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▶ フンダシオ インスティトゥト ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ベイビジャ(イ デ イ ベ エ エレ エレ)の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】免疫調節のための化合物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230213BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20230213BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20230213BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230213BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/46
C07K14/47
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
C12N5/0784
C12N5/0786
A61K38/02
A61K31/7088
A61K35/12
A61K48/00
A61P37/06
A61K35/15 A
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523140
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020079374
(87)【国際公開番号】W WO2021074449
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19382910.8
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515040737
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥト ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ベイビジャ(イ デ イ ベ エ エレ エレ)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO INSTITUT D’INVESTIGACIO BIOMEDICA DE BELLVITGE (IDIBELL)
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ホセプ、エメ.アラン、ペラモン
(72)【発明者】
【氏名】アナ、ルケ、ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】インマクラーダ、セラーノ、サンタクルス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB19
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA03
4C084NA13
4C084ZB08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB08
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB08
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA05
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための、C4BPのCCP6領域の組換え型およびオリゴマー化ドメインに基づく化合物に関する。さらに、本発明は、本発明の化合物を用いて寛容原性樹状細胞および寛容原性マクロファージを得るための方法、ならびにこれらの方法によって得られる細胞およびそれらの治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体、およびオリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドであって、C4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインのいずれも含まない、前記組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記C4BPα鎖のCCP6ドメインが配列番号1である、請求項1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項3】
前記オリゴマー化ドメインが配列番号2またはその機能的に同等の変異体であり、好ましくは配列番号2である、請求項1または2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが配列番号3またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号3からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが配列番号5、配列番号7およびそれらの機能的に同等の変異体からなる群から選択される配列からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが配列番号6またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号6からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも6つの組換えポリペプチドのホモオリゴマー。
【請求項8】
前記ホモオリゴマーが、請求項1~6のいずれか一項に記載の7つの組換えポリペプチドによって形成される、請求項7に記載のホモオリゴマー。
【請求項9】
前記ポリペプチドが配列番号6からなるポリペプチドである、請求項7または8に記載のホモオリゴマー。
【請求項10】
医薬における使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド、請求項7~9のいずれか一項に記載のホモオリゴマー、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを含む宿主細胞、または前記組換えポリペプチド、前記ホモオリゴマー、前記ポリヌクレオチド、前記ベクターもしくは前記宿主細胞と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリヌクレオチド、請求項7~9のいずれか一項に記載のホモオリゴマー、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを含む宿主細胞、または前記組換えポリペプチド、前記ホモオリゴマー、前記ポリヌクレオチド、前記ベクターもしくは前記宿主細胞と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
in vitroで寛容原性樹状細胞の集団を生成するための方法であって、
(i)未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件下で樹状前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟樹状細胞の形成に適切な条件下で、前記工程(i)で得られた未成熟樹状細胞の集団をインキュベートする工程
を含み、
前記工程(i)および/または(ii)が、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、
(b)請求項7~9のいずれか一項に記載のホモオリゴマー、
(c)請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(d)前記(c)のポリヌクレオチドを含むベクター
からなる群から選択される物質を含む組成物の存在下で行われる、前記方法。
【請求項13】
in vitroで寛容原性マクロファージの集団を生成するための方法であって、
(i)未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件下でマクロファージ前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟マクロファージの形成に適切な条件下で、前記工程(i)で得られた未成熟マクロファージの集団をインキュベートする工程
を含み、
前記工程(i)および/または(ii)が、
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、
(b)請求項7~9のいずれかに記載のホモオリゴマー、
(c)請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(d)前記(c)のポリヌクレオチドを含むベクター
からなる群から選択される物質を含む組成物の存在下で行われる、前記方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって得られる寛容原性樹状細胞、または請求項13に記載の方法によって得られる寛容原性マクロファージであって、好ましくはFPR2high、P2RY2highおよび/またはS1PR1highである前記寛容原性樹状細胞、またはCCR2high、CX3CR1high、CXCR1high、FPR2highおよび/またはP2RY2highである前記マクロファージ。
【請求項15】
免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための、請求項14に記載の寛容原性樹状細胞または寛容原性マクロファージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野、より具体的には、単核食細胞において寛容原性状態を誘導することができるC4BPのCCP6領域の組換え型に基づく化合物、ならびに免疫系の望ましくない活性化を特徴とする疾患の予防および/または治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
単核食細胞系(MPS)は、特にケモカインおよびサイトカインメディエーターを分泌し、免疫細胞および非免疫細胞の移動と活性化ならびに自身の移動をもたらす能力を含む、多くの機能的特徴を共有する骨髄細胞のネットワークを指す。MPSは、樹状細胞、マクロファージおよび単球により構成されている。
【0003】
樹状細胞(DC)は、免疫系の専門的なAPCである。未成熟な段階において、DCは食作用または飲作用によって細胞外抗原を取り込み、エンドソームやファゴソーム等のエンドサイトーシス区画内で抗原をペプチドに処理し、ペプチドはMHCクラスII分子に結合する。それらはまた、外因性タンパク質からMHCクラスI提示経路(「交差提示」と呼ばれるプロセス)にペプチドを供給する独自の能力を有している。適切な分化シグナル(微生物生成物等)が供給されると、未成熟DCは、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞の両方を活性化する能力を備える免疫原性DCに発達し得る。一方の領域では、未成熟DCは寛容原性表現型に分化し得、これは末梢性寛容の維持に重要な役割を果たすと考えられている(Steinman, Ann. Rev. Immunol. 2003, 21: 685-711; Morelli, Immunol Rev 2003: 125-146)。
【0004】
in vitroで寛容原性DCを生成するための多数のプロトコルが説明されている(Xiao et al., J. lmmunother. 2006 (29) 465-471)。最もよく特徴付けられている方法は、薬理学的メディエーター(ビタミンD3アナログ、グルココルチコイド、エストロゲンを含む免疫抑制薬等)、サイトカインおよび成長因子(IL-10、TGF-β、IL-4およびIFN-γ等)または遺伝子工学を用いるものであり、T細胞共刺激分子(CD86やCD40等)の発現を抑制するか、T細胞阻害分子(CTLA-4やインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ等)の発現を増強する。
【0005】
近年、補体調節因子であるC4b結合タンパク質の生理学的アイソフォームαβが、樹状細胞において半成熟の抗炎症状態を誘導することが示された(Olivar R. et al. 2013. J. Immunol., 190:2857-2872)。
【0006】
一方、他の化合物の中でも、デキサメタゾン、IL-10もしくはTGF-β等の糖質コルチコイド、またはM-CSF+IFNγもしくはM-CSF+LPSの組み合わせの使用を含む、in vitroでの寛容原性または調節性マクロファージの生成のためのいくつかのプロトコルが説明されている(Mosser DM and Edwards JP. 2008. Nat. Rev. Immunol. 8:958-969;Zheng G. et al. 2013. Eur. J. Immunol. 43:219-227;Navarro-Barriuso J. et al. 2018. Front. Immunol. 9:2062;Foey AD. 2014. Immune response activation, Chapter 5: Macrophages: masters of immune activation, suppression and deviation, Publisher: InTech, Editors: Guy Huynh Thien Duc, pp.121-149)。
【0007】
現在、自己免疫疾患に関して米国FDAによって承認された治療法の大部分は、免疫炎症活性の全身的阻害に焦点を合わせたものである。非特異的免疫抑制は自己反応性免疫細胞機能の阻害に部分的に効果的であるものの、免疫応答を抑制するために用いられる薬剤には多くの副作用があり、継続的な治療は被治療者の長期の生存につながるものではない。したがって、感染を除去する免疫系の能力を維持しながら、自己反応性免疫細胞機能の有害な影響を特異的に遮断することを可能にする自己抗原特異的治療(auto-antigen-specific treatment)を開発することが望ましい。したがって、抗原特異的免疫寛容を効率的に誘導することができる、適切な装備を有するDCを生成する方法が強く求められている。
【0008】
さらに、ex vivoで生成された適切な寛容原性機能を有するDCは、アレルギーの治療および移植寛容の誘導のための治療ワクチンとしても実施することができる。自己免疫疾患の免疫療法と同様に、有害な免疫応答の効率的な抑制には、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の寛容誘導が関与している。したがって、ex vivoで生成された寛容原性DCは、自己免疫疾患やアレルギーの治療、および移植片拒絶の予防について同じ特性を有するはずであると期待される。
【0009】
しかしながら、明確な寛容原性表現型を有し、寛容原性決定因子の発現を有する寛容原性の樹状細胞およびマクロファージを産生するための新たな代替方法は、常にこの分野における研究の継続的な目標である。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、本発明は、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体、およびオリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドであって、C4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインのいずれも含まない前記組換えポリペプチドに関する。
【0011】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の少なくとも6つの組換えポリペプチドのホモオリゴマーに関する。
【0012】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0013】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0014】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0015】
第6の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の組換えポリペプチド、本発明の第2の態様のホモオリゴマー、本発明の第3の態様のポリヌクレオチド、本発明の第4の態様のベクター、または本発明の第5の態様の宿主細胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、医薬における使用のため、特に免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための、本発明の組換えポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞または医薬組成物に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、in vitroで寛容原性樹状細胞の集団を生成するための方法であって、
(i)未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件下で樹状前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟樹状細胞の形成に適切な条件下で、前記工程(i)で得られた未成熟樹状細胞の集団をインキュベートする工程
を含み、
前記工程(i)および/または(ii)が、
(a)本発明のポリペプチド、
(b)本発明のホモオリゴマー、
(c)本発明のポリヌクレオチド、および
(d)本発明のベクター
からなる群から選択される物質を含む組成物の存在下で行われる前記方法に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、in vitroで寛容原性マクロファージの集団を生成するための方法であって、
(i)未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件下でマクロファージ前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟マクロファージの形成に適切な条件下で、前記工程(i)で得られた未成熟マクロファージの集団をインキュベートする工程
を含み、
前記工程(i)および/または(ii)が、
(a)本発明のポリペプチド、
(b)本発明のホモオリゴマー、
(c)本発明のポリヌクレオチド、および
(d)本発明のベクター
からなる群から選択される物質を含む組成物の存在下で行われる前記方法に関する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られる寛容原性樹状細胞または寛容原性マクロファージ、それらの細胞を少なくとも80%含む細胞集団、本発明の細胞または集団を含む医薬組成物、および医薬、特に免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療のための医薬における本発明の細胞の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】PRP6-HO7およびPRP6-NOの未成熟配列。(A)PRP6-HO7のペプチドおよびDNAの未成熟配列。本図は、シグナルペプチド、ヒスチジンタグ、CCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインの配列を示す。予測されるPRP6-HO7の分子量は19.6kDaであり、シグナルペプチドなしで14.3kDaである。(B)PRP6-NOのペプチドおよびDNAの未成熟配列。本図は、シグナルペプチド、ヒスチジンタグ、CCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインの配列を示す。PRP6-NOでは、元のオリゴマー化配列が、2つのシステイン残基をアラニンで置換し(太字)、C末端の最後の13個のアミノ酸を除去することにより改変されている。予測されるPRP6-NOの分子量は18kDaであり、シグナルペプチドなしで12.7kDaである。
図2】PRP6-HO7の分子モデリング。GalaxyHomomerサーバー(http://galaxy.seoklab.org/homomer)を用いたモノマー配列/構造からのPRP6-HO7ホモオリゴマーの構造予測(Baek et al. (2017) Nucleic Acids Res. 45: W320-W324)。
図3】PAGEによるPRP6-HO7タンパク質およびPRP6-NOタンパク質の可視化。(A)還元条件下(R)(モノマー、それぞれ14.3kDaおよび12.7kDa)および非還元条件下(NR)(オリゴマー、100kDa)における精製されたPRP6-HO7タンパク質およびPRP6-NOタンパク質の12%SDS-PAGE分析およびCoomassie Blue染色。(B)非還元条件下(NR;左)で抗His MoAbでプローブした場合、および還元条件下(R;右)で抗C4BPα鎖ポリクローナル抗体でプローブした場合における、精製されたPRP6-HO7タンパク質およびPRP6-NOタンパク質のBis-Tris4~12%SDS-PAGEおよびウエスタン分析。
図4】PRP6-NOではなくPRP6-HO7によって、LPSにより活性化されたDCにおけるCD83およびCD86の発現が下方調節される。ヒトMo-DCは、その分化プロセス全体を通じて、いずれも12nMのPRP-HO7およびPRP-HE8(C4BP(β+)、PRP(C4BP)の不活性アイソフォームに対応する)、PRP6-HO7(32nM)およびPRP6-NO(32nMおよび224nM)と共にインキュベートされた。DCの成熟は、LPS処理によって達成された(詳細は、材料と方法を参照されたい。)。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによって活性化マーカーCD83および共刺激分子CD86の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。LPSはリポ多糖である。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSで成熟させたDCである。示される結果は、6回の独立した実験に基づく平均±SDである(mDCに対して**はp<0.01であり;****はp<0.0001である。)。
図5】PRP6-NOではなくPRP6-HO7による処理によって、ヒトiDCのエンドサイトーシス活性が増大する。iDCのエンドサイトーシス活性は、分化段階において蛍光DQ-OVAの内部移行およびプロセシング(受容体を介したエンドサイトーシス)を測定して、フローサイトメトリーによって評価された。単球は、未処理のまま(iDC)、またはPRP-HE8およびPRP-HO7(いずれも12nM)、ならびにPRP6-HO7およびPRP6-NO(いずれも32nM)で処理して分化させた。MFIは蛍光強度の中央値である。iDCは未処理の未成熟DCである。示されるデータは、5回の独立した実験に基づく平均MFI±SDである(iDCに対してはp<0.05である。)。
図6】PRP6-NOではなくPRP6-HO7によって、LPSにより活性化されたDCにおける炎症性サイトカイン産生が調節される。様々なPRPベースタンパク質:PRP-HE8、PRP-HO7(いずれも12nM;5μg/ml)、およびPRP6-HO7、PRP6-NO(いずれも32nM;3μg/ml)で処理されたMo-DCをLPSで成熟させ、それぞれの上清におけるIL-12p70およびTNF-αの濃度をELISAによって分析した。示される結果は、重複して行われた5回の独立した実験の平均±SDである。LPSはリポ多糖であり;iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSで成熟させたDCである(mDCに対してはp<0.05であり;**はp<0.01であり;***はp<0.001である。)。
図7】PRP6-HO7には補体阻害活性がない。(A)第I因子を介したC4bの切断に対するPRP-HE8およびPRP-HO7の補因子活性の概略図。第I因子によるC4bの切断には、特定の補因子、この場合はPRP-HE8/PRP-HO7の存在が必要である。第I因子は、矢印で示される2つの部位でC4bのα’鎖を切断する。2つの部位のいずれか1つで切断されると、α3-C4d(70kDa)およびα4(14kDa)、またはα3(25kDa)およびC4d-α4(59kDa)の断片が生成され、これらは還元条件下でのSDS-PAGEの後に見られる。C4bのα’鎖をさらに切断することにより、大きな可溶性のC4c(146kDa)断片、および標的との結合を維持する小さなC4d(45kDa)断片が生成される。(B)補因子活性のアッセイ。示された濃度のPRP-HE8、PRP-HO7およびPRP6-HO7(レーン3~7)を、C4b(8.9μg/ml)と共にインキュベートし、次いで第I因子(4.4μg/ml)を添加した。反応対照には、C4bのみ、およびC4b+FIが含まれていた。30分後にSDS還元サンプルバッファーですべての反応を停止させた。C4b切断断片を還元条件下の4~12%SDS-PAGEで分離し、次いで抗C4dMoAbを用いてウエスタンブロッティングを行った。C4b断片はゲルの左側に表示されている。補因子活性は、α3-C4d(70kDa)またはC4d(45kDa)の出現によって確認された。FIは第I因子である。結果は、3つの独立した実験の代表である。
図8】PRP6-HO7で処理され、LPSにより活性化されたDCにおける表面マーカーの発現。ヒトMo-DCは、その分化プロセス全体を通じて、いずれも12nMのPRP-HO7およびPRP-HE8、ならびにPRP6-HO7(32nM)と共にインキュベートされた。DCの成熟は、LPS処理によって達成された。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによってCD83、CD86、HLA-DR、CD40、CD80およびCD14の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。LPSはリポ多糖である。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSで成熟させたDCである。示される結果は、5回の独立した実験に基づく平均±SDである(mDCに対してはp<0.05であり;**はp<0.01であり;***はp<0.001である。)。
図9】PRP6-HO7によって、50%ヒト血清で増殖したLPSにより活性化されたDCにおけるCD83およびCD86の発現が下方調節される。ヒトMo-DCは、50%熱不活化ヒト血清を添加したRPMI1640細胞培養培地中で、その分化プロセス全体を通して、いずれも12nMのPRP-HO7およびPRP-HE8、ならびに所定の濃度のPRP6-HO7と共にインキュベートされた。DCの成熟は、LPS処理によって達成された。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによってCD83およびCD86の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。LPSはリポ多糖である。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSで成熟させたDCである。示される結果は、5回の独立した実験に基づく平均±SDである(mDCに対してはp<0.05であり;**はp<0.01である。)。
図10】PRP6-HO7により、Gardiquimodにより活性化された(gardiquimod-activated)DCにおけるCD83およびCD86表面マーカーの発現が下方調節される。ヒトMo-DCは、その分化プロセス全体を通じて、いずれも12nMのPRP-HE8およびPRP-HO7、ならびにPRP6-HO7(32nM)と共にインキュベートされた。DCの成熟は、Gardiquimod(TLR7アゴニスト)処理によって達成された(詳細は、材料と方法を参照されたい。)。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによってCD83およびCD86の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のGardiquimodによって成熟させた(gardiquimod-matured)DCである。示される結果は、5回の独立した実験に基づく平均±SDである(mDCに対してはp<0.05であり;**はp<0.01である。)。
図11】PRP6-HO7により、ループス腎炎患者から分離されたLPSおよびGardiquimodの両方により活性化されたDCにおける表面マーカーの発現が下方調節される。ループス腎炎患者のヒトMo-DCは、その分化プロセス全体を通して、いずれも12nMのPRP-HO7およびPRP-HE8、ならびにPRP6-HO7(32nM)と共にインキュベートされた。DCの成熟は、(A)LPS処理または(B)Gardiquimod処理のいずれかによって達成された。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによってCD83、CD86、HLA-DR、CD40およびCD80の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。LPSはリポ多糖である。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSまたはGardiquimodによって成熟させたDCである。示される結果は、4回の独立した実験に基づく平均±SDである(mDCに対してはp<0.05であり;**はp<0.01である。)。
図12】PRP6-HO7により、CCR7の発現が下方調節され、ヒトDCの走化性が変化する。(A)翻訳レベルでのDCのCCR7発現分析。PRPベースタンパク質によって処理し、LPSによって成熟させたDCにおけるCCR7の表面発現。CCR7の細胞表面発現のMFIが示される。示される結果は、7回の独立した実験に基づく平均±SDである。(mDCに対して**はp<0.01である。)。(B)未処理のDC、PRP-HE8(12nM)によって処理されたDC、PRP-HO7(12nM)によって処理されたDC、およびPRP6-HO7(32nM)によって処理されたDCの、LPSによる成熟後のケモカインCCL21への移動がトランスウェルアッセイで評価された。示されるのは、2時間のインキュベーション後にCCL21を含む下部チャンバーに向かって移動した、LPSによって成熟されたDC(mDC)の絶対数である(黒色のカラム)。CCL21を含まない下部チャンバーへのDCの自発的移動も評価された(灰色のカラム)。結果は、重複して行われた7つの独立した実験に基づく平均±SDである。MFIはCCR7表面マーカーの蛍光強度の中央値である。LPSはリポ多糖ある。iDCは未処理の未成熟DCであり;mDCは未処理のLPSによって成熟させたDCであり;PRP-HE8、PRP-HO7およびPRP6-HO7はPRPベースタンパク質によって処理された、LPSよって成熟させたDCである。(mDCに対して****はp<0.0001である。)。
図13】PRP6-HO7に曝露されたヒトDCにより、分化時にPTGER3およびEGLN3が下方調節される。分化の4日目および5日目における未処理の未成熟DC(iDC)と比較した、PRP-HE8により処理されたDC、PRP-HO7により処理されたDC、またはPRP6-HO7により処理されたDCのPTGER3およびEGLN3の転写産物の発現(n=1)。遺伝子発現データはLogFC(FCは倍率変化である。)として表される。特定された遺伝子の相対的な発現データは、トータルRNA抽出およびTaqMan RT-qPCR検証により得られた。LogFC値は、未処理のiDCと比較した平均+SD(2つの技術的再現/サンプル(2 technical replicates/sample)として表される。
図14】PRP6-HO7に曝露されたヒトDCにより、分化時に嗅覚受容体が上方調節される。分化の5日目における未処理の未成熟DC(iDC)と比較した、PRP-HE8により処理されたDC、PRP-HO7により処理されたDC、またはPRP6-HO7により処理されたDCの「find me」または嗅覚受容体CCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2、GPR132、P2RY2およびS1PR1の転写産物の発現。遺伝子発現データはLogFC(FCは倍率変化である。)として表される。特定された遺伝子の相対的な発現データは、トータルRNA抽出およびTaqMan RT-qPCR検証により得られた。LogFC値は、4回の独立した実験に基づく平均+SDとして表される(未処理のiDCに対してはp<0.05である。)。
図15】PRP6-HO7により、ヒトマクロファージのM1およびM2の分極が妨げられる。(A)M1マーカーの発現。(B)M2マーカーの発現。ヒト単球は、未分化の(uncommitted)マクロファージ(M0)への分化、炎症性マクロファージ(M1)または活性化マクロファージ(M2)へのさらなる分極の全体を通して、いずれも12nmのPRP-HE8およびPRP-HO7、ならびにPRP6-HO7(32nM)と共にインキュベートされた(詳細は、材料と方法を参照されたい。)。次いで、細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによってCD64およびCD80(M1マーカー)、またはCD209およびCD11b(M2マーカー)の細胞表面発現を分析した。MFIは様々な表面マーカーの蛍光強度の中央値である。M0は未処理の未分化のマクロファージであり;M1/M2は、未処理のM1またはM2に分極したマクロファージである。示される結果は、5回の独立した実験に基づく平均±SDである(M1/M2に対してはp<0.05であり;**はp<0.01であり;***はp<0.001である。)。
図16】PRP6-HO7に曝露されたヒトM0マクロファージにより、分化時にALCAM、SLC16A1およびLMNB1が下方調節される。分化の1日目、2日目、4日目および6日目における未処理の未分化の(M0)マクロファージと比較した、PRP-HE8により処理された分化マクロファージ、PRP-HO7により処理された分化マクロファージ、またはPRP6-HO7により処理された分化マクロファージのALCAM、LMNB1およびSLC16A1転写産物の発現。遺伝子発現データはLogFC(FCは倍率変化である。)として表される。特定された遺伝子の相対的な発現データは、トータルRNA抽出およびTaqMan RT-qPCRの個別検証により得られた。LogFC値は、5回の独立した実験に基づく平均+SDとして表される(未処理のM0マクロファージに対してはp<0.05であり、**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、****はp<0.0001である。)。
図17】PRP6-HO7に曝露された分化したヒトM0マクロファージにより、嗅覚受容体が上方調節される。分化の6日目における未処理の未分化マクロファージ(M0)と比較した、PRP-HE8により処理された未分化マクロファージ、PRP-HO7により処理された未分化マクロファージ、またはPRP6-HO7により処理された未分化マクロファージの「find me」または嗅覚受容体CCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2、GPR132、P2RY2およびS1PR1の転写産物の発現。遺伝子発現データはLogFC(FCは倍率変化である。)として表される。特定された遺伝子の相対的な発現データは、トータルRNA抽出およびTaqMan RT-qPCR検証により得られた。LogFC値は、4回の独立した実験に基づく平均+SDとして表される(未処理のM0マクロファージに対してはp<0.05であり;***はp<0.001である。)。
図18】PRP-HO7によって処理されたM1マクロファージおよびPRP6-HO7で処理されたM1マクロファージのサイトカインプロファイルの比較。未処理のM1マクロファージ(M1)、PRP-HO7によって処理されたM1マクロファージ、およびPRP6-HO7によって処理されたM1マクロファージの細胞培養上清を、製造元のガイドラインに従ってR&DSystemsの「Human Cytokine Array Kit」でインキュベートした。各ドットの濃度はQuantity One(登録商標)ソフトウェアで定量化され、関連する各サイトカインおよび治療について正規化された平均ピクセル濃度として表示される。
図19】ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)におけるPRP6-HO7タンパク質の産生と精製。ニッケルアフィニティークロマトグラフィー(Hisタグ)で精製した後の、PRP6-HO7を可視化するクーマシーブルーで染色した12%SDS-PAGE。溶出画分プールは、還元条件下(R)および非還元条件下(NR)で行われた。
図20】E.coliにおけるPRP6-HO7タンパク質の産生と精製。ニッケルアフィニティークロマトグラフィー(Hisタグ)で精製した後の、還元条件下(R)でPRP6-HO7を可視化するクーマシーブルーで染色した12%SDS-PAGEまたはウエスタン分析。ウエスタンブロットは抗HisMoAbでプローブされた。
図21】マウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎モデルの実験計画および治療投与計画。投与経路:ミノサイクリン(参照化合物、標準治療)、強制経口投与;PRP-HO7、PRP6-HO7およびDPBS(対照)、皮下注射。
図22】Δ体重(0日目に対する%体重減少)。DSS誘発大腸炎マウスモデルの体重の変化におけるPRP-HO7、PRP6-HO7およびミノサイクリンの効果。結果は平均±SEMとして表される。2%DSS-対照群に対して**はp<0.01であり、***はp<0.001である(2元配置分散分析)。
図23】DSS誘発大腸炎マウスの大腸炎臨床スコアの進展におけるPRP-HO7、PRP6-HO7およびミノサイクリンの影響。表5で提案された基準に基づく9日間の実験期間にわたるDAI値。結果は平均±SEMとして表される。2%DSS-対照群に対してはp<0.05であり、**はp<0.01であり、****はp<0.0001である(2元配置分散分析)。
【発明の詳細な説明】
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、C4BPのCCP6ドメインが、C4BPα鎖の寛容原性および免疫調節活性を維持するのに十分であり、C4BPα鎖の他のCCPドメインのいずれも必要としないことを見出した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、CCP6のオリゴマー化が免疫調節活性を維持するために不可欠であることを見出した。本発明の実施例1~11に示されるように、CCP6ドメインおよびPRP6-HO7と呼ばれるC4BPのオリゴマー化ドメインを含む7つの組換えポリペプチドによって形成されるホモオリゴマーは、遺伝子発現実験(図13、14、16、17および18)、および調節性マクロファージまたは寛容原性マクロファージへの変換(図15)に示されるように、PRP-HO7と呼ばれるβ鎖を欠くC4BPの生理学的アイソフォームC4BP(β-)よりもさらに寛容原性活性を有する。本発明者らは、真核生物HEK(Expi293)細胞、酵母ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)(実施例12および図19)および細菌細胞(実施例13および図20)においてPRP6-HO7を首尾よく発現させ、精製して、この化合物が成熟刺激の存在下で樹状細胞の成熟を阻害できること、および寛容原性樹状細胞の特徴を示す樹状細胞の生成を促進できることを示すために、in vitroで試験を行った。特に、PRP6-HO7は、ヒトMo-DCの活性化マーカー(実施例2、4、5および6;図4、8、9、10、11および12)、LPSによって成熟したヒトMo-DCによる炎症性サイトカインの放出(実施例2および図6)およびMo-DCの炎症性分子サイン(inflammatory molecular signature)に一致する重要な転写産物の放出(実施例8および図13)を下方調節することができる。さらに、PRP6-HO7はヒトMo-DCの走化性を低下させ(実施例7および図12)、転写レベルで「find me」受容体を上方調節する(実施例8および図14)。
【0022】
一方、本発明者らは、PRP6-HO7がマクロファージの成熟を阻害し、寛容原性細胞の特徴を示すマクロファージの生成を促進できることも示した。特に、PRP6-HO7は、ヒトM1およびM2の活性化マーカーの発現(実施例9および図15)、M1マクロファージによる炎症性サイトカインの放出(実施例11および図18)および単球由来マクロファージの分化の分子サイン(molecular signature)にする分子に一致する重要な転写産物の放出(実施例10および図16)を下方調節することができる。さらに、PRP6-HO7は転写レベルでM0マクロファージの「find me」受容体を上方調節する(実施例10および図17)。
【0023】
