(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-17
(54)【発明の名称】回転電気機械巻回部品用導電体
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20230210BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20230210BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
H02K3/28 N
H02K15/04 E
H02K15/085
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537525
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020086051
(87)【国際公開番号】W WO2021122488
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、デュケーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、ラメ
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ、ド-クレール
(72)【発明者】
【氏名】ウンベルト、テル、ド、メネゼス
(72)【発明者】
【氏名】ドニ、ボダン
(72)【発明者】
【氏名】クレール、シャイエ
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC03
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD06
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE05
5H603EE01
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615SS17
(57)【要約】
本発明は、導電性材料から形成された本体(36)と、電気絶縁材料から形成された被覆層(37)とを備え、前記被覆層が前記本体を部分的に覆う、回転電気機械巻回部品用の導電体(30)に関する。導電体は、本体(36)が被覆層(38)によって覆われる、主要部分(38)と呼ばれる第1の部分と、本体(36)が被覆層の残留物によって覆われる、中間部分(39)と呼ばれる第2の部分と、本体(36)が露出する、露出部分(40)と呼ばれる第3の部分とから形成され、中間部分は主要部分と露出部分との間に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から形成された本体(36)と、電気絶縁材料から形成された被覆層(37)とを有する回転電気機械の巻回部品用の導電体であって、前記被覆層は前記本体を部分的に覆い、
前記導電体は、
a.前記本体(36)が前記被覆層(37)によって覆われる、主要部分(38)と呼ばれる第1の部分と、
b.前記本体(36)が前記被覆層からの残留物によって覆われる、中間部分(39)と呼ばれる第2の部分と、
c.前記本体(36)が露出する、露出部分(40)と呼ばれる第3の部分と
から形成され、前記中間部分は前記主要部分と前記露出部分との間に配置されることを特徴とする、導電体。
【請求項2】
前記露出部分(40)は、前記導電体(30)の周囲の一部のみにわたって延在することを特徴とする、請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記露出部分(40)は前記中間部分(39)よりも小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電体。
【請求項4】
前記露出部分(40)は、前記導電体(30)の一部の横方向端部を形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電体。
【請求項5】
前記導電体は矩形断面を有し、前記露出部分(40)は、前記導電体(30)の3つの側面のうちの少なくともいくつかの上にのみ延在することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電体。
【請求項6】
スロット(22)を形成する本体(21)と、前記スロットに収容された請求項1から5のいずれか一項に記載の複数の導電体(30)と、を有する回転電気機械用の巻回部品。
【請求項7】
