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特表2023-506586自動インスリン供給システムにおけるグルコースモニタからの欠測値に対する補償
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】自動インスリン供給システムにおけるグルコースモニタからの欠測値に対する補償
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20230209BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549072
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 US2021017664
(87)【国際公開番号】W WO2021163328
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】16/791,648
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】イーピン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ポク リー
(72)【発明者】
【氏名】アシュトシュ ザード
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
例示的な実施態様は、無線接続に関連する問題が原因で、無線接続上で血中グルコース濃度測定値を伝達するグルコースモニタからの血中グルコース濃度測定値を欠く問題に対処することができる。例示的な実施態様において、AID(automated insulin delivery)装置は、ユーザに対して予測未来血中グルコース濃度測定値を決定するステップ内で欠落血中グルコース濃度測定値の代わりに推定値を使用する。故に、AID装置は、現在のサイクルに対して現在血中グルコース濃度測定値を受信しないにもかかわらずインスリン供給設定値を生成するステップ内で正常に動作できる。欠落血中グルコース濃度測定値が原因でユーザへのインスリンの供給を停止する必要はない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの血中グルコース濃度測定値を提供するためのグルコースセンサを伴う無線インターフェースと、
前記ユーザに供給するインスリンを保持するためのインスリンタンクと、
プログラミング命令、前記グルコースセンサから受信した前記血中グルコース濃度測定値、前記ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度測定値、及び前記ユーザに対するインスリン供給履歴を記憶する記憶媒体と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記記憶媒体内の前記プログラミング命令を実行して、
前記ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対して前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功した場合、
前記ユーザに対する前記予測未来血中グルコース濃度測定値に基づいて、前記現在の制御サイクルに対する、前記インスリンタンクから前記ユーザへの前記インスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定することであって、
前記予測未来血中グルコース濃度測定値は、以前の制御サイクルからの前記グルコースセンサからの前記血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用とに基づく、ことと、
前記ユーザに対する前記現在血中グルコース濃度測定値を、前記現在の制御サイクルに対して前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった場合、
前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記少なくとも1つの血中グルコース濃度測定値を推定し、
前記ユーザに対する前記予測未来血中グルコース濃度に基づいて、前記現在の制御サイクルに対して前記インスリンタンクから前記ユーザへの前記インスリンの供給のための前記インスリン供給設定値を設定することであって、
前記予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルからの前記グルコースセンサからの前記血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用と、前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記現在血中グルコース濃度測定値の推定値とに基づく、ことと、
を行う、自動インスリン供給装置。
【請求項2】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、前記現在の制御サイクルに対する前記予測未来血中グルコース濃度の1つである、請求項1に記載の自動インスリン供給装置。
【請求項3】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、過去の血中グルコース濃度測定値の補間を適用することによって決定される、請求項1に記載の自動インスリン供給装置。
【請求項4】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値を、前記血中グルコース濃度測定値の直近のものの間の平均変化と合計することによって決定される、請求項3に記載の自動インスリン供給装置。
【請求項5】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値である、請求項1に記載の自動インスリン供給装置。
【請求項6】
プロセッサによって行われる方法であって、
AID(automated insulin delivery)装置が、ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功した場合、
