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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20230213BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20230213BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20230213BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20230213BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20230213BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230213BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230213BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C09K5/14 E
B41M5/46 220
B41M5/337 230
B41M5/337 214
B41M5/26
C09D5/32
C09D7/61
C09D201/00
C09K3/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535434
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 GB2020053186
(87)【国際公開番号】W WO2021116702
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1918274.0
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
2.DIGIMARC
(71)【出願人】
【識別番号】507055925
【氏名又は名称】データレース リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】クック,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,マーティン
【テーマコード(参考)】
2H026
2H111
4J038
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA22
2H026BB50
2H026CC03
2H026DD02
2H026DD32
2H026DD53
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
4J038BA022
4J038DG001
4J038HA216
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA12
4J038NA19
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、近赤外線吸収性化合物;発色化合物;および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、近赤外線吸収性化合物が、全組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、全組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を対象とする。本発明はさらに、基材上に適用する組成物を含む基材、ならびに前記基材上に色または像を形成する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収性化合物;発色化合物;および前記近赤外線吸収性化合物から前記発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、前記近赤外線吸収性化合物が、全組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、前記熱伝達剤が、全組成物の1~15wt%の量で存在し、前記熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
近赤外線吸収性化合物;発色化合物;および前記近赤外線吸収性化合物から前記発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、レーザー反応性組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、前記熱伝達剤が固体粒子として前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項3】
近赤外線吸収性化合物;発色化合物;および前記近赤外線吸収性化合物から前記発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、前記熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、前記熱伝達剤が固体粒子として前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項4】
前記熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱伝達剤が、以下の金属:鉄、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムおよびチタン、またはこれらの組み合わせの金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩である、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱伝達剤が金属酸化物である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記熱伝達剤が、5μm以下、好ましくは0.1~4μm、例えば0.1~3μm、最も好ましくは0.5~2μmのD50粒径分布値を有する、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記発色化合物が、ロイコ染料、多価金属のオキソアニオン、ジアセチレン化合物、ケト酸化合物、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:50、好ましくは1:1~1:20である、請求項1もしくは3、または請求項1もしくは3に従属する場合に請求項4から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1.5~1:18である、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1.7~1:15、好ましくは1:4~1:15、より好ましくは1:5~1:15である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記近赤外線吸収性化合物が、前記組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、前記熱伝達剤が、前記組成物の1~15wt%の量で存在する、請求項2もしくは3、または請求項2もしくは3に従属する場合に請求項4から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記近赤外線吸収性化合物が、前記組成物の0.2~1.75wt%の量で存在し、前記熱伝達剤が、前記組成物の2~12wt%、好ましくは前記組成物の2~10wt%の量で存在する、請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記近赤外線吸収性化合物が、前記組成物の0.5~1.5wt%、好ましくは前記組成物の0.5~1wt%の量で存在し、前記熱伝達剤が、前記組成物の2~10wt%、好ましくは2.5~10wt%、より好ましくは3~10wt%、より好ましくは5~10wt%の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記近赤外線吸収性化合物が、無機銅塩、有機NIR染料および顔料、不定比無機化合物、および導電性ポリマーから選択され、好ましくは無機銅塩および不定比無機化合物から選択される、請求項1から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分をさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記1種または複数以上のバインダーおよびキャリア成分が、アクリルポリマー、スチレンポリマー、スチレン-アクリルコポリマーおよびこれらの水素化生成物などのポリマーバインダー;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルブチラールなどのビニルポリマー;ポリオレフィンおよびこれらの水素化またはエポキシ化生成物;アルデヒド含有ポリマー;エポキシド含有ポリマー;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;スルホン含有ポリマー;天然産物およびこれらの誘導体;ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー;ならびにこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、アクリルポリマー、スチレンポリマー、スチレン-アクリルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルブチラールなどのビニルポリマー、ポリアミド;ポリウレタン;ならびにニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、スチレン-アクリルコポリマー、ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー、およびポリウレタン、ならびにこれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、-60~120℃、例えば-10~120℃、または20~115℃、またはさらには40~110℃のガラス転移温度を有する、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、-60~40℃、好ましくは-55~30℃、より好ましくは-50~25℃のガラス転移温度を有する、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項20】
前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、-10~120℃、例えば-10~115℃、またはさらには40~110℃の最低造膜温度を有する、請求項16から18のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記1種または複数のバインダーおよびキャリア成分が、-10~40℃、好ましくは-10~35℃、より好ましくは-5~30℃、より好ましくは-5~25℃の最低造膜温度を有する、請求項16、17または19のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
基材上に適用された請求項1から21のいずれかに記載の組成物を含む、基材。
【請求項23】
前記組成物が色を示す、請求項22に記載の基材。
【請求項24】
前記組成物が像を示す、請求項22または23に記載の基材。
【請求項25】
前記基材が感熱基材である、請求項22から24のいずれかに記載の基材。
【請求項26】
多層構造体を形成するように前記基材上に適用された1つまたは複数の追加の層をさらに含む、請求項22から25のいずれかに記載の基材。
【請求項27】
多層基材構造体である、請求項22から26のいずれかに記載の基材。
【請求項28】
請求項22から27のいずれかに記載の基材を形成する方法であって、請求項1から21のいずれかに記載の組成物を基材に適用することを含む、方法。
【請求項29】
多層構造体を形成するように1つまたは複数の追加の層を前記基材に適用することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記基材が多層基材構造体である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
基材上に適用された請求項1から21のいずれかに記載の組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、前記組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、前記基材上に色を形成することを含む、方法。
【請求項32】
基材上に適用された請求項1から21のいずれかに記載の組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、前記組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、前記基材上に像を形成することを含む、方法。
【請求項33】
前記近赤外線または中赤外線が、局部的位置で適用されて、前記発色化合物の色を選択的に発色させる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
近赤外線または中赤外線の適用による基材上の色の形成における、請求項1から21のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項35】
近赤外線または中赤外線の適用による基材上の像の形成における、請求項1から21のいずれかに記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線または中赤外線の適用を介した像の形成において使用するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に適用された、または基材中に取り込まれた放射線反応性組成物中の発色化合物に作用するための近赤外(NIR)線および近赤外線吸収性化合物の使用が知られている。近赤外線に曝露されると、近赤外線吸収性化合物は、近赤外線を吸収し、発色化合物が色を形成するように発色化合物における変化を生じさせるための熱としてこのエネルギーを発色化合物に移すことができる。
【0003】
既知のシステムにおいて、適量の熱を近赤外線吸収性化合物から発色化合物へ移すことを実現するために、組成物中に十分な量の近赤外線吸収性化合物が発色化合物にごく接近して存在しなければならない。しかしながら、既知の近赤外線吸収性化合物は、典型的には、ヒトの眼に高度に有色であり、可視領域は電磁スペクトルの近赤外領域に隣接する。これに応じて、必要とされる近赤外線吸収性化合物の量は、放射線反応性組成物および上に組成物が適用された基材の外観にマイナスの影響を与えることが多く、高度に有色の近赤外線吸収性化合物は、高度に有色のバックグラウンドを作り出してしまう。そのような強いバックグラウンド色は、基材に適用された放射線反応性組成物上の色または像の形成に不利益である。
【0004】
バインダーおよびキャリア成分などは、そのような放射線反応性組成物中に一般的に利用される。これらの成分は、近赤外線吸収性化合物から熱を破壊的に吸収する絶縁ポリマーなどの絶縁材で構成されている。そのため、組成物中の近赤外線吸収性化合物と発色化合物が、十分な熱を発色化合物へ移送できないほど離れ過ぎている場合、成分は融解または軟化し、低質な色の形成を招く。この影響に対処するために、高いガラス転移温度(Tg)および高い最低造膜温度(MFFT)を有する絶縁材が、典型的にバインダーおよびキャリア成分として選択される。そのような材料は、近赤外線吸収性化合物から熱を負吸収し始めず、不利益な軟化または融解の効果を示さない。加えて、この影響にさらに対抗するために、高出力近赤外線源を利用してもよい。しかしながら、これは、放射線反応性組成物を、壊れやすい感熱基材に適用する場合に問題となる。
【発明の概要】
【0005】
