCは、自己細胞、つまり対象自身の細胞から操作されたものと、同種細胞、つまり健康なドナーから供給されたものがあり、多くの場合、宿主対移植片反応や移植片対宿主反応を引き起こさないように操作されている。ドナー細胞はまた、臍帯血から供給されるか、または人工多能性幹細胞から生成される場合もある。
【0056】
本開示は、CAR-DCを分化させることによって生成することができる、改変標準型1型樹状細胞(cDC1)を提供する。本明細書に記載されるように、インビボでは、DC、特にcDC1として知られるDCのサブセットは、効果的な腫瘍抗原クロスプライミングを行うことができる唯一の免疫細胞である。抗原クロスプライミングとは、この場合は腫瘍から獲得したものであるが、細胞外抗原を獲得して交差提示した抗原提示細胞によって、抗原特異的なナイーブ細胞傷害性CD8 T細胞が活性化細胞傷害性CD8 T細胞へと刺激されることを指す。抗原交差提示とは、内部移行した抗原を1型主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC I)上に提示する、細胞の能力を指す。抗原交差提示とクロスプライミングは、腫瘍細胞に対する効率的な適応免疫応答に必要であることが知られている。
【0057】
cDC1がなければ、適応抗腫瘍応答は達成できず、抗腫瘍免疫応答を開始することができず、インビボで免疫系により腫瘍を除去することはできない。例えば、以下の実施例を参照されたい。
【0058】
本明細書に記載されるように、樹状細胞またはその前駆体をFlt3ベースのCARで形質導入することにより、これまで実証されていなかった真のプログラム可能で機能的なcDC1を独自に産生することが可能である。骨髄系前駆体細胞に導入された従来のFc受容体ベースのCARは、cDC1分化サイトカインFlt3Lで培養しても、cDC1を形成せず、マクロファージやcDC2を形成する。非Flt3ベースのCARがDCをうまく生成できないのは、cDC1表現型への適切な分化を損なうCARからの基底シグナル伝達によるものと思われる。したがって、Flt3ベースのCARは「CAR-DC」と呼ぶことができ、他のCAR(Fc受容体または他の炎症性もしくはマクロファージ受容体ドメインに基づく)とは区別され、プロジェニター細胞で発現すると、T細胞のクロスプライミング能力が著しく劣るCARマクロファージ(CAR-M)が生成される。CAR-DCは、CAR-MやcDC1とは異なり、腫瘍細胞を選択的に貪食し、腫瘍抗原を交差提示し、腫瘍抗原に応答するT細胞を活性化する優れた能力を有する。
【0059】
本明細書に記載されるように、cDC1は、特定の表面タンパク質発現シグネチャのフローサイトメトリーに基づいて識別され、貪食された細胞関連抗原に対してT細胞をクロスプライミングする機能的能力によって確認することができる。例えば、cDC表面発現プロファイルは、系統陰性B220、CD11c、およびMHC-IIであり得、cDC1およびcDC2は、CD24およびSirpa発現によってさらに分化され得る。
【0060】
(b)Flt3ベースのCARコンストラクト
CARの設計は、一般に、各細胞型に合わせられる。本開示は、樹状細胞について描かれているが、他の免疫細胞型においても有用であり得る。キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作された樹状細胞が本明細書で開示される。
【0061】
CARは、細胞外標的結合ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン、腫瘍結合ドメイン)、ヒンジ領域、CARを細胞膜に固定する膜貫通ドメイン、および活性化シグナルを伝達する1つまたは複数の細胞内ドメインを含むモジュール方式で設計されている。本開示のキメラ抗原受容体(CAR)は、免疫細胞の活性化および免疫応答をもたらす標的への細胞外リガンド結合ドメインの結合に続く、細胞内シグナル伝達を担うCARのシグナル伝達ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインを含む。すなわち、シグナル伝達ドメインは、CARが発現している免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つを活性化する役割を担っている。例えば、樹状細胞のエフェクター機能は、生存率の向上、分化、ファゴサイトーシス、および/または抗原交差提示であり得る。したがって、「シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能のシグナルを伝達し、細胞に特化した機能を実行するように指示するタンパク質の部分を指す。CAR T細胞の場合、同時刺激ドメインの数によって、CARは第一世代CAR(CD3zのみ)、第二世代CAR(1つの同時刺激ドメイン+CD3z)、第三世代CAR(2つ以上の同時刺激ドメイン+CD3z)に分類することができる。本発明のCAR DCで利用される同時刺激ドメインは、同様に、細胞の機能、持続性、または増殖を増加または減少させるために使用されてもよい。これらのドメインには、Fc受容体、TLR、CSF1R、CD40、PD-1、41BB、CD28、OX40、ICOS、SR-A1、SR-A2、SR-CL2、SR-C、SR-E、MARCO、デクチン1、DEC-205、DEC-206、DC-SIGN、またはシグナル伝達機能を有する他のタンパク質由来のドメインが含まれるが、これらに限定されない。CAR分子をDCに導入することで、抗原特異性を追加してDCをうまく再指示し、DCの完全な活性化と機能を促進するために必要なシグナルを提供する。
【0062】
一実施形態では、核酸配列は、タンパク質Flt3に由来する細胞内ドメインに対して少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を含む細胞内シグナル伝達要素を有するCARをコードする。FMS様チロシンキナーゼ3(FLT-3)[分化抗原群135(CD135)、受容体型チロシン-プロテインキナーゼFlt3、または胎児肝臓キナーゼ-2(Flk2)としても知られている]は、ヒトではFlt3遺伝子によりコードされているタンパク質である。Flt3は、受容体チロシンキナーゼクラスIIIに属するサイトカイン受容体である。Flt3は、サイトカインFlt3リガンド(FLT3L)の受容体である。Flt3は、5つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、膜近傍ドメイン、チロシンキナーゼインサートによって連結された2つのローブ(lobe)からなるチロシンキナーゼドメインから構成されている。細胞質Flt3がグリコシル化を受け、受容体の膜への局在が促進される。核酸配列およびペプチド配列は、例えばEntrez遺伝子受託番号2322およびUniProt受託番号P36888などの一般に公開されているデータベースで見つけることができる。
【0063】
サイトカインFLT3Lの細胞表面受容体として働くFtl3チロシンプロテインキナーゼは、造血性プロジェニター細胞や樹状細胞の分化、増殖、生存を制御する。Flt3はSHC1やAKT1のリン酸化を促進し、下流のエフェクターMTORを活性化する。また、RASシグナル伝達の活性化、MAPK1/ERK2および/またはMAPK3/ERK1を含む下流のキナーゼのリン酸化を促進する。また、FES、FER、PTPN6/SHP、PTPN11/SHP-2、PLCG1、STAT5Aおよび/またはSTAT5Bのリン酸化を促進することが示されている。野生型FLT3の活性化は、STAT5AまたはSTAT5Bのわずかな活性化を引き起こすに過ぎない。
【0064】
一実施形態では、CAR-DCの組成は、シグナルペプチド-標的結合ドメイン-ヒンジドメイン-膜貫通ドメイン-Flt3細胞内ドメイン、である。
【0065】
Flt3細胞内ドメインは、効果的なCAR-DCの生成に重要であることが発見された。配列番号1は、ヒトFlt3ドメインの一例である。
HKYKKQFRYESQLQMVQVTGSSDNEYFYVDFREYEYDLKWEFPRENLEFGKVLGSGAFGKVMNATAYGISKTGVSIQVAVKMLKEKADSSEREALMSELKMMTQLGSHENIVNLLGACTLSGPIYLIFEYCCYGDLLNYLRSKREKFHRTWTEIFKEHNFSFYPTFQSHPNSSMPGSREVQIHPDSDQISGLHGNSFHSEDEIEYENQKRLEEEEDLNVLTFEDLLCFAYQVAKGMEFLEFKSCVHRDLAARNVLVTHGKVVKICDFGLARDIMSDSNYVVRGNARLPVKWMAPESLFEGIYTIKSDVWSYGILLWEIFSLGVNPYPGIPVDANFYKLIQNGFKMDQPFYATEEIYIIMQSCWAFDSRKRPSFPNLTSFLGCQLADAEEAMYQNVDGRVSECPHTYQNRRPFSREMDLGLLSPQAQVEDS。
【0066】
本発明において有用なFlt3ドメインの別の、非限定的な例は、マウスFlt3ドメインである。
HKYKKQFRYESQLQMIQVTGPLDNEYFYVDFRDYEYDLKWEFPRENLEFGKVLGSGAFGRVMNATAYGISKTGVSIQVAVKMLKEKADSCEKEALMSELKMMTHLGHHDNIVNLLGACTLSGPVYLIFEYCCYGDLLNYLRSKREKFHRTWTEIFKEHNFSFYPTFQAHSNSSMPGSREVQLHPPLDQLSGFNGNSIHSEDEIEYENQKRLAEEEEEDLNVLTFEDLLCFAYQVAKGMEFLEFKSCVHRDLAARNVLVTHGKVVKICDFGLARDILSDSSYVVRGNARLPVKWMAPESLFEGIYTIKSDVWSYGILLWEIFSLGVNPYPGIPVDANFYKLIQSGFKMEQPFYATEGIYFVMQSCWAFDSRKRPSFPNLTSFLGCQLAEAEEAMYQNMGGNVPEHPSIYQNRRPLSREAGSEPPSPQAQ。
【0067】
一部の実施形態では、使用されるFlt3ドメインは、配列番号1または配列番号2と少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0068】
さらに、CARコンストラクト部分または構成要素は、リンカーと作動可能に連結することができる。リンカーは、本明細書に記載の部分を連結することができる任意のヌクレオチド配列であり得る。例えば、リンカーは、この目的に適した任意のアミノ酸配列(例えば、使用される標的結合ドメインに応じて、8~80アミノ酸の長さ)であり得る。
【0069】
様々な細胞内ドメインは、異なる細胞型において異なる機能を有する。本開示は、DCにおいて有用な細胞内シグナル伝達ドメインを提供する。本明細書に記載されるように、Fc受容体ベース、Toll様受容体(TLR)ベース、またはFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)ベースのICドメインを直接比較し、Flt3ベースのICドメインが、機能的CAR-DCの生成に最も有効であることが発見された。
【0070】
FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)ベースのICドメインは、配列番号1または配列番号2のヒトFlt3 ICドメインの活性変異体または機能的断片などの、任意のFlt3ベースまたはFlt3由来のICドメインであり得る。
【0071】
本明細書に記載されるように、細胞内ドメインは、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)細胞内ドメインであり得る。Flt3シグナル伝達ドメインは、Flt3遺伝子に由来する。Flt3は、サイトカインFlt3リガンド(Flt3L)の受容体として働くクラスIII受容体チロシンキナーゼをコードする。Flt3由来の細胞内ドメインは、CAR樹状細胞の実現に成功するために重要であることが示された。
【0072】
一部の実施形態では、CAR-DCは、CARにおいて2つ以上の細胞内ドメインを組み合わせることによって、1つの単一の樹状細胞において異なる細胞内ドメインの特性を結合させることができる。例えば、このような組合せは、Flt3ファミリー由来の1つの細胞内ドメインと、ITAMドメイン含有タンパク質またはTIRドメイン含有タンパク質由来の1つの細胞内ドメインとを含むことが可能であり、その結果、異なるシグナル伝達経路を同時に活性化する。これらは同時刺激ドメインと呼ばれ、上記により詳細に記載されている。
【0073】
各々の同時刺激ドメインは独自の特性を持ち得る。scFvの親和性、抗原発現の強さ、off-tumor毒性の確率、または処置対象となる疾患の違いが、細胞内ドメインの選択に影響を与える場合がある。
【0074】
本明細書に記載されるように、CARは、抗原結合ドメインまたは腫瘍結合ドメインを含むことができる。抗原結合ドメインは、標的細胞型によって発現される抗原(例えば、腫瘍細胞によって発現される抗原)またはその断片に結合する任意のドメインを含むことができる(例えば、SaarGillら、米国特許出願第15/747,555号は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)。例えば、抗原結合ドメインは、抗体(ヒト、マウス、または他の動物由来)、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ラクダ科抗体、天然の受容体もしくはリガンド、またはそれらの断片であり得る。例えば、抗原結合ドメインは、抗体の単鎖可変断片(scFv)であり得る。抗原結合ドメインは、様々な腫瘍関連タンパク質を対象とすることが可能であり、これには、EphA2、アルファフェトプロテイン(AFP)、がん胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1抗体、CD19、CD20、CD123、CD22、CD30、SlamF7、CD33、EGFRvIII、BCMA、GD2、CD38、PSMA、B7H3、EPCAM、IL-13Ra2、PSCA、メソテリン、Her2、ルイスY、ルイスA、CIAX、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、rasもしくはp53の異常産物、または腫瘍細胞の表面に重要な正常組織よりも高く富化されていると思われる他のタンパク質を含む場合がある。任意の腫瘍抗原(抗原性ペプチド)を、本明細書に記載の腫瘍関連の実施形態において使用することができる。抗原の供給源には、がんタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。抗原は、ペプチドとして、または未変化のタンパク質もしくはその一部として発現させることができる。未変化のタンパク質またはその一部は、未変性であるまたは突然変異誘発され得る。腫瘍抗原の非限定的な例としては、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、がん胎児抗原(CEA)、CD8、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CLL1、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、CD123、CD44V6、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、上皮糖タンパク質40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、受容体チロシン-プロテインキナーゼerb-B2,3,4(erb-B2,3,4)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体α、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼインサートドメイン受容体(KDR)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1CAM)、黒色腫抗原ファミリーA,1(MAGE-A1)、ムチン16(MUC16)、ムチン1(MUC1)、メソテリン(MSLN)、ERBB2、MAGEA3、p53、MART1、GP100、プロテイナーゼ3(PR1)、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、EphA2、NKG2Dリガンド、がん精巣抗原NY-ESO-1、がん胎児性抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ROR1、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、BCMA、NKCS1、EGF1R、EGFR-VIII、CD99、CD70、ADGRE2、CCR1、LILRB2、PRAMECCR4、CD5、CD3、TRBC1、TRBC2、TIM-3、インテグリンB7、ICAM-1、CD70、Tim3、CLEC12AおよびERBBが挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の標的化抗体断片またはscFvは、任意の疾患関連抗原または腫瘍関連抗原(TAA)に対するものであり得る。TAAは、腫瘍と関連することが当技術分野で知られている任意の抗原であり得る。
【0076】
scFvは、様々なコンストラクトにおいて結合部分として使用されることが当技術分野において周知である(例えば、Sentman 2014 Cancer J. 20 156-159; Guedan 2019 Mol Ther Methods Clin Dev. 12 145-156、を参照されたい)。当技術分野で知られている、または当技術分野で知られている手段を使用して抗原に対して生成された任意のscFvは、結合部分として使用され得る。
【0077】
