(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】基材上に導電パターンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/10 20060101AFI20230213BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20230213BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20230213BHJP
H01Q 1/38 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
H05K3/10 B
G06K19/077 252
H01P11/00
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533656
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 IB2020062113
(87)【国際公開番号】W WO2021124201
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522156726
【氏名又は名称】デジタル タグス フィンランド オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】フフタサロ ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】バックホルク カイ
【テーマコード(参考)】
5E343
5J046
【Fターム(参考)】
5E343AA14
5E343AA16
5E343BB34
5E343BB52
5E343BB78
5E343CC01
5E343CC02
5E343DD71
5E343EE22
5E343EE23
5E343EE42
5E343ER42
5E343ER60
5E343GG20
5J046AA19
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】基材上に導電パターンを製造する方法を提供する。
【解決手段】方法は、基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層上に導電性固体粒子を添加して、当該粒子を接着剤に付着させる工程と、前記固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により前記粒子を加熱する工程と、加熱された前記粒子をニップにおいて前記基材に押し付けることにより、粒子を扁平化し、粒子同士を電気的に接続して導電パターンを形成する工程と、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電パターンを製造する方法であって、
セルロース材料及びポリマー材料の少なくとも一方からなる基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に導電性固体粒子を添加して、前記粒子を接着剤に付着させる工程と、
前記固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により前記粒子を加熱する工程と、
加熱された前記粒子をニップにおいて前記基材に押し付けることにより、前記粒子を扁平化し、前記粒子同士を電気的に接続して導電パターンを形成する工程と
を備える方法。
【請求項2】
前記粒子を前記固有の融点未満の温度まで加熱する少なくとも1つの追加加熱工程を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追加加熱工程は、IR源の波長が1500nm以上である赤外線加熱により加熱する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加加熱工程は、温度が200℃未満のオーブン中における熱的加熱である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記電磁放射線のエネルギー放出が1.5~2.8MW/μm・m
2の範囲内にある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体粒子は共晶合金からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記共晶合金は、スズ、好ましくはスズおよびビスマスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は、紙または板紙材料からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基材は、ポリエステル又はナイロンからなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記導電パターンはアンテナである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンテナに集積回路(IC)を取り付けて、前記ICと前記アンテナとの電気的接続を確立し、前記アンテナと前記ICとによりRFIDタグを形成する工程を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
RFIDタグの製造方法であって、
セルロース材料及びポリマー材料の少なくとも一方からなる基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に導電性固体粒子を添加して、前記粒子を接着剤に付着させる工程と、
前記固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により前記粒子を加熱する工程と、
加熱された前記粒子をニップにおいて前記基材に押し付けることにより、前記粒子を扁平化し、前記粒子同士を電気的に接続してアンテナを形成する工程と、
