(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-17
(54)【発明の名称】エレベータ設備用の駆動システム、エレベータ設備、およびエレベータ設備の支持要素上に駆動装置を設置するための方法
(51)【国際特許分類】
B66B 11/04 20060101AFI20230210BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B66B11/04 B
B66B11/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537505
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020086517
(87)【国際公開番号】W WO2021122814
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デー・アピース,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】グラルヌート,ルチャーノ
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ヤーコノ,ロメオ
(72)【発明者】
【氏名】ポラン,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】バン,エリク
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306AA07
3F306BA07
3F306BC04
3F306BC10
(57)【要約】
エレベータ設備のための駆動システム(1)であって、駆動装置(3)と、駆動装置(3)をエレベータ設備の支持要素(5)に固定するための駆動懸架装置(7)と、を備え、駆動懸架装置(7)は、駆動装置(3)を支持要素(5)に傾動可能に取り付けるための回転ジョイント(9)と、駆動装置(3)の回転ジョイント(9)周りでの傾斜を設定するための調整装置(11)とを備える、駆動システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ設備のための駆動システム(1)であって、
駆動装置(3)と、
駆動装置(3)をエレベータ設備の支持要素(5)に固定するための駆動懸架装置(7)と、
を具備し、
駆動懸架装置(7)は、
駆動装置(3)を支持要素(5)に傾動可能に取り付けるための回転ジョイント(9)と、
駆動装置(3)の回転ジョイント(9)周りの傾斜を設定するための調整装置(11)と、
を備える、駆動システム(1)。
【請求項2】
エレベータかごを案内するためのガイドレールを備え、ガイドレールは支持要素(5)を形成する、請求項1に記載の駆動システム(1)。
【請求項3】
回転ジョイント(9)は、
支持要素(5)に固定するように設計された固定部(21)と、
駆動装置(3)に固定された第1の懸架部(23)と、
を備え、
固定部(21)と第1の懸架部(23)とは、互いに回転可能に接続されている、請求項1または2に記載の駆動システム(1)。
【請求項4】
第1の懸架部(23)は、少なくとも1つの第1の開口部を有し、固定部(21)は、少なくとも1つの第2の開口部を有し、回転ジョイント(9)は、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部を通過するように配置された接続要素(29)を備える、請求項3に記載の駆動システム(1)。
【請求項5】
調整装置(11)は、
支持要素(5)に固定するように設計された固定部(21)と、
駆動装置(3)に固定され、固定部(21)に接続された第2の懸架部(41)と、
を備え、
固定部(21)と第2の懸架部(41)とは、設定可能に互いに対して変位可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項6】
駆動装置(3)の回転ジョイント(9)周りの傾斜は、第2の懸架部(41)を固定部(21)に対して変位させることによって設定されることができる、請求項5に記載の駆動システム(1)。
【請求項7】