CARの抗原結合能は、細胞外scFvによって規定される。scFvの形式は、一般に、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHのいずれかの配向で、柔軟なペプチド配列によって連結された2つの可変ドメインである。scFv内の可変ドメインの配向は、scFvの構造に応じて、CARが樹状細胞表面で発現するかどうか、またはCAR-DCが抗原およびシグナルを標的化するかどうかに寄与する場合がある。さらに、可変ドメインリンカーの長さおよび/または組成は、scFvの安定性または親和性に寄与することができる。
【0078】
CAR分子の重要な要素であるscFvは、腫瘍対正常組織の特異性や標的化の差に影響を与えるために、慎重に設計および操作され得る。
【0079】
典型的には、細胞外リガンド結合ドメインは、膜貫通ドメイン(Tm)によりキメラ抗原受容体(CAR)のシグナル伝達ドメインに連結される。膜貫通ドメインは、細胞膜を通過し、CARをDC表面に固定し、細胞外リガンド結合ドメインをシグナル伝達ドメインに連結し、DC表面におけるCARの発現に影響を与える。本開示における膜貫通ドメインの際立った特徴は、DCの表面で発現して、予め定義された標的細胞に対する免疫細胞応答を誘導する能力である。膜貫通ドメインは、天然または合成の供給源に由来し得る。あるいは、本開示の膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来するものであってもよい。
【0080】
本開示の膜貫通ポリペプチドの非限定的な例としては、T細胞受容体のCD8アルファまたはベータ、アルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CDS0、CD86、CD134、CD137およびCD154が挙げられる。あるいは、膜貫通ドメインは合成であり、主に疎水性アミノ酸残基(例えば、ロイシンおよびバリン)を含み得る。
【0081】
膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域をさらに含むことができる。「ヒンジ領域」という用語は、一般に、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のオリゴまたはポリペプチドを意味する。特に、ヒンジ領域は、細胞外リガンド結合ドメインにより柔軟性とアクセス性を与えるために使用される。ヒンジ領域は、最大300アミノ酸、好ましくは5~100アミノ酸、最も好ましくは8~50アミノ酸を含んでもよい。ヒンジ領域は、CD28、4-1BB(CD137)、OX-40(CD134)、CD3ζ、T細胞受容体αまたはβ鎖、CD45、CD4、CD5、CD8b、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、ICOS、CD154または抗体の定常領域のすべてもしくは部分に由来していてもよい。あるいは、ヒンジ領域は、天然に存在するヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、またはヒンジ領域は、完全に合成のヒンジ配列であってもよい。一実施形態では、ヒンジドメインは、ヒトCD8α、FcγRIIIα受容体、またはIgGlの一部を含み、それらに少なくとも80%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有する。
【0082】
スペーサーとも称されるヒンジは、結合ユニットを膜貫通ドメインから分離する、CARの細胞外構造領域内に存在する。ヒンジは、標的への樹状細胞の近接を確実にすることが可能な任意の部分であり得る。ヒンジは、標的へのDCの近接を確実にすることが可能な任意の部分であり得る(例えばCD8ベースのヒンジ)。受容体の細胞外部分全体に基づくCARを除外して、CAR(例えばCAR T)細胞の大部分は、免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)様ドメインヒンジまたはCD8ヒンジを伴って設計されるが、膜貫通ドメインと標的結合ドメインとの間のスペースであると証明される任意のタンパク質配列は、有効なヒンジとして機能し得る。
【0083】
ヒンジは、一般的に、効率的なCAR発現および活性のための安定性を供給する。また、ヒンジ(また膜貫通ドメインと組み合わせたヒンジ)は、標的への適切な近接を確実にする。
【0084】
また、ヒンジは、標的化抗原に接近するための可動性を提供する。所与のCARの最適スペーサー長は、標的化エピトープの位置に依存し得る。長いスペーサーは、CARへ余分の可動性を提供することができ、膜近位エピトープまたは複雑なグリコシル化抗原へのより良い接近を可能にする。短いヒンジを有するCARは、膜遠位エピトープに結合することにおいてより有効であり得る。スペーサーの長さは、免疫学的シナプス形成のための適当な細胞間距離を提供するために重要であり得る。そのため、ヒンジは、適宜、個々のエピトープについて最適化してもよい。
【0085】
ここで、ヒンジは、膜貫通ドメインに作動可能に連結され得る。
【0086】
細胞外シグナル伝達ドメインは、シグナル伝達を伝播させるためにCARコンストラクトに組み込んでもよい。細胞外シグナル伝達ドメインは、ヒンジ領域にクローニングしてもよいが、標的に基づいて選択してもよい。
【0087】
シグナルペプチドは、分泌タンパク質または膜貫通タンパク質の細胞膜および/または細胞表面への輸送を方向付けて、ポリペプチドの正確な局在化を可能にする。特に、本開示のシグナルペプチドは、付加されたポリペプチド、すなわち、CAR受容体を細胞膜へ方向付け、付加されたポリペプチドの細胞外リガンド結合ドメインは細胞表面上に提示され、付加されたポリペプチドの膜貫通ドメインは細胞膜にまたがり、付加されたポリペプチドのシグナル伝達ドメインは細胞の細胞質部分内に存在する。一実施形態において、シグナルペプチドは、ヒトCD8αからのシグナルペプチドである。機能的断片は、付加されたポリペプチドを細胞膜および/または細胞表面へ方向付ける、CD8αシグナルペプチドの少なくとも10個のアミノ酸の断片として定義される。
【0088】
本開示のCAR-DCは、1つまたは複数の別個のCARコンストラクトを含み得る。例えば、デュアル(dual)CAR-DCは、第1の細胞外リガンド結合ドメインの配列をコードするタンパク質を、1つまたは複数の共刺激性ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含有するウイルスベクターへクローニングし、第2の細胞外リガンド結合ドメインの配列をコードする第2のタンパク質を、1つまたは複数の追加の共刺激性ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含有する同じウイルスベクターへクローニングすることにより生成され、2つのCARコンストラクトが同じベクターから発現するプラスミドをもたらし得る。タンデムCAR-DCは、2つの異なる細胞表面分子と相互作用することが可能な2つの別個の細胞外リガンド結合ドメインを含む単一のキメラ抗原ポリペプチドを有するDCであり、細胞外リガンド結合ドメインは、可動性リンカーによって互いに結合され、1つまたは複数の共刺激性ドメインを共有し、第1または第2の細胞外リガンド結合ドメインの結合は、1つまたは複数の共刺激性ドメインおよびシグナル伝達ドメインを通してシグナル伝達する。
【0089】
DCまたはそのプロジェニターの遺伝子改変は、実質的に均質な細胞組成に組換えDNAコンストラクトを形質導入することにより達成され得る。ある特定の実施形態において、レトロウイルスベクター(ガンマ-レトロウイルスまたはレンチウイルスのいずれか)は、DNAコンストラクトを細胞に導入するために用いられる。例えば、CARをコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルスベクターへクローニングしてもよく、発現は、その内因性プロモーターから駆動しても、レトロウイルスの長い末端反復から駆動しても、目的の標的細胞種に特異的なプロモーターから駆動してもよい。他のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターもまた使用してもよい。
【0090】
DCまたはそのプロジェニターの、CARを含めるための最初の遺伝子改変のために、レトロウイルスベクターが一般的に形質導入に用いられるが、しかしながら、他の任意の好適なウイルスベクターまたは非ウイルスデリバリー系も使用され得る。CARは、単一のマルチシストロン性発現カセットにおいて、単一のベクターの多数の発現カセットにおいて、または多数のベクターにおいて補助分子(例えばサイトカイン)を伴って構築され得る。ポリシストロン性発現カセットを生じるエレメントの例には、様々なウイルスおよび非ウイルス配列内リボソーム進入部位(IRES:Internal Ribosome Entry Site、例えば、FGF-1 IRES、FGF-2 IRES、VEGF IRES、IGF-II IRES、NF-κB IRES、RUNX1 IRES、p53 IRES、A型肝炎IRES、C型肝炎IRES、ペスチウイルスIRES、アフトウイルスIRES、ピコルナウイルスIRES、ポリオウイルスIRESおよび脳心筋炎ウイルスIRES)ならびに切断可能なリンカー(例えば、2Aペプチド、例えば、P2A、T2A、E2AおよびF2Aペプチド)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、本明細書において開示される任意のベクターまたはCARは、P2Aペプチドを含み得る。また、レトロウイルスベクターと適切なパッケージング系統との組合せは好適であり、ここでは、カプシドタンパク質は、ヒト細胞に感染するのに機能的である。様々な広宿主性ウイルス産生細胞系が公知であり、非限定的に、PA12(Miller, et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:431-437);PA317(Miller, et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:2895-2902);およびCRIP(Danos, et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:6460-6464)が含まれる。非広宿主性粒子、例えば、VSVG、RD114またはGALVエンベロープにより偽型化した粒子、および本技術分野において公知の他の任意のものも、好適である。
【0091】
また、可能な形質導入方法は、例えばBregni, et al. (1992) Blood 80:1418-1422の方法による、細胞と産生細胞との直接的共培養;または例えばXu, et al. (1994) Exp. Hemat. 22:223-230およびHughes, et al. (1992) J Clin. Invest. 89:1817の方法による、適切な増殖因子およびポリカチオンを伴ってもしくは伴わずに、ウイルス上清単独もしくは濃縮したベクターストックと共に培養することを含む。
【0092】
他の形質導入ウイルスベクターは、DCまたはそのプロジェニターを改変するために使用され得る。ある特定の実施形態において、選択されたベクターは、高効率の感染ならびに安定な組込みおよび発現を呈する(例えば、Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997;Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996;Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997;Naldini et al., Science 272:263-267, 1996;およびMiyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997を参照されたい)。使用され得る他のウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルスまたはヘルペスウイルス、例えばエプスタイン・バーウイルスを含む(また、例えば、Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990;Friedman, Science 244:1275-1281, 1989;Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614, 1988;Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990;Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991;Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987;Anderson, Science 226:401-409, 1984;Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991;Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989;LeGal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993;およびJohnson, Chest 107:77S-83S, 1995のベクターを参照されたい)。レトロウイルスベクターは、特に十分に開発され、臨床環境において使用されている(Rosenberg et al., N. Engl. J. Med 323:370, 1990;Anderson et al.、米国特許第5,399,346号)。
【0093】
非ウイルス手法もまた、DCまたはそのプロジェニターの遺伝子改変に用いることができる。例えば、核酸分子は、リポフェクション(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987;Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990;Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989;Staubinger et al., Methods in Enzymology 101:512, 1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリシンコンジュゲーション(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263:14621, 1988;Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)の存在下において、または外科的条件下におけるマイクロインジェクション(Wolff et al., Science 247:1465, 1990)によって核酸を投与して、DCまたはそのプロジェニターに導入され得る。遺伝子移行のための他の非ウイルス手段には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔およびプロトプラスト融合を使用するインビトロにおけるトランスフェクションが含まれる。また、リポソームは、DNAの、細胞へのデリバリーに潜在的に有益であり得る。また、正常な遺伝子の、対象の罹患した組織への移植は、正常な核酸をエクスビボにおいて培養可能な細胞種(例えば、初代自家細胞もしくは初代異種細胞またはそれらの後代)へと移行し、その後、細胞(またはその子孫)を標的化組織へと注射するかまたは全身的に注射することによって達成することができる。また、組換え受容体は、トランスポゼースまたは標的化ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼもしくはTALEヌクレアーゼ、CRISPR)を使用して派生または取得され得る。一過性発現は、RNA電気穿孔によって得ることができる。
【0094】
CRISPR(Clustered regularly-interspaced short palindromic repeats)系は、原核細胞において発見されたゲノム編集ツールである。ゲノム編集に利用される場合、系は、Cas9(crRNAをそのガイドとして利用してDNAを改変することが可能なタンパク質)と、CRISPR RNA[crRNA;tracrRNAに結合する領域(一般的にヘアピンループ型において)と共に、Cas9を宿主DNAの正確な区域へとガイドするためのCas9により使用されるRNAを含有し、Cas9と活性複合体を形成する]と、トランス活性化crRNA(tracrRNA;crRNAに結合し、Cas9と活性複合体を形成する)と、適宜のDNA修復鋳型の区域(細胞修復プロセスをガイドして、特定のDNA配列の挿入を可能にするDNA)とを含む。CRISPR/Cas9は多くの場合、プラスミドを用いて、標的細胞へトランスフェクトされる。crRNAは、Cas9が細胞において標的DNAを特定し、それに直接的に結合するために使用する配列であるので、これは、各適用のために設計される必要がある。また、CAR発現カセットを有する修復鋳型は、切断のいずれかの側の配列と重複し、かつ挿入配列をコードしなければならないので、それは、各適用のために設計される必要がある。多数のcrRNAおよびtracrRNAは、共にパッケージングされてシングルガイドRNA(sgRNA:single-guide RNA)を形成し得る。このsgRNAは、Cas9遺伝子と共に接合され、プラスミド内に作製され、細胞へトランスフェクトされ得る。
