(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】自己嵩高性PTTを含有する二成分繊維から作製するカーペット
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20230213BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
D01F8/14 B
A47G27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535061
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020063758
(87)【国際公開番号】W WO2021118985
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519307218
【氏名又は名称】デュポン・インダストリアル・バイオサイエンシーズ・ユーエスエイ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ジェラード・マドリーン
【テーマコード(参考)】
3B120
4L041
【Fターム(参考)】
3B120AA20
4L041BA09
4L041BA22
4L041BA49
4L041BA59
4L041BB08
4L041BC05
4L041BC17
4L041BC20
4L041BD13
4L041CA06
4L041CA08
4L041CA10
4L041DD10
4L041DD18
(57)【要約】
カーペットであって、その表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーの第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ポリマー又はポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であるカーペットが本明細書に開示される。カーペットを製造する糸を作製するための改善された方法であって、カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーの第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)又はポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとのブレンドの第二成分とを含む自己嵩高型二成分繊維を含む、改良された方法もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットであって、その表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーの第一成分と、ポリ(トリメチレン)テレフタレート又はポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、その表面繊維が機械的に嵩高加工されたバルク連続ホモフィラメントから作製されるカーペットと対照的に、前記二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であるカーペット。
【請求項2】
前記二成分繊維が、サイドバイサイド配置であっても偏心シース/コア配置であってよい請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記二成分繊維の第一成分と第二成分が、80:20~20:80の範囲の重量比で存在する請求項1又は2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記二成分繊維の加熱後の捲縮収縮率が、捲縮収縮法に従って求めると30%以下である請求項1又は2に記載のカーペット。
【請求項5】
前記二成分繊維の加熱後の前記捲縮収縮率が、前記捲縮収縮法に従って求めると30%以下である請求項3に記載のカーペット。
【請求項6】
前記表面繊維が、嵩高加工された連続フィラメント、合成ステープル繊維、及び天然繊維から選択される少なくとも1つの追加の繊維をさらに含む請求項1に記載のカーペット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの追加の繊維が、嵩高加工された連続フィラメントであり、前記嵩高加工された連続フィラメントが、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリエステルを含む請求項6に記載のカーペット。
【請求項8】
前記少なくとも1つの追加の繊維が、合成ステープル繊維であり、前記合成ステープル繊維が、ナイロン又はポリエステルを含む請求項6に記載のカーペット。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加の繊維が、天然繊維であり、前記天然繊維が、羊毛、絹、又は綿を含む請求項6に記載のカーペット。
【請求項10】
カーペットを製造する糸を作製するための改善された方法であって、前記カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーの第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)又はポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとのブレンドの第二成分とを含む、自己嵩高型二成分繊維を含み、
前記方法が、
a)2種以上の独立した溶融流れを生成できる紡糸機で2つの成分を押出す工程;
b)二成分繊維を作製するのに好適な紡糸口金において前記溶融流れを合流する工程;
c)工程(b)で生成した前記自己嵩高型二成分繊維を空気中で急冷する工程;
d)前記自己嵩高型二成分繊維を延伸してヒートセットする工程;及び
e)続いてのカーペットへの加工に好適である手段により、前記自己嵩高型二成分繊維を巻き取る工程であって、
前記自己嵩高型二成分繊維が、機械的に嵩高加工する工程を必要としない工程
を備える方法。
【請求項11】
前記二成分繊維が、サイドバイサイド配置であっても偏心シース/コア配置であってもよい請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二成分繊維の前記第一成分及び第二成分が、80:20~20:80の範囲の重量比で存在する請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記二成分繊維の加熱後の前記捲縮収縮率が、前記捲縮収縮法に従って求めると30%以下である請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記二成分繊維の加熱後の前記捲縮収縮率が、前記捲縮収縮法に従って求めると30%以下である請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーペット、より詳細にはその表面繊維が自己嵩高性ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)含有の二成分繊維を含むカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
当今のカーペットの製作においては、嵩高加工されていない繊維又は「へん平」繊維と比較して繊維の被覆力又は見かけの体積が強化されていると定義できる、高レベルの嵩高性を備える繊維を作製するために、合成ポリマー(例えばナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン)を使用することが一般的である。これらの嵩高加工された連続繊維(「BCF」)は、通常、繊維に機械的に嵩高を付与するように特別に設計された、高温/高圧ジェット及び冷却ドラムを備える紡糸機で製造される、単成分繊維である。このプロセスは、いくつかの欠点を有する。ジェット内の繊維の高温、高圧、及び乱気流は、繊維フィラメントに損傷を与え、繊維の物性に悪影響を与えることがある。さらに、ジェット/ドラムプロセスにより嵩高を付与する必要性は、機械的に嵩高加工する必要がない他の紡糸プロセス、即ち、完全延伸糸(「FDY」)又は部分配向糸(「POY」)のへん平糸と比べて、繊維生産速度の低下を余儀なくされる。
