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特表2023-506598PICK1の脂質共役ペプチド阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(54)【発明の名称】PICK1の脂質共役ペプチド阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20230209BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230209BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230209BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230209BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P43/00 111
A61K47/54
A61K47/60
A61K47/28
A61K47/12
A61K9/107
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/36
A61P21/02
A61P25/08
A61P27/16
A61P25/06
A61P35/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P25/16
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553063
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2021055678
(87)【国際公開番号】W WO2021176094
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20161493.0
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508335820
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,ケネス,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゲザー,ウルリク
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ニコライ,リース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD40
4C076DD41
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA15
4C084BA16
4C084BA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA06
4C084ZA08
4C084ZA23
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZC39
4C084ZC41
4H045BA13
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA20
(57)【要約】
本開示は、Cキナーゼ-1と相互作用するタンパク質(PICK1)に結合し、それによりPICK1を阻害する、脂質共役二価ペプチドリガンドに関する。本開示のPICK1阻害剤は、PICK1の2つのペプチドリガンドを含むペプチド部分、および2つのペプチドリガンドを連結するリンカーを含む非ペプチド部分、および脂質を含む。本開示はさらに、不適応可塑性に関連する疾患または障害の処置のための、前記PICK1阻害剤の治療的および診断的使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド部分および非ペプチド部分を含むPICK1阻害剤であって、前記ペプチド部分が、
a)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド
(式中、
は、H、N、F、もしくはTである、または存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
からなり;
前記非ペプチド部分が:
c)前記第2のペプチドに前記第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含む、PICK1阻害剤。
【請求項2】
前記第1および/または前記第2のペプチドが、3個~5個のアミノ酸残基の範囲の長さを有する、請求項1に記載のPICK1阻害剤。
【請求項3】
前記第1および/または前記第2のペプチドが、HWLKV(配列番号54)、FEIRV(配列番号34)、NSIIV(配列番号5)、NSVRV(配列番号8)、NSLRV(配列番号53)、NSIRV(配列番号6)、NYIIV(配列番号13)、NYIRV(配列番号14)、TSIRV(配列番号18)、YIIV(配列番号49)、SVRV(配列番号44)、EIRV(配列番号46)、LRV、IIV、VRV、およびIRVからなる群より選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項4】
前記第1および/または前記第2のペプチドが、HWLKV(配列番号54)、NSVRV(配列番号8)、SVRV(配置番号44)、およびLRVからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項5】
前記リンカーが、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる1個~24個の範囲のエチレングリコール部分、例えば1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる1個~20個の範囲など、例えば1個~16個の範囲、1個~14個の範囲など、例えば1個~12個の範囲、例えば1個~10個の範囲、1個~8個の範囲など、例えば1個~6個の範囲、1個~4個の範囲など、例えば1個~2個の範囲のエチレングリコール部分を含むNPEGリンカーなどの、NPEGリンカーであり、好ましくはNPEGリンカーが、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる4個のエチレングリコール部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項6】
前記リンカーが、式(III):
【化1】
による構造を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項7】
前記親油性脂肪族基が、脂肪族分岐鎖、脂肪族非分岐鎖、飽和鎖もしくは不飽和鎖などの、脂肪族鎖またはゴナンもしくはステロイドなどの、脂肪族環、好ましくはコレステロールである、請求項1~6のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項8】
前記親油性脂肪族基が、C14~C16脂肪酸などの、C~C26脂肪酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項9】
前記親油性脂肪族基が、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸からなる群より選択される、請求項1~8にのいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項10】
前記親油性脂肪族基が、ミリスチン酸である、請求項1~9のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項11】
前記非ペプチド部分が、Asp、β-Asp、β-Ser、β-ホモ-Serおよびβ-Lysなどの、1つのアミノ酸をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項12】
検出可能な部分をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項13】
式(I):
【化2】

の一般構造を有し、
式中、
Zが、単結合または単一のアミノ酸であり;
nが、0~12の整数であり;
pが、0~12の整数である、
請求項1~12のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【請求項14】
a)一般式:X(配列番号1)のアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:X(配列番号1)のアミノ酸配列を含む第2のペプチド;
(式中:
は、H、N、F、もしくはTである、または存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
c)前記第2のペプチドに前記第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含むPICK1阻害剤を含むミセル。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤または請求項14に記載のミセルを含む医薬組成物。
【請求項16】
医薬品としての使用のための請求項1~15のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【請求項17】
疼痛、薬物中毒、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、耳鳴症、偏頭痛、癌、虚血、アルツハイマー病、および/またはパーキンソン病などの、不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【請求項18】
前記疼痛が、機械的もしくは熱的アロディニアまたは痛覚過敏である、または前記疼痛が、炎症性疼痛である、請求項17に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【請求項19】
不適応可塑性に関連する疾患または障害の診断における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤または請求項14に記載のミセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cキナーゼ-1と相互作用するタンパク質(PICK1)に結合し、それによってPICK1を阻害する、脂質共役二価ペプチドリガンドに関する。本発明はさらに、上記PICK1阻害剤の治療的および診断的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シナプス可塑性は、学習および記憶のための分子基質として機能する。Gluのグルタミン酸作動性シナプス放出は、両方ともリガンド開口型イオンチャネルであるN-メチル-Dアスパラギン酸受容体(NMDAR)およびα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾール-プロピオン酸受容体(AMPAR)を特に活性化する。これらの受容体の活性化は、AMPARにおけるNa+およびNMDARの場合におけるCa2+の流入を可能にする。脳卒中および頭部外傷後の虚血、神経因性疼痛および中毒などの、疾患状態において、異常なシナプス刺激は、不適応可塑性を引き起こし、カルシウム透過性(CP)AMPA型グルタミン酸受容体(CP-AMPAR)の発現を通じてグルタミン酸作動性シナプスの過敏化をもたらす。
【0003】
多くの疾患状態がグルタミン酸系の過剰活性化または過敏化に関与しているが、グルタミン酸系を標的とする現在使用されている唯一の薬物は、麻酔薬として使用されるケタミンなどの、NMDA受容体アンタゴニストである。新規グルタミン酸系標的化薬物の開発は、重度の副作用を伴う一般的な問題のために困難であることが証明されている。神経因性疼痛、虚血後の興奮毒性および薬物中毒などの疾患は、現在、効果的な治療がない。したがって、これらの疾患の処置の必要性がある。
【0004】
Cキナーゼ-1と相互作用するタンパク質(PICK1)は、シナプス可塑性において中心的な役割を果たすPDZドメイン含有足場タンパク質である。PICK1は、主にAMPAR往来の制御を通じて、AMPARの機能に不可欠である。PICK1のPDZドメインは、AMPA受容体(AMPAR)のGluA2サブユニットのC末端ならびにタンパク質キナーゼAおよびCと直接相互作用し、それによりAMPARリン酸化および表面発現を調節し、今度は個々のシナプスの有効性を調整することによりシナプス可塑性を調節する。PICK1は、そのPDZドメインを介してタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)を媒介して促進することにより、タンパク質往来および細胞移動の調節に主に関与する、細胞内足場タンパク質である。PICK1の細胞の役割の中心は、種々のタンパク質パートナーを含む多数の細胞内分子、ならびに膜リン脂質と結合し相互作用するその能力である。PICK1は、二量体化を媒介する、中央膜結合BARドメインに隣接する2つのPDZドメインを有する、機能的二量体である。
【0005】
タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)は、ほとんどの生化学的および細胞プロセスに不可欠であり、多くの場合、足場およびシグナル伝達複合体により媒介される。PPIのヒト促進因子の最も豊富なクラスの1つは、シナプス後肥厚部タンパク質-95(PSD-95)/ディスク-ラージ/ZO-1(PDZ)ドメインのファミリーである。シナプス後肥厚部において、PICK1などのPDZドメインタンパク質は、グルタミン酸受容体の表面発現および活性を動的に調節し、そのため不適応可塑性に関連する疾患または障害の処置のための魅力的な薬物標的を提示する。しかし、これらの標的について十分に強力な阻害剤を開発することは困難であると証明されている。
【0006】
PSD-95のPDZドメインの標的化は、二価ペプチドリガンドを使用することにより成功裏に試みられている。PSD-95は、リガンドの優先性を共有するPDZ1およびPDZ2を含む、より多くのPDZドメインを含み、二価リガンドを用いて両方のPDZドメインを標的化する考えをもたらす。第1の二価阻害剤は、Long,et al.(2003)により提案され、PSD-95 PDZ12に対するほんの僅かな親和性をもたらした。よりうまくいく二価ペプチドリガンドが、後に開発された(Bach et al.2009)。
【0007】
PSD-95を標的化する二量体ペプチドリガンドが、脂肪酸で官能化された。修飾は、PDZドメインに対する親和性に影響することなく、ペプチドの改善された血漿半減期および皮下安定性をもたらすと認められた(国際公開第2015/078477号)。
【0008】
上で記載されるように、不適応可塑性と関連する疾患または障害の処置のためのPICK1-PDZドメインの強力な阻害剤を提供する高い必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、Cキナーゼ-1と相互作用するタンパク質(PICK1)に対する高親和性ペプチド阻害剤を提供する。本発明者らは、驚いたことに、PICK1の二価ペプチドリガンドへの脂質の付着により、効力における有意な向上を得ることができることを認めた。効力におけるそのような向上は、不適応可塑性に関連する疾患または障害の処置のための開発に必要とされる、PICK1-PDZドメインの強力な阻害剤を提供するために非常に需要である。理論に縛られることなく、本開示の二価ペプチドリガンドに共役された脂質の効力の向上は、ミセル形成の結果と考えられ、これは今度は、結合時にPICK1の高次のオリゴマー構造の形成をもたらし、それによりPICK1の阻害をもたらす。そのような効力における向上は、改善された薬物動態を提供するとは脂質共役の現在の使用からは予見できなかった。
【0010】
AMPA受容体の往来を担う足場タンパク質PICK1を標的化することにより、受容体を直接標的化することと比較して、化合物の副作用の可能性のリスクが低減される。本開示の化合物は、神経因性疼痛、虚血後の興奮毒性または薬物中毒などの状態を有する患者の処置を提供する。
【0011】
第1の態様において、本開示は、ペプチド部分および非ペプチド部分を含むPICK1阻害剤を提供し、ペプチド部分は、
a)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド
(式中、
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
からなり;
非ペプチド部分は:
c)第1のペプチドを第2のペプチドに連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含む。
【0012】
第2の態様において、本開示は、
a)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド;
(式中、
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
c)第1のペプチドを第2のペプチドに連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含むPICK1阻害剤を含むミセルを提供する。
【0013】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤またはミセルを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
さらなる態様において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物は、医薬品としての使用のために提供される。
【0015】
さらなる態様において、本開示は、被験者における不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置を提供する方法を提供し、方法は、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物を投与することを含む。
【0016】
さらなる態様において、それを必要とする被験者における乳癌を診断する方法が提供され、方法は:
a.組織試料を上記被験者から得るステップ;
b.試料を、本明細書に開示されるような検出可能な部分を含むPICK1阻害剤で染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;ならびに
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
試料中のPICK1の増加したレベルは、上記個体が乳癌を有することを示唆する。
【0017】
さらなる態様において、乳癌に罹患している被験者について予後を予測する方法が提供され、方法は:
a.組織試料を上記被験者から得るステップ;
b.試料を、本明細書に開示されるような検出可能な部分を含むPICK1阻害剤で染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;ならびに
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
試料中のPICK1の増加したレベルは、予後不良を示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により示されるmyr-NPEG-(HWLKV)の濃度依存性自己集合。NPEG-(HWLKV)は、対照のために使用された。
図2】a)myr-NPEG-(HWLKV)の濃度系列を使用する小角X線散乱分析は、myr-NPEG-(HWLKV)のミセル構造への自己集合を確認する。b)異なる濃度のmyr-NPEG-(HWLKV)のための対距離分布関数(PDDF)。c)PDDF由来試料パラメータ。M/Mwteoは、5個~8個の個々の分子の範囲で、myr-NPEG-(HWLKV)の高次集合を示唆する。
図3】PICK1へのオリゴマーmyr-NPEG-(HWLKV)の結合。トレーサとして5FAM-NPEG-(HWLKV)(myr-NPEG-(HWLKV)に対して5nM)または5FAM-HWLKV(HWLKVに対して20nM)を使用する、myr-NPEG-(HWLKV)(Ki,app=3.0nM、SEMインターバル[2.3~3.8]nM、n=6)、HWLKV(Ki,app=6998nM、SEMインターバル[4972~9849]nM、n=3)およびNPEG-(HWLKV)(Ki,app=179nM、SEMインターバル[169~189]、n=6)の蛍光偏光競合結合曲線(エラーバーは、n=3のSEMとして示される)。
