(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-17
(54)【発明の名称】電気直流回路網用の保護装置、車両用の車載電気システム、車両、および直流充電ステーション
(51)【国際特許分類】
H02H 3/20 20060101AFI20230210BHJP
B60L 3/04 20060101ALI20230210BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230210BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20230210BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20230210BHJP
B60L 53/14 20190101ALN20230210BHJP
B60L 58/10 20190101ALN20230210BHJP
【FI】
H02H3/20
B60L3/04 D
H02J7/00 P
H02H9/04 B
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536665
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2020085318
(87)【国際公開番号】W WO2021122234
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019008833.6
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
【テーマコード(参考)】
5G004
5G013
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004EA01
5G013AA02
5G013BA02
5G013CA05
5G013CB03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA10
5G503DA04
5G503FA06
5G503GA01
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC21
5H125DD02
5H125DD10
5H125EE22
5H125EE23
(57)【要約】
本発明は、電気直流回路網(1)用の、特に高電圧回路網用の、保護装置(8)に関するものである。
本発明によれば、保護装置(8)は、
正電位線(HV+L)と基準電位線(ML)との間に第一電圧測定装置(SV1)、および負電位線(HV-L)と基準電位線(ML)との間に第二電圧測定装置(SV2)を備え、
または
基準電位線(ML)における残留電流測定装置(10)を備え、
および、2つの保護回路部(9.1、9.2)を有する保護回路(9)を備え、第一保護回路部(9.1)が正電位線(HV+L)と基準電位線(ML)との間に第一放電抵抗器(Re1)と第一回路ブレーカー(SS1)の電気的直列回路を備え、および第二保護回路部(9.2)が負電位線(HV-L)と基準電位線(ML)との間に第二放電抵抗器(Re2)と第二回路ブレーカー(SS2)の電気的直列回路を備え、
および、その中で、
第一および第二回路ブレーカー(SS1、SS2)は、指定された電圧値を電圧が下回るおよび/または超えたことを第一および/または第二電圧測定装置(SV1、SV2)が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、
または
第一および/または第二回路ブレーカー(SS1、SS2)は、残留電流測定装置(10)によって残留電流が測定された場合に、閉じるように作動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気直流回路網(1)用の、特に高電圧回路網用の、保護装置(8)であって、
正電位線(HV+L)と基準電位線(ML)との間の電圧を測定するための前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)との間の第一電圧測定装置(SV1)、および負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間の電圧を測定するための前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間の第二電圧測定装置(SV2)、
または
前記基準電位線(ML)における残留電流測定装置(10)、
によって特徴づけられるものであり、
および、保護回路(9)によって特徴づけられるものであり、前記保護回路は、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)との間に放電抵抗器(Re)と第一回路ブレーカー(SS1)の電気的直列回路を備え、および、前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間に放電抵抗器(Re)と第二回路ブレーカー(SS2)の電気的直列回路を備え、または
2つの保護回路部(9.1、9.2)であって、第一保護回路部(9.1)が前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)との間に第一放電抵抗器(Re1)と第一回路ブレーカー(SS1)の電気的直列回路を備え、および第二保護回路部(9.2)が前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間に第二放電抵抗器(Re2)と第二回路ブレーカー(SS2)の電気的直列回路を備えるものであり、
および、その中で、
前記第一回路ブレーカー(SS1)は、指定された電圧値を電圧が下回ったことを前記第一電圧測定装置(SV1)が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、および/または指定された電圧値を電圧が超えたことを前記第二電圧測定装置(SV2)が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、
および
前記第二回路ブレーカー(SS2)は、指定された電圧値を電圧が下回ったことを前記第二電圧測定装置(SV2)が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、および/または指定された電圧値を電圧が超えたことを前記第一電圧測定装置(SV1)が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、
または
前記第一回路ブレーカー(SS1)および/または前記第二回路ブレーカー(SS2)は、前記残留電流測定装置(10)によって残留電流が測定された場合に、閉じるように作動可能である、前記保護装置(8)。
【請求項2】
保護コンデンサー(Cs,Cs1,Cs2)が、前記放電抵抗器(Re,Re1,Re2)と電気的に並列接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護装置(8)。
【請求項3】
前記保護コンデンサー(Cs,Cs1,Cs2)と保護抵抗器(Rs,Rs1,Rs2)から構成される電気的直列回路が、前記放電抵抗器(Re,Re1,Re2)と電気的に並列接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の保護装置(8)。
【請求項4】
前記第一電圧測定装置(SV1)と前記第一回路ブレーカー(SS1)とに結合された第一電圧評価装置が、前記第一電圧測定装置(SV1)によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に前記第一回路ブレーカー(SS1)を作動させるために提供され、および、前記第二電圧測定装置(SV2)と前記第二回路ブレーカー(SS2)とに結合された第二電圧評価装置が、第二電圧測定装置(SV2)によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に前記第二回路ブレーカー(SS2)を作動させるために提供され、または
前記第一電圧測定装置(SV1)と前記第二回路ブレーカー(SS2)とに結合された前記第一電圧評価装置が、前記第一電圧測定装置(SV1)によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が超えた場合に前記第二回路ブレーカー(SS2)を作動させるために提供され、および、前記第二電圧測定装置(SV2)と前記第一回路ブレーカー(SS1)とに結合された前記第二電圧評価装置が、前記第二電圧測定装置(SV2)によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が超えた場合に前記第一回路ブレーカー(SS1)を作動させるために提供され、または
