(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】新規結合剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20230209BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230209BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230209BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20230209BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D5/02
C09D7/61
C09D133/26
C08F220/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536841
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020085942
(87)【国際公開番号】W WO2021122438
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】フリーデリケ・フライシュハーカー
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン・ロメイエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ガシュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト・レスヴィン
(72)【発明者】
【氏名】クリスピン・アミリ・ナイニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ミスケ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・フレッケンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・シュタインバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ガッターマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・アイヒホルン
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CG171
4J038CH031
4J038CH151
4J038GA06
4J038GA09
4J038HA216
4J038KA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA19
4J100AJ02R
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AM15S
4J100CA06
4J100DA25
4J100EA07
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA01
(57)【要約】
特許請求の範囲に記載の本発明は、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、水性ポリマーラテックスは、少なくとも1つのtert-ブチルアクリレート及び/又はtert-ブチルメタクリレートモノマーを含むモノマー組成物Mを、ラジカル乳化重合により重合することによって得られる、使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン顔料を含有する、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、
前記水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、前記モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦80質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、使用。
【請求項2】
モノマーa)~d)とは異なる、0.1~20質量%の、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記モノマーc)が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記モノマーc)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記メタクリルアミド誘導体が、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド及びN-ブチルメタクリルアミドからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記モノマーd)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.8質量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記モノマー組成物Mが、
a)≧40質量%~≦80質量%のtert-ブチルアクリレートと、
b)≧20質量%~≦59質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリル酸と、
d)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリルアミドと
を含み、ただし、a)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90~99.8質量%の範囲にあることを条件とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
i)結合剤又は共結合剤としての少なくとも1つの水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、前記モノマー組成物Mは、
e)≧40.0質量%~≦80質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
f)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
g)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
h)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックスと、
iii)二酸化チタン顔料と
を含む、水性コーティング組成物。
【請求項10】
モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、前記モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦80質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックス。
【請求項11】
モノマーa)~d)とは異なる、0.1~20質量%の少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を含む、請求項10に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項12】
前記モノマーc)が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項13】
前記モノマーc)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項10から12のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項14】
前記メタクリルアミド誘導体が、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド及びN-ブチルメタクリルアミドからなる群から選択される、請求項10から13のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項15】
前記モノマーd)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項10から14のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項16】
前記モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.8質量%の範囲にある、請求項10から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記モノマー組成物Mが、
a)≧40質量%~≦80質量%のtert-ブチルアクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリル酸と、
d)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリルアミドと
を含み、ただし、前記モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.8質量%の範囲にあることを条件とする、請求項10から18のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許請求の範囲に記載の本発明は、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、水性ポリマーラテックスは、少なくとも1つのtert-ブチルアクリレート及び/又はtert-ブチルメタクリレートモノマーを含むモノマー組成物Mを、ラジカル乳化重合により重合することによって得られる、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許請求の範囲に記載の本発明は、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用に関し、水性ポリマーラテックスは、少なくとも1つのtert-ブチルアクリレート及び/又はtert-ブチルメタクリレートモノマーを含むモノマー組成物Mを、ラジカル乳化重合により重合することによって得られる。水系コーティング組成物は、基本的に二酸化チタン顔料を含有する。