したがって、近赤外線を組成物に適用した際に近赤外線吸収性化合物から発色化合物への効率的な熱伝達を促進し、基材上の色または像の形成に適した、改善された効果的な色の形成を実現する組成物を提供することが望ましい。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、基材を提供する。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、基材を提供する。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、基材を提供する。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法であって、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、方法を提供する。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法であって、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、方法を提供する。
【0014】
本発明の第9の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法であって、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、方法を提供する。
【0015】
本発明の第10の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む、方法を提供する。
【0016】
本発明の第11の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明の第12の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む、方法を提供する。
【0018】
本発明の第13の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む、方法を提供する。
【0019】
本発明の第14の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む、方法を提供する。
【0020】
本発明の第15の態様によれば、上に適用する組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在し、方法が、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む、方法を提供する。
【0021】
本発明の第16の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への色の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【0022】
本発明の第17の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への色の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【0023】
本発明の第18の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への色の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【0024】
本発明の第19の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への像の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【0025】
本発明の第20の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への像の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【0026】
本発明の第21の態様によれば、近赤外線または中赤外線の適用による基材上への像の形成における組成物の使用であって、組成物が、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含み、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
驚くべきことに、かつ有利には、本発明の組成物中の熱伝達剤の固体粒子の取り込みは、近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝導を実質的により効率化でき、近赤外線を組成物に適用したときに、大きく改善され、驚くほどより有効な発色化合物による色の形成を促進できる。有利には、中赤外線を組成物に適用すると、同じ有効な色の形成も実証された。加えて、驚くべきことに、かつ有利には、(a)特定の熱伝達剤、(b)特定量の近赤外線吸収性化合物および熱伝達剤、ならびに(c)組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との特定の比の選択が、発色化合物による改善された色の形成を促進することを発見した。色の形成は、軟化および融解などの不利益な効果から任意のバインダーおよびキャリア成分に失われる熱を最小限に抑えることにより、組成物をレーザー源からの近赤外線または中赤外線に曝露したときに減少したフルエンス(単位面積により送達されるエネルギー量)で生じ得る。加えて、組成物中で利用される高度に着色された近赤外線吸収性化合物の量は、組成物が低いバックグラウンド色を示すことができるように低減され得る。これは、高価な近赤外線吸収性化合物に関するコストを削減するだけでなく、最終的には、本発明の組成物は、改善されたコーティング完全性を実証し、より速いイメージング速度を可能にし、より低い出力、特により低いフルエンスの近赤外線源を必要とする。低い出力、特に低いフルエンスの近赤外線源の使用は、組成物を腐敗しやすい感熱性基材に適用する場合に特に有利である。
【0028】
さらに驚くべきことに、かつ有利には、近赤外線吸収性化合物および発色化合物を含む組成物に熱伝達剤を取り込む結果として、広範囲のバインダーおよびキャリア成分を前記組成物中に利用できることが発見された。以前は、バインダーおよびキャリア成分は、近赤外線吸収性化合物から該バインダーおよびキャリア成分へ伝達される熱に耐えるために高いガラス転移温度(Tg)および高い最低造膜温度(MFFT)を要する絶縁材から形成されなければならなかった。本発明により、熱伝達剤の存在は、広範囲のバインダーおよびキャリア成分を使用できることを意味し、特に低いガラス転移温度および低い最低造膜温度を有するバインダーおよびキャリア成分も使用できることを意味する。これは、感熱性基材、特にポリマーフィルムおよびホイルを含めた広範囲の基材への本発明の組成物のより広範な商用用途を促進する。
【0029】
また、驚くべきことに、かつ有利には、本発明の利益が、(a)組成物中の近赤外線吸収性化合物の量を増加すること(これは、費用がかかると思われるだけでなく、組成物に高度に着色されたバックグラウンドを生じさせると考えられ、特に軟化および融解ならびに分解、燃焼、焼けまたはアブレーションなどの不利益な効果に起因して、過剰の熱が組成物および発色化合物に伝達され、像の形成に不利益な効果を与え、低質な色の形成につながると考えられる)と、(b)組成物中の発色化合物の量を増加すること(これは、費用がかかると思われるだけでなく、特に軟化および融解ならびに希釈、分解、燃焼、焼けまたはアブレーションなどの不利益な効果に起因して、近赤外線吸収性化合物に、追加の発色化合物を完全に利用するための増量された熱の伝達の促進を要し、効果のない色の形成につながると考えられる)と、によって達成される利益より非常に大きいことが特定された。
【0030】
本発明の第1の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比が1:1~1:100であり、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、近赤外線吸収性化合物が、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在し、熱伝達剤が、組成物の1~15wt%の量で存在し、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、近赤外線吸収性化合物、発色化合物、および近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を促進する働きをする熱伝達剤を含む組成物であって、熱伝達剤が、金属酸化物、金属ピロリン酸塩、および金属リン酸塩から選択され、熱伝達剤が固体粒子として組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0033】
近赤外線吸収性化合物は、近赤外線または中赤外線、好ましくは近赤外線を吸収できる任意の好適な化合物であってもよい。複数の近赤外線吸収性化合物が、本発明の第1、第2または第3の態様による組成物中に存在してよい。近赤外線吸収性化合物の好適な例としては、以下に限定されないが、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;N,N,N’,N’-テトラキス(4-ジブチルアミノフェニル)-p-ベンゾキノンビス(ヘキサフルオロアンチモン酸イミニウム)などの有機NIR染料および顔料;還元インジウムスズ酸化物、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン、還元ドープ酸化タングステン[以下の式MxWyOzの無機化合物(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1個の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1および2.2≦z/y≦3.0を満たす)を含む]、還元アンチモンスズ酸化物、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープスズ酸化物(FTO)などのドープ金属酸化物などの不定比還元またはドープ無機化合物;ポリポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT)などの導電性ポリマー;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。近赤外線吸収性化合物は、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩であってもよい。
【0034】
近赤外線吸収性化合物は、任意の好適なD50粒径分布値を有し得る。D50粒径分布は、粒径分布の平均直径または平均値、すなわち、累積分布中の50%の粒径である。好ましくは、近赤外線吸収性化合物のD50粒径分布値は5μm以下である。より好ましくは、近赤外線吸収性化合物のD50粒径分布値は0.5~3μm、最も好ましくは1~2μmである。D50粒径分布は、ISO規格13320:2009にしたがって、Malvern Mastersizerを使用して測定される。
【0035】
好ましくは、近赤外線吸収性化合物は、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;ならびに、還元インジウムスズ酸化物、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン、還元ドープ酸化タングステン[以下の式MxWyOzの無機化合物(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、およびアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1個の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1および2.2≦z/y≦3.0を満たす)を含む]、還元アンチモンスズ酸化物、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープスズ酸化物(FTO)などのドープ金属酸化物などの不定比還元またはドープ無機化合物から選択される。
【0036】
発色化合物は、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露すると色を形成する任意の好適な化合物であってもよい。
【0037】
発色化合物は、形成させる像に所望される色に基づいて選択されることが理解される。
【0038】
発色化合物は、ロイコ染料、多価金属のオキソアニオン、ジアセチレン化合物、ケト酸化合物、またはそれらの組み合わせから選択することができる。本発明の第1、第2または第3の態様による組成物中に複数の発色化合物が存在してもよい。
【0039】
好ましくは、発色化合物は、ロイコ染料、多価金属のオキソアニオン、およびジアセチレン化合物から選択される。より好ましくは、発色化合物は、ロイコ染料または多価金属のオキソアニオンである。最も好ましくは、発色化合物はロイコ染料である。
【0040】
ロイコ染料
発色化合物は、ロイコ染料であってもよい。ロイコ染料は、色を形成できる化合物として当業者に周知である。好適なロイコ染料の例は、内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/015200号および同第2013/068729号に含まれる。好適なロイコ染料の例としては、これらに限定されないが:スピロキサジン、ナフトピラン、フタリド、フルオラン、トリアリルメタン、ベンゾキサジン、キナゾリン、スピロピラン、キノン、テトラゾリウム塩、チアジン、フェナジンおよびオキサジンが挙げられ、これらのうちのいくつかは、参照により内容が本明細書に組み込まれる国際公開第2006/108745号に開示されている。
【0041】
ロイコ染料の好適な供給業者としては、これらに限定されないが:山田化学工業株式会社、Chameleon Speciality Chemicals Limited、およびConnect Chemicalsが挙げられる。
【0042】
