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特表2023-506707細胞を抗原提示に有能な樹状細胞2型に初期化するための組成物、その方法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】細胞を抗原提示に有能な樹状細胞2型に初期化するための組成物、その方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20230213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/20 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230213BHJP
   A61K 35/13 20150101ALI20230213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/0784
C12N5/10
C12N15/24
C12N15/20
C12N15/113 120Z
A61K45/00
A61P31/12
A61P29/02
A61P35/00
A61P31/04
A61P9/00
A61P31/00
A61P37/02
A61P37/04
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/15 Z
A61K35/28
A61K35/13
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022530281
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2020083400
(87)【国際公開番号】W WO2021105234
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】115933
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(31)【優先権主張番号】20190159.2
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522142442
【氏名又は名称】アスガード セラピューティクス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リベイロ レモス ペレイラ,カルロス,フィリぺ
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ,ピレス,クリスティアーナ
(72)【発明者】
【氏名】フィウザ,ローザ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ,ルイス,フィリペ,ヘンリケス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA082
4C084ZA362
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB332
4C084ZC751
4C085AA03
4C085EE03
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、細胞を通常型樹状細胞(cDC)、特に、cDC2型(以下、「cDC2」又は「CD11b陽性樹状細胞」という)に初期化するための組成物、その方法及び使用に関する。本開示は、単離した/合成の転写因子を導入及び発現させることにより、分化幹細胞、多分化能幹細胞又は多能性幹細胞から抗原提示能を有する通常型樹状細胞を作製する方法の開発に関する。より特には、本開示は、特異的転写因子の驚くべき組み合わせの使用により直接細胞を初期化することによって、通常型樹状細胞(cDC)、特にcDC2型又はCD11b陽性樹状細胞を取得する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞若しくは分化細胞、又はそれらの混合物を通常型樹状細胞2型(cDC2)若しくはCD11b陽性樹状細胞に初期化する際に使用するための少なくとも3つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせを含む組成物であって、第1及び第2の転写因子が、それぞれ(PU.1)配列番号3又は配列番号6及び(IRF4)配列番号9又は配列番号12の配列と少なくとも90%同一である単離された又は合成のPU.1及びIRF4転写因子であり、第3の転写因子が、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)、RBPJ(配列番号45、配列番号48)、及びRELB(配列番号39、配列番号42)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である単離された又は合成の転写因子である組成物。
【請求項2】
前記転写因子が個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドによってコードされる、前述の請求項のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記転写因子が個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチドによってコードされるか、又は前記単離された若しくは合成の転写因子が個々に以下の配列:PU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)、RBPJ(配列番号45、配列番号48)、RELB(配列番号39、配列番号42)と少なくとも95%同一である、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記転写因子の組み合わせが以下の組み合わせ:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;及び
PU.1、IRF4とRELB
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記転写因子の組み合わせが、PU.1、IRF4とPRDM1又はPU.1、IRF4とIRF2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞が、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、腫瘍細胞、癌細胞及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の転写因子の組み合わせをコードする構築物又はベクター。
【請求項8】
コードされる転写因子の組み合わせが、以下の5'から3'の配列順:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;又は
PU.1、IRF4とRELB
にある、請求項7に記載の構築物又はベクター。
【請求項9】
前記ベクターが、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項7~8に記載の構築物又はベクター。
【請求項10】
前記ベクター又は構築物が、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである、請求項7~9に記載の構築物又はベクター。
【請求項11】
幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型(cDC2)又はCD11b陽性樹状細胞に初期化する際に使用するための少なくとも3つの転写因子をコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターであって、前記第1及び第2の転写因子がPU.1及びIRF4であり、前記第3の転写因子が、PRDM1、IRF2、POU2F2、RBPJ、RELB及びTGIF1からなる群から選択される1以上のベクター。
【請求項12】
前記転写因子が、個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)及びRBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドによってコードされる、請求項11に記載の1以上のベクター。
【請求項13】
前記コードされる転写因子の組み合わせが以下の組み合わせ:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;及び
PU.1、IRF4とRELB
から選択される、請求項11~12に記載の1以上ベクター。
【請求項14】
少なくとも3つの転写因子をコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターであって、前記転写因子がPU.1、IRF4及びPRDM1である1以上のベクター。
【請求項15】
前記1以上のベクターが、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス又はアデノ随伴ウイルスのベクターである、請求項11~13に記載の1以上ベクター。
【請求項16】
前記1以上のベクター又は構築物が、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである、請求項11~15に記載の1以上ベクター。
【請求項17】
前記細胞が、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、腫瘍細胞、癌細胞及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11~16に記載の1以上ベクター。
【請求項18】
獣医学又はヒト医学において、特に免疫療法において、又は神経変性疾患の治療若しくは療法において、又は自己免疫疾患、免疫不全において、又は癌の治療若しくは療法において、又は感染症の治療若しくは療法;皮内及び経皮療法;免疫療法において、又は神経変性疾患若しくは老化疾患において、又は癌若しくは感染症において、薬物スクリーニングとして使用するため;又は中枢神経系及び末梢神経系障害、新生物、特に癌、すなわち固形腫瘍又は血液腫瘍、免疫疾患、特に自己免疫疾患、過敏症、又は免疫不全;真菌性、ウイルス性、クラミジア性、細菌性、ナノ細菌性又は寄生虫性感染症の;HIV、SARSコロナウイルス、アジアインフルエンザウイルスによる感染、単純ヘルペス、帯状疱疹、肝炎、又はウイルス性肝炎の治療、療法又は診断に使用するための、請求項11~17に記載の1以上のベクター。
【請求項19】
幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型に初期化又は誘導するインビトロ又はエキソビボ方法であって、以下の工程:
前記第1及び第2の転写因子がPU.1及びIRF4であり、前記第3の転写因子がPRDM1、IRF2、POU2F2、TGIF1、RELB及びRBPJからなる群から選択される少なくとも3つの転写因子をコードする1以上のベクターで、幹細胞又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞を形質導入する工程;
前記形質導入細胞を樹状細胞又は抗原提示細胞の増殖を支持する細胞培地中で培養する工程、
を含む方法。
【請求項20】
前記形質導入細胞を少なくとも2日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも8日間、さらにより好ましくは少なくとも9日間、さらに好ましくは少なくとも10日間培養する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が、哺乳動物細胞、非ヒト細胞又はヒト細胞、マウス細胞、ヒト若しくはマウス線維芽細胞、哺乳動物の臍帯血幹細胞、多能性幹細胞又は多分化能幹細胞、分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記多能性幹細胞、多分化能幹細胞、又は分化細胞が、内胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又は外胚葉由来細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、腸幹細胞、多能性幹細胞を含む多分化能幹細胞及び細胞株からなる群から選択される、請求項19~20に記載の方法。
【請求項22】
前記形質導入工程が、IL-12をコードする核酸配列;IL-4をコードする核酸配列;IFN-αをコードする核酸配列;IFN-βをコードする核酸配列;IFN-γをコードする核酸配列;TNFをコードする核酸配列;GM-CSFをコードする核酸配列;IL-10 RNAを標的とするsiRNAをコードする核酸配列、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のベクターをさらに含み、好ましくは免疫刺激性サイトカインをコードする核酸を含む、請求項19~21に記載の方法。
【請求項23】
請求項7~10に記載の構築物若しくはベクター、又は請求項11~17に記載の1以上のベクターで形質導入された誘導樹状細胞。
【請求項24】
治療有効量の請求項23に記載の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含み、さらに、医薬として許容される賦形剤、好ましくは抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、抗生物質、利尿剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、若しくは滑剤又はそれらの混合物を含む組成物。
【請求項25】
獣医学又はヒト医学において、特に免疫療法において、又は神経変性疾患の治療若しくは療法において、又は自己免疫疾患、免疫不全において、又は癌の治療若しくは療法において、又は感染症の治療若しくは療法において;皮内及び経皮療法;免疫療法において、又は神経変性疾患若しくは老化疾患において、又は癌若しくは感染症において、薬物スクリーニングとして使用するため;又は中枢神経系及び末梢神経系障害、癌の新生物、特に固形腫瘍又は血液腫瘍、免疫疾患、すなわち自己免疫疾患、過敏症、又は免疫不全;真菌性、ウイルス性、クラミジア性、細菌性、ナノ細菌性又は寄生虫性感染症の;HIV、SARSコロナウイルス、アジアインフルエンザウイルスによる感染、単純ヘルペス、帯状疱疹、肝炎、又はウイルス性肝炎の治療、療法又は診断に使用するための、請求項1~6及び24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1~6及び24~25に記載の組成物、又は請求項23に記載の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含む、癌用のワクチン又は注射用製剤、特にインサイツ注射剤。
【請求項27】
以下の成分:
請求項23に記載の誘導樹状細胞;
請求項1~6及び24~25のいずれか一項に記載の組成物;
請求項7~17に記載のベクター若しくは構築物;
又はそれらの混合物
のうちの少なくとも1つを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、細胞を通常型樹状細胞(cDC)、特に、cDC2型(以下、「cDC2」又は「CD11b陽性樹状細胞」という)に初期化するための組成物、その方法及び使用に関する。
【0002】
本開示は、単離した/合成の転写因子を導入及び発現させることにより、分化幹細胞、多分化能幹細胞又は多能性幹細胞から抗原提示能を有する通常型樹状細胞を作製する方法の開発に関する。より特には、本開示は、特異的転写因子の驚くべき組み合わせの使用により直接細胞を初期化することによって、通常型樹状細胞(cDC)、特にcDC2型又はCD11b陽性樹状細胞を取得する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
細胞初期化は、ある細胞状態のエピジェネティックな転写ネットワークを異なる細胞型のそれに再配線することに依存する。転写因子(TF)過剰発現実験は、成体の体細胞又は分化細胞の可塑性を強調し、任意の所望の細胞型を生成するための新しい技術を提供する。TFの強制発現を通じて、体細胞又は分化細胞を、胚性幹細胞と著しく類似した人工多能性幹細胞(iPSC)に初期化することが可能である(Takahashiら,2007;Takahashi & Yamanaka,2006)。あるいは、体細胞を別の特殊な細胞型に直接変換することもできる(Pereira,Lemischka,&Moore、2012)。直接系統変換は、標的細胞の素性を特定するTFを用いて、マウス及びヒトの線維芽細胞をニューロン、心筋細胞及び肝細胞などのいくつかの細胞型に初期化することに成功したことを証明した(Xu,Du,&Deng,2015)。直接細胞変換は造血系でも実証され、TFの強制発現がB細胞及び線維芽細胞においてマクロファージの運命を誘導し(Xie,Ye,Feng,&Graf,2004)、マウス線維芽細胞のクローン形成造血前駆細胞への直接初期化が、Gata2、Gfi1b、cFos及びEtv6を用いて達成された(Pereiraら,2013)。これらの4つのTFは、内皮様中間体を介して進行する動的で多段階の造血プロセスを誘導し、インビトロで造血発生を再現する(Pereiraら,2016)。
【0004】
初期化された細胞は、再生医療のための非常に有望な治療ツールであり、iPSCの分化によって取得される細胞は、既に臨床研究において試験されている。
【0005】
細胞初期化計画は、体細胞を多能性に変換するために細胞型特異的TFを使用する可能性を有する細胞運命の柔軟性を強調している。1つの分化した細胞型から別の細胞型への直接系統変換も、細胞生物学のメカニズムの解明や再生医療の目的で実証され、探求されている。最近、抗原提示樹状細胞は、TFの少しの組み合わせによって、無関係な細胞型から初期化され得ることが実証された。古典的には、骨髄系DCコミット前駆細胞は、機能的に異なるDCサブセット:プロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)である通常型DC(cDC)及び形質細胞様DC(pDC)を生じさせると言われている。cDCは抗原特異的免疫応答を促進するが、pDCはウイルス感染中のI型インターフェロンの専門生産者である。しかし、DC発生中の異なるサブセットの分岐を調整するタイミングと正確なメカニズムはまだ確立されていない。
【0006】
DCは、リンパ骨髄系造血から生じる骨髄由来細胞のクラスであり、生物を病原体についてスキャンし、自然免疫系と適応免疫の活性化との間に本質的な境界を形成する。DCは、主要組織適合性複合体(MHC)と複合体化したペプチド抗原を、必要な全ての可溶性及び膜結合共刺激分子とともに表面に提示することによって、T細胞応答を活性化できるプロフェッショナルAPCとして作用する。DCは、一次免疫応答を誘導し、以前にプライミングされたTリンパ球のエフェクター機能を増強し、自然免疫と適応免疫の間の伝達を調整する。DCはほとんどの組織に見られ、抗原環境を継続的にサンプリングし、いくつかの種類の受容体を使用して病原体の侵入を監視する。定常状態で、及び病原体の検出時の増加速度で、非リンパ組織中のセンチネルDCはリンパ系器官に移動し、そこで収集及び処理した抗原をT細胞に提示する。T細胞によって獲得される表現型は、抗原提示の状況に依存する。抗原が病原体に由来するか又は自己損傷した場合には、DCは危険信号を受け取り、活性化され、続いてT細胞を刺激し、防御免疫を提供するのに必要なエフェクターになる。
【0007】
免疫応答の制御の重要な態様は、いくつかの異なる種類のDCの存在であり、それぞれが特定の病原体に応答し、T細胞の特異的サブセットと相互作用することに特化している。この状況では、形質細胞様DC(pDC)、骨髄系/通常型DC1(cDC1)及び骨髄系/通常型DC2(cDC2)の3つの主要なDCサブセットが生じる。これにより、免疫系の柔軟性が拡大し、広範囲の異なる病原体及び危険信号に適切に反応する。
【0008】
cDC2は、CD11b表面発現によって特徴付けられ、ナイーブCD4 T細胞極性化がヘルパーTh2及びTh17に向かうように導くMHC-II提示に特化している(Plantingaら,2013)。Th2関連サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9及びIL-13)は、細胞外寄生虫に対する保護に関連する応答を媒介し(Mosmann & Coffman,1989)、アレルギー及び過敏反応を誘導する(Kopfら,1993;Zhu&Paul,2008)一方で、Th17は、細胞外細菌及び真菌に対する免疫応答と関連しており、多くの自己免疫疾患も誘導する(Weaver,Harrington,Mangan,Gavrieli,&Murphy,2006)。腫瘍において、cDC2は、腫瘍流入領域リンパ節においてMHC-II上でのCD4 T細胞への抗原提示に関与することによってcDC1を補完することが知られている(Merad,Sathe,Helft,Miller,&Mortha,2013)。ある研究では、腫瘍由来cDC2の抗原提示が、Th17依存性物質上の抗腫瘍表現型への腫瘍関連マクロファージの変換を促進することが証明された(Laouiら,2016)。cDC2はまた、自己反応性CD4 T細胞を破壊し(Meradら,2013)、免疫応答を負に調節する(Sakaguchi,2004)ことによって自己寛容の維持に不可欠な制御性T細胞(Treg)をプライミングすることによってエフェクターT細胞の下方制御に寄与する。