【0003】
二酸化チタン(TiO2)は、ラテックス塗料などの水系コーティング組成物中で顔料として頻繁に使用される。白色度に加えて、TiO2はコーティングに不透明度又は隠蔽力を与え、このことは、コーティングが不透明であり、コーティングが塗布される下面又は基板表面を隠すことを意味する。そのようなコーティング又は塗料の不透明化能力又は隠蔽力は、コーティングが塗布される表面を隠すコーティングの能力の尺度である。
【0004】
不透明化能力(opacifying capacity)は、乾燥した塗布コーティング中の不透明化顔料の粒子間の間隔の関数であることが見出された。コーティングの不透明化能力は、不透明化顔料、すなわちTiO2の光散乱能力が最大化されるときに、最大化される。最大の光散乱効率は、各粒子の光散乱能力は、隣接する粒子の光散乱能力に干渉しないように、TiO2顔料粒子が特定の間隔を有しているときに生じる。この状態は、個々のTiO2粒子が互いから隔離されているような、十分に低いレベルのTiO2を含有するコーティングにおいて生じ得る。しかしながら、そのような低レベルのTiO2を含有するコーティングは、典型的な乾燥コーティングの厚さでは十分な白色度と隠蔽を実現しない。望ましいレベルの隠蔽と白色度を達成するには、通常、より高いレベルのTiO2が必要である。これらのより高いレベルでは、TiO2粒子の統計的分布が発生し、その結果、TiO2粒子の少なくとも一部が互いに非常に近接しているため、不透明化顔料粒子の密集により光散乱効率が低下する。要するに、TiO2粒子がコーティング組成物中に均一に分散されていない場合、隠蔽又は不透明化顔料としてのTiO2顔料の有効性が低下する。実際、TiO2粒子は、膜の形成と乾燥の際に凝集する傾向がある。コーティングの不透明化能力は、TiO2粒子分布の均一性を促進し、結合剤と顔料との間の相互作用を促進するポリマーラテックス結合剤を使用することによって改善され得ることが示唆されている。
【0005】
EP 1 398 333 A1は、多エチレン性不飽和モノマーの重合単位、及び亜リン酸基、亜リン酸フルエステル基、ポリ酸側鎖から選択される少なくとも1つのペンダント吸収基を有する第1のポリマーと、そのようなペンダント吸収基を本質的に含まない第2のポリマーと、を含む多段ポリマーラテックスを使用することにより、TiO2顔料粒子の間隔とその結果として生じる効率を改善できることを開示している。許容可能な隠蔽力を達成するために、EP 1 398 333 A1のポリマー分散体は、高価なリン含有モノマーを必要とする。更に、コーティング配合物は常に安定であるとは限らず、凝集する傾向があり、その結果、コーティング中に粗粒子が形成される。
【0006】
EP 2 426 155 A1は、リン含有酸モノマーの重合単位を含有する水性多段ポリマー分散体を開示している。ポリマー分散体は、乳化重合によって調製され、乳化重合では、リン光体含有酸モノマーが、乳化重合の初期段階でパルス状に添加される。多段ポリマー分散体は、TiO2顔料粒子を吸収することができ、TiO2顔料と水性多段ポリマー分散体のいわゆるプレコンポジットを調製するために使用される。これらのプレコンポジットは、水系塗料に使用され得る。多段ポリマー分散体は、許容可能な耐摩耗性及び粗粒子形成における隠蔽力を改善するために提案されている。
【0007】
WO 2013/116318 A1は、リン光体含有酸モノマーの重合単位、カルボン酸又は硫黄酸モノマーの重合単位、及び多エチレン性不飽和モノマーの重合単位を含有する水性多段ポリマー分散体を調製するための方法を開示している。この方法は、リン光体含有酸モノマーの重合単位、カルボン酸又は硫黄酸モノマーの重合単位、及び多エチレン性不飽和モノマーの重合単位を含む、予め形成されたポリマー分散体中のモノマーエマルジョンの乳化重合として実行される。全ポリマーに基づいて、リン光体含有酸モノマー及び多エチレン性不飽和モノマーの重合単位の大部分は、予め形成されたポリマー分散体に含有される。WO 2013/116318 A1のポリマー分散体は、TiO2顔料粒子のプレコンポジットを調製するために使用され、TiO2顔料粒子との適合性を改善し、粗粒子形成を低減するものである。
【0008】
WO 2013/040040 A1によると、TiO2顔料とポリマーラテックスのプレコンポジットを含有する塗料における粗粒子形成は、TiO2顔料のプレコンポジットが2段階のプロセスで調製される場合、低減され得る。このプロセスでは、第1の工程において、EP 1 398 333 A1又はEP 2 426 155 A1に記載されているように、TiO2顔料と吸収性ポリマーラテックス粒子との間の相互作用を阻害するために、高pHにて、TiO2顔料の水性スラリーを吸収性ポリマーラテックスと接触させ、その後、第2の工程において、TiO2顔料と吸収性ポリマーラテックス粒子との間の相互作用を促進するために、pHが下げられる。EP 2692752 A1によると、TiO2顔料粒子が、顔料粒子の表面で吸収されるスルホン酸モノマーの構造単位を含む水溶性分散剤を含有している場合、TiO2顔料とポリマーラテックス及び会合性増粘剤のプレコンポジットを含有する塗料中での粗粒子形成は、低減され得る。この方法には、商業的入手が容易ではない特定の分散剤を使用するという問題がある。分散剤の合成には、複数の溶媒と特製のモノマーが必要である。
【0009】
吸収性ポリマー分散体は、許容可能な隠蔽又は不透明化効果及び凝集安定性を達成するために高価なリン含有モノマーを必要とするため、又はTiO2顔料/ポリマープレコンポジットを調製するための高価な分散剤若しくは面倒な方法を必要とするため、TiO2顔料の隠蔽又は不透明化効果を改善するために先行技術によって提示された手段は満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 1 398 333 A1
【特許文献2】EP 2 426 155 A1
【特許文献3】WO 2013/116318 A1
【特許文献4】WO 2013/040040 A1
【特許文献5】EP 2692752 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、特許請求の範囲に記載の本発明の目的は、TiO2顔料の均一な分布を促進することができ、結合剤と顔料との間の相互作用を促進する、水性ポリマー分散体を提供することである。水性ポリマー分散体は、良好な隠蔽/不透明化効果を達成するために高価なリン光体(phosphor)含有モノマーを必要としないものである。更に、水性ポリマー分散体は、コーティング組成物の良好な安定性を提供し、粗粒子を形成しにくいものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、水性ポリマーラテックスは、少なくとも1つのtert-ブチルアクリレート及び/又はtert-ブチルメタクリレートモノマーを含むモノマー組成物Mを、ラジカル乳化重合により重合することによって得られる、使用によって、良好な隠蔽力/不透明化効果がもたらされることが見出された。
【0013】
したがって、特許請求の範囲に記載の本発明の第1の態様は、二酸化チタン顔料を含有する、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、使用に関する。
【0014】
特許請求の範囲に記載の本発明の第2の態様は、
i)第1の態様において定義される少なくとも1つの水性ポリマーラテックスと、
ii)二酸化チタン顔料と
を含む、水性コーティング組成物に関する。
【0015】
特許請求の範囲に記載の本発明の第3の態様は、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求の範囲に記載の本発明の組成物及び配合物が説明される前に、そのような組成物及び配合物は当然に変わり得るため、本発明は記載された特定の組成物及び配合物に限定されるわけではないことを理解されたい。特許請求の範囲に記載の本発明の範囲は添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0017】
以下、1つの群が少なくとも特定の数の実施形態を含むように定義される場合、これは好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。更に、明細書及び特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「a」、「b」、「c」等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番又は時系列的順序を記述するために使用されるものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された特許請求の範囲に係る本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示以外の順序で実行可能であることを理解されたい。「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「(A)」、「(B)」及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」等の用語が、方法若しくは使用又はアッセイの工程に関連する場合、工程間に時間又は時間間隔の一貫性はない。つまり、工程は同時に実行されるか、又は上記若しくは下記に記載されている出願に別段の記載がない限り、そのような工程間に数秒、数分、数時間、数日、数週、数月、又は更には数年の時間間隔が存在することがある。