前記ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、前記現在の制御サイクルに対する、前記AID装置のインスリンタンクから前記ユーザへの前記AID装置による前記インスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定するステップであって、
前記予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルに対する前記グルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用とに基づく、ステップと、
前記AID装置が、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値を、前記現在の制御サイクルに対して前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった場合、
前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記現在血中グルコース濃度測定値を推定するステップと、
前記ユーザに対する前記予測未来血中グルコース濃度に基づいて、前記現在の制御サイクルに対して前記インスリンタンクから前記ユーザへの前記インスリンの供給のための前記インスリン供給設定値を設定するステップであって、
前記予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルからの前記グルコースセンサからの前記血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用と、前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記現在血中グルコース濃度測定値の推定値と、に基づく、ステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、前記現在の制御サイクルに対する前記予測未来血中グルコース濃度の1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、過去の血中グルコース濃度測定値の補間を適用することによって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値を、前記血中グルコース濃度測定値の直近のものの間の平均変化と合計することによって決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値を、前記血中グルコース濃度測定値の直近のもの2つの間の平均変化と合計することによって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
AID装置によって行われる方法であって、
制御サイクルに対して、AID(automated insulin delivery)装置において無線インターフェース上でグルコースセンサからユーザに対する血中グルコース濃度測定値を受信するステップであって、
血中グルコース濃度測定値は、前記制御サイクルのそれぞれに対して受信される、ステップと、
前記グルコースセンサから受信された、前記受信された血中グルコース濃度測定値を、前記AID装置によってアクセス可能な記憶装置内に記憶するステップであって、
所与の制御サイクルに対して、前記ユーザに対する血中グルコース濃度測定値が、前記無線インターフェース上で前記グルコースセンサから前記AID装置において受信されない場合、前記所与の制御サイクルに対して、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する、ステップと、
前記所与の制御サイクルに対して、前記記憶された血中グルコース濃度測定値と、前記決定された推定値とを使用して、未来血中グルコース濃度測定値を予測するステップと、
前記ユーザに対する前記予測された未来血中グルコース濃度に基づいて、前記AID装置のインスリン供給設定値を設定するステップと、
前記グルコースセンサとの前記無線インターフェース上の通信が再確立されたとき、次の制御サイクルに対する、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する際に、前記所与の制御サイクルに対する前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の前記推定値を、前記所与のサイクルに対する前記グルコースモニタからの前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値に置換するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記所与の制御サイクルに対して前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定するステップは、
前記受信された血中グルコース濃度測定値から血中グルコース濃度値の傾向を決定するステップと、
前記推定値を決定するために前記傾向を使用するステップと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
血中グルコース濃度値の前記傾向を使用するステップは、前記推定値を取得するために前記傾向に基づいて外挿を行うステップ、又は前記推定値を取得するために前記傾向に基づいて補間を行うステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所与のサイクルに対して前記血中グルコース濃度測定値を使用するステップを、前記AID装置の前記インスリン供給設定値を設定する際に使用するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記命令は、プロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサに、
制御サイクルに対して、AID(automated insulin delivery)装置において無線インターフェース上でグルコースセンサからユーザに対する血中グルコース濃度測定値を受信することであって、
通常の動作中に、血中グルコース濃度測定値は、前記制御サイクルのそれぞれに対して受信される、ことと、
前記グルコースセンサから受信された、前記受信された血中グルコース濃度測定値を、前記AID装置によってアクセス可能な記憶装置内に記憶することであって、