前記アンテナに集積回路(IC)を取り付けて、前記ICと前記アンテナとの電気的接続を確立し、前記アンテナと前記ICとによりRFIDタグを形成する工程と
を備える方法。
【請求項13】
前記集積回路(IC)は、前記アンテナに貼り付けて押圧することにより取り付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記集積回路(IC)ははんだ付けにより取り付けられる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に導電パターンを製造する方法、及びRFIDタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に導電パターンを形成することが知られている。基材上に固体の導電性粒子を所定のパターンに形成する。その後、典型的にはオーブン中で熱的加熱により固体粒子を加熱することにより、固体粒子がその固有の融点以上の温度に達する。そして、ニップにおいて粒子を押圧することにより、粒子を扁平化し、粒子同士を電気的に接続して導電パターンを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この方法の欠点として、加熱工程中には、固体粒子のみならず、基材も熱を吸収する。これは、例えば繊維基材が加熱されると乾燥してしまうという問題をもたらす。これにより、基材の望ましくない寸法変化が起こる。また、あまりに高い温度まで加熱されると、繊維が茶色に変色したり、ひいては燃焼したりする可能性がある。更に、熱的加熱はエネルギー消費量が比較的高い。
【0004】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決する、基材上に導電パターンを形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材上に導電パターンを製造する方法であって、
セルロース材料及びポリマー材料の少なくとも一方からなる基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に導電性固体粒子を添加して、当該粒子を接着剤に付着させる工程と、
前記固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により前記粒子を加熱する工程と、
加熱された前記粒子をニップにおいて前記基材に押し付けることにより、粒子を扁平化し、粒子同士を電気的に接続して導電パターンを形成する工程と
を備える方法である。
【0006】
また、本発明は、RFIDタグの製造方法であって、
セルロース材料及びポリマー材料の少なくとも一方からなる基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に導電性固体粒子を添加して、当該粒子を接着剤に付着させる工程と、
前記固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により前記粒子を加熱する工程と、
加熱された前記粒子をニップにおいて前記基材に押し付けることにより、粒子を扁平化し、粒子同士を電気的に接続してアンテナを形成する工程と、
前記アンテナに集積回路(IC)を取り付けて、前記ICと前記アンテナとの電気的接続を確立し、前記アンテナと前記ICとによりRFIDタグを形成する工程と
を備える方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、いくつかの好ましい実施形態を参照して、本発明の基材上に導電パターンを製造する方法についてより詳細に説明する。
【0008】
当該方法は、基材上に、所定のパターンで接着剤層を形成する工程を備える。このような接着剤パターンは、例えば、インクジェット、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレー、ウェブ塗布、ホイール塗布、ブラッシングなど、基材上に接着剤パターンを塗布することができる方法であれば、任意の適切な方法により塗布ことができる。当該接着剤としては、目的に応じて任意の適切な接着剤を用いることができる。好ましい接着剤としては、例えば、スチレン/アクリレート、スチレン/ブタジエン、またはPVAcエマルジョンなどのアクリル系接着剤がある。接着剤は、例えば化工澱粉などの澱粉系接着剤であってもよい。
【0009】
セルロース系材料への導電パターンの接着性が非常に良好であるため、基材は、紙又は板紙材料であってもよい。また、紙又は板紙は、生分解性であり、かつリサイクル可能であるため、環境にやさしい。好ましい基材として、坪量が30~200gsmのセルロース基材が挙げられる。また、基材は、単一の基材であってもよいし、複数の基材であってもよい。
【0010】
他の好適なセルロース基材として、ミクロフィブリルセルロース(MFC)製の基材又は、ミクロフィブリルセルロース製のフィルムが挙げられる。
【0011】
ただし、ポリエステル、タフタ、またはナイロン等の他の非導電性基材が可能であることは、当業者なら理解できるであろう。これらのポリマー基材は、特に、例えば洗浄指示を含む衣服のケアラベルなどの湿潤環境下で使用する場合の製品に好適である。これらのポリマーは熱に非常に敏感であるため、本発明はこれらの材料にも非常に適している。また、セルロース材料とポリマー材料とを組み合わせて基材を構成できることも、当業者なら理解できるであろう。
【0012】
本方法は、接着剤層パターン上に導電性固体粒子を添加して、当該粒子を接着剤に付着させる工程を更に備える。固体粒子はいくつか異なる方法により塗布できるが、本発明は特定の塗布方法に限定されるものではない。例えば、塗布工程は、固体粒子を接着剤に吹き付けたり、粒子ベッド上に基材を浸漬して粒子を接着剤パターン上に付着したり、静電転写したりすることを含みうる。
【0013】
導電性固体粒子は、非共晶合金のはんだ材料からなることが好ましい。ただし、スズおよびビスマスを含む合金またはスズのみが最も好ましい。スズおよびビスマスは無鉛であるため、環境により優しい。
【0014】
また、スズおよびビスマスは溶融温度が比較的に低く、導電性がより良好である。