【0009】
さらなるcDC2の特徴的マーカーには、CD11b、Sirpα、CD4、及びESAMが含まれる。cDC2固有の不均一性のために、いくつかの特異的表面マーカーは特定のサブセットを特徴付ける。最近の知見は、異なる転写調節因子及び別個の免疫学的機能によって定義されるcDC2の2つの異なるサブセットを同定した(Brownら,2019)。cDC2AはTbet依存性として定義され、Esam及びClec4a4の表面発現によって特徴付けられる抗炎症サブセットであるが、cDC2Bは、Clec10a及びClec12aマーカーを発現するかなり炎症誘発性のRORγt定義サブセットからなる。
【0010】
適応免疫を誘導するDCの能力は、細菌性、ウイルス性及び寄生性病原体に対するDCワクチン計画、並びにすなわち癌における免疫療法に関する研究を後押しした。実際、固形腫瘍及び血液腫瘍を含むいくつかの腫瘍型に対してDC媒介性免疫療法を利用している臨床試験が進行中である(Dattaら、2014)。しかし、臨床転帰は一貫しておらず、おそらくインビトロ生成DCの変わりやすい効率と関連付けられる。自己単球はインビトロで効率の低いDCに分化し得、造血前駆細胞は非常に少数しか単離されない。加えて、これらの前駆細胞は、担癌患者において一般的に損なわれ、機能不全DCの生成をもたらす(Dattaら,2014;Subkleweら,2014)。癌回避メカニズムにも、DCベースの免疫療法における一貫した治療上の利点の欠如が根底にある可能性がある。腫瘍進行中に、癌細胞は免疫監視から逃れるためにいくつかの免疫学的プロセスを利用する。これらの適応は、癌抗原の不均一性とともに免疫系による腫瘍抗原の認識を妨げ、その結果、腫瘍細胞の免疫原性の低下及び現在の免疫療法に関与している。
【0011】
直接初期化によるAPCの生成は、DCの特定化及び細胞同一性をよりよく理解する新たな機会を開き、自己操作された細胞を用いた免疫応答のより効率的な制御に寄与する。
【0012】
文献EP3385373は、部分的には、分化した若しくは未分化の細胞をDC又はAPCに誘導又は初期化するのを可能にするTFの新規使用及び組み合わせの驚くべき効果に基づく、細胞をDC状態若しくはAPC状態に誘導又は初期化するための組成物、核酸構築物、その方法及びキットに関する。
【0013】
文献EP3385373に記載の生成された初期化細胞は、主にDCのcDC1サブセットの表面マーカー発現、抗原提示、サイトカイン放出及びT細胞活性化特徴を特異的に再現する。他のDCサブセットの表現型の特徴については記載されていなかった。
【0014】
抗原提示細胞(APC)は、T細胞などのあるリンパ球による認識のために抗原を処理及び提示することによって細胞性免疫応答を媒介する免疫細胞の不均一なグループである。古典的APCには、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞及びB細胞が含まれる。
【0015】
DCは、抗原を捕捉し、処理し、T細胞に提示し、それらを異なる種類の免疫応答に標的化するか、又は寛容応答を誘導する能力を介して、外部環境と適応免疫系との間の重要なつながりを提供する。
【0016】
表現型基準は、マウスDCを別個の表面マーカーの発現によって特徴付けられる異なる亜集団に分類することを可能にする。リンパ組織における通常型DC(cDC)は、伝統的にcDC1及びcDC2亜集団に細分される。異なるDCサブセットは、ある病原体の特異的認識に関与し、かつ/又は異なる免疫応答を調節する。cDC1は、腫瘍クリアランスを促進するのに重要であるTh1応答のプライミングと関連付けられるが、cDC2サブセットはTh1、Th2、Th17(免疫)及びTreg(寛容)応答と関連付けられた。
【0017】
文献EP3385373は、部分的には、分化した若しくは未分化の細胞をDC又はAPC、より具体的にはcDC1に誘導又は初期化するのを可能にするTFの新規使用及び組み合わせの驚くべき効果に基づく、細胞をDC状態若しくはAPC状態に誘導又は初期化するための組成物、核酸構築物、その方法及びキットに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
現在、DCベースの免疫療法は、効率の低いDCの産生に関連付けられる単球、又は非常に少ない数で単離される造血前駆細胞のいずれかの自己DC前駆体に依存している。さらに、これらの前駆細胞は、担癌患者において一般的に損なわれ、機能不全DCの生成をもたらす。一方で、線維芽細胞などの非造血細胞型は、通常、影響を受けない。自然免疫系と適応免疫系をつなぐAPCとしてのDCの基本的な役割を考えると、抗原特異的免疫応答をプライムする機能的DCを生成するための代替計画を見つける臨床的必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示の直接初期化によって生成された誘導性DC又はAPCは、驚くべきことに、DCのcDC2サブセットのMHC-II分子において表面マーカー発現、サイトカイン分泌及び抗原提示に関する表現型を再現する。
【0020】
これらの事実は、本開示によって対処される技術的問題を説明するために開示される。
【0021】
本主題は、驚くべきことに、分化細胞、多分化能幹細胞又は多能性幹細胞を抗原提示樹状細胞、より具体的にはcDC2にインビトロ、エキソビボ若しくはインビボで初期化又は誘導するいくつかの単離された又は合成のTFを同定する。
【発明の効果】
【0022】
一態様では、本開示は、幹細胞若しくは分化細胞、又はそれらの混合物を通常型樹状細胞2型(cDC2)又はCD11b陽性樹状細胞に初期化するためのPU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)からなるリストと少なくとも90%同一で、リストから選択される単離されるか若しくは合成の配列によってコードされる少なくとも2つの転写因子;又はPU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)からなるリストから選択される配列と少なくとも90%同一である少なくとも2つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせ、並びにそれらの混合物を含む組成物を含む。
【0023】
一態様では、本開示は、幹細胞若しくは分化細胞、又はそれらの混合物を通常型樹状細胞2型(cDC2)又はCD11b陽性樹状細胞に初期化する際に使用するための少なくとも3つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせを含む組成物を含み、第1及び第2の転写因子は、PU.1(配列番号3、配列番号6)及びIRF4(配列番号9、配列番号12)の配列と少なくとも90%同一である単離された及び合成のPU.1並びにIRF4転写因子であり、第3の転写因子は、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)、RBPJ(配列番号45、配列番号48)及びRELB(配列番号39、配列番号42)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である単離された又は合成の転写因子である。
【0024】
本明細書で使用される変異体は、本開示のDNAコード配列と60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%の全体的な配列同一性を有する配列を意味する。
【0025】
さらなる実施形態では、本開示は、幹細胞若しくは分化細胞、又はそれらの混合物を通常型樹状細胞2型(cDC2)に初期化する際に使用するためのPU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)と少なくとも90%同一で、それらからなる群から選択される単離された又は合成の配列によってコードされる少なくとも2つの転写因子、又はPU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である少なくとも2つの単離された又は合成の転写因子、並びにそれらの混合物を含む組成物を含み、ただし、PU.1(配列番号1~配列番号6)、IRF4(配列番号7~配列番号12)からなる少なくとも2つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせを除く。
【0026】
一実施形態では、本開示は、幹細胞若しくは分化細胞を通常型樹状細胞2型(cDC2)又はCD11b陽性樹状細胞に初期化する際に使用するためのPU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)と少なくとも90%同一で、それらからなる群から選択される単離された又は合成の配列によってコードされる少なくとも2つの転写因子、又はPU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)、RBPJ(配列番号45、配列番号48)及びRELB(配列番号39、配列番号42)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である少なくとも2つの単離された又は合成の転写因子、並びにそれらの混合物を含む組成物を含む。
【0027】
一実施形態では、本開示は、本明細書に先に記載した使用のための組成物を含み、該転写因子は、個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0028】
一実施形態では、本開示は、PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)からなるリストと少なくとも95%同一で、それらから選択される単離された又は合成の配列によってコードされる少なくとも2つの転写因子、又はPU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)からなるリストから選択される配列と少なくとも95%同一である少なくとも2つの単離された若しくは合成の転写因子の組み合わせ、及びそれらの混合物を含む。
【0029】
一実施形態では、本開示は、本明細書に先に記載した使用のための組成物を含み、該転写因子は、個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)と少なくとも95%同一であるポリヌクレオチドによってコードされるか、又は単離された若しくは合成の転写因子は、個々に以下の配列:PU.1(配列番号3、配列番号6)、IRF4(配列番号9、配列番号12)、PRDM1(配列番号15、配列番号18)、IRF2(配列番号21、配列番号24)、POU2F2(配列番号27、配列番号30)、TGIF1(配列番号33、配列番号36)、RBPJ(配列番号45、配列番号48)、RELB(配列番号39、配列番号42)と少なくとも95%同一である。
【0030】
さらなる実施形態では、本開示は、以下の単離若しくは合成のコードされる組み合わせから、又は以下のタンパク質:
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びIRF4(配列番号7-配列番号12);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びPRDM1(配列番号13-配列番号18);
IRF4(配列番号7-配列番号12)及びPRDM1(配列番号13-配列番号18);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びIRF2(配列番号19-配列番号24);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
IRF4(配列番号7-配列番号12)及びIRF2(配列番号19-配列番号24);
IRF4(配列番号7-配列番号12)及びPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
IRF4(配列番号7-配列番号12)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PRDM1(配列番号13-配列番号18)及びIRF2(配列番号19-配列番号24);
PRDM1(配列番号13-配列番号18)及びPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
PRDM1(配列番号13-配列番号18)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びIRF4(配列番号7-配列番号12);
IRF2(配列番号19-配列番号24)及びPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
IRF2(配列番号19-配列番号24)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
POU2F2(配列番号25-配列番号30)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)、PRDM1(配列番号13-配列番号18)、IRF2(配列番号19-配列番号24)、POU2F2(配列番号25-配列番号30)及びTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)及びRBPJ(配列番号43-配列番号48);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)及びRELB(配列番号37-配列番号42);
又はそれらの混合物
から選択される少なくとも2つの転写因子の組み合わせを含む。
【0031】
一実施形態では、本開示は、先に記載したような使用のための組成物を含み、転写因子の組み合わせは、以下の組み合わせ:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;及び
PU.1、IRF4とRELB
から選択される。
【0032】
一実施形態では、本開示の組成物は、以下のタンパク質からなる群から又は以下のタンパク質:
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)、PRDM1(配列番号13-配列番号18)、IRF2(配列番号19-配列番号24)、POU2F2(配列番号25-配列番号30)、TGIF1(配列番号31-配列番号36)及びそれらの混合物から選択される配列と少なくとも90%同一である単離された又は合成の配列によってコードされる少なくとも3つの転写因子を含み得る。
【0033】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載の組成物に関し、該転写因子の組み合わせは、PU.1、IRF4とPRDM1又はPU.1、IRF4とIRF2である。
【0034】
さらなる実施形態では、本開示の組成物は、以下の単離された若しくは合成のタンパク質から、又は以下の単離された若しくは合成のコードされる組み合わせ:
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とPRDM1(配列番号13-配列番号18);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とIRF2(配列番号19-配列番号24);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)、PRDM1(配列番号13-配列番号18);
IRF2(配列番号19-配列番号24)、POU2F2(配列番号25-配列番号30)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)PRDM1(配列番号13-配列番号18)、IRF2(配列番号19-配列番号24)、POU2F2(配列番号25-配列番号30)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とRBPJ(配列番号43-配列番号48);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とRELB(配列番号37-配列番号42);
又はそれらの混合物
から選択される転写因子の組み合わせを含み得る。
【0035】
一実施形態では、単離された又は合成の転写因子の組み合わせは、PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)及びPRDM1(配列番号13-配列番号18)である。
【0036】
一実施形態では、単離された又は合成の転写因子の組み合わせは、PU.1、IRF4及びPRDM1である。
【0037】
さらなる実施形態では、単離された又は合成の転写因子の組み合わせは、PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号12)とPRDM1(配列番号13-配列番号18)又はPU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とIRF2(配列番号19-配列番号24)である。
【0038】
別の実施形態では、単離された又は合成の転写因子の組み合わせは、PU.1、IRF4とPRDM1又はPU.1、IRF4とIRF2である。
【0039】
一実施形態では、本開示の組成物は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、線維芽細胞、腫瘍細胞、癌細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される幹細胞又は分化細胞を含み得る。
【0040】
一実施形態では、細胞は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、線維芽細胞、腫瘍細胞、癌細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0041】
さらなる実施形態では、該細胞は、腫瘍細胞、癌細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0042】
一実施形態では、抗原は、癌抗原、自己抗原、アレルゲン、病原性及び/又は感染性生物由来の抗原であり得る。
【0043】
一実施形態では、本開示の組成物は、獣医学又はヒト医学において、特に免疫療法において、又は自己免疫疾患、免疫不全において、又は神経変性若しくは老化疾患において、癌若しくは感染症において、又は薬物スクリーニングとして使用され得る。
【0044】
さらなる実施形態では、多能性幹細胞、多分化能幹細胞又は分化細胞は、哺乳動物の多能性幹細胞、多分化能幹細胞又は分化細胞、特にマウス又はヒトの細胞である。
【0045】
本開示の一態様は、本開示の少なくとも2つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせ、好ましくは3つの転写因子のコードされる単離された又は合成の組み合わせをコードする構築物又はベクターに関する。
【0046】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の転写因子の組み合わせをコードする構築物又はベクターに関する。
【0047】
さらなる実施形態では、本開示は、構築物又はベクターを含み、3つの単離された又は合成の転写因子の組み合わせは、以下の5'から3'の配列順にある:
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とPRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17);PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とIRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とPOU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とTGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)とTGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とRBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)。
【0048】
さらなる実施形態では、本開示は、構築物又はベクターを含み、コードされる転写因子の組み合わせは、以下の5'から3'の配列順にある:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;又は
PU.1、IRF4とRELB。
【0049】
さらなる実施形態では、本開示はベクターを含み、該ベクターは、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0050】
一実施形態では、該ベクター又は構築物は、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである。
【0051】
本開示の一態様では、本開示は、幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型(cDC2)又はCD11b陽性樹状細胞に初期化する際に使用するための少なくとも3つの転写因子をコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターに関し、第1及び第2の転写因子はPU.1及びIRF4であり、第3の転写因子は、PRDM1、IRF2、POU2F2、RBPJ、RELB及びTGIF1からなる群から選択される。
