(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】迅速な沈殿によるHMW DNAのキロベースサイズ選択
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230213BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230213BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230213BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N15/10 110Z
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535154
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020064508
(87)【国際公開番号】W WO2021119425
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522228816
【氏名又は名称】パシフィック バイオサイエンシス オブ カリフォルニア インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ケルビン ジェン ファン リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ダンカン キルバーン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR41
(57)【要約】
本明細書で提供するのは、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得る方法および所望するサイズ範囲の核酸を配列決定する方法である。この方法は、a)核酸含有試料と沈殿緩衝液を容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップを含む。この方法はまた、沈殿混合物中の核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップを含む。沈殿した核酸部分は、選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、残存する試料部分は、選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含む。この方法はまた、残存する試料部分から沈殿した核酸部分を分離するステップを含む。関連する組成物およびキットも本明細書で提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得る方法であって、
a.核酸含有試料と沈殿緩衝液とを容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、前記沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)を含む、ステップと、
b.前記沈殿混合物中の前記核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、前記沈殿した核酸部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、前記残存する試料部分が選択した前記サイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップと、
c.前記残存する試料部分から前記沈殿した核酸部分を分離して、それによって所望するサイズ範囲の前記単離核酸を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得る方法であって、
a.核酸含有試料と沈殿緩衝液とを容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、前記沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびFicollを含む、ステップと、
b.前記沈殿混合物中の前記核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、前記沈殿した核酸部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、前記残存する試料部分が選択した前記サイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップと、
c.前記残存する試料部分から前記沈殿した核酸部分を分離して、それによって所望するサイズ範囲の前記単離核酸を得るステップと
を含む方法。
【請求項3】
核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得る方法であって、
a.核酸含有試料と沈殿緩衝液とを容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、前記沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップと、
b.前記沈殿混合物中の前記核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、前記沈殿した核酸部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、前記残存する試料部分が選択した前記サイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップと、
c.前記残存する試料部分から前記沈殿した核酸部分を分離して、それによって前記所望するサイズ範囲の前記単離核酸を得るステップと
を含む方法。
【請求項4】
所望するサイズ範囲の核酸を配列決定する方法であって、
a.核酸含有試料と沈殿緩衝液とを容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、前記沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップと、
b.前記沈殿混合物中の前記核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、前記沈殿した核酸部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、前記残存する試料部分が選択した前記サイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップと、
c.前記残存する試料部分から前記沈殿した核酸部分を分離して、それによって前記所望するサイズ範囲の単離核酸を得るステップと、
d.前記所望するサイズ範囲の前記単離核酸を配列決定して、シークエンシングリードを生成し、それによって前記所望するサイズ範囲の前記核酸を配列決定するステップと
を含む方法。
【請求項5】
前記PVPが、MW10000、MW29000、MW40000、MW55000、MW360000、および、MW1300000、または、MW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記Ficollが、MW70000、および、MW400000、または、MW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記沈殿緩衝液中の前記PVPの濃度が、0.1%~40%重量/体積(w/v%)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記沈殿緩衝液中の前記Ficollの濃度が、0.1%~60%重量/体積(w/v%)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
選択された前記サイズカットオフ値が、50bp~1000キロベース(kb)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸含有試料中の核酸分子が、約1~2000ng/μLの間の濃度範囲を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択されたサイズカットオフ値を決定するために前記沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件を調製することを含み、前記条件が、PVP濃度、PVP分子量、Ficoll濃度、Ficoll MW、カオトロピック塩の有無、一価および/または二価塩の有無、塩の濃度および種類、アルコールの種類および濃度、ポリアミンの有無、変性剤の有無、その他の添加分子の有無、pH、沈殿/結合時間、沈殿/結合温度、沈殿/結合体積、遠心分離時間、遠心分離温度、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)が前記沈殿混合物を遠心分離することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)が前記沈殿混合物を室温(RT)で10000gで30分間遠心分離することを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩が、塩化グアニジニウム、塩酸グアニジニウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびヨウ化ナトリウムのうちの1つまたは複数を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記残存する試料部分が上清を含み、ステップc)が前記容器から前記上清を除去することをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