ロイコ染料は:2-アニリノ-3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、2-アニリノ-6-ジブチルアミノ-3-メチルフルオラン、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]フタリド、4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン]、3,3’-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-2’-カルボン酸エチルエステル、7-[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]-7-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]-ベンゼンアミン、および6’-(ジエチルアミノ)-2’-[(ジメチルフェニル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン、2’-アニリノ-6’-[エチル(p-トリル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号59129-79-2)、4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン](CAS番号67707-04-4)、6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-2’カルボン酸エチルエステル(CAS番号154306-60-2)、および2’-(ジベンキシルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)、2’-アニリノ-6’-(ジブチルアミノ)-3’-メチル-3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(CAS番号89331-94-2)、6’-(ジエチルアミノ)-3’-メチル-2’-(フェニルアミノ)スピロ[2-ベンゾフラン-3,9’-キサンテン]-1-オン(CAS番号29512-49-0)、2-アニリノ-6’-[エチル(p-トイル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号59129-79-2)、ブルー3-CVL6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]フタリド(CAS番号1522-42-7)、ブルー4 4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン](CAS番号67707-04-4)、レッド-5 3,3’-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(CAS番号50292-95-0)、オレンジ-6 6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-2’-カルボン酸エチルエステル(CAS番号154306-60-2)、ブルー8 7-[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]-7-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン(CAS番号87563-89-1)、グリーン-9 2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)、イエロー-10 N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]-ベンゼンアミン(CAS番号144190-25-0)、ブラック-15 6’-(ジエチルアミノ)-2’-[(ジメチルフェニル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号36431-22-8)、ケト酸-1 4-(N,N-ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン(CAS番号5809-23-4)、ケト酸-2 4-(N,N-ジブチルアミノ)-2-ヒドロキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン(CAS番号54574-82-2)、2-アニリノ-3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、2-アニリノ-6-ジブチルアミノ-3-メチルフルオラン、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]フタリド、4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン]、3,3’-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-2’-カルボン酸エチルエステル、7-[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]-7-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]-ベンゼンアミン、および6’-(ジエチルアミノ)-2’-[(ジメチルフェニル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン、4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン](CAS番号67707-04-4)、6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-2’-カルボン酸エチルエステル(CAS番号154306-60-2)、ならびに2’-(ジベンキシルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)から選択することができる。
【0043】
好ましくは、ロイコ染料は、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]フタリド、7-[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]-7-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン、3,3’-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]-ベンゼンアミン、6’-(ジエチルアミノ)-2’-[(ジメチルフェニル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン、2’-アニリノ-6’-[エチル(p-トリル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号59129-79-2)、4,4’-[(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)メチレン]ビス[N-メチル-N-フェニルアニリン](CAS番号67707-04-4)、6’-(ジエチルアミノ)-3-オキソ-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-2’カルボン酸エチルエステル(CAS番号154306-60-2)、2’-アニリノ-6’-(ジブチルアミノ)-3’-メチル-3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(CAS番号89331-94-2)、6’-(ジエチルアミノ)-3’-メチル-2’-(フェニルアミノ)スピロ[2-ベンゾフラン-3,9’-キサンテン]-1-オン(CAS番号29512-49-0)および2’-(ジベンキシルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号34372-72-0)である。
【0044】
好ましくは、ロイコ染料は、2-アニリノ-3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオランまたは2-アニリノ-6-ジブチルアミノ-3-メチルフルオランである。
【0045】
多価金属のオキソアニオン
発色化合物は、多価金属のオキソアニオン、またはオキソ酸、および/またはこれらの水和物であってもよい。多価金属のオキソアニオンは、カチオン性カウンターパートと併せて存在する多価金属(アニオン性成分)の任意の好適なオキソアニオンであってもよい。組成物中の多価金属のオキソアニオンの使用は、参照により内容が本明細書に組み込まれる米国特許第7485403号に開示されている。アニオン性成分は、微量元素または任意の高濃度比により、無機金属オキソアニオン化合物、例えば、ジ、トリ、ヘキサ、ヘプタ、オクタおよびデカモリブデン酸塩を含めたモリブデン酸塩、タングステン酸塩、クロム酸塩または混合酸化状態の類似遷移金属化合物および混合無機金属オキソアニオンの類似遷移金属化合物であってもよい。好ましくは、付随するカチオン性成分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属またはアンモニウムである。多価金属のオキソアニオンの一例は、モリブデン酸ナトリウムである。好ましい多価金属のオキソアニオンは、無機金属オキソアニオン化合物のアンモニウム塩である。例えば、パラタングステン酸アンモニウム(APT)である。多価金属のオキソアニオンとして特に好ましいのは、多価金属のオキソアニオンのアンモニウム塩である。特に好ましい多価金属のオキソアニオンは、オクタモリブデン酸アンモニウム(NHMo26または「AOM」であり、CAS番号12411-64-2で市販されているモリブデン組成物である。
【0046】
好ましくは、多価金属のオキソアニオンは、モリブデンのオキソアニオンのアンモニウム塩などの多価金属のオキソアニオンのアンモニウム塩である。より好ましくは、多価金属のオキソアニオンは、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)である。
【0047】
ジアセチレン化合物
発色化合物は、ジアセチレン化合物、すなわち、ジアセチレン部分
【0048】
【化1】
を含む化合物であってもよい。
【0049】
ジアセチレン化合物は、色を形成できる化合物として当業者に周知である。刺激に曝露されると、ジアセチレン化合物は、典型的には、重合して色を示す。典型的なジアセチレン化合物は、この目的のために、内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/114121号に開示されている。また、好適な例は、国際公開第2009/093028号、国際公開第2010/001171号、国際公開第2010/029329号、および国際公開第2013/068729号にも教示されており、それぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。ジアセチレン化合物の既知の合成法は、反応性酸塩化物の形成および後続するアミンもしくはアルコールの添加、または混合無水物の形成および後続するアミンもしくはアルコールとの反応を含む。本明細書に開示されるジアセチレン化合物の場合、そのような合成は、保護基Pの導入も含んでよい。
【0050】
ジアセチレン化合物は、典型的には、複数の色を示すことができる。本発明の文脈において、本発明の第1、第2および第3の態様による組成物を基材に適用した後、紫外線などの刺激を典型的に適用して、ジアセチレン化合物によって初期の第1の色の形成を生じさせてもよいことが理解されよう。次いで、近赤外線または中赤外線を適用して、ジアセチレン化合物の第2の色の形成を生じさせることができる。
【0051】
この初期の第1の色の形成に先立って、特定のジアセチレン化合物(例えば、式(I)および(II)のジアセチレン化合物)は、ジアセチレン化合物の初期の第1の色に影響を与える刺激(例えば、紫外線)に曝露する前に、優先的に「活性化」される(すなわち、色の形成を可能にする)必要がありうる。これは、ジアセチレン化合物による色の形成を可能にすることができる。「活性化」は、ジアセチレン化合物を、色が形成できる、すなわち、不活化形態(色を形成できない)から活化形態(色を形成できる)に変化できるようにするプロセスである。必要に応じて、活性化は、ジアセチレン化合物を活性化温度に曝露することによって促進することができる。この活性化を、刺激に曝露させて第1の初期の色を形成させる前に行ってもよいか、または別法として、ジアセチレン化合物を、この曝露中に活性化させてもよいことは、当業者に理解されよう。好ましくは、活性化は、刺激に曝露して第1の初期色の形成を生じさせる前に行う。活性化が、刺激に曝露して第1の初期色を形成する前に行われる場合、活性化温度は、周囲温度(10~35℃)とジアセチレン化合物の熱分解温度の間の温度である。活性化温度は、40~150℃であってもよい。好ましくは、活性化温度は、60~140℃、例えば70~140℃である。ジアセチレン化合物は、レーザー光源などの放射線源を含めた任意の好適な手段を使用して活性化温度に曝露することができる。放射線は、波長400~700nmの可視光、波長700nm~1mmの赤外線、および波長780~1600nmの近赤外線から選択することができる。レーザー光源のフルエンスは、以下で考察するように変動し得る。ジアセチレン化合物はまた、水蒸気源および熱風、ランプ、ヒートトンネル、LED、サーマルプリントヘッド、熱導体、温液、ホットプレートおよび加熱基板に限定されないが、これらを含めた導電性温度源を使用して活性化温度に曝露してもよい。
【0052】
発色化合物は、以下の式(I):
【0053】
【化2】
を有するジアセチレン化合物であってもよく、
式中、xは2~12、好ましくは2~10であり、
Lは、式:
【0054】
【化3】
を有するアミド、および式:
【0055】
【化4】
を有するエステルから選択され、好ましくは、Lは、式
【0056】
【化5】
を有するアミドであり、
Qは、C1~20アルキル基およびC3~18シクロアルキル基から選択され、好ましくは、Qは、シクロプロピルおよび-(CH-CHアルキル直鎖から選択され、yは1~20、好ましくは5~19、より好ましくは5~17から選択され、
Tは、水素、C1~20アルキル基、および-(CH-L-Qから選択され、式中、x、LおよびQは、上で規定したとおりであり、好ましくは、Tは、水素、-(CH-(CH)アルキル直鎖(式中、yは上で規定したとおりである)、および-(CH-L-Q(式中、x、LおよびQは上で規定したとおりである)から選択される。
【0057】
式(I)のジアセチレン化合物が、対称または非対称のいずれであってもよく、すなわち、Tが-(CH-L-Qであり、x、LおよびQの値が、ジアセチレン部分の他方のものと同じである(対称)か、またはTが水素、C1~20アルキル基、もしくは-(CH-L-Qであり、x、LおよびQの値が、ジアセチレン部分の両側で同じではない(非対称)ことは、当業者に理解されよう。好ましくは、Tは-(CH-L-Qであり、x、LおよびQの値はジアセチレン部分の両側で同じであり、したがって式(I)のジアセチレン化合物は対称である。
【0058】
好ましくは、発色化合物は、以下の式(II):
【0059】
【化6】
を有するジアセチレン化合物であり、
式中、xは2~12、好ましくは2~10であり、
Qは、シクロプロピルおよび-(CH(CH)アルキル直鎖から選択され、式中、yは1~20、好ましくは5~19、より好ましくは5~17である。
【0060】
好適なジアセチレン化合物の例としては、以下に限定されないが、N1,N22-ジオクタデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジヘキサデシルドコサ-10-12-ジインジアミド、N1,N22-ジテトラデシルドコダ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジドデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジオクチルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジヘキシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジシクロプロピルドコサ-10,12-ジインジアミドが挙げられる。
【0061】
好ましくは、ジアセチレン化合物は、N1,N22-ジオクタデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジヘキサデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジテトラデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、N1,N22-ジドデシルドコサ-10,12-ジインジアミド、およびN1,N22-ジシクロプロピルドコサ-10,12-ジインジアミドから選択されるジアセチレン化合物である。
【0062】
あるいは、発色化合物は、保護基を含むジアセチレン化合物であってもよい。
【0063】
用語「保護基」とは、これらに限定されないが酸、塩基、熱、水素化、放射線、および還元を含めた特定の条件に曝露されるとジアセチレン化合物から切断/除去できる任意の切断可能な有機化学部分を意味する。理論に束縛されるものではないが、本発明の文脈において、近赤外線または中赤外線に曝露されると保護基がジアセチレン化合物から切断されることを本発明者らは理解する。必ずしも、(上で定義したジアセチレン化合物のモノマーおよびポリマーの)保護基のすべてが切断される事例ではない。したがって、本発明による保護基は、近赤外線または中赤外線に曝露されると切断されうると考えられる。
【0064】
好適な保護基の例としては、これらに限定されないが:tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(DOC)、ジオクチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス)アザンジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(SOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニルから選択されるアルキルおよびアリールオキシカルボニル基;ベンゾイル;カルボキシベンジル;およびアリルオキシカルボニル;シクロドデカンおよびシクロオクタンなどのシクロアルキル;アセトアミドおよびトリフルオロアセトアミドなどのアミド基;フタルイミド;トリフェニルメチル;ベンジリデン;ならびにp-トルエンスルホニルが挙げられる。
【0065】
発色化合物は、以下の式(III):