回転ジョイント(9)は、駆動装置(3)の摩擦駆動プーリ(13)の上方に配置されており、調整装置(11)は、摩擦駆動プーリ(13)の下方に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項8】
回転ジョイント(9)の回転軸線(31)は、駆動装置(3)のシャフト軸線(61)に対して少なくとも略垂直であり、および/または、回転ジョイント(9)は、回転軸線(31)に垂直な方向のトルクまたはトルク成分を支持するように設計されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項9】
駆動懸架装置(7)は、少なくとも1つの隔離要素(47)を備え、少なくとも1つの隔離要素(47)は、駆動装置(3)から支持要素(5)への振動または構造騒音の伝達を低減または防止するように設計されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆動システム(1)。
【請求項10】
エレベータ設備(51)であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の駆動システム(1)と、
エレベータかご(53)と、
キャリア手段(57)を介してエレベータかご(53)に接続されたカウンタウェイト(55)と、
を備え、
駆動装置(3)は、キャリア手段(57)を駆動するように設計されている、エレベータ設備(51)。
【請求項11】
駆動装置(3)は、エレベータ設備(51)の上端領域に配置されている、請求項10に記載のエレベータ設備(51)。
【請求項12】
キャリア手段(57)はベルトを備える、請求項10または11に記載のエレベータ設備(51)。
【請求項13】
エレベータかご(53)は、駆動システム(1)に面する駆動側側壁(63)を有し、駆動装置のシャフト軸線(61)は、駆動側側壁(63)に少なくとも略平行に延びる、請求項10~12のいずれか一項に記載のエレベータ設備(51)。
【請求項14】
エレベータ設備(51)は、少なくとも1つのさらなる駆動システム(71)を備える、請求項10~13のいずれか一項に記載のエレベータ設備(51)。
【請求項15】
エレベータ設備(51)、特に請求項10~14のいずれか一項に記載のエレベータ設備(51)の支持要素(5)に駆動装置(3)を設置するための方法であって、
回転ジョイント(9)によって駆動装置(3)を支持要素(5)に取り付けることと、
駆動装置(3)を支持要素(5)に対して安定させることと、
回転ジョイント(9)を中心とした駆動装置(3)の傾斜を設定することと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ設備用の駆動システム、エレベータ設備、およびエレベータ設備の支持要素上に駆動装置を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人または荷物を輸送するための既知のエレベータ設備は、エレベータシャフト内で上下に移動することができるエレベータかごを含む。エレベータかごは、通常、キャリア手段を介してカウンタウェイトに接続される。ガイドレールに沿ってエレベータかごを移動させるための駆動装置は、例えば、エレベータシャフトのシャフトヘッド内の駆動アセンブリまたはエレベータシャフトの上方の機械室に配置されることができる。しかしながら、従来知られているエレベータ設備用の駆動システムは、例えばエレベータ設備のシャフトヘッド内に多くの空間を必要とするか、または設置が複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エレベータ設備、特に従来技術から知られている駆動システムまたはエレベータ設備と比較して改善されたエレベータ設備のための駆動システムを指定することであり、駆動システムの空間要件が低減されるか、または駆動システムの組み立てが単純化されることである。本発明の別の目的は、エレベータ設備の駆動装置を設置するための方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の駆動システムおよび追加の独立請求項に記載の方法によって達成される。有利な展開および実施形態は、従属請求項および本明細書に見出すことができる。
【0005】