本発明者らは、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患、特に潰瘍性大腸炎の治療において、PRP6-HO7が、PRP-HO7と呼ばれるβ鎖を欠くC4BPの生理学的アイソフォームC4BP(β-)よりも効果的であることを示した(実施例14)。
【0024】
本発明のホモオリゴマーは、補体阻害活性を欠く(実施例3および図7);抗体よりもサイズが小さい(100kDa)(図2);体液中の抗体よりも優れた安定性(血漿半減期の延長)を有する;低ナノモル範囲のKdを有する潜在的な表面受容体との高いアビディティ相互作用を有し;C末端のオリゴマー化足場は分子間ジスルフィド結合と静電相互作用の層とによって安定化されるため、高い熱力学的安定性が得られる等の優れた効果を有します。さらに、PRP6-HO7は、その前駆体であるPRP-HO7とは異なり、グリコシル化されていないため、様々な発現系(真核細胞、酵母または細菌細胞)での産生とさらなる精製が可能である。最後に、CCP6ドメインのみを含む単純化された構造のため、PRP6-HO7の投与は、PRP-HO7と比較して感染感受性を増加させない。
【0025】
本発明の組換えポリペプチド
本発明者らは、C4BPのCCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドが、β鎖を欠くC4BPの生理学的アイソフォームC4BP(β-)よりも寛容原性の高いホモオリゴマーを形成できることを示した。
【0026】
したがって、第1の態様において、本発明は、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体、オリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドであって、前記ポリペプチドがC4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインのいずれも含まない組換えポリペプチドに関する。
【0027】
「組換えポリペプチド」または「組換えタンパク質」という表現は、本明細書では互換的に使用され、C4BPのCCP6ドメインと、組換えポリヌクレオチドの発現時に組換えDNA法によって得られるオリゴマー化ドメインとが融合したポリペプチドまたはタンパク質を指す。本明細書で用いられる「組換え」とは、特定の核酸(DNAまたはRNA)またはベクターが、天然のシステムで見られる内因性の核酸と区別され得る構造的コード配列を有する構築物をもたらす、クローニング、制限(restriction)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびライゲーションの工程の様々な組み合わせの産物であることを意味する。ポリペプチドをコードするDNA配列は、cDNA断片または一連の合成オリゴヌクレオチドから組み立てられ、細胞または無細胞転写および翻訳システムに含まれる組換え転写ユニットから発現できる合成核酸を提供することができる。関連する配列を含むゲノムDNAは、組換え遺伝子または転写ユニットの形成にも用いられ得る。したがって、「組換え」核酸という用語は、天然に存在しないものを指し、例えば、ヒトの介入による、他の方法で分離された2つの配列セグメントの人工的な組み合わせによって作製される。この人工的な組み合わせは、化学合成手段によって、または所望の機能の核酸セグメントを一緒に結合して所望の機能の組み合わせを生成するために、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、例えば遺伝子工学技術によってしばしば達成される。本発明の組換えポリペプチドは、C4BPの完全なCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインを欠失させることによって得られる欠失変異体ではない。
【0028】
本明細書で用いられる「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、直鎖を形成するペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基のポリマーを指す。鎖の一方の末端(アミノ末端)の末端アミノ酸は遊離アミノ基を有し、鎖のもう一方の末端(カルボキシ末端)の末端アミノ酸は遊離カルボキシル基を有する。本明細書で用いられる「アミノ末端」(N末端と略される)という用語は、ポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸上の遊離アミノ基、またはペプチド内の他の任意の位置のアミノ酸のペプチド結合に関与する場合のアミノ基を指す。同様に、「カルボキシ末端」という用語は、ポリペプチドのカルボキシ末端上の遊離カルボキシル基、またはペプチド内の他の任意の位置のアミノ酸のカルボキシル基を指す。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、1000個未満のアミノ酸、900個未満のアミノ酸、800個未満のアミノ酸、700個未満のアミノ酸、600個未満のアミノ酸、500個のアミノ酸未満のアミノ酸、475個未満のアミノ酸、450個未満のアミノ酸、425個未満のアミノ酸、400個のアミノ酸未満、375個未満のアミノ酸、350個未満のアミノ酸、325個未満のアミノ酸、300個未満のアミノ酸、275個未満のアミノ酸、250個未満のアミノ酸、225個未満のアミノ酸、200個未満のアミノ酸または175個未満のアミノ酸を有する。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、100~200個のアミノ酸、好ましくは115~175個のアミノ酸、より好ましくは119~173個のアミノ酸、より一層好ましくは119~125個のアミノ酸を有する。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは119個のアミノ酸を有する。
【0029】
本明細書で用いられる「アミノ酸残基」とは、天然に存在する任意のアミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または当技術分野で知られている任意のアミノ酸模倣体(amino acid mimic)を指す。特定の実施形態において、ポリペプチドの残基は連続的であり、非アミノ酸がアミノ酸残基の配列を中断することはない。他の実施形態において、配列は、1つ以上の非アミノ酸部分を含み得る。特定の実施形態において、ポリペプチドの残基の配列は、1つ以上の非アミノ酸部分によって中断され得る(Li et al. 2013. Molecules, 18(8):9797-981を参照のこと)。
【0030】
本明細書で用いられる「C4BP」または「C4b結合タンパク質」という用語は、C3bおよびC4bの第I因子依存性分解の補因子として作用し、古典的経路C3/C5-転換酵素の崩壊を促進する、肝細胞によって主に合成される古典的経路の調節成分を指す。C4BPは3つのアイソフォームとして血漿中を循環し、その割合はC4BPα(70kDa)鎖およびC4BPβ(45kDa)鎖の相対レベルに依存する。C4BPの主要なアイソフォームは、7つの同一のα鎖および1つのβ鎖(αβ)で構成され、C4BP(αβ)またはC4BP(β)と呼ばれる。炎症を起こすと、通常は存在量の少ないアイソフォームが上方調節され、α鎖(αβ)のみで構成され、C4BP(αβ)またはC4BP(β)と呼ばれる。さらに、真核細胞におけるα鎖の組換え発現は、6つのα鎖(αβ)を含むオリゴマーをもたらし得る。
【0031】
本明細書で用いられる「C4BPα鎖」という用語は、PRPまたはプロリンリッチタンパク質としても知られ、NCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)で定義されるヒトポリペプチドの成熟プロセシングされた形態を指し、49~597のアミノ酸を含む。C4BPα鎖という用語は、NCBIデータベースのアクセッション番号P08607(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの成熟型に対応するマウスC4BPα鎖(57~469のアミノ酸)、NCBIデータベースのアクセッション番号Q63514(2019年5月8日リリース)に示されるポリペプチドの成熟型に対応するC4BPα鎖(14~558のアミノ酸)、NCBIデータベースのアクセッション番号Q28065(2019年5月8日リリース)に示されるポリペプチドの成熟型に対応するウシC4BPα鎖(49~610のアミノ酸)等のヒトC4BPα鎖のオーソログを指す場合にも用いられる。
【0032】
C4BPα鎖は、4つのシステイン残基が1~3 2~4の配列でジスルフィド結合し、長さが60アミノ酸残基である8つの補体制御タンパク質ドメイン(CCP)と、ほぼ不変のトリプトファン残基の周りに構築された疎水性コアを含む。したがって、本明細書で用いられる「CCPドメイン」という用語は、C4BPα鎖に見られる補体制御ドメインの1つを指す。
【0033】
本明細書で用いられる「CCP6ドメイン」という表現は、NCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)で提供される配列で定義されるヒトC4BPα鎖に関して363位のアミノ酸と424位のアミノ酸との間に見られる領域(配列番号1)に対応し、これは以下の配列に対応する:
LCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGD(配列番号1)。
【0034】
したがって、好ましい実施形態において、CCP6ドメインは、ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインであり、より好ましくは配列番号1である。一つの実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインは配列番号1を含む。別の実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインは配列番号1からなる。
【0035】
本明細書で用いられる「CCP6ドメイン」という用語はまた、例えば、下記の表1に示すNCBIデータベースのアクセッション番号G1T7A2(2019年10月16日リリース)で提供される配列に関してウサギC4BPα鎖のCCP6ドメイン(410~460位のアミノ酸)(配列番号12)、NCBIデータベースのアクセッション番号Q63514(2019年5月8日リリース)で提供される配列に関してラットC4BPα鎖のCCP6ドメイン(327~388位のアミノ酸)(配列番号13)、またはNCBIデータベースのアクセッション番号Q28065(2019年5月8日リリース)で提供される配列に関してウシC4BPα鎖のCCP6ドメイン(365~427位のアミノ酸)(配列番号14)等の、ヒトC4BP鎖の任意のオーソログのC4BPα鎖のCCP6ドメインを指す。
【0036】
【表1】
【0037】
本明細書において、「CCP6ドメイン」という用語は、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失から生じ、オリゴマー形成時に元のポリペプチドの寛容原性表現型を誘導する能力が実質的に保存されている、上記で定義された天然に存在するCCP6ドメインの機能的に同等の変異体を指すためにも用いられる。
【0038】
好ましい実施形態において、CCP6ドメインの機能的に同等の変異体は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)および/または挿入(例えば、小さな単一のアミノ酸挿入、または2、3、4、5、10、15、20個またはそれ以上の連続したアミノ酸を含む挿入)および/または欠失(例えば、小さな単一のアミノ酸欠失、または2、3、4、5、10、15、20個またはそれ以上の連続したアミノ酸の欠失)による上記配列のいずれかの改変により生じる。したがって、特定の実施形態において、本来の配列の変異体は、(i)1つ以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)の保存的アミノ酸置換、(ii)1つ以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)のアミノ酸欠失、(iii)1つ以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)のアミノ酸挿入、または(iv)それらの組み合わせによって天然に存在する配列とは異なるものである。欠失または挿入されたアミノ酸は、隣接していてもよく隣接していなくてもよい。
【0039】
特定のアミノ酸が同様の疎水性インデックスまたは疎水性スコアを有する他のアミノ酸に置換されることで同様の生物学的活性を有するポリペプチドがもたらされることが知られているので、そのような変更を行う際にはアミノ酸の疎水性インデックスが考慮される。例えば、アミノ酸残基の相対的な疎水性特性は、結果として生じるポリペプチドの二次および三次構造に影響を及ぼし、それによってポリペプチドと酵素、基質、受容体、抗体、抗原等の他の分子との相互作用が規定される。すでに概説したように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等に基づくものである。上述した様々な特性を考慮した置換の例は当業者に公知であり、以下の表2に示される。
【0040】
【表2】
【0041】
一つの実施形態において、機能的に同等の変異体は、CCP6ドメインの配列のN末端、C末端または両端に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の付加を含む。一つの実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の付加を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、CCP6ドメインの配列のN末端、C末端または両端に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、CCP6ドメインの配列中に、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の置換を有する。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の置換を有する。好ましい実施形態において、機能的に同等の変異体は、CCP6ドメインのN末端に1個のアミノ酸の付加、好ましくはメチオニンの付加を有する変異体である。
【0042】
別の実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体は、配列番号1の2位のシステイン、配列番号1の3位のシステイン、配列番号1の4位のプロリン、配列番号1の6位のプロリン、配列番号1の13位のイソロイシン、配列番号1の16位のヒスチジン、配列番号1の25位のシステイン、配列番号1の27位のチロシン、配列番号1の30位のグリシン、配列番号1の31位のアスパラギン酸、配列番号1の37位のシステイン、配列番号1の47位のシステイン、配列番号1の51位のグリシン、配列番号1の52位のスレオニン、配列番号1の53位のトリプトファン、配列番号1の55位のプロリン、配列番号1の57位のスレオニン、配列番号1の58位のプロリン、および配列番号1の60位のシステインと同等の1個以上の残基を含む。好ましくは、これらの残基のすべてを含む。より好ましい実施形態において、変異体では、これらの残基間の相対的な間隔が保持される。
【0043】
C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体には、限定されることなく、天然に存在する多型変異体(すなわち、対立遺伝子変異体)、および組換え操作または改変された変異体が含まれる。本発明における使用に適したCCP6ドメイン変異体には、限定されることなく、上記で定義された天然に存在するCCP6ドメイン、特に天然に存在するヒト起源のCCP6と少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、少なくとも48%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも35%の配列同一性を有する。
【0044】
上記のアミノ酸配列に対するCCP6ドメイン変異体のアミノ酸配列の同一性の割合は、配列比較によって当業者によって容易に決定され得る。本明細書で用いられる場合、2つのアミノ酸配列を最大限に対応するよう整列させた時に該2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が同じである場合、2つのアミノ酸配列は100パーセントのアミノ酸配列同一性を有する。ポリペプチドおよびポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)の配列比較は、当業者に公知のコンピューターアルゴリズムを用いる方法等の任意の方法を用いて行うことができる。そのようなアルゴリズムとしては、AlignまたはBLASTアルゴリズムが挙げられ(例えば、Altschul, J. Mol. Biol. 219:555-565, 1991; Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照のこと)、これらはNCBIのウェブサイトで入手できる([オンライン]インターネットncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLASTを参照のこと)。デフォルトのパラメータを用いることができる。さらに、LASERGENE bioinformatics computing suite(DNASTAR, Inc., Madison, Wis.);CLUSTALW program(Thompson et al., Nucleic Acids Res. 22:4673-80 (1991));および「GeneDoc」(Nicholas et al., EMBNEW News 4:14 (1991))に含まれているもの等の、標準的なソフトウェアプログラムを利用することができる。最適なアラインメントを決定することによって2つのアミノ酸配列を比較する他の方法は、当業者によって実践されている(例えば、Peruski and Peruski, The Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research (ASM Press, Inc. 1997);Wu et al. (eds.), “Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins,” in Methods in Gene Biotechnology, pages 123-151 (CRC Press, Inc. 1997);およびBishop (ed.), Guide to Human Genome Computing, 2nd Ed. (Academic Press, Inc. 1998)を参照のこと)。
【0045】
本明細書で用いられる「オリゴマー形成時に元のポリペプチドの寛容原性表現型を誘導する能力を実質的に保存されている」という表現は、例えば、CCP6変異体がオリゴマー化ドメイン、好ましくは配列番号2のオリゴマー化ドメインに融合される場合の本発明の実施例1~11のいずれかにおいて規定されるように、樹状細胞および/またはマクロファージの成熟を阻害することができるポリペプチドを指す。特に、機能的に同等の変異体は、未成熟樹状細胞への分化段階中の単球細胞に添加される場合、および/または成熟樹状細胞への成熟段階中の未成熟樹状細胞に添加される場合、寛容原性樹状細胞を生成する能力を示す。寛容原性樹状細胞の生成を促進する変異体の能力は、例えば、該変異体の存在下で成熟した樹状細胞においてCD83、CD86および/またはCD80等の成熟マーカーの樹状細胞における発現レベルを測定することによって決定することができる(本発明の実施例4)。したがって、ポリペプチドは、オリゴマー化ドメイン、特に配列番号2のオリゴマー化ドメインと融合した場合にヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインの活性の少なくとも100%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、または少なくとも50%を示す場合に、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体と見なされる。
【0046】
本明細書で用いられる「オリゴマー化ドメイン」という用語は、該ドメインを含むポリペプチドが凝集してオリゴマーを形成する特性を有するポリペプチドドメインを指し、すなわち、モノマー間のオリゴマー化に関与する領域である。オリゴマー化ドメインは、別のモノマーの領域のアミノ酸と相互作用してモノマーのオリゴマー化を可能にすることができるあるモノマーの領域にアミノ酸を含む。適切なオリゴマー化ドメインは当技術分野において公知である。好ましい実施形態において、オリゴマー化ドメインは、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインである。別の実施形態において、オリゴマー化ドメインは、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体である。本明細書で用いられる「C4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン」という表現は、NCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)で提供される配列で定義されるヒトC4BPα鎖に関して541位のアミノ酸と597位のアミノ酸との間に見出される領域(配列番号2)に対応し、これは以下の配列に対応する:
ETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号2)。
【0047】
したがって、好ましい実施形態において、オリゴマー化ドメインは、ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインまたはその機能的に同等の変異体であり;より好ましくは配列番号2またはその機能的に同等の変異体であり;より一層好ましくは配列番号2である。一つの実施形態において、オリゴマー化ドメインは配列番号2またはその機能的に同等の変異体、好ましくは配列番号2を含む。別の実施形態において、オリゴマー化ドメインは配列番号2またはその機能的に同等の変異体、好ましくは配列番号2からなる。
【0048】
本明細書で用いられる「C4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン」という用語はまた、例えば、下記の表3に示すNCBIデータベースのアクセッション番号P08607(2019年7月31日リリース)で提供される配列に関するマウスC4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン(416~469位のアミノ酸)(配列番号15)、NCBIデータベースのアクセッション番号Q63514(2019年5月8日リリース)で提供される配列に関するラットC4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン(504~558位のアミノ酸)(配列番号16)、NCBIデータベースのアクセッション番号Q28065(2019年5月8日リリース)で提供される配列に関するウシC4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン(544~610位のアミノ酸)(配列番号17)等の、ヒトC4BPα鎖の任意のオーソログのオリゴマー化ドメインを指す。本発明において有用な他の哺乳動物オーソログのC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインは、表3に示す配列番号18~33である。本発明において有用なヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体は配列番号34~41である。PCT特許出願WO2007/062819に記載される鳥類オーソログのオリゴマー化ドメインはニワトリC4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン(配列番号42)またはキンカチョウの鳥類相同体(配列番号43)等も含まれる。WO2007/062819の表1に開示されるC4BPのオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体も含まれる(配列番号44~55)。
【0049】
【表3】
【0050】
好ましい実施形態において、オリゴマー化ドメインは、哺乳動物のC4BPα鎖、より好ましくはヒト、マウスまたはラットのC4BPα鎖、最も好ましくはヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインである。
【0051】
好ましい実施形態において、オリゴマー化ドメインは、配列番号2および配列番号15~55のいずれか1つからなる群から選択されるオリゴマー化ドメインであり;好ましくは配列番号2および配列番号15~41のいずれか1つからなる群から選択されるオリゴマー化ドメインであり;より好ましくは配列番号2および配列番号15~33のいずれか1つからなる群から選択されるオリゴマー化ドメインであり;より一層好ましくは配列番号2および配列番号15~32のいずれか1つからなる群から選択されるオリゴマー化ドメインであり;さらにより一層好ましくは配列番号2および配列番号15~17のいずれか1つからなる群から選択されるオリゴマー化ドメインであり;さらにより一層好ましくは配列番号2のオリゴマー化ドメインである。
【0052】
C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインには、これらの配列の他の哺乳類および非哺乳類の相同体も含まれる。そのような相同体を得るための手段は、当業者が利用できる日常的な技術である。本質的に、そのような技術は、他の種のC4BP相同体の配列を回収および決定するためのプローブとして、本発明のオリゴマー化ドメインの配列のいずれかまたはその断片をコードする核酸を用いることを含む。これには、多種多様な技術が利用可能であり、例えば、適切なmRNA源(例えば、胚または活発に分裂している分化細胞または腫瘍細胞からのもの)を用いた相同体のPCR増幅およびクローニング、または動物からのcDNAライブラリー、例えば、上記の供給源の1つからのcDNAライブラリーを得ること、ストリンジェントな条件下で本発明のオリゴマー化ドメインのいずれかをコードする核酸で前記ライブラリーをプローブすること、およびその動物の相同体を全てまたは部分的にコードするcDNAを回収することを含む方法である。ここで、部分的なcDNAが得られ、完全長のコード配列はプライマー伸長技術によって決定され得る。あるいは、動物のゲノム配列の全部または一部が利用可能である場合、本発明の配列を用いた相同性検索を用いて適切な相同体を決定することができる。
【0053】
本明細書で用いられる「C4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン」という用語はまた、1個以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失による、上記で定義されたC4BPα鎖の天然に存在するオリゴマー化ドメインの任意の機能的に同等の変異体であって、本発明の組換えポリペプチドの一部を形成する時に、元のポリペプチドのオリゴマーを形成する能力を実質的に保持するものを指す。
【0054】
したがって、機能的に同等の変異体は、オリゴマー化能力に関与しないアミノ酸が欠失されているが、オリゴマー化に関与するアミノ酸が保存されているオリゴマー化ドメインの断片、またはオリゴマー化に関与しないアミノ酸が変異している変異体であり得る。
【0055】
好ましい実施形態において、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体は、上述した配列のいずれかを置換(例えば、保存的アミノ酸置換)および/または挿入(例えば、小さな単一のアミノ酸挿入、または2、3、4、5、10、15、20個またはそれ以上の連続したアミノ酸を含む挿入)および/または欠失(例えば、小さな単一のアミノ酸の欠失、または2、3、4、5、10、15、20個またはそれ以上の連続したアミノ酸を含む欠失)により改変することによりもたらされる。したがって、特定の実施形態において、天然配列の変異体は、(i)1個以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)の保存的アミノ酸置換、(ii)1個以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)のアミノ酸の欠失、(iii)1個以上(例えば、2、3、4、5、6個またはそれ以上)のアミノ酸の挿入、または(iv)それらの組み合わせによって天然に存在する配列とは異なるものである。欠失または挿入されたアミノ酸は、隣接していてもよく隣接していなくてもよい。
【0056】
CCP6ドメインの機能的に同等の変異体について説明したように、そのような変更を行う際にはアミノ酸の疎水性インデックスが考慮される。置換の例を示す表2は、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体にも適用可能である。
【0057】
一つの実施形態において、機能的に同等の変異体は、オリゴマー化ドメインの配列のN末端、C末端または両端において、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の付加を含む。一つの実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の付加を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、オリゴマー化ドメインの配列のN末端、C末端または両端において、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、オリゴマー化ドメインの配列において、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個のアミノ酸の置換を有する。別の実施形態において、機能的に同等の変異体は、20個未満、15個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満または1個のアミノ酸の置換を有する。好ましい実施形態において、機能的に同等の変異体は、オリゴマー化ドメインのN末端に1個のアミノ酸が付加を有し、好ましくはメチオニンが付加を有する変異体である。
【0058】
一つの実施形態において、オリゴマーを形成することができるC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの断片は、少なくとも47個のアミノ酸、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸を含み得る。
【0059】
別の実施形態において、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの変異体は、配列番号2の1位のグルタミン酸、配列番号2の12位のグリシン、配列番号2の17位のグルタミン、配列番号2の25位のバリン、配列番号2の26位のリジン、配列番号2の28位のアラニン、配列番号2の29位のロイシン、配列番号2の30位のグルタミン酸、配列番号2の32位のチロシン、配列番号2の33位のリジン、配列番号2の34位のロイシン、配列番号2の36位のロイシン、配列番号2の37位のグルタミン酸、および配列番号2の41位のロイシンと同等の1個以上の残基を含む。好ましくは、変異体はこれらの残基のすべてを含む。より好ましくは、変異体では、これらの残基間の相対的な間隔が保持される。
【0060】
好ましい実施形態において、変異体は、配列番号2の12位のグリシンと同等の残基、配列番号2の28位のアラニン、配列番号2の29位、34位、36位および41位のロイシン、配列番号2の32位のチロシン、および配列番号2の33位のリジンを含む。好ましくは、変異体では、これらの残基間の相対的な間隔が保持される。
【0061】
別の好ましい実施形態において、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの変異体は、配列番号2の12位のグリシン、配列番号2の28位のアラニン、配列番号2の29位、34位、36位および41位のロイシン、配列番号2の32位のチロシン、配列番号2の33位のリジン、および配列番号2の6位および18位の2つのシステイン残基と同等の残基を含む。好ましくは、変異体では、これらの残基間の相対的な間隔が保持される。
【0062】
本発明において用いられるC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体には、限定されることなく、天然に存在する多型変異体(すなわち、対立遺伝子変異体)および組換え操作または改変された変異体が含まれる。本発明における使用に適したオリゴマー化ドメインの変異体としては、限定されることなく、上記で定義された天然に存在するオリゴマー化ドメイン、特に天然に存在するヒト起源のC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインと少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも35%の配列同一性を有する、
【0063】
オリゴマー化ドメインの変異体のアミノ酸配列の同一性の割合を決定するための方法は、CCP6ドメインについて上記で説明されたものである。
【0064】
本明細書で用いられる「本発明の組換えポリペプチドの一部を形成する時に、元のポリペプチドのオリゴマーを形成する能力を実質的に保存する」という表現は、例えば、オリゴマー化ドメイン変異体がCCP6ドメイン、好ましくは配列番号1のCCP6ドメインに融合される場合の本発明の実施例1および図3に示されるように、オリゴマーを形成することができるポリペプチドを指す。オリゴマーを形成することができるポリペプチドであるかどうかを決定するための方法は当業者に利用可能であり、例えば、Blom et al.(J.Biol.Chem. 2001, 276: 27136-27144)によって記載された、真核細胞(例えば、293細胞)における変異型α鎖の組換え発現によって得られる精製C4BPの天然条件(native condition)下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析、およびそれに続くCCP6領域に特異的な抗体を用いたアフィニティー精製に基づく方法が挙げられる。あるいは、オリゴマー化ドメインの変異体がオリゴマーを形成する能力は、本発明において原核生物または真核生物の宿主細胞で変異体を発現させ、還元条件下および非還元条件下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動およびクーマシーブルー染色(すなわち、還元剤β-メルカプトエタノールの存在下および非存在下でのSDS-PAGEゲル上での変異体の挙動の比較)によって回収された変異体を分析することによって、または実施例1または図3で説明されるように、還元条件下または非還元条件下で抗タグ抗体または抗C4BPα鎖でプローブするウエスタンブロットを行うことによって試験することができる。あるいは、オリゴマー化ドメインの変異体がオリゴマーを形成する能力は、本発明において原核生物宿主細胞で変異体を発現させ、ヒトC4BPα鎖の完全な57アミノ酸のオリゴマー化ドメインのオリゴマー化をもたらす条件下で変異体を回収し、変異体がオリゴマーを形成するかどうかを例えばゲル濾過によって決定することによって試験することができる。
【0065】
したがって、ポリペプチドは、CCP6ドメイン、特に配列番号1のCCP6ドメインと融合した場合にヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインのオリゴマーを形成する能力の少なくとも100%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、または少なくとも50%を示す場合に、C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体と見なされる。
【0066】
ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体は、好ましくは:(a)NCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)で定義される未成熟型の546位のアミノ酸に対応する、成熟型のヒトC4BPα鎖(すなわち、シグナルペプチドを欠くヒトC4BPα鎖の形態)の498位のシステイン残基と同等のシステイン残基;(b)NCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)で定義される未成熟型の558位のアミノ酸に対応する、成熟型のヒトC4BPα鎖の510位のシステイン残基と同等のシステイン残基;および/または(c)C末端の両親媒性のα-ヘリックス領域、より好ましくはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003で定義される未成熟形の585~597位のアミノ酸に対応する、成熟型のヒトC4BPα鎖537~549位の残基と同等の最後の13残基が維持される。分子の細胞内オリゴマー化のために、機能的に同等の変異体は好ましくは(c)を維持する必要があり;機能的に同等の変異体はより好ましくは(a)、(b)および(c)を維持する必要がある。
【0067】
C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む本発明の組換えポリペプチドは、C4BPα鎖に見られる他のCCPドメインのいずれも含まない。したがって、本発明のポリペプチドは、C4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインを含まない。ヒトC4BPα鎖に言及する場合、CCP1ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの49~110位のアミノ酸に対応し、CCP2ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの111~172位のアミノ酸に対応し、CCP3ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの173~236位のアミノ酸に対応し、CCP4ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの237~296位のアミノ酸に対応し、CCP5ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの297~362位のアミノ酸に対応し、CCP7ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの425~482位のアミノ酸に対応し、CCP8ドメインはNCBIデータベースのアクセッション番号P04003(2019年7月31日リリース)に示されるポリペプチドの483~540位のアミノ酸に対応する。当業者であれば、他のC4BPα鎖におけるヒトC4BPα鎖と同等のCCPを決定する方法を知っている。
【0068】
一つの実施形態において、組換えポリペプチドは、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体およびオリゴマー化ドメインからなり;好ましくは、C4BPα鎖のCCP6ドメインおよびC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなり;より好ましくは、ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインおよびヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなる。両方のドメインは任意の順序にすることができる。
【0069】
本発明のポリペプチドの好ましい実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメイン、好ましくはC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインは、同じ種に関係するものである。
【0070】
別の実施形態において、組換えポリペプチドは、(a)メチオニン、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体、および(c)オリゴマー化ドメインからなり;好ましくは、(a)メチオニン、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(c)C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなり;より好ましくは、(a)メチオニン、(b)ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(c)ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなる。メチオニンは組換えポリペプチドのN末端にあり、ドメインは任意の順序にすることができる。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号3またはその機能的に同等の変異体を含み、好ましくは配列番号3を含む。より好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号3またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号3からなる。
LCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号3)
【0072】
別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号3の配列およびポリペプチドのN末端にある追加のメチオニンからなる。
【0073】
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、C4BPとは異なるタンパク質の領域を含まない。例えば、本発明のポリペプチドは、C4BPとは異なるタンパク質の一部を形成する領域を含む融合タンパク質であってはならない。
【0074】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、C4BPの一部を形成しないポリペプチドを含む。C4BPの一部を形成しないポリペプチドは、異種ポリペプチド、すなわち、C4BPをコードするものとは異なる遺伝子に由来するポリペプチドと見なされる。
【0075】
本発明の組換えポリペプチドは、CCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインを任意の順序で含み得る。本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(b)オリゴマー化ドメインを含む領域を含み得る。あるいは、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含み得る。当業者であれば、本発明の組換えポリペプチドが、CCP6ドメインとオリゴマー化ドメインとの間に追加のアミノ酸を含み得ることを理解するであろう。好ましい実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインのC末端は、オリゴマー化ドメインのN末端に直接融合されており、すなわち、両方のドメイン間に追加のアミノ酸またはリンカーは存在しない。別の実施形態において、オリゴマー化ドメインのC末端は、C4BPα鎖のCCP6ドメインのN末端に直接融合されている。別の実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインのC末端は、追加のアミノ酸、すなわち、由来となる天然に存在するドメインに存在しないアミノ酸によって、オリゴマー化ドメインのN末端から分離されている。別の実施形態において、オリゴマー化ドメインのC末端は、追加のアミノ酸によって、C4BPα鎖のCCP6ドメインのN末端から分離されている。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)メチオニン、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(c)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)メチオニン、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む。別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に向けて、(a)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(b)C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなる。別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端への方向に向けて、(a)C4BPα鎖のオリゴマー化ドメイン、および(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインからなる。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドが、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体および/またはオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体によって形成される場合に等しく適用される。
【0076】
本発明の組換えポリペプチドは前駆体の形態であり得る。「前駆体」という用語は、一旦処理されると、ポリペプチドの成熟形態を生じさせることができるポリペプチドを指す。前駆体は、宿主細胞が真核細胞である場合にポリペプチドを細胞外培地に輸送するためのシグナルペプチドを含むポリペプチドである。
【0077】
別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、シグナルペプチドをさらに含む。本明細書で用いられる「シグナルペプチド」という表現は、ポリペプチドのN末端に位置するシグナル配列を指す。本明細書で用いられる場合、「シグナルペプチド」または「シグナル配列」または「分泌シグナルペプチド」または「分泌シグナル配列」という用語は、細胞内で合成されるタンパク質を分泌経路に向かって誘導する、比較的短い、一般に5~30個のアミノ酸残基のペプチドを指す。シグナルペプチドは通常、二次αヘリックス構造を有する一連の疎水性アミノ酸を含む。さらに、多くのペプチドには、タンパク質がその転座に適したトポロジーを採るのに寄与することができる正に帯電した一連のアミノ酸を含む。シグナルペプチドは、そのカルボキシル末端にペプチダーゼによる認識のためのモチーフを有する傾向があり、これは、シグナルペプチドを加水分解して、遊離のシグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生じさせることができる。目的のタンパク質が適切な位置に到達すると、シグナルペプチドは切断され得る。本発明では、任意のシグナルペプチドを用いることができる。シグナル配列は、形質転換された同じ種の生物に由来する場合もあれば、異なる種に由来する場合もある。例示的な非限定的な例として、クラミドモナス・ラインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)の炭酸脱水酵素(CAH1)からのシグナルペプチド、クラミドモナス・ラインハルディのペリプラズムアリールスルファターゼ(ARS1)からのシグナルペプチド、またはクラミドモナス・ラインハルディのガメトリシンM11からのシグナルペプチドを用いることができる。細菌における発現に有用なシグナルペプチドは、SecシグナルペプチドまたはTatシグナルペプチドであり得る。特に酵母における発現のためのシグナルペプチドは、S.cerevisiaeのα-接合因子)(α-mating factor)プレプロペプチド(prepro peptide)からのシグナルペプチド、P.pastorisの酸ホスファターゼ遺伝子(PHO1)からのシグナルペプチド、および細胞外タンパク質X(EPX1)であり得る。好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、α因子接合ペプチド(α-factor mating peptide)からの
シグナルペプチド、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からのα因子接合ペプチドである。哺乳動物真核細胞における発現に有用なシグナルペプチドは、限定されることなく、ヒトOSM、VSV-G、マウスIgκ、ヒトIgG2 H、BM40、セクレコン、ヒトIgKVIII、CD33、tPA、ヒトキモトリプシノーゲン、ヒトトリプシノーゲン-2、ヒトIL-2、gaussia luc、アルブミン(HSA)、インフルエンザ血球凝集素、ヒトインスリンまたはカイコフィブロインLCからのシグナルペプチドである。
【0078】
好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、ヒトシグナルペプチドである。好ましい実施形態において、シグナルペプチドは、C4BPα鎖、好ましくはヒトC4BPα鎖のシグナルペプチドであり、より好ましくは配列番号4またはその機能的に同等の変異体であり;より好ましくは配列番号4である。
MHPPKTPSGALHRKRKMAAWPFSRLWKVSDPILFQMTLIAALLPAVLG(配列番号4)
【0079】
したがって、一つの実施形態において、シグナルペプチドは配列番号4を含む。別の実施形態において、シグナルペプチドは配列番号4からなる。
【0080】
シグナルペプチドとポリペプチドとを融合させることにより、融合タンパク質が培地に分泌され、これは、細胞外培地からの容易かつ効率的な精製を可能にするため、好ましい戦略である。
【0081】
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(c)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。あるいは、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドがシグナルペプチド、C4BPα鎖のCCP6ドメインからなる領域、およびオリゴマー化ドメインからなる領域からなる場合に等しく適用され得る。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドが、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体および/またはオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体によって形成される場合に等しく適用される。
【0082】
一つの実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号5またはその機能的に同等の変異体を含み、好ましくは配列番号5を含む。別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号5または機能的にその同等の変異体からなり、好ましくは配列番号5からなる。
MHPPKTPSGALHRKRKMAAWPFSRLWKVSDPILFQMTLIAALLPAVLGLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号5)
【0083】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドはシグナルペプチドを含まない。
【0084】
別の実施形態において、組換えポリペプチドはC4BPα鎖の一部ではないペプチドをさらに含む。
【0085】
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、オリゴマー化ドメインを含む領域、およびC4BPの一部を形成しない配列を含む1つ以上の領域を含む融合タンパク質である。これらの領域はいずれも相互に任意の順序にすることができる。
【0086】
C4BPα鎖の一部ではないペプチドを含む組換えポリペプチドの例は、例えば、薬物動態学的特性を改善する融合タンパク質であり得る。
【0087】
本発明の組換えポリペプチドは、受容体に対する親和性を調節し、循環半減期を調節し、治療半減期を調節し、ポリペプチドの安定性を調節し、プロテアーゼによる切断を調節し、用量を調節し、放出または生物学的利用能を調節し、精製を容易にし、または特定の投与経路を改善または変更するために改変され得る。同様に、ポリペプチドは、プロテアーゼ切断配列、反応性基、またはポリペプチドの検出、精製または他の特性を改善する他の分子を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、プロテアーゼによって切断されるMBP配列またはAFV、slyD、tsf、SUMO、BlaまたはGST配列を含む。
【0088】
好ましい実施形態において、C4BPα鎖の一部ではないペプチドは、タグペプチドである。
【0089】
本明細書で用いられる「タグペプチド」という表現は、組換えポリペプチドの検出、単離および/または精製に適したペプチドを指す。タグの非限定的な例としては、ポリヒスチジン[poly(His)]配列等のアフィニティー精製タグ;得られる融合タンパク質を免疫親和性クロマトグラフィーによって精製するために用いることができる抗体によって認識され得るペプチド配列、例えば、熱ウイルスの血球凝集素に由来するエピトープ、c-myc-tag(抗c-myc抗体によって認識される);ストレプトアビジン結合ペプチドタグまたはSBPタグ;S-タグ;カルモジュリン結合ペプチド(CBP);セルロース結合ドメイン;キチン結合ドメイン(CBD);グルタチオンS-トランスフェラーゼ-タグ;マルトース結合タンパク質(MBP);3×HAタグまたは血球凝集素タグ;NusA;TrxA;DsbA;Avi-タグ;Strep-tag;アルギニンタグ(Arg-tag);FLAG-タグ等(Zhao et al. 2013. J. Anal. Methods Chemistry, 2013:581093; Terpe K. 2003. Appl. Microbiol. Biotechnol. 60(5):523-533)が挙げられる。前記アフィニティー精製タグは、直列的に直接モノマーポリペプチドと融合するか、あるいは、切断可能なリンカー、すなわち、酵素的または化学的手段によって特異的に切断されるアミノ酸配列を含むペプチドセグメント(すなわち、認識/切断部位)を介してモノマーポリペプチドと融合し得る。特定の実施形態において、前記切断可能なリンカーは、タンパク質が翻訳されると、プロテアーゼ(またはプロテアーゼ認識部位)によって切断可能なアミノ酸配列を含む。例えば、切断可能なリンカーは、エンテロキナーゼ、Arg Cエンドプロテアーゼ、Glu Cエンドプロテアーゼ、Lys Cエンドプロテアーゼ、第Xa因子、トロンビン、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ、ヒトライノウイルス3Cプロテアーゼ、ソルターゼA、PreScissionプロテアーゼ(Zhao et al. 2013. J. Anal. Methods Chem. 2013:581093)、SUMOプロテアーゼ(Butt TR. et al. 2005. Protein Expr. Purif. 43(1):1-9)等のプロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列であり得;あるいは、別の特定の実施形態において、前記切断可能なリンカーは、例えば、メチオニン残基を切断する臭化シアン等の化学試薬、または任意の他の適切な化学試薬によって切断可能なアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、切断可能なリンカーはインテインである。好ましい実施形態において、切断可能なリンカーは、エンテロキナーゼによって切断可能なアミノ酸配列であり、好ましくは配列DDDDK(配列番号59)である。切断可能なリンカーは、アフィニティー精製タグのその後の除去が望ましい場合に有用である。タグは、モノマーの任意の位置、特にC4BPα鎖のCCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインのC末端またはN末端に配置され得る。より好ましい実施形態において、タグペプチドは、C4BPα鎖のCCP6ドメインのN末端に連結されている。好ましい実施形態において、タグは、TEVプロテアーゼによって切断可能なリンカーを介してポリペプチドに連結される。別の実施形態において、タグは、エンテロキナーゼによって切断可能なリンカーを介してポリペプチドに連結される。別の実施形態において、タグは、ポリペプチドと直列的に直接融合される。より好ましい実施形態において、タグはポリ(His)タグであり、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個または20個を超えるヒスチジンを有するポリ(His)タグである。好ましい実施形態において、タグはヘキサヒスチジンタグまたはHis6-タグである。別の実施形態において、ポリ(His)タグは、少なくとも2個のヒスチジン、好ましくは少なくとも5個のヒスチジン、より好ましくは少なくとも6個のヒスチジンを有する。
【0090】
好ましくは、タグはポリ(His)タグ、より好ましくはHis6-タグであり、タグは、TEVプロテアーゼによって切断可能なリンカーを介してポリペプチドに連結される。
【0091】
別の実施形態において、タグは、配列番号60のStrep-tag IIペプチドである。
WSHPQFEK(配列番号60)
【0092】
当業者であれば、本発明のポリペプチドが2個以上のタグを含み得ることを理解するであろう。したがって、本発明の組換えポリペプチドは、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のタグを有し得、好ましくは2個のタグを有し、より好ましくは1つのタグを有する。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、ポリ(His)タグおよびStrepタグIIを有する。
【0093】
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、オリゴマー化ドメインを含む領域、および1個以上のタグペプチドを含む融合タンパク質である。これらの領域はいずれも、相互に任意の順序にすることができる。したがって、一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)少なくとも1個のタグペプチド、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(c)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(c)少なくとも1個のタグペプチドを含む融合タンパク質である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、(b)少なくとも1個のタグペプチド、および(c)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に(a)少なくとも1個のタグペプチド、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(c)少なくとも1個のタグペプチドを含む融合タンパク質である。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)オリゴマー化ドメインを含む領域、(b)少なくとも1個のタグペプチド、および(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。当業者であれば、本明細書で用いられる「タグペプチド」への言及は、切断可能なリンカーを含むタグ、または組換えポリペプチドに直接融合されたタグの両方を指すことを理解するであろう。当業者であれば、「少なくとも1個のタグペプチド」という表現は、組換えポリペプチドのタグペプチドが1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のタグペプチド、好ましくは2個のタグペプチド、より好ましくは1個のタグペプチドであり得ることを意味することを理解するであろう。当業者であれば、これらの実施形態はすべて、ポリペプチドのN末端に追加のメチオニンを含み得ることを理解するであろう。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドが、少なくとも1個のタグペプチド、C4BPα鎖のCCP6ドメインからなる領域、およびオリゴマー化ドメインからなる領域からなる場合に等しく適用され得る。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドが、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体および/またはオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体によって形成される場合に等しく適用される。
【0094】
一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、オリゴマー化ドメインを含む領域、少なくとも1個のタグペプチドおよびシグナルペプチドを含む融合タンパク質である。これらの領域はいずれも、相互に任意の順序にすることができる。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)少なくとも1個のタグペプチド、(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(d)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)少なくとも1個のタグペプチド、(c)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(d)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、(c)少なくとも1個のタグペプチド、および(d)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、(c)少なくとも1個のタグペプチド、および(d)オリゴマー化ドメインを含む領域を含む融合タンパク質である。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、(c)オリゴマー化ドメインを含む領域、および(d)少なくとも1個のタグペプチドを含む融合タンパク質である。一つの実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)オリゴマー化ドメインを含む領域、(c)C4BPα鎖のCCP6ドメインを含む領域、および(d)少なくとも1個のタグペプチドを含む融合タンパク質である。当業者であれば、本明細書で用いられる「タグペプチド」への言及は、切断可能なリンカーを含むか、または組換えポリペプチドに直接融合されたタグペプチドの両方を指すことを理解するであろう。当業者であれば、「少なくとも1個のタグペプチド」という表現は、組換えポリペプチドのタグペプチドが1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のタグペプチド、好ましくは2個のタグペプチド、より好ましくは1個のタグペプチドであり得ることを意味することを理解するであろう。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドがシグナルペプチド、少なくとも1個のタグペプチド、C4BPα鎖のCCP6ドメインからなる領域、およびオリゴマー化ドメインからなる領域からなる場合に等しく適用され得る。これらの実施形態はすべて、本発明のポリペプチドが、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体および/またはオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体によって形成される場合に等しく適用される。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号6またはその機能的に同等の変異体を含み、好ましくは配列番号6を含む。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号6またはその機能的に同等の変異体からなり;より好ましくは配列番号6からなる。
HHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号6)
【0096】
別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号6の配列およびポリペプチドのN末端にある追加のメチオニンからなる。
【0097】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号7またはその機能的に同等の変異体を含み、好ましくは配列番号7を含む。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号7または機能的にその同等の変異体からなり;より好ましくは配列番号7からなる。
MHPPKTPSGALHRKRKMAAWPFSRLWKVSDPILFQMTLIAALLPAVLGHHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号7)
【0098】
別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、タグペプチドを含まず;好ましくはタグペプチドおよびシグナルペプチドを含まない。
【0099】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)少なくとも1個のタグペプチド、(c)切断可能なリンカー、(d)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(e)オリゴマー化ドメインを含むかまたはそれらからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)1個のタグペプチド、(c)切断可能なリンカー、(d)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(e)オリゴマー化ドメインを含むかまたはそれらからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)CB4Pα鎖のシグナルペプチド、(b)ポリ(His)タグ、(c)TEVによって切断可能なリンカー、(d)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(e)C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号56を含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。
MHPPKTPSGALHRKRKMAAWPFSRLWKVSDPILFQMTLIAALLPAVLGHHHHHHENLYFQGLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号56)
【0100】
別の好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)少なくとも1個のタグペプチド、(b)切断可能なリンカー、(c)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(d)オリゴマー化ドメインを含むかまたはそれらからなり、好ましくはそれからなる。別の好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)1個のタグペプチド、(b)切断可能なリンカー、(c)C4BPα鎖のドメインのCCP6ドメイン、および(d)オリゴマー化ドメインを含むかまたはそれらからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端方向に、(a)ポリ(His)タグ、(b)TEVによって切断可能なリンカー、(c)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(d)C4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれらからなり、好ましくはそれからなる。当業者であれば、これらの実施形態はすべて、N末端にメチオニンを有する組換えポリペプチドに適用され得ることを理解するであろう。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号57を含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。
HHHHHHENLYFQGLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号57)
【0101】
別の実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、配列番号57の配列およびポリペプチドのN末端にある追加のメチオニンからなる。
【0102】
別の好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)グリシン残基、(b)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、(c)オリゴマー化ドメイン、好ましくはC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号58を含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。
GLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号58)
【0103】
好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)メチオニンまたはシグナルペプチド、(b)2個のタグペプチド、(c)切断可能なリンカー、(d)C4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(e)オリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。より好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)メチオニンまたはシグナルペプチド、(b)His6-タグ、(c)Strep-tag II、(d)エンテロキナーゼによって切断可能なリンカー、(e)ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(f)ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)メチオニン、(b)His6-タグ、(c)配列番号60のStrep-tag II、(d)エンテロキナーゼによって切断可能な配列番号59のリンカー、(e)ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(f)ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。別の好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)シグナルペプチド、(b)His6-タグ、(c)配列番号60のStrep-tag II、(d)エンテロキナーゼによって切断可能な配列番号59のリンカー、(e)ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメイン、および(f)ヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインを含むかまたはそれからなり、好ましくはそれからなる。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは配列番号61を含む。より好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは配列番号61からなる。
MHHHHHHWSHPQFEKDDDDKLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号61)
【0104】
好ましくは、本発明の組換えポリペプチドは、75~1000個のアミノ酸、より好ましくは100~800個のアミノ酸、より好ましくは100~600個のアミノ酸、より好ましくは110~550個のアミノ酸、より一層好ましくは115~550個のアミノ酸、より一層好ましくは119~550個のアミノ酸のサイズを有する。一つの実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、好ましくは、少なくとも90個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも110個のアミノ酸、少なくとも115個のアミノ酸、少なくとも119個のアミノ酸、少なくとも120個のアミノ酸、少なくとも130個のアミノ酸、少なくとも150個のアミノ酸を有する。好ましい実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、115~650個のアミノ酸、好ましくは119~550個のアミノ酸のサイズを有する。
【0105】
好ましい実施形態において、挿入が行われる場合、ポリペプチドのサイズは、好ましくは、C4BPα鎖の野生型配列の長さに対して20個のアミノ酸を超えず、好ましくは15個のアミノ酸を超えず、より好ましくは10個のアミノ酸を超えない。したがって、例えば、挿入によって改変される場合、ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインを含むタンパク質は、望ましくは617個以下のアミノ酸である。
【0106】
当業者であれば、本発明の組換えポリペプチドの異なるドメインがスペーサーによって連結され得ることを理解するであろう。本明細書に開示されるように、スペーサーは、適切な長さおよび特性のペプチドを接続または連結する挿入物(insert)である。一般に、上記スペーサーは上記ドメイン間のヒンジ領域として機能し、個々のドメインの三次元形態を維持しながら、それらが互いに独立して移動することを可能にする。この意味で、好ましいスペーサーは、この動きを可能にする構造的延性または可撓性によって特徴付けられるヒンジ領域であり得る。スペーサーの長さは様々である。典型的には、スペーサー中のアミノ酸の数は、100個以下のアミノ酸、好ましくは50個以下のアミノ酸、より好ましくは40個以下のアミノ酸、より一層好ましくは30個以下のアミノ酸、さらにより一層好ましくは20個以下のアミノ酸である。
【0107】
あるいは、適切なスペーサーは、コイルドコイルによる二量体化抗体の産生に用いられ、本発明におけるスペーサーペプチドとして有用であり得るマウスIgG3の上部ヒンジ領域の10個のアミノ酸残基の配列をベースとし得る(Pack P. and Pluckthum, A., 1992, Biochemistry 31:1579-1584)。それはまた、ヒトIgG3または他のヒトIgサブクラス(IgG1、IgG2、IgG4、IgMおよびIgA)の上部ヒンジ領域の対応する配列であり得る。ヒトIgの配列は、ヒトにおいて免疫原性であるとは予測されていない。本発明で用いられ得る追加のスペーサーとしては、アミノ酸配列GAP、AAAのペプチドが挙げられる。
【0108】
特定の実施形態において、上記スペーサーは、構造的可撓性を有するペプチド(すなわち、可撓性連結ペプチドまたは「可撓性リンカー」)である。一般に、そのようなリンカーは、長さが1~20個のアミノ酸、例えば、長さが2~10個のアミノ酸のような数アミノ酸の長さである。これらのアミノ酸は、グリシン、セリン、アラニン、スレオニンからなる群から選択される。別の特定の実施形態において、可撓性リンカーは、アミノ酸残基、特にGlyおよびSerの繰り返し、またはアミノ酸残基の他の任意の適切な繰り返しを含むペプチドである。本発明によれば、実質的に任意の可撓性リンカーをスペーサーとして用いることができる。そのようなリンカーの1つは(Gly-Ser)リンカーであり、mおよびnは、それぞれ独立して1~4である。これらは、タンパク質ドメインを互いに付着させるために当技術分野で用要られている。したがって、第1の構成要素は、そのようなリンカーによって第2の構成要素と連結され得る。
【0109】
好ましい実施形態において、C4BPα鎖のCCP6ドメインとオリゴマー化ドメインとは直接連結されている。別の実施形態において、それらは可撓性リンカーを介して連結されている。より好ましい実施形態において、可撓性リンカーは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個の残基である。
【0110】
タンパク質の発現に適したアミノ酸の配列を組み込む必要がある場合があることが理解されよう。これには、少なくともN末端メチオニンが含まれる。N末端配列は、配列の全部または一部を化学的または酵素的に除去するための切断部位を含み得る。
【0111】
本発明の組換えポリペプチドは、公知の様々な化学基または分子のいずれかを含むように改変することができる。そのような改変としては、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、ポリエチレングリコールへの共有結合(例えば、PEG化)、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、エステル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、ユビキチン化、脂肪酸による修飾、アルギニル化等のタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加等が挙げられる。アミノ酸の類似体(非天然アミノ酸を含む)および置換された結合を有するペプチドも含まれる。
【0112】
本発明の組換えポリペプチドは、当業者に公知の組換えDNA技術によって得ることができる。簡単に説明すると、C4BPα鎖のCCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインをコードする組換え核酸が真核細胞または原核細胞で発現され、生成物が回収される。
【0113】
ポリペプチドの発現は、シグナル配列の切断および/またはタグペプチドの切断等の翻訳後修飾を伴うことが多いことを理解されたい。
【0114】
当業者であれば、本発明の組換えポリペプチドが全体として、C4BPα鎖の元のCCP6ドメインの寛容原性表現型を誘導する能力および元のオリゴマー化ドメインのオリゴマーを形成する能力、具体的には、ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインの寛容原性表現型を誘導する能力およびC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインのオリゴマーを形成する能力、より具体的には、寛容原性表現型を誘導する能力および配列番号6の組換えポリペプチドのオリゴマーを形成する能力を実質的に保存する必要があることを理解するであろう。
【0115】
C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはオリゴマー化ドメインに言及するすべての実施形態は、C4BPα鎖のCCP6ドメインの機能的に同等の変異体およびオリゴマー化ドメインの機能的に同等の変異体に等しく適用される。
【0116】
本発明のホモオリゴマー
本発明らは、本発明の組換えポリペプチドがオリゴマー化して、7つの同一のモノマーのホモオリゴマー、すなわち本発明の7つの組換えポリペプチドを形成することを見出した。遺伝子発現実験(図13、14、16、17および18)および調節性または寛容原性マクロファージへの変換(図15)に示されるように、本発明のホモオリゴマーが、C4BPの生理学的アイソフォーム(C4BP(β-))と比較して、単核食細胞、主に樹状細胞(DC)およびマクロファージの成熟を高い特異性および優れた効率で調節することができるため、本発明者らは、本発明のホモオリゴマーが医薬活性原理として潜在的に非常に魅力的であることを見出した。
【0117】
したがって、一つの態様において、本発明は、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体およびオリゴマー化ドメインを含む少なくとも6つの組換えポリペプチドのホモオリゴマーに関し、このポリペプチドはC4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインを含まない。
【0118】
本明細書で用いられる「ホモオリゴマー」という表現は、同一のモノマーによって形成されるオリゴマーを指す。本明細書で用いられるオリゴマーは、いくつかの繰り返し単位からなるタンパク質またはポリペプチドの非共有結合によって形成される高分子複合体である。各繰り返し単位はモノマーである。特に、本発明のホモオリゴマーは、それぞれ6個または7個のモノマーから構成される六量体または七量体である。本発明のホモオリゴマーの各モノマーは、本発明の組換えポリペプチドである。
【0119】
したがって、本発明において有用であるホモオリゴマーは、本発明の複数の組換えポリペプチドの会合によって生じ、β鎖を欠く任意のホモオリゴマーを含む。例えば、本発明のホモオリゴマーは、少なくとも6個、少なくとも7個、または少なくとも8個のモノマー、すなわち、本発明の組換えポリペプチドを含み得る。一つの実施形態において、ホモオリゴマーは、本発明の7個の組換えポリペプチドによって形成される。
【0120】
一つの実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、本発明の少なくとも6個の組換えポリペプチドを含み;具体的には、本発明の6、7または8個のポリペプチドを含み;具体的には、本発明の6または7個のポリペプチドを含み、より具体的には本発明の7個のポリペプチドを含む。
【0121】
好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、本発明の6、7または8個のポリペプチドからなる。より好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、本発明の6または7個のポリペプチドからなる。
