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特表2023-506656レンズフリー赤外線マルチスペクトル画像化装置および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-17
(54)【発明の名称】レンズフリー赤外線マルチスペクトル画像化装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20230210BHJP
【FI】
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537760
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086546
(87)【国際公開番号】W WO2021122833
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1914926
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・デュポイ
(72)【発明者】
【氏名】エメリク・ロラン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059JJ17
2G059KK01
(57)【要約】
本発明は、サンプル(2)を画像化するように意図されたレンズフリー赤外線画像化装置(1)であって、赤外線範囲のいくつかの波長による光を放射するように構成された少なくとも1つの光源(3、3a、3b)と、サンプルと相互作用して放射された光の一部を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(4)と、を備え、センサが複数の画素(41)を含み、センサ(4)が放射された光の反射部分を検出するように構成されていることを特徴とする、装置を提供する。本発明はまた、この装置を製造するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線範囲のいくつかの波長による光を放射するように構成された少なくとも1つの光源(3、3a、3b)を含む、サンプル(2)を画像化することを目的としたレンズフリー赤外線画像化装置(1)であって、
前記少なくとも1つの光源(3、3a、3b)は、画像化されるサンプル(2)の方向に光を放射するように意図された放射面(300)を有し、前記装置(1)は、サンプルと相互作用して放射された光の反射部分を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(4)をさらに含み、前記センサは、複数の画素(41)を含み、放射された光の前記反射部分を受け入れるように意図された検出面(400)を有し、前記放射面(300)および前記検出面(400)は、前記装置(1)の同一の1つの側に面しており、前記少なくとも1つの光源(3、3a、3b)は、複数の放射方向(E)に光を再放射するように構成された二次光源(3b)と結合された、赤外線範囲のいくつかの波長による光を放射するように構成された一次光源(3a)を含み、前記放射面(300)は前記二次光源(3b)に位置し、前記一次光源(3a)は前記放射面(300)の放射領域の外側に移動されており、
前記二次光源(3b)が、前記一次光源(3a)と結合された複数の受動取り出し構造(311)を含むフォトニックチップ(30)によって少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記光源(3、3a、3b)および前記センサ(4)が互いに積み重ねられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
エミッタ(31)は、発光マトリックス(310)の形態で配置され、前記センサの画素(41)は、検出マトリックス(410)の形態で配置され、前記フォトニックチップ(30)は、フォトニックチップ(30)とセンサ(4)の積層方向(z)への投影において、エミッタ(31)がセンサ(4)の画素(41)と交互になるように、前記センサ(4)と重ね合わされている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記フォトニックチップ(30)が前記センサ(4)と重ね合わされ、フォトニックチップ(30)とセンサ(4)の積層方向(z)への投影において、エミッタ(31)が前記センサ(4)の画素(41)を取り囲んでいる、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記フォトニックチップ(30)が、前記一次光源(3a)によって放射された光を前記受動取り出し構造(311)へと導くように構成された導波路(312)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記受動取り出し構造(311)の各々は、前記放射面(300)に対して30°から60°の間の角度で傾斜した少なくとも1つのファセット(F)を有し、前記ファセットが前記導波路(312)に面しており、前記導波路(312)を出る光を複数の放射方向(E)に反射して、取り出しミラーを形成するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記フォトニックチップ(30)が300μm以下、好ましくは100ミクロンから2mmの間の厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
一次光源(3a)を提供するステップと、
前記一次光源(3a)によって放射された光を、放射面(300)で再放射するように意図されたフォトニックチップ(30)を形成するステップと、
前記一次光源(3a)によって放射された光の一部を、検出面(400)上で検出することができる複数の画素(41)を含むセンサ(4)を提供するステップと、
前記放射面(300)および前記検出面(400)が前記装置(1)の同一の1つの側に面するように、前記フォトニックチップ(30)と前記センサ(4)を組み立てるステップと、
前記一次光源(3a)を前記フォトニックチップ(30)の前記受動取り出し構造(311)に結合するステップと、
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のレンズフリー赤外線画像化装置(1)の製造方法。