前記残留電流測定装置(10)と前記回路ブレーカー(SS1、SS2)とに結合された電流評価装置(11)が、測定残留電流の評価のため、および測定残留電流に基づいて前記第一回路ブレーカー(SS1)および/または前記第二回路ブレーカー(SS2)を作動させるために提供され、または
前記電圧測定装置(SV1、SV2)と前記回路ブレーカー(SS1、SS2)とに結合された共通の電圧評価装置(12)が、前記第一電圧測定装置(SV1)によって確認された電圧と前記第二電圧測定装置(SV2)によって確認された電圧とを評価するために提供され、および前記第一電圧測定装置(SV1)または前記第二電圧測定装置(SV2)によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に前記第一回路ブレーカー(SS1)を作動させるために、および前記第二電圧測定装置(SV2)または前記第一電圧測定装置(SV1)によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に前記第二回路ブレーカー(SS2)を作動させるために提供される、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護装置(8)。
【請求項5】
前記共通の電圧評価装置(12)が、第三電圧測定装置(SV3)と第四電圧測定装置(SV4)とに結合され、前記第三電圧測定装置(SV3)は前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)との間の電圧を測定するために前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)との間に配置され、前記第四電圧測定装置(SV4)は前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間の電圧を測定するために前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)との間に配置され、第一切り替え装置が、前記第一電圧測定装置(SV1)への接続ポイントと前記第三電圧測定装置(SV3)への接続ポイントとの間の前記正電位線(HV+L)に配置され、第二切り替え装置が、前記第二電圧測定装置(SV2)への接続ポイントと前記第四電圧測定装置(SV4)への接続ポイントとの間の前記負電位線(HV-L)に配置される、
ことを特徴とする、請求項4に記載の保護装置(8)。
【請求項6】
それぞれの前記回路ブレーカー(SS1、SS2)が、半導体スイッチとして設計されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の保護装置(8)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の保護装置(8)を備えた車載電気システム(3)、特に車両(2)用の高電圧車載電気システム(3)。
【請求項8】
請求項7に記載の車載電気システム(3)を備えた車両(2)、特に電気自動車またはハイブリッド車。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載の保護装置(8)を備えた直流充電ステーション(5)、特に高電圧直流充電ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段の構成に従った電気直流回路網用の保護装置、車両用の車載電気システム、車両、および直流充電ステーションに関するものである。
【0002】
特許文献1に記載されているように、車載電気システムを操作する方法が先行技術から知られている。第一直流電圧が適用される第一車載電気システムの操作方法、および第二直流電圧が適用される第二車載電気システムの操作方法において、第一および第二の車載電気システムは、第一測定エネルギーコンバーターを有するエネルギーカプラーによって電気的に結合されている。第一および第二直流電圧は、電気絶縁装置によって電気基準電位から絶縁されている。電気絶縁装置は監視されている。第一および第二の車載電気システムは、エネルギーカプラーによって電気的に結合されている。2つの車載電気システムの一方の領域で絶縁装置に不良が発生した場合、基準電位からの電位の電位差が規定の比較値より小さくなるように、エネルギーカプラーは2つの車載電気システムの他方の電位を制御する。
【0003】
特許文献2は、車載電気システムを電気的に結合するエネルギーカプラー、および車載電気システムを電気的に結合する方法を記載している。適用される第一電気直流電圧を有する第一車載電気システムを、適用される第二電気直流電圧を有する第二車載電気システムに電気的に結合するためのエネルギーカプラーは、第一測定エネルギーコンバーターと第二測定エネルギーコンバーターを有する。第一および第二測定エネルギーコンバーターは、それぞれ車載電気システム接続および中間回路接続を有する。第一測定エネルギーコンバーターの車載電気システム接続は、第一車載電気システムに接続されており、第二測定エネルギーコンバーターの車載電気システム接続は、第二車載電気システムに接続されている。第一および第二測定エネルギーコンバーターの中間回路接続は、共通の直流電圧中間回路に接続されている。直流電圧中間回路の第一電位は、第一測定エネルギーコンバーターによって第一車載電気システムの電位のひとつに電気的に接続されており、直流電圧中間回路の第二電位は、第二測定エネルギーコンバーターによって第二車載電気システムの電位のひとつに電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 10 2017 009 355 A1
【特許文献2】DE 10 2017 009 352 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、先行技術と比較して改良された電気直流回路網用の保護装置、先行技術と比較して改良された車両用の車載電気システム、そのような車載電気システムを有する車両、および先行技術と比較して改良された直流充電ステーションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する電気直流回路網用の保護装置、請求項7の特徴を有する車両用の車載電気システム、請求項8の特徴を有する車両、および請求項9の特徴を有する直流充電ステーションにより、本発明に従って解決される。
【0007】
本発明の有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0008】
本発明による電気直流回路網用の、特に高電圧回路網用の、例えば車両の車載電気システム用の、保護装置は、正電位線と基準電位線との間の電圧を測定するための正電位線と基準電位線との間に第一電圧測定装置を備え、および負電位線と基準電位線との間の電圧を測定するために負電位線と基準電位線との間に第二電圧測定装置を備える。基準電位は、特に電気接地電位であり、特に車両において保護装置が使用される場合には車台電位であり、例えば、保護装置が直流充電ステーションで使用される場合には接地電位である。
【0009】
保護装置はまた、保護回路を備える。保護回路は、例えば正電位線と基準電位線との間の放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列回路、および、負電位線と基準電位線との間の放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列回路を備える。代わりに、保護回路は、2つの保護回路部であって、第一保護回路部が正電位線と基準電位線との間に第一放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列接続回路を備え、および第二保護回路部が負電位線と基準電位線との間に第二放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列接続回路を備える。
【0010】
保護装置の保護回路の両方の変形において、第一回路ブレーカーは、指定された電圧値を電圧が下回ったことを第一電圧測定装置が確認した場合に、閉じるよう作動可能であり、第二回路ブレーカーは、指定された電圧値を電圧が下回ったことを第二の電圧測定装置が確認した場合に、閉じるように作動可能である。