所与の制御サイクルに対して、前記ユーザに対する血中グルコース濃度測定値が、前記無線インターフェース上で前記グルコースセンサから前記AID装置において受信されない場合、前記所与の制御サイクルに対して、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する、ことと、
前記所与の制御サイクルに対して、前記記憶された血中グルコース濃度測定値と、前記決定された推定値とを使用して、未来血中グルコース濃度測定値を予測することと、
前記ユーザに対する前記予測された未来血中グルコース濃度に基づいて、前記AID装置のインスリン供給設定値を設定することと、
前記グルコースセンサとの前記無線インターフェース上の通信が再確立されたとき、次の制御サイクルに対する、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する際に、前記所与の制御サイクルに対する前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の前記推定値を、前記所与のサイクルに対する前記グルコースモニタからの前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値に置換することと、
をさせる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記所与の制御サイクルに対して前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値の推定値を決定することは、
前記受信された血中グルコース濃度測定値から血中グルコース濃度値の傾向を決定することと、
前記推定値を決定するために前記傾向を使用することと、を含む、請求項16に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記傾向を使用することは、前記推定値を取得するために前記傾向に基づいて外挿を行うこと、又は前記推定値を取得するために前記傾向に基づいて補間を行うことを含む、請求項16に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記命令は、プロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサに、
AID(automated insulin delivery)装置が、ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功した場合、
前記ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、前記現在の制御サイクルに対する、前記AID装置のインスリンタンクから前記ユーザへの前記AID装置による前記インスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定することであって、
前記予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルに対する前記グルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用とに基づく、ことと、
前記AID装置が、前記ユーザに対する前記血中グルコース濃度測定値を、前記現在の制御サイクルに対して前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった場合、
前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記現在血中グルコース濃度測定値を推定することと、
前記ユーザに対する前記予測未来血中グルコース濃度に基づいて、前記現在の制御サイクルに対して前記インスリンタンクから前記ユーザへの前記インスリンの供給のための前記インスリン供給設定値を設定することであって、
前記予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルからの前記グルコースセンサからの前記血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用と、前記グルコースセンサから前記無線インターフェース上で受信することに成功しなかった前記現在血中グルコース濃度測定値の推定値と、に基づく、ことと、
をさせる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記現在血中グルコース濃度測定値の前記推定値は、前記現在の制御サイクルに対する前記予測未来血中グルコース濃度の1つである、又は過去の血中グルコース濃度測定値の補間を適用することによって決定される、請求項19に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年2月14日に出願された米国特許第16/791,648号の出願日の利益を主張し、その全体の内容は、全体として参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
AID(Automated Insulin Delivery)システムは、ユーザにどのぐらいのインスリンを供給するかを調整するために、継続的にグルコースモニタからの血中グルコース濃度測定値に依存する。いくつかのAIDシステムにおいて、ユーザの血中グルコース濃度が目標に向かって動くように次のインスリン供給を調整するために、血中グルコース濃度測定値がインスリン供給装置にフィードバックされるフィードバックループが存在する。そのようなAIDシステムの適切な動作は、更新された血中グルコース濃度測定値がそれぞれの制御サイクルで受信されることを必要とすることがある。
【0003】
いくつかのAIDシステムにおいて、血中グルコース濃度測定値は、グルコースモニタから無線で受信される。これは、インスリン供給装置とグルコースモニタとの間に延びる、潜在的に迷惑な配線が必要ないという点において、有線接続よりもユーザにとってより便利である。インスリン供給装置とグルコースモニタとの間のそのような無線接続は、信頼できないことがある。特に、無線接続は、間隔をあけて落ちる(be dropped for intervals)ことがあり、又はさもなければ一時的に動作不可能になることがある。そのような中断の間、更新された血中グルコース濃度測定値は、インスリン供給装置によって受信されない。これ故に、従来の方法で、対応は、中断の間インスリンがユーザに供給されないようにシステムをフリーズすることである。従来のAIDシステムは、インスリン供給設定値を決定するために複数の最近の血中グルコース濃度値に依存するので、中断は、そのシステムにおいて延長されることがある。それ故に、複数の更新された血中グルコース濃度測定値は、AIDシステムが通常の動作を再開する前に複数の制御サイクルにわたって受信されなければならない。
