(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】水中油型エマルジョン用の天然由来安定剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/56 20220101AFI20230209BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230209BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230209BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230209BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230209BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230209BHJP
A61K 49/18 20060101ALI20230209BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C09K23/56
A61K9/107
A61K47/36
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/73
A61K8/06
A61K49/18
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536816
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020086700
(87)【国際公開番号】W WO2021122942
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508013571
【氏名又は名称】フンダシオン シデテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナバスクエズ ロミンチャー,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】ロイナス ボルドナベ,イライダ
(72)【発明者】
【氏名】デュピン,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】リョップ ロッジ,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-ガリエゴ,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076EE30Q
4C076EE31Q
4C076EE36Q
4C076EE37Q
4C076FF36
4C083AD211
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD321
4C083AD331
4C083AD351
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD33
4C083EE01
4C085HH01
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4C085HH07
4C085HH11
4C085JJ03
4C085KA27
4C085KA29
4C085KA32
4C085KB79
(57)【要約】
本発明は、デュヌイリング法(Du Nouy ring method)により測定される表面張力が63mN/m以下であるところの、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子を、水中油型エマルジョン安定剤として使用することに関する。本発明はまた、水中油型エマルジョン安定剤組成物、これらを含有する水中油型エマルジョンに関する。本発明はまた、これらを調製するプロセス、及びこれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュヌイリング法により測定される表面張力が63mN/m以下であるところの、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子の、水中油型エマルジョン安定剤としての使用。
【請求項2】
前記メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、デュヌイリング法により測定される表面張力が60mN/m以下である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、アルギネート、ジェランガム、セルロース及びその誘導体、グリコーゲン、並びにキトサンから選択される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、及びキトサンから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
メタクリレート基又はアクリレート基による前記多糖の置換度が、前記多糖の変性繰り返し単位の1~100%であるか、又は代替的に、
メタクリレート基若しくはアクリレート基による前記ナノ粒子の置換度が、前記ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
メタクリレート又はアクリレート部分の-CO-基の炭素原子が、多糖のOH部分の酸素原子に共有結合している、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、且つ式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストラン
【化1】
および、
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、且つ式(II)の繰り返し単位を含むアクリレート変性デキストラン
【化2】
からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
当該ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるデキストランの置換度と、
デキストランメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、且つ式(IV)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性ヒアルロン酸
【化3】
および、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、且つ式(V)の繰り返し単位を含むアクリレート変性ヒアルロン酸
【化4】
からなる群から選択される、
あるいは代替的に、
前記単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
当該ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるヒアルロン酸の置換度と、
ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、且つ式(VII)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性キトサン
【化5】
および、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のアクリレートによる前記キトサンの置換度を有し、且つ式(VIII)の繰り返し単位を含むアクリレート変性キトサン
【化6】
からなる群から選択される、
あるいは代替的に、
前記単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
当該ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるキトサンの置換度と、
キトサンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖キトサンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
水中油型エマルジョン安定剤組成物であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載のメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は、請求項1~10のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子と、
1種以上の適切な賦形剤又は担体と、
を含む、水中油型エマルジョン安定剤組成物。
【請求項12】
(a)外部水相(W)、
(b)内部油相(O)および
(c)界面層(IL)
を備えてなる水中油型エマルジョンであって、
(a)外部水相(W)が、
(a1)水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、及び、
(a2)任意選択的に、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択される1種以上の親水性化合物、
を含んでおり、
(b)内部油相(O)が、
(b1)親油性活性剤、及び
(b2)親油性賦形剤又は担体、
からなる群から選択される1種以上の親油性化合物を含んでおり、
並びに、
(c)前記外部水相(W)と前記内部油相(O)との間の界面層(IL)が、
(c1)以下の群から選択される1種以上のエマルジョン安定剤と、
(c2)任意選択的に、1つ以上の親水性活性剤と、
を含んでおり、
前記1種以上のエマルジョン安定剤(c1)は、
(c1´)請求項1~10のいずれか一項に記載のメタクリレート又はアクリレート変性多糖;
(c1´´)請求項1~10のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子;
(c1´´´)請求項1~10のいずれか一項に記載のメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、
当該界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖、
(c1´´´´)請求項1~10のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、
当該界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、ナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子、
からなる群から選択される1種以上のエマルジョン安定剤である、
ことを特徴とする水中油型エマルジョン。
【請求項13】
前記活性剤が、医薬用活性成分、診断薬、及び美容用薬剤からなる群から選択される、請求項12に記載の水中油型エマルジョン。
【請求項14】
請求項12又は13のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンの、担体としての使用であって、
当該エマルジョンが活性剤を含まない、ことを特徴とする使用。
【請求項15】
治療で使用するための、請求項12又は13のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンであって、
当該エマルジョンが、活性剤として1種以上の医薬用活性成分を含む医薬用エマルジョンである、ことを特徴とする水中油型エマルジョン。
【請求項16】
治療で使用するための、請求項15に記載の水中油型エマルジョンであって、
当該エマルジョンが、
血管用作用剤;向神経活性剤;ホルモン;成長因子;サイトカイン;麻酔薬;ステロイド;抗凝固薬(D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ポリリジン含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、及びチクルク(ticlc)抗血小板ペプチドなど);抗炎症薬(ステレオイド(stereoid)性(デキサメタゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、ベタメタゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、クロベタゾン、ベクロメタゾン、デスオキシメタゾン、メチルプレドニゾロンを含む)、及び非ステレオイド剤(AINE)(ジクロフレナク(dicoflenac)、アセクロフェナク、ベンジダミン、デクスケトプロフェン、エトフェナメート、フェプラジノール、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカムを含む);免疫修飾剤;細胞傷害剤;予防剤;
抗ウイルス剤;抗原及び抗体;抗血栓剤(ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン(dextrophenylalanine proline arginine chloromethylketone)など);抗増殖剤(エノキサプリン(enoxaprin)、アンジオペプチン、又は平滑筋細胞増殖をブロックすることができるモノクローナル抗体、ヒルジン、及びアセチルサリチル酸など);抗悪性腫瘍薬/抗増殖剤/抗有糸分裂(パクリタクセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、及びチミジンキナーゼ阻害薬など);麻酔薬(anaesthetic agents)(リドカイン、ブピバカイン、及びロピバカインなど);血管細胞成長促進剤(成長因子阻害薬、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子、及び翻訳促進剤など);血管細胞成長阻害薬(成長因子阻害薬、成長因子受容体アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対抗する抗体(antibodies directed against growth factors)、成長因子及び細胞毒からなる二官能分子、抗体及び細胞毒からなる二官能分子など);コレステロール低下薬;血管拡張剤;並びに内因性血管作動性メカニズムに干渉する薬剤;放射性医薬品;鎮痛薬;食欲抑制剤;抗貧血剤;抗喘息剤;抗糖尿病剤;抗ヒスタミン薬(ジフェニドラミン(diphenydramine)、ジメチンデン、及びプロメタジンなど);抗ムスカリン薬;心血管治療薬;中枢神経系刺激剤;中枢神経系抑制剤;抗うつ剤;抗てんかん薬;抗不安剤;催眠剤;鎮静剤;ベータブロッカー;止血剤(homeostatic agent);ホルモン;血管拡張薬;血管収縮薬;ビタミン;抗ウイルス薬化学療法薬(アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、イドクスウリジン、トロマンタジン、イミキモド、及びメトロニダゾールなど);抗生物質(フシジン酸、ムピロシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、レタパムリン、クリンダマイシン、エリスロマイシン(erithromycin)、及びクロルテトラサイクリンなど);抗真菌薬(ビホナゾール、クロトリマゾール(chlotrimazole)、エベルコナゾール(eberconazole)、エコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、チオコナゾールを含む、イミダゾール及びトリアゾール誘導体など);ニスタチン、ナフチフィン、テルビナフィン、トルナフテート、及びシクロピロクス;治癒剤(アルニカ・モンタナ(Arnica montana)、ツボクサ(Centella asiatica)、及びベカプレルミンなど);局所麻酔薬(リドカイン、ベンゾカイン、及びテトラカインなど);抗乾せん剤(エタネルセプト、アダリムマブ、ウステキヌマブ、ジトラノール、カルシポトリオール、カルシトリオール、タカルシトール、及びタザロテンなど);レチノイド剤(トレチノイン、イソトレチノイン、及びアダパレンなど);防腐剤及び殺菌剤(desinfectant agent)(クロルヘキシジン、ホウ酸、トリクロサンなど);タクロリムス;ヒドロキノン;ミノキシジル;フィナステリド;消化管(Gastro-intestinal);鎮咳剤;去痰薬;鎮痙薬;利尿薬;痔疾用剤(antihemorrhoidals);睡眠薬,向精神薬;鬱血除去薬;ラクサント(laxant);並びに、制酸薬(antiacid)
からなる群から選択される、活性剤としての1種以上の医薬用活性成分を含む医薬用エマルジョンである、ことを特徴とする水中油型エマルジョン。
【請求項17】
皮膚又は毛髪のケア剤としての、請求項12又は13のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンの使用であって、
当該エマルジョンが、1種以上の美容用薬剤を含む美容用エマルジョンである、ことを特徴とする使用。
【請求項18】
診断で使用するための、請求項12又は13のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンであって、
当該エマルジョンは、1種以上の診断薬を含む診断用エマルジョンである、ことを特徴とする水中油型エマルジョン。
【請求項19】
前記診断薬が、蛍光剤、造影剤、及び放射線造影剤(radioimaging agent)からなる群から選択される診断的にイメージング可能なものである、請求項18に記載の水中油型エマルジョン。
【請求項20】
前記診断薬が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、フルオレセイン、ローダミン、及びシアン5,5からなる群から選択される診断的にイメージング可能なものである、請求項19に記載の水中油型エマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月18日に出願された欧州特許出願第19383134.4号の利益を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、水中油(oil-in-water)型エマルジョン安定剤の分野に関する。特に、両親媒性メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の、エステラーゼ酵素応答を有する水中油型エマルジョン安定剤としての使用に関する。本発明はまた、水中油型エマルジョン安定剤組成物及びそれらを含有する水中油型エマルジョン、並びに、それらを調製するプロセス、並びに、治療法、診断、及び化粧品におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖とは生物圏において最も豊富な高分子である。多糖は、構造及び特性におけるそれらの多様性に寄与する多くの反応基、広範な分子量、様々な化学組成を有する。
【0004】
多糖の骨格の修飾により多糖の親水性が変性されることが、従来技術で開示されている。修飾後に多糖へと付与される両親媒性は、例としてはレオロジー調整剤、エマルジョン安定剤、及び/又は表面調整剤として、それらに広く興味深い適用スペクトルを与える。近年、多糖の疎水性修飾は、生物医学的使用のための自己集合ナノ粒子を形成することができるので、ますます注目されている。水相中では、ポリマーナノ粒子の疎水性コアは、親水性外殻によって囲まれている。したがって、内部コアは疎水性薬物のための容器として機能することができる。しかしながら、これらのシステムの分解の程度及び速度は、薬物の適切な送達にとって重要である。したがって、これは生物医学的用途のために広く研究されている。
【0005】
したがって、多糖の骨格にエーテル又はフェノキシ部分を導入した後のデキストラン(多糖)の両親媒性の修飾によって、エマルジョン乳化剤としての使用が可能になることが開示されている。しかしながら、エーテル基又はフェノキシ基を伴うこれらの変性多糖は、体内に多く存在しないデキストラナーゼ以外の酵素応答性を有しないため、薬物送達ビヒクルとして有用ではない。
【0006】
更に、デキストラナーゼ活性応答を有するエマルジョン乳化剤として、ポリ乳酸変性デキストランもまた、従来技術で開示されている。デキストラナーゼは、デキストランポリマー中のα-1,6-グリコシド結合を加水分解し、デキストラン分子内の結合を切断し、より短いイソマルト糖(isomalto-saccharide)を放出する。残念ながら、デキストラナーゼはヒト又は動物の体内に存在しない酵素であり、薬物送達システムとして不適切なこれらのPLA変性多糖になる。
【0007】
従って、当技術分野で周知であることから、生物医学的用途で有用である効率的な多糖系エマルジョン安定剤を提供する必要性が、依然として存在することが導き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、水中油型エマルジョン安定剤としても、また活性分子の新しい封入技術のための材料としても有用な、変性多糖及びそれらを含有するナノ粒子を見出した。とりわけ、本発明者らは、驚くべきことに、63mN/m以下の表面張力を有するメタクリレート基又はアクリレート基の導入によって変性された多糖が、エステラーゼ酵素応答を有する水中油型エマルジョン安定剤として使用するのに適切な両親媒性を有することを見出した。
【0011】
実験セクションで示されているように、特許請求される表面張力を有する本発明の多糖又はナノ粒子のみが、界面活性、及びまたエステラーゼ酵素応答性も有する。これに対し、特許請求された範囲(約66mN/m)より高い表面張力を有する比較用メタクリレート変性デキストラン多糖は、相分離安定剤としていかなる界面活性も示さない。
【0012】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、疎水性であるが反応性の官能基による天然多糖の修飾は、界面活性を付与して、安定した水中油型エマルジョンを生成するようである。実際、エマルジョン液滴の表面に反応基を有するメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖又はそれらを含有するナノ粒子の存在は、多糖の容易な官能化を可能にして、活性分子又は他の生体関連機能を付加させる。特に、親油性薬物は、界面の表面にメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖又はそれらを含有するナノ粒子を有する水中油型エマルジョンの油相中に溶解されることで、封入された活性親油性化合物の全体が保護されたままであり、いかなる望ましくない漏れも回避されることを確実にする。
【0013】
