IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ サノフィ・バイオテクノロジーの特許一覧

特表2023-506732ホモ接合型家族性高コレステロール血症を処置するためのPCSK9阻害剤の使用
<>
  • 特表-ホモ接合型家族性高コレステロール血症を処置するためのPCSK9阻害剤の使用 図1
  • 特表-ホモ接合型家族性高コレステロール血症を処置するためのPCSK9阻害剤の使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ホモ接合型家族性高コレステロール血症を処置するためのPCSK9阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230213BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230213BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230213BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P3/06
A61P9/10
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535060
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020064324
(87)【国際公開番号】W WO2021119321
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,268
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/987,148
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シャジア・アリ
(72)【発明者】
【氏名】マリー・バカラ-ディネ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ドナヒュー
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ・アノタン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ルコル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・シー・ポーディー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB22
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるLDL-Cレベルを低下させる方法を提供し、該方法はPCSK9阻害剤を含む医薬組成物を患者に投与することを含む。ある特定の実施形態では、PCSK9阻害剤は、本明細書でmAb316Pと称する例示的な抗体のような抗PCSK9抗体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法であって、
(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する、hoFHを有する患者を選択すること、および
(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること
を含む方法。
【請求項2】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルを低減する方法であって、
(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者を選択すること、および
(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること
を含む方法。
【請求項3】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症を処置し、その発症を遅延させ、および/またはその進行のリスクを低減する方法であって、
(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者を選択すること、および
(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること
を含む方法。
【請求項4】
それを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法であって、
(a)hoFHを有する患者を選択すること、および
(b)治療有効量の1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること
を含む方法。
【請求項5】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルを低減する方法であって、
治療有効量の1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を、それを必要とする患者に投与すること
を含む方法。
【請求項6】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症を処置し、その発症を遅延させ、および/またはその進行のリスクを低減する方法であって、
治療有効量の1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を、それを必要とする患者に投与すること
を含む方法。
【請求項7】
患者が遺伝子型または臨床的基準に基づいてhoFHを有していると診断されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子型が、
(a)ホモ接合型非ヌル/非ヌル、
(b)複合ヘテロ接合型非ヌル/非ヌル、
(c)複合ヘテロ接合型非ヌル/ヌル、および
(d)ホモ接合型ヌル/ヌル
からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
臨床的基準が、
(a)未処置総コレステロール500mg/dL(12.93mmol/L)超およびトリグリセリド300mg/dL(3.39mmol/L)未満、
(b)両親が総コレステロール250mg/dL(6.46mmol/L)超の病歴、および
(c)年齢10歳前で皮膚または腱の黄色腫
からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
患者がLDLアフェレーシスを受けている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者がPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、少なくとも1つの脂質改変療法(LMT)を受けている、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのLMTが少なくとも1つのスタチンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのLMTがLDLアフェレーシスである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのLMTがエゼチミブである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのLMTがフィブラート、胆汁酸封鎖剤、コレステロール吸収阻害剤、ニコチン酸または誘導体、オメガ3脂肪酸、プロブコール、ロミタピド、またはミポメルセンである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
患者がPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、少なくとも約100mg/dLのLDL-Cを有している、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
患者がPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、約500mg/dL~約1000mg/dLのLDL-Cを有している、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
患者が若年性心臓血管疾患および/または心臓血管事象の増大したリスクを有している、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
PCSK9阻害剤が、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合性断片が2週ごとに1回の頻度、約75mgの用量で患者に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
抗体またはその抗原結合性断片が2週ごとに1回の頻度、約150mgの用量で患者に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
抗体またはその抗原結合性断片が4週ごとに1回の頻度、約300mgの用量で患者に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
抗体またはその抗原結合性断片が患者に皮下投与される、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの重鎖および軽鎖のCDRを含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗体またはその抗原結合性断片が充填済みペン型送達デバイスに含まれている、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の投与後、約12週で、患者が、
i)ベースラインから約35%のLDL-Cレベルの低減、
ii)ベースラインから約33%の非HDL-Cレベルの低減、
iii)ベースラインから約30%のアポBレベルの低減、
iv)ベースラインから約27%の総コレステロールレベルの低減、
v)ベースラインから約11%の(空腹時)トリグリセリドレベルの低減、および
vi)ベースラインから約28%のLp(a)レベルの低減
からなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質パラメータの改善を呈する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の投与の約12週後に、患者がベースラインから約35%のLDL-Cレベルの低減を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
それを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)の処置における使用のための医薬組成物であって、該組成物がPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項31】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルの低減における使用のための医薬組成物であって、該組成物がPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項32】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症の処置、その発症の遅延、および/またはその進行のリスクの低減における使用のための医薬組成物であって、該組成物がPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項33】
hoFHを有する患者が、スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、および/またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する、請求項30~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
PCSK9阻害剤が、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である、請求項30~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの重鎖および軽鎖のCDRを含む、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
抗体またはその抗原結合性断片が2週ごとに1回の頻度、約75mgの用量で患者に投与される、請求項34または35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が2週ごとに1回の頻度、約150mgの用量で患者に投与される、請求項34または35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
抗体またはその抗原結合性断片が4週ごとに1回の頻度、約300mgの用量で患者に投与される、請求項34または35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法であって、該方法が、hoFHを有すると診断され、かつスタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者に1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体の開示が参照によって全体として本明細書に組み入れられる2019年12月10日出願の米国仮特許出願第62/946,268号および2020年3月9日出願の米国仮特許出願第62/987,148号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって全体として本明細書に組み入れられる配列表を含む。前記ASCIIコピーは2020年12月10日に創成され、711599_SA9_291PC.txtと命名されており、サイズは99,701バイトである。
【0003】
分野
本開示は、上昇したレベルの脂質およびリポタンパク質に付随する疾患および障害の治療処置の分野に関する。より具体的には、本開示は、スタチン処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはその他スタチン療法に対する有害反応の病歴を有する、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者を処置するためのPCSK9阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
家族性高コレステロール血症(FH)は、人を若年性重症心臓血管疾患(CVD)に罹患させる脂質代謝の遺伝的障害である(非特許文献1)。これは低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、または同様の表現型および種々の重症度を有する3つの関連する遺伝子、すなわち前駆タンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、アポリポタンパク質B(アポB)、およびLDL受容体アダプタータンパク質1(LDLRAP1)の突然変異に起因する常染色体優性または常染色体劣性の疾患であり得る。
【0005】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)は、LDLRとアポBの両方、もしくはPCSK9対立遺伝子における同じ突然変異(真性ホモ接合体)、同じ遺伝子のそれぞれの対立遺伝子における異なる突然変異(複合ヘテロ接合体)、または異なる遺伝子の異なる突然変異(二重ヘテロ接合体)を有する個体を含むと遺伝的に定義される稀で重篤な状態である。表現型の上では、hoFHの重症度は、皮膚線維芽細胞における活性量に基づいて受容体陰性(正常LDLR活性の2%未満)または受容体欠損(正常LDLR活性の2%~25%)のいずれかとして歴史的に分類された残存LDLR活性の量による。本明細書において使用する遺伝的定義には、真性ホモ接合体、複合ヘテロ接合体、または二重ヘテロ接合体と考えられる全ての個体が含まれる。しかし、両方の対立遺伝子においてヌルLDLR突然変異を有する個体は除外する。
【0006】
hoFHの患者は一般に重篤な高コレステロール血症(500~1000mg/dL、12.95~25.9mmol/L)を有し、生涯にわたる高レベルの血漿LDL-Cへの曝露および極めて急速にアテローム性動脈硬化症が進行するリスクの増大がもたらされ、これらは生涯の最初の20年の間に顕在化することが多い。持続的に高いレベルのLDL-Cはまた、皮膚および腱の黄色腫、弁および弁上部の狭窄をもたらすことがある(非特許文献1)。この加速されたアテローム性動脈硬化症は、若年性心臓血管疾患(CVD)および心臓血管(CV)事象のリスクの増大をもたらす。hoFH患者の最近の観察研究は、最初の主要なCV事象の平均年齢は20歳であったことを実証した(非特許文献1)。
【0007】
FHを有する成人患者における薬物療法の初期の目標は、50%以上のLDL-Cの低減を達成することである(非特許文献2)。これが達成されれば、治療は冠動脈疾患もしくはその他の主要な危険因子がなくて100mg/dL(2.59mmol/L)未満、または冠動脈疾患もしくはその他の主要な危険因子があって70mg/dL未満(1.81mmol/L未満)のLDL-Cを達成することを目的とするように拡大される(非特許文献3)。しかし、hoFHの患者における上昇したLDL-Cの管理は、現存する処置の選択肢では困難である。hoFHの患者は一般に従来の薬物療法には応答しにくく、しばしば薬学的管理に対して難治性で、そのためLDLアフェレーシスを開始する必要性が要求される、極めて高いLDL-Cレベルがもたらされる。
【0008】
スタチンは3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素リダクターゼを阻害することによってコレステロール合成を阻害し、hoFH患者の第1線の療法として使用されている。作用機序は一般に肝のLDL受容体の上方制御によってLDL-Cレベルを低下させるので、hoFHの患者はスタチンに対して難治性になる傾向がある。しかしながら、hoFH患者において機能性LDL受容体がほぼ完全に喪失しているにも関わらず、スタチンは残存受容体活性を最大化するための第1線の療法として今でも使用されている(非特許文献4、5、6)。
【0009】
高用量のスタチンとコレステロール吸収阻害剤であるエゼチミブとの組合せで処置される多くの患者は、彼らの目標のLDL-Cからはるかに遠いままである。より新しい療法、すなわちミポメルセンおよびロミタピドがhoFHの患者における使用に承認されているが、これらは全ての国で市販されてはおらず、肝脂肪含量の増加、肝傷害のマーカーの上昇、重篤になる可能性がある頻繁な注射部位の反応(ミポメルセン)または忍容されにくい胃腸の有害影響(ロミタピド)が伴う(非特許文献7、8)。
【0010】
LDLアフェレーシスを使用するLDL-Cの機械的除去は1つの選択肢であるが、患者の生活の質を低下させ、他の課題を提示する可能性がある(非特許文献9)。低密度リポタンパク質のアフェレーシスは患者にとって侵襲的で負担の大きい高価な処置である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kolanskyら、2008年 Am J Cardiol 102(11):1438~1443頁
【非特許文献2】Goldbergら、2011年 J Clin Lipidol 5(3 Supp):S1~S8頁
【非特許文献3】Wattsら、2014年 J Clin Lipidol 8(2):148~172頁
【非特許文献4】Raalら、2000年 Atherosclerosis 150(2):421~428頁
【非特許文献5】Maraisら、2008年 Atherosclerosis 197(1):400~406頁
【非特許文献6】Raalら、1997年 Atherosclerosis 135(2):249~256頁
【非特許文献7】Raalら、2010年 Lancet 375(9719):998~1006頁
【非特許文献8】Cuchelら、2013年 Lancet 381(9860):40~46頁
【非特許文献9】Schielら、1995年 Int J Artif Organs 18(12):786~793頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者を効果的に処置する方法へのニーズが残っている。スタチンによる処置にも関わらず許容できるLDL-Cレベルを達成することができないか、スタチン療法に対する有害反応を忍容できないか経験するか、および/または処置のためにLDLアフェレーシスに頼らなくてはならない、hoFHを有する患者を効果的に処置する方法へのニーズも残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法を提供する。特に、本開示の方法は、両方のLDLR対立遺伝子におけるヌル/ヌル突然変異を有する患者を除く、hoFHを有する患者を処置するために有用である。
【0014】
一態様では、本開示はそれを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法を提供し、該方法は(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する、hoFHを有する患者を選択すること、および(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること、を含む。
【0015】