【0011】
別の方法として、第一回路ブレーカーは、指定された電圧値を電圧が超えたことを第二電圧測定装置が確認した場合に、閉じるように作動可能であり、第二回路ブレーカーは、指定された電圧値を電圧が超えたことを第一電圧測定装置が確認した場合に、閉じるように作動可能である。
【0012】
2つの電圧測定装置の代わりに、残留電流測定装置を基準電位線に提供することができる。そして、保護回路の両方の変形において、第一回路ブレーカーおよび/または第二回路ブレーカーは、残留電流測定装置によって残留電流が測定された場合に、閉じるように作動可能である。
【0013】
車両用の、特に電気自動車またはハイブリッド車用の、本発明による車載電気システム、特に高電圧車載電気システムは、そのような保護装置を備える。
【0014】
本発明による車両、特に電気自動車またはハイブリッド車は、そのような保護装置を備え、特に車載電気システム、特に高電圧車載電気システムは、そのような保護装置を備える。
【0015】
車両、特に電気自動車またはハイブリッド車、特にその種の車両の高電圧バッテリーを電気充電するための、本発明による直流充電ステーション、特に車外にある直流充電ステーション、特に高電圧直流充電ステーションは、そのような保護装置を備える。
【0016】
「高電圧」という用語は特に60V以上の電気直流電圧を意味することと理解するべきである。特に、「高電圧」という用語はECE R 100基準を順守していると解釈すべきである。
【0017】
本発明による解決策は、車両、特に電気自動車およびハイブリッド車における、および直流充電ステーションにおける、Yコンデンサーに関する課題を解決するものである。その種のYコンデンサーはEMC(EMC=電磁両立性)干渉の放出を削減するための方策として使用されている。但し、高電圧の安全性の理由から潜在的な危険性が増す恐れがある。例えば、SAE J1772,IEC60479-1および2基準はYコンデンサーにおいて含まれた充電量を健康への危険性(C1特性)として言及している。車両の作動電圧が高まるにつれ、これらの基準の必要とされている制限値内に遵守することが非常に困難になってくる。場合によっては、強化された特に二重の電気絶縁等は安全条件を遵守しようとする他の方法も許されていない。更なる基準LV123および関連する基準では、例えば、全てのYコンデンサーの充電量のために、0.2Jの最大エネルギー量を定めている。別の方法による抜け道が可能であれば、例えば、既に前記した強化された二重の電気絶縁を使用することができる。但し、これは一緒に結合された全ての高電圧システムが絶縁によって強化されている場合のみ実施可能である。これはつまり、例えば、直流充電の場合、車両と直流充電ステーションの両方が、特に充電極において、それぞれ絶縁が強化されていなくてはならない。但し、これに対する強制的な基準がないため、安全条件には遵守しないが、異なる絶縁設計によるシステムを結合することが可能となる。
【0018】
この問題は、特に接地電位が基準電位に関して高電圧電位の移動を検出するため、基準電位に関しては高電圧電位毎の電圧測定が人体電流の結果、つまり、特に人間の体が高電圧電位のひとつと基準電位との接触の結果となるため、説明されている本発明によって解決される。影響を受けている高電圧電位においてなるべく迅速に電圧を落とすためには、基準電圧に対する電圧が減らされ、放電抵抗器が付け加えられ、充電されていない保護コンデンサーが電気的に並列に追加されることが好ましい。基準電位への影響を受けた高電圧電位との間の電圧は従ってより低いレベルに下がり、電圧の割に人体電流を減らす。本発明による解決策は従って特に人体におけるYコンデンサーによって発生する電気ショックを減らすことを可能にしてくれる。従って前記されている必要条件を遵守することも可能となる。同様に、人体抵抗によって変換されたYコンデンサーの電気エネルギーを0.2J以下に制限することが可能であるが、Yコンデンサーに貯蔵されているエネルギーはより高くなる場合がある。
【0019】
上述のように、保護コンデンサーは放電抵抗器と電気的に並列接続されることが好ましい。放電抵抗器単体は人体の電流を迅速に減らすために非常に低い抵抗を有していなくてはならない。但し、不利な点として、これが低抵抗絶縁不良を発生させることである。従って、放電抵抗器と保護コンデンサーが電気的に並列接続される組み合わせの方がより好ましい。放電抵抗器は、既に電気的に並列接続されている保護コンデンサーが接続時に電圧がゼロであることを保証してくれる。スイッチを入れた後、影響のある高電圧電位のYコンデンサーの迅速な放電を保証してくれる。
【0020】
従って、保護回路は、例えば、正電位線と基準電位線との間の放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列回路、および、負電位線と基準電位線との間の放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、保護コンデンサーが放電抵抗器と電気的に並列接続されている。代わりに、保護回路は2つの保護回路部を備え、第一保護回路部は正電位線と基準電位線との間に第一放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、第一保護コンデンサーは第一放電抵抗器と電気的に並列接続されており、および第二保護回路部は負電位線と基準電位線との間に第二放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、第二保護コンデンサーは第二放電抵抗器と電気的に並列接続されている。
【0021】
例えば、保護コンデンサーが放電抵抗器と電気的に並列接続されているだけではなく、保護コンデンサーと保護抵抗器から成る電気的直列回路が電気的に並列接続されている。保護抵抗器は、保護コンデンサーを介して電流を制限するために有利に使用される。
【0022】
従って、保護回路は、例えば、正電位線と基準電位線との間の放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列回路、および負電位線と標準電位線との間の放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、保護コンデンサーと保護抵抗器から成る電気的直列回路が、放電抵抗器に電気的に並列接続されている。代わりに、保護回路は2つの保護回路部を備え、第一保護回路部は、正電位線と基準電位線との間に第一放電抵抗器と第一回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、第一保護コンデンサーと第一保護抵抗器の電気的直列回路が第一放電抵抗器に電気的に並列接続されており、第二保護回路部は、負電位線と基準電位線との間に第二放電抵抗器と第二回路ブレーカーの電気的直列回路を備え、第二保護コンデンサーと第二保護抵抗器の電気的直列回路が第二放電抵抗器に電気的に並列接続されている。
【0023】
例えば、第一電圧測定装置と第一回路ブレーカーとに結合された第一電圧評価装置は、第一電圧測定装置によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に第一回路ブレーカーを作動させるために提供され、および、第二電圧測定装置と第二回路ブレーカーとに結合された第二電圧評価装置は、第二電圧測定装置によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に第二回路ブレーカーを作動させるために提供されている。
【0024】
代わりに、例えば、電圧測定装置と回路ブレーカーとに結合された共通の電圧評価装置が、第一電圧測定装置によって確認された電圧と第二電圧測定装置によって確認された電圧とを評価するために提供され、および第一電圧測定装置によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に第一回路ブレーカーを作動させ、および第二電圧測定装置によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に第二回路ブレーカーを作動させるために提供される。
【0025】
残留電流測定装置を使用する場合、例えば、残留電流測定装置と回路ブレーカーとに結合された電流評価装置が、測定残留電流の評価のため、および測定残留電流に基づいて第一回路ブレーカーおよび/または第二回路ブレーカーを作動させるために提供される。
【0026】