【0095】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN:zinc-finger nuclease)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより生成される人工的制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、特定のDNA配列を標的化するように操作してもよく、このことは、ジンクフィンガーヌクレアーゼがゲノム内の所望の配列を標的化することを可能にする。個々のZFNのDNA結合ドメインは、典型的に、複数の個々のジンクフィンガー反復配列を含有し、各々は複数の塩基対を認識し得る。新しいジンクフィンガードメインを生成するための最も一般的な方法は、公知の特異性を有する、より小さいジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。ZFNにおける最も一般的な切断ドメインは、II型制限エンドヌクレアーゼFokIの非特異的切断ドメインである。内因性相同組換え(HR:homologous recombination)機構、およびCAR発現カセットを有する相同DNA鋳型を使用して、ZFNは、CAR発現カセットをゲノムに挿入するために使用され得る。標的化配列がZFNにより切断されると、HR機構は、損傷した染色体と相同DNA鋳型との間の相同性を探索し、その後、染色体の2つの切断末端間の鋳型の配列を複製し、これにより、相同DNA鋳型がゲノムに組み込まれる。
【0096】
転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN:transcription activator-like effector nuclease)は、DNAの特定の配列を切断するように操作され得る制限酵素である。TALEN系は、ZFNとほとんど同じ原理において作動する。それらは、転写アクチベーター様エフェクターDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより生成される。転写アクチベーター様エフェクター(TALE)は、特定のヌクレオチドについての強い認識を有する2つの可変性の位置を伴う33~34個のアミノ酸反復モチーフからなる。これらのTALEのアレイを組み立てることにより、TALE DNA結合ドメインは、所望のDNA配列に結合するように操作され、これにより、ヌクレアーゼを、ゲノム内の特定の場所を切断するようにガイドすることができる。ポリヌクレオチド療法における使用のためのcDNA発現は、任意の好適なプロモーター[例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV:cytomegalovirus)、シミアンウイルス40(SV40:simian virus 40)またはメタロチオネインプロモーター]から方向付けられ、任意の適切な哺乳動物調節エレメントまたはイントロン(例えば、伸長因子1aエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)により調節され得る。例えば、所望の場合、特定の細胞種において遺伝子発現を優先的に方向付けることが公知のエンハンサーを使用して、核酸の発現を方向付けることができる。使用されるエンハンサーは、組織または細胞特異的エンハンサーとして特徴付けられるエンハンサーを含み得るが、これらに限定されない。あるいは、ゲノムクローンが治療用コンストラクトとして使用される場合、調節は、上記に説明されるプロモーターまたは調節エレメントのいずれかを含む、同族の調節配列により、または所望の場合異種の供給源に由来する調節配列により媒介され得る。
【0097】
得られる細胞は、非改変細胞のための条件と同様の条件下において増殖させてもよく、これにより、改変細胞を拡張し、様々な目的のために使用することができる。
【0098】
任意の標的化ゲノム編集法を使用して、本開示のCARを、本開示の免疫応答性細胞の1つまたは複数の内因性遺伝子座に配置することができる。ある特定の実施形態において、CRISPR系を使用して、本開示のCARを、本開示の免疫応答性細胞の1つまたは複数の内因性遺伝子座にデリバリーする。ある特定の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して、本開示のCARを、本開示の免疫応答性細胞の1つまたは複数の内因性遺伝子座にデリバリーする。ある特定の実施形態において、TALEN系を使用して、本開示のCARを、本開示の免疫応答性細胞の1つまたは複数の内因性遺伝子座にデリバリーする。
【0099】
ゲノム編集薬剤/系をデリバリーするための方法は、必要に応じて変動し得る。ある特定の実施形態において、選択されたゲノム編集法の成分は、1つまたは複数のプラスミドにおけるDNAコンストラクトとしてデリバリーされる。ある特定の実施形態において、成分は、ウイルスベクターによりデリバリーされる。一般的なデリバリー法には、電気穿孔、マイクロインジェクション、遺伝子銃、刺通(impalefection)、静水圧、持続点滴、超音波処理、マグネトフェクション(magnetofection)、アデノ随伴ウイルス、ウイルスベクターのエンベロープタンパク質偽型化、複製能を保持するベクターのシスおよびトランス作用エレメント、単純ヘルペスウイルスならびに化学物質媒体(例えば、オリゴヌクレオチド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子および細胞穿通性ペプチド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
本開示のCARの配置は、任意の内因性遺伝子座において行うことができる。
【0101】
また、本開示は、医薬組成物を提供する。医薬組成物は、活性成分としての複数のCAR-DCと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0102】
薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、結合剤、増量剤、緩衝剤、pH調節剤、崩壊剤、分散剤、保存料、潤滑剤、矯味剤、香味料または着色料であり得る。医薬組成物を形成するために利用される賦形剤の量および種類は、医薬科学の公知の原理に従って選択され得る。
【0103】
本開示のCAR-DCを含む組成物は、選択されたpHに緩衝されてもよい滅菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルション、分散液または粘性組成物として便利に提供され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固形組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物は、投与、とりわけ注射による投与にいくらかより便利である。他方で、粘性組成物は、適切な粘性範囲内に製剤化して、特定の組織とのより長い接触期間を提供することができる。液体または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る担体を含んでもよい。
【0104】
滅菌注射用溶液は、CAR-DCを、所望の通り様々な量の他の成分を含む、必要な量の適切な溶媒に組み込むことにより調製することができる。そのような組成物は、滅菌水、生理学的食塩水、グルコース、デキストロースその他などの好適な担体、希釈剤または賦形剤との混合物において存在してもよい。また、組成物を凍結乾燥してもよい。組成物は、所望の投与経路および調製物によって、湿潤剤、分散剤または乳化剤(例えばメチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘性向上添加物、保存料、香味料、着色料などの補助物質を含有してもよい。過度の実験を行うことなく、好適な調製物を調製するために、参照により本明細書に組み込まれる“REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE”, 17th edition, 1985などの標準のテキストを参照してもよい。
【0105】
抗微生物保存料、抗酸化物質、キレート剤および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌状態を向上させる様々な添加物を添加してもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより確実にすることができる。注射用医薬形態の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらされ得る。しかしながら、本開示の主題に従って、使用される任意の媒体、希釈剤または添加物は、CAR-DCまたはそれらのプロジェニターと適合性でなければならないであろう。
【0106】
組成物は、等張であり得る、すなわち、それらは、血液および涙液と同じ浸透圧を有し得る。組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、または他の薬学的に許容される薬剤、例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質を使用して達成することができる。塩化ナトリウムは、特にナトリウムイオンを含有する緩衝剤のためであり得る。
【0107】
所望の場合、組成物の粘性は、薬学的に許容される増粘剤を使用して選択されたレベルにおいて維持され得る。例えば、メチルセルロースは、直ちに使用可能かつ経済的に使用可能であり、取り扱いが容易である。他の好適な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の濃度は、選択される薬剤に依存し得る。重要な点は、選択された粘性を達成する量を使用することである。明らかに、好適な担体および他の添加物の選択は、正確な投与経路および特定の剤形、例えば、液体剤形の性質に依存する(例えば、組成物が、溶液に製剤化されるか、懸濁液に製剤化されるか、ゲルに製剤化されるか、または別の液体形態、例えば時間放出形態もしくは液体充填形態に製剤化されるか)。
【0108】
投与される細胞の量は、処置される対象について変動する。一実施形態において、約10~約1010個、約10~約10個、または約10~約10個の本開示のCAR-DCが、ヒト対象に投与される。より有効な細胞は、もっとより少数において投与してもよい。ある特定の実施形態において、少なくとも約1x10個、約2x10個、約3x10個、約4x10個または約5x10個の本開示のCAR-DCが、ヒト対象に投与される。ある特定の実施形態において、約1x10個~5x10個の本開示のCAR-DCが、ヒト対象に投与される。有効な用量と考えられ得る用量の正確な決定は、対象のサイズ、年齢、性別、体重および特定の対象の状態を含む、各対象に固有の因子に基づき得る。投与量は、本開示および当該技術分野の知識から当業者が容易に確認することができる。
【0109】
当業者は、細胞ならびに適宜の添加物、媒体および/または担体の、組成物中の量ならびに方法において投与されるべき量を容易に決定することができる。典型的に、任意の添加物[活性細胞(複数可)および/または薬剤(複数可)に加えて]は、リン酸緩衝食塩水中の0.001~50(重量)%溶液の量において存在し、活性成分は、約0.0001~約5重量%、約0.0001~約1重量%、約0.0001~約0.05重量%、または約0.001~約20重量%、約0.01~約10重量%、または約0.05~約5重量%などのマイクログラム~ミリグラムの単位において存在する。動物またはヒトに投与される任意の組成物について、以下のことが決定され得る:好適な動物モデル、例えばげっ歯類、例えばマウスにおける致死量(LD:lethal dose)およびLD50を決定することによるなどの毒性;好適な応答を誘発する、組成物(複数可)の投与量、その中の成分の濃度、および組成物(複数可)を投与するタイミング。そのような決定は、当業者の知識、本開示および本明細書において引用される文献から、過度の実験を必要としない。そして、逐次的投与のための時間は、過度の実験を行うことなく、確認することができる。
【0110】
本開示のCAR-DCを含む組成物は、抗原への免疫応答を誘導および/もしくは向上させるため、ならびに/または新生物、病原体感染もしくは感染性疾患を処置および/もしくは防止するために、対象へ全身的にまたは直接的に提供することができる。ある特定の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはそれを含む組成物は、腫瘍または目的の臓器(例えば、異常増殖に罹患している臓器)へ直接的に注射される。あるいは、本開示のCAR-DCまたはそれを含む組成物は、例えば循環系(例えば腫瘍血管系)への投与により、目的の臓器へ間接的に提供される。拡張剤および分化剤は、インビトロまたはインビボにおけるT細胞、NK細胞またはCTL細胞の産生を増大させるために、細胞または組成物の投与前、投与中または投与後に提供され得る。
【0111】
本開示のCAR-DCは、任意の生理学的に許容される媒体において、通常静脈内に投与してもよいが、また、それらは、骨、または細胞が再生および分化に適切な部位を見出し得る他の便利な部位(例えばリンパ管)に導入してもよい。通常、少なくとも約1x10個の細胞集団が投与される。本開示のCAR-DCは、精製細胞集団を含み得る。当業者は、蛍光活性化セルソーティング(FACS:fluorescence activated cell sorting)などの様々な周知の方法を使用して、集団中の本CAR-DCのパーセンテージを容易に決定することができる。本開示のCAR-DCを含む集団における好適な純度の範囲は、約50%~約55%、約5%~約60%、および約65%~約70%である。ある特定の実施形態において、純度は、約70%~約75%、約75%~約80%、または約80%~約85%である。ある特定の実施形態において、純度は、約85%~約90%、約90%~約95%、および約95%~約100%である。投与量は、当業者が容易に調整することができる(例えば、純度の減少は、投与量の増大を必要とし得る)。細胞は、注射、カテーテルその他により導入することができる。
【0112】
本開示の組成物は、本開示のCAR-DCまたはそれらのプロジェニターと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であり得る。投与は、自家または異種であり得る。例えば、CAR-DCまたはプロジェニターは、ある対象から得、同じ対象または異なる、適合性の対象に投与してもよい。末梢血由来CAR-DCまたはそれらの後代(例えば、インビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)は、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射または非経口投与により投与してもよい。本開示の主題の治療組成物(例えば本開示のCAR-DCを含む医薬組成物)を投与する場合、それは、単位投与量注射用形態(溶液、懸濁液、エマルション)において製剤化することができる。
【0113】
II.方法
本明細書において開示される細胞、および/または本明細書において開示される方法を使用して生成される細胞は、がん、自己免疫疾患、感染性疾患および他の状態の処置、または処置のための医薬の製造のために、免疫療法および養子細胞移入において使用され得る。本開示の一態様は、適応抗腫瘍T細胞応答を刺激する改変樹状細胞を提供する。
【0114】
本明細書において説明される通り、適応抗腫瘍T細胞応答は、CAR-DCからの抗原交差提示または交差プライミングにより開始または向上することができる。交差提示とは、改変樹状細胞が、抗原(例えば腫瘍細胞抗原)を取り込み、プロセスし、MHC I分子との複合体における細胞表面上に提示するプロセスを説明する。その後、抗原は、T細胞によって認識される。交差プライミングとは、T細胞による抗原認識が、T細胞が活性化されることをもたらすプロセスを説明する。その後、活性化T細胞は、増殖の向上、持続、および/またはその抗原を発現する腫瘍細胞への標的化細胞傷害性の向上が可能になる。
【0115】
本明細書において説明される通り、適応抗腫瘍T細胞応答は、非限定的な例において、T細胞機能の増大を含み得る。例えば、T細胞機能は、細胞傷害性T細胞リンパ球(CTL:cytotoxic T cell lymphocyte)アッセイにより評価することができ、ここでは、増大比のエフェクターT細胞を、標的腫瘍細胞と規定の時間の間(一般的に4時間)混合し、腫瘍ルシフェラーゼ活性により腫瘍細胞殺滅を定量する。
【0116】
本明細書において説明される通り、また、適応抗腫瘍T細胞応答は、T細胞活性化または増殖の増大を含み得る。例えば、T細胞活性化または増殖は、増殖についてFACS解析によりCD4およびCD8 T細胞分裂を評価することによって、またはサイトカイン放出などの活性化マーカーについて評価することによって、測定することができる。
【0117】
本明細書において説明される通り、適応抗腫瘍T細胞応答の成功は、腫瘍細胞細胞傷害性、さらには腫瘍細胞ファゴサイトーシス、および腫瘍容量における低減をもたらし得る。抗腫瘍T細胞応答は、CARにより標的化される抗原陽性(Ag)腫瘍を直接的に除去し、交差提示およびエピトープ拡大を通してCAR-Ag腫瘍細胞(CARにより直接的に認識されない)を間接的に除去することができる。エピトープ拡大とは、元々免疫応答を誘発した抗原を超えるT細胞および抗体特異性を含める免疫応答の広幅化を指す。例えば、エピトープ拡大は、CARにより標的化される抗原を発現しない腫瘍細胞が、T細胞により標的化されることをもたらし得る。
【0118】
したがって、本開示は、対象において適応抗腫瘍T細胞応答を刺激する方法であって、一般的に、有効量のCAR-DCを対象に投与することを含む方法を提供する。CAR-DCは、腫瘍またはがん細胞を標的化し、腫瘍またはがん細胞を貪食し、腫瘍抗原を対象のT細胞へ交差提示する。したがって、CAR-DCは、抗原陽性(Ag)腫瘍もしくはがん細胞を除去のために直接的に標的化し、かつ/または交差提示およびエピトープ拡大を通してCAR-抗原陰性(Ag)腫瘍もしくはがん細胞を除去のために間接的に標的化する。
【0119】
別の実施形態において、本開示は、対象においてがんの再発を低減または防止するための方法であって、一般的に、がんまたは腫瘍細胞が発現する抗原を標的化する有効量のCAR-DCを対象に投与することを含む方法を提供する。再発は、がんが最初の処置後に戻る場合に起こる。これは、初期のまたは元のがんが処置された数週間後、数カ月後、またはさらには数年後に起こり得る。本明細書において説明される通り、本開示は、永続的な適応抗腫瘍T細胞応答を産生することが示され、例えば実施例1(vi)を参照されたい。