別の態様では、本開示はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルを低減させる方法を提供し、該方法は(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者を選択すること、および(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること、を含む。
【0016】
さらに別の態様では、本開示はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症を処置し、その発症を遅延させ、および/またはその進行のリスクを低減する方法を提供し、該方法は(a)スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者を選択すること、および(b)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること、を含む。
【0017】
本開示による方法の一実施形態では、患者はPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、少なくとも約100mg/dLのLDL-Cを有している。本開示による方法の一実施形態では、患者はPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、約250mg/dL~約1000mg/dLのLDL-Cを有している。本開示による方法の別の実施形態では、患者はPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、約500mg/dL~約1000mg/dLのLDL-Cを有している。
【0018】
本開示による方法の一実施形態では、患者はPCSK9阻害剤の投与の前またはそのときに、少なくとも1つの脂質改変療法(LMT)を受けている。さらなる実施形態では、少なくとも1つのLMTは少なくとも1つのスタチンである。さらなる実施形態では、少なくとも1つのLMTはLDLアフェレーシスである。さらなる実施形態では、少なくとも1つのLMTはエゼチミブである。
【0019】
本開示による方法の一実施形態では、患者は若年性心臓血管疾患および/または心臓血管事象の増大したリスクを有している。
【0020】
本開示による方法の一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。さらなる実施形態では、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は2週ごとに1回の頻度、約150mgの用量で患者に投与される。さらなる実施形態では、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は患者に皮下投与される。
【0021】
本開示による方法の一実施形態では、PCSK9阻害剤は配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列の重鎖および軽鎖のCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片である。さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0022】
本開示による方法の一実施形態では、PCSK9阻害剤は抗体またはその抗原結合性断片であり、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む抗体と同じPCSK9上のエピトープに結合する。
【0023】
本開示による方法の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は抗体またはその抗原結合性断片であり、抗体またはその抗原結合性断片は、PCSK9への結合に関して配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む抗体と競合する。
【0024】
本開示による方法の一実施形態では、PCSK9阻害剤は抗体またはその抗原結合性断片であり、抗体またはその抗原結合性断片は充填済みペン型送達デバイスに含まれている。
【0025】
本開示による方法の一実施形態では、hoFHを有する患者は、(a)ホモ接合型非ヌル/非ヌル、(b)複合ヘテロ接合型非ヌル/非ヌル、(c)複合ヘテロ接合型非ヌル/ヌル、および(d)ホモ接合型ヌル/ヌルからなる群から選択されるLDL受容体遺伝子型を有する。別の実施形態では、hoFHを有する患者は、(a)ホモ接合型非ヌル/非ヌル、(b)複合ヘテロ接合型非ヌル/非ヌル、および(c)複合ヘテロ接合型非ヌル/ヌルからなる群から選択されるLDL受容体遺伝子型を有する。
【0026】
本開示による方法の一実施形態では、1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の投与後、約12週で、患者は、
i)ベースラインから約35%のLDL-Cレベルの低減、
ii)ベースラインから約33%の非HDL-Cレベルの低減、
iii)ベースラインから約30%のアポBレベルの低減、
iv)ベースラインから約27%の総コレステロールレベルの低減、
v)ベースラインから約11%の(空腹時)トリグリセリドレベルの低減、および/または
vi)ベースラインから約28%のLp(a)レベルの低減
からなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質パラメータの改善を呈する。
【0027】
一態様では、本開示はそれを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)の処置における使用のための医薬組成物を提供し、該組成物はPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0028】
別の態様では、本開示はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルの低減における使用のための医薬組成物を提供し、該組成物はPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0029】
さらに別の態様では、本開示はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症の処置、その発症の遅延、および/またはその進行のリスクの低減における使用のための医薬組成物を提供し、該組成物はPCSK9阻害剤および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0030】
本開示による組成物の一実施形態では、hoFHを有する患者は、スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、および/またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する。
【0031】
本開示による組成物の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの重鎖および軽鎖のCDRを含む。
【0032】
本開示による組成物の一実施形態では、PCSK9阻害剤はPCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であり、該抗体またはその抗原結合性断片は2週ごとに1回の頻度、約150mgの用量で患者に投与される。
【0033】
一態様では、本開示はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法を提供し、該方法は、hoFHを有すると診断され、かつスタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者に1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を投与することを含む。
【0034】
本開示は、毎日の治療用スタチンレジメンにある間に開始したまたは増大した骨格筋関連症状を以前に経験した中程度、高度、または極めて高度の心臓血管系リスクを有する患者を選択し、その患者に1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を投与することによって、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を処置する方法も提供する。ある特定の実施形態によれば、患者は少なくとも2回の分離した毎日の治療用スタチンレジメンにある間に開始したまたは増大した骨格筋関連症状を以前に経験したという基準によって選択される(たとえばここで毎日の治療用スタチンレジメンの少なくとも1つは承認されたスタチンの最低日用量である)。
【0035】
本開示はそれを必要とする患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)の処置における使用のためのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物も提供し、該医薬組成物はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者における血清LDL-Cレベルの低減における使用のためのPCSK9阻害剤を含み、該医薬組成物はホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症の処置、その発症の遅延、および/またはその進行のリスクの低減における使用のためのPCSK9阻害剤を含む。本開示の医薬組成物のある特定の実施形態では、患者はhoFHを有し、かつスタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対して有害反応の病歴を有する。
【0036】
本開示の他の実施形態は、以下の詳細な説明の概観によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本明細書、実施例2に記載の臨床試験を図示する研究フロー図である。
図2】二重盲検期間中の経時的なベースラインからのLDL-C LS平均(±SE)パーセント変化を示すグラフである。最小二乗(LS)平均、標準誤差(SE)、およびp値は、MMRM(反復測定による混合効果モデル)分析から得た。モデルには、固定処置効果、IVRSによるランダム化層、時点、処置と時点の相互作用、層と時点の相互作用、および連続ベースラインLDL-C値と時点の相互作用が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示を記載する前に、記載した方法および条件は変動し得るので、本開示は記載した特定の方法および実験条件に限定されないことを理解されたい。本開示の範囲は添付した請求項のみによって限定されるので、本明細書で使用した用語は特定の実施形態を記載する目的のためのみであり、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0039】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって共通に理解される同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、引用した特定の数値に関連して使用される際の用語「約」は、その値が引用した値から1%を超えずに変動し得ることを意味する。たとえば、本明細書で使用される場合、「約100」には、99および101ならびにその間の全ての値(たとえば99.1、99.2、99.3、99.4等)が含まれる。
【0040】
本明細書に記載した方法および材料と類似または等価の任意の方法および材料は本発明の実施において使用することができるが、ここで好ましい方法および材料について記載する。本明細書で述べる全ての出版物は、参照によって全体として記載するために本明細書に組み入れられる。
【0041】
スタチンの非効率性および非忍容性
一部の実施形態では、本開示は一般に、スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性である(「スタチン非忍容性患者」、本明細書で「スタチンに非忍容性の患者」とも称する)か、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する患者を処置するために有用な方法および組成物に関する。本明細書で使用される場合、患者は脂質パラメータにおいて十分な改善なしにスタチン療法の対象になった場合に「スタチンに難治性」とみなされる。たとえば、スタチンに対して難治性の患者は安定なスタチン療法にあるがそれでも少なくとも70mg/dLの血清LDL-Cレベルを有している。
【0042】
本明細書で使用される場合、患者が毎日のスタチン治療レジメンにある間に開始したまたは増大し、スタチン療法が中止された場合に終了した、1つまたはそれ以上の有害反応を経験した病歴を有するならば、その患者は「スタチン非忍容性」または「スタチンに対して非忍容性」とみなされる。ある特定の実施形態では、有害反応は事実上、筋骨格系で、たとえば骨格筋の疼痛、鈍痛、脆弱性、または痙攣(たとえば筋肉痛、ミオパシー、横紋筋融解症等)である。ある特定の実施形態では、有害反応は運動または活動に続いて起こるか、または強くなる骨格筋の疼痛または鈍痛である。スタチン関連有害反応には、スタチンの投与に相関する肝、胃腸、および精神的な症状も含まれる。
【0043】
ある特定の実施形態によれば、患者が少なくとも2つの異なる別の毎日のスタチン治療レジメンに付随する骨格筋関連症状の病歴を有するならば、その患者は「スタチン非忍容性」または「スタチンに対して非忍容性」とみなされる。ある特定の実施形態によれば、患者が1つまたはそれ以上のスタチンの最低承認日用量に対して1つまたはそれ以上のスタチン関連有害反応を呈するならば、その患者は「スタチン非忍容性」または「スタチンに対して非忍容性」である。ある特定の実施形態では、患者が最低承認錠剤サイズの7倍の集積スタチン週用量を忍容することができなければ、その患者は「スタチン非忍容性」または「スタチンに対して非忍容性」である。本開示の他の実施形態によれば、患者が低用量のスタチン療法を忍容することができるが、用量が増加された場合(たとえば目標のLDL-Cレベルを達成するため)に症状が進行するならば、その患者は「スタチン非忍容性」または「スタチンに対して非忍容性」である。
【0044】
本開示によれば、「少なくとも2つの異なる別のスタチンの摂取に付随する骨格筋関連症状の病歴」には、スタチン療法の間に開始または増大し、スタチン療法が中止された場合に終了した骨格筋関連の疼痛、鈍痛、脆弱性、および/または痙攣が含まれる。本開示の文脈において、スタチン非忍容性に付随する例示的なスタチン療法には、毎日5mgのロスバスタチン、毎日10mgのアトロバスタチン、毎日10mgのシムバスタチン、毎日20mgのロバスタチン、毎日40mgのプラバスタチン、毎日40mgのフルバスタチン、および毎日2mgのピタバスタチンからなる群から選択される毎日の治療用スタチンレジメンが含まれ得る。
【0045】
ホモ接合型家族性高コレステロール血症を処置し、血清LDL-Cレベルを低減する方法
ある特定の実施形態によれば、本開示の方法によって処置できる患者は、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有している(本明細書で「高コレステロール血症患者」と称することがある)。ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)は、脂質低下療法にも関わらず高いLDL-コレステロールレベルおよびアテローム性動脈硬化心臓血管疾患によって特徴付けることができる。
【0046】
一部の実施形態では、患者は遺伝子型または臨床的基準に基づいてhoFHを有していると診断される。一部の実施形態では、hoFHを有していると診断される患者には、LDLR、アポB、PCSK9、またはLDLRAP1遺伝子における突然変異について、真性ホモ接合体(同じ遺伝子の両方の対立遺伝子における同じ突然変異)、複合ヘテロ接合体(同じ遺伝子のそれぞれの対立遺伝子における異なる突然変異)、または二重ヘテロ接合体(異なる遺伝子における異なる突然変異)と考えられる全ての個体が含まれる。一部の実施形態では、突然変異は残存LDLR活性の量に基づいて「ヌル」または「非ヌル」として特徴付けられる。一部の実施形態では、患者は(a)ホモ接合型非ヌル/非ヌル、(b)複合ヘテロ接合型非ヌル/非ヌル、(c)複合ヘテロ接合型非ヌル/ヌル、または(d)ホモ接合型ヌル/ヌルを含む遺伝子型に基づいてhoFHを有すると診断される。一部の実施形態では、「ヌル/ヌル」突然変異を有する患者は2%未満の残存LDLR活性を有している。一部の実施形態では、患者は(a)未処置総コレステロール500mg/dL(12.93mmol/L)超およびトリグリセリド(TG)300mg/dL(3.39mmol/L)未満、(b)両親が総コレステロール250mg/dL(6.46mmol/L)超の病歴、および(c)年齢10歳前で皮膚または腱の黄色腫、を含むがこれらに限定されない1つまたはそれ以上の臨床的基準に基づいてhoFHを有していると診断される。一部の実施形態では、hoFHを有する患者は本明細書で開示した方法および組成物による処置のために選択される。
【0047】
本開示は、hoFHを有する患者における血清LDL-Cレベルを低減する方法を含む。対象はhoFHを有し、かつスタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、および/またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有し得る。同様に、本開示は骨格筋の疼痛、不快感、脆弱性、または痙攣を誘起することなく、hoFHを有する患者における血清LDL-Cレベルを低減させる方法を含む。本文脈において使用する場合、「血清LDL-Cレベルの低減」は、患者の血清LDL-Cレベルを少なくとも10%(たとえば少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれ以上)減少させることを意味する。用語「対象」および「患者」は、本明細書では相互交換可能に使用される。
【0048】
スタチンの使用を排除または低減する方法
本開示は、とりわけhoFHを有する患者においてスタチンの使用を排除または低減するために有用な方法および組成物を含む。一部の実施形態では、hoFHを有する患者はスタチンに対して難治性もしくは非忍容性であるか、またはスタチンによる処置に際して有害事象を経験している。本開示のこの態様による方法は、(a)毎日の治療用スタチンレジメンにあるか、または過去にあって、かつスタチン療法に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対して有害反応の病歴を有する患者を選択すること、および(b)患者の毎日の治療用スタチンレジメンを中止または低減すること、および(c)1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤を患者に投与すること、を含む。本開示のこの態様のある特定の実施形態によれば、患者の毎日の治療用スタチンレジメンは、1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の患者への投与を含む処置の治療経過の開始のときまたはその直前に、完全に中止してよい。他の実施形態では、患者の毎日の治療用スタチンレジメンは、1つまたはそれ以上の用量のPCSK9阻害剤の患者への投与を含む処置の治療経過の開始のときまたはその直前に、徐々に低減してよい。本開示のこの態様の文脈におけるスタチンレジメンの徐々の低減は、患者に投与されるスタチンの量を低減すること、および/または患者へのスタチンの投与の頻度を減少させること、を含んでよい。本開示のこの態様によるスタチンレジメンの徐々の低減は、患者がスタチンの代わりにPCSK9阻害剤を受けている間に患者によるスタチンの使用の完全な排除をもたらし得る。この点において、PCSK9阻害剤の投与によって患者におけるホモ接合型家族性高コレステロール血症の適切な処置を可能にする一方で、患者によるスタチンの使用を低減または排除することによって、患者に対するスタチンの有害影響が低減または排除される。
【0049】
患者の選択
本開示はとりわけ、たとえば「スタチンに対して難治性」、「スタチン非忍容性」、もしくは「スタチンに対して非忍容性」の患者、および/またはスタチンによる処置に際して有害反応を経験している患者(本明細書の別の箇所で定義した)を含む、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者を処置するために有用な方法および組成物を含む。本開示の方法によって処置可能な患者は、1つまたはそれ以上のさらなる選択基準も呈し得る。たとえば、患者は中程度、高度、または極めて高度のCVリスクを有するという基準によって、本開示の方法による処置のために選択し得る。CVリスクの程度は、その開示が参照によって全体として本明細書に組み入れられるESC/EAS Guidelines for the Management of Dislipidaemias,European Heart Journal,2100;32:1769~1818頁(本明細書で「ESC/EAS 2011」と称する)で説明されるThe Task Force for the Management of Dislipidaemias of the European Society of Cardiology(ESC)およびEuropean Atherosclerosis Society(EAS)によって定義される計算された10年致死心臓血管疾患(CVD)リスクSCORE値の観点で評価し、表現し得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「中程度のCVリスク」は、1%より大きいかこれに等しく、かつ5%未満の計算された10年致死CVDリスクSCOREを意味する。本明細書で使用される場合、「高度のCVリスク」は、5%より大きいかこれに等しい10年致死CVDリスクSCORE、および/または中程度の腎疾患(CKD)、および/または標的臓器の損傷がない1型もしくは2型の糖尿病、および/またはhoFHを意味する。本明細書で使用される場合、「極めて高度のCVリスク」は、記録された冠心臓疾患(CHD)、虚血性発作、末梢動脈疾患(PAD)、一過性虚血性発作(TIA)、腹部大動脈瘤、無症状の50%を超える頸動脈閉塞、頸動脈内膜切除術もしくは頸動脈ステント術、腎動脈狭窄、腎動脈ステント術、および/または標的臓器の損傷がある1型もしくは2型の糖尿病の病歴を意味する。