可能な実施形態の一つとして、共通の電圧評価装置が、第三電圧測定装置と第四電圧測定装置とに結合され、第三電圧測定装置は正電位線と基準電位線との間の電圧を測定するために正電位線と基準電位線との間に配置され、第四電圧測定装置は負電位線と基準電位線との間の電圧を測定するために負電位線と基準電位線との間に配置され、第一切り替え装置は第一電圧測定装置への接続ポイントと第三電圧測定装置への接続ポイントとの間の正電位線の中に配置され、第二切り替え装置は第二電圧測定装置への接続ポイントと第四電圧測定装置への接続ポイントとの間の負電位線に配置される。この実施形態は。特に電気自動車またはハイブリッド車の高電圧車載電気システムに好ましく、第一および第二切り替え装置が高電圧車載電気システムの充電接触器となり、それは直流充電ステーションへの接続後直流充電のために閉じられる。この解決策は切り替え装置以前より決めることが可能、つまり、充電接触器が閉じられており、保護回路が例えば、充電ケーブルにおける絶縁不良の際における法的制限に遵守できることに関係なく、Yコンデンサーの静電容量が直流充電ステーションと車両の並列接続の結果として増加する。
【0027】
それぞれの回路ブレーカーは、例えば、MOSFET、IGBTまたはサイリスタなどの半導体スイッチとして設計される。
【0028】
本発明の実施形態の例は図面と関連して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】保護装置を有する直流回路網の一実施形態を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の保護装置の作動モードを模式的に示す図である。
【
図4】保護装置を有する直流回路網の別の実施形態を模式的に示す図である。
【
図5】保護装置を有する直流回路網の別の実施形態を模式的に示す図である。
【
図6】シミュレーションの模式的シミュレーション結果を示す図である。
【
図7】シミュレーションの模式的シミュレーション結果を示す図である。
【
図8】シミュレーションの模式的シミュレーション結果を示す図である。
【
図9】部品最適化保護回路を模式的に示す図である。
【
図11】保護回路の動作モードを模式的に示す図である。
【
図12】
図11に示す動作モードにおける経時的な電圧および電流を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
互いに対応する部分は、全ての図において同じ参照符号がつけられている。
【0031】
電気直流回路網1用の、特に高電圧回路網用の保護装置8が、以下の
図1から
図13を参照して説明される。示された例において、高電圧回路網は、車両2の、特に電気自動車またはハイブリッド車の高電圧車載電気システム3であり、そこでは保護装置8が好適に使用される。しかしながら、保護装置8は、車両2およびその他車両、特に電気自動車およびハイブリッド車が車両2の高電圧バッテリー6を電気的に充電するために接続可能な、直流充電ステーション5においても代替的または追加的に使用可能である。そして直流回路網1は、車両2の接続された状態で、車両2の車載回路網3、特に高電圧車載回路網3、および直流充電ステーション5を備える。この直流充電ステーション5で電気的に充電される車両2の高電圧バッテリー6は、車両2の運転のための少なくとも1つの電気駆動装置のために、特に電気エネルギーを提供するために使用される。
【0032】
車両2と直流充電ステーション5の両方において、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-が、EMC(EMC=電磁両立性)干渉の放出を減らす対策として使用されている。特に、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-は、ほとんどの場合、例えばコモンモードまたは差動モードスロットルなどの誘導性干渉抑圧フィルターに比べ、より効率的でよりコンパクトなEMCフィルター対策である。従って、EMCの観点から、大きな静電容量値を有するYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-を使用することが有利である。
【0033】
しかしながら、電動車両2、換言すれば、例えば、電気自動車またはハイブリッド車の欠点は、車両ユーザーが高電圧電位HV+、HV-に接触可能とされ、同時に接地電位に接続される場合、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-のエネルギー容量が彼らにとって重要であることである。その時には、彼らは電気ショックを受ける。この電気ショックの度合いにより、健康リスクがあり得る。例えば、心室細動または死に至ることがある。このような電気ショックは、通常「単一故障」と呼ばれるものを構成し、避けるべきである。従って、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-のエネルギー容量は、車両ユーザーへの危険を排除するために、基準によって制限されている。
【0034】
従って、高電圧の安全性の観点から、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の小さい静電容量値が有利である。基準が、例えばLV123で規定されている下では、最大エネルギー容量、特に0.2Jは、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-において超えてはならず、または、例えばより大きな絶縁とするなど、「代替手段」が取られるべきである。但し、この必然的な結果は、2つの高電圧システム、例えば車両2と直流充電ステーション5を結合するとき、より大きな絶縁が「代替手段」として選択される場合、関係する両方の部分が同時に常にこのより大きな絶縁を有していなければならないことである。しかしながら、これは現在保証できない。
【0035】
他の基準、例えばSAE J1772、IEC60479-1およびIEC60479-2の下では、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-のエネルギー容量は、健康リスクとしておよび超えてはならない変数として言及されておらず、代わりに充電量が、規定値を超えてはならない有害なメカニズムとして言及されている。例えば、人体の電流IRKの期間と人体の電流IRK値との関係を示すグラフがまた提供される。例えばより大きな絶縁などの別の方法は、ここでは認められていない。
【0036】
図1は、車両2の直流充電プロセスにおける高電圧回路網として構成された電気直流回路網1の一実施形態の回路構成を示す。従って、直流回路網1は、充電ケーブル4によって接続される車両2の高電圧車載電気システム3および直流充電ステーション5を備える。示された実施例において、充電ケーブル4は、既に車両2の直流充電接続部の接続接点AK+、AK-に接続されており、高電圧電位線HV+L、HV-Lにおける車両2の充電接触器LS+、LS-はまだ開いている。
【0037】
左側には、充電ステーション電圧源8、充電ステーション内部抵抗RLS、およびYコンデンサーCyL+、CyL-を有する直流充電ステーション5がある。
【0038】
次にこれらの右側に充電ケーブル4が示されている。
【0039】
次にその右側に、高電圧電気システム3を有する車両2が示されており、それは充電接触器LS+、LS-、YコンデンサーCyF+、CyF-、例えばEMCフィルター、XコンデンサーCx、例えば直流中間回路、および主接触器HS+、HS-を有する高電圧バッテリー6を備える。高電圧バッテリー6はバッテリー電源7として示されており、それは例えば、バッテリー内部抵抗RBattを有する、電気的に直列および/または並列に接続された複数の個別セルを備える。
【0040】
また、この回路図では、人体MKが、人体抵抗RKおよび絶縁不良IFのためのスイッチ符号で示されており、例えば欠陥のある充電ケーブル4の場合、ここでは例えば正電位HV+に不良がある。絶縁不良IFは同様に、負電位HV-でも発生することがある。これはここには示されていない。絶縁不良IFが発生すると、スイッチ符号が閉じられる。この種の絶縁不良IFの場合で、人体MKが高電圧電位HV+、HV-の一方と基準電位Mとの間で接触した場合、人体MKを通して放電が発生する。
【0041】
人体MKを通しての放電を避ける、または少なくとも許容レベルまでそれを減らすために、特に、健康リスクの見地から、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-により電気ショックを減らすために、保護回路9を有する保護装置8が提供される。示されている例では、保護装置8は、正電位線HV+Lと基準電位Mとの間の電圧を測定するために、正電位線HV+Lと基準電位線ML(つまり正電位HV+と基準電位M、特に接地電位、特に車両外殻)との間に第一電圧測定装置SV1を備え、および、負電位線HV-Lと基準電位線ML(つまり負電位HV-と基準電位M、特に接地電位、特に車両外殻)との間に第二電圧測定装置SV2を備える。