更に、メタクリレート又はアクリレート部分のカルボキシ基と、多糖のヒドロキシル基との間のエステル結合の形成により、エステラーゼ酵素(エステルを加水分解する酵素)の存在下においてエマルジョンを不安定化させることが可能となる。実際に、本発明者らは、驚くべきことに、比較的短いメタクリレート基又はアクリレート基の存在のみが、エステラーゼ酵素の存在下においてエマルジョンを不安定化させるのに充分であったことを見出した。したがって、エステル基の加水分解によって、標的部位においてそれらのカーゴ(積み荷)(活性親油性化合物)を放出することが可能となる。したがって、本発明のメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖又はそれらを含有するナノ粒子は、生物学的用途によるエステラーゼ酵素応答性エマルジョン安定剤を提供する。例えば、本発明の多糖及びナノ粒子は、大部分の炎症性疾患又は障害などのエステラーゼ酵素の過剰発現を伴う疾患の治療に使用することができた。
【0014】
その上に、本発明の多糖又はナノ粒子を含有するエマルジョンをエステル結合の加水分解によって不安定化させることはまた、多糖全体を回収し、それらの生物学的活性を維持することを可能にする。したがって、本発明のエマルジョンは、二重の生物学的作用(即ち)、エマルジョン内部に封入された活性化合物に連結(リンク)された第1の生物学的活性、及び、天然多糖の生物学的活性に関連した第2の生物学的活性を有する。放出される多糖は、したがって低い又はヌルの(null,ゼロの)置換度を有し、次いで、ヒト又は動物の身体に充分に容認され生体適合性であるため、有利である。例えば、メタクリレート若しくはアクリレート変性ヒアルロン酸又はそれらを含有するナノ粒子を含む水中油型エマルジョンの場合、内部に封入された活性化合物に属する活性に加えて、エマルジョンから放出されたヒアルロン酸に属する抗炎症活性が観察される。
【0015】
最後に、界面クロスリンカーを使用することでエマルジョン液滴の油/水界面に存在する多糖又はナノ粒子を架橋することによって、本発明の多糖又はナノ粒子を含有する水中油型エマルジョンの安定性と、エステラーゼ酵素の存在下におけるそれらの不安定化動態(内部に含有される活性化合物の放出動態を調整する)と、を調節することができる。このようにして、本発明のエマルジョンは、任意の生理学的に関連する培地中で数ヶ月間(加速安定性試験によれば最大1年間)安定であることが実証された。それにもかかわらず、エステラーゼ酵素の存在下では、エマルジョンもまた不安定化し、いかなる架橋剤も有しないエマルジョンと比較して、界面架橋剤の存在のおかげで、封入化合物の放出動態を有意に延長することができた。したがって、油/水界面に位置する多糖又はナノ粒子の架橋によって、その不安定化を生じることなく、ほぼあらゆる油相を用いてより安定なエマルジョンを有することが可能となる(汎用性の向上)。
【0016】
したがって、本発明の第1の態様は、デュヌイリング法(Du Nouy ring method)により測定される表面張力が63mN/m以下であるところの、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子の、水中油型エマルジョン安定剤としての使用に関する。
【0017】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、本発明の第1の態様に定義される単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子と、1つ以上の適切な賦形剤又は担体とを含んでなる水中油型エマルジョン安定剤組成物による、水中油型エマルジョン安定剤に関する。
【0018】
本発明の第3の態様は、水中油型エマルジョンに関するものであり、当該水中油型エマルジョンは、以下の(a),(b),(c)を備える、即ち、
(a)外部水相(W)は、
(a1)水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、及び
(a2)任意選択的に、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択される1つ以上の親水性化合物、
を含むこと;
(b)内部油相(O)が、
(b1)親油性活性剤、及び
(b2)親油性賦形剤又は担体、
からなる群から選択される1つ以上の親油性化合物を含むこと;
並びに、
(c)外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)が、
(c1)以下からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤であって:
(c1´)本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖、
(c1´´)本発明の第1の態様に定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子、
(c1´´´)本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、
界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖、又は代替的に、
(c1´´´´)本発明の第1の態様に定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、
界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、ナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子
からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤と、
c2)任意選択的に、1つ以上の親水性活性剤と、
を含むこと。
【0019】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様にかかる水中油型エマルジョンの、担体(carrier)としての使用に関する。
【0020】
本発明の第5の態様は、治療法、診断、及び化粧品で使用するための、本発明の第3の態様にかかる水中油型エマルジョンに関する。
【0021】
本発明の第2の態様の水中油型エマルジョン安定剤組成物を調製するプロセス、および、本発明の第4の態様の水中油型エマルジョンを調製するプロセス、もまた本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のメタクリレート変性デキストラン多糖の動態を示す。反応時間に応じたメタクリル酸(methacrylic:MA)置換度(substitution degree:DS)の比較。
【
図2】本発明のメタクリレート変性多糖の物理化学的構造の概略図を示す。
【
図3】本発明の単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子の物理化学的構造の概略図を示す。
【
図4】本発明の水中油型エマルジョンを得るプロセスの概略図を示し、本発明のメタクリレート変性デキストラン(a)からのエマルジョン(b)の界面層(IL)中に本発明のメタクリレート変性デキストランを含む本発明の水中油型エマルジョンを調製し、その後、界面クロスリンカーとしてDODTを用いた界面架橋工程により、エマルジョン(c)の界面層(IL)中に内部架橋メタクリレート変性デキストランを含む本発明の水中油型エマルジョンを得る。
【
図5】界面層(IL)中のメタクリレート変性多糖と、油相(O)中に封入された親油性活性剤とを含む、本発明の水中油型エマルジョンの概略図を示す。
【
図6】界面層(IL)中の界面架橋メタクリレート変性多糖、油相(O)中に封入された親油性活性剤、及び界面架橋メタクリレート変性多糖の外面に連結された親水性活性剤を含む、本発明の水中油型エマルジョンの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される他のより具体的な定義の用語は以下に記載されており、特に明示的に記載された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって均一に適用されることを意図している。
【0024】
本発明の目的のためには、所与の任意の範囲は、範囲の下側及び上側終点の両方を含む。温度、時間、重量などの所与の範囲は、特に明記されない限り、近似値とみなすべきである。
【0025】
「重量パーセント(%)」、「重量/重量%」、及び「w/w%」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、組成物又は混合物の総重量に対する、1つの成分のパーセンテージを指す。上述したように、本発明の第1の態様は、デュヌイリング法により測定される表面張力が63mN/m以下であるところの、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子の、水中油型エマルジョン安定剤として使用に関する。
【0026】
「多糖」という用語は、単糖から構成される少なくとも4個の複数の繰り返し単位を有するポリマー炭水化物を指す。本発明の目的のためには、「単糖」という用語は、単糖類又は二糖類を指す。一実施形態では、多糖は、デキストラン、ヒアルロン酸、アルギネート、ジェランガム、セルロース及びその誘導体、グリコーゲン、並びにキトサンからなる群から選択される。一実施形態では、多糖は、デキストランである。一実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸である。一実施形態では、多糖は、アルギネートである。一実施形態では、多糖は、ジェランガムである。一実施形態では、多糖は、セルロース及びその誘導体、特に、ヒドロキシルエチルセルロース及びメチルセルロースである。一実施形態では、多糖は、グリコーゲンである。一実施形態では、多糖は、キトサンである。本発明の目的のためには、多糖のいずれか1つが別々に取られた本発明に開示される全ての態様及び実施形態(単独で、又は上記若しくは下記に開示される他の実施形態と組み合わせて)もまた、本発明の一部を形成する。
【0027】
用語「一本鎖ナノ粒子」、「単鎖ナノ粒子」、及び略語「SCNP」とは、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、本発明の変性多糖を含む、三次元「架橋」ナノ粒子を指す。SCNPは、通常、変性多糖の架橋性基と架橋剤とを反応させることにより調製される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、ナノスケールの寸法を有する、すなわち、約1~約1000ナノメートルの直径を有する粒子を指す。本発明のナノ粒子の粒径は、最新技術に開示されている任意の方法によって測定することができる。特に、粒径を測定するために本発明で使用される方法は、溶液中の粒子を測定するための動的光散乱法(Dynamic light scattering:DLS)及び原子間力顕微鏡法(Atomic force microscopy:AFM)、又は乾燥状態の粒子を測定するための透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy:TEM)である。「架橋された」という用語は、三次元架橋ネットワークを有するナノ粒子を指し、ここで、ネットワークは、1つ以上の分子内架橋剤によって崩壊した出発メタクリレート又はアクリレート多糖の単鎖によって形成される。「架橋」という用語は、ポリマー科学分野において、ポリマーの物理的特性の差を促進するための架橋の使用を指す。「架橋」という用語は、加水分解性共有結合によって、多糖の1つのメタクリレート又はアクリレート反応基を架橋剤の架橋性基と連結する結合を指す。例えば、多糖の1つのメタクリレート又はアクリレート反応基を架橋剤の架橋性基と連結する結合が、加水分解性共有結合である。本明細書で互換的に使用される「クロスリンカー」又は「架橋剤」という用語は、ポリマー鎖(複数可)を架橋する能力を有する化合物を指す。「ホモ二官能性架橋剤」という用語は、2つの同一の反応部位(すなわち、2つの同一の架橋性基)を含有する架橋剤を指し、これは多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の反応基と反応することができる。
【0029】
「多糖メタクリレート又はアクリレート系」及び「メタクリレート又はアクリレート変性多糖」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、構造中にメタクリレート又はアクリレートのエステルを含む多糖によって形成される多糖を指す。
【0030】
「単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子」又は「単鎖メタクリレート又はアクリレート変性多糖系ナノ粒子」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、構造中にメタクリレート又はアクリレートのエステルを含む多糖によって形成された単鎖により形成された、ナノ粒子を指す。
【0031】
「エステル」という用語は、化学基-CO-O-を指す。本発明の目的のためには、エステル基は、メタクリレート又はアクリレート部分の-CO-基の炭素原子と、多糖のOH部分の酸素原子との共有結合によって形成される。
【0032】
多糖鎖中に存在するメタクリレート基又はアクリレート基の量は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)分光法によって測定することができる。特に、プロトン核磁気共鳴分光法による。
【0033】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、多糖の変性繰り返し単位の1~100%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度を含む。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の5~100%である。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の10~100%である。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の10~70%である。
【0034】
一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の1~100%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の5~100%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の10~100%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度は、多糖の変性繰り返し単位の10~70%である。
【0035】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度を含む。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の5~98%である。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の10~98%である。一実施形態では、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の10~70%である。
【0036】
一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1~98%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の5~98%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の10~98%である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、メタクリレート基又はアクリレート基による単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の置換度は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1~70%である。
【0037】
用語「置換度(degree of substitution)」、「置換度(substitution degree)」、及び略語「DS」は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。メタクリレート又はアクリレート多糖の場合、置換度は、繰り返し単位あたり1つのヒドロキシル基のみが変性されていると仮定して、多糖の変性繰り返し単位のパーセントとして表され、かつ核磁気共鳴(NMR)分光法によって、特に、プロトン核磁気共鳴(H-NMR;本出願の実験セクションの特性評価方法を参照)によって測定される。したがって、例えば、繰り返し単位の80%の置換度を有するメタクリレート又はアクリレート変性デキストランは、繰り返し単位あたり1つのヒドロキシル基のみが変性されると仮定すると、デキストランの繰り返し単位の80%(すなわち、デキストランのグルコース単位の80%)が、メタクリレート基又はアクリレート基によって変性されていることを暗に意味する。単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の場合、置換度は、繰り返し単位あたり1つのヒドロキシル基のみが変性されていると仮定して、ナノ粒子の変性繰り返し単位のパーセントとして表され、かつ核磁気共鳴(NMR)分光法によって、特に、プロトン核磁気共鳴(H-NMR;本出願の実験セクションの特性評価方法を参照)によって測定される。したがって、例えば、繰り返し単位の80%の置換度を有する単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、繰り返し単位あたり1つのヒドロキシル基のみが変性されると仮定すると、デキストランナノ粒子の繰り返し単位の80%(すなわち、デキストランナノ粒子のグルコース単位の80%)が、メタクリレート基又はアクリレート基によって変性されていることを暗に意味する。
【0038】
特に、メタクリレートエステルは、通常、多糖をグリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate:GMA)で処理することによってエステル転移反応により調製され、アクリレートエステルは、通常、多糖をビニルアクリレート(vinyl acrylate:VA)、又はグリシジルアクリレート、塩化アクリロイルで処理することを暗に意味する、わずかに変更された手順から調製される。
【0039】
本発明の目的のためには、「エマルジョン安定剤」という用語は、それらを取り囲む外部相中の液滴間の界面を維持するのに必要なエネルギーを減少させることによって界面張力を低下させるように、安定化、乳化、相分離の防止、及び/又は、組成物の粘度を変化させる化合物を指す。特に、本発明の多糖及びナノ粒子は、親水性/疎水性又は極性/非極性界面で自らを整列させて、界面張力を低下させることができる。
【0040】
上述したように、本発明の、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的には、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子は、エステラーゼ酵素応答を有する水中油型エマルジョン安定剤として使用するのに適切な両親媒特性を有する。特に、これらは、デュヌイリング法により測定される表面張力が63mN/m以下である。表面張力の測定は、当業者に一般的に知られているデュヌイリング法によって実施した。この方法は、白金環を表面又は界面と接触させる。まず、環を完全に浸漬し、次いで、ゆっくりと持ち上げてメニスカス様を形成する。プロセス中、環を引っ張るメニスカスの力が測定される。メニスカスが裂ける前、メニスカスは最大の力を及ぼすであろう。この最大力が、表面張力の決定に使用される(Rudolph Macy、「Surface tension by the ring method.Applicability of the du Nouy apparatus」、J.Chem.Educ.、1935年、第12巻(第12号)第573頁、及び本出願の実験セクションの特性評価方法を参照されたい)。
【0041】
一実施形態では、デュヌイリング法により測定される表面張力は、60mN/m以下である。一実施形態では、多糖は、デキストラン、ヒアルロン酸、アルギネート、ジェランガム、セルロース及びその誘導体、グリコーゲン、並びにキトサンからなる群から選択され、表面張力は、デュヌイリング法によって測定される60mN/m以下である。一実施形態では、多糖は、デキストラン、ヒアルロン酸、及びキトサンからなる群から選択され、表面張力は、デュヌイリング法によって測定された60mN/m以下である。一実施形態では、多糖はデキストランであり、表面張力は、デュヌイリング法によって測定された60mN/m以下である。
【0042】
一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、メタクリレート又はアクリレート変性多糖の使用に関する。一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、メタクリレート変性多糖の使用に関する。一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、アクリレート変性多糖の使用に関する。
【0043】
「デキストラン」又は「デキストラン鎖」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、複合分岐状グルカン(グルコースの縮合に由来する多糖)を指す。IUPACはデキストランを「グリコシド結合を主にC-1→C-6で有する、微生物起源の分岐状ポリα-d-グルコシド」と定義している。デキストラン鎖は様々な分子量(3~2000キロダルトン)のものである。デキストランのポリマー主鎖は、α-1,3結合からの分岐を有する、グルコースモノマー間のα-1,6グリコシド結合からなる。
【0044】
「デキストランメタクリレート又はアクリレート系」及び「メタクリレート又はアクリレート変性デキストラン」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、構造中にメタクリレート又はアクリレートのエステルを含むデキストランによって形成された、多糖又はナノ粒子を指す。
【0045】
特に、メタクリレートエステルは、通常、以下のスキームに要約されるように、グルコースモノマーのヒドロキシル基及びグリシジルメタクリレート(GMA)のカルボニル基からエステル結合を形成するような反応条件下において、デキストランをGMAで処理することによって、エステル転移反応により調製される(van Dijk-Wolthuisら、「Biomolecular Engineering」、2007年、第24巻第496~504頁を参照のこと)。
【0046】
【0047】