e.核酸ペレットをアルコール溶液で1回または複数回洗浄して、洗浄された核酸ペレットを生成するステップと、
f.洗浄された前記核酸ペレットを再懸濁緩衝液に再懸濁して、再懸濁した核酸を生成するステップと
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記再懸濁緩衝液がTE緩衝液または低EDTA TE緩衝液を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップa)の前に、前記核酸含有試料と結合緩衝液とを合わせて結合混合物を提供するステップ、前記結合混合物とナノ膜とを接触させるステップであり、前記ナノ膜が前記結合混合物中の核酸に結合して、結合された核酸を生成するステップ、および結合された前記核酸を、前記結合混合物の残存する成分から分離するステップをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記沈殿物混合物中で前記核酸とナノ膜とを接触させるステップであり、ステップa)、b)、c)、d)、および/またはe)の間に、前記ナノ膜が前記沈殿物混合物中の核酸に結合し、結合された核酸を生成するステップをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップe)の間または後に、前記再懸濁した核酸をナノ膜と接触させるステップであり、前記ナノ膜が前記再懸濁緩衝液中の核酸に結合して、結合した核酸を生成するステップ、および前記結合した核酸を、前記再懸濁緩衝液の残存する成分から分離するステップをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)の後で、前記所望するサイズ範囲の前記単離核酸を配列決定して、シークエンシングリードを生成するステップをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくともステップa)~c)を実施した後に得られる前記シークエンシングリードのN50が、ステップa)~c)を実施しない場合に得られるシークエンシングリードのN50に比べて増加している、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
核酸および沈殿緩衝液を含む組成物であって、前記沈殿緩衝液が、水、緩衝液、塩、および、ポリビニルピロリドン(PVP)ならびに/またはFicollを含み、前記核酸の一部が、選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含む核酸ペレットに存在しており、前記核酸の残存する部分が、前記選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含む上清中に存在している組成物。
【請求項24】
前記PVPが、MW10000、MW29000、MW40000、MW55000、MW360000、およびMW1300000、または、MW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記Ficollが、MW70000、およびMW400000、または、MW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を有する、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記沈殿緩衝液中の前記PVPの濃度が、0.1%~40%重量/体積(w/v%)である、請求項23から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記沈殿緩衝液中の前記Ficollの濃度が、0.1%~60%重量/体積(w/v%)である、請求項23から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記選択されたサイズカットオフ値が、50bp~1000キロベース(kb)である、請求項23から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得るためのキットであって、1つまたは複数の容器中に入った、緩衝液、塩、および、ポリビニルピロリドン(PVP)ならびに/またはFicollを含む、キット。
【請求項30】
水、前記緩衝液、前記塩、およびPVPおよび/またはFicollを含む沈殿緩衝液を含む単一の容器を含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
ナノ膜をさらに含む、請求項29または30に記載のキット。
【請求項32】
1つまたは複数の洗浄緩衝液、および/または、1つもしくは複数の溶出緩衝液をさらに含む、請求項29から31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
1つまたは複数のシークエンシング試薬をさらに含む、請求項29から32のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、全体の開示が参照として本明細書に組み込まれる2019年12月13日出願の米国特許仮出願第62/947696号の利益を主張し、その出願日に依存する。
【背景技術】
【0002】
近年、第3世代のシークエンシング技術は、ゲノムの構造-機能の理解および参照構築物の精度を激変させた。Pacific Biosciences(Menlo Park、CA)、Oxford Nanopore Technologies Limited(Oxford、United Kingdom)、10X Genomics(Pleasanton、CA)、およびBioNano Genomics(San Diego、CA)による変革的な進歩により、最高品質の高分子(HMW)DNAおよび高分子DNAを効率的に処理するための新技術の必要性が再浮上してきた。しかし、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、ゲルプラグ抽出、および透析精製等のHMW DNAを処理および分析するための技術の大部分は元々、分子生物学の黎明期に開発されたものであり、非常に時間がかかり面倒である。
【0003】
ほとんどのロングリードシークエンシング技術のライブラリー調製は、類似のワークフローに従う。まず、HMW DNA(50kb~Mb+)を単離しなければならない。次に、様々な酵素ステップを使用してシークエンシングのためにDNAを調製する。酵素処理中、サイズ選択を使用して所望するライブラリー生成物から小さなバックグラウンド分子を除去する。これは、ほぼBeckman Coulter AMPURE(商標)ビーズのみで行われる。AMPURE(商標)のサイズ選択カットオフ(100bp~1000bp)は、ほとんどのロングリードライブラリーには小さすぎる。したがって、追跡サイズ選択は、最大分子量のライブラリー生成物のみを単離することによってリード長を延長するSage ScienceのBLUEPIPPIN(商標)(Beverly、MA)等のPFGE装置を使用して実施することが多い。BLUEPIPPIN(商標)は、大きいDNA(100bp~50kb)をサイズ選択することができるが、これは時間がかかり(8.5時間)、長いPFGE工程の間にDNAも損傷を受け、その後の酵素的修復が必要となる。サイズ選択ステップは全て、比較的高濃度(>50ng/μl)で最適に行われなければならず、所望するシークエンシング長が増加するにつれて、一定のモル濃度を維持するためにDNAの質量濃度も増加させなければならない。したがって、100kbpから1Mbpの範囲のリードについては、質量濃度は、Illuminaシークエンシングに典型的な350~600bpの断片長を有する同じモル濃度の試料よりも200~3000倍高くすることが必要である。AMPURE(商標)およびBLUEPIPPIN(商標)両方の回収率は、高濃度では低下する。
【0004】
したがって、AMPURE(商標)およびPFGE精製の別々のステップを必要とせず、処理中に核酸に損傷を与えない、10kbを上回るサイズ範囲の大きな核酸分子の迅速なサイズ選択を可能にする技術が当業界では依然として所望されている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得るための方法を提供する。この方法は、a)核酸含有試料と沈殿緩衝液を容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップを含む。この方法はまた、b)核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、沈殿した部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、残存する試料部分が選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップを含む。さらに、この方法はまた、c)残存する試料部分から沈殿した核酸を分離して、それによって所望するサイズ範囲の単離核酸を得るステップを含む。
【0006】