【0052】
一実施形態では、本開示は、1以上のベクターに関し、該転写因子は、個々にPU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)及びRBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドによってコードされる。
【0053】
さらなる実施形態では、本開示は1以上のベクターを含み、コードされる転写因子の組み合わせは以下の組み合わせ:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とIRF2;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;
PU.1、IRF4とRBPJ;又は
PU.1、IRF4とRELB
から選択される。
【0054】
一態様では、本開示は、少なくとも3つの転写因子をコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターに関し、該転写因子は、PU.1、IRF4及びPRDM1である。
【0055】
一実施形態では、本開示は1以上のベクターを含み、該1以上のベクターは、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0056】
一実施形態では、本開示は1以上のベクターを含み、該1以上のベクターは、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである。
【0057】
一実施形態では、本開示は1以上のベクターを含み、該細胞は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、腫瘍細胞、癌細胞及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
一実施形態では、本開示は、獣医学又はヒト医学において、特に免疫療法において、又は神経変性疾患、若しくは自己免疫疾患、免疫不全の治療若しくは療法において、又は癌の治療若しくは療法において、又は感染症の治療若しくは療法において;皮内及び経皮療法において;免疫療法において、又は神経変性疾患若しくは老化疾患において、又は癌若しくは感染症において、薬物スクリーニングとして使用するため;又は中枢神経系及び末梢神経系障害、新生物、特に癌、すなわち固形腫瘍又は血液腫瘍、免疫疾患、特に自己免疫疾患、過敏症、又は免疫不全;真菌性、ウイルス性、クラミジア性、細菌性、ナノ細菌性又は寄生虫性感染症の;HIV、SARSコロナウイルス、アジアインフルエンザウイルスによる感染、単純ヘルペス、帯状疱疹、肝炎、又はウイルス性肝炎の治療、療法又は診断に使用するための1以上のベクターを含む。
【0059】
本開示の別の態様は、幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型に初期化又は誘導する方法であって、以下の工程:
幹細胞又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞に、PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)、及びそれらの混合物からなる群からの配列と少なくとも90%同一、好ましくは少なくとも95%同一である配列をコードする少なくとも2つの核酸配列を含む1以上のベクターで形質導入する工程;
該形質導入細胞を樹状細胞又は抗原提示細胞の増殖を支持する細胞培地中で培養する工程、を含む方法に関する。
【0060】
本開示の別の態様は、幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型に初期化又は誘導する方法であって、以下の工程:
第1及び第2の転写因子がPU.1及びIRF4であり、第3の転写因子がPRDM1、IRF2、POU2F2、TGIF1、RELB及びRBPJからなる群から選択される少なくとも3つの転写因子をコードする1以上のベクター及びそれらの混合物で幹細胞又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞に形質導入する工程;
形質導入細胞を樹状細胞又は抗原提示細胞の増殖を支持する細胞培地中で培養する工程、を含む方法に関する。
【0061】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法に関し、該形質導入細胞は、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも8日間、さらにより好ましくは少なくとも9日間、さらに好ましくは少なくとも10日間培養される。
【0062】
さらなる実施形態では、配列の組み合わせは、
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とPRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とIRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とPOU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とTGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とRBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47);
PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)とRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)
であり得る。
【0063】
一実施形態では、本開示は、本開示の構築物又はベクターを含み、前記群から選択される配列は、PU.1とIRF4の組み合わせである。
【0064】
一態様では、本開示は、幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型に初期化又は誘導する方法であって、以下の工程:幹細胞又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞に、PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41);及びそれらの混合物からなる群からの配列と少なくとも90%同一、好ましくは少なくとも95%同一である配列をコードする少なくとも2つの核酸配列を含む1以上のベクターで形質導入する工程;該形質導入細胞を樹状細胞又は抗原提示細胞の増殖を支持する細胞培地中で培養する工程、を含む方法を含む。
【0065】
一実施形態では、3つの単離された及び合成の転写因子の組み合わせは、以下の5’から3’の配列順:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)にある。本方法は、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも8日間、さらにより好ましくは少なくとも9日間、さらにより好ましくは少なくとも10日間、複数の単離された及び合成の転写因子で形質導入された細胞を培養する工程を含むが、これに限定されない。
【0066】
さらなる実施形態では、本開示は、形質導入工程が、IL-12をコードする核酸配列;IL-4をコードする核酸配列;IFN-αをコードする核酸配列であって;IFN-βをコードする核酸配列;IFN-γをコードする核酸配列;TNFをコードする核酸配列;GM-CSFをコードする核酸配列;IL-10RNAを標的とするsiRNAをコードする核酸配列、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのベクターをさらに含む方法を含む。
【0067】
一実施形態では、本開示は、形質導入工程が、免疫刺激性サイトカインをコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターをさらに含む方法を含む。
【0068】
さらなる実施形態では、本開示は、細胞が、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞、又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される方法を含む。
【0069】
さらなる実施形態では、本開示は、細胞が哺乳動物細胞である方法を含む。
【0070】
さらなる実施形態では、本開示は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、又は分化細胞が、内胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又は外胚葉由来細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、腸幹細胞、多能性幹細胞を含む多分化能幹細胞及び細胞株からなる群から選択される方法を含む。
【0071】
一実施形態では、本開示は、細胞が非ヒト細胞である方法を含む。
【0072】
さらなる実施形態では、本開示は、細胞がマウス細胞である方法を含む。
【0073】
一実施形態では、本開示は、細胞がヒト細胞である方法を含む。
【0074】
さらなる実施形態では、本開示は、細胞がヒト若しくはマウス線維芽細胞、又は哺乳動物の臍帯血幹細胞である方法を含む。
【0075】
本開示の別の態様は、本開示の方法によって得られる誘導樹状細胞に関する。
【0076】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の構築物若しくはベクター、又は本明細書に記載の1以上のベクターで形質導入された誘導樹状細胞に関する。
【0077】
さらなる実施形態では、本開示は、本開示の方法によって得られる治療有効量の誘導樹状細胞、及び医薬として許容される賦形剤に関する。
【0078】
さらなる実施形態では、本開示は、獣医学又はヒト医学における使用方法を含む。
【0079】
さらなる実施形態では、本開示は、免疫療法において、又は神経変性疾患、若しくは自己免疫疾患、免疫不全の治療若しくは療法において、又は癌の治療若しくは療法において、又は感染症の治療若しくは療法において使用する方法を含む。
【0080】
一実施形態では、本開示は、抗ウイルス薬、鎮痛薬、抗炎症薬、化学療法薬、放射線療法薬、抗生物質、利尿薬、又はそれらの混合物をさらに含む方法を含む。
【0081】
さらなる実施形態では、本開示は、充填剤、結合剤、崩壊剤、若しくは滑剤、又はそれらの混合物をさらに含む組成物を含む。
【0082】
さらなる実施形態では、本開示は、皮内及び経皮療法に使用するための組成物を含む。
【0083】
さらなる実施形態では、本開示は、注射用製剤、特にインサイツ注射を含む。
【0084】
一実施形態では、本開示は、獣医学又はヒト医学において、特に免疫療法において、又は神経変性若しくは老化疾患において、又は癌若しくは感染症において、薬物スクリーニングとして使用するための組成物を含む。
【0085】
さらなる実施形態では、本開示は、中枢神経系及び末梢神経系の障害の治療、療法又は診断に使用するための組成物を含む。
【0086】
さらなる実施形態では、本開示は、新生物、特に癌、すなわち固形腫瘍又は血液腫瘍の治療、療法又は診断に使用するための組成物を含む。
【0087】
さらなる実施形態では、本開示は、癌若しくは免疫疾患、すなわち自己免疫疾患、過敏症、若しくは免疫不全症の治療、診断又は療法に使用するための組成物を含む。
【0088】
一実施形態では、本開示は、真菌性、ウイルス性、クラミジア性、細菌性、ナノ細菌性若しくは寄生虫性感染症の治療、療法又は診断に使用するための組成物を含む。
【0089】
さらなる実施形態では、本開示は、HIV、SARSコロナウイルス、アジアインフルエンザウイルスによる感染、単純ヘルペス、帯状疱疹、肝炎、若しくはウイルス性肝炎の治療、療法又は診断に使用するための組成物を含む。
【0090】
さらなる実施形態では、本開示は、前の請求項のいずれか一項に記載の組成物、又は本開示の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含む癌のためのワクチンを含む。
【0091】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物、又は本明細書に記載の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含む癌に対するワクチン若しくは注射用製剤、特にインサイツ注射に関する。
【0092】
さらなる実施形態では、本開示は、以下の成分:
本開示の誘導樹状細胞;
本開示に記載の組成物;
本開示のベクター若しくは構築物;
又はそれらの混合物
のうちの少なくとも1つを含むキットを含む。
【0093】
驚くべきことに、本開示に記載の初期化によって生成された誘導DCは、通常型樹状細胞2型(CD11b)の内因性表面マーカー表現型、並びにサイトカイン分泌及びMHC-II分子における抗原提示を示す。
【0094】
本開示は、幹細胞若しくは分化細胞、又はそれらの混合物からなる群から選択される細胞の初期化又は誘導因子としてのPU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、RELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)からなる群からの配列と90%同一である配列によってコードされる少なくとも2つの単離された転写因子の組み合わせを含む組成物に関する。
【0095】
参照配列(配列番号1~36)によってコードされる参照ポリペプチドと同じ又は類似の活性を有するポリペプチド変異体又はファミリーメンバーは、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用することができる。一般に、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用するためのDC誘導因子をコードする特定のポリペプチドの変異体は、本明細書に記載の配列アラインメントアルゴリズム及びパラメータによって決定され、当業者に公知であるその特定の参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドと少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれ以上の配列同一性を有する。
【0096】
比較のための配列アラインメントの方法には、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAが含まれる。GAPは、Needleman及びWunsch((1970) J Mol Biol 48:443-453)のアルゴリズムを使用して、一致の数を最大化し、ギャップの数を最小限に抑える2つの配列のグローバルな(配列全体にわたる)アラインメントを見つける。BLASTアルゴリズム(Altschulら (1990) J Mol Biol 215:403-10)は、パーセント配列同一性を計算し、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)を通じて公開されている。類似性及び同一性のグローバルなパーセンテージはまた、MatGATソフトウェアパッケージ(Campanellaら,BMC Bioinformatics.2003 Jul 10;4:29.MatGAT:タンパク質又はDNA配列を使用して類似性/同一性行列を生成するアプリケーション)で利用可能な方法の1つを用いて決定され得る。少数の手動編集は、当業者に明らかなように、保存されたモチーフ間のアライメントを最適化するために行われ得る。本主題においてパーセンテージとして示される配列同一性の値を、デフォルトパラメータでBLASTを用いてアミノ酸配列全体にわたって決定した。
【0097】
一実施形態では、本開示のDNAコード配列のいずれかは、1以上の、好ましくは0、1、2、3、4、5、6個の異なるデオキシリボヌクレオチド塩基を含むように改変、置換、又は変更することができる。
【0098】
一実施形態では、本開示は、Clec9aレポーターマウスにおいて、このモデルをcDC2誘導因子のスクリーニングに適するようにするために、cDC2の大部分がtdTomato蛍光タンパク質で標識されていることを検証した。PU.1はDC発生において重要な役割を果たすと説明され、IRF4は、cDC2仕様を保証すると説明されている。さらに、PU.1とIRF4の両方は、cDC2サブセット上で高発現している。したがって、本開示は、PU.1及びIRF4を追加の33個のcDC2誘導候補と組み合わせ、Clec9aレポーターマウス胚性線維芽細胞(MEF)において追加のスクリーニングを実施した。
【0099】
一実施形態では、IRF4及びPRDM1と組み合わせたPU.1は、Clec9aレポーター活性化及びcDC2表面マーカーCD11bの表面発現を誘導するのに十分である。さらに、DC機能にとって重要な主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子の発現は、IRF4及びPRDM1と組み合わせたPU.1によって誘導される。
【0100】
PU.1に続いてIRF4及びPRDM1をコードするポリシストロニック構築物は、Clec9aレポーター活性化の効率を増加させる。結果として生成されるtdTomato細胞は、TLR刺激時に炎症誘発性TNF-αを分泌し、MHC-II上に負荷された抗原をCD4 T細胞に提示し、それらの増殖及び活性化を誘導する能力を示す。
【0101】
一実施形態では、IRF4及びIRF2と組み合わせたPU.1は、顕著なレポーター活性化を誘導する。さらに、IRF4及びIRF2と組み合わせたPU.1は、tdT+CD11b+二重陽性細胞集団の増加をもたらす。
【0102】
一実施形態では、IRF4及びPOU2F2と組み合わせたPU.1又はIRF4及びTGIF1と組み合わせたPU.1は、cDC2特異的表面マーカーであるCD11bの発現増加をもたらす。
【0103】
一実施形態では、IRF4及びRBPJと組み合わせたPU.1又はIRF4及びRELBと組み合わせたPU.1は、cDC2特異的表面マーカーであるCD11bの発現増加をもたらす。
【0104】
要約すると、発明者らは、PU.1及びIRF4をPRDM1、IRF2、RBPJ、RELB、POU2F2又はTGIF1と組み合わせると、線維芽細胞においてcDC2表現型が誘導されることを示す。これらの知見は、cDC2の不均一性仕様に関する洞察を提供する。直接初期化による次世代のcDC2は、自己操作された細胞を用いて免疫促進及び免疫寛容原性応答を誘導する可能性を開く。
【0105】
一実施形態では、単離された転写因子の組み合わせは、
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とPRDM1(配列番号13-配列番号18);
PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とIRF2(配列番号19-配列番号24);
又はPU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);
又はPU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);
又はPU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とRBPJ(配列番号43-配列番号48);
又はPU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)とRELB(配列番号37-配列番号42)であり得る。
【0106】
本開示の別の態様は、PU.1(配列番号1-配列番号6)、IRF4(配列番号7-配列番号12)、PRDM1(配列番号13-配列番号18)、IRF2(配列番号19-配列番号24)、POU2F2(配列番号25-配列番号30)とTGIF1(配列番号31-配列番号36)からなる群からの少なくとも2つの配列の組み合わせの使用である。単離された転写因子は、以下の組み合わせ:
PU.1(配列番号1-配列番号6)とIRF4(配列番号7-配列番号12);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とPRDM1(配列番号13-配列番号18);又は
IRF4(配列番号7-配列番号12)とPRDM1(配列番号13-配列番号18);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とIRF2(配列番号19-配列番号24);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);又は
IRF4(配列番号7-配列番号12)とIRF2(配列番号19-配列番号24);又は
IRF4(配列番号7-配列番号12)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);又は
IRF4(配列番号7-配列番号12)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);又は
PRDM1(配列番号13-配列番号18)とIRF2(配列番号19-配列番号24);又は
PRDM1(配列番号13-配列番号18)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);又は