【請求項9】
前記フォトニックチップ(30)を形成するステップが、
第1のシリコンベースの基板(10a)をエッチングすることにより、第1のシリコンベースの基板(10a)の第1の面(101)から突出する受動取り出し構造(311)を形成するステップと、
取り出し構造(311)に面する導波路(312)を形成するステップであって、前記導波路(312)が、一次光源(3a)によって放射された光を取り出し構造(311)へと導くように構成される、形成するステップと、
を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記導波路(312)が、シリコンとは異なる材料の少なくとも1つの層(11、13)において、前記第1のシリコンベースの基板(10a)の第1の面(101)上に直接形成され、前記受動取り出し構造(311)が前記少なくとも1つの層(11)内に形成される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記導波路(312)が第2の基板(10b)の第2の面(102)上に形成され、前記導波路(312)が第1の基板(10a)の取り出し構造(311)に面するように、前記第2の基板(10b)が前記第1の基板(10a)と組み立てられ、前記方法が、第2の面(102)の反対側の面(103)から第2の基板(10b)を薄化するステップをさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記受動取り出し構造(311)が、第1の面(101)に対して30°から60°の間の角度で傾斜した少なくとも1つのファセット(F)を各々が有するようにエッチングされ、取り出しミラーを形成するように、前記少なくとも1つのファセット(F)のそれぞれに対して金属堆積(12)が実行される、請求項8から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
画像化される領域とセンサ(4)との間の距離が200μm未満となるように、前記装置(1)が、サンプル(2)の画像化される領域と接触しているかまたは近接している、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズフリー赤外線画像化の分野に関する。本発明は、生物学的組織の画像化において特に有利であるが、限定的ではない用途を有するであろう。
【背景技術】
【0002】
農業関連産業、医療、健康管理などの応用の多くの分野では、汚染の検出や診断を目的として、化学的または生化学的化合物の検出および識別が必要である。赤外線(IR)分光法は、このような化学的または生化学的化合物を検出および識別するために広く使用されている分析技術である。
【0003】
分析するサンプルの画像を生成するための既知の解決策は、多色IR光源と連結された顕微鏡およびフーリエ変換IR(FTIR)分光計を介してサンプルをマッピングするものである。このようなシステムにより、サンプルをスキャンし、約10μmの空間分解能のマルチスペクトル画像を取得することができる。このタイプの解決策の欠点は、数mmまたは数cmのサンプル表面積の分析に時間がかかることである。そして画像化されるサンプルの視野は制限される。このようなシステムはさらに複雑で、高価で、大型である。
【0004】
量子カスケードレーザ(QCL)の出現により、多色IR光源のスペクトル範囲をカバーする複数の単色IR光源を生成することが可能になった。その後、サンプルと相互作用した光をスペクトル分析するためにFTIR分光計を使用する必要がない。赤外線感光性の検出器は、QCLの波長ごとに、サンプルによって透過または拡散された光の強度を定量化するのに十分である。
【0005】
さらに、ピクセルマトリックスを形成する複数の検出器、典型的にはボロメータを含むIRイメージャを使用することにより、FTIR分光計を使用せずにマルチスペクトル画像化を達成することが可能になる。このような解決策により、物体をスキャンすることなく、広い視野と空間的に分解された画像を生成することが可能となる。その後、中赤外線でのマルチスペクトル画像化がより高速になる。さらに、QCLおよびIRイメージャを含むそのような機器は、比較的小型化することができる。これにより、ポータブルIRマルチスペクトル画像化装置の設計が可能となる。
【0006】
非特許文献1には、サンプル、特に生物学的サンプルを観察するためのIR画像化装置が開示されている。この文書の第5章「5.組織薄片の顕微分光法」では、特に、IRマルチスペクトル画像化システムにおけるQCLとボロメータの連結に言及されている。これにより、QCLに基づく光源とボロメータベースのイメージセンサとの間にサンプルを配置することにより、薄いストリップの形態でサンプルを観察することが可能となる。したがって、物体をスキャンすることなく広視野画像を取得することができる。これにより、画像の取得時間を短縮することができる。したがって、IRマルチスペクトル画像化による分析量は大幅に増加する。
【0007】
したがって、このような装置は、サンプルをスキャンすることなく、空間的に分解されたスペクトル情報を取得することを可能にする。広い視野にわたって、サンプルの複数の画像を取得することが可能となり、各画像は、異なるQCLによって発光された光に対するサンプルのスペクトル応答の関数である。このような装置は、例えば、癌性ゾーンおよび健康ゾーンを決定するために生体組織の診断を実行することを可能にする。
【0008】
この装置の欠点は、薄いストリップの形態でサンプルを準備する必要があることである。したがって、画像化される物体のサンプルのサンプリングが必要である。このサンプリングは侵襲的である。これでは、生体内での医療測定や現場での品質管理を、つまり物体に直接行うことはできない。
【0009】
したがって、短い取得時間で広視野画像を生成することを可能にする非侵襲的でコンパクトなIRマルチスペクトル装置を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】K. Isensee et al., Biomedical applications of mid-infrared quantum cascade lasers - a review, The Analyst, vol.143, no.24, pp.5888‐5911, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の現在の解決策の欠点を少なくとも部分的に克服する装置を提案することを目的とする。