アクリレートエステルは、通常、以下のスキームに要約されるように、グルコースモノマーのヒドロキシル基及びグリシジルアクリレート(GA)のカルボニル基からエステル結合を形成するような反応条件下において、デキストランをGAで処理することを暗に意味する、わずかに変更された手順から調製される(van Dijk-Wolthuisら、「Biomolecular Engineering」、2007年、第24巻第496~504頁を参照のこと)。
【0048】
【0049】
または代替的に、アクリレートエステルは、通常、以下のスキームに要約されるように、グルコースモノマーのヒドロキシル基及びビニルアクリレート(VA)のカルボニル基からエステル結合を形成するような反応条件下において、デキストランをVAで処理することを暗に意味する、わずかに変更された手順から調製される(L.Ferreiraら、「Biomaterials」、2002年、第23巻第3957~3967頁)。
【0050】
【0051】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(I)の繰り返し単位を含む、メタクリレート変性デキストランと、
【化4】
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、かつ式(II)の繰り返し単位を含む、アクリレート変性デキストランと、
【化5】
からなる群から選択される。
【0052】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、式(I)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性デキストランと、式(II)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性デキストランと、からなる群から選択され、特に、式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストランである。一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、式(I)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の5%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性デキストランと、式(II)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の5%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性デキストランと、からなる群から選択され、特に、式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストランである。一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、式(I)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の10%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性デキストランと、式(II)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の10%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性デキストランと、からなる群から選択され、特に、式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストランである。一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、式(I)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の10%~70%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性デキストランと、式(II)の繰り返し単位を含み、かつデキストランの繰り返し単位の10%~70%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性デキストランと、からなる群から選択され、特に、式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストランである。
【0053】
本発明の目的のためには、「ヒアルロン酸」、「ヒアルロナン」、及び略語「HA」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルクロン酸のいくつかの繰り返し二糖単位から構成される、CAS番号9004-61-9であるグリコサミノグリカンの天然の非硫酸化アニオン形態を指す。その化学構造は以下の式に対応する。
【0054】
【0055】
本発明の目的のためには、「ヒアルロン酸(hyaluronic)」という用語は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)の適切な塩を包含する。使用され得るヒアルロン酸塩の種類は、治療目的、美容目的、又は診断目的でそれぞれ使用される場合に、医薬的、美容的、又は診断的に許容される限り制限されない。ヒアルロン酸及びその塩は、いくつかの物理的特性が異なっていてもよいが、本発明の目的に対しては同等であり、ヒアルロン酸のそれらの特性は、医薬的、美容的、及び診断的に許容される塩に拡張可能である。ヒアルロン酸の許容される塩の調製は、当技術分野で周知の方法によって実行することができる。本発明に適切なヒアルロン酸の医薬的、美容的、又は診断的に許容される塩の非限定的な例としては、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸亜鉛、及びヒアルロン酸コバルトなどの無機塩、並びにヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩が挙げられる。一実施形態では、ヒアルロン酸の医薬的、美容的、又は診断的に許容される塩は、ナトリウム塩(CAS番号9067-32-7)又はカリウム塩(CAS番号31799-91-4)の選択されたアルカリ金属の塩である。一実施形態では、ヒアルロン酸又はその塩(例として、ヒアルロン酸ナトリウム)は、50kDa以上の分子量を有する。一実施形態では、ヒアルロン酸又はその塩(例として、ヒアルロン酸ナトリウム)は、50kDa~5000kDaの分子量を有する。
【0056】
「ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート系」及び「メタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、構造中にメタクリレート又はアクリレートのエステルを含むヒアルロン酸によって形成された、多糖又はナノ粒子を指す。
【0057】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性ヒアルロン酸からなる群から選択される。
【0058】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(IV)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性ヒアルロン酸
【化7】
および、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、かつ式(V)の繰り返し単位を含むアクリレート変性ヒアルロン酸
【化8】
からなる群から選択される。
【0059】
特定の実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、式(V)の繰り返し単位を含み、かつヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するアクリレート変性ヒアルロン酸であり、特に、式(V)の繰り返し単位を含むアクリレート変性ヒアルロン酸である。
【0060】
本発明の目的のためには、アルギン酸という用語は、CAS番号9005-32-7である異なる配列又はブロックで互いに共有結合した、それぞれ(1-4)結合β-D-マンヌロネート(M)及びそのC-5エピマーα-L-グルロネート(G)残基のホモポリマーブロックを有する直鎖コポリマーである。その化学構造は以下の式に対応する。
【0061】
【0062】
本発明の目的のためには、「アルギン酸」という用語は、アルギン酸の適切な塩を包含する。使用され得るアルギン酸塩の種類は、治療目的、美容目的、又は診断目的でそれぞれ使用される場合に、医薬的、美容的、又は診断的に許容される限り制限されない。アルギン酸の許容される塩の調製は、当技術分野で周知の方法によって実行することができる。本発明に適切なアルギン酸の医薬的、美容的、又は診断的に許容される塩の非限定的な例としては、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カルシウムなどのアルギネートのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、アルギネートの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性アルギネートと、アルギネートの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性アルギネートと、からなる群から選択される。
【0064】
本発明の目的のためには、「ジェランガム」という用語は、D-グルコースの2つの残基、並びにL-ラムノース及びD-グルクロン酸の各残基のうちの1つからなる四糖繰り返し単位を有する、CAS番号71010-52-1である多糖を指す。四糖繰り返しは、次の式の以下の構造を有する:[D-Glc(β1→4)D-GlcA(β1→4)D-Glc(β1→4)L-Rha(α1→3)]n:
【0065】
【0066】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、ジェランガムの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性ジェランガムと、ジェランガムの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性ジェランガムと、からなる群から選択される。
【0067】
本発明の目的のためには、「セルロース」という用語は、CAS番号9004-34-6である繰り返し単位β(1→4)結合D-グルコース単位の直鎖によって形成される多糖を指す。その化学構造は以下の式に対応する。
【0068】
【0069】
更に、本発明の目的のためには、「セルロース誘導体」という用語は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルセルロースを包含する。「ヒドロキシアルキルセルロース」とは、ヒドロキシアルキル基を有するセルロース化合物のエーテル誘導体を指す。ヒドロキシアルキルセルロースの例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース又はエチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。「アルキルセルロース」とは、アルキル基を有するセルロース化合物のエーテル誘導体を指す。アルキルセルロースの例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、又はメチルセルロースが挙げられる。「カルボキシアルキルセルロース」は、カルボキシルアルキル基を有するセルロース化合物のエーテル誘導体及びそれらの塩を指す。カルボキシアルキルセルロースの例としては、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。一実施形態では、多糖は、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロースからなる群から選択されるセルロースである。一実施形態では、多糖は、ヒドロキシエチルセルロースである。一実施形態では、多糖は、メチルセルロースである。
【0070】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、メタクリレート変性ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース又はメチルセルロースの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性メチルセルロースから選択されるメタクリレート変性セルロース、並びにヒドロキシエチルセルロース又はメチルセルロースの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性ヒドロキシエチルセルロース及びアクリレート変性メチルセルロースから選択されるアクリレート変性セルロースである。
【0071】
本発明の目的のためには、「グリコーゲン」という用語は、グルコースの多分岐多糖を指す。特に、グリコーゲンは、およそ8~12グルコース単位の平均鎖長を有するグルコース残基の直鎖からなる分岐状バイオポリマーである。グルコース単位は、1つのグルコースから次のグルコースへのα(1→4)グリコシド結合によって、直線的に一緒に連結される。分岐は、それらが分岐している鎖に、新しい分岐の第1のグルコースと幹鎖上のグルコースとの間のα(1→6)グリコシド結合によって連結されている。
【0072】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、グリコーゲンの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有するメタクリレート変性グリコーゲンと、グリコーゲンの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有するアクリレート変性グリコーゲンと、からなる群から選択される。
【0073】
本発明の目的のためには、「キトサン」という用語は、ランダムに分布したβ-(1→4)結合D-グルコサミン(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化単位)から構成される直鎖状多糖を指す。これは、エビ及び他の甲殻類のキチン殻を、水酸化ナトリウムのようなアルカリ性物質で処理することによって作製される。したがって、本発明の文脈において、「キトサン」という用語は、CAS番号9012-76-4であるキチン由来の少なくとも部分的に脱アセチル化された生成物を指す。その化学構造は以下の式に対応する。
【0074】
【0075】
脱アセチル化度は様々であってもよく、「キトサン」という用語は特定の脱アセチル化の程度に限定されない。本出願の文脈において、「脱アセチル化度」という用語は、遊離アミノ基又はその塩に変換されたキトサンを含む、炭水化物単位の2位のアセチルアミノ基の割合を指す。
【0076】
「キトサン」という用語はまた、そのキトサン塩も包含する。キトサン塩の例としては、塩酸塩、キトサン臭化水素酸塩、キトサンリン酸塩、キトサンギ酸塩、キトサン酢酸塩、キトサンプロピオン酸塩、キトサンクロロ酢酸塩、キトサンヒドロキシ酢酸塩、キトサン酪酸塩、キトサンイソ酪酸塩、キトサンアクリレート、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
一実施形態では、メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(VII)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性キトサン
【化13】
および、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、かつ式(VIII)の繰り返し単位を含むアクリレート変性キトサン
【化14】
からなる群から選択される。
【0078】
本発明に開示されるメタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸、アルギネート、ジェランガム、セルロース及びその誘導体、グリコーゲン、並びにキトサンは、出発物質として適切な多糖を用いて、メタクリレート又はアクリレート変性デキストランについて開示される一般的な手順に従って調製することができる。
【0079】
一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子の使用に関する。一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子の使用に関する。一実施形態では、本発明の使用は、水中油型エマルジョン安定剤としての、63mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力、特に60mN/m以下のデュヌイリング法により測定された表面張力を有する、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子の使用に関する。
【0080】
一実施形態では、本発明の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、多糖メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージを含む。一実施形態では、本発明の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、多糖メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~50モル%の分子内架橋のパーセンテージを含む。
【0081】
「モル%」という用語は、本明細書で使用される場合、モル分率(mole fraction)又はモル分率(molar fraction)を指し、これは、モルで表される成分の量を、多糖メタクリレート又はアクリレート鎖に存在するモノマー単位の総量で割ったものである。
【0082】
本発明の目的のためには、「分子内架橋」という用語は、単鎖の加水分解性共有結合によって、多糖の1つのメタクリレート又はアクリレート反応基を架橋剤の架橋性基と連結する結合を指す。この分子内架橋結合は、一本鎖ナノ粒子の三次元構造の生成を担う。本発明の文脈において、「分子内架橋」という用語は、エマルジョンの界面層で生成される、本明細書で以下に定義される「界面架橋」結合を包含しない。
【0083】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、デュヌイリング法によって測定された63mN/m以下の表面張力、特にデュヌイリング法によって測定された60mN/m以下の表面張力と、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、デキストランメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%と、を有する単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0084】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、
式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である:
【化15】
式中、
R
1は、-CH
2-CH
2-及び-CH
2-CH(CH
3)-からなる群から選択され、
R
2は、-CH(=CH
2)及び-C(=CH
2)(CH
3)からなる群から選択され、
L
1は、-[(CH
2)
r-O]
q-(CH
2)
r-及び-(CH
2)
s-からなる群から選択されるビラジカル(biradical)であり、
qは、2~3の整数であり、
rは、2~4の整数であり、
sは、2~5の整数であり、並びに
当該ナノ粒子は、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、
デキストランメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する。
【0085】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はメタクリレート系ナノ粒子は、
式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランメタクリレート系ナノ粒子であり、式中、R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)である。
【0086】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、
式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランアクリレート系ナノ粒子であり、式中、R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)である。
【0087】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランメタクリレート又はデキストランアクリレート系ナノ粒子であり、式中、L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは本発明で定義される通りである。
【0088】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、
式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランメタクリレート又はデキストランアクリレート系ナノ粒子であり、式中、L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0089】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子は、式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランメタクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0090】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(III)の繰り返し単位を含む単鎖デキストランアクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0091】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、デュヌイリング法によって測定された63mN/m以下の表面張力、特にデュヌイリング法によって測定された60mN/m以下の表面張力と、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%と、を有する単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0092】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、