PRDM1(配列番号13-配列番号18)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とIRF2(配列番号19-配列番号24);又は
IRF2(配列番号19-配列番号24)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);又は
IRF2(配列番号19-配列番号24)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とPOU2F2(配列番号25-配列番号30);又は
POU2F2(配列番号25-配列番号30)とTGIF1(配列番号31-配列番号36);又は
PU.1(配列番号1-配列番号6)とTGIF1(配列番号31-配列番号36)
を含み得る。
【0107】
より良い結果のための一実施形態では、細胞は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、腫瘍細胞、癌細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。特に哺乳動物細胞、より特にはマウス又はヒトの細胞。
【0108】
一実施形態では、本開示の単離された転写因子は、獣医学又はヒトの医学的用途のため、特に感染症、又はウイルス性疾患、又はウイルス誘発性疾患、又は神経変性疾患において、又は癌において、又は糖尿病において、又は免疫療法において、又は自己免疫疾患において、又は過敏症において使用され得る。
【0109】
より良い結果のための一実施形態では、本開示の単離された転写因子は、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞、又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞の樹状細胞又はインターフェロン産生細胞への初期化因子又は誘導因子として使用され得る。
【0110】
以下の図は、本開示を説明するための好ましい実施形態を提供し、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1図1-3つの主要なDCサブセットの個体発生。DCは、骨髄中の一般的なDC前駆体(CDP)から出現し、異なるDCサブセット:主にTh1応答及び細胞傷害性T細胞応答を促進する抗原交差提示を行うcDC1;ウイルス感染時にインターフェロンI型産生細胞として作用するpDC;主にMHC-II抗原提示を行い、Th2、Th17及びTreg応答を促進するcDC2に発達することができる。
図2図2-直接初期化されるcDC2のアプリケーションの概略図。患者から得られた線維芽細胞は、個別化免疫療法に適用できるcDC2細胞に初期化される。誘導されたcDC2は、寄生虫に対する免疫、細胞外病原体に対する免疫を誘導し、抗腫瘍応答を促進するため、又は自己免疫又は過敏症の状況における自己抗原に対する免疫寛容を誘導するために使用することができる。
図3図3-脾臓cDC2は、Clec9a-tdTomatoレポーターによって促進される高レベルのtdTomatoタンパク質を発現する。(A)Clec9a-tdTomatoマウスから単離した脾臓cDC1(MHC-II CD11c CD8a)及びcDC2(MHC-II CD11c CD11b)集団におけるtdTomato発現のフローサイトメトリー解析。(B)cDC1(CD8α)及びcDC2(CD8αCD11b)におけるtdTomato細胞の定量。
図4図4-Clec9a-レポーター活性化及び遺伝子発現パターンは、cDC2指示のための因子を同定するのに驚くほど適している。(A)cDC2誘導性転写因子(TF)をスクリーニングする実験計画。PU.1、IRF8及びBATF3(PIB)の組み合わせは、Clec9a-tdTomato(Clec9a-tdT)マウス胚性線維芽細胞(MEF)のcDC1様誘導細胞への初期化を誘導する。この組み合わせは、cDCの基本的TFを保持し、cDC2初期化の組み合わせを識別するように変更される。(B)cDC1及びcDC2におけるSpi1、Irf8及びBatf3の発現の比較(GSE15907)。遺伝子発現の倍数変化を括弧内に示す。(C及びD)PU.1+BATF3とIRFファミリーの異なるメンバー(IRF1~IRF9)、又はPU.1+IRF4の組み合わせでの形質導入後6日目のtdTomato細胞の定量。(E)cDC1及びcDC2におけるIrf遺伝子ファミリーの発現(GSE15907)。倍数変化を括弧内に示す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.00001、対応なしt検定及び一元配置ANOVA。
図5図5-cDC2誘導性転写因子を同定するための計画。(A)cDC2初期化の組み合わせについてのスクリーニング計画の概略図。PU.1及びIRF4を追加の個々の候補TFと共に過剰発現させた。Clec9aレポーター活性化及びcDC2表面マーカーCD11bの発現を初期化の6日目に評価した。(B)候補TFは、cDC1及びpDC集団と比較すると、cDC2において高度に富化されている。cDC1、cDC2及びpDC集団におけるPU.1、IRF4及び33個の候補の発現のヒートマップ(GSE15907)。
図6図6-cDC2誘導性TFについてのClec9aレポーターベースのスクリーニングは、cDC2初期化の新規調節因子を同定する。個々の追加候補と組み合わせたPU.1+IRF4でのClec9aレポーターMEFの形質導入後6日目におけるフローサイトメトリー分析の代表的なプロット(A)及びtdTomato陽性(tdTomato)(B)細胞の定量(平均±SD;条件ごとに2~7反復のスクリーニングデータ及び統計)。M2rtTA、PU.1+IRF8+BATF3及びPU.1+IRF4+BATF3で形質導入したMEFを対照として含めた。P<0.05、**P<0.01、一元配置ANOVA。
図7図7-cDC2誘導性TFについてのCD11b発現ベースのスクリーニングは、cDC2初期化の新たな調節因子を同定する。個々の追加候補と組み合わせたPU.1+IRF4でのClec9aレポーターMEFの形質導入後6日目におけるフローサイトメトリー分析の代表的なプロット(A)及びCD11b+(B)細胞の定量(平均±SD;条件ごとに2~7反復のスクリーニングデータ及び統計)。M2rtTA、PU.1+IRF8+BATF3及びPU.1+IRF4+BATF3で形質導入したMEFを対照として含めた。P<0.05、**P<0.01、一元配置ANOVA。
図8図8-3つの転写因子の組み合わせによるマウス線維芽細胞からのcDC2様細胞の誘導。個々の追加候補と組み合わせたPU.1+IRF4での形質導入後6日目におけるフローサイトメトリー分析の代表的なプロット(A)及び二重陽性tdTomatoCD11b(B)細胞の定量(平均±SD、条件ごとに2反復からなるスクリーニングデータ)。M2rtTA形質導入MEFを対照として含めた。
図9図9-PU.1、IRF4及びPRDM1は、cDC2の初期化に十分であり、必要である。PU.1+IRF4+PRDM1の形質導入及び6日目の3TFプールからのTFの個々の除去又は個々のTF発現後のtdT細胞(A)及びtdT集団内でゲーティングしたCD11b細胞(B)の定量(n=2、平均±SD)。M2rtTA形質導入MEFを対照として含めた。
図10図10-PU.1、IRF4及びPRDM1はcDC2細胞において富化されている。(A)DC集団(pDC、cDC1及びcDC2)におけるSpi1、Irf4及びPrdm1の遺伝子発現。Spi1、Irf4及びPrdm1はcDC2内でより多く発現し、Prdm1はcDC2内で特異的により多く発現する。(B)Spi1、Irf4とPrdm1の組み合わせは、96のマウス組織及び細胞型の中でCD8a-DCにおいて主に富化されている。遺伝子発現データ(GeneAtlas MOE430)をログ変換し、各遺伝子について0~1の範囲に正規化し、その後、Spi1+Irf4+Prdm1について最高の平均発現を調べた。
図11図11-PU.1、IRF4及びPRDM1は、CD45及びMHC-II表面発現を誘導する。6日目のM2rtTA、PU.1+IRF8+BATF3及びPU.1+IRF4+PRDM1形質導入MEFの(A)代表的なフローサイトメトリープロット及び(B)MHC-II細胞の定量(n=2、平均±SD)。(C)6日目のM2rtTA、PU.1+IRF8+BATF3及びPU.1+IRF4+PRDM1形質導入MEFにおけるtdT内のMHC-II細胞の定量(n=2、平均±SD)。(D)9日目のPU.1+IRF4+PRDM1形質導入MEFにおけるtdT及びtdT集団内でのCD45及びMHC-II発現。
図12図12-PU.1及びIRF4の組み合わせは、Clec9aレポーター活性化に十分である。個々の追加の候補と組み合わせたPU.1でのClec9aレポーターMEFの形質導入後6日目におけるtdTomato陽性(tdTomato)細胞の定量(平均±SD;条件ごとに2反復のスクリーニングデータ)。M2rtTA形質導入MEFを対照として含めた。
図13図13-DC2誘導性TFの組み合わせは、漸進的なClec9aレポーター活性化を誘導する。PU.1+IRF4+PRDM1(P+I4+P)とPU.1+IRF4+IRF2(P+I4+I2)の組み合わせに対するClec9a-tdTomatoレポーター活性化の動態。M2rtTA形質導入MEFを対照として含めた。
図14図14-PU.1、IRF4及びIRF2は、PRDM1から独立したDC表現型を誘導する最小かつ十分な組み合わせである。(A)PU.1+IRF4+IRF2による形質導入及び6日目の3TFプールからのTFの個々の除去又は個々のTF発現後のtdTomato細胞の定量化(n=2、平均±SD)。(B)Spi1、Irf4とIrf2の組み合わせは、96のマウス組織及び細胞型の中でCD8a-DCにおいて主に富化されている。遺伝子発現データ(GeneAtlas MOE430)をログ変換し、各遺伝子について0~1の範囲に正規化し、その後、Spi1+Irf4+Irf2について最高の平均発現を調べた。(C)初期化の6日目にPRDM1、IRF2又はPRDM1+IRF2と組み合わせたPU.1+IRF4での形質導入後のTdTomato細胞の定量。(D)pFUW-TetOプラスミド(PI2ポリ)内の自己切断ペプチドP2A及びT2Aによって分離された、Spi1に続いてIrf4及びIrf2をコードするポリシストロニック構築物の概略図。(E)初期化の6日目にM2rtTA、個々のPU.1、IRF4及びIRF2因子(P+I+I)並びにPI2ポリ構築物での形質導入後のTdTomato細胞の定量。
図15図15-ポリシストロニックPIPベクター(PIポリ)は、初期化効率を向上させる。(A)pFUW-TetOプラスミド(PIポリ)に挿入された自己切断ペプチドP2A及びT2Aによって分離された、Spi1に続いてIrf4及びPrdm1をコードするポリシストロニック構築物の概略図。初期化の6日目に個々のベクター(P+I+P)によってコードされるM2rtTA、PU.1、IRF4及びPRDM1、ポリシストロニックPU.1、IRF8とBATF3の組み合わせ(PIポリ)及びポリシストロニックPU.1、IRF4とPRDM1(PIポリ)構築物で形質導入した後のTdT細胞の(B)代表的なフローサイトメトリープロット及び(C)定量(平均±SD、n=2)。(D)初期化の9日目にM2rtTA、PIポリ及びPIポリで形質導入し、tdT細胞形態を表すMEFの蛍光顕微鏡による比較(白矢印)。
図16図16-PIP誘導細胞は、TNF-α炎症誘発性サイトカインを分泌する。LPS、ポリI:C(PiC)、R848及びCpG ODN1585による一晩のTLR刺激の前(-)又は後のPU.1、IRF4とPRDM1ポリシストロニックベクター(PIポリ)によって誘導された初期化の9日目におけるFACS選別tdTomato+細胞の上清中のTNF-α及びIL-10濃度の定量。
図17図17-PIP発現は、抗原特異的にMHC-II分子中の抗原をCD4 T細胞に提示する能力を誘導する。OVAペプチド(323-339)を予め負荷した又はしていないMEF、選別したPIP-TdT細胞(9日目)及び骨髄DC(BM-DC)の異なる刺激条件:刺激なし(-)、LPS、PiC、R848及びCpG ODN1585での共培養後のOVA特異的OT-II Rag2KO CD4 T細胞(CD4 TCRb)のCTV希釈の定量。
【発明を実施するための形態】
【0112】
詳細な説明
本開示は、細胞を通常型樹状細胞、特に通常型樹状細胞2型(cDC2)に初期化するための組成物、核酸構築物、その方法及びキット、特に単離/合成転写因子を導入し、発現させることにより、分化幹細胞、多分化能幹細胞又は多能性幹細胞からcDC、特にcDC2に生成する方法の開発に関する。より特には、本開示は、特異的転写因子の組み合わせの驚くほど有益な使用を伴う直接細胞初期化によって、cDC、特にcDC2を得るための方法を提供する。そのような組成物、核酸構築物、方法及びキットは、インビトロ、エキソビボ、又はインビボで樹状細胞を誘導するために使用することができ、これらの誘導性DC又はAPCは、免疫療法用途に使用することができる。
【0113】
天然DCは、全ての組織に播種される骨髄由来細胞である。DCは、環境をサンプリングし、収集された情報を適応免疫系の細胞(T細胞及びB細胞)に伝達する態勢を整えている。抗原が飲み込まれると、DCは、ペプチド主要組織適合性複合体(MHC)分子複合体の形態のプロセシングされた抗原をリンパ組織中のナイーブ(すなわち、抗原無経験の)T細胞に提示することによって免疫応答を開始する。活性化後、DCは典型的には、多くのT及びBリンパ球応答の開始並びに/又は増強に関与する様々なサイトカイン、すなわちI型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)-α、IFN-γ、IL-12及びIL-6を分泌することに加えて、共刺激性及びMHC分子を過剰発現する。そのため、DCは一般に、主要組織適合性複合体クラスII分子(MHC-II)、CD80/86及びCD40などの共刺激分子、並びにインテグリンCD11cの高発現、並びに炎症性サイトカインを分泌し、非リンパ系からリンパ系器官に移行し、ナイーブT細胞を刺激するそれらの優れた能力によって識別される。マウス及びヒトでは、DCの別々のサブセットは、表現型、個体発生、及び機能によって可変的に定義され得る(図1)。それらは、MHCクラスI上の交差提示の能力を示し、感染性病原体又は腫瘍に対するCTL応答を誘導するリンパ系器官に見られる通常型DCサブセット1(cDC1、CD8αDCサブセットとしても知られる)を含む。pDCは、ウイルス感染に応答して大量のI型インターフェロンを産生することによって作用する。一方、cDC2は、Th2及びTh17 T細胞応答につながるMHC-II提示に優れている。T細胞のプライミングに加えて、cDC2は、Tregをプライミングすることによって、又は胸腺における自己反応性T細胞のネガティブ選択に寄与することによって、抗原に対する自己寛容の確立に関与している。CLEC9Aとしても知られているDNGR-1は、マウスの死細胞関連抗原に対するCTLのクロスプライミングを支持する壊死細胞の受容体である。DNGR-1は、マウスcDC1 DC、cDC2 DC及びpDCによって高レベルで選択的に発現する。最近、Clec9aの発現は、リンパ組織における通常型又は形質細胞様のDC系統及び複数の系統並びにそれらの子孫になるDC前駆体(CDP)の識別を可能にすることが示された。
【0114】
本明細書に記載の分化細胞を誘導性DC、具体的にはcDC2に初期化することができるDC誘導因子の識別の成功は、多くの方法でcDC2の生物学及び不均一性に関する発明者らの基本的な理解を深めることができる。この研究は、cDC2転写ネットワークに関する徹底的な洞察を提供する。加えて、DC誘導因子を識別することで、DCの状態がどのように確立され、重要な規制機構がどのように配置されているかを理解する前例のない機会が得られる。
【0115】
転写因子は、発生中の全ての細胞型の仕様において重要な役割を果たす。転写因子媒介性初期化を用いた直接初期化計画の成功は、多能性ES/iPS細胞又は多分化能幹細胞の分化を、そのような因子を用いて特定の運命に誘導することも同様に妥当であることを示している。したがって、本明細書で識別されたDC誘導因子を用いて、DC富化転写因子の発現によるES/iPS細胞の最終的なDC運命への指向性分化を達成することができる。さらに、本明細書で識別されたDC誘導因子を用いて、DC富化転写因子の発現による多分化能造血幹細胞及び前駆細胞の最終的なDC運命への指向性分化を達成することができる。
【0116】
本開示の態様は、自己抗原を提示して、寛容応答を生じさせることができる細胞を生成するためのTFの使用又はTFの組み合わせの使用である。本方法は、自己免疫障害及び過敏症障害の状況における免疫寛容原性免疫療法のための実行可能な計画を表す。
【0117】
線維芽細胞をヒト源から取得し、次いで、免疫調節目的のためにcDC2に初期化することができる(図2)。cDC2の既知の免疫の役割によれば、これらの生成されたcDC2は、抗寄生虫免疫、細胞外病原体に対する免疫、自己免疫又は過敏症の状況における自己抗原に対する免疫寛容を促進するため、又はcDC1と組み合わせた場合には抗腫瘍免疫を促進することにも適用することができる。
【0118】
DC誘導因子をコードする核酸、例えば、DNA若しくはRNA、又はその構築物を、ウイルスベクターを用いて、又はウイルスベクターなしで、1回又は繰り返しトランスフェクションにより細胞に導入し、遺伝子産物の発現及び/又はRNA分子の翻訳を、本明細書に記載のcDC2に形態学的、生化学的、及び機能的に類似した細胞内で生じさせる。これらの誘導性cDC2は、cDC2表面マーカーCD11bを発現する。
【0119】
一実施形態では、細胞初期化によるcDC2誘導TF及びcDC2誘導TF組み合わせの効果をスクリーニングするために、DC特異的レポーター(Clec9a-Cre X R26-stop-tdTomato)を保有するマウス胚性線維芽細胞(MEF)を使用して、そこでDC2誘導TFを示すためにレポーターの活性化を使用した。Clec9a-tomatoレポーターマウスにおいて、tdTomato蛍光タンパク質は、CDP、プレDC、cDC及びpDCによって排他的に発現する。培養中のマクロファージ、他の免疫系統又は単球由来DCはClec9aを発現せず、したがってtdTomatoタンパク質も発現しない。Clec9aレポーターマウスから単離した脾臓細胞を分析し、cDC2細胞(CD11cMHC-IICD8aCD11bでゲーティングした)の78.9%がtdTomato蛍光タンパク質を発現していることを確認した(図3)。
【0120】
二重トランスジェニックClec9a-tdTomatoレポーターMEFを、E13.5胚から単離し、蛍光活性化細胞選別(FACS)の使用により、既に造血系統になることが決まっている可能性のある任意の混入tdTomato又はCD45細胞から除外した。
【0121】
cDC1様細胞への線維芽細胞の初期化が、PU.1、IRF8とBATF3(PIB)の組み合わせ過剰発現を通じて最近実証された。この組み合わせは、cDC1、cDC2及びpDCで発現しているClec9a-Cre X R26-stop-tdT(Clec9a-tdT)マウスを用いたスクリーニングによって特定された(Rosaら、2018)。この同じDCレポーターを用いて、報告されたTFの組み合わせを変更することによって、cDC2系統を指示するcDC2転写因子を特定した(図4A)。
【0122】
cDC集団間でSpi1、Irf8及びBatf3の発現を比較することにより、Spi1がcDC2において高発現していることが示される一方で、Irf8及びBatf3は、cDC1と比較して発現が低かった(図4B)。さらに、機能欠失の研究によると、PU.1欠失はDC系統全体の仕様を損ない、DC発生が継続して必要とされることを示唆している。まとめると、これらのデータは、cDC2初期化のためのPU.1維持を支持し、IRF8とBATF3を他のTFで置き換えることができることを示唆している。
【0123】
TFのIRFファミリーはDC発生、成熟及び機能的役割に重要であることが知られているので(Gabriele & Ozato,2007)、PU.1及びBATF3と組み合わせた他のIRFタンパク質によるIRF8の置換をClec9aレポーターの活性化について試験した。IRF4は顕著なtdT発現をもたらし(図4C)、IRF4がDC初期化においてIRF8と置き換えることができることを示唆している。IRF4は、cDC2発生に必要であると考えられている。一方、IRF8とBATF3は、cDC1発生にのみ重要であると考えられており、cDC2の初期化には無視できることを示唆している。しかし、PU.1とIRF4の組み合わせ過剰発現は、顕著なClec9aレポーター活性化をもたらさなかった(0.21%、図4C及びD)ことは、これら2つのTFがcDC2初期化を誘導するのに必要かもしれないが、十分ではないことを示唆している。また、cDC1集団とcDC2集団の間で全てのIrf遺伝子ファミリーメンバーの発現を比較すると、Irf4は、cDC2において顕著により多く発現しており(図4E)、cDC2初期化にとっての重要性をさらに証明している。実際、IRFファミリー全体から、Irf4のみ(2.6倍)及びより低い程度のIrf2(1.3倍)がcDC2細胞において過剰に存在している。
【0124】
一実施形態では、cDC2初期化TF組み合わせをスクリーニングするために、候補TFをPU.1及びIRF4と個々に組み合わせ、Clec9aレポーター活性化及びcDC2表面マーカーCD11bの発現について評価した(図5A)。
【0125】