【0012】
本発明の別の目的は、非侵襲的IRマルチスペクトル画像化装置を製造するための方法に関する。
【0013】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の説明および添付の図面を検討することで明らかになるであろう。他の利点も組み込まれることが理解される。特に、装置の特定の特性および特定の利点は、必要な変更を加えて方法に適用することができ、逆もまた同様である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的を達成するために、本発明は、サンプルまたは物体を画像化することを目的としたレンズフリー赤外線画像化装置であって、前記装置は、赤外線範囲のいくつかの波長による光を放射するように構成された少なくとも1つの光源と、サンプルまたは物体と相互作用して放射された光の一部を検出するように構成された少なくとも1つのセンサとを含み、前記センサが複数の画素を含む、装置を提案する。
【0015】
有利には、センサは、特に、光源によって放射される光の放射方向と反対の方向を有する検出方向に沿って、放射される光の反射部分を検出するように構成される。
【0016】
この方法では、画像化されるサンプルを成形する必要がない。この装置は、有利には、非侵襲的に、サンプリングすることなく、サンプルまたは物体の少なくとも一部を画像化することを可能にする。例えば、IR範囲のいくつかの波長によって複数の画像を取得するために、画像化されるサンプルのすぐ近くに装置を配置することで十分である。
【0017】
この装置はまた、短縮された取得時間でこれらの画像を生成することを可能にする。生成するための画像の各ポイントでの取得が必要とされるマッピング原理に基づくシステムとは対照的に、各画像は実際に単一の取得で直接取得される。
【0018】
この装置はさらに有利には、センサ上に画像を形成するための光学レンズを有さない。これにより、計装を大幅に簡素化することができる。装置のコストが低減される。これにより、装置のかさばりをさらに低減させることができる。装置の小型化が向上する。
【0019】
さらに、サンプルを導入するために、IR光源とIRイメージャとの間にスペースを設ける必要がない。そのような装置のバルクも低減される。
【0020】
本発明はまた、このような反射性IRスペクトル画像化装置を使用するための方法に関する。ここで、装置は、サンプルの画像化される領域と接触するかまたは近接しており、画像化される領域とセンサとの間の距離が200μm未満である。これにより、センサが収集する反射光の流れを最大化することができる。このような使用は、例えば、健康な組織と腫瘍組織を区別するための組織病理学の分野において、生物学的組織を診断するための用途に特に有利である。
【0021】
本発明はまた、光源が、受動取り出し構造の形態の複数のエミッタを含むフォトニックチップによって形成される二次光源であり、前記受動取り出し構造が、IR範囲のいくつかの波長による光を放出するように構成された一次光源と結合されている装置を製造するための方法に関する。この方法は、
一次光源を提供するステップと、
一次光源から放射された光を放射面で再放射するように意図されたフォトニックチップを形成するステップと、
検出面上で、一次光源によって放射された光の一部を検出することができる複数の画素を含むセンサを提供するステップと、
放射面と受光面が1つの同じ側に面するように、フォトニックチップとセンサを組み立てるステップと、
一次光源をフォトニックチップの受動取り出し構造と結合させるステップと、
を少なくとも含む。
【0022】
本発明の目的、目標、ならびに特徴および利点は、以下の添付の図面によって示される発明の実施形態の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明の実施形態によるIRマルチスペクトル画像化装置を斜視図として概略的に示す。
図1B図1Aに示した装置の一部の拡大図である。
図2】本発明の実施形態によるIRマルチスペクトル画像化装置を断面図として概略的に示す。
図3】画素とサンプルとの間の距離に応じて、サンプルによって反射され、IR画像化装置の画素によって受光された光の流れの計算を示す。
図4】本発明の実施形態によるフォトニックチップを斜視図として概略的に示す。
図5】本発明の実施形態による、検出マトリックスの画素および発光マトリックスのエミッタの相対的な配置を上面図として概略的に示す。
図6A】本発明の実施形態による、フォトニックチップ上に形成された、導波路に面する受動取り出し構造を断面図として概略的に示す。
図6B】本発明の別の実施形態による、フォトニックチップ上に形成された、導波路に面する受動取り出し構造を断面図として概略的に示す。
図7】本発明の実施形態による、互いに積層されたマトリックスIRセンサおよびフォトニックチップを断面図として概略的に示す。
図8A】本発明の実施形態による検出マトリックスを上面図として概略的に示す。
図8B】本発明の実施形態による発光マトリックスを上面図として概略的に示す。
図8C】本発明の実施形態による発光マトリックスと検出マトリックスの重ね合わせを上面図として概略的に示す。
図9A】本発明の実施形態によるフォトニックチップを形成するための、導波路を含む第2の基板を備えた受動取り出し構造を含む第1の基板のアセンブリを断面図として概略的に示す。
図9B図9Aに示されているように、組み立て後に得られたフォトニックチップを断面図として概略的に示す。
図10図10Aから10Hは、本発明の実施形態による受動取り出し構造を製造するためのステップを概略的に示す。
図11図11Aから11Dは、本発明の実施形態による導波路を製造するためのステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面は例として与えられるものであり、本発明を限定するものではない。それらは、本発明の理解を容易にすることを意図した概略原理表現を構成するものであり、必ずしも実際の応用の規模に適合しているわけではない。特に、さまざまな構造(取り出し、導波路、画素)の寸法は実寸を表すものではない。
【0025】