【0018】
更に、本明細書全体で定義されている範囲は、終了値も含む。すなわち、1~10の範囲は、1と10の両方が範囲に含まれることを意味する。疑義を避けるために、出願人は、適用可能な法律に基づく任意の等価物に対する権利を有するものとする。
【0019】
以下の節では、特許請求の範囲に記載の本発明の異なる態様がより詳細に定義されている。そのように定義された各態様は、明確に別の指示がない限り、その他の態様と組み合わされてよい。特に、好ましい又は有利であるとして示されている任意の特徴は、好ましい又は有利であるとして示されている他の任意の特徴と組み合わされてよい。
【0020】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、特許請求の範囲に記載の本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らないが、同じ実施形態を指す場合もある。
【0021】
更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の好適な様式で組み合わされてよい。更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含むが、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まない。異なる実施形態の特徴の組み合わせは、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内にあり、当業者には理解されるであろう、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲では、請求項に記載の実施形態のいずれかが任意の組み合わせで使用され得る。
【0022】
一実施形態では、特許請求の範囲に記載の本発明は、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする、水性ポリマーラテックスの使用に関し;
より好ましくは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする、水性ポリマーラテックスの使用に関し;
更により好ましくは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする、水性ポリマーラテックスの使用に関し;
最も好ましくは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦2.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦2.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする、水性ポリマーラテックスの使用に関し;
特に、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦2.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦2.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする、水性ポリマーラテックスの使用に関する。
【0023】
別の好ましい実施形態において、モノマーa)とb)を一緒にした量は、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.8質量%の範囲であり、好ましくは、モノマーa)とb)を一緒にした量は、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.5質量%の範囲であり、より好ましくは、モノマーa)とb)を一緒にした量は、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、92.0~99.5質量%の範囲であり、最も好ましくは、モノマーa)とb)を一緒にした量は、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、92.0~99.0質量%の範囲であり、特に好ましくは、モノマーa)とb)を一緒にした量は、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、92.0~98.0質量%の範囲である。
【0024】
別の好ましい実施形態において、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸c)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸のハーフメチルエステル、マレイン酸のハーフエチルエステル、シトラコン酸、シトラコン酸のハーフメチルエステル、イタコン酸、イタコン酸のハーフメチルエステル、3-ペンテン酸、2-ブテノイン酸、フマル酸、フマル酸のハーフメチルエステル、フマル酸のハーフエチルエステル、ハロゲン化アクリル酸及びハロゲン化メタクリル酸からなる群から選択される。
【0025】
別の好ましい実施形態において、モノマーd)は、アクリルアミド、及びメタクリルアミド誘導体からなる群から選択される。
【0026】
別の好ましい実施形態において、メタクリルアミド誘導体は、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド及びN-ブチルメタクリルアミド;並びに最も好ましくはアクリルアミド及びN-メチルアクリルアミドからなる群から選択される。
【0027】
別の好ましい実施形態において、非イオン性モノマーe)は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、又はエポキシ若しくはN-メチロール官能性モノマー、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド誘導体等の架橋モノマーからなる群から選択される。更なる非イオン性モノマーは、ヒドロキシ、アミノ、アセトアセトキシ、尿素、又はシロキサン基を有するモノマー、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アセトキシエチルメタクリレート、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ウレイドメタクリレートである。
【0028】
別の好ましい実施形態において、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸、すなわち成分c)は、≧0.1質量%~≦3.0質量%の範囲の量で存在し;より好ましくは、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸は、≧0.5質量%~≦3.0質量%の範囲の量で存在し;特に、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸は、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する。
【0029】
別の好ましい実施形態において、成分d)、すなわち、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸は、≧0.1質量%~≦3.0質量%の範囲の量で存在し;より好ましくは、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸は、≧0.5質量%~≦3.0質量%の範囲の量で存在し;好ましくは、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸は、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する。
【0030】
別の好ましい実施形態において、モノマー組成物Mは、モノマーa)~d)とは異なる、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を0.1~20質量%含み;より好ましくは、モノマーa)~d)とは異なる、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を0.1~15質量%含み;最も好ましくは、モノマーa)~d)とは異なる、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を0.1~10質量%含み;特に、モノマーa)~d)とは異なる、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を1~10質量%含む。
【0031】
別の好ましい実施形態において、モノマー組成物Mは、
a)≧40質量%~≦79質量%のtert-ブチルアクリレート又はtert-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリル酸と、
d)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリルアミドと
を含む。
【0032】
別の好ましい実施形態において、水性ポリマーラテックスは、動的光散乱によって決定された、≧10nm~≦500nmの範囲の平均粒径Zを示し;最も好ましくは、水性ポリマーラテックスは、動的光散乱によって決定された、≧30nm~≦400nmの範囲の平均粒径Zを示し;特に好ましくは、水性ポリマーラテックスは、動的光散乱によって決定された、≧40nm~≦300nmの範囲の平均粒径Zを示す。
【0033】
一実施形態では、特許請求の範囲に記載の本発明は、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られた水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックスに関し;