【0066】
【化7】
を有するジアセチレン化合物であってもよく、
式中、xは2~12、好ましくは2~10であり、
Lは、式:
【0067】
【化8】
を有するアミドおよび式:
【0068】
【化9】
を有するエステルから選択され、好ましくは、Lは、式
【0069】
【化10】
を有するアミドであり、
yは0~10、好ましくは0~8、より好ましくは0~6であり、
Eは、不在であっても存在していてもよく、存在する場合、EはNH、OおよびCHから選択され、好ましくは、EはNHであり、
Pは保護基であり、好ましくは、Pは、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(DOC)、ジオクチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(SOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニルから選択されるアルキルおよびアリールオキシカルボニル基;ベンゾイル;カルボキシベンジル;およびアリルオキシカルボニル;シクロドデカンおよびシクロオクタンなどのシクロアルキル;アセトアミドおよびトリフルオロアセトアミドなどのアミド基;フタルイミド;トリフェニルメチル;ベンジリデン;およびp-トルエンスルホニルから選択され;より好ましくは、Pはアルキルまたはアリールオキシカルボニル基またはシクロアルキルであり、より好ましくは、Pは、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンゾイル、カルボキシベンジル、シクロドデカン、シクロオクタン、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(DOC)、およびジオクチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(SOC)から選択され、より好ましくは、Pは、アルキルまたはアリールオキシカルボニル基であり、最も好ましくは、Pは、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンゾイル、カルボキシベンジル、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(DOC)、およびジオクチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル)ジカルバメート(SOC)から選択され、
Tは、水素、-(CH(CH)アルキル直鎖(式中、xは上で規定されるとおりである)、および-(CH-L-(CH-E-P(式中、x、y、L、EおよびPは、上で規定されるとおりである)から選択される。
【0070】
式(III)のジアセチレン化合物は、対称でも非対称であってもよく、すなわち、Tが-(CH-L-(CH-E-Pであり、x、y、L、EおよびPの値が、ジアセチレン部分の他方にあるものと同じである(対称)か、またはTが、水素、-(CH(CH)アルキル直鎖、もしくは-(CH-L-(CH-E-Pであり、x、y、L、EおよびPの値が、ジアセチレン部分の他方にあるものと異なる(非対称)ことは、当業者に理解されよう。好ましくは、式(III)のジアセチレン化合物は対称である。
【0071】
好ましくは、発色化合物は、以下の式(IV):
【0072】
【化11】
を有するジアセチレン化合物であり、式中、xは2~10であり、yは0~6であり、Pは、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンゾイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、カルボキシベンジル、シクロデカン、シクロオクタン、2,4-ジメチルペンタ-3-イルオキシカルボニル(DOC)およびジオクチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(SOC)から選択され、Tは-(CH-L-(CH-E-Pであり、x、y、L、EおよびPの値は、ジアセチレン部分の他方にあるものと同じであり、すなわち、式(IV)のジアセチレン化合物は対称である。
【0073】
好ましくは、ジアセチレン化合物は、ジ-tert-ブチル2,2’-(テトラデカ-6,8-ジインジオイル)ビス(ヒドラジン-1-カルボキシレート)、ジ-tert-ブチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル)ジカルバメート、ジ-tert-ブチル2,2’-(ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(ヒドラジン-1-カルボキシレート)、ジベンジル2,2’-(ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(ヒドラジン-1-カルボキシレート)、N’1,N’22-ジベンゾイルドコサ-10,12-ジインジヒドラジド、tert-ブチル2-(ペンタコサ-10,12-ジイノイル)ヒドラジン-1-カルボキシレート、N1,N22-ジシクロデシルドコサ-10,12-ジインジアミドおよびジ-tert-ブチル(((ドコサ-10,12-ジインジオイル)ビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ジカルバメートから選択される。
【0074】
ケト酸化合物
発色化合物は、ケト酸化合物であってもよい。
【0075】
用語「ケト酸化合物」とは、カルボン酸基およびケトン基を有する化合物を意味する。いくつかの例では、ケトン基は水和されている。
【0076】
発色化合物は、式(V):
【0077】
【化12】
のケト酸化合物であってもよく、
式中、X1a、X2a、およびX3aは、独立して、C、N、BおよびSから選択され、
2つのR基は、同じであっても異なっていてもよく、独立して:水素、C1~18アルキル;任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリール;ハロゲン;-NO;-CF;-OR3-;-NR ;-CN;-SR;-COR;-CO;および-CONR から選択され;式中、Rは、アルカリ金属;水素;C1~18アルキル;および任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、もしくはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリールから選択されるか;または両方のR基は、それらが結合している窒素原子と一緒に環状アミノ基を形成し、環状アミノ基は、任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されている。
【0078】
Aは、B’(以下に規定する)と同じであっても異なっていてもよく、独立して:水素;C1~18アルキル;任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリール;複素環;ヘテロアリール;ハロゲン;-NO;-CF;-OR;-NR ;-CN;-SR;-COR;-CO;-CONR から選択され;式中、Rは、アルカリ金属;水素;C1~18アルキル;および任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリールから選択され;
は、
【0079】
【化13】
から選択され、式中、X1b、X2b、X3bおよびX4bは、独立して、C、N、BおよびSから選択され;B’はAと同じであるかまたは異なり、独立して、水素;C1~18アルキル;任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリール;複素環;ヘテロアリール;ハロゲン;-NO;-CF;-OR;-NR ;-CN:-SR;-COR;-CO;-CONR から選択され;式中、Rは、アルカリ金属;水素;C1~18アルキル;および任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、C1~18アルキル、ヒドロキシル(-OH)、または-NRで置換されているC6~12アリールから選択され、式中、Rは上で規定されるとおりである。
【0080】
AおよびB’が、AおよびB’のそれぞれが関連するベンゼン環の1つの位置で置換基を構成しうるか、またはAおよびB’が、AおよびB’のそれぞれが関連するベンゼン環で利用可能な位置のいずれかで複数の独立に選択された置換基を構成しうることを理解されたい。例えば、B’が関連するベンゼン環は、単一の置換基または最大4個の独立に選択された置換基で置換されうる。
【0081】
好ましくは、ケト酸化合物は、式(VI):
【0082】
【化14】
から選択され、式中、X1a、X2a、X3a、X1b、X2b、X3bおよびX4b、R、AならびにB’は、式(V)について上述したとおりである。
【0083】
好ましくは、ケト酸化合物は、式(VII):
【0084】
【化15】
から選択され、式中、Rは式(V)について上述したとおりである。好ましくは、2つのR基は同じであり、C1~18アルキル;任意選択によりC1~18アルコキシ、-CN、-CF、-NO、ハロゲン、またはC1~18アルキルで置換されているC6~12アリールから選択される。より好ましくは、2つのR基は同じであり、C1~18アルキル、より好ましくはC1~6アルキルである。好ましくは、B’は、独立して、水素;-NOおよびハロゲン、より好ましくは、水素および塩素から選択され、最も好ましくは水素である。
【0085】
好ましくは、ケト酸化合物は、2-(4-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-(4-(ジブチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-(4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、および2,3,4,5-テトラクロロ-6-(4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸から選択される。より好ましくは、2-(4-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-(4-(ジブチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、および2-(4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸から選択される。
【0086】
式(V)~(VII)のケト酸化合物は市販されており、例えば、これらは、Chameleon Speciality Chemicals Limitedから購入できる。
【0087】
一実施形態において、ケト酸化合物は「二量体」の形態であってもよく、それによってB’は-CO基(式中、Rは水素であり、したがってベンゼン環は2つのカルボキシル基を保有する)を表し、また、独立して-COR基から選択され、式中、Rは、ヒドロキシル(-OH)およびNRで置換されたC6~12アリールであり、式中、Rは式(V)について上述したとおりであることに留意されたい。好ましくは、-CO基(式中、Rは水素であり、したがってベンゼン環は2つのカルボキシル基を保有する)はX2bにあり、-COR基はX3bにある。
【0088】
発色化合物がロイコ染料またはケト酸化合物である場合、発色化合物は、組成物中で、酸発生剤に付随する。
【0089】
理論に束縛されるものではないが、酸発生剤とロイコ染料またはケト酸化合物とは相互作用して、色の形成を実現すると考えられる。酸発生剤は組成物中に存在して、適当な近赤外線または中赤外線を適用した際、酸を発生させることによりpHの変化を促進する。この酸発生は、発色化合物による色の形成を促進する。「酸」とは、水素(陽子)を供与できるまたは電子対と共有結合を形成できる任意の分子的実体または化学種を意味する。さらに、熱伝達剤からの熱の伝達が、酸発生剤および発色化合物の両方に向かうことは、当業者に理解されよう。
【0090】
好適な酸発生剤としては、任意の好適な市販のまたは化学的に合成可能な酸発生剤が挙げられる。好適な酸発生剤としては、以下に限定されないが:ボロベンジレートおよびトリ-n-ブチルアンモニウムボロジサリチレート(トリ-n-ブチルアンモニウム-4,4’-ジオキソ-4H,4’H-2,2’-スピロビ[ベンゾ[d][1,3,2]ジオキサボリニン]-2-ウイデなど)のアミン塩、ならびに4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)フェニルメタノン、3-(3-トシルウレイド)フェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、プロピル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートおよび4,4’-メタンジイルジフェノールに基づくものを含めた熱的酸発生剤(TAG)が挙げられる。
【0091】
酸発生剤の選択が、組成物中に利用される特定のロイコ染料またはケト酸化合物に依存することは、当業者に理解されよう。
【0092】
本発明の第1、第2または第3の態様による組成物は、複数の発色化合物を含んでもよい。
【0093】
複数の発色化合物が組成物中に存在する場合、発色化合物は異なってくると理解される。発色化合物に対して「異なる」とは、発色化合物が、異なる発色化合物群、例えば、上で定義した、ロイコ染料、多価金属のオキソアニオン、ジアセチレン化合物、もしくはケト酸化合物から選択されるか、または同じ発色化合物群の中の異なる化合物(例えば2種の異なるロイコ染料)となるように選択されることを意味する。
【0094】
複数の発色化合物が組成物中に存在する場合、2種の発色化合物は、両方に酸発生剤が付随するように選択できない、すなわち、化合物が1種のみの酸発生剤しか含むことができないことは、当業者に理解されよう。2種の発色化合物が存在する場合、それらは、片方のみが酸発生剤を必要とするように選択されるか、または特定の例では、2種の発色化合物のうちの片方と関連する酸発生剤が、上記の2種の発色化合物のもう片方とも相互作用する。
【0095】
発色化合物の組み合わせが組成物中に存在する場合、発色化合物の色は、典型的には異なる色となることが理解されよう。
【0096】
熱伝達剤は、組成物の近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱の伝達を促進できる任意の好適な化合物であってもよい。
【0097】
驚くべきことに、かつ有利には、本発明の組成物によって実証される改善された色の形成は、特定の熱伝達剤の選択によって得ることができる。これは本発明の第3の態様によって具現化されるが、第1および第2の態様にも適用可能である。熱伝達剤は、以下の金属:鉄、アルミニウム、ジルコニウム、チタンまたはこれらの組み合わせの金属酸化物、金属ピロリン酸塩、または金属リン酸塩であってもよい。好ましくは、熱伝達剤は、以下の金属:鉄、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、またはこれらの組み合わせの金属酸化物、金属ピロリン酸塩、または金属リン酸塩である。金属酸化物、金属ピロリン酸塩または金属リン酸塩への言及は、所与の金属酸化物、金属ピロリン酸塩、または金属リン酸塩のいずれの水和物をも含むものと解釈されることは、当業者に理解されよう。熱伝達剤は:ピロリン酸鉄(III)水和物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウム、リン酸鉄二水和物および二酸化チタンから選択することができる。より好ましくは、熱伝達剤は:ピロリン酸鉄(III)水和物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、リン酸鉄二水和物および二酸化チタンから選択される。さらにより好ましくは、熱伝達剤は金属酸化物である。熱伝達剤は、鉄、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタン、またはこれらの組み合わせの金属酸化物であってもよい。さらにより好ましくは、熱伝達剤は、鉄、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムおよびチタン、またはこれらの組み合わせの金属酸化物である。熱伝達剤は、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウム、および二酸化チタンから選択することができる。さらにより好ましくは、熱伝達剤は、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化ジルコニウム(IV)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛および二酸化チタンから選択される。最も好ましくは、熱伝達剤は酸化ジルコニウム(IV)である。