【0120】
一部の実施形態において、本開示は、対象においてがんまたは腫瘍を処置するための方法であって、一般的に、がんまたは腫瘍細胞が発現する抗原を標的化する有効量のCAR-DCを対象に投与することを含む方法を提供する。この処置方法は、固形腫瘍に特に効果的であり得るが、任意の形態のがんに対して方向付けられ得る。伝統的なキメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、これまで臨床試験において固形腫瘍における1%のみの完全奏効を呈する。固形腫瘍は、すべての細胞が標的抗原を発現しない場合、CAR T認識を回避する。患者において適応免疫応答を生じることの成功は、両方の型の免疫療法の失敗を克服し得る。樹状細胞(DC)は、適応免疫応答を開始することにおいて決定的である。CAR-DCは、CARにより標的化される抗原陽性(Ag+)腫瘍を直接的に除去し、かつエピトープ拡大を通してAg- 固形腫瘍細胞(CARにより認識されない)を間接的に除去する新しい治療策を可能にする。
【0121】
腫瘍またはがんは、膀胱、乳房、骨、子宮頸部、筋肉、脳および神経系、内分泌系、子宮内膜、眼、口唇、口腔、肝臓、肺、胃腸管系(例えば、結腸、直腸)、尿生殖器および婦人科系(例えば、子宮頸部、卵巣)、頭頸部、造血(hematopoetic)系、腎臓、皮膚、膵臓、前立腺、甲状腺、骨、胸部および呼吸系、または悪性変質を経験した他の任意のヒト組織において起こる(か、またはそれらから生じる転移性がんである)任意の腫瘍またはがんであり得る。固形腫瘍は、血液細胞以外の(other)任意のヒト細胞に由来する腫瘍である。
【0122】
がんは、血液悪性腫瘍または固形腫瘍であり得る。血液悪性腫瘍には、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫およびそれらのサブタイプが含まれる。リンパ腫は、多くの場合、根底にある悪性細胞の種類に基づき、様々な方法で分類することができ、ホジキンリンパ腫(多くの場合、リード・シュテルンベルク細胞のがんであるが、またときにはB細胞においても生じる;すべての他のリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、および本明細書において定義され、当該技術分野において公知のその他のものを含む。
【0123】
B細胞リンパ腫には、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)、慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)/小リンパ球性リンパ腫(SLL:small lymphocytic lymphoma)および本明細書において定義され、当該技術分野において公知のその他のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
T細胞リンパ腫には、T細胞急性リンパ性白血病/リンパ腫(T-ALL:T-cell acute lymphoblastic leukemia/lymphoma)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)、T細胞慢性リンパ性白血病(T-CLL:T-cell chronic lymphocytic leukemia)、セザリー症候群および本明細書において定義され、当該技術分野において公知のその他のものが含まれる。
【0125】
白血病には、急性骨髄性白血病[AML:acute myeloid(またはmyelogenous) leukemia]、慢性骨髄性白血病[CML:chronic myeloid(またはmyelogenous) leukemia]、急性リンパ性白血病[ALL:acute lymphocytic(またはlymphoblastic) leukemia]、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(ときにはリンパ腫として分類される)および本明細書において定義され、当該技術分野において公知のその他のものが含まれる。
【0126】
形質細胞悪性腫瘍は、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫および多発性骨髄腫を含む。
【0127】
一部の実施形態において、医薬は、患者においてがんを処置するために、特に固形腫瘍、例えば黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫または癌腫、例えば脳、頭頸部、乳房、肺(例えば非小細胞肺がん、NSCLC:non-small cell lung cancer)、生殖器系(例えば卵巣)、上部消化管、膵臓、肝臓、腎臓系(例えば腎臓)、膀胱、前立腺および結腸直腸の腫瘍の処置のために使用され得る。
【0128】
別の実施形態において、医薬は、患者においてがんを処置するために、特に、多発性骨髄腫および急性骨髄性白血病(AML)から選択される血液悪性腫瘍の処置のため、ならびにT細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、非ホジキンリンパ腫およびT細胞慢性リンパ性白血病(T-CLL)から選択されるT細胞悪性腫瘍のために使用され得る。
【0129】
本開示の方法により処置され得る新生物またはがんの非限定的な例には、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫(小児小脳もしくは大脳)、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路および視床下部神経膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、胃腸)、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫(原発性)、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング腫瘍ファミリーのユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児)、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(gastric/stomach)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍(小児頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(成人、小児脳幹、小児大脳星状細胞腫、小児視経路および視床下部)、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞(肝)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部および視経路神経膠腫(小児)、眼内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病(急性リンパ性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、有毛細胞)、口唇および口腔がん、肝がん(原発性)、肺がん(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系)、マクログロブリン血症(ワルデンシュトレーム型)、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫(小児)、黒色腫、眼内黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫(成人悪性、小児)、潜在性原発性転移性頸部扁平上皮がん、口内のがん、多発性内分泌腫瘍症候群(小児)、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(慢性)、骨髄性白血病(成人急性、小児急性)、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害(慢性)、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、上皮性卵巣がん(表面上皮-間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、膵がん(膵島細胞)、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌(腎がん)、腎盂および尿管移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(小児)、唾液腺がん、肉腫(ユーイング腫瘍ファミリー、カポジ、軟組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫、黒色腫)、皮膚癌(メルケル細胞)、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、潜在性原発性(転移性)頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児)、T細胞リンパ腫(皮膚性)、T細胞白血病およびリンパ腫、精巣がん、咽頭がん(throat cancer)、胸腺腫(小児)、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、甲状腺がん(小児)、腎盂および尿管移行上皮がん、絨毛性腫瘍(妊娠性)、原発不明部位(成人、小児)、尿管および腎盂移行上皮がん、尿道がん、子宮がん(子宮内膜)、子宮肉腫、膣がん、視経路および視床下部神経膠腫(小児)、外陰がん、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症またはウィルムス腫瘍(小児)が含まれ得る。
【0130】
したがって、本開示の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法である。「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、それを必要とする対象への、熟練し、かつ認可された専門家による医療ケアの提供を指す。医療ケアは、診断検査、治療処置および/または予防もしくは防止策であり得る。治療処置および予防処置の目的は、不要な生理学的変化または疾患/障害を防止または減速(減少)することである。治療処置または予防処置の有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の縮減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的でも全体的でも)が含まれるが、これらに限定されない。また、「処置」とは、処置を受容しない場合の予測される生存率と比較した生存率の延長を意味し得る。処置を必要とする者は、既に疾患、状態もしくは障害を有している者、および疾患、状態もしくは障害を有しやすい者、または疾患、状態もしくは障害が防止されるべき者を含む。
【0131】
また、腫瘍またはがんを低減または除去するために、治療有効量の本明細書において説明される樹状細胞ベースの療法の投与を必要とする対象において、増殖性疾患、障害または状態(例えば、腫瘍もしくはがんまたはそれらの転移)を処置または防止するプロセスが提供される。
【0132】
本明細書において説明される方法は、一般的に、それを必要とする対象に対して行われる。本明細書において説明される治療方法を必要とする対象は、がんまたは増殖性疾患、障害もしくは状態を有するか、これらと診断されたか、これらを有することが疑われるか、またはこれらを発症するリスクを有する対象であり得る。処置の必要性の決定は、典型的に、問題の疾患または状態と一致する病歴、身体検査または診断検査によって評価される。本明細書において説明される方法によって処置可能な様々な状態の診断は、当該技術分野の技術の範囲内である。対象は、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、サル、ハムスター、モルモットおよびヒトまたはニワトリなどの哺乳動物を含む動物対象であってもよい。例えば、対象は、ヒト対象であり得る。
【0133】
一般的に、CAR-DC療法の安全かつ有効な量は、例えば、対象において所望の治療効果をもたらし得る一方で、不要な副作用を最小限にする量である。様々な実施形態において、有効量の、本明細書において説明される樹状細胞ベースの療法は、腫瘍増殖もしくはがん進行を実質的に阻害するか、腫瘍もしくはがんの進行を減速させるか、または腫瘍もしくはがんの発症を制限し得る。
【0134】
本明細書において説明される処置にて使用される場合、治療有効量のCAR-DC療法は、純粋な形態において、または薬学的に許容される塩形態が存在する場合薬学的に許容される塩形態において、薬学的に許容される賦形剤を伴ってまたは伴わずに、用いることができる。例えば、本開示の化合物は、増殖性疾患、障害または状態を低減または治癒するのに十分な量において、任意の医療処置に適用可能な、妥当なベネフィット/リスク比にて投与され得る。
【0135】
単一剤形を産生するために薬学的に許容される担体と組み合わせてもよい、本明細書において説明される組成物の量は、処置される宿主および特定の投与様式によって変動する。必要な治療有効量は、いくつかの個々の用量の投与により達成することができるので、各剤形の個々の用量中に含有される薬剤の単位内容量は、それ自体で治療有効量を構成する必要はないことが当業者により理解される。
【0136】
本明細書において説明される組成物の毒性および治療有効性は、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための細胞培養物または実験動物における標準の医薬手技によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、比LD50/ED50として表され得る治療指数であり、ここで、より大きな治療指数は、一般的に、当該技術分野において最適であると理解される。
【0137】
任意の特定の対象についての特定の治療有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;対象の年齢、体重、健康全般、性別および食事;投与時間;投与経路;用いられる組成物の排出速度;処置の持続期間;用いられる特定の化合物と組合せにおいてまたは同時に使用される薬物;ならびに医療分野において周知のそのような因子を含む様々な因子に依存する(例えば、Koda-Kimble et al. (2004) Applied Therapeutics: The Clinical Use of Drugs, Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0781748453;Winter (2003) Basic Clinical Pharmacokinetics, 4th ed., Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0781741475;Sharqel (2004) Applied Biopharmaceutics & Pharmacokinetics, McGraw-Hill/Appleton & Lange, ISBN 0071375503を参照されたい)。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要な用量よりも低いレベルの組成物の用量を開始すること、および所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増大させることは、当該技術分野の技術の十分に範囲内である。所望の場合、有効な1日用量を、投与の目的のために多数の用量に分割してもよい。その結果、単一の用量組成物は、1日用量を構成するそのような量またはその約数を含有し得る。しかしながら、本開示の化合物および組成物の1日全体の使用量は、妥当な医療的判断の範囲内において主治医によって決定されることが理解される。
【0138】
ここでまた、本明細書において説明される状況、疾患、障害および状態ならびにその他の各々は、本明細書において説明される組成物および方法からベネフィットを得ることができる。一般的に、状況、疾患、障害または状態を処置することは、状況、疾患、障害または状態に罹患しているかまたはかかりやすくなっている場合があるが、その臨床または亜臨床症状をまだ経験または提示しない哺乳動物において、臨床症状の出現を防止または遅延させることを含む。また、処置することは、状況、疾患、障害または状態を阻害すること、例えば、疾患またはその少なくとも1つの臨床もしくは亜臨床症状の発症を阻止または低減することを含み得る。さらに、処置することは、疾患を軽減すること、例えば、状況、疾患、障害もしくは状態またはその臨床もしくは亜臨床症状のうちの少なくとも1つの退縮を引き起こすことを含み得る。処置される対象へのベネフィットは、統計的に有意であるか、または対象にとってもしくは医師にとって少なくとも知覚可能であるかのいずれかであり得る。
【0139】
CAR-DC療法の投与は、単一の事象として又は処置の時間過程にわたり起こり得る。例えば、樹状細胞ベースの療法は、毎日、毎週、隔週にまたは毎月投与してもよい。より慢性状態については、処置は、数週間~数カ月間または数年間に延長することができる。
【0140】
本明細書において説明される方法に従う処置は、がんまたは増殖性疾患、障害もしくは状態についての従来型処置様式の前に、それと同時に、またはその後に行ってもよい。
【0141】