本発明の実施形態の詳細なレビューを開始する前に、任意選択で、本発明は、関連してまたは代替的に使用することができる以下の任意の特徴の少なくともいずれか1つを含むことに留意されたい。
【0026】
一例によれば、光源は、画像化されるサンプルの方向に光を放射するように意図された放射面を有し、センサは、光源によって放射された光の、サンプルによって反射された部分を受け入れるように意図された検出面を有する。前記放射面および検出面は、装置の同じ側に面している。
【0027】
一例によれば、少なくとも1つの光源は、複数の放射方向に前記光を再放射するように構成された二次光源と結合された、赤外線範囲のいくつかの波長による光を放射するように構成された一次光源を含み、放射面は、二次光源に配置され、一次光源は放射面の放射領域の外側に移動されている。
【0028】
一例によれば、光源とセンサは互いに積み重ねられている。
【0029】
一例によれば、光源とセンサは、動作中、光源がセンサよりもサンプルに近くなるように、互いに対して配置される。
【0030】
一例によれば、光源とセンサは、動作中、センサが光源よりもサンプルに近くなるように、互いに対して配置される。
【0031】
一例によれば、光源およびセンサは、動作中に、センサおよび光源がサンプルから実質的に同一の距離に配置されるように、互いに対して配置される。
【0032】
一例によれば、センサの画素はボロメータによって形成される。
【0033】
一例によれば、光源は、複数の放射素子を含むフォトニックチップによって少なくとも部分的に形成される。
【0034】
一例によれば、エミッタは、放射マトリックスの形態で配置されている。
一例によれば、センサの画素は、検出マトリックスの形態で配置されている。
【0035】
一例によれば、フォトニックチップはセンサに重ね合わされる。
一例によれば、エミッタは、フォトニックチップとセンサの積層方向への投影において、センサの画素と交互になっている。
【0036】
一例によれば、エミッタは、フォトニックチップおよびセンサの積層方向への投影において、センサの画素を取り囲む。
一例によれば、フォトニックチップは、少なくとも部分的に、二次光源を形成する。
【0037】
一例によれば、エミッタは、一次光源と結合された受動取り出し構造である。受動取り出し構造は、電子機器(能動構造)を回避することを有利に可能にする。これにより、装置の小型化が可能となる。これにより、赤外線範囲の波長の大きな課題である、エミッタの局所的な加熱を制限、さらには除去することが可能になる。
【0038】
一例によれば、フォトニックチップは、受動取り出し構造を一次光源と結合するように構成された導波路を含む。
【0039】
一例によれば、フォトニックチップは、一次光源によって放射された光を受動取り出し構造に導くように構成された導波路を含む。
【0040】
一例によれば、フォトニックチップの厚さは100ミクロンから2mmの間である。そのような厚さは、有利には2mm以下であり、少なくとも1つの光源、典型的には二次光源をセンサに十分に近づけることを可能にする。これにより、二次光源とセンサとの間の光損失を制限または回避することができる。これにより、このレンズフリー装置の空間分解能を向上させることもできる。
【0041】
一例によれば、受動取り出し構造はそれぞれ、放射面に対して30°から60°の間の角度で傾斜した少なくとも1つのファセットを有する。
【0042】
一例によれば、受動取り出し構造のファセットは、導波路に面しており、抽出ミラーを形成するように、複数の放射方向に従って導波路を出る光を反射するように構成される。
一例によれば、一次光源は、複数の量子カスケードレーザQCLを含む。
【0043】
一例によれば、フォトニックチップの形成は、
基板のエッチングによって、第1のシリコンベース基板の第1の面から突出する受動取り出し構造を形成するステップと、
取り出し構造に面する導波路を形成するステップであって、前記導波路が一次光源によって放射された光を取り出し構造に導くように構成される、形成するステップと、
を含む。
【0044】
一例によれば、導波路は、シリコンとは異なる材料で作られた少なくとも1つの層において、第1のシリコンベース基板の第1の面上に直接形成され、受動取り出し構造は、前記少なくとも1つの層に形成される。
【0045】
一例によれば、導波路は、第2の基板の第2の面上に形成され、第2の基板は、導波路が第1の基板の取り出し構造に面するように、第1の基板と組み立てられる。
【0046】
一例によれば、この方法は、第2の面の反対側の面から第2の基板を薄化するステップをさらに含む。
【0047】
一例によれば、受動取り出し構造は、それぞれが第1の面に対して30°から60°の間の角度で傾斜した少なくとも1つのファセットを有するようにエッチングされる。
【0048】
一例によれば、抽出ミラーを形成するために、前記少なくとも1つのファセットのそれぞれに対して金属堆積が実行される。
【0049】
本発明は、好ましい応用分野として、中赤外線(MIR)のスペクトル範囲における非侵襲的光学分析によって生体組織を診断するためのプラットフォームを有する。
【0050】
一実施形態では、反射IRマルチスペクトル画像化を可能にするように配置された一連のQCLおよび中間レンズフリーIR検出器を組み合わせた本発明による装置は、特に、そのような診断を非侵襲的に実行することを可能にする。
【0051】
本発明による装置は、従来のマイクロ製造技術、特にマイクロエレクトロニクス分野で開発されたシリコン技術を使用して有利に製造することができる。
【0052】
以下、「吸収」という用語またはその等価物は、電磁波からのエネルギーが別のエネルギー形態、例えば熱の形態に変換される現象を指す。
【0053】
以下、「拡散」という用語またはその等価物は、伝播媒体が、電磁波からのエネルギー、例えば光エネルギーの多くの方向への分布を生成する現象を指す。
【0054】
以下、「反射」という用語またはその等価物は、入射光放射の表面から、入射方向と反対の方向を有する1つまたは複数の方向に再放射する現象を指す。本発明では、表面は、入射光放射の少なくとも一部を再放射する限り、反射性であると見なされる。反射面は、0から1の反射係数で特徴付けることができる。反射は、鏡面反射(1つの反射方向)または拡散反射(複数の反射方向)であり得る。
【0055】