【0098】
熱伝達剤が、高い融解温度(融点)または熱分解温度を必要とすることは、当業者に理解されよう。好ましくは、熱伝達剤は、発色化合物より高い融解温度または熱分解温度を有する。熱伝達剤が、利用される発色化合物および特定の基材に応じて選択されうることは、当業者に理解されよう。好ましくは、熱伝達剤は、300℃以上、例えば500℃以上、または1,000℃以上、またはさらには2,000℃以上の融解温度または熱分解温度を有する。好ましくは、発色化合物は、50~300℃、例えば100~300℃の融解温度または熱分解温度を有する。
【0099】
融解温度(融点)または熱分解温度は、任意の好適な方法を用いて測定されうる。好適な測定法は、当業者に周知である。好ましくは、融解温度または熱分解温度は、融点菅(キャピラリー法)または示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。
【0100】
さらに、熱伝達剤が、高い熱容量を必要とすることは、当業者に理解されよう。「熱容量」とは、温度の単位変化を生むために所与の質量の材料に供給される熱の量を意味する。好ましくは、熱伝達剤は、組成物中に利用されるバインダーおよびキャリア成分より多くの熱容量を有する。好ましくは、熱伝達剤は、250J/Kg.K(ジュール/Kgケルビン)以上、より好ましくは50~1,000J/Kg.K、例えば250~800J/Kg.Kの熱容量を有する。最も好ましくは、熱伝達剤は、400~600J/Kg.Kの熱容量を有する。
【0101】
熱伝達剤は、白色、オフホワイトまたは無色でありうる。いくつかの例では、熱伝達剤は、淡色、明色または低色を示しうる。好ましくは、熱伝達剤は、白色、オフホワイトまたは無色である。このことは、熱伝達剤が組成物の色にわずかな影響しか与えず、したがって近赤外線または中赤外線に曝露する前に組成物を基材に適用した後、ならびに近赤外線または中赤外線を組成物の特定の部分に適用した後、組成物のバックグラウンド色(放射線に曝露されなかった部分の組成物)が減色または低色を有することを意味することは、当業者に理解されよう。この減色または低色されたバックグラウンド色は、近赤外線または中赤外線の適用によって基材上に形成された色または像の強い色に対してコントラストがある。熱伝達剤が組成物のバックグラウンド着色に与える衝撃は、X-Rite eXactまたはSpectroEye分光光度計を使用したΔE値の測定によって実証することができる。例えば、ΔEは、基材への適用後の組成物のL測定および基準白色タイルのL測定から計算することができる。さらなる詳細は以下で詳述する実施例セクションで提供される。
【0102】
熱伝達剤は、固体粒子、特に組成物全体にわたって分散される固体粒子として、本発明の組成物中に存在する。熱伝達剤は、固体粒子として組成物中に投入され、前記固体粒子として組成物中に分散された状態にとどまる。本発明の組成物の近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱の有利な伝達は、組成物中に存在する熱伝達剤の個別固体粒子のネットワーク中の熱の伝達によって達成される。熱伝達剤の固体粒子は、組成物全体にわたって分散される。具体的には、熱伝達剤の固体粒子は、組成物の1種または複数のバインダーおよびキャリア成分の全体にわたって分散され、したがって、組成物の近赤外線吸収性化合物から発色化合物へ熱を伝達できる。そのような熱伝達剤が、組成物中のイオン、解離または溶解形態の材料、例えば、液相、蒸気相または気相中のイオン性、解離または溶解材料によっては促進できないことは、当業者に理解されよう。
【0103】
好ましくは、熱伝達剤は、5μm以下のD50粒径分布値を有する。D50粒径分布は、平均直径または粒径分布の平均値、すなわち、累積分布中の50%の粒径である。より好ましくは、熱伝達剤は、0.1~4μm、例えば0.1~3μm、最も好ましくは0.5~2μmのD50粒径分布値を有する。
【0104】
D50粒径分布は、ISO規格13320:2009にしたがってMalvern Mastersizerを使用して測定される。
【0105】
好ましくは、熱伝達剤は、3~25m/g(平方メートル/グラム)の表面積を有する。より好ましくは、熱伝達剤は、10~25m/g、最も好ましくは15~25m/gの表面積を有する。
【0106】
表面積は、ISO規格13320:2009にしたがってMalvern Mastersizerを使用して測定され、粒径分布データから表面積を計算する。
【0107】
さらに驚くべきことに、かつ有利には、本発明の組成物によって実証される改善された色の形成が、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との特定の比の選択からもたらされうることが発見された。これは本発明の第1の態様によって具現化されるが、第2および第3の態様にも適用可能である。
【0108】
組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比は、1:1~1:100であってもよい。好ましくは、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比は、1:1~1:50、例えば1:1~1:20である。より好ましくは、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比は1:1.5~1:18である。より好ましくは、組成物中の近赤外線吸収性化合物と熱伝達剤との比は1:1.7~1:15、例えば1:4~1:15またはさらには1:5~1:15である。そのような比が、熱伝達剤を介した組成物の近赤外線吸収性化合物から発色化合物への効率的な熱の伝達を可能にすることは、当業者に理解されよう。
【0109】
さらに驚くべきことに、かつ有利には、本発明の組成物によって実証される改善された色の形成が、組成物中の近赤外線吸収性化合物および熱伝達剤の特定量の選択からもたらされうることが発見された。これは本発明の第2の態様によって具現化されるが、第1および第3の態様にも適用可能である。
【0110】
近赤外線吸収性化合物は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。好ましくは、組成物は、0.1~3.5wt%、例えば0.2~1.75wt%、またはさらには0.5~1.5wt%、例えば0.5~1wt%の近赤外線吸収性化合物を含む。
【0111】
本発明の文脈において、wt%は重量百分率を指す。
【0112】
熱伝達剤は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。好ましくは、組成物は、1~15wt%、例えば2~12wt%、または2~10wt%、またはさらには2.5~10wt%、または3~10wt%、または5~10wt%の熱伝達剤を含む。
【0113】
近赤外線吸収性化合物は、組成物の0.1~3.5wt%の量で存在してもよく、熱伝達剤は、1~15wt%の量で存在してもよい。好ましくは、NIR吸収性化合物は、組成物の0.2~1.75wt%の量で存在してもよく、熱伝達剤は、2~12wt%、例えば2~10wt%の量で存在してもよい。より好ましくは、NIR吸収性化合物は、0.5~1.5wt%、例えば0.5~1wt%の量で存在してもよく、熱伝達剤は、2~10wt%、例えば2.5~10wt%、または3~10wt%、または5~10wt%の量で存在してもよい。
【0114】
発色化合物は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。好ましくは、組成物は1~40wt%、例えば5~25wt%、またはさらには5~15wt%の発色化合物を含む。
【0115】
必要に応じて、発色化合物に関連する酸発生剤は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。好ましくは、組成物は、3~35wt%、例えば10~20wt%の酸発生剤を含む。
【0116】
組成物は、1種または複数のバインダーおよびキャリア成分をさらに含んでもよい。従来は、高いガラス転移温度(Tg)および高い最低造膜温度(MFFT)を有する絶縁ポリマーなどの絶縁体のみが、バインダーおよびキャリア成分として利用できた。しかしながら、驚くべきことに、かつ有利には、より低いガラス転移温度(Tg)および/またはより低い最低造膜温度(MFFT)を有するバインダーおよびキャリア成分を含めた、より広範囲なバインダーおよびキャリア成分を本発明の組成物中に利用できることが発見された。これにより、本発明による組成物を、感熱ポリマーホイルおよびフィルムなどの感熱基材を含めた、より広範囲の基材に用いることが可能となる。
【0117】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、任意の好適なガラス転移温度(Tg)を有しうる。1種または複数のバインダーおよびキャリア成分の選択が、少なくとも組成物を適用する基材によって決まることは、当業者に理解されよう。
【0118】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、-60~120℃、例えば-10~120℃、または20~115℃、またはさらには40~110℃のTgを有しうる。この範囲内のガラス転移温度は、ポリマーホイルおよびフィルム以外の基材、例えば、紙基材に適している。
【0119】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、-60~40℃、例えば-55~30℃、またはさらには-50~25℃のTgを有しうる。この範囲内のガラス転移温度は、感熱ポリマーホイルおよびフィルム基材を含めたポリマーホイルおよびフィルム基材に適している。
【0120】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分のTgは、任意の好適な方法によって測定することができる。Tgの測定法は、当業者に周知であろう。本明細書では、Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。典型的には、これはASTM D3418および/またはASTM E1356および/またはISO11357に準拠するものである。
【0121】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、任意の好適な最低造膜温度(MFFT)を有しうる。1種または複数のバインダーおよびキャリア成分の選択が、少なくとも組成物を適用する基材によって決まることは、当業者に理解されよう。
【0122】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、-10~120℃、例えば-10~115℃、またはさらには40~110℃のMFFTを有しうる。この範囲内の最低造膜温度は、ポリマーホイルおよびフィルム以外の基材、例えば紙基材に適している。
【0123】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、-10~40℃、例えば-10~35℃、または-5~30℃、またはさらには-5~25℃のMFFTを有しうる。この範囲内の最低造膜温度は、感熱ポリマーホイルおよびフィルム基材を含めたポリマーホイルおよびフィルム基材に適している。
【0124】
MFFTは、任意の好適な方法によって測定することができる。MFFTの測定法は、当業者に周知であろう。本明細書では、MFFTは、ISO2115:1996にしたがって測定される。
【0125】
好適な1種または複数のバインダーおよびキャリア成分の例としては、以下に限定されないが、アクリルポリマー、スチレンポリマー、スチレン-アクリルコポリマーおよびこれらの水素化生成物などのポリマーバインダー;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルブチラールなどのビニルポリマー;ポリオレフィンおよびこれらの水素化またはエポキシ化生成物;アルデヒド含有ポリマー;エポキシド含有ポリマー;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;スルホン含有ポリマー;天然産物およびこれらの誘導体;ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、これらに限定されないが、アクリルポリマーおよびスチレンポリマーなどのポリマーバインダー;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルブチラールなどのビニルポリマー;ポリオレフィンおよびこれらの水素化またはエポキシ化生成物;アルデヒド含有ポリマー;エポキシド含有ポリマー;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;スルホン含有ポリマー;天然産物およびそれらの誘導体;ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー;ならびにこれらの組み合わせから選択することができる。
【0126】
好ましくは、1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、アクリルポリマー、スチレンポリマー、スチレン-アクリルコポリマー、ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルブチラールなど);ポリアミド;ポリウレタン;およびニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー;ならびにこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、スチレン-アクリルコポリマー、セルロース系ポリマー(ニトロセルロースなど)、およびポリウレタン、ならびにこれらの組み合わせから選択される。
【0127】
1種または複数のバインダーおよびキャリア成分は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。好ましくは、組成物は、5~70wt%、例えば6~70wt%または7~65wt%、またはさらには10~65wt%、または10~40wt%の1種または複数のバインダーおよびキャリア成分を含む。
【0128】
本発明の第1の態様による組成物は、硬化性化合物をさらに含んでもよい。好適な硬化性化合物は、当業者に周知であろう。好適な硬化性化合物の例としては、これらに限定されないが、任意の市販のモノマー、オリゴマー、モノマーとオリゴマーとの混合物、または光開始剤が挙げられる。硬化性化合物は、任意の好適な量で組成物中に存在しうる。
【0129】
組成物は、添加剤または添加剤の組み合わせをさらに含んでもよい。好適な添加剤は、当業者に周知であろう。好適な添加剤の例としては、以下に限定されないが、ポリマー;光またはエネルギー吸収剤;紫外線吸収剤;界面活性剤;湿潤剤;乾燥促進剤;顔料などの着色料;着色剤;蛍光剤;可塑剤;光学的光沢剤;酸化剤または還元剤;安定剤;ヒンダードアミンなどの光安定剤;増粘剤または減粘剤などのレオロジー調整剤;保湿剤;接着促進剤;酸または塩基捕捉剤;遅延剤;消泡剤;泡消し剤;およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、組成物は、0.1~10wt%、例えば0.25~7.5wt%、より好ましくは0.5~5wt%の添加剤またはこれらの組み合わせを含む。
【0130】