【0051】
ある特定の実施形態によれば、患者は冠心臓疾患(CHD)の病歴を有することに基づいて選択される。本明細書で使用される場合、「CHDの病歴」(または「記録されたCHDの病歴」)には、(i)急性心筋梗塞(MI)、(ii)沈黙型MI、(iii)不安定狭心症、(iv)冠血行再建術(たとえば経皮冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパスグラフト手術(CABG))、および/または(v)侵襲的または非侵襲的な検査(たとえば冠動脈造影、トレッドミルを使用するストレス検査、ストレスエコー心臓検査、または核造影)によって診断される臨床的に顕著なCHDのうち1つまたはそれ以上が含まれる。
【0052】
ある特定の実施形態によれば、患者は、年齢(たとえば40、45、50、55、60、65、70、75、または80歳より高齢)、人種、国籍、性別(男性または女性)、運動習慣(たとえば規則的運動者、非運動者)、その他の以前から存在する医学的状態(たとえばII型糖尿病、高血圧、その他)、および現在の投薬状況(たとえば現在摂取しているベータブロッカー類、ナイアシン、エゼチミブ、フィブラート類、オメガ-3脂肪酸、胆汁酸吸着レジン、その他)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のさらなる危険因子を有することに基づいて選択される。
【0053】
本開示は、とりわけ、hoFHを有し、かつ最大限に忍容されるスタチン療法を含む処置を受けている患者を処置するために有用な方法および組成物を含む。一部の実施形態では、本明細書で使用される場合、「最大限に忍容されるスタチン療法」または「スタチン療法の最大忍容用量」は相互交換可能に使用され、許容されない有害な副影響を患者に惹起することなく特定の患者に投与することができるスタチンの最大用量であるスタチンの日用量の投与を含む治療レジメンを意味する。最大限に忍容されるスタチン療法には、それだけに限らないが、高強度スタチン療法が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「最大限に忍容される脂質改変療法」または「最大忍容LMT」は相互交換可能に使用され、許容されない有害な副影響を患者に惹起することなく特定の患者に投与することができる脂質改変療法(LMT)の最大用量であるLMTの日用量、週用量、または月用量の投与を含む治療レジメンを意味する。最大限に忍容されるLMTには、それだけに限らないが、高強度スタチン療法、エゼチミブ、フィブラート類、胆汁酸封鎖剤、コレステロール吸収阻害剤、ニコチン酸または誘導体、オメガ3脂肪酸、プロブコール、ロミタピド、およびミポメルセンが含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「若年性心臓血管疾患」は、年齢50歳前の患者における心臓血管疾患を指す。
【0056】
治療有効性
本開示の方法は、LDL-C、アポB、非HDL-C、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、Lp(a)、および/またはレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの低減をもたらす。たとえば、本開示のある特定の実施形態によれば、hoFHを有する患者へのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物の投与は、少なくとも約25%、30%、40%、45%、50%、60%、またはそれ以上の血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のベースラインからの平均低減パーセント、少なくとも約20%、25%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上のアポBのベースラインからの平均低減パーセント、少なくとも約20%、25%、30%、40%、50%、60%、またはそれ以上の非HDL-Cのベースラインからの平均低減パーセント、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%,またはそれ以上の総コレステロールのベースラインからの平均低減パーセント、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%またはそれ以上のトリグリセリド(たとえば空腹時トリグリセリド)のベースラインからの平均低減パーセント、および/または少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれ以上のLp(a)のベースラインからの平均低減パーセントをもたらすことになる。上で説明した種々の脂質パラメータの低減パーセントは、本明細書で開示したPCSK9阻害剤の投与を含む治療レジメン(たとえば150mgのmAb316Pの2週ごと1回の投与、またはその他の同様の投与レジメン、たとえば本明細書の実施例2を参照)の開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、またはそれ以上の週で達成される。
【0057】
ある特定の実施形態によれば、本開示はhoFHを有する患者における血清LDL-Cレベルを低減する方法を含む。一部の実施形態では、hoFHを有する患者は、スタチンに対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する。さらなる実施形態によれば、本開示は、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFH)を有する患者におけるアテローム性動脈硬化症を処置し、その発症を遅延させ、および/またはその進行のリスクを低減する方法を含む。一部の実施形態では、hoFHを有する患者は、スタチンによる処置に対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有する。本開示のこの態様による方法は(a)スタチンに対して難治性であるか、スタチンに対して非忍容性であるか、またはスタチン療法に対する有害反応の病歴を有し、かつ中程度、高度、または極めて高度の心臓血管系リスクを有する患者を選択すること、および(b)1用量あたり約150mgの投薬量、2週ごとに約1回の投薬頻度で、1つまたはそれ以上の用量の抗PCSK9抗体を患者に投与すること、を含む。本明細書に記載した方法のさらなる実施形態では、抗PCSK9抗体による処置の約12週後に、患者はベースラインから約35%のLDL-Cレベルの低減、ベースラインから約33%の非HDL-Cレベルの低減、ベースラインから約30%のアポBレベルの低減、ベースラインから約27%の総コレステロールレベルの低減、ベースラインから約11%の(空腹時)トリグリセリドレベルの低減、および/またはベースラインから約28%のLp(a)レベルの低減からなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質パラメータの改善を呈する。本開示のこの態様による方法は、抗PCSK9抗体による処置の開始の前またはそれと同時に、患者の背景スタチン療法を中止することを含み得る。
【0058】
PCSK9阻害剤
本開示の方法は、PCSK9阻害剤を含む治療用組成物を患者に投与することを含む。本明細書で使用される場合「PCSK9阻害剤」は、ヒトPCSK9に結合しまたはこれと相互作用する任意の薬剤であり、インビトロまたはインビボでPCSK9の正常な生物学的機能を阻害する。PCSK9阻害剤のカテゴリーの非限定的な例には、低分子PCSK9アンタゴニスト、ペプチド系PCSK9アンタゴニスト(たとえば「ペプチボディ」分子)、およびヒトPCSK9に特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合性断片が含まれる。
【0059】
用語「ヒト前駆タンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型」または「ヒトPCSK9」または「hPCSK9」は、本明細書で使用される場合、配列番号197で示される核酸配列によってコードされ、配列番号198のアミノ酸配列を含むPCSK9またはその生物学的に活性な断片を指す。
【0060】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそのマルチマー(たとえばIgM)を指すことを意図している。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書でHCVRまたはVと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、すなわちC1、C2、およびC3を含む。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書でLCVRまたはVと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに副分割することができる。それぞれのVおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRと4つのFRとからなっている。本開示の異なる実施形態では、抗PCSK9抗体(またはその抗原結合性部分)のFRはヒト生殖細胞系列配列と同一であってよく、または天然にもしくは人工的に改変されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並行解析に基づいて定義される。
【0061】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合性断片も含む。用語、抗体の「抗原結合性部分」、抗体の「抗原結合性断片」等は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、任意の、天然に存在する、酵素的に得られた、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、たとえばタンパク質分解性消化または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子操作手法等の任意の好適な標準的手法を使用して、完全な抗体分子から誘導し得る。そのようなDNAは既知であり、および/またはたとえば市販の供給元、DNAライブラリー(たとえばファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAをたとえば化学的にまたは分子生物学的手法を使用することによってシーケンシングおよび操作して、1つまたはそれ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを好適な構成に配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を創成し、アミノ酸を改変、付加、もしくは欠失等をさせてもよい。
【0062】
抗原結合性断片の非限定的な例には、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(たとえばCDR3ペプチド等の単離された相補性決定領域(CDR))、または束縛されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが含まれる。その他の操作された分子、たとえばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(たとえば一価ナノボディ、二価ナノボディ等)、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される表現「抗原結合性断片」の中に包含される。
【0063】
抗体の抗原結合性断片は、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインは任意の大きさまたは任意のアミノ酸組成であってよく、一般に少なくとも1つのCDRを含み、これは1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、またはそのフレーム内にある。Vドメインに付随するVドメインを有する抗原結合性断片においては、VドメインおよびVドメインは任意の好適な配置で相互に対して位置し得る。たとえば、可変領域はダイマーであって、V-V、V-V、またはV-Vダイマーを含み得る。あるいは、抗体の抗原結合性断片はモノマーのVドメインまたはVドメインを含み得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本開示の抗体の抗原結合性断片の中で見出される可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な構成には、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-C、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、および(xiv)V-Cが含まれる。上で列挙した例示的な構成のいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインのいずれの構成においても、可変ドメインと定常ドメインは互いに直接連結されていてもよく、完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子の中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間の可撓性または半可撓性のリンケージをもたらす少なくとも2つ(たとえば5、10、15、20、40、60、またはそれ以上)のアミノ酸からなっていてよい。さらに、本開示の抗体の抗原結合性断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上のモノマーVドメインまたはVドメインと(たとえばジスルフィド結合によって)非共有結合で会合した上記の可変および定常のドメイン構成のいずれかのホモダイマーまたはヘテロダイマー(またはその他のマルチマー)を含み得る。
【0065】
完全な抗体分子と同様に、抗原結合性断片は単一特異的または多重特異的(たとえば二重特異的)であり得る。抗体の多重特異的抗原結合性断片は、典型的には少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになり、ここでそれぞれの可変ドメインは、個別の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書で開示した例示的な二重特異的抗体フォーマットを含む任意の多重特異的抗体フォーマットは、当技術で利用可能な日常的な手法を使用して、本開示の抗体の抗原結合性断片に関連する使用のために適合させ得る。
【0066】
抗体の定常領域は、補体を固定して細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力において重要である。すなわち、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択される。
【0067】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図している。しかしながら、本開示のヒト抗体は、たとえばCDR、特にCDR3におけるヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(たとえばインビトロでのランダムもしくは部位特異的な突然変異生成またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図していない。
【0068】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製され、発現され、創成され、もしくは単離された全てのヒト抗体、たとえば宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下にさらに記載する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(たとえばマウス)から単離された抗体(たとえばTaylorら、(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む他の任意の手段によって調製され、発現され、創成され、もしくは単離された抗体を含むことを意図している。そのようなヒト組換え抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有している。しかしある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体はインビトロ変異生成(またはヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合にはインビボ体細胞変異生成)に供され、したがって組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VおよびV配列由来でこれに関連しているが、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリーの中に天然には存在しないこともある配列である。
【0069】
ヒト抗体は、ヒンジの不均質性に関連する2つの形態で存在し得る。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、ダイマーが鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持された約150~160kDaの安定な4つの鎖構築物を含む。第2の形態では、ダイマーは鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合で連結された軽鎖および重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成されている(半抗体)。これらの形態は、アフィニティ精製の後でさえも、分離することが極めて難しかった。
【0070】
種々の無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態が出現する頻度は、それだけに限らないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに付随する構造的な相違による。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第2の形態(Angalら、(1993)Molecular Immunology 30:105頁)の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルにまで顕著に低減させ得る。本開示は、ヒンジ、C2領域、またはC3領域において1つまたはそれ以上の変異を有する抗体を包含し、これはたとえば生産において所望の抗体形態の収率を改善するために望ましい。
【0071】
「単離された抗体」は、本明細書で使用される場合、その天然の環境の少なくとも1つの成分から同定され、分離され、および/または回収された抗体を意味する。たとえば、生命体の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するか天然に産生される組織もしくは細胞から分離されもしくは取り出された抗体は、本開示の目的のために「単離された抗体」である。単離された抗体には、組換え細胞の中のインサイチュの抗体も含まれる。単離された抗体は少なくとも1つの精製または単離のステップに供された抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は実質的に他の細胞材料および/または化学物質を含まなくてよい。
【0072】
用語「特異的に結合する」等は、抗体またはその抗原結合性断片が抗原と生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。抗体が抗原と特異的に結合するか否かを判定する方法は当技術で周知であり、たとえば平衡透析、表面プラズモン共鳴等を含む。たとえば、PCSK9と「特異的に結合する」抗体は、本開示の文脈で使用される場合、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満のKでPCSK9またはその部分に結合する抗体を含む。しかし、ヒトPCSK9に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のPCSK9分子等の他の抗原との交差反応性を有している。
【0073】