【0003】
織物繊維を特徴付ける1つの方法は、繊維の捲縮量である。「捲縮」とは、繊維のうねりを指し、単位長さ当たりの数として表すことができる。捲縮量は、本明細書において「捲縮収縮率」とも呼ばれ、荷重をかけた繊維の伸びた長さを、荷重をかけない繊維の縮んだ長さと比較することにより、表すことができる。繊維内の捲縮量は、天然由来のもの(例えば、羊毛)でも、又は製造の際に合成繊維に付与して所望の最終用途に適合させることでも可能である。バルキングジェットで空気と熱を用いる(BCF)か、仮撚り機でPOYを加撚/解撚して延伸加工糸(DTY)にするか、又はサイドバイサイド若しくは偏心シース/コア二成分繊維で、収縮差により捲縮を起こさせることが可能である。低捲縮度は、ロフト又は嵩高が向上した織物繊維に対応し、及び布帛の不透明度又は被覆力が重要である場合に望ましい。その代わりとして、高捲縮度は、かなりのレベルの伸縮性及び回復性を有する繊維をもたらし、アパレル用途で重宝される。
【0004】
カーペット用途においては、伸縮性をそれほど発展させないで、嵩高性を付与するには、低捲縮度が、望ましい。布帛用の二成分フィラメントを含む自己捲縮型の嵩高糸は、特許文献1に記載されている。アパレル布帛においては、サイドバイサイド及び偏心シース/コアタイプの二成分繊維の捲縮特性は、通常、繊維及び得られる布帛に高いレベルの伸縮性を提供するように最大化される。2004年10月12日にTalleyらに付与された特許文献2は、非対称な繊維断面を有する二成分繊維の製造を例示するものであり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
2000年12月12日にTalleyらに付与された特許文献3は、撚りを固定し、嵩を形成する螺旋状の捲縮を形成する二成分繊維から作製された自己硬化性の糸を開示する。カーペット及び織物におけるこのような糸の使用も開示される。ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(「PBT」)、ポリプロピレン、ナイロンなどのような様々なポリマーが開示される。しかしながら、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)の使用は、開示されていない。
【0006】
特許文献4 Howellら、特許文献5 Roarkら、及び特許文献6 Chuah;特許文献7 Scottら;非特許文献1;及び非特許文献2は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)ホモファイバーで作製されるが二成分繊維ではないカーペットを記載しており、それらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)又はPTTとPETホモポリマー若しくはPETコポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、二成分繊維が、カーペットの表面繊維が機械的に嵩高加工されたバルク連続ホモフィラメントから作製されるカーペットと対照的に、収縮差による自己嵩高型であるカーペットが本明細書に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,790,282号明細書
【特許文献2】米国特許第6,803,102B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,158,204号明細書
【特許文献4】米国特許第5,645,782号明細書
【特許文献5】米国特許第6,109,015号明細書
【特許文献6】米国特許第6,113,825号明細書
【特許文献7】国際公開第99/19557号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H.Modlich,“Experience with Polyesters Fibers in Tufted Articles of Heat-Set Yarns, Chemiefasern/Textilind.41/93,786-94(1991)
【非特許文献2】H.Chuah,“Corterra Poly(trimethylene terephthalate)-New Polymeric Fiber for Carpets”,The Textile Institute Tifcon’96(1996)(http://www.shellchemicals.com/corterra/0,1098,281,00.htmlで閲覧可能)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一実施形態においては、その表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)ポリマー又はPTTとPETホモポリマー若しくはPETコポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、カーペットの表面繊維が機械的に嵩高加工されたバルク連続ホモフィラメントから作製されるカーペットと対照的に、二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であるカーペットを本明細書に開示する。
【0011】
第二実施形態においては、二成分繊維は、サイドバイサイド配置でも、又は偏心シース/コア配置でもよい。
【0012】
第三実施形態においては、二成分繊維の第一成分と第二成分は、80:20~20:80の範囲の重量比で存在することができる。
【0013】
第四実施形態においては、本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維は、本明細書に開示される捲縮収縮法に従って求めた30%以下の加熱後の捲縮収縮率を有する。
【0014】
第五実施形態においては、カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)又はPTTとPETホモポリマー若しくはPETコポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む自己嵩高型二成分繊維を含むカーペットを製造する糸を作製するための改善されたプロセスであって、前記プロセスが:
a)2種以上の独立した溶融流れを生成できる紡糸機で2つの成分を押出す工程;
b)二成分繊維を作製するのに好適な紡糸口金において溶融流れを合流する工程;
c)工程(b)で生成した自己嵩高型二成分繊維を空気中で急冷する工程;
d)自己嵩高型二成分繊維を延伸してヒートセットする工程;及び
e)続いてのカーペットへの加工に好適である手段により、自己嵩高型二成分繊維を巻き取る工程であって、
自己嵩高型二成分繊維が、機械的に嵩高加工する工程を必要としない工程
を備えるプロセスを開示する。
【0015】
第六実施形態においては、二成分繊維は、サイドバイサイド配置でも又は偏心シースコア配置でもよい。
【0016】
第七実施形態においては、二成分繊維の第一及び第二成分は、80:20~20:80%の範囲の重量比で配置できる。
【0017】
第八実施形態においては、本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維は、本明細書に開示される捲縮収縮法に従って求めた30%以下の加熱後の捲縮収縮率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
引用されている全ての特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「実施形態」又は「開示」という用語は、限定されることを意味するものではなく、特許請求の範囲で定義されるか又は本明細書に記載される実施形態のいずれかに一般的に適用される。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0020】
本開示では、多数の用語及び略語が用いられる。特に具体的に明記しない限り、下記の定義が適用される。
【0021】
1つの要素若しくは成分に先行する不定冠詞「1つの」は、その要素若しくは成分の事例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であることが意図されている。このため「1つの」及び「その」は、1つ若しくは少なくとも1つを含むと読むべきであり、要素若しくは成分の単数語形はまた、特にその数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