本発明の一態様は、エレベータ設備のための駆動システムであって、駆動装置と、駆動装置をエレベータ設備の支持要素に固定するための駆動懸架装置と、を備え、駆動懸架装置は、駆動装置を支持要素に傾動可能に取り付けるための回転ジョイントと、回転ジョイントを中心とした駆動装置の傾斜を設定するための調整装置とを含む、駆動システムに関する。
【0006】
本発明のさらなる態様は、エレベータ設備であって、本明細書に記載のいずれかの実施形態に記載の駆動システムと、エレベータかごと、キャリア手段を介してエレベータかごに接続されたカウンタウェイトと、を備え、駆動装置は、キャリア手段を駆動するように設計されている、エレベータ設備に関する。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、エレベータ設備の支持要素に駆動装置を設置するための方法であって、回転ジョイントによって駆動装置を支持要素に取り付けることと、駆動装置を支持要素に対して安定させることと、回転ジョイントを中心とした駆動装置の傾斜を設定することと、を備える方法に関する。
【0008】
好ましい実施形態では、駆動装置は、モータ、特にモータおよびギアを含む。駆動装置はギアレスとすることができる。駆動装置は、駆動シャフトを有する。駆動シャフトは、駆動装置のシャフト軸線を中心に回転可能である。駆動装置の摩擦駆動プーリは駆動シャフトに固定されることができる。摩擦駆動プーリは、エレベータ設備のキャリア手段と駆動装置との間の接触を提供するように設計されている。特に、摩擦駆動プーリは、駆動装置によって提供される力をキャリア手段に伝達するように設計されている。駆動懸架装置は、好ましくは、駆動装置が支持要素に固定されると、摩擦駆動プーリが駆動装置のモータと支持要素との間に配置されるように設計される。駆動装置は、例えば駆動装置を制御するための駆動冷却システムまたは駆動電子機器を有することができる。「または」は、典型的には、本明細書では「および/または」を意味する。駆動冷却システムまたは駆動電子機器は、特に駆動装置の下側に配置されることができる。
【0009】
駆動システムは、好ましくは、エレベータかごをガイドするためのガイドレールを含み、ガイドレールは支持要素を形成する。さらに好ましい実施形態では、支持要素は、エレベータ設備のシャフト壁またはエレベータ設備のエレベータシャフト内の運搬構造とすることができる。
【0010】
好ましい実施形態では、駆動懸架装置の回転ジョイントは、駆動装置と支持要素との間の回転可能な接続部であると理解されるべきである。回転ジョイントの回転軸線は、好ましくは、駆動装置のシャフト軸線に対して少なくとも略垂直である。「少なくとも略垂直」とは、本明細書では特に、垂直方向、または垂直方向から最大15°、例えば最大10°または最大5°逸脱した方向を意味すると理解されるべきである。実施形態では、回転軸線は、駆動装置のシャフト軸線に対して少なくとも略垂直に、かつガイドレールの長手方向軸線に対して垂直に位置合わせされることができる。駆動装置のシャフト軸線は、回転ジョイントの回転軸線に対して少なくとも略垂直に、かつ上下方向に対して少なくとも略垂直に、例えばガイドレールの長手方向軸線に対して垂直に位置合わせされることができる。好ましい実施形態では、駆動装置のシャフト軸線は、ガイドレールと位置合わせされる。
【0011】
調整装置は、回転ジョイントの下方に配置されることが好ましい。回転ジョイントは、特に、駆動装置から支持要素に引張荷重を伝達するように設計される。調整装置は、例えば、圧縮荷重を駆動装置から支持要素に伝達するように設計される。実施形態では、回転ジョイントは、駆動装置の摩擦駆動プーリの上方に配置されており、調整装置は、摩擦駆動プーリの下方に配置されている。特に、摩擦駆動プーリは、回転ジョイントと調整装置との間に配置される。さらなる実施形態では、調整装置は、摩擦駆動プーリの周りに配置される。例えば、調整装置は、支持要素の方向に摩擦駆動プーリの周りにケージの形態で延びることができ、調整装置は、キャリア手段が通過するための少なくとも1つの窓を有する。好ましい実施形態では、摩擦駆動プーリは、最大150mm、特に最大100mm、または最大70mmの摩擦駆動プーリ直径を有する。
【0012】