本開示の方法のために有用な抗PCSK9抗体は、それから抗体が誘導された対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖および軽鎖の可変ドメインのフレームワーク領域および/またはCDR領域に1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書で開示したアミノ酸配列を、たとえば公衆の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系列配列と比較することによって、容易に確認することができる。本開示は、本明細書で開示したアミノ酸配列のいずれかから誘導される抗体およびその抗原結合性断片の使用を含む方法を含み、1つもしくはそれ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域の中の1つもしくはそれ以上のアミノ酸は、それから抗体が誘導された生殖細胞系列配列の対応する残基に、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基に、または対応する生殖細胞系列残基の保存的なアミノ酸置換に、変異される(そのような配列の変更は、本明細書で集合的に「生殖細胞系列変異」と称する)。当業者であれば、本明細書で開示した重鎖および軽鎖の可変領域配列から出発して、1つまたはそれ以上の個別の生殖細胞系列変異またはその組合せを含む数多くの抗体および抗原結合性断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、Vドメインおよび/またはVドメインの中のフレームワークおよび/またはCDRの残基の全ては、それから抗体が誘導された元の生殖細胞系列配列において見出される残基に復帰変異する。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、たとえばFR1の最初の8個のアミノ酸の中もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸の中に見出される変異した残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3の中に見出される変異した残基のみが、元の生殖細胞系列配列に復帰変異する。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDRの残基の1つまたはそれ以上が、異なる生殖細胞系列配列(すなわち、それから抗体が元々誘導された生殖細胞系列配列と異なる生殖細胞系列配列)の対応する残基に変異する。さらに、本開示の抗体は、フレームワーク領域および/またはCDR領域の中に2つ以上の生殖細胞系列変異の任意の組合せを含んでよく、たとえばある特定の個別の残基が特定の生殖細胞系列配列の対応する残基に変異する一方、元の生殖細胞系列配列とは異なる他のある残基が維持され、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に変異する。いったん得られれば、1つまたはそれ以上の生殖細胞系列変異を含む抗体および抗原結合性断片は、1つまたはそれ以上の所望の特性、たとえば改善された結合特異性、増大した結合親和性、改善または増強されたアンタゴニスト性またはアゴニスト性の生物学的特性(場合による)、低減された免疫原性等について容易に試験することができる。この一般的な様式によって得られる抗体および抗原結合性断片の使用は、本開示に包含される。
【0074】
本開示は、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する本明細書で開示したHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗PCSK9抗体の使用を含む方法も含む。たとえば、本開示は、本明細書で開示したHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかに対して、たとえば10以下、8以下、6以下、4以下等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0075】
用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書で使用される場合、たとえばBIAcore(商標)システム(GE Healthcare,Piscataway,NJのBiacore Life Sciences division)を使用する、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によって、リアルタイム相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。
【0076】
用語「K」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図している。
【0077】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域における特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有し得る。すなわち、異なる抗体は抗原上の異なる区域に結合し、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープはコンフォメーショナルまたは線状であり得る。コンフォメーショナルなエピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。ある特定の状況では、エピトープは抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0078】
ある特定の実施形態によれば、本開示の方法において使用される抗PCSK9抗体は、pH依存性結合特性を有する抗体である。本明細書で使用される場合、「pH依存性結合」という表現は、抗体またはその抗原結合性断片が、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9に対して低減した結合」を呈することを意味する(本開示の目的のため、両方の表現は相互交換可能に使用される)。たとえば、「pH依存性結合特性を有する」抗体は、酸性pHより中性pHにおいてより高い親和性でPCSK9に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態では、本開示の抗体および抗原結合性断片は、酸性pHより中性pHにおいて少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍、またはそれ以上高い親和性で、PCSK9に結合する。
【0079】
本開示のこの態様によれば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、親の抗PCSK9抗体に対して1つまたはそれ以上のアミノ酸の変動を有し得る。たとえば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、たとえば親の抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上のCDRにおいて、1つまたはそれ以上のヒスチジン置換または挿入を含み得る。すなわち、本開示のある特定の実施形態によれば、親抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上のCDRの1つまたはそれ以上のアミノ酸がヒスチジン残基によって置換されていることを除いて、親抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(たとえば重鎖および軽鎖のCDR)を含む抗PCSK9抗体を投与することを含む方法が提供される。pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体は、親抗体の単一のCDRの中に、または親抗PCSK9抗体の多数(たとえば2、3、4、5、または6個)のCDR全体に分布した、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上のヒスチジン置換を有し得る。たとえば、本開示は、親抗PCSK9抗体のHCDR1の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR3の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、および/またはLCDR3の中に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換を含むpH依存性結合を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0080】
本明細書で使用される場合、表現「酸性pH」は、6.0またはそれ未満(たとえば約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満等)のpHを意味する。表現「酸性pH」には、約6.0、5.95、5.90、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値が含まれる。本明細書で使用される場合、表現「中性pH」は、約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」には、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値が含まれる。
【0081】
本開示は、本明細書に記載した特定の例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗PCSK9抗体を含む。同様に、本発明は、PCSK9またはPCSK9断片との結合について本明細書に記載した特定の例示的な抗体のいずれかと競合する抗PCSK9抗体も含む。
【0082】
本明細書では、配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む抗体と同じPCSK9上のエピトープに結合する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性断片が開示される。本明細書では、PCSK9への結合について配列番号2、3、4、7、8、および10を有する重鎖および軽鎖のCDRアミノ酸配列を含む抗体と競合する抗PCSK9抗体またはその抗原結合性断片も開示される。
【0083】
抗体が参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するか否か、またはそれとの結合についてこれと競合するか否かは、当技術で既知の日常的な方法を使用することによって容易に決定することができる。たとえば、試験抗体が本発明の参照抗PCSK9抗体と同じエピトープに結合するか否かを判定するため、参照抗体を飽和条件下でPCSK9タンパク質またはペプチドに結合させる。次に、試験抗体がPCSK9分子に結合する能力を評価する。参照抗PCSK9抗体との飽和結合の後で試験抗体がPCSK9に結合することができれば、試験抗体は参照抗PCSK9抗体とは異なるエピトープに結合すると結論することができる。一方、参照抗PCSK9抗体との飽和結合の後で試験抗体がPCSK9分子に結合することができなければ、試験抗体は本明細書に記載した参照抗PCSK9抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0084】
抗体が結合について参照抗PCSK9抗体と競合するか否かを決定するため、上記の結合方法論は2つの方向付けで実施される。第1の方向付けでは、参照抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合させ、続いて試験抗体のPCSK9分子への結合を評価する。第2の方向付けでは、試験抗体を飽和条件下でPCSK9分子に結合させ、続いて参照抗体のPCSK9分子への結合を評価する。両方の配向付けで第1の(飽和する)抗体のみがPCSK9分子に結合できるならば、試験抗体と参照抗体はPCSK9への結合について競合すると結論される。当業者には認識されるように、結合について参照抗体と競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合しなくてもよく、重複または隣接するエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を立体的にブロックしてもよい。
【0085】
2つの抗体は、それぞれが他の抗体の抗原との結合を競合的に阻害(ブロック)するならば、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、競合的結合アッセイによって測定して、1つの抗体の1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍の過剰は、他の抗体の結合を少なくとも50%、好ましくは75%、90%、または99%も阻害する(たとえばJunghansら、Cancer Res,1990:50:1495~1502頁を参照)。あるいは、1つの抗体の結合を低減または排除する抗原の本質的に全てのアミノ酸の変異が他の抗体の結合を低減または排除するならば、2つの抗体は同じエピトープを有している。1つの抗体の結合を低減または排除するいくつかのアミノ酸の変異が他の抗体の結合を低減または排除するならば、2つの抗体は重複するエピトープを有している。
【0086】
次いで、さらなる日常的な実験(たとえば ペプチドの変異および結合の解析)を行って、試験抗体の観察された結合の欠如が事実上、参照抗体と同じエピトープへの結合によるのか、または立体的なブロッキング(または別の現象)が観察された結合の欠如に関与しているのかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術で利用可能な他の任意の定量的または定性的な抗体結合アッセイを使用して実施することができる。
【0087】
本開示に関連して使用することができる抗PCSK9抗体の非限定的な例には、たとえばアリロクマブ、ボコシズマブ、またはそれらの抗原結合性部分が含まれる。
【0088】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成する方法は当技術で既知である。本開示に関連して任意のそのような方法を使用して、ヒトPCSK9に特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0089】
VELOCIMMUNE(商標)技術(たとえば米国特許第6,596,541号、Regeneron Pharmaceuticalsを参照)、またはモノクローナル抗体を生成するための他の任意の既知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、PCSK9に対する高親和性のキメラ抗体が最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖の可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含んでおり、それによりマウスは抗原刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重鎖および軽鎖の定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次いでDNAが、完全にヒトの抗体を発現することができる細胞中で発現される。
【0090】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに目的の抗原がチャレンジされ、抗体を発現するリンパ球細胞(B細胞等)がマウスから回収される。リンパ球細胞は骨髄腫細胞株と融合されて不死のハイブリドーマ細胞株が調製され、そのようなハイブリドーマ細胞株がスクリーニングされ選択されて、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が特定される。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、所望の重鎖および軽鎖のアイソタイプ定常領域に連結される。そのような抗体タンパク質がCHO細胞等の細胞中で産生される。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAが、抗原特異的リンパ球から直接単離される。
【0091】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性のキメラ抗体が単離される。抗体は、当業者には既知の標準的な手順を使用して、親和性、選択性、エピトープ等を含む所望の特性について特徴解析され、選択される。マウス定常領域は所望のヒト定常領域に置き換えられ、本開示の完全にヒトの抗体、たとえば野生型または改変されたIgG1もしくはIgG4が生成する。選択された定常領域は特定の用途に従って変動し得るが、高親和性の抗原結合性および標的特異性の特徴は、可変領域の中に存在している。
【0092】
一般に、本開示の方法において使用できる抗体は、固相上に固定化されたまたは溶液相中の抗原への結合によって測定して、上記のように高い親和性を有している。マウス定常領域は所望のヒト定常領域に置き換えられ、本開示の完全にヒトの抗体が生成する。選択された定常領域は特定の用途に従って変動し得るが、高親和性の抗原結合性および標的特異性の特徴は、可変領域の中に存在している。
【0093】
PCSK9に特異的に結合し、本開示の方法に関連して使用することができるヒト抗体または抗体の抗原結合性断片の特定の例 には、配列番号1および11からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の中に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合性断片が含まれる。あるいは、PCSK9に特異的に結合し、本開示の方法に関連して使用することができるヒト抗体または抗体の抗原結合性断片の特定の例には、配列番号37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、181、および189からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の中に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合性断片が含まれる。抗体または抗原結合性断片は、配列番号6および15からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも985、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)の中に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。あるいは、抗体または抗原結合性断片は、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、177、185、および193からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)の中に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。
【0094】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性は、最良の配列アラインメントを使用して、参照アミノ酸配列、すなわち配列番号によって特定されるアミノ酸配列の全長にわたって、および/または2つのアミノ酸配列の間の最良の配列アラインメントの領域にわたって決定され、最良の配列アラインメントは、当技術で既知のツール、たとえば標準の設定、好ましくはEMBOSSニードルを使用するAlign、Matrix、Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5によって得ることができる。
【0095】
本開示のある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択される重鎖および軽鎖の可変領域アミノ酸配列のペア(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。あるいは、本開示のある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号37/41、45/49、53/57、61/65、69/73、77/81、85/89、93/97、101/105、109/113、117/121、125/129、133/137、141/145、149/153、157/161、165/169、173/177、181/185、および189/193からなる群から選択される重鎖および軽鎖の可変領域アミノ酸配列のペア(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0096】
本開示のある特定の実施形態では、本開示の方法において使用することができる抗PCSK9抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2/3/4/7/8/10(mAb316P(「REGN727」または「アリロクマブ」とも称される)および12/13/14/16/17/18(mAb300N)(米国特許出願公開第2010/0166768号を参照)および12/13/14/16/17/18から選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3アミノ酸配列を有し、ここで配列番号16はアミノ酸残基30におけるロイシンからヒスチジンへの置換(L30H)を含む。
【0097】
本開示のある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列の対を含む。ある特定の例示的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のHCVRアミノ酸配列および配列番号6のLCVRアミノ酸配列を含む。ある特定の例示的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列および配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。ある特定の例示的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列およびアミノ酸残基30におけるロイシンからヒスチジンへの置換(L30H)を含む配列番号15のLCVRアミノ酸アミノ酸配列を含む。