図4】PICK1:myr-NPEG-(HWLKV)の分子比4:1で、それぞれmyr-NPEG-(HWLKV)の非存在下(灰色)または存在下(黒色)でのPICK1のSEC溶出プロファイル。溶出プロファイルは、高次オリゴマーの形成を明らかに示唆する。
図5】結合親和性に対するDAT C5(HWLKV)における単一アミノ酸置換の影響。配列HWLKVの位置X~Xにおける単一アミノ酸置換を有する95のHWLKVペプチドのライブラリを、蛍光標識されたHWLKVとの競合において蛍光偏光結合で試験した。データは、参照ペプチドHWLKV(1に設定)と比較した倍率変化として与えられ、より暗い色合いは、親和性における増加(最大で3倍)を示唆し、より明るい色合いは、低下した親和性を示唆する。白色は、結合の崩壊を示唆し、十字は、不溶性ペプチドを示唆する。%で示されたペプチドは、緩衝液中で可溶でなく、10%DMSOに溶解された。
図6】以前の単一置換スクリーンからの単一アミノ酸置換を組み合わせる連結ペプチドライブラリのFP競合を使用して測定された倍率親和性変化。スクリーンは、最適な5mer配列としてのNSVRV/TSIRV、最適な4mer配列としてのEIRV/YIIV、最適な3mer配列としてのIIV/IRVを示唆する。これらの配列は、最初の5mer配列であるHWLKVから予測できなかった。xは、不溶性のまたは非結合のペプチドを示唆する。
図7】脂質残基はないが、HWLKV(PEG-(C5)、PEG-(C5)、PEG-(C5)、PEG-(C5)、PEG-(C5))のN末端アミンに連結されるまたは配列HWLKVのリジン(K)側鎖アミン(ac-(HWLKPEG4V)に連結されるいずれかの、異なるPEGxリンカーを有する、試験された二価PICK1阻害剤の化学構造。
図8】精製PICK1に向けられる種々のPEGリンカー化合物についてのモノマーC5(HWLKV)ペプチドに対する倍率親和性の増大
図9a-c】a)急性炎症性疼痛に対するmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性。インビボ実験は、複数の投与経路を通じた炎症性疼痛の完全フロイントアジュバントモデルにおける誘発された疼痛を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の能力を明らかにする。a)s.c.投与、b)s.c.投与、2μmol/kg、10μmol/kg、および50μmol/kgの用量応答、c)i.t.投与。破線の曲線は、動物の内部対照として使用される対側の左後足からのデータを表す。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;adm.=投与、BL=ベースライン、CFA=完全フロイントアジュバント、i.pl.=足底内、i.t.=髄腔内、s.c.=皮下。
図10】神経因性疼痛に対するmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性。インビボ実験は、疼痛の神経因性SNIモデルにおける誘発された疼痛を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の能力を明らかにする。破線の曲線は、動物の内部対照として使用される対側の左後足からのデータを表す。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、SNI=神経部分損傷。
図11】マウスをSNI外科手術に供し、外科手術9日後に、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下が、神経因性疼痛状態に対応して、フォン・フライ・フィラメントにより確認された。9日目に、マウスを、疼痛引っ込め閾値における有意な増加を誘発しない、脂質化なしの10μmol/kgのNPEG-(HWLKV)(灰色)で処置した。比較のため、図10からの10μmol/kgのmyr-NPEG-(HWLKV)に対する応答を示す(黒色破線)。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、SNI=神経部分損傷。
図12】慢性疼痛1年後のmyr-NPEG-(HWLKV)の効果。マウスをSNI外科手術に供し、外科手術2日後に、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下が、1年間の毎月1回の観察を用いるフォン・フライ・フィラメントにより確認された(データを示さず)。52週間後に、マウスを、5時間でPWTの非常に有意な緩和を生じる、10μmol/kgのmyr-NPEG-(HWLKV)で処置した。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、SNI=神経部分損傷。
図13】myr-NPEG-(HWLKV)糖尿病性神経障害の有効性。マウスに単回IP注射、200μg/mLストレプトゾシン溶液を与えて、糖尿病(STZモデル)を誘導し、血糖を、注射前、および注射後7日目に試験する。外科手術13日後に、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下が、糖尿病性神経障害に対応するフォン・フライ・フィラメントにより確認された。myr-NPEG-(HWLKV)のS.c.注射は、プレガバリンと類似の有効性でPWTにおける用量依存的増加を示した。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、STZ=ストレプトゾシン。
図14】PDZ結合モチーフの変異型の有効性。マウスは右後足に、50μLのCFAをi.pl.注射された。示されるようにマウスに、C5配列置換を有するmyr-NPEGペプチドを、CFA注射後2日目に0.4μmol/kg、5日目に2μmol/kgでs.c.注射した。0.4μmol/kgのmyr-NPEG-(NSVRV)での処置は、PWTを有意に増加し、一方で2μmol/kgのmyr-NPEG-(HWLKV)およびmyr-NPEG-(SVRV)は、PWTを有意に増加した。2μmol/kgで、myr-NPEG-(NSVRV)は、十分に溶解しなかった。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、CFA=完全フロイントアジュバント。
図15】自発痛の緩和におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性。マウスは、縞模様のチャンバでの生理食塩水、および左に図示された装置の灰色チャンバでのmyr-NPEG-(HWLKV)(30μmol/kg)の単回注射の前に、右後足に、50μLのCFAをi.pl.注射された。別の日に、チャンバの優先性が、各チャンバで過ごす時間により決定された。CFA注射マウスは、自発痛の緩和を示すmyr-NPEG-(HWLKV)が注射されたチャンバで有意に長い時間過ごした。ナイーブマウス(CFAで処置されていない)は、myr-NPEG-(HWLKV)の単回投与に対する場所優先性を示さなかった。
図16】myr-NPEG-(HWLKV)の用量依存的血漿曝露。myr-NPEG-(HWLKV)を、示されるように3つの異なる用量でマウスにS.c.投与し、異なる時間での血漿曝露を、LC-MSにより測定した。血漿濃度ピークは、用量依存的に注射後1時間でピークに達し、線形動力学的に低下するが、非脂質化ペプチドTat-NPEG-(HWLKV)と比較して寿命の延長を示さない。
図17】myr-NPEG-(HWLKV)の溶解度。130mM(250mg/ml)でPBSに溶解されたmyr-NPEG-(HWLKV)の写真。
図18】炎症性疼痛の動物モデルにおける本発明の異なる化合物の有効性試験からの結果。マウスは、50μLのCFAを右後足にi.pl.注射された。CFA注射後2~5日目に、マウスに、示されるように、2μmol/kgの脂質置換基(X)を有するX-NPEG-(HWLKV)をs.c.注射した。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め閾値、CFA=完全フロイントアジュバント。A:不飽和脂肪酸および脂肪二酸。B:脂肪酸長。C:アミノ酸付加物およびコレステロール。
図19】熱過敏症に対するmPD5の有効性。マウスは、50μLのCFAを右後足にi.pl.注射された。CFA注射後3日目に、ハーグリーブステストにおけるレーザビームでの刺激に対するPWLの低下は、熱過敏症を確認した。マウスに10μmol/kg(10μl PBS/g)のmyr-NPEG-(HWLKV)(mPD5)をs.c.注射し、健康な(対側の)足のPWLに影響することなく、CFA注射した(同側の)足におけるPWLの有意な増加を生じた。PBS注射は、n=6マウス/群でいずれの足にもPWLに影響しなかった。すべてのデータは、中央値±SEMとして表される。略語;PWT=足引っ込め潜伏期間、CFA=完全フロイントアジュバント。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書において、非ペプチドは、ペプチドを含まないPICK1阻害剤の一部を指す。ペプチドは、アミド結合(複数を含む)を介して連結された2つのまたはそれより多いα-またはβ-アミノ酸を含むものと理解される。したがって、非ペプチドは、アミド結合(複数を含む)を介して連結された2つのまたはそれより多いα-またはβ-アミノ酸を含まない化合物を指す。非ペプチド部分は、単一のアミノ酸を含む可能性がある。
【0020】
本明細書において、親油性脂肪族基は、親油性の特徴を有する脂肪族基を指す。それは、脂肪族鎖または脂肪族環を含む可能性がある。本明細書で使用されるような用語、脂質は、そのような親油性脂肪族基を指す。親油性脂肪族基は、本開示のPICK1阻害剤を形成するように例えばNPEGリンカーへの親油性脂肪族基の付着のために使用される可能性がある官能基を含む可能性がある。親油性脂肪族基の例は、脂肪酸、ゴナン、ステロールおよびステロイドを含むがこれらに限定されない。
【0021】
本明細書において、二価は、配位のための2つの部位を含む、例えばPICK1などのタンパク質に結合するなど、配位できる2つのペプチドリガンドを含む、化合物を指す。二価ペプチドリガンドは、本明細書で言及されるように、ペプチドの二量体を形成するなど、リンカーを介して共役される2つのペプチドリガンドを含む化合物であり得る。したがって、本明細書に開示されるような二価ペプチドリガンドはまた、二量体ペプチドリガンドと呼ばれる場合がある。
【0022】
本明細書において、官能基は、化合物中に存在する化学基を指す。官能基は、求核性または求電子性であるなどの、反応性を含み、他の化合物へ上記化合物をコンジュゲートするために使用できる。官能基の例は、カルボン酸、アルコールおよびアミンを含むがこれらに限定されない。
【0023】
本明細書において、ミセル構造またはミセルは、PICK1阻害剤の配置を指す。本明細書においてその用語が使用されるとき、ミセルは、非極性テールが内側に面しており、かつ極性ヘッドが外側に面している、水溶液中の配置を有する(実施例3)。
【0024】
本明細書において、回転半径(R)は、物体の回転軸から上記物体の種々の粒子の二乗平均平方根距離を指す。回転半径はしたがって、上記物体のサイズの尺度である。
【0025】
本明細書において、検出可能な部分は、検出可能な信号を引き起こす部分を指す。検出のための当業者に既知である従来の部分は、発蛍光団、発色団、放射性同位体または酵素などを使用できる。
【0026】
本明細書において、タンパク質を構成するアミノ酸は、IUPACからの推奨にしたがって一文字または三文字コードのいずれかを使用して命名され、例えば、http://www.chem.qmw.ac.uk/iupacを参照されたい。特に何も指定されない場合、アミノ酸は、D型またはL型であり得る。好ましい実施形態において、本開示のアミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0027】
本明細書において、α-カルボン酸は、アミノ酸のα-炭素に共役されたカルボン酸を指す。
【0028】
本明細書において、α-アミンは、α-アミノ酸のα-炭素に共役されたアミンを指す。本明細書において、β-アミンは、β-アミノ酸のβ-炭素に共役されたアミンを指す。
【0029】
ここで、エチレングリコール部分は、PEGまたはNPEGリンカーを構成する構造単位を指す。「エチレングリコール部分」のより技術的な名称は、「オキシエチレン」であり、その単位の化学式は、ここに示される:
【0030】
【化1】
【0031】
PEG、ポリエチレングリコール;PEGは、化学式C2n+24n+6n+2および繰り返し構造:
【0032】
【化2】
【0033】
を有するエチレングリコールのポリマーであり、
式中、PEGは、x個の繰り返しエチレングリコール単位を有するPEGリンカー、例えば、4個のエチレングリコール部分(x=4)のポリマーに対応するPEGを指す。PEGは、x=0を有するリンカーを指し、各プロピオン酸部分のC3炭素を介したエーテル結合により共有結合される2つのプロピオン酸を含むリンカーを指す。そのような構造は、本明細書においてPEG図7)とも呼ばれ、式(III):
【0034】
【化3】
【0035】
による構造を有する。
【0036】
NPEGは、本明細書に記載のリンカー種であり、古典的なPEGリンカーに由来し、骨格酸素原子の1つまたは複数は、窒素原子により置き換えられる。NPEGは、x個の繰り返しエチレングリコール単位を有するNPEGリンカー、例えば4個のエチレングリコール部分(x=4)のポリマーに対応するNPEGを指し、骨格酸素原子の1つまたは複数は、窒素原子により置き換えられる。NPEGは、上で定義されたようにx=0を有するリンカーを指し、エーテルは、アミンにより置き換えられる。
【0037】
PDZは、ドメインシナプス後肥厚部タンパク質-95(PSD-95)、ショウジョウバエホモログディスクラージ腫瘍サプレッサー(DlgA)、および閉鎖帯-1タンパク質(zo-1)を共有すると発見された最初の3個のタンパク質の最初の文字を組み合わせた頭文字である。PDZドメインは、シグナル伝達タンパク質に認められる80~90個のアミノ酸の一般的な構造ドメインである。PDZドメインを含むタンパク質は、膜内の受容体タンパク質を細胞骨格成分に固定することにおいて重要な役割を果たす場合が多い。
【0038】
アミド結合は、カルボン酸とアミンの間の反応(水の随伴除去による)により形成される。反応が2つのアミノ酸残基間である場合、反応の結果として形成される結合は、ペプチド結合(peptide linkage)(ペプチド結合(peptide bond))として既知である。
【0039】
エステル結合は、カルボン酸とアルコールの間の反応(水の随伴除去による)により形成される。
【0040】
フォン・フライテストは、フォン・フライ・フィラメントとの接触感度を評価する。これらのフィラメントは、マウスが穴あきの床を有する制限された領域内で快適な位置に落ち着いた後、足の下側に適用される。フィラメントは、設定された力が足に適用されると屈曲するように校正される。フィラメントは、足の引っ込めが検出されるまで、増加する剛性の順に提示される。
【0041】
存在しないは、存在しないアミノ酸に直接隣接するアミノ酸残基が、従来のアミド結合により互いに直接連結されると理解されるべきである。
【0042】
AMPARはまた、AMPA受容体、AMPA型グルタミン酸受容体、またはα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル4-イソキサゾールプロピオン(AMPA)酸受容体とも呼ばれてよく、中枢神経系(CNS)における高速シナプス伝達を媒介するグルタミン酸に対するイオンチャネル型膜貫通受容体である。PICK1は、PDZドメインを介してAMPARと相互作用する。
【0043】
二価PICK1阻害剤の化学構造
本開示は、PICK1に結合できる二価ペプチドリガンドを含むPICK1阻害剤を提供し、二価ペプチドリガンドはさらに、脂質に共役される。二価ペプチドリガンドに共役された脂質は、PICKの非常に強力な阻害剤を提供し、これは不適応可塑性に関連する疾患または障害の処置のために使用できる。
【0044】
一実施形態において、ペプチド部分および非ペプチド部分を含むPICK1阻害剤が提供され、ペプチド部分は、
a)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド
(式中、
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
からなり;
非ペプチド部分は:
c)第2のペプチドに第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含む。
【0045】
一実施形態において、ペプチド部分および非ペプチド部分を含むPICK1阻害剤が提供され、ペプチド部分は、
a)一般式:Xのアミノ酸配列からなる第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列からなる第2のペプチド
からなり;
(式中、
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
非ペプチド部分は:
c)第2のペプチドに第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含む。
【0046】
一実施形態において、PICK1阻害剤は、式(I):
【0047】
【化4】
【0048】
の一般構造を有し、
式中、
Zは、単結合または単一アミノ酸である;
nは、0~12の整数である;
pは、0~12の整数である。
【0049】
ペプチド部分
本開示のPICK1阻害剤のペプチドリガンド部分は、PICK1のPDZドメインへのPICK1阻害剤の結合を提供する。本開示のPICK1阻害剤のペプチド部分は、第1および第2のペプチドを含む。一実施形態において、第1および第2のペプチドは同一である。別個の実施形態において、第1および第2のペプチドは、互いに異なる。一実施形態において、第1および第2のペプチドは、二価ペプチドリガンドを形成するように、リンカーを介して連結される。
【0050】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、HWLKV(配列番号54)、FEIRV(配列番号34)、NSIIV(配列番号5)、NSVRV(配列番号8)、NSLRV(配列番号53)、NSIRV(配列番号6)、NYIIV(配列番号13)、NYIRV(配列番号14)、TSIRV(配列番号18)、YIIV(配列番号49)、SVRV(配列番号44)、EIRV(配列番号46)、LRV、IIV、VRV、およびIRVからなる群より選択される。
【0051】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、HWLKV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、TSIRV、EIRV、YIIV、IIV、VRVおよびIRVからなる群より選択される。
【0052】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、NSVRV、NSLRV、NSIRV、TSIRV、EIRV、YIIV、IIV、VRV、およびIRVからなる群より選択される。
【0053】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、HWLKV、FEIRV、NSIIV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、YIIV、SVRV、VRV、およびLRVからなる群より選択される。
【0054】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、FEIRV、NSIIV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、YIIV、SVRV、VRV、およびLRVからなる群より選択される。
【0055】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、HWLKV、NSVRVまたはNSIRVである。
【0056】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、HWLKVである。
【0057】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、一般式:Xのアミノ酸配列を含み、式中:
は、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、V、LもしくはIである;
は、IまたはRである;および
は、Vである。
【0058】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、一般式:Xのアミノ酸配列を含み、式中:
は、NもしくはTであるか存在しない;
は、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、V、L、またはIである;
は、IまたはRである;および
は、Vである。
【0059】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、一般式:Xのアミノ酸配列を含み、式中:
は、NもしくはFであるか存在しない;
は、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、V、L、またはIである;
は、IまたはRである;および
は、Vである。
【0060】
一実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、3個~15個の範囲のアミノ酸、例えば3個~14個の範囲のアミノ酸、例えば3個~13個の範囲のアミノ酸、例えば3個~12個の範囲のアミノ酸、例えば3個~11個の範囲のアミノ酸、例えば3個~10個の範囲のアミノ酸、例えば3個~9個の範囲のアミノ酸、例えば3個~8個の範囲のアミノ酸、例えば3個~7個の範囲のアミノ酸、例えば3個~6個の範囲のアミノ酸、例えば3個~5個の範囲のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列を含む。
【0061】
好ましい実施形態において、第1および/または第2のペプチドは、3個~5個の範囲のアミノ酸長を有する、例えば3個のアミノ酸長を有する、例えば4個のアミノ酸長を有する、例えば5個のアミノ酸長を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
本開示の実施例12および図14において示されるように、5個、4個または3個のアミノ酸長を有する第1および第2のペプチドからなるペプチド部分を含むPICK1阻害剤は、炎症性疼痛の緩和などの、疼痛の緩和において有効性を示す。
【0063】
PICK1に対する類似またはより高い親和性は、本開示の第1および/または第2のペプチドの配列を含む、より長いペプチドについて、以前に示されている(国際公開第2020/083905号)。
【0064】
非ペプチド部分
本開示のPICK1阻害剤は、非ペプチド部分を含む。PICK1阻害剤の非ペプチド部分は、二価ペプチドリガンドを形成するように、第1および第2のペプチドを組み合わせるリンカーを含む。非ペプチド部分は、上記リンカーに共役されてよい脂質をさらに含む。一実施形態において、脂質は、リンカーの窒素原子に直接連結される。
【0065】
別個の実施形態において、非ペプチド部分は、単一のアミノ酸をさらに含む。上で定義されるように、非ペプチド部分における単一のアミノ酸の存在は、非ペプチド部分にペプチドを導入しないことが理解される。上で定義されるように、ペプチドは、アミド結合を介して連結された2つのまたはそれより多いα-またはβ-アミノ酸を含むと理解される。単一のアミノ酸の存在は、定義されるような、そのようなペプチドを導入しない。一実施形態において、非ペプチド部分に存在する単一のアミノ酸は、検出可能な部分の付着のためのハンドルを提供するように機能する。
【0066】
リンカー
一実施形態において、リンカーは、NPEGリンカーである。NPEGリンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素で置き換えられる0個~24個の範囲のエチレングリコール部分、例えば1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる、0個~20個の範囲、例えば0個~16個の範囲、例えば0個~14個の範囲、例えば0個~12個の範囲、例えば0個~10個の範囲、例えば0個~8個の範囲、例えば0個~6個の範囲、例えば0個~4個の範囲、例えば0個~2個の範囲のエチレングリコール部分を含む可能性がある。好ましくはNPEG-リンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる4個のエチレングリコール部分を含む。一実施形態において、NPEG-リンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる3個のエチレングリコール部分を含む。一実施形態において、NPEG-リンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる2個のエチレングリコール部分を含む。一実施形態において、NPEG-リンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる1個のエチレングリコール部分を含む。一実施形態において、NPEG-リンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる0個のエチレングリコール部分を含む、すなわち、リンカーは、酸素原子が窒素原子で置き換えられる、図7に開示されるようなPEGの構造を有する。上で定義されるように、NPEGリンカーは、x=0を有するリンカーを指し、かつ各プロピオン酸部分のC3炭素を介してアミン結合において組み合わされる2つのプロピオン酸部分を含むリンカーを指す。一実施形態において、リンカーは、式(III)、
【0067】
【化5】
【0068】
による構造を有する。
【0069】
一実施形態において、リンカーは、NPEGリンカーである。NPEGリンカーは、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる1個~24個の範囲のエチレングリコール部分、例えば1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる、1個~20個の範囲、例えば1個~16個の範囲、例えば1個~14個の範囲、例えば1個~12個の範囲、例えば1個~10個の範囲、例えば1個~8個の範囲、例えば1個~6個の範囲、例えば1個~4個の範囲、例えば1個~2個の範囲のエチレングリコール部分を含んでよい。
【0070】
NPEGリンカーの1つまたは複数の窒素原子は、例えばNPEGリンカーの中央に位置する、またはNPEGリンカーの一端に向かって位置するなど、NPEGリンカーに沿った任意の位置に位置してよい。
【0071】
一実施形態において、NPEG-リンカーの1つの骨格酸素は、窒素原子で置き換えられる。
【0072】
NPEGリンカーは、各端に官能基を含んで、第1および第2のペプチドへの共役のために提供される。一実施形態において、NPEGリンカーは、各端にカルボン酸を含む。NPEGリンカーのカルボン酸は、第1および第2のペプチドのN末端に結合されてよく、アミド結合を介して第1および第2のペプチドへのリンカーの共役を提供する。
【0073】
親油性脂肪族基
本開示のPICK1阻害剤の非ペプチド部分は、脂質を含む。脂質は、リンカーに直接共役されてよい、または単一のアミノ酸を介してリンカーに共役されてよい。
【0074】
本開示の脂質は、親油性脂肪族基である。本開示のPICK1阻害剤の非ペプチド部分に存在する親油性脂肪族基は、脂肪族鎖または脂肪族環であり得る。
【0075】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、脂肪族鎖である。脂肪族鎖は、分岐したまたは非分岐の鎖であり得る。脂肪族鎖は、飽和したまたは不飽和の鎖であり得る。
【0076】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、脂肪族環である。脂肪族環は、ステロールなどのゴナン構造を含んでよい。代わりに、脂肪族環は、コレステロールなどのステロイドを含んでよい。実施例16において、コレステロールを有するコンストラクトが疼痛の動物モデルにおいて活性を有することが、示される。好ましくは、コレステロール部分は、例えばアスパラギン、例えばベータAspなどのアミノ酸を介してN-PEGに連結される。
【0077】
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤の非ペプチド部分に存在する親油性脂肪族基は、カルボン酸、アルコールまたはアミンなどの官能基をさらに含む。上記官能基は、直接リンカーにまたは単一のアミノ酸を介してリンカーに、などの、PICK1阻害剤の残りの部分への親油性脂肪族基の共役を与える。
【0078】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、アルコールを含む。
【0079】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、カルボン酸を含む。
【0080】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、カルボン酸を含む脂肪族鎖である、したがって脂肪酸である。
【0081】
親油性脂肪族基は、C~C26脂肪酸であり得る。親油性脂肪族基は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であり得る。一実施形態において、親油性脂肪族基は、C16脂肪酸またはC18脂肪酸である。
【0082】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、4個~26個の範囲の炭素原子、例えば4個~24個の範囲、例えば4個~22個の範囲、例えば4個~20個の範囲、例えば4個~18個の範囲、例えば4個~16個の範囲、例えば4個~14個の範囲、例えば4個~12個の範囲、例えば4個~10個の範囲、例えば4個~8個の範囲、例えば4個~6個の範囲の炭素原子を含む。
【0083】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、4個~26個の範囲の炭素原子、例えば6個~26個の範囲、例えば8個~26個の範囲、例えば10個~26個の範囲、例えば12個~26個の範囲、例えば14個~26個の範囲、例えば16個~26個の範囲、例えば18個~26個の範囲、例えば20個~26個の範囲、例えば22個~26個の範囲、例えば24個~26個の範囲の炭素原子を含む。
【0084】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、4個~26個の範囲の炭素原子、例えば6個~24個の範囲、例えば8個~22個の範囲、例えば10個~20個の範囲、例えば12個~18個の範囲、例えば14個~18個の範囲、例えば14個~16個の範囲の炭素原子または16個~18個の炭素原子を含む。
【0085】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エルカ酸からなる群より選択される。好ましい実施形態において、親油性脂肪族基は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸からなる群より選択される。より好ましい実施形態において、親油性脂肪族基は、ミリスチン酸である。
【0086】
親油性脂肪族基が脂肪酸部分である実施形態において、それは飽和したまたは不飽和のシス配置またはトランス配置であり得る。実施例16は、C14脂肪酸部分について、不飽和(シスまたはトランス)および飽和部分がインビボで類似の効果を有することを示す。一実施形態において、脂肪酸部分は、1つ、2つまたは3つの二重結合を有するなどの多価不飽和である。いくらかの実施形態において、1つの二重結合は、n-3またはn-6位にある。
【0087】
脂肪酸部分は、カルボン酸基と反対の端に追加の官能基を有することにより修飾されてよい。そのような官能基は、追加のカルボン酸、アルコール、ケトンまたはアルデヒドであり得る。実施例16は、親油性脂肪族基が末端カルボン酸を含んでよく、疼痛の動物モデルにおいて有効性を有することを示す。
【0088】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、ミリスチン酸であり、本明細書でミリストイルまたはmyrとも呼ばれる。
【0089】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサヘキサエン酸(DNA)、およびシス-9-オクタデセン酸からなる群より選択される。
【0090】
一実施形態において、親油性脂肪族基は、例えばテトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、またはオクタデカン二酸などの、二酸である。
【0091】
随意選択のアミノ酸
非ペプチド部分は、単一のアミノ酸をさらに含んでよい。非ペプチド部分に存在するそのような単一のアミノ酸は、親油性脂肪族基の付着のためまたは検出可能な部分の付着のためのハンドルを提供するように機能してよい。
【0092】
一実施形態において、1つのアミノ酸は、α-アミノ酸またはβ-アミノ酸である。1つのアミノ酸は、Asp、β-Asp、β-Ser(3-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン酸)、β-ホモ-Ser(3-アミノ-4-ヒドロキシ酪酸)およびβ-Lys(3,6-ジアミノヘキサン酸)からなる群より選択されてよい。
【0093】
実施例11において本発明者らが示すように、親油性脂肪族基は、インビボで機能的効果を有するために、本発明にとって必須である。
【0094】
連結性
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤のペプチドおよび非ペプチド部分は、式(I)の一般構造を有するPICK1阻害剤を形成するために共役される。
【0095】
【化6】
【0096】
例えば親油性脂肪族基が脂肪酸であると説明される場合、脂肪酸のカルボン酸のカルボニル基のみがPICK1阻害剤に存在すると理解される。例えばリンカーのアミンへの脂肪酸の共役時に、アミド結合が形成され、同時に水が失われる。したがって、本開示のPICK1阻害剤を形成するために組み合わせられる異なる成分は、説明された化合物から生じる可能性がある。親油性脂肪族基が二酸である特定の場合、一実施形態において、カルボン酸の1つのみが反応してリンカーのアミンとのアミドを形成し、一方で第2のカルボン酸は、最終のPICK1阻害剤においてカルボン酸のままである。
【0097】
本開示のNPEGリンカーは例えば、各端でカルボン酸を含んでよい。PICK1阻害剤中に認められる、得られるNPEGリンカーは、カルボン酸を含まないがNPEGリンカーを第1および/または第2のペプチドに共役する場合に形成されるアミド結合に存在するカルボニル基のみを含むと理解される。したがって、一実施形態において、NPEGリンカーは、NPEGリンカーのカルボン酸と第1および/または第2のペプチドのN末端の間に形成されたアミド結合を介して第1および/または第2のペプチドに共役される。一実施形態において、NPEGリンカーは、NPEGリンカーのカルボン酸と第1および/または第2のペプチドにおけるアミノ酸の側鎖官能基の間に形成されたアミド結合を介して、例えばアミドを形成するためにNPEGリンカーのカルボン酸と第1および/または第2のペプチドにおけるリジン側鎖のアミンの間のアミド結合の形成により、第1および/または第2のペプチドに共役される。
【0098】
NPEGリンカーの窒素原子はさらに、直接または単一のアミノ酸を介してのいずれかで親油性脂肪族基に共役されてよい。したがって一実施形態において、親油性脂肪族基は、カルボン酸などの官能基を介して、例えばアミドを形成することにより、NPEGリンカーの窒素原子に共役される。
【0099】
一実施形態において、単一のアミノ酸は、アミドを形成するためにα-カルボン酸を介してNPEGリンカーの窒素原子に共役され、さらに親油性脂肪族基に共役される。親油性脂肪族基へのさらなる共役は、アミド結合を形成するためにα-またはβ-アミン(それぞれα-またはβ-アミノ酸)を介するか、アミド結合またはエステル結合を形成するためにカルボン酸、アルコールまたはアミンなどの側鎖官能基を介してよい。
【0100】
好ましい構造
一実施形態において、PICK1阻害剤は、式(II)
【0101】
【化7】
【0102】
による構造を有しており、
式中、
nは0~12の整数、好ましくは2である;
pは0~12の整数、好ましくは2である。
【0103】
好ましい実施形態において、PICK1阻害剤は、式(II)による構造を有しており、式中、nは2であり、pは2である。そのような構造は、本明細書ではmyr-NPEG-(HWLKV)と呼ばれる。
【0104】
他の好ましい構造を、以下に開示する。不飽和化は、トランス配置またはシス配置であり得る。
【0105】
【化8】
【0106】
【化9】
【0107】
【化10】
【0108】
【化11】
【0109】
作用の機序
本開示、実施例3において示されるように、驚いたことに、本発明のPICK1阻害剤はミセル構造を形成できることが認められた。脂質を含まずそのためミセル構造を形成できない二価ペプチドリガンドと比較して、本発明のPICK1阻害剤の改善された効力は、このミセル構造の形成のためであると仮定される。
【0110】
PICK1は二量体構造で存在することが既知であり、二量体化はBARドメインにより媒介される。四量体などの二量体の二量体を提供する二量体PICK1の二量体化が、タンパク質機能の自己阻害をもたらすことが報告されている(Karlsen,M.L.et al.2015)。したがって、ミセルPICK1阻害剤はいくつかのPICK1タンパク質を結合しまとめることができ、それによりPICK1の観察された効果的な阻害をもたらすと仮定できる。
【0111】
したがって、一実施形態において、PICK1阻害剤は、自己集合してミセル構造を形成するなど、溶液中で高次構造に自己集合する。
【0112】
一実施形態において、高次構造は、少なくとも15Å、例えば少なくとも17Å、例えば少なくとも19Å、例えば少なくとも20Å、例えば少なくとも21Å、例えば少なくとも22Å、例えば少なくとも23Åの回転半径(Rg)を有する。
【0113】
一実施形態において、高次構造は、少なくとも15Å、例えば少なくとも17Å、例えば少なくとも19Å、例えば少なくとも20Å、例えば少なくとも21Å、例えば少なくとも22Å、例えば少なくとも23Å、例えば少なくとも24Å、例えば少なくとも25Å、例えば少なくとも26Å、例えば少なくとも27Å、例えば少なくとも28Å、例えば少なくとも29Å、例えば少なくとも30Å、例えば少なくとも31Åの回転半径(Rg)を有する。
【0114】
一実施形態において、高次構造は、4個~20個の範囲のPICK1阻害剤、例えば4個~18個の範囲、例えば4個~16個の範囲、例えば4個~14個の範囲、例えば4個~12個の範囲、例えば4個~10個の範囲、例えば4個~8個の範囲、例えば6個~8個の範囲のPICK1阻害剤から形成される。
【0115】
一実施形態において、高次構造は、4個~40個の範囲のPICK1阻害剤、例えば6個~40個の範囲、例えば8個~40個の範囲、例えば10個~40個の範囲、例えば12個~40個の範囲、例えば14個~40個の範囲、例えば16個~40個の範囲、例えば18個~40個の範囲、例えば20個~40個の範囲、例えば22個~40個の範囲、例えば24個~40個の範囲、例えば26個~40個の範囲、例えば28個~40個の範囲、例えば30個~40個の範囲、例えば32個~40個の範囲、例えば34個~40個の範囲、例えば36個~40個の範囲、例えば38個~40個の範囲のPICK1阻害剤から形成される。
【0116】
一実施形態において、高次構造は、4個~40個の範囲のPICK1阻害剤、例えば4個~38個の範囲、例えば4個~36個の範囲、例えば4個~34個の範囲、例えば4個~32個の範囲、例えば4個~30個の範囲、例えば4個~28個の範囲、例えば4個~26個の範囲、例えば4個~24個の範囲、例えば4個~22個の範囲、例えば4個~20個の範囲、例えば4個~18個の範囲、例えば4個~16個の範囲、例えば4個~14個の範囲、例えば4個~12個の範囲、例えば4個~10個の範囲、例えば4個~8個の範囲、例えば4個~6個の範囲のPICK1阻害剤から形成される。
【0117】
一実施形態において、高次構造は、4個~40個の範囲のPICK1阻害剤、例えば6個~38個の範囲、例えば6個~36個の範囲、例えば8個~34個の範囲、例えば8個~32個の範囲、例えば10個~30個の範囲、例えば10個~28個の範囲、例えば12個~26個の範囲、例えば14個~24個の範囲、例えば16個~24個の範囲、例えば16個~22個の範囲、例えば18個~22個の範囲、例えば19個~21個の範囲、例えば20個のPICK1阻害剤から形成される。