好ましい実施形態では、駆動懸架装置の回転ジョイントは、支持要素に固定するように設計された固定部と、駆動装置に固定される第1の懸架部とを備える。固定部と第1の懸架部とは、互いに回転可能に接続されている。固定部は、好ましくは、支持要素に堅固に接続され、第1の懸架部は、駆動装置に堅固に接続される。剛性の接続は、接合方法、例えばねじ留めによって提供されることができる。
【0013】
好ましい実施形態では、第1の懸架部は、少なくとも1つの第1の開口部を有し、固定部は、少なくとも1つの第2の開口部を有する。回転ジョイントは、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部を通過するように配置された接続要素を含む。接続要素は、例えば、ピン、ボルト、またはねじとすることができる。特に、接続要素は、回転ジョイントの回転軸線に沿って配置される。
【0014】
好ましい実施形態では、回転ジョイントはヒンジとして設計される。実施形態では、第1の懸架部は、回転ジョイントの回転軸線に沿って少なくとも2つの第1の開口部を有する。固定部は、第1の懸架部の少なくとも2つの第1の開口部の間に延び、固定部の少なくとも1つの第2の開口部は、第1の懸架部の2つの第1の開口部の間に配置される。さらなる実施形態では、固定部は、回転ジョイントの回転軸線に沿って少なくとも2つの第2の開口部を有する。第1の懸架部は、固定部の少なくとも2つの第2の開口部の間に延び、第1の懸架部の少なくとも1つの第1の開口部は、固定部の2つの第2の開口部の間に配置される。
【0015】
好ましい実施形態では、回転ジョイントは、回転軸線に垂直な方向のトルクまたはトルク成分を支持するように設計される。特に、回転ジョイントは、駆動装置のシャフト軸線の方向またはガイドレールの長手方向軸線の方向にトルクまたはトルク成分を支持するように設計される。固定部および第1の懸架部は、少なくとも2つの接触面を介して回転軸線に沿って接触することができ、接触面は、回転軸線の周り、特に回転軸線の周りで回転軸線に垂直に延びる。特に、固定部および第1の懸架部は、トルク支持部を形成することができる。例えば、回転ジョイントは、キャリア手段の駆動またはエレベータかごまたはカウンタウェイトの移動から生じるトルクまたはトルク成分を少なくとも部分的に支持することができる。
【0016】
好ましくは、駆動懸架装置の調整装置は、支持要素に固定するように設計された固定部と、駆動装置に固定され固定部に接続される第2の懸架部とを備える。固定部および第2の懸架部は、設定可能に互いに対して変位可能である。調整装置は、特に線形調整装置として設計されることができる。調整装置は、調整ねじを備えることができ、調整装置は、調整ねじを回転させることによって、固定部と第2の懸架部とを互いに対して変位させるように、特にそれらを互いに対して直線的に移動させるように設計される。第2の懸架部は、好ましくは駆動装置に堅固に接続され、固定部は支持要素に堅固に接続される。
【0017】
好ましい実施形態では、回転ジョイント周りでの駆動装置の傾斜は、第2の懸架部を固定部に対して変位させることによって設定されることができる。例えば、傾きは調整装置の調整ねじを回転させることにより設定されることができ、第2の懸架部は、調整装置の調整ねじを回転させることにより固定部に対して変位される。特に、駆動懸架装置は、変位によって、支持要素に対して、例えばガイドレールに対して、回転ジョイントの回転軸線を中心に駆動装置を傾斜させるように設計されている。特に、最大20°、例えば最大10°または最大5°の傾斜が変位によって設定されることができる。実施形態では、固定部は、回転ジョイントおよび調整装置の一部である。
【0018】
駆動懸架装置は、好ましくは、少なくとも1つの隔離要素、特に機械的隔離要素または緩衝要素を備え、少なくとも1つの隔離要素は、駆動装置から支持要素への振動または構造騒音の伝達を低減または防止するように設計される。隔離要素は、好ましくはばね減衰要素である。駆動装置は、隔離要素による振動または構造騒音の伝播に関して支持要素から分離されることができる。特に、隔離要素は、駆動装置と支持要素との間の振動または構造騒音を減衰させるように設計される。隔離要素は、第1の懸架部と固定部との間、または第2の懸架部と固定部との間に配置されることができる。第1の懸架部の少なくとも1つの第1の開口部および固定部の少なくとも1つの第2の開口部を通過するように配置された接続手段は、好ましくは、隔離要素によって少なくとも部分的に被覆される。特に、接続手段は、少なくとも1つの第1の開口部または少なくとも1つの第2の開口部の領域、例えば、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部の領域において、隔離要素によって囲まれている。実施形態では、少なくとも1つの隔離要素は、プラスチックまたはゴムを含む。少なくとも1つの隔離要素は、本明細書に記載の実施形態による駆動システムを備えるエレベータ設備が設置される建物への構造騒音の拡散が防止されるという利点を提供することができる。