組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。組成物は、単一の溶剤または溶剤の混合物を含んでもよい。溶剤は、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合物、または有機溶剤の混合物を含んでもよい。好適な有機溶剤としては、以下に限定されないが、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、および酢酸n-ヘキシルなどのエステル;ベンゼン、トルエン、キシレン、および溶剤ナフサ100、150、200などの芳香族炭化水素;アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、およびメチルエチルケトンなどのケトン;ブチルグリコールなどのグリコール;メトキシプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。当業者は、特に組成物中に存在する発色化合物に基づいて、本発明の第1、第2および第3の態様による組成物中で使用するための適当な溶剤を決定できる。典型的には、発色化合物が多価金属のオキソアニオンである場合、溶剤は水系(水のみを含み、有機溶剤を含まない)であり得、または溶剤系(有機溶剤のみを含み、水を含まない)であり得る。典型的には、発色化合物がロイコ染料である場合、溶剤は水系である。好ましくは、溶剤は、0.1~60wt%、例えば10~50wt%、またはさらには30~45wt%の量で組成物中に存在する。溶剤の量は、組成物中に存在するすべての溶剤を含み、すなわち、組成物を形成するために使用される成分材料のいずれの溶剤をも含むと理解される。
【0131】
本発明による組成物の印刷粘度が、印刷用途によって変動してくることは、当業者に理解されよう。水および溶剤系印刷の場合、本発明の組成物は、100~600cP(0.1~0.6パスカル秒)の印刷粘度を有しうる。UVフレキソ印刷の場合、本発明の組成物は、6000~17,000cP(6~71パスカル秒)の印刷粘度を有しうる。UVオフセット印刷の場合、本発明の組成物は、90,000~200,000cP(90~200パスカル秒)の印刷粘度を有しうる。印刷粘度は、Brookfield DV2T粘度計(No.3スピンドル(RVスピンドルセット)、速度60rpm、22℃)を使用して測定される。この印刷粘度は、基材への適用が準備できているときの組成物の粘度である。
【0132】
本発明の組成物は、好ましくは、熱伝達剤、発色化合物および近赤外線吸収性化合物に加えて、1種または複数のキャリアまたはバインダー成分、添加剤または添加剤の組み合わせ、および溶剤または溶剤の組み合わせを含む。
【0133】
本発明の組成物は、レーザー反応性組成物などの放射線反応性組成物である。本発明の組成物は、インク組成物としてさらに好適である。本発明の組成物は、基材上への色および単色または多色像の形成に好適である。
【0134】
本発明の第1、第2または第3の態様による組成物は、任意の好適な基材へ適用可能である。組成物の内容は、組成物を適用する基材によって様々であるように思われることが理解されよう。
【0135】
したがって、本発明の第4の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第1の態様の組成物を含む基材を提供する。
【0136】
本発明の第5の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第2の態様の組成物を含む基材を提供する。
【0137】
本発明の第6の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第3の態様の組成物を含む基材を提供する。
【0138】
上述したように、驚くべきことに、かつ有利には、本発明の第1、第2または第3の態様による組成物が感熱基材に適用できることが発見された。「感熱基材」とは、紙などの200℃以下の融解温度もしくは熱分解温度を有する任意の基材、または200℃以下の融解温度もしくは熱分解温度を有するポリマーフィルムもしくはホイル基材を意味する。従来、組成物全体にわたって分散される固体粒子として存在する熱伝達剤なしで、近赤外線吸収性化合物からの過剰な熱を吸収した際にバインダーまたはキャリア成分が軟化または融解したと考えられ、したがって、過剰の熱が感熱基材へ伝達されると考えられるため、感熱基材を利用することはできなかった。本発明による組成物は、好ましくかつ建設的に熱を実質的に保持および利用し、それを不利にかつ破壊的には基材へ伝達せず、したがって感熱基材へ適用することができる。
【0139】
組成物を適用しうる好適な基材の例としては、これらに限定されないが、ポリマーおよび再生ポリマー材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはこれらの組み合わせ;セルロース;ガラス;プラスチック;ブリキなどの金属および金属ホイル;織物;紙;段ボール板紙;厚紙、および同等の再生類似体、またはこれらの組み合わせ;セラミックス;食料品および医薬品;またはこれらの組み合わせ、例えばポリマー罫紙またはポリマー含侵紙が挙げられる。ポリマーおよび再生ポリマー材料は、ポリマーホイルまたはフィルム基材の形態であってもよい。
【0140】
好適な基材としては、上に列挙した材料および基材から形成される多層基材構造体が挙げられる。例えば、多層基材構造体は、連結してポリマーホイルまたはフィルム基材になる紙基材、例えば、積層基材を形成するポリプロピレンフィルムを含みうる。他の多層基材構造体には、組成物がポリマーホイルもしくはフィルム基材のいずれかの間に挟まれるか、またはそれらの外側に適用されて連結される2種以上のポリマーホイルまたはフィルム基材が挙げられる。多層基材構造体の構成基材が接着剤によって結合されることは、当業者に理解されよう。
【0141】
好ましくは、組成物を適用する基材は、紙基材またはポリマーホイルもしくはフィルム基材である。好ましくは、ポリマーフィルムまたはホイル基材は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される。より好ましくは、ポリマーフィルムまたはホイル基材は、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)から選択される。
【0142】
組成物を適用する基材は、12μm~12mm、例えば12μm~1mm、または20~500μm、またはさらには30~350μmの厚さを有しうる。
【0143】
基材が紙基材である場合、組成物を適用する基材は、50~500gsm、例えば60~250gsm(80~200gsmを含む)の単位当たりの重量(gsm)を有しうる。
【0144】
組成物を適用する基材自体をさらなる基材に適用可能であることは、当業者に理解されよう。さらなる基材の例としては、これらに限定されないが、ポリマーおよび再生ポリマー材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ポリアミド(PA)(ナイロンなど)、ポリ塩化ビニル(PVC)、もしくはこれらの組み合わせ;セルロース;ガラス;プラスチック;ブリキなどの金属および金属箔;織物;紙;段ボール板紙、厚紙、および同等の再生類似体、もしくはこれらの組み合わせ;セラミックス;食料品および医薬品;またはこれらの組み合わせ、例えばポリマー罫紙が挙げられる。好適な基材としては、上に列挙した材料および基材から形成される多層構造体が挙げられる。ポリマーおよび再生ポリマー材料は、ポリマーホイルまたはフィルム基材の形態であってもよい。
【0145】
本発明の第1、第2もしくは第3の態様による組成物、または本発明の第4、第5もしくは第6の態様にしたがって組成物を適用した基材は、標識(接着剤もしくはラップアラウンド)としての、ならびに/または日用消費財;食料用および温かいもしくは冷たい飲料用容器を含めた使い捨て包装などの包装;シャンプー容器などの衛生およびパーソナルケア製品の包装;化粧品包装;装飾金属製品;ブリスターパック包装;積層パウチ;医療機器および診断装置ならびに関連包装;ならびに看板における最終用途に好適でありうる。
【0146】
好ましくは、基材は接着層を含む。この接着層は、基材をさらなる基材または任意の他の材料に適用するように働き、したがって基材の外面上にあることを理解されたい。接着層は、基材の外面の表面のすべて、実質的にすべて、または一部を覆ってもよい。組成物を基材に適用するとき、接着層は、好ましくは、組成物を適用する部分以外の基材の外面上にある。
【0147】
基材は、基材に適用された本発明の第1、第2または第3の態様による組成物の単一層または複数の層を含んでもよいことを理解されたい。
【0148】
基材は、多層構造体を形成するように、基材に適用された1つまたは複数の追加の層をさらに含んでもよいことを理解されたい。多層構造体は、基材に適用された複数の不連続層を有する基材を含んでもよい。この複数の不連続層は、本発明の第1、第2または第3の態様による組成物、ならびに1つまたは複数の追加の層を含んでもよい。好適な追加の層は、これらに限定されないが、断熱層、保護層、プライマー層、接着促進層、障壁層、および放射線遮断層(紫外線遮断層など)、消光層、ヒンダードアミン光安定剤、ならびにこれらの組み合わせから選択することができる。
【0149】
好ましくは、多層構造体は、以下を:プライマー層、本発明の第1、第2または第3の態様による組成物で形成される層、および保護層(オーバーワニス層など)の順序で適用された基材から構成される。上述するように、低Tgおよび低MFFTを有するバインダーおよびキャリア成分が、感熱基材を多層構造体に利用することを可能にすることは、当業者に理解されよう。加えて、低Tgおよび低MFFTを有するバインダーおよびキャリア成分はまた、有利には、プライマー層および保護層などの1つまたは複数の追加の感熱層を多層構造体に利用することも可能にする。多層構造体において、本発明の組成物は、本発明の第1、第2または第3の態様による組成物の層に保持される近赤外線からの熱の吸収を可能にし、したがって1つまたは複数の追加の感熱層および感熱基材を利用できる。これにより、本発明による組成物を含む多層構造体の用途の幅が広がる。前記多層構造体では、基材は、多層基材構造体を含めた、上に列挙したものから選択することができる。
【0150】
多層構造体の1つまたは複数の追加の層は、異なる発色化合物を含む層も含んでもよい。「異なる発色化合物」とは、発色化合物が、本発明の第1、第2もしくは第3の態様による組成物の発色化合物とは異なる発色化合物から選択されること、または発色化合物が、本発明の第1、第2もしくは第3による組成物の発色化合物と同じ発色化合物群の中の異なる化合物であることを意味する。発色化合物群は、上で定義したロイコ染料、多価金属のオキソアニオン、ジアセチレン化合物、またはケト酸化合物である。
【0151】
多層構造体の層の順序は、目的とする用途によって変わることを理解されたい。加えて、各層の厚さまたはコート重量が、それらの内容によって変わってくることも理解されたい。
【0152】
したがって、本発明の第7の態様にしたがって、本発明の第1の態様による組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法を提供する。
【0153】
本発明の第8の態様にしたがって、本発明の第2の態様による組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法を提供する。
【0154】
本発明の第9の態様にしたがって、本発明の第3の態様による組成物を基材に適用することを含む、基材を形成する方法を提供する。
【0155】
組成物は、任意の好適な方法によって基材に適用してよい。組成物を基材に適用する方法は、当業者に周知であろう。好適な適用法としては、以下に限定されないが、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷およびメイヤーバー塗工が挙げられる。組成物は、基材の外面の表面のすべて、実質的にすべてまたは一部に適用してよい。
【0156】
組成物は、組成物を適用する基材と適用法の両方に応じて、任意の好適なコート重量まで基材上に適用してよい。基材上の組成物のコート重量が、形成される色の強度に影響することは、当業者に理解されよう。好ましくは、組成物は、0.1~50gsm(グラム/平方メートル)、例えば0.1~25gsm、最も好ましくは0.1~15gsmのコート重量まで適用される。
【0157】
コート重量は、任意の好適な方法によって測定することができる。好適な測定法は、当業者に周知であろう。好ましくは、コート重量は、適用する組成物を含む基材と含めない基材の同じ面積を秤量し、2つの重量の差を比較することによって測定する。
【0158】
組成物は、単一層として、または複数の層として基材に適用することができる。
【0159】
組成物は、上記の多層構造体の複数の不連続層の一部として基材に適用してもよい。組成物は、プライマーの上にまたはプライマー層として、アンダーコートまたはオーバーコートとして基材に適用してもよい。組成物は、1回または複数回、基材に適用してよい。組成物は、基材の外面の少なくとも一部または全部に適用してよい。
【0160】
基材に関連する上述の1つまたは複数の追加の層を、組成物に関連して本明細書に記載したものと同じ方法で基材に適用してもよいことを理解されたい。
【0161】
上述の多層構造体の複数の不連続層は、任意の好適な全コート重量を有しうる。好ましくは、複数の不連続層は個別に、基材上に適用したときの本発明の第1、第2または第3の態様による組成物に関連して上で記述したコート重量を有する。さらに、好ましくは、複数の不連続層は、100gsm(グラム/平方メートル)以下、より好ましくは50gsm以下、最も好ましくは30gsm以下の全コート重量(すべての層を含む)を有する。複数の不連続層の全コート重量が、層の形成および基材によって決まってくることは、当業者に理解されよう。
【0162】
配合後、基材への適用時、および近赤外線または中赤外線の適用前、本発明の第1、第2および第3の態様による(ならびに他のすべての態様で利用される)組成物は、白色、オフホワイトまたは無色でありうる。いくつかの例では、組成物は、淡色、明色または低色を示しうる。この淡色、明色または低色は、近赤外線吸収性化合物、発色化合物または熱伝達剤のいずれかの存在によって生じうるが、典型的には近赤外線吸収性化合物によって生じうる。表示される場合、この淡色、明色または低色は、近赤外線または中赤外線の適用時に形成される色に比べて視覚的に有意に弱い色であり、したがって、近赤外線または中赤外線の適用で、強力なコントラストの色および/または像の形成が達成されることが理解されよう。組成物のバックグラウンド、すなわち、近赤外線または中赤外線に曝露されない部分の組成物が、白色、オフホワイトまたは無色のままであるか、またはいくつかの例では、上述したような淡色、低色もしくは明色を示すことがさらに理解されよう。
【0163】
本発明の第1、第2または第3の態様による(および他のすべての態様で利用される)組成物は、配合時、基材への適用時および近赤外線または中赤外線の適用前、明瞭、透明または半透明でありうる。
【0164】
組成物の基材への適用は、基材上に色および像を形成することを可能にする。
【0165】
したがって、本発明の第10の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第1の態様による組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む方法を提供する。
【0166】
本発明の第11の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第2の態様による組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む方法を提供する。
【0167】
本発明の第12の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第3の態様による組成物を含む基材上に色を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に色を形成させることを含む方法を提供する。
【0168】
本発明の第13の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第1の態様による組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む方法を提供する。
【0169】
本発明の第14の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第2の態様による組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む方法を提供する。
【0170】
本発明の第15の態様にしたがって、基材上に適用された本発明の第3の態様による組成物を含む基材上に像を形成する方法であって、組成物を近赤外線または中赤外線に曝露して、基材上に像を形成させることを含む方法を提供する。