【0118】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤を含むミセルが提供される。
【0119】
一実施形態において、
a)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド;
(式中:
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
c)第2のペプチドに第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含むPICK1阻害剤を含むミセルが、提供される。
【0120】
本明細書において示されるように、本開示のPICK1阻害剤は、PICK1のPDZドメインに結合できる。
【0121】
天然のPICK1二量体構造において、PICK1二量体のPDZドメイン間の距離は、約180Åであると推定される。4個のエチレングリコール部分の長さを有するNPEGリンカーを含むPICK1阻害剤において、第1および第2のペプチド間の距離は、約43Åの範囲と推定される。そのため、そのようなPICK1阻害剤は、単一のPICK1二量体に認められる2つのPDZドメインを結合できない。これは、本明細書に開示されるような単一のPICK1阻害剤が、2つのPICK1二量体を結合してまとめ、PICK1の阻害をもたらすことにより機能するという仮定を支持する。したがって、本明細書に開示されるようないくつかのPICK1阻害剤により形成されたミセル構造は、PICK1の2つのまたはそれより多い二量体を結合しまとめることができ、それにより本明細書に開示されるようなPICK1の効果的な阻害をもたらす可能性がある。
【0122】
したがって、一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤またはミセル構造は、2つのまたはそれより多いPICK1タンパク質のPDZドメインに結合し、PICK1の阻害をもたらす。一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤により結合された2つのまたはそれより多いPICK1タンパク質は、PICK1の2つのまたはそれより多い二量体に存在する。
【0123】
一実施形態において、PICK1阻害剤のPICK1への結合は、PICK1の三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体などのPICK1の高次のオリゴマー状態の形成をもたらす。一実施形態において、PICK1阻害剤のPICK1への結合は、PICK1の四量体、六量体または八量体の形成をもたらす。
【0124】
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、2個のまたはそれより多いPICK1タンパク質をまとめる。一実施形態において、化合物は、4個のPICK1タンパク質、例えば5個のPICK1タンパク質、例えば6個のPICK1タンパク質、例えば7個のPICK1タンパク質、例えば8個のPICK1タンパク質、例えば9個のPICK1タンパク質、例えば10個のPICK1タンパク質をまとめる。
【0125】
本開示のPICK1阻害剤への結合によるPICK1の阻害は、PICK1タンパク質がもはやAMPARと相互作用できなくなり、それによりPICK1がAMPARの往来を制御するのを防ぐ可能性がある。したがって、一実施形態において、PICK1阻害剤は、PICK1とAMPARの間のタンパク質-タンパク質相互作用を阻害できる。これはしたがって、PICK1がGluA2をダウンレギュレートするのを防ぎ、かつCP-AMPAR形成を防ぐ可能性があり、それによりシナプスにおいて異常なレベルのグルタミン酸に反応する不適応型の可塑性を防ぐ。これは今度は、例えば神経因性疼痛およびコカイン中毒を防ぐことができる。
【0126】
本開示のPICK1阻害剤は、PICK1のPDZドメインに対して高親和性を保持する。一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、10nM未満、例えば9nM未満、例えば8nM未満、例えば7nM未満、例えば6nM未満、例えば5nM未満、例えば4nM未満、例えば3nM未満、例えば2nM未満、例えば1nM未満、例えば0.5nM未満のPICK1のKiを有する。
【0127】
本開示のPICK1阻害剤の、PICK1のPDZドメインへの親和性は、本明細書、実施例4に記載されるような蛍光偏光(FP)により測定できる。
【0128】
高次構造を形成する本開示のPICK1阻害剤の能力は、本明細書、実施例3に記載されるようなサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)または小角X線散乱(SAXS)により測定できる。
【0129】
検出可能な部分
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、検出可能な部分をさらに含む。発蛍光団、発色団、放射性同位体または酵素などの検出のために当業者に既知である従来の部分を、使用できる。PICK1阻害剤における検出可能な部分の存在は、PICK1阻害剤への結合時にPICK1の標識および可視化を可能にする。
【0130】
一実施形態において、検出可能な部分は、第1および/または第2のペプチドに共役される。一実施形態において、検出可能な部分は、非ペプチド部分の単一のアミノ酸に共役される。
【0131】
一実施形態において、検出可能な部分は、5,6-カルボキシルテトラメチルローダミン(TAMRA)またはインドジカルボシアニン(Cy5)などの、発蛍光団である。
【0132】
別の実施形態において、検出可能な部分は、放射性同位体を含むか、それからなる。放射性同位体は、125I、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I、18Fおよび201Tlからなる群より選択されてよい。
【0133】
疾患および障害
本発明は、不適応可塑性に関連する疾患および/または障害の処置のための医薬組成物を提供する。一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤または本明細書に記載されるようなミセルを含む医薬組成物が、提供される。医薬組成物は、医薬適合性のある担体中に本開示のPICK1阻害剤またはミセルを含んでよい。
【0134】
AMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)は、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)とは対照的に、通常、四量体受容体複合体におけるGluA2サブユニットの存在のため一価カチオン(すなわちNaおよびK)に対してのみ透過性である。強力で持続的な脱分極に応答する可塑性の変化は、しかし、いくつかのシナプスのタイプにおいて増加したコンダクタンスおよびCa2+透過性(CP-AMPAR)を有するAMPARへの切り替えをもたらし、この切り替えは、シナプスを過敏性にする。機械的に、CP-AMPARの発現は、PICK1 PDZドメインとAMPARのGluA2サブユニットのC末端の間の相互作用により媒介される、AMPARを含むGluA2の初期PICK1依存性ダウンレギュレーションを含む。これは今度は、シナプスにおけるGluA2欠損受容体の挿入を可能にし(スロット仮説)、シナプスCa2+透過性かつ過敏性にする。
【0135】
CP-AMPARは、ラットにおけるコカイン自己投与から遮断後の媒介性渇望に決定的に関与する(Conrad et al 2008)。PICK1は、コカインの渇望の発生中に中脳でのVTAドーパミン作動性ニューロンおよび側坐核でのCP-AMPARの発現に関与し(Luscher et al 2011およびWolf et al 2010)コカイン中毒における標的としてPICK1を示唆する。PICK1のCPP-共役二価ペプチド阻害剤は、ラットにおけるコカイン探索の回復を用量依存的に減衰させることが報告されている(Turner et al.2020)。したがって一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤の投与は、コカイン中毒などの薬物中毒におけるコカイン渇望を低減する。
【0136】
脊髄後角(DH)ニューロンにおけるAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)のアップレギュレーションは、長期間持続するDHにおけるシナプス可塑性の特異的形態である中枢性感作を引き起こす(Woolf et al 2000およびJi et al 2003)。さらに、末梢炎症性疼痛および神経損傷誘導性疼痛の両方は、Ca2+透過性AMPAR(CP-AMPAR)のアップレギュレーションを引き起こす(Vikman et al 2008、Gangadharan et al 2011およびChen et al 2013)。神経因性疼痛におけるPICK1の役割についての初期の証拠は、PICK1のペプチド阻害剤が慢性狭窄損傷(CCI)により誘導される疼痛を緩和したことを示すGarry et al 2003から来た。したがって、PICK1のshRNA媒介ノックダウンが、完全フロイントアジュバント(CFA)誘導炎症性疼痛を軽減することが示され、PICK1ノックアウトマウスが、脊髄神経結紮(SNL)に応答して疼痛を完全に発症しないことが認められた(Wang et al 2011およびAtianjoh et al 2010)。確かに、本開示のPICK1阻害剤の投与は、神経因性疼痛のモデルにおける機械的アロディニア(SNIモデル-実施例8)、炎症性疼痛(CFAモデル-実施例7および16)、および炎症性疼痛のモデルにおける熱的(熱)アロディニア(CFAモデル-実施例17)を軽減する。そのため、一実施形態において、疼痛は、機械的もしくは熱的アロディニアまたは痛覚過敏である。別の実施形態において、疼痛は、炎症性疼痛である。
【0137】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)病理およびAMPA受容体サブユニットGluA2のRAN編集の失敗は両方とも、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の大部分の運動ニューロンにおいて同時に発生する病因関連分子異常である。RNA2(ADAR2)に対し作用するRNA編集酵素アデノシンデアミナーゼの条件付きノックアウトを伴うマウスモデルの疼痛症状は、AMPARアンタゴニストであるペランパネルにより軽減され、本開示のPICK1阻害剤による症状緩和の可能性を示唆する。
【0138】
本開示の化合物の疼痛および中毒に対する効果を考慮すると、併存疾患を有する患者、例えば中毒にも悩まされている疼痛患者に対する良好な有効性も予想することは、合理的である。
【0139】
類似の中枢性感作は、腰痛および偏頭痛の実験モデルとして機能する、痛覚過敏プライミングにおけるアロディニアが根底にあると考えられる(Kandasamy et al 2015)。
【0140】
同様に、耳鳴症の病因は、中枢性感作を含む神経因性疼痛といくらかの類似点を保持する(Vanneste et al 2019、Peker et al 2016、およびMoller et al 2007)。
【0141】
CP-AMPARの表面安定化/挿入におけるPICK1の役割は、培養された海馬ニューロンにおける酸素-グルコース枯渇について説明されている(Clem et al 2010およびDixon et al 2009)。これは、虚血性傷害後の神経細胞死の保護における推定上の標的としてPICK1を誘発する。
【0142】
PICK1の喪失は、アミロイドベータに応答する脊椎の喪失に対してインビトロおよびインビボでニューロンを保護することが示されている(Marcotte et al 2018およびAlfonso et al 2014)。その結果、PICK1は、アルツハイマー病の対症療法およびおそらく予防処置のための推定上の標的である。
【0143】
PICK1は、マイトファジーに関与しているE3ユビキチンリガーゼであるパーキンと相互作用し阻害する。パーキンの機能喪失は、散発性および家族性のパーキンソン病(PD)の両方に関連している。結果として、PICK1 KOマウスは、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)媒介毒性に耐性である(He et al 2018)。その結果、PICK1は、パーキンソン病の対症療法およびおそらく予防処置のための推定上の標的である。
【0144】
過剰の細胞内カルシウム濃度をもたらすグルタミン酸受容体の過剰刺激は、癲癇における神経細胞死の主な原因である。GluR2(GluA2)の仮説は、癲癇発作などの神経学的損傷に続いて、AMPA受容体サブユニットGluR2タンパク質がダウンレギュレートされることを述べている。これは、GluR2欠失のカルシウム透過性AMPA受容体の形成の可能性を高め、これは神経伝達物質であるグルタミン酸の毒性をさらに強める可能性がある(Lorgen et al 2017)。
【0145】
PICK1は、乳癌、肺癌、胃癌、結腸直腸癌、および卵巣癌において隣接する正常な上皮と比較して腫瘍細胞で過剰発現される。乳癌組織マイクロアレイを免疫染色することにより判定されるように、高レベルのPICK1発現は、全体的な生存期間の短縮と相関する。したがって、PICK1 siRNAでのMDA-MB-231細胞のトランスフェクションは、インビトロでの細胞増殖およびコロニー形成を減少させ、かつヌードマウスにおける腫瘍原生を阻害した(Zhang et al 2010)。したがって、PICK1は、癌の処置および予後徴候のための推定上の標的である。
【0146】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物は、医薬品としての使用のために提供される。
【0147】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物は、不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置における使用のために提供される。
【0148】
一実施形態において、被験者における不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置を提供する方法が提供され、方法は、本開示のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物を被験者に投与することを含む。
【0149】
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物の使用は、不適応可塑性に関連する疾患および/または障害の処置のための医薬品の製造のために提供される。
【0150】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、疼痛、薬物中毒、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、耳鳴症、偏頭痛、癌、虚血、アルツハイマー病、および/またはパーキンソン病である。
【0151】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、神経因性疼痛などの、疼痛である。疼痛は、炎症性疼痛または神経因性疼痛であり得る。処置される疼痛は、慢性神経因性疼痛または慢性炎症性疼痛であり得る、慢性疼痛であり得る。神経因性疼痛は、外傷性損傷、外科手術、または糖尿病もしくは自己免疫疾患などの疾患の結果として末梢または中枢神経系を損傷することにより誘導される可能性がある。神経因性疼痛は、化学療法を用いる処置により誘導される可能性がある。疼痛が持続する場合、その状態は、慢性神経因性疼痛である。慢性炎症性疼痛は、神経損傷後の炎症により誘導される可能性があり、また、免疫細胞により放出されたメディエータが疼痛経路の感作、すなわち脊髄に位置する感覚ニューロンの「ワインドアップ」を引き起こす異物により誘導される炎症により開始される可能性がある。したがって、効果的な鎮痛剤は、脊髄組織に到達でき、かつ疼痛緩和効果を有するために、その標的、この場合はPICK1、を見つける必要がある。それによって、化合物は、脊髄組織に到達できるように、血液脳関門および/または血液脊髄関門を通過できる必要がある。
【0152】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、コカイン中毒、オピオイド中毒、またはモルヒネ中毒などの、薬物中毒である。
【0153】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、乳癌、例えば組織学的グレード、リンパ節転移、Her-2/neu陽性、およびトリプルネガティブ基底膜細胞様乳癌などの癌である。
【0154】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、筋萎縮性側索硬化症である。
【0155】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、癲癇である。
【0156】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、耳鳴症である。
【0157】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、偏頭痛である。
【0158】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、脳卒中または虚血である。
【0159】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、アルツハイマー病である。
【0160】
一実施形態において、不適応可塑性に関連する疾患または障害は、パーキンソン病である。
【0161】
さらに別の実施形態において、本明細書に開示されるような化合物は、頭部外傷の予防および/または処置における使用のためである。
【0162】
さらに別の実施形態において、本明細書に開示されるような化合物は、乳癌などの癌の予防および/または処置および/または診断における使用のためである。
【0163】
上記障害および疾患の危険性があるか、現在罹患している被験者は、障害もしくは疾患の発症の危険性を低減する予防的処置または障害もしくは疾患の発症後の治療的処置のいずれかが与えられる可能性がある。被験者は、哺乳動物またはヒト患者であってよい。
【0164】
投与
医学の当業者に既知である従来の方法は、本開示のPICK1阻害剤を患者に投与するために使用できる。本開示のPICK1阻害剤は、単独でまたは他の治療剤もしくは介入と組み合わせて投与できる。
【0165】
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、経皮投与、経粘膜投与、または皮下投与などの、非経口投与により投与される。一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、腔内投与または皮下投与により投与される。好ましい実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、皮下投与により投与される。実施例15に示されるように、本開示のPICK1阻害剤は、高い溶解度を保持し、それを有効用量でのそのような皮下投与に適するようにする。
【0166】
診断
本開示のPICK1阻害剤は、検出可能な部分を含んでよい。そのようなPICK1阻害剤はしたがって、組織または試料中にPICK1を検出することによるなどの、診断のために使用できる。
【0167】
したがって、本開示は、不適応可塑性に関連する疾患または障害の診断における使用のための、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤を提供する。
【0168】
PICK1は、乳癌、肺癌、胃癌、結腸直腸癌、および卵巣癌において隣接する正常な上皮と比較して腫瘍細胞で過剰発現される。乳癌組織マイクロアレイを免疫染色することにより判定されるように、高レベルのPICK1発現は、全体的な生存期間の短縮と相関する。したがって、PICK1 siRNAによるMDA-MB-231細胞のトランスフェクションは、インビトロで細胞増殖およびコロニー形成を減少させ、ヌードマウスで腫瘍原生を阻害した(Zhang et al 2010)。したがって、PICK1は、癌の処置および予後徴候のための推定上の標的である。