より好ましくは、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とし;
更により好ましくは、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とし;
最も好ましくは、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦2.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦2.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とし;
特に、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦69.8質量%のt-ブチルアクリレートと、
b)≧30質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦2.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦2.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする。
【0034】
別の好ましい実施形態において、水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.7質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.7質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と、
e)≧0.1質量%~≦10質量%の、モノマーa)~d)とは異なる、少なくとも1つの非イオン性モノマーと
を含み、質量%は、いずれの場合も、モノマー組成物Mの総量を基準とする。
【0035】
別の好ましい実施形態において、ポリマーラテックスの調製方法は、ラジカル乳化重合技術の周知のプロセスに従って実施される。モノマーMのフリーラジカル乳化重合の実施に必要な条件は、例えば、冒頭で引用した先行技術、並びにEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、8巻、659頁以下(1987)の「Emulsions polymerisation」 [Emulsion Polymerization]; D. C. Blackley、High Polymer Latices、1巻、35頁以下(1966); H. Warson、The Applications of Synthetic Resin Emulsions、5章、246頁以下(1972); D. Diederich、Chemie in unserer Zeit 24、135~142頁(1990); Emulsion Polymerisation、Interscience Publishers、New York (1965); DE-A 40 03 422及びDispersionen synthetischer Hochpolymere [Dispersions of Synthetic High Polymers]、F. Holscher、Springer-Verlag、Berlin (1969)]に記載されているとおり、当業者にとって十分に周知のものである。
【0036】
別の好ましい実施形態において、フリーラジカルによって開始される水性乳化重合は、フリーラジカル重合開始剤(フリーラジカル開始剤)によって引き起こされる。これらは、原則として、過酸化物、アゾ化合物、及びレドックス開始剤系である。
【0037】
別の好ましい実施形態において、過酸化物は、無機過酸化物及び有機過酸化物からなる群から選択される。
【0038】
別の好ましい実施形態において、無機過酸化物は、過酸化水素及び過硫酸塩、例えば、過硫酸のモノ又はジアルカリ金属又はアンモニウム塩、例えば、一及び二ナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩からなる群から選択される。
【0039】
別の好ましい実施形態において、有機過酸化物は、アルキルヒドロペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド、p-メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド、及びジアルキル又はジアリールペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチル又はジクミルペルオキシドからなる群から選択される。
【0040】
別の好ましい実施形態において、アゾ化合物は、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2'-アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド(AIBA、和光純薬株式会社製V-50に対応)からなる群から選択される。
【0041】
別の好ましい実施形態では、レドックス開始剤系に適した酸化剤は、基本的に、上記で特定された過酸化物である。使用され得る対応する還元剤は、低酸化状態の硫黄化合物、例えば、亜硫酸アルカリ金属塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又はナトリウム、亜硫酸水素アルカリ金属塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又はナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩(formaldehydesulfoxylat.es)、例えばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウム及び/又はナトリウム、アルカリ金属塩、具体的には、脂肪族スルフィン酸及びアルカリ金属硫化水素のカリウム及び/又はナトリウム塩、例えば硫化水素カリウム及び/又はナトリウム、多価金属の塩、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えば、ジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸、並びに還元糖、例えば、ソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンである。
【0042】
別の好ましい実施形態において、フリーラジカル開始剤は、無機過酸化物、特に過硫酸塩、及びレドックス開始剤系である。
【0043】
別の好ましい実施形態において、乳化重合Mのためのフリーラジカル開始剤の量は、最初に、重合容器内に完全に充填される。ただし、フリーラジカル開始剤を一切充填しないか、又は単に一部のみ、例えば、水性重合媒体に必要なフリーラジカル開始剤の総量を基準として、40質量%以下、特に30質量%以下を充填し、次に、重合条件下で、モノマーMのフリーラジカル乳化重合中に、消費量に応じて、1つ又は複数の部分でバッチごとに、若しくは一定若しくは可変流量により連続的に、全量若しくは残りの残存量を追加することも可能である。
【0044】
別の好ましい実施形態において、本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、0~170℃の範囲、より好ましくは50~120℃の範囲、最も好ましくは60~120℃の範囲の温度にて実施され、特に、本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、70~110℃の範囲の温度にて実施される。
【0045】
別の好ましい実施形態において、本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、1気圧未満、1気圧、又は1気圧超の圧力にて実施される。
【0046】
別の好ましい実施形態において、重合は、連鎖移動剤の存在下で行われる。連鎖移動剤は、脂肪族及び/又は芳香脂肪族ハロゲン化合物、例えば、塩化n-ブチル、臭化n-ブチル、ヨウ化n-ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル;有機チオ化合物、例えば、一次、二次又は三次脂肪族チオール、例えば、エタン-エチオール、n-プロパンチオール、2-プロパンチオール、n-ブタンチオール、2-ブタンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、n-ペンタンチオール、2-ペンタンチオール、3-ペンタンチオール、2-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-2-ブタンチオール、n-ヘキサンチオール、2-ヘキサンチオール、3-ヘキサンチオール、2-メチル-2-ペンタンチオール、3-メチル-2-ペンタンチオール、4-メチル-2-ペンタンチオール、2-メチル-3-ペンタンチオール、3-メチル-3-ペンタンチオール、2-エチルブタンチオール、2-エチル-2-ブタンチオール、n-ヘプタンチオール及びこれらの異性体化合物、n-オクタンチオール及びその異性体化合物、n-ノナンチオール及びその異性体化合物、n-デカンチオール及びその異性体化合物、n-ウンデカンチオール及びその異性体化合物、n-ドデカンチオール及びその異性体化合物、n-トリデカンチオール及びその異性体化合物、置換チオール、例えば、2-ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、例えば、ベンゼンチオール、オルト、メタ、又はパラメチルベンゼンチオール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)のアルキルエステル、例えば2-エチルヘキシルチオグリコレート、メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル、例えばオクチルメルカプトプロピオネート、及びPolymer Handbook、第3版、1989、J. BrandrupとE. H. Immergut、John Wiley & Sons、II章、133~141頁に記載されている更なる硫黄化合物、及び脂肪族及び/又は芳香族アルデヒド、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及び/又はベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタン又はビニルシクロヘキサン、又は容易に引き抜くことができる(abstractable)水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンからなる群から選択される。
