(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】飲料をろ過するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/70 20060101AFI20230213BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20230213BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20230213BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230213BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230213BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20230213BHJP
A23L 3/00 20060101ALN20230213BHJP
C12C 11/11 20190101ALN20230213BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20230213BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20230213BHJP
C12G 3/08 20060101ALN20230213BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230213BHJP
【FI】
A23L2/00 K
A23L2/00 N
A23L2/02 E
A23L2/02 A
B01D61/14 500
B01D61/58
B01D61/02 500
A23L3/00
C12C11/11
A23F3/16
A23F5/24
C12G3/08
A23L5/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022526283
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020061320
(87)【国際公開番号】W WO2021102160
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オッテルスタッター, マシュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュリカハンデ, プラシャント ヴィー.
【テーマコード(参考)】
4B021
4B027
4B035
4B117
4B128
4D006
【Fターム(参考)】
4B021LA42
4B021LP01
4B021LP10
4B021LW06
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC05
4B027FP80
4B027FP85
4B027FQ16
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4D006GA02
4D006GA06
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4D006KA52
4D006KA55
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4D006MA04
4D006MB05
4D006PA01
4D006PB12
4D006PC17
(57)【要約】
ろ過飲料を調製する方法は、クロスフロー限外ろ過装置を使用して原飲料をろ過して、固形分及び液体分を生成することと、固形分を60℃以上の温度に加熱して、低温殺菌固形分を生成することと、1μm以下の分画サイズを有するマイクロフィルタを通して液体分を精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することと、低温殺菌固形分と精密ろ過液体分とを配合して、ろ過飲料をもたらすこととを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過飲料を調製する方法であって、
クロスフロー限外ろ過装置を使用して原飲料をろ過して、固形分及び液体分を生成することと、
前記固形分を60℃以上の温度に加熱して、低温殺菌固形分を生成することと、
1μm以下の分画サイズを有するマイクロフィルタを通して前記液体分を精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することと、
前記低温殺菌固形分と前記精密ろ過液体分とを配合して、前記ろ過飲料をもたらすことと
を含む方法。
【請求項2】
前記原飲料は、原ジュースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原飲料は、80重量%~95重量%の含水量を有し、及び前記ろ過飲料は、80重量%~95重量%の含水量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原飲料は、第一の含水量を有し、及び前記ろ過飲料は、第二の含水量を有し、前記第二の含水量は、前記第一の含水量の±10%以内である、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体分は、前記原飲料のビタミンC濃度の75%以上であるビタミンC濃度を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロスフロー限外ろ過装置は、10kDa~300kDaの分画サイズを有するメンブレンを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体分は、8重量%~20重量%の溶解固形物を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固形分は、40重量%~90重量%の固形物を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体分は、第一の微生物含量を有し、及び前記精密ろ過液体分は、第二の微生物含量を有し、前記第二の微生物含量は、前記第一の微生物含量から少なくとも5log減少している、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記原飲料は、原飲料微生物含量を有し、及び前記ろ過飲料は、最終的な微生物含量を有し、前記最終的な微生物含量は、前記原飲料微生物含量から少なくとも5log減少している、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロフィルタは、ダイレクトフローろ過モードで構成される、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
蒸発によって前記原飲料の一部を濃縮することを含まない、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体分を濃縮するステップを含まない、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記配合することは、前記精密ろ過の直後に行われる、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液体分の熱処理を含まない、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体分の放射線処理を含まない、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフィルタのフィルタメンブレンの完全性を試験することを含む完全性試験をさらに含む、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記完全性試験は、所与の試験圧力で圧力保持試験又はフォワードフロー拡散流量試験を行うことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
逆浸透を使用して前記液体分から水を分離することと、
前記水を前記固形分と混合して、希釈固形分を生成することと、
クロスフロー限外ろ過装置を使用して前記希釈固形分をろ過して、前記固形分及び第二の液体分を生成することと、
前記液体分と前記第二の液体分とを配合することと
をさらに含む、請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
第一の限外ろ過保持液側及び第一の限外ろ過透過液側を含む第一の限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される第一の限外ろ過装置と、
前記第一の限外ろ過保持液側からの流れを受けるように構成され、且つ排出ラインを含むヒータと、
前記第一の限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成されたマイクロフィルタであって、精密ろ過上流側及び精密ろ過ろ液側を含み、且つ1μm以下の分画粒径を有し、ダイレクトフローろ過モードで構成されるマイクロフィルタと、
前記ヒータ排出ライン及び前記精密ろ過ろ液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成されたミキサと
を含むろ過システム。
【請求項21】
前記限外ろ過装置は、10kDa~300kDaの分画サイズを有するメンブレンを含む、請求項20に記載のろ過システム。