「所与の波長を透過する」または単に「透明」である物体または材料とは、この波長を有する光の光強度の少なくとも90%を通過させる物体または材料を意味する。例えば、厚さが1mm以下のシリコンウェハは、波長が6μmから10μmの光を透過する。シリコンの吸収による光損失は、この波長範囲で5dB/cm未満である。
【0056】
入射光放射は、1つまたは複数の対応する一次光源によって放射される。これらの光源から放射される光は、赤外線範囲に属し、好ましくは中赤外線範囲、すなわち、5μmから11μmの波長範囲に属する。これらの一次光源は、通常、それぞれが主波長を有する複数の単色または準単色レーザを含む。主波長は、単色レーザによって放射される唯一の波長、または準単色レーザによって主に放射される波長である。
【0057】
本発明による装置は、「センサ」をさらに含む。このセンサは、通常、画素を形成するIR光検出器マトリックスの形で提供されます。したがって、「センサ」および「画像化装置」という用語は、明細書において同義語として使用される。
【0058】
材料A「ベースの」構造要素、層とは、この材料Aのみを含むかまたはこの材料Aおよび他の材料、例えばドーピング要素または合金要素を含む構造要素、層を意味する。したがって、透明基板が「シリコンベース」であると言及される場合、シリコンのみまたはシリコンと場合によっては他の材料、例えば不純物またはゲルマニウムで形成され得ることを意味する。
【0059】
本願では、直径、幅および長さは、スタックの軸を横切る方向で測定される。厚さまたは深さは、スタックの軸に沿って測定される。
【0060】
本明細書において、「レンズフリー」という表現は、装置が、光源の放射面とセンサとの間の光ビーム経路上にレンズの形態の光学要素を含まないことを意味する。
【0061】
本発明は、特に生物学的性質のサンプル、特にインビボでサンプルの画像化に使用することができる。したがって、IRマルチスペクトル画像化装置は、診断が必要な患者の皮膚に直接適用することができる。光源の放射面は、好ましくは、サンプルの表面に実質的に平行になるように配置される。したがって、光源の主な放射方向は、サンプルの表面に実質的に垂直である。
【0062】
好ましくは、光源は、各エミッタを介して、主な放射方向の周りの空間の一部に光を放射するように構成される。特に、空間の部分は円錐形の部分であり得、その軸は主な放射方向である。主な放射方向は、光源の放射面に対して垂直であり得る。一般に、放射される光線の方向は、主放射方向に沿って多数成分を有し、主放射方向に垂直な方向に沿って少数成分を有する。
【0063】
有利なことに、光源のエミッタは、平行な主放射方向を有する。
【0064】
好ましくは、センサの各画素は、主な検出方向の周りの空間の一部からの光を受け入れるように構成される。主な検出方向は、センサの検出面に対して垂直であり得る。一般に、反射から来る検出される光線の方向は、主検出方向に沿って多数成分を有し、主検出方向に垂直な方向に沿って少数成分を有する。
【0065】
有利には、センサの画素は、平行な主検出方向を有する。
【0066】
好ましくは、主検出方向と主放射方向は平行である。有利には、主検出方向および/または主放射方向は、サンプルの表面に垂直である。
【0067】
本発明の一態様によれば、検出方向と放射方向は反対方向である。これは、放射と反射の両方の光が一般に空間の特定の部分を覆うため、方向が平行であることを意味するものではない。しかしながら、それらの主要成分は反対方向を有する。
【0068】
本発明によれば、装置は、光がサンプルの方向に装置を出て、反射されたこの光の一部がサンプルと相互作用した後に再び装置に入るように構成される。
【0069】
実施形態によれば、センサと光源は重ね合わされる。これは、少なくとも放射面と検出面に関して、これら2つの部材の相対的な配置から延長される。しかしながら、重ね合わせは、スタック軸に沿った投影において、エミッタと画素が重ね合わされることを必ずしも意味するものではない。特に、この投影によれば、エミッタは画素を囲むことができ、またはその逆も可能である。
【0070】
本発明の範囲において、「上に」、「上に置く」、「覆う」または「下にある」という用語またはそれらの等価物は、「接触している」ことを意味しないことが特定される。したがって、例えば、画像化装置を覆うフォトニックチップとは、これらが互いに直接接触していることを強制的に意味するのではなく、フォトニックチップが、画像化装置に直接接触するか、または、少なくとも1つの他の層もしくは少なくとも1つの他の要素によって分離された状態で、少なくとも部分的に画像化装置を覆うことを意味する。
【0071】
特に明記しない限り、所与の実施形態について詳細に説明された技術的特徴は、例として説明された他の実施形態の文脈で説明された技術的特徴と非限定的な方法で組み合わせることができる。特に、エミッタまたは取り出し構造の数、発光または受光マトリックスの異なるパターン、および/または図に示される装置の要素の異なる形態を組み合わせて、必ずしも図示もしくは説明されていない別の実施形態を形成することができる。そのような実施形態は、明らかに本発明から除外されない。
【0072】
「実質的に」、「ほぼ」、「約」という用語は、「ほとんど10%」、またはこれが角度方向に関連する場合、「ほとんど10°」、好ましくは「ほとんど5°」を意味する。したがって、平面に実質的に垂直な方向とは、平面に対して90±10°の角度を有する方向を意味する。
【0073】
次に、図1A、1Bおよび2を参照して、本発明による装置の第1の例を説明する。
図1Aに示されるように、反射性IR画像化装置1は、画像化されるサンプル2のすぐ近くに来るか、または接触するように意図されている。サンプル2は、例えば、生体組織または農業関連産業製品である。
【0074】
装置1は、典型的には、光源3および画像化装置4を収容する本体5を備える。本体5は、図1Aに示されるような円筒形として、またはより一般的には、例えば、装置1の取り扱いを容易にするために良好な人間工学を有する任意の形状として提示され得る。
【0075】
本体5は、電源または電源接続6などの周辺部品、または少なくとも1つの光ファイバ7を含み得る。このような光ファイバ7は、特に、画像化されるサンプル2の領域を見ることができる。これは、カメラに接続され得る。これにより、例えば患者の癌腫の可能性があるサンプルに対する装置の直接の位置決め精度を向上させることができる。
【0076】