【0019】
好ましい実施形態では、駆動懸架装置、特に第1の懸架部または第2の懸架部は、駆動懸架装置を駆動装置の懸架側端部に固定するように設計されたアダプタプレートを備える。アダプタプレートは、駆動装置に、例えばねじ留めされて堅固に接続される。アダプタプレートは、駆動装置の駆動シャフトが通過するためのシャフト開口部を有することができる。実施形態では、アダプタプレートは別個の構成要素として製造される。さらなる実施形態では、アダプタプレートは、第1の懸架部の一部として、または第2の懸架部の一部として製造される。特に、アダプタプレートを含む第1の懸架部および第2の懸架部は、一体に製造されることができる。
【0020】
実施形態によれば、エレベータ設備は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる駆動システムを備える。エレベータ設備は、エレベータかごを備える。エレベータかごは、ガイドレールに沿って移動するように設計されている。エレベータ設備は、キャリア手段を介してエレベータかごに接続されたカウンタウェイトを備える。ガイドレールは、好ましくは、エレベータかごとカウンタウェイトとの間に配置される。駆動装置は、キャリア手段を駆動するように設計されている。キャリア手段が駆動される結果として、エレベータかごおよびカウンタウェイトは、鉛直に、例えば反対の鉛直方向に移動することができる。「上向き」、「下向き」、「水平に」、または「鉛直に」に関する方向の記述は、ここでは特に重力の方向に関して理解されるべきである。
【0021】
好ましい実施形態では、駆動装置は、エレベータ設備の上端領域に配置されている。エレベータ設備の上端領域は、例えば、エレベータ設備の鉛直領域を意味すると理解されるべきであり、鉛直領域は、エレベータ設備の高さの上部30%、特に上部20%または上部10%に対応する。例えば、駆動装置は、低シャフトヘッド内に配置されることができる。特に、エレベータ設備は、機械室なしで設計されることができる。
【0022】
キャリア手段は、好ましくはベルトを備える。例えば、ベルトは、被覆鋼ケーブルなどの被覆コードで作製されてもよい。断面において、ベルトは、ベルトの厚さよりも大きい幅を有する。例えば、支持要素に対して駆動装置の傾斜を設定することにより、ベルトの斜行またはベルトの不均一な負荷を防止または低減することができる。特に、傾斜は、エレベータ設備の寿命にわたって再調整されることができる。さらなる実施形態では、キャリア手段は、少なくとも1つのケーブル、例えば少なくとも1つの鋼ケーブルを含む。
【0023】
好ましい実施形態によるエレベータ設備において、エレベータかごは、駆動システムに面する駆動側側壁を有し、駆動装置のシャフト軸線は、駆動側側壁に少なくとも略平行に延びる。「少なくとも略平行」とは、本明細書では特に、平行な位置合わせ、または平行な位置合わせから最大20°、例えば最大10°または最大5°逸脱した位置合わせを意味すると理解されるべきである。特に、駆動装置の摩擦駆動プーリは、エレベータ設備の平面図において、カウンタウェイトとエレベータかごとの間に配置されることができる。
【0024】
好ましい実施形態は、少なくとも1つのさらなる駆動システムを含む。特に、エレベータ設備は、本明細書に記載の実施形態による少なくとも1つのさらなる駆動システムを含む。駆動システムおよび少なくとも1つのさらなる駆動システムは、エレベータかごの両側に配置されることができる。少なくとも1つのさらなる駆動システムは、好ましくは、エレベータかご、特にさらなるカウンタウェイトに接続されたさらなるキャリア手段を駆動する。少なくとも2つの駆動システムの使用は、より小さいまたはより軽い駆動装置を使用することができるという利点を提供することができる。特に、駆動システムの空間要件を低減することができる。例えば、エレベータ設備の平面図において、エレベータかごとシャフト壁またはカウンタウェイトとの間に駆動装置が配置されることができる。