【請求項22】
第二の限外ろ過保持液側及び第二の限外ろ過透過液側を含む第二の限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される第二の限外ろ過装置と、
前記第二の限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成された逆浸透メンブレンフィルタであって、逆浸透透過液側及び逆浸透保持液側を含む逆浸透メンブレンフィルタと、
前記第一の限外ろ過保持液側及び前記逆浸透透過液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成された第二のミキサと
をさらに含み、前記ヒータは、前記第二の限外ろ過保持液側からの流れを受けるように構成され、及び前記マイクロフィルタは、前記逆浸透保持液側からの流れを受けるように構成される、請求項20に記載のろ過システム。
【請求項23】
請求項1~19の何れか一項に記載の方法によって作られたろ過液体分を含む飲料。
【請求項24】
5重量%未満又は2重量%未満の浮遊固形物含量を有する、請求項23に記載の飲料。
【請求項25】
前記低温殺菌固形分及び前記精密ろ過液体分からなる、請求項23に記載の飲料。
【請求項26】
請求項1~19の何れか一項に記載の方法によって作られたろ過液体分から基本的になる飲料。
【請求項27】
原飲料、例えば原ジュースを、クロスフロー限外ろ過装置を使用してろ過して、固形分及び液体分を生成することと、前記液体分を、1.2μm以下、1.1μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下及び/又は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有するダイレクトフローマイクロフィルタを使用して精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することとによって作られたろ過液体分を含む飲料。
【請求項28】
熱処理又は放射線処理されていない、1000Da未満の分子量を有する小分子を含み、10CFU/g未満の微生物負荷を有する、請求項27に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年11月21日に出願された米国仮特許出願第62/938,718号明細書の利益を主張するものであり、その開示は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、飲料をろ過するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、ジュースをろ過し、且つ非濃縮ジュースを生成するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
果物、野菜及び他の植物部分から調製される飲料並びに乳飲料は、多くの場合、微生物負荷の軽減及び保存期間の延長のために加工される。このような加工には、加熱(例えば、低温殺菌)が含まれ得る。しかしながら、飲料を加熱すると、その香気プロファイルが変化し、原(未加工)飲料中に存在し得る有益な微量栄養素が劣化し得る。
【0004】
保存期間を延ばすために一般的に低温殺菌される飲料の一例は、オレンジジュースである。オレンジジュースの商業大量生産は、第二次世界大戦中、米国の兵士にビタミンCの豊富な食品を提供する必要性を受けて始まった。最初の冷凍濃縮オレンジジュース製品が発売されたのは、1940年代後期である。濃縮ジュースにより、多くの消費者は、簡便且つ安価にオレンジジュースを摂取できるようになったものの、濃縮物を生成するために使用される加工は、ジュースの香気及び舌触りに望ましくない変化をもたらした。非濃縮(「NFC」)オレンジジュースは、香気及び舌触りの改善された製品を提供するために開発された。しかしながら、NFCジュースでは、濃縮ジュースより香気が改善されたとはいえ、ジュースを低温殺菌して微生物負荷を軽減させる必要性から、依然としてジュース中の多くの香気成分及び他の熱的に不安定な成分、例えばビタミンCの変質が起こる。
【0005】
生のまま絞った低温殺菌されていないジュースは、その優れた香気により、消費者の間でより人気が高まりつつある。しかしながら、低温殺菌などの処理を行わないと、ジュースの微生物負荷により、低温殺菌されたNFCジュースと比較してその保存期間が大幅に短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微生物負荷が軽減され、保存性が改善された飲料を調製するためのシステム及び方法を提供することが求められている。微生物負荷が軽減され、保存性が改善されたNFCジュースを調製するためのシステム及び方法を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ろ過飲料を調製する方法は、クロスフロー限外ろ過装置を使用して原飲料をろ過して、固形分及び液体分を生成することと、固形分を60℃以上の温度に加熱して、低温殺菌固形分を生成することと、1μm以下の分画サイズを有するマイクロフィルタを通して液体分を精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することと、低温殺菌固形分と精密ろ過液体分とを配合して、ろ過飲料をもたらすこととを含む。幾つかの実施形態において、飲料は、果物又は野菜ジュースである。
【0008】
ろ過システムは、限外ろ過保持液側及び限外ろ過透過液側を画定する限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される限外ろ過装置と、限外ろ過保持液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成され、且つ排出ラインを含むヒータと、限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成されたマイクロフィルタであって、精密ろ過上流側及び精密ろ過ろ液側を含み、且つ1μm以下の分画粒径を有し、ダイレクトフローろ過モードで構成されるマイクロフィルタと、ヒータの排出ライン及び精密ろ過ろ液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成されたミキサとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】オレンジジュースの成分の大きさ別のグラフ表現である。
【
図2A】ある実施形態によるろ過方法のフロー図である。
【
図2B】ある実施形態によるろ過システムの系統図である。
【
図3A】ある実施形態によるろ過方法のフロー図である。
【
図3B】ある実施形態によるろ過システムの系統図である。
【
図4A】ある実施形態による
図2B及び3Bのろ過システムで使用される代替的なクロスフロー限外ろ過メンブレンの概略図である。
【
図4B】ある実施形態による
図2B及び3Bのろ過システムで使用される代替的なクロスフロー限外ろ過メンブレンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、飲料をろ過するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、オレンジジュース等の果物及び野菜ジュースをろ過し、且つ非濃縮(「NFC」)ジュースを生成するためのシステム及び方法に関する。本開示は、微生物負荷が軽減され、保存安定性が増大されたNFCジュース(特にオレンジジュース)を調製するためのシステム及び方法を提供する。本開示の方法によって製作されたNFCジュースは、生のまま絞った低温殺菌されていないオレンジジュースと同等の風味プロファイルと、低温殺菌されたNFCオレンジジュースと同等の微生物負荷とを呈する。
【0011】
「飲料」という用語は、本明細書では、人が消費するのに適したあらゆる液体を指すために使用される。飲料の例としては、果物ジュース、野菜ジュース、液体の乳製品(例えば、牛乳)、発酵液体乳製品(例えば、バターミルク)、浸出液体又は抽出物(例えば、紅茶、コーヒー)、発酵液体(例えば、ビール、ワイン、その他)、ブイヨン(例えば、野菜ブイヨン、肉又は骨からとったブイヨン、キノコのブイヨン、その他)等が含まれる。
【0012】
「ジュース」という用語は、本明細書では、果物、野菜又は他の植物部分(例えば、葉、根、塊茎、その他)から得られた液体を指すために使用される。ジュースは、例えば、果物、野菜又は他の植物部分を圧縮又は圧搾することによって得ることができる。ジュースには、果物、野菜又は他の植物部分からの固形分が含まれ得る。
【0013】
「原飲料」及び「原ジュース」という用語は、本開示では、飲料又はジュースを得た後、その飲料又はジュースを濃縮するか、又は病原体を除去若しくは殺滅するためのさらなる加工が行われていない飲料又はジュースを説明するために使用される。例えば、飲料又はジュースは、加熱(例えば、低温殺菌)又は放射線照射されていない。
【0014】
「砂糖」という用語は、本明細書では、単糖類及び二糖類、例えばグルコース、フラクトース、スクロース、その他を指すために使用される。
【0015】
「クロスフロー」という用語は、本明細書では、流体がフィルタメンブレンの表面にわたって流れ、フィルタメンブレンの分画サイズより大きい成分が保持液側に残り、分画サイズより小さい成分がメンブレンを通して透過液側に流れ得る、ろ過モードを指すために使用される。メンブレンにわたる連続流は、保持液側の物質を洗い流し得る。
【0016】