一実施形態では、33個のcDC2誘導候補TFを、cDC1及びpDCと比較した場合にcDC2におけるそれらの特異的に富化された遺伝子発現により選択した(図5B)。これらの33個の候補TFを、PU.1及びIRF4と共に、初期化実績のあるドキシサイクリン(Dox)誘導性レンチウイルスベクターで個別にクローニングした。
【0126】
一実施形態では、cDC2初期化TF組み合わせについてスクリーニングするために、候補TFを、最初にPU.1と個々に組み合わせ、Clec9aレポーター活性化について評価した(図12)。このスクリーニングから、PU.1+IRF4の組み合わせのみが顕著な割合のTdT細胞をもたらし、この組み合わせをさらなるcDC2誘導性組み合わせのベースラインとして固めた。
【0127】
一実施形態では、候補TFのスクリーニングは、PRDM1又はIRF2をPU.1及びIRF4と組み合わせると、顕著なClec9aレポーター活性化(図6)及びtdTCD11b二重集団の増加(図8)が生じることを特定した。PRDM1をPU.1及びIRF4と組み合わせても、cDC2表面マーカーCD11bの発現増加が生じた。
【0128】
一実施形態では、PRDM1、RBPJ、RELB、POU2F2又はTGIF1を、PU.1及びIRF4と組み合わせると、cDC2表面マーカーCD11bの発現増加が生じる(図7)。集合的に、これらのデータは、PRDM1、RBPJ、RELB、POU2F2及びTGIF1を、cDC2サブセット内の固有の多様性を反映する異なるcDC2細胞状態の誘導を示す可能性がある追加のcDC2指示TFとして特定する。
【0129】
一実施形態では、PU.1+IRF4+PRDM1が初期化のための最小ネットワークを表すかどうかを評価するために、因子の各々を、3つのTFプールから個々に除去した。これらの個々のTFの各々を除去すると、Clec9aレポーター活性化及びCD11b発現を減少させ、各TFの個々の発現がtdT及びCD11bの低発現をもたらした(図9A及びB)。集合的に、このデータは、Clec9a-tdTレポーター活性化及びCD11b表面発現に十分なTF組み合わせとしてPU.1+IRF4+PRDM1を暗示する。
【0130】
Spi1、Irf4及びPrdm1の個々の発現を比較すると、cDC2におけるこれら3つのTFの全てが富化していることが明らかになり、他のDC集団と比較した場合に、PRDM1がcDC2において最高の発現を示す(図10A)。Spi1、Irf4及びPrdm1の組み合わせ発現も、CD8a DCと高度に関連付けられる(図10B)。
【0131】
細胞表面マーカー発現をさらに分析すると、PU.1+IRF8+BATF3生成DCにおける発現の14.43%と比較して、PU.1+IRF4+PRDM1形質導入細胞の13.62%がMHC-IIを発現させた(図11A及びB)。tdTコンパートメント内では、PU.1+IRF4+PRDM1誘導細胞の35.58%が表面MHC-IIを発現した(図11C)。さらに、tdT細胞の20.10%が表面MHC-IIとCD45を共発現させる一方で、細胞のわずか1.36%がtdTコンパートメント内でMHC-IICD45であった(図11D)。これらのデータはさらに、PU.1+IRF4+PRDM1が造血及びAPC表現型及び抗原提示機構の獲得を誘導することを支持する。
【0132】
PU.1+IRF4+IRF2の組み合わせも、DC初期化におけるその役割についてさらに評価した。個々のTFの各々の除去はClec9aレポーター活性化消失させ、各TFの個々の発現は低いTdT発現をもたらした(図14A)。Spi1、Irf4及びIrf2の組み合わせ発現も、CD8a-DCと高度に関連付けられる(図14B)。PRDM1及びIRF2をPU.1及びIRF4に個別に加えると、生産的なClec9aレポーター活性化がもたらされることを考慮して、潜在的な相乗効果に対処するために、これら4つのTFの共発現を調査した。しかし、PU.1、IRF4、IRF2及びPRDM1の過剰発現はClec9aレポーター活性化を消失させ、DC初期化におけるPRDM1とIRF2の交差阻害的役割を示唆する(図14C)。集合的に、このデータは、PRDM1から独立したDC表現型を誘導するための最小かつ十分な組み合わせとしてPU.1+IRF4+IRF2を暗示し、cDC2の異なるサブセットの誘導を示唆している。
【0133】
PU.1、IRF4及びPRDM1又はPU.1、IRF4及びIRF2での形質導入時に、Clec9aレポーターの活性化は、両方の組み合わせについて2日目に検出され始める。9日目(PU.1+IRF4+IRF2)と10日目(PU.1、IRF4とPRDM1)の間でTdT発現がピークに達する(図13)。
【0134】
転写因子の組み合わせをコードするポリシストロニック構築物が、初期化の効率を高めるために用いられてきた。Spi1に続いてIrf4及びIrf2をコードするポリシストロニック構築物(PIポリ)によるMEFの形質導入(図14D)は、個々の発現(P+I+I)と比較した場合、初期化効率の増加をもたらした(図14E)。さらに、自己切断ペプチドP2A及びT2Aによって分離される、Spi1に続いてIrf4及びPrdm1をコードするポリシストロニック構築物(PIポリ)を生成した(図15A)。個々の発現(P+I+P)と比較すると、PIポリは、cDC1様初期化のための前記ポリシストロニック構築物PU.1+IRF8+BATF3(PIポリ)に匹敵するパーセンテージの12.20%に達する初期化効率の増加をもたらした(図15B及び15C)。蛍光顕微鏡は、PIポリとPIポリの両方の組み合わせから生じるtdT細胞の樹状細胞形態を強調する(図15C)。
【0135】
DCの典型的な免疫調節的特徴は、サイトカインを分泌する能力による。炎症誘発性cDC2は、TLR刺激に応答してTNF-αを分泌すると説明されている。一方、抗炎症性cDC2は、IL-10の分泌によって特徴付けられ、これはさらにそれらの免疫調節機能を媒介する。選別したPIポリ生成TdT細胞のサイトカイン分泌を、toll様受容体TLR3(PiC-ポリイノシン酸:ポリシチジル酸)、TLR4(LPS-リポ多糖)、TLR7/TLR8(R848-レシキモド)及びTLR9(CpG ODN1585)の刺激時に行った。PU.1、IRF8及びPRDM1の過剰発現は、炎症誘発性腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を分泌する能力を誘導し、これはLPS負荷後に2.2倍増加する(図16)。対照的に、抗炎症性サイトカインであるIL-10は検出されない。これらの結果は、PIPが細胞に炎症誘発性DC2を誘導することを示唆している。
【0136】
CD4 T細胞の抗原特異的増殖を促進する生成細胞の機能的能力を特徴付けるために、9日目に選別したPIポリ生成TdT細胞、MEF及び骨髄由来DC(BM-DC)を、MHC-II分子の状況で提示されるオボアルブミン(OVA)ペプチド323-329に特異的なT細胞受容体を発現するOT-II CD4 T細胞と共培養した(図16)。OVAペプチド323-339を予め負荷した場合に、PIP誘導細胞は、10.67±1.16%OT-II CD4 T細胞の増殖(CTVlow)を誘導する能力を獲得した。LPS及びR848の存在下で、PIP誘導細胞は、OT-II CD4 T細胞のわずかにより高い増殖、それぞれ12.14±1.33%及び12.23±0.54%を誘導する。これらのデータは、CD4 T細胞応答を促進する、MHC-II分子上に抗原をロードして提示するPIP誘導細胞の能力を支持する(図17)。
【0137】
DC不均一性に関する最近の更新により、異なる転写調節因子及び別々の抗炎症機能及び炎症誘発性機能によって定義されるcDC2の2つの異なるサブセットが同定された(Brownら,2019)。偶然にも、この報告では、これらの新たに同定されたサブセットの各々について上位を定義するTF遺伝子についての解析は、その炎症誘発性表現型によって特徴付けられるサブセットであるcDC2Bに関連付けられる上位TFとしてPRDM1を強調する。したがって、これらのデータは、本開示で報告されるPU.1+IRF4+PRDM1によって生成されたDCの炎症誘発性表現型をさらに支持し、したがってcDC2B表現型に類似している。
【0138】
いくつかの実施形態では、配列リストに提供される配列によってコードされる参照ポリペプチドと同一又は類似の活性を有するポリペプチド変異体又はファミリーメンバーは、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用され得る。一般に、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用するためのcDC2誘導因子をコードする特定のポリペプチドの変異体は、本明細書に記載の配列アラインメントプログラム及びパラメータによって決定され、当業者に公知である、その特定の参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%以上の配列同一性を有するであろう。
【0139】
一実施形態では、ヒトPU.1転写因子(PU.1)、mRNA(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0140】
一実施形態では、ヒトインターフェロン調節因子4(IRF4)、mRNA(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0141】
一実施形態では、ヒトPRドメインジンクフィンガータンパク質1(PRDM1)、mRNA(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0142】
一実施形態では、ヒトインターフェロン調節因子2(IRF2)、mRNA(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンも、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0143】
一実施形態では、ヒトPOUクラス2ホメオボックス2(POU2F2)、mRNA(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0144】
一実施形態では、ヒトホメオボックスタンパク質TGIF1(TGIF1)、mRNA(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0145】
一実施形態では、ヒト組み換え結合タンパク質サプレッサーオブヘアレス(RBPJ)、mRNA(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンが、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0146】
一実施形態では、ヒト転写因子RelB(RELB)、mRNA(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)及びコドン最適化された、又は同じアミノ酸をコードする異なるコドンも、本明細書に記載の核酸への言及によって包含されることも当然企図される。
【0147】
本明細書に提供される組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、線維芽細胞又は造血系統細胞、多分化能幹細胞、誘導多能性幹細胞、癌又は腫瘍細胞などの出発体細胞から誘導されるcDC2を生成するために使用又は選択されるcDC2誘導因子の数は、少なくとも2個である。いくつかの実施形態では、使用又は選択されるcDC2誘導因子の数は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも33個、少なくとも35個、少なくとも40個、又はそれ以上である。
【0148】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、PU.1、IRF4、PRDM1、IRF2、RBPJ、RELB、POU2F2及びTGIF1などのcDC2誘導因子(複数可)をコードする核酸配列又は構築物は、標準的な分子生物学技術を用いた細胞のトランスフェクションに適切な発現ベクターに挿入又は作動可能に連結される。本明細書で使用する「ベクター」は、本明細書に記載の核酸構築物又は置換カセットなどの挿入ヌクレオチド配列に有用な生物学的又は生化学的特性を提供するdsDNA分子などの核酸分子を指す。例としては、プラスミド、ファージ、自己複製配列(ARS)、セントロメア、及びインビトロで若しくは宿主細胞内で複製する又は複製される、又は所望の核酸セグメントを宿主細胞内の所望の場所に伝達することができる他の配列が挙げられる。ベクターは、ベクターの本質的な生物学的機能を失うことなく決定可能な方法で配列を切断することができ、その複製及びクローニングをもたらすために核酸断片をスプライシング又は挿入することができる1以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(I、II又はIIs型であるか)を有することができる。ベクターはまた、2つの核酸分子間の核酸配列の交換を可能にする1以上の組換え部位を含むことができる。ベクターはさらに、例えば、PCR用のプライマー部位、転写及び/又は翻訳開始及び/又は調節部位、組換えシグナル、レプリコン、追加の選択マーカーなどを提供することができる。ベクターは、さらに、該ベクターで形質転換された細胞の識別で使用するのに適する1以上の選択マーカーを含むことができる。
【0149】
本明細書に記載の組成物、方法、構築物、ベクター及びキットのいくつかの実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかのウイルス媒介発現方法は、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを採用し、そのような発現方法が遺伝子送達で使用され、当技術分野において周知である。
【0150】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、ウイルスベクターはレトロウイルスである。レトロウイルスは、遺伝子送達に便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子をベクターに挿入し、当技術分野で公知の技術を用いてレトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。次いで、組換えウイルスを単離し、インビボ又はエキソビボのいずれかで対象の標的細胞に送達することができる。多数のレトロウイルス系が記載されている。例えば、米国特許第5,219,740号;Miller及びRosman(1989) BioTechniques 7:980-90;Miller,A.D.(1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpaら(1991) Virology 180:849-52;Burnsら(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-37;Boris-Lawrie及びTemin (1993) Curr.Opin.Genet.Develop.3:102-09を参照されたい。本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、レトロウイルスは複製欠損である。レトロウイルスベクターシステムは、ウイルス構造タンパク質がパッケージング細胞株においてトランスで供給されることを条件として、5'及び3'LTR及びパッケージングシグナルを含む最小ベクターがベクターパッケージング、感染及び標的細胞への組み込みを可能にするのに十分であるという事実を利用する。遺伝子導入のためのレトロウイルスベクターの基本的な利点には、ほとんどの細胞型における効率的な感染及び遺伝子発現、標的細胞染色体DNAへの正確な単一コピーベクター組み込み、及びレトロウイルスゲノムの操作の容易さが含まれる。
【0151】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベースの発現ベクターである。宿主ゲノムに組み込まれるレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは染色体外に存続するため、挿入変異誘発に関連付けられるリスクが最小限に抑えられる(Haj-Ahmad及びGraham(1986) J.Virol.57:267-74;Bettら(1993) J.Virol.67:5911-21;Mitterederら(1994) Human Gene Therapy 5:717-29;Sethら(1994) J.Virol.68:933-40;Barrら(1994) Gene Therapy 1:51-58;Berkner,K.L.(1988) BioTechniques 6:616-29;並びにRichら(1993) Human Gene Therapy 4:461-76)。アデノウイルスベクターは、多種多様な細胞に感染し、広い宿主範囲を有し、高効率の感染力を示し、異種遺伝子を高レベルで直接発現し、インビボでそれらの遺伝子の長期発現を達成する。このウイルスは無細胞ビリオンとして完全に感染性であるため、産生細胞株の注入は必要ではない。安全性に関しては、アデノウイルスは重篤なヒト病態と関連付けられず、ウイルス由来の組換えベクターは、ウイルスゲノムの初期領域1(「E1」)の欠失によって複製欠損にさせることができる。アデノウイルスはまた、比較的容易に大量に生成することができる。本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用するためのアデノウイルスベクターは、血清型2、5、12、40、及び41などのアデノウイルスの40以上の血清型株のいずれかを含むがこれらに限定されない様々なアデノウイルス血清型のいずれかに由来し得る。本明細書で使用されるアデノウイルスベクターは、好ましくは複製欠損であり、適切なプロモーターに作動可能に連結された目的のcDC2誘導因子を含有する。
【0152】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、PU.1、IRF4、PRDM1、IRF2、RBPJ、RELB、POU2F2及びTGIF1などのcDC2誘導因子(複数可)をコードする核酸配列は、1以上の誘導性レンチウイルスベクターを用いて導入又は送達される。1以上の誘導性レンチウイルスベクターを用いて送達されるcDC2誘導因子の発現の制御は、いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターの制御下で、又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された発現ベクター中の少なくとも1つのDC誘導因子を有する細胞を、調節剤(例えば、ドキシサイクリン)又は他の誘導剤と接触させることによって達成することができる。いくつかの種類の誘導性レンチウイルスベクターを使用する場合、そのような細胞と誘導剤との接触はcDC2誘導因子の発現を誘導するが、調節剤の退薬は発現を阻害する。他の種類の誘導性レンチウイルスベクターを使用する場合、調節剤の存在は発現を阻害するが、調節剤の除去は発現を可能にする。本明細書で使用する用語「発現の誘導」は、例えば、誘導剤の存在下で、又は細胞内で遺伝子の内因性発現を引き起こす1以上の薬剤又は因子の存在下での誘導可能なウイルスベクターによってコードされるcDC2誘導因子などの遺伝子の発現を指す。
【0153】
本明細書に記載の態様のいくつかの実施形態では、ドキシサイクリン(Dox)誘導性レンチウイルスシステムが使用される。レトロウイルスとは異なり、レンチウイルスは、より多様な造血細胞型の形質導入に適させる静止細胞に形質導入することができる。例えば、pFUW-tetOレンチウイルスシステムは、初代造血前駆細胞に高効率で形質導入することが示されている。
【0154】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)などのcDC2誘導因子(複数可)をコードする核酸配列は、非組み込みベクター(例えば、アデノウイルス)を用いて導入又は送達される。レトロウイルスベクターなどの組み込みベクターは宿主細胞ゲノムに取り込まれ、正常な遺伝子機能を潜在的に破壊する可能性があるが、非組み込みベクターは染色体外転写によって遺伝子産物の発現を制御する。非組み込みベクターは宿主ゲノムの一部にならないので、非組み込みベクターは細胞集団内で核酸を一過的に発現する傾向がある。これは、非組み込みベクターが複製欠失にされる場合が多い事実に部分的に起因している。そのため、非組み込みベクターは、(1)宿主ゲノムの破壊なし、及び(2)一過性発現、及び(3)ウイルス組み込み産物の残存なしを含むがこれらに限定されない、レトロウイルスベクターを上回るいくつかの利点を有する。本明細書に記載の方法と共に使用するための非組み込みベクターのいくつかの非限定的な例としては、アデノウイルス、バキュロウイルス、アルファウイルス、ピコルナウイルス、及びワクシニアウイルスが挙げられる。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、非組み込みウイルスベクターはアデノウイルスである。非組み込みウイルスベクターの他の利点には、高力価でそれらを生産する能力、インビボでのそれらの安定性、及び宿主細胞へのそれらの効率的な感染が含まれる。