式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である:
【化16】
式中、
R
1は、-CH
2-CH
2-及び-CH
2-CH(CH
3)-からなる群から選択され、
R
2は、-CH(=CH
2)及び-C(=CH
2)(CH
3)からなる群から選択され、
L
1は、-[(CH
2)
r-O]
q-(CH
2)
r-及び-(CH
2)
s-からなる群から選択されるビラジカル(biradical)であり、
qは、2~3の整数であり、
rは、2~4の整数であり、
sは、2~5の整数であり、並びに
当該ナノ粒子は、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、
ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する。
【0093】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸メタクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)である。
【0094】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)である。
【0095】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは本発明で定義される通りである。
【0096】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0097】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸メタクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0098】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(VI)の繰り返し単位を含む単鎖ヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0099】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、アルギネートメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖アルギネートメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0100】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基の置換度と、アルギネートメタクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖アルギネートメタクリレート系ナノ粒子である。
【0101】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のアクリレート基の置換度と、アルギネートアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖アルギネートアクリレート系ナノ粒子である。
【0102】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、セルロースメタクリレート又はアクリレート鎖中に、特にヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロース中に、存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖セルロースメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0103】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基の置換度と、セルロースメタクリレート鎖中に、特にヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロース中に、存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖セルロースメタクリレート系ナノ粒子である。
【0104】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のアクリレート基の置換度と、セルロースアクリレート鎖中に、特にヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロース中に、存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖セルロースアクリレート系ナノ粒子である。
【0105】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、グリコーゲンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖グリコーゲンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0106】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基の置換度と、グリコーゲンメタクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖グリコーゲンメタクリレート系ナノ粒子である。
【0107】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のアクリレート基の置換度と、グリコーゲンアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖グリコーゲンアクリレート系ナノ粒子である。
【0108】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、キトサンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖キトサンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0109】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基の置換度と、キトサンメタクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖キトサンメタクリレート系ナノ粒子である。
【0110】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のアクリレート基の置換度と、キトサンアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する単鎖キトサンアクリレート系ナノ粒子である。
【0111】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、デュヌイリング法によって測定された63mN/m以下の表面張力、特にデュヌイリング法によって測定された60mN/m以下の表面張力と、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、キトサンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%と、を有する単鎖キトサンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である。
【0112】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、
式(IX)の繰り返し単位を含む単鎖キトサンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である:
【化17】
式中、
R
1は、-CH
2-CH
2-及び-CH
2-CH(CH
3)-からなる群から選択され、
R
2は、-CH(=CH
2)及び-C(=CH
2)(CH
3)からなる群から選択され、
L
1は、-[(CH
2)
r-O]
q-(CH
2)
r-及び-(CH
2)
s-からなる群から選択されるビラジカル(biradical)であり、
qは、2~3の整数であり、
rは、2~4の整数であり、
sは、2~5の整数であり、並びに
当該ナノ粒子は、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基の置換度と、
キトサンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージ、特に1~50モル%の分子内架橋のパーセンテージと、を有する。
【0113】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含む単鎖キトサンメタクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)である。
【0114】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含む単鎖キトサンアクリレート系ナノ粒子であり、式中、
R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)である。
【0115】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含む単鎖キトサンメタクリレート又はヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは本発明で定義される通りである。
【0116】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート又は単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含む単鎖キトサンメタクリレート又はヒアルロン酸アクリレート系ナノ粒子であり、式中、
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0117】
一実施形態では、単鎖多糖メタクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含むキトサンメタクリレート系ナノ粒子の単鎖であり、式中、
R1は、-CH2-CH(CH3)-であり、R2は、-C(=CH2)(CH3)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0118】
一実施形態では、単鎖多糖アクリレート系ナノ粒子は、式(IX)の繰り返し単位を含むキトサンアクリレート系ナノ粒子の単鎖であり、式中、
R1は、-CH2-CH2-であり、R2は、-CH(=CH2)であり、
L1は、-[(CH2)r-O]q-(CH2)r-であり、q及びrは、本発明で定義される通りであり、特にL1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-である。
【0119】
本出願に開示される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、本出願に定義される多糖メタクリレート又はアクリレートを、架橋性基を有するホモ二官能性架橋剤で架橋することによって調製することができ、このプロセスは以下を含む:即ち、
(i)本発明の第1の態様で定義されるような多糖メタクリレート又はアクリレートの水溶液を、ホモ二官能性架橋剤の水溶液へと添加すること;
又は代替的には、
(ii)本発明の第1の態様で定義されるようなデキストランメタクリレート又はアクリレートの水溶液へ、ホモ二官能性架橋剤の水溶液を添加すること;
又は代替的には、
(iii)ホモ二官能性架橋剤の溶液と、本発明の第1の態様で定義されたデキストランメタクリレート又はアクリレートの水溶液とを混合することであって、
20~25℃の温度で
任意選択的には、触媒の存在下において、混合すること;
を含み、
任意選択的には、本プロセスは更に、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を精製する追加の工程を含み、
任意選択的には、本プロセスは更に、単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を乾燥させる追加の工程を含む。
【0120】
本出願に開示される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、本出願に定義されるような多糖メタクリレート又はアクリレートを、架橋性基を有するホモ二官能性架橋剤で架橋することによって調製することができる。これらの調製プロセスは、従来技術で開示されている(PCT出願のWO2016071258号を参照)。
【0121】
上述したように、本発明の第2の態様は、水中油型エマルジョン安定剤組成物に関し、当該組成物は、本願に定義されるような、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子と、1つ以上の適切な賦形剤又は担体と、を含む。これらの組成物は、水相及び油相と接触することで、本発明で定義される安定な水中油型エマルジョンが得られるので、有利である。
【0122】
メタクリレート又はアクリレート変性多糖及び単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子について、本発明の第1の態様に開示される全ての実施形態はまた、本発明の第2の態様の水中油型エマルジョン安定剤組成物にも適用される。
【0123】
本発明の水中油型エマルジョン安定剤組成物は、従来技術において周知の方法に従って調製することができる。適切な賦形剤及び/又は担体、並びにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って当業者が容易に決定することができる。
【0124】
本発明の第3の態様は、
(a)外部水相(W);
(b)内部油相(O);及び
(c)外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL);
を備えてなる水中油型エマルジョンであって、以下:
(a)外部水相(W)が、
(a1)水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、特に水、及び
(a2)任意選択的に、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択される1つ以上の親水性化合物、
を含み;
(b)内部油相(O)が、
(b1)親油性活性剤、及び
(b2)親油性賦形剤又は担体、
からなる群から選択される1つ以上の親油性化合物を含み;
並びに、
(c)外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)が、
(c1)以下からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤と、
(c2)任意選択的に、1つ以上の親水性活性剤と、
を含み、
前記(c1)1つ以上のエマルジョン安定剤は、
(c1´)本発明に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖;
(c1´´)本発明に定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子;
(c1´´´)本発明に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、
界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖;
(c1´´´´)本発明に定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、
界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、ナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子;
からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤である、
水中油型エマルジョンに関する。
【0125】
本出願の実験セクションで実証されているように、本発明の水中油型エマルジョンは、製造、保存、及び使用条件において安定である。更に、これらはまた、活性成分のための送達プラットフォームとしての使用を可能にし、エマルジョンからの薬物の送達の動態的制御さえ可能にする、エステラーゼ酵素応答も有する。水中油型エマルジョンの界面相に本発明の界面架橋多糖又はナノ粒子を含むエマルジョンは、エステラーゼ酵素応答を損なうことなく安定性が改善されていることもまた、実証されている。
【0126】
「エマルジョン」という用語は、少なくとも2つの不混和性相を含む分散システムを指し、一方の相は他方の相中に液滴として分散している。水相が分散相であり、油が分散媒体である場合、エマルジョンは、油中水型エマルジョン(w/o)と称される。油が液滴として水相全体に分散する場合、エマルジョンは、水中油型エマルジョン(o/w)と称される。本発明の目的のためには、「水中油型エマルジョン」という用語は、水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒からなる群から選択される溶媒を含む、外部水相(又は水相)を有するエマルジョンを包含する。
【0127】
上述したように、外部水相(W)は、(a1)水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、特に水と、(a2)任意選択的に、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物と、を含む。
【0128】
「グリコール」という用語は、少なくとも2個のヒドロキシル置換基を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を指す。一般にグリコールは、約2~約12個の炭素原子を有する(C2~C12)。本明細書で使用される場合、「グリコール」という用語はまた、本明細書に記載されるグリコールのポリマー型も包含する。ポリマーグリコールの例としては、エチレングリコール及びポリエチレングリコールが挙げられる。一実施形態では、グリコールは、グリセリンである。
【0129】
一実施形態では、外部水相(W)は、水(a1)からなる。
一実施形態では、外部水相(W)は、グリコール(a1)からなる。
一実施形態では、外部水相(W)は、水とグリコール(a1)との混合物からなる。
一実施形態では、外部水相(a)は、水(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、からなる。
一実施形態では、外部水相(a)は、グリコール(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、からなる。
一実施形態では、外部水相(a)は、水及びグリコールの混合物(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、からなる。
一実施形態では、外部水相(a)は、水(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、を含む。
一実施形態では、外部水相(a)は、グリコール(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、を含む。
一実施形態では、外部水相(a)は、水及びグリコールの混合物(a1)と、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択された1種以上の親水性化合物(a2)と、を含む。
一実施形態では、1種以上の親水性化合物は、1種以上の親水性活性剤(a2´)である。
一実施形態では、1種以上の親水性化合物は、1種以上の親水性賦形剤又は担体(a2´´)である。
一実施形態では、1種以上の親水性化合物は、1種以上の親水性活性剤(a2´)と、1種以上の親水性賦形剤又は担体(a2´´)と、の混合物である。
【0130】
「親水性」及び「極性」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、水素結合を生成し、これらを水中及び他の極性溶媒中により容易に溶解することを可能にすることができる化合物、活性剤、賦形剤、又は担体を指す。適切な「親水性賦形剤及び/又は担体」、並びにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って当業者が容易に決定することができる。
【0131】
一実施形態では、1種以上の親水性化合物は、1種以上の水混和性有機溶媒である1種以上の親水性賦形剤又は担体(a2´´)である。「混和性有機溶媒」という用語は、合わせた場合に単相を形成する有機溶媒を指し、これは、こうして得られた混合物が、とりわけ構成成分濃度及び温度の特定の条件下において「単相性」であることを意味する。更に、「水混和性有機溶媒」という用語は、反応が実行される温度で水により単相性溶液を形成することができる有機溶媒を指す。本明細書で使用される場合、「単相性」という用語は、1つの液相のみを含む反応媒体、及びそのような反応媒体を採用する方法もまた指す。一実施形態では、1つ以上の親水性化合物は、(C1~C6)アルコール、(C1~C4)アルキル-CO-(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルキル-CO-O-(C1~C4)アルキル、及びそれらの混合物からなる群から選択された1種以上の水混和性有機溶媒である。「アルコール」という用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換され、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含有する、「アルカン」を指す。例としては、グリセロール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びsec-ブタノールが挙げられる。「アルキル」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含有する、飽和直鎖又は分岐炭化水素鎖を指す。例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルの基が挙げられる。