本体5は、その遠位端に、光源3および画像化装置4を含む。図1Bは、装置1の遠位端の拡大図を示す。光源3および画像化装置4は、通常、重ね合わせることができる。例えば、光源3および画像化装置4は、z方向に沿ってスタックを形成し、光源3は、装置1の遠位端の近くに配置され、画像化装置4は、光源3に対して、遠位端からわずかに引き下がって配置される。光源3は、光を放射するように意図された放射面300を有する。画像化装置4は、サンプル2によって反射された光を受け入れるように意図された検出面400を有する。そのような反射画像化を可能にするために、放射面および検出面300、400は、分析されるサンプル2に向かって同じ側に面する。
【0077】
画像化装置4は、IRまたはMIR領域の光を検出するように構成されている。これは通常、画素マトリックスを形成するように分散されたIRボロメータを含む。画像化装置4は、制御電子機器42、および/またはIRボロメータを熱化することを目的としたレギュレータ43と関連付けられ得る。
【0078】
光源3は、一次光源3a、または二次光源3bであり得る。図2に示されるように、装置は、典型的には、二次光源3bを形成するエミッタ31と結合された一次光源3aを備え得る。この場合、エミッタ31は受動取り出し構造である。図示されていない可能性によれば、エミッタ31は、発光ダイオード(LED)であり、一次光源3aを直接形成する。
【0079】
図2に示されるように、好ましくは、装置は、二次光源3bと結合された一次光源3aを備える。これにより、一次光源3aを移動させることが可能になる。これにより、装置の遠位端にある光源3の大きさを低減することが可能になる。
【0080】
一次光源3aは、典型的には、5μmから10μmの間の波長によって発光する量子カスケードレーザQCL32を含み得る。特に、一次光源3aは、それぞれが異なる波長を同時に放射するように構成された複数のQCLを含む。QCL32のそれぞれは、二次光源3bの複数のエミッタ31に関連付けられ得る。したがって、放射面300は増大される。これにより、画像化するサンプル2の領域をより広くかつ/またはより均一に照射することができる。
【0081】
この場合、エミッタ31は、好ましくは、ミラー321、光ファイバまたは導波路312を介してQCL32と結合された受動取り出し構造である。エミッタ31および導波路312は、通常、フォトニックチップ30内で一緒にグループ化される。この実施形態では、フォトニックチップ30は、ボロメータマトリックスによって形成された画像化装置4上に配置される。フォトニックチップ30をボロメータの感部から分離する距離、または放射面300を検出面400から分離する距離は、約数十ミクロン、例えば、10μmから200μmの間である。QCL32から来る光は、導波路312によって、エミッタ31を形成する受動取り出し構造へと導かれ、次いで、エミッタ31によってサンプル2に向けられる。エミッタ31は、通常、画像化されるサンプル2の領域を均一に照射するように構成された発光マトリックスを形成する。サンプル2は、通常、エミッタ31によって放射または再放射された光を吸収、反射、または拡散する。フォトニックチップ30の後ろに配置されたボロメータマトリックスは、光の反射部分を受け取るように構成される。有利には、フォトニックチップ30はシリコンベースである。シリコンはIRおよびMIR波長に対して透明である。これにより、ボロメータを遮蔽することなく、フォトニックチップ30を画像化装置4の前に配置することが可能になる。フォトニックチップ30は、IRおよびMIR波長に対して透明である別の材料、例えば、ゲルマニウムベースであってもよい。
【0082】
図3は、反射率が1に等しいランバート反射物体を10mW/cmで照明した場合に、25μmの画素(ボロメータ)によって収集された反射のフローの結果を示す。画素と物体との間の距離が250μmの場合、画素は、約3nWの光力を持つ反射光のフローを受け取る。このようなパワーは、特にIRボロメータタイプのIR画像化装置の画素によって完全に検出可能である。図3に示されるように、画像化されるサンプル2の領域と画像化装置4との間の距離が小さいほど、画像化装置4によって収集される反射光の流れは大きくなる。さらに、レンズフリー装置1の空間分解能は、画像化されるサンプル2の領域と画像化装置4との距離が大きいほど、低い。したがって、有利には、フォトニックチップ30は、z方向に沿って300μm以下、好ましくは250μm以下、好ましくは200μm以下の厚さを有する。
【0083】
装置1は、好ましくは、画像化されるサンプル2の領域と直接接触して、またはそのすぐ近くで使用される。特に、放射面300は、画像化される領域に対して配置することができる。このようにして、画像化される領域とセンサとの距離は、250μm以下、好ましくは200μm未満であり得る。これにより、センサが収集する反射光の流れを最大化することができる。
【0084】
図4は、フォトニックチップ30の例を示している。この例では、受動取り出し構造311は、フォトニックチップ30の開口部34の周囲に配置されている。この開口部34は、画像化装置4を少なくとも部分的に収容するように構成され得る。したがって、発光マトリックスは、z方向に沿った投影において検出マトリックスを囲んでいる。開口部34は、サンプルによって反射されたビームを画像化装置4(図示せず)に向かって通過させることを可能にする。これらの反射ビームは通常、軸zに沿って+z方向の主検出方向を有する。
【0085】
受動取り出し構造311は、入射ビームをサンプル(図示せず)に向けて再放射するように構成される。これらの入射ビームは通常、軸zに沿って-z方向の主放射方向を有する。
【0086】
受動取り出し構造311は、好ましくは、導波路312、312a、312bと結合され、好ましくは、受動取り出し構造311のそれぞれは、単一の導波路312bと個別に結合される。一例によれば、フォトニックチップ30は、一次光源3aによって放射された光を受け取るように意図された光入力33を備える。この光入力33は、光をすべての受動取り出し構造311に輸送する主導波路312aに供給する。二次導波路312bは、それぞれ、特定の受動取り出し構造311に関連付けられ得る。二次導波路312bは、例えば、図4に示されるようなエバネッセント結合によって、主導波路312aと結合され得る。複数の導波路の使用により、より多くの光パワーを通過させることが可能となる。これによりまた、QCLの異なる波長に応じてサンプルを同時に照射することも可能になる。