【0022】
用語「~を含む(comprising)」は、特許請求の範囲で言及された特徴、整数、工程又は成分の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分若しくはそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。用語「~を含む(comprising)」は、用語「~から実質的になる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」によって包含される実施形態を含むものとする。同様に、用語「~から実質的になる(consisting essentially of)」は、用語「~からなる(consisting of)」によって包含される実施形態を含むものとする。
【0023】
存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、且つ結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が挙げられる場合、挙げられた範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などを含むものと解釈されるべきである。
【0024】
数値と結び付けて本明細書で用いられるところでは、用語「約」は、その用語が文脈において特に具体的に定義されていない限り、数値の±0.5の範囲を指す。例えば、語句「約6のpH値」は、pH値が特に具体的に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0025】
本明細書の全体に渡って示されるあらゆる数値上限は、このようなより小さい数値限度が本明細書に明確に記載されたかのように、あらゆるより小さい数値限度を含むことを意図する。本明細書全体を通して与えられる全ての数値の下限は、全てのより高い数値の限界を、あたかもそのようなより高い数値の限界が本明細書で明示されていたかのように含むであろう。本明細書の全体に渡って示されるあらゆる数値範囲は、このようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように、このようなより広い数値範囲内に入るあらゆるより狭い数値範囲を含むであろう。
【0026】
本明細書に使用される場合、「二成分繊維」という用語は、異なるポリマー型、同一のポリマー型であるが異なる固有粘度を有するポリマー型又は2種以上のポリマーのブレンドから構成され、同一フィラメント内に両方のポリマーを有する同一の紡糸口金から押出される2種の異なるポリマー成分からなる繊維を指す。二成分繊維は又、複合繊維と呼んでもよく、それらの用語は互換的に使用できる。
【0027】
「BCF」という用語は、バルク又は嵩高加工された連続ホモフィラメントを指す。カーペットを作製するのに使用するのは、本質的に1本の長い連続したストランドの繊維である。「バルク」及び「嵩高加工された」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「カーペット」という用語は、パイル糸又は繊維及び裏打ち(backing system)からなる床の敷物を指す。それは、タフテッドカーペットであっても織物であってもよい。本明細書に使用される場合、「カーペット」という用語は、壁一面のカーペット、タイルカーペット、ラグ、車両用及び建物入口用マット、例えば、足の土を捕獲するように設計されたものを包含する。
【0029】
用語「表面」は、タフト糸又は織糸を含有するカーペットの面を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「表面繊維」という用語は、観察者に見えるものを含むカーペットの繊維含有物を指す。表面繊維は、主に糸で構成されており、及びこれらの糸は、カット、ループ、カットアンドループ又は当業者に知られている任意の数の型にすることができる。
【0031】
「コポリマー」という用語は、複数の種のモノマーの組み合わせで構成されるポリマーを指す。コポリマーは、数種の製造される繊維のベースを形成することができる。
【0032】
「捲縮」という用語は、単位長さ当たりの捲縮として表される繊維のうねりを指す。「捲縮加工」とは、フィラメント糸に捲縮を付与するプロセスである。
【0033】
「捲縮収縮率」という用語は、繊維の捲縮の尺度であり、完全に伸びた状態(即ち、フィラメントが実質的に直線化した状態)からの糸の長さの収縮を指す。これは、捲縮発現の特定の条件下で、個々のフィラメントでの捲縮の形成によるものである。それは、伸長した長さの百分率として表される。捲縮収縮率は、部分的に又は完全に捲縮を発現するために例えば加熱によって繊維を処理する前に及び/又は処理した後に測定できる;通常は加熱後の捲縮収縮率は、加熱により発生した捲縮を含むので、さらに興味深く、より多くの情報を提供する。特に明記しない限り、本明細書に開示する捲縮収縮率の値は、加熱後の捲縮収縮率の値(Cca)である。
【0034】
「デニール」という用語は、任意の線形材料の単位長さ当たりの重量尺度である。
【0035】
「繊維」という用語は、布帛及び他の織物構造体の基本的な要素を形成する天然又は合成のいずれかの材料の単位を指す。それは、その直径又は幅の少なくとも1000倍の長さを有することを特徴とする。通常、織物繊維は、製織、製編、編組、フェルト化及び加撚をはじめとする様々な方法により、糸に紡糸する又は布帛にすることができる単位である。繊維は、そのデニール(9000メートルの繊維当たりのグラムでの重量)、及び繊維に含有されるフィラメントの数により特徴付けられる。
【0036】
「フィラメント」は、繊維の細い糸又は連続ストランドを指す。フィラメントには2つのタイプがある:モノ-フィラメント及びマルチフィラメント。フィラメントは、フィラメント当たりのそれらのデニール(「dpf」)により特徴付けられる。
【0037】
「モノフィラメント」は、1種のポリマータイプからなるフィラメントを意味する。
【0038】
「ステープル」は、天然繊維か、又はフィラメントからの切断長かのどちらかを指す。
【0039】
「固有粘度」(「IV」)という用語は、既知濃度の溶液の比粘度の濃度ゼロに外挿した溶質濃度に対する比を指す。
【0040】
「タフティング」という用語は、カーペットなどの織物を専用の多針機で作り出すプロセスを指す。「タフト」とは、布帛に引き込まれた柔らかい糸の集まりであり、カット糸又はループの形態で表面から突き出ている。カット又はアンカットループは、タフテッドカーペット又は織カーペットの表面を形成する。
【0041】
「糸」という用語は、単独か、又はフィラメントの別の集合体と一緒に撚り合わされたかどちらかの個々のフィラメントの集合体を指す。「繊維」及び「糸」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0042】
「急冷」という用語は、特定の物性又は物質の特性を得るように、水、油、又は空気中で素早く急激に冷却することを指す。
【0043】
「ポリ(エチレンテレフタレート)」又はPETという用語は、エチレングリコール及びテレフタル酸(又はジメチルテレフタレートなどの等価体)のみに実質的に由来するポリマーを意味し、及びポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマーとも称される。本明細書で使用される場合、「ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー」又は「コ-PET」という用語は、エチレングリコール及びテレフタル酸(又は等価体)に由来する繰り返し単位を含み、そして更にイソフタル酸(IPA)又はシクロヘキサンジメタノール(CHDM)などの追加のモノマーに由来する少なくとも1つの追加の単位も含有するポリマーを指す。ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーは、約1モル%~約30モル%の追加のモノマー、例えば、約1モル%~約15モル%の追加のモノマーを含有できる。
【0044】