請求項6に記載の巻回部品(15)を備える回転電気機械。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの導電体(30)を露出させる方法であって、
a.前記中間部分(39)および前記露出部分(40)を露出させる第1のステップであって、前記ステップは、第1の波長を有する第1のレーザビームによって実行される、第1のステップと、
b.前記露出部分(40)のみを露出させる第2のステップであって、前記ステップは、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザビームによって実行される、第2のステップと
を含む、露出方法。
【請求項9】
前記第1の波長は前記第2の波長よりも大きいことを特徴とする、請求項8に記載の露出方法。
【請求項10】
前記導電体(30)は矩形断面を有し、前記導電体の1つの面は、前記第1のレーザビームまたは前記第2のレーザビームを放射するレーザヘッド(41)に対して20°~70°の角をなすように配置される、請求項8または9に記載の露出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、回転電気機械の巻回部品用の導電体に関する。
【0002】
本発明は、オルタネータ、スタータオルタネータ、またはさらには可逆機械もしくは電気モータなどの回転電気機械の分野において特に有利に適用可能である。可逆機械は、一方ではオルタネータとして機能するときに発電機として、他方では例えば自動車の燃焼エンジンを始動させるための電気モータとして可逆的に動作することができる回転電気機械であることが想起されよう。
【背景技術】
【0003】
回転電気機械は、軸周りに回転可能なロータと、固定ステータとを備える。オルタネータモードでは、ロータが回転しているとき、車両の電気消費者に電力を供給しバッテリを再充電するために、ロータはステータに磁場を誘導し、ステータはそれを電流に変換する。モータモードでは、例えば燃焼エンジンを始動させるために、ステータに電力が供給され、ステータはロータを回転駆動する磁場を誘導する。
【0004】
ステータは、ステータの中心を通る軸の周りに回転対称性を有する成分を形成するヨークを有する本体を備える。本体は、ヨークからステータの中心に向かって半径方向に延在し、その周りに電気巻線が配置されるティースを有する。より詳細には、ティースは、ティースの間のスロットを画定し、スロットを通って、ステータの巻線の形成に関与する導電体が通過する。
【0005】
巻線は、導電性ピンとも呼ばれる複数の導電体から形成され、導電体は、本体のスロットに部分的に収容され、電流が導電体を流れるときに本体のティースに沿って磁場を生成する連続的な電気経路を形成するために、導電体の端部を介して対で電気的に接続される。言い換えれば、導電体は、様々なアセンブリを形成するように対で接続され、各アセンブリは、特に電力供給段階に対応することができる。
【0006】
導電体を対で接続するために、溶接方法、特にレーザ溶接方法を使用することが一般的である。このレーザ溶接ステップは、導電体が事前に露出されている場合にのみ実行することができる。具体的には、各導電体は、エナメルとも呼ばれる電気絶縁被覆層によって覆われた導電性材料から形成された本体を有する。この被覆層は、レーザ溶接ステップを実行する前に局所的に除去されなければならない。
【0007】
被覆層を除去する方法はいくつかある。例えば、ブレードまたは研磨手段の通過などの機械的除去方法を使用することが可能である。これらの機械的方法は、長いサイクル時間を有し、ダストおよび/または相当量の絶縁材料の残留物を生成するが、これは機械の動作中に問題を引き起こす可能性があり、小さな導電体断面には適さない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安価であり、制限されたサイクル時間を有するプロセスに適していると同時に、残りの絶縁被覆層の燃焼のリスクまたは導電体を一緒に溶接する際の故障のリスクを制限し、大量のダストおよび/または残留物を発生させない、導電体を露出させる方法を提案することによって、従来技術の欠点を回避することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この目的のために、本発明の1つの主題は、導電性材料から形成された本体と、電気絶縁材料から形成された被覆層とを有する回転電気機械の巻回部品用の導電体であり、前記被覆層は本体を部分的に覆う。本発明によれば、導電体は、本体が被覆層によって覆われる、主要部分と呼ばれる第1の部分と、本体が被覆層からの残留物によって覆われる、中間部分と呼ばれる第2の部分と、本体が露出する、露出部分と呼ばれる第3の部分とから形成され、中間部分は主要部分と露出部分との間に配置される。「露出」とは、本体が被覆層を全く有しないことを意味する。