【0042】
代わりに、示されていない実施形態では、第一電圧測定装置はHV電位(HV-またはHV+)と基準電位Mとの間に配置されることができ、そして各第二電圧測定装置は2つのHV電位(HV-およびHV+)の間に配置されることができる。
【0043】
電圧測定、特に電圧測定装置SV1、SV2は、規定電圧を下回った場合に、関連する回路ブレーカーSS1、SS2を制御する。回路ブレーカーSS1、SS2はそれぞれ、例えば、MOSFETのような半導体スイッチとして構成されている。その結果、放電回路網は、正電位HV+と基準電位M、特に外殻との間に接続され、または、放電回路網は、負電位HV-と基準電位M、特に外殻との間に接続される。示されている例の中で、これらの放電回路網は、保護回路9の保護回路部9.1、9.2である。
【0044】
それぞれの放電回路網、換言すればそれぞれの保護回路部9.1、9.2は、以下に保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2と呼ばれる充電されていないコンデンサー、および、以下に放電抵抗器Re、Re1、Re2と呼ばれる電気的に並列接続された抵抗器から構成される。更に、保護抵抗器Rs、Rs1、Rs2が提供され、それは保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2に電気的に直列接続されている。また例えば、放電抵抗器Re、Re1、Re2のみを提供することができるが、これは人体の電流IRKを迅速に減らすために、非常に低い抵抗でなくてはならない。しかしながら、この欠点は、低抵抗絶縁不良を発生させることである。その結果、保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2と放電抵抗器Re、Re1、Re2との組み合わせのみが、以下で考慮される。
【0045】
各Re、Re1、Re2は、電気的に並列接続された保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2が接続時に無電圧であることを保証する。スイッチを入れた後、それは影響を受ける高電圧電位HV+、HV-のYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の迅速な充電を保証する。
図1に従って示す例では、車両2内に保護回路9を備えた保護装置8が配置されている。しかしながら、直流充電ステーション5内に同じ機能を配置することも可能である。
【0046】
図2は、保護装置8、特に保護回路9、特に各保護回路部9.1と9.2の操作モードを示す。不良検出は、基準電位Mに関し電圧測定を介して行われる。
【0047】
直流充電プロセスの間、高電圧電位HV+、HV-は基準電位Mに関し対称的に配分される必要はないが、基準電位Mに関し高電圧電位HV+、HV-の絶縁値は、例えば100オーム/ボルト以上を少なくとも保証されなくてはならない。高電圧電位HV+、HV-の人体との接触は絶縁抵抗を減少させ、結果的に、基準電位Mに関し高電圧電位HV+、HV-のシフトをもたらす。
【0048】
車両2または直流充電ステーション5における絶縁モニターは定期的に絶縁抵抗をチェックするが、絶縁不良IFの検出までに経過する時間の長さが、車両2では最大30秒であり、または直流充電ステーション5では最大2分であって、それは長すぎて、絶縁が消失している場合、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyF+、CyF-内に蓄積されたエネルギーから人へのショックに対する保護を形成することができない。
【0049】
Cyショックを減らすための保護回路9を有する保護装置8の操作モードは、例えば、基準SAE J1772、IEC60479-1およびIEC60479-2にて記載されている危険な電位に関する制限値に焦点を当てる。図で示されている人体MKの中を流れる電荷量は、ここでは有害メカニズムとして述べられている。従って、その目的は、電荷の流れを最小限にするため、人体電流IRKを検出および減らすことである。機械的な充電接触器LS+、LS-および/または主接触器HS+、HS-を単に作動させるだけでは遅すぎる。
【0050】
上述の保護回路9では、絶縁値の低下が電圧測定によって迅速に検出され、その結果、放電された保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2が、例えばハードウェア回路を介して、人体抵抗RKまたはYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-に関係する高電圧電位HV+、HV-に直ちに並列接続される。従って電圧は、高電圧電位HV+、HV-および基準電位Mにわたって急激に減少する。人体MKを介して流れる電流は、電圧の減少に比例して低下する。
【0051】
放電抵抗器Re、Re1、Re2には2つの機能がある。一方は、保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2が接続される前にそれが完全に放電されていることを保証することである。他方は、その接続後に、この高電圧電位HV+、HV-と基準電位Mとの間の既に減少された電圧の減少を加速させることであり、その結果、人体MKを通る電流もまた、更に下落する電圧と共に減少する。別の高電圧電位HV-、HV+は、基準電位Mに関し同じ範囲内で電圧を上げるが、人体MKによって触れられないため、危険性はない。更なるステップにおいて、高電圧バッテリー6の主接触器HS+、HS-が有利に開かれ、直流充電ステーション5内の接触器および/または充電接触器LS+、LSが開かれ、そして最終ステップとして、車両2のXコンデンサーCxおよびYコンデンサーCyF+、CyF-がアクティブ放電される。
【0052】
図3は、残留電流測定装置10による残留電流測定を介した代替の故障検出を示す。基準電位Mに関するそれぞれの高電圧電位HV+、HVの電圧測定を介した故障検出の代わりに、残留電流検出を使用することも可能である。このために、保護装置8は、基準電位線MLに残留電流測定装置10を備える。第一回路ブレーカーSS1および/または第二回路ブレーカーSS2は、残留電流測定装置10によって残留電流が測定された場合、閉じるように作動可能であり、したがって、そのような場合には、それに応じて制御され、閉じられる。残留電流測定装置10と回路ブレーカーSS1、SS2に接続される電流評価装置11は、測定された残留電流を評価するために、および測定された残留電流に基づいて第一回路ブレーカーSS1および/または第二回路ブレーカーSS2を作動させるために、ここで提供されることが好ましい。
【0053】
但し、この方法は、比較的高い直流充電電流が非常に低い残留電流のために分析されなくてはならないため、非常に困難である。更に、直流充電ステーション5の出力電流には、リップル電流、つまり交流成分を含んでいるため、残留電流においてコモンモード干渉と差動モード干渉との間の区別をしなければならない。
【0054】
電圧測定を介した不良検出は従って実行も簡単で好ましい。以下では、電圧測定による不良検出が更に説明される。
【0055】
保護回路9を有する保護装置8は、特定の規格、例えばIEC60479-1規格に準拠可能である。直流充電電圧が高ければ高いほど、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-に印加される電圧は高くなる。これはまた、仮定の人体抵抗RKに対して、接触開始におけるYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の電圧に比例してより大きな電流という結果となる。人体を通る電流は、抵抗器を介したコンデンサー放電の進行と共に、特に指数関数の形で減少する。接触開始時の電流は、電圧と抵抗の商から計算される。最大充電電圧が920Vと仮定し、基準電位M(各Yコンデンサーで460V)に対して対称的であると仮定される高電圧電位分布を用いると、460V/1200オーム=383mAの接触電流の初期値が得られる。この電流の初期値から始めて、この電流を6の平方根で除算することによって正弦波交流電流へ変換することができる。これはSAE J1772規格におけるいわゆるC1特性曲線におけるX軸上の値に相当する。この電流の持続時間は、コンデンサー放電の時定数t=RxCを計算することによって求めることができる。対応する期間(Y軸)は、3xtに相当する。例えば、約100ミリ秒この状態が許容される。5mA未満の残留人体電流IRKが、目標として選ばれて、つまり、残留電圧は6V未満でなければならない。