CAR-DC療法は、抗がん療法または別の薬剤などの別の薬剤と同時にまたは逐次的に投与してもよい。例えば、樹状細胞ベースの療法は、化学療法剤、別の形態の免疫療法または放射線療法などの別の薬剤の前、後、またはそれと同時に投与してもよい。同時投与は、各々が樹状細胞ベースの療法、および化学療法剤、追加の免疫療法または放射線療法などの別の薬剤のうちの1つまたは複数を含有する、別々の組成物の投与を通して行ってもよい。同時投与は、樹状細胞ベースの療法、抗生物質剤、抗炎症剤、または化学療法剤、免疫療法もしくは放射線療法などの別の薬剤のうちの2つまたはそれ以上を含有する1つの組成物の投与を通して行ってもよい。
【0142】
本開示の、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸注、埋め込みまたは移植によって行われる。本明細書において説明されるCAR-DC組成物、すなわち、モノCAR、デュアルCAR、タンデムCARは、患者に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋内に、静脈内もしくはリンパ内注射により、または腹腔内に投与され得る。一実施形態において、本開示の細胞組成物は、好ましくは静脈内注射により投与される。
【0143】
上記に示される通り、CAR-DC細胞またはCAR-DC集団の投与は、以下の範囲内のすべての整数値の細胞数を含む、体重1kg当たり細胞10~10個、好ましくは細胞10~10個/体重1kgの投与からなり得る。CAR-DCまたはCAR-DC集団は、1つまたは複数の用量において投与され得る。別の実施形態において、有効量のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、単一の用量として投与される。別の実施形態において、有効量の細胞は、1用量を超える用量として経時的に投与される。投与時間は、健康ケア提供者の判断の範囲内であり、患者の臨床状態に依存する。CAR-DCまたはCAR-DC集団は、血液バンクまたはドナーなどの任意の供給源から得ることができる。患者の要求は変動するが、特定の疾患または状態についての所与のCAR-DC集団(複数可)の有効量の最適範囲の決定は、当該技術分野の技術の範囲内である。有効量とは、治療効果または予防効果を提供する量を意味する。投与される投与量は、患者レシピエントの年齢、健康および体重、同時処置があるならば同時処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果の性質に依存する。
【0144】
別の実施形態において、有効量のCAR-DCもしくはCAR-DC集団またはそれらのCAR-DCを含む組成物は、非経口投与される。投与は、静脈内投与であり得る。CAR-DCもしくはCAR-DC集団またはそれらのCAR-DCを含む組成物の投与は、腫瘍内への注射により直接的に行うことができる。
【0145】
本開示の一実施形態において、CAR-DCまたはCAR-DC集団は、樹状細胞またはT細胞増殖および持続性を向上させ、非限定的にFlt3L、IL-2、IL-7およびIL-15またはそれらのアナログを含むサイトカインによる処置、またはサイトカインの、CAR-DC内からの発現を含むがこれらに限定されない任意の数の関連処置様式と併せて、例えば、その前に、それと同時にまたはその後に患者に投与される。
【0146】
一部の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、非限定的に、TGFβ、インターロイキン10(IL-10)、アデノシン、VEGF、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ1(IDO1)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ2(IDO2)、トリプトファン2-3-ジオキシゲナーゼ(TDO)、乳酸塩、低酸素状態、アルギナーゼおよびプロスタグランジンE2の阻害剤を含む、免疫抑制性経路を阻害する薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0147】
別の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、非限定的に、抗CTLA4(例えばイピリムマブ)、抗PD1(例えばペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ)、抗PDL1(例えばアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)、抗PDL2、抗BTLA、抗LAG3、抗TIM3、抗VISTA、抗TIGITおよび抗KIRを含む、T細胞チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
【0148】
別の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、非限定的に、CD28、ICOS、OX-40、CD27、4-1BB、CD137、GITRおよびHVEMを刺激する抗体を含む、T細胞アゴニストと組み合わせて使用してもよい。
【0149】
別の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、非限定的に、レトロウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびポックスウイルスを含む、治療用腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて使用してもよい。
【0150】
別の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、非限定的に、TLR3、TLR4、TLR7およびTLR9アゴニストを含む、トール様受容体アゴニストなどの免疫刺激療法と組み合わせて使用してもよい。
【0151】
別の実施形態において、本開示のCAR-DCまたはCAR-DC集団は、環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS:cyclic GMP-AMP synthase)などのインターフェロン遺伝子刺激薬(STING:stimulator of interferon gene)アゴニストと組み合わせて使用してもよい。
【0152】
III.キット
また、キットが提供される。そのようなキットは、本明細書において説明される薬剤または組成物、およびある特定の実施形態においては投与のための使用説明書を含み得る。そのようなキットは、本明細書において説明される方法の性能を促進し得る。キットとして供給される場合、組成物の異なる成分は、別々の容器に包装され、使用直前に混合されてもよい。成分には、DC細胞、DCプロジェニター、DC前駆体もしくはそれらの改変細胞、CARコンストラクトもしくはCAR-DC細胞またはCARコンストラクトをコードする核酸配列およびデリバリー系が含まれるが、これらに限定されない。そのような、成分の別々の包装は、所望の場合、組成物を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイスにおいて提示され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックホイルを含み得る。また、そのような、成分の別々の包装は、ある特定の場合、成分の活性を失うことなく、長期保存を可能にし得る。
【0153】
また、キットは、別々の容器中に、例えば、別々に包装された凍結乾燥活性成分に添加される滅菌水または食塩水などの試薬を含み得る。例えば、密閉ガラスアンプルは、凍結乾燥成分を含有してもよく、別々のアンプル中に、滅菌水、滅菌食塩水または滅菌(sterile)を含有してもよく、それらの各々は、窒素などの中性非反応性気体下において包装されたものである。アンプルは、任意の好適な材料、例えばガラス、有機ポリマー、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、セラミック、金属、または試薬を保持するために典型的に用いられる他の任意の材料からなり得る。好適な容器の他の例は、アンプルと同様の物質から製作され得る瓶、およびアルミニウムまたは合金などのホイルで裏打ちした内部からなり得るエンベロープを含む。他の容器として、試験管、バイアル、フラスコ、瓶、シリンジなどが挙げられる。容器は、皮下注射針により貫通され得るストッパーを有する瓶のように、滅菌アクセスポートを有し得る。他の容器は、容易に除去可能な膜により分離される2つの区画を有してもよく、その膜は、除去すると成分が混合されることを可能にする。除去可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどであり得る。
【0154】
ある特定の実施形態において、キットは、使用説明材料を供給され得る。使用説明書は、紙もしくは他の基材上に印刷してもよく、かつ/または電子可読媒体もしくはビデオとして供給してもよい。詳細な使用説明書は、キットに物理的に伴わなくてもよく;代わりに、ユーザーは、キットの製造業者または販売業者により特定されるインターネットウェブサイトを案内される場合がある。
【0155】
本明細書において説明される対照試料または参照試料は、健康な対象からまたはランダム化した対象群からの試料であり得る。健康な対象または健康な対象群から以前に得られた参照値を、対照または参照試料の代わりに使用してもよい。また、対照試料または参照試料は、公知の量の検出可能な化合物を有する試料、または添加した試料であり得る。
【0156】
本発明の方法およびアルゴリズムは、コントローラーまたはプロセッサーに封入され得る。さらに、本発明の方法およびアルゴリズムは、コンピューター実行方法、またはそのようなコンピューター実行方法(単数もしくは複数)を行うための方法として具体化してもよく、また、コンピュータープログラムまたは他の機械可読使用説明書(本明細書において「コンピュータープログラム」)を含有する有形のまたは固定のコンピューター可読保存媒体の形態において具体化してもよく、ここで、コンピュータープログラムがコンピューターもしくは他のプロセッサー(本明細書において「コンピューター」)にロードされ、かつ/またはコンピューターによって実行される場合、コンピューターは、方法(単数または複数)を実施するための装置になる。そのようなコンピュータープログラムを含有する保存媒体として、例えば、フロッピーディスクおよびディスケット、コンパクトディスク(CD)-ROM(書き込み可能かどうかにかかわらず)、DVDデジタルディスク、RAMおよびROMメモリー、コンピューターハードドライブおよびバックアップドライブ、外付けハードドライブ、「サム」ドライブ、ならびにコンピューターによって可読の他の任意の保存媒体が挙げられる。また、方法(単数または複数)は、例えば、保存媒体に保存されるか、または電気伝導体、光ファイバーもしくは他の光伝導体などの伝送媒体にわたりまたは電磁放射線によって伝送されるかにかかわらず、コンピュータープログラムの形態において具体化してもよく、ここで、コンピュータープログラムがコンピューターにロードされ、かつ/またはコンピューターによって実行される場合、コンピューターは、方法(単数または複数)を実施するための装置になる。方法(単数または複数)は、特にプロセス(単数または複数)を実施するように構成された、汎用マイクロプロセッサーにおいてまたはデジタルプロセッサーにおいて実行され得る。汎用マイクロプロセッサーが用いられる場合、コンピュータープログラムコードは、マイクロプロセッサーの回路網を構成して、特定の論理回路配置を作出する。コンピューターによって可読の保存媒体には、コンピューターそれ自体によって、またはコンピューター使用説明書を読み取って、それらの使用説明書をコンピューターに提供し、その作動を制御する別の機械によって可読である媒体が含まれる。そのような機械は、例えば、上記に挙げられる保存媒体を読み取るための機械を含み得る。
【0157】
一般技術
本開示の実施は、別に示されない限り、当該技術分野の技術の範囲内である分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技法を用いる。そのような技法は、文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed. 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1989) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed. 1987);Introuction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds. 1993-8) J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al. eds. 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis, et al., eds. 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practice approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds. Harwood Academic Publishers, 1995);DNA Cloning: A practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985));Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984));Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986));Immobilized Cells and Enzymes (lRL Press, (1986));およびB. Perbal, A practical Guide To Molecular Cloning (1984); F.M. Ausubel et al. (eds.)において完全に説明されている。
【0158】
本発明がより容易に理解され得るように、ある特定の用語を最初に定義する。別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において説明される方法および材料と同様の、それらを改変したまたはそれらと同等の多くの方法および材料は、過度の実験を行うことなく、本発明の実施形態の実施において使用することができ、好ましい材料および方法は、本明細書において説明される。本発明の実施形態を説明および請求することにおいて、以下の用語は、以下に示される定義に従って使用される。
【0159】
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、非限定的に、質量、容量、時間、距離および量を含む任意の定量可能な変数についての、例えば、典型的な測定技法および設備を通して起こり得る数量の変動を指す。さらに、現実世界において使用される固体および液体取り扱い手技を仮定すれば、組成物を製造するためまたは方法を行うためなどに使用される成分の製造、供給源または純度における差を通してありうるある特定の偶発性の誤差および変動が存在する。また、「約」という用語は、これらの変動を包含し、それは最大±5%であってもよいが、また±4%、3%、2%、1%などであってもよい。「約」という用語によって修飾されるかどうかにかかわらず、請求項は、量についての均等物を含む。
【0160】
本開示またはその好ましい態様(複数可)の要素を導入する場合、「a」、「an」、「the」および「said(前記)」という冠詞は、要素のうちの1つまたは複数が存在することを意味すると意図される。「を含む(comprising)」、「を含む(including)」および「を有する(having)」という用語は、包括的であると意図され、列挙される要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0161】
「患者」、「対象」、「個体」などという用語は、本明細書において互換的に使用され、インビトロであるかインサイチュであるかにかかわらず、本明細書において説明される方法に適している、任意の動物またはその細胞を指す。ある特定の非限定的な実施形態において、患者、対象または個体は、ヒトである。
【0162】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、ヒト、霊長類、家畜、げっ歯類および愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。対象は、医療ケアまたは処置について待機していてもよく、医療ケアまたは処置下にあってもよく、医療ケアまたは処置を受容していてもよい。
【0163】
キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)を生成する方法が、本明細書において説明される。
【0164】
前駆体細胞、例えば、幹細胞、単球、またはこの場合においては骨髄細胞を、単離し、Flt3Lにおいて約1日間増殖させ、その後、目的のCARをウイルスにより形質導入し、その後Flt3Lにより約2~15日間さらに分化させて、インビボまたはインビトロにおける使用のためのDC様細胞を生成した。CAR発現は、FACS解析により、細胞表面上のCARを認識する抗体を使用して評価することができる。ウイルス形質導入は、ここではレトロウイルスまたはレンチウイルスを使用して行ったが、任意の遺伝子デリバリー法により達成してもよい。
【0165】
以下の定義および方法は、本発明をよりよく定義するため、および本発明の実施において当業者をガイドするために提供される。別に示されない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用に従って理解されるべきである。
【0166】