「ポリ(ブチレンテレフタレート)」又はPBTという用語は、1,4-ブタンジオール及びテレフタル酸だけに実質的に由来するポリマーを意味し、且つポリ(ブチレンテレフタレート)ホモポリマーとも称される。本明細書で使用される場合、「ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー」という用語は、1,4-ブタンジオール及びテレフタル酸に由来する繰り返し単位を含み、そして更に追加のモノマー、例えば本明細書に開示されるPTTコポリマーのためのコモノマーに由来する少なくとも1つの追加の単位も含有するポリマーを指す。
【0045】
「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」又はPTTという用語は、1,3-プロパンジオールとテレフタル酸を重合することにより生成されるポリエステルを指す。PTTは、その高い弾性回復性及び復元性が際立っている。PTTは、耐汚染性、静抵抗、及び改善された可染性を提供すると知られている。「ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー」という用語は、実質的に1,3-プロパンジオールとテレフタル酸(又は等価体)のみのポリマーを意味する。「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」という用語は、PTTコポリマーも含み、それにより、1,3-プロパンジオール及びテレフタル酸(又は等価体)に由来する繰り返し単位を含み、そして更に追加のモノマーに由来する少なくとも1つの追加の単位を含有するポリマーを意味する。PTTコポリマーの例としては、互いが2つのエステル形成基を有する3種以上の反応物を用いて生成されるコポリエステルが挙げられる。例えば、コポリ(トリメチレンテレフタレート)は、コポリエステルを生成するのに使用されるコモノマーが、4~12個の炭素原子を有する鎖状、環式、及び分岐の脂肪族ジカルボン酸(例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、及び1,4-シクロ-ヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の8~12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸(例えばイソフタル酸及び2,6-ナフタレンジカルボン酸);2~8個の炭素原子鎖状、環式、及び分岐の脂肪族ジオール(1,3-プロパンジオール以外の、例えば、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジオール);並びに4~10個の炭素原子を有する脂肪族及び芳香族エーテルグリコール(例えば、ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、又はジエチレンエーテルグリコールをはじめとする約460未満の分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)からなる群から選択される場合に、使用できる。コモノマーは、通常、約0.5モル%~約15モル%の範囲の濃度でコポリエステル中に存在し、最大約30モル%までの量で存在できる。
【0046】
「Triexta」という用語は、亜類のポリエステルであるPTTの総称を指す。「Triexta」と「PTT」は、本明細書では互換的に使用できる。
【0047】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、通常約0.5デシリットル/グラム(dl/g)以上で且つ通常約2dl/g以下である固有粘度を有する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、好ましくは約0.7dl/g以上、より好ましく0.8dl/g以上、更により好ましくは0.9dl/g以上である固有粘度を有し、且つ固有粘度は、通常約1.5dl/g以下、好ましくは1.4dl/g以下であり、及び現在入手可能な市販製品は、1.2dl/g以下の固有粘度を有する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)は、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから商標名Sorona(登録商標)で市販されている。
【0048】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモファイバーで作製されるカーペット及びその製造、並びに繊維及び繊維の製造は、Howellらによる米国特許第5,645,782号明細書、Roarkらによる米国特許第6,109,015号明細書、及びChuahによる米国特許第6,113,825号明細書;米国特許第6,740,276号明細書、米国特許第6,576,340号明細書、及び米国特許第6,723,799号明細書;Scottらによる国際公開第99/19557号パンフレット;H.Modlich,“Experience with Polyesters Fibers in Tufted Articles of Heat-Set Yarns,Chemiefasern/Textilind.41/93,786-94(1991);並びにH.Chuah,“Corterra Poly(trimethylene terephthalate)-New Polymeric Fiber for Carpets”,The Textile Institute Tifcon’96(1996)に記載されており、それらの全てが、参考として本明細書に組み込まれている。ステープル繊維は、家庭用カーペットを調製するのに主に使用される。BCF糸は、全てのタイプのカーペットを調製するのに用いられ、通常はカーペットに好ましい。
【0049】
典型的に、PTT含有の二成分繊維は、耐久性のあるストレッチ特性を有する布帛やアパレルの製造に使用される。対照的に、そのようなストレッチ特性は、カーペットの製造に必要ではない。むしろ、カーペットの製造に使用する繊維は、通常、機械的に嵩高加工されて高レベルの嵩を提供する;そのような繊維は、通常、「BCF」繊維と称される。
【0050】
カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)又はPTTとPETホモポリマー若しくはPETコポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、カーペットの表面繊維が機械的に嵩高加工されたバルク連続ホモフィラメントから作製されるカーペットと対照的に、二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であるカーペットを本明細書に開示する。
【0051】
カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)ホモポリマー又はPTTとPETホモポリマー若しくはPETコポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む自己嵩高型連続繊維を含むカーペットを製造する糸を作製するための改善されたプロセスであって、前記プロセスが:
a)2種以上の独立した溶融流れを生成できる紡糸機で2つの成分を押出す工程;
b)二成分繊維を作製するのに好適な紡糸口金において溶融流れを合流する工程;
c)工程(b)で生成した自己嵩高型二成分繊維を空気中で急冷する工程;
d)自己嵩高型二成分繊維を延伸してヒートセットする工程;及び
e)続いてのカーペットへの加工に好適である手段により、自己嵩高型二成分繊維を巻き取る工程であって、
自己嵩高型二成分繊維が、機械的に嵩高加工する工程を必要としない工程を備えるプロセスもまた開示する。
【0052】
本明細書に記載される二成分繊維は、サイドバイサイド(「S/S」)配置でも又は偏心シース/コア(「S/C」)配置でもよい。二成分繊維は、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第6,803,102号明細書に開示されているようなそれぞれの形状に特定の紡糸口金を用いることにより、例えば、円形、デルタ形、三角形、スカラップ形、又は他の形状などの様々な断面形状にすることができる。
【0053】