一態様では、本開示は、所望するサイズ範囲の核酸を配列決定する方法を提供する。この方法は、a)核酸含有試料と沈殿緩衝液を容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップを含む。この方法はまた、b)沈殿混合物中の核酸をペレットにして、核酸ペレットおよび残存する試料部分を提供するステップであり、核酸ペレットが選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、残存する試料部分が選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップを含む。この方法はまた、c)残存する試料部分から核酸ペレットを分離して、所望するサイズ範囲の単離核酸を生成するステップを含む。さらに、この方法はまた、d)所望するサイズ範囲の単離核酸を配列決定してシークエンシングリードを生成し、それによって所望するサイズ範囲の核酸を配列決定するステップを含む。
【0007】
一態様では、本開示は、所望するサイズ範囲の核酸を配列決定する方法を提供する。この方法は、a)核酸含有試料と沈殿緩衝液を容器内で合わせて沈殿混合物を提供するステップであり、沈殿緩衝液が水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む、ステップを含む。本発明はまた、b)沈殿混合物中の核酸を沈殿させて、沈殿した核酸部分および残存する試料部分を提供するステップであり、沈殿した核酸部分が選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含み、残存する試料部分が選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含むステップを含む。この方法はまた、c)残存する試料部分から核酸ペレットを分離して、所望するサイズ範囲の単離核酸を生成するステップを含む。さらに、この方法はまた、シークエンシングライブラリー調製中の任意のステップで、例えば、エンドプレップ/dAテーリング反応またはアダプターライゲーション反応の後で、ステップa)~c)を実施することを含む。
【0008】
一部の実施形態では、PVPは、MW10000、MW29000、MW40000、MW55000、MW360000、MW1300000、またはMW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿緩衝液中のPVPの濃度は、0.01%~40%重量/体積(w/v%)である。一部の実施形態では、Ficollは、70000、400000、またはMW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿緩衝液中のFicollの濃度は、0.01%~60%重量/体積(w/v%)である。一部の実施形態では、選択されたサイズカットオフ値は、50bp~1000キロベース(kb)である。一部の実施形態では、核酸含有試料中の核酸分子は、約1~2000ng/μLの間の濃度範囲を含む。一部の実施形態では、塩は、塩化グアニジニウム、塩酸グアニジニウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびヨウ化ナトリウムのうちの1つまたは複数を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示した方法は、選択されたサイズカットオフ値を決定するために、沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件を調整することを含む。これらの実施形態では、条件は、典型的には、PVP濃度、PVP分子量、Ficoll濃度、Ficoll分子量、カオトロピック塩の有無、一価および/または二価塩の有無、塩の濃度および種類、アルコールの種類および濃度、ポリアミンの有無、変性剤の有無、その他の添加分子の有無、pH、沈殿/結合時間、沈殿/結合温度、沈殿/結合体積、遠心分離時間、遠心分離温度、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書[0005]に記載のステップb)は、沈殿混合物を遠心分離することを含む。典型的には、ステップb)は、室温(RT)で10000gで30分間沈殿混合物を遠心分離することを含む。ある特定の実施形態では、残存する試料部分は上清を含み、ステップc)は容器から上清を除去することを含む。一部の実施形態では、この方法は、e)核酸ペレットをアルコール溶液で1回または複数回洗浄して、洗浄した核酸ペレットを生成するステップ、およびf)洗浄した核酸ペレットを再懸濁緩衝液に再懸濁して、再懸濁した核酸を生成するステップをさらに含む。一部のこれらの実施形態では、再懸濁緩衝液は、TE緩衝液または低EDTA TE緩衝液を含む。
【0011】
一部の実施形態では、この方法は、本明細書[0005]に記載のステップa)の前に、核酸含有試料と結合緩衝液を合わせて結合混合物を提供するステップ、結合混合物とナノ膜を接触させるステップであり、ナノ膜が結合混合物中の核酸に結合して、結合した核酸を生成するステップ、および結合した核酸を結合混合物の残存する成分から分離するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、この方法は、沈殿物混合物中で核酸とナノ膜を接触させるステップであり、ナノ膜が沈殿物混合物中の核酸に結合し、結合した核酸を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、本明細書[0005]に記載のステップc)の間または後に、再懸濁した核酸をナノ膜と接触させるステップであり、ナノ膜が再懸濁緩衝液中の核酸に結合して、結合した核酸を生成するステップ、および結合した核酸を再懸濁緩衝液の残存する成分から分離するステップをさらに含む。
【0012】
一部の実施形態では、この方法は、本明細書[0005]に記載のステップc)の後で、所望するサイズ範囲の単離核酸を配列決定して、シークエンシングリードを生成するステップをさらに含む。典型的には、少なくともステップa)~c)を実施した後に得られるシークエンシングリードのN50は、ステップa)~c)を実施しない場合に得られるシークエンシングリードのN50に比べて増加している。
【0013】
一態様では、本開示は、全核酸試料からRNAを除去する方法を提供する。この態様では、本明細書[0005]のステップa)~c)のための投入核酸は、RNase処理を行っていない生体試料から抽出され、したがってDNAおよびRNAの両方を含む。抽出されたDNAおよびRNAのサイズ分布は著しく異なり、RNAの分布は平均してDNAよりも小さい。したがって、本明細書[0005]に記載のステップにおけるサイズ選択ではまた、RNAまたはDNAについて選択する。本明細書[0005]に記載のステップb)のペレットに含有される核酸はDNA含有量が豊富になり、残存する試料部分に含有される核酸はRNA含有量が豊富になる。本明細書[0005]に記載のステップc)において残存する試料部分から核酸ペレットを分離することによって、さらなる分析に使用するためのDNAの豊富な画分およびRNAの豊富な画分が得られる。
【0014】
別の態様では、DNAおよびRNAの分離は、サイズの違いに加えて、2本鎖核酸と1本鎖核酸との間の溶解度の違いを利用することによって実施することができる。
【0015】
一態様では、本開示は、DNAはそのままで、核酸試料から不純物を除去する方法を提供する。本明細書[0005]で記載した方法では可溶性不純物は沈殿しないため、沈殿した核酸から残存する試料を除去するとこれらの不純物も除去される。UV分光法による260/230比が、サイズ選択後の純粋なDNAで予測される比に近ければ、不純物が除去されたことがわかる。
【0016】
別の態様では、本開示は、核酸および沈殿緩衝液を含む組成物を提供する。沈殿緩衝液は、水、緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む。核酸の一部は、選択したサイズカットオフ値を上回る核酸分子を優先的に含む核酸ペレット中に存在しており、核酸の残存する部分は、選択したサイズカットオフ値を下回る核酸分子を優先的に含む上清中に存在している。一部の実施形態では、PVPは、MW10000、MW29000、MW40000、MW55000、MW360000、およびMW1300000、またはMW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿緩衝液中のPVPの濃度は、0.1%~40%重量/体積(w/v%)である。一部の実施形態では、Ficollは、MW70000、およびMW400000、またはMW5000からMW5000000の間のその他の分子量からなる群から選択される分子量(MW)を含む。ある特定の実施形態では、沈殿緩衝液中のFicollの濃度は、0.01%~40%重量/体積(w/v%)である。一部の実施形態では、選択されたサイズカットオフ値は、1~100キロベース(kb)である。
【0017】
別の態様では、本開示は、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得るためのキットを提供する。このキットは、1つまたは複数の容器に入った緩衝液、塩、およびポリビニルピロリドン(PVP)および/またはFicollを含む。一部の実施形態では、このキットは、水、緩衝液、塩、およびPVPおよび/またはFicollを含む沈殿緩衝液を含む単一の容器を含む。ある特定の実施形態では、このキットはナノ膜をさらに含む。一部の実施形態では、キットは1つまたは複数の洗浄緩衝液および/または1つまたは複数の溶出緩衝液をさらに含む。ある特定の実施形態では、キットは1つまたは複数のシークエンシング試薬をさらに含む。
【0018】