【0098】
医薬組成物および投与の方法
本開示は、PCSK9阻害剤を患者に投与することを含む方法を含み、PCSK9阻害剤は医薬組成物中に含まれている。本開示の医薬組成物は好適な担体、賦形剤、および好適な移送、送達、忍容性、その他を提供する他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な処方が全ての薬剤化学者に既知の処方集「Remington‘s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA」の中で見出される。これらの処方には、たとえば粉末、ペースト、軟膏、ジェリー、ワックス、オイル、脂質、媒体を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)(LIPOFECTIN(商標)等)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール類)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照されたい。
【0099】
本開示の医薬組成物を投与するための種々の送達システム、たとえばリポソーム中へのカプセル化、ミクロ粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスが知られており、使用することができる(たとえばWuら、1987,J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照)。投与の方法には、それだけに限らないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口の経路が含まれる。組成物は、任意の便利な経路、たとえば輸液もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは粘膜皮膚ライニング(たとえば口腔粘膜、直腸および腸の粘膜、その他)を通る吸収によって投与され、または他の生物学的に活性な薬剤と共に投与される。
【0100】
本開示の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジによって皮下または静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関しては、ペン型送達デバイスを本開示の医薬組成物の送達に容易に適用することができる。そのようなペン型送達デバイスは再使用可能または使い捨てであってよい。そのようなペン型送達デバイスは充填済みであってよい。再使用可能なペン型送達デバイスは一般に、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用している。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されてカートリッジが空になれば、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含む新しいカートリッジに置き換えることができる。その際、ペン型送達デバイスは再使用可能である。使い捨てのペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバに保持された医薬組成物が予め充填されて供給される。リザーバの医薬組成物が空になれば、デバイス全体が廃棄される。
【0101】
数多くの再使用可能なペン型および自動注射式の送達デバイスが、本開示の医薬組成物の皮下送達における用途を有している。その例には、いくつかを挙げただけで、それだけに限らないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis,Frankfurt,Germany)が含まれる。本開示の医薬組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てのペン型送達デバイスの例には、いくつかを挙げただけで、それだけに限らないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs,Abbott Park IL)が含まれる。
【0102】
ある特定の状況では、医薬組成物は制御された放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してよい(Langer、上記;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編)、1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御された放出システムを組成物の標的の近くに設け、それによって全身用量のうち僅かな割合のみを必要とすることができる(たとえばGoodson,1984,Medical Applications of Controlled Release、上記、2巻、115~138頁を参照)。一部の実施形態では、医薬組成物をマイクロインフューザーの中に含ませることができる。その他の制御された放出システムは、Langer,1990,Science 249:1527~1533頁による総説で論じられている。
【0103】
注射可能な製剤は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内の注射、点滴注入、その他のための投薬形態を含み得る。これらの注射可能な製剤は、既知の方法によって調製してよい。たとえば、注射可能な製剤は、たとえば上記の抗体またはその塩を、無菌の水性媒体または従来から注射に使用されている油状の媒体の中に溶解、懸濁、または乳化することによって、調製してよい。注射用の水性媒体としては、たとえば生理食塩水、グルコースおよびその他の補助的薬剤等を含む等張の溶液があり、これらはアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80、HCO-50(水素化ひまし油のポリオキシエチル化(50mol)アダクト)等の適切な可溶化剤との組合せで使用してよい。油状媒体としては、たとえばゴマ油、大豆油等が採用され、これらはベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて使用してよい。このようにして調製された注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0104】
有利には、上記の経口または非経口の使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合わせるために適した単位用量の投薬形態に調製される。単位用量のそのような投薬形態には、たとえば錠剤、ピル、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤、その他が含まれる。一部の実施形態では、組成物はガラスバイアルに含まれる。
【0105】
本開示の方法に関連して使用することができる抗PCSK9抗体を含む例示的な医薬製剤は、たとえば米国特許公開第2013/0189277号で説明されており、その開示は参照によって全体として本明細書に組み入れられる。
【0106】
投薬量
本開示の方法に従って対象に投与するPCSK9阻害剤(たとえば抗PCSK9抗体)の量は一般に治療有効量である。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」は、LDL-C、アポB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、Lp(a)、およびレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上のパラメータにおいて検出可能な低減(ベースラインから少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれ以上)をもたらすPCSK9阻害剤の用量を意味する。
【0107】
抗PCSK9抗体の場合には、治療有効量は約0.05mg~約600mg、たとえば約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗PCSK9抗体であってよい。
【0108】
個別の用量の中に含まれる抗PCSK9抗体の量は、患者体重1キログラムあたりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)として表される。たとえば、抗PCSK9抗体は、約0.0001~約10mg/kg患者体重の用量で患者に投与してよい。
【0109】
組合せ療法
本開示のある特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤と組み合わせてスタチンの他にさらなる治療剤を患者に投与してよい。そのようなさらなる治療剤の例には、たとえば(1)コレステロールの取り込みおよび/または胆汁酸の再吸収を阻害する薬剤(たとえばエゼチミブ)、(2)リポタンパク質の代謝を増大する薬剤(ナイアシン等)、および/または(3)コレステロールの排除において役割を果たすLXR転写因子のアクチベーター、たとえばたとえば22-ヒドロキシコレステロールが含まれる。ある特定の実施形態によれば、本開示の方法に関連して、PCSK9阻害剤と組み合わせて抗ANGPTL3抗体(エビナクマブ等)が投与される。
【0110】
投与レジメン
本開示のある特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤の1つまたはそれ以上の用量(すなわち、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物)は、定義された時間経過にわたって(たとえば毎日の治療用スタチンレジメンの代わりに)対象に投与してよい。本開示のこの態様による方法は、PCSK9阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を対象に連続的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「連続的に投与する」は、PCSK9阻害剤のそれぞれの用量を異なる時点で、たとえば所定の間隔(たとえば時間、日、週、または月)で分離された異なる日に、対象に投与することを意味する。本開示は、PCSK9阻害剤の単一の初期用量を患者に連続的に投与し、続いてPCSK9阻害剤の1つまたはそれ以上の2次用量を投与し、続いて場合によりPCSK9阻害剤の3次用量を投与することを含む方法を含む。
【0111】
用語「初期用量」、「2次用量」、および「3次用量」は、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の個別の用量の投与の経時的な順序を指す。したがって、「初期用量」は処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称する)であり、「2次用量」は初期用量の後で投与される用量であり、「3次用量」は2次用量の後で投与される用量である。初期、2次、3次の用量は全て同じ量のPCSK9阻害剤を含んでもよいが、一般には投与の頻度に関連して互いに異なってもよい。しかしある特定の実施形態では、初期、2次、および/または3次の用量に含まれるPCSK9阻害剤の量は処置の経過の間、互いに変動する(たとえば、必要に応じて上または下に調節される)。ある特定の実施形態では、2つ以上(たとえば2、3、4、または5つの)用量が「負荷用量」として処置レジメンの開始時に投与され、より少ない頻度ベースで投与されるその後の用量(たとえば「維持用量」)がそれに続く。
【0112】
本開示の例示的な実施形態によれば、それぞれの2次および/または3次の用量は、直接先行する用量の、1~26週(たとえば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、またはそれ以上)週後に投与される。語句「直接先行する用量」は、本明細書で使用される場合、多数回投与の順序において、順序の中のすぐ次の用量の投与に先立って介在する用量なしに患者に投与される抗原結合性分子の用量を意味する。
【0113】
本開示のこの態様による方法は、PCSK9阻害剤の任意の数の2次および/または3次の用量を患者に投与することを含み得る。たとえば、ある特定の実施形態では、単一の2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(たとえば2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の2次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(たとえば2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の3次用量が患者に投与される。
【0114】
多数回の2次用量が関与する実施形態では、それぞれの2次用量は、他の2次用量と同じ頻度で投与してよい。たとえば、それぞれの2次用量は、直接先行する用量の1~2、4、6、8、またはそれ以上の週後に患者に投与してよい。同様に、多数回の3次用量が関与する実施形態では、それぞれの3次用量は、他の3次用量と同じ頻度で投与してよい。たとえば、それぞれの3次用量は、直接先行する用量の1~2、4、6、8、またはそれ以上の週後に患者に投与してよい。あるいは、2次および/または3次の用量を患者に投与する頻度は、処置レジメンの経過にわたって変動してよい。投与の頻度は、処置の経過の間、臨床検査の後の個別の患者の必要に応じて臨床医によって調節してもよい。
【0115】
本開示のある特定の実施形態によれば、約75mgの抗PCSK9抗体を含む医薬組成物の多数回用量が、2週ごとに1回の頻度で患者に投与される。
【0116】
本開示のある特定の実施形態によれば、約150mgの抗PCSK9抗体を含む医薬組成物の多数回用量が、2週ごとに1回の頻度で患者に投与される。
【0117】
本開示のある特定の実施形態によれば、約75mgの抗PCSK9抗体を含む医薬組成物の多数回用量が、4週ごとに1回の頻度で患者に投与される。
【0118】
本開示のある特定の実施形態によれば、約150mgの抗PCSK9抗体を含む医薬組成物の多数回用量が、4週ごとに1回の頻度で患者に投与される。
【0119】
本開示は、漸増オプション(本明細書で「用量改変」とも称する)を含む投与レジメンを含む。本明細書で使用される場合、「漸増オプション」は、特定の数の用量のPCSK9阻害剤を受けた後で患者が1つまたはそれ以上の定義された治療パラメーターにおいて特定した低減を達成しなければ、その後、PCSK9阻害剤の用量を増加することを意味する。たとえば、75mgの用量の抗PCSK9抗体を2週ごとに1回の頻度で患者に投与することを含む治療レジメンの場合に、8週(すなわち0週、2週および4週、6週および8週で投与された5回の用量)後、患者が70mg/dL未満の血清LDL-C濃度を達成しなければ、抗PCSK9抗体の用量は、たとえばその後2週ごとに1回の150mgの投与に増加される(10週もしくは12週、またはその後に開始して)。
【0120】
ある特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は、2週ごとに約75mgの用量で、たとえば少なくとも3回の用量で対象に投与される。
【0121】
ある特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は、2週ごとに約150mgの用量で、たとえば少なくとも3回の用量で対象に投与される。
【0122】
一部の実施形態では、抗体は2週ごとに約75mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が100mg/dl未満でLDL-Cの低下が30%であれば、用量は2週ごと75mgのままとされる。
【0123】
他の実施形態では、抗体は2週ごとに約75mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が100mg/dlより大きくまたはこれに等しければ、用量は2週ごと約150mgに漸増される。
【0124】
一部の実施形態では、抗体は2週ごとに約75mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が70mg/dl未満でLDL-Cの低下が30%であれば、用量は2週ごと75mgのままとされる。
【0125】
別の実施形態では、抗体は4週ごとに約300mgの用量で対象に投与される。
【0126】
さらなる実施形態では、抗体は全部で3つの用量について4週ごとに約300mgの用量で対象に投与され、8週目に対象が所定の処置目標を達成しないか、または対象がベースラインから少なくとも30%のLDL-Cの低減を有しなければ、用量はさらに36週、2週ごと150mgに変更される。
【0127】
ある特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は少なくとも3つの用量について4週ごとに約150mgの用量で対象に投与される。
【0128】
一部の実施形態では、抗体は4週ごとに約150mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が100mg/dl未満でLDL-Cの低下が30%であれば、用量は4週ごと150mgのままとされる。
【0129】
他の実施形態では、抗体は4週ごとに約150mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が100mg/dlより大きいかこれに等しければ、用量は2週ごと約300mgに漸増される。
【0130】
一部の実施形態では、抗体は4週ごとに約150mgの用量で12週にわたって対象に投与され、8週目に対象のLDL-C値が70mg/dl未満でLDL-Cの低下が30%であれば、用量はさらに12週、4週ごと150mgのままとする。
【0131】
別の実施形態では、抗体は4週ごとに約300mgの用量で対象に投与される。
【0132】
さらなる実施形態では、抗体は全部で3つの用量について4週ごとに約300mgの用量で対象に投与され、8週目に対象が所定の処置目標を達成しないか、または対象がベースラインから少なくとも30%のLDL-Cの低減を有しなければ、用量はさらに36週、2週ごと150mgに変更される。
【実施例
【0133】
以下の例は、本開示の方法および組成物をどのように生産および使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが何をその開示と考えるかについての範囲を限定することを意図とするものではない。使用されている数値(たとえば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差は考慮に入れるべきである。別段の記載がない限り、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏温度であり、気圧は、大気圧またはそれに近い圧力である。
【実施例1】
【0134】
ヒトPCSK9に対するヒト抗体の生成
ヒト抗PCSK9抗体は、米国特許第8,062,640号に記載のようにして生成した。下記の実施例で使用される例示的なPCSK9阻害剤は、「mAb316P」と称されるヒト抗PCSK9抗体であり、「REGN727」または「アリロクマブ」としても知られている。mAb316Pは、以下のアミノ酸配列特徴を有する:配列番号5を含む重鎖および配列番号9を含む軽鎖:配列番号1を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号6を含む軽鎖可変ドメイン(LCVR):配列番号2を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号3を含むHCDR2、配列番号4を含むHCDR3、配列番号7を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号8を含むLCDR2、および配列番号10を含むLCDR3。
【実施例2】
【0135】
ホモ接合性家族性高コレステロール血症の患者における抗PCSK9抗体(「アリロクマブ」)の有効性および安全性を評価するためのランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間研究
この研究の目的は、hoFHを有する患者(両LDLR対立遺伝子にヌル/ヌル突然変異を有する患者は除外する)における抗PCSK9抗体(「アリロクマブ」)の有効性、安全性、および忍容性を評価することであった。より詳細には、この研究の一目的は、12週間の処置の後に、2週間に1回(Q2W)皮下(SC)150mgのアリロクマブによる、プラセボと比較したLDL-Cの低減を実証することであった。研究の副次的目的には、hoFHの患者における他の脂質パラメータ(すなわち、アポリポタンパク質[Apo]A-1およびB、非高密度リポタンパク質コレステロール[非HDL C]、総コレステロール[TC]、15%、30%、および50%のLDL-C低減を有する患者の割合、Lp(a)、HDL-C、トリグリセリド[TG])へのアリロクマブ150mg Q2Wの効果を評価すること、hoFHの患者におけるアリロクマブ150mg SC Q2Wの安全性および忍容性を評価すること、hoFHの患者におけるアリロクマブ150mg SC Q2Wの薬物動態学(PK)をアセスメントすること、および抗薬物(アリロクマブ)抗体の潜在的な開発をアセスメントすることが含まれた。
【0136】
この研究の他の目的には、有効性および安全性で潜在的差異を探索するため、全患者の遺伝子型情報を収集して、hoFH突然変異状態を特徴付けること、アフェレーシスの適格性(独国および米国アフェレーシス基準を使用する)に対するアリロクマブの効果をアセスメントすること、およびEQ-5D QOL質問票を使用して生活の質に対するアリロクマブの効果をアセスメントすることが含まれた。
【0137】