【0122】
一つの実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、6個のモノマー鎖からなり、すなわち、本発明の6個の組換えポリペプチドからなる。
【0123】
好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、7個のモノマー鎖からなり、すなわち、本発明の7個のポリペプチドからなる。
【0124】
一つの実施形態において、ホモオリゴマーは、本発明の7個の組換えポリペプチドからなり、各組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体およびオリゴマー化ドメインを含む。好ましい実施形態において、ホモオリゴマーは、本発明の7個の組換えポリペプチドからなり、各組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に向けて、C4BPα鎖のCCP6ドメインおよびC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなる。より好ましい実施形態において、ホモオリゴマーは、本発明の7個の組換えポリペプチドからなり、各組換えポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に向けて、ヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインおよびヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインからなる。この最後の実施形態において、CCP6ドメインおよびオリゴマー化ドメインは直接連結されている。
【0125】
好ましい実施形態において、ホモオリゴマーを形成するポリペプチドは、配列番号6またはその機能的に同等の変異体からなるポリペプチドであり、具体的には配列番号6からなるポリペプチドである。
【0126】
本発明の組換えポリペプチドについてすでに記載されたすべての用語および実施形態は、本発明のホモオリゴマーに等しく適用され得る。
【0127】
ホモオリゴマーを得るためには、例えば、C4BPα鎖のCCP6ドメイン、およびCCP6ドメインをコードするDNA配列の3’末端がオリゴマー化ドメインをコードするDNA配列の5’末端にライゲーションされたオリゴマー化ドメインをコードする組換え配列の作製が含まれる。適切な宿主で発現することにより、このハイブリッドDNA配列は、オリゴマー、具体的にはホモオリゴマー、より具体的には7個の同一の組換えポリペプチドによって形成される七量体に組み立てられる本発明の組換えポリペプチドを生成する。
【0128】
好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーを形成する組換えポリペプチドは、C4BPとは異なるタンパク質の領域を含まない。例えば、本発明のポリペプチドは、C4BPとは異なるタンパク質の一部を形成する領域を含む融合タンパク質であってはならない。
【0129】
当業者であれば、本発明のホモオリゴマーが、通常、本発明の組換えポリペプチドの成熟形態によって形成されること、すなわち、本発明の組換えポリペプチドのシグナルペプチドが、通常、分泌される前に切断されることを理解するであろう。したがって、好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、シグナルポリペプチドを含まない組換えポリペプチドによって形成される。
【0130】
一方、本発明のホモオリゴマーは、タグペプチドを維持する組換えポリペプチドによって形成することができる。これは、通常は削除する必要がないHis(6)タグ、FLAG、Strep II、CBP等の小さなサイズのタグの場合である。したがって、一つの実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、少なくとも1個のタグペプチドを含む組換えポリペプチドによって形成される。
【0131】
しかしながら、場合によっては、タグペプチドを除去することが好ましい場合がある。好ましくは、タグペプチドは、ホモオリゴマーを形成する組換えポリペプチドの成熟形態において切断される。したがって、別の実施形態において、本発明のホモオリゴマーは、タグペプチドを含まない組換えポリペプチドによって形成される。例えば、ポリ(His)タグとC4BPα鎖のCCP6ドメインとがTEVプロテアーゼによって切断可能なリンカーによって融合されており、プロテアーゼによって認識される配列がENLYFQ/G(配列番号59)である場合、TEVプロテアーゼはQ残基とG残基との間で切断するので、本発明のホモオリゴマーを形成する本発明の組換えポリペプチドの成熟型はN末端にグリシン残基を有し得る。このグリシン残基は、本発明の組換えポリペプチドの活性に影響を及ぼさない。したがって、本発明のホモオリゴマーを形成する本発明の組換えポリペプチドは、その活性に影響を及ぼさない、または細菌におけるその発現を可能にするために添加される切断可能なリンカーの切断の結果として、そのN末端に追加のアミノ酸(例えば、追加のメチオニン)を有し得る。
【0132】
したがって、一つの実施形態において、本発明のホモオリゴマーの組換えポリペプチドは、そのN末端に追加のアミノ酸を有する。
【0133】
一つの実施形態において、本発明のホモオリゴマーの組換えポリペプチドは、シグナルペプチドおよびタグペプチドを含まない。
【0134】
本発明のホモオリゴマーは、用いられる組換え発現系において自発的に会合する。複合体が本発明のホモオリゴマーであるかどうかを評価する方法は、オリゴマー化ドメインの変異体との関連でこれまでに開示されている。
【0135】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。したがって、別の態様において、本発明は、C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体およびオリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関し、上記ポリペプチドはC4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインを含まない。
【0136】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」という用語は互換的に用いられ、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそれらの類似体を含み得る。ヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、公知または未知の任意の機能を発揮し得る。「ポリヌクレオチド」という用語は、例えば、一本鎖、二本鎖および三重らせん分子、遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離された任意の配列のDNA、単離された任意の配列のRNA、核酸プローブおよびプライマーを含む。天然の核酸分子に加えて、本発明の核酸分子は、改変された核酸分子をも含み得る。本明細書で用いられる場合、mRNAとは、細胞内で翻訳され得るRNAを指す。
【0137】
本発明のポリヌクレオチドは、プロモーターが、ポリペプチドが発現される細胞と適合性であるという条件で、本発明のポリペプチドをコードする領域の転写を調節する単一のプロモーター領域をさらに含み得る。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それ自体で単離されているか、またはベクターの一部を形成して、適切な宿主細胞におけるポリヌクレオチドの増殖を可能にすることが見出され得る。
【0138】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0139】
発現ベクターの選択は、ホストの選択に依存する。ポリヌクレオチドの挿入に適したベクターは、pUC18、pUC19、Bluescriptおよびその誘導体、pETおよびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、Co1E1、pCR1、RP4、ファージならびにpSA3およびpAT28等の「シャトル」ベクター、2ミクロンプラスミドのタイプのベクター等の酵母における発現ベクター、組み込みプラスミド、YEPベクター、pBGZαベクター、セントロメアプラスミド等、pACシリーズのベクターおよびpVLベクター等の昆虫細胞における発現ベクター、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズ等の植物における発現ベクター、および市販のバキュロウイルスシステムを用いた昆虫細胞のトランスフェクションに適したバキュロウイルスを含む真核細胞における発現ベクターである。真核生物細胞用のベクターとしては、好ましくはウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、特にレンチウイルス)、ならびにpSilencer 4.1-CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg、pHMCV/Zeo、pCR3.1、pEFI/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびPKSV-10、pBPV-1、pML2dおよびpTDT1等の非ウイルスベクターが挙げられる。好ましい実施形態において、ベクターはpcDNA3.1である。
【0140】
ベクターはまた、ベクターと接触させた後にベクターに組み込まれた細胞を同定することを可能にするレポーター遺伝子またはマーカー遺伝子を含み得る。本発明において有用なレポーター遺伝子としては、lacZ、ルシフェラーゼ、チミジンキナーゼ、GFP等が挙げられる。本発明において有用なマーカー遺伝子としては、例えば、アミノグリコシドG418に対する耐性を付与するネオマイシン耐性遺伝子;ハイグロマイシンへの耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子;オルニチンデカルボキシラーゼ(2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(DFMO))の阻害剤に対する耐性を付与するODC遺伝子;メトトレキサートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子;ピューロマイシンに対する耐性を付与するピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子;ゼオシンに対する耐性を付与するble遺伝子;9-β-D-キシロフラノースアデニンに対する耐性を付与するアデノシンデアミナーゼ遺伝子;N-(ホスホンアセチル)-L-アスパラギン酸の存在下で細胞を成長させるシトシンデアミナーゼ遺伝子;アミノプテリンの存在下で細胞を成長させるチミジンキナーゼ;キサンチンの存在下およびグアニンの非存在下で細胞を成長させるキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子;トリプトファンではなくインドールの存在下で細胞を成長させるE.coliのtrpB遺伝子;細胞がヒスチジンではなくヒスチジノールを利用できるようにするE.coliのhisD遺伝子が挙げられる。選択遺伝子は、真核生物細胞における遺伝子発現に適したプロモーター(例えば、CMVまたはSV40プロモーター)、最適化された翻訳開始部位(例えば、いわゆるコザックルールまたはIRESに従う部位)、例えばSV40ポリアデニル化またはホスホグリセリン酸キナーゼ部位等のポリアデニル化部位、例えばβグロブリン遺伝子イントロン等のイントロンをさらに含み得るプラスミドに組み込まれる。あるいは、同じベクターにおいてレポーター遺伝子およびマーカー遺伝子の両方を同時に用いることも可能である。
【0141】
本発明のポリヌクレオチドが作動可能に連結され得るプロモーターおよびクローニング部位の両方を含むベクターもまた、本発明により提供される。このようなベクターは、in vitroまたはin vivoでRNAを転写することがでる。発現および/またはin vitro転写を最適化するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加または変更して、発現を転写または翻訳のレベルで干渉または低減し得る、余分で潜在的な不適切な代替翻訳開始コドンまたは他の配列を除去する必要があり得る。あるいは、コンセンサスリボソーム結合部位が開始コドンの5’の直近に挿入されて発現を増強し得る。遺伝子送達媒体には、DNA/リポソーム複合体、および標的ウイルスタンパク質-DNA複合体を含むいくつかの非ウイルスベクターも含まれる。標的化抗体またはその断片も含むリポソームを、本発明の方法で用いることができる。細胞への送達を増強するために、本発明の核酸またはタンパク質を、細胞表面抗原に結合する抗体またはその結合断片に結合させることができる。
【0142】
当技術分野で公知であるように、本発明のDNA配列の発現のために、DNA配列は、適切な発現ベクター中の発現制御配列に作動可能に連結され、適切な単細胞宿主を形質転換するためにその発現ベクターで用いられるべきである。もちろん、本発明のDNA配列の発現制御配列へのそのような作動可能な連結は、DNA配列の上流の正しいリーディングフレームにおける翻訳開始シグナルの提供を含む。発現する特定のDNA配列がメチオニンで始まらない場合、開始シグナルにより、生成物のN末端に追加のアミノ酸(メチオニン)が配置される。そのようなメチオニル含有生成物は本発明の方法において直接用いられ得るが、通常、使用前にメチオニンを除去することがより望ましい。それらと共に発現されるポリペプチドからそのようなN末端メチオニンを除去するための方法は、当業者に公知である。例えば、特定の宿主および発酵条件は、in vivoで実質的にすべてのN末端メチオニンの除去を可能にする。他の宿主は、N末端メチオニンのin vitro除去を必要とする。しかしながら、そのようなin vitroおよびin vivoの方法は、当技術分野において公知である。
【0143】
別の態様において、本発明は、上述のようなベクターを含む宿主細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代(progeny)または潜在的な後代を指すものとして用いられる。突然変異または環境の影響のいずれかにより特定の改変が次世代で発生する可能性があるため、そのような後代は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で用いられる用語の範囲内に含まれる。
【0144】
本発明の組換えポリペプチドは、公知の組換えポリペプチド産生システムのいずれかで発現させることができる。
【0145】
多種多様な単細胞宿主細胞もまた、本発明のDNA配列を発現するのに有用である。好ましい実施形態において、宿主細胞は、細菌、酵母、および哺乳動物の真核細胞から選択される。これらの宿主としては、E.coli、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、サーモフィルス(Thermophilus)、サルモネラ(Salmonella)、エンテロバクテリアセア(Enterobacteriaceae)またはストレプトマイセス(Streptomyces)の株、酵母等の真菌、およびCHOおよびマウス細胞等の動物細胞、cos-1、COS-7、BSC1、BSC40およびBMT10等のアフリカグリーンモンキー(African green monkey)の細胞、昆虫細胞、ならび組織培養におけるにヒト細胞および植物細胞等の公知の真核生物および原核生物の宿主が挙げられる。動物細胞の発現には、CHO、COS-7細胞、HEK293細胞が好ましく、HEK293細胞がより好ましい。
【0146】
例えば、本発明の方法においてエシェリヒア(Escherichia)属のE.coliが用いられる場合、用いられるこの細菌の好ましい菌株としては、BL21(DE3)、およびC41(DE3)、C43(DE3)またはC0214(DE3)、C3030Hを含むその誘導体、または組換えタンパク質発現の毒性に耐性を有する他の株が挙げられる。より一層好ましくは、プロモーターがT7プロモーターでない場合、プロファージDE3を欠くこれらの株の誘導体を用いることができる。
【0147】
好ましい実施形態において、発現カセットは、同一のオープンリーディングフレームの5’から3’に、C4BPα鎖のCCP6ドメインをコードするヌクレオチド配列およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書で用いられる「オープンリーディングフレーム」または「ORF」という用語は、ATGまたはAUG等の翻訳開始シグナルまたは開始コドン、および終止コドンを含むDNA、cDNAまたはRNAのいずれかの核酸の長さを意味し、ポリペプチド配列に翻訳される可能性がある。上記のDNA配列は、内部終止コドンを含まず、一般にペプチドに翻訳することができる。
【0148】
好ましい実施形態において、発現カセットは、5’から3’に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、第1のタグをコードするヌクレオチド配列、選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列、第2のタグをコードするヌクレオチド配列、C4BPα鎖のCCP6ドメインをコードするヌクレオチド配列およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、発現カセットは、5’から3’に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、第1のタグをコードするヌクレオチド配列、第2のタグをコードするヌクレオチド配列、切断可能なリンカーをコードするヌクレオチド配列、C4BPα鎖のCCP6ドメインをコードするヌクレオチド配列およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、発現カセットは、5’から3’に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、タグをコードするヌクレオチド配列、切断可能なリンカーをコードするヌクレオチド配列、C4BPα鎖のCCP6ドメインをコードするヌクレオチド配列およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、発現カセットは、5’から3’に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、タグをコードするヌクレオチド配列、C4BPα鎖のCCP6ドメインをコードするヌクレオチド配列およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。より好ましい実施形態において、すべての要素が同一のオープンリーディングフレーム内にある。より一層好ましい実施形態において、すべての要素は、調節ヌクレオチド配列の操作制御下にある。好ましい実施形態において、第1のタグは第2のタグとは異なる。
【0149】
好ましい実施形態において、配列番号7のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号9のポリヌクレオチドである。
【0150】
ヌクレオチド配列をベクターにクローニングし、本発明の組換えポリペプチドを発現および精製するための方法は、当技術分野において公知である。発現および精製のための例示的な条件は、本発明の実施例の材料および方法のセクションに示されている。
【0151】
本発明の組換えポリペプチドおよび本発明のホモオリゴマーについてすでに記載されたすべての用語および実施形態は、本発明のヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞に等しく適用され得る。
【0152】
本発明の医薬組成物
本発明のさらなる態様は、本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージまたは本発明の細胞集団と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物である。
【0153】
本発明の治療方法は、これらの組成物を用いて薬学的に許容可能な方法で患者を治療する工程を含む。これらの組成物は、ヒトを含む任意の哺乳動物を治療するために用いることができる。
【0154】
本発明の医薬組成物は、様々な形態を採り得る。そのような形態としては、例えば、錠剤、丸薬、粉末、液体溶液または懸濁液、リポソーム、坐剤、注射可能な溶液および注入可能な溶液、ならびに徐放性形態等の固体、半固体および液体の剤形が挙げられる。一般に、本発明の医薬組成物は、例えば、αインターフェロン等の薬学的に重要なポリペプチドについて用いられるのと同様の方法および組成物を用いて製剤化および投与することができる。したがって、本発明の組換えタンパク質は、凍結乾燥形態で保存され、投与直前に滅菌水で再構成され、非経口、皮下、静脈内、筋肉内または病巣内の経路等の従来の投与経路によって投与され得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物は皮下投与される。
【0155】
組成物は、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液または乳濁液である医薬組成物であり得、生理学的に許容可能または適切な担体をさらに含む。薬学的に許容可能または適切な担体としては、賦形剤(すなわち、有効成分の活性を妨害しない非毒性物質)および/または希釈剤が挙げられ得る(または言及され得る)。そのような組成物は、固体、液体または気体(エアロゾル)の形態であり得る。あるいは、本明細書に記載の組成物は、凍結乾燥物として製剤化されてもよく、または化合物は、当技術分野において公知の技術を用いてリポソーム内にカプセル化されてもよい。医薬組成物はまた、生物学的に活性または不活性な他の成分を含み得る。このような成分としては、限定されないが、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストランス)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、またはグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオン等のキレート剤、安定化剤、染料、香味剤ならびに懸濁剤および/または保存剤が挙げられる。
【0156】
医薬組成物において用いるための当業者に公知の任意の適切な賦形剤または担体を、本明細書に記載の組成物に用いることができる。治療に用いるための賦形剤は公知であり、例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro ed. 1985)に記載されている。一般に、賦形剤の種類は、投与方法に基づいて選択される。医薬組成物は、例えば、局所、経口、鼻腔内、髄腔内、直腸、膣、眼内、結膜下、舌下または非経口投与、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrasternal)、海綿体内(intracavernous)、管内(intrameatal)または尿道内への注射または注入を含む任意の適切な投与方法のために製剤化することができる。非経口投与の場合、担体は、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与の場合、上記の賦形剤のいずれか、またはマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、グルコース、スクロースおよび/または炭酸マグネシウム等の固体の賦形剤または担体を用いることができる。
【0157】
医薬組成物(例えば、経口投与または注射による送達用)は、液体の形態であり得る。液体の医薬組成物は、例えば、以下のうちの1種以上を含んでもよい:注射用水、生理食塩水(saline solution)、好ましくは生理食塩水(physiological saline)、リンガー液、等張塩化ナトリウム、溶媒または懸濁化剤として機能し得る固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒等の滅菌希釈剤;抗菌剤;抗酸化剤;キレート剤;塩化ナトリウムおよびデキストロース等の張性(tonicity)を調節するための緩衝液および試薬。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与バイアルに入れることができる。生理食塩水を用いることが好ましく、注射可能な医薬組成物は好ましくは無菌である。
【0158】
ポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、寛容原性樹状細胞または寛容原性マクロファージを含む本明細書に記載の薬剤は、持続放出性または徐放性として製剤化されてもよい。そのような組成物は、一般に、公知の技術を用いて調製され、例えば、経口、直腸または皮下移植によって、または所望の標的部位への移植によって投与され得る。徐放性製剤は、担体マトリックスに分散され、かつ/または速度制御膜に囲まれたリザーバー内に含まれる薬剤を含み得る。そのような製剤内で用いるための賦形剤は生体適合性であり、生分解性でもあり得;好ましくは、製剤は、比較的一定レベルの活性成分放出を提供する。徐放性製剤に含まれる活性化合物の量は、移植部位、放出の速度と期待される期間、および治療または予防される状態の性質に依存する。
【0159】
医薬組成物は、医学技術の当業者によって決定されるように、治療される(または予防される)疾患に適切な方法で投与され得る。適切な用量ならびに適切な投与の期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、有効成分の特定の形態、および投与方法等の要因によって決定される。一般に、適切な用量および治療レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、より頻繁な完全または部分的寛解、またはより長い無病および/または全生存期間、または症状の重症度の軽減)を提供するのに十分な量の組成物を提供する。予防的使用の場合、免疫学的疾患または障害に関連する疾患の予防、発症の遅延、または重症度の軽減に十分な用量とすべきである。
【0160】
最適用量は、一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定することができる。最適用量は、患者の質量(mass)、体重または血液量によって異なる。一般に、ある用量で存在する、またはある用量で存在するDNAによってその場で産生されるポリペプチドの量は、宿主1kgあたり約0.01~約1000μgの範囲である。通常、効果的な治療を提供するのに十分な最小投与量の使用が好ましい。患者は、一般に、治療または予防されている状態に適したアッセイを用いて、治療または予防の有効性についてモニターされ、このアッセイは、当業者によく知られているであろう。液体の形態で投与される場合、適切な用量サイズは患者のサイズによって異なるが、通常、10~60kgの対象に対して約1~500ml(1kgあたり約0.01~約1000μgを含む)の範囲である。
【0161】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、本発明のホモオリゴマーを0.45~18.90mg、より好ましくは0.45~9.45mg、より好ましくは0.56~8.51mg、より好ましくは0.75~8.13mg、より一層好ましくは0.79~8.05mg含む。好ましい実施形態において、用量は0.79mgである。別の好ましい実施形態において、用量は0.8mgである。別の好ましい実施形態において、用量は8mgである。別の好ましい実施形態において、用量は8.05mgである。
【0162】
一つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物を7.56~18.90mg、好ましくは9.45~15.13mg、好ましくは11.35~15.13mg、好ましくは13.24~15.13mg含む。
【0163】
一つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物を1.89~17.02mg、好ましくは3.78~15.13mg、好ましくは5.67~13.24mg、より好ましくは7.56~11.35mg含む。
【0164】
一つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物を0.5~9mg、より好ましくは0.75~8.5mg含む。別の実施形態において、組成物は、本発明の化合物を7~18.90mg、より好ましくは7.5~18mg、より好ましくは9~15mg、より好ましくは11~15mg、より一層好ましくは13~15mg含む。別の実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物を1~17mg、好ましくは3~15mg、好ましくは5~13mg、より好ましくは7~11mg含む。
【0165】
アプタマーを含む核酸分子である薬剤を含む医薬組成物の場合、核酸分子は、核酸、ならびに、例えば本明細書で提供されるような組換え発現構築物等の細菌、ウイルスおよび哺乳動物の発現系を含む当業者に公知の様々な送達システム中に存在し得る。DNAをそのような発現系に組み込むための技術は当業者に公知である。DNAは、例えば、Ulmer et al., Science 259:1745-49, 1993 and reviewed by Cohen, Science 259:1691-1692, 1993によってレビューされているように、「裸(naked)」であってもよい。裸のDNAの取り込みは、細胞内に効率的に輸送される生分解性ビーズにコーティングすることにより増加する。
【0166】
核酸分子は、当技術分野において記載されているいくつかの方法のいずれか1つによって細胞に送達することができる(例えば、Akhtar et al., Trends Cell Bio. 2:139 (1992); Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics, ed. Akhtar, 1995, Maurer et al., Mol. Membr. Biol. 16:129-40 (1999); Hofland and Huang, Handb. Exp. Pharmacol. 137:165-92 (1999); Lee et al., ACS Symp. Ser. 752:184-92 (2000); 米国特許第6,395,713号; 国際公開第WO 94/02595号); Selbo et al., Int. J. Cancer 87:853-59 (2000); Selbo et al., Tumour Biol. 23:103-12 (2002); 米国特許出願公開第2001/0007666号および同第2003/077829号を参照のこと)。当業者に公知のそのような送達方法としては、限定されないが、リポソームへのカプセル化、イオン導入(iontophoresis)、または生分解性ポリマー;ハイドロゲル;シクロデキストリン(例えば、Gonzalez et al., Bioconjug. Chem. 10: 1068-74 (1999); Wang et al., International Application Publication Nos. WO 03/47518およびWO 03/46185を参照のこと);ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)およびPLCAミクロスフェア(ペプチドおよびポリペプチドおよび他の物質の送達にも有用)(例えば、米国特許第6,447,796号; 米国特許出願公開第2002/130430号を参照);生分解性ナノカプセル;および生体接着性ミクロスフェア、またはタンパク質性ベクター(国際公開第WO00/53722号)等の他の媒体への組み込みによるものが挙げられる。別の実施形態において、免疫細胞における免疫応答を変化させる(抑制または増強する)ため、および免疫学的疾患または障害を治療するために用いる核酸分子はまた、ポリエチレンイミンおよびその誘導体、例えば、ポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)誘導体またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-triGAL)誘導体(例えば、米国特許出願公開第2003/0077829号も参照されたい)と共に製剤化されるかまたは複合化(complexed)されてもよい。
【0167】
本発明の医薬組成物/医薬品は、上述したような、例えば有効成分、例えば抗ICOS抗体、抗CD154抗体、抗CD134L抗体等の他の免疫調節抗体、または、限定されないが、rCTLA-4(CD152)、rOX40(CD134)等の組換えタンパク質、または抗炎症剤、または、限定されないが、シクロスポリンA、FTY720、RAD、ラパマイシン、FK506、15-デオキシスペルグアリン、ステロイド等の免疫調節化合物をさらに含んでもよい。
【0168】
さらに、本発明の組換えポリペプチドをコードするDNA配列を、体細胞遺伝子治療において用いることができる。これには、例えば、ヒト体細胞の感染に適したレトロウイルスベースのベクターへのDNA配列の挿入が含まれる(A. Kasid et al. 1990. “Human Gene Transfer: Characterization of human tumor-infiltrating lymphocytes as vehicles for retroviral-mediated gene transfer”, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87:473-477)。例えば、免疫炎症性疾患の患者は以下のように治療することができる。まず、本発明の組換えポリペプチドをコードするDNA配列を特徴とするレトロウイルスを調製する。次いで、患者から細胞を分離し、in vitroでレトロウイルスに感染させる。次いで、これらの細胞を患者に再導入し、それによりベクターが発現し、細胞が本発明の組換えポリペプチドを分泌し、これが接合して本発明のホモオリゴマーを形成する。
【0169】
本発明の残りの態様について説明されるすべての用語および実施形態は、本発明の医薬組成物に等しく適用され得る。
【0170】
本発明のポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞および医薬組成物の治療的使用
したがって、別の態様において、本発明は、医薬における使用のための本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、または本発明の医薬組成物に関する。
【0171】
別の態様において、本発明は、医薬の製造のための本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、または本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0172】
別の態様において、本発明は、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、または本発明の医薬組成物に関する。
【0173】
別の態様において、本発明は、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、または本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0174】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患を予防および/または治療する方法であって、本発明の組換えポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞または本発明の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0175】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において寛容原性樹状細胞集団および/または寛容原性マクロファージ集団を増加させるための方法であって、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞または本発明の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0176】
本明細書で用いられる「予防」という用語は、疾患の初期または早期の段階における本発明の化合物の投与、またはその発症を予防するための本発明の化合物の投与を指す。
【0177】
「治療」という用語は、臨床的兆候が現れる前または後に疾患の進行を制御するための本発明の化合物の投与を示すために用いられる。疾患の進行の制御は、限定されないが、症状の軽減、疾患の期間の短縮、病的状態の安定化(特に追加の障害の回避)、疾患の進行の遅延、病的状態の改善および寛解(部分的および完全の両方)を含む、有益なまたは望ましい臨床結果と理解される。疾患の進行の制御はまた、治療が適用されなかった場合に予想される生存と比較した場合の生存の延長を伴う。
【0178】
本明細書で用いられる「免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患」という表現は、先天性または適応性免疫系ならびに体液性または細胞性の免疫系を含む、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる任意の疾患を指す。好ましくは、本発明における免疫学的疾患は、同種抗原または自己抗原に応答して免疫系が活性化される疾患である。したがって、免疫系が抑制されている免疫学的疾患は、本発明に含まれない。
【0179】
好ましい実施形態において、免疫学的疾患は、免疫炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病および過敏性疾患からなる群から選択される。
【0180】
本明細書で用いられる「免疫炎症性疾患」という用語は、免疫細胞および/またはサイトカインが疾患または障害の病態生理学に関与する炎症性の疾患および障害を指す。免疫炎症性疾患の例としては、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、急性呼吸窮迫症候群および喘息等の状態が挙げられる。免疫炎症性疾患という用語には、急性および慢性の両方の炎症性疾患が含まれる。「急性炎症性障害」という用語は、炎症反応に関連する症状の急速な発症および比較的短期間の症状を特徴とする障害および障害エピソードを含むことを意図し、一方、「慢性炎症性障害」は、炎症反応および進行中の症状の持続期間に関連する症状の継続的な存在を特徴とする障害を含むことを意図する。本発明の方法により治療することができる免疫炎症性疾患としては、限定されないが、梗塞または脳卒中、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、急性呼吸窮迫症候群、喘息および癌等の心血管疾患が挙げられる。本発明により治療することができる免疫炎症性疾患には、子癇前症および子癇等の妊娠中に現れる疾患も含まれる。子癇前症は、高血圧、タンパク尿および浮腫を特徴とする妊娠関連疾患である。子癇前症は、胎盤機能不全、子宮内胎児発育遅延、早期流産、早産、子宮内死および子癇を含む子癇前症障害の範囲に包含され、かつ属するものと本明細書で理解されかつ定義されるものである。
【0181】
本明細書で用いられる「敗血症」という用語は、感染の主要部位から離れた末端器官の機能不全を特徴とする、元々無菌の組織における微生物に対する全身性の宿主応答を指す。敗血症と見なされるには、感染が疑われるか証明されるか(培養、染色またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって)、または感染の病因となる臨床症候群が存在する必要がある。感染の具体的な証拠としては、通常無菌である液体(尿や脳脊髄液(CSF)等)のWBC、穿孔された内臓の証拠(腹部X線またはCTスキャンのフリーエア(free air)、急性腹膜炎の兆候)、肺炎(限局性混濁を伴う)に整合する異常な胸部X線(胸部レントゲン)、または点状出血、紫斑病、または電撃性紫斑病が挙げられる。敗血症のより重要なサブセットは、重度の敗血症(急性臓器不全を伴う敗血症)および敗血症性ショック(難治性動脈低血圧を伴う敗血症)である。あるいは、感染の証拠がなく全身性炎症反応症候群の基準の2つ以上が満たされた場合、患者は単に「SIRS」と診断される場合がある。SIRSおよび急性臓器不全のある患者は「重度のSIRS」と呼ばれる場合がある。患者が敗血症に加えて全身性循環不全の兆候:末端臓器不全または4mmol/dLを超える血清乳酸塩を示す場合、患者は「重度の敗血症」を有すると定義される。その他の兆候としては、点状出血および精神状態の変化が挙げられる。積極的な輸液蘇生後に敗血症および低血圧(通常、6リットル以上または40ml/kgの晶質)が生じた場合、患者は敗血症性ショックを有すると定義される。末端臓器不全の例としては、急性肺損傷または急性呼吸窮迫症候群、脳症、または肝臓(タンパク質合成機能および代謝機能の障害)、腎臓(乏尿症および無尿症、電解質異常、体液量過剰)、および心臓(収縮性および拡張性の心不全)に影響を与える機能不全が挙げられる。