【0056】
YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の電圧が高ければ高いほど、例えば、基準電位Mに対して非対称の高電圧電位分布を持つほど、最大滞留時間はより短くなる。500mA以上の電流は、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-で最大電圧が600Vとなるため、許可されない。さらに、充電プロセスを中止しなければならない。
【0057】
保護回路9を有する保護装置8によって、必要な最大電流持続時間を維持可能かどうか計算することができる。この条件が満たされない場合、更なる欠陥が身体に危険を及ぼすため、充電プロセスを直ちに中止しなければならない。この計算の入力変数は、両方の高電圧電位HV+、HV-のYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-での電圧測定値、回路の反応速度の知識、および最大許容電流滞留時間の値表である。
【0058】
図4は、安全または安全でない動作状態の判定を示している。回路が2つの追加の電圧測定装置SV3、SV4によって拡張されている。従って、充電接触器LS+、LSの接続前で、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の静電容量が、直流充電ステーション5と車両2の並列接続の結果として必然的に増加する前でも、例えば充電ケーブル4における絶縁不良の場合に、保護回路9が法定制限値に順守できるか否かを判定することができる。理想的には、車両2のいわゆる接触器接続検出は、4つ全ての電圧測定に使用される。但し、電圧評価時に保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2をオンにするまでの最大遅延時間を超えないことが条件である。従って、これはハードウェア側で有利に行われ、マイクロプロセッサーを介して評価は行われない。
【0059】
ここでは電圧評価装置12が提供され、その中で電圧測定装置SV1からSV4によって検出された電圧が評価され、それに従って回路ブレーカーSS1、SS2が作動可能となる。更に、この電圧評価装置12は、更なる情報Iを、特に、低速の制御装置または直流充電ステーション5に出力することができることを提供してもよい。例示的な情報Iは、充電接触器LS+、LS-の開閉、直流充電プロセスの中断、高電圧バッテリー6の主接触器HS+、HS-の開閉、車両2の高電圧中間回路のアクティブ放電の開始、および/または全てが正常で、直流充電プロセスを開始することができる情報Iである。
【0060】
図5は、特に車両2の駆動操作、交流充電操作および組み立ておよびサービス作業のための、直流充電ステーション5のない直流回路網1を示す。直流充電の状態との唯一の違いは、直流充電ステーション5がないことである。例えば、事故による欠陥のある高電圧ケーブルまたは高電圧電気システムの欠陥ハウジングは、メカニズム不良として考えられる。また、高電圧システムが組み立てまたはメンテナンス中に破損した場合、保護回路9を有する保護装置8は充電量を減らすことができる。
【0061】
絶縁不良IFによって発生したYショックを減らすための保護回路9は、上述のものと同一である。このため、保護回路9を有する保護装置8は、車両2に当然配置される。その機能は、直流充電中の絶縁不良のためで上述のものと同一である。高電圧電位HV+、HV-の一方と基準電位Mとの間の電圧低下の検出によって、それぞれ保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2が接続され、影響を受けた高電圧電位HV+、HV-のYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の合計容量が放電される。また、高電圧バッテリー6の主接触器HS+、HSの開放が好適に命じられ、車両2のXコンデンサーCxとYコンデンサーCyF+、CyF-の両方のアクティブ放電が開始される。充電接触器LS+、LS-は既に前から開いており、開いたままとなる。
【0062】
以下では、正電位HV+において障害を有する直流充電ステーション5での直流充電中の絶縁不良によるYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の放電シミュレーションが説明される。直流充電ステーション5の電圧は920Vである。高電圧バッテリー6のバッテリー電圧は915Vである。全ての絶縁抵抗は1Mオームである。充電ステーション5のYコンデンサーCyL+、CyL-の静電容量はそれぞれ500nFである。車両2のYコンデンサーCyF+、CyF-の静電容量はそれぞれ1000nFである。人体抵抗RKは1200オームである。第一保護回路部9.1の第一放電抵抗器Re1は1200オームである。第一保護回路部9.1の第一保護コンデンサーCs1の静電容量は200μFである。第一保護回路部9.1の第一保護抵抗器Rs1は1オームである。
【0063】
時間t=0.05秒において、絶縁不良IFを示すスイッチを閉じることにより、人体抵抗RKは正電位HV+と基準電位Mとの間に接続される。正電位HV+と基準電位Mとの間の電圧が350Vを下回ると、第一回路ブレーカーSS1が閉じられ、放電回路網、つまり、第一保護回路部9.1が接続される。
【0064】
シミュレーションは、第一保護コンデンサーCs1のスイッチを入れた後の5mA未満の目標値に基づいている。この値に時間制限はない。但し、放電抵抗器Re、Re1、Re2によってより迅速に減らすことができるより大きな人体電流IRKが目標値として許容されている場合、それぞれの保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2の大幅な減少が可能となる。
【0065】
図6から
図8はシミュレーション結果を示している。
図6は、時間tで、直流充電ステーション5および車両2のYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の電圧UCyF+、UCyF-、UCyL+、UCyL-および電流ICyF+、ICyF-、ICyL+、ICyL-を示す。人体抵抗R
Kは、t=0.05s時に接続される。静電容量の再充電が行われ、それはこのスケールでは見ることはできないが、
図7の人体電流IR
Kの図ではより明確である。但し、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の電圧UCyF+、UCyF-、UCyL+、UCyL-において、再充電が見られる。t=約0.051sから、第一保護コンデンサーCs1が接続される。これはYコンデンサーCyL+、CyF+のほぼ瞬時の放電につながる。t=約0.0515s時における残留電圧は5.2Vである。再充電電流(電位によって約60A-130A)は、第一保護抵抗器Rs1によって決められる。高電圧電位HV+、HV-が保護コンデンサーCs1によって再充電された後、つまり、約0.051s後に、負電位HV-と基準電位Mの電圧は911.4Vである。
【0066】
図7は、人体抵抗R
Kの電圧UR
K、その電流IR
K、第一放電抵抗器Re1の電流IRe1、および第一保護コンデンサーCs1の電流ICs1と電圧UCs1を示している。障害発生時の人体電流IR
Kは383mAである。それは、第一回路ブレーカーSS1のスイッチが入るまで、約292mAの値に指数関数的に減少する。第一回路ブレーカーSS1が閉じた後、正電位HV+と基準電位Mとの間の電圧が350V未満の場合、人体電流IR
Kは約4.3mA(t=約0.051sで)の値まで落ち、これは同様に指数関数的に減少する。第一回路ブレーカーSS1が閉じると、第一保護コンデンサーCs1内の電流ICs1は、全てのYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の電流ICyF+、ICyF-、ICyL+、ICyL-の合計に相当する。それは約350Aである。
【0067】
図8は、人体抵抗R
Kの電流IR
K、および人体抵抗R
Kの中を流れる電荷LR
K、および人体抵抗R
Kを介して移されるエネルギーER
Kを再び示している。電荷LR
Kは、t=約0.051sの時に約0326Cであり、その後少しだけ増加する。人体抵抗R
Kを介して移されたエネルギーER