【0087】
この例で提示される受動取り出し構造311は、エミッタ31、例えばLEDに置き換えることができる。この場合、導波路312を使用する必要はない。異なるタイプのエミッタ31、例えば、LEDおよび受動取り出し構造311の組み合わせを検討することができる。いくつかのエミッタ31は、例えばLEDであり、他のいくつかのエミッタ31は、例えば受動取り出し構造311であり得る。この場合、導波路312は、LEDおよび発光マトリックスの各点で放射された光を運ぶための受動取り出し構造311と関連され得る。
【0088】
図5は、エミッタ31の分布の別の例を示している。この例では、発光および検出マトリックス310、410は、zに沿った投影において、少なくとも部分的に重なり合あっている。したがって、エミッタ31は、それぞれ、画像化装置4の画素41によって囲まれている。これにより、シートの平面内で、比較的均質で均一な放射面を得ることが可能となる。画素41およびエミッタ31の分布は、好ましくは、放射面と検出面との間の良好な妥協点が得られるように行われる。画素41は、エミッタ31によってマスクされ得る。これにより、許容可能な検出面を維持しながら、ボロメータマトリックスの設計を単純化することが可能になる。
【0089】
図6Aおよび6Bは、受動取り出し構造311および導波路312の2つの特定の実施形態を示している。導波路312は、5μmから11μmの間の波長の光を導くように構成される。図6Aの例では、導波路312および取り出し構造311は、シリコンSiベースの基板10上のゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウムSiGeベースの層11に形成されている。したがって、導波路312および取り出し構造311の構造化は、いわゆるモノリシックアプローチに従って行うことができる。これにより、導波路312および取り出し構造311を1つの同じ基板10上に直接形成することが可能になる。
【0090】
導波路312は、典型的には、層11によって形成されたクラッドと、層11内に形成されたコア13とを含む。クラッドは、例えば、約20%のゲルマニウム含有量を有するSiGeからなる。コア13は、例えば、ゲルマニウム含有量が約40%のSiGeまたはGeからなる。導波路312は、基板10の底面に対して傾斜した出力ファセットFを有することができる。このような傾斜ファセットは、典型的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)または水酸化カリウム(KOH)ベースの湿式エッチングによって得ることができる。例えばCaF、BaF、ZnS、ZnSe、CdSe、SiN、AlN、Ta、TiO、ZrO、非晶質カーボン、カルコゲナイドなどの他の導波路材料を、非限定的な方法で使用することができる。
【0091】
取り出し構造311は、ここでは、例えば、約20%のゲルマニウム含有量を有するSiGeで作られた層11内に直接形成されている。抽出構造311は、典型的には、基板10の底面に対して傾斜したファセットFを有する。傾斜角は、底面に対して30°から60°の間、例えば、約45°または55°であり得る。ファセットFは、導波路312の出力ファセットFに面して配置されている。ファセットFは、導波路312から出る光を、底面に実質的に垂直な主成分を有する放射または再放射方向に反射するように構成される。ファセットFは、好ましくは、金属層12によって金属化される。取り出し構造311のファセットFは、通常、取り出しミラーを形成する。
【0092】
図6Bの例では、取り出し構造311は、シリコンSiベースの基板10に形成され、導波路312は、ゲルマニウムまたはシリコンゲルマニウムSiGeベースの層11に形成される。従って、導波路312の構造化は、いわゆるヘテロジェニックアプローチに従って、取り出し構造311を含む基板10から独立した第2の基板上で行われ得る。この例では、導波路312はまた、上記のように、層11によって形成されたクラッドと、層11内に形成されたコア13とを含む。導波路312は、基板10の底面に垂直な出力ファセットFを有することができる。そのような垂直のファセットは、典型的には、例えばプラズマによるドライエッチングによって得ることができる。取り出し構造311は、ここでは、基板10内に直接形成される。それはまた、導波路312の出力ファセットFに面するファセットFを有する。このファセットFは、上記のように傾斜し、好ましくは金属化される。
【0093】
図7は、サンプル2、典型的には生物学的サンプルに近接するか、または接触することが意図された面308を有するフォトニックチップ30を含む装置を示す。装置は、例えばマイクロボロメータマトリックスの形態で、複数の画素41を含む画像化装置4をさらに含む。フォトニックチップ30は、面310の反対側の面302を有する。この面302は、ここでは、画像化装置4の画素41に近接するか、または接触するように意図されている。
【0094】
フォトニックチップ30は、好ましくは、放射方向Eにおいて均一に中赤外線でサンプル2を照射するように構成される。フォトニックチップ30は、通常、サンプル2によって後方散乱または反射された光の一部を検出方向Dにおいて画素41まで通過させるように、中赤外線において透明である。
【0095】
フォトニックチップ30は、例えば、図6Bを参照して説明されたように配置された取り出し構造311および導波路312を備える。
【0096】
図8Aから8Cは、エミッタ31による画素41の遮蔽を回避または制限することを可能にする画素41およびエミッタ31の分布を示す。図8Aは、画素41が画素間領域411によって互いに分離されている検出マトリックス410を示す。図8Bは、発光マトリックス31、例えば、マイクロミラーを形成する取り出し構造311が、一度重ね合わされると、検出マトリックス410の画素間領域411と一致するように配置されている発光マトリックス310を示している。図8Cは、発光および検出マトリックス310、410の重なり合いを示している。マイクロミラーは、好ましくは、画素間領域411の交差点に配置される。これにより、マイクロミラー間および重ね合わされた画素間領域411(図示せず)の交差点間に導波路を配置することが可能になる。したがって、画像化装置の画素41は、マイクロミラーおよび/またはフォトニックチップの導波路によって遮蔽されない。