【0171】
用語「色」などの本明細書中で使用される用語は、可視光カラースペクトルの色および色相、すなわち、ブラック、ブラウン、ターコイズ、パープル、ピンク、シアン、およびマゼンタ、ならびにこれらの混合物に加えて、レッド、オレンジ、イエロー、ブルー、グリーンおよびバイオレットを意味する。原色および二次色の両方が包含される。本発明の文脈において、用語は、マゼンタ、シアン、ピンク、パープル、ターコイズ、ブラウンおよびブラックに加えて、可視光カラースペクトルの各色の異なる濃淡を説明するためにも使用されうる。
【0172】
用語「像」は、ロゴ、機械可読な線形バーコード、2D Datamatrixコード、QRコードならびにDigimarcコードなどのコードおよびマーク、グラフィックス、図面、写真、記号、およびテキストを組み込むが、これらに限定されない。用語はさらに、単色像および多色像の両方を組み込む。本発明の文脈において、単色像および多色像の両方で、像の形成を促進する発色化合物を含む組成物の操作であると理解されよう。形成された像は、ヒトおよび/または機械で読み取り可能であり、コーディングおよびマーキング、トラッキングおよびトレーシングのタギング、ならびに最終段階のカスタマイズまたはパーソナライズの目的のために使用することができる。コードは、例えば、有効期限および/またはバッチもしくはロットコードを示すために英数字テキストまたは記号フォントで構成されうる。コードは、グラフィックスであってもよく、例えば、バーコードスキャナー、検孔機などの装置を用いて、またはスマートフォンのカメラもしくはアプリを使用してスキャンまたは検証することができる。本発明の文脈において、像はコントラスト像である。「コントラスト像」とは、基材上の組成物によって形成される像が鮮明であり、組成物のバックグラウンド、すなわち近赤外線もしくは中赤外線に曝露されなかった組成物の一部、または基材への適用後に組成物を通して目に見える場合、基材の色から容易に識別できることを意味する。
【0173】
形成される色が黒色であるか、または形成される像の色もしくはその濃淡もしくは色調(グレースケールを含む)が黒色である場合、色または像の光学密度は、光学密度ブラック(ODB)値を測定することによって評価することができる。形成される色が赤色であるか、または形成される像の色もしくはその濃淡もしくは色調が赤色である場合、色または像の光学密度は、光学密度マゼンタ(ODM)値を測定することによって評価することができる。形成される色が青色であるか、または形成される像の色もしくはその濃淡もしくは色調が青色である場合、色または像の光学密度は、光学密度シアン(ODC)値を測定することによって評価することができる。形成される色が黄色であるか、または形成される像の色もしくはその濃淡もしくは色調が黄色である場合、色または像の光学密度は、光学密度イエロー(ODY)値を測定することによって評価することができる。ODB、ODM、ODCおよびODY値との関係において、値が大きいほど、形成される各色:ブラック、マゼンタ、シアンまたはイエローが濃くなる。
【0174】
ODB、ODM、ODCおよびODY値は、小さい値から大きい値のブラック、マゼンタ、シアンまたはイエローの各カラースケール上で光学密度を定量化し、ここで、ODB、ODM、ODCおよびODYの測定は、標準計器濃度計およびX-Rite eXactまたはSpectroEyeまたはTechKon SpectroDens分光光度計を使用して行うことができる。
【0175】
像(ODB、ODM、ODCまたはODY値)と未撮像の組成物バックグラウンド、すなわち、放射線に曝露されていない基材上の組成物の部分(バックグラウンドODB、ODM、ODCまたはODY)との間の測定光学密度における差ΔODB、ΔODM、ΔODCまたはΔODYも測定することができる。
【0176】
本発明の文脈において、色または像の効果的な形成は、1.05以上、好ましくは1.1以上のODB、ODM、ODCまたはODY値の測定によって実証される。そのような値は、良好な光学密度、すなわち、強い(濃い)色または組成物のバックグラウンドに対して良好なコントラストを持つ高密度の強力に着色された像の形成を実証する。
【0177】
典型的には、形成される色または像は、周囲条件下で少なくとも3日間、好ましくは少なくとも4日間、より好ましくは少なくとも1週間またはさらには少なくとも2週間、最も好ましくは少なくとも2カ月間保持される。「周囲条件」などの本明細書中で使用される用語は、発色化合物が曝露される周囲環境の条件の正常な範囲、すなわち、使用中、保存中およびその他の間に化合物が曝露される温度、圧力および大気条件の範囲を指す。これには、X線の電磁放射線、紫外線(UV)および赤外(IR)線を含めた日射が含まれる。
【0178】
典型的には、周囲条件は、10~35℃の温度、20~100kPaの圧力を含み、環境は典型的には、酸素含有大気である。
【0179】
「単色像」または「単一色の像」などの本明細書中で使用される用語は、ヒトおよび/または機械に読み取り可能であり、ヒトの目に見える単一色を有する像を指す。本発明の文脈において、本発明の第1、第2および第3の態様による(ならびに他のすべての態様で使用される)組成物のバックグラウンド部分は、単色像の部分を形成しうる。
【0180】
「多色像」などの本明細書中で使用される用語は、複数の色を有するヒトおよび/または機械に読み取り可能な像、すなわち、ヒトの目に見える2つ以上の像を指す。本発明の文脈において、本発明の第1、第2および第3の態様による(ならびに他のすべての態様において使用される)組成物のバックグラウンド部分は、多色像の部分を形成しうる。
【0181】
「放射線」などの本明細書中で使用される用語は、波または粒子の形態のエネルギーを指し、特に、紫外(UV)、可視光、近赤外(NIR)および赤外(IR)粒子放射線、例えばアルファ(α)線、ベータ(β)線、中性子線およびプラズマなどの電磁放射線を指す。電磁スペクトルの異なる領域の波長範囲は、当業者に既知である。完全性のためには、用語「近赤外線」とは、電磁スペクトルの近赤外領域内の放射線を意味し、780nm~2500nm、好ましくは780nm~1600nmの波長を有する。典型的には、近赤外線は、市販のファイバーレーザーを使用する場合、780nm~1600nmの波長で適用される。用語「中赤外線」は、電磁スペクトルの中赤外領域内の放射線を意味し、2500nm~50000nm、好ましくは9000~12000nm、または9300nm、9600nm、10200nmもしくは10600nm、またはより好ましくは10600nmの波長を有する。典型的には、中赤外線は、市販のCOレーザーを使用して、9000~12000nm、例えば9300nm、9600nm、10200nmまたは10600nm、好ましくは10600nmの波長で適用される。
【0182】
「レーザー光源」などの本明細書中で使用される用語は、任意の好適な市販のまたは非市販のレーザー光源を意味する。好適な例としては、これらに限定されないが、近赤外線または中赤外線放射線を含めた放射線を供給するためのファイバーレーザー、ファイバー結合レーザーダイオードアレイ、COレーザー、レーザーダイオードアレイまたはダイレクトダイオードレーザーが挙げられる。
【0183】
基材上の組成物は、近赤外線または中赤外線のいずれかに曝露される。基材上の組成物は、780~1600nmの波長を有する近赤外線または9000~12,000nmの波長を有する中赤外線に曝露される。好ましくは、組成物は、780~1600nmの波長を有する近赤外線または9300、9600、10200もしくは10600nmの波長を有する中赤外線に曝露される。好ましくは、組成物は、780~1600nmの波長を有する近赤外線または10600nmの波長を有する中赤外線に曝露される。より好ましくは、組成物は近赤外線に曝露される。より好ましくは、組成物は、780~1600nmの波長を有する近赤外線に曝露される。
【0184】
近赤外線または中赤外線を基材に適用して、組成物全体にわたって色を発色させても、所望の像を形成するために組成物の局部的位置で選択的に発色化合物の色を発色させてもよい。好ましくは、色は、基材上の組成物の異なる局部的位置で選択的に発色させる。
【0185】
複数の色を形成できる発色化合物(例えば、ジアセチレン化合物)が、本発明の第1、第2もしくは第3の態様による組成物中で利用される場合;発色化合物の組み合わせが、本発明の第1、第2もしくは第3の態様による組成物中に存在する場合;または本発明の第1、第2もしくは第3の態様による組成物中のものとは異なる発色化合物が、上述した多層構造体の1つまたは複数の追加の層の中に存在する場合、多色像が形成されうることは、当業者に理解されよう。各発色化合物の色を、組成物の局所的位置で選択的に発色させることができる。
【0186】
近赤外線または中赤外線は、任意の好適な手段を用いて組成物に適用することができる。好適な手段は、レーザー光源によって近赤外線または中赤外線を組成物へ、したがって発色化合物へ適用することによるレーザー励起させることを含む。近赤外線は、典型的には、NIRファイバーダイオードレーザーを使用して適用される。中赤外線は、典型的には、COレーザーを使用して適用される。近赤外線または中赤外線を局部的位置の組成物に適用して、組成物のこれらの局部的位置で発色化合物の色を選択的に発色させることができることは、当業者に理解されよう。これらの局部的位置は、互いに重なっていてもよい。あるいは、近赤外線または中赤外線を投光照明によって基材上または基材内の組成物に適用でき、組成物全体が放射線で満ちることを意味することは、当業者に理解されよう。これは、IRランプなどのランプまたは電球、ダイオードバー、またはLEDを使用して行うことができる。発色化合物による色の形成を促進するために要する適当な時間をかけて放射線が組成物に適用されることは、当業者に理解されよう。典型的には、十分な放射を行うために要する時間は、放射線を適用するために使用される手段の出力および適用法(すなわち局部的位置で、または投光照明による)によって決まる。例えば、一実施形態では、近赤外線または中赤外線は、120秒未満、または60秒未満、例えば20秒未満、またはさらには10秒未満または5秒未満の間、発色化合物に適用してもよい。
【0187】
色の形成を達成するためにレーザー光源を使用して適用された近赤外線または中赤外線の放射線量は、放射線を適用する時間、放射線を適用するために使用される手段の出力(ワット数)、したがってレーザー光源によって送達されるフルエンス(単位面積当たりに送達されるエネルギー量)、すなわちJ/cmを変更することによって制御することができることを理解されたい。
【0188】
さらに、複数の発色化合物が存在する場合、異なる発色化合物を使用した色の形成を促進するために必要とされる、適用する近赤外線のフルエンスが異なりうることも理解されたい。
【0189】
近赤外線または中赤外線に曝露されると、発色化合物は、任意の色を形成しうる。発色化合物の組み合わせが組成物中に存在する場合、発色化合物によって形成される色は、典型的には異なることを理解されたい。さらに、近赤外線または中赤外線を適用するために使用される手段が、形成される色に影響を与えることも、当業者に理解されよう。例えば、レーザー光源を使用して近赤外線または中赤外線を適用する場合、フルエンス(単位面積当たりで送達されるエネルギー量)は、形成される色の強度、したがって光学密度に影響しうる。本発明の文脈において、フルエンスは、近赤外線を適用するために使用される手段の出力(ワット数)と、レーザーの走査速度または可動式ステージの速度によって制御可能な近赤外線を基材上の特定の局部的位置に適用する時間と、によって決まる。これらの2つの変数を変更してフルエンスを変化させることができる。フルエンスが低い(例えば、低出力および/または短い照射時間)場合、発色化合物によって形成される色は、弱い色(ODB、ODM、ODCまたはODY値が小さく、低い光学密度)になり、フルエンスが高い場合、発色化合物によって形成される色は、より強い色(より大きなODB、ODM、ODCまたはODY値で、高い光学密度)になる。ケト酸化合物を発色化合物として利用する場合、フルエンスの変化も、色を変化させる発色化合物の色をもたらすことができる。例えば、低いフルエンスは黄色を形成することができ、高いフルエンスは橙色または赤色を形成しうる。本発明の文脈において、フルエンス値は、0.01~50J/cm、例えば0.1~20J/cm、さらには0.5~10J/cm、例えば0.5~5J/cmの範囲であってもよい。
【0190】
上述するように、本発明は、低いフルエンスをもたらす、低い出力の近赤外線または中赤外線源を、近赤外線または中赤外線を供給するために利用することを可能にすることを理解されたく、熱伝達剤は、近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達を非常により効率的に促進する。本発明の文脈において、「低い出力」とは、単一のレーザー光源当たり100ワット未満、例えば50ワット未満を意味する。これは、レーザーアレイなどの複数のレーザー光源の組み合わせによって倍増できる。
【0191】
前述するように、追加の刺激を組成物に適用できることは、当業者に理解されよう。例えば、紫外線などの追加の刺激を、発色化合物としてジアセチレン化合物を含む組成物に適用して、初期の第1の色の形成を達成することができる。この追加の刺激は、局部的位置で適用するためのレーザー光源の使用および近赤外線を適用するための上に詳述した全組成物にわたる適用のための投光照明によるもの、しかしながら、紫外線の適用のための広帯域UVランプ源またはUVレーザーなどの適当な光源の使用を含めた任意の好適な手段を用いて組成物に適用することができる。近赤外線または中赤外線および該追加の刺激への組成物の曝露は、所望の像を形成するために要する適当な順序で実施し、組成物の内容、すなわち、組成物中に存在する発色化合物によって決まることを理解されたい。さらに、近赤外線または中赤外線および追加の刺激は、組成物の同じ局部的位置に適用してよいことも理解されたい。
【0192】
本発明の第16の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の色の形成における、本発明の第1の態様による組成物の使用を提供する。
【0193】
本発明の第17の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の色の形成における、本発明の第2の態様による組成物の使用を提供する。
【0194】
本発明の第18の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の色の形成における、本発明の第3の態様による組成物の使用を提供する。
【0195】
本発明の第19の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の像の形成における、本発明の第1の態様による組成物の使用を提供する。
【0196】
本発明の第20の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の像の形成における、本発明の第2の態様による組成物の使用を提供する。
【0197】
本発明の第21の態様にしたがって、近赤外線または中赤外線の適用による基材上の像の形成における、本発明の第3の態様による組成物の使用を提供する。
【0198】
レーザー光源または投光照明によって、本明細書中で開示する組成物に適用される近赤外線または中赤外線または追加の刺激が、該目的に適した、すなわち、所望の色または像を作製するために必要な近赤外線または追加の刺激の計算および制御、ならびにその基材上の組成物への適用に適した装置を使用して適用されることは、当業者に理解されよう。装置は、必要な順序での組成物への近赤外線、中赤外線または他の刺激の適用を実現し、像の形成を促進するようにプログラム化されると理解される。
【0199】
化学的定義
用語「C1~20アルキル」は、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和アルキル基を表し、任意選択により「C1~20アルキル」基は、ある程度の不飽和(部分的不飽和)を含有していてもよく、すなわち、1つまたは複数のアルケン/アルケニル部分を含有していてもよい。範囲C1~20アルキルの一部の場合、そのすべての部分群、例えばC1~10アルキル、C5~15アルキル、C5~10アルキル、およびC1~6アルキルが企図される。前記C1~4アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが挙げられる。アルキル基は、C1~20アルキル基、「C6~12アリール」、および「C1~18アルコキシ」、ハロゲン、ならびに「C3~18シクロアルキル」を含めた1つまたは複数の官能基で任意選択により置換されていてもよい。