【0182】
本発明の化合物により治療することができる適切な敗血症の症状としては、限定されないが、重症敗血症および敗血症性ショックが挙げられる。一つの実施形態において、敗血症症候群に関連する症状は、臓器不全、好ましくは腎臓不全または肝臓不全、多臓器不全症候群(MODS)、急性呼吸困難症候群(ARDS)および播種性血管内凝固症候群(DIC)からなる群から選択される。
【0183】
敗血症は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌からなる群から選択される1種の細菌または複数種の細菌によって誘発され得る。好ましくは、グラム陰性菌は、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)種、セラチア(Serratia)種、エンテロバクター(Enterobacter)種、プロテウス(Proteus)種、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ハエモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ナイセリア(Neisseria)種およびリステリア(Listeria)種からなる群から選択される。また、グラム陽性菌は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)、凝固酵素陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococci)、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)およびストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridans)からなる群から選択される。一つの実施形態において、敗血症症候群はLPSによって誘発される。さらに別の実施形態において、敗血症は、嫌気性細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、スピロヘータおよびウイルスからなる群から選択される1種の微生物または複数種の微生物によって誘発される。
【0184】
好ましい実施形態において、免疫学的疾患は自己免疫疾患である。
【0185】
本明細書を通じて、「自己免疫疾患」、「免疫機能不全/調節不全に関連する疾患」または「免疫炎症性疾患」という用語は、患者の免疫系が自己抗原(自己免疫)または外来抗原(免疫機能障害/調節不全または免疫炎症性疾患)に起因する疾患をもたらす病的状態を指すために用いられる。自己免疫は、すべての人にある程度存在する。それは通常は無害であり、おそらく脊椎動物の生命の普遍的な現象である。しかしながら、自己免疫は、自己免疫疾患として知られる広範囲の人間の病気の原因となる可能性がある。人間の病気の原因としてのこの自己免疫の概念は比較的新しいものであり、1950年代および1960年代までは医学的思考の主流としては受け入れられていなかった。したがって、自己免疫疾患は、良性自己免疫から病原性自己免疫への進行が起こった時に定義される。この進行は、遺伝的影響および環境トリガーの両方によって決定される。(結果または無害な付随物ではなく)人間の病気の実際の原因としての自己免疫の概念は、自己免疫疾患として疾患を定義する基準を確立するために用いられ得る。本発明によって治療され得る自己免疫疾患、または免疫機能不全または調節不全に関連することを特徴とする疾患(免疫炎症性疾患)としては、他の様々な疾患の中でも、疾患全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、中枢神経系(CNS)ループス、真性糖尿病(I型)、喘息、潰瘍性大腸炎、クローン病、グレイブ病、関節リウマチおよび骨関節炎を含む関節炎、悪性貧血、炎症性腸疾患および多発性硬化症が挙げられる。本発明の方法を用いて、他の疾患の中でも、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、アンキロス性脊椎炎を含む自己免疫性血液疾患;多発性筋炎および皮膚筋炎を含む筋肉組織の自己免疫疾患;自己免疫性難聴およびメニエール症候群を含む耳の自己免疫疾患;ムーレン病、ライター症候群およびフォークト-小柳-原田病を含む自己免疫性眼疾患;糸球体腎炎、IgA腎症およびループス腎炎を含む腎臓の自己免疫疾患;糖尿病(I型);尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、紅斑性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、白斑、後天性表皮水疱症、乾癬および脱毛症等の天疱瘡(自己免疫性水疱性疾患)を含む自己免疫性皮膚疾患;自己免疫性心筋炎を含む心血管自己免疫疾患、チャーグ・ストラウス症候群、巨細胞性動脈炎、川崎病、結節性多発動脈炎、高安動脈炎およびウェゲナー肉芽腫症を含む血管炎;アディソン病、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、グレイブ病、橋本甲状腺炎、多腺性自己免疫症候群1型(PAS-1)、多腺性自己免疫性症候群2型(PAS-2)、および多腺性腺自己免疫症候群3型(PAS-3)を含む内分泌自己免疫疾患;自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、腹腔疾患、クローン病を含む自己免疫性胃腸疾患;多発性硬化症、重症筋無力症、ギランバレー症候群および慢性炎症性脱髄性ニューロパチーを含む自己免疫性神経疾患;ならびに全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、抗リン脂質症候群、自己免疫性リンパ増殖性疾患、自己免疫性多発性内分泌障害、ベーチェット病、グッドパスチャー病を含む全身性自己免疫性疾患、関節リウマチ、変形性関節症および敗血症性関節炎、サルコイドーシス、強皮症およびシェーグレン症候群および乾癬を含む関節炎を含む多くの自己免疫疾患を治療することができる。
【0186】
一つの実施形態において、自己免疫疾患はエリテマトーデスである。本明細書で用いられる「エリテマトーデス」という表現は、関節、皮膚、腎臓、血球、心臓および肺に影響を与える一般的な症状を有する一群の自己免疫疾患に付けられた名前を指す。エリテマトーデスは、全身性疾患として現れることもあれば、不完全なエリテマトーデスとしても知られる純粋な皮膚型として現れることもある。ループス(lupus)には、全身性、円板状、薬物誘発性、新生児性の4つの主要な型がある。本発明に関して「エリテマトーデス」という用語は、限定されないが、急性皮膚エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス(慢性皮膚)、小児円板状エリテマトーデス、一般化円板状エリテマトーデス、限局性円板状エリテマトーデス、凍瘡状エリテマトーデス(ハッチンソン)、エリテマトーデス-苔癬平面重複症候群、エリテマトーデス脂肪織炎(エリテマトーデス深部ループス)、腫張性エリテマトーデス(tumid lupus erythematosus)、疣贅性エリテマトーデス(verrucous lupus erythematosus)(肥厚性エリテマトーデス(hypertrophic lupus erythematosus))、皮膚ループスムチン症(cutaneous lupus mucinosis)、補体欠損症候群、薬剤誘発性エリテマトーデス、新生児エリテマトーデスおよび全身性エリテマトーデスを含む。最も一般的な重症型は全身性エリテマトーデスである。
【0187】
好ましい実施形態において、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患および潰瘍性大腸炎からなる群から選択され;より好ましくは全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、炎症性腸疾患および関節リウマチからなる群から選択され;より好ましくは全身性エリテマトーデス、ループス腎炎および関節リウマチからなる群から選択される。好ましい実施形態において、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスおよびループス腎炎からなる群から選択される。
【0188】
好ましい実施形態において、自己免疫疾患は全身性エリテマトーデスである。
【0189】
本明細書で用いられる「全身性エリテマトーデス」または「SLE」という表現は、体の免疫系が体の多くの部分の健康な組織を誤って攻撃する全身性自己免疫疾患を指す。症状は人によって異なり、軽度から重度の場合がある。共通する症状としては、関節の痛みや腫れ、発熱、胸痛、脱毛、口内炎、リンパ節の腫れ、疲労感、および顔に最もよく見られる赤い発疹等が挙げられる。多くの場合、フレアと呼ばれる病気の期間と、症状がほとんどない寛解の期間がある。SLEのほとんどすべての人において関節の痛みと腫れがある。関節炎を発症する人もいる。SLEは、指、手、手首および膝の関節に影響を与えることがよくある。SLEにおける腎疾患は、重大な罹患率と死亡率をもたらす。急性または慢性腎機能障害は、ループス腎炎を伴って発症し、急性または末期の腎不全を引き起こす可能性がある。
【0190】
好ましい実施形態において、自己免疫疾患はループス腎炎である。
【0191】
SLE腎炎としても知られている「ループス腎炎」または「LN」という表現は、全身性エリテマトーデスによって引き起こされる腎臓の炎症である。これは糸球体が炎症を起こす糸球体腎炎の一種である。SLEの結果として、糸球体腎炎の原因は二次的であると言われており、腎臓に起因する主な原因を伴う状態とは異なるパターンと結果を示す。ループス腎炎の一般的な症状としては、発熱、浮腫、高血圧、関節痛、筋肉痛、頬部紅斑および泡状尿等が挙げられる。
【0192】
別の好ましい実施形態において、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患、より好ましくは潰瘍性大腸炎である。
【0193】
本明細書で用いられる「炎症性腸疾患」という表現は、結腸および小腸の炎症状態の群を指す。クローン病および潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の主な種類である。クローン病は、小腸および大腸、さらには口、食道、胃および肛門に影響を及ぼし;一方で、潰瘍性大腸炎は主に結腸および直腸に影響を及ぼす。症状は、腹痛、下痢、直腸出血、骨盤領域における重度の内部けいれん/筋肉けいれん、および体重減少等である。
【0194】
別の好ましい実施形態において、自己免疫疾患は関節リウマチである。
【0195】
本明細書で用いられる「関節リウマチ」または「RA」という表現は、関節の慢性的な炎症およびそれに続く軟骨および骨の破壊により特徴付けられる長期の全身性自己免疫障害を指す。通常、関節が熱をもって腫れ、痛みを伴う。痛みおよびこわばりは、休息後に悪化することがよくある。最も一般的には、手首および手において起こり、通常、体の両側の同じ関節において起こる。この疾患は体の他の部分にも影響を与える可能性がある。これにより、赤血球数が減少し、肺の周囲に炎症が起こり、心臓の周囲に炎症が生じる可能性がある。発熱および活力の低下も生じる可能性がある。多くの場合、症状は数週間から数ヶ月かけて徐々に現れる。RAは主に持続的な細胞活性化の状態として始まり、それが現れる関節および他の臓器の両方において自己免疫および免疫複合体をもたらす。疾患の最初の部位は滑膜であり、そこでは腫れおよび鬱血により免疫細胞による浸潤を引き起こされる。RAの進行の様々な段階は:
・非特異的炎症による開始段階
・T細胞の活性化による増幅段階
・サイトカインIL-1、TNF-αおよびIL-6による組織損傷を伴う慢性炎症期
である。
【0196】
本明細書で用いられる「移植片拒絶」という表現は、移植された細胞、組織または器官が移植レシピエントの体によって受け入れられない免疫状態を指す。発現移植拒絶は、急性および慢性の両方の移植拒絶を包含する。
【0197】
「急性拒絶反応」または「AR」は、移植された組織が免疫学的に外来性である場合の、組織移植レシピエントの免疫系による拒絶反応である。急性拒絶反応は、レシピエントの免疫細胞による移植組織の浸潤により特徴付けられ、エフェクター機能を実行し、移植組織を破壊する。急性拒絶反応の開始は急速であり、一般的に移植手術後数週間以内にヒトで発生する。
【0198】
「慢性移植拒絶反応」または「CR」は、一般に、急性拒絶反応の免疫抑制が成功している場合でも、移植後数ヶ月から数年以内にヒトで発生する。線維症は、すべての種類の臓器移植の慢性拒絶反応の一般的な要因である。慢性拒絶反応は、通常、特定の臓器に特徴的な一連の特定の障害によって説明することができる。例えば、肺移植においては、このような障害として気道の線維増殖性破壊(閉塞性細気管支炎)が挙げられ;弁置換術等の心臓移植または心臓組織の移植においては、このような障害として線維性アテローム性動脈硬化症が挙げられ;腎移植においては、このような障害として閉塞性腎症、腎硬化症、尿細管間質性腎症が挙げられ;肝移植においては、このような障害として胆管消失症候群が挙げられる。慢性拒絶反応はまた、虚血性発作、移植組織の除神経、高脂血症、および免疫抑制薬に関連する高血圧によって特徴付けることができる。
【0199】
移植分野で公知であるように、移植する臓器、組織または細胞は、移植片が同種移植片または異種移植片であり得るように、同種異系または異種であり得る。対象の方法によって検出または同定される移植片耐性表現型の特徴は、それが免疫抑制療法なしで発生する表現型であり、すなわち、免疫抑制剤が宿主に投与されず、免疫抑制療法を受けていない宿主において表現型が存在することである。移植移植片は任意の固形臓器および皮膚移植であり得る。本明細書に記載される方法により治療できる臓器移植の例としては、限定されないが、腎臓移植、膵臓移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植、腸移植、腎臓移植後の膵臓、および膵臓と腎臓との同時移植が挙げられる。
【0200】
本発明の方法はまた、虚血性再灌流傷害に起因する移植片機能発現遅延(DGF)の予防および/または治療にも適している。本明細書で用いられる「移植片機能発現遅延」という用語は、移植後の乏尿、同種移植片の免疫原性の増大および急性拒絶エピソードのリスク、ならびに長期生存の減少をもたらす急性腎不全の一形態を指す。DGFは、ドナーに関連する様々な要因、およびレシピエントに関連する腎前、腎または腎後の移植因子によって引き起こされる可能性がある。しかしながら、移植片機能発現遅延の主な原因は、低体温保存後の虚血性損傷腎臓における虚血および血流の回復である。
【0201】
本明細書で用いられる「移植片対宿主病」またはGVHDという用語は、ドナー組織に存在するT細胞が移植細胞または組織の宿主またはレシピエントを攻撃する時に発生する状態を指す。急性GVHDおよび慢性GVHDを含む任意のタイプのGVHDを本発明の治療薬によって治療することができる。
【0202】
「過敏性疾患」という用語は、対象が、アレルゲンとして知られる無害な薬剤に対して異常な感受性を有する状態を指す。過敏性疾患は、I型、II型、III型およびIV型の4種類に分類される。I型は、IgE感作好塩基球およびマスト細胞からのメディエーターの放出に起因するアトピー性またはアナフィラキシー性として説明される。II型は、細胞溶解または抗体依存性細胞毒性を伴う補体結合抗体を含む細胞毒性として説明される。III型は、可溶性抗原-抗体複合体に関連する免疫複合体媒介性として説明される。IV型は、抗原との接触後の感作Tリンパ球によるリンホカインの放出に起因する細胞性媒介性または遅延型の過敏症として説明される。
【0203】
好ましい実施形態において、免疫学的疾患は炎症性腸疾患であり、より好ましくは潰瘍性大腸炎である。別の実施形態において、免疫学的疾患はクローン病である。
【0204】
免疫学的疾患の予防および/または治療は、寛容原性樹状細胞および/または寛容原性マクロファージ集団の増大を通じて達成される。
【0205】
「寛容原性樹状細胞集団および/または寛容原性マクロファージ集団の増加」という表現は、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリペプチドまたはホモオリゴマーをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、またはそれらを含む医薬組成物の投与によって、未治療の対象に対して、寛容原性樹状細胞および/または寛容原性マクロファージの数の増大をもたらすことを意味することが理解される。寛容原性樹状細胞集団および/または寛容原性マクロファージ集団は、未治療の被験者と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%増大する。寛容原性樹状細胞集団および/または寛容原性マクロファージ集団を増大させる本発明の化合物の能力は、例えば、実施例1~11に記載されるように決定することができる。
【0206】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は皮下投与される。別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、複数回の投与を含み、化合物が週に1回以下投与されるレジメンで投与される。より好ましい実施形態において、本発明の化合物は、複数回の投与を含み、化合物が週に1回以下投与されるレジメンで皮下投与される。
【0207】
複数回の投与とは、少なくとも2回の投与を意味する。したがって、好ましい実施形態において、レジメンは、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも100以上回またはそれ以上の投与を含む。好ましくは、化合物は長期間投与される。好ましくは、化合物は、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間またはそれ以上の期間投与される。
【0208】
「化合物が週に1回以下投与される」という表現は、1週間の間の最大投与回数が1回であることを意味する。これは、化合物が1日目に投与された場合、それに続く投与が2、3、4、5、6または7日目にはできないことを意味する。しかしながら、例えば、化合物は2週間に1回投与されることもあるため、「化合物が週に1回以下投与される」という表現には、1週間の間に投与がされない可能性が含まれる。したがって、本発明によれば、1回の投与は、別の投与から少なくとも7日隔てられている。したがって、好ましい実施形態において、各投与は、別の投与から少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも26日、少なくとも27日、少なくとも28日、少なくとも29日、少なくとも30日、少なくとも31日、少なくとも32日、少なくとも33日、少なくとも34日、少なくとも35日、少なくとも36日、少なくとも37日、少なくとも38日、少なくとも39日、少なくとも40日、少なくとも41日、少なくとも42日、少なくとも43日、少なくとも44日、少なくとも45日、少なくとも46日、少なくとも47日、少なくとも48日、少なくとも49日、少なくとも50日、少なくとも51日、少なくとも52日、少なくとも53日、少なくとも54日、少なくとも55日、少なくとも56日、少なくとも57日、少なくとも58日、少なくとも59日、少なくとも60日以上またはそれ以上隔てられている。
【0209】
好ましい実施形態において、化合物は週に1回投与される。別の好ましい実施形態において、化合物は2週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は3週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は4週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は5週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は6週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は7週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は8週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は9週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は10週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は11週間に1回投与される。別の実施形態において、化合物は12週間に1回投与される。一つの実施形態において、化合物は毎月投与される。別の実施形態において、化合物は2ヶ月に1回投与される。
【0210】
本発明の化合物は、低用量で有効性を有する。したがって、好ましい実施形態において、各投与の用量は0.24~9.99mg/mの範囲である。より好ましい実施形態において、各投与の用量は0.24~5mg/mの範囲、好ましくは0.3~4.5mg/mの範囲、好ましくは0.4~4.3mg/mの範囲、より一層好ましくは0.42~4.26mg/mの範囲である。好ましい実施形態において、用量は0.42mg/mである。別の好ましい実施形態において、用量は4.26mg/mである。
【0211】
一つの実施形態において、各投与の用量は4~9.99mg/mの範囲、好ましくは5~8mg/mの範囲、好ましくは6~8mg/mの範囲、好ましくは7~8mg/mの範囲である。
【0212】
一つの実施形態において、各投与の用量は、1~9mg/mの範囲、好ましくは2~8mg/mの範囲、好ましくは3~7mg/mの範囲、より好ましくは4~6mg/mの範囲である。
【0213】
別の実施形態において、化合物は、0.24μg/m~0.24mg/m、好ましくは1μg/m~0.24mg/m、好ましくは10μg/m~0.24mg/m、好ましくは50μg/m~0.24mg/m、より好ましくは100μg/m~0.24mg/m、より好ましくは150μg/m~0.24mg/m、より好ましくは200μg/m~0.24mg/mの用量で投与される。
【0214】
しかしながら、本発明には、より高い用量での化合物の投与も包含される。
【0215】
そのような治療を必要とする対象はヒトであり得、または免疫学的疾患の症状を発症しているか、または免疫学的疾患を発症するリスクがある非ヒト霊長類または他の動物(すなわち、獣医学的使用)であり得る。非ヒト霊長類および他の動物の例としては、限定されないが、家畜、ペットおよび動物園の動物(例えば、馬、牛、水牛、ラマ、ヤギ、ウサギ、猫、犬、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、サル、象、クマ、大型猫等)が挙げられる。好ましい実施形態において、化合物は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。
【0216】
本発明の治療はまた、その後の投与から7日隔てる必要のない事前投与工程を含んでもよい。特定のケースにおいて、この工程は誘導工程と見なすことができる。したがって、一つの実施形態において、投与は、その後の投与から7日未満隔てられた化合物の皮下投与の事前工程をさらに含む。好ましくは、事前工程は、それに続く投与から6日未満、より好ましくは5日未満、より好ましくは4日未満、より好ましくは3日未満、より好ましくは2日未満、好ましくは1日未満隔てられている。
【0217】
より好ましい実施形態において、皮下投与の事前工程は、それに続く工程から2日隔てられている。好ましくは、関節リウマチの治療の場合の事前工程は、それに続く工程から3日未満、好ましくは2日、好ましくは2日未満、好ましくは1日、好ましくは1日未満隔てられている。
【0218】
好ましい実施形態において、事前工程で投与される用量と、それに続く各投与で投与される用量とは同じである。
【0219】
別の好ましい実施形態において、事前工程で投与される用量は、それ続く各投与で投与される用量よりも多い。好ましい実施形態において、前記用量は40~45mg/mであり、好ましくは42.84mg/mである。好ましくは、前記用量は、関節リウマチの治療において投与される。別の好ましい実施形態において、前記用量は、全身性エリテマトーデスまたはループス腎炎の治療において投与される。
【0220】
別の実施形態において、化合物は、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の治療に有用な1種以上の治療薬と組み合わせて投与され、好ましくは、前記治療薬は、シクロスポリンA、タクロリムス、メトトレキサート、チオプリン、抗TNF剤、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、エタネルセプト、リツキシマブ、エプラツズマブ、ベリムマブ、ラパマイシン、抗インターフェロン抗体、トシリズマブ、ラキニモド、タバルマブ、オファツムマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、ブリアキヌマブ、サリルマブ、リロナセプト、アニフロルマブ、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、抗カルシネウリニクス、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビタミンD、血管作用性腸ペプチド、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、オクレリズマブ、アタシセプト、アバタセプト、アレムツズマブ、シルクマブ、エクリズマブおよびT細胞ワクチンからなる群から選択される。
【0221】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態は、この態様にも適用され得る。
【0222】
本発明のポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチドまたはベクターを用いて得られる寛容原性樹状細胞の集団を生成するための方法
本発明者らは、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターのいずれかと接触した樹状細胞が寛容原性表現型を示すことを観察した。
【0223】
したがって、別の態様において、本発明は、寛容原性樹状細胞の集団を生成するためのin vitro方法であって:
(i)未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件下で樹状前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟樹状細胞の形成に適切な条件下で、上記工程(i)で得られた未成熟樹状細胞の集団をインキュベートする工程
を含み、
上記工程(i)および/または(ii)が、
(a)本発明のポリペプチド、
(b)本発明のホモオリゴマー、
(c)本発明のポリヌクレオチド、および
(d)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる方法に関する。
【0224】
したがって、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターは、分化段階の間(すなわち、樹状前駆細胞が未成熟樹状細胞に分化するまでの間)、成熟段階の間(すなわち、未成熟樹状細胞が樹状細胞に成熟するまでの間)または両方の段階の間に細胞と接触させることができる。
【0225】
本明細書で用いられる「樹状細胞」という用語は、リンパ組織または非リンパ組織に見られる形態学的に類似した細胞型の多様な集団の任意のメンバーを指す。樹状細胞は「専門的な(professional)」抗原提示細胞の一種であり、MHC制限T細胞を感作する高い能力を有する。樹状細胞は、機能によって、または表現型によって、特に細胞表面の表現型によって認識され得る。これらの細胞は、その独特の形態、表面MHCクラスIIの中から高レベルの発現、およびT細胞、特にナイーブT細胞に抗原を提示する能力により特徴付けられる(Steinman et al. (1991) Ann. Rev. Immunol. 9:271;そのような細胞についての記載が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の方法によって影響を受ける樹状細胞は、未成熟または成熟樹状細胞であるように選択され得る。
【0226】
樹状細胞としては、体内の様々な組織や器官に分布している樹状形態を有する骨髄由来細胞の群、サイトカインを用いたin vitro分化により得られるか、または骨髄もしくは血液由来の幹細胞および同等の細胞から得られる、体内の様々な器官や組織に分布している樹状形態を有する細胞の群が挙げられる。具体的には、樹状細胞としては、例えば、リンパ球樹状細胞(Th2または免疫寛容を誘導する細胞を含む)、骨髄樹状細胞(未成熟および成熟樹状細胞を含む一般的に用いられる樹状細胞)、ランゲルハンス細胞(皮膚における抗原提示細胞として重要な樹状細胞)、指状突起細胞(リンパ節および脾臓のT細胞領域に分布し、T細胞への抗原提示において機能すると考えられている)、および濾胞樹状細胞(B細胞の抗原提示細胞として重要)が挙げられる。樹状細胞の細胞表面は平坦ではなく、特徴的なベールのような突起を有し、細胞表面マーカーCD1a、CD4、CD86またはHLA-DRの発現を特徴とする。成熟樹状細胞は通常CD11cであるが、樹状細胞の前駆細胞にはCD11c、IL-3Rαlowの表現型を有するもの;CD11cIL-3Rαhighの表現型を有するものが含まれる。in vivoでのGM-CSFによる処理は、CD11bhigh、CD11chighDCを優先的に拡大し、Flt-3リガンドはCD11cIL-3RαlowDCおよびCD11cIL-3RαhighDC前駆体を拡大することが示されている。
【0227】
「寛容原性樹状細胞」とは、分化刺激に曝された未成熟樹状細胞に由来する樹状細胞を意味し、分化刺激はサイトカイン、ホルモン、ビタミンおよび他の生物学的因子の組み合わせであり得、それによって樹状細胞は寛容を誘導する能力を獲得する。寛容原性樹状細胞は、エフェクターT細胞を活性化する能力は低いが、制御性T細胞を誘導および活性化する能力は高い。寛容原性樹状細胞は、炎症誘発性シグナルの存在下であっても維持される安定した表現型を有する「未成熟DC」として機能する成熟抵抗性細胞と見なすことができる。寛容原性樹状細胞は抗炎症性サイトカインを分泌する。
【0228】
第1工程において、寛容原性樹状細胞の集団を得るための方法は、未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件下で樹状前駆細胞の集団をインキュベートすることを含む。
【0229】
本明細書で用いられる「樹状細胞前駆体」という用語は、適切なサイトカイン(具体的には、G-CSF、GM-CSF、TNF-α、IL-4、IL-13、SCF(c-kitリガンド)、Flt-3リガンドまたはそれらの組み合わせ)の存在下で未成熟樹状細胞に分化できる任意の細胞を指し、好ましくは4週間以内、より好ましくは20日以内、より一層好ましくは18日以内、さらにより一層好ましくは16日以内に未成熟樹状細胞に分化できる細胞である。樹状前駆細胞の例としては、限定されないが、骨髄性樹状前駆細胞、リンパ性樹状前駆細胞および形質細胞様樹状前駆細胞が挙げられる。樹状前駆細胞の様々なサブセットによって発現される表現型表面マーカーは当技術分野において公知であり、例えば、フローサイトメトリーによって、または免疫組織化学的技術を用いることによって同定の目的で用いることができる。
【0230】
好ましい実施形態において、樹状前駆細胞の集団は、単球樹状前駆細胞の集団である。本明細書で用いられる「単球樹状細胞前駆体」は、それらの表面にGM-CSF受容体を有する単球、およびGM-CSFに応答する他の骨髄前駆細胞を含む。細胞は、それらが存在する任意の組織、特に脾臓、骨髄、リンパ節および胸腺等のリンパ組織から得ることができる。単球樹状細胞前駆体はまた、循環系から単離することもできる。末梢血は、容易にアクセスすることができる単球樹状細胞前駆体の供給源である。臍帯血は、単球樹状細胞前駆体のもう1つの供給源である。
【0231】
単球樹状細胞前駆体は、末梢血単核細胞(PBMC)から得ることができ、緩衝生理食塩水で1:1に希釈した全血から、または白血球濃縮物(「バフィーコート」画分、MSKCC Blood Bank)から、Ficoll-Paque PLUS(エンドトキシンフリー、#17-1440-03、Amersham Pharmacia Biotech AB, Uppsala, Sweden)を用いた標準的な遠心分離によって得ることができる。MoDC前駆体は、組織培養プラスチック接着性(#35-3003;Falcon, Becton-Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)のPBMCであり、記載されているように、2日ごとに補充されるGM-CSF(1000IU/ml)およびIL-4(500IU/ml)の存在下で1%正常ヒト血清(NHS)を含む完全RPMI1640で培養することができる(Thurner B et al., 1999, J. Immunol. Meth. 223:1-15 and Ratzinger G. et al., 2004, J. Immunol. 173:2780-2791)。
【0232】
一般に、単球樹状細胞前駆体は、CD13およびCD33等のマーカーの発現によって同定することができる。骨髄性樹状前駆体は、CD14またはCD1a経路を介して樹状細胞に分化する可能性がある。したがって、本発明の樹状前駆細胞は、CD14CD1a樹状前駆細胞またはCD14CD1a樹状前駆細胞であり得る。本発明の特定の実施形態において、骨髄性樹状前駆細胞は、CD34CD33CD7CD10の表現型によって特徴付けられ得る。好ましい実施形態において、骨髄性樹状前駆細胞は、CD14の単球である。CD14の単球はGM-CSF受容体も発現する可能性がある。
【0233】
本発明の方法の出発物質として用いられる樹状前駆細胞は、治療される対象に対して自家であり得る。他の実施形態において、本発明の方法の出発物質として用いられる樹状細胞は、異種の樹状細胞である。例えば、移植片対宿主病を治療する場合、出発物質として用いられる樹状細胞は、ドナーから得られる樹状細胞である。対象は、例えば、マウス、ラット、イヌ、ニワトリ、ウマ、ヤギ、ロバまたは霊長類であり得る。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0234】
本明細書で用いられる「未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件」という表現は、樹状前駆細胞の未成熟前駆細胞への分化をもたらす条件を指す。適切な条件としては、例えば、SCF(50ng/ml)、GM-CSF(500U/ml)およびTNF-α(50ng/ml)の存在下で約3日間培養した後、SCF(50ng/ml)、GM-CSF(500U/ml)、IL-4(250U/ml)およびTNF-α(50ng/ml)の存在下、より好ましくはGM-CSF(20ng/ml)およびIL-4(20ng/ml)の存在下、またはGM-CSF(20ng/ml)およびSCF(10ng/ml)の存在下での培養が挙げられる。好ましい実施形態において、細胞は、GM-CSF(800UI/ml)およびIL-4(500UI/ml)の存在下で培養される。
【0235】
この処理により、未成熟樹状細胞が生成される。「未成熟樹状細胞」とは、成熟状態と比較して有意に低いT細胞活性化能力を有する樹状細胞を指す。具体的には、未成熟樹状細胞は、LPS(1μg/ml)を添加し、2日間培養することによって成熟が誘導された樹状細胞の1/2未満、好ましくは1/4未満の抗原提示能力を有し得る。抗原提示能力は、例えば、アロT細胞活性化能力を用いて定量化することができる(混合リンパ球試験:アロT細胞および樹状細胞を、樹状細胞:T細胞の比が1:10、1:40、1:80、1:160;好ましくは樹状細胞:T細胞の比が1:40、1:80または1:160となるように共培養し;培養終了の8時間前に3H-チミジンを添加し、T細胞増殖能をT細胞のDNAに組み込まれた3H-チミジンの量に基づいて評価する(GeneTherapy 7; 249-254(2000)を参照のこと))。あるいは、ペプチドを用いて特定の細胞毒性T細胞(CTL)を誘導する能力をテストすることによって評価することもでき、ここでは特定の抗原の既知のクラスI制限ペプチドが樹状細胞に添加され;樹状細胞が、樹状細胞が収集されたのと同じ健康なドナーの末梢血から得られたT細胞と共培養される(3日目以降に25U/mlまたは好ましくは100U/mlのIL-2と共に)。T細胞は、好ましくは21日間に3回樹状細胞で刺激され、より好ましくは14日間に2回樹状細胞で刺激される。得られたエフェクター細胞を、51Cr標識された標的細胞(ペプチド制限クラスI陽性腫瘍細胞)と100:1~2.5:1(100:1、50:1、25:1、20:1、12.5:1、10:1、5:1または2.5:1)の比率、好ましくは10:1の比率で4時間共培養し;標的細胞から放出された51Crを定量化する(Arch Dermatol Res 292:325-332 (2000)を参照のこと)。さらに、未成熟樹状細胞は、好ましくは抗原に対する食作用能力を有し、より好ましくはT細胞活性化の共刺激を誘導する受容体の低い(例えば、上述したLPSによって誘導される成熟DCと比較して有意に低い)発現、または負の発現を示す。
【0236】
好ましい実施形態において、本方法の第1工程は、
(i)本発明のポリペプチド、
(ii)本発明のホモオリゴマー、
(iii)本発明のポリヌクレオチド、および
(iv)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる。
【0237】
より好ましい実施形態において、物質の組成物は、本発明の方法の第1工程の間には存在するが、第2工程の間には存在しない。好ましくは、物質の組成物は、本発明のホモオリゴマーである。
【0238】
「本発明のポリペプチド」、「本発明のホモオリゴマー」、「本発明のポリヌクレオチド」および「本発明のベクター」という用語は、上記で詳細に説明されている。
【0239】
本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、前記分子をコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下で行われる工程は、in vivoまたはex vivoで行われ得る。一般的に、これらの方法において、未成熟樹状細胞は:培地1mlあたりの下限が0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50または100μg;かつ培地1mlあたりの上限が0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50、100または200μgの範囲の本発明のポリペプチドまたはホモオリゴマーに曝露され得る。最も好ましくは、DCは、1~10μg/ml、最も好ましくは3、5および10μg/ml、特に最も好ましくは3μg/mlの本発明のホモオリゴマーの存在下で成熟する。
【0240】
次いで、第2工程において、第1工程において単離された未成熟樹状細胞を、未成熟樹状細胞が寛容原性成熟樹状細胞に成熟するのに適切な条件下でインキュベートする。寛容原性樹状細胞が高度に濃縮された組成物が、この方法により達成される。
【0241】
成熟ヒト樹状細胞は、CD40、CD80、CD83、CD86およびHLAクラスIIの発現が陽性の細胞である。未成熟樹状細胞は、例えば、CD83およびCD86からなる群から選択されるマーカーに基づいて、成熟樹状細胞と区別することができる。未成熟樹状細胞はマーカーCD40、CD80、CD83およびCD86について弱く陽性であるか、好ましくは陰性であるのに対して、成熟樹状細胞は陽性である。
【0242】
成熟DCは抗原を取り込む能力を失い、細胞は上方調節された共刺激細胞表面分子の発現を示し、様々なサイトカインを分泌する。具体的には、成熟DCは通常、高レベルのMHCクラスIおよびII抗原を発現し、一般にCD80、CD83およびCD86として同定される。より高いMHC発現はDC表面の抗原密度の増大につながり、共刺激分子CD80およびCD86の上方調節はT細胞上においてCD28等の共刺激分子の対応物を介してT細胞活性化シグナルを強化する。
【0243】
本明細書で用いられる「未成熟樹状細胞が寛容原性成熟樹状細胞に成熟するのに適切な条件」という表現は、未成熟樹状細胞が寛容原性成熟樹状細胞に成熟するのを可能にする方法を指す。成熟樹状細胞は、有効な量または濃度の未成熟樹状細胞と樹状細胞成熟剤とを接触させることによって調製(すなわち、成熟)することができる。樹状細胞成熟剤としては、例えば、BCG;IFNγ;LPS等のTLR4リガンド;TNFα;またはGardiquimod等のTLR7リガンド等が挙げられる。好ましい実施形態において、樹状細胞成熟剤はTLR4リガンドであり、好ましくはLPSである。別の実施形態において、樹状細胞成熟剤はTLR7リガンドであり、好ましくはGardiquimodである。BCGの有効量は、通常、組織培養液1mlあたり約10~10cfuの範囲である。IFNγの有効量は、通常、組織培養培地1mlあたり約100~1000Uの範囲である。Bacillus Calmette-Guerin(BCG)は、M.bovisの非病原性菌株である。本明細書で用いられる場合、BCGは、BCG全体、ならびに細胞壁成分、BCG由来のリポアラビドマンナン、および2型免疫応答の誘導に関連する他のBCG成分を指す。BCGは、熱不活化BCG、ホルマリン処理BCG等のように、任意に不活化される。好ましい実施形態において、LPSは5μg/mlで組織培養培地に添加される。別の実施形態において、Gardiquimodは、10μg/mlで組織培養培地に添加される。