【0132】
上述したように、内部油相(O)は、(b1)親油性活性剤と、(b2)親油性賦形剤又は担体と、からなる群から選択される1種以上の親油性化合物を含む。
【0133】
一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性活性剤(b1)からなる。一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性活性剤(b1)を含む。一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性賦形剤又は担体(b2)からなる。一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性賦形剤又は担体(b2)を含む。一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性活性剤(b1)と、1種以上の親油性賦形剤又は担体(b2)と、からなる。一実施形態では、油相(O)は、1種以上の親油性活性剤(b1)と、1種以上の親油性賦形剤又は担体(b2)と、を含む。
【0134】
「親油性」、「疎水性」、及び「非極性」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、水よりも他の中性分子及び非極性溶媒を好む、化合物、活性剤、賦形剤、又は担体を指す。水中の親油性分子は、多くの場合、水中に再分散させることができるだけであり、溶解させることができない凝集体を形成することができる。本発明の目的のためには、「親油性賦形剤及び/又は担体」という用語は、水素結合を形成する能力をほとんど又は全く有さず、脂肪、油、脂質、及び他の非極性溶媒中に溶解することを可能にする、「親油性」溶媒を包含する。「親油性」溶媒の例としては、植物油、鉱油、動物性脂肪、(C6~C20)アルカン、(C6~C20)ハロゲン-アルカン、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。「アルカン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で指定された数の炭素原子を含有する、飽和、分岐状、又は直鎖炭化水素を指す。例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-ドデカン、及びこれらの混合物が挙げられる。「ハロゲン-アルカン」という用語は、少なくとも1つの水素原子が1つ以上のハロゲン原子によって置換されており、明細書又は特許請求の範囲で指定される数の炭素原子を含有する、アルカンを指す。ハロゲン-アルカンの例としては、クロロホルム、トリクロロエタン、ジクロロメタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0135】
一実施形態では、「親油性」溶媒は、植物油、鉱油、動物性脂肪、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、「親油性」溶媒は、(C6~C20)アルカン、(C6~C20)ハロゲン-アルカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0136】
適切な「親油性賦形剤及び/又は担体」、並びにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って当業者が容易に決定することができる。
【0137】
上述したように、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、
(c1)以下からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤であって:
(c1´)本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖;
(c1´´)本発明の第1の態様に定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子;
(c1´´´)本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖、
(c1´´´´)本発明の第1の態様に定義されるように定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、ナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子
からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤と;
(c2)任意選択的に、1つ以上の親水性活性剤と、
を含む。
【0138】
一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、エマルジョン安定剤として本発明の第1の態様(c1´)で定義される、1つ以上のメタクリレート又はアクリレート変性多糖を含む。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、エマルジョン安定剤として本発明の第1の態様(c1´)で定義される、1つ以上のメタクリレート又はアクリレート変性多糖からなる。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、エマルジョン安定剤として本発明の第1の態様(c1´´)で定義される、1つ以上の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を含む。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、エマルジョン安定剤として本発明の第1の態様(c1´´)で定義される、1つ以上の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子からなる。
【0139】
一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、本発明の第1の態様で定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を界面架橋剤と反応させることによって得られる、1つ以上の界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖を含み、ここで、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、エマルジョン安定剤として、多糖(c1´´´)のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、本発明の第1の態様で定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を界面架橋剤と反応させることによって得られる、1つ以上の界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖からなり、ここで、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖は、エマルジョン安定剤として、多糖(c1´´´)のメタクリレート基又はアクリレート基の25~90%の界面架橋度を有する。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、本発明の第1の態様で定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を界面架橋剤と反応させることによって得られる、1つ以上の界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を含み、ここで、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、エマルジョン安定剤として、ナノ粒子(c1´´´)のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する。一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、本発明の第1の態様で定義されるように定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を界面架橋剤と反応させることによって得られる、1つ以上の界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子からなり、ここで、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子は、エマルジョン安定剤として、ナノ粒子(c1´´´)のメタクリレート基又はアクリレート基の25~90%の界面架橋度を有する。
【0140】
「によって得ることができる」(obtainable by)という表現は、本明細書では、それを得るためのプロセスによって本発明の1つ以上の界面架橋多糖又は界面架橋ナノ粒子を含有する各特定のエマルジョンを定義するために使用され、本明細書に開示される対応するプロセスのいずれかによって得ることができる生成物を指す。本発明の目的のためには、表現「得ることができる」、「得られた」及び同等表現は互換的に使用され、いずれの場合も、「得ることができる」という表現は「得られた」という表現を包含する。
【0141】
一実施形態では、界面層(IL)は、上で定義される1つ以上のエマルジョン安定剤(c1)、及び1種以上の親水性活性剤(c2)を含む。これは、親水性活性剤が、外部水相と接触している界面層の表面の外部部位にあることを意味する。一実施形態では、親水性活性剤(c2)は、エマルジョン安定剤(c1)に共有結合している。
【0142】
一実施形態では、界面クロスリンカーは、親油性ジチオール含有化合物である。一実施形態では、架橋された界面は、2,2´-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール[3,6-ジオキサ-1,8-オクタン]-ジチオールである。
【0143】
本発明の目的のためには、「界面架橋剤」及び「界面クロスリンカー」という用語は、同じ意味を有し、かつ互換的に使用される。これらは、非加水分解性共有結合によって、多糖又は単鎖ナノ粒子の1つのメタクリレート又はアクリレート反応基を架橋剤の架橋性基と連結する、それらの分子間結合を指す。この分子間架橋結合は、本発明のメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖又はナノ粒子を含有する、水中油型エマルジョンの界面層における三次元構造の生成を担う。
【0144】
「界面架橋度」という用語は、界面架橋剤と反応して非加水分解性共有結合を生成する、多糖又はナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基のパーセンテージを指す。例えば、25%のメタクリレート基若しくはアクリレート基の界面架橋度を有するところの、1つ以上の界面架橋単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子、又は代替的には1つ以上の界面架橋メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖を含んでなる、外部水相(W)と内部油相(O)との間に界面層(IL)を含む本発明のエマルジョンは、多糖又はナノ粒子の遊離メタクリレート基又はアクリレート基の25%が界面クロスリンカーと非加水分解性共有結合を形成していることを意味する。
【0145】
一実施形態では、外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)は、それぞれナノ粒子若しくは多糖のメタクリレート基若しくはアクリレート基の25~90%の界面架橋度を有するところの、1つ以上の界面架橋単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子、又は代替的には、1つ以上の界面架橋メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖を含む。
【0146】
当業者に周知であるように、化合物が親水性であるか親油性であるかを決定するのに有用なパラメータは、その分配係数(P)を決定している。分配係数(P)は、平衡状態にある2つの不混和性相の混合物中の特定の化合物の濃度の比である。通常、選択される溶媒の1つは水であり、第2の溶媒はオクタノールなど疎水性である。疎水性活性成分は、高いオクタノール/水分配係数を有し、親水性化合物は、低いオクタノール/水分配係数を有する。logP値はまた、親油性/親水性の尺度としても知られている。特定のpHにおける、溶媒中の非イオン化溶質の濃度の比の対数は、logPと呼ばれる。logP値はまた、親油性の尺度としても知られている。
なお、式中、”solute”(溶質)とは、活性成分である。
【数1】
【0147】
本発明の目的のためには、logP値が0.1未満である化合物は「親水性」と考えられる。反対に、logP値は、0.1よりも高い化合物は「親油性」であると考えられる。
【0148】
一実施形態では、「活性剤」は、医薬用活性成分、診断薬、及び美容用薬剤からなる群から選択される。
【0149】
一実施形態では、エマルジョンは、治療有効量である、活性剤として少なくとも1つの医薬用活性成分又はその医薬的に許容される塩を含む医薬用エマルジョンであり、賦形剤及び/又は担体は、医薬的に許容される。本発明に関して、「医薬用」エマルジョンとは、疾患又は状態の治療で使用することを意図した、任意の組成物(エマルジョン)を指す。「治療有効量」という表現は、本明細書で使用される場合、投与された際に、疾患又は状態の症状の1つ以上の発症を予防するか、又はある程度緩和するのに充分な活性成分の量を指す。本発明に従って投与される活性成分の特定の用量は、当然のことながら、治療される特定の状態を含む症例を取り巻く特定の状況、及び同様の考慮事項に関して、当業者によって決定されるであろう。「医薬的に許容される」という用語は、医療用途で組成物を調製するための医薬技術における使用に好適な、塩、賦形剤、又は担体を指す。
【0150】
活性成分は、親水性又は疎水性の活性成分から選択することができ、本発明の組成物に含めることができるものは、血管用作用剤;向神経活性剤;ホルモン;成長因子;サイトカイン;麻酔薬;ステロイド;抗凝固薬(D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ポリリジン含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、及びチクルク(ticlc)抗血小板ペプチドなど);抗炎症薬(ステレオイド(stereoid)性(デキサメタゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオロメトロン、ベタメタゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、クロベタゾン、ベクロメタゾン、デスオキシメタゾン、メチルプレドニゾロンを含む)、及び非ステレオイド剤(AINE)(ジクロフレナク(dicoflenac)、アセクロフェナク、ベンジダミン、デクスケトプロフェン、エトフェナメート、フェプラジノール、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカムを含む);免疫修飾剤;細胞傷害剤;予防剤;
抗ウイルス剤;抗原及び抗体;抗血栓剤(ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン(dextrophenylalanine proline arginine chloromethylketone)など);抗増殖剤(エノキサプリン(enoxaprin)、アンジオペプチン、又は平滑筋細胞増殖をブロックすることができるモノクローナル抗体、ヒルジン、及びアセチルサリチル酸など);抗悪性腫瘍薬/抗増殖剤/抗有糸分裂(パクリタクセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、及びチミジンキナーゼ阻害薬など);麻酔薬(anaesthetic agents)(リドカイン、ブピバカイン、及びロピバカインなど);血管細胞成長促進剤(成長因子阻害薬、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子、及び翻訳促進剤など);血管細胞成長阻害薬(成長因子阻害薬、成長因子受容体アンタゴニスト、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対抗する抗体(antibodies directed against growth factors)、成長因子及び細胞毒からなる二官能分子、抗体及び細胞毒からなる二官能分子など);コレステロール低下薬;血管拡張剤;並びに内因性血管作動性メカニズムに干渉する薬剤;放射性医薬品;鎮痛薬;食欲抑制剤;抗貧血剤;抗喘息剤;抗糖尿病剤;抗ヒスタミン薬(ジフェニドラミン(diphenydramine)、ジメチンデン、及びプロメタジンなど);抗ムスカリン薬;心血管治療薬;中枢神経系刺激剤;中枢神経系抑制剤;抗うつ剤;抗てんかん薬;抗不安剤;催眠剤;鎮静剤;ベータブロッカー;止血剤(homeostatic agent);ホルモン;血管拡張薬;血管収縮薬;ビタミン;抗ウイルス薬化学療法薬(アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、イドクスウリジン、トロマンタジン、イミキモド、及びメトロニダゾールなど;抗生物質(フシジン酸、ムピロシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、レタパムリン、クリンダマイシン、エリスロマイシン(erithromycin)、及びクロルテトラサイクリンなど);抗真菌薬(ビホナゾール、クロトリマゾール(chlotrimazole)、エベルコナゾール(eberconazole)、エコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、チオコナゾールを含む、イミダゾール及びトリアゾール誘導体など);ニスタチン、ナフチフィン、テルビナフィン、トルナフテート、及びシクロピロクス;治癒剤(アルニカ・モンタナ(Arnica montana)、ツボクサ(Centella asiatica)、及びベカプレルミンなど);局所麻酔薬(リドカイン、ベンゾカイン、及びテトラカインなど);抗乾せん剤(エタネルセプト、アダリムマブ、ウステキヌマブ、ジトラノール、カルシポトリオール、カルシトリオール、タカルシトール、及びタザロテンなど);レチノイド剤(トレチノイン、イソトレチノイン、及びアダパレンなど);防腐剤及び殺菌剤(desinfectant agent)(クロルヘキシジン、ホウ酸、トリクロサンなど);タクロリムス;ヒドロキノン;ミノキシジル;フィナステリド;消化管(Gastro-intestinal);鎮咳剤;去痰薬;鎮痙薬;利尿薬;痔疾用剤(antihemorrhoidals);睡眠薬,向精神薬;鬱血除去薬;ラクサント(laxant);並びに、とりわけ制酸薬(antiacid)からなる群から選択される活性剤として、1種以上の医薬用活性成分含む医薬用エマルジョンであるが、これらに限定されない。
【0151】
一実施形態では、エマルジョンは、美容的有効量である、活性剤として少なくとも1つの美容的活性成分又はその美容的に許容される塩を含む美容用エマルジョンであり、賦形剤及び/又は担体は、美容的に許容される。本発明に関して、「美容用」エマルジョンとは、非医学的及び非医薬的である任意の組成物を指し、したがって、疾患又は状態、特に皮膚疾患若しくは皮膚状態、又は毛髪疾患若しくは毛髪状態の治療における使用を意図しない、組成物を指す。したがって、本発明にかかる美容的組成物は、特に、当該疾患の治癒を目的とする疾患状態を治療することを意図せずに、ケアの観点から皮膚又は毛髪の治療に言及している。したがって、「美容用」エマルジョンとは、医薬又は医薬品として使用されずに、皮膚又は毛髪の外観及び快適性などの皮膚又は毛髪のケアに効果を有する組成物を指す。これは、本発明に開示される美容用エマルジョンが、その外観を改善するために、又は皮膚、爪、若しくは毛髪を、美化、維持、調節、洗浄、着色、若しくは保護するために、身体に適用されるように設計されていることを意味する(「Academic press Dictionary of Science and Technology」、1992年、第531頁;「A terminological Dictionary of the Pharmaceutical Sciences.」、2007年、第190頁を参照されたい)。したがって、上記の美容用エマルジョンとは、非医学的用途で形容詞的に使用される。本明細書で使用される「美容的有効量」という用語は、上記の皮膚又は毛髪の状態において、美容的改善に対する有効性を達成するのに充分な量を指す。本発明に従って投与される活性成分の特定の用量は、当然のことながら、治療される特定の状態を含む症例を取り巻く特定の状況、及び同様の考慮事項に関して、当業者によって決定されるであろう。「美容的に許容される」という用語は、とりわけ、毒性、不適合性、不安定性、不適切なアレルギー応答なしに、ヒトの皮膚又は毛髪の接触において使用するのに適切な、塩、賦形剤、又は担体を指す。
【0152】
一実施形態では、エマルジョンは、診断的有効量である少なくとも1つの診断的活性成分;特に、活性剤としての1つ以上の診断的イメージング剤又はその診断的に許容される塩を含む、診断用エマルジョンであり、賦形剤及び/又は担体は、診断的に許容され、特に、診断用にイメージングすることができる。
【0153】
「イメージング剤」(imaging agent)という用語は、標識として使用されるか、又は任意のイメージング技術において特異的構造を増強する、任意の物質を指す。一実施形態では、イメージング剤は、蛍光剤、造影剤、及び放射線造影剤からなる群から選択される。本発明に適切なイメージング剤の例としては、キレート剤にキレート化された遷移金属及び放射性遷移金属、例としては、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、又はNOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、フルオレセイン、ローダミン、及びシアン5,5が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、イメージング剤は、「造影剤」である。「造影剤」という用語は、通常の技術では見ることが困難な特定の構造を強調する薬剤を指す。
【0154】