別の態様では、本開示は、異なるサイズ範囲を有する異なるキットと共に、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離核酸を得るための一連のキットを提供する。このキットは、1)5キロベース未満のDNAをほぼ完全に除去し、10キロベースまでのDNAを徐々に減少させる「ショートリードエリミネーターXS」キット、2)10キロベース未満のDNAをほぼ完全に除去し、25キロベースまでのDNAを徐々に減少させる「ショートリードエリミネーター」キット、3)10キロベース未満のDNAをほぼ完全に除去し、40キロベースまでのDNAを徐々に減少させる「ショートリードエリミネーターXL」キットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは、本明細書で記載したようなサイズ選択法を使用して、実施例1で記載したような1kb plusラダーを添加したλDNAのサイズ選択精製を示した図である。核酸サイズ選択法は、ポリビニルピロリドン(PVP)による沈殿を使用して実施した。PVPは、核酸沈殿を長さによって調整するための分子クラウダーとして作用する。
【
図1B】
図1Bは、PVP濃度を変化させることによって、1000bp~10kbまで調整することができるカットオフサイズ(10%以下の回収率を有する最高Mwバンドとして定義される)を示す。実施例1を参照のこと。
【
図2】高分子(HMW)ゲノムDNA(gDNA)のサイズ選択の手法例を示した図である。
【
図3A】実施例2で記載したように、ショートリードエリミネーター(SRE)キットを使用してサイズ選択されたHMW gDNAの1%アガロースゲル分離の画像を示した図である。サイジングカットオフは、添加したラダー(Thermo Scientific GeneRuler 1kb Plus、#SM1334)を使用して実証した。投入したのは、NANOBIND(商標)CBB BigDNAキット+ラダー20ng/μLを使用してGM12878細胞から抽出したgDNA 50ng/μLであった。
【
図3B】Agilent TapeStation 4200を使用して分析した
図3Aの試料のゲル分離の画像を示した図である。
【
図4】NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットのみで、または実施例4で記載したように、NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットをショートリードエリミネーター(SRE)キットと組み合わせてDNA試料を調製した、Oxford Nanopore MinION/GridIONシークエンシングの結果を示した図である。x軸はキロベース(kb)のリード長を示し、一方y軸は正規化したデータを示す。
【
図5】Qiagen Puregeneキットのみで、または実施例5で記載したように、Qiagen Puregeneキットをショートリードエリミネーター(SRE)キットと組み合わせてDNA試料を調製した、Oxford Nanopore PromethIONシークエンシングの結果を示した図である。x軸はキロベース(kb)のリード長を示し、一方y軸は正規化したデータを示す。
【
図6】実施例6で記載したように、SQK-LSK109ライブラリー調製における反応をクリーンアップするために、AMPureビーズの代わりにショートリードエリミネーター(SRE)キットを使用したOxford Nanopore MinIONシークエンシングの結果を示す図である。x軸はキロベース(kb)のリード長を示し、一方y軸は正規化したデータを示す。
【
図7】実施例7で記載したように、大腸菌細胞から抽出した核酸試料のDNAおよびRNA画分の回収率%を示す図である。SRE XSの場合、RNAの94%はペレット化されなかったため、遠心分離後に沈殿緩衝液をペレットから分離すると除去され、DNAが豊富な画分が残った。
【
図8】本明細書[0005]に記載したような沈殿法を使用して、実施例13で記載したように1kb plusラダーを添加したgDNAのサイズ選択精製を示した図である。サイズ選択法は、Ficollによる沈殿を使用して実施した。Ficollは、核酸沈殿を長さによって調整するための分子クラウダーとして作用する。20%FicollおよびNaCl 0.75Mでの沈殿によって、1.5~3kbを上回るDNAが回収される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、PVPおよび/またはFicoll、塩、および緩衝液を含む沈殿緩衝液を使用した、核酸含有試料からの核酸分子の迅速なサイズ選択の方法を対象とする。
【0021】
次世代のシークエンシング(NGS)は、研究および臨床応用の両方によって驚異的な成長を遂げている。第3世代のシークエンシング技術は、ヒト参照ゲノムの品質を継続的に高めながら、増加し続ける植物、動物および微生物の数々のデノボ配列のために使用されている。NGSはまた、遺伝的多様性、メタゲノム解析、およびエピジェネティクス等の基本的な生物学をより理解するために使用されている。しかし、液体細胞診、非侵襲性出生前検査、および感染症検査等の臨床検査の成熟が、近い将来に主要な原動力になる可能性がある。
【0022】
サイズ選択精製は、多くのNGSライブラリー調製の重要な部分である。サイズ選択ステップは、ライブラリー調製を進める前に、特定のサイズの分子を単離するために使用されることが多い。あるいは、サイズ選択ステップは、シークエンシングの直前に特定のサイズのライブラリー分子のみを単離するために使用することもできる。ロングリードNGSでは、過剰な短いDNAが平均リード長を損ない、アセンブリーの品質または構造変種の同定を低下させる。
【0023】
本明細書で記載したように、ショートリードエリミネーター(SRE)キットに含まれる沈殿緩衝液等のPVPおよび/またはFicollを含有する沈殿緩衝液を使用するサイズ選択工程は、1000bp~100kbの間のサイズ範囲の核酸の調整可能なカットオフをもたらす。サイズ選択工程を使用して、カットオフ未満の核酸分子を排除し、例えば、シークエンシングリード長を延長するためのシークエンシングライブラリーを得ることができる。本明細書で以下に記載したように、特定のポリマーを使用して、所望する長いDNAから所望しない短いDNAを分離して、ライブラリー調製のための投入物として使用し、時間がかかる面倒なPFGE分離を非常に迅速な沈殿、洗浄、および溶出工程に置き換えることによって、ライブラリー調製全体を加速することができる。特定のポリマーのみを使用して、高いサイズカットオフ、迅速な処理時間、および高い回収率を促進することができる。例えば、100bp~2000kbの範囲に亘る高い精製効率(例えば、>99%)は、高MW DNA(例えば、50kb~1Mb+)を高回収率(例えば、>90%)で迅速に、例えば、<1時間の工程で実現することができる。
【0024】
本明細書でまた記載したように、タンパク質は核酸と共精製することができる。ほとんどの精製方法の目的は、反応混合物を取り出し、これらに限定されないが、酵素、緩衝液、およびdNTPを含むその他の試薬全てを除去しながら、サイズ選択された核酸画分のみを回収することである。本明細書で記載したように、一部の実施形態では、核酸および酵素の両方が、例えば、共精製において試薬の残部から単離され得るように、方法は核酸およびタンパク質を一緒に精製することを可能にする。サイズカットオフ値は、下回ると核酸分子が効率的に回収されず、上回ると核酸分子が効率的に回収される閾値を示す。カットオフサイズは、回収が低サイズ回収と高サイズ回収の限界挙動の間の半分である核酸のサイズと定義することができる。例えば、低分子量の核酸分子(例えば、10bp)が効率0%で回収され、高分子量の核酸分子(例えば、50kbp)が効率100%で回収される場合、カットオフサイズは、回収率が50%である分子量である。
【0025】
サイズカットオフ値はまた、上回ると核酸分子が効率的に回収されず、下回ると核酸分子が効率的に回収される閾値を示すことができる。カットオフサイズは、回収が低サイズ回収と高サイズ回収の限界挙動の間の半分である核酸のサイズと定義することができる。例えば、低分子量の核酸分子(例えば、10bp)が効率100%で回収され、高分子量の核酸分子(例えば、50kbp)が効率0%で回収される場合、カットオフサイズは、回収率が50%である分子量である。
【0026】
本明細書で使用したように、用語「核酸」または「核酸分子」は同義に使用され、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」を含む。この用語は、1本鎖または2本鎖であってもよく、天然材料から合成されるかまたは得られ(例えば、単離および/または精製され)ていてもよく、天然、非天然、または改変されたヌクレオチドを含有することができ、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだされるリン酸ジエステル結合の代わりに、ホスホロアミデート結合またはホスホロチオエート結合等の天然、非天然、または改変されたヌクレオチド間結合を含有することができる、DNA、RNA、またはcDNAのポリマーをさらに含む。この用語は、これらに限定されないが、蛍光色素、消光剤、メチル化塩基を含むその他の一般的な核酸修飾を有する核酸をさらに含む。処理される核酸は、ゲノムDNA(gDNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、プラスミドDNA(pDNA)、無細胞DNA(cfDNA)、環状核酸、無細胞RNA(cfRNA)、マイクロRNA、リボソームRNA(rRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ノンコーディングRNA(ncRNA)として示すことができる。高分子DNAは、典型的には20kb長より大きい、しばしば数百kb長(最高100kb、200kb、300kb、500kb等)、時々Mb長(最高1Mb、2Mb、5Mb+等)である大きな断片化されていないDNAである。
【0027】