【発明の概要】
【0004】
例示的な実施態様に従って、AID装置は、ユーザの血中グルコース濃度測定値を提供するためのグルコースセンサを伴う無線インターフェースを含む。AID装置は、ユーザに供給するインスリンを保持するためのインスリンタンクと、プログラミング命令、グルコースセンサから受信した血中グルコース濃度測定値、ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度測定値、及びユーザに対するインスリン供給履歴を記憶する記憶媒体も含む。装置は、さらに、記憶媒体内のプログラミング命令を実行するためのプロセッサを含む。ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功した場合、命令は、プロセッサにユーザに対する予測未来血中グルコース濃度測定値に基づいて、現在の制御サイクルに対する、インスリンタンクからユーザへのインスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定させる。予測未来血中グルコース濃度測定値は、以前の制御サイクルからのグルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用とに基づいている。ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった場合、命令は、プロセッサにグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった少なくとも1つの血中グルコース濃度測定値を推定させる。命令は、プロセッサにユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、現在の制御サイクルに対してインスリンタンクからユーザへのインスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定もさせる。予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルからのグルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用と、グルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった現在血中グルコース濃度測定値の推定値とに基づいている。
【0005】
現在血中グルコース濃度測定値の推定値は、現在の制御サイクルに対する予測未来血中グルコース濃度の1つであってよい。現在血中グルコース濃度測定値の推定値は、代わりに過去の血中グルコース濃度測定値の補間を適用することによって決定されてよい。現在血中グルコース濃度測定値の推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値を、血中グルコース濃度測定値の直近のものの間の平均変化と合計することによって決定されてよい。あるいは、現在血中グルコース濃度測定値の推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値でよい。
【0006】
例示的な実施態様に従って、方法が、プロセッサによって行われる。この方法を通じて、AID装置が、ユーザに対する現在血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功した場合、ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、現在の制御サイクルに対する、AID装置のインスリンタンクからユーザへのAID装置によるインスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定する。予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルに対するグルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用とに基づいている。AID装置が、ユーザに対する血中グルコース濃度測定値を、現在の制御サイクルに対してグルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった場合、グルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった現在血中グルコース濃度測定値を推定し、ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、現在の制御サイクルに対してインスリンタンクからユーザへのインスリンの供給のためのインスリン供給設定値を設定する。予測未来血中グルコース濃度は、以前の制御サイクルからのグルコースセンサからの血中グルコース濃度測定値と、以前に供給されたインスリンのインスリン作用と、グルコースセンサから無線インターフェース上で受信することに成功しなかった現在血中グルコース濃度測定値の推定値に基づく。方法を行うステップのための命令は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に記憶されてよい。
【0007】