「ダイレクトフロー」という用語は、本明細書では、流体がカートリッジフィルタ等のフィルタ内に流れ、ろ材の分画サイズより大きい成分がフィルタの上流側にとどまり、分画サイズより小さい成分がろ材を通して下流側に流れ得る、ろ過モードを指すために使用される。ダイレクトフローフィルタは、デッドエンドフィルタと呼ばれることもある。ダイレクトフローフィルタは、フィルタを通る流れが逆転されるクリーニング又は洗い流しサイクル中にクリーニングされるか又は洗い流され得る。
【0017】
「低温殺菌する」及び「低温殺菌」という用語は、本明細書では、製品、典型的には液体食品中の病原体を除去するための熱処理を指すために使用される。低温殺菌中、製品は、例えば、複数秒~数分に設定された時間にわたり、少なくとも60℃又は少なくとも70℃等の高温に加熱される。具体的な温度及び時間は、製品の種類、関心対象の病原体及び所望の微生物負荷軽減速度に依存する。
【0018】
「対数減少値」という用語は、本明細書では、log10値として与えられる製品中の微生物数の減少を指すために使用される。例えば、5log減少は、100,000倍の減少を意味するために使用される。対数減少は、微生物培養試験等の何れの適当な方法を用いても特定され得る。
【0019】
「微生物」及び「病原体」という用語は、互換的に使用され、何れも細菌、イースト菌及び糸状菌を広く指す。微生物及び病原体の例としては、腐敗細菌(例えば、アセトバクター(Acetobacter)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)、バチルス(Bacillus)、グルコノバクター(Gluconobacter)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ザイモモナス(Zymomonas)及びザイモバクター(Zymobacter))等の腐敗病原体、イースト菌(例えば、ピキア(Pichia)、カンジダ(Candida)、サッカロミセス(Saccharomyces)及びロドトルラ(Rhodotorula))、糸状菌(例えば、ピキア(Pichia)、カンジダ(Candida)、サッカロミセス(Saccharomyces)及びロドトルラ(Rhodotorula))並びに病気の原因となる病原体(例えば、大腸菌(E.coli)、リステリア(Listeria)、サルモネラ(Salmonella)等)が含まれる。
【0020】
「実質的に」という用語は、本明細書で使用される場合、「有意に」と同じ意味を有し、それに続く用語をその少なくとも約75%、その少なくとも約90%、その少なくとも約95%又はその少なくとも約98%と修飾すると理解され得る。「非実質的に」という用語は、本明細書で使用される場合、「有意ではなく」と同じ意味を有し、「実質的に」の反対の意味、すなわちそれに続く用語をその25%以下、その10%以下、その5%以下又はその2%以下と修飾すると理解され得る。
【0021】
「約」という用語は、本明細書では、当業者が予想する測定値の正常変動を含めるために数値と共に使用され、「ほぼ」と同じ意味を有し、記載された値の±5%等、典型的な誤差を包含すると理解される。
【0022】
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」という用語は、単数の実体のみを指すのではなく、特定の例が例示のために使用され得る一般的分類を含むものとする。
【0023】
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」という用語は、「少なくとも1つ」と互換的に使用される。あるリストに続く「~の少なくとも1つ」及び「~の少なくとも1つを含む」という語句は、そのリスト中の項目のあらゆる1つ及びリスト内の2つ以上の項目のあらゆる組合せを指す。
【0024】
本明細書で使用される限り、「又は」という用語は、文脈上、明確に他の解釈が必要な場合を除き、「及び/又は」を含むその一般的な意味で使用される。「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全部又は列挙された要素の何れか2つ以上の組合せを意味する。
【0025】
端点による数値範囲の引用は、その範囲内に含まれるすべての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含み、10以下は、10,9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3等を含む)。値の範囲が特定の数値「まで」又は「少なくとも」特定の値である場合、その数値は、その範囲内に含められる。
【0026】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、特定の状況下で特定の利益を提供し得る実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で他の実施形態が好ましい場合もあり得る。さらに、1つ又は複数の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有益でないことを示唆するのではなく、特許請求の範囲を含む本開示の範囲から他の実施形態を排除するものでもない。
【0027】
ある実施形態によれば、果物又は野菜ジュース等の飲料をろ過するためのシステム及び方法が提供される。特に、このシステム及び方法は、オレンジジュースをろ過し、且つNFCジュースを生成するために好適であり得る。システム及び方法は、ろ過及び飲料の一部のみの加熱を利用して、飲料中の所望の病原体対数減少値を提供する。最終製品は、生のまま絞った低温殺菌されていない飲料と同等の風味プロファイルを呈し得る処理済み飲料である。処理済み飲料は、低温殺菌されたNFCオレンジジュースと同等の微生物負荷を有し得る。システム及び方法は、従来の方法で加工された同様の飲料と比較して、より高品質でより保存期間の長い飲料を生成することができる。
【0028】
米国食品医薬品局(「FDA」)は、危害分析・重要管理点方式(「HACCP」)を用いてジュースの加工を規制している。特に、FDAは、5log病原体減少工程実行規格を運用しており、これは、生産者が微生物数の5log、すなわち100,000倍の減少を実現するようにジュースを処理しなければならないことを意味する。生産者は、微生物数減少に有効であることが証明されている管理策を用いることができ、例えば定期的試験によって減少の効能を実証しなければならない。
【0029】
特に、オレンジジュースの処理は、少なくとも一部には、浮遊及び溶解固形物並びに香気成分、ビタミン、フラボノイド及び他の植物栄養素を含む、熱に弱い成分の何れの濃度も高いため、難しいことが知られている。オレンジジュースの微生物負荷を軽減させるために使用される既知の処理はまた、香気プロファイルが変化し、熱に弱い成分の少なくとも一部が破壊されるという結果をもたらす。本開示は、熱に弱い成分及び香気成分の実質的部分を保存しながら、微生物負荷を軽減させるシステム及び方法を提供する。
【0030】
ある実施形態によれば、システムは、限外ろ過装置の透過液側に接続され、且つそれと流体連通する(例えば、それからの流れを受ける)ダイレクトフローフィルタを含む。適切に選択された孔径のダイレクトフローフィルタを使用することにより、流体ストリームからの全部又は実質的に全部の微生物が確実に捕捉され、除去される。ダイレクトフローフィルタは、流体ストリーム中の微生物の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%又は少なくとも99.9999%を除去し得る。換言すれば、ダイレクトフローフィルタは、流体ストリームの低温殺菌のために使用され得る。ダイレクトフローフィルタは、その完全性を確認するために、圧力保持試験を用いて試験することもできる。試験に合格したダイレクトフローフィルタであれば、流体ストリームから所望のレベルの微生物除去を確実に行うことができる。換言すれば、ダイレクトフローフィルタを使用する利点は、特定のレベル又は微生物負荷除去が圧力保持試験から保証され得ることである。
【0031】
ある実施形態によれば、システム及び方法は、飲料を2つのストリーム(例えば、固形物ストリーム及び液体ストリーム)に分離することと、2つのストリームを、特定の微生物負荷減少(例えば、5log以上)を確実にするような方法で別々に処理することとを含み、ストリームの少なくとも一方(例えば、液体ストリーム)は、加熱又は放射線照射を含まない方法によって処理される。ある実施形態によれば、固形物ストリームは低温殺菌によって処理され得、液体ストリームは、精密ろ過によって処理され得る。ストリームは、その後、配合され得る。
【0032】
ある実施形態によれば、システム及び方法は、確実に5log減少を実現する。例えば、システム及び方法は、完全性試験を含み得る。完全性テストの一例は、所望の減少(例えば、5log以上)を提供するフィルタの分画サイズを選択することと、メンブレンの衛生化プロセスの終了時にダイレクトフローメンブレンフィルタの完全性をチェックすることとを含む。チェックは、2つのステップ、すなわち1)メンブレンカートリッジを浄水で完全に濡らすステップと、2)所与の試験圧力で圧力保持試験又はフォワードフロー拡散流量テストを実行するステップとを含み得る。例えば、0.2μmの絶対速度カートリッジの場合、圧力保持試験は、35psiの試験圧力において、圧縮空気源と濡れたメンブレンとの間に圧力を生じさせることと、その後、定容量でモニタし、メンブレンを通した10分間で3psi未満の圧力低下を検出することとを含み得る。拡散流量試験は、同じメンブレンの圧力を35psiに設定することと、試験時間にわたって安定した圧力、例えば10インチ及び2.7インチ径のカートリッジフィルタの場合に30mL/分未満を保持するのに必要な体積流量を測定することと、測定された流速を閾値と比較して、カートリッジフィルタに欠陥がないか(例えば、所期の通りに機能するか)を特定することとを含み得る。