hoFHの患者は、持続的に増加したLDL-Cを有し、これがいくつかの健康懸念、主に早発性CV疾患をもたらすアテローム性動脈硬化症の加速への寄与因子である。スタチンを含めた薬理作用物質など、LMTによる処置、およびLDLアフェレーシスによる脂質の機械的除去にもかかわらず、hoFHの多くの患者は、そのLDL-C処置目標から遠く離れたままである。コホート研究では、最初のCVD事象の年齢は、hoFHにおける人生における満20年からの10年間に入っていた(Raalら、2011 Circulation 124(20):2202-2207)。これは、スタチンなどの医療レジメンが行われるようになる前にみられた10代前半よりは遅いものの、CVDの発症および事象の発生を遅らせるためには、より集中的な処置が依然として必要である。
【0138】
hoFHの患者におけるアリロクマブの有効性および安全性を評価するために、この研究を行った。研究集団は、≧18歳の個人を含んだ。hoFHの診断は、遺伝子型判定データまたは臨床基準に基づいた。遺伝的定義には、LDLR、ApoB、PCSK9、またはLDLRAP1遺伝子内の突然変異について真のホモ接合体、複合ヘテロ接合体、またはダブルヘテロ接合体であると考えられる全個人が含まれた。しかし、病歴上のヌル/ヌルLDLR突然変異を有する個人は除外された。
【0139】
ベースラインからのLDL-Cのパーセント変化が主要エンドポイントであった。低密度リポタンパク質コレステロールは、CVリスクについての認められている代替エンドポイントであり、複数の他のhoFH処置の承認のための主要エンドポイントとして繰り返し使用されている。この研究は、脂質アフェレーシスを含めた、最も耐容性のある(maximally tolerated)LMTの患者の既存の処置レジメンにアリロクマブを追加する、プラセボ対照試験として設計された。オプションの導入期間は、二重盲検処置期間を通して維持される必要があるであろう安定なバックグラウンド処置レジメンがまだ達成されていない患者のために利用された。いかなる療法であろうと患者の既存の処置レジメンから除くと、LDL-Cの増大をもたらし、潜在的には、この疾患でみられる重篤なCV続発症に寄与することが考えられるので、アドオン設計は適切であった。主要エンドポイントのための12週の処置期間は、アリロクマブが定常状態を達成し、LDL Cにその最大限の効果を及ぼすのを可能にした。全患者にアリロクマブが投与された追加の12週のオープンラベル処置期間は、この集団の安全性についてのさらなるアセスメントを可能にした。
【0140】
用量選択についての理論的根拠
アリロクマブ75mgおよび150mgのSC Q2Wは、承認済みの用量であり、現在、世界中の40カ国(米国、欧州連合、カナダ、ノルウェー、アイスランド、ブラジル、および日本が含まれる)で承認されている。hoFHの患者は、非FHおよびHeFH患者と比較して、処置が難しい集団であることが証明されており、その標的レベルから遠く離れた非常に高いベースラインLDL-Cを有するので、この研究のために提案されたアリロクマブの用量は、承認されている最も高い用量、すなわち150mg SC Q2Wである。
【0141】
有効であることに加えて、アリロクマブは良好な安全性プロファイルを有する。全体的にみて、アリロクマブ群の患者で、プラセボと比較して高い割合で報告された(すなわち、アリロクマブ群における発生率≧2.0%)、最も一般的に起こった処置下で発現した有害事象(TEAE)は、注射部位反応(7.2%対5.1%)、上咽頭炎(11.3%対11.1%)、インフルエンザ(5.7%対4.6%)、筋肉痛(4.3%対3.4%)、尿路感染症(4.8%対4.6%)、下痢症(4.7%対4.4%)、および気管支炎(4.3%対3.8%)であった:Praluent製品添付文書)。安全性プロファイルの違いは、75mgおよび150mgの2つの承認された用量の間で観察されなかった。
【0142】
最も耐容性のあるLMTまたはLDLアフェレーシスをすでに受けているhoFHの患者における、アリロクマブ150mg Q2Wによる処置は、最大限のLDL-Cを低減効果を与えながら、十分に耐容され、許容される安全性プロファイルを有するであろうと仮定した。
【0143】
利益/リスクアセスメント
hoFHの患者は、極めて高いLDL-Cレベルを有し、その標的LDL-Cから遠く離れており、LDL-Cの有意な低減を必要とする。ロミタピドおよびミポメルセンを含めた、さらに新しい処置が承認されているにもかかわらず、より集中的な療法が依然として必要である。PCSK9阻害剤は、LDL-Cを著しく低減することが証明されている、LMTの医療装備への新規追加である。スタチン文献から得られる大量のエビデンスは、LDL-C低減とCV事象低減の関係が、ほぼ線形であり、hoFH患者集団におけるこの研究のコンテキストの範囲内において、LDL-Cの中程度の低減でさえ、これらの患者にとって有意な利益につながるであろうことを示す。
【0144】
アリロクマブによる処置は、十分に耐容され、許容される安全性プロファイルを有するであろうことが予測された。蓄積された安全情報は、アリロクマブで最も一般的に起こったTEAEは、上咽頭炎、注射部位反応、インフルエンザ、筋肉痛、筋骨格疼痛、および挫傷であったことを示した。また、これらの有害事象(AE)の発生率は、アリロクマブ処置群については11.3%から2.1%の範囲にあり(対して、プラセボ群では、11.1%~1.6%)、比較的低かった(Praluent製品添付文書)。
【0145】
総合的に考えて、これらのデータは、hoFH集団におけるアリロクマブによる処置の利益/リスクアセスメントは、良好であり得ることを示していた。
【0146】
人口統計学的特性およびベースライン特性
ベースライン特性には、各患者についての標準人口統計(年齢、人種、体重、身長など)、ならびに脂質レベル、突然変異状態、病歴、薬歴、およびアフェレーシスのスケジュール(該当する場合)を含めた疾患特性が含まれた。
【0147】
主要および副次的エンドポイント
主要有効性エンドポイントは、hoFHの患者における、プラセボと比較した、アリロクマブ150mg Q2WのITT集団におけるベースラインから第12週までのLDL-Cのパーセント変化であった。ベースラインから第12週までのLDL-Cのパーセント変化は、[100×(第12週のLDL-C値-ベースライン時のLDL-C値)]/ベースライン時のLDL-C値と定義された。LDL-C解析には、LDL-Cの計算値と測定値の両方を考慮に入れた。LDL-Cの計算値と測定値の両方が同じサンプリング時点に利用可能な場合には、LDL-Cの測定値を考慮に入れた。ベースラインLDL-C値は、二重盲検研究薬の最初の投与の前に得られる最後のLDL C値であった。ランダム化されたが無処置の患者については、ベースラインは、ランダム化前の最後の値と定義された。第12週のLDL Cは、処置へのアドヒアランスに関係なく、第12週解析ウインドウ内で得られたLDL-C値であった(ITTエスティマンド(estimand))。
【0148】
LDL-Cの全計算値および測定値(スケジュールありまたはなし、空腹時または非空腹時)が、適切であるならば、上記の定義に従って主要有効性エンドポイントに使用することができた。測定に時点を割り当てるのに使用される解析ウインドウは、統計解析計画書(SAP)で定義した。
【0149】
重要な副次的有効性エンドポイントには、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までのApo Bのパーセント変化、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までの非HDL-Cのパーセント変化、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までの総コレステロールのパーセント変化、第12週(ITTエスティマンド)にLDL-Cの≧15%低減を有する患者の割合、第12週(ITTエスティマンド)にLDL-Cの≧30%低減を有する患者の割合、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までのLp(a)のパーセント変化、第12週(ITTエスティマンド)にLDL-Cの≧50%低減を有する患者の割合、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までのHDL-Cのパーセント変化、ベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までの空腹時TGのパーセント変化、およびベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までのApo A-1のパーセント変化が含まれた。主要有効性エンドポイントに適用されたのと同じ定義および規則が、これらの重要な副次的有効性エンドポイントに適用された。
【0150】
他の副次的有効性エンドポイントには、第12週解析ウインドウ内および有効性処置期間中(オントリートメントエスティマンド)の全LDL-C値を使用した、修正(m)ITT集団(二重盲検治験研究薬の少なくとも1用量または1用量の一部を投与され、かつ評価が可能な主要エンドポイントを有する全ランダム化集団)におけるベースラインから第12週までのLDL-Cのパーセント変化、Apo B、非HDL-C、TC、Lp(a)、HDL-Cのパーセント変化、ベースラインから第12週(オントリートメントエスティマンド)までの空腹時TGおよびApo A-1、第12週(オントリートメントエスティマンド)にLDL-Cの≧15%低減、≧30%低減、および≧50%低減を有する患者の割合、およびベースラインから第12週(ITTエスティマンド)までのApo B/Apo A-1の比率の絶対変化が含まれた。有効性処置期間は、最初の二重盲検治験薬注射から、最後の二重盲検治験薬注射の21日後または最初のオープンラベルアリロクマブ注射(該当する場合)のいずれか早い方の日までの時間と定義された。
【0151】
安全性エンドポイントは、この研究を通してアセスメントされる安全性パラメータ(AE、検査データ、バイタルサイン、および心電図[ECG])を構成した。他のエンドポイントには、hoFH遺伝子型状態と脂質パラメータの探索的関係、ベースラインから第12週までの、米国のアフェレーシス適格基準を満たす患者の割合の変化(Goldbergら、2011 J Clin Lipidol 5(3 Supp):S1-S8)、ベースラインから第12週までの、独国のアフェレーシス適格基準を満たす患者の割合の変化(Schettlerら、2012 Clin Res Cardiol Suppl 7:15-19)、および各EQ-5D項目の応答、指標スコア、ならびにベースラインから第12週までの指標スコアの変化が含まれた。
【0152】
薬物動態変数
薬物動態(PK)変数は、指定のサンプリング時間に収集したアリロクマブ血清中濃度であった。
【0153】
抗薬物抗体変数
抗薬物(アリロクマブ)抗体状態のアセスメントは、全時点のADAアッセイで陰性の全患者、既存の免疫反応性(全投与後ADA結果陰性を伴う、ベースライン時アッセイにおける抗薬物抗体(ADA)陽性応答、または全処置後ADA応答がベースライン力価レベルの4倍未満であるベースライン時の陽性応答のいずれかと定義される)、および/または処置エマージェント(ベースライン結果が陰性であった場合における任意の投与後陽性ADA応答、またはベースラインがADAアッセイで陽性であった場合における、ベースラインレベルの少なくとも4倍の任意の投与後陽性ADA応答のいずれかと定義される)について行った。
【0154】
ADAアッセイ陽性のサンプルについては、力価のアセスメントを行った。力価カテゴリーには、低度(力価<1,000)、中程度(1,000≦力価≦10,000)、および高度(力価>10,000)が含まれた。
【0155】
ADAアッセイ陽性のサンプルについては、中和活性のアセスメントを行った。
【0156】
研究設計
この研究は、hoFHの患者におけるアリロクマブの有効性および安全性を評価するためのランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間研究であった。
【0157】
およそ74人の患者が、アリロクマブ150mg SC Q2Wまたは釣り合う用量のプラセボの投与を受けるように2:1の比率でランダム化された。ランダム化は、アフェレーシス処置状態(あり/なし)によって層別化した。
【0158】
研究は、以下の研究フローチャートによる、オプションの4週間の導入期間(バックグラウンド医療LMTレジメンまたはアフェレーシススケジュールおよび/もしくはアフェレーシス設定がスクリーニング前に安定であった患者用)、2週間のスクリーニング期間、12週間の二重盲検処置期間、および必須の12週間のオープンラベル処置期間という最多で4つの期間からなった。
【0159】
【表1】
別の脂質低下研究へと継続しない患者も、8週間の追跡調査期間を受けた。
【0160】
オプションの導入は、アフェレーシス療法および脂質改善療法を受けることを含んだ。
【0161】
アフェレーシス療法を受けていた患者は、安定した毎週または隔週スケジュールで受けていなければならなかった。スクリーニング来診の前の少なくとも8週間にスケジュールまたはアフェレーシス設定が安定でなかった患者は、スクリーニング期間前に4週間の導入期間に入った。4週間の導入期間の後、脂質-アフェレーシススケジュール/設定が安定なままであった(および全体で少なくとも8週間安定であった)患者は、2週間のスクリーニング期間に入るのに適格であった。加えて、LDLアフェレーシスを受けている全患者が、遺伝子型をベースにした診断を受けなければならず、遺伝子型情報が事前に決定されていなかった場合、患者は、必要に応じて、その突然変異状態を決定するための時間をとるために、導入に入ることができた。
【0162】
スクリーニング来診前の少なくとも4週間安定でなかったバックグラウンド脂質改善療法(LMT)を受けていた患者は、スクリーニング期間に入る前にそのLMTを安定化するために4週間の導入期間に入った。スクリーニング前6ヵ月間に安定用量のミポメルセンを受けていなかったか、またはスクリーニング前12週間に最大耐量のロミタピドを受けていなかった患者は除外された。
【0163】
スクリーニング
上に定義した安定なバックグラウンドレジメンを受けたならば、患者は、2週間のスクリーニング期間に入った。初期適格性は、標準的なスクリーニング手順によってこのスクリーニング期間中に決定した。hoFH突然変異状態用に、DNAサンプルを収集した。
【0164】
患者は、研究期間を通して、スクリーニングから開始し、二重盲検処置期間終了を含め、オープンラベル処置期間を通して、安定した低脂肪食または心臓健康食を食べることになっていた。患者の運動レジメンは、研究の期間を通して、スクリーニングから二重盲検処置期間終了を含め、オープンラベル処置期間を通して、安定なままであった。
【0165】
患者または介護者は、スクリーニング期間中または二重盲検処置期間の最初の来診時に、1用量のプラセボを使用して自己注射/注射する訓練を受けた。
【0166】
二重盲検処置
全組み入れ基準を満たし、かつ除外基準のどれにも該当しなかった患者を、アリロクマブ150mg SC Q2Wまたは釣り合う用量のプラセボSC Q2Wの投与を受けるように2:1の比率でランダム化した。本明細書では、投与されるものを「研究薬」および「治験医薬製品」ともいう。
【0167】
二重盲検処置期間中の研究薬投与は、ランダム化の日に開始し、LDLアフェレーシス手順(該当する場合)の完了直後に行った。LDLアフェレーシスを受けていない患者については、臨床検査評価用のサンプルが全て得られた後に、研究薬の投与が行われた。二重盲検処置期間中最後の注射は、第10週、第71日であった。
【0168】
LDLアフェレーシスを受けた全患者について、臨床検査評価用のサンプル全てを、LDLアフェレーシス手順の直前かつ研究薬の投与前に得た。脂質パラメータへのLDLアフェレーシスの影響を考えると、ベースライン活性の時間を第12週活性のタイミングと合わせることが重要であった。これは、最後に完了したLDLアフェレーシス手順に対するベースラインサンプル収集のタイミングを、最後に完了したLDLアフェレーシス手順に対する第12週サンプル収集のタイミングを一致させるべきであることを意味した。
【0169】
アフェレーシスを受けていなかった全患者について、治験医薬製品の投与の前に臨床検査評価用の全サンプルを得た。アリロクマブの有効性は、脂質レベルの臨床検査評価によって、研究を通して予め指定された時点にアセスメントした。
【0170】
LMTを受けていたか、またはアフェレーシスを受けていた患者は、研究期間を通して、スクリーニングからオープンラベル処置期間終了/研究終了時の来診(第24週)まで、安定なLMTおよび安定なアフェレーシススケジュール(該当する場合)を維持した。
【0171】
二重盲検処置期間中に途中で研究薬を中止した患者は、研究に残り、研究薬の投与を除いて全二重盲検来診および手順を受けるように奨励された。研究薬中止時には、患者は、できるだけ早く、臨時の来診をして、通常は二重盲検処置終了時の来診の際に計画されているアセスメントを受けることになっていた(これは、可能な場合、研究薬の中止の5日以内に行われることになっていた)。
【0172】
オープンラベル処置
この希少な患者集団におけるさらなる安全性データを提供するために、全患者がオープンラベル処置期間に参加した。二重盲検処置期間の処置割り当てに関係なく、患者は、第12週(第85日)から開始し第24週(オープンラベル処置期間終了、第22週、第155日に研究薬の最後の注射)まで続くオープンラベル研究薬(アリロクマブ150mg SC Q2W)の投与を受けた。LMTを受けていたか、またはLDLアフェレーシスを受けていた患者は、オープンラベル処置期間の継続期間を通して、安定用量およびレジメンならびに安定なLDLアフェレーシススケジュールおよび設定(該当する場合)を継続した。
【0173】
オープンラベル処置期間が完了したときに、患者は、追加の脂質低下臨床試験に参加するか、直接、8週間の追跡調査期間を受けた。AEおよび併用薬物情報を収集するため、第32週に、追跡調査の電話がされた。
【0174】
この研究の研究終了は、最後の患者の最後の来診と定義された。
【0175】
患者選択
アリロクマブとプラセボに2:1でランダム化された69人の患者が研究に含まれた。
【0176】
初期スクリーニング中に適格基準を満たさなかった患者は、一度だけ再スクリーニングを受けることができた。スクリーニングウインドウが終了した後に再スクリーニングを受けた患者は、研究参加について再同意し、全スクリーニング手順を繰り返さなければならなかった。初期スクリーニング中に全適格基準を満たさなかったが、依然としてスクリーニングウインドウの中にあった患者は、1度適格基準を満たさなかったアセスメントを再試験することができた。
【0177】
研究集団
研究集団は、両LDLR対立遺伝子にヌル/ヌル突然変異を有することが知られている患者を除く、hoFHと診断された≧18歳の男性および女性の患者からなる。
【0178】
組み入れ基準
この研究に適格であるためには、患者は、以下の基準を満たさなければならなかった:
i)スクリーニング来診のときに≧18歳の男性および女性であること、
ii)以下の遺伝子型または臨床基準のうちの少なくとも1つによるhoFHの診断(LDLアフェレーシスを受けている全患者が遺伝子型をベースにして診断されることになっている):a)両LDLR対立遺伝子における文書記録されているホモ接合性または複合ヘテロ接合性突然変異(注意:両LDLR対立遺伝子における既知のヌル変異を有する患者は除外された(下記、除外基準参照))、b)Apo B、PCSK9、またはLDLRAP1におけるホモ接合性または複合ヘテロ接合性突然変異の存在、c)LDLR、Apo B、またはPCSK9対立遺伝子における、ダブルヘテロ接合性突然変異、すなわち、異なる遺伝子上の突然変異の存在、d)無処置のTC>500mg/dL(12.93mmol/L)およびTG<300mg/dL(3.39mmol/L)、ならびにe)TC>250mg/dL(6.46mmol/L)の病歴のある両親または10歳前の皮膚もしくは腱黄色腫、
iii)スクリーニング来診時に安定用量のスタチン投与を受けていること(注意:スタチンを耐容できなかった患者、またはスタチンに効果がないと判明した場合も、研究に含まれる可能性があったが、理由が症例報告書(CRF)に文書記録されることとなっていた)、
iv)LDLアフェレーシスを受けている場合、スクリーニングの少なくとも3ヵ月前にLDLアフェレーシスを始めていなければならず、少なくとも8週間、安定した毎週(7日ごと)もしくは隔週スケジュール(14日ごと)または安定な設定で受けていたのでなければならないこと、
v)研究期間中、安定した低脂肪食または心臓健康食を維持する意志があること、
vi)クリニック来診および研究関係手順を遵守する意志があり、遵守できること、および
vii)提供されたインフォームドコンセントに署名がされていること。
【0179】
ベースライン時におけるこの研究の患者特性の概要を次の表に示す。
【0180】
【表2-1】
【表2-2】
【0181】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する患者は、この研究から除外された:
i)文書記録されている両LDLR対立遺伝子のヌル突然変異のエビデンス、
ii)スクリーニング来診から10週以内のPCSK9阻害剤の使用、
iii)スクリーニング来診前少なくとも4週間(フィブラート系薬剤では6週間、ミポメルセンでは24週間、最大耐量のロミタピドでは12週間)安定でなかったバックグラウンド医療LMT:患者は、オプションの導入期間に入るオプションを有した:患者が、彼/彼女のバックグラウンド医療LMTで適切な時間にわたって安定であったならば、患者は、スクリーニング期間に入る可能性があった、
iv)スクリーニング来診前の少なくとも8週間安定でなかったLDLアフェレーシススケジュール/アフェレーシス設定または次の24週間にわたって安定であると予想されなかったアフェレーシススケジュール/設定:患者は、オプションの導入期間に入るオプションを有した:患者が、彼/彼女のバックグラウンド脂質アフェレーシススケジュール/設定で、適切な時間にわたって安定であったならば、患者は、スクリーニング期間に入る可能性があった、