例示的な実施態様に従って、方法は、AID装置によって行われる。この方法を通じて、制御サイクルに対して、AID装置において無線インターフェース上でグルコースセンサからユーザに対する血中グルコース濃度測定値を受信する。通常の動作中に、血中グルコース濃度測定値は、制御サイクルのそれぞれに対して受信される。グルコースセンサから受信された、受信された血中グルコース濃度測定値を、AID装置によってアクセス可能な記憶装置内に記憶する。所与の制御サイクルに対して、ユーザに対する血中グルコース濃度測定値が、無線インターフェース上でグルコースセンサからAID装置において受信されない場合、所与の制御サイクルに対して、ユーザに対する血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する。所与の制御サイクルに対して、記憶された血中グルコース濃度測定値と、決定された推定値とを使用して、未来血中グルコース濃度測定値を予測する。ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度に基づいて、AID装置のインスリン供給設定値を設定する。グルコースセンサとの無線インターフェース上の通信が再確立されたとき、次の制御サイクルに対する、ユーザに対する血中グルコース濃度測定値の推定値を決定する際に、所与の制御サイクルに対するユーザに対する血中グルコース濃度測定値の推定値を、所与のサイクルに対するグルコースモニタからのユーザに対する血中グルコース濃度測定値に置換する。方法を行うステップのための命令は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に記憶されてよい。
【0008】
所与の制御サイクルに対してユーザに対する血中グルコース濃度測定値の推定値を決定するステップは、受信された血中グルコース濃度測定値から血中グルコース濃度値の傾向を決定するステップと、推定値を決定するために傾向を使用するステップを含んでよい。血中グルコース濃度値の傾向を使用するステップは、推定値を取得するために傾向に基づいて外挿を行うステップ、又は推定値を取得するために傾向に基づいて補間を行うステップを含んでよい。方法は、所与のサイクルに対して血中グルコース濃度測定値を使用するステップを、AID装置のインスリン供給設定値を設定する際に使用するステップの動作をさらに含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な実施態様を実践することに適しているAIDシステムを含む環境を描写する。
図2】本明細書中に記述される例示的な実施態様の方法を行うことに適している装置のブロック図を描写する。
図3】例示的な実施態様におけるインスリン供給設定値を決定するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図4】血中グルコース濃度測定値の過去の予測から血中グルコース濃度測定値の推定値を生成するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図5】補間を使用して血中グルコース濃度測定値の推定値を生成するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図6】外挿を使用して血中グルコース濃度測定値の推定値を生成するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図7】ゼロ次ホールドを使用して血中グルコース濃度測定値の推定値を生成するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図8A】ユーザに対する経時的な血中グルコース濃度値の実例となるプロットを示す。
図8B】AID装置を使用した経時的なユーザに対する異なるアプローチのためのインスリンの供給の3つのグラフのプロットを描写する。
図9】欠落血中グルコース濃度測定値を後にグルコースモニタから受信された血中グルコース濃度測定値でバックフィル(backfill)するための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
図10】欠落血中グルコース濃度測定値を予測血中グルコース濃度測定値でバックフィルするための実例となるステップを示すフローチャートを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施態様は、無線接続に関連する問題が原因で、無線接続上で血中グルコース濃度測定値を伝達するグルコースモニタからの血中グルコース濃度測定値を欠く問題に対処する。例示的な実施態様において、AID装置は、ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度測定値を決定する際に、欠落血中グルコース濃度測定値の代わりに推定値を使用する。それ故に、AID装置は、現在のサイクルの間に現在血中グルコース濃度測定値を受信しないにもかかわらず、インスリン供給設定値を生成するときに正常に動作できる。欠落血中グルコース濃度測定値が原因でユーザへのインスリンの供給を停止する必要はない。
【0011】
欠落血中グルコース濃度測定値の推定値は、複数の異なる手段において決定されてよい。第1に、推定値は、現在の制御サイクルに対する血中グルコース濃度測定値の過去に決定された予測でよい。第2に、推定値は、補間された値でよい。第3に、推定値は、直近に受信された血中グルコース濃度測定値でよい。推定値を計算する他の手段が、使用されてもよい。
【0012】
AID装置は、血中グルコース濃度測定値の履歴を保ち、使用する。グルコースモニタから1つ又は複数の血中グルコース濃度測定値が受信されず、AID装置との無線接続性が復元されるとき、欠落血中グルコース濃度測定値は、グルコースモニタからAID装置に送信され、欠落血中グルコース濃度測定値をバックフィルするために使用されてよい。あるいは、いくつかの例示的な実施態様において、欠落血中グルコース濃度測定値は、関連した制御サイクルに対して予測血中グルコース濃度測定値でバックフィルされてよい。
【0013】
図1は、例示的な実施態様においてユーザ(108)にインスリンを供給することに適している実例となる薬品供給システム(100)を描写する。薬品供給システム(100)は、インスリン供給装置(102)を含む。インスリン供給装置(102)は、ユーザ(108)の体に装着されるウェアラブル装置でよい。インスリン供給装置(102)は、ユーザに直接に結合されてよい(例えば、粘着性物質又は同様のものによってユーザ(108)の体の一部及び/又は皮膚に直接に付着する)。実施例において、インスリン供給装置(102)の表面は、ユーザ(108)への付着を容易にするための粘着性物質を含んでよい。
【0014】