【0097】
図9A、9Bは、ヘテロジェニックアプローチに従ってフォトニックチップを形成する原理を示している。このアプローチによれば、取り出し構造311は、第1のシリコンベースの基板10aの第1の面101上に形成され、導波路312は、第2のシリコンベースの基板10bの第2の面102上に形成される。以下では、マイクロミラーの形で取り出し構造311を支持する第1の基板10aは、「ミラーウェハ」と呼ばれる。導波路312を支持する第2の基板10bは、「導波路ウェハ」と呼ばれる。次に、フォトニックチップ30は、それらの面102、101での導波路およびミラーウェハのアセンブリによって形成される。
【0098】
マイクロエレクトロニクス技術は、これらのウェハを製造し、フォトニックチップ30を形成するのに十分な集積精度でそれらをコンパクトに組み立てることを可能にする。
【0099】
図10Aから10Hは、ミラーウェハを製造するためのステップを示している。図10Aは、シリコン(100)基板10aの提供を図示している。基板の結晶配向は、特に、ミラーのファセットをエッチングするために使用される異方性エッチングの化学的性質に従って選択される。ハードマスク14は、典型的には窒化ケイ素ベースであり、例えば、低圧化学蒸着(LPCVD)によって基板10a上に堆積される(図10B)。次に、感光性樹脂パターン15がフォトリソグラフィによって形成される(図10C)。ハードマスク14がエッチングされ(図10D)、樹脂が除去される(図10E)。
【0100】
次に、基板10aは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、または水酸化カリウム(KOH)、またはピロカテコールおよび水(EDP)ベースのアルカリ性溶液におけるSiの異方性エッチングによってエッチングされる(図10F)。エッチング後に得られるファセットFの傾斜は、基板の結晶学的配向、ハードマスクの性質、および使用されるエッチング溶液によって変化し得る。通常、54.7°または45°の傾斜角度が実現され得る。この手法により、非常に滑らかなファセットを得ることができる。他の技術は、傾斜したファセットを得ることを可能にする。一般に「グレートーン」と呼ばれるリソグラフィ技術は、エッチングマスクに使用される樹脂のリソグラフィの間にエネルギー線量を変化させることからなる。樹脂パターンは、現像後、ドライエッチング、例えばRIE(反応性イオンエッチング)によって基板に転写される勾配を有する。
【0101】
このように形成された取り出し構造の高さは、導波路ウェハ上に生成された導波路の高さおよび/または画素間領域の幅に従って選択することができる。この高さは通常9μmから11μmの間である。
【0102】
次に、ハードマスク14が取り除かれ(図10G)、ファセットFが金属化される(図10H)。ファセットFの金属化は、チタン-金のTi/Au二重層を堆積させることによって行われ得る。Ti/Au堆積物は、典型的には50nmから500nmの間の厚さを有する。金属化は、ステンシルによって、またはより一般的には、フォトリソグラフィおよびエッチングによって行うことができる。あるいは、金属化はクリーピングによって行うことができる。クリーピングによる堆積の技術は、被覆されることが求められる構造、例えばファセット上に、材料、例えば金属を堆積することからなる。次に、アニーリングにより、構造の形状を成形できるように、材料のガラス転移を実現することが可能となる。金属はマイクロミラーの反射機能を確保する。それはさらに有利に、熱圧着による接着中にミラーウェーと導波路ウェハとの機械的組み立てを容易にすることを可能にする。
【0103】
図11Aから11Dは、導波路ウェハを製造するためのステップを示している。図11Aは、シリコン基板10bの提供を示している。エピタキシャルの継承により、導波路のクラッドとコアをそれぞれ形成する層11と13を形成することが可能になる(図11B)。層11は、例えば、Ge40%のSiGeのエピタキシャル成長によって形成され、層13は、例えば、Geのエピタキシャル成長によって形成される。堆積される厚さは、通常、Geの場合は約3μm、SiGeの場合は3~5μmである。図11Bで得られた導波路は、2Dガイドと呼ばれるフラットな導波路であり、基板10bの表面全体にわたって延在する。
【0104】
次に、金Auで作られたシールライン105が、導波路ウェハの周囲に、堆積/リソグラフィ/エッチングステップによって画定され、生成される。このシールライン105は、ミラーおよび導波路ウェハの組み立てを可能にする。
【0105】
次に、組み立ての間に取り出し構造311を収容することが意図された取り出し領域313が、リソグラフィ/エッチングによって画定される(図11D)。
【0106】
次に、ミラーウェハと導波路ウェハが組み立てられる。Au-Au熱圧着によるアセンブリが好ましく使用される。金属-金属熱圧着には、比較的単純で安価な実装に加えて、低温(<400℃)、通常は約250℃で実行できるという利点がある。他のアセンブリ技術も可能である(共晶接着、直接接着、ポリマー接着など)。熱圧着によるこのタイプのアセンブリの位置合わせ公差は、約数ミクロン、通常は+/-5μmである。
【0107】
組み立て後、図9Aに示されるような面103から、導波路ウェハの薄化が好ましくは行われる。基板10bは、薄化後、好ましくは300μm以下の厚さを有する。これにより、最終的には、分析対象のサンプルの表面とセンサとの間の距離を縮めることができる。
アセンブリから得られたウェハは、いくつかのフォトニックチップに切断することができる。
【0108】
本発明は、記載された実施形態に限定されず、請求項1の範囲に入る任意の実施形態まで拡張される。
【符号の説明】
【0109】
1 レンズフリー赤外線画像化装置
2 サンプル
3 光源
3a 一次光源
3b 二次光源
4 センサ
10a 第1の基板
10b 第2の基板
12 金属堆積
30 フォトニックチップ
31 エミッタ
41 画素
101 第1の面
102 第2の面
300 放射面
311 受動取り出し構造
312 導波路
400 検出面
410 検出マトリックス
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11A
図11B
図11C
図11D
【国際調査報告】