Kは0.131Jで、それはLV123規格で要求される最大値0.2Jよりも低い。この最大値は、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の中に蓄えられるエネルギーに実際適用されるが、このエネルギー容量は人体MR
K内で放電し、保護回路9によって制限されないと仮定される。従って、この保護回路9は、「代替手段」を構成することもできる。
【0068】
図9は、部品最適化保護回路9を示す。Cyショックを減らすための保護回路9の場合、例えば車台接地のために人体抵抗R
Kを介してただひとつの高電圧電位HV+、HV-が基準電位Mに接続されていると仮定できる。仮に両電圧電位HV+、HV-が基準電位M、特に車台接地に接続された場合、これは高電圧バッテリー6または直流充電ステーション5の短絡に相当し、ヒューズ、または制御可能な切断装置を有する電流センサーによって分離されなければならない。
【0069】
このことから、Cyショックを減らすための保護回路9は、正電位HV+と負電位HV-に対して同時に使用してはいけないことが明らかである。従って、単一の保護コンデンサーCs、放電抵抗器Re、および保護抵抗器Rsは、
図9で示されているように、両高電圧電位HV+、HV-を保護するために使用されることができる。従って、2つの保護回路部9.1、9.2を必要としない。2つの電圧測定装置SV1、SV2による電圧測定、および保護回路9の接続のための2つの回路ブレーカーSS1、SS2が維持されなければならない。
図9はその種の部品の最適化を示す。これは、放電抵抗Reが、例えば車両2と直流充電ステーション5におけるYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の高い作動電圧または大きな静電容量のために、より大きな部品値を仮定する場合に便利である。
【0070】
図10は、特に部品最適化保護回路9を有する、つまり、2つの保護回路部9.1、9.2を有しない、保護装置8の一実施形態を示す。回路ブレーカーSS1、SS2は、ここではそれぞれMOSFETで設計されているが、その他の半導体スイッチ、例えば、IGBTまたはサイリスタも可能である。保護装置8、特にその保護回路9は、車両2または直流充電ステーション5に統合されるために必要な追加の労力に対しここで低減される。正電位HV+、負電位HV-および基準電位Mへの接続AHV+、AHV、AMは、不良障害発生のときだけミリ秒範囲で電流が流れるため、非常に小さく抑えることができる。それ以外では、接続AHV+、AHV-、AMは、電流なしで電圧測定のためだけに使用される。保護回路9を有する保護装置8をわずかな変更で既存の高電圧システムに迅速に組み込むことが可能である。計画時間に余裕があれば、この機能はもちろん既存の装置に組み込むことも可能である。
【0071】
図11は、コンデンサー、ここでは保護コンデンサーCsを既存の容量性分圧器に追加することによる、電圧低減の操作を示す。容量性電圧分圧器は、車両2および直流充電におけるYコンデンサーCyF+、CyF-に相当する。時間t<0.5sまでは、両YコンデンサーCyF+、CyF-の直列回路を介して、正電位HV+と負電位HV-との間に分圧があり、両YコンデンサーCyF+、CyF-のサイズは同じで、それは例えば1μFで、高電圧電位HV+、HV-が基準電位Mに関して対称的に分けられる。
【0072】
この例での目標電圧は400Vである。元の電圧が設定電圧の2倍、つまり、800Vのため、それぞれのYコンデンサーCyF+、CyF-の電圧が落ちる。時間t=0.5sでは、第一回路ブレーカーSS1のスイッチが入り、10μFの保護コンデンサーCsが正電位HV+のYコンデンサーCyF+と並列接続されるようになり、それによって容量性を合計11μFに増やす。負電位HV-のYコンデンサーCyF-を有する容量性電圧分圧器は、従って正電位HV+と基準電位Mとの間の電圧を67Vまで下げ、その間、負電位HV-のYコンデンサーCyF-の電圧が733Vまで上がる。XコンデンサーCxの電圧は常に800Vのままである。
【0073】
保護コンデンサーCsのスイッチを入れた後の所望の電圧は、YコンデンサーCyF+、CyF-と比較して保護コンデンサーCsの寸法を決定することによって調整することができる。保護コンデンサーCsがYコンデンサーCyF+、CyF-と比べて大きければ大きいほど、残留電圧がそれだけ低くなる。
【0074】
図12は、
図11に示す方法から生じる、YコンデンサーCyF+、CyF-と保護コンデンサーCsの電圧UCyF+、UCyF-、UCs1と電流ICyF+、ICyF-、ICs1を示す。
【0075】
従って、保護装置8は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間の電圧を測定するために正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間に第一電圧測定装置SV1を備え、および負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間の電圧を測定するために負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間に第二電圧測定装置SV2を備える。
【0076】
更に、保護装置8は保護回路9を備える。保護回路9は、
図9および
図10に示されているように、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間の放電抵抗器Reと第一回路ブレーカーSS1の電気的直列回路、および、負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間の同じ放電抵抗器Reと第二回路ブレーカーSS2の電気的直列回路、を備える。
【0077】
代わりに、保護回路9は、
図1から
図5に示されているように、2つの保護回路部9.1、9.2を備え、第一保護回路部9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間に第一放電抵抗器Re1と第一回路ブレーカーSS1の電気的直列回路を備え、第二保護回路部9.2は、負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間に第二放電抵抗器Re2と第二回路ブレーカーSS2の電気的直列回路を備える。
【0078】
保護装置8の保護回路9の両変形例では、第一回路ブレーカーSS1は、指定された電圧値を電圧が下回ったことを第一電圧測定装置SV1が確認した場合に、閉じるように作動可能とされ、第二回路ブレーカーSS2は、指定された電圧値を電圧が下回ったことを第二電圧測定装置SV2が確認した場合、閉じるように作動可能とされる。
【0079】
2つの電圧測定装置SV1、SV2に代えて、
図3に示すように、基準電位線MLに残留電流測定装置10を提供することができる。そして、保護回路9の両変形例において、残留電流測定装置10によって残留電流が測定された場合、第一回路ブレーカーSS1および/または第二回路ブレーカーSS2が閉じるように作動可能とされる。
【0080】
既に上述したように、保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2は有利には放電抵抗器Re、Re1、Re2と電気的に並列接続される、つまり
図9および
図10に示されているように、単独の保護コンデンサーCsが単独の放電抵抗器Reと並列接続される、または、
図1から
図5に示されているように、それぞれの保護コンデンサーCs1、Cs2が、それぞれの保護回路部9.1、9.2の放電抵抗器Re1、Re2と電気的に並列接続される。
【0081】
従って、
図9および
図10に示されているように、保護回路9は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間の放電抵抗器Reと第一回路ブレーカーSS1の電気的直列回路、および負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間の放電抵抗器Reと第二回路ブレーカーSS2の電気的直列回路を備え、保護コンデンサーCsは放電抵抗器Reと電気的に並列接続されている。代わりに、
図1から
図5に示されているように、保護回路9は両保護回路部9.1、9.2を備え、第一保護回路部9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間に第一放電抵抗器Re1と第一回路ブレーカーSS1を備え、第一保護コンデンサーCs1が第一放電抵抗器Re1と電気的に並列接続されており、そして第二保護回路部9.2は、負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間に第二放電抵抗器Re2と第二回路ブレーカーSS2を備え、第二保護コンデンサーCs2が第二放電抵抗器Re2と電気的に並列接続されている。