【0244】
未成熟なDCは、通常、有効量のBCGおよびIFNγに、またはLPSに、またはGardiquimodに、約1時間~約48時間接触させられる。未成熟樹状細胞は、適切な成熟培養条件で培養および成熟させることができる。適切な組織培養培地としては、AIM-V、RPMI1640、DMEM、X-VIVO15(商標)等が挙げられる。組織培養培地には、細胞の成熟を促進するために、アミノ酸、ビタミン、GM-CSF等のサイトカイン、二価カチオン等を補充することができる。通常、約500ユニット/mlのGM-CSFが用いられる。
【0245】
好ましい実施形態において、本方法の第2工程は:
(i)本発明のポリペプチド、
(ii)本発明のホモオリゴマー、
(iii)本発明のポリヌクレオチド、および
(iv)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる。
【0246】
樹状細胞の成熟は、樹状細胞について当技術分野において公知の方法によってモニターすることができる。細胞表面マーカーは、フローサイトメトリー、免疫組織化学等の当技術分野で公知のアッセイにより検出することができる。細胞はまた、サイトカイン産生についてモニターすることができる(例えば、ELISA、他の免疫アッセイによって、またはオリゴヌクレオチドアレイの使用によって)。本発明の成熟DCはまた、抗原を取り込む能力を失い、これは、当業者に公知の取り込みアッセイによって分析することができる。
【0247】
「成熟樹状細胞」という用語は、未成熟状態と比較して、T細胞等に対して有意に強い抗原提示能力を有する樹状細胞を指す。具体的には、成熟樹状細胞は、LPS(1μg/ml)を添加して2日間培養することにより成熟が誘導された樹状細胞の抗原提示能力の半分以上、好ましくは同等またはそれ以上の抗原提示能力を有し得る。さらに、成熟樹状細胞は、好ましくは抗原に対する食作用能力が弱いかまたは全く有さず、より好ましくはT細胞活性化の共刺激を誘導する受容体の発現に対して陽性である。樹状細胞の活性化とは、未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への移行を指し;活性化樹状細胞は成熟樹状細胞および移行過程の樹状細胞を含み、共刺激シグナルを誘導するCD80およびCD86の発現は活性化刺激によって上昇する。
【0248】
寛容原性細胞の集団は、約50%以上の細胞組成物を含み得、好ましくは約75%以上の細胞組成物であり得、90%以上であり得る。目的の細胞は、表面表現型、耐性を誘導する能力等によって同定される。濃縮された細胞集団はすぐに用いてもよく、または液体窒素温度で凍結して長期間保存し、解凍して再利用してもよい。細胞は通常、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI1640培地で保存される。寛容原性樹状細胞が濃縮された細胞の集団は、以下に説明するように、様々なスクリーニングアッセイおよび培養に用いることができる。
【0249】
DCは、DCマーカーに対する抗体を用いて蛍光標識細胞を選別することにより、任意にさらに精製することができる。DCはまた、DCに対する抗体を用いて単離してもよく、抗体は磁気ビーズに連結されている。特定の実施形態において、CD32aおよびCD32bを共発現するDCは、FACSを用いて単離される。
【0250】
分離された細胞は、細胞の生存能力を維持する任意の適切な培地に収集することができ、通常、収集チューブの底に血清のクッションを有する。様々な培地が市販されており、細胞の性質に応じて用いることができる。培地は、液体または半固体であり得、例えば、寒天、メチルセルロース等を含む。細胞集団は、通常はウシ胎児血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、および抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンが補充された、イスコフ改変dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地、DMEMまたはRPMI-1640等の適切な栄養培地に適宜懸濁することができる。
【0251】
任意に、形態学的観察および免疫化学的染色等の標準的な手法を用いて、樹状細胞の存在を確認することができる。例えば、樹状細胞の純度は、1種以上の特徴的な細胞表面マーカーに対する蛍光色素標識抗体を用いたフローサイトメトリーによって評価することができる。
【0252】
いくつかの実施形態において、寛容原性樹状細胞は、制御性T細胞を産生するために用いられる(例えば、米国特許出願第10/661,804号を参照のこと)。簡単に言えば、制御性T細胞は、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞を含む集団から産生され得る。これらのT細胞集団は、対象から単離され得るか、または培養され得る。T細胞の亜集団、例えば、特定の細胞が濃縮された集団(例えば、CD4+CD25+T細胞またはCD4+CD25-T細胞)を含むように細胞表面マーカーによって選別された集団等も用いられ得る。次いで、T細胞は、本発明の寛容原性樹状細胞と共に培養またはインキュベートされる。制御性T細胞がin vitroで産生される場合、寛容原性樹状細胞はT細胞と同種であるかまたは同系であり得る。いくつかの実施形態において、寛容原性DCには抗原が充填される(例えば、抗原で刺激されるか、または抗原をコードするRNAでトランスフェクトされる)。そのような実施形態において、寛容原性DCは、T細胞に抗原を提示し得る。制御性T細胞の産生中、T細胞は1回または2回以上寛容原性DCに曝露され、かつ/または寛容原性DCと共に培養され得る。例えば、T細胞はDCと共に数日または数週間培養することができ;混合培養のDCは、必要に応じて補充され得る。いくつかの実施形態において、培養は、治療量の制御性T細胞が得られるまで継続される。得られる結果を改善するために、他の培養技術および/または添加剤を用いることができ;例えば、培地はIL-2等のサイトカインを含んでもよい。
【0253】
一般的に、制御性T細胞はIL-10および/またはTGF-βを分泌し(例えば、Walsh et al., 2004, J. Clin. Invest. 114: 1398-1403を参照のこと);これらのサイトカインの分泌を確認するためのアッセイは当技術分野において公知である。いくつかの実施形態において、制御性T細胞は、混合リンパ球反応を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%、95%または100%阻害する。混合リンパ球反応アッセイは当技術分野において公知である。本発明における制御性T細胞は抗原特異的であり得る。CD4+CD25+制御性T細胞は一般的に、CD4およびCD25を含む特徴的な細胞表面マーカー、およびFoxp3等の特定の細胞内マーカーを発現し;細胞表面および細胞内のマーカーのアッセイは当技術分野において公知である。
【0254】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態は、この態様にも適用され得る。
【0255】
本発明のポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチドまたはベクターを用いて得られる寛容原性マクロファージの集団を生成するための方法
本発明らは、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターのいずれかと接触したマクロファージが寛容原性表現型を示すことを観察した。
【0256】
したがって、別の態様において、本発明は、寛容原性マクロファージの集団を生成するためのin vitro方法であって:
(i)未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件下でマクロファージ前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟マクロファージの形成に適切な条件下で、上記工程(i)で得られた未成熟マクロファージの集団をインキュベートする工程
を含み、
上記工程(i)および/または(ii)が、
(a)本発明のポリペプチド、
(b)本発明のホモオリゴマー、
(c)本発明のポリヌクレオチド、および
(d)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる方法に関する。
【0257】
したがって、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターは、分化段階の間(すなわち、マクロファージ前駆細胞が未成熟マクロファージに分化するまでの間)、成熟段階の間(すなわち、未成熟マクロファージが成熟マクロファージに成熟するまでの間)または両方の段階の間に細胞と接触させることができる。
【0258】
本明細書で用いられる「マクロファージ」という用語は、食作用と呼ばれるプロセスにおいて細胞破片、異物、微生物、癌細胞等を飲み込んで消化する免疫系の白血球の一種である単核食作用細胞を指す。これらの巨大食細胞は、実質的にすべての組織に見られる。それらは、体全体で様々な名前を伴う様々な形態を有する(例えば、組織球、Kupffer細胞、肺胞マクロファージ、ミクログリア等)が、すべては単核食細胞系の一部である。本明細書で用いられるマクロファージという用語には、既知の任意のタイプのマクロファージが包含される。食作用に加えて、それらは非特異的防御(自然免疫)において重要な役割を果たし、リンパ球等の他の免疫細胞を動員することによって特定の防御メカニズム(適応免疫)を開始するのにも役立つ。マクロファージはまた、重要な抗炎症の役割を果たし、サイトカインの放出を通じて免疫反応を低下させる可能性がある。マクロファージは、「専門的な」抗原提示細胞の一種である。マクロファージは、機能によって、または表現型によって、特に細胞表面の表現型によって認識され得る。本発明の方法によって影響を受けるマクロファージは、未成熟または成熟マクロファージであるように選択され得る。
【0259】
マクロファージとしては、サイトカイン等を用いたin vitro分化の結果として生じるか、または骨髄もしくは血液由来の幹細胞および同等の細胞から得られる、体内の様々な組織および器官に分布している細胞の群が挙げられる。各タイプのマクロファージは、その場所によって決定される特定の名前を有する。具体的には、マクロファージとしては、例えば、脂肪組織マクロファージ、Kupffer細胞(肝臓に位置する)、洞組織球(リンパ節に位置する)、肺胞マクロファージ(肺の肺胞に位置する)、巨大細胞(結合組織に位置する)をもたらす組織マクロファージ(組織細胞)、ミクログリア(中枢神経系に位置する)、Hofbauer細胞(胎盤に位置する)、糸球体内メサンギウム細胞(腎臓に位置する)、破骨細胞(骨に位置する)、類上皮細胞(肉芽腫に位置する)、赤脾髄マクロファージ(脾臓の赤髄に位置する)、白髄マクロファージ(脾臓の白髄に位置する)、辺縁帯マクロファージおよび好金属性マクロファージ(脾臓の領域に位置する)、腹膜マクロファージ(腹腔内に位置する)ならびにLysoMac(パイエル板に位置する)が挙げられる。CD14、CD16、CD64、CD68、CD71、CCR5等の共通して用いられるマクロファージマーカーが多数存在し;用いられる正確なマーカーは、マクロファージのサブセットおよびそれらの局所環境の状態によって異なる。成熟M1マクロファージは、通常、マーカーCD86、CD80、CD68、MHCII、IL-1R、TLR2、TLR4、iNOSおよび/またはSOCS3によって識別される。M2マクロファージ、特にIL-4によって活性化されるM2マクロファージは、通常、マーカーCD163、MHCII、SR、MMR/CD206、CD200R、TGM2、DecoyRおよび/またはIL-1RIIによって識別される。マクロファージの前駆体には、表現型IL3RalowCD11bCD34c-KITFLT3およびIL3RahighCD11bCD34c-KITFLT3を有するものが含まれる(Xiao et al. (2015) Stem Cell Reports 4: 984-994)。
【0260】
本明細書で用いられる「寛容原性マクロファージ」という用語は、「調節性マクロファージ」または「Mreg」および「非活性化マクロファージ」と互換的に用いられる。寛容原性、調節性または不活性化マクロファージは、サイトカイン、ホルモン、ビタミンおよび他の生物学的因子の組み合わせである分化刺激に曝露された未成熟マクロファージに由来するマクロファージであり、分化刺激よってマクロファージは寛容を誘導する能力を獲得する。寛容原性マクロファージは、エフェクターT細胞を活性化する能力は低いが、制御性T細胞を誘導および活性化する能力は高い。寛容原性マクロファージは、炎症誘発性シグナルの存在下であっても維持される安定した表現型を有する「未成熟マクロファージ」として機能する成熟抵抗性細胞と見なすことができる。寛容原性マクロファージは、IL-10の産生、およびIL-12の分泌の制限または欠如を通じて、調節性T2応答に向けて免疫系を調節することができる。さらに、寛容原性マクロファージは、HLAクラスIIおよびB7共刺激分子の発現が増大し、抗原提示機能が向上する。
【0261】
第1工程において、寛容原性マクロファージの集団を得るための方法は、未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件下でマクロファージ前駆細胞の集団をインキュベートすることを含む。
【0262】
本明細書で用いられる「マクロファージ前駆細胞」という用語は、適切なサイトカイン(具体的には、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、TNF-α、IL-4、IL-13、SCF(c-kitリガンド)、Flt-3リガンドまたはそれらの組み合わせ)の存在下で未成熟マクロファージに分化できる任意の細胞を指し、好ましくは4週間以内、より好ましくは20日以内、より一層好ましくは18日以内、さらにより一層好ましくは16日以内に未成熟マクロファージに分化できる細胞である。マクロファージ前駆細胞の例としては、限定されないが、骨髄単球-マクロファージ前駆細胞;またはGM-CSFもしくはFlt3Lを添加した培地中で、骨髄前駆細胞でHoxb8を過剰発現させることにより得られる、増殖性の条件付き発達停止一次マクロファージ前駆細胞(proliferative, conditional developmentally-arrested, primary macrophage progenitor)が挙げられる。マクロファージ前駆細胞の様々なサブセットによって発現される表現型表面マーカーは当技術分野において公知であり、例えば、フローサイトメトリーによって、または免疫組織化学的技術を用いることによって同定の目的で用いることができる。
【0263】
好ましい実施形態において、マクロファージ前駆細胞の集団は、単球マクロファージ前駆細胞の集団である。本明細書で用いられる「単球マクロファージ前駆細胞」は、それらの表面にGM-CSF受容体を有する単球、およびGM-CSFに応答する他の骨髄前駆細胞を含む。細胞は、それらが存在する任意の組織、特に脾臓、骨髄、リンパ節、胸腺等のリンパ組織から得ることができる。単球マクロファージ前駆細胞はまた、循環器系から単離することもできる。末梢血は、容易にアクセスすることができる単球マクロファージ前駆細胞の供給源である。臍帯血は、単球マクロファージ前駆細胞のもう1つの供給源である。
【0264】
単球マクロファージ前駆細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)から得ることができ、緩衝生理食塩水で1:1に希釈した全血から、または白血球濃縮物(「バフィーコート」画分、MSKCC Blood Bank)から、Ficoll-Paque PLUS(エンドトキシンフリー、#17-1440-03、Amersham Pharmacia Biotech AB, Uppsala, Sweden)を用いた標準的な遠心分離によって得ることができる。単球マクロファージ前駆体は、組織培養プラスチック付着性(#35-3003;Falcon, Becton-Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)のPBMCであり、記載されているように、2日ごとに補充されるGM-CSF(1000IU/ml)およびIL-4(500IU/ml)の存在下で1%正常ヒト血清(NHS)を含む完全RPMI1640で培養することができる(Thurner B et al., 1999, J. Immunol. Meth. 223:1-15 and Ratzinger G. et al., 2004, J. Immunol. 173:2780-2791)。
【0265】
一般に、単球マクロファージ前駆細胞は、CD13およびCD33等のマーカーの発現によって同定することができる。骨髄性マクロファージ前駆体は、CD14またはCD16経路を介してマクロファージ細胞に分化する可能性がある。したがって、本発明のマクロファージ前駆体細胞は、CD14CD16マクロファージ前駆体細胞、CD14CD16マクロファージ前駆体細胞またはCD14dimCD16マクロファージ前駆体細胞であり得る。本発明の特定の実施形態において、骨髄性マクロファージ前駆細胞は、CD34CD33CD7CD10の表現型によって特徴付けられ得る。好ましい実施形態において、骨髄性マクロファージ前駆細胞は、CD14の単球である。CD14の単球はGM-CSF受容体も発現する可能性がある。
【0266】
本発明の方法の出発物質として用いられるマクロファージ前駆細胞は、治療される対象に対して自家であり得る。他の実施形態において、本発明の方法の出発物質として用いられるマクロファージ前駆細胞は、異種のマクロファージ細胞である。例えば、移植片対宿主病を治療する場合、出発物質として用いられるマクロファージ細胞は、ドナーから得られるマクロファージ細胞である。対象は、例えば、マウス、ラット、イヌ、ニワトリ、ウマ、ヤギ、ロバまたは霊長類であり得る。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0267】
本明細書で用いられる「未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件」という表現は、マクロファージ前駆細胞の未成熟マクロファージへの分化をもたらす条件を指す。適切な条件としては、例えば、任意にIL-3を含むGM-CSFおよび/またはM-CSFの存在下での約6日間の培養が挙げられる。好ましい実施形態において、細胞は、GM-CSF(50ng/ml)またはM-CSF(50ng/ml)の存在下で培養される。
【0268】
この処理により、未熟マクロファージが生成される。本明細書で用いられる「未成熟マクロファージ」という用語は、「分化していないマクロファージ」、「ナイーブマクロファージ」または「M0」という用語と互換的である。未成熟マクロファージ、または分化していないマクロファージ、またはナイーブマクロファージまたはM0とは、成熟状態と比較して有意に低いT細胞活性化能力を有するマクロファージを指す。具体的には、未成熟マクロファージは、LPS(1μg/ml)を添加し、2日間培養することによって成熟が誘導されたマクロファージの1/2未満、好ましくは1/4未満の抗原提示能力を有し得る。抗原提示能力は、例えば、アロT細胞活性化能力を用いて定量化することができる(混合リンパ球試験:アロT細胞およびマクロファージを、マクロファージ:T細胞の比が1:10、1:40、1:80、1:160;好ましくはマクロファージ:T細胞の比が1:40、1:80、1:160となるように共培養し;培養終了の8時間前に3H-チミジンを添加し、T細胞増殖能をT細胞のDNAに組み込まれた3H-チミジンの量に基づいて評価する(Gene Therapy 7; 249-254 (2000)を参照のこと)。あるいは、ペプチドを用いて特定の細胞毒性T細胞(CTL)を誘導する能力をテストすることによって評価することもでき、ここでは特定の抗原の既知のクラスI制限ペプチドがマクロファージに添加され;マクロファージが、マクロファージが収集されたのと同じ健康なドナーの末梢血から得られたT細胞と共培養される(3日目以降に25U/mlまたは好ましくは100U/mlのIL-2と共に)。T細胞は、好ましくは21日間に3回マクロファージで刺激され、より好ましくは14日間に2回マクロファージで刺激される。得られたエフェクター細胞を、51Cr標識された標的細胞(ペプチド制限クラスI陽性腫瘍細胞)と100:1~2.5:1(100:1、50:1、25:1、20:1、12.5:1、10:1、5:1または2.5:1))の比率で、好ましくは10:1の比率で4時間共培養し;標的細胞から放出された51Crを定量化する(Arch Dermatol Res 292:325-332 (2000)を参照のこと)。さらに、未成熟マクロファージは、好ましくは抗原に対する食作用能力を有
し、より好ましくはT細胞活性化の共刺激を誘導する受容体の低い(例えば、上述したLPSによって誘導される成熟マクロファージと比較して有意に低い)発現、または負の発現を示す。
【0269】
好ましい実施形態において、本方法の第1工程は、
(i)本発明のポリペプチド、
(ii)本発明のホモオリゴマー、
(iii)本発明のポリヌクレオチド、および
(iv)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる。
【0270】
「本発明のポリペプチド」、「本発明のホモオリゴマー」、「本発明のポリヌクレオチド」および「本発明のベクター」という用語は、上記で詳細に説明されている。
【0271】
本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、前記分子をコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下で行われる工程は、in vivoまたはex vivoで行われ得る。一般的に、これらの方法において、未成熟マクロファージは、培地1mlあたりの下限が0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50または100μg;かつ培地1mlあたりの上限が0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50、100または200μgの範囲の本発明のホモオリゴマーに曝露され得る。最も好ましくは、マクロファージは、1~10μg/ml、最も好ましくは3、5および10μg/ml、特に最も好ましくは3μg/mlの本発明のホモオリゴマーの存在下で成熟する。
【0272】
次いで、第2工程において、第1工程において単離された未成熟マクロファージを、未成熟マクロファージが寛容原性成熟マクロファージに成熟するのに適切な条件下でインキュベートする。寛容原性マクロファージが高度に濃縮された組成物が、この方法により達成される。
【0273】
成熟ヒトマクロファージは、マクロファージの特定のタイプに応じて、これらのマーカー:CD86、CD80、CD68、MHCII、IL-1R、TLR2、TLR4、iNOS、SOCS3、CD163、SR、MMR/CD206、CD200R、TGM2、DecoyR、IL-1RII、TLR1、TLR8および/またはVEGFの1種以上の発現が陽性の細胞である。未成熟マクロファージは、これらのマーカーの発現が中程度であるかまたは低く、好ましくはこれらのマーカーについて弱く陽性であるのに対して、成熟マクロファージ細胞は陽性である。M1およびM2に分化するとその発現はCD64lowとなり、寛容原性マクロファージにおいては発現がCD64となるため、好ましい実施形態においては未成熟マクロファージのマーカーはCD64highである。好ましい実施形態において、未成熟マクロファージはCD64high、CD80、CD209、CD11bである。好ましい実施形態において、M1はCD64low、CD80である。好ましい実施形態において、M2はCD209、CD11bである。
【0274】
「成熟マクロファージ」という用語は、限定されないが、古典的に活性化されたマクロファージ(M1)、および代替的に活性化されたマクロファージ(M2)の両方を含む。
【0275】
M1は、本明細書では「古典的活性化マクロファージ」と呼ばれ、「炎症性マクロファージ」または「炎症誘発性マクロファージ」としても知られている。M1は、トール様受容体(TLR)とIFNγ、例えばLPSとIFNγとによって活性化され、高レベルのIL-12と低レベルのIL-10を分泌する。M1マクロファージは、炎症誘発性、抗菌性(細胞内病原体に対する耐性を媒介する)、組織破壊性、抗腫瘍性および食作用性の機能的表現型を示す。活性化されると、これらのM1マクロファージは、炎症誘発性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6、IL-12、IL-18、IL-23)、ケモカイン(CXCL-1、2、3、5、8、9、10、CCL-2、3、4、5、11、17および22)、プロテアーゼおよびROS/RNS)を大量に発現する。したがって、M1は、先天性応答だけでなく、適応性のある抗原特異的応答においても極めて重要な役割を果たす。M1マクロファージは、CD64およびCD80の発現が陽性の細胞である。
【0276】
M2は、本明細書では「代替活性化マクロファージ」と呼ばれ、「抗炎症性マクロファージ」または「創傷治癒マクロファージ(wound-healing macrophage)」としても知られている。M1はIL-4またはIL-13によって活性化される。M2は、M1とは機能的に異なる表現型を示す。M2の機能は、一般に、抗炎症性サイトカインを産生することによる抗炎症性表現型として説明され、組織のリモデリングおよび修復、ならびに寄生虫に対する抵抗性も仲介する。M2マクロファージは、高レベルのIL-10、TGF-β、および低レベルのIL-12を産生する。M2マクロファージは、CD209およびCD11bマーカーの発現が陽性の細胞である。M2は、HLA発現が低いため、抗原特異的応答を誘導する能力が限られている。
【0277】
成熟マクロファージは抗原を取り込む能力を失い、細胞は上方調節された共刺激細胞表面分子の発現を示し、様々なサイトカインを分泌する。
【0278】
本明細書で用いられる「未成熟マクロファージが寛容原性成熟マクロファージに成熟するのに適切な条件」という表現は、未成熟マクロファージが寛容原性成熟マクロファージに成熟するのを可能にする方法を指す。成熟マクロファージは、有効な量または濃度の未成熟マクロファージとマクロファージ成熟剤とを接触させることによって調製(すなわち、成熟)することができる。マクロファージ成熟剤は、得られる成熟マクロファージ(M1またはM2)によって異なる。M0からM1を得るためのマクロファージ成熟剤としては、例えば、LPSおよびTNFα等の炎症性刺激と組み合わせたIFNγ;またはGM-CSFならびに無酸素環境、β-ケモカインおよびホルボールミリステート酢酸(PMA)等のさらなる分極シグナル(Foey A.D. Chapter 5: Macrophages: Masters of immune activation, suppression and deviation. In book: Immune response activation. Publisher: InTech, Editors: Guy Huynh Thien Duc, pp. 121-149);またはTNFおよびIFNβの両方を誘導する特定のTLRアゴニスト(Mosser D.M. and Edwards J.P. 2008. Nat Rev Immunol, 8(12):958-969)が挙げられる。好ましい実施形態において、M1のためのマクロファージ成熟剤はLPSであり、好ましくは組織培養培地において40ng/mlの濃度のLPSである。より好ましい実施形態において、M1のためのマクロファージ成熟剤は、LPSおよびIFNγの組み合わせ、好ましくは40ng/mlのLPSおよび40ng/mlのIFNγの組み合わせである。M0からM2を得るためのマクロファージ成熟剤は、限定されないが、IL-4/IL-13、またはM-CSFおよびIL-14である。好ましい実施形態において、M2のためのマクロファージ成熟剤はIL-4であり、好ましくは40ng/mlのIL-4である。
【0279】
未成熟マクロファージは、通常、有効量のマクロファージ成熟剤と約1時間~約48時間接触させられる。未成熟マクロファージは、適切な成熟培養条件で培養および成熟させることができる。適切な組織培養培地としては、AIM-V、RPMI1640、DMEM、X-VIVO15(商標)等が挙げられる。組織培養培地には、細胞の成熟を促進するために、アミノ酸、ビタミン、サイトカイン、二価カチオン等を補充することができる。
【0280】
好ましい実施形態において、本方法の第2工程:
(i)本発明のポリペプチド、
(ii)本発明のホモオリゴマー、
(iii)本発明のポリヌクレオチド、および
(iv)本発明のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる。
【0281】
マクロファージの成熟は、マクロファージについて当技術分野において公知の方法によってモニターすることができる。細胞表面マーカーは、フローサイトメトリー、免疫組織化学等の当技術分野で公知のアッセイにより検出することができる。細胞はまた、サイトカイン産生についてモニターすることができる(例えば、ELISA、他の免疫アッセイによって、またはオリゴヌクレオチドアレイの使用によって)。本発明の成熟マクロファージはまた、抗原を取り込む能力を失い、これは、当業者に公知の取り込みアッセイによって分析することができる。
【0282】
「成熟マクロファージ」という用語は、未成熟状態と比較して、T細胞等に対して有意に強い抗原提示能力を有するマクロファージを指す。具体的には、成熟マクロファージは、LPS(1μg/ml)を添加して2分間培養することにより成熟が誘導されたマクロファージの抗原提示能力の半分、好ましくは同等の抗原提示能力を有し得る。さらに、成熟マクロファージは、好ましくは抗原に対する食作用能力が弱いかまたは全く有さず、より好ましくはT細胞活性化の共刺激を誘導する受容体の発現に対して陽性である。マクロファージの活性化とは、未成熟マクロファージから成熟マクロファージへの移行を指し;活性化マクロファージは成熟マクロファージおよび移行過程のマクロファージを含む。
【0283】
寛容原性マクロファージの集団は、約50%以上の細胞組成物を含み得、好ましくは約75%以上の細胞組成物であり得、90%以上であり得る。目的の細胞は、表面表現型、耐性を誘導する能力等によって同定される。濃縮された細胞集団はすぐに用いてもよく、または液体窒素温度で凍結して長期間保存し、解凍して再利用してもよい。細胞は通常、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI1640培地で保存される。寛容原性マクロファージが濃縮された細胞の集団は、以下に説明するように、様々なスクリーニングアッセイおよび培養に用いることができる。
【0284】
マクロファージは、マクロファージマーカーに対する抗体を用いて蛍光標識細胞を選別することにより、任意にさらに精製することができる。マクロファージはまた、マクロファージに対する抗体を用いて単離してもよく、抗体は磁気ビーズに連結されている。
【0285】
分離された細胞は、細胞の生存能力を維持する任意の適切な培地に収集することができ、通常、収集チューブの底に血清のクッションを有する。様々な培地が市販されており、細胞の性質に応じて用いることができる。培地は、液体または半固体であり得、例えば、寒天、メチルセルロース等を含む。細胞集団は、通常はウシ胎児血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、および抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンが補充された、イスコフ改変dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地、DMEMまたはRPMI-1640等の適切な栄養培地に適宜懸濁することができる。
【0286】
任意に、形態学的観察および免疫化学的染色等の標準的な手法を用いて、マクロファージの存在を確認することができる。例えば、マクロファージの純度は、1種以上の特徴的な細胞表面マーカーに対する蛍光色素標識抗体を用いたフローサイトメトリーによって評価することができる。
【0287】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態は、この態様にも適用され得る。
【0288】
本発明のポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチドおよびベクターを用いて得られる本発明の寛容原性樹状細胞
寛容原性樹状細胞のトランスクリプトームプロファイルは、それらを生成するために用いられるアプローチに応じて大きく変化することが知られている(Navarro-Barriuso et al. 2018. Frontiers in Immunology, 9: 2062)。
【0289】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、該ポリペプチドまたはホモオリゴマーのいずれかをコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下で、本発明の方法によって樹状細胞を分化および/または成熟させることによって得られる本発明の寛容原性樹状細胞に関する。好ましくは、本発明のホモオリゴマー、該ホモオリゴマーをコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下、好ましくは本発明のホモオリゴマーの存在下で、本発明の方法によって得られる本発明の寛容原性樹状細胞に関する。
【0290】
本発明の寛容原性樹状細胞は、以下の特徴の1つ以上を示すことを特徴とする:
-細胞がCD83、CD86、CD80、CD40および/またはCCR7である。「陰性」という用語は、所与のマーカーに適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性DCにおける特定の細胞表面マーカーの発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟免疫刺激性DC、またはin vitroでの成熟、好ましくはLPS成熟を介して得られた成熟免疫刺激性DC)における同じ細胞表面マーカーの発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。
-未成熟の場合に、未成熟樹状細胞と比較して、細胞が抗原内在化能力またはエンドサイトーシス活性の増大を示す。本明細書で用いられる「抗原内在化能力の増大」または「エンドサイトーシス活性の増大」という用語は、本発明の方法によって産生される未成熟寛容原性DCの抗原内在化またはエンドサイトーシス活性のレベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟DC、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟DC)の抗原内在化能力またはエンドサイトーシス活性のレベルと比較して、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、200%、300%またはそれ以上増大していることを示す。寛容原性樹状細胞の抗原内在化能力またはエンドサイトーシス活性は、例えば、本発明の材料および方法、実施例2および図5に記載されるように、分化段階での蛍光DQ-OVA内在化およびプロセシングを測定することによって決定することができる。
-細胞が、成熟樹状細胞と比較して、IL-12p70および/またはTNF-α等の炎症性サイトカインを分泌しないか、減少した量を分泌する。「減少した量を分泌する」という用語は、所与のサイトカインに適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性DCにおける特定のサイトカインの分泌レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟免疫刺激性DC、またはin vitroでの成熟、好ましくはLPS成熟を介して得られた成熟免疫刺激性DC)における同じサイトカインの分泌レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。
-細胞がHLA-DRおよび/またはCD14である。所与のマーカーに適用される場合の「陽性」という用語は、本発明の方法によって産生される寛容原性DCにおける特定の細胞表面マーカーの発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟免疫刺激性DC、またはin vitroでの成熟、好ましくはLPS成熟を介して得られた成熟免疫刺激性DC)と実質的に同等であることを示す。
-細胞が、成熟樹状細胞と比較して、CCL21に対して低下した走化性挙動を示す。本明細書で用いられる「低下した走化性挙動」という用語は、本発明の方法によって産生される寛容原性DCのCCL21に対する走化性のレベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟免疫刺激性DC、またはin vitroでの成熟、好ましくはLPS成熟を介して得られた成熟免疫刺激性DC)における同じサイトカインに対する走化性のレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。CCL21に対する寛容原性樹状細胞の走化性挙動は、例えば、本発明の材料および方法、実施例7および図12に記載されているように決定することができる。
-未成熟の場合に、未成熟DCと比較して、細胞がPTGER3および/またはEGLN3の転写レベルで発現の低下を示す。「発現の低下」という用語は、所与の遺伝子に適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性未成熟DCにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟DC、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟DC)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。遺伝子の発現レベルは、例えば、本発明の材料および方法、実施例8および図13に記載されているように決定することができる。好ましい実施形態において、発現は、分化の4日目または5日目に測定される。
-未成熟の場合に、未成熟樹状細胞と比較して、細胞が、「find me」、またはFPR2、P2RY2および/またはS1PR1等の嗅覚受容体の転写レベルでの発現の増大を示す。「発現の増大」という用語は、所与の遺伝子に適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性未成熟DCにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟DC、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟DC)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、200%、300%またはそれ以上増大していることを示す。遺伝子の発現レベルは、例えば、本発明の材料および方法、実施例8および図14に記載されているように決定することができる。好ましい実施形態において、発現は、分化の5日目に測定される。
ならびに/または
-細胞が分化/成熟プロセス後も生存可能であり続け、すなわちアポトーシスを起こさない。本明細書で用いられる「生存可能」という用語は、成熟刺激(例えば、LPS)による処理後に、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満がアポトーシスを起こす集団を指す。アポトーシスは、アネキシンV/7-ADD染色、カスパーゼ-3活性化アッセイ、TUNELおよびDNA断片化アッセイ、ミトコンドリア膜電位の測定等の当技術分野において公知の任意の方法で測定することができる。細胞の生存率は、例えば、本発明の材料および方法、ならびに実施例2に記載されているように決定することができる。
【0291】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、上述した特徴のうちの1つ以上を示すことによって特徴付けられる。
【0292】
本発明者らは、いくつかの「find me」受容体、特にFPR2、P2RY2、およびS1PR1が、未成熟樹状細胞に関して本発明の方法によって得られた未成熟寛容原性樹状細胞において転写レベルで発現を増加させることを見出した。しかしながら、寛容原性樹状細胞が他の方法、例えば、7つのα鎖によって形成されβ鎖を欠くC4BPの生理学的アイソフォーム(C4BP(α7β0))(PRP-HO7と名付けられた)とのインキュベーションによって得られる場合、上記遺伝子は過剰発現されない(図14を参照のこと)。
【0293】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、未成熟樹状細胞と比較した場合に、遺伝子FPR2、P2RY2および/またはS1PR1のうちの1種以上の過剰発現を示すことによって特徴付けられる。