「異種のDNA配列」、「外因性DNAセグメント」または「異種の核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、各々、特定の宿主細胞にとって外来の供給源に起源をもつか、または同じ供給源からの場合その元の形態から改変される配列を指す。したがって、宿主細胞における異種の遺伝子は、特定の宿主細胞にとって内因性であるが、例えば、DNAシャッフリングまたはクローニングの使用を通して改変されている遺伝子を含む。また、この用語は、天然に存在するDNA配列の天然に存在しない多数の複製物を含む。したがって、この用語は、細胞にとって外来性もしくは異種であるか、または細胞にとって同種であるがそのエレメントが通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあるDNAセグメントを指す。外因性DNAセグメントを発現させると、外因性ポリペプチドが産生される。「同種の」DNA配列は、それが導入される宿主細胞と天然に関連付けられるDNA配列である。
【0167】
発現ベクター、発現コンストラクト、プラスミドまたは組換えDNAコンストラクトは、一般的に、例えば宿主細胞における特定の核酸の転写または翻訳を可能にする一連の特定の核酸エレメントを伴う、組換え手法または直接的化学合成による介入を含む、ヒトの介入により生成された核酸を指すと理解される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたは核酸断片の部分であり得る。典型的に、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結して転写される核酸を含み得る。
【0168】
「プロモーター」は、一般的に、核酸の転写を方向付ける核酸制御配列として理解される。誘導性プロモーターは、一般的に、特定の刺激に応答して、作動可能に連結した遺伝子の転写を媒介するプロモーターとして理解される。プロモーターは、転写開始部位の近くの必要な核酸配列、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントを含み得る。プロモーターは、転写開始部位から数千塩基対分に位置し得る遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含んでもよい。
【0169】
「転写可能な核酸分子」とは、本明細書で使用される場合、RNA分子に転写することが可能な任意の核酸分子を指す。転写可能な核酸分子が機能的mRNA分子に転写され、mRNA分子が翻訳され、それゆえタンパク質産物として発現されるような様式において、コンストラクトを細胞に導入するための方法が公知である。また、目的の特定のRNA分子の翻訳を阻害するために、コンストラクトは、アンチセンスRNA分子を発現することが可能であるように構築してもよい。本開示の実施のために、コンストラクトおよび宿主細胞を調製および使用するための従来の組成物および方法は、当業者に周知である(例えば、Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717;Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929;Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773;Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754を参照されたい)。
【0170】
「転写開始部位」または「開始部位」は、転写される配列の部分であり、+1位とも定義される第1のヌクレオチド付近の位置である。この部位について、遺伝子およびその制御領域のすべての他の配列は、番号付けすることができる。下流配列(すなわち、3’方向のさらなるタンパク質コード配列)は正と称してもよく、一方で上流配列(5’方向の制御領域のほとんど)は負と称される。
【0171】
「作動可能に連結した」または「機能的に連結した」とは、好ましくは、1つの核酸配列の機能が他の核酸配列によって影響されるような、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、調節性DNA配列が、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列の発現に影響を及ぼす(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)ように、2つの配列が位置する場合、調節性DNA配列は、コードDNA配列「に作動可能に連結して」いるかまたは「と関連付けられる」と言われる。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向において調節配列に作動可能に連結し得る。2つの核酸分子は、単一の連続する核酸分子の部分であってもよく、隣接していてもよい。例えば、プロモーターが細胞において目的の遺伝子の転写を調節または媒介する場合、プロモーターは、目的の遺伝子に作動可能に連結している。
【0172】
「コンストラクト」は、一般的に、任意の供給源に由来し、ゲノム組込みまたは自己複製が可能な、任意の組換え核酸分子、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製核酸分子、ファージまたは直鎖状もしくは環状一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNA核酸分子であって、1つまたは複数の核酸分子が作動可能に連結している核酸分子を含む、任意の組換え核酸分子として理解される。
【0173】
本開示のコンストラクトは、3’転写停止核酸分子に作動可能に連結した転写可能な核酸分子に作動可能に連結したプロモーターを含有し得る。加えて、コンストラクトは、非限定的に、例えば、3’非翻訳領域(3’UTR)からの追加の調節核酸分子を含み得る。コンストラクトは、非限定的に、翻訳開始において重要な役割を果たす場合があり、また発現コンストラクトにおいて遺伝子成分であり得るmRNA核酸分子の5’非翻訳領域(5’UTR)を含み得る。これらの追加の上流および下流調節核酸分子は、プロモーターコンストラクト上に存在する他のエレメントについてネイティブまたは異種である供給源に由来し得る。
【0174】
「形質転換」という用語は、遺伝的に安定な遺伝形質をもたらす、核酸断片の、宿主細胞ゲノムへの移行を指す。形質転換により導入された核酸断片を含有する宿主細胞は、「トランスジェニック」細胞と呼ばれ、トランスジェニック細胞を含む生物は、「トランスジェニック生物」と呼ばれる。
【0175】
「形質転換された」、「トランスジェニック」および「組換え」とは、異種の核酸分子が導入されている細菌、シアノバクテリア、動物または植物などの宿主細胞または生物を指す。核酸分子は、当該技術分野において一般的に公知でありかつ開示される通り、ゲノムに安定に組み込まれ得る(Sambrook 1989;Innis 1995;Gelfand 1995;Innis & Gelfand 1999)。公知のPCR法には、対のプライマー、入れ子式プライマー、単一特異的プライマー、変性プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的ミスマッチプライマーなどを使用する方法が含まれるが、これらに限定されない。「形質転換されていない(非形質転換)」という用語は、形質転換プロセスを通していない正常細胞を指す。
【0176】
「野生型」とは、任意の公知の突然変異を有しない、天然に見出されるウイルスまたは生物を指す。
【0177】
上記で必要とされるパーセント同一性を有し、かつ発現するタンパク質の必要な活性を保持する変異型ヌクレオチドおよびそれらのコードされるポリペプチドの設計、生成および試験は、当該技術分野の技術の範囲内である。例えば、突然変異体の指向性進化および迅速単離は、非限定的に、Link et al. (2007) Nature Reviews 5(9), 680-688;Sanger et al. (1991) Gene 97(1), 119-123;Ghadessy et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98(8) 4552-4557を含む参考文献において説明される方法に従ってもよい。したがって、当業者は、例えば、本明細書において説明される参照配列との少なくとも50~99%の同一性を有する多数のヌクレオチドおよび/またはポリペプチド変異体を生成し、当該技術分野においてルーチンの方法に従って所望の表現型についてそのようなヌクレオチドおよび/またはポリペプチド変異体をスクリーニングし得る。
【0178】
ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性パーセント(%)は、候補配列および参照配列を整列した場合の、参照配列と比較して、候補配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージとして理解される。パーセント同一性を決定するために、配列を整列し、必要であれば、ギャップを導入して、最大パーセント配列同一性を達成する。パーセント同一性を決定するための配列整列手技は、当業者に周知である。多くの場合公に使用可能なコンピューターソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST2、ALIGN2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアは、配列を整列するために使用される。当業者は、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。配列を整列する場合、所与の配列Aの、所与の配列Bへの、所与の配列Bとのまたは所与の配列Bに対するパーセント配列同一性(あるいは、所与の配列Bへの、所与の配列Bとのまたは所与の配列Bに対するある特定のパーセント配列同一性を有するかまたは含む所与の配列Aとして表され得る)は:パーセント配列同一性=X/Y100として計算することができ、ここで、Xは、AおよびBの配列整列プログラムによる整列またはアルゴリズムによる整列によって同一適合としてスコア付けされる残基数であり、Yは、Bにおける酸基の総数である。配列Aの長さが、配列Bの長さと等しくない場合、Aの、Bに対するパーセント配列同一性は、Bの、Aに対するパーセント配列同一性に等しくない。
【0179】
一般的に、保存的置換は、必要とされる活性が保持される限り、任意の位置において行うことができる。置換されるアミノ酸が元のアミノ酸と同様の特性を有するいわゆる保存的交換、例えば、GluのAspによる交換、GlnのAsnによる交換、ValのIleによる交換、LeuのIleによる交換およびSerのThrによる交換を行ってもよい。例えば、同様の特性を有するアミノ酸は、脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン);ヒドロキシルもしくは硫黄/セレニウム含有アミノ酸(例えば、セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン);環状アミノ酸(例えば、プロリン);芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);塩基性アミノ酸(例えば、ヒスチジン、リシン、アルギニン);または酸性アミノ酸およびそれらのアミド(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)であり得る。欠失は、直接的結合によるアミノ酸の置換である。欠失のための位置は、ポリペプチドの末端、および個々のタンパク質ドメイン間の結合を含む。挿入は、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の導入である、形式的には1つまたは複数のアミノ酸により置換される直接的結合である。アミノ酸配列は、例えば活性の改善または調節の変更を有するポリペプチドを産生し得る当該技術分野において公知のコンピューターシミュレーションプログラムの補助によりモジュレートすることができる。この人工的に生成したポリペプチド配列に基づき、そのようなモジュレートしたポリペプチドをコードする対応する核酸分子を、所望の宿主細胞の特定のコドン利用を使用してインビトロにおいて合成することができる。
【0180】
「高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、6X SSC緩衝剤(すなわち、0.9M塩化ナトリウムおよび0.09Mクエン酸ナトリウム)中の65℃におけるハイブリダイゼーションとして定義される。これらの条件であるとすると、2つの配列間のDNA二重鎖の融解温度(Tm)を計算することにより、所与の配列の組がハイブリダイズするかどうかについて決定を行うことができる。特定の二本鎖が6X SSCの塩条件において65℃未満の融解温度を有する場合、2つの配列はハイブリダイズしない。他方で、同じ塩条件における融解温度が65℃超である場合、配列はハイブリダイズする。一般的に、任意のハイブリダイズしたDNA:DNA配列についての融解温度は、以下の式を使用して決定することができる:Tm=81.5℃+16.6(ログ10[Na+])+0.41(G/C含有量分数)-0.63(%ホルムアミド)-(600/l)。さらに、ヌクレオチド同一性における各1%の減少について、DNA:DNAハイブリッドのTmは、1~1.5℃分減少する(例えば、Sambrook and Russel, 2006を参照されたい)。
【0181】
宿主細胞は、当該技術分野に公知の様々な標準技法を使用して形質転換され得る(例えば、Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717;Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929;Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773;Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754を参照されたい)。そのような技法として、ウイルス感染、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、マイクロプロジェクタイル媒介デリバリー、受容体媒介取り込み、細胞融合、電気穿孔などが挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクトされた細胞を選択および増殖して、宿主細胞ゲノムに安定に組み込まれた発現ベクターを含む組換え宿主細胞を得ることができる。
【0182】
保存的置換I
側鎖特徴 アミノ酸
脂肪族非極性 G A P I L V
極性非荷電 C S T M N Q
極性荷電 D E K R
芳香族 H F W Y
その他 N Q D E
【0183】
保存的置換II
側鎖特徴 アミノ酸
非極性(疎水性)
A.脂肪族: A L I V P
B.芳香族: F W
C.硫黄含有: M
D.境界域: G
【0184】
非荷電極性
A.ヒドロキシル: S T Y
B.アミド: N Q
C.スルフヒドリル: C
D.境界域: G
正荷電(塩基性): K R H
負荷電(酸性): D E
【0185】
保存的置換III
元の残基 例示的な置換
Ala(A) Val、Leu、Ile
Arg(R) Lys、Gln、Asn
Asn(N) Gln、His、Lys、Arg
Asp(D) Glu
Cys(C) Ser
Gln(Q) Asn
Glu(E) Asp
His(H) Asn、Gln、Lys、Arg
Ile(I) Leu、Val、Met、Ala、Phe
Leu(L) Ile、Val、Met、Ala、Phe
Lys(K) Arg、Gln、Asn
Met(M) Leu、Phe、Ile
Phe(F) Leu、Val、Ile、Ala
Pro(P) Gly
Ser(S) Thr
Thr(T) Ser
Trp(W) Tyr、Phe
Tyr(Y) Trp、Phe、Tur、Ser
Val(V) Ile、Leu、Met、Phe、Ala
【0186】
宿主細胞に導入され得る例示的な核酸には、例えば、別の種からのDNA配列もしくは遺伝子、またはさらには同じ種に起源をもつかもしくは同じ種に存在するが、遺伝子操作法によってレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子もしくは配列を含む。また、「外因性」という用語は、形質転換DNAセグメントもしくは遺伝子において見出される、形質転換される細胞には通常存在しないか、もしくはおそらく、その形態、構造などにおいて単に存在しない遺伝子;または通常存在し、かつ天然発現パターンとは異なる様式において発現する、例えば過剰発現することが所望される遺伝子を指すと意図される。したがって、「外因性」遺伝子またはDNAという用語は、同様の遺伝子がそのような細胞内に既に存在し得るかどうかにかかわらず、レシピエント細胞に導入される任意の遺伝子またはDNAセグメントを指すと意図される。外因性DNAに含まれるDNAの種類は、細胞内に既に存在するDNA、同じ種類の生物の別の個体からのDNA、異なる生物からのDNA、または外部において生成されたDNA、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含有するDNA配列、または遺伝子の合成もしくは改変バージョンをコードするDNA配列を含み得る。
【0187】
本明細書において説明される手法に従って開発される宿主株は、当該技術分野において公知のいくつかの手段によって査定することができる(例えば、Studier (2005) Protein Expr Purif. 41(1), 207-234;Gellissen, ed. (2005) Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems, Wiley-VCH, ISBN-10: 3527310363;Baneyx (2004) Protein Expression Technologies, Taylor & Francis, ISBN-10: 0954523253を参照されたい)。
【0188】