【0010】
主要部分と露出部分との間に配置された中間部分が存在することにより、前記領域間、特に被覆層と溶接が実行される場所との間に分離を形成することが可能になる。これにより、主要部分の被覆層を損傷させず、したがって電気的な短絡のリスクを生じさせないことが可能となる。
【0011】
その後に溶接される露出部分に隣接して完全には露出していない導電体の中間部分が存在しても、露出部分に対してのみ実行される後続のレーザ溶接ステップを妨げない。したがって、中間部分は、溶接プロセスの効率を低下させない。さらに、導電体の端部の全表面積を完全に露出させないことにより、露出プロセスのサイクル時間を最適化することが可能になり、レーザ露出方法を使用することにより、機械の動作を損ない、溶接ステップを妨げる可能性があるダストの放出を制限することが可能になる。
【0012】
一実施形態によれば、露出部分は、前記導電体の周囲の一部のみにわたって延在する。これはまた、溶接に実際に有用な部分のみを完全に露出させることによって、露出プロセスのサイクル時間を最適化することを可能にする。
【0013】
一実施形態によれば、露出部分は中間部分よりも小さい。これにより、被覆層を含む主要部分と、溶接レーザが向けられる露出部分との間の距離を最適化することが可能になる。
【0014】
一実施形態によれば、中間部分は、少なくとも1mmの軸方向高さにわたって延在する。
【0015】
一実施形態によれば、導電体は、主要部分および2つの端部から形成された中央部分を有し、前記端部の各々は、中間部分および露出部分を有する。
【0016】
一実施形態によれば、導電体の本体は銅から形成される。
【0017】
一実施形態によれば、被覆層は有機材料から形成される。
【0018】
一実施形態によれば、導電体は矩形断面を有する。この実施形態では、露出部分は、導電体の3つの側面のうちの少なくともいくつかの上にのみ延在する。言い換えると、導電体の側面のうちの1つには露出部分がない。
【0019】
一実施形態によれば、露出部分は、導電体の一部の横方向端部を形成する。
【0020】
一実施形態によれば、露出部分は円筒部分の形状である。この形状は、露出領域を可能な限り最小限にすることを可能にし、したがって、プロセスのサイクル時間を最適化すると同時に被覆層を除去することを可能にする。
【0021】
一実施形態によれば、導電体の軸方向端面は露出本体から形成される。
【0022】
本発明の別の主題は、スロットを形成する本体と、前記スロットに収容された前述の複数の導電体とを有する回転電気機械用の巻回部品である。巻回部品は、有利には、回転電気機械のステータまたはロータを形成することができる。
【0023】
本発明の別の主題は、前述のような巻回部品を有する回転電気機械である。回転電気機械は、有利には、オルタネータ、スタータオルタネータ、可逆機械または電気モータを形成することができる。
【0024】
本発明の別の主題は、前述の少なくとも1つの導電体を露出させるプロセスであって、本プロセスは、中間部分および露出部分を露出させる第1のステップであって、前記ステップは、第1の波長を有する第1のレーザビームによって実行される、第1のステップと、露出部分のみを露出させる第2のステップであって、前記ステップは、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザビームによって実行される、第2のステップとを含む。
【0025】
当該プロセスは、導電体を露出させるためのサイクル時間を最適化すると同時に、機械の動作を損ない、溶接ステップを妨げる可能性があるダストの放出を制限することを可能にする。
【0026】
一実施形態によれば、第1の波長は第2の波長よりも大きい。
【0027】
一実施形態によれば、第1の露出ステップは、二酸化炭素またはアルゴンレーザなどの赤外線レーザを使用して実行される。
【0028】
一実施形態によれば、第2の露出ステップは、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)型のレーザを使用して実行される。
【0029】
一実施形態によれば、導電体は矩形断面を有し、導電体の1つの面は、第1のレーザビームまたは第2のレーザビームを放射するレーザヘッドに対して20°~70°の角をなすように配置される。これにより、前記レーザヘッドによって放射されたレーザビームが導電体の少なくとも2つの面に到達できることが可能になる。したがって、同じ露出ステップ中に、導電体またはレーザヘッドが移動することなく、導電体のいくつかの面を露出させることができる。