本明細書で使用したように、DNAサイズに関して使用したとき、用語「所望するサイズ範囲」は、記載した手法のステップまたはサイズ選択工程全体への投入物に含有される一部のDNAサイズである、一連のDNAサイズを示すために使用される。一例として、投入DNA試料は、10bpと500000bpとの間の長さのDNAを含有するライブラリー調製生成物であり、試料中には10bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在していない。その他のサイズは全て、等しい数で表される。この例で所望されるサイズ範囲は、10000bpのカットオフサイズを上回るDNA分子全てである。したがって、所望するサイズ範囲は、10000bpと500000bpとの間の長さのDNAを含有する投入分子の一部を含み、所望するサイズ範囲が10000bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在していない。別の例として、限界は、DNAサイズより大きいかまたは小さいDNAのパーセンテージ回収を用いて定義される。上記と同じ投入試料、10bpと500000bpとの間の長さのDNAでは、試料中には10bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在していない。その他のサイズは全て、等しい数で表される。所望するサイズ範囲は、10000bpを上回る長さのDNA分子の平均回収率が90%で、10000bpより短い長さのDNA分子の平均回収率が10%であるような回収を含む。こうして、長いDNA分子が優先的に回収される。
【0028】
DNA含有試料等の核酸含有試料は、様々なサイズ(長さ)のDNA分子等の核酸を含む。本開示による方法は、1本鎖および2本鎖核酸のサイズ選択を可能にする。典型的には、核酸分子は、直鎖状の2本鎖DNA分子である。しかし、核酸分子はまた、1本鎖DNA分子、1本鎖RNA分子、または2本鎖RNA分子であってもよい。核酸含有試料は、核酸処理中に得られる生物学的試料および人工的試料を含む、様々な起源であってもよい。生物学的試料は、血液、血漿、血清、尿、糞便、痰等の体液、頬側スワブ、髪、歯、骨、または培養細胞、組織および固定された組織等のその他の臨床試料を含むことができる。一部の実施形態では、本発明の方法は、大きなgDNAから小さなcfDNAを含有する体液試料を精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、大腸菌細菌培養物等の細菌培養物の大きなgDNAから小さなプラスミドDNAを精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、様々なサイズのプラスミドを精製するために使用してもよい。一部の実施形態では、本発明の方法は、プラスミド、コスミド、フォスミド、酵母の人工的染色体、および細菌の人工的染色体等の様々なサイズの構築物を精製するために使用してもよい。一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、抽出核酸、または、例えば、剪断(shearing)もしくは酵素反応によってさらに処理された抽出核酸の試料である。一部の実施形態では、核酸試料は、シークエンシングライブラリー調製物である。一部の実施形態では、本発明の方法は、様々なサイズのRNA種を含有する全RNA試料を精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、全RNA試料から小RNA画分を単離するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、全RNA試料から大きなrRNAまたはmRNAを単離するために使用される。
【0029】
一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、DNA、例えば、剪断したDNA等の断片化した核酸を含む。その他の実施形態によれば、核酸含有試料は、剪断されたゲノムDNAまたは剪断されたcDNAを含む。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、針剪断、音響剪断、超音波剪断、酵素消化、水力学的剪断、およびトランスポサーゼ媒介断片化等のサイズ剪断手順から得られる溶液である。このような核酸含有試料は、様々なサイズの核酸断片を含む。特定のサイズまたはサイズ範囲のDNAのみを得ることが所望されることもある。前記断片化した核酸は、末端修復して平滑末端を有する核酸断片をもたらすことができる。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、様々なサイズの直鎖状平滑末端DNA断片を含む。
【0030】
ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は酵素反応後に得られる。開示の方法を使用して処理することができる核酸含有試料をもたらす酵素反応の例は、これらに限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応、ライゲーション反応、損傷修復、末端修復、ポリ-Aテーリング、逆転写、ヌクレアーゼ消化、転位、メチル化、転写、ループ媒介等温増幅、本体標識、および末端標識を含む。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、増幅手順から得られる溶液で、増幅生成物、例えば、PCR生成物を含む。ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は、アダプターライゲーションステップの結果として得られるアダプターライゲーション試料である。このような酵素反応では、未使用の反応物、酵素、反応副生成物、および反応緩衝液から所望する酵素反応生成物を精製することが望まれることがある。酵素反応生成物は、反応副生成物および未使用の反応物からサイズによって区別されることが多い。一部の実施形態では、大きなPCR増幅生成物は、小さなPCRプライマー、dNTP、およびプライマー二量体から精製される。その他の実施形態では、大きなライゲーション生成物、例えば、gDNA-アダプターは、小さなライゲーション前の投入物、例えば、ライゲーションしていないアダプターから精製される。
【0031】
一部の実施形態では、酵素反応はシークエンシングのためのライブラリー調製の一連のステップのうちの1つのステップである。シークエンシング反応のための典型的なライブラリー調製は、アダプターライゲーションを含む。典型的な実施形態によれば、アダプターは修飾または非修飾核酸オリゴマーである。アダプターはまた、酵素、その他のタンパク質、または、限定されないが、ビオチンを含むその他の非核酸分子と複合体化することができる。アダプターは、1本鎖、2本鎖であってもよく、ヘアピンを含有していてもよく、平滑末端または5′もしくは3′末端に突出する1つもしくは複数のヌクレオチドを有していてもよい。1本鎖アダプターは、試料核酸の5′または3′末端または5′および3′両末端に連結することができる。ヘアピンを有するものを含む2本鎖アダプターは、平滑末端または付着末端ライゲーションのいずれかによって連結することができる。
【0032】
ある特定の実施形態によれば、ヘアピンアダプターは、ポリメラーゼで促進されるプライマー伸長を利用して試料DNA分子に結合することができる。
【0033】
ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は、シークエンシングライブラリーの調製中、特に、第3世代シークエンシングライブラリーの調製中に得られる。典型的な実施形態によれば、試料中の核酸分子は、5′または3′または3′および5′両末端に連結した核酸アダプター(本明細書で定義したアダプター等)を有する。したがって、試料は、連結していない試料核酸分子、連結した試料核酸分子、連結していないアダプター、連結したアダプター二量体、三量体、およびアダプターのその他の組み合わせ、ならびに、限定されないが、緩衝液種および酵素を含むその他の試薬を含んでいてもよい。本開示による方法は、5′および/または3′にアダプターが隣接しているDNA分子等の2本鎖または1本鎖核酸のサイズ選択的精製、それによるそれぞれの混入物の効率的除去を可能にする。
【0034】
ある特定の実施形態によれば、本開示による方法は、保護核酸分子を残すために未保護核酸分子を消化した後に使用される。消化には、これらに限定されないが、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVII、ラムダエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼVIII、T5エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼIが含まれる。
【0035】
ある特定の実施形態によれば、この方法は、特定のサイズまたはサイズ範囲のライブラリー分子のみを選択するために、ライブラリー(最終ライブラリー分子)の完成後に使用される。その他の実施形態では、この方法は、特定のサイズまたはサイズ範囲の核酸分子のみがライブラリー調製に投入されるように、核酸開始材料に使用される。その他の実施形態では、サイズ選択はライブラリー調製の増幅ステップ後に実施される。その他の実施形態では、サイズ選択は、これら限定されないが、ライブラリー調製中のポリ-Aテーリング、末端修復、ヌクレアーゼ消化、損傷修復、アダプターライゲーションおよび/または転位ステップの後に実施される。
【0036】
ショートリードエリミネーターサイズ選択