下方調節法または遺伝子をサイレンシングする方法は、当該技術分野において公知である。例えば、発現されるタンパク質活性は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO:antisense oligonucleotide)、タンパク質アプタマー、ヌクレオチドアプタマー、およびRNA干渉(RNAi:RNA interference)[例えば、低分子干渉RNA(siRNA:small interfering RNA)、短ヘアピンRNA(shRNA:short hairpin RNA)およびマイクロRNA(miRNA:micro RNA)]を使用して下方調節または除去することができる(例えば、ASO療法を説明するRinaldi and Wood (2017) Nature Reviews Neurology 14;ハンマーヘッドリボザイムおよび低分子ヘアピンRNAを説明するFanning and Symonds (2006) Handb Exp Pharmacol. 173, 289-303G;Helene, et al. (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660, 27-36;標的化デオキシリボヌクレオチド配列を説明するMaher (1992) Bioassays 14(12): 807-15;アプタマーを説明するLee et al. (2006) Curr Opin Chem Biol. 10, 1-8;RNAiを説明するReynolds et al. (2004) Nature Biotechnology 22(3), 326 - 330;RNAiを説明するPushparaj and Melendez (2006) Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 33(5-6), 504-510;RNAiを説明するDillon et al. (2005) Annual Review of Physiology 67, 147-173;RNAiを説明するDykxhoorn and Lieberman (2005) Annual Review of Medicine 56, 401-423を参照されたい)。RNAi分子は、様々な供給元から市販されている(例えば、Ambion、TX;Sigma Aldrich、MO;Invitrogen)。様々なアルゴリズムを使用するいくつかのsiRNA分子設計プログラムは、当該技術分野において公知である(例えば、Cenixアルゴリズム、Ambion;BLOCK-iT(商標)RNAi Designer、Invitrogen;siRNA Whitehead Institute Design Tools、Bioinformatics & Research Computingを参照されたい)。最適siRNA配列の定義に影響を及ぼす特性には、siRNAの末端におけるG/C含有量、siRNAの特定の内部ドメインのTm、siRNA長、CDS(コード領域)内の標的配列の位置、および3’オーバーハングのヌクレオチド含有量が含まれる。
【0189】
細胞に関する「活性化」という用語(および他のその活用)は、一般的に、「刺激すること」と同義語であると理解され、本明細書で使用される場合、機能的アウトカムの向上および/または細胞集団の拡張を指す。
【0190】
「抗原」という用語は、CAR標的に関して本明細書で使用される場合、キメラ抗原受容体よって認識される(すなわち、キメラ抗原受容体の標的である)細胞表面タンパク質である。古典的な意味において、抗原は、抗体またはT細胞受容体によって認識される物質、典型的にはタンパク質であるが、CARが1つまたは複数の抗原(複数可)を認識する軽鎖(VL)および重鎖(VH)などの抗体由来ドメインを含む限り、定義は重複する。また、抗原は、免疫系(最も頻繁にはT細胞または抗体)によって認識されることが可能な任意の細胞内または表面分子、一般的にタンパク質またはペプチドを含み得る。
【0191】
「がん」という用語は、体内の悪性腫瘍または細胞の異常増殖を指す。多くの様々ながんは、特定の細胞表面タンパク質または分子によって特徴付けるかまたは特定することができる。したがって、一般的な用語において、本開示によるがんは、本明細書において説明されるCAR-DCなどの免疫エフェクター細胞により処置され得る任意の悪性腫瘍を指してもよく、ここでは改変樹状細胞ががん細胞上の細胞表面タンパク質を認識および結合する。本明細書で使用される場合、がんは、血液悪性腫瘍、例えば、多発性骨髄腫、T細胞悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍を指し得る。T細胞悪性腫瘍として、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)または非ホジキンリンパ腫が挙げられ得るが、これらに限定されない。また、がんは、例えば、非限定的に、子宮頸がん、膵がん、卵巣がん、中皮腫および肺がんを含む固形腫瘍を指し得る。
【0192】
「細胞表面タンパク質」とは、本明細書で使用される場合、細胞によって、少なくとも部分的には細胞表面上に、発現されるタンパク質(またはタンパク質複合体)である。細胞表面タンパク質の例として、TCR(およびそのサブユニット)ならびにCD7が挙げられる。
【0193】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、本明細書で使用され、当該技術分野において一般的に使用される場合、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および標的細胞上に存在する成分への細胞外リガンド結合ドメインの結合に際して細胞が特別な機能を行うように方向付けるシグナル伝達ドメインを有する組換え融合タンパク質を指す。例えば、CARは、特異的抗標的細胞免疫活性を呈するキメラタンパク質を生成する、T細胞受容体活性化細胞内ドメインを伴う、所望の抗原(例えば腫瘍抗原)についての抗体ベースの特異性を有し得る。第1世代CARは、細胞外リガンド結合ドメインおよびシグナル伝達ドメインである、一般にCD3ζまたはFcεRIγを含む。第2世代CARは、細胞内共刺激性ドメインである、一般に4-1BBまたはCD28を含めることにより、第1世代CARコンストラクトに基づいて構築される。これらの共刺激性ドメインは、第1世代CARと比較して、CAR-T細胞の細胞傷害性および増殖を向上する助けとなる。第3世代CARは、主にCAR-T細胞増殖および持続性を増大させるために、多数の共刺激性ドメインを含む。キメラ抗原受容体は、MHC独立抗原に結合するそれらの能力、およびそれらの細胞内ドメインを介して活性化シグナルを伝達するそれらの能力の両方によって、他の抗原結合剤から区別される。
【0194】
「組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の治療的に許容される担体を伴う免疫療法細胞集団の組合せを指す。
【0195】
「疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、「障害」、「症候群」および「状態」(医学的状態における)という用語と、すべてが、正常な機能性を損なうヒトまたは動物の身体またはその部分のうちの1つの異常な状態を反映し、典型的には特徴的な徴候および症状により顕在化し、ヒトまたは動物が生命の持続期間またはクオリティ・オブ・ライフの低減を有することをもたらすという点で、一般的に同義であり、それらと互換的に使用されると意図される。
【0196】
さらなる詳細を伴うことなく、当業者は、上記の説明に基づき、本発明をその最上級の程度まで利用することができると考えられる。それゆえ、以下の特定の実施形態は、単に例示であり、どのようにも本開示の残りの部分の限定ではないと解釈されるべきである。本明細書において引用されるすべての刊行物は、本明細書で参照される目的または主題について参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
様々な変化は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記に説明される材料および方法においてなされ得るので、上記の説明および以下に与えられる実施例において含有されるすべての事柄は、例示として解釈され、限定の意味ではないと解釈されることが意図される。
【実施例
【0198】
以下の実施例は、本開示の様々な実施態様を示すために含まれる。後に続く実施例において開示された技術は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者らにより発見された技術を提示し、したがって、それの実施にとって好ましい様式を構成すると考えられ得ることは、当業者により認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を鑑みれば、多くの変更が、開示されている特定の態様においてなされ、それでも、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似した結果を得ることができることは、認識すべきである。
[実施例1]
【0199】
機能的なCAR樹状細胞の生成と特性評価
樹状細胞(DC)は、適応免疫応答を開始するのに重要である。数多くの研究が、腫瘍の微小環境、さらには一般的ながん患者においてさえ、DCは限定的であることを示している(Hegde S, et al. Cancer Cell 2020;37:289-307 e9)。さらに、たとえDCが存在しても、抗原に対する寛容性や拒絶反応のいずれかを誘発する可能性があり、一般に腫瘍細胞が「悪い」ものであり除去されるべきであると伝える強いシグナルを持たない。
【0200】
現在、我々は細胞治療の時代にあり、患者自身の細胞を集め、特定の機能を発揮するように改変し、増幅し、患者に注射して疾患を治療することができる。このことは、DCを活性化し、適応免疫応答を確実に引き起こすための新たな機会を提供する。現在の標準的な処置は、全身にDCを活性化する分子を注射することに重点を置いている。本例では、全身的にDCを活性化するのとは逆に、DCを集め、がん細胞を認識するCARで遺伝子改変し、その認識によってシグナル伝達経路を誘導し、標的を貪食し、その抗原を提示し、さらにCARのコンストラクト次第で、目的のさらなる免疫活性化分子を分泌させることができるかどうかを検証する。
【0201】
CARマクロファージやCARファゴサイトを創出するための先行研究が行われている。マクロファージは、樹状細胞と同様に、物質を貪食し、抗原を提示することができる。しかし、インビボでは、マクロファージは腫瘍細胞関連抗原を効果的に交差提示することができず、腫瘍除去免疫応答を創出することができない。インビボでは、DC、特に1型標準型樹状細胞(cDC1)として知られるDCのサブセットが、有効な腫瘍抗原交差提示ができる唯一の細胞であり、このことは、cDC1が存在しない場合には適応的抗腫瘍応答が達成できない、抗腫瘍免疫応答が開始できない、腫瘍はインビボの免疫系によって除去されない、という事実からも明らかである(Theisen DJ, et al. Science 2018;362:694-9; and Hildner K, et al. Science 2008;322:1097-100)。したがって、概念的には、CARマクロファージは、均一な抗原発現を有する腫瘍に対する直接的な腫瘍ファゴサイトーシスまたは場合によっては直接的な細胞傷害の目標を達成する可能性がある。しかし、それらは、発表されたデータと一致することに、抗原交差提示または適応抗腫瘍T細胞応答の目標を達成することは期待されないであろう(Morrissey MA, et al. Elife 2018;7)。
【0202】
CARマクロファージは、Fc受容体、Toll様受容体、またはその他のマクロファーもしくはT細胞ベースの受容体のようなファゴサイトーシスを誘導する様々なマクロファージ受容体の細胞内ドメインと腫瘍認識scFv細胞外ドメインを融合することによって創出されてきた。現在までに、cDC1能力、すなわち内因性T細胞集団の抗腫瘍T細胞応答をクロスプライミングする能力を細胞に賦与するCARの創出に成功していない。
【0203】
本実施例は、機能的なCAR-DCを生成する細胞内シグナル伝達ドメインを提供し、これは、以前に記載されたCARとは異なり、インビトロおよびインビトロで、強力かつ成功した適応抗腫瘍応答を開始するために内因性T細胞をクロスプライミングする方法で貪食した腫瘍抗原を交差提示する能力を形質導入骨髄系細胞に賦与する。
【0204】
これらの研究の直接的な意義は、CARが標的とする抗原陽性(Ag)腫瘍を直接的に除去し、交差提示とエピトープ拡散によりCAR-Ag腫瘍細胞(CARが認識しない)を間接的に除去する新しい治療戦略を提供する。
【0205】
本実施例では、キメラ抗原受容体樹状細胞(CAR-DC)の作製方法と、その結果得られる機能性について記載する。CARコンストラクトは、DCを分化させる能力および抗原交差提示機能性についてクローニングされた。ある特定のCARコンストラクトが、腫瘍を貪食し、内因性腫瘍抗原を交差提示して抗腫瘍CD8T細胞を刺激することに成功した証拠が得られた。このFMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)ベースのCARを以下に記載する。
【0206】
方法
様々な細胞内シグナル伝達ドメインを持つ様々なCARコンストラクトを創出し、DC前駆体に導入し、導入後に交差提示DCの表現型を維持する能力、および腫瘍抗原を機能的に交差提示する能力についてスクリーニングを行った。これらのデータには、Fc受容体ベース、Toll様受容体(TLR)ベース、またはFlt3ベースのCARの直接比較が含まれている。腫瘍特異的な取り込み能力を維持し、腫瘍抗原を交差提示する能力を有するcDC1表現型を細胞に賦与することに最も成功した特定のコンストラクトが出現した。Flt3ベースのCARである。
【0207】
このCARの設計は、以下の表面発現を駆動するシグナルペプチド、腫瘍結合ドメイン(一般的には抗体由来のscFv)、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインと続く(例えば、図2を参照されたい)。CAR-DCの実現を成功させるために重要なドメインは、Flt3に由来する細胞内ドメインである。
【0208】
腫瘍モデル。特に明記しない限り、すべての実験はMCA誘導軟部組織脇腹肉腫モデルで行い、これはT細胞によって認識される腫瘍抗原を含むことが実証され(Gubin MM, et al. Nature 2014;515:577-81; and Alspach E, et al. Nature 2019;574:696-701)、これはプライミングされ、DCによってクロスプライミングされる(Ferris ST et al. Nature 2020;584:624-9)。ヒトのがんと同様に、膵臓がんモデルは変異負荷が低く、免疫原性に乏しく、複雑化した免疫抑制性腫瘍微小環境を創出するため、第二のモデルとして、C57BL/6KPC(Kras(G12D/+);p53(R172H/+);Pdx-1-Cre)膵臓がんモデルを用い(Tseng WW, et al. Clin Cancer Res 2010;16:3684-95)、同所または皮下注射が可能であった。膵臓腫瘍抗原EphA2は、膵臓がんの90%に発現し、正常組織にはほとんど発現していない。マウスKPC腫瘍細胞およびMCA誘導肉腫細胞は、EphA2を天然に発現している。MHC-I上に提示されたovaペプチドを特異的に認識する細胞傷害性CD8T細胞を生成するトランスジェニックマウスOT1マウス由来のT細胞を用いて、T細胞応答を定量化するために、これらの細胞にzsGreenと卵白アルブミン(ova)を導入した。インビボモデルでは、MCA誘導肉腫の本来の疾患部位である両側脇腹に腫瘍細胞を注射した。腫瘍形成の3日後、マウスをCAR形質導入細胞の局所注射で処置した。腫瘍が直径2cmに達した時点でマウスを屠殺した。
【0209】
DCおよびCAR-DCの生成。骨髄細胞は、同系マウスの骨髄を洗い流して単離し、Flt3L中で1日培養した後、目的のCARまたは空のウイルスベクターを形質導入し、次いでさらにFlt3L(80ng/ml)中で6~10日間分化させて分化型DCを生成した。cDC1およびcDC2集団は、cDCが系統陰性、B220、CD11c、MHC-IIであり、ならびにcDC1およびcDC2がそれぞれCD24およびSirpa陽性によってさらに分化される標準ゲート戦略を用いたFACSによって定量化した。CARの発現は、細胞表面のCARを認識する抗ヒトFab2抗体を用いて、FACS解析により評価した。
【0210】
マクロファージおよびCAR-マクロファージの生成。骨髄細胞を上記のように単離し、M-CSFまたはGM-CSF中で1日培養した後、目的のCARを形質導入し、さらにM-CSFまたはGM-CSFで5~10日間分化させて、先に述べたようにウイルス導入マクロファージを生成した。CARの発現は、細胞表面のCARを認識する抗体を用いて、FACS解析により評価した。
【0211】
T細胞の活性化および増殖。CD3、CD4、およびCD8T細胞マーカーは、前述のようにCFSEを用いた増殖のFACS解析により評価した(Theisen DJ, et al. Science 2018;362:694-9)。
【0212】
T細胞機能。T細胞機能は、細胞傷害性T細胞リンパ球アッセイ(CTL)により評価し、ここでは、定義された比率のエフェクターT細胞を、標的腫瘍細胞、および場合によっては抗原提示細胞と、指示された時間の間混合した。複数日の実験では、2日ごとに50%の培地を交換した。残存腫瘍細胞数は、BioTek Cytation 5生細胞イメージングおよび画像解析ソフトウェアを用いて定量化した。
【0213】
CAR誘導腫瘍のファゴサイトーシス。ファゴサイトーシスは、標的細胞を耐酸性フルオロフォア(zsGreen)で遺伝子標識し、CAR形質導入細胞をRFP(これはCARを送達するのと同じベクターによって送達される)で標識し、次いで細胞を共培養してFACSまたはBioTekのCytation 5イメージングとソフトウェアを用いた直接ライブビデオ顕微鏡でファゴサイトーシスを定量化することによって評価した(どちらも異なる方法で、貪食するまたは緑色細胞を取り込む赤色細胞数を定量化する)。