【0294】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、FPR2high、P2RY2highおよび/またはS1PR1highである。一つの実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞はFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞はP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞はS1PR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、FPR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、FPR2highおよびS1PR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、P2RY2highおよびS1PR1highである。より好ましい実施形態において、本発明の寛容原性樹状細胞は、FPR2high、P2RY2highおよびS1PR1highである。
【0295】
所与の遺伝子に適用される場合の「high」という用語は、本発明の方法によって産生される寛容原性DCにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(すなわち、天然の未成熟DC、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟DC)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、200%、300%以上増大していること;すなわち遺伝子が未成熟DCと比較して過剰発現されていることを示す。
【0296】
別の実施形態において、本発明は、本発明の寛容原性樹状細胞を含む細胞集団に関する。好ましい実施形態において、細胞集団は、本発明の寛容原性樹状細胞を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%含む。好ましい実施形態において、細胞集団は、本発明の寛容原性樹状細胞を少なくとも80%含む。
【0297】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態は、この態様にも適用され得る。
【0298】
本発明のポリペプチド、ホモオリゴマー、ポリヌクレオチドおよびベクターを用いて得られた本発明の寛容原性マクロファージ
寛容原性マクロファージのトランスクリプトームプロファイルは、それらを生成するために用いられるアプローチに応じて大きく変化することが知られている(Navarro-Barriuso et al. 2018. Frontiers in Immunology, 9: 2062)。
【0299】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、本発明のホモオリゴマー、該ポリペプチドまたはホモオリゴマーのいずれかをコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下で、本発明の方法によってマクロファージを分化および/または成熟させることによって得られる本発明の寛容原性マクロファージに関する。好ましくは、本発明のホモオリゴマー、該ホモオリゴマーをコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドを含むベクターの存在下、好ましくは本発明のホモオリゴマーの存在下で、本発明の方法によって得られる本発明の寛容原性マクロファージに関する。
【0300】
本発明による寛容原性マクロファージは、以下の特徴のうちの1つ以上を示すことを特徴とする:
-細胞がCD64および/またはCD80である。「陰性」という用語は、CD64およびCD80マーカーに適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおけるこれらの特定の細胞表面マーカーの発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟M1マクロファージ、またはin vitroでの成熟を介して得られた成熟M1マクロファージ)における同じ細胞表面マーカーの発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。
-細胞がCD209および/またはCD11bである。「陰性」という用語は、CD209およびCD11bマーカーに適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおけるこれらの特定の細胞表面マーカーの発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟M2マクロファージ、またはin vitroでの成熟を介して得られた成熟M2マクロファージ)における同じ細胞表面マーカーの発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。
-未成熟の場合に、未成熟マクロファージM0と比較して、細胞がALCAM、SLC16A1および/またはLMNB1の転写レベルで発現の低下を示す。「発現の低下」という用語は、所与の遺伝子に適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟M0マクロファージ、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟M0マクロファージ)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。遺伝子の発現レベルは、例えば、材料および方法、実施例10および図16に記載されているように決定することができる。好ましい実施形態において、発現は、分化の2、4または6日目に測定される。
-未成熟の場合に、未成熟マクロファージM0と比較して、細胞が「find me」、またはCCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2および/またはP2RY2等の嗅覚受容体の転写レベルでの発現の増大を示す。「発現の増大」という用語は、所与の遺伝子に適用される場合、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟M0マクロファージ、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟M0マクロファージ)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、200%、300%または以上増大していることを示す。遺伝子の発現レベルは、例えば、材料および方法、実施例10および図17に記載されているように決定することができる。好ましい実施形態において、発現は、分化の6日目に測定される。
-細胞が、成熟M1マクロファージと比較して、炎症性サイトカイン、およびCCL1、CCL2、MIP-1、CCL5、CXCL1、IL-6および/またはTNF-α等のケモカインについて減少した量を分泌する。所与のサイトカイン、ケモカインまたは急性期タンパク質に適用される場合、「減少した量を分泌する」という用語は、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおける特定のサイトカインまたはケモカインの分泌レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の成熟M1マクロファージ、またはin vitroでの成熟を介して得られた成熟M1マクロファージ)における同じサイトカインまたはケモカインの分泌レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%減少しているか、または検出できないことを示す。
【0301】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、上述した特徴のうちの1つ以上を示すことによって特徴付けられる。
【0302】
好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、未成熟マクロファージM0と比較して、ALCAM、SLC16A1および/またはLMNB1の転写レベルでの発現の低下を示す。より好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、未成熟マクロファージM0と比較して、好ましくは分化の2、4または6日目、より好ましくは分化の2日目に、ALCAMの転写レベルでの発現の低下を示す。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、未成熟マクロファージM0と比較して、好ましくは分化の4または6日目に、SLC16A1の転写レベルでの発現の低下を示す。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、未成熟マクロファージM0に対して、好ましくは分化の2または4日目に、LMNB1の転写レベルでの発現の低下を示す。
【0303】
好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCD64および/またはCD80である。好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーの存在下で単球をM0に分化させ、さらにM0をLPSおよびIFNγで成熟させることによって得られる寛容原性マクロファージは、CD64および/またはCD80である。別の好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、成熟M1マクロファージと比較して、減少した量のCCL1、CCL2、MIP-1、CCL5、CXCL1、IL-6および/またはTNF-αを分泌する。好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、減少した量のCCL1、CCL2および/またはMIP-1を分泌する。より好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、成熟M1マクロファージと比較して減少した量のCCL2を分泌する。
【0304】
好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CD209および/またはCD11bである。好ましい実施形態において、本発明のホモオリゴマーの存在下で単球をM0に分化させ、さらにM0をIL-4で成熟させることによって得られる寛容原性マクロファージは、CD209および/またはCD11bである。
【0305】
寛容原性マクロファージが生理学的アイソフォームC4BP(α7β0)による処理によって得られる場合よりも、寛容原性マクロファージが本発明の方法によって得られる場合には、CD64およびCD11b細胞表面マーカーはさらに過少発現される(図15を参照のこと)。したがって、一つの実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCD64であり、好ましくはCD64の発現レベルは、M1マクロファージにおける発現レベルと比較して25%に減少している。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCD11bであり、好ましくはCD11bの発現レベルは、M2マクロファージにおける発現レベルと比較して18%に減少している。
【0306】
本発明の寛容原性マクロファージは、寛容原性マクロファージが生理学的アイソフォームC4BP(α7β0)による処理によって得られる場合よりもさらに少ないCCL1およびMIP-1を分泌する(図18を参照のこと)。したがって、一つの実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、成熟M1マクロファージと比較して減少した量のCCL1を分泌し、好ましくはCCL1の発現レベルは、M1マクロファージにおける発現レベルと比較して70%に減少している。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、成熟M1マクロファージと比較して減少した量のMIP-1を分泌し、好ましくはMIP-1の発現レベルは、M1マクロファージにおける発現レベルと比較して63%に減少している。
【0307】
本発明者らは、いくつかの「find me」受容体、特にCCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2およびP2RY2が、未成熟M0マクロファージに関して本発明の方法によって得られる寛容原性マクロファージにおいて転写レベルで発現を増大させることを見出した。しかしながら、寛容原性マクロファージが他の方法、例えば、7つのα鎖によって形成されβ鎖を欠くC4BPの生理学的アイソフォーム(C4BP(α7β0))(PRP-HO7と名付けられた)(PRP-HO7と名付けられた)とのインキュベーションによって得られる場合、上記遺伝子は過剰発現されない(図17を参照のこと)。
【0308】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、未成熟マクロファージM0と比較した場合に、遺伝子CCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2および/またはP2RY2のうちの1種以上の過剰発現を示すことによって特徴付けられる。
【0309】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、CXCR1high、FPR2highおよび/またはP2RY2highである。一つの実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCCR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCX3CR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはCXCR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージはP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2highおよびCX3CR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2highおよびCXCR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1highおよびCXCR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CXCR1highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CXCR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、FPR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、CXCR1highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CXCR1high、FPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CXCR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、FPR2highおよび/またはP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1high、CXCR1highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1high、CXCR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1high、FPR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CXCR1high、FPR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、CXCR1highおよびFPR2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、CXCR1highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CX3CR1high、CXCR1high、FPR2highおよびP2RY2highである。別の実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、FPR2highおよびP2RY2highである。より好ましい実施形態において、本発明の寛容原性マクロファージは、CCR2high、CX3CR1high、CXCR1high、FPR2highおよびP2RY2highである。
【0310】
所与の遺伝子に適用される場合の「high」という用語は、本発明の方法によって産生される寛容原性マクロファージにおける特定の遺伝子の発現レベルが、適切な対照細胞(例えば、天然の未成熟M0マクロファージ、またはin vitroでの分化を介して得られた未成熟M0マクロファージ)における同じ遺伝子の発現レベルと比較して、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、100%、200%、300%以上増大していること、すなわち遺伝子が未成熟M0マクロファージと比較して過剰発現されていることを示す。
【0311】
別の実施形態において、本発明は、本発明の寛容原性マクロファージを含む細胞集団に関する。好ましい実施形態において、細胞集団は、本発明の寛容原性マクロファージを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%含む。好ましい実施形態において、細胞集団は、本発明の寛容原性マクロファージを少なくとも80%含む。
【0312】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態は、この態様にも適用され得る。
【0313】
本発明の寛容原性樹状細胞および寛容原性マクロファージの治療的使用
寛容原性樹状細胞および寛容原性マクロファージは、免疫学的疾患の患者の治療、特にI型糖尿病、関節リウマチおよびクローン病等の自己免疫疾患の治療、ならびに腎臓移植において有用である(Navarro-Barriuso et al. 2018. Frontiers in Immunology, 9: 2062)。
【0314】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の寛容原性樹状細胞、または本発明の寛容原性マクロファージ、または本発明の細胞集団と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0315】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態、特に本発明の医薬組成物について開示されたすべての実施形態および定義は、この態様にも適用され得る。
【0316】
別の態様において、本発明は、医学における使用のための本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージ、本発明の細胞集団、またはそれらを含む医薬組成物に関する。
【0317】
別の態様において、本発明は、医薬の製造のための本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージ、本発明の細胞集団、またはそれらを含む医薬組成物の使用に関する。
【0318】
別の態様において、本発明は、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージ、本発明の細胞集団、またはそれらを含む医薬組成物に関する。
【0319】
別の態様において、本発明は、免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防または治療のための医薬の製造のための本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージ、本発明の細胞集団、またはそれらを含む医薬組成物の使用に関する。
【0320】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療する方法であって、本発明の寛容原性樹状細胞、本発明の寛容原性マクロファージ、本発明の細胞集団、またはそれらを含む医薬組成物を前記対象への投与を含む方法に関する。
【0321】
好ましい実施形態において、免疫学的疾患は、免疫炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病および過敏性疾患からなる群から選択される。
【0322】
免疫学的疾患または障害を治療するための組成物の用量は、医学分野における当業者によって理解されるパラメーターに従って決定され得る。したがって、適切な用量は、患者(例えば、ヒト)の状態、すなわち、疾患の病期、通常の健康状態、ならびに年齢、性別および体重、ならびに医学分野における当業者に公知の他の要因に依存し得る。
【0323】
「治療」、「予防」、「対象」、「免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患」、「免疫炎症性疾患」、「敗血症」、「自己免疫疾患」、「移植片拒絶」、「移植片-対宿主病」および「過敏性疾患」は、上記で詳細に説明されており、本発明の治療方法について同じ意味で用いられる。
【0324】
本発明の態様についてこれまでに開示されたすべての実施形態、特に本発明の治療方法について開示されたすべての実施形態および定義は、この態様にも適用され得る。
【0325】
本発明はまた、以下に関する:
[1]C4BPα鎖のCCP6ドメインまたはその機能的に同等の変異体、およびオリゴマー化ドメインを含む組換えポリペプチドであって、前記ポリペプチドがC4BPα鎖のCCP1、CCP2、CCP3、CCP4、CCP5、CCP7およびCCP8ドメインのいずれも含まない。
[2]CCP6ドメインがヒトC4BPα鎖のCCP6ドメインである、[1]に記載の組換えポリペプチド。
[3]C4BPα鎖のCCP6ドメインが配列番号1である、[1]または[2]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[4]オリゴマー化ドメインがC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインまたはその機能的に同等の変異体である、[1]~[3]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[5]オリゴマー化ドメインがヒトC4BPα鎖のオリゴマー化ドメインまたはその機能的に同等の変異体である、[1]~[4]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[6]オリゴマー化ドメインが配列番号2またはその機能的に同等の変異体であり、好ましくは配列番号2である、[1]~[5]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の組換えポリペプチドであって、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、(a)CCP6ドメイン、および(b)オリゴマー化ドメインを含む、組換えポリペプチド。
[8]ポリペプチドが配列番号3またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号3からなる、[1]~[7]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[9]ポリペプチドがシグナルペプチドをさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の組換えポリペプチド。
[10]シグナルペプチドがC4BPα鎖のシグナルペプチド、好ましくは配列番号4のペプチドまたはその機能的に同等の変異体、好ましくは配列番号4である、[9]に記載の組換えポリペプチド。
[11]ポリペプチドが配列番号5またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号5からなる、[10]に記載の組換えポリペプチド。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の組換えポリペプチドであって、C4BPα鎖の一部ではないペプチド、好ましくはタグペプチドをさらに含む、組換えポリペプチド。
[13]タグペプチドがCCP6ドメインのN末端に連結されている、[12]に記載の組換えポリペプチド。
[14]タグペプチドがポリヒスチジンタグである、[12]または[13]に記載の組換えポリペプチド。
[15]ポリペプチドが配列番号6またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号6からなる、[14]に記載の組換えポリペプチド。
[16]ポリペプチドが配列番号7またはその機能的に同等の変異体からなり、好ましくは配列番号7からなる、[14]に記載の組換えポリペプチド。
[17][1]~[16]のいずれかに記載の少なくとも6つの組換えポリペプチドのホモオリゴマー。
[18]ホモオリゴマーが、[1]~[16]のいずれかに記載の7つの組換えポリペプチドによって形成される、[17]に記載のホモオリゴマー。
[19]ホモオリゴマーが、[1]~[16]のいずれかに記載の7つの組換えポリペプチドからなる、[17]に記載のホモオリゴマー。
[20]ポリペプチドが[15]に記載のポリペプチドである、[17]~[19]のいずれかに記載のホモオリゴマー。
[21][1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
[22][21]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[23][22]に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[24][1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、または[23]に記載の宿主細胞と、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[25]医薬における使用のための、[1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、[23]に記載の宿主細胞、または[24]に記載の医薬組成物。
[26]免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防および/または治療における使用のための、[1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリヌクレオチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、[23]に記載の宿主細胞、または[24]に記載の医薬組成物。
[27]免疫学的疾患が、免疫炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病および過敏性疾患からなる群から選択される、[26]に記載の使用のための、[1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、[23]に記載の宿主細胞、または[24]による医薬組成物。
[28]自己免疫疾患が、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患および関節リウマチからなる群から選択される、[27]に記載の使用のための、[1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、[23]に記載の宿主細胞、または[24]に記載の医薬組成物。
[29]自己免疫疾患が炎症性腸疾患である、[28]に記載の使用のための、[1]~[16]のいずれかに記載の組換えポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、宿主細胞[23]に記載の、または[24]に記載の医薬組成物。
[30]in vitroで寛容原性樹状細胞の集団を生成するための方法であって:
(i)未成熟樹状細胞の集団の形成に適切な条件下で樹状前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟樹状細胞の形成に適切な条件下で、工程(i)で得られた未成熟樹状細胞の集団をインキュベートする工程
を含み、
工程(i)および/または(ii)が、
(a)[1]~[16]のいずれかに記載のポリペプチド、
(b)[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、
(c)[21]に記載のポリヌクレオチド、および
(d)[22]に記載のベクター
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる、方法。
[31]樹状前駆細胞の集団が単球集団である、[30]に記載の方法。
[32]in vitroで寛容原性マクロファージの集団を生成するための方法であって:
(i)未成熟マクロファージの集団の形成に適切な条件下でマクロファージ前駆細胞の集団をインキュベートする工程、および
(ii)成熟マクロファージの形成に適切な条件下で、工程(i)で得られた未成熟マクロファージの集団をインキュベートする工程
を含み、
工程(i)および/または(ii)が、
(a)[1]~[16]のいずれかに記載のポリペプチド、
(b)[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、
(c)[21]に記載のポリヌクレオチド、および
(d)[22]に記載のベクトル
からなる群から選択される物質の組成物の存在下で行われる、方法。
[33]マクロファージ前駆細胞の集団が単球集団である、[32]に記載の方法。
[34][30]または[31]のいずれかに記載の方法によって得られる寛容原性樹状細胞、または[32]または[33]のいずれかに記載の方法によって得られる寛容原性マクロファージ。
[35][34]に記載の寛容原性樹状細胞であって、前記細胞がFPR2high、P2RY2highおよび/またはS1PR1highである、寛容原性樹状細胞。
[36][34]に記載の寛容原性マクロファージであって、前記マクロファージがCCR2high、CX3CR1high、CXCR1high、FPR2highおよび/またはP2RY2highである、寛容原性マクロファージ。
[37][34]または[35]に記載の寛容原性樹状細胞を少なくとも80%、または[34]または[36]に記載の寛容原性マクロファージを少なくとも80%含む、細胞集団。
[38][34]または[35]に記載の寛容原性樹状細胞、[34]または[36]に記載の寛容原性マクロファージ、または[37]に記載の細胞集団と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
[39]医薬における使用のための、[34]または[35]に記載の寛容原性樹状細胞、[34]または[36]に記載の寛容原性マクロファージ、[37]に記載の細胞集団、または[38]に記載の医薬組成物。
[40]免疫系の望ましくない活性化によって引き起こされる免疫学的疾患の予防におよび/または治療における使用のための、[34]または[35]に記載の寛容原性樹状細胞、[34]または[36]に記載の寛容原性マクロファージ、[37]に記載の細胞集団、または[38]に記載の医薬組成物。
[41]免疫学的疾患が、免疫炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主疾患および過敏性疾患からなる群から選択される、[41]に記載の使用のための、[34]または[35]に記載の寛容原性樹状細胞、[34]または[36]に記載の寛容原性マクロファージ、[37]に記載の細胞集団、または[38]に記載の医薬組成物。
[42]それを必要とする対象において寛容原性樹状細胞集団および/または寛容原性マクロファージ集団を増加させるための方法であって、[1]~[16]のいずれかに記載のポリペプチド、[17]~[20]のいずれかに記載のホモオリゴマー、[21]に記載のポリヌクレオチド、[22]に記載のベクター、[23]に記載の宿主細胞、または[24]に記載の医薬組成物、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与することを含む、方法。
【実施例
【0326】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、単なる例示と見なされるべきである。
【0327】
実施例1-13
材料および方法
PRP-HE8、PRP-HO7、PRP6-HO7およびPRP6-NOの取得および精製
PRP-HE8は、ヒト血漿から精製された7個のα鎖と1個のβ鎖とによって形成される生理学的アイソフォーム(C4BP(β))に対応し、C4BP(αβ)とも呼ばれる(Olivar et al. 2013. J Immunol, 190(6): 2857-2872)。
【0328】
PRP-HO7は、ヒト血漿から精製された7個のα鎖によって形成されるがβ鎖を欠いている生理学的アイソフォーム(C4BP(β))に対応し、C4BP(αβ)とも呼ばれる(Olivar et al. 2013. J Immunol, 190(6): 2857-2872)。
【0329】
PRP6-HO7は、7個の組換えポリペプチドのホモオリゴマーであり、それらのそれぞれは、C4BP(β)のCCP6ドメインと、そのC末端に本発明者らによって操作されたC4BP(β)の完全なオリゴマー化ドメインとを融合することによって形成された。PRP6-HO7を形成する組換えポリペプチドの未成熟形態の配列は配列番号7であり、図1Aに示されている。PRP6-HO7を形成する組換えポリペプチドの未成熟形態はまた、成熟形態で排除されるC4BPのシグナルペプチドを含んでいた。成熟型のPRP6-HO7の配列は配列番号6であり、理論上のpIが5.81であり、理論上のMwが14,287.98Daである。配列番号6の配列を以下に示すが、最初の6個のアミノ酸には下線が引かれ、ヒスチジンタグに対応し、その後にC4BP(β)の完全なオリゴマー化ドメインと融合したC4BP(β)のCCP6ドメインの配列が続き、これは二重下線で示されている。
HHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号6)
【0330】
PRP6-NOは、C4BP(β)のCCP6ドメインと、そのC末端に、2つのシステイン残基をアラニンで置換し、最後の13個のC末端アミノ酸(Δ537-549/C498A/C510A)を欠失させることによってオリゴマー化することができない変異体C4BP(β)のオリゴマー化ドメインとを融合することによって形成された組換えポリペプチドである(Kask et al. 2002. Biochemistry, 41:9349-9357)。この組換えポリペプチドは、本発明者らによって操作されたものである。未成熟型のPRP6-NOの配列は配列番号10であり、図1Bに示されている。未成熟型のPRP6-NOはまた、成熟型で排除されるC4BPのシグナルペプチドを含んでいた。成熟型のPRP6-NOの配列は配列番号8であり、理論上のpIが5.80であり、理論上のMwが12,723.23Daである。配列番号8の配列を以下に示すが、最初の6個のアミノ酸には下線が引かれ、ヒスチジンタグに対応し、その後にC4BP(β)の切断型変異体に融合したC4BP(β)のCCP6ドメインの配列が続き、これは二重下線で示されている。アラニンに変異したオリゴマー化ドメインの2つの残基は太字で示されている。
【0331】
MHPPKTPSGALHRKRKMAAWPFSRLWKVSDPILFQMTLIAALLPAVLGHHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGAEQVLTGKRLMQALPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQ(配列番号10)
【0332】
好ましい実施形態において、配列番号10をコードするポリヌクレオチドは配列番号11である。
【0333】
HHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGAEQVLTGKRLMQALPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQ(配列番号8)
【0334】
PRP6-HO7およびPRP6-NOのN末端に6つのヒスチジンタグを追加して、精製および検出を改善した。それらの生成は、SDS-PAGEおよびペプチドマッピング分析(質量分析)によって確認された。
【0335】
地元の血液バンクから供給されたプールされたヒト血漿からのPRP-HE8(C4BP(β))およびPRP-HO7(C4BP(β))精製には、BaCl沈殿が含まれており(Dahlback. (1983) Biochem. J. 209: 847-856;Blom et al. (2009) Ann. Rheum. Dis. 68: 136-142)、続いてヘパリンクロマトグラフィー、疎水性相互作用(ブチル)クロマトグラフィー、陰イオン交換(Qセファロース)クロマトグラフィー、および最後にサイズ排除(Superdex)クロマトグラフィーを含む4種類の連続したクロマトグラフィー工程を行った。血漿精製されたPRP-HE8およびPRP-HO7の両方を、濃縮し、透析し、pH7.4のPBS緩衝液中に収集した。6μgタンパク質/レーンでのTris-酢酸3~8%SDS-PAGE(NuPAGE precast protein gels; ThermoFisher, Waltham, MA, USA)およびさらなるさらにクーマシーブルー染色により評価したところ、いずれの糖タンパク質の純度も85%を超えていた。
【0336】
PRP6-HO7およびPRP6-NOの各DNA(それぞれ、配列番号9および11)を、pCDNA3.1(+)発現ベクターにクローン化した。Qiagen社のQiafilter Plasmid MegaKitを用いてプラスミドDNAを増幅および精製した。Expi293細胞は、2.5×10細胞/mlの細胞密度および98%の生存率で目的の容量に達するまで浮遊培養により増殖させた。培養液1リットルあたり1mgのDNAを細胞に一過性にトランスフェクトした後、37℃で7日間インキュベートし、125rpmで振とうし、8%のCOを供給した。最後に、培地を収集し、4℃、6000gで30分間遠心分離した。上清を、標準的な手順に従ったニッケルアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap FF)によるタンパク質精製に供した。両方の組換えポリペプチドを濃縮し、透析し、pH7.4のPBS緩衝液に回収した。純度を、SDS-PAGEおよびクーマシーブルー染色によって評価した。
【0337】
ATGCACCCCCCAAAAACTCCATCTGGGGCTCTTCATAGAAAAAGGAAAATGGCAGCCTGGCCCTTCTCCAGGCTGTGGAAAGTCTCTGATCCAATTCTCTTCCAAATGACCTTGATCGCTGCTCTGTTGCCTGCTGTTCTTGGCCACCACCACCACCACCACTTATGTTGCCCTGAACCAAAGCTAAATAATGGTGAAATCACTCAACACAGGAAAAGTCGTCCTGCCAATCACTGTGTTTATTTCTATGGAGATGAGATTTCATTTTCATGTCATGAGACCAGTAGGTTTTCAGCTATATGCCAAGGAGATGGCACGTGGAGTCCCCGAACACCATCATGTGGAGACGAGACCCCCGAAGGCTGTGAACAAGTGCTCACAGGCAAAAGACTCATGCAGTGTCTCCCAAACCCAGAGGATGTGAAAATGGCCCTGGAGGTATATAAGCTGTCTCTGGAAATTGAACAACTGGAACTACAGAGAGACAGCGCAAGACAATCCACTTTGGATAAAGAACTATAA(配列番号9)
【0338】
ATGCACCCCCCAAAAACTCCATCTGGGGCTCTTCATAGAAAAAGGAAAATGGCAGCCTGGCCCTTCTCCAGGCTGTGGAAAGTCTCTGATCCAATTCTCTTCCAAATGACCTTGATCGCTGCTCTGTTGCCTGCTGTTCTTGGCCACCACCACCACCACCACTTATGTTGCCCTGAACCAAAGCTAAATAATGGTGAAATCACTCAACACAGGAAAAGTCGTCCTGCCAATCACTGTGTTTATTTCTATGGAGATGAGATTTCATTTTCATGTCATGAGACCAGTAGGTTTTCAGCTATATGCCAAGGAGATGGCACGTGGAGTCCCCGAACACCATCATGTGGAGACGAGACCCCCGAAGGCGCTGAACAAGTGCTCACAGGCAAAAGACTCATGCAGGCTCTCCCAAACCCAGAGGATGTGAAAATGGCCCTGGAGGTATATAAGCTGTCTCTGGAAATTGAACAACTGGAACTACAGTAA(配列番号11)
【0339】
細胞培養とPRPベースの治療