【0033】
幾つかの実施形態において、本開示のシステムは、原飲料を処理するために使用される。原飲料は、オレンジジュース等の果実ジュースであり得る。
図1は、果実ジュースの主要成分の大きさ別の表現である。図からわかるように、様々な大きさの成分がジュース中に浮遊固形物、コロイド分散体及び溶解性固形物として存在し得る。最も大きい成分は、浮遊固形物として存在し、およそ5μm以上の粒径のパルプ、完全細胞、でんぷん粒及びイースト菌細胞を含む。概して1μm未満の大きさであり、コロイド分散体として存在する成分には、細菌、細胞壁の破片、有色体、油滴、ペクチン、ヘミセルロース及びタンパク質が含まれる。粒径が0.001μm未満の溶解性成分には、バイオフラボノイド、ビタミン、有機酸、糖及び塩等、香味に寄与するか又は健康上の利益を提供する成分の多くが含まれる。
【0034】
実施形態によれば、本開示のシステム及び方法は、原ジュース等の飲料の処理にとって好適であり、有利である。これは、本開示のシステム及び方法が、香味と、原ジュース中に存在するビタミン等の植物栄養素とを損なうことなく、原ジュースの微生物負荷を軽減できるからである。実施形態によれば、原飲料は、本開示のシステム中での処理前に、濃縮又は病原菌を除去若しくは殺滅するための処理が行われていない。例えば、原飲料は、加熱(例えば、低温殺菌)又は放射線照射されていない。幾つかの実施形態において、原飲料は、本開示のシステム内での処理前に化学的に処理されていない。幾つかの実施形態によれば、取得(例えば、搾汁、圧搾、圧縮、発酵等)後及び本開示のシステム内での処理前に、固形物、溶融性成分及び微生物を含む何れの成分も原飲料から除去されていない。幾つかの実施形態において、ペクチンは、原飲料、例えばジュースから除去されていない。幾つかの実施形態において、原飲料は、本開示のシステム内での処理前にろ過されていない。幾つかの実施形態において、原飲料は、本開示のシステム内での処理前に遠心分離されていない。
【0035】
一般的な処理プロセスが
図2Aのフロー図に概略的に示されている。原飲料(例えば、ジュース)は、まず、2つのストリーム、すなわち固形分及び液体分に分離され得る。原飲料は、限外ろ過装置等の適当なろ過装置を使用して固形分及び液体分に分離され得る。固形分ストリームは、原飲料の浮遊固体物のほとんど、実質的に全部又は全部を含み得る。幾つかの実施形態において、固形分は、含水量が低いものの、揚水性を有する。水、他の液体成分及び溶解固形物の大部分は、液体分に含まれ得る。固形分及び液体分の重量比は、ほぼ1:5、1:6、1:7、1:8、1:9若しくは1:10又はそれらの間のあらゆる範囲(例えば、1:5~1:10)であり得る。
【0036】
ある実施形態によれば、固形分及び液体分は、分離後に別々に処理され、その後、これらの部分が配合されて最終製品となる。各部分に異なる処理方法が用いられ得る。処理方法は、微生物負荷を軽減させることにおいて有効であり、最終(配合)製品の香味及び栄養素プロファイルにほとんど影響を与えないように選択され得る。固形分は、病原体を殺滅するために処理され得る。固形分の処理としては、例えば、加熱(例えば、低温殺菌)、放射線照射又はそれらに組合せが含まれ得る。液体分は、加熱又は放射線照射を含まない方法によって処理され得る。液体分は、病原体を除去するためにろ過され得る。液体分のろ過には、例えば、精密ろ過が含まれ得、それにより精密ろ過液体分が得られる。ある実施形態によれば、液体分は、加熱又は低温殺菌されない。例えば、方法中、液体分の温度は、35℃より高温、40℃より高温、45℃より高温又は50℃より高温にならない。処理された固形分及び液体分が配合(例えば、混合)されて、最終製品が生成される。
【0037】
幾つかの実施形態において、固形分には、原飲料の浮遊固形物のほとんど又は実質的に全部が含まれる。固形分には、飲料、例えば原ジュース中に存在するペクチンのほとんど又は実質的に全部が含まれ得る。固形分は、自然に生成される酵素、ペクチンメチレエステラーゼも含み得る。固形分の含水量は、約50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下又は20重量%以下であり得る。固形分の固形物含量は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上又は80重量%以上であり得る。
【0038】
幾つかの実施形態において、液体分には、原飲料の水及び水溶性成分(例えば、溶解固形物)のほとんどが含まれる。液体分の含水量は、約75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は90重量%以上であり得る。液体分の含水量は、100重量%未満、例えば99重量%以下、98重量%以下又は95重量%以下であり得る。液体分は、溶解固形分を1重量%~25重量%、5重量%~20重量%、8重量%~20重量%又は10重量%~15重量%の範囲で含み得る。幾つかの実施形態において、溶解固形物の大部分は、糖である。物質の溶解糖含量は、光の屈折を用いて推定され得、ブリックス値又は度ブリックス(°Bx)で表現される。Brix 1度は、溶液100グラム中の蔗糖約1グラムと均等である。固形分が示すBrix値は、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下又は4以下であり得る。
【0039】
原飲料の含水量は、約70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は90重量%以上であり得る。原飲料の含水量は、98重量%まで、95重量%、90重量%まで、85重量%まで又は80重量%までであり得る。最終製品(処理されたろ過飲料)の含水量は、原飲料と同等であり得る。換言すれば、処理によって原飲料から除去され得る液体又は固体の何れの量もわずかであり得る。例えば、原飲料は、第一の含水量を有し得、処理されたろ過飲料は、第二の含水量を有し得、第二の含水量は、第一の含水量の±10%以内であり得る。幾つかの実施形態において、処理されたろ過飲料の含水量は、約70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は90重量%以上である。処理されたろ過飲料の含水量は、98重量%まで、95重量%、90重量%まで、85重量%まで又は80重量%までであり得る。
【0040】
本開示のある実施形態による例示的システム1が
図2Bに示されている。システム1は、原飲料、例えば原ジュースの供給源を含み得る。原飲料の供給源は、例えば、タンク、絞り器又は供給ラインであり得る。生飲料の供給源は、入力ライン10を介して限外ろ過装置100の入力101に接続され得る。限外ろ過装置100は、生飲料を固形分及び液体分に分離するために使用され得る。固形分は、原飲料の浮遊固形物の大部分又は実質的に全部を含み得る。液体分は、水、他の液体及び溶解固形物を含み得る。
【0041】
限外ろ過装置100は、クロスフロー方式で配置され得る。クロスフロー方式では、流体(この場合にはジュース)は、フィルタメンブレン全体にわたって流され、流体中のフィルタの分画サイズより小さい成分がフィルタの透過液側に透過し得、分画サイズより大きい成分を含む、流体の残りが保持液側に残り、引き続き流れる。
【0042】
限外ろ過装置100は、1つ又は複数のメンブレンが平面に沿って配置されるフラット(例えば、長方形)フローデバイスとして、又はメンブレンの巻き上げロールを含む円筒形デバイスとして構成され得る。例示的なフラット(長方形)限外ろ過メンブレンデバイス123が
図4Aに概略的に示されており、円筒形限外ろ過装置の例示的な剥離した状態の限外ろ過メンブレン123’が
図4Bに概略的に示されている。限外ろ過装置100は、保持液側113及び透過液側112を画定する限外ろ過メンブレン123、123’を収容し得る。限外ろ過メンブレン123、123’は、フィルタハウジング又はカートリッジ内に配置された単独のメンブレン23、メンブレンのマニホルド又は分離メンブレン23の巻き上げロールであり得る。限外ろ過装置100は、流入流れ111を受ける入口と、保持液130及び透過液120の排出流のための出口とを有し得る。分離メンブレン23は、特定の分画サイズより大きい固形粒子又は分子を除去(例えば、保持)するように選択され得る。分離メンブレン23の層は、スペーサ141によって分離され得る。分離メンブレン23自体も、透過液120を流れやすくするためのスペーサ層124を含み得る。
【0043】
限外ろ過装置は、原飲料の浮遊固形物の大部分、実質的に全部又は全部をメンブレンの保持液側に保持するように構成され得る。限外ろ過装置は、原飲料の香気及びアロマ成分並びにビタミン等の他の小分子の大部分又は実質的に全部がメンブレンの透過液側に通過できるように構成され得る。限外ろ過メンブレンの分画粒径は、分子量に基づいて画定され得る。例えば、限外ろ過メンブレンの分画粒径は、液体分に含まれることが望ましい小分子の大きさに基づいて選択され得、それより大きい粒子、浮遊固形物及び微生物は、固形分に含まれる。例えば、液体分中にとどまることが望ましい小分子としては、糖(例えば、単糖及び二糖の分子量は、180~350Da(ダルトン)の範囲である)、香味成分、ビタミン(例えば、ほとんどのビタミンB及びCの分子量は、120~450Daの範囲内である)、フラボノイド(例えば、特定のフラボノイドの分子量は、300~700Daの範囲内である)及び/又は他の植物栄養素が含まれる。他方では、細胞壁の破片及び細菌等、より大きい粒子は、典型的には、粒径が0.5μmより大きい(分子量で表現すると、およそ500kDa(キロダルトン)以上)。限外ろ過メンブレンの分画分子量は、10kDa以上、20dKa以上、40kDa以上、60kDa以上、80kDa以上又は100kDa以上であり得る。分画分子量は、300kDa以下、250kDa以下、200kDa以下、150kDa以下、120ka以下又は100kDa以下であり得る。幾つかの実施形態において、分画分子量は、10kDa~300kDa又は100kDa~200kDaの範囲である。