インスリン供給装置(102)は、制御装置(110)を含んでよい。制御装置(110)は、ハードウェア、ソフトウェア又はその任意の組み合わせにより実現されてよい。制御装置(110)は、例えば、メモリに結合される、マイクロプロセッサ、論理回路、FPGA(field programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)又はマイクロ制御装置でよい。制御装置(110)は、日時だけでなく他の機能(例えば、計算又は同様のもの)を維持することができる。制御装置(110)は、制御装置(110)がインスリン供給装置(102)の動作を指示できるようにする、記憶装置(114)内に記憶された制御アプリケーション(116)を実行するように動作することができる。記憶装置(114)は、例えば、自動インスリン供給の履歴、ボーラスインスリン供給の履歴、食事イベント履歴、エクササイズイベント履歴など、ユーザに対する履歴(113)を保持することができる。加えて、制御装置(110)は、データ又は情報を受信するように動作することができる。記憶装置(114)は、1次メモリ及び2次メモリの両方を含んでよい。記憶装置は、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)、光学式記憶装置、磁気記憶装置、リムーバブル記憶媒体、ソリッドステート記憶装置又は同様のものを含んでよい。
【0015】
インスリン供給装置(102)は、保証として、ユーザ(108)に供給するためのインスリン保管用インスリンタンク(112)を含んでよい。ユーザ(108)への流体管路が提供されてよく、インスリン供給装置(102)は、インスリンタンク(112)からインスリンを放出して、流体管路によってユーザ(108)にインスリンを提供することができる。流体管路は、例えば、ユーザ(108)に薬品供給装置(102)を結合しているチューブを含む(例えば、インスリンタンク(112)にカニューレを結合しているチューブ)。
【0016】
例えば、ユーザ及び/又はユーザの介護人の管理装置(104)、及び/又はグルコースモニタ(106)を含む、インスリン供給装置(102)から物理的に分離された1つ又は複数の装置との、1つ又は複数の通信リンクが存在してよい。通信リンクは、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、近距離通信規格、セル方式の規格又は任意の他の無線プロトコルなど、任意の既知の通信プロトコル又は規格に従って動作する、任意の有線又は無線通信リンクを含んでよい。インスリン供給装置(102)は、例えば、ユーザ(108)に情報を表示し、いくつかの実施態様においてはユーザ(108)から情報を受信するための統合表示装置などの、ユーザインターフェース(117)を含んでもよい。ユーザインターフェース(117)は、タッチスクリーン、及び/又は、例えば、ボタン、ノブ又はキーボードなどの1つ又は複数の入力装置を含んでよい。
【0017】
インスリン供給装置(102)は、ネットワーク(122)とインターフェースで接続することができる。ネットワーク(122)は、LAN(local area network)、WAN(wide area network)又はその中の組み合わせを含んでよい。計算装置(126)は、ネットワークとインターフェースで接続されることがあり、計算装置は、インスリン供給装置(102)と通信することができる。
【0018】
薬品供給システム100は、ユーザ(108)の血中グルコース濃度レベル感知用のグルコースモニタ(106)を含むことがある。グルコースモニタ(106)は、サイクル的な血中グルコース濃度測定を提供することができ、CGM(continuous glucose monitor)、又は血中グルコース測定を提供する別の種類の装置若しくはセンサであってよい。グルコースモニタ(106)は、インスリン供給装置(102)から物理的に分離されてよく、又はその統合された構成要素であってよい。グルコースモニタ(106)は、測定又は検出されたユーザ(108)の血中グルコースレベルを示すデータを制御装置(110)に提供することができる。グルコースモニタ(106)は、例えば、粘着性物質又は同様のものによってユーザ(108)に結合されることがあり、ユーザ(108)の1つ又は複数の病状及び/又は肉体的な特性に関する情報又はデータを提供することができる。グルコースモニタ(106)によって提供される情報又はデータは、インスリン供給装置(102)の薬品供給動作を調整するために使用されることがある。
【0019】
薬品供給システム(100)は、管理装置(104)を含んでもよい。管理装置(104)は、例えば、特化したPDM(personal diabetes manager)装置など特殊用途装置であってよい。管理装置(104)は、例えば、プロセッサなどの特化した制御装置、スマートフォン又はタブレットなどを含む任意の携帯用電子装置などの、プログラミングされた汎用装置であってよい。管理装置(104)は、薬品供給装置(102)及び/又はセンサ(104)の動作をプログラミング又は調整するために使用されることがある。管理装置(104)は、例えば、特化した制御装置、スマートフォン又はタブレットを含む任意の携帯用電子装置であってよい。描写した実施例において、管理装置(104)は、プロセッサ(119)及び記憶装置(118)を含んでよい。プロセッサ(119)は、ユーザの血中グルコースレベルを管理し、ユーザ(108)に薬品又は治療薬の供給を制御するための処理を実行することができる。プロセッサ(119)は、記憶装置(118)内に記憶したプログラミングコードを実行するように動作することができる。例えば、記憶装置は、プロセッサ(119)によって実行するための1つ又は複数の制御アプリケーション(120)を記憶するように動作することができる。記憶装置(118)は、制御アプリケーション(120)、インスリン供給装置(102)用の上述したような履歴(121)、及び、他のデータ及び/又はプログラムを記憶することができる。
【0020】
管理装置(104)は、ユーザ(108)と通信をするためのユーザインターフェース(123)を含むことがある。ユーザインターフェースは、例えば、情報を表示するための、タッチスクリーン(touchscreen)などのディスプレイを含んでよい。タッチスクリーンは、タッチ・スクリーン(touch screen)のとき、入力を受信するために使用されることもある。ユーザインターフェース(123)は、例えば、キーボード、ボタン、ノブ、又は同様のものなどの入力要素を含んでもよい。
【0021】
管理装置104は、例えば、LAN、WAN又はそのようなネットワークの組み合わせなどのネットワーク(124)とインターフェースで接続することができる。管理装置(104)は、1つ又は複数のサーバ又はクラウドサービス(128)とネットワーク(124)上で通信することができる。1つ又は複数のサーバ又はクラウドサービス(128)が例示的な実施態様において果たし得る役割は、以下により詳細に記述されるであろう。