【0169】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤は、乳癌などの癌である不適応可塑性に関連する疾患または障害の診断における使用のためである。一実施形態において、乳癌は、組織学的グレード、リンパ節転移、Her-2/neu陽性、およびトリプルネガティブ基底膜細胞様乳癌から選択される。
【0170】
本開示は、それを必要とする被験者における乳癌を診断する方法をさらに提供し、方法は:
a.上記被験者から組織試料を得るステップ;
b.本明細書に開示されるような化合物で試料を染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;および
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
試料中のPICK1のレベルの増加は、上記個体が乳癌を有していることを示唆する。
【0171】
本開示は、乳癌に罹患している被験者の予後を予測する方法をさらに提供し、方法は、
a.上記被験者から組織試料を得るステップ;
b.本明細書に開示されるような化合物で試料を染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;および
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
試料中のPICK1のレベルの増加は、予後不良を示唆する。
【0172】
一実施形態において、本明細書に開示されるようなPICK1阻害剤は、上記PICK1阻害剤での処置の応答者および非応答者へと、不適応可塑性に関連する疾患に罹患している被験者を階層化することにおいて使用される。そのような階層化は、PICK1阻害などの、処置の類似のメカニズムをもたらすAAVベースの療法などの他の処置の方法を開始する前に、PICK1と二価または多価の相互作用を有するPICK1阻害剤の有効性を評価するために使用できる。そのような階層化の利点は、PICK1阻害などの処置メカニズムに対する応答者のみがAAVベースの療法の長期間の不可逆的処置を受けることを含む。AAVベースの療法は、同時係属中の出願に記載される(PCT/EP2019/078736およびEP20161524.2)。
【0173】
したがって、一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、不適応可塑性に関連する疾患および/または障害を有する患者を、遺伝子療法の予測可能な処置応答者に階層化するために使用される。
【0174】
一実施形態において、本開示のPICK1阻害剤は、上記化合物での処置の応答者および非応答者へと不適応可塑性に関連する疾患に罹患している被験者を階層化することにおいて使用される。
【0175】
条項
1.ペプチド部分および非ペプチド部分を含むPICK1阻害剤であって、ペプチド部分が、
a)一般式:XXのアミノ酸配列を含む第1のペプチド;および
b)一般式:Xのアミノ酸配列を含む第2のペプチド
(式中、
は、H、N、F、もしくはTであるか存在しない;
は、W、S、E、もしくはYである;または存在しない;
は、L、V、またはIである;
は、K、I、またはRである;および
は、Vである)
からなり;
非ペプチド部分が:
c)第2のペプチドに第1のペプチドを連結するリンカー、および
d)親油性脂肪族基
を含む、PICK1阻害剤。
【0176】
2.第1および/または第2のペプチドが、HWLKV、FEIRV、NSIIV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、NYIIV、NYIRV、TSIRV、YIIV、SVRV、EIRV、LRV、IIV、VRV、およびIRVからなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0177】
3.第1および/または第2のペプチドが、HWLKV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、TSIRV、EIRV、YIIV、IIV、VRVおよびIRVからなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0178】
4.第1および/または第2のペプチドが、NSVRV、NSLRV、NSIRV、TSIRV、EIRV、YIIV、IIV、VRV、およびIRVからなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0179】
5.第1および/または第2のペプチドが、HWLKV、FEIRV、NSIIV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、YIIV、SVRV、VRV、およびLRVからなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0180】
6.第1および/または第2のペプチドが、FEIRV、NSIIV、NSVRV、NSLRV、NSIRV、YIIV、SVRV、VRV、およびLRVからなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0181】
7.第1および/または第2のペプチドが、HWLKVである、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0182】
8.Xが、N、F、もしくはTであるか存在しない;
が、S、E、もしくはYである;または存在しない;
が、V、LまたはIである;
が、IまたはRである;および
が、Vである、
条項1に記載のPICK1阻害剤。
【0183】
9.Xが、NもしくはTであるか存在しない;
が、S、E、もしくはYである;または存在しない;
が、V、LまたはIである;
が、IまたはRである;および
が、Vである、
条項1に記載のPICK1阻害剤。
【0184】
10.Xが、NもしくはFであるか存在しない;
が、S、E、もしくはYである;または存在しない;
が、V、LまたはIである;
が、IまたはRである;および
が、Vである、
条項1に記載のPICK1阻害剤。
【0185】
11.第1のペプチドが、第2のペプチドと同一である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0186】
12.リンカーが、NPEGリンカーである、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0187】
13.NPEGリンカーが、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素で置き換えられる0個~24個の範囲のエチレングリコール部分、例えば1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素原子で置き換えられる、0個~20個の範囲、例えば0個~16個の範囲、例えば0個~14個、例えば0個~12個の範囲、例えば0個~10個の範囲、例えば0個~8個の範囲、例えば0個~6個の範囲、例えば0個~4個の範囲、例えば0個~2個の範囲のエチレングリコール部分を含み、好ましくはNPEG-リンカーが、1つまたは複数の骨格酸素原子が窒素で置き換えられる4個のエチレングリコール部分を含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0188】
14.NPEG-リンカーの1つの骨格酸素が、窒素原子で置き換えられる、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0189】
15.NPEGリンカーが、各端にカルボン酸を含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0190】
16.NPEGリンカーの1つまたは複数の窒素原子が、例えばNPEGリンカーの中央に位置する、またはNPEGリンカーの一端に向かって位置するなどの、NPEGリンカーに沿った任意の位置に位置する、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0191】
17.NPEGリンカーが、NPEGリンカーのカルボン酸と第1および/または第2のペプチドのN末端の間に形成されるアミド結合を介して第1および/または第2のペプチドに共役される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0192】
18.親油性脂肪族基が、脂肪族鎖または脂肪族環である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0193】
19.親油性脂肪族基が、脂肪族の分岐したまたは非分岐の鎖である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0194】
20.親油性脂肪族基が、脂肪族の飽和したまたは不飽和の鎖である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0195】
21.親油性脂肪族基が、ステロールなどのゴナン構造を含む脂肪族環である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0196】
22.親油性脂肪族基が、コレステロールなどのステロイドを含む脂肪族環である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0197】
23.親油性脂肪族基が、カルボン酸、アルコールまたはアミンなどの官能基をさらに含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0198】
24.親油性脂肪族基が、アルコールを含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0199】
25.親油性脂肪族基が、カルボン酸を含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0200】
26.親油性脂肪族基が、脂肪酸である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0201】
27.親油性脂肪族基が、C~C26脂肪酸である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0202】
28.親油性脂肪族基が、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0203】
29.親油性脂肪族基が、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、カプロレイン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エルカ酸からなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0204】
30.親油性脂肪族基が、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸からなる群より選択される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0205】
31.親油性脂肪族基が、ミリスチン酸である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0206】
32.親油性脂肪族基が、例えばテトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、またはオクタデカン二酸などの、二酸である、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0207】
33.親油性脂肪族基が、カルボン酸などの官能基を介して、例えばアミドを形成することにより、NPEGリンカーの窒素原子に共役される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0208】
34.非ペプチド部分が、1つのアミノ酸をさらに含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0209】
35.1つのアミノ酸が、α-アミノ酸またはβ-アミノ酸である、条項14~15のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0210】
36.1つのアミノ酸が、Asp、β-Asp、β-Ser、β-ホモ-Serおよびβ-Lysからなる群より選択される、条項14~16のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0211】
37.1つのアミノ酸が、アミドを形成するためにα-カルボン酸を介してNPEGリンカーの窒素原子に共役され、かつ親油性脂肪族基にさらに共役される、条項14に記載のPICK1阻害剤。
【0212】
38.1つのアミノ酸が、アミド結合を形成するためにα-もしくはβ-アミンを介して、またはアミド結合もしくはエステル結合を形成するためにカルボン酸、アルコールもしくはアミンなどの側鎖官能基を介して親油性脂肪族基に共役される、条項14~17のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0213】
39.式(I):
【0214】
【化12】
【0215】
の一般構造を有し、
式中、
Zが、単結合または単一のアミノ酸である;
nが、0~12の整数である;
pが、0~12の整数である、
上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0216】
40.式(II):
【0217】
【化13】
【0218】
による構造を有し、
式中、
nが、0~12の整数、好ましくは2である;
pが、0~12の整数、好ましくは2である、
上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0219】
41.自己集合してミセル構造を形成するなど、溶液中で高次構造に自己集合する、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0220】
42.高次構造が、少なくとも15Å、例えば少なくとも17Å、例えば少なくとも19Å、例えば少なくとも20Å、例えば少なくとも21Å、例えば少なくとも22Å、例えば少なくとも23Å、例えば少なくとも24Å、例えば少なくとも25Å、例えば少なくとも26Å、例えば少なくとも27Å、例えば少なくとも28Å、例えば少なくとも29Å、例えば少なくとも30Å、例えば少なくとも31Åの回転半径(R)を有する、条項20~21のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0221】
43.PICK1のPDZドメインに結合する、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0222】
44.2つのまたはそれより多いPICK1タンパク質のPDZドメインに結合する、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0223】
45.PICK1とAMPARの間のタンパク質-タンパク質相互作用を阻害できる、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0224】
46.PICK1を阻害できる、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0225】
47.上記ペプチドが、10nM未満、例えば9nM未満、例えば8nM未満、例えば7nM未満、例えば6nM未満、例えば5nM未満、例えば4nM未満、例えば3nM未満、例えば2nM未満、例えば1nM未満、例えば0.5nM未満のPICK1のKiを有する、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0226】
48.PICK1阻害剤のPICK1への結合が、PICK1の三量体、四量体、五量体、六量体、七量体または八量体などの、PICK1の高次のオリゴマー状態の形成をもたらす、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0227】
49.PICK1阻害剤のPICK1への結合が、PICK1の四量体、六量体または八量体の形成をもたらす、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0228】
50.検出可能な部分をさらに含む、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0229】
51.検出可能な部分が、第1および/または第2のペプチドに共役される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0230】
52.検出可能な部分が、非ペプチド部分の1つのアミノ酸に共役される、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤。
【0231】
53.検出可能な部分が、発蛍光団、発色団または酵素である、条項27に記載のPICK1阻害剤。
【0232】
54.検出可能な部分が、5,6-カルボキシルテトラメチルローダミン(TAMRA)またはインドジカルボシアニン(Cy5)である、条項27に記載のPICK1阻害剤。
【0233】
55.検出可能な部分が、放射性同位体を含むか、それからなる、条項27に記載のPICK1阻害剤。
【0234】
56.放射性同位体が、125I、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I、18Fおよび201Tlからなる群より選択される、条項30に記載のPICK1阻害剤。
【0235】
57.上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤を含むミセル。
【0236】
58.条項1~56のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤または条項57に記載のミセルを含む医薬組成物。
【0237】
59.医薬品としての使用のための、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【0238】
60.不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置における使用のための、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【0239】
61.被験者における不適応可塑性に関連する疾患または障害の予防および/または処置を提供する方法であって、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法。
【0240】
62.不適応可塑性に関連する疾患および/または障害の処置のための医薬品の製造のための、上記条項のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物の使用。
【0241】
63.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、疼痛、薬物中毒、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、耳鳴症、偏頭痛、癌、虚血、アルツハイマー病、および/またはパーキンソン病である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0242】
64.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、炎症性疼痛または神経因性疼痛などの疼痛である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0243】
65.疼痛が、機械的もしくは熱的アロディニアまたは痛覚過敏である、条項64に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルまたは医薬組成物。
【0244】
66.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、コカイン中毒、オピオイド中毒、またはモルヒネ中毒などの薬物中毒である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0245】