【0044】
再び
図2Bを参照すると、分離さたれ液体分(透過液120)は、出口102において限外ろ過装置100から出て、ライン20に沿って精密ろ過装置200に流れる。精密ろ過装置200は、ダイレクトフローフィルタとして構成され得る。精密ろ過装置200は、液体分中に存在するほとんどの、実質的に全部の又は全部の微生物を保持するように選択されるマイクロフィルタを収容し得る。マイクロフィルタは、上流側及びろ液側を画定し得る。マイクロフィルタは、カートリッジフィルタであり得、適当なろ材を収容するカートリッジを含む。適当なろ材の例としては、プリーツろ材及び精密ろ過メンブレンが含まれる。マイクロフィルタの分画サイズは、1.2μm以下、1.1μm以下、1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下又は0.5μm以下であり得る。マイクロフィルタの分画サイズは、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上又は0.5μm以上であり得る。幾つかの実施形態において、分画サイズは、0.2μm~1.0μmの範囲であり得る。適切に選択された分画のダイレクトフローフィルタを使用することにより、追加の処理を行うことなく透過液(ろ過された液体分)を混合して、最終製品を得ることができ、これは、ダイレクトフローフィルタが全部の又は実質的に全部の微生物を上流側に保持するからである。ある実施形態によれば、精密ろ過装置200は、ダイレクトフローフィルタとして構成され、その分画サイズは、1.2μm以下、1.1μm以下、1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下又は0.5μm以下であり、分離された液体分中に存在する微生物の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%又は少なくとも99.9999%の除去を実現する。幾つかの実施形態において、精密ろ過装置200は、分離された液体分を滅菌することができる。
【0045】
ある実施形態によれば、精密ろ過液体分は、原飲料と比較して少なくとも5logの病原体減少を示す。幾つかの実施形態において、精密ろ過液体分は、病原体を実質的に含まない。ある実施形態によれば、精密ろ過液体分は、熱処理、放射線照射又は熱及び放射線照射の両方の処理を行わずに、病原体を実質的に含まない。特に、ある実施形態によれば、液体分は、熱処理、放射線照射又は熱及び放射線照射の両方の処理を行わずに処理され、熱処理、放射線照射又は熱及び放射線照射の両方の処理を行わずに、病原体を実質的に含まない。熱処理は、物質の温度が50℃以上に上げられる処理と考えられる。そのため、ある実施形態によれば、プロセス中の液体分の温度は、50℃以上に到達しない。液体分は、原飲料の溶解固形物(例えば、糖、香味成分、ビタミン、フラボノイド及び他の植物栄養素)の大部分を含み得る。
【0046】
ある実施形態によれば、液体分は、原飲料中の糖の大部分を含む。ある実施形態によれば、液体分は、原飲料の糖の50%以上、60%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上又は95%以上を含む。ある実施形態によれば、液体分は、原飲料のビタミンCの大部分を含む。ある実施形態によれば、液体分のビタミンC濃度は、原飲料のビタミンC濃度の50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上又は85以上である。
【0047】
分離された固形分(保持液130)は、出口103において限外ろ過装置100から出て、ライン30に沿って処理装置300に流れる。処理装置300は、限外ろ過装置100の保持液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成される。処理装置300は、例えば、ヒータ(例えば、低温殺菌器)であり得る。他の考え得る装置としては、例えば、固形分にUV、高エネルギ又は分子放射を当てることのできる装置が含まれる。1つの実施形態において、処理装置300は、低温殺菌器を含む。低温殺菌器は、加熱タンク又はフロースルーヒータ(例えば、熱交換器)を含み得る。低温殺菌器は、固形分を病原体の殺滅に十分な温度まで加熱するように構成され得る。例えば、低温殺菌器は、固形分を約60℃以上、65℃以上又は70℃以上に加熱するように構成され得る。低温殺菌器は、固形分を約95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下又は70℃以下に加熱するように構成され得る。低温殺菌器は、所定の時間にわたり、固形分の温度を低温殺菌温度に保持するように構成され得る。例えば、低温殺菌器は、10秒以上、30秒以上、1分以上又は2分以上にわたり、固形分を低温殺菌温度に保持するように構成され得る。低温殺菌器は、15分以下、10分以下、5分以下又は2分以下にわたり、固形分を低温殺菌温度に保持するように構成され得る。ある実施形態によれば、いかなる流れも精密ろ過装置200から処理装置300に流れない。
【0048】
ある実施形態によれば、処理された(例えば、低温殺菌された)固形分は、原飲料と比較して少なくとも5logの病原体減少を示す。幾つかの実施形態において、処理された(例えば、低温殺菌された)固形分は、病原体を実質的に含まない。
【0049】
精密ろ過液体分は、精密ろ過装置200からライン42を介してミキサ400に流れ得、処理された固形分は、処理装置300からライン43を介してミキサ400に流れ得る。ミキサ400は、精密ろ過装置200のろ液側及び処理装置300に連結され、且つそれらからの流れを受け得る。ミキサ400は、混合容器を含み得るか、又はインラインミキサであり得る。最終製品(処理された飲料、例えばジュース)は、システム1から排出ライン50を介して排出され得る。ある実施形態によれば、最終製品は、原飲料と比較して少なくとも5logの病原体減少を示す。幾つかの実施形態において、最終製品は、病原体をほとんど含まない。
【0050】
幾つかの実施形態において、精密ろ過液体分は、処理された固形分と混合されない。むしろ、精密ろ過液体分は、回収され、任意選択的に包装されて、原ジュースのろ過液体分を含む飲料を提供し得る。ある実施形態によれば、飲料製品は、擦り飲料、例えば原ジュースを、固形分を液体分から分離するためのクロスフロー限外ろ過装置を使用してろ過し、液体分を、1.2μm以下、1.1μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下及び/又は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有するマイクロフィルタを通して精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することによって作られたろ過液体分であり得る。ろ過液体分は、ほとんど又は完全に透明でありながら(例えば、濁りがない)、原飲料(例えば、原ジュース)の色の少なくとも一部又はほとんどを保持することがわかっている。果物ジュースから作られたろ過液体分は、原飲料(例えば、原ジュース)の芳香のほとんど及びその香気の少なくとも一部も保持することがわかっている。
【0051】
ある実施形態によれば、方法は、固形分からより多くの糖及び他の小分子を洗浄することを促進するために、水の再循環を利用することをさらに含む。このようなプロセスの概略フロー図が
図3Aに示され、そのプロセスのために構成されたシステムの系統図が
図3Bに示されている。
図3Aからわかるように、プロセスは、他には
図2Aに関して説明したものと同様であるが、追加的に、逆浸透(「RO」)が水を液体分から分離するために使用されており、OR水は、混合タンクに還流し、固形分と混合される。追加された水は、固形分中に存在する糖及び小分子を希釈し、その後の限界ろ過ステップ中でそれらを除去することを促進する。
【0052】
前述のように、分離された固形分(保持液130)は、出口103において限外ろ過装置100から出て、ライン30に沿って流れる。しかしながら、処理装置300に向けられる代わりに、固形分は、まず、混合タンク500内でRO水と混合され、その後、限外ろ過装置100’内で再び限外ろ過される。このサイクルは、固形分中の糖含量が所望の値に到達するまで複数回繰り返され得る。固形分中の糖含量のモニタは、糖及び小分子を固形分から分離する分離効率の指標として使用され得る。処理装置300は、限外ろ過装置100’の保持液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成される。処理装置300は、