本発明に関して、「診断用」エマルジョンとは、診断目的、特に、標的薬剤の存在又は量を特定の疾患又は状態と相関させることができる検出アッセイにおける、画像診断目的を意図した、任意の組成物(エマルジョン)を指す。本明細書で使用される「診断的有効量」という表現は、投与された場合、標的薬剤を特定の疾患又は状態と相関させるのに充分である、活性成分の量を指す。本発明に従って投与される診断的又は診断的にイメージングする活性成分の特定の用量は、当然のことながら、治療される特定の状態を含む症例を取り巻く特定の状況、及び同様の考慮事項に関して、当業者によって決定されるであろう。「診断的に許容される」という用語は、診断的用途で組成物を調製するための診断的技術における使用に好適な、塩、賦形剤、又は担体を指す。特に、「診断的にイメージング可能」(診断的に画像化可能)という用語は、画像診断用途で組成物を調製するための画像診断技術における使用に好適な、賦形剤又は担体を指す。
【0155】
一実施形態では、エマルジョンは、1種以上の親油性剤、特に、1種以上の医薬用活性成分を含む、内部油相(O)を含む。
【0156】
一実施形態では、エマルジョンは、1種以上の親水性剤、特に、1種以上の医薬用活性成分を含む、外部水相(W)を含む。
【0157】
一実施形態では、エマルジョンは、1種以上の親水性剤、1種以上診断的(イメージング)活性剤を含む、界面層(IL)を含む。
【0158】
一実施形態では、エマルジョンは、
1種以上の親油性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む内部油相(O)と、
1種以上の親水性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む外部水相(W)と、
を含む。
【0159】
一実施形態では、エマルジョンは、
1種以上の親油性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む内部油相(O)と、
1種以上の親水性剤、1種以上の診断的(イメージング)活性剤を含む界面層(IL)と、
を含む。
【0160】
一実施形態では、エマルジョンは、
1種以上の親水性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む外部水相(W)と、
1種以上の親水性剤、1種以上の診断的(イメージング)活性剤を含む界面層(IL)と、
を含む。
【0161】
一実施形態では、エマルジョンは、
1種以上の親油性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む内部油相(O)と、
1種以上の親水性剤、特に1種以上の医薬用活性成分を含む外部水相(W)と、
1種以上の親水性剤、1種以上の診断的(イメージング)活性剤を含む界面層(IL)と、
を含む。
【0162】
メタクリレート又はアクリレート変性多糖及び単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子について、本発明の第1の態様に開示される全ての実施形態はまた、本発明の第3の態様の水中油型エマルジョンにも適用される。
【0163】
本発明の水中油型エマルジョンを調製するプロセスもまた、本発明の一部である。
【0164】
界面層(IL)中に、
(c1´)メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖;又は代替的には、
(c1´´)単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子
を含んでなる本発明のエマルジョンを調製するプロセスは、(以下を含む):
(i)水中で、任意選択的には、水および1種以上の親水性化合物(a2)中で、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的には単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子を混合することによって、水相を調製すること、
(ii)1種以上の親油性化合物を混合することによって油相を調製すること、
(iii)工程(i)の水相に工程(ii)の油相を添加すること、
(iv)本発明のエマルジョンを得るような剪断条件下において、工程(iii)で得られた混合物を乳化(エマルジョン化)すること、
を含む。
【0165】
一実施形態では、工程(iv)は、撹拌なしで、0~95℃の温度で、特に約0℃で、高エネルギープロセス(例えば、ultraturrax、超音波処理、又は高圧ホモジナイザー)を用いて実施される。
【0166】
(c1´´´)本発明の第1の態様に定義されるメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖、又は代替的に、
(c1´´´´)本発明の第1の態様に定義されるように定義される単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、界面層(IL)中のナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子
を含む、本発明のエマルジョンを調製するプロセスは、(以下を含む)
上に定義される工程(i)、工程(ii)、工程(iii)、及び工程(iv)を実施すること、並びに、
(v) 工程(ii)で得られたエマルジョンに界面架橋剤を添加して、本発明の界面架橋性エマルジョンを得ること、
を含む。
【0167】
一実施形態では、工程(v)は、界面架橋剤を単純な混合により溶解することによって実施される。
【0168】
界面層(IL)中に1種以上の親水性活性剤(c2)を含む本発明のエマルジョンを調製するプロセスは、
工程(i)、工程(ii)、工程(iii)、及び工程(iv)を実施することと、
任意選択的に、上で定義した工程(v)と、
(vi) 工程(iv)又は代替的に工程(v)で得られたエマルジョンを、親水性活性剤と接触させることと、
を含む。
【0169】
一実施形態では、工程(vi)は、エマルジョンの不安定化を伴わないような反応条件下において実施される。一実施形態では、工程(vi)は、10~60℃の温度でpH2~12にて実施される。
【0170】
本発明の第4の態様は、活性剤を含まない、本発明の第3の態様にかかる水中油型エマルジョンの、担体としての使用に関し、特に、薬物(医薬用活性成分)送達システムに関する。実験セクションで実証されているように、本発明の水中油型エマルジョンは、1つ以上の活性成分を含むことができ、これはまた、エステラーゼ酵素応答によって制御/変更された方法でエマルジョンから送達され得る。
【0171】
本発明の第5の態様は、本発明の第3の態様にかかる水中油型エマルジョンの使用に関する。
【0172】
治療法で使用するための、本出願で定義される医薬用エマルジョンは、本発明の一部である。
【0173】
皮膚又は毛髪をケアするための本出願で定義される美容用エマルジョンの使用は、本発明の一部である。一実施形態では、本発明の美容用エマルジョンは、皮膚及び毛髪ケアのために使用され、ここで、皮膚又は毛髪ケアは、以下の症状:ざらつき、はがれ、脱水、つっぱり巻、ひび割れ、及び弾性の欠如のうち少なくとも1つを回復することを含む。
【0174】
診断で使用するための本出願で定義される診断用エマルジョンは、本発明の一部である。一実施形態では、診断用エマルジョンは、イメージング剤(画像化剤)として使用するための診断用イメージングエマルジョンである。
【0175】
一実施形態では、診断用エマルジョンは、検出アッセイにおいてイメージング剤として使用される。適切な検出アッセイは、(a)結合を可能にする適切な期間にわたり、試験される試料中に存在する標的薬剤を標的薬剤と特異的に結合することができる、診断的活性剤を有する本発明の診断用エマルジョンを接触させることと、任意選択的に、(b)標的薬剤を同定及び/又は定量することと、を含み得る。本発明に好適な試験試料は、血清、血漿、尿、及びセファロラキデウム液(cephaloraquideum liquid)であり得る。特定の実施形態では、標的薬剤の同定及び/又は定量は、当技術分野で周知の方法によって実行される。同定及び/又は定量のための好適な方法は、蛍光、表面プラズモン共鳴、陽電子電子線トモグラフィ(positron electron tomography)、単一光子放射断層撮影、及び比色法であり得る。
【0176】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「備える」及びこの単語の変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、又は工程を排除することを意図しない。更に、単語「含む(comprise)」とは、「からなる(consisting of)」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点、及び特徴は、本明細書を検討することで当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例及び図面は説明のために提示され、これらは本発明を限定することを意図するものではない。図面に関して特許請求の範囲内の括弧内に配置された参照符号は、単に特許請求の範囲の明瞭性を高めることを試みるためだけのものであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態の全ての可能な組合せを網羅する。
【実施例】
【0177】
[材料]
ロイコノストック種(Leuconostoc spp.)由来のデキストラン(DXT-40、Mr約40kDa)、グリシジルメタクリレート(GMA)(97%)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(98%)、3-メルカプトプロピオン酸(≧99%)、塩化アクリロイル(99%)、及び2,2´-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール[3,6-ジオキサ-1,8-オクタン-ジチオール(DODT)](95%)を、Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。リン酸緩衝食塩水(Phosphate-buffered saline:PBS)及びジクロロメタンをScharlabから購入し、受け取ったまま使用した。4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)はAcros-Organicsから購入した。合成に使用した水(H2O)は、特に明記しない限り、MilliQ A10勾配装置(Millipore)による脱イオン水であった。魚油から抽出したDHAリッチ油(>95重量%)は、SENDABIO S.L.から頂いた。ヒアルロン酸(50,000gmol-1)はEvonikによって提供され、ヒアルロン酸(2.28×106gmol-1)はContiproによって提供された。エビの殻由来の低粘度キトサンはSigma Aldrichから入手した。
【0178】
[特性評価方法]
【0179】
動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS):
DLS分析はZetasizer Nano ZS、ZEN3600モデル(Malvern Instruments Ltd)を用いて実施した。全ての測定は、レーザ波長633nm及び散乱角173°の使い捨てサイジングキュベットで実施し、一方でゼータ電位測定は、使い捨てゼータ電位セル(pH7.4、25℃)で実施した。測定の前に、DXT官能化試料を、1mg/mLの濃度で生理食塩水(サイズ測定では0.9重量%NaCl、及びゼータ電位測定では1mM NaCl)中に分散させた。エマルジョン試料を脱イオン水中に2mg油/mLの濃度で分散させた。各測定は25℃で試料あたり3回繰り返した。ヒアルロン酸官能化エマルジョンを脱イオン水中に2mg油/mLの濃度で分散させた
【0180】
核磁気共鳴(1H NMR):
NMRスペクトルは500MHz及び25℃でBrukerAVANCE III分光計にて記録した。化学シフト(δ)は、溶媒の残留シグナルに対してppmで与えられる。分割パターン: b、ブロード; s、一重線; d、二重線; t、三重線; q、四重線; m、多重線。
【0181】
レーザ回折(Laser diffraction:LD):
LD分析はMastersizer3000レーザ回折システム(Malvern Instruments Ltd)を用いて実施した。全ての測定は、ガラスビーカ中600mLの脱イオン水を用いて、430nmのレーザ波長で実施した。各測定を、Mie分散モデルに従って、試料あたり5回、25℃で実行あたり5秒間で繰り返した。
【0182】
透過型電子顕微鏡法(TEM):
TEM分析は、明視野画像モードにて200KeVの加速電圧で動作する、TECNAI G2 20TWIN顕微鏡(FEI、オランダ、アイントホーフェン)で実施した。水(約3μL、0.035mg/mL)中の試料分散液の1滴を、使用直前にグロー放電プロセスによって親水化された、銅グリッド(300メッシュ)上に支持された炭素膜上に堆積させた。酢酸ウラニル水溶液(1w/v%)で20秒間染色した後、紡糸プロセスにより室温で迅速に乾燥させるために、試料を高速で回転させた。数平均直径は、約300個のナノ粒子を計数した後、ガウス曲線フィッティングを用いてImageJプラットフォーム分析によって計算した。
【0183】
置換度(多糖の、そのヒドロキシル基の1つを介した、変性繰り返し単位のパーセントとして表されるDS)の決定:
メタクリレート又はアクリレート修飾されたDXT及びデキストランSCPNメタクリレート又はアクリレートについて、DSは、アノマープロトン及び置換位置(主に3位)を除き、グルコース(Glc)部分のプロトン(非置換Glcでは6H、置換Glcでは5H)に対応する3.3~4.2ppmのシグナルに対して、メタクリレート又はアクリレートの二重結合のプロトンシグナルの積分(積分基準1.0)を介して1H NMRによって計算した。アクリレート変性HAでは、5.4~6.6ppmのアクリレートプロトンシグナルに対するHAのメチル基の積分(2.2ppmで積分基準3.0)により、1H NMRによってDSを計算した。メタクリレート変性CHIでは、DSは、ヒドロキシルペンダント基(-CH-CH2-O-)基のプロトンに対応する2.8~3.2ppm(積分基準200)のブロードなシグナルに対して、二重結合からのプロトンシグナルの積分を介して1H NMRによって計算した。
【0184】
表面張力(Surface Tension:ST):
表面張力の測定は、標準リング(Rリング=9.58mm、Rワイヤ=0.185mm)を用いたリング法による、KSV Sigma 700フォース張力計で実施した。「臨界ミセル濃度(critical micellar concentration:CMC)」の自動測定は、自動添加のため、2.5g/L(最終濃度)の濃度に達する200mLの水中に1gのDXT-ポリ-MAを溶解することによって実施した。各添加後、試料を60秒間撹拌し、120秒間静置した。実験設定の説明:標準容器(直径=66mm、最大体積=110mL)、重相(水)及び軽相(空気)。
個々の表面張力の測定は5g/Lの濃度で「表面張力」プログラムを用いて実施した。各試料は表面張力が安定するまで撹拌せずに測定した(安定化条件:最初の小数桁を繰り返して4回実行)。実験設定の説明:小型容器(直径=50mm、最大体積=70mL)、重相(水)及び軽相(空気)。
デュヌイリング法の精度は約0.1mN/mである(J.Drelichら、「Measurement of interfacial tension in fluid-fluid systems」、Encyclopaedia of Surface and colloid Science、2002年、第3152~3166頁の第3159頁表2を参照のこと)。
【0185】
デジタル画像取得:
各デキストラン又はヒアルロン酸ポリマーでは、5g/Lの濃度で水に溶解し、混合物を20秒間激しく振盪し、デジタル画像取得の前に追加で10秒間静置した。
【0186】
実施例1. DS=1~70%であるメタクリレート系デキストランポリマーの合成(DXT-ポリ-MA)
デキストラン(DXT-40、1g)を、窒素雰囲気下において30mLのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、この溶液に、200mgの4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、1.6mmol)を加えた。次いで、1mLのグリシジルメタクリレート(GMA、1.2mmol)を添加し、混合物を、適切な置換度(DS、繰り返し単位当たりの変性ヒドロキシル基のパーセント)に達するまで室温で撹拌した。各DSに必要な時間を表1に要約する。
図1に記載の動態曲線に従い他のDSを得ることができる。等モル量の濃縮したHCl溶液(37v/v%、1.6mmol、0.132mL)を添加してDMAPを中和することによって、反応を停止させた。変性デキストラン溶液を、1μS未満の脱イオン水伝導度値に達するまで、室温で蒸留水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって精製した(9日間、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュ)。
【0187】
表1: 0.5g/LのDXT-ポリ-MA水溶液のある特定の置換率(DS)及び表面張力(ST)に達するまでに必要な反応時間の概要。
【0188】
【0189】
実施例2. 単鎖デキストランメタクリレート系ナノ粒子D15の合成(DXT-SCNP-MA)
標準的な手順では、クロスリンカーDODT(0.06mmol、49μL)の予め調製された0.15M溶液(2mL、MeOH/PBS、1:1、v/v、pH=9.5)0.37mLを、シリンジポンプ(0.04mL/時)を用いて、DXT-ポリ-MA(D12)(100mg、0.024mmol、PBS13mL、pH=9.5)の0.02M溶液へ、室温及び撹拌下において8時間かけて滴加した。添加後、反応物を室温で12時間撹拌して維持した。1μS未満の脱イオン水伝導度値に達するまで蒸留水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって、反応混合物から5mLの試料を精製した(5日間、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュ)後、更なる特性評価研究を実行した。最後に、得られた水溶液を凍結乾燥して、D15を白色固体として得た。収率90%未満。1H NMR(500MHz,D2O)δppm:6.34-6.12(m,1H,メタクリル酸-CH),5.94-5.70(m,1H,メタクリル酸-CH),5.55-4.85(5.5H、H-1及びH-2/3MA置換を含む),4.34-3.28(28H,m,Glcの残り及びクロスリンカーの2xCH2O),3.06-2.53(5H,m,CH(CH3)CH2S,クロスリンカーのCH2S),1.98(s,3H,メタクリル酸-CH3),1.29(s,3H,クロスリンカー-CH3).Dh(DLS)=13±8nm;PDI0.2
【0190】
実施例3. 3-メルカプトプロピオン酸での本発明のDXT-SCPN-MAの官能化による比較単鎖デキストラン系ナノ粒子D16の合成(DXT-SCPN-F)
標準的な手順では、2mL(61.4μL、7.5μmol、pH=9.5)をゆっくり添加する2mLの3-メルカプトプロピオン酸の水溶液を、DXT-SCPN-MA D15の以前に報告された合成において、反応フラスコへゆっくり添加した。反応物を24時間撹拌し、過剰な酸を、1μS未満の脱イオン水伝導度値に達するまで、蒸留水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって除去した(5日間、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュ)。得られた水溶液を凍結乾燥して、比較用DXT-SCPN-F D16を白色固体として得た。収率90%未満。1H NMR(500MHz,D2O)δppm:5.45-4.90(6H,H-1及びH-2/3MA置換を含む),4.13-3.41(31H,m,Glcの残り及びクロスリンカーの2xCH2O),3.02-2.71(8H,m,2x CH(CH3)CH2S,クロスリンカーのCH2S及びMPA),2.70-2.49(2H,m,CH2COOHofMPA),1.29(s,5.4H,クロスリンカー及びMPA-CH3)Mw(GPC)=38KDa,Mw/Mn=1.7;Dh(DLS)=15±4nm;PDI0.2,ゼータ電位(pH=7.2,25°C)=-20mV±5.TEM(酢酸ウラニル染色):13±3nm。
【0191】
実施例4. 3-メルカプトプロピオン酸での本発明のDXT-ポリ-MAの官能化による比較用デキストランポリマーD17の合成(DXT-ポリ-F)
標準的な手順では、3-メルカプトプロピオン酸の水溶液(430μL、5mL H2O、pH=9.5)を、予め調製したDXT-ポリ-MA D12の溶液(350mg、H2O 20mL、pH=9.5)へとゆっくり添加した。反応物を絶えず撹拌しながら12時間維持し、次いで、蒸留水(MWCO3,500Da)に対する透析によって精製した。得られた水溶液を凍結乾燥して、得られたクエンチ比較用ポリマーDXT-ポリ-F D17を白色固体として得た。Mw(GPC)=47KDa、Mw/Mn=1.7。ゼータ電位(pH=7.2)=-12mV±7。
【0192】
実施例5. メタクリレートデキストランポリマー及びメタクリレート変性デキストランナノ粒子に基づくO/Wエマルジョンの合成
【0193】
方法M1:
DXT-R(DXT-ポリ-MA、DXT-SCNP-MA、DXT-ポリ-F、及びDXT-SCNP-F)(zmg、油相に基づくZ重量%)を、8mLガラスバイアル中の脱イオン水(xg、x重量%、水相)中に溶解し、この溶液に、油(yg、Y重量%)を加え、総質量を2g増加させた。次いで、エマルジョンを、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて形成した。超音波処理工程は、氷浴を用いて、撹拌せずに0℃で実行した。この手順M1に従って、このようにして得られたエマルジョンを、表2に開示した。
【0194】
方法M2:
DXT-ポリ-MA又はDXT-SCNP-MA(20mg、油相に基づく5重量%)を、8mLガラスバイアル中の3.6mLの脱イオン水(水相、90重量%)に溶解し、この溶液に、0.4gの油相(10重量%)を添加した。次いで、エマルジョンを、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて形成した。超音波処理工程は、氷浴を用いて、磁気撹拌下において0℃で実行した。この手順M2に従って、このようにして得られたエマルジョンを、表2に開示した。
【0195】
表2. 方法M1及び方法M2に従うエマルジョン形成の実験条件及びそれらの特性評価。重量パーセント(重量%)は、安定剤の場合を除き、エマルジョン全体に基づく。(*):油相に基づく重量%。強度(DLS:動的光散乱)及び体積(LD:レーザ回折)のサイズ分布値。「N/A」:データなし。
【0196】
【0197】
【0198】