67.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、乳癌、例えば組織学的グレード、リンパ節転移、Her-2/neu陽性、およびトリプルネガティブ基底膜細胞様乳癌などの癌である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0246】
68.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、筋萎縮性側索硬化症である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0247】
69.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、癲癇である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0248】
70.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、耳鳴症である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0249】
71.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、偏頭痛である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0250】
72.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、虚血である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0251】
73.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、アルツハイマー病である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0252】
74.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、パーキンソン病である、条項59~60のいずれか一項に記載の使用のためのPICK1阻害剤、ミセルもしくは医薬組成物、条項61に記載の方法または条項62に記載の使用。
【0253】
75.不適応可塑性に関連する疾患または障害の診断における使用のための、条項1~56のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤または条項57に記載のミセル。
【0254】
76.不適応可塑性に関連する疾患または障害が、乳癌などの癌である、条項75に記載の診断における使用のためのPICK1阻害剤。
【0255】
77.乳癌が、組織学的グレード、リンパ節転移、Her-2/neu陽性、およびトリプルネガティブ基底膜細胞様乳癌から選択される、条項76に記載の使用のためのPICK1阻害剤。
【0256】
78.それを必要とする被験者における乳癌を診断する方法であって、
a.組織試料を上記被験者から得るステップ;
b.試料を、条項50~56のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤で染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;ならびに
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
その試料中のPICK1のレベルの増加が、上記個体が乳癌を有していることを示唆する、方法。
【0257】
79.乳癌に罹患している被験者について予後を予測するための方法であって、
a.組織試料を上記被験者から得るステップ;
b.試料を、条項50~56のいずれか一項に記載のPICK1阻害剤で染色するステップ;
c.試料中のPICK1のレベルを測定するステップ;ならびに
d.試料中のPICK1のレベルを健康な標準と比較するステップ
を含み、
その試料中のPICK1のレベルの増加が、予後不良を示唆する、方法。
【0258】
実施例
実施例1:PICK1発現および精製
完全長ラットPICK1(pET41)を、以前に記載された(Madsen et al.,2005)ように調製した。簡潔に言うと、PICK1を、BL21-DE3-pLysS細胞で発現させ、37℃で増殖させOD600=0.6で1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて誘導し、20℃で16時間増殖させた。培養物を、回収し、1Lの培養あたり、50mMトリスアミノメタン(Tris)、125mM NaCl、2mMジチオトレイトール(DTT、シグマ)、1%Triton X-100(シグマ)、20μg/mL DNAse1および1/2錠のcOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ)に再懸濁した。再懸濁したペレットを、後での精製のために-80℃で凍結した。溶菌液を、遠心分離(4℃、36,000×gで30分間)により清澄化し、上清を、穏やかな回転下で4℃で2時間グルタチオン-セファロース4Bビーズ(GEヘルスケア)とインキュベートし、その後5分間4,000×gで遠心分離した。上清を、除去し、ビーズを、35mLの50mM Tris、125mM NaCl、2mM DTTおよび0.01%Triton-X100中で2回洗浄した。ビーズを、PD-10Bio-Spin(登録商標)クロマトグラフィカラム(バイオラッド)に移し、さらに3カラム体積で洗浄した。各カラムを、シールし、0.075U/μLのNovagen(登録商標)を、穏やかな回転下にて4℃でO/Nでの開裂のために加えた。PICK1を、氷上で溶出し、280nmでの吸光度を、TECANプレートリーダーまたはNanoDrop3000で測定した。タンパク質濃度を、ランベルト・ベールの法則(A=εcl)を使用して測定し、それはεA280PICK1=32320(cm×mol/L)-1であった。
【0259】
実施例2:化合物の合成
PEG-(HWLKV)、PEG-(HWLKV)、PEG-(HWLKV)、PEG-(HWLKV)、PEG-(HWLKV)、Ac-(HWLKPEG4V)、およびNPEG-(HWLKV)を、Bach et al.,2012に記載されるような固相ペプチド合成により合成した。
【0260】
NPEG-(HWLKV)2を、Nissen et al.,2015に記載されるようにミリストイル化して、myr-NPEG-(HWLKV)を与えた。
【0261】
蛍光標識ペプチド(5-FAM)を、NPEGリンカーのアミンへの5-FAMの直接共役により、または6-アミノヘキサン酸(Ahx)リンカーを介したペプチドのN末端への5-FAMの共役により調製した。
【0262】
実施例3:myr-NPEG-(HWLKV)の溶液中の挙動の特徴づけ
myr-NPEG-(HWLKV)の溶液中の挙動を試験するため、我々は、対照として未共役NPEG-(HWLKV)と比較してサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を行った。我々はまた、溶液中でのmyr-NPEG-(HWLKV)の小角X線散乱分析(SAXS)を行って、粒子サイズおよび形状の全体的な推定値を得た。
【0263】
材料および方法:
サイズ排除クロマトグラフィ:サイズ排除クロマトグラフィを、Superdex200 Increase 10/300カラムを備えたAkta清浄器を使用して行い、示された濃度でNPEG-(HWLKV)またはmyr-NPEG-(HWLKV)の500μLをカラムに注入した。吸光度プロファイルを、280nmで測定し、Graph Pad Prism8.3を使用して溶出量に対してプロットした。
【0264】
小角X線散乱分析:
0.18mg/ml~9.37mg/mLの範囲のmyr-NPEG-(HWLKV)の濃度系列を、50mM Tris(pH7.4)、125mM NaClを含む緩衝液中で調製した。試料を、P12 SAXSビームライン、Petra III、DESY、ハンブルグ、ドイツで測定した。半径方向の平均化および散乱ベクトルq(q=4πsin(θ)/λ(λ=半散乱角))の関数としての絶対スケール散乱強度、I(q)へのデータの変換を含む予備的データ整理を、ビームラインで標準手順を使用して行った。
【0265】
SAXSデータのモデリングを、2つの方法で実行し、最初に対距離分布関数を使用し、次に多分散球体の分子拘束コア-シェルモデルを使用した。簡潔に言うと、ペプチドが多分散球体ミセルに凝集したと仮定された。ここで、疎水性テールがコアを形成し、これらは、球体ミセル中の親水性部分(シェル)により囲まれている。モデリングのため、2.26e-10cmおよび2.96e-11cmの散乱長を、それぞれ、ヘッド基およびテールについて使用した。これは、分子構造内の電子の数を数えること、および電子の散乱長を掛けることにより算出された。散乱長密度の算出のため、C13アルキル鎖の分子体積は、タンフォードの実験式
【0266】
【数1】
【0267】
(式中、nは、炭素数、すなわち、この場合13を示す)から推定されるように377Åであったと推測された。親水性ヘッド基は、可溶性タンパク質の質量密度(すなわち1.35g/cm)に対応する質量密度を有すると推測された最初の推定値であり、これにより、2078Åの分子体積が得られた。この値は、フィッティングの自由パラメータとして採用され、異なる試料濃度に対するフィッティングの変動がほとんどなく質量密度1.39g/cmに対応する約2010Åの分子体積に精緻化された。過剰散乱長密度をその後、水に関して算出した(9.4e10 1/cm)。この分子拘束モデルを使用して、コアおよびシェルの体積は、フィッティングされた凝集数、Naggを通じて内部で結び付けられた。多分散性は、Naggのガウス関数により説明された。ガウスは、±3シグマで切り捨てられた。WillItFitソフトウエアからのモデルモジュール「PolydisperseMicelles」を、フィッティングに使用した。通常通り、小さい表面粗さおよび小さい一定のバックグラウンドもまた、モデルを収束させるために必要であった。
【0268】
散乱データを統合した;1のビニング係数でWillItRebinを使用して緩衝液を差し引き、ビニングした。対距離分布関数(pddf)を、間隔[0.0122~0.4]Å-1でbayesapp(http://www.bayesapp.org/)を使用してフィッティングし、フィッティングパラメータを、以下のデータ収集表で報告する。
【0269】
【表1】
【0270】
結果:
この一連の実験において、我々は、myr-NPEG-(HWLKV)を、SECおよびSAXSを使用して高次オリゴマー構造に組織化するその能力について試験した。
【0271】
サイズ排除クロマトグラフィ:SEC実験を実行して、非共役NPEG-(HWLKV)と比較してmyr-NPEG-(HWLKV)の自己集合に対する濃度依存性を示し、myr-NPEG-(HWLKV)がより低い溶出量で溶出したことを認め、それは、より大きな流体力学的半径、およびしたがってより大きな分子集合体を示唆した(図1)。
【0272】
小角X線散乱分析:SAXS実験を実行して、myr-NPEG-(HWLKV)の自己集合に対する濃度依存性を示し、対距離分布関数を分析する標準的な分析を使用して、myr-NPEG-(HWLKV)が5~8個の個々の分子からなる20~23.6Åの回転半径(Rg)を有するミセル構造に組織化したように見えることを認めた(図2a~図2c)。対距離分布関数は脂肪族基の負の散乱寄与を考慮しないので、この分析は、分子集合体における分子の数を過小評価する。上述したようなコア-シェルモデルを使用するデータの分析は、myr-NPEG-(HWLKV)が、19~22個の個々のmyr-NPEG-(HWLKV)分子を含む、20~24Åの外半径を有する球体コア-シェル形状のような、ミセル構造へと集合したことを示唆した。
【0273】
結論
本実施例は、本開示のPICK1阻害剤が溶液中でミセル構造などの高次構造を形成できることを示す。
【0274】
実施例4:PICK1へのmyr-NPEG-(HWLKV)の結合
組換えPICK1へのmyr-NPEG-(HWLKV)の結合を試験するため、蛍光偏光法を実行した。結合時のPICK1の高次複合体の形成を検証するため、サイズ排除クロマトグラフィを実行した。
【0275】
材料および方法
PICK1を、実施例1に記載されるように発現させ精製した。
【0276】
蛍光偏光法:蛍光偏光法を、示された未標識のペプチドの濃度増加に対して、タンパク質およびトレーサ(5FAM-NPEG-(HWLKV)、5nMまたは5FAM-HWLKV、20nM)の固定濃度で競合モードにおいて実行した。プレートを、氷上で2時間、黒色ハーフエリアコーニングブラック非結合表面96ウェルプレートでインキュベートした。蛍光偏光を、488nmでの励起フィルタおよび535nmでのロングパス蛍光フィルタを使用するOmega POLARstarプレートリーダー上で直接測定した。データを、GraphPad Prism8.3を使用してプロットし、ワンサイト競合にフィッティングして、Ki,app値を抽出した。
【0277】
サイズ排除クロマトグラフィ:サイズ排除クロマトグラフィを、Superdex200 Increase 10/300カラムを備えたAkta清浄器を使用して実行し、ここで10μM myr-NPEG-(HWLKV)の不在下または存在下で40μM PICK1の500μLを、カラムにロードした。吸光度プロファイルを、280nmで測定し、Graph Pad Prism8.3を使用して溶出量に対しプロットした。
【0278】
結果
この一連の実験において、我々は、myr-NPEG-(HWLKV)を、SECにより証明されるような複合体において、蛍光偏光法を使用して組換え精製PICK1に結合するその能力、およびPICK1の高次オリゴマーを誘導するmyr-NPEG-(HWLKV)の能力について試験した(図4)。
【0279】
蛍光偏光(FP)実験を実行して、PICK1に対する結合親和性を決定した。蛍光トレーサとして5FAM-NPEG-(HWLKV)または5FAM-HWLKVを使用する競合実験は、HWLKV(Ki,app=6998nM、SEMインターバル[4972~9849]nM、n=3)と比較してmyr-NPEG-(HWLKV)の>1000倍の親和性の増加(Ki,app=3.0nM、SEMインターバル[2.3~3.8]nM、n=6)、およびNPEG-(HWLKV)(Ki,app=179nM、SEMインターバル[169~189]、n=6)と比較してmyr-NPEG-(HWLKV)の>50倍の親和性の増加を示した(図3)。
【0280】
サイズ排除クロマトグラフィを、PICK1との複合体におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の溶液中の挙動を評価するために行った。溶出体積は、myr-NPEG-(HWLKV)が、結合時にPICK1の高次オリゴマー構造を形成することを示唆した(図4)。
【0281】
結論
本実施例は、本開示のPICK1阻害剤が、PICK1の高い結合親和性を示すことを示す。二価ペプチドリガンドへの脂質の共役は、非共役NPEG-(HWLKV)と比較して>50倍の親和性の増加を与える。
【0282】
本実施例は、本開示のPICK1阻害剤が結合時にPICK1の高次構造を誘導できることを、さらに示す。タンパク質機能の阻害は、PICK1の高次構造のそのような誘導に起因する可能性がある。
【0283】
実施例5:高親和性バインダを同定するためのPICK1結合ペプチドリガンドの配列の最適化
DAT-C5(HWLKV)配列(すなわち、位置X~X)におけるPICK1 PDZ結合モチーフの厳密性を試験するため、かつより良好な親和性を有する推定ペプチドを示すため、我々は、19個の他の天然アミノ酸のいずれかに置換されたHWLKVの配列における各残基を有する95個の異なるペンタペプチドの精製PICK1への蛍光偏光結合を使用して、初期研究を実行した。
【0284】
さらに、我々は、上記の実験で得られたデータを利用し、アミノ酸の組み合わせ置換に由来する、52個の異なるペンタ-、テトラおよびトリ-ペプチドを設計するためにガイダンスとしてそれをを利用した。より良好な親和性を有する推定ペプチドを検証するため、精製PICK1への結合親和性が、蛍光偏光結合アッセイにより研究された。
【0285】
材料および方法:
蛍光偏光法:蛍光偏光法を、競合モードにおいて、示された未標識のペプチドの濃度増加に対し、タンパク質およびトレーサ(5FAM-HWLKV、20nM)の固定濃度で実行した。プレートを、氷上で20分間、黒色ハーフエリアコーニングブラック非結合表面96ウェルプレートでインキュベートし、蛍光偏光を、488nmでの励起フィルタおよび535nmでのロングパス蛍光フィルタを使用するOmega POLARstarプレートリーダー上で直接測定した。データを、GraphPad Prism6.0を使用してプロットし、ワンサイト競合にフィッティングして、最終的にプロットされたHWLKV親和性にすべて相関した、K値を抽出した。
【0286】
結果
単一置換実験:
およびXの置換は、XのVおよびIへの置換を除いて、結合に対しほとんど破壊的であり(明るい色合いで示される)、これは親和性を増加させた(図5)。位置Xで、R、C、IおよびLへの置換は、すべて親和性を増加させ、ほとんどの置換は許容された。同様に、XおよびXの置換は一般に、Xでの正に電荷した残基の注目に値する例外を除いて、十分に許容され、これは、親和性を低下させた。位置XでのY、E、S、Q、C、AおよびGへの置換は、親和性を増加させた。ほとんどの置換(Y、F、T、S、Q、N、C、V、M、I、G、Aを含む)は、いくらかの置換が溶解度を損なったにもかかわらず、位置Xでの親和性を増加させた。
【0287】
52個の組み合わせペプチド:
クラスII結合モチーフにおける二重置換に基づいて、我々は、多くの組み合わせが十分に許容され、一般に位置XでのN、位置XでのS/E、位置XでのRは、より良好な、または非摂動の親和性を有したが、一方で、位置XでのFは、一般に、十分に許容されなかったことを認めた(図6)。
【0288】
結論
この実施例は、アミノ酸置換によるHWLKV配列の最適化が、PICK1に対して同等およびさらに高い親和性を示すペプチドリガンドを提供することを示す。
【0289】
実施例6:PEGの変異型およびペプチドリガンドへのPEGの付着部位の変異型
この一連の実験において、我々は、精製PICK1に対する二価ペプチドリガンドを含む種々のPEG(x=0~4個のエチレングリコール部分)(図7)の親和性を試験したいと考えた。加えて、我々はまた、PEGが配列HWLKVのリジン(K)アミノ酸の側鎖に連結される異なるリンカー結合を使用する場合の、精製PICK1に対する親和性を試験したいと考えた(図7;ac-(HWLKVPEG4V)
【0290】
材料および方法
PICK1を、実施例1に記載されるように発現させ精製した。
【0291】
蛍光偏光法:蛍光偏光法を、未標識PEG-(HWLKV)の濃度増加に対して、タンパク質およびトレーサ(5FAM-NPEG-(HWLKV)、5nM)の固定濃度で競合モードにおいて実行した。プレートを、氷上で2~4時間、黒色ハーフエリアコーニングブラック非結合表面96ウェルプレートでインキュベートし、蛍光偏光を、488nmでの励起フィルタおよび535nmでのロングパス蛍光フィルタを使用するOmega POLARstarプレートリーダー上で測定した。データを、GraphPad Prism6.0を使用してプロットし、ワンサイト競合にフィッティングしてK値を抽出し、これを、HWLKVペプチドの親和性にすべて相関させ、それを、倍率親和性増加として最終的にプロットした。
【0292】
結果
2つの同一のペンタペプチド間で必要とされる最小距離を試験するため、我々は、異なるPEGリンカー長および位置を試験することを決定した。我々は、異なる長さのPEGリンカー間の親和性における僅かな変動を認め、すべてはHWLKVペプチドと比較してPICK1親和性の強化を与えた(図8)。
【0293】
さらに、我々は、N末端アミンの代わりにXリジン側鎖アミンへのPEGリンカーの付着が、PEG-HWLKVと比較して顕著に親和性を変化させなかったことを認めた。
【0294】
結論
本実施例は、本開示のPICK1阻害剤におけるリンカーの長さおよび付着部位の変動が十分に許容されることを示す。
【0295】
実施例7:炎症性疼痛におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性評価
この一連の実験において、我々は、マウスにおける完全フロイントアジュバント(CFA)モデルで炎症性疼痛を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の治効を評価することを目的とする。