【0047】
別の好ましい実施形態では、特許請求の範囲に記載の本発明の方法において使用される連鎖移動剤の総量は、モノマーMの総量を基準として、1質量%を超えない。
【0048】
別の好ましい実施形態において、重合は、界面活性剤の存在下で実施される。
【0049】
別の好ましい実施形態において、界面活性剤は、乳化剤及び保護コロイドから選択される。保護コロイドは、乳化剤とは対照的に、2000ダルトンを超える分子量を有するポリマー化合物を意味すると理解されているが、乳化剤は、典型的に、より低い分子量を有する。界面活性剤は、アニオン性若しくは非イオン性であるか、又は非イオン性及びアニオン性界面活性剤の混合物であってよい。
【0050】
別の好ましい実施形態において、アニオン性界面活性剤は、通常、少なくとも1つのアニオン性基を有し、これは、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート及びスルホネート基から選択される。少なくとも1つのアニオン性基を有するアニオン性界面活性剤は、典型的には、それらのアルカリ金属塩、特にそれらのナトリウム塩の形態で、又はそれらのアンモニウム塩の形態で、使用される。
【0051】
別の好ましい実施形態において、アニオン性界面活性剤は、アニオン性乳化剤、特に、少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有するものである。同様に、少なくとも1つのホスフェート又はホスホネート基を有するアニオン性乳化剤は、単独のアニオン性乳化剤として、又は少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有する1つ又は複数のアニオン性乳化剤と組み合わせて、使用されてよい。少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有するアニオン性乳化剤の例は、例えば、アルキルサルフェート、特にC8~C22-アルキルサルフェートの塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、エトキシル化アルカノールの硫酸モノエステルの、特に、エトキシル化C8~C22-アルカノールの硫酸モノエステル、好ましくは2~40の範囲のエトキシル化レベル(EOレベル)を有するものの、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、エトキシル化アルキルフェノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノールの硫酸モノエステル(EOレベルは好ましくは3~40)の、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸、特にC8~C22-アルキルスルホン酸の、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、ジアルキルエステル、特にスルホコハク酸のジ-C1~C18アルキルエステルの、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンスルホン酸の、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、並びに-モノ又はジスルホン化、アルキル置換ジフェニルエーテル、例えば一方又は両方の芳香環にC4~C24-アルキル基を有するビス(フェニルスルホン酸)エーテルの、塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩である。例としては、US-A-4,269,749、及びDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical社)がある。
【0052】
別の好ましい実施形態において、アニオン性界面活性剤はアニオン性乳化剤であり、これらは、以下の群:
・アルキルサルフェート、特にC8~C22-アルキルサルフェートの塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、
・エトキシル化アルカノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C8~C22-アルカノールの硫酸モノエステル、好ましくは2~40の範囲のエトキシル化レベル(EOレベル)を有するものの塩、特にアルカリ金属塩、
・アルキルベンゼンスルホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンスルホン酸の、エトキシル化アルキルフェノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノールの硫酸モノエステル(EOレベルは好ましくは3~40)、並びに
・モノ又はジスルホン化、アルキル置換ジフェニルエーテル、例えば、一方又は両方の芳香環にC4~C24-アルキル基を有するビス(フェニルスルホン酸)エーテル
から選択される。
【0053】
ホスフェート又はホスホネート基を有するアニオン性乳化物の例には、以下の群から選択される以下の塩:
・モノ及びジアルキルホスフェート、特にC8~C22-アルキルホスフェートの塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、
・C2~C3-アルコキシル化アルカノールのリン酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、好ましくは2~40の範囲、特に3~30の範囲のアルコキシル化レベルを有するもの、例えば、エトキシル化C8~C22-アルカノールのリン酸モノエステル、好ましくは2~40の範囲のエトキシル化レベル(EOレベル)を有するもの、プロポキシル化C8~C22-アルカノールのリン酸モノエステル、好ましくは2~40の範囲のプロポキシル化レベル(POレベル)を有するもの、及びエトキシル化-コ-プロポキシル化C8~C22-アルカノールのリン酸モノエステル、好ましくは1~20の範囲のエトキシル化レベル(EOレベル)及び1~20のプロポキシル化レベルを有するもの、
・エトキシル化アルキルフェノールのリン酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノールのリン酸モノエステル(EOレベルは好ましくは3~40)の塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、
・アルキルホスホン酸、特にC8~C22-アルキルホスホン酸の塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩、並びに
・アルキルベンゼンホスホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンホスホン酸の塩、特にアルカリ金属及びアンモニウム塩
が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
更なる好適なアニオン性界面活性剤は、Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry]、XIV/1巻、Makromolekulare Stoffe [Macromolecular Substances]、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgart、1961、192~208頁に見出される。
【0055】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤を含む。少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤は、単独のタイプのアニオン性乳化剤であり得る。しかしながら、少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤と、少なくとも1つのホスフェート又はホスホネート基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤との混合物も使用され得る。そのような混合物において、少なくとも1つのサルフェート又はスルホネート基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤の量は、本発明の方法で使用されるアニオン性界面活性剤の総質量を基準として、好ましくは少なくとも50質量%である。特に、少なくとも1つのホスフェート又はホスホネート基を有するアニオン性乳化剤の量は、本発明の方法で使用されるアニオン性界面活性剤の総質量を基準として、20質量%を超えない。
【0056】