【0214】
交差提示アッセイ。標準的な交差提示アッセイは、CAR形質導入DCまたは対照DCを、ova発現腫瘍またはova発現熱殺リステリア菌と混合し、次いでCFSE標識OT1 T細胞(MHC-I上に提示されたova SIINFEKLペプチドに対して反応する)を加え、3日後にCD8 T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって測定することによって行った。
【0215】
結果
(i)CARマクロファージは、全身的な免疫応答を誘導できない
CARマクロファージを含むマクロファージは、インビトロでT細胞を刺激する能力を有し(Klichinsky M, et al. Nat Biotechnol 2020;38:947-53)、マクロファージは専門の抗原提示細胞であることから、CARマクロファージが全身性の免疫応答を誘導することができるという仮説を検証した。このモデルでは、同系マウスの両側脇腹に腫瘍細胞を注射し、3日間定着させた。その後、3日間、CARマクロファージを1つの腫瘍に注射した(図1A)。CARマクロファージが局所的に腫瘍を貪食および/または殺滅すれば、局所的に注射された腫瘍が応答することが期待される。抗原を取り込み、T細胞を効果的にクロスプライミングすれば、T細胞は循環し、効果的に刺激されれば、局所腫瘍と同様に対側腫瘍を除去すると期待される。もし、どちらかの側で腫瘍応答が見られない場合は、どちらも起きていないことになる。FcR CARが利用され、これは、操作されたマクロファージによるファゴサイトーシスを効果的に誘導することが以前に発見されている(図1Bに概念的に描かれている)(Morrissey MA et al. Elife 2018;7; and Klichinsky M et al. Nat Biotechnol 2020;38:947-53)。以前の研究で使用されたように、これらの実験における対照処置は、形質導入されていないマクロファージであった。FcR CARマクロファージは、注射部位の腫瘍体積を有意に減少させるが(図1C)、遠位腫瘍の除去をある程度誘導できない(図1D)ことが示された。これは、適応免疫応答を誘導しない局所殺滅効果に一致する。あるFcR CARマクロファージ処置したマウスは、注射した部位の腫瘍が完全に除去されていた。このマウスでは、もし適応免疫応答が拒絶反応に寄与しているならば、同じ腫瘍を再注射しても腫瘍増殖がないことが期待される。このマウスに腫瘍を再注射すると、腫瘍は増殖した。これは、CARマクロファージによって生じた適応免疫応答の欠如と一致する(図1E)。
【0216】
(ii)CAR DCの生成
この結果を受けて、出願人は、腫瘍の局所的な遭遇時に、有効な全身性の抗腫瘍免疫応答を誘導することができるCAR改変細胞を生成することに努めた。CARは、細胞外ドメインが腫瘍抗原を認識し、細胞外ヒンジおよび膜貫通ドメインが一定(この実験ではCD8)で、内部シグナル伝達ドメインが異なる、標準的な方法で設計されている。異なる内部ドメインは、内在化した腫瘍抗原に対するT細胞のクロスプライミングを促進するのに役立っている可能性があると仮定された。細菌は、LPSを認識する特異的受容体TLR4を持つ抗原提示細胞によって認識される一般的な病原体であるため、TLR4シグナル伝達ドメインを持つCARは、CAR改変骨髄系細胞がT細胞をクロスプライミングする能力を向上させる可能性があると仮定された。T細胞クロスプライミングにおけるcDCの能力を考えると、cDC分化の開始と維持に最も重要な受容体であるFlt3シグナル伝達を誘導するCARが、操作した骨髄系細胞のクロスプライミング能力を向上させる可能性があることも仮定された。これらの直接の比較実験では、したがって内部ドメインは、Fc受容体シグナル伝達ドメイン(ここでは共通ガンマ鎖)、Toll様受容体(TLR)シグナル伝達ドメイン(この場合はTLR4)、またはFlt3シグナル伝達ドメインからなる(図2)。対照として、同一の細胞外ドメインと膜貫通ドメインを持つが、内部ドメインを持たないCARが創出された。したがってこれは、腫瘍に結合するがシグナルを発しない。各々のCARはまた、形質導入効率を評価するために、P2A配列に続いてRFPを発現する。
【0217】
ウイルスの実質的な生産と形質導入の最適化の後、CARの形質導入に成功し、表面発現を、CARのscFvと直接結合する抗体を用いたフローサイトメトリーで確認するとともに、導入したRFPの内部蛍光を確認した(図3)。
【0218】
(iii)Flt3ベースのCARは腫瘍とCARの共培養後に細胞増殖を誘導する
概念的には、CAR形質導入細胞によって貪食された腫瘍は、分解されるか、ペプチドに加工されてクロスプライミングCD8 T細胞に交差提示される場合がある。OT1 T細胞を腫瘍細胞と抗原提示細胞と混合する交差提示アッセイを用いて、まず、対照CAR(細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含むが、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない)を含むDCを、ova発現熱殺リステリア菌とOT1 T細胞と混合すると、予想通り強いT細胞増殖応答が生じることが分かった(陽性対照)(図4A)。しかし、ova発現細菌をova発現腫瘍細胞に置き換えた場合、対照CAR形質導入細胞は、測定可能なT細胞応答を生じない。驚くべきことに、Fc受容体およびTLRベースのCARは、細菌またはオプソニン化病原体誘導シグナル伝達を潜在的に再現するシグナル伝達ドメインを提供するという事実にもかかわらず、これらのCARは、対照CARを超える腫瘍抗原特異的T細胞増殖を誘導することができない。一方、Flt3ベースのCARは、腫瘍-CAR共培養後、抗原発現細菌によって誘導されるレベルと同様に、腫瘍抗原特異的T細胞増殖を誘導することに成功した(図4)。これらのデータは、Flt3 CARが、DCが細菌に対して生成する強固な応答と同様の大きさの腫瘍抗原特異的T細胞応答を促進する一方、標準型食作用CARは、著しい腫瘍ファゴサイトーシスを達成したにもかかわらず、腫瘍との遭遇後に対照非シグナル伝達CARよりも大きな腫瘍抗原特異的T細胞応答を生成しないことを実証している(図4C)。
【0219】
(iv)Flt3 CAR DCは、Fc受容体またはTLRベースのCARと比較して、有意に多くの腫瘍の根絶を達成する。
CAR抗原提示細胞によって達成された抗原交差提示が、機能的に意味があるかどうかを検証するために、zsGreen+Ova抗原発現腫瘍細胞を、OT1 T細胞に加えて、示されたCAR形質導入DC分化細胞と2:1:1の比率でインキュベートした。腫瘍細胞面積は、10日後にBioTek生細胞イメージングとGFP腫瘍面積を定量化するイメージングソフトウェアによって定量化した。Flt3 CAR DCによるT細胞活性化の増加と一致して、Flt3 CAR DCは、Fc受容体またはTLRベースのCARと比較して、有意に多くの腫瘍根絶を達成する(図5)。
【0220】
(v)Flt3 CARはDC細胞の生存と分化を改善する
Flt3 CAR DCが抗原交差提示においてより有効である理由を明らかにするために、腫瘍とCARシグナル伝達が遭遇すると、この特定のCARは、生存する、または有効なT細胞クロスプライミングに適した細胞表現型へ分化する、細胞の能力のいずれかを改善する可能性があると仮定した。腫瘍の存在下で、Flt3 CARを発現する細胞は生存に有利であるように見えることが観察された。CARによって誘導されたFlt3シグナル伝達が、それ自体で細胞の生存を維持するのに重要な十分なシグナル伝達を提供するかどうかを決定的に検証するために、生存のためにFlt3リガンドに決定的に依存するHoxB8 DC細胞株を入手した。Flt3リガンドなしでは、これらの細胞は培養で生存しないが、Flt3リガンドがあれば生存し、野生型DCと同等のDCに分化することができる。これらの細胞に、Flt3 CARと同様にシグナル伝達を行わない対照CARを、最初は外因性Flt3リガンド存在下で形質導入し、次いでこれらの細胞をFlt3リガンドなしの通常の増殖培地中で腫瘍細胞上にプレーティングした。2日後、対照のCAR HoxB8細胞はすべて死滅し、ウェル全体に均一に分布していたが、Flt3 CAR HoxB8細胞は腫瘍細胞の周りに凝集し、健康的に生存し続けていた(図6)。これは、Flt3 CARがそのFlt3 CARシグナル伝達ドメインを介して重要な生存シグナル伝達を提供していることを示す。Flt3リガンドがほとんど存在せず、DCの生存率が低い腫瘍の微小環境では、この腫瘍誘導CAR生存シグナル伝達は、CAR DCにさらなる利点を提供する可能性がある。
【0221】
次に、Flt3 CARを形質導入した細胞が、TLR4またはFcR CARを形質導入した同一の細胞と比較して、異なる分化をするかどうかを検証した。Flt3リガンドで分化させた後、フローサイトメトリーにより細胞の表現型を決定した。cDC1細胞は、適応免疫応答の生成と腫瘍の除去に重要なDCであるため、cDC1表現型を特に検討した。驚くべきことに、CARにおけるTLR4またはFcRベースのシグナル伝達の存在は、Flt3リガンドの存在下でも、DC前駆体がcDC1にうまく分化する能力を実質的に低下させた(図7)。これらの炎症性シグナル伝達CARの存在は、cDC1分化成長因子の存在下でも、細胞をマクロファージまたはcDC2表現型に転換させるように見える。しかし、Flt3 CARの存在は、cDC1がうまく分化する能力を、強化しないまでも、維持した(図7)。
【0222】
これらのデータは、Flt3ベースのCARが、これまでにない真の機能的なcDC1を生成することができることを示す。したがって、これらは真の「CAR-DC」であり、T細胞をクロスプライミングする能力が著しく劣るCAR-マクロファージやCAR-ファゴサイトとは区別される。
【0223】
(vi)FLT3 CAR DCは強い適応免疫応答を生成する
Flt3 CAR DCが、インビボで遠位腫瘍を除去する強い適応免疫応答を生成する能力を検証するために、両側脇腹同所肉腫腫瘍モデルが採用された。腫瘍を両側脇腹に注射し、3日間、同系マウスに定着させた。次いで、対照非シグナル伝達CAR DCまたはFlt3 CAR DCを2つの腫瘍部位の一方に注射し、両部位の腫瘍増殖を経時的に定量化した。対照CAR DCで処置したマウスは、CAR DC注射部位と未処置部位の両方で進行したことが分かった(図8A)。Flt3 CARで処置した腫瘍は、CAR DC局所注射後1週間以上増殖を続け、その後、退縮し始めた。適応免疫応答と一致する同様の動態で、遠位腫瘍部位もFlt3 CAR DC処置後1~2週間増殖し、その後同様に退縮し始めた。7週目までに、Flt3 CAR DC処置マウスのすべての局所および遠位腫瘍部位において腫瘍は検出されなかったが(図8B)、対照CARおよび未処置マウスはすべて、同じ時点までに死亡するところまで進行していた。Flt3 CAR DC処置マウスが、免疫学的記憶を伴う適応免疫応答の実現に成功したかどうかを検証するために、腫瘍をこれらのマウスの脇腹に再注射した。すべてのFlt3 CAR DC処置マウスは、これらのマウスのいずれにおいても腫瘍が再増殖できなかったので、腫瘍の再攻撃から保護された(図8C)。これらのデータは、Flt3 CAR DCが、標的腫瘍に対する適応全身性免疫応答をうまく誘発し、これは、遠位の定着した腫瘍を除去するのに十分強固であることを実証する。Flt3 CAR DCによって誘導された抗腫瘍応答は持続し、腫瘍の再攻撃に対して免疫を提供し続ける。
【0224】
均等物
いくつかの発明の実施形態が本明細書に記載され、図示されたが、当業者は、本明細書に記載された機能を実行し、および/または結果および/または1つまたは複数の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形および/また改変の各々は、本明細書に記載された発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、材料、および構造が例示的であることを意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構造が、本発明の教示が用いられる特定の用途または応用に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の発明の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または単なる日常的な実験を用いて確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態はあくまで例示の目的で提示されたものであり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明し主張した方法以外の方法で実施できることを、理解すべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載されたそれぞれ個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組合せは、本開示の発明の範囲に含まれる。
【0225】
本明細書に開示されるすべての参考文献、特許および特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み入れられ、場合によっては、この文書の全体を包含してもよい。
【0226】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という表現は、これによって接続される要素のうちの「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち、ある場合には接続的に存在し、かつ他の場合には離接的に存在すると要素を意味すると理解すべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じ方法で、すなわち、これによって接続される要素の「1つまたは複数」を意味すると解釈されるべきである。「および/または」という節によって具体的に特定された要素以外にも、それら具体的に特定された要素と関係するか関係しないかにかかわらず、必要に応じて他の要素が存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」なる表現が「~を含む(comprising)」などの非排他的な言葉と組み合わせて使用された場合、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を含んでもよい)を指すことができ、別の実施形態ではBのみ(A以外の要素を含んでもよい)を指すことができ、さらに別の実施形態ではAおよびBの両者(他の要素を含んでもよい)等を指すことができる。
【0227】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の品目を隔てて使用されているとき、「または」または「および/または」は、包含的な意味であると理解すべきであり、すなわちある数の要素またはリストの要素のうちの少なくとも1つを含み、さらには1つよりも多く含むことを意味し、リストに挙げられていない他の品目をも含んでもよいと解釈すべきである。これとは逆に、「~のうちのただ1つ」または「~のうちの正確に1つ」などと明確に示されている用語、あるいは特許請求の範囲において使用される場合の「~からなる(consisting of)」という用語のみが、ある数の要素またはリストの要素のうちの厳密に1つを含むことを意味するであろう。一般に、本明細書において使用される場合、「または」という用語は、「いずれか(either)」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」などと排他的な用語によって接頭されたときにのみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であって両方ではない」)を示していると解釈すべきである。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有する。
【0228】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素からなるリストに関して、「少なくとも1つ」という表現は、当該要素のリスト中の任意の1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解すべきであるが、当該要素のリストに具体的に挙げられた各要素のすべてを少なくとも1つ含む必要はなく、当該要素のリスト中の要素からなる任意の組合せを排除するものでもない。さらに、この定義において、「少なくとも1つ」という表現で指し示された要素のリスト中に具体的に特定されている要素以外の要素が、具体的に特定されている要素と関係していても、関係していなくても、存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(あるいは、「AまたはBの少なくとも1つ」もこれと等価であり、あるいは「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」もこれと等価である)は、一実施形態では、1つよりも多くてよいが少なくとも1つのAを、Bが存在しない状態で指すことができ(B以外の要素を含んでもよい)、別の実施形態では、1つよりも多くてよいが少なくとも1つのBを、Aが存在しない状態で指すことができ(A以外の要素を含んでもよい)、さらに別の実施形態では、1つよりも多くてよいが少なくとも1つのAと、1つよりも多くてよいが少なくとも1つのB(他の要素を含んでもよい)等を指すことができる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
【配列表】
2023506501000001.app
【国際調査報告】