【0296】
材料および方法。
炎症性疼痛:動物を、実験の開始前に最低60分間実験室に慣れさせた。機械的疼痛閾値を、両方の後足のフォン・フライ測定により決定した。損傷を、右後足に誘導し、対側の左後足を動物の内部対照として使用した。0.04g~2g(g=グラム-力)の範囲のフォン・フライ・フィラメント(0.04、0.07、0.16、0.4、0.6、1.0、1.4、2.0)を、機械的疼痛閾値の決定に使用した。現在の実験において、昇順でフィラメントを、後足の前中央足底表面に適用した。マウスを、ワイヤメッシュ上のPVCプラスチック箱(11.5cm×14cm)に入れ、順応前に30分間順応させた。各フォン・フライヘアを、各適用の間に十分な休息期間を入れて5回適用し、引っ込め回数を記録した。引っ込め閾値を、2つの連続したフィラメントでの5回の適用のうち、少なくとも3回の陽性試験を引き出したフォン・フライ・フィラメントとして決定した。陽性試験を、フィラメントにより誘導された突然の足の引っ込め、怯みおよび/または足舐めとして定義した。炎症性疼痛を、未希釈完全フロイントアジュバント(CFA)(F5881、シグマ)50μLの右後足の足底表面への片側注射により誘導し、対照マウスは、同量の0.9%生理食塩水(ビー・ブラウン、ドイツ)を注射された。すべての足底注射を、動物が最長60秒間イソフルラン麻酔(2%)下にある間、インスリン針(0.3mL BD Micro-Fine)を用いて実行した。フォン・フライを、実験に応じて片側CFA注射後最大で11日適用した。myr-NPEG-(HWLKV)を、異なる経路(髄腔内(i.t.(7μL))またはs.c.(10μL/g))を介して、異なる濃度(2μmol/kg、10μmol/kgまたは50μmol/kg)で投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にボンフェローニの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0297】
結果:
以下に、3つの異なる処置を使用するCFAモデルにおける炎症性疼痛の緩和におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性を示す。
【0298】
0日目に、マウスは、50μLのCFAまたは生理食塩水を右後足にi.pl.注射された。2日後、マウスは、50μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)または生理食塩水をs.c.注射された。誘発された疼痛を、注射前ならびに注射後1時間、5時間および24時間にフォン・フライ・フィラメントの使用により試験した。二元配置分散分析とそれに続くボンフェローニの事後検定は、myr-NPEG-(HWLKV)の全体的な有意な効果を明らかにし、注射後1時間の試験時に有意な疼痛緩和があった。加えて、データは、CFAの代わりに後足への生理食塩水の注射は効果がなく、痛覚過敏に対するCFA効果は、注射後11日目になくなっていることを明らかにする(図9a)。
【0299】
0日目に、マウスは、50μLのCFAまたは生理食塩水を右後足にi.pl.注射された。2日後、痛覚過敏を、フォン・フライ・フィラメントを使用することにより確認し、マウスは、2μmol/kg、10μmol/kgまたは50μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)または生理食塩水(10μL/グラム)をs.c.注射された。誘発された疼痛を、注射後1時間、5時間および24時間にフォン・フライ・フィラメントの使用により再度試験した。二元配置分散分析とそれに続くボンフェローニの事後検定は、myr-NPEG-(HWLKV)の全体的な有意な効果を明らかにし、試験された最も高い濃度について注射後5時間まで有意な疼痛緩和があり、2つのより低い濃度について注射後1時間の試験時に有意な疼痛緩和があった(図9b)。
【0300】
0日目に、マウスは、50μLのCFAまたは生理食塩水を右後足にi.pl.注射された。2日後、痛覚過敏を、フォン・フライ・フィラメントを使用することにより確認し、マウスは、20μM myr-NPEG-(HWLKV)または生理食塩水を7μLの体積で髄腔内に注射された。誘発された疼痛を、注射後1時間、5時間および24時間で、フォン・フライ・フィラメントの使用により再度試験した。二元配置分散分析とそれに続くボンフェローニの事後検定は、myr-NPEG-(HWLKV)の全体的な有意な効果を明らかにし、myr-NPEG-(HWLKV)投与後1時間および5時間で有意な疼痛緩和があり、投与後24時間では効果がなかった(図9c)。
【0301】
結論
この実施例は、炎症性疼痛のCFAモデルにおいて、myr-NPEG-(HWLKV)が、足引っ込め閾値の増加により明らかにされるように、炎症性疼痛を有意に緩和することを示す(図9a~図9c)。加えて、足引っ込め閾値は、無傷の対側の足では変動しないままであったことが認められた。myr-NPEG-(HWLKV)は、2つの投与量の皮下注射後の疼痛を緩和するのに効果的であった(図9a~図9b)。さらに、myr-NPEG-(HWLKV)は、髄腔内注射後に炎症性疼痛を緩和し(図9c)、myr-NPEG-(HWLKV)が中枢性感作を阻害することを確認した。
【0302】
実施例8:神経因性疼痛におけるmyr-NPEG4-(HWLKV)2の有効性評価
この実験において、我々は、マウスの神経枝結紮損傷(SNI)モデルにおける神経因性疼痛を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の治効を評価することを目的とする。
【0303】
材料および方法
神経因性疼痛。SNI疼痛実験を、Stephane Gaillard博士(CEO)の監督の下で表現型専門知識-疼痛およびCNS挙動CROにより実行した。研究を、8週齢のC57Bl6Jオスマウス(チャールズリバー)に対して実行した。神経枝結紮損傷外科手術を、麻酔したマウスで実行した。坐骨神経の総腓骨および脛骨末梢分岐の結紮および切断を実行し、腓腹分岐は無傷のままにした。外科手術7日後に、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下を、神経因性疼痛状態に対応するフォン・フライ・フィラメントにより確認した。操作されたマウスの収縮閾値応答を、校正されたフォン・フライ・フィラメント(「アップ/ダウン」法)で測定し、50%閾値(g)を算出した。実験者を、マウスの処置について盲検化した。収縮閾値を、外科出樹前に測定し、薬物投与後0時間、1時間、2時間、3時間、4時間および6時間で、7日目に再度測定した。全化合物を、PBS中で希釈し、10μL/gでs.c.投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にボンフェローニの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0304】
結果:
マウスは、腓骨神経および脛骨神経を切断することにより、部分的神経損傷をもたらす外科手術を受け、残りの腓腹神経(SNI)の過敏症を生じさせた。7日後に、痛覚過敏を、フォン・フライ・フィラメントを使用することにより確認し、マウスに、2μmol/kgまたは10μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)または生理食塩水(10μL/マウス1グラム)をs.c.注射した。誘発された疼痛を、注射後1時間、2時間、3時間、4時間および6時間で、フォン・フライ・フィラメントの使用により再度試験した。二元配置分散分析とそれに続くボンフェローニの事後検定は、myr-NPEG-(HWLKV)の全体的な有意な効果を明らかにし、試験された最も高い濃度については注射後3時間まで有意な疼痛緩和があり、より低い濃度については有意な疼痛緩和はなかった。
【0305】
結論
この実施例は、神経因性疼痛のSNIモデルにおいて、myr-NPEG-(HWLKV)が、処置後のマウスにおける増加した足引っ込め閾値により明らかにされるように、神経因性疼痛を有意に緩和することを示す。加えて、足引っ込め閾値が無傷の対側の足では変動しないままであったことが認められた。これは、myr-NPEG-(HWLKV)が用量依存的に皮下注射後の疼痛の緩和に効果的であることを確認する(図10)。
【0306】
実施例9:神経因性疼痛におけるNPEG-(HWLKV)の有効性評価
この実施例において、目的は、マウスの神経枝結紮損傷(SNI)モデルの後の神経因性疼痛を緩和するためのNPEG-(HWLKV)(脂肪族鎖を保持していない、PD5)の治効を評価することであった。
【0307】
材料および方法
神経因性疼痛。研究を、8週齢のC57Bl6Jオスマウス(チャールズリバー)に対して実行した。神経枝結紮損傷外科手術を、麻酔したマウスで実行した。坐骨神経の総腓骨および脛骨末梢分岐の結紮および切断を、実行し、腓腹分岐は無傷のままにした。外科手術9日後、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下を、神経因性疼痛状態に対応するフォン・フライ・フィラメントにより確認した。操作されたマウスの収縮閾値応答を、校正されたフォン・フライ・フィラメント(「アップ/ダウン」法)で測定し、50%閾値(g)を算出した。実験者を、マウスの処置について盲検化した。収縮閾値を、外科手術前に測定し、薬物投与後0時間、1時間、2時間、3時間、4時間および6時間で、9日目に再度測定した。全化合物を、PBS中で希釈し、10μmol/kg(10μL/グラム)のNPEG-(HWLKV)を10μL/gでs.c.投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して、統計分析を実行した。GraphPad Prism6.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にボンフェローニの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0308】
結果:
マウスは、腓骨神経および脛骨神経を切断することにより、部分的神経損傷をもたらす外科手術を受け、残りの腓腹神経(SNI)の過敏症を生じさせた。9日後、痛覚過敏を、フォン・フライ・フィラメントを使用することにより確認し、マウスに10μmol/kg(10μL/グラム)のNPEG-(HWLKV)(PD5)をs.c.注射した。誘発された疼痛を、注射後1時間、2時間、3時間、4時間および6時間で、フォン・フライ・フィラメントの使用により再度試験した。二元配置分散分析とそれに続くボンフェローニの事後検定は、脂肪族基がないNPEG-(HWLKV)での処置の有意な効果を明らかにしなかった(図11)。比較のため、実施例8からのmyr-NPEG-(HWLKV)およびビヒクル群(図10)を、破線で示す。
【0309】
結論
この実施例は、神経因性疼痛のSNIモデルにおいて、NPEG-(HWLKV)(脂肪族鎖を保持していない)は、処置後のマウスにおける増加した足引っ込め閾値により明らかにされるように、神経因性疼痛を有意に緩和しないことを示す。
【0310】
実施例10:慢性神経因性疼痛におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性評価
この実験において、目的は、マウスの神経枝結紮損傷(SNI)モデルの1年後の神経因性疼痛を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の治効を評価することであった。
【0311】
材料および方法
神経因性疼痛。研究を、8週齢のC57Bl6Jオスマウス(チャールズリバー)に対して実行した。神経枝結紮損傷外科手術を、麻酔したマウスで実行した。坐骨神経の総腓骨および脛骨末梢分岐の結紮および切断を実行し、腓腹分岐は無傷のままにした。外科手術2日後、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下を、神経因性疼痛状態に対応するフォン・フライ・フィラメントにより確認した。マウスを、毎月フォン・フライで試験し、52週での痛覚過敏応答が持続した。
【0312】
操作されたマウスの収縮閾値応答を、校正されたフォン・フライ・フィラメント(「アップ/ダウン」法)で測定し、50%閾値(g)を算出した。実験者を、マウスの処置について盲検化した。注射後、収縮閾値を、2時間および5時間で測定した。全化合物を、PBS中で希釈し、10μL/g、30μmol/kgでs.c.投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。一元配置分散分析にダネットの多重比較検定が続いた。****、p<0.0001。
【0313】
結果:
マウスは、腓骨神経および脛骨神経を切断することにより、部分的神経損傷をもたらす外科手術を受け、残りの腓腹神経(SNI)の過敏症を生じさせた。2日後、痛覚過敏を、フォン・フライ・フィラメントの使用により確認した(図12)。これは、52週間後に変更されなかった。マウスに、30μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)(10μL/マウス1グラム)をs.c.注射した。誘発された疼痛を、注射後の2時間および5時間で、フォン・フライ・フィラメントの使用により再度試験した。一元配置分散分析とそれに続くダネットの多重比較検定は、5時間での処置の非常に有意な効果を明らかにした(p<0.0001)。
【0314】
結論
この実施例は、神経因性疼痛のSNIモデルにおいて、myr-NPEG-(HWLKV)が、処置後のマウスにおける増加した足引っ込め閾値により明らかにされるように、SNI損傷の誘導後の丸1年神経因性疼痛を有意に緩和することを示す。
【0315】
実施例11:糖尿病性神経障害におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性評価
この実験において、目的は、1型糖尿病のストレプトゾシン(STZ)モデルを使用する糖尿病性神経障害を緩和するためのmyr-NPEG-(HWLKV)の治効を評価することであった。
【0316】
材料および方法
糖尿病性神経障害(STZ)モデル。糖尿病を、200μg/mLストレプトゾシン溶液(100μl/10g、シグマ-アルドリッチS0130、バッチ#WXBB7152V)の単回IP注射により誘導した。血糖値を、注射前、および注射7日後に試験する。すべての注射されたマウスは、D+7で>350mg/dLの血糖値を提示し、その後D+14で化合物の鎮痛性試験のために使用される。1匹のマウスを、注射後7日で安楽死させる必要があった。
【0317】
操作されたマウスの収縮閾値応答を、校正されたフォン・フライ・フィラメント(「アップ/ダウン」法)で測定し、50%閾値(g)を算出した。実験者を、マウスの処置について盲検化した。外科手術13日後、同側の後足のフォン・フライ・フィラメントに対する閾値応答の低下を、糖尿病性神経障害に対応するフォン・フライ・フィラメントにより確認した。myr-NPEG-(HWLKV)の注射後、収縮閾値を、1時間、2時間、4時間および6時間で測定し、15日目に再度測定した。化合物を、PBS(ビヒクル)中で希釈し、示されるような用量で、10μL/g(ガバペンチン、5MPK)でs.c.投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。一元配置分散分析にダネットの多重比較検定が続いた。****、p<0.0001。
【0318】
結果:
STZ投与の7日後、すべてのマウスは、マウスの糖尿病状態を検証する血糖値の急激な上昇(197.4+/-4.4mg/dLから533.5+/-10.4;添付書類を参照されたい)を示した。図13に示すように、STZ注射の13日後、糖尿病誘導神経因性疼痛が、機械的応答閾値(機械的アロディニア)の低下により明らかに確立される。プレガバリン(5MPK)投与は、ビヒクル群と比較して機械的応答閾値の有意な上昇を誘導し(投与後1時間、2時間および4時間でp<0.001)+2時間でベースラインの最大84.7±10.5%の最大反転を有した。2μmol/kgおよび10μmol/kgでのmyr-NPEG-(HWLKV)(mPD5)溶液は両方とも、ビヒクル群と比較して機械的応答閾値の有意な増加を誘導した(最低濃度について1時間でp=0.006および2時間でp=0.003;10μmol/kg溶液について1時間および2時間でp<0.001、4時間でp<0.006)。投与後の2時間後に最大逆転に到達した(2μmol/kg溶液および10μmol/kg溶液についてそれぞれベースラインの49.2±7.9%および67.3±4.5%)。興味深いことに、我々はまた、1時間および2時間で、mPD5で処置した2群間に統計的有意差を観察した(それぞれp=0.013およびp=0.008)。
【0319】
結論
この研究において、我々は、マウスにおけるSTZ誘導神経因性疼痛モデルに対するmyr-NPEG-(HWLKV)の鎮痛効果を試験した。興味深いことに、我々は、10μmol/kgでの投与後4時間まで強力で長期継続する効果を観察した。同時に、我々はまた、ペプチドの用量依存的効果を観察し、それは2μmol/kgの用量でより弱い効果であった。注目すべきこととして、目に見える副作用は観察されなかった。
【0320】
実施例12:炎症性疼痛におけるmyr-NPEG-(NSVRV)、myr-NPEG-(SVRV)およびmyr-NPEG-(LRV)の有効性評価
この一連の実験において、目的は、マウスにおける完全フロイントアジュバント(CFA)モデルで炎症性疼痛を緩和するための実施例5に記載のペプチド最適化により定義されるようなPDZドメイン結合配列に対する変異型の治効を評価することであった。これは、実施例5におけるスクリーニングからインビボ有効性への変換を定義し、より短い結合モチーフ(C4およびC3)の効果を示す。
【0321】
材料および方法。
炎症性疼痛(CFAモデル):動物を、実験の開始前に最低60分間実験室に慣れさせた。機械的疼痛閾値を、両方の後足のフォン・フライ測定により決定した。損傷を、右後足に誘導し、対側の左後足を動物の内部対照として使用した。
【0322】
0.04g~2g(g=グラム-力)の範囲のフォン・フライ・フィラメント(0.04、0.07、0.16、0.4、0.6、1.0、1.4、2.0)を、機械的疼痛閾値の決定に使用した。現在の実験において、昇順でフィラメントを、後足の前中央足底表面に適用した。マウスを、ワイヤメッシュ上のPVCプラスチック箱(11.5cm×14cm)に入れ、試験の前に30分間順応させた。各フォン・フライヘアを、各適用の間に十分な休息期間を入れて5回適用し、引っ込め回数を記録した。引っ込め閾値を、2つの連続したフィラメントでの5回の適用のうち、少なくとも3回の陽性試験を引き出したフォン・フライ・フィラメントとして決定した。陽性試験を、フィラメントにより誘導された突然の足の引っ込め、怯みおよび/または足舐めとして定義した。
【0323】
炎症性疼痛を、未希釈完全フロイントアジュバント(CFA)(F5881、シグマ)50μLの右後足の足底表面への片側注射により誘導し、対照マウスには、同量の0.9%生理食塩水(ビー・ブラウン、ドイツ)を注射した。すべての足底注射を、動物が最長60秒間イソフルラン麻酔(2%)下にある間、インスリン針(0.3mL BD Micro-Fine)を用いて実行した。フォン・フライを、実験に応じて片側CFA注射後最大で6日適用した。ペプチドを、(10μL/g))、および異なる濃度(0.4μmol/kgおよび2μmol/kg)でs.c.投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にダネットの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0324】
結果:
0日目に、マウスは、50μLのCFAまたは生理食塩水を右後足にi.pl.注射された。CFA注射後の2日目に、マウスに、0.4μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)、myr-NPEG-(NSVRV)、myr-NPEG-(SVRV)またはmyr-NPEG-(LRV)をs.c.注射し、5日目に、マウスに、2μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)、myr-NPEG-(NSVRV)、myr-NPEG-(SVRV)またはmyr-NPEG-(LRV)をs.c.注射した。この濃度で、myr-NPEG4-(NSVRV)は、完全に溶解しなかった。2日目および5日目の両方で、注射前ならびに注射後1時間、5時間および24時間で、誘発された疼痛を、フォン・フライ・フィラメントの使用により試験した。投与の各日について別々の二元配置分散分析とそれに続くダネットの事後分析は、最も高い親和性化合物、myr-NPEG4-(NSVRV)が、0.4μmol/kgのS.c.用量で疼痛を緩和すること、さらにmyr-NPEG4-(HWLKV)およびmyr-NPEG4-(SVRV)の両方が、2.0μmol/kgのS.c.用量で疼痛を緩和することを明らかにした(図XX)。この濃度で、myr-NPEG4-(NSVRV)は、完全に溶解しなかった。myr-NPEG4-(LRV)は、この容量で疼痛緩和の傾向を示したが、これは、実験で有意ではなかった(図14)。