別の好ましい実施形態において、界面活性剤はまた、特に非イオン性乳化剤から選択される、1つ又は複数の非イオン性界面活性物質を含み得る。好適な非イオン性乳化剤は、例えば、芳香脂肪族又は脂肪族非イオン性乳化剤、例えば、エトキシル化モノ、ジ及びトリアルキルフェノール(EOレベル3~50、アルキル鎖:C4~C10)、長鎖アルコールのエトキシレート(EOレベル:3~100、アルキル鎖:C8~C36)、並びにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドホモ及びコポリマーである。これらは、ランダム分布又はブロック形態で共重合されたアルキレンオキシド単位を含み得る。非常に好適な例は、EO/POブロックコポリマーである。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル鎖C1~C30、平均エトキシル化レベル5~100)が優先され、とりわけ、C12~C20アルキル鎖及び5~20の平均エトキシル化レベルを有するエトキシレートが特に優先され、エトキシル化モノアルキルフェノールも優先される。
【0057】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法で使用される界面活性剤は、本発明の方法で使用される界面活性剤の総量を基準として、60質量%未満、特に50質量%以下の非イオン性界面活性剤を含む。
【0058】
本発明の別の実施形態において、本発明の方法で使用される界面活性剤は、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤とを含み、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する比は、通常、0.5:1~10:1、特に1:1~5:1の範囲である。
【0059】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、界面活性剤の量が、重合されるモノマーMを基準として0.2質量%~5質量%の範囲、特に0.5質量%~3質量%の範囲にあるような量で使用される。
【0060】
別の好ましい実施形態において、重合中の水性反応媒体は、原則として、少量(≦5質量%)の水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、更にはアセトン等も含み得る。ただし、好ましくは、本発明の方法は、そのような溶媒の非存在下で実施される。
【0061】
別の好ましい実施形態において、得られる水性ポリマー分散体は、いずれの場合も水性ポリマー分散体の総質量を基準として、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~65質量%、より好ましくは30質量%~60質量%、最も好ましくは40質量%~60質量%の範囲のポリマー固形分を有する。
【0062】
一実施形態では、特許請求の範囲に記載の本発明は、
i)上記で定義される少なくとも1つの水性ポリマーラテックスと、
ii)二酸化チタン顔料と
を含む、水性コーティング組成物に関する。
【0063】
別の好ましい実施形態において、ポリマーの二酸化チタン顔料に対する質量比は、≧0.1:5.0~≦5.0:0.1の範囲であり、より好ましくは、ポリマーの二酸化チタン顔料に対する質量比は、≧0.5:5.0~≦5.0:0.5の範囲であり、更により好ましくは、ポリマーの二酸化チタン顔料に対する質量比は、≧1.0:5.0~≦5.0:1.0の範囲であり、最も好ましくは、より好ましくは、ポリマーの二酸化チタン顔料に対する質量比は、≧2.0:5.0~≦5.0:2.0の範囲であり、特に、より好ましくは、ポリマーの二酸化チタン顔料に対する質量比は、≧1.0:3.0~≦3.0:1.0の範囲である。
【0064】
別の好ましい実施形態では、二酸化チタン顔料は、光散乱又は電子鏡検法によって決定されるように、≧0.1μm~≦0.5μmの範囲の平均一次粒径を有する。
【0065】
別の好ましい実施形態において、水性コーティング組成物は、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、殺生物剤、分散剤、充填剤及び融合助剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む。
【0066】
別の好ましい実施形態において、水性コーティング組成物は、TiO2顔料粉末又はTiO2顔料の水性スラリー若しくはペーストを本発明の水性ポリマーラテックスと混合することによって、好ましくは、混合物にせん断を加えることによって、例えば、水系塗料の調製に従来から使用されている溶解器を使用することによって、簡単に調製され得る。TiO2顔料及び本発明の水性ポリマーラテックスの水性スラリー又はペーストを調製し、次に、本発明の更なるポリマーラテックス又は他の任意のポリマーラテックス結合剤に組み込むか又はこれらと混合することも可能になる。
【0067】
別の好ましい実施形態において、ポリマー複合材料の水性分散体はまた、本発明の水性ポリマーラテックスを、TiO2顔料をすでに含有している塗料の水性ベース配合物に結合剤又は共結合剤として組み込むことによって、例えば、本発明の水性ポリマーラテックスを、塗料配合物中で従来から使用されている更なる添加剤をすでに含有している顔料配合物と混合することによって、調製され得る。
【0068】
別の好ましい実施形態において、水性顔料スラリー又はペースト中のTiO2顔料粒子を安定化するために、水性顔料スラリー又は顔料ペースト、例えば分散剤中で従来から使用されている添加剤の存在下で、混合が任意に実施されてもよい。好適な分散剤には、例えば、ポリリン酸塩、例えば、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム又はポリリン酸アンモニウム、アクリル酸ホモ若しくはコポリマーのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、又は無水マレイン酸ポリマー、ポリホスホン酸塩、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム、及びナフタレンスルホン酸塩、特にそれらのナトリウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
別の好ましい実施形態において、ポリマー複合材料の水性分散体を調製するために使用される水性ポリマーラテックス中のポリマー濃度は、概して、いずれの場合も水性ポリマーラテックスの総質量を基準として、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~65質量%、最も好ましくは30質量%~60質量%の範囲である。ポリマー複合材料の水性分散体を調製するために使用される二酸化チタン顔料は、コーティング組成物、特に水性コーティング組成物において従来から使用されている任意のTiO2顔料であってよい。多くの場合、TiO2顔料が使用され、TiO2粒子は好ましくはルチル形態をとる。別の好ましい実施形態において、TiO2粒子はまた、例えばシリカ及び/又はアルミナによりコーティングされ得る。
【0070】
別の好ましい実施形態では、充填剤は、アルミノケイ酸塩、例えば長石、ケイ酸塩、例えば、カオリン、タルク、マイカ及びマグネサイト;アルカリ土類金属炭酸塩、例えば、カルサイト又はチョークの形態の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイト;アルカリ土類金属硫酸塩、例えば、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等からなる群から選択される。本発明のコーティング組成物において、微粉化された充填剤が当然好ましい。充填剤は、個別の成分の形態で使用され得る。ただし、実際には、充填剤混合物、例えば、炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクが、特に有用であることが見出されている。光沢塗料は、一般に、ごく少量の非常に細かく微粉化された充填剤のみを含むか、又は充填剤をまったく含まない。充填剤には、必要に応じて光沢を大幅に低減させる艶消し剤も含まれている。艶消し剤は一般に透明であり、有機又は無機のいずれでもあり得る。艶消し剤の例は、無機ケイ酸塩、例えば、W.R.Grace&Company社のSyloid(登録商標)ブランド及びEvonik社のAce-matt(登録商標)ブランドである。有機艶消し剤は、例えば、BYK-Chemie社からCeraflour(登録商標)ブランド及びCeramat(登録商標)ブランドで、Deuteron社からDeuteron MK(登録商標)ブランドで入手可能である。
【0071】
コーティング組成物中の顔料及び充填剤の割合は、顔料体積濃度(PVC)を通じてそれ自体が知られている様式で表され得る。PVCは、顔料(VP)及び充填剤(VF)の総体積に対する体積の比を百分率で表し、乾燥コーティングフィルム中の結合剤(VB)、顔料(VP)、及び充填剤(VF)の体積からなる。
【0072】
PVC = (VP + VF)×100/(VP + VF + VB)
【0073】
別の好ましい実施形態において、湿潤剤は、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム又はポリリン酸アンモニウム、アクリル酸コポリマー又は無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、ポリホスホン酸塩、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム、及びナフタレンスルホン酸塩、特にそれらのナトリウム塩からなる群から選択される。
【0074】
特許請求の範囲に記載の本発明は、以下の利点のうちの少なくとも1つを伴う。
1. 特許請求の範囲に記載の本発明は、TiO2顔料粒子を含有する水系コーティング組成物中の結合剤又は共結合剤としての新規水性ポリマーラテックスを提供する。
2. 特許請求の範囲に記載の本発明の水性ポリマー分散体は、コーティング中のTiO2顔料の均一な分布を促進する。特許請求の範囲に記載の本発明の水性ポリマー分散体はまた、結合剤と顔料との間の相互作用を促進する。
3. 特許請求の範囲に記載の本発明の水性ポリマー分散体は、より良好な隠蔽/不透明化効果を達成するために高価なリン含有モノマーを必要としない。