【0200】
用語「C1~18アルコキシ」は、酸素原子を通して分子の残りの部分に結合されている直鎖または分岐鎖C1~18アルキル基を示す。範囲C1~18アルコキシの一部の場合、そのすべての部分群、例えばC1~10アルコキシ、C5~15アルコキシ、C5~10アルコキシ、およびC1~6アルコキシが企図される。前記C1~4アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、他の官能基で任意選択により置換されていてもよい。アルコキシ基は、C1~18アルキル基、「C6~12アリール」、および「C1~18アルコキシ」、ハロゲン、ならびに「C3~18シクロアルキル」を含めた1つまたは複数の官能基で任意選択により置換されていてもよい。
【0201】
用語「C6~12アリール」は、6~12個の炭素原子を有する単環式または多環式共役不飽和環系を示す。範囲C6~12アリールの一部の場合、そのすべての部分群、例えばC6~10アリール、C10~12アリール、およびC6~8アリールが企図される。アリール基は、単環式基または二環式基などの縮合環基を含む。C6~12アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチルまたはアズレニルが挙げられる。インダンおよびテトラヒドロナフタレンなどの縮合環もC6~12アリール基に含まれる。アリール基は、他の官能基で任意選択により置換されていてもよい。アリール基は、C1~18アルキル基、ハロゲン、および「C1~18アルコキシ」を含めた1つまたは複数の官能基で任意選択により置換されていてもよい。アリール基は、その不飽和環系の単一の位置で、これらの置換基により置換されていてもよい、またはその不飽和環系の複数の位置で、これらの置換基により置換されていてもよい。
【0202】
用語「C3~18シクロアルキル」は、3~18個の炭素原子を有する、非芳香族の飽和または部分的に飽和された(すなわち、1つまたは複数のアルケンまたはアルケニル部分を含有し得る)単環系を示す。範囲C3~18シクロアルキルの一部の場合、そのすべての部分群、例えばC3~8シクロアルキル、C5~15シクロアルキル、およびC5~10シクロアルキルが企図される。好適なC3~10シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。シクロアルキル基は、他の官能基で任意選択により置換されていてもよい。シクロアルキル基は、C1~20アルキル基、「C5~20アリール」、「C1~20アルコキシ」、「ヒドロキシルC1~20アルコキシ」および「C3~18シクロアルキル」を含めた1つまたは複数の官能基で任意選択により置換されていてもよい。
【0203】
用語「不飽和」および「部分的に飽和の」は、環構造が、複数の原子価結合を共有する原子を含有する、すなわち、環が、少なくとも1つの多重結合、例えばC=C、C≡CまたはN=C結合を含有する環を指す。用語「完全に飽和された」は、環原子間に一切の多重結合が存在しない環を指す。
【0204】
「任意選択の」または「任意選択により」は、後続して記載される事象または状況が起こり得るが、必ずしも起こらないことを意味し、記述は、事象または状況が起こる例と起こらない例を含む。
【0205】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0206】
用語「複素環」は、4~18個の環原子を有するが、環原子の1個または複数が炭素ではなく、例えば窒素、硫黄または酸素である、非芳香族の飽和または部分的飽和の単環または多環系を示す。前記環系は、環系のヘテロ原子または炭素原子のいずれかを通して分子の残りの部分に結合されていてもよい。複素環式基の例としては、これらに限定されないが、ピペリジニル、モルホリニル、ホモモルホリニル、アゼパニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、ジアゼピニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニルおよびジヒドロピロリルが挙げられる。
【0207】
用語「ヘテロアリール」は、5~18個の原子を含むが、原子の1個または複数は炭素以外であり、例えば窒素、リン、硫黄または酸素である、単環式または多環式ヘテロ芳香族基を示す。前記ヘテロ芳香環は、環系のヘテロ原子または炭素原子のいずれかを通して分子の残りの部分に結合されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、これらに限定されないが、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、オキサトリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニルおよびチアジアゾリルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は少なくとも1個の環窒素原子を含有する。ヘテロアリール基の中の窒素原子は、イミダゾールもしくはピリジンの場合のように塩基であってもよく、またはインドールもしくはピロール窒素の場合のように本質的に非塩基であってもよい。一般に、環の任意のアミノ置換基を含めたヘテロアリール基の中に存在する塩基性窒素原子の数は5未満であろう。
【0208】
用語「環状アミノ基」は、4~18個の環原子を有するが、環原子の1個が窒素であり、基が、この窒素原子を介して分子の残りの部分に結合している、非芳香族の完全に飽和されているまたは部分的に不飽和の単環系を指す。該環状アミノ基において、残りの環原子の1個または複数は炭素以外、例えば窒素、硫黄または酸素であってもよい。該環状アミノ基の例としては、ピペリジン(1-ピペリジニル)、ピロリジン(1-ピロリジニル)、ピロリドン、モルホリンまたはピペラジンが挙げられる。
【0209】
本明細書中の特定の化合物へのすべての言及は、その化合物それ自体、また、適当な場合、その誘導体、水和物、溶媒和物、複合体、異性体および互変異性体を包含すると解釈されるものとする。
【0210】
本明細書中に含まれるすべての特徴は、上記態様のいずれとも組み合わせることができ、任意の組み合わせでありうる。
【0211】
本発明をより良く理解し、その実施形態を実現するために実施できる方法を示すために、ここで、例として、以下の実験データを挙げることにする。
【実施例
【0212】
各実施例について、別段の指定がない限り、組成物は、配合されて基材に適用してから、放射線に曝露する前、無色、オフホワイトまたは白色のいずれかである。組成物のバックグラウンド、すなわち、放射線に曝露されていない部分は、無色、オフホワイトまたは白色のままである。
【0213】
各実施例について、別段の指定がない限り、波長1070nmのNIRファイバーダイオードレーザーを利用する。レーザーは、以下のフルエンス設定:1.33、1.39、1.55、1.61、1.75、2.00、2.16、2.37、2.53および2.86J/cmを有する。各実施例に2.37および2.53J/cmのフルエンスを利用した。
【0214】
[実施例1]
本発明による組成物を、表1にしたがって調製した。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0215】
【表1】
【0216】
組成物を、エタノールと酢酸エチルの1:1の追加のブレンドで希釈し、200cP(0.2パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を5gsmでポリプロピレンフィルム基材上にグラビア印刷した。
【0217】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成されて、像の形成を促進した。
【0218】
[比較例1]
熱伝達剤が存在しない組成物を、表2にしたがって調製した。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0219】
【表2】
【0220】
組成物を、エタノールと酢酸エチルの1:1の追加のブレンドで希釈し、200cP(0.2パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を5gsmでポリプロピレンフィルム基材上にグラビア印刷した。
【0221】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成されて、像の形成を促進した。
【0222】
実施例1および比較例1のバックグラウンド着色測定
この測定は、本発明による組成物中の熱伝達剤の存在が、どのようにバックグラウンド着色に寄与しないかを実証する。
【0223】
ΔEを、X-Rite SpectroEye分光光度計を使用して計算した。
【0224】
基材に適用した後だが近赤外線に曝露する前の組成物のL値を、実施例1および比較例1について測定した(CIE L表色系、Lは明るさを示し、aはレッド/グリーン値を示し、bはイエロー/ブルー値を示す)。次いで、実施例1および比較例1のこれらのL測定値を、標準ホワイトタイルのL測定値と並行して使用して、実施例1および比較例1それぞれのΔE値、すなわち、実施例1または比較例1の組成物の色とホワイトタイルとの間の目視的に認識される差を決定した。ΔEは、2色間、すなわち、実施例1または比較例1の組成物のバックグラウンド色とホワイトタイルとの間の差の視覚の定量化を可能にする標準的数学の計算である。計算は、以下に挙げるとおりである:
【0225】
【数1】
【0226】
実施例1では、ΔEは5.48と算出された。比較例1では、ΔEは5.28と算出された。2つのΔE値間の差は0.2である。2未満のΔE値は、ヒトの目では区別ができない。したがって、実施例1および比較例1について測定したΔE値は、熱伝達剤が、本発明による組成物のバックグラウンド着色に有意な影響がないことを実証する。
【0227】
実施例1および比較例1の光学密度ブラック(ODB)測定
ODBを、X-Rite SpectroEye分光光度計を使用して計算した。
【0228】
実施例1では、ODBは1.36と測定された。比較例1では、ODBは1.01と測定された。
【0229】
1.05以上、例えば1.1以上のODB値が望ましい。そのようなODB値は、良好な光学密度、すなわち、バックグラウンドに対して良好なコントラストを持つ強い黒色の形成を実証する。実施例1のODB値は比較例1のODB値より大きいことが確認でき、したがって、実施例1の組成物は、改善された光学密度および色/像の形成を実証している。これは、熱伝達剤を介した近赤外線吸収性化合物から発色化合物への増加された熱伝達の結果である。
【0230】
[実施例2]
本発明による組成物を、表3にしたがって調製した。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0231】
【表3】
【0232】
組成物を水で希釈して、270cP(0.27パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を3gsmで紙基材上にグラビア印刷した。
【0233】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって、局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成され、像の形成を促進した。
【0234】
[実施例3]
本発明による組成物を表3にしたがって調製したが、酸化ジルコニウムをアルミニウム亜鉛酸化物に置き換えた。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0235】
組成物を水で希釈して、270cP(0.27パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を3gsmで紙基材上にグラビア印刷した。
【0236】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって、局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成され、像の形成を促進した。
【0237】
[実施例4]
本発明による組成物を表3にしたがって調製したが、酸化ジルコニウムを二酸化チタンTR52に置き換えた。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0238】
組成物を水で希釈して、270cP(0.27パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を3gsmで紙基材上にグラビア印刷した。
【0239】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって、局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成され、像の形成を促進した。
【0240】
[比較例2]
熱伝達剤が存在しない組成物を、表4にしたがって調製した。すべての量は、重量百分率(wt%)で表す。
【0241】
【表4】
【0242】
組成物を水で希釈して、270cP(0.27パスカル秒)の印刷粘度を得た。組成物を3gsmで紙基材上にグラビア印刷した。
【0243】
次いで、波長1070nmのファイバーダイオードレーザーを使用して、近赤外線を局部的位置の組成物に適用し、したがって、局部的位置に色が形成された。これらの局部的位置に黒色が形成され、像の形成を促進した。
【0244】
実施例2、3および4ならびに比較例2のバックグラウンド着色測定
この測定は、本発明による組成物中の熱伝達剤の存在が、どのようにバックグラウンド着色に寄与しないかを実証する。
【0245】
ΔEは、X-Rite SpectroEye分光光度計を使用して計算した。
【0246】
基材に適用した後だが近赤外線に曝露する前の組成物のL値を、実施例2、3および4ならびに比較例2について測定した(CIE L表色系、Lは明るさを示し、aはレッド/グリーン値を示し、bはイエロー/ブルー値を示す)。次いで、実施例2、3および4ならびに比較例2のこれらのL測定値を、標準ホワイトタイルのL測定値と並行して使用して、実施例2、3および4ならびに比較例2それぞれのΔE値、すなわち、実施例2、3、4または比較例2の組成物の色とホワイトタイルとの間の目視的に認識される差を決定した。ΔEは、2色間、すなわち、実施例2、3、4または比較例2の組成物のバックグラウンド色とホワイトタイルとの間の差の視覚の定量化を可能にする標準的数学の計算である。計算は、以下に挙げるとおりである:
【0247】
【数2】
【0248】
実施例2では、ΔEは3.05と算出された。実施例3では、ΔEは3.55と算出された。実施例4では、ΔEは3.2と算出された。比較例2では、ΔEは3.73と算出された。実施例2と比較例2のΔE値間の差は0.68である。実施例3と比較例2のΔE値間の差は0.18である。実施例4と比較例2のΔE値間の差は0.53である。2未満のΔE値は、ヒトの目では区別できない。したがって、実施例2、3および4ならびに比較例2について測定したΔE値は、熱伝達剤が、本発明による組成物のバックグラウンド着色に有意な影響がないことを実証している。加えて、実施例2、3および4の低いΔE値は、改善されたレーザー撮像性能について比較例2より低いバックグラウンド着色を実証している。
【0249】
実施例2、3および4ならびに比較例2の光学密度ブラック(ODB)測定
ODBを、X-Rite SpectroEye分光光度計を使用して計算した。
【0250】
実施例2では、ODBは1.25と測定された。実施例3では、ODBは1.16と測定された。実施例4では、ODBは1.2と測定された。比較例2では、ODBは0.85と測定された。
【0251】
1.05以上のODB値、例えば1.1以上が所望される。そのようなODB値は、良好な光学密度、すなわち、バックグラウンドに対して良好なコントラストを持つ強い黒色の形成を実証する。1.05未満の比較例2のODB値のみでなく、実施例2、3および4のODB値は比較例2よりも大きいことが確認でき、したがって、実施例2、3および4の組成物は、改善された光学密度および色/像の形成を実証している。これは、熱伝達剤を介した近赤外線吸収性化合物から発色化合物への熱伝達が増加した結果である。
【国際調査報告】