ある特定の実施形態では、ショートリードエリミネーターキットにおける沈殿緩衝液等の本開示の沈殿緩衝液は、大きな反応生成物(50bp(もしくはnt)から1000kbの範囲)の調整可能なカットオフを実現するために、核酸含有試料から取り出すための大きな核酸断片を選択することができる(SREサイズ選択)。ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用して得られた核酸の所望するサイズ範囲は、約1000塩基対(bp)以上(2本鎖核酸について)もしくは1000ヌクレオチド(nt)以上(1本鎖核酸について)、または≧約50bp(もしくはnt)、≧100bp(もしくはnt)、≧200bp(もしくはnt)、≧300bp(もしくはnt)、≧400bp(もしくはnt)、≧500bp(もしくはnt)、≧600bp(もしくはnt)、≧700bp(もしくはnt)、≧800bp(もしくはnt)、≧900bp(もしくはnt)、≧1000bp(もしくはnt)、≧1500bp(もしくはnt)、≧2000bp(もしくはnt)、≧3000bp(もしくはnt)、≧5000bp(もしくはnt)、≧7000bp(もしくはnt)、≧8000bp(もしくはnt)、≧9000bp(もしくはnt)、≧10000bp(もしくはnt)、≧20000bp(もしくはnt)、≧30000bp(もしくはnt)、≧40000bp(もしくはnt)、≧50000bp(もしくはnt)、≧60000bp(もしくはnt)、≧70000bp(もしくはnt)、≧80000bp(もしくはnt)、≧90000bp(もしくはnt)、≧100000bp(もしくはnt)で、≧200000bp(もしくはnt)、≧500000bp(もしくはnt)、または≧1000000bp(もしくはnt)である(本明細書では「SREサイズ選択」とも称する)。
【0037】
一部の実施形態では、SREサイズ選択工程にはPVPおよび/またはFicollを組み込む。本発明の方法で使用するために適切なPVP/Ficoll分子は、これらに限定されないが、PVP(Mw10000)、PVP(Mw29000)、PVP(Mw40000)、PVP(Mw55000)、PVP(Mw360000)、PVP(Mw1300000)等のポリビニルピロリドン(PVP)、および/またはFicoll(Mw70000)、Ficoll(Mw400000)等のFicollを含む。PVPのMWは、5000から5000000であってもよい。FicollのMWは、5000から5000000であってもよい。PVPおよび/またはFicollの濃度は、約0%と約60%との間で調節することができる。
【0038】
一部の実施形態では、サイズ選択沈殿ステップを使用する。この方法は、以下のように例示することができる:1)これらに限定されないが、水、緩衝液、塩、およびPVP(Mw360000)を含有する沈殿緩衝液を核酸含有試料に添加するステップ、2)試料緩衝液を室温で10000gで30分間遠心分離するステップであり、このステップの間に、核酸がチューブの底にペレットになるステップ、3)上清をチューブから除去するステップ、4)70%アルコールをチューブに添加し、室温で10000gで2分間遠心分離するステップ、5)70%アルコール上清をチューブから除去し、核酸ペレットを溶出緩衝液に再懸濁するステップ。
【0039】
ある特定の実施形態では、SREサイズ選択工程は、本明細書で記載した沈殿ステップにおけるPVPおよび/またはFicollの量(例えば、0.1%~40%)および/または種類を最適化することによって調整する。PVPおよびFicollの組み合わせも使用して、サイズ選択特性を微調整することができる。この組み合わせは、異なるMWのPVPおよび/または異なるMWのFicollの混合物を含むことができる。
【0040】
ある特定の実施形態では、SREサイズ選択工程は、例えば、10mMと4Mとの間でNaCl濃度を最適化することによって調整する。ある特定の実施形態では、SREサイズ選択工程は、沈殿結合時間(2~60分)、温度(4~50℃)、および/またはそれらの組み合わせを最適化することによって調整する。
【0041】
一部の実施形態では、SRE選択工程のカットオフ値は、以下の沈殿条件:i)pH、ii)塩濃度、iii)カオトロピック塩の有無、iv)1価および/または2価塩の有無、v)アルコールの種類および濃度、vi)分子クラウダーの濃度および分子量、vii)分子クラウダーの種類、viii)沈殿時間、ix)沈殿中の温度、x)変性剤の有無、xi)その他の分子種の有無、xii)緩衝液体積、ならびにxiii)それらの組み合わせ、の少なくとも1つによって調整する。
【0042】
ある特定の実施形態では、分子クラウダーを使用してサイズ選択のカットオフ値を調整する。分子クラウダーは、分子クラウダーおよび問題の分子種の両方の濃度およびサイズに強く依存するような方法で、分子種の溶液自由エネルギーを変化させる。これによって、核酸のサイズに強く依存されるような方法で、分子クラウダーを使用して核酸の溶解度を調整することができる。例えば、ある特定の実施形態では、高パーセンテージのPVP等の分子クラウダーは排除体積効果を増大させ、したがって、小さな分子がますます溶液から排出される。別の例では、高分子量の分子クラウダー、例えば、PVP360000を使用して分子クラウディング効果を高分子に移動させ、優先的に大きなサイズの核酸を沈殿させ、凝集させることができる。
【0043】
高域、低域および帯域精製
ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用してサイジングカットオフよりも大きい(すなわち、高域の)所望するサイズ範囲の核酸を回収することができる。例えば、高域方法を本明細書で説明する。
【0044】
その他の実施形態では、本発明の方法を使用してサイジングカットオフよりも小さい(すなわち、低域)核酸を回収することができる。低域精製は、典型的には、以下の順番に従う:1)これらに限定されないが、水、緩衝液、塩、およびPVP(Mw360000)を含有する沈殿緩衝液を核酸含有試料に添加するステップ、2)試料緩衝液を室温で10000×gで30分間遠心分離するステップであり、このステップの間に、カットオフ値を上回るサイズの核酸がチューブの底にペレットになり、カットオフ値を下回るサイズの核酸が上清に残存したままになるステップ、3)上清をチューブから除去するステップ、4)例えば、より低いカットオフで再沈殿するか、またはその他の何らかの方法によってカットオフを上回る核酸を上清から精製することができるステップ。
【0045】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の連続適用を使用して、最小と最大の間のDNAサイズのバンド(すなわち、帯域)の選択を可能にすることができる。こうして、カットオフC1を上回るサイズの核酸分子をペレットにして、C1より小さい核酸分子を沈殿緩衝液の溶液中に残すような結合条件を使用する。次に、沈殿緩衝液を別の微量遠心分離管に移し、例えば、PVP含量が高いさらなる緩衝液を元の緩衝液に添加する。次に、例えば、10000×gで30分間遠心分離する。緩衝液条件は、カットオフC2を上回るサイズの核酸分子が沈殿してペレットになるようにする。次に、この方法では、本開示の別のところで記載したように、洗浄および溶出が続く。最終的に回収された核酸分子は、C2の最小値とC1の最大値の間の域中で選択される。
【0046】
ある特定の実施形態では、精製は、高域画分および低域画分の両方が回収されるように進めることができる。高域方法は本明細書で記載した通りに従う。カットオフを下回るサイズの核酸を含有する沈殿緩衝液を取り出して、再精製して、カットオフサイズを下回るサイズの核酸分子を含有する核酸ストックを得る。
【0047】
シークエンシングライブラリー
本開示による方法は、シークエンシングライブラリー、例えば、第3世代シークエンシングライブラリーの場合のサイズ選択に特に適切である。第3世代シークエンシングに適切なシークエンシングライブラリーは、例えば、当業界で公知の方法を使用して調製することができる。このようなロングリードシークエンシング技術、例えば、数万またはさらに数十万の塩基対の配列のためのライブラリー調製は、類似のワークフローに従う。典型的には、高MW(50kb~Mb+)DNAを単離する。次に、この明細書に記載したようなDNAサイズ選択を実施して、カットオフ長を下回る分子を除去し、それによって、シークエンシングデータにおけるロングリードの表現が増強される。次に、このサイズ選択されたDNAは、典型的には、ライゲーション、末端修復、および標識等の様々な酵素反応を使用して、シークエンシングのために調製される。酵素処理中に、この明細書に記載されたようなサイズ選択は、ライブラリー生成物からプライマー二量体、酵素、およびアダプターオリゴ等のDNA分子のサイズ画分(例えば、50ntもしくはbpと1000000ntもしくはbpとの間の調整可能なカットオフ値を有するサイズ画分)を除去するために実施することができる。
【0048】
ある特定の実施形態では、シークエンシングライブラリーの調製は、核酸含有試料からの複数の2本鎖直鎖状DNA断片作製を含むことが多い。例えば、ゲノムDNAまたはcDNA等のDNAは、その後のシークエンシングに適切なDNA断片をもたらすために、音波処理、水力剪断、超音波、噴霧、または酵素的断片化等の剪断によって断片化することができる。断片の長さは、その後シークエンシングのために使用されるシークエンシングプラットフォームのシークエンシング能力に基づいて選択することができる。本開示の一部の実施形態では、大きな核酸分子、例えば、50bpから1000kbpの間の調整可能なカットオフ値を有する核酸分子を選択するために、本明細書で記載した方法を使用してライブラリーの調製中に大きな核酸断片を単離のために選択する。
【実施例】
【0049】
実施例1
この実施例では、1000から10000bpの間の調整可能なカットオフサイズを上回る2本鎖DNAを回収する。カットオフサイズは、10%以下の回収率を有する最高のMWバンドと定義される。この手法は、第3世代のロングリードシークエンシングに有用で、時間および試料を消費するBLUE PIPPIN(商標)サイズ選択機器の代わりに使用することができる。