【0030】
一実施形態によれば、本プロセスは、第1のレーザビームまたは第2のレーザビームを配向させるステップをさらに含み、前記ステップは、対応するレーザビームを導電体の関連部分に向かって配向させるように配向装置によって実行される。
【0031】
一実施形態によれば、レーザヘッドは、レーザビームが同じ露出ステップ中に導電体の少なくとも2つの面上を掃引するようにレーザビームを配向するための配向装置を備える。この実施形態では、レーザヘッドは掃引中に静止したままである。
【0032】
一実施形態によれば、配向装置は、対応するレーザビームをいくつかの導電体の対応する部分に向かって次々に配向するように配置される。
【0033】
一実施形態によれば、配向装置は、レーザビームを配向させることを可能にする少なくとも1つのミラーを有する。
【0034】
一実施形態によれば、配向装置は、レーザビームの焦点距離を変更することを可能にする少なくとも1つの望遠鏡をさらに有する。これにより、レーザヘッドから様々な距離に配置されたいくつかの導電体を露出させることが可能になる。
【0035】
一実施形態によれば、第1のレーザビームは第1のレーザヘッドによって放射され、第2のレーザビームは第2のレーザヘッドによって放射される。これはまた、2つの露出ステップを実行するためにレーザヘッドの設定を変更する必要性を回避することによって、導電体を露出させるためのサイクル時間を最適化することを可能にする。
【0036】
一実施形態によれば、配向装置は、レーザヘッドと露出される導電体との間に配置される。
【0037】
本発明は、本発明の非限定的な例示的な実施態様の以下の詳細な説明を読み、添付の図面を検討することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の1つの例示的な実施態様による回転電気機械の概略部分断面図である。
【
図2】
図1の例によるステータの概略部分斜視図である。
【
図3】本発明による例示的な導電体の概略部分斜視図である。
【
図4】互いに溶接された異なる導電体の2つの端部の概略部分側面図である。
【
図5】
図4の導電体の一部の概略部分側面図である。
【
図6】露出プロセスのための例示的な機器の概略部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
同一、同様または類似の要素は、図どうしの間で同じ参照符号を保持する。様々な図が必ずしも同じ縮尺ではないことにも留意されたい。また、以下に説明する例示的実施形態は、何ら限定的ではない。特に、記載される他の特徴から分離して、以下に記載される特徴の選択のみを含む本発明の変形形態を想定することが可能である。
【0040】
図1は、特に自動車用の例示的な小型多相回転電気機械10を示す。この機械10は、オルタネータモードにおいて機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するためにモータモードで動作することができる。この回転電気機械10は、例えば、オルタネータ、スタータオルタネータ、可逆機械または電気モータである。
【0041】
この例では、機械10はケーシング11を有する。このケーシング11の内部で、機械は、シャフト13と、シャフト13と一体に回転するロータ12と、ロータ12を取り囲むステータ15とをさらに有する。ロータ12の回転運動は、軸Xを中心として実行される。説明の残りの部分では、軸方向は、シャフト13の中心を通る軸Xに対応するが、半径方向の向きは、軸Xと1点で交わり、特に軸Xと垂直な平面に対応する。半径方向について、「内側」という呼称は、軸に向かって配向された要素、または第2の要素に対して軸により近い要素に対応し、「外側」という呼称は、軸から離れていることを示す。
【0042】
この例では、ケーシング11は、互いに接合された前端部プレート16および後端部プレート17を有する。これらの端部プレート16、17は、形状が中空であり、シャフト13の回転取り付けのためにそれぞれのボールベアリング18、19に結合されたベアリングをそれぞれ中央に支持する。また、ケーシング11は、回転電気機械10を車両に取り付けることを可能にする固定手段14を有する。
【0043】
シャフト13の前端には、プーリまたはスプロケットなどの駆動部材20を固定することができる。この部材は、回転運動をシャフトに伝達すること、またはシャフトがその回転運動を伝達することを可能にする。説明の残りの部分では、「前」/「後」という呼称はこの部材についていう。したがって、前面は、部材の方向に向けられた面であり、後面は、前記部材とは反対の方向に向けられた面である。