【0015】
本方法はまた、少なくとも1つの加熱工程を含む。加熱は、固体粒子の温度がその固有の融点を超えるように、電磁スペクトルの波長が600~1400nmの範囲内、好ましくは700~1200nmの範囲内にある電磁放射線により固体粒子を加熱することにより行われる。
【0016】
電磁放射線のエネルギー放出は1.5~2.8MW/μm・m2の範囲内にある。
【0017】
試験によると、これらの短波長の電磁放射線は、非共晶合金の固体はんだ粒子の加熱・溶融に非常に適していることが示された。この領域では、放射線は分子振動の組み合わせ及び倍音(オーバートーン)を励起する。これは、電磁スペクトルのこの部分では、典型的にはモル吸光率が小さいため、多くのポリマー化合物が強い吸光度を有さず、このような短波長の電磁放射線を照射したときには加熱されにくくなることを意味する。これらの短波長の電磁放射線は、スペクトルのこの部分では吸光度の強い材料を選択的に加熱する可能性を有し、その固有のエネルギー密度は高速度を可能とすると同時に、下地基材は放射線を透過させることにより損傷を回避することができる。これらの短波長の電磁放射線は近赤外光(NIR)としても知られている。電磁放射線は、固体粒子と対向する基材の表面、または固体粒子とは反対側の基材の裏面、または基材の両面に同時に直接照射されてもよい。
【0018】
そのため、紙、繊維系基材、及び最も一般的なプラスチック包装体は、これらの短波長においては放射線を著しく吸収することがない。これは、紙、板紙、ポリエステル、ナイロンからなる基材に間接的に悪影響を及ぼす基材の余計な加熱が非常に少なくなることを意味する。
【0019】
本方法はまた、加熱された粒子を基材に押し付ける工程を含む。押し付けはニップにより行われ、ニップの表面温度は粒子の固有の溶融温度よりも低い。ニップによる押し付けにより、粒子を扁平化し、粒子同士を電気的に接続して導電パターンを形成する。
【0020】
この押し付けを放射線加熱後に早く行って、粒子をほぼ溶融状態のままに残すことが好ましい。これにより、先に溶融した材料が実質的に連続した導電パターンとして固化する。
【0021】
上記ニップは、非加熱ニップであってもよい。ただし、ニップ面を固有の溶融温度よりもやや(例えば30~60℃程度)低い温度に加熱することが好ましい。これにより、例えば、溶融物を基材に押し付ける前に、途中で固化しないようにすることができる。上記ニップは、もともと固体であった導電性粒子の先に溶融した材料を、この段階では、別々の粒子状ではなく、所定のパターン内に配置された実質的に連続した導電性層として固化させることになる。
【0022】
この方法には、1又は複数の追加加熱工程の実施形態が含まれていてもよい。これらの追加加熱工程は、短波長の電磁放射線照射工程の前及び/又は後に配置してもよい。
【0023】
追加加熱工程は、波長1500nm以上の赤外線(IR)加熱であってもよい。
【0024】
IR源としては、2×2kWのIRランプ又は4×2kWのIRランプが好ましい。好ましい実施形態として、波長範囲600~1400nmの電磁放射線の後、波長1500nm以上のIRを照射するものが挙げられる。
【0025】
追加加熱工程は、オーブン中における熱的加熱であってもよい。オーブンの温度は200℃未満である。
【0026】
導体が種々の形状及び大きさの幾何属性を有することができるため、追加加熱工程を好適に用いることができる。異なる加熱工程の組み合わせにより、異なる幾何学的形状を異なる方式ですべて加熱できる。例えば1つの加熱方法としては、まず固体パターンの狭い形状又は縁を加熱することがあるが、他の加熱方法としては、まず固体パターンの中心を加熱することがある。そのため、本発明の電磁放射線加熱工程(波長600~1400nm)には、IR及び/又は熱的加熱を併用して、多種の幾何学形状のバランスよくかつ均一な加熱プロファイルを得ることが有益である場合がある。
【0027】
本発明の好ましい実施形態においては、形成される導電パターンはアンテナであり、好ましくはRFIDタグ用のアンテナである。
【0028】
本発明の別の態様によれば、RFIDタグの製造方法が提供される。本実施形態は、上記実施形態と同様であるが、導電パターン、すなわちアンテナに集積回路(IC)またはマイクロチップを取り付けて、ICと前記アンテナとの電気的接続を確立し、アンテナとICとによりRFIDタグを形成する工程を更に備える。
【0029】
ICをアンテナに取り付けることは、種々の方法で行われてもよい。第1の実施形態では、ICとアンテナパッド領域との間に接着剤を塗布し、ICをRFIDアンテナに押し付けてICをアンテナに取り付ける。第2の実施形態では、ICをはんだ付けにより取り付ける。
【0030】
従来技術と比較して、本発明の方法によるメリットがいくつかある。
・基材が吸収する熱が少ないので、基材が損傷を受けるリスクが少ない。
・熱が必要なところに向けられるため、消費エネルギーが低減される。
・さらなる熱を必要とする場合でも、本発明の加熱工程により消費エネルギーが低減される。
・本発明の方法によれば、熱に敏感な基材を用いることができる。
・セルロース及び/又はポリマーからなる基材は、これらの短波長の放射線を著しく吸収することはない。基材の加熱及び冷却が基材内の応力を増大させ、クラック等を引き起こす可能性があることが示されていることから、上記のメリットは、基材の不要な加熱を大幅に低減することを意味する。
【0031】
以上、本発明をいくつかの好ましい実施形態に基づいて説明した。しかしながら、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、追加の実施形態および変形例に想到し得ることは明らかである。
【0032】
例えば、本発明は、RFIDタグ用のアンテナの製造以外にも適用することができる。例えば、プリント配線、フレキシブル電池用導体、ディスプレイ、センサ、ヒータ等の他の導電パターンを製造する場合にも、本発明の方法を適用することが可能であることが当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】