4. 特許請求の範囲に記載の本発明の水性ポリマー分散体は、コーティング組成物の良好な安定性を実現するものであり、粗粒子を形成する傾向はない。
5. 特許請求の範囲に記載の本発明のラテックスを結合剤又は共結合剤として含む水系コーティング組成物は、コーティングされた表面に対して優れた不透明度を提供する。
【0075】
実施形態
1. 二酸化チタン顔料を含有する、水系コーティング組成物における結合剤又は共結合剤としての水性ポリマーラテックスの使用であって、
水性ポリマーラテックスは、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、使用。
【0076】
2. モノマーa)~d)とは異なる、0.1~20質量%の、少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を含む、実施形態1に記載の使用。
【0077】
3. モノマーc)が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の使用。
【0078】
4. モノマーc)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、実施形態1から3のいずれか1つに記載の使用。
【0079】
5. メタクリルアミド誘導体が、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド及びN-ブチルメタクリルアミドからなる群から選択される、実施形態1から4のいずれか1つに記載の使用。
【0080】
6. モノマーd)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、実施形態1から5のいずれか1つに記載の使用。
【0081】
7. モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.8質量%の範囲にある、実施形態1から6のいずれか1つに記載の使用。
【0082】
8. モノマー組成物Mが、
a)≧40質量%~≦79質量%のtert-ブチルアクリレートと、
b)≧20質量%~≦59質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリル酸と、
d)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリルアミドと
を含み、ただし、a)とb)を一緒にした量が、90~99.0質量%の範囲にあることを条件とする、実施形態1から7のいずれか1つに記載の使用。
【0083】
9.
i)結合剤又は共結合剤としての少なくとも1つの水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られ、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックスと、
ii)二酸化チタン顔料と
を含む、水性コーティング組成物。
【0084】
10. モノマー組成物Mをラジカル乳化重合により重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、
a)≧40.0質量%~≦79.8質量%のt-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレートと、
b)≧20質量%~≦59.8質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.1質量%~≦3.0質量%の、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸と、
d)≧0.1質量%~≦3.0質量%のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミド誘導体と
を含む、水性ポリマーラテックス。
【0085】
11. モノマーa)~d)とは異なる、0.1~20質量%の少なくとも1つの非イオン性モノマーe)を含む、実施形態10に記載の水性ポリマーラテックス。
【0086】
12. モノマーc)が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される、実施形態10又は11に記載の水性ポリマーラテックス。
【0087】
13. モノマーc)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、実施形態10から12のいずれか1つに記載の水性ポリマーラテックス。
【0088】
14. メタクリルアミド誘導体が、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド及びN-ブチルメタクリルアミドからなる群から選択される、実施形態10から13のいずれか1つに記載の水性ポリマーラテックス。
【0089】
15. モノマーd)が、≧0.5質量%~≦2.0質量%の範囲の量で存在する、請求項10から14のいずれか1つに記載の水性ポリマーラテックス。
【0090】
16. モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90~99.8質量%の範囲にある、実施形態10から15のいずれか1つに記載の使用。
【0091】
17. モノマー組成物Mが、
a)≧40質量%~≦79質量%のtert-ブチルアクリレートと、
b)≧20質量%~≦59質量%のn-ブチルアクリレートと、
c)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリル酸と、
d)≧0.5質量%~≦1.5質量%のアクリルアミドと
を含み、ただし、モノマーa)とb)を一緒にした量が、全モノマーを一緒にした総質量を基準として、90.0~99.0質量%の範囲にあることを条件とする、実施形態10から18のいずれか1つに記載の水性ポリマーラテックス。
【0092】
特許請求の範囲に記載の本発明がその特定の実施形態に関して説明されてきたが、特定の改変及び同等物は、当業者には明らかであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0093】
特許請求の範囲に記載の本発明は、以下の非制限的な実施例によって詳細に説明されている。より具体的には、以下に指定される試験方法は、本出願の全体的開示の一部であり、特定の実施例に限定されない。
【実施例】
【0094】
【0095】
方法
Tg:ASTM D 3418-08に準拠した示差走査熱量測定によって、ガラス転移温度を測定する。コンディショニングのために、ポリマーを注ぎ出し、一晩乾燥させた後、真空乾燥キャビネット内で120℃にて1時間乾燥させる。測定時には、試料を150℃に加熱し、急速に冷却し、次に20℃/分にて150℃まで加熱したときに測定を行う。報告される値は中点温度である。
【0096】
平均粒径:質量平均粒径を、HDC(ハイドロダイナミッククロマトグラフィ分別)によって測定する。PL-PSDA粒径分布分析装置(Polymer Laboratories社)を使用して、乳化剤を含有する水性溶離液に少量の試料を注入し、約0.5g/lの濃度にし、得られた混合物を、ポリスチレン球を詰めた直径約15mmのガラス毛細管に通してポンピングすることにより、HDC測定を実行する。より小さな粒子は、それらの流体力学的直径によって決定されるとおり、毛細管内のより遅い流れの領域に立体的に出入りすることができ、その結果、平均して、より小さな粒子は、より遅い溶出流れを受ける。例えば、254nmの固定波長で吸光度を測定したUV検出器を使用して、分別を最終的にモニタすることができる。
【0097】
固形分含量:試料を乾燥させ、その乾燥質量を測定することによって、固形分含量を決定した。したがって、固形分含量計(solids content device)であるSatorius MA 45を恒量プログラムで使用した。ガラス繊維パッドを有し、キャップで覆った、風袋引きした小型アルミニウム製鍋内で、1.5gの試料を調製した。乾燥プログラム「120℃ Automatic」を開始する。同じプログラムにより、ガラス繊維パッドを予備乾燥させる。すべての試料固形分を、二重決定によって計算する。
【0098】
不透明度試験:
試験1
Lenetaカードに、3つの異なる未乾燥塗膜厚さ(50μm、100μm及び150μm)により塗料を塗布し、続いて23℃及び相対湿度50%にて24時間乾燥させた。
【0099】
コントラスト比(Rb/Rw)を、百分率として表される、カードの黒色部分(Rb)と白色部分(Rw)の上のコーティングからの反射光の比として、分光測色法により決定した。コントラスト比は、コーティングが黒色表面を隠す能力を示し、したがってコーティングの不透明度/隠蔽力を示す。
【0100】
試験2
98%のコントラスト比においてISO6504-3のガイドラインを適用することによって、拡散率を決定した。
【0101】
比較例1
メチルメタクリレート(46質量%)/ブチルアクリレート(52質量%)/アクリル酸(1質量%)/アクリルアミド(1質量%)
供給物1: 1345.2gの脱イオン水、64.7gのDowfax(登録商標)2A1(45質量%)、72.8gのLutensol(登録商標)TO 82(20質量%)、24.3gのアクリル酸、48.5gのアクリルアミド(50質量%)、1261.0gのブチルアクリレート及び1115.5gのメチルメタクリレート。
供給物2: 69.3gの過硫酸ナトリウム水溶液(7質量%)。
供給物3: 24.3gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10質量%)。
供給物4: 21.8gのRongalit(登録商標)C水溶液(10質量%)。
【0102】