【0155】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキット中の誘導性cDC2を生成する際に使用するための核酸構築物及びベクターは、さらに、いくつかの実施形態では、細胞の陽性及び陰性選択のための選択マーカーをコードする1以上の配列を含むことができる。そのような選択マーカー配列は、典型的には、核酸構築物の導入の非存在下で細胞内に通常見出されない抗生物質に対する耐性又は感受性の特性を提供することができる。選択マーカーを抗生物質などの選択剤と組み合わせて使用して、挿入された核酸構築物を発現する細胞について培養物中で選択することができる。陽性選択マーカーをコードする配列は、典型的には、抗生物質耐性をもたらし、すなわち、陽性選択マーカー配列が細胞のゲノム中に存在する場合には、細胞は抗生物質又は薬剤に対して感受性である。陰性選択マーカーをコードする配列は、典型的には、抗生物質又は薬剤に対する感受性をもたらし、すなわち、陰性選択マーカーが細胞のゲノム中に存在する場合には、細胞は抗生物質又は薬剤に対して感受性である。
【0156】
本明細書に記載の組成物、方法、及びそのキット中の誘導性cDC2を作製する際に使用するための核酸構築物及びベクターは、いくつかの実施形態では、構築物又は他のベクターの遺伝子エレメント、例えば、当業者に公知のプロモーター、エンハンサー、TATAボックス、リボソーム結合部位、IRESの調節、発現、安定化のための他の核酸エレメントをさらに含むことができる。
【0157】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)及びRELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)などのDC誘導因子(複数可)は、内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2012-0046346-A1号に記載の合成修飾RNAとして提供されるか、又は合成修飾RNAとして細胞に導入若しくは送達される。合成修飾RNAが本明細書に記載の方法に従って細胞を誘導性cDC2に初期化するために使用されるそれらの実施形態では、本方法は、細胞の反復接触を伴うか、又はDC誘導因子をコードする合成修飾RNAの、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、又はそれ以上のトランスフェクションなどの反復トランスフェクションを伴うことができる。
【0158】
1以上の修飾ヌクレオシドに加えて、本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットにおいて使用するための修飾mRNAは、当業者に公知の、かつ米国特許公開第2012/0046346A1号及び同第2012/0251618A1号、並びにPCT公開WO2012/019168に記載の任意の追加の修飾を含むことができる。そのような他の成分には、例えば、5'キャップ(例えば、1つのグアニンがN7メチル基及び3'-O-メチル基を含む5'-5'-三リン酸グアニン-グアニン結合を含むアンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップ;グアニンがN7メチル化を含み、最終の5'-ヌクレオチドがCap1構造を生成する2'-O-メチルを含む、mRNAの5'のほとんどのヌクレオチドとグアニンヌクレオチドとの間に標準的な5'-5'-三リン酸結合を作り出すことができる組換えワクシニアウイルスキャッピング酵素及び組換え2'-O-メチルトランスフェラーゼ酵素を使用して作成されたキャップ);ポリ(A)テール(例えば、30超のヌクレオチド長、35超のヌクレオチド長、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも45ヌクレオチド、少なくとも55ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、又はそれ以上のポリAテール);コザック配列;3'非翻訳領域(3’UTR);5'非翻訳領域(5’UTR);核酸から切り出すことができる1以上のイントロンヌクレオチド配列、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0159】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットにおいて使用するための修飾mRNAは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をさらに含むことができる。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として作用することができるか、又はmRNAの複数のリボソーム結合部位の1つとして機能することができる。2以上の機能的リボソーム結合部位を含むmRNAは、本明細書に記載のcDC2誘導因子などの、リボソームによって独立して翻訳されるいくつかのペプチド又はポリペプチドをコードすることができる(「マルチシストロニックmRNA」)。核酸がIRESと共に提供される場合、さらに任意選択で第2の翻訳可能領域が提供される。本開示に従って使用することができるIRES配列の例としては、限定されないが、ピコルナウイルス(例えばFMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、古典的豚コレラウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SW)又はクリケット麻痺ウイルス(CrPV)由来のものが挙げられる。
【0160】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、合成修飾RNA分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、合成修飾RNA分子は、少なくとも2つの修飾ヌクレオシドを含む。
【0161】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5-メチルシトシン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、3,2'-O-ジメチルウリジン(m4U)、2-チオウリジン(s2U)、2'フルオロウリジン、プソイドウリジン、2'-O-メチルウリジン(Um)、2'デオキシウリジン(2’dU)、4-チオウリジン(s4U)、5-メチルウリジン(m5U)、2'-O-メチルアデノシン(m6A)、N6,2'-O-ジメチルアデノシン(m6Am)、N6,N6,2'-O-トリメチルアデノシン(m62Am)、2'-O-メチルシチジン(Cm)、7-メチルグアノシン(m7G)、2'-O-メチルグアノシン(Gm)、N2,7-ジメチルグアノシン(m2,7G)、N2,N2,7-トリエチルグアノシン(m2,2,7G)、及びイノシン(I)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5-メチルシトシン(5mC)、プソイドウラシル、又はそれらの組み合わせである。
【0162】
修飾mRNAは、分子の全長に沿って均一に修飾される必要はない。異なるヌクレオチド修飾及び/又は骨格構造は、核酸中の様々な位置に存在し得る。当業者なら、ヌクレオチド類似体又は他の修飾(複数可)を、核酸の機能が実質的に低下しないように核酸の任意の位置(複数可)に配置することができることを理解するであろう。修飾はまた、5'又は3'末端修飾であり得る。核酸は、最小で1つ及び最大で100%修飾ヌクレオチド、又は少なくとも50%修飾ヌクレオチド、少なくとも80%修飾ヌクレオチド、若しくは少なくとも90%修飾ヌクレオチドなどの任意のその間のパーセンテージで含むことができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、分子中の所与のヌクレオシドの各存在が修飾されていることが好ましいが、絶対に必要ではない(例えば、各シトシンは修飾シトシン、例えば、5-メチルシトシンであり、各ウラシルは修飾ウラシル、例えば、プソイドウラシルなどである)。例えば、修飾mRNAは、ウラシル又はシトシンなどの修飾ピリミジンを含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸中のウラシルの少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%が修飾ウラシルで置換される。同じヌクレオシドの異なる存在が、所与の合成修飾RNA分子において異なる方法で修飾され得ることも企図される。修飾ウラシルは、単一の特有の構造を有する化合物によって置換することができるか、又は異なる構造(例えば、2、3、4又はそれ以上の特有の構造)を有する複数の化合物によって置換され得る。いくつかの実施形態では、核酸中のシトシンの少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%が修飾シトシンで置換されてもよい。修飾シトシンは、単一の特有の構造を有する化合物で置換することができるか、又は異なる構造(例えば、2、3、4又はそれ以上の特有の構造)を有する複数の化合物で置換することができる(例えば、5mCとして修飾されたシトシンもあれば、2'-O-メチルシトシン又は他のシトシン類似体として修飾されたシトシンもある)。そのような多修飾合成RNA分子は、RNA分子が合成されているときに、所望の修飾ヌクレオシドのみがcDC2誘導因子をコードする生じたRNA分子に組み込まれるように、リボヌクレオシドブレンド又は所望の修飾ヌクレオシドを全て含む混合物を用いて生成することができる。
【0164】
ある実施形態では、例えば、タンパク質産生の正確なタイミングが望まれる場合、細胞内に導入される修飾核酸を細胞内で分解することが望ましい。そのため、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、細胞内で指示される様式で作用できる分解ドメインを含む修飾核酸が本明細書に提供される。
【0165】
誘導性cDC2は、核酸(DNA又はRNA)又はアミノ酸配列の形態のcDC2誘導因子の送達によって生成され得ることが理解されるが、本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、誘導性cDC2は、例えば、1以上のcDC2誘導因子の発現を誘導する小分子又は小分子のカクテルなどの薬剤による細胞の処理などによる他の方法を用いて誘導することができる。
【0166】
本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットを用いて細胞に導入された又は細胞集団において誘導されたcDC2誘導因子の発現の検出は、例えば、ウェスタンブロット分析、免疫細胞化学、及び蛍光媒介性検出を含む当業者に公知のいくつかの技術のいずれかによって達成することができる。
【0167】
DC誘導因子の所与の組み合わせが誘導性cDC2を生成したかどうかを区別するために、いくつかの実施形態では、表面抗原の差次的発現などの1以上のDC活性又はパラメータを測定することができる。本明細書に記載の組成物、方法、及びキットを用いた誘導性DCの生成により、好ましくは、例えば、CD45、MHC-II、CD11b、Sirpa、CD4、ESAM、Clec4a4、Clec10a、Clec12a及びMgl2などの内因性cDC2に特徴的な細胞表面表現型が出現する。
【0168】
DCは、その機能的挙動によって他の免疫細胞と最も確実に区別される。cDC2表現型の機能的態様、又はサイトカインを分泌する誘導性cDC2の能力などのcDC2活性は、当技術分野で公知の日常的な方法を用いて当業者によって容易に決定することができる。本明細書に記載の態様のいくつかの実施形態では、初期化因子を識別するための機能的アッセイを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、サイトカイン分泌を用いて、本明細書に記載の組成物、構築物、ベクター、方法、及びキットを用いて生成される誘導性cDC2の免疫調節特性を確認することができる。
【0169】
本明細書で使用する「細胞パラメータ」、「DCパラメータ」又は「サイトカイン分泌」は、内因性若しくは天然のDCの測定可能な成分又は質、特に正確に測定することができる成分を指す。細胞パラメータは、細胞の表現型、機能、又は挙動に関連する任意の測定可能なパラメータであり得る。そのような細胞パラメータには、生存率の変化、細胞増殖、立体構造又は翻訳後修飾を含む受容体、タンパク質などの細胞表面決定基などの1以上のマーカー又はマーカーの組み合わせの発現、脂質、炭水化物、有機又は無機分子、核酸、例えばmRNA、DNA、グローバル遺伝子発現パターンなどを含むがこれらに限定されないDC又はDC集団の特性及びマーカーの変化が含まれる。そのような細胞パラメータは、当業者に公知の様々なアッセイのいずれかを用いて測定することができる。例えば、生存率及び細胞増殖は、トリパンブルー排除、CFSE希釈、及び3H-チミジン取り込みなどのアッセイによって測定することができる。タンパク質又はポリペプチドマーカーの発現は、例えば、フローサイトメトリーアッセイ、ウェスタンブロット技術、又は顕微鏡法を用いて測定することができる。遺伝子発現プロファイルは、例えば、RNAシーケンシング方法及び定量的又は半定量的リアルタイムPCRアッセイを用いてアッセイすることができる。細胞パラメータはまた、機能的パラメータ又は機能的活性を指すことができる。ほとんどの細胞パラメータは定量的な読み出しを提供するが、場合によっては半定量的又は定性的な結果が許容され得る。読み出し情報は、単一の決定された値を含むことができるか、又は平均、中央値又は分散などを含むことができる。特徴的には、パラメータ読み出し値の範囲は、多数の同じアッセイから各パラメータについて得ることができる。変動性が予想され、テストパラメータのセットの各々についての値の範囲は、単一の値を提供するために使用される共通の統計方法と共に標準的な統計方法を使用して取得される。
【0170】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、さらなる因子及び薬剤を用いて、誘導性cDC2の初期化を増強することができる。例えば、エピジェネティック経路を変更する因子及び薬剤は、誘導性cDC2への初期化を促進するために使用することができる。
【0171】
本願に記載の組成物、方法、及びキットに従って誘導性cDC2を生成するか又は体細胞を誘導性cDC2に初期化するために、基本的に任意の初代体細胞型を使用することができる。そのような初代体細胞型には、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)などの多能性幹細胞を含む他の幹細胞型;他の多分化能幹細胞;分化が限定された(oligopotent)幹細胞;及び単能性幹細胞も含まれる。本明細書に記載の方法の様々な態様及び実施形態で有用な初代体細胞のいくつかの非限定的な例としては、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ニューロン細胞、脂肪細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、造血又は免疫細胞、肝臓細胞、脾臓細胞、肺細胞、循環血液細胞、胃腸細胞、腎臓細胞、骨髄細胞、及び膵臓細胞、並びにそれらの細胞が由来する幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細胞は、脾臓、骨髄、血液、脳、肝臓、肺、腸、胃、腸管、脂肪、筋肉、子宮、皮膚、脾臓、内分泌器官、骨などを含むがこれらに限定されない任意の体細胞組織から単離された初代細胞であり得る。用語「体細胞」はさらに、いくつかの実施形態では、培養中に増殖した初代細胞を包含するが、ただし、体細胞は不死化されていない。細胞がインビトロ条件下で維持される場合、従来の組織培養の条件及び方法が使用でき、当業者に公知である。様々な初代体細胞の単離及び培養方法は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0172】
本明細書に記載のこれらの態様及び全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、体細胞は線維芽細胞である。
【0173】
本明細書に記載のこれらの態様及び全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、体細胞は造血系統細胞であり得る。
【0174】
本明細書に記載のこれらの態様及び全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、体細胞は、癌細胞又は腫瘍細胞であり得る。
【0175】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいくつかの実施形態では、初期化されるか、又は誘導性cDC2細胞にされる体細胞は、造血起源の細胞である。本明細書で使用する用語「造血由来細胞」、「造血由来分化細胞」、「造血系統細胞」及び「造血起源の細胞」は、多分化能造血幹細胞(HSC)から誘導又は分化した細胞を指す。したがって、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットと共に使用するための造血系統細胞には、多分化能、分化が限定された、及び系統制限された造血前駆細胞、顆粒球(例えば、前骨髄細胞、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血栓細胞(例えば、巨核芽細胞、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、及びリンパ球(例えば、T細胞受容体(TCR)を保有するTリンパ球、免疫グロブリンを発現し、抗体を産生するBリンパ球又はB細胞、NK細胞、NKT細胞、及び先天性リンパ球)が含まれる。本明細書で使用する用語「造血前駆細胞」は、顆粒球、単球、赤血球、巨核球、及びリンパ球B細胞及びT細胞を含むが、これらに限定されない造血系の2以上の細胞型に分化することができる多分化能、分化が限定された、及び系統制限された造血細胞を指す。造血前駆細胞は、多分化能前駆細胞(MPP)、共通骨髄系前駆細胞(CMP)、共通リンパ系前駆細胞(CLP)、顆粒球-単球前駆細胞(GMP)、及び前巨核球-赤血球前駆細胞を包含する。系統制限された造血前駆細胞には、巨核球-赤血球前駆細胞(MEP)、ProB細胞、PreB細胞、PreProB細胞、ProT細胞、二重陰性T細胞、プロNK細胞、プレ顆粒球/マクロファージ細胞、顆粒球/マクロファージ前駆(GMP)細胞、及びプロマスト細胞(ProMC)が含まれる。
【0176】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットにおいて使用するための造血起源の細胞は、胎児組織、臍帯血、骨髄、末梢血、動員末梢血、脾臓、肝臓、胸腺、リンパなどのこれらの細胞を含むことが知られている任意の供給源から取得することができる。これらの源から得られた細胞は、本明細書に記載の誘導性cDC2を作製するための組成物、方法、及びキットと共に使用する前に当業者に受け入れられる任意の方法を用いてエクスビボで増殖させることができる。例えば、細胞は、特定の細胞型を除去するために選別、分画、処理するか、又はそうでなければ当業者に受け入れられる任意の手順を用いて、本明細書に記載の方法で使用するための細胞集団を取得するために操作することができる。単核リンパ球は、例えば、米国特許第4,690,915号に記載されているような連続フローセルセパレーターを用いるリンパ球交換療法の反復によって収集されるか、又はサイトメーターを用いるフローサイトメトリー、抗体又はタンパク質コーティングビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、又は特異的タンパク質若しくは特異的種類のタンパク質の発現若しくは発現の欠如による細胞が基板上に保持される固体支持体アフィニティー分離などのCLP法のアフィニティー精製工程、又は目的の細胞型が特異的に発現する1以上の表面抗原に対する1以上の抗体を用いるバッチ精製を用いて単離され得る。造血起源の細胞は、末梢血から取得することもできる。末梢血から細胞を採取する前に、対象を、例えば顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインで処理して、骨髄から血液区画への細胞移動を促進し、かつ/又は目的の集団の活性化及び/若しくは増殖を促進することができる。例えば、表面タンパク質を識別するのに適する任意の方法を用いて、異種の集団起源の造血細胞を単離することができる。いくつかの実施形態では、リンパ球などの造血起源の細胞のクローン集団が得られる。いくつかの実施形態では、造血起源の細胞はクローン集団ではない。
【0177】
さらに、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットの様々な態様及び実施形態に関して、体細胞は、任意の哺乳動物種から取得することができ、非限定的な例としては、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヒト細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、体細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト哺乳動物などの非ヒト生物由来である。
【0178】