健康なドナーからの総血液をBlood and Tissue Bank(スペイン、バルセロナ)で取得し、Ficoll-Paque密度遠心分離(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)をした後にPBMCを分離した。Bellvitge University Hospitalの腎臓病棟に由来する炎症(flare)を経験したループス腎炎患者は、入院時に採血を受け、健康なドナーについて説明したようにPBMCを得た。この研究は、施設のガイドラインとヘルシンキ宣言に従ってIDIBELLの倫理委員会によって承認され、患者の書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0340】
単球(Mo)を、モノクローナルマウス抗ヒトCD14抗体(MACS, Miltenyi Biotec社製, Auburn, CAまたはEasySep(登録商標)Human CD14 Positive Selection Kit, StemCell Technologies社製, Grenoble, France)と結合したコロイド状超常磁性マイクロビーズを用いて精製し、Perfect Count microspheres(Cytognos SL社製, Salamanca, Spain)を用いてカウントした。CD14+細胞の純度は、CD14染色およびフローサイトメトリー分析(FACSDiva ソフトウェア(Becton Dickinson社製, Franklin Lakes, NJ)を備えたFACSCanto IIフローサイトメーター)によって試験され、PBMCの数および総CD14+細胞の数が評価された(>90%CD14+)。
【0341】
単球を、37℃、5%のCO下で、100mg/mlのストレプトマイシン、100IU/mlのペニシリン、2mMのL-グルタミン(すべてInvitrogen社製, Carlsbad, CA)および10%熱不活化FBS(Life technologies社製, ThermoFischer, Carlsbad, CA)を添加したRPMI1640(Gibco社製, ThermoFisher, Waltham, MA, USA)(完全培地)中で24ウェル培養プレート(Jet Biofil社製, Guangzhou, China)に1×10細胞/500μlで播種した。単球由来DC(MoDC)は、ベルギーのカンペンハウトにあるGentaur社の完全RPMI1640培地とGM-CSF(800IU/ml)およびIL-4(500IU/ml)とで単球培養物を補って生成された。単球由来の分化していないマクロファージ(M0)は、GM-CSF(50ng/ml)(Gentaur社製)またはM-CSF(50ng/ml)(MACS社製, Miltenyi Biotec, Auburn, CA)と共に6日間インキュベーションすることによって生成された。
【0342】
PRPベースのタンパク質は、0日目に、示された濃度で分化中の単球に添加された。DC成熟の場合、未処理またはPRPベースの分子で処理したiDCを、5μg/mlのLPS(エシェリヒア・コリ055.B5、Sigma Aldrich社製, Merck, Darmstadt, Germany)または10μg/mlのGardiquimod(イミダゾキノリン化合物;TLR7リガンド)(Invivogen社製, San Diego, CA)で5日目にさらに48時間刺激した。M1(古典的活性化)およびM2(代替活性化)マクロファージ分極の場合、6日目のM0細胞をLPS(40ng/ml)(Sigma-Aldrich社製)およびγ-IFN(40ng/ml)(Invitrogen社製, Carlsbad, CA)と共に(M1)、またはIL-4(40ng/ml)(Invitrogen社製)と共に(M2)、2日間さらにインキュベートした。
【0343】
さらに、PRP-HO7およびPRP6-HO7免疫調節活性におけるヒト血清の影響を評価するために、ヒトMoDCを、示されたそれぞれの濃度のPRPベースタンパク質で処理し、それらの分化と成熟の過程を通して50%の熱不活化ヒト血清と共培養した(56℃、1時間)。
【0344】
抗体およびフローサイトメトリー
細胞表面の表現型を、以下のmAbを用いて分析した:FITC結合抗HLA-DR(Immu-357)、FITC結合抗CD83(HB15a)(Becton Dickinson社製, Franklin Lakes, NJ)、FITC結合抗CD14(TUK4)、PE結合抗CD40(HB14)、PE結合抗CD80(2D10)、PE結合抗CD86(FM95)、PE結合抗CD11b(M1/70.15.11.5)、APC-コンジュゲート抗CD64(10.1.1)およびAPCコンジュゲート抗CD209(REA617)(Miltenyi Biotec社製, Bergisch Gladbach, Germany)、およびAlexa Fluor 488コンジュゲート抗CCR7(G043H7)(Biolegend社製, San Diego, CA)。FITC結合抗IgG1(IS5-21F5)、FITC結合抗IgG2b(IS6-11E5.11)、FITC結合抗IgG2a(S43.10)、PE結合抗IgG2b(IS6-11E5.11)およびAPC結合IgG1(IS5-21F5)(Miltenyi Biotec社製)、PE結合抗IgG1(PPV-06)(EuroBioSciences GmbH製, Friesoythe, Germany)、およびAlexa Fluor 488結合抗IgG2aκ(MOPC-173)(Biolegend社製)をそれぞれのアイソタイプコントロールとして用いた。
【0345】
PBSで洗浄した後、細胞を100mlのFACSバッファー(1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)中の3μlのMoAb/10細胞を用いて室温で15分間染色した。破片を除くために、前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)パラメーターに従ってセルをゲート制御した。7-アミノアクチノマイシンD(ThermoFischer社製, Carlsbad, CA)による染色も行われ、それらの生存状態が評価された。染色された細胞は、FACSCanto IIフローサイトメーター(BectonDickinson社製)を用いて分析された。その後の分析では、FlowJoソフトウェア(Flowjo LLC製, Ashland, OR)を用いた。
【0346】
エンドサイトーシス活性
iDCのエンドサイトーシスを測定するために、2×10細胞/mlを100μlのPBSに再懸濁し、4μlのBODIPY FL結合DQ-オボアルブミン(1mg/ml、DQ-OVA、Molecular Probes社製, Leiden, Netherlands)と共に37℃または0℃で30分間インキュベートした(受容体依存性エンドサイトーシス)。1mlの冷却FACSバッファーを添加することによりインキュベーションを停止させた。細胞を冷却FACSバッファーで2回洗浄し、フローサイトメトリーを用いてそれらの蛍光を分析した。
【0347】
走化性
PRP-HE8、PRP-HO7またはPRP6-HO7の存在下で分化および成熟(LPSで48時間)したDCを、トランスウェルアッセイを用いて、CCL21ケモカインへの移動(migration)について試験した。簡単に説明すると、トランスウェルプレート(孔径8.0μmのポリカーボネートフィルター;Costar社製, Corning, NY)の下部チャンバーに、CCL21(200ng/ml)を含むかまたは含まない完全RPMI1640培地400μlを充填した。100μlの完全RPMI1640培地中の合計1.6×10個のDCを上部チャンバーに入れ、細胞を37℃で2時間インキュベートした。下部チャンバーに移動した細胞を回収し、フローサイトメーターでカウントし、1.5分の一定期間のイベントを取得した。すべての刺激条件の移動アッセイを、2つのウェルで行った。値は、移行されたセルの総数として示される。
【0348】
差次的遺伝子発現分析
RNeasy Mini Kit(Qiagen社製Hilden, Germany)を用いて、未処理ならびにPRP-HE8処理、PRP-HO7処理およびPRP6-HO7処理したiDC/M0マクロファージからのトータルRNAを抽出した。高容量cDNAアーカイブキット(Applied BioSystems社製, Carlsbad, CA)を用いて逆転写を行った。選択された遺伝子転写物は、リストに記載された(inventoried)対応するTaqMan Gene Expression Assays(Applied BioSystems社製)を用いたRT-qPCRによって個々のサンプルで分析された。定量化は、ΔΔCt法によって行われた。mRNA存在量の相対的な倍率変化は、内因性参照転写物としてPPIAを用いた式2-ΔΔCtを用いて計算した。
【0349】
DCサイトカイン分泌
ヒトのIL-12p70およびTNF-αの濃度は、C4BPアイソフォームまたはPRPベースタンパク質で処理されたDC上清から、それぞれのDuoSet Elisaキット(R&D Systems社製, Minneapolis, MN, USA)を製造元の指示に従って用いて決定された。
【0350】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析
PRPベースタンパク質は、還元条件下および非還元条件下で12%SDS-PAGEによって分離された。ゲルをBlue Safe(NZYTech社製, Lisboa, Portugal)に15分間浸し、水で脱色した。
【0351】
ウエスタンブロット分析では、PRPベースのタンパク質を4~12%勾配のSDS-PAGE(NuPAGE Bis-Tris 4~12% Mini Gels、Invitrogen社製)で還元条件下および非還元条件下で分離し、PVDFメンブレンに転写した。ブロッキング後、メンブレンを一次抗体でプローブした:1:2000希釈したポリクローナルPK9008ウサギ抗C4BP(Anna Blomから譲受)、および1:4000希釈した6×Hisモノクローナル抗体(Clontech社製, Mountain View, CA, USA)、次いで1:2000希釈したポリクローナルヤギ抗ウサギIgGHRP(P0448、Dako社製, Agilent, Santa Clara, CA, USA)および1:2000希釈したポリクローナルヤギ抗マウスIgG HRP(P0447, Dako社製, Agilent, Santa Clara, CA, USA)をそれぞれ添加した。検出は、ChemiDoc Imager(Bio-Rad社製, Hercules, CA, USA)を用いて、強化化学発光(ECL)(Pierce社製, ThermoFischer, Carlsbad, CA, USA)により行われた。
【0352】
C4b補因子活性アッセイ
補体C4b(8.9μg/ml)および第I因子(4.4μg/ml)(Merck社製, Darmstadt, Germany)を、総量60μlの低塩緩衝液(pH7.4および25mM NaClの25mMリン酸緩衝液)中のC4BPアイソフォーム(0.6nMまたは6nM)と混合し、37℃で30分間インキュベートした。還元SDSサンプルバッファーを添加し、C4b断片を4~12%勾配のSDS-PAGE(NuPAGE Bis-Tris 4~12%Mini Gels, Invitrogen, ThermoFischer, Carlsbad, CA, USA)で分離し、1:2000希釈した抗ヒトC4d MoAb(Quidel社製, San Diego, CA, USA)、およびそれに続く1:2000希釈したポリクローナルヤギ抗マウスIgG HRP(Dako社製, Agilent technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて、0.05%のTBS-Tween、1%のBSA、0.02の%NaN中でC4b断片のウエスタンブロット分析を行った。
【0353】
サイトカインアレイ
未処理、PRP-HO7処理およびPRP6-HO7処理したM1マクロファージ(100μlの細胞上清)の代表的なサンプルを、Proteome Profiler Array「Human Cytokine Array Panel A」キット(R&D Systems社製)を用いて、製造元の指示に従って分析し、36種のサイトカイン、ケモカインおよび急性期タンパク質の相対レベルを決定した。各ドットの密度はQuantity One(登録商標)ソフトウェアで定量化され、関連する各サイトカインと治療の正規化された平均ピクセル密度として表示された。
【0354】
統計分析
統計分析および科学的グラフ化は、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad software, Inc製, La Jolla, CA)を用いて行った。Dunnett法を用いて複数の比較のために修正された反復測定一元配置分散分析を行って、参照条件に対して異なる実験条件下でMFIと細胞数のデータを対比した。サイトカインレベルを比較するために、対応のあるt検定を行った。処理された細胞と処理されていない細胞との間の相対的な遺伝子発現レベルは、1サンプルのt検定を用いて分析された。Holm-Sidak法を用いて多重比較を補正した二元配置分散分析を適用して、時間経過実験を評価した。データは平均値+SDとして表される。すべての場合において、P値<0.05が有意であると見なされる。
【0355】
実施例1:PRP6-HO7の物理化学的特徴
PRP6-HO7は、生理学的タンパク質PRP-HO7に由来し、可溶性補体調節因子であるヒトC4BPのマイナーアイソフォームであり、PRP-HO7と同様の空間配置でα鎖のCCP6ドメインをオリゴマー化ドメインと結合する(図1および2)。これにより、この新規組換えタンパク質のサイズが小さくなり(C末端でC4BPオリゴマー化ドメインに結合し、抗体よりも小さい放射状のクモ状のホモオリゴマーを形成する7個のCCP6ドメイン鎖で構成される100kDaのコンパクトな対称ユニット)、体液中の抗体と類似またはさらに優れた安定性(血漿半減期の延長)がもたらされ;かつIgMタイプおよびIgAタイプの抗体と同様に、免疫調節シグナル伝達のための特定の受容体のナノクラスタリングと関係すると考えられている、低ナノモル範囲(データは示していない)のKdを有する潜在的な表面受容体との協調的で高親和性の相互作用が可能となる。C末端のオリゴマー化足場は、分子間ジスルフィド結合と、複合体の並外れた熱力学的安定性に寄与する静電相互作用の層によって安定化される(Hofmeyer et al. (2013) J. Mol. Biol. 425: 1302-1317)。さらに、PRP6-HO7は、その前駆体であるPRP-HO7とは異なり、グリコシル化されていないため、真核細胞(以下に示す)から酵母または細菌細胞(データは示していない)に至るまで、様々な発現系での産生とさらなる精製が可能である。
【0356】
最後に、CCP6ドメインのみを含む単純化された構造のため、PRP-HO7と比較して、PRP6-HO7の投与によっては感染感受性が増加しない。PRP-HO7α鎖は様々な細菌性病原体の表面タンパク質に結合し(Blom et al. (2004) Mol. Immunol. 40: 1333-1346)、宿主の補体調節因子を乗っ取り、その後補体活性化を下方調節する。したがって、PRP-HO7が、細菌の病原性因子として、(主にCCP1~CCP4を介して)病原体に結合する(Blom et al. (2004) Mol. Immunol. 40: 1333-1346)、および(CCP8を介して)プラスミノーゲンに結合する(Agarwal et al. (2015) J. Biol. Chem. 290: 18333-18342)という事実の本質的側面は、自己免疫疾患の免疫調節剤として補体阻害剤を用いることを計画している間、それを考慮しなければならないということにある。
【0357】
この点に関して、また、C4BPのCCP6ドメインをモノマーとして単独で、または逆に、その生理学的起源に類似した7量体のオリゴマー化形態で、PRP-HO7に起因する抗炎症および免疫調節活性を維持するかどうかを評価(Olivar et al. (2013) J. Immunol. 190: 2857-2872)するために、PRP6-HO7およびPRP6-NOがHEK293細胞で産生され、その上清から精製された(図3)。予想された通り、PAGEおよびクーマシーブルー染色とウエスタンブロット分析との両方で示されるように、PRP6-HO7は、14.3kDaの7個のモノマー鎖からなる100kDaのホモオリゴマー構造に折りたたまれており、C4BPのCCP6ドメインおよびC末端オリゴマー化ドメインを含んでいた。一方、PRP6-NOは、非還元条件下ではオリゴマー化できず、2つの必須フォールディングCys残基(C498A/C510A)の置換と、C4BPオリゴマー化ドメインのC末端からの13個のC末端アミノ酸の切断により、12.7kDaの単一モノマーとして残存した(Kask et al. (2002) Biochemistry 41: 9349-9357)。
【0358】
実施例2:PRP6-HO7はDCの活性化表現型を下方調節する
PRP-HE8およびPRP6-NOはどちらも、LPS成熟DCにおけるDC活性化マーカーCD83およびDC共刺激分子CD86の発現に影響を与えなかった。逆に、PRP-HO7と同様に、PRP6-HO7はこれらのマーカーを大幅に下方調節した(図4)。
【0359】
一方で、DCの抗原内在化能力が、両方の自己消光DQ-OVA(マンノース受容体媒介エンドサイトーシスマーカー)のフローサイトメトリーによって評価された。したがって、iDCのエンドサイトーシス活性は、PRP-HO7またはPRP6-HO7のいずれかで処理することによって有意に増加したが(図5)、単量体のPRP6-NOによっても、不活性分子PRP-HE8によっても増加しなかった。
【0360】
次いで、本発明者らは、DC表現型に対する異なるPRPタンパク質の効果が、サイトカイン(TNF-αおよびIL-12p70)のそれらの放出の変化を伴うかどうかを評価した。未処理のiDCと比較して、炎症性サイトカインのそれぞれの分泌は、iDCがLPSで成熟した時に上方調節された。PRP-HE8およびPRP6-NOの両方で前処理されたDCは、成熟時に未処理のDCと同じレベルのサイトカインを分泌した。対照的に、PRP-HO7およびPRP6-HO7の両方で前処理すると、IL-12p70の放出が阻害され、TNF-αの放出が有意に減少した(図6)。したがって、LPS媒介DC刺激によるTh1炎症誘発性サイトカインの産生は、PRP6-HO7で処理したDCによって有意に減少した。
【0361】
異なるPRP分子で処理されたDCは、アネキシンV/7-ADD染色によって評価されるように、分化/成熟プロセス全体を通じて高い生存率を維持し、LPS媒介DC成熟の48時間後に10%未満のアポトーシス細胞の証明された(データは示していない)。
【0362】
まとめると、これらのデータは、単量体のPRP6-NOではなくオリゴマーのPRP6-HO7が、抗炎症性および寛容原性の表現型に向けて炎症誘発性DCの分化/成熟を改変する可能性があることを示す証拠である。
【0363】
実施例3:PRP6-HO7は補体阻害活性を欠く
C4BPの主要な調節機能の1つは、セリンプロテアーゼ第I因子がC4bを不活性化するための補因子として機能することであり、これは補因子活性とも呼ばれる。PRP6-HO7が、PRP-HO7α鎖のCCP1~CPP3ドメインに割り当てられる補体阻害活性を効果的に欠いていることを確認するために、本発明者らは、溶液中でのC4bの第I因子媒介性切断に対するその寄与を評価する比較C4BP補因子活性アッセイを行った。したがって、PRP6-HO7ではなく、PRP-HE8およびPRP-HO7の両方が、テストされた濃度のいずれにおいてもC4bのα’鎖の第I因子切断を促進し、70kDaの部分切断断片であるα3-C4dおよび小さな断片C4d(45kDa)を生成した。(図7)。
【0364】
実施例4:PRP6-HO7はDCにおける表面活性化マーカーの発現に影響を与える
本発明者らは、PRP6-HO7が、CD14、HLA-DR、CD40、CD80、CD83およびCD86を含む、異なる単球およびDC表面マーカーの発現に影響を与えることができるかどうかを評価した。PRP-HE8はLPS成熟DCにおいて上記マーカーの発現に影響を与えなかったのに対し、PRP-HO7およびPRP6-HO7はいずれも、上述のようにCD83およびCD86だけでなく、共刺激分子であるCD80およびCD40も有意に下方調節した。。逆に、DCにおけるHLA-DRおよびCD14の発現は、PRP-HO7およびPRP6-HO7の両方の処理によって有意に変化しなかった(図8)。
【0365】
これらのデータは、PRP6-HO7が、様々な細胞表面マーカーの発現パターンによって判断されるように、炎症誘発性DCの分化/成熟を改変する可能性があることを裏付けるものである。対照的に、5~7日目(成熟)までインキュベートしたPRP6-HO7単独もPRP6-HO7およびLPSも、DC表面マーカーの発現に影響を与えなかった、すなわちDCが分化していた(データは示していない)。
【0366】
実施例5:ヒト血清はPRP6-HO7の免疫調節活性を阻害しない
より複雑な環境におけるPRP6-HO7の挙動を推測するために、本発明者らは、50%ヒト血清の存在下で分化およびLPS成熟したDCにおけるCD83およびCD86表面マーカー発現を分析した。PRP-HO7と同様に、PRP6-HO7は、用量依存的に上記のマーカーを有意に下方調節することができた(図9)。したがって、ほぼ生理学的な条件下で、PRP6-HO7は、免疫調節に関して、その生理学的対応物であるPRP-HO7と少なくとも同じくらい活性であった。
【0367】
実施例6:PRP6-HO7は正常な個体およびループス腎炎患者の両方のDCにおけるTLRの発現を調節する
PRP-HO7およびPRP6-HO7の両方で処理されたDCがGardiquimod(TLR7アナログ)曝露によって成熟した場合、DCTLR4リガンドLPSとインキュベートしたDCでの類似の細胞表面マーカーの挙動(例えば、有意なCD83およびCD86の下方調節)が観察された(図10)。TLR7は、全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患の加速に重要な役割を果たす。重要なことに、ループス腎炎の発赤を経験しているSLE患者から分離されたDCを用いても同じ傾向が認識されたが、一部のDCマーカーでは、利用可能なサンプル数が限られているため、統計的有意性を達成できなかった(図11)。まとめると、これらのデータから、PRP6-HO7が正常な個体と活性疾患のSLE患者との両方におけるTLR4およびTLR7の発現を積極的に調節していることが示唆される。
【0368】
実施例7:PRP6-HO7はDCの走化性を変化させる
成熟シグナルは、リンパ節指向ケモカインへの移動等の、別個のDC機能の発現を決定する。PRP-HO7およびPRP6-HO7の両方による治療は、ケモカイン受容体CCR7の発現を下方調節した。次いで、表面CCR7の発現が減少すると、LPSで成熟したDCのケモカインCCL21への移動が大幅に減少した(図12)。対照的に、未処理およびPRP-HE8で処理されたDCの両方のLPS成熟により、CCL21に応答して最大の移動が誘発された。
【0369】
実施例8:PRP6-HO7に曝露されたDCは転写レベルでの「find me」受容体を上方調節し、PTGER3およびEGLN3を下方調節する
炎症性単球由来iDCの分子シグネチャーに一致するいくつかの重要な転写物に対するPRP6-HO7の効果をさらに評価するために、本発明者らは、急性炎症の重要なメディエーターであるPGE受容体(EP3;PTGER3)をコードする遺伝子(Kawahara et al. (2015) Biochim. Biophys. Acta 1851: 414-421);およびプロリルヒドロキシラーゼ3(EGLN3;PHD3)の発現をRT-qPCRによって分析した。最近、骨髄細胞におけるPHD3の喪失が炎症反応を弱めることが示された(Beneke et al. (2017) Cell Death Dis. 8: e2976)。したがって、PTGER3およびEGLN3の両方の転写産物は、PRP6-HO7によって優先的に下方調節された(図13)。対照的に、iDCのすべての既知の「find me」受容体の転写プロファイリングは、PRP6-HO7ではなくPRP6-HO7による処理下でのFPR2、P2RY2およびS1PR1の有意な上方調節を明らかにし、それによりPRP6-HO7で処理されたDCからの耐性応答を媒介するエフェロサイトーシス能力の増大が示唆された(Kolb et al. (2017) Trends Immunol. 38: 705-718)(図14)。
【0370】
実施例9:PRP6-HO7は単球由来マクロファージの分極表現型を下方調節する
マクロファージは広く分布している先天性免疫細胞であり、侵入する病原体に対する宿主の防御、ならびに免疫恒常性の維持、炎症への寄与、創傷治癒および組織修復の促進に中心的な役割を果たす。これらは、局所的な微小環境からのシグナルの影響下で成熟する動的細胞である。
【0371】
本発明者らは、ヒト末梢血単球を分化していないマクロファージ(M0)に分化させ、次いで、それらをLPSおよびIFN-γを用いてM1(古典的活性化マクロファージ)に、そしてIL-4を用いてM2(代替活性化マクロファージ)に極性化した。M1およびM2マクロファージは、フローサイトメトリーによってそれぞれCD80CD64およびCD11bCD209として識別される。PRP-HO7、特にPRP6-HO7のプレインキュベーションによって、M1(CD80およびCD64)およびM2(CD11bおよびCD209)の両方の分極マーカーの発現を有意に下方調節することができた(図15)。したがって、マクロファージの未分化様の表現型の維持をもたらす、M1またはM2表現型に対するマクロファージの極性化/活性化の阻害は、PRP6-HO7の免疫調節活性によって引き起こされ、またPRP-HO7免疫調節活性によってはほとんど引き起こされず、PRP-HE8免疫調節活性によっては引き起こされなかった。
【0372】
実施例10:PRP6-HO7はM0非分化マクロファージにおける「find me」受容体を上方調節し、ALCAM、SLC16A1およびLMNB1の発現を下方調節する
DCの場合と同様に、M0に向けて分化する単球由来マクロファージの分子シグネチャーに一致するいくつかの重要な転写産物に対するPRP6-HO7の影響を調べるために、本発明者らは、活性化単球において上方調節される活性化白血球細胞接着分子(ALCAM;CD166)(Levesque et al. (1998) Arthritis Rheum. 41: 2221-2229);オートファジーによって誘導される乳酸トランスポーターであるSLC16A1(Bao et al. (2017) Theriogenology 87: 339-348);および核オートファジータンパク質LC3と相互作用する核ラミナの重要な成分であるLMNB1(Dou et al. (2015) Nature 527: 105-109)をそれぞれコードする遺伝子の発現をRT-qPCRによって順次分析を行う経時的アッセイを行った。これらの3つの転写産物は、主にPRP6-HO7の作用により、単球からマクロファージへの分化プロセスを通じて有意に下方調節されていることが分かった(図16)。したがって、SLC16A1およびLMNB1の両方の下方調節によって、PRP6-HO7によって媒介されるオートファジーが阻害されることが示唆される。対照的に、M0マクロファージにおけるすべての既知の「find me」受容体または嗅覚受容体の転写プロファイリングは、PRP6-HO7処理下でCCR2、CX3CR1、CXCR1、FPR2およびP2RY2を有意に上方調節するが、PRP-HO7またはPRP-HE8処理ではしないことが明らかにされた(図17)。最近の研究では、オートファジーおよび食作用をもたらす経路間の別の相互作用が明らかにされた。ATG7欠損マクロファージは、p62の蓄積により、クラスAスカベンジャー受容体のレベルが上昇していることが分かった(Cadwell and Philips (2013) Immunity 39: 425-427)。これらの受容体の上方調節は、食作用の取り込み率の増大および細菌の取り込みの増大をもたらし、オートファジーの喪失が食作用を増大する可能性があることを明らかにした(Bonilla et al. (2013) Immunity 39: 537-547)。
【0373】
実施例11:PRP6-HO7はM1炎症性マクロファージのサイトカインシグネチャーを調節する
最後に、本発明者らは、M0からM1へのマクロファージ分極時の細胞上清におけるサイトカインの誘導、およびM1マクロファージによって放出される炎症性サイトカインのプロファイルに対するPRP-HO7およびPRP6-HO7処理の結果を調べた。注目すべきことに、36種のサイトカイン、ケモカインおよび急性期タンパク質を含むサイトカインアレイによって、未処理のM1細胞に関してPRP-HO7およびPRP6-HO7の作用を介してCCL1、CCL2、MIP-1、CCL5、CXCL1、IL-6およびTNF-αの異なる下方調節が示された。さらに、CCL1およびMIP-1は、PRP6-HO7の存在下でより強い下方調節を示した(図18)。したがって、M1マクロファージの極性化時のこれらの炎症性ケモカインの上方調節(Sokol and Luster (2015) Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 7: a016303)は、PRP6-HO7処理によって阻害されるが、PRP-HO7処理によってはほとんど阻害されない。
【0374】
実施例12:PRP6-HO7の酵母精製
PRP6-HO7の対応するDNA配列は、P. pastorisに対してコドン最適化された。合成遺伝子は、BsaIクローニングサイトを用いて、pBGZαベクター(Bioingenium, Barcelona Science Park, Baldiri Reixac, 15-21 (Helix building) 08028 Barcelona)にクローニングされた。発現ベクターpBGZαには、GAPプロモーターおよびAOX転写ターミネーターが含まれていた。さらに、クローン選択用のゼオシン耐性カセットをコード化し、必要に応じて将来の耐性表現型復帰のためにloxP部位に隣接させた。さらに、ベクターは、プラスミド選択および大腸菌における増殖のために、それぞれアンピシリン耐性遺伝子およびpUC複製起点を有していた。最後に、プロモーターと遺伝子コード配列との間のS. cerevisiaeのα交配因子分泌シグナルにより、分泌経路に向けてタンパク質を発現することを可能とした。
【0375】
工業規模での最終的な生産プロセスにおけるメタノールの使用を回避することを目的として、構成的GAPプロモーターの下で遺伝子発現を制御することが決定された。異種タンパク質を分泌するP. pastorisの能力を利用して、目的の遺伝子をS. cerevisiaeのα-交配因子(配列番号62)をインフレームでクローン化した。
MRFPSIFTAVLFAASSALAAPVNTTTEDETAQIPAEAVIGYLDLEGDFDVAVLPFSNSTNNGLLFINTTIASIAAKEEGVSLDKREAEA(配列番号62)
【0376】
シグナルペプチドを含む組換えポリペプチドの配列は配列番号63であった。
MRFPSIFTAVLFAASSALAAPVNTTTEDETAQIPAEAVIGYLDLEGDFDVAVLPFSNSTNNGLLFINTTIASIAAKEEGVSLDKREAEAHHHHHHLCCPEPKLNNGEITQHRKSRPANHCVYFYGDEISFSCHETSRFSAICQGDGTWSPRTPSCGDETPEGCEQVLTGKRLMQCLPNPEDVKMALEVYKLSLEIEQLELQRDSARQSTLDKEL(配列番号63)
【0377】
次いで、酵母を培養し、ピキア・パストリスからタンパク質を精製した。培養パラメーターは表4に示す通りである。図19は、可視化された精製タンパク質を示す。
【0378】
【表4】
【0379】
実施例13:細菌によるPRP6-HO7の生産
PRP6-HO7のヌクレオチド配列は、E.coliにおける発現のためにコドン最適化され、pUC57プラスミドにサブクローン化され、発現ベクターpET32aにクローン化された。配列番号61の配列はBL-21(D3)株で発現された。図20は、視覚化された精製タンパク質を示す。
【0380】
実施例14
古典的に、化学的に誘発されたDSS大腸炎マウスモデルC57BL/6Jにおいては、大腸炎を誘発するために、分子量35~50kDaの2~5%DSS(w/v)ポリマーがマウスの飲料水に5~8日間溶解された。9日目以降、動物を屠殺し、様々なパラメーターに基づいて評価を行った。
【0381】
評価は、疾患活動性指標(DAI)によって行われた。DAIは、体重減少、直腸出血、便の硬さを定量化するための潰瘍性大腸炎の累積指標である。
【0382】
DSSマウスにおけるこれらすべての観察結果は、ヒトの炎症性腸疾患にも見られる。
【0383】
材料および方法
動物
体重約20gの8週齢の雌のC57BL/6マウス26匹が、Charles River(Sant Cugat del Valles, Barcelona, Spain)から供給された。
【0384】
実験手順の間、動物は耳パンチ(ear punching)によって識別された。
【0385】
環境と管理
到着時に、動物をケージあたり3~4匹のグループに収容した。それらは、12時間の明暗サイクルで、環境制御された部屋(換気、温度22±2℃および湿度35~65%)に保管された。それらは到着日から手順の開始までの間に5日間の順応期間を経た。この期間中、動物の一般的な健康状態を確認するために動物を観察した。維持低脂肪齧歯動物用飼料を動物に自由に与えた。水道水を自由に供給した。
【0386】
動物福祉
動物は、Protection of Vertebrate Animals Used for Experimental and other Scientific Purposes (86/609/EU)の7月30日の政令214/1997に従って維持された。
【0387】
すべての実験手順は、IDIBELLのEthical Committee on human and animal experimentation (CEEA)(手続番号:19003)およびAnimal Experimentation Commission of the Generalitat de Catalunya(カタロニア政府)のDAAM:10561によって承認された。
【0388】
試験物質の識別および準備
PRP6-HO7は、上述したようにして細菌発現系から精製され、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1.0mg/mLに濃縮し、1mLバイアル中で-80℃で保存した。
【0389】
PRP-HO7はヒト血漿から精製され、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で6.2mg/mLに濃縮し、1mLバイアル中で-80℃で保存した。
【0390】
注射の準備:
PRP6-HO7およびPRP-HO7の溶液は、それぞれのストック溶液からDPBSで希釈することにより、所望の濃度0.4mg/mL(60μg用量/マウス)に調製した。製剤は投与直前に調製した。
【0391】
参照物質の識別および準備
ミノサイクリンを0.1%Tween-80+カルボキシメチルセルロース(CMC)(水中0.5%w/v)に5mg/mLの濃度で溶解した。
【0392】
製剤は投与直前に調製した。
【0393】
実験手順
-大腸炎プロトコル(0~9日目)(図21):
大腸炎は、通常の飲料水に2%の濃度でDSS(w/v)を添加することによって誘発され、マウスに自由に与えられた。3日目に、DSS溶液は新しい2%DSS溶液に置き換えられた。
【0394】
5日目に、DSS溶液は9日目まで水道水に置き換えられた。
-ブランク動物(非大腸炎グループ)は、研究全体を通して定期的に水を与えられた(n=4)。
-媒体処理(n=4):DPBSが、4、6および8日目に対照(DSS-大腸炎グループ)の動物に0.15mLの量で皮下注射された。
-PRP6-HO7およびPRP-HO7処理:0.15mLのPRP6-HO7およびPRP-HO7(60μg/各)が、この投与スケジュールで動物に皮下注射された。
・グループPRP6-HO7およびPRP-HO7(n=6/各):4、6および8日目に投与された。
-参照化合物処理(n=6)(0~8日目):
ミノサイクリン(50mg/kg)が、10mL/kgの量で動物に強制経口投与(PO)によって毎日投与された。
【0395】
動物の体重、便中に存在する総血液および便の硬さを各マウスについて毎日記録した。これらのパラメーターにはそれぞれスコアが割り当てられ、各動物の1日の平均疾患活動性指標(DAI)を計算するために用いられた(表5)(Melgar et al. 2005. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 288:1328-38)。9日目に、動物を2%イソフルランで麻酔し、頸椎脱臼により安楽死させた。
【0396】
【表5】
【0397】
統計分析
統計分析および科学的グラフ化は、Graphpad Prism 6ソフトウェア(Graphpad software、Inc、La Jolla、CA、USA)を用いて行われた。体重および臨床スコアデータ(DAI)は、二元配置分散分析(2-way ANOVA)およびそれに続くボンフェローニの事後検定を用いて分析された。データは平均値±SEMとして表される。すべての場合において、P値<0.05が有意であると見なされた。
【0398】
実施例14:DSS誘発性大腸炎のマウスモデルにおけるPRP6-HO7の治療効果
この比較研究の目的は、PRP6-HO7処理が、野生型分子PRP-HO7と比較して、DSS誘発性大腸炎モデルにおいて誘発された腸の炎症を軽減できるかどうかを評価することであった。したがって、PRP6-HO7およびPRP-HO7の両方が、60μg/マウスに皮下投与された。この研究では、抗生物質および化学免疫調節剤のミノサイクリン(Garrido-Mesa et al. 2011. Pharmacol Res. 63:308-19;Garrido-Mesa et al. 2011. Biochem Pharmacol. 82: 1891-1900)を対照参照処理に用いた。
【0399】
実験中、各マウスについて、動物の体重、下痢の発生および便中に存在する総血液等の臨床パラメーターを評価および収集して、疾患進行スコアまたはDAIを算出した。
【0400】
大腸炎が完全に確立した後、4、6および8日目に60μgの用量で反復的に皮下投与されたPRP6-HO7によって、DSS大腸炎マウスの炎症性病変を回避/軽減することができた。
【0401】
DSSを2%(w/v)の濃度で5日間投与することにより、すでに説明したのと同様に結腸の炎症状態が誘発された(Melgar et al. 2005. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 288:1328-38;Garrido-Mesa et al. 2011. Pharmacol Res. 63:308-19;Randhawa et al. 2014. Korean J Physiol Pharmacol. 18: 279-88)。DSSによって誘発された結腸の炎症過程は、DSS投与後6日目から明らかに観察可能な非大腸炎マウス(ブランクグループ)と比較した場合、ほぼ確実に大腸炎対照グループの動物における食欲不振および下痢の発生に起因して、マウスの体重の減少に関連していた。これらの違いは、実験の5日目と6日目との間に始まり、実験の過程で徐々に増大し、炎症および大腸炎の進行の重症度と相関していた(図22)。
【0402】
体重減少と一致して、DAIスコアも研究期間を通して対照大腸炎マウスで漸進的に増大した(図23)。
【0403】
すべてのDSS治療マウスが、実験の最初の5日間において中等度の便秘を経験した。この期間の後、ほとんどのDDS治療動物において、便は硬さを失い、下痢が続いた。
【0404】
この実験プロトコルでミノサイクリンを毎日投与した後に得られた結果により、この化合物が腸の抗炎症効果を示したことが明らかになったが、8日目において統計的に有意ではなかった。対照的に、DSS投与マウスにおいて腸の損傷がすでに明らかである場合、大腸炎誘発の4日目から開始される皮下に対するPRP-HO7またはPRP6-HO7の3回投与による処理によって、体重減少を有意に阻害し、便の硬さを維持することができた。重要なことに、PRP6-HO7はPRP-HO7よりもさらに効果的であり、これは、未処理の大腸炎マウスとの比較において、最初のPRP6-HO7処理の48時間後にDAIの有意な減少が観察され、それが研究の終わり(8日目および9日目)に非常に有意になったことからも証明され(図23)、主に体重減少の抑制および便の硬さの向上に関連している。実際、PRP-HO7およびPRP6-HO7のグループでは、対照グループと比較して炎症反応が有意に減少しており、体重減少の抑制およびDAIの値の目に見える減少を示した(図22および図23)。
【0405】
統計的差異は、PRP-HO7およびPRP6-HO7の両方を対照大腸炎動物と比較した場合の体重減少のパーセンテージ(8日目および9日目対0日目)でも証明された。したがって、PRP6-HO7の治療的投与は、大腸炎の重症度を軽減する有意な能力を示した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A)】
図15B)】
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
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【国際調査報告】