【0044】
この場合、前端部プレート16および後端部プレート17は、水または油などの冷却剤が流れるためのチャンバを形成するように配置される。あるいは、端部プレートは、ロータまたはシャフトと一体に回転する少なくとも1つのファンの回転によって生成される冷却空気流が通過するための開口部を有することができる。
【0045】
この例では、ロータ12は、磁極を形成する永久磁石を収容する積層体のスタックから形成される。あるいは、ロータは、2つの極性ホイールおよびロータコイルを有するクローロータであってもよい。
【0046】
この例示的実施形態では、
図2により正確に示されるステータ15は、電気巻線24を取り付けるためのスロット絶縁体23を備えたスロット22が設けられた積層体のスタックから形成されたステータ本体21を有する。巻線は、本体21のスロットを通過し、ステータの本体の両側に前側巻線オーバーハング25aおよび後側巻線オーバーハング25bを形成する。さらに、巻線24は、少なくとも1つの導電体30を有し、電子アセンブリ26に電気的に接続されている1つまたは複数の相から形成される。
【0047】
この場合にはケーシング11に取り付けられている電子アセンブリ26は、巻線24の少なくとも1つの相を制御することを可能にする少なくとも1つの電子パワーモジュールを有する。パワーモジュールは、生成されたAC電圧をDC電圧に、およびその逆に変換するために、ブリッジ電圧整流器およびインバータを形成する。あるいは、電子アセンブリは、機械から離れていてもよい。
【0048】
ステータ本体21は、軸Xを中心とする円環状のヨーク27と、ヨークからステータの中心方向に、特にこの場合にはヨーク27の内壁を形成する側面から半径方向に延在する複数のティース28とから形成される。ティース28は、環状本体の外周にわたって均等に角度方向に分布し、ステータの環状本体の外周にわたって直列に延在するスロット22を画定するようにティース28の間に連続する空間が形成され、各スロットは2つの連続するティースによって画定される。本実施例によれば、ティースは、ステータ本体の円周に沿って分布する48個のスロットを画定し、これらのスロットは、電気巻線24のための支持体を形成するために配置される。変形例として、96、84、72、60など、異なる数のスロットを使用することができる。この数は、特に機械の用途、ステータの直径、およびロータの極数に依存することが理解される。
【0049】
軸方向、すなわち軸Xに平行な方向において、スロット22は、ステータ本体21の第1の軸方向端面29aおよび第2の軸方向端面29bに開口する。言い換えれば、スロットは、本体を軸方向に貫通し、ステータの2つの対向する軸方向端面に開口する。「軸方向端面」という用語が意味するものは、ステータの回転軸Xに対して垂直または実質的に垂直な面である。
【0050】
巻線24は、巻線の相を形成する電気経路を形成するために互いに電気的に接続された、一般にピンと呼ばれる複数の導電体30から形成される。
図3は、例示的な導電体30を示す。以下の説明は、1つの導電体を参照して行われるが、これは、好ましくは巻線24を形成する全ての導電体に適用されることが理解される。
【0051】
導電体30は、中央部分31と、中央部分の両側に延在する2つの端部32とから形成される。中央部分は、スロット22内に部分的に延在する実質的に直線状のI字形状とすることができる。あるいは、中央部分は、それぞれのスロット22内に部分的にそれぞれ延在する2つの直線部分を有するU字形状とすることができる。上述した2つの代替形態は、巻線24の同じ相の異なる導電体に対して存在することができる。
【0052】
各スロット22は、様々な層を形成するいくつかの半径方向に整列した中央部分31を有し、同じスロットの中央部分は異なる導電体30に属する。各中央部分31は、ステータ本体21の両側で2つの対向する軸方向に突出している。各導電体の端部32は、両側で、ステータの本体21の外側の対応する導電体の中央部分に続く。互いに接続される導電体の端部は、例えば半径方向に互いに隣接して配置される。
【0053】
図4に示すように、異なる導電体に属する2つの端部は互いに接続されている。より具体的には、導電体30の端部32のそれぞれは、相を構成する他の導電体のうちの1つのそれぞれの端部と電気的に接続されている。2つの端部間の電気的接続は、特に溶接によって行われる。したがって、スポット溶接部33が、2つの端部32の間に形成される。スポット溶接部は、巻線24を形成するために導電体30間の電気接続を提供する。
【0054】