プロセス:脱イオン水(844.6g)とポリスチレンシード分散体(95.5g、33質量%、粒径: 30nm)を、攪拌器、温度制御、窒素入口、及び多重注入機能を備えた反応器に投入した。12.1gの緩衝水溶液(20質量%)を使用して、上記の混合物のpHを>3に維持した。反応混合物を窒素によりパージし、85℃に加熱した。85℃にて供給物2(17.3g)を投入した。5分後、供給物1と残りの供給物2を180分かけて添加した。反応混合物を、85℃にて30分間、後重合する。次に、供給物3と供給物4を60分間にわたって添加した。重合の完了後、反応混合物を周囲温度に冷却し、水酸化ナトリウムによりpH8~9に中和した。
【0103】
Tg(乾燥分散体): 14℃、
平均粒径: 124nm、
固形分含量: 51.0質量%。
【0104】
(実施例2)
t-ブチルアクリレート(67質量%)/ブチルアクリレート(31質量%)/アクリル酸(1質量%)/アクリルアミド(1質量%)
供給物1: 1345.2gの脱イオン水、64.7gのDowfax(登録商標)2A1(45質量%)、72.8gのLutensol(登録商標)TO 82(20質量%)、24.3gのアクリル酸、48.5gのアクリルアミド(50質量%)、751.8gのブチルアクリレート、1624.8gのt-ブチルアクリレート。
供給物2: 69.3gの過硫酸ナトリウム水溶液(7質量%)。
供給物3: 24.3gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10質量%)。
供給物4: 21.8gのRongalit(登録商標)C水溶液(10質量%)。
【0105】
プロセス:脱イオン水(844.6g)とポリスチレンシード分散体(95.5g、33質量%、粒径: 30nm)を、攪拌器、温度制御、窒素入口、及び多重注入機能を備えた反応器に投入した。12.1gの緩衝水溶液(20質量%)を使用して、上記の混合物のpHを>3に維持した。反応混合物を窒素によりパージし、85℃に加熱した。85℃にて供給物2(17.3g)を投入した。5分後、供給物1と残りの供給物2を180分かけて添加した。反応混合物を、85℃にて30分間、後重合する。次に、供給物3と供給物4を60分間にわたって添加した。重合の完了後、反応混合物を周囲温度に冷却し、水酸化ナトリウムによりpH8~9に中和した。
【0106】
Tg(乾燥分散体): 15℃、
平均粒径: 123nm、
固形分含量: 50.8質量%。
【0107】
(実施例3)
t-ブチルメタクリレート(47質量%)/ブチルアクリレート(51質量%)/アクリル酸(1質量%)/アクリルアミド(1質量%)
供給物1: 1345.2gの脱イオン水、64.7gのDowfax(登録商標)2A1(45質量%)、72.8gのLutensol(登録商標)TO 82(20質量%)、24.3gのアクリル酸、48.5gのアクリルアミド(50質量%)、1236.8gのブチルアクリレート、1139.8gのt-ブチルメタクリレート。
供給物2: 69.3gの過硫酸ナトリウム水溶液(7質量%)。
供給物3: 24.3gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10質量%)。
供給物4: 21.8gのRongalit(登録商標)C水溶液(10質量%)。
【0108】
プロセス:プロセスは実施例2と同様である。
Tg(乾燥分散体): 15℃、
平均粒径: 125nm、
固形分含量: 50.3質量%。
【0109】
塗料の配合
比較例4
100gの脱イオン水、5gのAquaflow(登録商標)XLS-525(Ashland社)会合性増粘剤、4gのBYK-024消泡剤、4gのEcodis(登録商標)P90分散剤(Coatex Arkema社)、及び2gのActicide(登録商標)殺生物剤(Thor社)を低せん断速度にて混合する。
【0110】
150gのKronos2190顔料を、500~2000rpmにて5分間分散させる。150gのOmyacoat 850-OG充填剤を4000rpmにて10分間分散させる。
【0111】
3gのBYK-093消泡剤、20gのAquaflow NHS-300(Ashland社)会合性増粘剤、9.2gのCoasol 290 Plus(Chemoxy社)融合助剤、127.04gの脱イオン水、及び比較例1からの425.76gのポリマー結合剤を、1000rpmで10分間混合して、水性コーティング組成物を得る。
【0112】
(実施例5)
100gの脱イオン水、5gのAquaflow(登録商標)XLS-525(Ashland社)会合性増粘剤、4gのBYK-024消泡剤、4gのEcodis(登録商標)P90分散剤(Coatex(登録商標)Arkema)、及び2gのActicide殺生物剤(Thor社)を低せん断速度にて混合する。
【0113】
150gのKronos2190顔料を、500~2000rpmにて5分間分散させる。150gのOmyacoat 850-OG充填剤を4000rpmにて10分間分散させる。
【0114】
3gのBYK-093消泡剤、20gのAquaflow NHS-300(Ashland社)会合性増粘剤、9.2gのCoasol 290 Plus(Chemoxy社)融合助剤、125.36gの脱イオン水、及び実施例2からの427.44gのポリマー結合剤を、1000rpmで10分間混合して、水性コーティング組成物を得る。
【0115】
(実施例6)
100gの脱イオン水、5gのAquaflow(登録商標)XLS-525(Ashland社)会合性増粘剤、4gのBYK-024消泡剤、4gのEcodis(登録商標)P90分散剤(Coatex(登録商標)Arkema)、及び2gのActicide殺生物剤(Thor社)を低せん断速度にて混合する。
【0116】
150gのKronos2190顔料を、500~2000rpmにて5分間分散させる。150gのOmyacoat 850-OG充填剤を4000rpmにて10分間分散させる。
【0117】
3gのBYK-093消泡剤、20gのAquaflow NHS-300(Ashland社)会合性増粘剤、9.2gのCoasol 290 Plus(Chemoxy社)融合助剤、121.10gの脱イオン水、及び実施例3からの431.69gのポリマー結合剤を、1000rpmで10分間混合して、水性コーティング組成物を得る。
【0118】
比較例7
80.0gの脱イオン水、5.0gのFoamstar SI2210(BASF SE社製シリコーン消泡剤)、10.0gのDispex CX4320(BASF SE社製分散剤)、及び16.0gのRheovis PU1340(BASF SE社製会合性ポリウレタン増粘剤)を容器に添加し、溶解器を使用して500rpmにて5分間撹拌する。この混合物に、攪拌速度を2000rpmに上げ、以下の粉末材料:160.0gのTiona 595、50.0gのFinntalc M15及び55.0gのOmyacarb 5GUを少しずつ添加する。すべての材料を添加した後、更に20分間撹拌を続ける。この期間の後、攪拌器の速度を1000rpmに低下させる。次に、15.0gのTexanol(Eastman社製合体剤)、比較例1からの450.1gの比較結合剤、1.0gのFoamstar SI2210を添加し、最大合計1000.0gの配合塗料になるように156.9gのDI水を補充した。
【0119】
(実施例8)
80.0gの脱イオン水、5.0gのFoamstar SI2210(BASF SE社製シリコーン消泡剤)、10.0gのDispex CX4320(BASF SE社製分散剤)、及び16.0gのRheovis PU1340(BASF SE社製会合性ポリウレタン増粘剤)を容器に添加し、溶解器を使用して500rpmにて5分間撹拌する。この混合物に、攪拌速度を2000rpmに上げ、以下の粉末材料:160.0gのTiona 595、50.0gのFinntalc M15及び55.0gのOmyacarb 5GUを少しずつ添加する。すべての材料を添加した後、更に20分間撹拌を続ける。この期間の後、攪拌器の速度を1000rpmに低下させる。次に、15.0gのTexanol(Eastman社製合体剤)、実施例2からの451.0gの結合剤、1.0gのFoamstar SI2210を添加し、最大合計1000.0gの配合塗料になるように156.0gのDI水を補充した。
【0120】
(実施例9)
80.0gの脱イオン水、5.0gのFoamstar SI2210(BASF SE社製シリコーン消泡剤)、10.0gのDispex CX4320(BASF SE社製分散剤)、及び16.0gのRheovis PU1340(BASF SE社製会合性ポリウレタン増粘剤)を容器に添加し、溶解器を使用して500rpmにて5分間撹拌する。この混合物に、攪拌速度を2000rpmに上げ、以下の粉末材料:160.0gのTiona 595、50.0gのFinntalc M15及び55.0gのOmyacarb 5GUを少しずつ添加する。すべての材料を添加した後、更に20分間撹拌を続ける。この期間の後、攪拌器の速度を1000rpmに低下させる。次に、15.0gのTexanol(Eastman社製合体剤)、実施例3からの452.8gの結合剤、1.0gのFoamstar SI2210を添加し、最大合計1000.0gの配合塗料になるように154.2gのDI水を補充した。
【0121】
試験1(36ページに記載)
Lenetaカードに、3つの異なる未乾燥塗膜厚さ(50μm、100μm及び150μm)により例4~6の塗料を塗布し、続いて23℃及び相対湿度50%にて24時間乾燥させた。
【0122】
コントラスト比(Rb/Rw)を、百分率として表される、カードの黒色部分(Rb)と白色部分(Rw)の上の乾燥コーティングからの反射光の比として、分光測色法により決定した。コントラスト比は、コーティングの黒色表面を隠す能力を示し、したがってコーティングの不透明度(隠蔽力)を示す。
【0123】
【0124】
【0125】
表1の例4~6と表2の例7~9を比較すると、特許請求の範囲に記載の本発明により調製されたコーティングは、比較例に比べて優れたコントラスト比/不透明度/隠蔽力を示すことが明らかである。式(I)のモノマーを含むポリマー結合剤を含有するコーティングは、より少ない量の水性コーティング組成物によりコーティングされた表面に対して優れた不透明度を提供することも明らかである。
【国際調査報告】