【0050】
この実施例では、投入試料は、1kbp plusラダー(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号SM1331)100ng/μlおよびThermo Fisher社から購入したバクテリオファージラムダの48502bp直鎖状DNA200ng/μlを含有する混合物25μlであった。
【0051】
5M NaCl 7.5μlおよび2×PVP(Mw=360000)25μlの溶液を試料に添加し、タッピングによって混合した。2×PVP溶液は、10、8、6、4、3.5、および3%wt/volのポリビニルピロリドン(Mw=360000)(Sigma Aldrich製品番号PVP360-100G)溶液であった。得られた溶液は、室温で8000gで30分間遠心分離した。上清を除去すると、DNAペレットが残った。次に、70%EtOH 200μlをチューブに添加して、室温で8000gで2分間遠心分離した。EtOH上清は除去して、微量遠心分離管を室温で2分間放置することによってDNAペレットを乾燥させた。ペレットを溶出緩衝液(10mM Tris-HCl、pH=9、EDTA 0.1mM)25μlに再懸濁し、間歇的にタッピングしながら室温で10分間インキュベートした。
【0052】
図1から明らかなように、ペレット形成緩衝液のPVP濃度が変化するにつれて、長さに依存して回収率に顕著な違いが生じる。DNAカットオフ(10%以下の回収率を有する最高のMwバンドとして定義する)は、緩衝液中のPVP濃度を5%から1.5%に減少させるにつれて、1000bpから10000bpに変化する。
【0053】
高いサイズ選択カットオフは、平均シークエンシングリード長を延長させるために不可欠である。同時に、カットオフを上回る核酸の高い回収効率(>30%)および高速処理時間(<3時間)も望ましい。この組み合わせは、これまでPVPおよび/またはFicollでのみ実現可能だった。
【0054】
実施例2
以下の例示的な手法は、Oxford Nanopore MinION/GridION/PromethIONのために、ロングリードシークエンシングライブラリーを調製する前のHMW gDNAのサイズ選択の詳細を示している。投入するHMW DNAの長さは>50kbで、QUBIT(商標)DNA濃度は>50ng/μLでなければならない。
【0055】
1.DNA試料を総量60μLおよびQUBIT(商標)DNA濃度50~150ng/μLに調整する。試料を1.5mLのEppendorf DNA LoBindチューブにピペットで入れる。QUBIT(商標)dsDNA広範囲アッセイまたは同等物を使用して、濃度を測定する。TE緩衝液(pH8)または緩衝溶出緩衝液(EB)を使用して試料を希釈する。
【0056】
2.緩衝液ショートリードエリミネーター60μLを試料に添加する。チューブを軽くタッピングするか、または穏やかに上下にピペッティングすることによって、十分混合する。
図2に示したステップ1を参照のこと。
【0057】
3.ヒンジをローターの外側に向けて、チューブを遠心分離機に装填する。
【0058】
4.室温(RT)で10000×gで30分間遠心分離する。温度制御(すなわち、冷却機能)付きの遠心分離機を使用する場合は、温度を29℃に設定してこの機能を止める。
図2に示したステップ2を参照のこと。
【0059】
5.DNAペレットをかき乱さないように、チューブから上清を除去する。DNAペレットは、ヒンジ領域の下のチューブの底に形成されることになる。
【0060】
6.70%EtOH洗浄溶液200μLをチューブに添加して、RTで10000×gで2分間遠心分離する。70%EtOHを添加後は、タッピングしたり混合したりしない。チューブを直接遠心分離機に入れる。
図2に示したステップ3を参照のこと。
【0061】
7.DNAペレットをかき乱さないように、チューブから洗浄溶液を除去する。
【0062】
8.ステップ6およびステップ7を繰り返す。
【0063】
9.緩衝溶出緩衝液(EB)50~100μLをチューブに添加し、50℃で1時間インキュベートする。緩衝液の体積を調整して、所望する濃度を実現する。
【0064】
10.インキュベーション後、チューブを軽くタッピングして、確実にDNAを適切に懸濁して混合する。
図2に示したステップ4を参照のこと。
【0065】
11.NanoDropおよびQUBIT(商標)によってDNAの回収率および純度を分析する。
【0066】
実施例3
Circulomicsショートリードエリミネーター(SRE)キットは、高分子(HMW)DNAの迅速な高域サイズ選択のために使用することができる。この方法では、25kbまでの長さの短いDNAを徐々に除去することによって、平均リード長を延長することができる。ショートリードエリミネーター(SRE)キットを使用してサイズ選択されたHMW gDNAの1%アガロースゲル分離の画像を示す
図3Aを参照のこと。サイジングカットオフは、添加したラダー(Thermo Scientific GeneRuler 1kb Plus、#SM1334)を使用して実証した。投入したのは、NANOBIND(商標)CBB BigDNAキット+ラダー20ng/μLを使用してGM12878細胞から抽出したgDNA50ng/μLであった。リード長N50は、試料の品質に応じて10~25kb増加させることができる。Oxford Nanopore MinION/GridION/PromethIONシークエンシングプラットフォームでのキットの使用例は、実施例4および5に示されている。このキットでは、標準的なエタノール沈殿技術と同様の遠心分離手順を使用する。
【0067】
このサイズ選択方法では、典型的には、50~150ng/μLのQUBIT(商標)DNA投入濃度を使用する。DNA試料濃度はQUBIT(商標)またはPicoGreenによって測定することを推奨する。低濃度のDNAを使用すると、一般的に回収効率が低下する。NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットを投入物として使用して、抽出されたDNAでSREキットを使用した場合の予測収率を表1に示す。
【表1】
【0068】
図3Bは、Agilent TapeStation 4200を使用して分析した
図3Aの試料のゲル分離の画像を示した図である。アガロースゲルおよびCE分析で見られるように、長さが<10kbのDNAはほぼ完全に除去された。10~25kbのDNAは徐々に除去された。HMW DNAの回収率は約60%であった。
【0069】
実施例4
NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットを使用してGM12878細胞からHMW DNAを抽出し、針剪断を5回行い、その後ライゲーションシークエンシングキット(SQK-LSK109)を使用してOxford Nanopore GridION(FLO-MIN106D)で配列決定した。ショートリードエリミネーターキットを使用するHMW DNAのサイズ選択によって、N50が25.5kbから36kbに増加した。
図4を参照のこと。この実施例の結果を表2にさらにまとめて示す。
【表2】
【0070】
実施例5
Qiagen Puregeneキットを使用してGM12878細胞からHMW DNAを抽出し、その後ライゲーションシークエンシングキット(SQK-LSK109)を使用してOxford Nanopore PromethION(FLO-PRO002)で配列決定した。ショートリードエリミネーターキットを使用するHMW DNAのサイズ選択によって、N50が17.6kbから40.6kbに増加した。
図3を参照のこと。この実施例の結果を表3にさらにまとめて示す。
【表3】
【0071】
実施例6
以下の手法は、Oxford Nanopore MinION/GridION/PromethIONシークエンシングのためのSQK-LSK109ライブラリー調製手法における、各反応ステップ後のショートリードエリミネーターキットの使用の詳細を示している。HMW DNAは、NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットおよび5回の26G針剪断を使用して、GM12878細胞から抽出した。
【0072】
DNA試料は、総体積を48μLに、QUBIT(商標)DNA濃度を83ng/μLに調整した。試料は、ピペットで1.5mLのEppendorf DNA LoBindチューブに入れた。
【0073】
NEBNext FFPE DNA修復緩衝液3.5μL、NEBNext FFPE DNA修復ミックス2μL、NEB Ultra II End-prep反応緩衝液3.5μL、NEB Ultra IIEnd-prep酵素ミックス3μLを試料に添加し、総反応体積を60μLにして、試料をタッピングして混合し、沈降させた。
【0074】
反応液は、20℃で5分間および65℃で5分間インキュベートした。
【0075】
緩衝液ショートリードエリミネーター(SRE)60μLを試料に添加し、軽くタッピングすることによって十分に混合した。
図2に示したステップ1を参照のこと。
【0076】
チューブは、ヒンジをローターの外側に向けて遠心分離機に装填した。
【0077】
チューブは、室温(RT)で10000×gで30分間遠心分離した。
図2に示したステップ2を参照のこと。
【0078】
上清は、DNAペレットをかき乱さないようにチューブから除去した。
【0079】
70%EtOH洗浄溶液200μLをチューブに添加して、RTで10000×gで2分間遠心分離した。
図2に示したステップ3を参照のこと。
【0080】
洗浄溶液は、DNAペレットをかき乱さないようにチューブから除去した。