図4に示す例では、導電体の各端部32は、導電体の断面を縮小する面取り部35を有する。スポット溶接部33は、面取り部を含まない端部32の部分に形成される。例えば、各スポット溶接部は、溶接ステップ中に形成され、溶接されるべき2つの導電体30の面取り部35の間に延在する略矩形状の窓34を貫通する。
【0055】
導電体30は、銅などの導電性材料で作られた本体36を有する。本体36は、エナメルなどの電気絶縁材料または電気絶縁有機材料から作られた被覆層37によって少なくとも部分的に覆われている。
【0056】
図5は、導電体30の一部、より具体的には中央部分31の一部、および前記中央部分に続く端部32を示す。中央部分31は、導電体の主要部分38を形成し、その部分で本体36は被覆層37によって覆われている。端部32は、本体36が被覆層37からの残留物によって覆われている中間部分39と、本体36が露出している露出部分40とを有する。したがって、露出部分40では、本体36は被覆層37によって覆われていない。これにより、主要部分38の外面は電気的に絶縁され、露出部分40の外面は導電性を有する。いくつかの導電体30の主要部分38は、巻線24に短絡を生じさせることなく、互いに、特にスロット22内で接触することができる。
【0057】
各端部32は、機械10の軸Xに実質的に平行な軸に沿って延在する。主要部分38の総断面積は、露出部分40の総断面積よりも大きく、前記断面はそれぞれ、軸に対して半径方向平面で取られる。
【0058】
中間部分39は、主要部分38と露出部分40との間に配置され得る。より具体的には、この場合、中間部分39は、主要部分38と露出部分40との間に軸方向に介在する。
【0059】
露出部分40は、導電体30の一部の横方向端部を形成することができる。好ましくは、第1の導電体30の露出部分40、特に前記横方向端部は、第2の導電体の露出部分、特に横方向端部に対向して配置され、2つの導電体は互いに溶接されるようになっている。
【0060】
露出部分40は、中間部分39よりも表面積が小さい。
【0061】
この例では、露出部分40は、導電体の端部32の周囲の一部のみにわたって延在する。例えば、導電体30の半径方向平面における断面は、露出部分40に対応する部分と、中間部分39に対応する部分との両方を含む。
【0062】
図4および
図5の例では、端部32は、周方向の側面図で示されている。
【0063】
さらにこの例では、導電体30は、半径方向平面において、略矩形状の断面を有する。したがって、軸Xに対して周方向に測定された露出部分40の太さは、同じく周方向に測定された主要部分38の太さよりも小さい。同様に、軸Xに対して半径方向に測定された露出部分40の幅は、同じく半径方向に測定された主要部分38の幅よりも小さい。
【0064】
この例では、露出部分40は、導電体30の側面のうちの3つにわたって延在する。言い換えれば、導電体の側面のうちの1つは、露出部分を有さない、すなわち、前記側面は、導電体の本体36が露出している部分を有さない。例えば、露出部分40は円筒部分の形状である。
【0065】
露出部分の形状および寸法は、用途、本体36の材料、および導電体30の寸法に依存することが理解されよう。
【0066】
導電体30および簡潔には電気巻線24を製造するための例示的なプロセスを以下に説明する。
【0067】
ステータ本体21のスロット22に導電性セグメント30を取り付けるステップに続いて、導電体30の端部32を露出させるステップが行われる。あるいは、この露出ステップは、導電体30をステータ本体21に挿入した後に実行され得る。
【0068】
記載される例では、この場合、第1のステップは、導電性コイルを製造することからなる。コイルは、絶縁被覆層によって覆われた導電性材料から製造された本体から形成される。
【0069】
第2のステップは、導電性コイル内の導電体30を切断することからなる。導電性コイルは、切断されると一体化されるように意図された導線の連続チェーンから形成される。この切断ステップにより、導電体の軸方向端面が露出本体から形成される。導電体30の側面は、被覆層から形成されている。
【0070】
溶接ステップを実行することが可能になる前に、導電体30の端部を露出させる、すなわち、電気絶縁被覆層および残留物を前記被覆層から除去する必要がある。具体的には、露出した導電性材料に対して溶接ステップが実行されない場合、これは溶接部に空隙を生じさせる可能性があり、導電体の端部間の電気的接続を弱める可能性がある。
【0071】
露出ステップは、レーザ露出ステップである。前記露出ステップは、以下でより詳細に説明される。この露出ステップは、導電体30の両端で繰り返される。
【0072】