【0025】
設置のための方法の好ましい実施形態では、駆動装置を取り付けることは、駆動懸架装置の第1の懸架部を駆動装置に固定し、駆動懸架装置の固定部を支持要素に固定することを備える。取り付けは、好ましくは、第1の懸架部を固定部に接続して駆動懸架装置の回転ジョイントを形成することを含む。例えば、駆動装置は、第1の懸架部の少なくとも1つの第1の開口部および固定部の少なくとも1つの第2の開口部が、形成される回転ジョイントの回転軸線に沿って配置されるように、第1の懸架部と共に、支持要素に固定された固定部に対して配置されることができる。次いで、例えばピン、ボルト、またはねじなどの接続手段を、少なくとも1つの第1の開口部および少なくとも1つの第2の開口部を通して案内または配置して、回転ジョイントを形成することができる。
【0026】
好ましい方法では、駆動装置を安定させることは、駆動装置に固定された第2の懸架部を固定部に接続して調整装置を形成することを含む。さらに好ましい方法では、安定化は、固定部に接続された第2の懸架部を駆動装置に固定することを含む。安定化後、例えば、駆動装置の摩擦駆動プーリには、駆動装置が駆動装置の安定位置から大きく偏向されることなく、駆動システムによって支持されるエレベータかごの重量およびカウンタウェイトが負荷されることができる。固定部に接続された第2の懸架部は、固定部に対して設定可能に変位可能である。これにより、例えば、安定化後の傾斜の設定が可能となる。
【0027】
傾斜の設定は、好ましくは、第2の懸架部を固定部に対して変位させることによって、駆動装置を支持要素に対して位置合わせすることを含む。変位は、調整装置の調整ねじを回転させることによって行うことができる。特に、回転ジョイントの回転軸線周りの傾斜が設定される。好ましい方法では、駆動装置は、支持要素としてガイドレール上に設置される。
【0028】
好ましい実施形態は、駆動装置を支持要素、例えばガイドレール上に省スペースで設置することができるという、従来技術を超える利点を提供することができる。特に、好ましい実施形態によれば、駆動システムは、ガイドレールの上または上方に上部構造なしで、または機械室なしで設置されることができる。好ましい実施形態による駆動システムは、低シャフトヘッドを有するエレベータシャフト内に設置されることができる。特に、実施形態によれば、駆動システムは、特に小型または軽量の駆動装置を備えることができる。好ましい実施形態はまた、支持要素に対する駆動装置の傾斜を設定することができるという利点を提供することができる。特に、ベルトがキャリア手段として使用される場合、斜行が防止または低減されることができる。傾斜は、エレベータ設備の寿命にわたって再調整されることができる。
【0029】
本発明の様々な態様は、図面と併せて実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】駆動システムの好ましい実施形態の概略図である。
【
図2】駆動システムの好ましい実施形態の概略断面図である。
【
図3】駆動システムのさらに好ましい実施形態の概略断面図である。
【
図4】エレベータ設備の好ましい実施形態の概略図である。
【
図5】好ましい実施形態によるエレベータ設備の概略平面図である。
【
図6】エレベータ設備の支持要素上に駆動装置を設置するための好ましい方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の可能な実施形態による駆動システム1の概略図である。駆動システム1は、駆動懸架装置7を介して支持要素5に固定された駆動装置3を備える。
図1において、駆動システム1は、エレベータかごをガイドするためのガイドレールを備え、ガイドレールは支持要素を形成する。
図2は、駆動システム1の概略断面図である。断面図は、ガイドレールの長手方向軸線に平行な駆動装置3の駆動シャフト15のシャフト軸線61に沿った断面を示す。
図1および
図2において、駆動装置3のシャフト軸線61は、回転ジョイント9の回転軸線31に対して少なくとも略垂直に位置合わせされる。特に、駆動システム1は、シャフト軸線61がエレベータかごの駆動側側壁に少なくとも略平行に延びるように設計される。