通常、カーペット用の繊維は、製造プロセスにおいて機械的に嵩高加工する工程を経ているホモフィラメントである。対照的に、カーペットの表面繊維が、ポリ(トリメチレン)テレフタレートを含む二成分繊維を含む自己嵩高型連続繊維を含む本明細書に記載されるカーペットは、収縮差による自己嵩高型である。
【0054】
上述のように、自己嵩高型二成分繊維の成分のひとつは、PTTであり、又はPTTとPET若しくはコ-PETとのブレンドである。他の市販のポリエステルと比較すると、PTTは、PTTの独自な収縮性により、捲縮を提供するのに非常に効果的であり得る。自己嵩高型二成分繊維のもうひとつの成分は、PET又はコ-PETであり、それらの収縮は、PTTと比較して極僅かであるので、この成分の組み合わせにより、収縮率の差が最大となり、捲縮が発現する。対照的に、PBT、PTT、及びPTT/PETブレンドは、かなり収縮し、結果として2成分の収縮率の差が少ないので、得られる二成分繊維において捲縮の発生は少ないので、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)は、自己嵩高型二成分繊維を作製するために、PTT又はPTT/PETブレンドと共に使用する成分としてあまり好ましくない。例えば、サイドバイサイド若しくは偏心シース/コアの自己嵩高型二成分繊維において等しいポリマー重量比では、PTTとPETを2成分として含む二成分繊維は、PBTとPETを2成分として含む二成分繊維、又は異なる固有粘度(IV)をそれぞれ有する2種の異なるPETを2成分として含む二成分繊維よりも高い嵩を提供することとなる。
【0055】
ナイロン6及びナイロン66をはじめとするナイロンポリマーは、自己嵩高型二成分繊維に第一成分として使用されることもあるが、しかしながら、ナイロンポリマーは、一般的に第二成分としてのポリエステルとの接着が十分でなく、応力がかかる場合に、割れやクランプが生じることがある。このため、ナイロン及びポリエステルを含む二成分繊維は、カーペット糸用として最適な選択でないことがある。
【0056】
2つの成分、PET又はコ-PET、及びPTT又はPTTとPET若しくはコPETとのブレンドは、80:20~20:80の範囲の重量比で自己嵩高型二成分繊維に存在できる。例えば、第一成分と第二成分との重量比は、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、又はこの範囲内の任意の比でよい。一実施形態においては、第一成分と第二成分との重量比は、約50:50である。
【0057】
カーペットに使用するためには、自己嵩高型二成分繊維は、加熱後の捲縮収縮率の値が30%以下である。加熱後の捲縮収縮率は、以下の実施例の項で開示する捲縮収縮率の測定法で測定できる。二成分繊維の2成分を調節して、得られる二成分繊維において30%以下の所望の加熱後捲縮収縮率を実現できるいくつかの方法が存在する。1つの選択肢は、他の成分に対するそれぞれの成分のポリマー固有粘度(IV)を調節する方法である。例えば、二成分繊維の2つの成分間でIVの違いが非常に大きいならば、高レベルの収縮差が、2つの成分間で生じることがあり、カーペットの製造には好適でない高い捲縮値及び繊維の伸縮特性が生じる結果となる。対照的に、2つの成分でIV差が、非常に小さいならば、2つの成分間での収縮に大きな差が生じないので、結果として嵩が殆ど無い。
【0058】
好ましい捲縮度を有する二成分繊維を製造する別の方法は、2つの成分の重量比を変えることである。二成分繊維が、かなりの割合でPTTを含有するならば、得られる繊維は、高い捲縮値及び繊維の伸縮性を有することができる。反対に、体積比が非常に少ない量のPTTであると、所望のレベルを実現するのに十分な加熱後の嵩も捲縮収縮率も提供しないことがある。
【0059】
好ましい捲縮度を有する二成分繊維を製造する三番目の方法は、一定比(例えばPTTとPETとの重量比50/50)のPET/PTTブレンドを第一成分として、PETを第二成分として採用することである。PETとPTTを一成分でブレンドすることを用いて、PTT単体の高い収縮特性を修正できることが判明した。二成分が、PTTとPETのブレンドを含む第一成分と、PETである第二成分とで製造される場合、所望の捲縮度を提供する、即ち加熱後の捲縮収縮率が30%以下である等しい重量比(例えば成分1:成分2が50/50w/w)を有する繊維を製造することが可能である。いくつかの紡糸口金の設計では、2つの成分の重量比がほぼ等しい二成分繊維を作製することが望ましいこともあり、PETをPTTとブレンドすることは、この結果を実現するひとつの方法である。
【0060】
別な方法として、本明細書に開示される有用な二成分繊維は、第二成分がPET又はコ-PETである二成分繊維の第一成分中のPTT/PETブレンドの組成を変えることにより、作製できる。この取り組みは、高いレベルのPETが望まれる場合に有用な二成分繊維を作製するのに用いることができる。要約すると、ポリマーの種類、IV、重量比、及びブレンドの組成を変えることは全て、そのようにすることで自己嵩高型二成分繊維を設計して、所望のカーペット嵩をもたらす目標の捲縮値を得ることができる技術である。繊維製造中にロール及び/又はワインダの相対速度を変えることでも又捲縮収縮率に影響を与えることがある。
【0061】
本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維におけるPTTの利点のひとつは、PETと比較して高いレベルの収縮をPTTが提供することである。自己嵩高型二成分繊維の第一成分として、比較的に少量のPTTを使用して、所望の嵩を有する二成分繊維を生み出すことができる。しかし、二成分繊維中のPTT含有量が多すぎると、カーペット用の糸に使用するには高すぎるレベルの伸縮性となることがあり、アパレル用途により適することとなる。
【0062】
様々な添加剤を一方のポリマーに加えても、又は両方のポリマーに加えてもよい。添加剤としては、潤滑剤、核剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、防汚剤、汚染防止剤、抗菌剤、及び難燃剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
カーペット用には、本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維は、約300~約1400グラム/デニールの範囲のデニールを有し得る。フィラメント当たりの有用なデニールは、約2~約20の範囲であり得る。
【0064】
カーペットの一実施形態においては、その表面繊維が、PETホモポリマー又はコ-PETの第一成分と、PTT又はPTTとPETホモポリマー若しくはコ-PETとのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含み、二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であり、第一成分が、約0.9dL/g~約1.25dL/gの範囲の固有粘度を有するPTTを含み、第二成分が、約0.64dL/gの固有粘度を有するPETを含み、2つの成分の重量比が、約50/50である。
【0065】
別の実施形態においては、第一成分が、約0.9dL/g~約1.0dL/gの範囲の固有粘度を有するPTTを含み、第二成分が、約0.5dL/gの固有粘度を有するPETを含み、2つの成分の重量比が、約20/80~約30/70の範囲である。
【0066】
追加の一実施形態においては、第一成分は、50/50重量/重量でのPTTとコ-PETとのブレンドを含み、PTTが、約0.9dL/g~約1.0dL/gの範囲の固有粘度を有し、コ-PETが、約0.75dL/g~約0.85dL/gの範囲の固有粘度を有し、及び第二成分が、約0.5dL/gの固有粘度を有するPETを含み、並びに2つの成分の重量比が、約70/30~約30/70の範囲である。
【0067】
さらなる実施形態においては、第一成分は、PTTとコ-PETとのブレンドを含み、PTTが、約0.9dL/g~約1.0dL/gの範囲の固有粘度を有し、コ-PETが、約0.75dL/g~約0.85dL/gの範囲の固有粘度を有し、ブレンド中のPTTとコ-PETとの重量比が、約10/90~約90/10の範囲であり、及び第二成分が、約0.5dL/gの固有粘度を有するPETを含み、並びに2つの成分の重量比が、約50/50である。
【0068】