【0022】
図2は、以下により詳細に記述される方法を行うことに適している装置(200)のブロック図を描写する。装置(200)は、異なる例示的な実施態様において、インスリン供給装置(102)、管理装置(104)、計算装置(126)、又は1つ若しくは複数のサーバ(128)であってよい。装置が、計算装置(126)、又は、1つ若しくは複数のサーバ若しくはクラウドサービス(128)の場合、装置(200)は、方法を行うために管理装置(104)及びインスリン供給装置(102)と連携して働くことができる。装置(200)は、プログラミング命令を実行するためのプロセッサ(202)を含む。プロセッサ(202)は、記憶装置(204)にアクセスすることができる。記憶装置(204)は、方法を行うためのアプリケーション(206)を記憶することができる。本アプリケーション(206)は、プロセッサ(202)によって実行されることがある。記憶装置(204)は、ユーザに対するインスリン供給履歴(208)を記憶することができる。インスリン供給履歴(208)は、供給されたインスリンの量だけでなく供給の日時に関するデータを含んでよい。インスリン供給履歴(208)は、それぞれの供給が基本的な供給であるかボーラス供給であるかを特定してもよい。記憶装置(204)は、血中グルコース履歴(210)を記憶することができる。血中グルコース履歴(210)は、血中グルコース濃度測定値だけでなくそのような測定値の日時を含んでよい。これらの値は、グルコースモニタ(106)によって取得されることがある。記憶装置(204)は、さらに、食事イベント及びエクササイズイベントのようなイベント(212)に関する情報を記憶することができる。記憶装置は、ファジー集合(213)に関する、それらの関連したメンバー関数を含む情報を保持することができる。
【0023】
装置(200)は、ネットワーク(122及び124)のようなネットワークとインターフェースで接続するためのネットワークアダプタ(214)を含んでよい。装置(200)は、ビデオ情報を表示するための表示装置(216)を有してよい。表示装置(216)は、例えば、LCD(liquid crystal display)装置、LED(light emitting diode)装置などでよい。装置(200)は、入力が受信され得るように1つ又は複数の入力装置(218)を含んでよい。入力装置の実施例は、キーボード、マウス、ポインティングデバイス、タッチスクリーンディスプレイ、ボタン、ノブ又は同様のものを含む。
【0024】
上記のように、装置(200)(例えば、インスリン供給装置(102)など)は、フローチャート(300)に描写されたステップを行って、ユーザに対するインスリン供給設定値を設定することができる。以下の議論のために、装置(200)がインスリン供給装置(102)であることが前提となるであろう。インスリン供給設定値は、どれほどの投与量のインスリンをユーザに供給するか、及びいつユーザにインスリンを投与するかを含んでよいが、これらに制限されない。投与量は、インスリンの供給が停止されることが決定される事例において0であってよい。図3に示されるように、装置(200)、例えば、インスリン供給装置(102)などは、グルコースモニタ(106)から送信される任意の血中グルコース濃度測定値を受信する(302)。上記のように、グルコースモニタ(106)とインスリン供給装置(102)との間に無線接続があり、無線接続は、グルコースモニタ(106)からインスリン供給装置(102)に血中グルコース濃度測定値を伝達するために使用される。血中グルコース濃度測定値がインスリン供給装置(102)に届かないことがあるように、無線接続が失敗した又は損なわれた場合、例示的な実施態様は、状況を修正するためのステップをとる。インスリン供給装置(102)が現在血中グルコース濃度測定値を受信する場合(304を参照)、現在血中グルコース濃度測定値は、ユーザに対する予測未来血中グルコース濃度値を決定するために使用される(306)。
【0025】
(306)において予測未来血中グルコース濃度値を決定するための1つの適切な手段は、次の方程式によって表されることがある。
【数1】
ここで、
は、制御サイクルkにおける予測未来血中グルコース濃度値であり、
は、制御サイクルkに対する血中グルコース濃度測定値であり、bは、現在の制御サイクルの前i番目の制御サイクルに対する重み付け係数であり、I(k)は、k番目の制御サイクルの間に供給されたインスリンに対するインスリン作用である。
【0026】
次の制御サイクルに対する予測未来血中グルコース濃度値は、次に、(308)においてインスリン供給設定値を設定するために使用される。次のサイクルは、(314)を開始することができ、処理は、(302)で繰り返す。
【0027】
(304)において、血中グルコース濃度測定値が受信されなかったと決定される場合、血中グルコース濃度測定値の推定値が決定される(310)。前述のように、複数の異なるアプローチが、本推定値を生成するために使用されてよい。以下の議論は、推定値を生成するための数個のオプションを詳細に述べる。推定値は、欠測値の代わりに、予測未来血中グルコース濃度値を決定するときに使用される(312)。
【0028】
現在血中グルコース濃度測定値の推定値を決定するための第1のオプションは、現在の制御サイクルに対する血中グルコース濃度測定値の以前の予測に依存することである。図4は、行われ得るステップのフローチャート(400)を描写する。インスリン供給装置(102)は、AID装置であり、その制御処理の一部として、予測血中グルコース濃度測定値を決定する。インスリン供給装置(102)は、現在の制御サイクルに対する予測血中グルコース濃度測定値を決定した。そのため、第1のオプションは、欠落血中グルコース濃度測定値を予測血中グルコース濃度測定値に置換することである(402)。置換値は、次の予測未来血中グルコース濃度測定値を予測するために使用される(404)。置換を説明するために上に説明された方程式を修正して、方程式は、
【数2】
として表されてよい。ここで、
は、制御サイクルkに対する予測未来血中グルコース濃度測定値である。
【0029】