【0032】
駆動懸架装置7は、駆動装置3を支持要素5に傾動可能に取り付けるための回転ジョイント9を備える。回転ジョイント9は、支持要素5に固定される固定部21を備える。回転ジョイント9はまた、駆動装置3に固定される第1の懸架部23を備える。固定部21は、支持要素5に堅固に接続され、第1の懸架部23は、駆動装置3に、特にねじ留めされて堅固に接続される。
図1および
図2の実施形態では、第1の懸架部23は、回転ジョイント9の回転軸線31に沿って2つの第1の開口部を有する。例えば、
図2に示すように、固定部21は、第1の懸架部23の2つの第1の開口部の間に延び、固定部21の第2の開口部は、第1の懸架部23の2つの第1の開口部の間に配置される。固定部と第1の懸架部とのヒンジ状連結は、例えば、回転ジョイント9の回転軸線31に垂直なトルクに関して、特にガイドレールの長手方向軸線の方向のトルクに関して、回転ジョイント9の曲げ剛性を高めることができる。接続手段29は、2つの第1の開口部および第2の開口部を貫通するように配置されている。
図1および
図2において、接続手段29は、第1の開口部および第2の開口部を通って案内され、ナットで固定されるボルト、特にねじ付きボルトとして設計される。
【0033】
駆動懸架装置7は、調整装置11を備える。調整装置11は、固定部21および第2の懸架部41を備える。第2の懸架部41は、固定部21に対して直線的に変位可能である。
図2の実施形態において、第2の懸架部41は、調整装置11の調整ねじ43を回転させることによって、固定部21に対して変位されることができる。第2の懸架部41を固定部21に対して変位させることによって、支持要素5に対する回転ジョイント9の回転軸線31を中心とした駆動装置3の傾きは、設定または調整されることができる。特に、支持要素5に対する駆動シャフト15および駆動シャフト15上に配置された摩擦駆動プーリ13の傾斜もまた設定されることができる。摩擦駆動プーリ13の傾斜を設定することにより、例えば、キャリア手段としてベルトを使用する場合に、ベルトの斜行を防止または低減することができる。
【0034】
図1および
図2の駆動懸架装置7は、第1の懸架部23と固定部21との間および第2の懸架部41と固定部21との間に配置された隔離要素47を備える。特に、さらなる隔離要素47が、第1の懸架部23の第1の開口部の領域および固定部21の第2の開口部の領域において接続手段29周りに配置される。隔離要素47は、駆動装置3から支持要素5への振動または構造騒音の伝播を低減、特に減衰させるように設計される。
【0035】
駆動装置3は、
図2ではギアレス電気モータとして設計されている。駆動懸架装置7は、電気モータに固定されたアダプタプレート33を備える。第1の懸架部23および第2の懸架部41は、アダプタプレート33を介して駆動装置3に固定される。駆動装置3は、駆動電子機器35および駆動冷却システム37を備える。
図1および
図2において、駆動電子機器35および駆動冷却システム37は、駆動装置3の下側に配置されている。その結果、例えば、駆動装置3の水平方向の空間要件が低減されることができる。
【0036】
図3は、好ましい駆動システム1のさらなる実施形態の図である。
図3において、固定部21は、回転ジョイント9の回転軸線31に沿って2つの第2の開口部を有する。第1の懸架部23は、固定部21の2つの第2の開口部の間に延びており、第1の懸架部23の第1の開口部は2つの第2の開口部の間に配置されている。接続手段29が、2つの第2の開口部と第1の開口部とを貫通して延びている。
図3において、固定部21は、支持要素に固定されるフレーム構造体40と、各ブロック内に固定部21の第2の開口部が形成される中間ブロック39とを備える。特に、中間ブロック39は、接続要素29とフレーム構造体40との間で荷重を伝達することができる。
図3では、フレーム構造体40および中間ブロック39は、例えばねじ留めされて互いに堅固に接続される。
【0037】