繊維は、所望の体積比又は重量比でポリマーを紡糸口金に供給することにより、製造してよい。任意の従来の多成分紡糸技術を使用してもよいが、二成分繊維を作製するための例示的な紡糸装置及び方法は、Hillsに付与された米国特許第5,162,074号明細書に記載されている。
【0069】
本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維は、カーペットを作製するのに使用する合成及び天然の全ての他の種類の繊維と併用できる。カーペットは、機械タフティング又は手動によるタフティング、製織、及び手結びにより作製できる。例としては、1)タフテッドカーペットが幅数メートルの長い連続した長さで作製された家庭用及び業務用の広幅カーペット(床一面のカーペットとしても知られている)、2)設置し易いように様々なサイズの正方形に作られたタイルカーペット、3)家庭用ラグ、及び4)物に入る前に足の汚れを取るように設計された車両用及び建物の入り口用のマットが挙げられる。
【0070】
繊維からカーペットを調製する当技術分野で周知の任意の方法が、本明細書に記載されるカーペットを調製するのに使用できる。通常は、本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維は、他の合成繊維及び天然繊維が使用されているのと同じカーペット製造プロセスで、使用できる。二成分繊維は、カーペット製作にそれ自体(つまり、「単」糸として)を使用するか、又は同一の二成分繊維又は他の種類の繊維(例えばナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル)とさらに一緒に撚り合わせてデニールを増大することができる。任意選択的に、単糸及び合撚繊維は、撚り合わせる前にエアジェットと絡みあわせてよく、又単糸及びタフト糸の物理的特性を熱硬化させるように特別に設計した機械によりヒートセットを施してもよい。この目的に好適なヒートセット機の一例は、Superba(登録商標)(Muhouse,France)により製造される。二成分繊維に、任意選択的に空気交絡、撚り合わせ又はヒートセットを施すかどうかにかかわらず、繊維は、その後、カーペット産業で一般的な標準の不織布又は織物の裏打ちシートにタフトすることができる。タフテッドカーペットの表面繊維ループを切断してカットループカーペットを提供してもよい。タフティングの後に、カーペットの裏側(つまり、表面繊維の反対側)に接着剤を塗布してタフトを所定の位置に保持することが多い。追加の裏打ち層を又、カーペットの裏側に加えることもある。接着層は、特定のカーペットの最終用途に応じて、充填剤又は難燃剤を含有してもよい。カーペットは、次に、カーペット製造業界で一般的な標準のプロセスにより染色を施されることがある;別の方法として、繊維の押出中に顔料を二成分繊維に及び/又は片方の(companion)繊維に添加して、完成した布地に色を付与してもよい。さらに、表面糸は、耐火性、帯電防止特性、又は耐汚染性及び耐汚れ性を付与するように設計した材料で処理してもよい。完成したカーペットは、染色プロセスで残った水を除去するために、乾燥させることが多い。
【0071】
上述の製造プロセスは、広幅のタフテッドカーペットの典型的なものである。本業界で周知のこのプロセスに対する変形形態が、ラグ、タイルカーペット、及び車両マットの製造に採用されることがある。
【0072】
本明細書に開示される二成分繊維の特徴のひとつは、繊維の温度を少なくとも75℃であるが200℃未満まで上昇させることによる捲縮及び嵩の発達である。任意選択的なヒートセット工程、染色工程及び乾燥工程中に、二成分繊維は、カーペット製造の標準の過程でこの温度範囲にさらされることとなる。別な方法として、カーペットに別々のヒートセット工程を施して嵩上げできるか、或いは二成分繊維(単糸又は合撚り糸)に熱処理して嵩上げできる。
【0073】
二成分繊維を含む表面繊維は、円形断面でも、又は三葉などの非円形の断面であってもよい。その繊維は、30%以下の加熱後の捲縮収縮率の値を有するのが望ましい。
【0074】
本明細書に開示されるカーペットの利点は、二成分繊維が収縮差による自己嵩高型であるので、カーペットを作製するのに使用する糸を機械的に嵩高加工する必要がないことである。対照的に、バルク連続ホモフィラメントから作製したカーペット糸は、収縮差がないので、機械的に嵩高加工することが必要となる。即ち、収縮差を有する二成分繊維を使用することにより、連続ホモフィラメントを機械的に嵩高加工する工程を省いて、カーペットを作製する。
【0075】
場合により、その表面繊維が本明細書に開示される自己嵩高型二成分繊維を含むカーペットは、少なくとも1つの追加の繊維をさらに含んでもよい。少なくとも1つの追加の繊維を自己嵩高型二成分繊維と一緒に撚り合わせて、デニールを増大させてもよく、例えば、又はカーペットをタフトする際に、追加のカーペット糸として少なくとも1つの追加の繊維を用いてもよい。少なくとも1つの追加の繊維は、嵩高加工された連続フィラメント(つまり、ホモフィラメント)、合成ステープル繊維、及び天然繊維から選択してよい。一実施形態においては、少なくとも1つの追加の繊維は、嵩高加工された連続フィラメントであり、嵩高加工された連続フィラメントとしては、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリエステルが挙げられる。別の実施形態においては、少なくとも1つの追加の繊維は、合成ステープル繊維であり、合成ステープル繊維は、ナイロン又はポリエステルを含む。さらなる実施形態においては、少なくとも1つの追加の繊維は、天然繊維であり、天然繊維は、羊毛、絹、又は綿を含む。
【0076】
本明細書で開示される実施形態の非限定的な例としては、下記が挙げられる:
1.その表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)の第一成分と、ポリ(トリメチレン)テレフタレート(PTT)又はポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)とポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマー(コ-PET)とのブレンドの第二成分とを含む二成分繊維を含むカーペットであって、その表面繊維が機械的に嵩高加工されたバルク連続ホモフィラメントから作製されるカーペットと対照的に、二成分繊維が、収縮差による自己嵩高型であるカーペット。
2.二成分繊維が、サイドバイサイド配置であっても又は偏心シース/コア配置であってもよい実施形態1に記載のカーペット。
3.二成分繊維の第一成分と第二成分が、80:20~20:80の範囲の重量比で存在する実施形態1又は2に記載のカーペット。
4.二成分繊維の加熱後の捲縮収縮率が、捲縮収縮法に従って求めると30%以下である実施形態1、2又は3に記載のカーペット。
5.表面繊維が、嵩高加工された連続フィラメント、合成ステープル繊維、及び天然繊維から選択される少なくとも1つの追加の繊維をさらに含む実施形態1、2、3又は4に記載のカーペット。
6.少なくとも1つの追加の繊維が、嵩高加工された連続フィラメントであり、嵩高加工された連続フィラメントが、ナイロン、ポリプロピレン、又はポリエステルを含む実施形態5に記載のカーペット。
7.少なくとも1つの追加の繊維が、合成ステープル繊維であり、合成ステープル繊維が、ナイロン又はポリエステルを含む実施形態5に記載のカーペット。
8.少なくとも1つの追加の繊維が、天然繊維であり、天然繊維が、羊毛、絹、又は綿を含む実施形態5に記載のカーペット。
9.カーペットを製造する糸を作製するための改善されたプロセスであって、カーペットの表面繊維が、ポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー又はポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーの第一成分と、ポリ(トリメチレンテレフタレート)又はポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマー若しくはポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーとのブレンドの第二成分とを含む自己嵩高型二成分繊維を含み、前記プロセスが:
a)2種以上の独立した溶融流れを生成できる紡糸機で2つの成分を押出す工程;