v)スクリーニング来診前の少なくとも4週間またはスクリーニングとランダム化来診の間に安定でなかった用量/量における、脂質に影響を及ぼすことが知られている機能性食品またはオーバーザカウンター(OTC)療法の使用:患者は、オプションの導入期間に入るオプションを有した:患者が、彼/彼女の機能性食品またはOTC療法で、適切な時間にわたって安定であったならば、患者は、スクリーニング期間に入る可能性があった、
vi)血清脂質またはリポタンパク質に影響することが知られている臨床的に有意な何らかの非管理内分泌疾患の存在:これは、新たに診断された(ランダム化来診[第0週/第1日]前3ヵ月以内)真性糖尿病または甲状腺機能低下症の徴候および症状を含む可能性があった:注釈として、スクリーニング前に置換療法の投与量が少なくとも12週間安定であり、スクリーニング来診に甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが正常範囲内であったならば、甲状腺置換療法を受けている患者が含まれる可能性があった、
vii)スクリーニング来診(第-2週)前2ヵ月以内に体重が不安定(>5kgの変動)、
viii)スクリーニング前4週以内の新しい食餌療法の開始または以前の食餌療法への大きな変化、
ix)ランダム化前少なくとも6週間にわたる毎日10mgプレドニゾン以下の安定なレジメンを受けている場合を除いた、全身性コルチコステロイドの慢性的使用:注釈として、局所、関節内、経鼻、吸入、および点眼ステロイド療法は、「全身性」とはみなされず、許容された、
x)レジメンがスクリーニング来診前の過去6週間に安定であり、研究中にレジメンを変える計画がなかった場合を除いた、エストロゲンまたはテストステロン療法の使用、
xi)スクリーニング来診時に収縮期血圧>160mmHgまたは拡張期血圧>100mmHg(1回の反復測定が許された)、
xii)スクリーニング来診時のLDL-Cレベル<70mg/dL(1.81mmol/L)、
xiii)スクリーニング来診前3ヵ月以内のMI、入院に至る不安定狭心症、冠状動脈バイパス移植手術、経皮的冠動脈形成術、非管理の不整脈、頸動脈手術またはステント、脳卒中、一過性脳虚血発作、弁置換手術、頸動脈血管形成術、末梢血管疾患のための血管内手順または外科的介入の病歴、
xiv)スクリーニング前12ヵ月以内のニューヨーク心臓病学会(NYHA)クラスIV心不全の病歴、
xv)十分に処置された基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、または上皮内子宮頸がんを除く、過去2年以内のがんの病歴、
xvi)スクリーニング来診前、1ヵ月または5半減期のいずれか長い方の期間以内の任意の活性治験薬の使用、
xvii)治験責任医師またはいずれかの治験分担医師の判断において、研究の安全な完了を妨げるか、またはエンドポイントアセスメントを阻止するであろう、スクリーニング時に同定される任意の臨床的に有意な異常などの状態/状況:たとえば、主要な全身性疾患、期待余命が短い患者、または治験責任医師もしくはいずれかの治験分担医師が、何らかの理由でこの研究には不適切であると考える、たとえば、スケジュールされている来診など、特定のプロトコール要件を満たすことができないと思われる状態/状況、患者もしくは治験責任医師、治験責任医師またはいずれかの治験分担医師、薬剤師、研究コーディネーター、他の研究スタッフ、もしくはプロトコールの実行に直接的に関与するその親族などにより、注射を耐容することができないと思われる状態/状況、または研究期間中に、患者の参加を制限もしくは限定するであろうと治験責任医師が感じる、実際もしくは予想の他の何らかの状態(たとえば、地理的もしくは社会的なもの)の存在、
xviii)スクリーニング期間中の検査結果(ランダム化検査を含まない):スクリーニング来診時のB型肝炎表面抗原および/またはC型肝炎抗体(陽性HCV RNAポリメラーゼ連鎖反応と関連するもの)、妊娠可能な女性における血清ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)もしくは尿妊娠試験陽性、推定糸球体濾過量(eGFR)<30mL/分/1.73m(中央検査機関による計算)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)もしくはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>3×基準値上限(ULN)(1回の反復検査が許された)、または未解明の血清クレアチンホスホキナーゼCPK>5×ULN(1回の反復検査が許された)、
xix)モノクローナル抗体治療薬に対する既知の過敏症、
xx)臨床施設研究チームのメンバーおよび/または彼/彼女の肉親、
xxi)妊娠中または母乳育児中の女性、ならびに
xxii)最初の投与/最初の処置の開始前および研究期間中に、高度に効果的な避妊を行うことに反対の意志があった妊娠可能な女性:高度に効果的な避妊処置には、併用(エストロゲンおよびプロゲストゲン含有)ホルモン避妊薬(経口、膣内、経皮)もしくはスクリーニングの2月経周期以上前に開始した排卵抑制に関連するプロゲストゲンのみのホルモン避妊薬(経口、注射用、植込み型):子宮内避妊器具(IUD):子宮内ホルモン放出システム(IUS):両側卵管結紮術:精管切除されたパートナー:および/または性的禁欲**の安定な使用が含まれた。閉経後の女性は、妊娠可能でないとみなされるには、少なくとも12ヵ月間無月経でなければならなかった。妊娠試験および避妊は、子宮摘出術または卵巣摘出術を受けたことが文書化されている女性には必要とされなかった。**性的禁欲は、研究処置と関連するリスクの全期間にわたって異性間性交を控えることと定義される場合にのみ高度に効果的な方法と考えられた。
【0182】
途中での研究中止
患者は、いつでも、いかなる理由によってでも、影響なしに研究を中止する権利を有した。治験責任医師および/または治験依頼者は、研究の継続がもはや患者のためにならない場合、または患者の研究継続が研究の科学的成果を危険にさらす場合(たとえば、患者が研究手順に従わなかったか、従うことができなかった場合)、患者の研究を中止する権利を有した。中止率が過度になると、研究は解釈不可能となるだろう:したがって、患者の不必要な研究中止は回避するものとされた。
【0183】
治験責任医師は、施設に戻り損ねたいずれの患者とも連絡をとる最大限の努力(たとえば、患者の家族またはかかりつけ医と連絡をとること、利用可能なレジストリまたは健康管理データベースを調査すること)をし、最低限でも生命状態を含む健康状態を決定することになっていた。そのような患者と接触する試みは、患者の記録に文書記録することになっていた(たとえば、電話連絡を試みた時間および日付、書留郵便物を送るためのレシート)。
【0184】
途中で研究中止した患者について、交代は行わなかった。
【0185】
研究処置
治験研究薬の注射液は、プレフィルドペンで提供され、腹部、大腿、または上腕の外側にSC投与した。患者または介護者は、注射訓練のために臨床施設でプラセボを使用した。研究適格性が確認された後で、患者または介護者は、プラセボを使用して自己注射/注射する訓練を受けた。
【0186】
治験処置および参照処置
二重盲検処置:二重盲検処置期間中の研究薬投与は、ランダム化の日に開始し、LDLアフェレーシス手順(該当する場合)が完了した直後に投与した。LDLアフェレーシスを受けていない患者については、臨床検査評価用の全サンプルが得られた後に、治験研究薬の投与を行った。二重盲検試験薬の最後の注射は、第71日/第10週に行った。投与し損ねた場合、患者は、し損ねた投与から7日以内に注射を受けるように指示された。し損ねた投与を7日以内に受けなかった場合、患者は、その投与をスキップして、元のスケジュールに戻るように指示された。
【0187】
患者は、アリロクマブ150mg SC Q2Wまたは釣り合う用量のプラセボSC Q2Wの投与を受けるように2:1の比率でランダム化された。無菌アリロクマブ製剤は、150mg/mLの濃度で、プレフィルドペンに入れて供給された。プラセボも、プレフィルドペンに入れて供給された。
【0188】
オープンラベル処置:この希少な患者集団におけるさらなる安全性データを提供するために、全患者は、二重盲検処置期間の処置割り当てに関係なく、第12週から開始し、第24週(オープンラベル処置期間/EOS来診終了、第22週に最後の注射)まで続く、オープンラベル治験研究薬の投与(アリロクマブ150mg SC Q2W)を受けた。LMTを受けていたか、またはアフェレーシスを受けていた患者は、オープンラベル処置期間の継続期間を通して、安定用量およびレジメンならびに安定なアフェレーシススケジュールおよび設定(該当する場合)を継続することになっていた。無菌アリロクマブ製剤は、150mg/mLの濃度で、プレフィルドペンに入れて供給された。
【0189】
導入(オプション)およびバックグラウンド処置
アフェレーシス療法:スクリーニング来診前の少なくとも8週間にわたって安定な毎週もしくは隔週スケジュールまたは安定な設定なしでアフェレーシス療法を受けていた患者は、スクリーニング期間前に4週間の導入期間に入った。4週間の導入期間の後、脂質アフェレーシススケジュール/設定が安定なままであった患者は、2週間のスクリーニング期間に入るのに適格であった。加えて、LDLアフェレーシスを受けている全患者が、遺伝子型をベースにした診断を受けなければならず、遺伝子型情報が事前に決定されていなかった場合、患者は、必要に応じて、その突然変異状態を決定するための時間をとるために、導入に入ることができた。
【0190】
脂質改善療法:スクリーニング来診前の少なくとも4週間安定でなかったバックグラウンドLMTを受けていた患者は、そのLMTを安定化するために4週間の導入期間に入った。スクリーニング前6ヵ月以内に安定用量のミポメルセンを受けていなかったか、またはスクリーニング前12週間に最大耐量のロミタピドを受けていなかった患者は除外された。
【0191】
用量調節および研究処置中止
個々の患者の用量調節は、許されなかった。
【0192】
研究薬は、可能な場合は常に、継続されることになっていた。治験研究薬投与が停止された場合、停止を一時的なものとすることができるかどうか決定することになっていた:恒久的な中止は、最後の手段とすることになっていた。いずれの場合でも、患者は、可能な限り研究に残るべきである。
【0193】
二重盲検処置期間中に恒久的に研究薬を中止した患者は、研究に残り、研究薬の投与を除いて全二重盲検来診および手順を受けることになっていた。研究薬中止のときに、患者は、できるだけ早く、臨時の来診をして、通常は二重盲検処置来診の終了時に計画されているアセスメントを受けることになっていた(可能ならば、研究薬中止の5日以内に)。次いで、患者は、二重盲検処置期間終了時まで元の研究スケジュールに復帰することになっており、第12週に第12週アセスメントを行うようにあらゆる努力をすることになっていた。元の研究スケジュールは、研究来診の終了時(すなわち、追跡調査電話来診)まで続いた。
【0194】
オープンラベル期間中に恒久的に研究薬を中止した患者は、できるだけ早く、臨時の来診をして、通常はオープンラベル処置期間の終了時に計画されているアセスメントを受けることになっていた(可能ならば、研究薬中止の5日以内に)。この来診終了後、元の研究スケジュールは、研究の終了時(すなわち、追跡調査電話来診)まで再開した。
【0195】
患者は、以下の理由により恒久的に研究薬を中止した:女性の患者の場合、妊娠した個人、妊娠しようと活発に試みている個人、またはプロトコールが定義する効果的な受胎コントロールの方法の使用を中止した個人、臨床的に問題のある急性注射反応、患者要請時、治験責任医師の意見で、治験研究薬投与の継続が、患者の福祉に有害であろう場合、治験研究薬の中止を必要とする介入状態、治験依頼者の特別の要請、および/またはランダム化前に二重盲検処置を受けた患者。
【0196】
治験研究薬の投与に関係するアレルギー事象を含めたAEの疑いのため、治験研究薬の一時的な中止が、治験責任医師によって考慮された。治験研究薬投与の再開始は、密接かつ適切な臨床モニタリングおよび/または検査モニタリングの下で行われた。治験研究薬の一時的な中止は、1または複数回のスケジュールされた注射が、治験責任医師の決定により患者に投与されなかったことと定義される。
【0197】
急性反応の管理
治験研究薬の注射(皮下[SC])の後の急性全身反応は、臨床判断を使用して典型的な臨床診療に従って適切な応答を決定することで処置されることになっていた。
【0198】
処置割り当ての方法
処置キット番号のランダム化リストは、中央で生成した。この研究では、双方向音声応答システム(IVRS)および/または双方向ウェブ応答システム(IWRS)が使用された。治験研究薬は、このリストとして包装された。
【0199】
患者は、2:1の比率でアリロクマブ150mgまたは釣り合う用量のプラセボの投与を受けるように無作為割り付けされ、LDLアフェレーシス処置状態によって層別化された(処置を受けている対受けていない)。
【0200】
処置キット番号は、ランダム化来診時に、下記表1に指定されている週に、再供給来診時に、および必要に応じて臨時の来診時に、中央処置割り付けシステムを使用して割り当てられた。
【0201】
盲検
研究患者、治験責任医師、および研究施設の人員は、この研究を通して、全ランダム化割り当てについて目隠しされていた。研究ディレクター、医療モニター、研究モニター、および研究施設と定期的な接触があるいずれの人員も、全患者のランダム化割り当てについて目隠しされていた。
【0202】
ランダム化来診後に収集される血液サンプルからの脂質結果は、施設には伝えられず、治験依頼者の作業チームは、二重盲検処置期間の完了の後および第1のステップの解析まで、これらの検査結果にアクセスしなかった。
【0203】
薬物付番システムでコード化された盲検治験研究薬キットを使用した。目隠しを維持するために、製品ロット番号とこれらのコードを結び付けるリストは、研究実施に関与する個人には利用可能でなかった。
【0204】
抗薬物抗体(ADA)は、施設には伝えられず、患者同定と関連する結果は、二重盲検処置期間完了後のデータベースロックの後まで、治験依頼者の作業チームには利用可能でなかった。
【0205】
研究が進行中の間、目隠しされていないデータは、第1ステップ解析(全患者がランダム化され、第12週(二重盲検期間)までの全データが収集され、検証されたならば直ちに行われる:これは、二重盲検の主要および副次的有効性エンドポイントの最終解析からなった)の後に、保健医療当局に提出されるだろうことが予期された。保健医療当局に提出するためのそのようなデータ分析を行い、見直した治験依頼者代表は、その時点以降、研究作業チームの一部ではなく、患者レベルの結果は、研究施設には提供されなかった。
【0206】
緊急時の非盲検化
医療緊急事態または他の何らかの有意な医療事象(たとえば、妊娠)により、患者の処置割り当ての非盲検化が必要になる可能性があった。非盲検化が必要とされた場合、治験責任医師だけが処置割り当ての非盲検化の決定を下し、影響のある患者だけが非盲検化された。
【0207】
処置割り当ては、真の緊急事態の場合を除いて、研究を行っている間いかなるときにも、施設人員には知らされなかった。研究薬剤師がいなかった場合には、その役割を履行する施設の個人が、施設人員の中でただ一人の目隠しされていないメンバーであった。
【0208】
処置ロジスティックスおよび管理
包装、標識化、および貯蔵に関して、目隠しされた治験研究薬に標識を付けるのに薬物付番システムが使用された。薬物番号を製品ロット番号と結び付けるリストは、治験研究薬包装を担当するグループ(または会社)によって維持された。目隠しを維持するために、これらのリストは、研究実施に関与する個人には利用可能でなかった。1本のプラセボプレフィルドペンを含有する訓練キットが、スクリーニング期間中のランダム化前、またはベースライン来診時に行われた患者/介護者の注射訓練用に施設に提供された。患者/介護者が追加の注射訓練を必要とする場合、2本目のプラセボプレフィルドペンが、ランダム化の前に使用される可能性があった。研究薬は、施設で2℃~8℃の温度で冷蔵された。貯蔵温度は記録された。詳細な貯蔵指示は、研究マニュアルに提供された。
【0209】
処置の供給および処分に関して、研究薬は、研究の間、定期的にまたは必要に応じて、2℃~8℃の温度で、治験責任医師または指名された者に出荷された。研究中の指定された時点(たとえば、中間施設モニタリング来診)、施設での終了手続き来診時、およびそれに続く施設モニターによる薬物調整および文書記録時に、開封済みまたは未開封の全治験研究薬は、治験依頼者または指名された者に返却されることになっていた。治験研究薬は、各患者に分配された。治験研究薬は、各患者/介護者に提供された指示に従って、患者/介護者によって保存され、調製され、投与された。
【0210】
処置管理に関しては、全薬物管理記録は、最新に維持された。治験責任医師は、開封済みまたは未開封の全治験研究薬を説明できなければならなかった。これらの記録は、各患者に分配された、各患者から返却された(該当する場合)、施設で処分されるか、治験依頼者または指名された者に返却された日付、量、および研究薬物を含むことになっていた。
【0211】
患者は、治験研究薬投与の遵守を文書記録するために投与ログを完成させた。治験研究薬管理および遵守を確実にし、文書記録するためにとられる措置は、以下の通りであった:
i)治験責任医師または指名された者は、IVRS/IWRSを介して処置キット番号を得て、処置キットを患者に分配し、
ii)管理は、治験研究薬キット再供給来診中にのみ確かめられ:使用済みおよび未使用のキットは、管理目的のためにこれらの来診に持参されることになっており、
iii)使用済みおよび未使用のキットを含めた全キット、指定された来診時に患者によって返却されることになっており:未使用のキットは、未使用のプレフィルドペンの全てを含有し:使用済みのキットは、患者が1また複数本のプレフィルドペンを取り除いたものであり:使用済みのプレフィルドペンは、部分的または完全に注射された注射液を含む、投与を意図してキットから取り出したものであり:患者は、全使用済みプレフィルドペンを鋭利物容器に廃棄し、使用済みプレフィルドペンを使用済みキットには決して戻さないことになっており、
iv)全鋭利物容器は、患者によって施設に返却されることになっており、
v)治験責任医師/研究コーディネーターは、処置ログフォームに記録したデータに従って、適切なCRFページにデータを入力し、
vi)モニターは、CRFページ、処置ログフォーム、および対応するキットの返却された未使用のプレフィルドペンの間のデータの一貫性をチェックした。
【0212】
全処置キットは、治験依頼者によって回収された。返却された治験研究薬の詳細な処置ログは、治験責任医師または指名された者と共に確立され、治験責任医師およびモニターチームによって連署された。
【0213】
処置遵守に関しては、全薬物遵守記録を、最新に維持し、治験依頼者および規制当局の査察官による査察に利用可能にした。患者は、治験研究薬投与の遵守を文書記録するために投与ログを完成させた。
【0214】
併用薬物療法
併用薬物療法は、研究中、最小限に保たれることになっていた。患者の福祉のために必要であり、治験研究薬に干渉する可能性が低いと考えられたならば、治験責任医師の判断で、可能な場合、安定用量で、併用薬物療法(研究中禁止されたもの以外)が与えられる可能性があった。インフォームドコンセント/最終的な研究来診への同意のときから投与されるいかなる処置も併用薬物療法と考えられた。これには、研究前に開始し、研究中継続していた薬物療法が含まれた。
【0215】
禁止された薬物療法および手順には、以下が含まれた:a)スクリーニング来診から10週以内のPCSK9阻害剤の使用、b)初期スクリーニング来診時から研究来診の終了時までにおける、LDLアフェレーシススケジュールおよび/もしくは設定(該当する場合)またはバックグラウンド医療LMTの開始または変化、c)スクリーニング来診時前の過去6週間にレジメンが安定である場合を除いた、連続的なエストロゲンまたはテストステロンホルモン置換療法の使用、およびd)ランダム化前少なくとも6週間にわたる毎日10mgプレドニゾン以下の安定なレジメンを受けている場合を除いた、全身性コルチコステロイドの慢性的使用。注釈として、局所、関節内、経鼻、吸入、および点眼ステロイド療法は、「全身性」とはみなされず、許容された。
【0216】
許容された薬物療法および手順には、安定用量およびレジメンでスクリーニング来診前に少なくとも4週間(ミポメルセンでは6ヵ月、最大耐量のロミタピドでは12週間)使用されていた場合にのみ、脂質改善療法、脂質に影響を及ぼす可能性のある機能性食品およびオーバーザカウンター療法が含まれた。用量およびレジメンは、研究来診の終了時まで安定なままでなければならなかった。低密度リポタンパク質アフェレーシスは、スクリーニング来診前の少なくとも8週間にわたって、スケジュール/設定が安定であり、研究来診の終了時まで安定なままであった場合にのみ許容された。
【0217】
この研究の患者の脂質改善療法(LMT)履歴を、以下の表にまとめる:
【0218】
【表3-1】
【表3-2】
【0219】
ベースライン時におけるこの研究の患者の脂質有効性パラメータを以下の表にまとめる(慣習的な単位での定量的概要-ランダム化集団):
【0220】
【表4-1】
【表4-2】
【0221】
ベースライン時におけるこの研究の患者の脂質有効性パラメータを以下の表にまとめる(定性的概要-ランダム化集団):
【0222】
【表5】
【0223】
突然変異状態別のこの研究の患者の概要を以下の表にまとめる(ランダム化集団):
【0224】
【表6】
【0225】
突然変異状態別のこの研究の患者の概要を以下の表にまとめる(ヌル/ヌル対非ヌル/ヌル):LDLR活性<2%-ランダム化集団:
【0226】
【表7】
【0227】
事象および手順の研究スケジュール
研究アセスメントおよび手順を研究期間別に下記表7に示す。
【0228】
【表8-1】
【表8-2】
【0229】