【0325】
結論
この実施例は、炎症性疼痛のCFAモデルにおいて、myr-NPEG-(HWLKV)と同様にmyr-NPEG-(NSVRV)、myr-NPEG-(SVRV)またはmyr-NPEG-(LRV)が、足引っ込め閾値の増加により明らかにされるように、2μmol/kg(10μL/グラム)で炎症性疼痛を緩和することを示す(図14)。これは、より短いPICK1 PDZ結合モチーフ(C4およびC3)、さらにC5 PICK1 PDZ結合モチーフの有効性を確認し、さらに、実施例5において観察された親和性と一致する。これに加えて、最適化の最高の親和性ペプチド(NSVRV)を保持するmyr-NPEG-(NSVRV)(実施例5)は、0.4μmol/kg(10μL/グラム)で有意な疼痛緩和を示した。
【0326】
実施例13:自発性炎症性疼痛の緩和におけるmyr-NPEG-(HWLKV)の有効性評価
この実験の目的は、実験者が炎症を起こした足に触れることから誘発される疼痛を緩和するだけでなく、単一の曝露場所の優先性を使用して進行中の疼痛、自発痛を緩和する、myr-NPEG-(HWLKV)の能力を評価することであった。これは、臨床解釈にとって最も重要であるとみなされる。
【0327】
材料および方法。
炎症性疼痛(CFAモデル):動物を、実験の開始前に最低60分間実験室に慣れさせた。両方の後足の機械的疼痛閾値を、フォン・フライ測定により決定した。損傷を、右後足に誘導し、対側の左後足を動物の内部対照として使用した。0.04g~2g(g=グラム-力)の範囲のフォン・フライ・フィラメント(0.04、0.07、0.16、0.4、0.6、1.0、1.4、2.0)を、機械的疼痛閾値の決定に使用した。現在の実験において、昇順でフィラメントを、後足の前中央足底表面に適用した。マウスを、ワイヤメッシュ上のPVCプラスチック箱(11.5cm×14cm)に入れ、試験前に30分間順応させた。各フォン・フライ・フィラメントを、各適用の間に十分な休息期間を入れて5回適用し、引っ込め回数を記録した。引っ込め閾値を、2つの連続したフィラメントでの5回の適用のうち、少なくとも3回の陽性試験を引き出したフォン・フライ・フィラメントとして決定した。陽性試験を、フィラメントにより誘導された突然の足の引っ込め、怯みおよび/または足舐めとして定義した。炎症性疼痛を、未希釈完全フロイントアジュバント(CFA)(F5881、シグマ)50μLの右後足の足底表面への片側注射により誘導した。すべての足底注射を、インスリン針を用いて実行し(0.3mL BD Micro-Fine)、一方で、動物は、最長60秒間イソフルラン麻酔(2%)下にあった。フォン・フライは、CFA注射の前、CFA注射の2日後、およびCFA注射の5日後であり、以下に記載の単一の曝露場所の優先性の実験の前および後の両方で、過敏症を確認した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。スチューデントのt検定。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0328】
単一の曝露場所の優先性(sePP):sePP実験を、中央のニュートラルゾーン(11.5×24cm)、および異なる床の風合いならびに異なる壁パターンを有する端での2つの細長い区画(28×24cm)からなる3区画の長方形装置内で実行した。曝露セッションの間、区画を、2つのオフホワイトPlexiglas(登録商標)パーティション(24×40cm)により互いから分離し、試験日に、それらのパーティションを除去した。
【0329】
sePPプロトコルを、3日間かけて、最初の2日間での曝露セッション、および3日目での試験で実行した。3日間とも、マウスを、実験開始前に少なくとも60分間部屋へ順応させた。mPD5を常に、最も好ましくない区画であることが以前に示されている、灰色の壁および穴あきの床を有する区画と対にした。ケージからのすべてのマウスを、同時に試験したが、すべては同じ処置を受けなかった。
【0330】
曝露日に、マウスを、計量し、ペプチド(30μmol/kg)またはビヒクル(10μL/g)でs.c.注射し、すぐに指定された区画に60分間入れた。試験群を、最も好ましくない区画内でペプチドに、および好ましい区画内でビヒクル(PBS)に曝露し、対照群は、両方の区画でビヒクルを注入された。
【0331】
3日目に優先性試験のため、Plexiglas(登録商標)を除去し、マウスは3つの区画の間を20分間自由に移動できた。異なる区画内で過ごした時間を、エソビジョン(Noldus、ヴァーヘニンゲン、オランダ)により測定した。追加の実験を、損傷のない動物で行い、mPD5依存的優先性変化を示さなかった。
【0332】
結果:
myr-NPEG-(HWLKV)への単回曝露は、CFA損傷動物の場所優先性を変化させるのに十分である。優先性試験で、myr-NPEG-(HWLKV)処置動物は、ビヒクル処置対照マウスと比較してmyr-NPEG-(HWLKV)対区画で有意により長い時間過ごし(図15Aおよび図15B)、myr-NPEG-(HWLKV)で処置された動物の区画への優先性を示唆した。念のため、優先性の変化は、疼痛緩和のためであり、ペプチド自体がそれらの優先性を変化させたのではなく、全く同じ実験を、損傷なしのマウス(ナイーブ)で実行したところ、myr-NPEG-(HWLKV)処置動物での優先性における変化を示さなかった。これはさらに、myr-NPEG-(HWLKV)の乱用傾向の欠如を示唆する。
【0333】
結論:
この実施例は、炎症性疼痛を有するマウスが、それらがmyr-NPEG-(HWLKV)を以前に受け取ったチャンバへと優先性をシフトさせることを示し、マウスが、薬物が進行性疼痛、自発痛を緩和することを認識することを示唆する。患者の苦痛のほとんどが進行性疼痛に関連しているので、このことは翻訳ポテンシャルにとって最も重要であると考えられる。
【0334】
実施例14:Tat-PD5と比較した異なる濃度でのmPD5の血漿濃度
この実験の目的は、myr-NPEG-(HWLKV)の血漿濃度および寿命を評価すること、ならびにmyr-NPEG-(HWLKV)のアクリル化が、親分子Tat-NPEG-(HWLKV)と比較して血漿半減期を延長するかどうかを決定することであった。
【0335】
材料および方法:
myr-NPEG-(HWLKV)の曝露 mPD5曲線を、WUXI、DMPKにより決定し、滅菌PBS中各濃度のmPD5(2μmol/kg、10μmol/kgおよび50μmol/kg)での3匹のオスC57BL/6Nマウス(絶食)のS.c.注射により行い、血液試料を、30分、1時間、2時間、5時間、12時間の時点で採取し、血漿を、LC-MSに供した。ダウンスロープの3点を、除去フェーズでの3点から決定した。
【0336】
ビオチン化Tat-NPEG-(HWLKV)の血漿曝露の決定
血液試料採取。0.9%NaClに希釈したビオチン化TAT-ジ-PEG4-DATC5(biot-TPD5;34mg/kg=10μmol)またはビオチン化myr-ジ-PEG4-DATC5(biot-mPD5;10μmol)を、一旦8週齢オスC57bl6Nマウス(合計18匹のマウス)にs.c.注射し、血液試料を、アプロチニン入りBDバキュテイナ(登録商標)K3EDTAチューブ(BD Diagnostics)を使用して15分後、30分後、1時間後、2時間後および6時間後に採取した(各時点で6匹のマウスからの血液試料)。血液試料を、4℃で15分間、3500RPMで遠心分離し、血漿を、新しいチューブに収集し-20℃で凍結した。
【0337】
ELISA。96ウェルNUNCイモビライザー(カタログ番号436006)プレートを、100mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)に希釈した15μg/mLビオチン化アルブミン(シグマ-アルドリッチ、製品番号A8549)でコートし、シェーカー上、室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、PBS-T(0.1%TWEEN(登録商標)20(シグマ-アルドリッチ)を有する1×リン酸緩衝生理食塩水)で3回洗浄し、1回の洗浄ステップは、シェーカー上、室温で一晩であった。0.1%PBSTを有する希釈済みHRP共役ストレプトアビジン(DAKO、引用番号P0397、0.83g/L)(1:5000)を、別の丸底96ウェルプレート(サーモサイエンティフィック)中、biot-TPD5と異なる希釈(10×および20×)で混合し、シェーカー上で20分間インキュベートした。溶液(100μL/ウェル)を、コーティングした96ウェルプレートに入れ、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、PBS-Tで3回洗浄し、TMBプラス(シグマ、SLBT4708、T0440-1L)100μL中、3~5分間展開した。展開を、0.2M硫酸(H2SO4)100μLの添加により停止した。プレートを、パーキンエルマー(ビズオウア、デンマーク)からのWallac VICTOR2 1420マルチラベルカウンタ上、450nm(および570nm)で読み取った。測定された吸光度を、biot-TPD5の標準希釈液から生成された標準曲線に対して較正した。
【0338】
結果:
myr-NPEG-(HWLKV)について、我々は、1時間後最大濃度に到達(3.75mg/kg(2μmol/kg)の注射後1446±106ng/ml;18.8mg/kg(10μmol/kg)の注射後6173±508ng/ml;93.8mg/kg(50μmol/kg)の注射後20258±642ng/ml)し、その後の片対数スケールの表示1オーダーの速度での線形除去フェーズが続く、血漿濃度における初期の増加を観察した。最大用量および曲線下面積は両方とも、T1/2の用量で直線的に増加した(3.75mg/kg(2μmol/kg)の注射後0.50±0.07時間;18.8mg/kg(10μmol/kg)の注射後0.59±0.07時間;93.8mg/kg(50μmol/kg)の注射後0.84±0.03時間)(図16)。ビオチン化Tat-NPEG-(HWLKV)(10μmol/kg)について、我々は、30分にピークを有し後期で減速する非線形除去プロファイルが続く、血漿濃度の増加を観察した。最大濃度は、myr-NPEG-(HWLKV)(10μmol/kg)について観察されたものと類似である(図16)。
【0339】
結論:
myr-NPEG-(HWLKV)は、S.c.投与後、用量依存的に血漿に分布し、1オーダーの速度および30~45分の半減期で除去される。これは、挙動の効果と一致してTat-NPEG-(HWLKV)と類似であり、myr-NPEG-(HWLKV)に対するアクリル化が、血漿曝露または寿命を延ばすことによりその効果を発揮しないことを示す。
【0340】
実施例15:myr-NPEG-(HWLKV)の溶解度および安定性の評価
目的は、好ましい(皮下)投与経路にとって重要である溶解度およびmyr-NPEG4-(HWLKV)の貯蔵寿命にとって重大である化学的安定性を決定することであった。
【0341】
材料および方法:
溶解度を、10mM PBS中で濃度を上げながら溶解した試料の目視検査により決定した。安定性を、30日間5度および25度でPBS中にmyr-NPEG-(HWLKV)を放置し続いてHPLC-UV-MS法により、4つの濃度2μM、20μM、50μMおよび200μMについてREDGLEADにより検討した。
【0342】
結果:
目視検査により、我々は、myr-NPEG-(HWLKV)の溶解度が、少なくとも250mg/ml(130mM)であると決定した(図17);これはミセル構造による可能性がある。
【0343】
分解は観察されず、純度は、200μMおよび50μMの試料について>98%であると決定された。20μMおよび2μMの試料について吸収が低いため、分解はこれらの試料のいずれにも認められなかったが、純度を確実に決定できなかった。ペプチドmPD5は、ビヒクル組成物中、+5℃および+25℃で少なくとも30日間、化学的に安定である。質量を、検量線のための標準試料を含むすべての試料について確認した。
【0344】
【表2】
【0345】
結論:
myr-NPEG-(HWLKV)は、非常に良好な安定性を示し、これは、観察された有効性を有しヒト皮下投与(最大量800μl)のために十分であるとみなされる。これに加えて、安定性は良好であり、化合物が貯蔵寿命の要件に適合していることを示唆する。
【0346】
実施例16:親油性脂肪族鎖のバリエーション
この一連の実験において、目的は、マウスの完全フロイントアジュバント(CFA)モデルにおける脂肪族鎖のサブステーションによる治効および作用の延長を評価することであった。
【0347】
材料および方法。
炎症性疼痛(CFAモデル):炎症性疼痛を、未希釈完全フロイントアジュバント(CFA)(F5881、シグマ)50μLの右後足の足底表面への片側注射により誘導し、対照マウスには、同量の0.9%生理食塩水(ビー・ブラウン、ドイツ)を注射した。すべての足底注射を、動物が最長60秒間イソフルラン麻酔(2%)下にある間、インスリン針(0.3mL BD Micro-Fine)を用いて実行した。損傷を、右後足に誘導し、対側の左後足を、動物の内部対照として使用した。
【0348】
動物を、実験の開始前に最低60分間実験室に慣れさせた。機械的疼痛閾値を、両方の後足のフォン・フライ測定により決定した。0.04g~2g(g=グラム-力)の範囲のフォン・フライ・フィラメント(0.04、0.07、0.16、0.4、0.6、1.0、1.4、2.0)を、機械的疼痛閾値の決定に使用した。現在の実験において、昇順でフィラメントを、後足の前中央足底表面に適用した。マウスを、ワイヤメッシュ上のPVCプラスチック箱(11.5cm×14cm)に入れ、試験前に30分間順応させた。各フォン・フライヘアを、各適用の間に十分な休息期間を入れて5回適用し、引っ込め回数を記録した。引っ込め閾値を、2つの連続したフィラメントでの5回の適用のうち、少なくとも3回の陽性試験を引き出したフォン・フライ・フィラメントとして決定した。陽性試験を、フィラメントにより誘導された突然の足の引っ込め、怯みおよび/または足舐めとして定義した。
【0349】
フォン・フライを、実験に応じて片側CFA注射後最大で5日適用した。ペプチドを、炎症性疼痛の緩和における有効性を評価するためにクロスオーバースケジュールで各化合物の5回の注射で、s.c.で(PBS中10μL/g))、および2μmol/kgで投与した。統計分析を、GraphPad Prism8.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にダネットの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0350】
結果:
0日目に、マウスのベースラインの足引っ込め応答を、CFAまたは生理食塩水50μLの右後足への足底内注射の前に、フォン・フライ・フィラメントを使用して決定した。
【0351】
CFA注射後2~5日目に、マウスに、PBSまたは2.0μmol/kg(10μL/グラム)のmyr(C14)-NPEG-(HWLKV)、myr(C14)(不飽和、トランス)-NPEG-(HWLKV)、myr(C14)(不飽和、トランス)-NPEG-(HWLKV)、(C18)(二酸)-NPEG-(HWLKV)、(C16)-NPEG-(HWLKV)、コレステロール-β-Asp-NPEG-(HWLKV)をs.c.注射した。
【0352】
すべての日に、誘発された疼痛を、注射前ならびに注射後2時間および5時間で、フォン・フライ・フィラメントの使用により試験した。投与の各日についての別々の二元配置分散分析にダネットの事後分析が続いた。
【0353】
PBSの注射は、疼痛引っ込め閾値における変化を誘発しなかったが、myr(C14)-NPEG-(HWLKV)(mPD5)は、完全で非常に有意な疼痛緩和を誘発した(図18A)。同様に、myr(C14)(不飽和、トランス)-NPEG-(HWLKV)、myr(C14)(不飽和、シス)-NPEG-(HWLKV)、(C18)(二酸)-NPEG-(HWLKV)は、非常に有意な疼痛緩和を誘発した。同様に、アシル鎖の(C16)-NPEG-(HWLKV)への延長は、非常に有意な疼痛緩和を生じた(図18B)。最後に、コレステロール-b-Asp-NPEG-(HWLKV)は、有意な疼痛緩和を生じた(図18C)。
【0354】
結論
この実施例は、炎症性疼痛のCFAモデルにおいて、不飽和をアシル鎖に導入でき、追加の酸基を二酸にできることを示す。これに加えて、14個~16個の炭素および18個(二酸を有する)のアシル鎖は、有効性に関して同等に見える。最後に、β-Aspを介した親油性脂肪族基(この場合にはコレステロール)の共役は、活性を提示する。
【0355】
実施例17:感作された熱痛の緩和に対するmPD5の有効性
この実験において、目的は、完全フロイントアジュバント(CFA)の足底内注射により誘発された熱痛覚の感作の治効mPD5を評価することであった。
【0356】
材料および方法。
炎症性疼痛(CFAモデル):動物を、実験の開始前に、最低60分間実験室に慣れさせた。ハーグリーブステストを、両後足の足底表面への輻射熱光の適用により実行した。応答潜伏期間を、自動読み取り(Ugo Basile、イタリア)により測定した。輻射熱刺激に応答した両後足のベースライン足引っ込め潜伏期間を、CFA注射前に実行し、2つの事前に選択された群間に差異は認められなかった。炎症性疼痛を、未希釈完全フロイントアジュバント(CFA)(F5881、シグマ)50μLの右後足の足底表面への10回の片側注射により誘導し、対照マウスには、同量の0.9%生理食塩水(ビー・ブラウン、ドイツ)を注射した。すべての足底注射を、動物が最長60秒間イソフルラン麻酔(2%)下にある間、インスリン針(0.3mL BD Micro-Fine)を用いて実行した。CFA注射後3日目に、マウスを、個々の赤色円筒(直径8cm、高さ7.5cm)に入れ、熱痛覚過敏を、IR20のベースライン読み取りにより確認した。3回の測定を、各マウスの各後足で実行した。陽性試験を、赤外線により誘導された突然の足の引っ込め、怯みおよび/または足舐めとして定義した。測定を、CFA注射前、およびCFA注射の3+4日後に実行した。3日目に、測定を、処置の前、ならびに処置後1時間、5時間および21時間で実行した。ペプチドおよびビヒクルを、s.c.(10μL/g))、および0μmol/kgまたは10μmol/kgの濃度で投与した。統計分析を、GraphPad Prism6.0を使用して実行した。二元配置反復測定分散分析にボンフェローニの事後検定が続いた。有意差水準を、p<0.05に設定した。
【0357】
結果:
足底内CFA注射後3日目に、熱痛覚過敏を、ハーグリーブステストを使用して注射された後足(同側)で確認した。10μmol/kg(10μL/グラム)のmyr-NPEG-(HWLKV)(mPD5)のs.c.投与に続いて、我々は、感作された足での足引っ込め潜伏期間における非常に有意な延長を観察し、一方で有意な変化は、対側の(健康な)足では観察されなかった。疼痛緩和は、5時間でそれほどはっきりせず、翌日(21時間)に完全に消失した。PBS(ビヒクル)の同様の注射は、いずれの足の足引っ込め潜伏期間にも影響しなかった(図19)。
【0358】
結論:
この実施例は、mPD5が、影響されない健康な足での熱感受性に影響することなく、炎症性疼痛のCFAモデルにおいて観察された熱過敏症を完全に緩和できることを示す。これは、接触に対し伝達する過敏性から侵害受容器の異なるサブセットにより神経支配される疼痛の重要なモダリティへと作用を広げる。
【0359】
【表3】
【0360】
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図1
図2
図2-1】
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図19
【手続補正書】
【提出日】2022-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023506598000001.app
【国際調査報告】