図3において、調整装置11は、駆動装置3の摩擦駆動プーリ13を部分的に囲む第2の懸架部41を備える。第2の懸架部41は、摩擦駆動プーリ41の周りにケージの形態で設計され、ケージ形状の第2の懸架部41は、キャリア手段が通過するための窓を有する。支持要素5に面する第2の懸架部41の側に、調整装置11は、支持要素5に対する駆動装置3の傾きを設定するための調整ねじを有する。隔離要素47は、第1の懸架部23と固定部21との間および第2の懸架部41と固定部21との間に配置される。
図3の実施形態では、第1の懸架部23、第2の懸架部41、およびアダプタプレート33は一体に形成されている。一体設計は、特に、駆動懸架装置に高いレベルの安定性を与えることができる。
【0038】
図4および
図5は、エレベータ設備51の一実施形態を示す。エレベータ設備51は、駆動装置3と、駆動装置3を支持要素5に固定するための駆動懸架装置7とを備える、本明細書に記載の実施形態による駆動システム1を備える。
図4および
図5において、支持要素5として、エレベータかご53をガイドするガイドレールが設けられている。エレベータかご53は、通常、キャリア手段57を介してカウンタウェイト55に接続される。キャリア手段57、例えばベルトは、駆動装置3の摩擦駆動プーリ13上に案内される。駆動装置3は、キャリア手段57を駆動し、エレベータかご53およびカウンタウェイト55を上下に移動させるように設計されている。
【0039】
図4および
図5において、駆動装置7は、エレベータ設備51の上端領域に配置されている。例として
図5のエレベータ設備51の平面図に示すように、駆動装置3のシャフト軸線61は、エレベータかご53の駆動側側壁63に少なくとも略平行に位置合わせされる。駆動懸架装置7の回転ジョイントの回転軸線31は、シャフト軸線61に対して少なくとも略垂直に、かつ鉛直方向に対して少なくとも略垂直に向けられている。ガイドレールの上下方向に対するまたは長手方向軸線に対するシャフト軸線61の傾斜は、例えば、少なくとも略垂直となるように設定される。
【0040】
図4および
図5のエレベータ設備51は、本明細書に記載の駆動システムの実施形態によるさらなる駆動システム71を有する。さらなる駆動システム71は、さらなる駆動装置73と、さらなる駆動装置73を、
図4および
図5のさらなるガイドレールによって形成される、さらなる支持要素79に固定するための、さらなる駆動懸架装置75とを備える。さらなる駆動装置73は、エレベータかご53およびさらなるカウンタウェイト77に接続されたさらなるキャリア手段81を駆動するように設計されている。さらなる駆動システムの使用は、より小さいまたはより軽い駆動装置の使用を可能にすることができる。特に、シャフトヘッドまたはシャフトピット内の駆動装置の空間要件が低減されることができる。さらに、より小型またはより軽量の駆動装置が、より容易に設置されることができる。
【0041】
図6は、一実施形態におけるエレベータ設備の支持要素に駆動装置を取り付けるための方法100を示す。110において、方法100は、回転ジョイントを介して駆動装置を支持要素に取り付けるステップを含む。例えば、駆動懸架装置の固定部は、110でガイドレールに、例えば強固にねじ留めされて固定される。第1の懸架部および第2の懸架部は、アダプタプレートを介して駆動装置に固定される。次いで、駆動装置は、ボルトが第1の懸架部の少なくとも1つの第1の開口部および固定部の少なくとも1つの第2の開口部を通って案内されて、ヒンジ状回転ジョイントを形成するように位置決めされる。ボルトはナットで固定される。この方法は、駆動装置は、例えば手動で支持要素上に位置決めして取り付けられることができるという利点を提供することができる。
【0042】
取り付け後、駆動装置は、120において支持要素に対して安定化される。本実施形態では、第2の懸架部は、調整装置を構成するように固定部に連結され、接続後、第2の懸架部と固定部とは、調整ねじを介して設定可能に互いに対して変位可能である。特に、駆動装置は、安定化後に回転ジョイントの回転軸線を中心に自由に移動されることができなくなり、むしろ、調整ねじを回転させることによってのみ移動されることができる。
【0043】
130において、回転ジョイントを中心とした駆動装置の傾斜は、調整ねじを回転させることによって設定される。駆動装置の傾斜または駆動装置のシャフト軸線は、シャフト軸線が少なくとも上下方向に対して実質的に垂直に延びるように、またはベルトの斜行が防止または低減されるように設定される。
【国際調査報告】