図2A及び2Bに関して説明した通りであり得る。RO保持液(一部の水が除去された液体分)が当初の液体分ストリームと配合され、精密ろ過されて、ろ過液体分が生成される。洗浄固形分は、当初固形分より少ない糖及び小分子を含み、それが処理(例えば、低温殺菌)される。処理(例えば、低温殺菌)された固形分は、精密ろ過液体分と配合されて、処理されたジュースが生成される。
【0053】
図3Bに示されるシステム1’は、
図2Bに示されるシステム1のコンポーネントを含み、水循環ループのコンポーネントをさらに含む。特に、
図3Bは、ROメンブレンフィルタ600を含み、これは、出口102’を通して、ライン21を介して限外ろ過装置100’の透過液側112’と流体連通する(例えば、それからの流れを受ける)。ROメンブレンフィルタ600は、混合タンク500(例えば、洗浄タンク)とライン62を介して流体連通する(例えば、それに流れを送達する)透過液側612を有する。混合タンク500は、限外ろ過装置100の保持液側(出口103)からのライン30に沿った流れも受ける。混合タンク500は、限外ろ過装置100’とライン50を介して流体連通する(例えば、それに流れを送達する)。ROメンブレンフィルタ600は、ライン63を介してマイクロフィルタ200と流体連通する(例えば、それに流れを送達する)保持液側613をさらに有する。限外ろ過装置100’の保持液側113’は、出口103’を通してライン31に沿って処理装置300に流れを送達する。
【0054】
ある実施形態によれば、水再循環ループを使用することにより、液体分中の相対的糖含量がはるかに高くなり得る。例えば、液体分は、原飲料の糖の85%以上、90%以上、95%以上又は98%以上を含み得る。ある実施形態によれば、液体分は、原飲料のビタミンCの85%以上、90%以上、95%以上又は98%以上であるビタミンC濃度を有する。
【0055】
幾つかの実施形態において、飲料は、本明細書に記載の方法によって得られ、5重量%以下又は2重量%以下の浮遊固形物含量を有するろ過液体分を含む。幾つかの実施形態において、飲料は、低温殺菌された固形分及び精密ろ過液体分から基本的になる。幾つかの実施形態において、飲料は、低温殺菌された固形分及び精密ろ過液体分からなる。幾つかの実施形態において、飲料は、ろ過液体分から基本的になる。幾つかの実施形態において、飲料は、熱処理又は放射線処理されていない糖及び香気成分を含み、及び飲料は、10CFU/g(1グラム当たりのコロニー形成率)の微生物負荷を有する。幾つかの実施形態において、飲料は、熱処理又は放射線照射されていない、1000Da未満の分子重量を有する小分子を含み、且つ10CFU/g未満の微生物負荷を有する。小分子は、糖、香気成分及びビタミンを含み得る。幾つかの実施形態において、飲料は、低温殺菌された固形分及び精密ろ過液体分からなる。換言すれば、幾つかの実施形態において、ろ過液体分は、固形分と配合されていない。
【0056】
以下は、本開示による物品の例示的な態様のリストである。
【0057】
態様1によれば、ろ過飲料、例えば果実ジュースを調製する方法は、クロスフロー限外ろ過装置を使用して原飲料、例えば原ジュースをろ過して、固形分及び液体分を生成することと、固形分を60℃以上、65℃以上若しくは70℃以上及び/又は95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下若しくは70℃以下の温度に加熱して、低温殺菌固形分を生成することと、1.2μm以下、1.1μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下及び/又は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有するマイクロフィルタを通して液体分を精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することと、低温殺菌固形分と精密ろ過液体分とを配合して、ろ過飲料、例えばろ過ジュースをもたらすこととを含む。
【0058】
態様2は、飲料が原ジュースを含む、方法態様1である。
【0059】
態様3は、原飲料、例えば原ジュースが、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上若しくは90重量%以上及び/又は95重量%まで、90重量%まで、85重量%まで若しくは80重量%までの含水量を有し、及びろ過飲料、例えばろ過ジュースが、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上若しくは90重量%以上及び/又は95重量%まで、90重量%まで、85重量%まで若しくは80重量%までの含水量を有する、態様1又は2の方法である。
【0060】
態様4は、原飲料、例えば原ジュースが第一の含水量を有し、及びろ過飲料、例えばろ過ジュースが第二の含水量を有し、第二の含水量が第一の含水量の±10%以内である、態様1~3の何れか1つの方法である。
【0061】
態様5は、固形分が50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下又は20重量%以下の含水量を有する、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0062】
態様6は、固形分が40重量%~90重量%又は50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上又は80重量%以上及び90重量%までの固形物含量を有する、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0063】
態様7は、液体分が8重量%~20重量%の溶解固形物を含む、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0064】
態様8は、液体分が、原飲料のビタミンC濃度の75%以上であるビタミンC濃度を有する、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0065】
態様9は、クロスフロー限外ろ過装置が、10kDa以上、20kDa以上、40kDa以上、60kDa以上、80kDa以上若しくは100kDa以上の分画サイズを有するメンブレンを含み、及び/又は分画分子量が300kDa以下、250kDa以下、200kDa以下、150kDa以下、120kDa以下若しくは100kDa以下である、上述の態様の何れか1つの方法である。幾つかの実施形態において、分画分子量は、10kDa~300kDa又は100kDa~200kDaの範囲である。
【0066】
態様10は、マイクロフィルタがダイレクトフローフィルタとして配置される、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0067】
態様11は、マイクロフィルタが0.1μm~1.0μm、0.1μm~0.5μm又は0.2μm~0.3μmの分画サイズを有する、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0068】
態様12は、液体分が第一の微生物含量を有し、及び精密ろ過液体分が第二の微生物含量を有し、第二の微生物含量が第一の微生物含量から少なくとも5log減少している、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0069】
態様13は、精密ろ過によって液体分中の微生物の少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%、少なくとも99.999%又は少なくとも99.9999%が除去される、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0070】
態様14は、精密ろ過が液体分を殺菌する、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0071】
態様15は、液体分が第一の微生物含量を有し、及び精密ろ過液体分が第二の微生物含量を有し、第二の微生物含量が第一の微生物含量から少なくとも5log減少している、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0072】
態様16は、原飲料、例えば原ジュースが原飲料微生物含量を有し、及びろ過飲料、例えばろ過ジュースが最終的な微生物含量を有し、最終的な微生物含量が原飲料、例えば原ジュースの微生物含量から少なくとも5log減少している、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0073】
態様17は、濃縮ステップが蒸発によって行われる濃縮ステップを含まない、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0074】
態様18は、液体分を濃縮するステップを含まない、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0075】
態様19は、液体分の熱処理を含まない、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0076】
態様20は、液体分の放射線処理を含まない、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0077】
態様21は、配合することが精密ろ過の直後に行われる、上述の態様の何れか1つの方法である。好ましい態様によれば、精密ろ過装置から処理装置までの流れがない。
【0078】
態様22は、マイクロフィルタのフィルタメンブレンの完全性を試験することを含む完全性試験をさらに含む、上述の態様の何れか1つの方法である。