次いで、導電体は、ステータ本体21のスロット22内に曲げられ、および/または挿入される。次いで、溶接される導電体の端部32を対にして一緒にするために、導電体を再び折り畳むことができる。最後に、前記隣接する端部は、電気巻線24を生成するために互いに電気的に接続される。隣接する端部32間のこの電気的接続は、レーザ溶接によって生成される。より具体的には、レーザビームは、露出部分40の軸方向端面の方向に放射される。導電性材料から作られた本体のみから形成された露出部分40は、次いで溶融し、スポット溶接部33を形成するために隣接する導電体の露出部分と混合する。
【0073】
上述の露出ステップは、中間部分および露出部分を露出させる第1のステップと、その後に続く露出部分のみを露出させる第2のステップとを含む。
【0074】
第1の露出ステップは、被覆層37の一部を、特に燃焼によって除去する第1のレーザビームによって実行される。第1の露出ステップは、大部分が被覆層37を除去すると同時に、本体36上に被覆層残留物の薄層を残す。残留物の層は、主に被覆層37からのダストによって形成される。したがって、この第1の露出ステップの後、中間部分39および露出部分は、被覆層37からの残留物によってそれらの本体36を覆われる。
【0075】
第1の露出ステップは、例えば、二酸化炭素レーザやアルゴンレーザなどの赤外線レーザを使用して実行される。この例で使用されるレーザビームの波長は、2.7マイクロメートル~15マイクロメートルであり、特に4.3マイクロメートルまたは9.4マイクロメートル、さらには10.6マイクロメートルである。
【0076】
第2の露出ステップは、露出部分40上の被覆層37から残留物の薄層を除去して洗浄する第2のレーザビームによって実行される。したがって、露出部分は、本体36のみから形成され、もはや被覆層37または残留物を有さない。
【0077】
第2の露出ステップは、例えば、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)型のレーザを使用して実行される。この例で使用されるレーザビームの波長は、60ナノメートル~1070ナノメートル、特に1030ナノメートル~1060ナノメートルである。
【0078】
2つのレーザビームの波長は、本体36の用途および材料に依存することが理解されよう。
【0079】
レーザビーム45の各々は、対応するレーザヘッド41によって放射される。
【0080】
前述の露出ステップは、導電体の面、特に関連するレーザビーム45を放射するレーザヘッド41の反対側に延在する導電体30の面に対して実行することができる。
【0081】
あるいは、露出プロセスのサイクル時間を改善するために、矩形断面の導電体は、前記導電体の面が、進行中の前記露出ステップに関連するレーザビーム45を放射するレーザヘッド41に対して20°~70°の角をなすように配置することができる。この角は、好ましくは40°~50°であり、特に45°に等しい。次いで、レーザヘッドは、レーザビームを配向させるための配向装置44を備えることができ、それにより、レーザビーム45は、導電体またはレーザヘッドが移動することなく同じ露出ステップ中に導電体30の両面を掃引する。
【0082】
配向装置44は、レーザビームが同じ導電体30のいくつかの面、特に2つの隣接する側面に到達することができるように、レーザヘッド41を移動させることなくレーザビーム45を正しい方向に配向させることを可能にする少なくとも1つのミラー43を有する。配向装置44はまた、ミラー43を使用して、対応するレーザビームをいくつかの導電体の端部32に向かって次々に配向するように配置することができる。その後、導電体またはレーザヘッド41が移動することなく、いくつかの導電体30に対して露出ステップのうちの1つを実行することができる。好ましくは、導電体30は、この場合、互いに平行に配置される。
【0083】
配向装置44はまた、レーザヘッド41と露出する導電体30との間の距離を変化させることを、これらの要素のうちの1つが移動することなく可能にする少なくとも1つの望遠鏡42を有することができる。好ましくは、望遠鏡42は、ミラー43よりもレーザヘッド41の近くに配置される。好ましくは、様々な導電体は、配向装置44の移動を制限することによって前記導電体を露出させることを可能にするために、互いに平行に配置される。
【0084】
本発明は、特にオルタネータまたは可逆機械のステータの分野に適用可能であるが、任意の種類の回転機械に適用することもできる。同様に、本発明は、回転電気機械のロータに適用することができる。
【0085】
もちろん、前述の説明は、例としてのみ与えられており、本発明の分野を限定するものではなく、様々な要素を任意の他の均等物で置き換えることによってそこから逸脱することはない。
【国際調査報告】