上記表6の脚注は、以下を意味する:1.インフォームドコンセント/同意は、来診1a(オプションの導入時間を必要とした患者の場合)または来診1(オプションの導入を必要としなかった患者の場合)のいずれかで得られた。2.注射訓練は、スクリーニング期間中またはベースライン時に、患者および/または介護者とプラセボを使用して行った。3.治験研究薬投与(二重盲検およびオープンラベル)の後、患者を30分間モニターする必要があった。4.脂質パネルは、total-C、LDL-C、HDL-C、TG、非HDL-Cからなった。専門脂質パネルは、ApoB、Apo A-1、Apo B/Apo A-1比率、およびLp(a)からなった。脂質パネルは、およそ8時間の絶食の後、収集されることになっていた。5.ECGは、血液サンプルが収集される前に行われることになっていた。6.クリニック来診が投与日と同時であった日には、全血液サンプル(ADAサンプルを含む)は、LDLアフェレーシス(該当する場合)の直前かつ治験研究薬投与前に収集されたが、研究後アセスメントが行われた。PKサンプルは、遊離および総PCSK9解析にも使用された。7.サンプルは、ランダム化の前に得られることになっており、hoFH突然変異状態を決定するために使用された。アフェレーシスを受けている患者は、来診1a中にこれを収集する可能性があった。8.オプションのDNAサンプルは、第1日に収集されることになっていた:しかし、それらは、研究中にいずれの来診時に収集することができた。このアセスメントを行う前に、ゲノムインフォームドコンセントフォーム(ICF)が署名されなければならなかった。9.来診ウインドウは、アフェレーシスを受けていない患者の場合は±3日であり、アフェレーシスを受けている患者の場合は+1日であった。LDLアフェレーシス直前の全サンプル収集を確実にするためにあらゆる試みはなされることになっていた。最後に完了したLDLアフェレーシス手順に対するベースラインサンプル収集のタイミングは、最後に完了したLDLアフェレーシス手順に対する第12週サンプル収集のタイミングに一致させることになっていた。LDLアフェレーシス手順とサンプル収集の間の期間によっては、来診ウインドウが該当しない可能性がある。10.この来診は、別の脂質低下研究に参加しなかった患者のみ行った。
【0230】
早期中止来診に関して、何らかの理由で患者が研究の継続を拒否した場合、患者が二重盲検処置期間に入っている場合には、患者は、可能な限り直ちに臨時の来診を行い、通常は二重盲検処置来診の終了時に計画されているアセスメント(第12週来診アセスメント)を受けることになっていた:患者がオープンラベル処置来診に入っている場合には、オープンラベル処置終了時のアセスメントが使用されることになっていた(第24週来診アセスメント)。この来診は、可能な場合、処置中止の5日以内行われることになっていた。患者は、研究薬の最後の投与から少なくとも70日間、または指定のように追跡調査することになっているいかなるAEも回復または安定化するまで、いずれか遅い方まで、追跡調査されることになっていた。
【0231】
臨時の来診に関しては、患者を研究スケジュール上に保つためにあらゆる試みがなされることになっていた。異常な検査結果の後に試験を繰り返すため、AEの追跡調査のため、または正当な理由による他の何らかの理由のため、臨時の来診が必要となる可能性があった。
【0232】
研究手順
研究適格性を決定すること、またはベースライン集団:医療/手術歴、薬歴、人口統計、B型肝炎表面抗原、および血清妊娠試験を特徴付けることを唯一の目的として、以下の手順を行った。
【0233】
第1日に、研究アセスメント、血液サンプルの収集、LDLアフェレーシス(該当する場合)の完了後、二重盲検治験研究薬の第1の用量が投与された。患者は、臨床施設で第1の用量の後、30分間モニターされた。治験研究薬の後続の用量は、Q2Wで皮下に投与されることになっていた。治験研究薬の各用量は、研究を通して、その日のほぼ同じ時刻(患者選択に基づく)に投与されることになっていた。第1日の後、第10週および第22週の用量を除いて、投与が±5日のウインドウに入ることが許容された。第10週および第22週の用量は、第12週および第24週に重要な有効性アセスメントがあったため、アフェレーシスを受けていない患者の場合±3日の投与ウインドウを有し、アフェレーシスを受けている患者の場合+1日の投与ウインドウを有した。
【0234】
注射が7日を超えて遅れたか、完全に欠けた場合には、患者は、追加の注射を投与せずに、治験研究薬投与の元のスケジュールに戻ることになっていた。遅れが、打ち損ねた日付から7日以内である場合には、患者は、遅れた注射を投与し、次いで元の投薬スケジュールに復帰することになっていた。施設人員は、治験研究薬の輸送、貯蔵、調製、および投与についての詳細な指示を患者/介護者に与えた。
【0235】
有効性手順
総コレステロール、HDL-C、TG、Apo B、Apo A-1およびLp(a)は、中央検査機関で直接的に測定された。低密度リポタンパク質コレステロールは、Friedewald式を使用して計算された。TG値が400mg/dL(4.52mmol/L)を超えた場合、または計算されたLDL-C値が15mg/dL未満である場合、中央検査機関は、再帰的にベータ定量化法を使用してLDL-Cを測定した。非HDL-Cは、HDL-CをTotal Cから引くことによって計算された。Apo B/Apo A-1比率が計算された。
【0236】
脂質パネルおよび専門脂質パネル用の血液サンプルは、上記表7による時点に収集された。脂質パネルおよび専門脂質パネルに何が含まれたかは、下に記載されている。
【0237】
生活の質手順
EuroQol-5質問票:EQ-5Dは、臨床的および経済的評価用の健康の単純かつ一般的な尺度を提供するために、EuroQolグループによって開発された健康状態の標準化された尺度である。健康関係の生活の質の尺度としてのEQ-5Dは、運動能、自己ケア、通常の活動、疼痛/不快、不安/抑うつという5つの次元で健康を定義する。各次元は、「問題なし」(1)、「ある程度問題」(2)、「深刻な問題」(3)という深刻度について3段階の順序レベルを有する。全体的な健康状態が5桁の数で定義される。5次元分類によって定義される健康状態は、0が「死」を表し、1が「完全な健康」を表す健康状態を定量化する対応する指標スコアに変換することができる。
【0238】
安全性手順
血圧および心拍数を含めたバイタルサインは、上記表7による時点に収集された。上記表7による時点に綿密で完全な理学的検査が行われた。体重は、上記表7による時点に収集された。患者の医療履歴によって示される、存在する可能性があったいかなる異常も検査し、アセスメントするように注意が払われることになっていた。心電図は、採血を必要とする来診中に採血される前にとることになっていた。標準的な12リードECGは、上記表7による時点に、静かに10分間休んだ後、仰臥位の患者で行った。心拍数が心室拍動数から記録され、PR、QRS、RR、およびQT間隔が記録された。ECGストリップまたはレポートは、ソースと共に保持された。
【0239】
全検査サンプル(ADAサンプルを含める)は、アセスメントが行われた後、投与日と対応する来診時に1用量の治験研究薬が投与される前に収集された。血液サンプリング前、48時間以内のアルコール摂取または24時間以内の激しい運動をしないように推奨された。臨床検査用のサンプルは、上記表6による時点に収集され、研究中に中央検査機関によって分析された。脂質パネルサンプルは、8時間の絶食の後に収集された。血液サンプル収集用の詳細な指示は、研究施設に提供された検査マニュアルに含まれていた。試験には、以下が含まれた:
【0240】
脂質パネルおよび専門脂質パネル
【表9】
【0241】
血液化学
【表10】
【0242】
血液学
【表11】
【0243】
尿検査
【表12】
【0244】
他の臨床検査は、以下の通りに行われた:妊娠試験(血清および尿)は、上記表7による時点に実施され、妊娠試験(尿)は、上記表7による時点に現地でアセスメントされ、肝臓パネル(ALT、AST、アルカリホスファターゼおよび総ビリルビン)、高感度C反応性タンパク(hs-CRP)用のサンプルは、上記表7による時点に収集され、B型肝炎表面抗原、C型肝炎抗体、およびTSH用のサンプルは、スクリーニング時に収集された。C型肝炎抗体用のサンプルは、上記表6による時点に収集された。
【0245】
異常な検査値および検査に関する有害事象
全検査値は、治験責任医師または委任された指名された者によって審査されなければならなかった。処置開始の後に起こった有意に異常な試験結果は、異常の性質および程度を確認するために、繰り返されなければならなかった。必要な場合には、適切な補助的な調査が開始されることになっていた。異常を解消することができなかった場合、または研究薬物療法もしくはその投与とは無関係な事象または状態によって説明することができなかった場合、医療モニターと相談がなされた。研究中の疾患のコンテキストの範囲内にある、異常な試験値の臨床的有意性は、治験責任医師が決定することになっていた。
【0246】
異常な客観試験結果がAEとして報告されるべきであるかどうかを決定するための基準には、以下が含まれる:随伴症状と関連づけられた試験結果、および/または追加の診断検査もしくは医療/外科的介入を必要とした試験結果、および/または投与の変更をもたらした試験結果(プロトコールに明記された用量調整の外に)、研究中止、有意な追加の併用薬処置または他の療法。
【0247】
薬物動態学および抗薬物抗体手順
薬物濃度用のサンプルは、上記表7に記載の時点に収集された。いかなる未使用のサンプルも、探索的バイオマーカー研究に使用される可能性があった。
【0248】
抗薬物抗体(ADA)アセスメント用のサンプルは、上記表6に記載の時点に収集された。投与日に行われた来診で、1用量の治験研究薬が投与される前に、ADAアセスメント用の全サンプルが収集された。研究の目隠しを維持するために、ADAサンプルは、プラセボのみの投与を受けた患者を含めた全患者から収集された。いかなる未使用のサンプルも、探索的バイオマーカー研究に使用される可能性があった。
【0249】
hoFH遺伝子検査
上記表7に記載のように、各患者の突然変異状態を特徴付ける必須のhoFH遺伝子検査用にサンプルが収集された。
【0250】
研究サンプル
PCSK9レベル、PCSK9機能、モノクローナル抗体によるPCSK9阻害の効果、ならびに高脂血症および心臓病の機序を研究するための、現地の規制によって許される探索的研究用のサンプルが収集された。研究サンプリングは、上記表7による時点に収集された。患者情報の機密性を維持するために、研究サンプルはコード化された。
【0251】
バイオマーカー手順
バイオマーカーサンプルは、研究サンプルの一部として、上記表7による時点に収集された。バイオマーカー測定は、指標のバイオマーカーまたは関連する生理および病原プロセスへの効果を決定するためにマトリックス、たとえば、血清サンプルで行った。研究されたバイオマーカーは、指標の標的エンゲージメントの病態生理学、作用機序および潜在的毒性に関連すると考えられたものであった。研究されたバイオマーカーには、PCSK9が含まれる可能性があったが、それに限定されなかった。
【0252】
有害事象
有害事象(AE)は、治験研究薬が投与された患者で生じた望ましくない任意の医療上の出来事であり、それは、治験研究薬と因果関係がある可能性も、ない可能性もある。したがって、AEは、治験研究薬に関係すると考えられるか否かに関わらず、治験研究薬の使用と時間的に関連している、好ましくない意図されていない任意の徴候(異常な検査結果が含まれる)、症状、または疾患である。AEには、治験研究薬の使用と時間的に関連している、既存の状態のいかなる悪化も(すなわち、いかなる頻度および/または強さの臨床的に有意な変化も)含まれる。
【0253】
特別に関心のある(深刻なまたは深刻でない)有害事象は、治験依頼者の製品またはプログラムに特異的な科学的および医学上の懸念があるものであり、それについての治験責任医師による進行中のモニタリングおよび治験依頼者への迅速な連絡が適切であり得る。この研究について特別に関心のある有害事象には、以下が含まれる:a)ALTの増加:ALT≧3×ULN(ベースラインALT<ULNの場合)もしくはALT≧ベースライン値の2倍(ベースラインALT≧ULNの場合)、b)さらなる評価のために別の医者との相談を必要とするアレルギーの事象および/もしくは局所的注射部位反応、c)妊娠、d)治験医薬品による症候性過量摂取、e)追加の試験/手順および/もしくは専門家への紹介を必要とする神経学的事象、認知神経科学的事象、f)白内障、g)糖尿病の新しい発症(ここで、糖尿病の新しい発症(NOD)の定義は1型または2型糖尿病TEAEである)、ならびに/またはh)TEAE期間中のHbA1cの少なくとも2つの値≧6.5%(注意:TEAE期間中に利用できる測定が1回だけの患者については、1つの値≧6.5%がデフォルトによりNODとみなされ、患者に資格を与える:いくつかのHbA1c測定があるが、最後の測定≧6.5%だけである患者については、この1つの値≧6.5%がデフォルトによりNODとみなされ、患者に資格を与える)、ならびに/またはi)空腹時血漿グルコース(FPG)の少なくとも2つの値≧126mg/dL(7.0mmol/L)(注意:TEAE期間中に利用できる測定が1回だけの患者については、1つの値≧126mg/dL(7.0mmol/L)は、NODとみなされず、患者は資格を得ない:いくつかのFPG測定を有するが、最後の測定≧126mg/dL(7.0mmol/L)だけである患者については、この1つの値≧126mg/dL(7.0mmol/L)は、NODとみなされず、患者は資格を得ない)。
【0254】
重篤有害事象
SAE(重篤有害事象)は、以下のような望ましくない任意の医療上の出来事である:任意の用量でa)全死亡、すなわち、治験研究薬とは完全に無関係であるようにみえる死亡(たとえば、患者が乗客である場合の自動車事故)さえ含めた、死亡をもたらすもの、b)生命を脅かすもの、ただし、治験責任医師の観点では、患者は、事象時に、死亡の差し迫ったリスクがある:これには、それが、より重度の形態で起こったとしたら、死亡を引き起こしたかもしれないAEは含まれない、c)患者の入院を必要とするか、もしくは既存の入院の延長するもの(ここで、患者の入院は、24時間より長い病院または緊急治療室への入院と定義される:既存の入院の延長は、その事象について当初予想されていたよりも長いか、または治験責任医師または処置を行う医師によって決定された新しいAEの発生により延長された病院滞在と定義される)、d)持続的もしくは有意な障害/無能(その人が通常の生活の機能を行う能力の実質的な破壊)をもたらすもの、e)先天異常/先天性欠損であるもの、ならびに/またはf)重要な医療事象であるもの、ただし、重要な医療事象は、直ちに生命を脅かすもの、死亡もしくは入院をもたらすものでなくてもよいが、患者を危険にさらす可能性があるか、もしくは上記の他の深刻なアウトカム(たとえば、緊急治療室もしくは自宅でのアレルギー性気管支痙攣の集中的な処置:入院をもたらさない血液疾患もしくは痙攣:または薬物依存の発症もしくは薬物乱用)の1つを防ぐのに介入に必要とし得る。
【0255】
したがって、ここに開示するランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間第3相研究は、hoFHの成人患者の12週間の処置の後における、2週間に1回のPCSK9阻害剤、アリロクマブ150mgの皮下投与の、LDL-Cの低減における有効性および安全性をプラセボと比較して評価した。副次的目的には、1)他の脂質パラメータ(すなわち、アポリポタンパク質B[Apo B]、非高密度リポタンパク質コレステロール[非HDL-C]、総コレステロール[TC]、15%、30%、および50%のLDL-C低減を有する患者の割合、リポタンパク質(a)[Lp(a)]、HDL-C、トリグリセリド[TG]、Apo A-1):2)アリロクマブの安全性および忍容性:3)薬物動態学:4)抗薬物(アリロクマブ)抗体の潜在的な発生の評価が含まれた。最後に、安全アセスメントには、有害事象(AE)、重篤AE、死亡、AEによる中止が含まれた。
【0256】
結果
ITT集団における主要有効性解析
主要有効性解析は、プラセボ群(LS平均=+8.6%)と比較したアリロクマブ処置群(LS平均=-26.9%)について、ベースラインからの第12週におけるLDL-Cのパーセント変化の統計的に有意な低減を示した。アリロクマブ処置を受けている患者とプラセボ患者の間のLS平均差は、-35.6%(p<0.0001)である。ベースラインからのLDL-Cのパーセント変化のアリロクマブのLS平均低減は、来診第4週という早い時期にみることができ、アリロクマブの利益は、その後、12週間の二重盲検処置期間を通して維持された。
【0257】
第12週におけるLDL-Cのベースラインからのパーセント変化(MMRM-ITT解析-ITT集団)を下記表8に示す。
【0258】
【表13】
【0259】
二重盲検期間中のベースラインからのLDL-C LS平均(±SE)のパーセント変化:時間プロファイル(ITT解析ーITT集団)(データは示されていない)は、ベースラインから第12週までのLDL-C%変化の統計的に有意な低減を示す。アリロクマブについて、ベースラインに対するLS平均は-26.9%(言い換えると、LDL-Cの低減)である。プラセボについて、ベースラインに対するLS平均は8.6%(言い換えると、LDL-Cの増加)である。
【0260】
様々な時点(第12週まで)の患者数は、以下の通りであった:
【表14】
【0261】
本hoFH研究におけるLDL-C有効性は、以下の通りにまとめられる:
【表15】
【0262】
重要な副次的有効性変数
参照を容易にするため、以下の表(表9)は、全重要な副次的エンドポイントの解析結果を、0.05の有意水準の統計検定の階層順にまとめる。この研究は、上位7つの重要な有効性エンドポイントについて、アリロクマブ処置を受けている患者を支持する統計的に有意な結果を達成した。統計仮説検定は、第8の「ベースラインからのWK12におけるHDL-Cのパーセント変化」(p=0.3541)のエンドポイントで終了する。「ベースラインからのWK12における空腹時TGのパーセント変化」および「ベースラインからのWK12におけるApo A-1のパーセント変化」という2つの残りのエンドポイントの名目上のp値は、記述的目的で、提供されている。
【0263】
【表16】
【0264】
より詳細な有効性エンドポイント統計結果を以下の表に示す。ベースラインからの第12週におけるApo Bのパーセント変化(MMRM-ITT解析-ITT集団)結果を下記表10に示す。
【0265】
【表17】
【0266】
ベースラインからの第12週における非HDL-Cのパーセント変化(MMRM-ITT解析-ITT集団)結果を下記表11に示す。
【0267】
【表18】
【0268】
ベースラインからの第12週における総コレステロールのパーセント変化(MMRM-ITT解析-ITT集団)結果を下記表12に示す。
【0269】
【表19】
【0270】
ベースラインからの第12週におけるLp(a)のパーセント変化(多重補完およびそれに続く頑健な回帰-ITT解析―ITT集団)結果を下記表13に示す。
【0271】
【表20】
【0272】
ベースラインからの第12週におけるHDL-Cのパーセント変化(MMRM-ITT解析-ITT集団)結果を下記表14に示す。
【0273】
【表21】
【0274】
ベースラインからの第12週における空腹時トリグリセリドのパーセント変化(多重補完およびそれに続く頑健な回帰-ITT解析-ITT集団)結果を下記表15に示す。
【0275】
【表22】
【0276】
アリロクマブ処置は、ヌル/ヌル患者における予期された最小効果から無効果と共に、ホモ接合性(LDLR)、複合ヘテロ接合性(LDLR)、ダブルヘテロ接合性(LDLR+APOBまたはPCSK9)、およびヘテロ接合性(LDLR+他の良性バリアント)を含めた様々な遺伝子型を有するhoFH患者で、LDL-Cの低減をもたらした。いずれの遺伝子型でも、プラセボ処置を受けている患者患者では、LDL-Cの低減が観察されなかった。
【0277】
要約すると、2週間のスクリーニング期間の後、69人の患者が、処置を研究するために、両群で匹敵する人口統計でランダム化された(24人がプラセボ:45人がアリロクマブ)。ランダム化のときに、97%の患者が高強度のスタチンの投与を受けており:72%がエゼチミブ投与を受けており:17.4%がアフェレーシスを受けており:平均ベースラインLDL-Cは、プラセボでは259.6mg/dL:アリロクマブでは295.0mg/dLであった。ベースラインからの第12週におけるLDL-C変化の差は、-35.6%であった(アリロクマブ[-26.9%]対プラセボ[8.6%]:P<0.0001)。副次的エンドポイント:ApoB -29.8%(P<0.0001):非HDL-C -32.9%(P<0.0001):総コレステロール -26.5%(P<0.0001)。処置下で発現したSAEはなく:TEAEによる中止もなく:死亡の報告もなかった。
【0278】
したがって、アリロクマブによる処置は、hoFHの患者で、早ければ来診第4週に観察される、統計的に有意であり臨床的に意味のあるLDL-Cの低減をもたらし、続いて、12週間の二重盲検処置期間を通して維持した。アリロクマブによる処置は、高い心血管リスクと関連している他のリポタンパク質および脂質尺度(Apo B、総コレステロール、非HDL-C、およびLp(a))の有意な低減ももたらした。最後に、アリロクマブは一般に十分に耐容され、TEAE、AESI(特別に関心のある有害事象)、および検査パラメータに関して処置群間で臨床的に有意な差はなかった。加えて、オープンラベルデータからは、安全性の懸念が同定されなかった。
【0279】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって、範囲を限定されない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の様々な改変形態が、以上の説明から当業者には明らかであろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
【配列表】
2023506732000001.app
【国際調査報告】