【0082】
ここで示す例では、保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2は、放電抵抗器Re、Re1、Re2と電気的に並列接続されているだけでなく、保護コンデンサーCs、Cs1、Cs2と保護抵抗器Rs、Rs1、Rs2から成る電気的直列回路が電気的に並列接続されている。
【0083】
従って、
図9および
図10に示されているように、保護回路9は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間の放電抵抗器Reと第一回路ブレーカーSS1の電気的直列回路、および負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間の放電抵抗器Reと第二回路ブレーカーSS2の電気的直列回路を備え、保護コンデンサーCsと保護抵抗器Rsから成る電気的直列回路が放電抵抗器Reと電気的に並列接続されている。代わりに、
図1から
図5に示されているように、保護回路9は両保護回路部9.1と9.2を備え、第一保護回路部9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間に第一放電抵抗器Re1と第一回路ブレーカーSS1から成る電気的直列回路を備え、第一保護コンデンサーCs1と第一保護抵抗器Rs1の電気的直列回路が、第一放電抵抗器Re1と電気的に並列接続されており、そして第二保護回路部9.2は、負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間に第二放電抵抗器Re2と第二回路ブレーカーSS2から成る電気的直列回路を備え、第二保護コンデンサーCs2と第二保護抵抗器Rs2の電気的直列回路が、第二放電抵抗器Re2と電気的に並列接続されている。
【0084】
例えば、第一電圧測定装置SV1と第一回路ブレーカーSS1とに結合された第一電圧評価装置は、第一電圧測定装置SV1によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に第一回路ブレーカーSS1を作動させるために提供され、および、第二電圧測定装置SV2と第二回路ブレーカーSS2とに結合された第二電圧評価装置は、第二電圧測定装置SV2によって確認された電圧を評価するため、および指定された電圧制限値を電圧が下回った場合に第二回路ブレーカーSS2を作動させるために提供される。
【0085】
代わりに、例えば
図4に示されているように、電圧測定装置SV1、SV2と回路ブレーカーSS1、SS2とに結合された共通の電圧評価装置12が、第一電圧測定装置SV1によって確認された電圧と第二電圧測定装置SV2によって確認された電圧とを評価するために提供され、そして、第一電圧測定装置SV1によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に第一回路ブレーカーSS1を作動させ、および第二電圧測定装置SV2によって確認された電圧が指定された電圧制限値を下回った場合に第二回路ブレーカーSS2を作動させるために提供される。
【0086】
残留電流測定装置10が使用される場合、例えば、測定残留電流の評価のため、および測定残留電流に基づいて第一回路ブレーカーSS1および/または第二回路ブレーカーSS2を作動させるために、残留電流測定装置10と回路ブレーカーSS1、SS2とに結合された電流評価装置11が設けられている。
【0087】
一つの可能な実施形態において、
図4に示されているように、第三電圧測定装置SV3と第四電圧測定装置SV4とが結合される共通の電圧評価装置12を設けることができ、第三電圧測定装置SV3は正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間の電圧を測定するために正電位線HV+Lと基準電位線MLとの間に配置され、第四電圧測定装置SV4は負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間の電圧を測定するために負電位線HV-Lと基準電位線MLとの間に配置され、ここでは正電位線HV+Lにおける充電接触器LS+という形態での第一切り替え装置が、第一電圧測定装置SV1への接続ポイントと第三電圧測定装置SV3への接続ポイントとの間の正電位線HV+Lに配置され、そして負電位線HV-Lにおける充電接触器LS-という形態での第二切り替え装置が、第二電圧測定装置SV2への接続ポイントと第四電圧測定装置SV4への接続ポイントとの間の負電位線HV-Lに配置される。
【0088】
保護装置8の好ましい使用方法が以下で説明される。800Vレベルの高電圧システムを有する車両2においては、YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-による放電の制限値を規範的に遵守することは困難である。これは、特に車両2内で既に占有されている設置スペースによって追加で大きな部品用の高電圧システムに変更を加えることができない既存の車両2に適用される。説明された解決策は、簡単、廉価、および車両2内で少ない設置スペースで設置できるため、ここでは有用である。
【0089】
更に、記載された解決策は特に基準に基づいて規定を満たし、車両2の承認を簡単にし、または承認がすべて可能になる。小型の電子装置の追加を伴う、この保護装置8とその保護回路9により、高電圧システムおよびその部品において何も変更せずに、制限値が達成される。
【0090】
LV123において必要とされる0.2Jの最大エネルギー容量は、直流充電ステーション5によって632Vで既に超過している。「別の方法」、つまり代わりの方法が従って不可欠である。二重絶縁が現在唯一の解決策として議論されている。全ての結合システム、つまり車両2と直流充電ステーション5は、同時に絶縁性を強化しなければならず、これは現在保証できない。但し、保護装置8とその保護回路9により、人体MKを流れるエネルギーを0.2J以下の値に抑えることができる。これは従って、「別の方法」に対する更なる解決策を表す。
【0091】
保護装置8とその保護回路9は例えば充電プラグまたは充電ケーブル4の破損等、直流充電中に絶縁が破損した場合、人間が触れた場合にYコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-の危険な放電電流を減らすことができる。他の全ての車両の状態において、絶縁破損の場合、人間の接触による危険な放電電流は同様に低減される。
【0092】
YコンデンサーCyF+、CyF-、CyL+、CyL-のより大きな設計により、EMC抑圧の改善が可能である。高電圧システム全体の二重絶縁の要件の放棄が可能である。これは、車両2および直流充電ステーション5に適用される。
【0093】
保護回路9を有する保護装置8は、車両2および/または直流充電ステーション5の中に配置できる。
【符号の説明】
【0094】
1 直流回路網
2 車両
3 高電圧電気システム
4 充電ケーブル
5 直流充電ステーション
6 高電圧バッテリー
7 バッテリー電源
8 保護装置
9 保護回路
9.1,9.2 保護回路部
10 残留電流測定装置
11 電流評価装置
12 電圧評価装置
AHV+,AHV-,AM 接続
AK+,AK- 接続接点
Cs,Cs1,Cs2 保護コンデンサー
Cx X-コンデンサー
CyF+,CyF- Y-コンデンサー 車両
CyL+,CyL- Y-コンデンサー 直流充電ステーション
ERK エネルギー
HS+,HS- 主接触器
HV+,HV- 高電圧電位
HV+L,HV-L 高電圧電位線
I 情報
ICs1 電流第一保護コンデンサー
ICyF+,ICyF- 電流 Y-コンデンサー 車両
ICyL+,ICyL- 電流 Y-コンデンサー 直流充電ステーション
IF 絶縁不良
IRe1 電流 第一放電抵抗器
IRK 電流 人体抵抗
LRK 電荷
LS+,LS- 充電接触器
M 基準電位
ML 基準電位線
MK 人体
RBatt バッテリー内部抵抗
Re,Re1,Re2 放電抵抗器
RK 人体抵抗
RLS 充電ステーション内部抵抗
Rs,Rs1,Rs2 保護抵抗器
SS1,SS2 回路ブレーカー
SV1,SV2,SV3,SV4 電圧測定装置
t 時間
UCs1 電圧 第一保護コンデンサー
UCyF+,UCyF- 電圧 Y-コンデンサー 車両
UCyL+,UCyL- 電圧 Y-コンデンサー 直流充電ステーション
URK 電圧 人体抵抗
【国際調査報告】