b)二成分繊維を作製するのに好適な紡糸口金において溶融流れを合流する工程;
c)工程(b)で生成した自己嵩高型二成分繊維を空気中で急冷する工程;
d)自己嵩高型二成分繊維を延伸してヒートセットする工程;及び
e)続いてのカーペットへの加工に好適である手段により、自己嵩高型二成分繊維を巻き取る工程であって、
自己嵩高型二成分繊維が、機械的に嵩高加工する工程を必要としない工程
を備える改善されたプロセス。
10.二成分繊維が、サイドバイサイド配置であっても又は偏心シース/コア配置であってもよい実施例9に記載の改善されたプロセス。
11.二成分繊維の第一成分及び第二成分が、80:20~20:80の範囲の重量比で存在する実施形態9又は10に記載の改善されたプロセス。
12.二成分繊維の加熱後の捲縮収縮率が、捲縮収縮法に従って求めると30%以下である実施形態9、10、又は11に記載の改善されたプロセス。
【実施例】
【0077】
本開示は、以下の実施例でさらに定義される。実施例は、特定の実施形態を示しているが、例示するためにのみ提供されていることを理解すべきである。上記の考察及び実施例から、当業者は、本開示の本質的な特徴を確認し得、且つ本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な用途及び条件に適合するように様々な変更形態及び修正形態をなし得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「Comp.Ex.」は、比較例を意味し、「Ex.」は、実施例を意味し、「No.」は、番号を意味し;「%」は、パーセント又は百分率を意味し、「wt%」は、重量パーセントを意味し、「IV」は、固有粘度を意味し、「dL/g」は、デシリットル/グラムであり、「g」は、グラムであり、「mg」は、ミリグラムであり、「℃」は、摂氏度を意味し、「°F」は、華氏温度を意味し、「temp」は、温度を意味し、「min」は、分であり、「h」は、時間であり、「sec」は秒であり、「lb」は、ポンドであり、「kg」は、キログラムであり、「mm」は、ミリメートルであり、「m」は、メートルであり、「gpl」は、グラム/リットルであり、「m/min」は、メートル/分であり、「mol」は、モルであり、「kg」は、キログラムであり、「ppm」は、部/100万であり、「wt」は、重量であり、「dpf」は、デニール/フィラメントであり、「gpd」又は「g/d」は、グラム/デニールであり、「dtex」は、デシテックスを意味し、「dN/tex」は、「デシニュートン/テックスを意味し、「mL」は、ミリリットルを意味し、「IV」は、固有粘度を意味する。
【0079】
特に記載しない限り、全ての材料は、受け取ったまま使用した。
【0080】
捲縮収縮法による加熱後の捲縮収縮率(%CCa)の測定
本明細書に記載する方法に従って、加熱後の捲縮収縮率(Cca)の値を求めた。それぞれの実施例及び比較例の繊維を独立して、約0.1gpd(0.09dN/tex)の張力でかせリールを用いて約5000+/-5総デニール(5550dtex)のかせに成形した。次に、かせをヒートセットに使用するオーブンの内部に合わせるように、かせを二つに折って半分の長さにした。折り畳んだかせの中間部をフックに掛けて、70+/-1°F(21+/-1℃)及び65+/-2%の相対湿度で最低16時間コンディショニングした。次に、折り畳んだかせをその中間部のフックからラックにほぼ垂直に吊るし、かせの底部で折り畳んだかせの2つのループを介して1.5mg/den(1.35mg/dtex)の錘を吊るした。次に、錘をかけたかせを250°F(121℃)のオーブンで5分間加熱した後、ラック及びかせを取り出し、5分間、冷却し、その後、残りの試験のために1.5mg/デニール重量をかせに残し、70°F+/-1°F(21+/-1℃)及び65%+/-2%の相対湿度で最低2時間コンディショニングした。かせの長さを1mm単位で測定し、「Ca」として記録した。次に、1000gの錘をかせの底部に吊るして、平衡状態にして、かせの長さを1mm単位で測定し、「La」として記録した。加熱後の捲縮収縮率「CCa」値(%)を下記式により算出した:
%CCa=100x(La-Ca)/La
【0081】
固有粘度の決定
Viscoteck Y 501C Forced Flow Viscometer(Malvern Corporation,Houston Texas,USA)を用いて、固有粘度(IV)を求めた。0.15グラムのサンプルを30mLの溶媒(フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40重量%))及び撹拌棒が入った40mLのガラスバイアルで秤量した。次にサンプルを100℃に予備加熱したヒートブロックに入れ、加熱し30分間撹拌し、ブロックから取り出し、粘度計のオートサンプラーラックに入れる前に30~45分間冷却した。その後、ASTM法D5225-92(ポリマーの溶液粘度を示差粘度計を用いて測定する標準の試験方法)により、サンプルを分析した。
【0082】
ポリマーの調製
2種類のグレードのPTTホモポリマーペレットをE.I du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware USAから得た。ひとつのグレードは1.02dL/gのIVを有し、2番目のグレードは、0.96dL/gのIVを有した。PETホモポリマーペレットは、Sinopec Shanghai Petrochemical Company,Ltd.Shanghai,PRCから得て、0.50dl/gのIVを有した。PETホモポリマーペレットは、DuPont Crystar(登録商標)から得て、0.64dl/gのIVを有した。0.82dl/gのIVを有するコ-PETコポリマー(1.9モル%のイソフタル酸を含有)ペレットをNanYa Plastics Corporation,Livingston New Jersey,USAから得た。
【0083】
押出の前のIV0.96のPTTペレットとIV0.82のPETコポリマーペレットとの物理的ブレンド(「ごま塩状」(S&P)ブレンド)からポリマーブレンド組成物を作製した。紡糸中の押出プロセスで、これらのペレットブレンドを密接に混合した。別の方法として、いくつかの実施例においては、二軸押出機でPTTペレットとPETコポリマーペレットを配合し、ペレット化して、ごま塩状ブレンドをつくる必要なく、紡糸中に直接使用した。
【0084】
溶融紡糸の準備において、ペレットを窒素下、真空オーブンにおいて、25インチ水銀柱真空、温度120℃で15時間乾燥させた。乾燥したペレットを紡糸機の窒素パージした供給ホッパに直接移した。
【0085】
繊維の調製
二成分繊維の2つの成分を、サイド-バイ-サイド及び偏心シース/コア二成分繊維の紡糸に一般的に適用できるプロセス及び装置、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,641,916B1号明細書、米国特許第6,803,102号明細書、及び米国特許第7,615,173B2号明細書に開示されるプロセス及び装置を用いて、溶融紡糸した。
【0086】
実施例の二成分繊維の紡糸においては、0.5~40ポンド/時(0.23~18.1kg/時)の容量を有する一対のWerner&Pfleiderer28-mmの共回転二軸押出機内でポリマーを溶融した。本明細書でEast押出機と呼ばれる一方の押出機を用いて、PETホモポリマー(IV0.50及び0.64)ペレットを溶融し、本明細書でWest押出機と呼ばれる2番目の押出機を用いて、1)PTTペレットのみ、2)PTTペレットとコ-PETコポリマーペレットのごま塩状(「S&P」)ブレンド又は3)配合PTT/コ-PETペレットを溶融した。West押出機、紡糸ブロック及びEast押出機の温度を実施例に列挙する。それぞれの押出機は、凹型紡糸口金を含む紡糸ブロックを供給した。使用した紡糸口金は、34対の毛細管が円形に配置され、各対の毛細管間の内角が30度、毛細管の直径が0.64mm、及び毛細管の長さが4.24mmの後合体(post-coalescence)のサイドバイサイド型の二成分紡糸口金であった。
【0087】