実施例6. メタクリレートデキストランポリマー及びメタクリレートデキストランナノ粒子に基づく界面架橋O/Wエマルジョンの合成
【0199】
方法M3:
DXT-ポリ-MA又はDXT-SCPN-MAは、O/W界面でうまく架橋することができる。ポリマー又はナノ粒子中に存在するメタクリレート基に関連する0.25~1.5チオール当量の異なるクロスリンカー(DODT)量は、表3で上に定義したように、この目的のために使用することができる。
【0200】
表3. 異なる量の界面クロスリンカー(DODT)、DXT-ポリ-MA(表1のD7)(DS約24%)中に存在するMA基の数に関連するそれらのチオール(SH)モル当量、及び各場合においてpH=9に到達するために必要なNaOH(1M)の体積に対する反応条件。
【0201】
【0202】
ここでは、0.5チオール(-SH)当量を有するDXT-ポリ-MA(D7)に基づく架橋エマルジョン(E77)を例として記載する。D7(20mg、油相に関連した5重量%)を、8mLガラスバイアル中の3.6mLの脱イオン水(水相、90重量%)に溶解し、この溶液に、0.4gの魚油(油相、10重量%)を添加した。次いで、1μLのDODT(0.5SH当量)を油相上に慎重に添加し、最大pH=9(高速チオmichael付加が必要、したがって界面における架橋)のNaOH(1M)の体積を水相内に添加し、D7に示されるエステル基の塩基性加水分解を回避して、超音波処理工程に手早く進んだ。エマルジョンE77を、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて形成した。超音波処理工程は、氷浴を用いて、磁気撹拌下において0℃で実行した。
【0203】
エマルジョンE76、E78、E79、及びE80を、エマルジョンE77について開示されているプロセスに続いて、SHの当量、したがって表3に開示されている量のクロスリンカー及びNaOHを用いて同様に調製した。対照実験のための比較界面非架橋エマルジョンとして、E75もまた調製した。ここではクロスリンカーを一切添加しなかった。
【0204】
成功した架橋をDMSO/ジオキサン(70:30、v/v)検証によって評価し、これにより1.5mLの各架橋エマルジョンを、30mL(1:20希釈)の先のDMSO/ジオキサン溶液(これは、水相及び油相の両方の溶媒である)で希釈した。例として、0.5チオール当量(E77)を伴うエマルジョンを、室温で磁気撹拌下において一晩溶解した。次いで、ヘキサン(3×80mL)による液液抽出後に、油相を除去した。水相(DMSO、水及びD7)を収集し、4日間にわたって蒸留水(MWCO 3,500Da)に対する透析によって精製し、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュした。得られた水溶液を凍結乾燥して、架橋ポリマー(D7-CL)を白色固体として得た。ヘキサンによる固液抽出によって油跡を除去した。D7-CLをヘキサン1mL中に浸漬し、ボルテックスを用いて研和した。3回の遠心分離サイクル(14,000rpm、5分、Minispin)の後、固体デキストランを遠心分離し、上清を除去して、得られたD7-CLポリマーを得た。
【0205】
メタクリレート化デキストランの合成、及びリンカーDODTに対して3.06~2.58の間のピークを積分することによる架橋度に記載されているように、新たな置換度を計算した。1H NMR(500MHz,D2O)δppm:6.38-6.08(m,1H,メタクリル酸-CH),5.95-5.67(m,1H,メタクリル酸-CH),5.55-4.85(8.2H,H-1及びH-2/3MA置換を含む),4.38-3.25(40H,m,Glcの残り及びクロスリンカーの2xCH2O),3.06-2.58(3.3H,m,CH(CH3)CH2S,クロスリンカーのCH2S),1.98(s,3.7H,メタクリル酸-CH3),1.36-1.12(b,1.7H,クロスリンカー-CH3).
【0206】
表4. 全てのジブロックコポリマーが油/水界面に位置すると仮定した場合のMA基の数に基づく、DODTリンカー(0~1.5当量のSH)の異なるチオール当量による架橋後のD7(DS=O/W界面での架橋前24%)に基づくエマルジョンの1H NMR(D2O、500MHz)。
【0207】
【0208】
方法M3に従って調製された本発明の界面架橋O/Wエマルジョンを以下の表5に開示する。
【0209】
表5-6. エマルジョン形成の実験条件及びそれらの特性評価。重量パーセント(重量%)は、安定剤の場合を除き、エマルジョン全体に基づく。(*):油相に基づく重量%。強度(DLS:動的光散乱)及び体積(LD:レーザ回折)のサイズ分布値。「N/A」:データなし。
【0210】
【0211】
実施例7. メタクリレートデキストラン系ポリマー及びナノ粒子のメタクリレート変性デキストランポリマーコンジュゲート
【0212】
方法:
[親油性活性剤の封入]
活性剤を油相中に溶解し、完全に溶解するまで一晩撹拌した。化合物の溶解度により、飽和未満でなければならない分散相(油相)における最大濃度を決定する。活性剤が完全に溶解すると、非界面架橋(o/w)-エマルジョン(M2)又は界面架橋(o/w)-エマルジョン(M3)の生成のためのプロトコルは、油溶液(活性剤-油)の最終質量を油相の質量として考慮して実行される。Fluorの磁気共鳴画像法(MRI)のための活性剤(すなわち、医薬用活性成分-API)としてのo-カルボラン(C1)及び16α-フルオロエストラジオール(C2)並びに診断薬としてのPERFECTA(登録商標)の封入を、例として表7に記載する。
【0213】
[親水性活性剤の表面官能化]
エマルジョンが生成されると、官能基がo/w界面に存在する他のものと反応しやすい標的化剤などの親水性活性剤は、穏やかな条件(pH:4.5~13)で水連続相を介して反応することで、加水分解又はコロイド不安定化を防ぐことができる。これは、親水性活性剤をエマルジョンに直接添加し、続いて反応条件(pH、温度、及び時間)を調節することに含まれる。精製はPD-10カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって実施する。
【0214】
表面官能化のこのプロセスは、使用される出発物質の種類に応じて、2つの異なる手順によって実施することができる。一方で、単一のコンジュゲーションは、遊離親油性活性剤エマルジョンの表面官能化に含まれる(C3、表7)。もう一方で、二重コンジュゲーションは、「親油性活性剤の封入」の前の工程で得られた、親油性活性剤エマルジョン後の表面官能化に含まれる(表7の例C4及びC5)。
【0215】
二重コンジュゲーション(ダブルの連結・結合)では、親油性活性剤の封入を含む第1の工程が実施され、続いて、親水性活性剤による表面官能化が実施されることを意味する。
【0216】
コンジュゲート: 上記で開示された方法に従って、このようにして得られたメタクリレート変性デキストランポリマーコンジュゲートを表7に開示した。
【0217】
表7. 本発明のコンジュゲートの調製に使用されるエマルジョン、乳化剤、油、並びに活性成分及び組成物中のその位置は、本明細書において以下に開示される。
【0218】
【0219】
[結果]
本発明のメタクリレート変性DXTを含有する上記に開示されたコンジュゲートは、安定である。実際に、液滴の表面官能化に使用される反応条件は、O/Wエマルジョンの不安定化を誘発しなかった。
【0220】
一方で、界面架橋の導入によって更に安定化することができる、液滴の表面におけるメタクリレート基の存在は、標的化送達システムとして有用である。特に、コンジュゲートC3を静脈内及び気管内を介して健康なラットに投与することで、肺における本発明のメタクリレート変性DXTポリマー(D7)のより長い保持時間が得られた。この事実は、より持続的な放出を達成することで、活性成分の摂取数を減らし、かつ治療のコンプライアンスを高めることができるので、有利である。
【0221】
実施例8. メタクリレートデキストラン系ポリマー及びナノ粒子の安定性試験
本発明の目的のためには、エマルジョンは、液滴サイズの増加とは無関係に、水相より上の油相の相分離が目視検査によって観察されない場合に安定であり、これは、本発明にかかる変性多糖が、水中に封入され再分散された油相全体を維持することを意味する。一方で、水相の上方に油層が出現すること、又は水相の表面に油滴が存在することは、エマルジョンの安定性が不足していることを示す。
【0222】
したがって、本発明の目的のためには、エマルジョンは、液滴直径の増加が観察されても、相分離が1ヶ月間観察されない場合に、安定であると考えられる。
【0223】
[PBS検証による架橋評価]
本発明の界面架橋O/Wエマルジョン(E76、E77、E78、E79、及びE80)又は本発明の界面非架橋O/Wエマルジョン(E75)を、脱イオン水又はリン酸緩衝食塩水(PBS、10mMリン酸塩)で希釈(1:2希釈)することによって、媒体安定性研究を実行した。全ての試料は4℃で暗所において48時間保存した。次いで、LDによりサイズ分布を測定した。
【0224】
[異なる保存条件での長期安定性]
0.5チオール当量を有する本発明の界面架橋O/Wエマルジョン(E82)、並びに本発明の10重量%の魚油及び0.5重量%のDXT-ポリ-MA(D5)に基づく本発明の界面非架橋O/Wエマルジョン(E81)を、各々4つの異なる条件(A:室温で明所、B:室温で暗所、C:5℃で暗所、D:40℃で暗所)で1mL、3ヶ月間にわたり保存することによって実施した。続いて、エマルジョン安定性を、目視検査によって、並びに3つの異なる時点(1ヶ月、2ヶ月、及び3ヶ月)におけるDLSによるそれらの流体力学的径及びLDによる体積平均直径を決定することによって、評価した。
【0225】
特に、E81は1ヶ月間安定していることが実証されている。全ての保存条件下におけるサイズの増加とそれに続くクリーミング効果現象にもかかわらず、相分離は観察されず、エマルジョンの安定性が確認された。1ヶ月後、いずれの保存条件もエマルジョン安定性を維持することができ、目視検査及びLDによりコロイド系の存在が確認された。DLSで測定するには液滴サイズが大きすぎるため、2ヶ月目及び3ヶ月目にはLDでのみ測定を実施したが、相分離は観察されなかった。結論として、DS=15%は、液滴直径のわずかな増加にもかかわらず、少なくとも1ヶ月間、エマルジョンを安定化することができる。一方で、同じDXT-ポリ-MA(D5)で安定化したE82もまた、全ての保存条件で3ヶ月間にわたり安定したことが実証されている。更に、o/w界面での架橋は、「D」(40℃で暗所)を除き、全ての保存条件で不変のサイズ分布を維持することが証明されている。魚油は光及び温度に極めて敏感であることに言及することは重要であり、これは、増加する時間において条件「D」で生成された大きな液滴集団の存在を説明する。しかしながら、3ヶ月目までは、室温を光と組み合わせた「A」の場合でさえも、室温では発生していない。全体として、結果により、異なる条件における本発明の非界面架橋及び界面架橋エマルジョンの安定性が、後者の液滴直径は変化しないことと共に確認される。
【0226】
[異なる媒体での長期安定性]
時間安定性研究は、本発明の非界面架橋O/Wエマルジョン(E83)、及び本発明の界面架橋O/Wエマルジョン(E82)の脱イオン水又はリン酸緩衝食塩水(PBS、10mMリン酸塩)の例で実行した。全ての試料は4℃で暗所において48時間保存した。次いで、LDによりサイズ分布を測定した。
【0227】
[安定性試験の結果]
一方で、未変性デキストランポリマー(unmodified dextran polymer:DXT)は、明確な相分離としていかなる界面活性も示さなかった。もう一方で、本発明のDXT-ポリ-MA、本発明のDXT-SCPN-MA、比較用DXT-SCPN-F、及び比較用DXT-ポリ-Fを安定化剤として使用し、STが60mN/m以下である場合には、O/W型エマルジョンが得られた。実際に、脱イオン水の表面張力と比較してわずか10~12mN/mの減少が、変性デキストランに界面活性を付与し、安定なエマルジョンを生成する可能性を提供するには充分であったことを観察されたことは、非常に驚くべきことであったことに言及する価値がある。特に、乳化剤がメタクリレート基(すなわち、DXT-ポリ-MA及びDXT-SCPN-MA)を含有する場合、デキストラン誘導体上の官能基がカルボキシレートアニオン(すなわち、比較用のDXT-SCPN-F及びDXT-ポリ-F)であった場合の大きな液滴と比較して、より小さな液滴サイズが得られた。このような差異は、親水性カルボキシレート基と比較して疎水性油との親和性が増加する、メタクリレート基の疎水性(ST値と相関する)によって説明することができた。したがって、DXT-ポリ-F及びDXT-SCPN-Fについて観察されたクリーミング効果は、得られたより大きな液滴サイズと良好に一致した。最後に、本発明のMA変性DXT(DXT-ポリ-MA又はDXT-SCNP-MA)を含有する界面架橋エマルジョンは、液滴直径が非界面架橋DXT-ポリ-MA又はDXT-SCNP-MAと比較して経時的に維持されることを可能にするが、一方で両方のエマルジョンは、相分離が起こらないために安定であるように見えた。
【0228】
実施例9. メタクリレートデキストラン系ポリマー及びナノ粒子の酵素応答性分析
【0229】
本発明のエマルジョンE90(DXT-ポリ-MA D15及びヒマワリ油を含有)を、エステル結合を切断する以下のリパーゼ酵素の存在下に置いた:
カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(Candida Antarctica Lipase B:CALB)
リゾムコール・ミエヘイ・リパーゼ(Rhizomucor miehei lipase:RML)
リゾプス・オリ-ゼ・リパーゼ(Rhizopus oryzae Lipase:ROL)
【0230】
[目視検査による]
100μLの本発明のエマルジョンE90の画分を、HPLCガラスバイアル中で上述したリパーゼ(CALB、RML、ROL;20mg/mL)100μLの各1つと混合した。混合物を室温で40時間静置した後、デジタル画像を取得した。
【0231】
目視検査によって判断されるように、CALB、RML、及びROL酵素の添加は、40時間後のエマルジョンの安定性に影響を及ぼし、明らかなクリーミング効果が観察され、エマルジョンの表面には油層が存在した。一方で、これと同じ時間の後、本発明のエマルジョンE90は単独で安定したようであった。
【0232】
[レーザ回折(LD)による]
100μLの本発明のエマルジョンE90の画分を、HPLCガラスバイアル中で上述したリパーゼ(CALB、RML、ROL、又はTLL;20mg/mL)100μLの各1つと混合した。混合物を室温で40時間静置した。
【0233】
リパーゼの存在下における本発明のエマルジョンE90の不安定化を、レーザ回折によって16時間監視した。したがって、CALB酵素をエマルジョンに添加した場合、主な液滴サイズ集団は経時的に減少したが、一方で試料容器内の水の表面に油滴が出現するとより大きな液滴が出現し、CALB酵素の存在下におけるエマルジョンの安定性の欠如が確認された。主な集団の強度のこの減少は油滴の破壊を示し、酵素がメタクリレート基の加水分解を引き起こし、結果として界面からの多糖の脱離及び系の解乳化が起こり、したがって、本発明のエマルジョンがエステラーゼ酵素の存在に応答性であることが確認される。対照実験として、エマルジョンE90もまた、酵素を添加せずに16時間にわたり監視した。その時間の後、主な液滴サイズ集団は、16時間の実験の間ほとんど一定のままであることが観察された。
【0234】
同様に、0.5重量%のDXT-ポリ-MA(D7)で安定化した10重量%魚油エマルジョンを含有する界面非架橋エマルジョンあるE92と、対応する界面架橋エマルジョンE91についてもまた、酵素応答性を調べた。
【0235】
第1に、両方のエマルジョンが一切の酵素なしで安定であることは言及する価値がある。
【0236】
第2に、CALBリパーゼの添加後、両方の型のエマルジョン(E91及びE92)について、主な液滴サイズ集団の明確な減少が観察された。これらの結果は、本発明のメタクリレート変性デキストラン(DXT-ポリ-MA;D7)が、液滴の界面で架橋されているか否かにかかわらず、酵素応答性乳化剤として作用することを示す。より興味深いことに、安定化剤の架橋に応じて、不安定化の動態の明らかな違いを観察することができる。解乳化、したがって封入相の放出は、界面非架橋エマルジョンでははるかに速く、16時間後に完全な解乳化が観察されるようである。一方で、DXT-ポリ-MAで安定化された界面架橋エマルジョンの半分以上は、16時間後も安定なままであった。この差異は、界面架橋工程によってもたらされる安定性の向上によって引き起こされる。
【0237】
[結論]
DXTポリマー中のメタクリレート基の導入中に誘導されるエステル結合の存在に起因して、エステル結合を加水分解するように特異的に適合された酵素の存在下において、エマルジョンの安定性が誘発された。
しかしながら、上記で開示された結果は、本発明のメタクリレート変性DXTポリマー又はナノ粒子(架橋されている、又は架橋されていない)を含有するエマルジョンのみが、いくらかのエステラーゼによって加水分解されやすいことを示している。これは標的送達システムとして有用であり得るために有利である。したがって、本発明のO/Wエマルジョンに含まれる活性成分は、分解されることなく標的部位に送達され、標的部位においてのみ、エマルジョンは、活性形態で活性成分を送達する対応するエステラーゼ酵素によって加水分解される。
【0238】
更に、これらの結果はまた、本発明のエマルジョンからの活性成分の放出動態を調節できることも実証している。酵素応答性によるエマルジョンの不安定化は、各特定の場合(すなわち、疾患、患者、活性成分、量、及び病理学)の要件に調節/修正/適合させることができるので、有利である。
【0239】
実施例10. DS=36~70%であるアクリレート系ヒアルロン酸ポリマーの合成(HA-ポリ-A)
HA(100mg、2280kDa)を、氷浴を用いてpH=8~9及び低温で、20mLの蒸留水中に溶解した。次いで、予め調製した塩化アクリロイル(643μL、30当量)のジクロロメタン20mL中溶液を、HA溶液へと1時間かけて滴加した。全プロセス中にNaOH 1Mを添加することによって、反応pHをpH=8~9に維持した。添加後、反応物を氷浴中で1時間冷却した。変性ヒアルロン酸溶液を、1μS未満の脱イオン水伝導度値に達するまで、室温で蒸留水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって精製(9日間、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュ)して、HA2を得た。
【0240】
変性ヒアルロン酸HA1は、出発物質としてHA 50kDaを用いて上述したプロセスに従って調製した。
【0241】
表8. 本発明の変性したヒアルロン酸及び本発明範囲外である比較用未変性ヒアルロン酸の概要
【0242】
【0243】
実施例11. 単鎖メタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸ナノ粒子を調製する一般的手順(HA-SCNP-A又はHA-SCNP-MA)
単鎖メタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸ナノ粒子を、メタクリレート又はアクリレート変性デキストラン多糖の代わりにメタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸多糖を用いて、単鎖メタクリレート又はアクリレート変性デキストランナノ粒子について上記で定義したプロセスに従って調製した。
【0244】
実施例12. アクリレート系ヒアルロン酸ポリマーと単鎖ナノ粒子のO/Wエマルジョンの合成
【0245】
方法M1:
HA-A(zmg、油相に基づくZ重量%)を、8mLガラスバイアル中の脱イオン水(xg、x重量%、水相)中に溶解し、この溶液に、油(yg、Y重量%、油相:トリグリセリド又は有機小分子)を加え、総質量を2g増加させた。次いで、エマルジョンを、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて形成した。超音波処理工程は、氷浴を用いて、撹拌せずに0℃で実行した。この手順Aに従って、このようにして得られたエマルジョンを、表2に開示した。
【0246】
方法M2:
HA-A(20mg、油相に基づく5重量%)を、8mLガラスバイアル中の3.6mLの脱イオン水(水相、90重量%)に溶解し、この溶液に、0.4gのトリグリセリド系油(油相、10重量%)を添加した。次いで、エマルジョンを、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて形成した。超音波処理工程は、氷浴を用いて、磁気撹拌下において0℃で実現した。この手順Bに従って、このようにして得られたエマルジョンを、表2に開示した。
【0247】
表9. 方法M1及び方法M2に従うエマルジョン形成の実験条件及びそれらの特性評価。重量パーセント(重量%)は、安定剤の場合を除き、エマルジョン全体に基づく。(*):油相に基づく重量%。強度(DLS:動的光散乱)及び体積(LD:レーザ回折)のサイズ分布値。「N/A」:データなし。
【0248】
【0249】
比較アッセイとして、本発明のアクリレート変性ヒアルロン酸の代わりに未変性ヒアルロン酸(比較用HA3及び比較用HA4)を用いて、上で定義したO/Wエマルジョンの調製プロセスを実施した。しかしながら、エマルジョンは形成されなかった。したがって、未変性ヒアルロン酸(HA)は、明確な相分離としていかなる界面活性も示さなかったことが実証される。
【0250】
実施例13. アクリレート系ヒアルロン酸ポリマーと単鎖ナノ粒子の界面架橋O/Wエマルジョンの合成
0.5チオール(-SH)当量を有するHA1の架橋エマルジョンを例として記載する。HA1(20mg、油相に関連した5重量%)を、8mLガラスバイアル中の3.6mLの脱イオン水(水相、90重量%)に溶解し、この溶液に、0.4gの魚油(油相、10重量%)を添加した。次いで、1.6μLのDODT(0.5SH当量)を油相上に慎重に添加し、最大pH=9(高速チオmichael付加に必要)のNaOH(1M)の体積を水相内に添加し、HA1に示されるエステル基の塩基性加水分解を回避して、超音波処理工程に手早く進んだ。エマルジョン生成を、H3ソノトロード・チップ(直径3mm、長さ100mm)により、4分間(400W)にわたり100%の振幅及びパルスでUP400S(Hielscher)システムを用いて実施する。超音波処理工程は、氷浴を用いて、磁気撹拌下において0℃で実現した。
【0251】