【0079】
態様23は、完全性試験が、所与の試験圧力での圧力保持試験又はフォワードフロー拡散流量試験を含む、態様22の方法である。
【0080】
態様24は、限外ろ過保持液側及び限外ろ過透過液側を含む限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される限外ろ過装置と、限外ろ過保持液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成され、且つ排出ラインを含むヒータと、限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成されたマイクロフィルタであって、精密ろ過上流側及び精密ろ過ろ液側を含み、且つ1μm以下の分画粒径を有し、ダイレクトフローろ過モードで構成されるマイクロフィルタと、ヒータ排出ライン及び精密ろ過ろ液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成されたミキサとを含むろ過システムである。
【0081】
態様25は、クロスフロー限外ろ過装置が、10kDa以上、20kDa以上、40kDa以上、60kDa以上、80kDa以上若しくは100kDa以上の分画サイズを有するメンブレンを含み、及び/又は分画分子量が300kDa以下、250kDa以下、200kDa以下、150kDa以下、120kDa以下若しくは100kDa以下である、態様24のろ過システムである。幾つかの実施形態において、分画分子量は、10kDa~300kDa又は100kDa~200kDaの範囲である。
【0082】
態様26は、マイクロフィルタが1.2μm以下、1.1μm以下、1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下の分画サイズを有し、及び/又はマイクロフィルタが0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有する、態様24又は25のろ過システムである。幾つかの実施形態において、分画サイズは、0.2μm~1.0μmの範囲である。
【0083】
態様27は、第二の限外ろ過保持液側及び第二の限外ろ過透過液側を含む第二の限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される第二の限外ろ過装置と、第二の限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成された逆浸透メンブレンフィルタであって、逆浸透透過液側を含む逆浸透メンブレンフィルタと、第一の限外ろ過保持液側及び逆浸透透過液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成された第二のミキサとをさらに含み、ヒータは、第二の限外ろ過保持液側からの流れを受けるように構成される、態様24~26の何れか1つのろ過システムである。逆浸透メンブレンフィルタは、マイクロフィルタに連結され、且つそれに流れを送達するように構成された保持液側をさらに含む。
【0084】
態様28は、態様1~23の何れか1つの方法によって作られた精密ろ過液体分を含む飲料である。
【0085】
態様29は、5重量%未満又は2重量%未満の浮遊固形物含量を有する、態様28の飲料である。
【0086】
態様30は、ろ過液体分から基本的になる、態様28の飲料である。
【0087】
態様31は、原飲料、例えば原ジュースを、クロスフロー限外ろ過装置を使用してろ過して、固形分及び液体分を生成することと、液体分を、1.2μm以下、1.1μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下及び/又は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有するダイレクトフローマイクロフィルタを使用して精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することによって作られた精密ろ過液体分を含む飲料である。
【0088】
態様32は、熱処理又は放射線照射されていない、1000Da未満の分子量を有する小分子を含み、10CFU/g未満の微生物負荷を有する、態様31の飲料である。小分子は、糖、香気成分及びビタミンを含み得る。
【0089】
態様33は、態様1~23の何れか1つの方法によって作られ、且つ低温殺菌固形分及び精密ろ過液体分からなる飲料である。
【実施例】
【0090】
本開示によるろ過システムについて、原オレンジジュースを処理する場合の試験を行った。原ジュースは、低温殺菌されていない生のまま絞られたオレンジジュースであり、当初Bix値は、11.1であった。処理システムは、固形分及び液体分を分離するために使用された限外ろ過クロスフローフィルタと、液体分をろ過するマイクロフィルタと、固形分を低温殺菌するための低温殺菌器とを含んでいた。ポンプを使用して190 L/分でジュースをシステム中に流した。システムは、
図3A及び3Bに示されるように構成された。
【0091】
限外ろ過クロスフローフィルタは、流路を形成するための調整可能なスペーサを備える長方形フラットシートポリエーテルスルホン(PES)メンブレンを含んでいた。動作中、流れのほとんどを流路に流し、ポンプに戻した。試験は、48kgの原オレンジジュースについて行い、34kgの透過液と14kgの保持液とに分離した。メンブレンを透過した液体分を0.4L/分の速度で回収した。限外ろ過メンブレンの分画分子量は、150kDaであり、これは、15nmの公称孔径に対応する。
【0092】
マイクロフィルタは、ダイレクトフローフィルタ(ミネソタ州ミネアポリスのDonaldson Company,Inc.が販売する製品番号1C230101-82)であり、それにPES-WN 10インチ、0.2μmフィルタを取り付けた。
【0093】
分画分子量が100DaのROメンブレンを備えるクロスフローフィルタを使用して逆浸透を行った。
【0094】
保持液の当初糖含量(Brix値)は、12.8であった。ライン31(「低糖保持液」)及びライン21(洗浄サイクル透過液)の糖含量をRO水での洗浄1サイクル、2サイクル、3サイクル及び4サイクル後にモニタした。糖含量は、Brix屈折計(日本東京の株式会社アタゴが販売するATAGO 3810 PAL-1)を使用して推定した。Brix値を以下の表1に示す。
【0095】
【0096】
RO水での洗浄を行うことにより、保持液の糖含量(Brix値)を12.8から2.2に低減できることがわかった。これにより、低温殺菌が行われている糖の量がさらに減少する。これにより、最終製品中の異臭がさらに削減され得る。
【0097】
限外ろ過クロスフローフィルタからの透過液(
図3Bのライン42)を、サンプリングポートを取り付けた無菌の清潔なポリ袋内に回収した。透過液は、薄いオレンジ色で実質的に透明であり、オレンジの香り及び味を有するが、幾分弱められていることが観察された。透過液は、Brix値が10.9であることがわかった。
【0098】
透過液は、ダイレクトフローマイクロフィルタを使用してさらにろ過した。ろ過透過液の微生物含量を分析した。原ジュースの分析と比較した結果を下の表2に示す。
【0099】
【0100】
サンプルを40°Fの冷凍温度で1カ月間及び3カ月間保存した後、再び微生物分析を繰り返した。1カ月の結果を下の表3Aに、3カ月の結果を表3Bに示す。
【0101】
【0102】
【0103】
限外ろ過クロスフローフィルタからの保持液は、固形分を形成した。固形分は、非常に明るい色及び強い芳香を有するが、弱い若干の苦みを有することがわかった。透過液を90度の温度で10分間、低温殺菌ループで低温殺菌した。低温殺菌された透過液を60℃に冷却し、袋に詰めた。低温殺菌された保持液は、その色及び芳香を保持した。
【0104】
低温殺菌保持液をろ過透過液と混合して、最終製品を生成した。最終的なろ過製品を、もとの原ジュースと比較して目隠し味覚試験において試験した。加工の影響は、無視できる程度であることがわかった。
【0105】
本明細書で引用したすべての参考文献及び刊行物は、それらが本開示と直接矛盾しない限り、その全体が参照により本開示に明示的に援用される。具体的な実施形態を図解し、本明細書で説明したが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、図示され、説明された具体的な実施形態を様々な代替的及び/又は均等な実装形態で置換できることがわかるであろう。本開示は、本明細書で示した例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではなく、このような例及び実施形態は、例として提示されているにすぎず、本開示の範囲は、後述の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過飲料を調製する方法であって、
クロスフロー限外ろ過
を使用して原飲料をろ過して、固形分及び液体分を生成することと、
逆浸透水を前記固形分と混合して、希釈固形分を生成することと、
クロスフロー限外ろ過を使用して前記希釈固形分をろ過して、洗浄固形分及び第二の液体分を生成することと、
逆浸透を使用して前記第二の液体分から水を分離し、且つ逆浸透保持液を形成することと、
前記
洗浄固形分を60℃以上の温度に加熱して、低温殺菌固形分を生成することと、
0.1μm~1μmの分画サイズを有するマイクロフィルタを通して前記液体分
及び逆浸透保持液を精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することと、