一般的に、本明細書に記載の誘導性cDC2を作製する方法は、造血起源の細胞などの体細胞を、利用可能で、当業者に周知の任意の培地中で培養又は増殖させることを含む。そのような培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(登録商標)(DMEM)、DMEM F12培地(登録商標)、イーグル最小必須培地(登録商標)、F-12K培地(登録商標)、イスコーブ改変ダルベッコ培地(登録商標)、RPMI-1640培地(登録商標)、並びにDCの培養及び増殖のための無血清培地が含まれるが、これらに限定されない。多くの培地はまた、ナトリウムを含有する又は含有しない低グルコース製剤として入手可能である。本明細書に記載の方法と共に使用される培地は、いくつかの実施形態では、1以上の免疫刺激性サイトカインを補充することができる。一般的に使用される成長因子には、G-CSF、GM-CSF、TNF-α、IL-4、IL-3、Flt-3リガンド及びキットリガンドが含まれるが、これらに限定されない。加えて、好ましい実施形態では、免疫刺激性サイトカインは、インターロイキン(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-18、IL-19、IL-20)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、Flt-3リガンド及びキットリガンドからなる群から選択される。
【0179】
培養中の細胞は、浮遊状態、又は例えば、細胞外マトリックス成分又はフィーダー細胞上へ播種などの固体支持体への接着のいずれかで維持することができる。本明細書に記載の方法で使用される細胞は、いくつかの実施形態では、I型及びII型コラーゲン、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、「スーパーフィブロネクチン」及びフィブロネクチン様ポリマー、ゼラチン、ポリD及びポリ-L-リジン、トロンボスポンジン及びビトロネクチンなどの、固体支持体へのそれらの接着を促す追加の因子を必要とし得る。いくつかの実施形態では、細胞は浮遊培養での増殖に適する。浮遊能のある宿主細胞は、一般的に、単分散であるか、又は実質的に凝集せずに緩やかな凝集体で増殖する。浮遊能のある宿主細胞には、適応又は操作を伴わない浮遊培養に適する細胞(例えば、リンパ系細胞などの造血起源の細胞)及び接着依存性細胞(例えば、上皮細胞、線維芽細胞)の改変若しくは適応によって浮遊能を有するようになった細胞が含まれる。
【0180】
本明細書に記載のこれらの態様及び全てのそのような態様のいくつかの実施形態では、単離された誘導性cDC2は、必要とする対象に投与するための医薬として許容される担体をさらに含む。
【0181】
いくつかの態様では、cDC2誘導組成物及び本明細書に記載の誘導性cDC2を調製する方法を用いて、又はDC誘導因子の組み合わせ、DC誘導性組成物、若しくは本明細書に記載の誘導性cDC2を調製する方法のいずれかを用いて生成される単離された誘導性cDC2及びその細胞クローンを用いて、癌細胞若しくは感染性病原体を排除するために抗原特異的免疫応答を誘導するか、又は自己抗原に対する免疫寛容を生じさせる治療を必要とする対象を治療する方法も本明細書に提供される。そのような治療方法において、線維芽細胞又は造血系統細胞などの体細胞を最初に対象から単離し、単離細胞は、本明細書に記載のように、それぞれ発現ベクター又は合成mRNAを含むDC誘導組成物で形質導入又はトランスフェクトすることができる。次に、cDC2誘導因子の組み合わせ、cDC2誘導組成物、又は本明細書に記載の誘導性cDC2を調製する方法のいずれかを用いて生成され、単離された誘導性cDC2を、対象への誘導性cDC2の全身注射などを介して対象に投与することができる。
【0182】
いくつかの態様では、cDC2誘導組成物及び本明細書に記載のcDC2誘導因子の組み合わせのいずれかを用いて、癌細胞又は感染性病原体を排除する抗原特異的免疫応答を誘導する治療を必要とする対象を治療する方法も本明細書に提供される。そのような治療方法において、癌細胞は、本明細書に記載のように、発現ベクターを含むcDC2誘導組成物で形質導入される。癌細胞を最初に対象から単離し、発現ベクターを含むcDC2誘導組成物で形質導入し、次いで、全身注射などを介して対象に投与することができる。あるいは、癌細胞は、ウイルス発現ベクターを含むcDC2誘導組成物でインサイツ又はインビボ形質導入することができる。
【0183】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットを用いて作製され、初期化された誘導性cDC2を、本明細書に記載の治療方法のいくつかの実施形態で、直接使用するか、又は免疫療法を必要とする対象に投与することができる。したがって、本明細書に記載の方法の様々な実施形態は、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいずれかを用いて作製された、有効量の誘導性cDC2又は誘導性cDC2の集団を、細胞療法を必要とする個人又は対象に投与することを含む。投与される細胞又は細胞の集団は、自己集団であり得るか、又は1以上の異種供給源に由来するものであり得る。さらに、そのような誘導性cDC2は、それらがリンパ節に移動し、エフェクターT細胞を活性化することを可能にする様式で投与することができる。
【0184】
本明細書に記載の組成物、方法、及びキットを用いて作製され、初期化された誘導性cDC2は、本明細書に記載の治療方法のいくつかの実施形態では、直接使用するか、又は自己免疫若しくは過敏症の障害に罹患している対象に投与することができる。したがって、本明細書に記載の方法の様々な実施形態は、本明細書に記載の組成物、方法、及びキットのいずれかを用いて作製された有効量の誘導性cDC2又は誘導性cDC2の集団を、細胞療法を必要とする個人又は対象に投与することを含む。投与される細胞又は細胞の集団は、自己集団であり得るか、又は1以上の異種供給源に由来するものであり得る。さらに、そのような誘導性cDC2は、胸腺を遊走し、自己反応性T細胞の陰性選択を促進し、リンパ節に移動し、エフェクターT細胞を制限するか、又はTreg分化を促進することを可能にする方法で自己抗原を負荷し、投与することができる。
【0185】
対象に細胞を投与するための様々な手段は、当業者に公知である。そのような方法は、全身注射、例えば、i.v.注射、又は対象の標的部位への細胞の移植を含むことができる。細胞は、対象への注射又は移植による導入を促進する送達装置に挿入され得る。そのような送達装置は、レシピエント対象の体内に細胞及び流体を注入するためのチューブ、例えば、カテーテルを含むことができる。1つの好ましい実施形態では、チューブは、例えば、それを通して、細胞を所望の位置で対象に導入することができる針をさらに有する。様々な異なる形態での送達のための細胞を調製することができる。例えば、そのような送達装置に含まれる場合には、細胞を溶液又はゲルに浮遊させるか、又は支持マトリックスに包埋することができる。細胞は、細胞が生存可能なまま医薬として許容される担体又は希釈剤と混合することができる。
【0186】
したがって、本明細書に記載の方法によって生成された細胞は、乳癌(breast cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌(pancreatic cancer)、結腸癌(colon cancer)、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌(ovarian cancer)、脳癌、原発性脳癌、頭頸部癌、神経膠腫、膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌、乳癌(breast carcinoma)、卵巣癌(ovarian carcinoma)、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌(pancreatic carcinoma)、胃癌、結腸癌(colon carcinoma)、前立腺癌(prostatic carcinoma)、尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌、菌状息肉症、悪性高カルシウム血症、頸部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨形成性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫などを含むが、これらに限定されないいくつかの癌及び腫瘍を治療又は軽減するための細胞を調製するために使用することができる。
【0187】
上記に加えて、本開示の方法は、ある種の癌の素因となることが知られている病原体による感染を予防又は排除するために使用することができる。本明細書に提供される癌ワクチンにおいて使用するために特に関心のある病原体には、B型肝炎ウイルス(肝細胞癌)、C型肝炎ウイルス(肝細胞種)、エプスタインバーウイルス(EBV)(バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、免疫抑制個人におけるPTLD)、HTLVL(成人T細胞白血病)、発癌性ヒト乳頭腫ウイルス16型、18型、33型、45型(成人子宮頸癌)、及び細菌ヘリコバクターピロリ(B細胞胃リンパ腫)が含まれる。哺乳動物、より特にはヒトにおいて抗原として働き得る他の医学的に関連する微生物は、文献、例えば、C.G.A Thomas,Medical Microbiology,Bailliere Tindall,(1983)に詳細に記載されている。
【0188】
上記に加えて、本開示の方法を、ウイルス感染に用いることができる。例示的なウイルス病原体には、哺乳動物、より特にはヒトに感染する感染性ウイルスが含まれるが、これらに限定されない。感染性ウイルスの例としては、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV-I(HTLV-III、LAV又はHTLV-III/LAV、又はHIV-IIIとも呼ばれる;及びHIV-LPなどの他の分離株など);ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、SARSコロナウイルスなどのコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);単純ヘルペスウイルス科ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;P.oxyiridae(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス);及びイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);並びに未分類のウイルス(例えば、海綿状脳症の病原体、デルタ型肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠陥のある付随体であると考えられている)、非A型、非B型肝炎の病原体(クラス1=内部に伝達される;クラス2=非経口的に伝達される(すなわちC型肝炎);ノーウォーク及び関連するウイルス、並びにアストロウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
上記に加えて、本開示の方法は、脊椎動物におけるグラム陰性及びグラム陽性細菌を標的とするために使用することができる。そのようなグラム陽性細菌には、パスツレラ属、ブドウ球菌属、及びストレプトコッカス属が含まれるが、これらに限定されない。グラム陰性細菌には、大腸菌、シュードモナス属、及びサルモネラ属が含まれるが、これらに限定されない。感染性細菌の具体例としては、ヘリコバクター・ピロリ、ライム病ボレリア、レジオネラ・ニューモフィラ、マイコバクテリア属(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア・モノサイトジェネス、化膿連鎖球菌(グループAストレプトコッカス)、ストレプトコッカス・アガラクチア(グループBストレプトコッカス)、ストレプトコッカス(ビリダンス群)、大便連鎖球菌、ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、エンテロバクター・エロゲネス、肺炎桿菌、パスツレラ・マルトシダ、バクテロイデス種、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ストレプトバチルス・モニリフォルミス、梅毒トレポネーマ、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、リケッチア、及びアクチノミセス・イスラエリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
上記に加えて、本開示の方法は、哺乳動物、より特にはヒトに感染する感染性真菌及び寄生虫を含むが、これらに限定されない病原体を標的とするために使用することができる。感染性真菌の例としては、クリプトコッカス・ネオホルマンス、ヒストプラズマカプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストマイセス・デルマチチディス、クラミジア・トラコマティス、及びカンジダ・アルビカンスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
上記に加えて、本開示の方法は、細胞内寄生虫及び偏性細胞内寄生虫などの寄生虫を標的とするために使用することができる。寄生虫の例としては、熱帯熱マラリア原虫、楕円形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、二日熱マラリア原虫、ネズミバベシア、多型バベシア、クルーズトリパノソーマ、トキソプラズマ・ゴンディイ、旋毛虫、リーシュマニア・メジャー、リーシュマニア・ドノヴァニ、リーシュマニア・ブラジリエンシス、リーシュマニア・トロピカ、トリパノソーマ・ガンビエンセ、トリパノソーマ・ローデシエンセ、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、ブルギア・チモリ、アスカリス・ルンブリコイデス、オンコセルカ・ボルブルス及びマンソン住血吸虫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
改変した誘導性cDC2は、1以上の標的抗原に対する将来の又は既存の免疫応答の抑制を含む寛容性応答を誘導するために使用され得る。そのため、誘導性cDC2は、例えば、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫性疾患、炎症性疾患及び自己免疫疾患を含む望ましくない免疫応答を治療又は予防するのに有用である。本開示に従って治療又は予防することができる移植拒絶反応の例としては、骨髄移植、及び心臓、肝臓、膵臓、腎臓、肺、眼、皮膚などの臓器の移植に関連付けられる拒絶反応が挙げられる。アレルギーの例としては、季節性呼吸器アレルギー、花粉症などのエアロアレルゲンに対するアレルギー;血清IgE及び好酸球増加症を減少させることによって治療可能なアレルギー;喘息;湿疹;動物アレルギー、食物アレルギー;ラテックスアレルギー;皮膚炎;又はアレルギー性脱感作によって治療可能なアレルギーが挙げられる。本開示によって治療又は予防することができる自己免疫疾患には、例えば、乾癬、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、全身硬直症候群、甲状腺炎、シデナム舞踏病、関節リウマチ、糖尿病及び多発性硬化症が含まれる。炎症性疾患の例としては、クローン病、慢性炎症性眼疾患、慢性炎症性肺疾患及び慢性炎症性肝疾患、自己免疫性溶血性貧血、特発性白血球減少症、潰瘍性大腸炎、皮膚筋炎、強皮症、混合結合組織疾患、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、重症筋無力症、ギランバレー症候群(抗リン脂質症候群)、原発性粘液浮腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、シェーグレン症候群、関節リウマチ、交感性眼炎、橋本病/甲状腺機能低下症、セリアック病/疱疹状皮膚炎、及び脱髄性疾患、原発性胆汁性肝硬変、混合性結合組織疾患、慢性活動性肝炎、バセドウ病/甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性特発性血小板減少性紫斑病、糖尿病性神経障害及び敗血症性ショックが挙げられる。
【0193】
医薬として許容される担体及び希釈剤には、生理食塩水、水性緩衝液、溶媒及び/又は分散媒が含まれる。そのような担体及び希釈剤の使用は、当技術分野で周知である。溶液は、好ましくは無菌の流体である。好ましくは、細胞の導入に先立って、溶液は、製造及び保存の条件下で安定であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用を通じて細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保存される。
【0194】
細胞投与の様式は、例えば、静脈内注射、吸入による肺送達、局所投与、又は鼻腔内投与による比較的非侵襲的であることが好ましい。しかし、細胞投与の経路は、治療される組織に依存し、移植を含み得る。細胞送達の方法は、当業者に公知であり、本明細書に記載の方法及び組成物と共に使用することは医学の当業者によって推定され得る。
【0195】
いくつかの態様では、誘導性cDC2を作製するためのキットであって、本明細書に記載の1以上の発現ベクター成分を含むDC誘導組成物のいずれかを含むキットも本明細書に提供される。
【0196】
いくつかの態様では、本明細書に記載の誘導性cDC2を作製する方法のための成分として本明細書に記載のcDC2誘導因子のうちの1以上を含むキットも本明細書に提供される。
【0197】
したがって、いくつかの態様では、以下の成分:(a)PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、IRF2(配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)、RBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)、RELB(配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41)から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、又はそれ以上のcDC2誘導因子をコードする1以上の発現ベクター並びに(B)パッケージ化及びその説明書を含む誘導性樹状細胞を調製するためのキットが本明細書に提供される。
【0198】
本明細書に記載のキットは、いくつかの実施形態では、DC誘導因子をコードする合成mRNA又は1以上の発現ベクターを混合して、又は別々のアリコートとしてさらに提供することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、該キットは、初期化の効率を増強する薬剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、該キットは、cDC2状態に誘導された細胞を識別するための細胞型特異的マーカーを検出するための1以上の抗体又はプライマー試薬をさらに含むことができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、該キットは、緩衝液をさらに含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、緩衝液は、pH7.0のRNase非含有TE緩衝液である。いくつかの実施形態では、該キットは、細胞培地を有する容器をさらに含む。
【0201】
本明細書に記載の全てのキットは、緩衝液、細胞培地、形質導入又はトランスフェクション培地及び/又は培地サプリメントをさらに含むことができる。好ましい実施形態では、緩衝液、細胞培地、トランスフェクション培地、及び/又は培地サプリメントは、DNAse及びRNAseを含まない。いくつかの実施形態では、キットに提供される合成修飾RNAは、エンドユーザが、成分を所望の濃度、例えば100ng/μlにするために適切な量の緩衝液又は培地を添加するような凍結乾燥粉末形態などの特定の量又は質量、例えば、20μgの非溶液形態であり得る。
【0202】
本明細書に記載の全てのキットは、非移植性送達装置、例えば、針、注射器、ペン装置、又は移植可能な送達装置、例えば、ポンプ、半永久的ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内若しくは嚢内)、又はリザーバーなどの、本明細書に記載のキット成分を用いて生成される細胞の単回投与又は反復若しくは頻繁な注入を促進する装置を含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、送達装置は、誘導性cDC2を含む医薬組成物の単位用量を分注する機構を含むことができる。いくつかの実施形態では、該装置は、組成物を連続的に、例えば、拡散によって放出する。いくつかの実施形態では、該装置は、対象内のパラメータを監視するセンサーを含むことができる。例えば、該装置は、例えばポンプ、及び任意選択で関連付けられる電子機器を含むことができる。
【0203】
一実施形態では、誘導性cDC2は、人の手によって、例えば、体細胞、多能性細胞、前駆細胞若しくは幹細胞の本明細書に開示される因子の少なくとも1つの遺伝子発現を変更することによって、又はこれらの細胞型のいずれか1つを、本明細書に開示される少なくとも1つのタンパク質を生成する少なくとも1つのタンパク質又はRNAに曝露することによって作製される。該細胞はさらに、本明細書に開示される因子の少なくとも1つをオンにする小分子にそれらを曝露することによって作製することができる。いくつかの態様では、誘導性cDC2を作製するために、少なくとも2、3、4、5、6つの因子が使用される。