紡糸口金を出た二成分フィラメントを直交流の急冷空気によって、公称20℃、面速0.5mm/秒で冷却した。次に、フィラメントを延伸比に応じて、約800~1200メートル/分で動作するデュアルフィードロールに進めた。紡糸口金と供給ロールの間で、仕上げ塗布器を用いて、フィラメント束に潤滑剤を塗布した。延伸に影響を与えるために、供給ロールを通常70℃まで加熱した。次に、フィラメント束を所望の延伸比に応じて、約3000~3600m/分の速度で作動するアニールロールに加速し、アニールロールの温度は、通常170℃であった。その後、アニールした二成分繊維を、Barmag SW6 600ワインダで巻き取る前に、室温で作動する2組のデュアルレットダウンロールに進ませた。繊維は、雪だるま型(長方形)の断面形状を有した。
【0088】
実施例1
PTT固有粘度(IV)のバリエーション
実施例1は、異なるIVを有するPTTペレットを使用して、加熱後の捲縮収縮率(CCa)の所望の値を有する二成分繊維を生成することを例示する。繊維を作製するのに使用するPTTペレットのIVは、1.25dl/g(1a)か又は1.02dl/g(1b)のいずれかであった。PETペレットのIVは、両方の場合に0.64dl/gであった。それぞれの実施例において、PTTのPETに対する重量比は、50/50であった。実施例1-aは、115デニールの34フィラメント繊維であった。実施例1-bは、75デニールの34フィラメント繊維であった。
【0089】
【0090】
実施例2
PTT/PET重量比のバリエーション
実施例2は、二成分繊維中のPTT成分とPET成分との重量比を変えると加熱後の捲縮収縮率(CCa)がどのように変わるかを例証する。二成分繊維は、34本のフィラメントを備える75デニールであった。表2においては、比較例A、B、及びCは、高いレベル、つまり30%を超えるCCaを示し、伸縮性や回復性が求められるアパレル製品により好適である。実施例2a、2b、及び2cは、カーペットを製造するのに好適である、加熱後に30%以下の捲縮収縮率を有する嵩高二成分繊維をもたらすプロセス条件を例証する。ワインダ速度は、比較例Aでは3495m/分、そして比較例B及びC、並びに実施例2a、2b、及び2cでは、3500m/分であった。
【0091】
【0092】
実施例3
一定のPTT/コ-PETブレンドを第一成分として用いる際の2成分の間の重量比
のバリエーション
表3は、二成分のうちの第一成分をPTTとコ-PETとの50/50ブレンドで作製し、第二成分をPETから作製した例を示す。実施例3a~eにおいては、50/50重量パーセントの「ごま塩状」ブレンドのIV0.96dl/gのPTTペレットと、IV0.82dl/gのコ-PETペレットとを一緒にペレットがランダムに分散するまで混合した。乾燥後、ペレット混合物をWest押出機内に供給した。IV0.50の乾燥したPETホモポリマーペレットをEast押出機に供給した。次に、第一成分が上述の50/50重量比のPTT/コ-PETブレンドを含み、第二成分がPETであり、2つの成分間の重量比を変えた二成分繊維を作製した。例えば、実施例3aは、第一成分(即ち、50/50のPTT/コ-PETブレンド)と第二成分(即ち、PET)間の重量比を70/30で作製した。表3の残りの実施例は、ポリマーは、同じままにし、2つの成分間の重量比を変えた。ワインダ速度は、これら全ての実施例で3500m/分であった。
【0093】
【0094】
実施例4
2成分間の重量比を固定した場合の、第一成分におけるPTT/コ-PETブレンド比のバリエーション
表4は、2成分のうち第一成分をPTTとコ-PETのブレンドで作製し、第二成分をPETから作製した例を示す。表3と対照的に、表4に示す例は、2成分間で一定の重量比50/50を保ちながら、第一成分内のPTTのコ-PETに対するブレンド比を変えることの効果を示す。表4において、実施例4a~4d及び4f~4g、並びに比較例Dは、IV0.96dl/gのPTTとIV0.82dl/gのコ-PETとの「ごま塩状ブレンド」(「S&P」)におけるペレット比を変えて、作製した。ランダムに分散するまでペレットを一緒に混合した。乾燥後、ペレット混合物をWest押出機内に供給した。IV0.50の乾燥したPETホモポリマーペレットをEast押出機に供給した。次に、第一成分が上述のPTT/コ-PETのブレンドを含み、第二成分(member)が、PETからなり、2つの成分(members)間の重量比が、50/50に固定されている二成分繊維を作製した。例えば、実施例4aにおいては、二成分うちの第一成分を10/90ブレンド比のPTT/コ-PETから作製し、二成分のうちの第二成分をPETで作製した。2つの成分間の重量比は、50/50であった。実施例4-eにおいては、PTT及びコ-PETペレットを二軸押出機内で予備配合し、急冷し、ペレット化して、使用前に再び乾燥させた。これは、成分をごま塩状ブレンドから作製した実施例4dとは対照的である。比較例Dは、加熱後の捲縮収縮率の値が他より高く、%CCa=43.1であり、それは、高いレベルの伸縮性のアパレル布地により適していることも明記するべきである。
【0095】
実施例4-aに関しては、ワインダ速度は、3475m/分であり、実施例4-b、4-c、4-d、4-e、4-f、4-g、及び比較例Dに関しては、ワインダ速度は、3500m/分であった。
【0096】
【表4】
実施例5
実施例2aのような自己嵩高型二成分繊維を用いるカーペットの製造
自己嵩高型二成分繊維を含むカーペットを、上述の実施例2aに記載したポリマー、ポリマーのIV、及び繊維重量比を用いて、1200デニール-120フィラメント(10dpf)で紡糸することができる。これらの二成分繊維は、実施例2aでの繊維よりも大きいデニール及びフィラメント数を有することとなる。得られる繊維が、30%以下の加熱後の捲縮収縮率を有するように、紡糸速度(即ち、延伸比)を調節することとなる。次に、このように作製した二成分繊維を同種類の第二の二成分繊維と標準の撚糸装置で撚り合わせることができる。二成分繊維の捲縮を十分に発現させて撚糸の撚りを設定する、Superba(登録商標)ヒートセット装置により、撚糸後、繊維を処理できる。次に、ヒートセット二成分糸を、標準のカーペットのタフティングマシンで、同じ組成の他のヒートセット糸と一緒にポリプロピレン不織布の裏地にタフティングして、ヒートセットした二成分の合撚り糸のみからなるタフティング布を得ることができる。次に、タフトした布帛をカーペット業界で使用される標準的な加工装置で加工して、カーペットの裏にラテックス製剤を塗布し、タフトした表面繊維をカーペット織物の裏面に固着することができる。その後、2次裏打ちを施し、カーペットの下面を保護する。次に、生機(未乾燥)のカーペットを標準の連続染色装置で処理した後、連続オーブン中で乾燥させて、水分を除去することができる。その後、完成したカーペットを現地で設置するために、大きなチューブに巻き取る。
【0097】
実施例6
実施例2aの通りであるが三葉の断面形状を有する自己嵩高型二成分繊維を用いるカーペット製品
自己嵩高型二成分繊維を含むカーペットを、上述の実施例2aに記載したポリマー、ポリマーのIV、及び繊維重量比を用いて、1200デニール-120フィラメント(10dpf)で紡糸することができる。カーペット製造に有用な任意の他の断面形状を選択できるが、サイドバイサイドの三葉断面形状を作製するために、紡糸口金オリフィスを選ぶ。これらの二成分繊維は、実施例2a及び三葉断面形状におけるよりも大きいデニール及びフィラメント数を有することとなる。得られる繊維が、30%以下の加熱後の捲縮収縮率を有するように、紡糸速度(即ち、延伸比)を調節することとなる。次に、このように作製した二成分繊維を同種類の第二の二成分繊維と標準の撚糸装置で撚り合わせることができる。二成分繊維の捲縮を十分に発現させて撚糸の撚りを設定する、Superba(登録商標)ヒートセット装置により、撚糸後、繊維を処理できる。次に、ヒートセット二成分糸を、標準のカーペットのタフティングマシンで、同じ組成の他のヒートセット糸と一緒にポリプロピレン不織布の裏地にタフティングして、ヒートセットした二成分の合撚り糸のみからなるタフティング布を得ることができる。次に、タフトした布帛をカーペット業界で使用される標準的な加工装置で加工して、カーペットの裏にラテックス製剤を塗布し、タフトした表面繊維をカーペット織物の裏面に固着することができる。その後、2次裏打ちを施し、カーペットの下面を保護する。次に、生機(未乾燥)のカーペットを標準の連続染色装置で処理した後、連続オーブン中で乾燥させて、水分を除去することができる。その後、完成したカーペットを現地で設置するために、大きなチューブに巻き取られる。
【国際調査報告】