前記低温殺菌固形分と前記精密ろ過液体分とを配合して、前記ろ過飲料をもたらすことと
を含む方法。
【請求項2】
前記原飲料は、原ジュースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原飲料は、80重量%~95重量%の含水量を有し、及び前記ろ過飲料は、80重量%~95重量%の含水量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原飲料は、第一の含水量を有し、及び前記ろ過飲料は、第二の含水量を有し、前記第二の含水量は、前記第一の含水量の±10%以内である、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体分は、前記原飲料のビタミンC濃度の75%以上であるビタミンC濃度を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
クロスフロー限外ろ過装置は、10kDa~300kDaの分画サイズを有するメンブレンを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体分は、8重量%~20重量%の溶解固形物を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固形分は、40重量%~90重量%の固形物を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体分は、第一の微生物含量を有し、及び前記精密ろ過液体分は、第二の微生物含量を有し、前記第二の微生物含量は、前記第一の微生物含量から少なくとも5log減少している、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記原飲料は、原飲料微生物含量を有し、及び前記ろ過飲料は、最終的な微生物含量を有し、前記最終的な微生物含量は、前記原飲料微生物含量から少なくとも5log減少している、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロフィルタは、ダイレクトフローろ過モードで構成される、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
蒸発によって前記原飲料の一部を濃縮することを含まない、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体分を濃縮するステップを含まない、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記配合することは、前記精密ろ過の直後に行われる、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液体分の熱処理を含まない、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体分の放射線処理を含まない、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフィルタのフィルタメンブレンの完全性を試験することを含む完全性試験をさらに含む、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記完全性試験は、所与の試験圧力で圧力保持試験又はフォワードフロー拡散流量試験を行うことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第一の限外ろ過保持液側及び第一の限外ろ過透過液側を含む第一の限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される第一の限外ろ過装置と、
前記第一の限外ろ過保持液側からの流れを受けるように構成され、且つ排出ラインを含むヒータと、
前記第一の限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成されたマイクロフィルタであって、精密ろ過上流側及び精密ろ過ろ液側を含み、且つ1μm以下の分画粒径を有し、ダイレクトフローろ過モードで構成されるマイクロフィルタと、
前記ヒータ排出ライン及び前記精密ろ過ろ液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成されたミキサと
を含むろ過システム。
【請求項20】
前記限外ろ過装置は、10kDa~300kDaの分画サイズを有するメンブレンを含む、請求項
19に記載のろ過システム。
【請求項21】
第二の限外ろ過保持液側及び第二の限外ろ過透過液側を含む第二の限外ろ過装置であって、クロスフローモードで構成される第二の限外ろ過装置と、
前記第二の限外ろ過透過液側に連結され、且つそれからの流れを受けるように構成された逆浸透メンブレンフィルタであって、逆浸透透過液側及び逆浸透保持液側を含む逆浸透メンブレンフィルタと、
前記第一の限外ろ過保持液側及び前記逆浸透透過液側に連結され、且つそれらからの流れを受けるように構成された第二のミキサと
をさらに含み、前記ヒータは、前記第二の限外ろ過保持液側からの流れを受けるように構成され、及び前記マイクロフィルタは、前記逆浸透保持液側からの流れを受けるように構成される、請求項
19に記載のろ過システム。
【請求項22】
請求項1~
18の何れか一項に記載の方法によって作られたろ過液体分を含む飲料。
【請求項23】
5重量%未満又は2重量%未満の浮遊固形物含量を有する、請求項
22に記載の飲料。
【請求項24】
前記低温殺菌固形分及び前記精密ろ過液体分からなる、請求項
22に記載の飲料。
【請求項25】
請求項1~
18の何れか一項に記載の方法によって作られたろ過液体分から基本的になる飲料。
【請求項26】
原飲料、例えば原ジュースを、クロスフロー限外ろ過装置を使用してろ過して、固形分及び液体分を生成することと、前記液体分を、1.2μm以下、1.1μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下若しくは0.5μm以下及び/又は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上若しくは0.5μm以上の分画サイズを有するダイレクトフローマイクロフィルタを使用して精密ろ過して、精密ろ過液体分を生成することとによって作られたろ過液体分を含む飲料。
【請求項27】
熱処理又は放射線処理されていない、1000Da未満の分子量を有する小分子を含み、10CFU/g未満の微生物負荷を有する、請求項
26に記載の飲料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
ある実施形態によれば、方法は、固形分からより多くの糖及び他の小分子を洗浄することを促進するために、水の再循環を利用することをさらに含む。このようなプロセスの概略フロー図が
図3Aに示され、そのプロセスのために構成されたシステムの系統図が
図3Bに示されている。
図3Aからわかるように、プロセスは、他には
図2Aに関して説明したものと同様であるが、追加的に、逆浸透(「RO」)が水を
第二の液体分から分離するために使用されており、OR水は、混合タンクに還流し、固形分と混合される。追加された水は、固形分中に存在する糖及び小分子を希釈し、その後の限界ろ過ステップ中でそれらを除去することを促進する。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
ある実施形態によれば、システム及び方法は、確実に5log減少を実現する。例えば、システム及び方法は、完全性試験を含み得る。完全性テストの一例は、所望の減少(例えば、5log以上)を提供するフィルタの分画サイズを選択することと、メンブレンの衛生化プロセスの終了時にダイレクトフローメンブレンフィルタの完全性をチェックすることとを含む。チェックは、2つのステップ、すなわち1)メンブレンカートリッジを浄水で完全に濡らすステップと、2)所与の試験圧力で圧力保持試験又はフォワードフロー拡散流量テストを実行するステップとを含み得る。例えば、0.2μmの絶対速度カートリッジの場合、圧力保持試験は、240kPa(35psi)の試験圧力において、圧縮空気源と濡れたメンブレンとの間に圧力を生じさせることと、その後、定容量でモニタし、メンブレンを通した10分間で20kPa(3psi)未満の圧力低下を検出することとを含み得る。拡散流量試験は、同じメンブレンの圧力を240kPa(35psi)に設定することと、試験時間にわたって安定した圧力、例えば25cm(10インチ)及び6.9cm(2.7インチ)径のカートリッジフィルタの場合に30mL/分未満を保持するのに必要な体積流量を測定することと、測定された流速を閾値と比較して、カートリッジフィルタに欠陥がないか(例えば、所期の通りに機能するか)を特定することとを含み得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
マイクロフィルタは、ダイレクトフローフィルタ(ミネソタ州ミネアポリスのDonaldson Company,Inc.が販売する製品番号1C230101-82)であり、それにPES-WN 25cm(10インチ)、0.2μmフィルタを取り付けた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
サンプルを4℃(40°F)の冷凍温度で1カ月間及び3カ月間保存した後、再び微生物分析を繰り返した。1カ月の結果を下の表3Aに、3カ月の結果を表3Bに示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】