【0204】
一実施形態では、マウス胚性線維芽細胞(MEF)を以下の方法で単離及び精製した:Clec9aCre/Cre動物(Schramlら、2013)をRosa26-stopflox-tdTomatoレポーターマウス(The Jackson Laboratory)と交配させ、二重ホモ接合型Clec9aCre/Cre RosatdTomato/tdTomato(Clec9a-tdTomato)マウスを生成した。全ての動物を制御された温度(23±2℃)下で飼育し、固定した12時間の明暗サイクルに供し、食物及び水に自由にアクセスできる状態にした。
【0205】
一実施形態では、MEFの初代培養物を、Clec9a-tdTomato又はC57BL/6マウスのE13.5胚から単離した。頭部、胎児肝臓及び全ての内部臓器を摘出し、残りの組織を機械的に解離させた。解剖した組織を0.12%トリプシン/0.1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(胚あたり3mL)を用いて酵素消化し、37℃で15分間インキュベートした。胚当たりに同じ溶液をさらに3mL添加し、続いてさらに15分間インキュベートした。単一細胞懸濁液を取得して、0.1%ゼラチンコーティング10cm組織培養皿中の増殖培地に播種した。細胞をコンフルエントになるまで2~3日間増殖させ、Tryple Expressで解離させ、ウシ胎児血清(FBS)10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で凍結させた。レンチウイルス形質導入のためのプレーティングの前に、MEFを選別して、造血能を有する細胞を表す可能性のある残留CD45及びtdTomato細胞を除去した。スクリーニング及び以下の実験に使用したMEFは、純度99%を超えるtdTomato-CD45であり、4継代まで増殖させた。
【0206】
一実施形態では、HEK293T細胞及びMEFは、増殖培地[10%(v/v)FBS、2mMのL-グルタミン及び抗生物質(10μg/mlのペニシリン及びストレプトマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)]で維持した。全ての細胞を37℃及び5%(v/v)CO2で維持した。全ての組織培養試薬は、特に断りのない限り、Thermo Fisher Scientific社製のものであった。
【0207】
一実施形態では、ウイルス形質導入及び初期化実験を以下の方法で実施した:Clec9a-tdTomato MEFを、0.1%ゼラチンコーティング6ウェルプレート上に、ウェル当たり40,000細胞の密度で播種した。細胞を、8μg/mLポリブレンを補充した増殖培地中で、1:1のFUW-TetO-TF及びFUW-M2rtTAレンチウイルス粒子の比率で一晩インキュベートした。TFの組み合わせを試験する際に、個々のウイルス粒子の等しいMOIを適用した。細胞を連続した日に2回形質導入し、一晩のインキュベーション後、培地を新鮮な増殖培地に交換した。2回目の形質導入後、増殖培地にドキシサイクリン(1μg/mL)を補充した-0日目。培地は、培養の期間中、2~3日ごとに交換した。出現したtdTomato細胞を形質導入後5~9日目に分析した。
【0208】
一実施形態では、フローサイトメトリー分析を以下の方法で実施した:形質導入したClec9a-tdTomato MEFをTrypLE Expressで解離させ、200μLのPBS 5%FBSに再懸濁し、BD Accuri C6(BD Biosciences)での分析前に4℃で保持した。MHC-II、CD45及びCD11b細胞表面マーカー発現の分析のために、解離した細胞をAPCコンジュゲートラット抗マウスI-A/I-E、抗マウスCD45及び抗マウスCD11b抗体(Biolegend)とそれぞれインキュベートし、ラット血清(1/100、GeneTex)の存在下で、4℃で30分間、PBS 5%FBSで希釈し、非特異的結合を阻止した。細胞をPBS 5% FBSで洗浄し、PBS 5% FBSに再懸濁し、BD Accuri C6で分析した。フローサイトメトリーデータを、FlowJoソフトウェア(FLOWJO,LLC、バージョン7.6)を用いて分析した。
【0209】
一実施形態では、蛍光活性化細胞選別(FACS)を以下の方法で実施した:Clec9a-tdTomato MEFを精製するために、細胞をPBS 5%FBSで希釈したAPC-Cy7コンジュゲート抗CD45抗体(Biolegend)と4℃で30分間インキュベートした。続いて、MEFをPBS 5%FBSで洗浄し、PBS 5%FBSに再懸濁し、tdTomato-CD45-MEFをBD FACSAria III(BD Biosciences)で精製した。
【0210】
一実施形態では、サイトカイン分泌分析を以下の方法で実施した:PI4P過剰発現によって生成したtdT細胞を、初期化の9日目にFACS選別した。翌日、LPS(100ng/mL)、PiC(1μg/mL)、R848(1μg/mL)又はCpG ODN1585(0.5μM)(Invivogen)を培地に添加して一晩刺激を行った。次いで、LEGENDplex(商標)マウスThサイトカインパネル(13-plex)キットによる製造業者の指示に従って、さらなる分析のために培養上清を収集した。取得をBD Accuri C6で行い、次いで、データをLEGENDplex(商標) v8.0ソフトウェア(BioLegend)を用いて分析した。
【0211】
一実施形態では、骨髄をC57BL6マウスから単離し、骨髄由来樹状細胞を生成するために使用した。簡単に説明すると、全骨髄(BM)細胞を、乳棒及び乳鉢で粉砕することによって長骨(脛骨及び大腿骨)から採取した。細胞を、2%FBSを補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に収集し、70μmのセルストレーナー(BD Biosciences)で濾過した。赤血球をBD Pharm Lyse(BD Biosciences)を用いて室温で8分間溶解した。2%FBSを有するPBSを5容量以上添加することによって溶解を停止した。総BM細胞をシャーレの中のFlt3l(200ng/ml)及びGM-CSF(5ng/ml)を補充したRPMI完全培地に播種した(10cmプレートあたり15×10個の細胞)。5日間の培養後、5mLの完全RPMI培地を添加し、9日目に3×10個の細胞を、Flt3l及びGM-CSFを有する10mlの新鮮な培地に再播種した。BM-DCを培養15日後に使用した。
【0212】
一実施形態では、抗原提示アッセイを以下の方法で実施した:OT-IIマウスの脾臓を摘出し、続いてMiltenyi Naive CD4+T細胞単離キットを用いてMACS精製することによってCD4+T細胞を取得した。精製CD4+T細胞を5mMのCTV(Thermo Fisher)で標識し、室温で20分間洗浄し、計数した。FACS選別したtdT PIP生成細胞、MEF又はBM-DCを、事前にOVA 323-339ペプチド(10μg/ml)と一晩培養した。しっかり洗浄した後、20,000個のtdT PIP生成細胞、MEF又はBM-DCを、TLR刺激LPS(100ng/mL)、PiC(1μg/mL)、R848(1μg/mL)又はCpG ODN1585(0.5μM)(Invivogen)の存在下又は非存在下で、96ウェルU底培養プレート中100,000個のCTV標識CD4+ T細胞と共培養した。5日間の培養後、T細胞を収集し、染色し、BD LSRFortessa(商標)で分析した。T細胞増殖を、ライフシングルTCRβ CD4 T細胞でゲーティングすることによって決定した。
【0213】
当業者は、日常的な実験以上のことを用いることなく、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態と等価な多くの物を認めるか、又は確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ特許請求の範囲に記載したとおりである。
【0214】
要素又は特徴の単数形が特許請求の範囲の詳述で使用される場合、複数形も含まれ、特に除外されなければその逆も同様である。例えば、用語「1つの転写因子」又は「その転写因子」は、複数形の「転写因子」又は「それらの転写因子」も含み、その逆も同様である。特許請求の範囲において、「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」などの冠詞は、文脈が反対のことを示さないか、又は文脈から特に明白でない限り、1又は2以上を意味し得る。グループの1以上のメンバーを含む「又は」その間のグループのメンバーを含む特許請求又は説明は、文脈が反対のことを示さないか、又は文脈から特に明白でない限り、1、2以上、又は全てのグループメンバーが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、それに用いられるか、又はそうでなければそれと関連する場合に満たされているとみなされる。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、それに用いられるか、又はそうでなければそれと関連する実施形態を含む。本発明はまた、グループメンバーの2以上又は全てが、所与の生成物若しくはプロセスに存在するか、それに用いられるか、又はそうでなければそれと関連する実施形態を含む。
【0215】
さらに、本発明が、1以上の請求項から、又は説明の関連部分から1以上の制限、要素、節、記述用語などが別の請求項に導入される全ての変形、組み合わせ、及び順列を包含することは理解されるべきである。例えば、別の請求項に依存する請求項はいずれも、同じ基本となる請求項に依存する任意の他の請求項に見出される1以上の制限を含むように変更することができる。
【0216】
さらに、請求項が組成物を記載する場合、特に示されない限り、又は矛盾若しくは不一致が生じることを当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される目的のいずれかのために組成物を使用する方法が含まれ、かつ本明細書に開示される製造方法又は当技術分野で公知の他の方法のいずれかに従って組成物を製造する方法が含まれることは理解されるべきである。
【0217】
範囲が指定されている場合、端点が含まれる。さらに、文脈及び/若しくは当業者の理解から特に指示されないか、又は特に明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が特に明確に指示しない限り、本発明の異なる実施形態で既定の範囲内の任意の特定の値を、範囲の下限の単位の10分の1まで仮定することができる。また、文脈及び/若しくは当業者の理解から特に指示されないか、又は特に明白でない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の部分範囲を仮定することができ、部分範囲のエンドポイントは、範囲の下限の単位の10分の1と同じ程度の精度まで表されることも理解されるべきである。
【0218】
本開示は、記載の実施形態に何ら限定されるものではなく、当業者はその変更に対する多くの可能性を予見するであろう。
【0219】
上記の実施形態は、組み合わせ可能である。
【0220】
以下の特許請求の範囲は、本開示の特定の実施形態をさらに詳しく説明する。
【0221】
実施例
この組成物中の記載の誘導細胞及び真正なDCサブセットとのそれらの類似性をさらに特徴付けるために、集団レベルでmRNAシーケンシングを行うことができる。集団RNA-seqは、通常、以下の方法で行われる:全RNAをTRIzol試薬で抽出し、cDNAを特定のRNAキット(例えば、Takara SMARTSeq Ultra low input RNA kit)によって生成し、さらに増幅する。次いで、得られたcDNAを、適切な試薬(例えば、Agilent High sensitivity DNA kit)を用いて分析する。得られたライブラリー調製に続いて、cDNAタグメンテーション、PCRによるフォワード及びリバースインデックスの付加、及び適切な装置(例えば、Illumina NextSeq 500)にて配列決定する。次いで、得られたデータを、差次的発現解析、DC2特異的遺伝子濃縮について解析し、既存の公開データセットと統合することができる。あるいは、単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)が、本明細書に記載の生成細胞の表現型及び細胞状態のより良い定義に理想的な個々の細胞の発現プロファイルを提供することによってこの分析を補完する可能性がある。

参考文献
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図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
【配列表】
2023506707000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの転写因子の組み合わせをコードする構築物又はベクターであって、前記コードされる転写因子の組み合わせが
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;及び
PU.1、IRF4とRBPJ
からなる群から選択され、前記転写因子が、(PU.1)配列番号3又は配列番号6、(IRF4)配列番号9又は配列番号12、(PRDM1)配列番号15、配列番号18、(POU2F2)配列番号27、配列番号30、(TGIF1)配列番号33、配列番号36、及び(RBPJ)配列番号45、配列番号48の配列と少なくとも90%同一である構築物又はベクター。
【請求項2】
前記コードされる転写因子の組み合わせが、以下の5'から3'の配列順:
PU.1、IRF4及びPRDM1にある、請求項1に記載の構築物又はベクター。
【請求項3】
前記ベクターが、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項1~2のいずれか一項に記載の構築物又はベクター。
【請求項4】
前記ベクター又は構築物が、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである、請求項1~2のいずれか一項に記載の構築物又はベクター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の1以上のベクターを含む組成物。
【請求項6】
前記転写因子が個々に以下の配列:PU.1(配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5)、IRF4(配列番号7、配列番号8、配列番号10、配列番号11)、PRDM1(配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17)、POU2F2(配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号29)、TGIF1(配列番号31、配列番号32、配列番号34、配列番号35)及びRBPJ(配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号47)と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドによってコードされる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記コードされる転写因子の組み合わせが、以下の組み合わせ:
PU.1、IRF4とPRDM1;
PU.1、IRF4とPOU2F2;
PU.1、IRF4とTGIF1;及び
PU.1、IRF4とRBPJ
から選択される、請求項5~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記コードされる転写因子の組み合わせが、PU.1、IRF4とPRDM1である、請求項5~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記1以上のベクターが、ウイルスベクター、特にレトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス又はアデノ随伴ウイルスのベクターである、請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記1以上のベクター又は構築物が、合成mRNA、ネイキッドアルファウイルスRNAレプリコン又はネイキッドフラビウイルスRNAレプリコンである、請求項5~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞が、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、分化細胞、腫瘍細胞、癌細胞及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
獣医学又はヒト医学において使用するための、請求項5~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
癌、感染症又は自己免疫疾患の治療において使用するための、請求項5~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
幹細胞又は分化細胞を通常型樹状細胞2型に初期化又は誘導するインビトロ又はエキソビボ方法であって、以下の工程:
前記第1及び第2の転写因子がPU.1及びIRF4であり、前記第3の転写因子がPRDM1、POU2F2、TGIF1及びRBPJからなる群から選択される少なくとも3つの転写因子をコードする1以上のベクターで、幹細胞又は分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択される細胞を形質導入する工程;
前記形質導入細胞を樹状細胞又は抗原提示細胞の増殖を支持する細胞培地中で培養する工程、
を含む方法。
【請求項15】
前記形質導入細胞を少なくとも2日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも8日間、さらにより好ましくは少なくとも9日間、より好ましくは少なくとも10日間培養する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、哺乳動物細胞、非ヒト細胞又はヒト細胞、マウス細胞、ヒト若しくはマウス線維芽細胞、哺乳動物の臍帯血幹細胞、多能性幹細胞又は多分化能幹細胞、分化細胞、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記多能性幹細胞、多分化能幹細胞、又は分化細胞が、内胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、又は外胚葉由来細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、腸幹細胞、多能性幹細胞を含む多分化能幹細胞及び細胞株からなる群から選択される、請求項14~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記形質導入工程が、IL-12をコードする核酸配列;IL-4をコードする核酸配列;IFN-αをコードする核酸配列;IFN-βをコードする核酸配列;IFN-γをコードする核酸配列;TNFをコードする核酸配列;GM-CSFをコードする核酸配列;IL-10 RNAを標的とするsiRNAをコードする核酸配列、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のベクターをさらに含み、好ましくは免疫刺激性サイトカインをコードする核酸を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~4のいずれか一項に記載の構築物若しくはベクター、又は請求項5~11に記載の組成物を含む誘導樹状細胞。
【請求項19】
治療有効量の請求項18に記載の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含み、さらに、医薬として許容される賦形剤、好ましくは抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、抗生物質、利尿剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、若しくは滑剤又はそれらの混合物を含む組成物。
【請求項20】
獣医学又はヒト医学において使用するための、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
癌、感染症又は自己免疫疾患の治療において使用するための、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項18に記載の誘導樹状細胞、又はそれらの混合物を含む、癌用のワクチン又は注射用製剤、特にインサイツ注射剤。
【請求項23】
以下の成分:
請求項18に記載の誘導樹状細胞;
請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物;
請求項1~4のいずれか一項に記載のベクター若しくは構築物;
請求項5~11のいずれか一項に記載の組成物
又はそれらの混合物
のうちの少なくとも1つを含むキット。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023506707000001.app
【国際調査報告】