成功した架橋を、DMSO/ジオキサン(70:30、v/v)検証によって評価し、これにより1.5mLの架橋エマルジョンを、30mL(1:20希釈)の先のDMSO/ジオキサン溶液(これは、水相及び油相の両方の溶媒である)中に希釈した。例として、0.5チオール当量を伴うエマルジョンを、室温で磁気撹拌下において一晩溶解した。次いで、ヘキサン(3×80mL)による液液抽出後に、油相を除去した。水相(DMSO、水及びHA1-CL)を収集し、4日間にわたって蒸留水(MWCO3,500Da)に対する透析によって精製し、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュした。得られた水溶液を凍結乾燥して、架橋ポリマー(HA1-CL)を白色固体として得た。ヘキサンによる固液抽出によって油跡を除去した。HA1-CLをヘキサン1mL中に浸漬し、ボルテックスを用いて研和した。3回の遠心分離サイクル(14000rpm、5分、Minispin)の後、固体デキストランを遠心分離し、上清を除去して、得られたHA1-CLポリマーを得た。
【0252】
実施例14. 本発明のアクリレート変性ヒアルロン酸のO/Wエマルジョンの安定性試験
上述したように、本発明の目的のためには、エマルジョンは、液滴直径の増加が観察された場合であっても、相分離が1ヶ月以内に観察されない場合に、安定であると考えられる。
【0253】
[目視検査による]
上に開示した本発明のエマルジョンE93及びエマルジョンE94を調製し、室温で25日間静置した。開始時及び25日後での水中油型エマルジョンのデジタル画像を作成した。対照実験として、開始時及び25日後でそれぞれの未変性ヒアルロン酸(比較用HA3及び比較用HA4)の画像を作成した。
【0254】
目視検査によって判断されるように、画像は、表10に示されるように液滴のわずかな増加にもかかわらず、この期間中に相分離を観察することができなかったので、上記で開示されたエマルジョン(E93及びE94)が4℃の暗所で少なくとも25日間保存された後に安定であることを示した。本発明のアクリレート変性ヒアルロン酸は、エマルジョンの安定化能を有し、したがって、水中油型乳化剤、例えば水中魚油滴などとして有用であることが実証される。しかしながら、未変性HAは明確な相分離としていかなる界面活性も有しなかった。
【0255】
表10. レーザ回折(LD)によるE93の長期安定性。
【0256】
【0257】
実施例15. アクリレートヒアルロン酸系ポリマーの酵素応答性分析
本発明のエマルジョンE93(HA-ポリ-A HA1及び魚油を含有)を、エステル結合を切断する以下のリパーゼ酵素の存在下に置いた:
カンジダ・アンタークティカ・リパーゼB(Candida Antarctica Lipase B:CALB)
膵リパーゼ(Pancreatic lipase:LP)
【0258】
[目視検査による]
100μLの本発明のエマルジョンE93の画分を、HPLCガラスバイアル中で上述したリパーゼ(CALB及びLP;20mg/mL)100μLの各1つと混合した。混合物を室温で40時間静置した後、デジタル画像を取得した。
【0259】
対照実験として、エマルジョンE93もまた、40時間にわたり酵素の存在なしで監視した。その後、エマルジョンの比較的大きな液滴サイズに起因するクリーミング効果が観察されたが、液滴サイズは一定のままであった。相分離又は油滴の存在が水相の上部で観察できなかったので、エマルジョンは酵素の非存在下で安定であることが証明された。
【0260】
目視検査によって判断されるように、CALB又はLP酵素の添加は、エマルジョンの安定性に影響を及ぼし、エマルジョンの表面には油層が出現した。
【0261】
したがって、これらの結果は、本発明のアクリレート変性ヒアルロン酸の酵素応答性が、本発明のメタクリレート変性デキストランポリマー及びナノ粒子によって観察される酵素応答性と同等であることを実証した。そして、メタクリレート変性デキストランについて上述したように、本発明のメタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸は、標的化送達システムとしてもまた有用であり得るので、有利である。したがって、これらのエマルジョンの油相中に溶解した活性成分は、分解されることなく標的部位に送達され、かつ標的部位でのみ放出され得る。特に、本発明のメタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸を含むO/Wエマルジョンは、活性成分をその活性形態で送達する対応するエステラーゼ酵素によって加水分解される。更に、これらのエマルジョンからの活性成分の放出動態もまた調節することができる。最後に、O/Wエマルジョンの界面での架橋の可能性により、メタクリレートデキストランポリマー及び単鎖ナノ粒子によって実証されるように、放出動態もまた調節することができる一方で、液滴サイズを維持することが可能になる。
【0262】
実施例16. メタクリレート系キトサンポリマーDS=13~30%の合成(CHI-ポリ-MA)
窒素雰囲気下において、キトサン(CHI、1.5g)を100mLのジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、この溶液へ、1.2gのp-トルエンスルホン酸(PTSA)及び500mgの4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、1.6mmol)を加えた。この混合物を50℃で2時間撹拌した。次いで、7mLのグリシジルメタクリレート(GMA、8.4mmol)を添加し、混合物を35℃で4日間撹拌した。等モル量の濃縮したPTSA(0.98g、50mLの水溶液)を添加してDMAPを中和することによって、反応を停止させた。変性キトサン溶液を、1μS未満の脱イオン水伝導度値に達するまで、室温で蒸留水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって精製(9日間、4Lの脱イオン水で1日2回リフレッシュ)して、最後にCHI2を得た。
【0263】
変性ヒアルロン酸CHI1は、GMAを添加し、得られた混合物を35℃で2日間撹拌した以外は、上述したプロセスに従って調製した。
【0264】
表11. 本発明の変性したキトサン及び本発明範囲外である比較用未変性キトサンの概要
【0265】
【0266】
実施例17. 単鎖メタクリレート又はアクリレート変性キトサンナノ粒子を調製する一般的手順(CHI-SCNP-MA又はCHI-SCNP-A)
単鎖メタクリレート又はアクリレート変性キトサンナノ粒子を、メタクリレート又はアクリレート変性デキストラン多糖の代わりにメタクリレート又はアクリレート変性キトサン多糖を用いて、単鎖メタクリレート又はアクリレート変性デキストランナノ粒子について上記で定義したプロセスに従って調製した。
【0267】
実施例18. メタクリレート系キトサンポリマーのO/Wエマルジョンの合成
メタクリレート変性ヒアルロン酸の代わりにメタクリレート変性キトサンを用いて、メタクリレート系ヒアルロン酸のO/Wエマルジョンについて上記で定義したプロセスM2に従い、メタクリレート系キトサンのO/Wエマルジョンを調製した。
【0268】
比較アッセイとして、上記で定義したO/Wエマルジョンを調製するプロセスM2を、本発明のメタクリレート変性キトサンの代わりに未変性キトサン(比較用CHI3)を用いて実施した。しかしながら、エマルジョンは形成されなかった。したがって、未変性キトサンは、明確な相分離としていかなる界面活性も示さなかったことが実証される。
【0269】
表12. エマルジョン形成の実験条件及びそれらの特性評価。重量パーセント(重量%)は、安定剤の場合を除き、エマルジョン全体に基づく。(*):油相に基づく重量%。強度(DLS:動的光散乱)及び体積(LD:レーザ回折)のサイズ分布値。「N/A」:データなし。
【0270】
【0271】
実施例19. 本発明のメタクリレート変性キトサンのO/Wエマルジョンの安定性試験
上述したように、本発明の目的のためには、エマルジョンは、液滴直径の増加が観察された場合であっても、相分離が1ヶ月以内に観察されない場合に、安定であると考えられる。
【0272】
[目視検査による]
上に開示した本発明のエマルジョンE96及びエマルジョンE97を調製し、室温で10日間静置した。開始時及び10日後での水中油型エマルジョンのデジタル画像を作成した。対照実験として、開始時及び10日後でそれぞれの未変性キトサン(比較用CHI3)の画像を作成した。
【0273】
目視検査によって判断されるように、画像は、表13及び表14に示されるように液滴のわずかな増加にもかかわらず、この期間中に相分離を観察することができなかったので、上記で開示されたエマルジョン(E96及びE97)が4℃の暗所で少なくとも10日間保存された後に安定であることを示した。本発明のメタクリレート変性キトサンは、エマルジョンの安定化能を有し、したがって、水中油型乳化剤、例えば水中魚油滴などとして有用であることが実証される。しかしながら、未変性CHIは明確な相分離としていかなる界面活性も有しなかった。
【0274】
表13. レーザ回折(LD)によるE96の長期安定性。
【0275】
【0276】
表14. レーザ回折(LD)によるE97の長期安定性。
【0277】
【0278】
実施例20. アクリレート又はメタクリレート系キトサン単鎖ナノ粒子を調製する一般的手順
メタクリレート又はアクリレート系キトサン単鎖ナノ粒子に基づくエマルジョンを、メタクリレート又はアクリレート変性デキストラン多糖の代わりにメタクリレート又はアクリレート変性キトサンを用いて、メタクリレート又はアクリレート系デキストラン単鎖ナノ粒子について上記で定義したプロセスに従って調製した。
【0279】
実施例21. メタクリレート又はアクリレート系キトサンポリマー及び単鎖ナノ粒子の界面架橋O/Wエマルジョンを合成する一般的手順
メタクリレート又はアクリレート系キトサンポリマー及び単鎖ナノ粒子に基づく界面架橋O/Wエマルジョンを、メタクリレート又はアクリレート変性キトサンポリマー又は単鎖を用いて、メタクリレート又はアクリレート系デキストランポリマー及び単鎖ナノ粒子について上記で定義したプロセスに従って調製した。
【0280】
したがって、これらの結果は、本発明のメタクリレート又はアクリレート変性キトサンポリマー及び単鎖ナノ粒子が、本発明のメタクリレート又はアクリレートヒアルロン酸又はデキストランポリマー及び単鎖ナノ粒子により得られた結果と同等であることを実証した。そして、メタクリレート変性デキストランについて上述したように、本発明のメタクリレート又はアクリレート変性ヒアルロン酸は、水中油型エマルジョン安定剤としても、標的化送達システムとしてもまた有用であり得るので、有利である。
【0281】
実施例22. Xiantao Shenら(「Bacterial imprinting at Pickering emulsion interfaces.」、Angewandte Chemie,International Edition.、2014年、第53巻第11号、第10687~10690頁を参照)に開示されている、比較用N-アクリルキトサン(NAC)プレポリマーの再生。
【0282】
[比較用N-アクリルキトサン(NAC)プレポリマーの調製プロセス]
Xiantao Shenらに開示されているN-アクリルキトサン(NAC)プレポリマーを調製するプロセスは、Xiantao Shenらの補足情報の
図S1に対応し、本明細書では以下に開示されている。
【0283】
2つの別々の溶液を最初に調製した:
A)(溶液A) 1.61gのキトサンを、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)(40mL)とトリエチルアミン(2mL)との混合物中に分散させた。
B)(溶液B) 161μLの塩化アクリロイルを、5mLのDMAC中に添加した。
溶液Aを窒素バブリングによって0℃で10分間脱酸素した。次いで、溶液Bを溶液Aに滴加した。その後、混合物を0℃で4時間撹拌した、続いて25℃で20時間撹拌した。DMAC及びメタノールで連続的に洗浄した後、比較用N-アクリルキトサン(NAC)粉末を濾過によって回収し、室温で2日間にわたり超純水(MWCO3,500Da)に対して透析することによって精製した。最後に、透析した化合物を真空チャンバ内で乾燥させた。
【0284】
【化18】
図S1.比較用N-アクリルキトサンプレポリマーの合成。キトサン中のアミノ基と塩化アクリロイルとのモル比は5:1であった。
【0285】
[表面張力(ST)の決定]
Xiantao Shenらに開示されている比較用N-アクリルキトサンプレポリマーの表面張力の測定は、本出願で定義されているデュヌイリング法によって実施した(実験セクションの特性評価方法を参照されたい)。
【0286】
Xiantao Shenらに開示されている比較用N-アクリルキトサンプレポリマーに対する得られた表面張力の値は、64.85±0.1mN/m(pHにて)であり、特許請求の範囲(63mN/m以下)外であった。
【0287】
[結論]
実験セクションで示されているように、特許請求された表面張力を有する本発明の多糖又はナノ粒子のみが、界面活性、及びまたエステラーゼ酵素応答性も有する。
【0288】
実際に、Xiantao Shenらによって既に開示されているように、特許請求の範囲(63mN/m以下)より高い表面張力(約64.9mN/m)を有する比較用N-アクリルキトサンプレポリマーは、相分離安定剤としてのいかなる界面活性をも示さない。Xiantao Shenらは、正に帯電した比較用N-アクリルキトサンプレポリマーと負に帯電した細菌との集合によって得られた細菌-プレポリマー複合体(Xiantao Shenらのスキーム1を参照)のみが、粒子安定剤特性を有することを、既に言及した(第10687頁の最終段落を参照)。
【0289】
特に、Xiantao Shenらは、複合体の一部を形成することなく細菌又は比較用N-アクリルキトサンプレポリマーを別々に使用した場合、安定なエマルジョンが得られなかったことを開示している(第10688頁の第2段落を参照)。したがって、エマルジョン安定剤効果を達成するためには、細菌とキトサンとの集合が必要であると結論付けられる。
【0290】
(PCT原文第63頁のCitation Listは本明細書の末尾に移動されている。)
【0291】
[付記] 完全を期すために、本発明の様々な態様を、以下の番号付けされたクローズ(発明項目)として記載する。
【0292】
クローズ1. デュヌイリング法により測定される表面張力が63mN/m以下であるところの、メタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子の、水中油型エマルジョン安定剤としての使用。
【0293】
クローズ2. 多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、アルギネート、ジェランガム、セルロース及びその誘導体、グリコーゲン、並びにキトサンから選択される、クローズ1に記載の使用。
【0294】
クローズ3. メタクリレート基又はアクリレート基による多糖の置換度が、多糖の変性繰り返し単位の1~100%であるか、又は代替的に、
メタクリレート基若しくはアクリレート基によるナノ粒子の置換度が、ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%である、
クローズ1又は2のいずれか一項に記載の使用。
【0295】
クローズ4. メタクリレート又はアクリレート部分の-CO-基の炭素原子が、多糖のOH-部分の酸素原子に共有結合している、クローズ1~3のいずれか一項に記載の使用。
【0296】
クローズ5. メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(I)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性デキストラン
【化19】
および、
デキストランの変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、かつ式(II)の繰り返し単位を含むアクリレート変性デキストラン
【化20】
からなる群から選択される、クローズ1~4のいずれか一項に記載の使用。
【0297】
クローズ6. 単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるデキストランの置換度と、
デキストランメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖デキストランメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、クローズ1~4のいずれか一項に記載の使用。
【0298】
クローズ7. メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(IV)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性ヒアルロン酸
【化21】
および、
ヒアルロン酸の変性繰り返し単位の1%~100%のアクリレート基の置換度を有し、かつ式(V)の繰り返し単位を含むアクリレート変性ヒアルロン酸
【化22】
からなる群から選択されるか、
あるいは代替的に、
単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるヒアルロン酸の置換度と、
ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖ヒアルロン酸メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、
クローズ1~4のいずれか一項に記載の使用。
【0299】
クローズ8. メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のメタクリレート基の置換度を有し、かつ式(VII)の繰り返し単位を含むメタクリレート変性キトサン
【化23】
および、
キトサンの繰り返し単位の1%~100%のアクリレートによるキトサンの置換度を有し、かつ式(VIII)の繰り返し単位を含むアクリレート変性キトサン
【化24】
からなる群から選択されるか、
あるいは代替的に、
単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、
ナノ粒子の変性繰り返し単位の1%~98%のメタクリレート基又はアクリレート基によるキトサンの置換度と、
キトサンメタクリレート又はアクリレート鎖中に存在するモノマー単位の総量の1~60モル%の分子内架橋のパーセンテージと、
を有する単鎖キトサンメタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子である、
クローズ1~4のいずれか一項に記載の使用。
【0300】
クローズ9. 水中油型エマルジョン安定剤組成物であって、
クローズ1~8のいずれか一項に記載のメタクリレート若しくはアクリレート変性多糖、又は代替的に、クローズ1~8のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート若しくはアクリレート系ナノ粒子と、
1つ以上の適切な賦形剤又は担体と、
を含む、水中油型エマルジョン安定剤組成物。
【0301】
クローズ10. 下記(a),(b)及び(c)を備えてなる水中油型エマルジョンであって、
(a)外部水相(W)が、
(a1)水、グリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、及び
(a2)任意選択的に、(a2´)親水性活性剤及び(a2´´)親水性賦形剤又は担体からなる群から選択される1つ以上の親水性化合物、
を含み;
(b)内部油相(O)が、
(b1)親油性活性剤、及び
(b2)親油性賦形剤又は担体、
からなる群から選択される1つ以上の親油性化合物を含み;
並びに、
(c)外部水相(W)と内部油相(O)との間の界面層(IL)が、
(c1)以下からなる群から選択される1つ以上のエマルジョン安定剤と、
(c2)任意選択的に、1つ以上の親水性活性剤と、
を含み、
であって:
(c1)1つ以上のエマルジョン安定剤は以下からなる群から選択される、即ち、
(c1´)クローズ1~8のいずれか一項に記載のメタクリレート又はアクリレート変性多糖;
(c1´´)クローズ1~8のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子;
(c1´´´)クローズ1~8のいずれか一項に記載のメタクリレート又はアクリレート変性多糖を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖であって、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖が、多糖のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋メタクリレート又はアクリレート変性多糖、又は代替的に、
(c1´´´´)クローズ1~8のいずれか一項に記載の単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子を、界面架橋剤と反応させることによって得ることができる、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子であって、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子が、ナノ粒子のメタクリレート基又はアクリレート基の25~100%の界面架橋度を有する、界面架橋単鎖多糖メタクリレート又はアクリレート系ナノ粒子
からなる群から選択される、
水中油型エマルジョン。
【0302】
クローズ11. 活性剤が、医薬用活性成分、診断薬、及び美容用薬剤からなる群から選択される、クローズ10に記載の水中油型エマルジョン。
【0303】
クローズ12. エマルジョンが活性剤を含まない(ところの)、クローズ10又は11のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンの、担体としての使用。
【0304】
クローズ13. エマルジョンが、治療で使用するための、活性剤として1つ以上の医薬用活性成分を含む医薬用エマルジョンである、クローズ10又は11のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョン。
【0305】
クローズ14. エマルジョンが、1種以上の美容用薬剤を含む美容用エマルジョンである(ところの)、クローズ10又は11のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョンの、皮膚又は毛髪のケア剤としての使用。
【0306】
クローズ15. エマルジョンが、診断で使用するための、1種以上の診断薬を含む診断用エマルジョンである、クローズ10又は11のいずれか一項に記載の水中油型エマルジョン。
【0307】
[文献リスト](Citation List)
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2. Rudolph Macy, J. Chem. Educ. 1935, vol. 12(12), pp. 573.
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【国際調査報告】