現在血中グルコース濃度測定値の推定値を決定するための別のオプションは、線形補間を使用することである。図5は、本アプローチのための実例となるステップのフローチャート(500)を描写する。本アプローチの背後の考えは、血中グルコース濃度値における傾向を表現(capture)し、傾向に基づいて推定値を生成することである。過去の数個の血中グルコース濃度測定値が取得される(502)。これは、例えば、2~4つの測定値などの適切な数の測定値であってよい。予測未来血中グルコース濃度値は、次に線形補間を使用して決定される(504)。例えば、線形補間は、血中グルコース濃度測定値中の傾向を特定するために使用され、その傾向に基づいて、予測未来血中グルコース濃度値が決定され得る。2つの血中グルコース濃度値を取得することを選択すると仮定すると、その場合、予測未来血中グルコース濃度値は、
【数3】
として計算され得る。
【0030】

は、血中グルコース濃度測定値の間の2つのサイクルにわたる差分平均を決定することとみなされることがあり、予測未来血中グルコース濃度値
を決定するために直近の血中グルコース濃度測定値に加えられる。
【0031】
いくつかの事例において、継続的な制御サイクルにわたる複数の連続する血中グルコース濃度測定値は、無線接続に関する問題が原因で失われることがある。そのような事例において、外挿される値は、連続する制御サイクルに対して連続する推定値を生成するために使用されてよい。図6は、そのような推定値を取得するために行われ得る実例となるステップのフローチャート(600)を描写する。制御サイクルに対する血中グルコース濃度測定値の推定値を取得するために、外挿が行われる(602)。直近に受信された血中グルコース濃度測定値を通過する線を特定し、現在の制御サイクルに対する線上の点を発見することによって、線形外挿が使用されて、欠落血中グルコース濃度測定値の推定値を決定することができる。結果として生じる推定値は、予測未来血中グルコース濃度値を予測することに使用される(604)。次の制御サイクルの間に血中グルコース濃度測定値が欠落している場合(606)、処理は、(602)で始まる外挿を使用して、その制御サイクルに対する推定値を生成するために繰り返される。受信された血中グルコース濃度測定値がある場合、その受信された測定値は、予測未来血中グルコース濃度値を予測する際に使用される(608)。
【0032】
1つの計算的に安価なオプションは、ゼロ次ホールドを使用することである。そのケースのために図7においてフローチャート700に示されるように、直近の予測血中グルコース濃度値が取得される(702)。直近の以前の血中グルコース測定値は、次の予測血中グルコース濃度値として維持される(704)。
【0033】
欠落血中グルコース濃度測定値を推定するための上述されたアプローチは、かなり効果的であり得る。図8Aは、ユーザに対する経時的な血中グルコース濃度値の実例となるプロット(800)を示す。プロットは、欠落値(802)、推定値(804)、及び、失われ、後にバックフィルされた現実の血中グルコース値を示す。プロット(800)は、推定値が欠落血中グルコース濃度値の正確な代理として働くことを説明した。
【0034】
図8Bは、AID装置を使用した経時的なユーザに対するインスリン供給の3つのグラフのプロット(810)を描写する。グラフ(812)は、血中グルコース濃度測定値が失われていない例について、経時的にAIDによるインスリン供給投与量を表現する。グラフ(814)は、推定値が欠落血中グルコース濃度測定値のために使用される例示的な実施態様について、経時的なインスリン供給投与量を表現する。図に示すように、グラフ(814)は、グラフ(812)に密接する。これは、例示的な実施態様が、欠落血中グルコース濃度測定値なしでAIDシステムの動きに密接する結果を作り出すことができる証拠である。対照的に、グラフ(816)は、欠落血中グルコース濃度測定値に反応して供給を停止する従来のAIDシステムについて、経時的なインスリン供給投与量を表現する。グラフ(816)は、グラフ(812)から著しく離れる。
【0035】
例示的な実施態様は、一旦グルコースモニタ(106)とインスリン供給装置(102)との間にある無線接続が復元されると、欠落血中グルコース濃度測定値をバックフィルするための能力を提供することができる。図9は、欠落血中グルコース濃度測定値をバックフィルするために行われ得るステップのフローチャート(900)を描写する。最初に、インスリン供給装置(102)は、欠落血中グルコース濃度測定値を特定しなくてはならない(902)。インスリン供給装置(102)は、血中グルコース濃度測定値が受信されないときに合図することができ、それ故にどの測定値が欠落しているかを知ることができる。無線接続が再確立されたとき、欠落血中グルコース濃度測定値は、グルコースモニタ(106)からインスリン供給装置(102)で受信され得る(904)。グルコースモニタ(106)は、接続が再確立されたときに当然のこととして欠測値を送信してよく、又は、インスリン供給装置(102)は、欠測値を要求してよい。欠落血中グルコース濃度測定値は、次に、インスリン供給装置(102及び200)で記憶された血中グルコース濃度測定値履歴(210)に加えられる(906)。
【0036】
これらの値は、次に、上記のように予測未来血中グルコース濃度値を生成することに使用されることがある。例示的な実施態様において、システムの新しい予測傾向を計算するために活用される一般的なシステムの状態x、x及びxは、n番目の制御サイクルにおけるシステム通信の再確立後に利用できるバックフィルCGM(t)を使用して、
【数4】
として決定され得る。ここで、SPは、ユーザの目標である。
【0037】
バックフィルは、グルコースモニタ(106)からの過去の血中グルコース濃度測定値を使う必要がなく、むしろ予測血中グルコース濃度測定値が代わりに使用されることがある。図10は、そのような事例において行われ得る実例となるステップのフローチャート(1000)を描写する。最初に、上述したように、欠落血中グルコース濃度測定値が特定される(1002)。次に、対応する制御サイクルに対する予測血中グルコース濃度測定値は、血中グルコース濃度履歴(210)内にバックフィルされ(1004)、未来血中グルコース濃度値を予測するために使用され得る。
【0038】
本発明は、その例示的な実施態様に関連して本明細書中に記述されたが、形態及び詳細における様々な変更は、添付の請求項において定義された意図された範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
【国際調査報告】