【0081】
本明細書[0079]に記載のステップおよび本明細書[0080]に記載のステップを反復した。
【0082】
ヌクレアーゼを含まない水61μlをチューブに添加して、室温で10分間インキュベートした。
【0083】
インキュベーション後、チューブを軽くタッピングして、確実にDNAを適切に懸濁して混合した。
図2に示したステップ4を参照のこと。
【0084】
QUBIT(商標)DNA濃度は、溶出DNA溶液1μLを使用して測定し、25.6ng/μLであることがわかった。
【0085】
Oxford Nanopore TechnologiesSQK-LSK109キットのライゲーション緩衝液(LNB)25μL、NEBNext Quick T4 DNAリガーゼ10μL、およびOxford Nanopore TechnologiesSQK-LSK109キットのアダプターミックス(AMX)5μLを[0083]に記載のステップからの溶出DNA溶液に添加し、総ライゲーション反応体積100μLを得た。
【0086】
ライゲーション反応溶液を室温で10分間インキュベートした。
【0087】
緩衝液ショートリードエリミネーター(SRE)100μLを試料に添加し、軽くタッピングすることによって十分に混合した。
図2に示したステップ1を参照のこと。
【0088】
チューブは、ヒンジをローターの外側に向けて遠心分離機に装填した。
【0089】
チューブは、室温(RT)で10000×gで30分間遠心分離した。
図2に示したステップ2を参照のこと。
【0090】
上清は、DNAペレットをかき乱さないようにチューブから除去した。
【0091】
Oxford Nanopore Technologies SQK-LSK109キットのロングフラグメント緩衝液(LFB)250μLをチューブに添加して、RTで10000×gで2分間遠心分離した。
図2に示したステップ3を参照のこと。
【0092】
LFBは、DNAペレットをかき乱さないようにチューブから除去した。
【0093】
本明細書[0091]に記載のステップおよび本明細書[0092]に記載のステップを繰り返した。
【0094】
Oxford Nanopore Technologies SQK-LSK109キットの溶出緩衝液(EB)20μLをチューブに添加して、室温で20分間インキュベートした。
【0095】
インキュベーション後、チューブを軽くタッピングして、確実にDNAを適切に懸濁して混合した。
図2に示したステップ4を参照のこと。
【0096】
QUBIT(商標)DNA濃度は、本明細書[0095]に記載のステップで生成したシークエンシングライブラリー1μLを使用して測定し、76.2ng/μLであることがわかった。
【0097】
生成したライブラリーは、Oxford Nanopore MinION(FLO-MIN106D)で配列決定し、25kbのN50が得られた。
図6は、このシークエンシング実行で生成されたリード長分布を示している。SQK-LSK109ライブラリー調製手法のエンドプレップおよびライゲーション反応後のサイズ選択にショートリードエリミネーターを使用することによって、約15kb未満のリードがほとんどなくなったことがわかる。
【0098】
実施例7
この実施例は、本明細書で記載した方法を使用して、DNAおよびRNAを含む核酸試料からRNAを除去することができることを実証している。全核酸は、培養した大腸菌細胞10億個からNANOBIND(商標)CBBキットを使用して抽出した。DNA濃度は90ng/μlで、RNA濃度は335ng/μlであった。この試料60μLを小分けして、以下の手法に従った。
【0099】
1.緩衝液ショートリードエリミネーター60μLを試料に添加する。チューブを軽くタッピングするか、または穏やかに上下にピペッティングすることによって、十分混合する。
【0100】
2.ヒンジをローターの外側に向けて、チューブを遠心分離機に装填する。
【0101】
3.室温(RT)で10000×gで30分間遠心分離する。温度制御(すなわち、冷却機能)付きの遠心分離機を使用する場合は、温度を29℃に設定してこの機能を止める。
【0102】
4.DNAペレットをかき乱さないように、チューブから上清を除去する。DNAペレットは、ヒンジ領域の下のチューブの底に形成されることになる。
【0103】
5.70%EtOH洗浄溶液200μLをチューブに添加して、RTで10000×gで2分間遠心分離する。70%EtOHを添加後は、タッピングしたり混合したりしない。チューブを遠心分離機に直接入れる。
【0104】
6.核酸ペレットをかき乱さないように、チューブから洗浄溶液を除去する。
【0105】
7.ステップ6およびステップ7を繰り返す。
【0106】
8.緩衝溶出緩衝液(EB)50~100μLをチューブに添加し、50℃で1時間インキュベートする。緩衝液の体積を調整して、所望する濃度を実現する。
【0107】
9.インキュベーション後、チューブをタッピングして、確実に核酸を適切に懸濁して混合する。
【0108】
10.NanoDropおよびQUBIT(商標)によってDNAの回収率および純度を分析する。
【0109】
回収された投入DNAおよびRNAのパーセンテージを
図7に示す。例として、SRE XSは、dsDNAおよびRNA QUBIT(商標)アッセイによって測定すると、投入DNAの82%および投入RNAの6%が回収される。したがって、試料のDNA含量は高くなる。
【0110】
実施例8
この実施例では、1500から3000bpの間の調整可能なカットオフサイズを上回る2本鎖DNAを回収する。カットオフサイズは、10%以下の回収率を有する最高のMwバンドと定義される。この手法は、第3世代のロングリードシークエンシングに有用で、時間および試料を消費するBLUE PIPPIN(商標)サイズ選択機器の代わりに使用することができる。
【0111】
この実施例では、投入試料は、1kbp plusラダー(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号SM1331)20ng/μlおよびNANOBIND(商標)CBBキットを使用して、5x106個のGM12878細胞から抽出したゲノムDNA100ng/μlを含有する混合物40μlであった。
【0112】
試料a)の場合、NANOBIND(商標)CBBキットの溶出緩衝液10μlおよびFicoll-400(Sigma Aldrich製品番号F4375-10G)の40%wt/volストック50μlおよびNaCl 1.5M溶液を試料に添加した。これによって、Ficoll-400の最終濃度は20%、NaClの最終濃度は0.75Mになった。
【0113】
試料b)の場合、3mg/ml線状アクリルアミド(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号AM9520)5μlおよび5M NaCl5μlおよびFicoll-400(Sigma Aldrich製品番号F4375-10G)溶液の40%wt/volストック50μlを試料に添加した。これによって、Ficoll-400の最終濃度は20%、NaClの最終濃度は1M、および線状アクリルアミドの最終濃度は0.15mg/μlになった。
【0114】
試料c)の場合、3mg/mlグリコーゲン(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号AM9510)5μlおよび5M NaCl5μlおよびFicoll-400(Sigma Aldrich製品番号F4375-10G)溶液の40%wt/volストック50μlを試料に添加した。これによって、Ficoll-400の最終濃度は20%、NaClの最終濃度は1M、およびグリコーゲンの最終濃度は0.15mg/μlになった。
【0115】
図8から明らかなように、Ficoll/NaCl溶液を使用して、サイズに依存した方法でDNAを沈殿させることができる。試料a)のカットオフは約3kbである。沈殿緩衝液に線状アクリルアミドも含まれている試料b)のカットオフは約1.5kbである。沈殿緩衝液にグリコーゲンも含まれている試料c)のカットオフは約1.5kbである。
【0116】
実施例9
HMW DNAは、核単離の代わりに直接植物組織溶解を使用するのに適合した、NANOBIND(商標)Plant Nuclei BigDNAキットを使用して、カスミ草植物の葉から抽出した。クリーンアップは、Circulomicsショートリードエリミネーターキットを使用して実施した。抽出したDNAの濃度は50ng/μLで、紫外線吸収の比は260nm/280nm=1.83および260nm/230nm=1.71であった。クリーンアップ後、濃度は23.40ng/μLで、紫外線吸収の比は260nm/280nm=1.93および260nm/230nm=2.16であった。
【0117】
実施例10
NANOBIND(商標)CBB BigDNAキットを使用してGM12878細胞からHMW DNAを抽出し、針剪断を5回行い、その後SMRTbell発現鋳型調製キット2.0(Pacific Biosciences製品番号100-938-900)を使用してPacBio Sequel IIで配列決定した。サイズ選択は「Procedure and Checklist-Preparing gDNA Libraries Using the SMRTbell Express Template Preparation Kit 2.0」(Pacific Biosciences Part Number 101-693-800 Version 1(January 2019))で詳述されているように、アダプターライゲーションおよびAMPurePBビーズクリーンアップ後にCirculomicsショートリードエリミネーターキットを使用して実施した。配列決定の実行により、サブリード長N50が28.5kbの119Gbが作製された。
【国際調査報告】