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特表2023-506767常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品
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  • 特表-常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品 図1
  • 特表-常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20230213BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20230213BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230213BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20230213BHJP
   A23C 3/02 20060101ALI20230213BHJP
   A23C 9/142 20060101ALI20230213BHJP
   A23L 2/46 20060101ALI20230213BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230213BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A23C9/123
A23L2/00 N
A23L2/38 P
A23L2/66
A23C3/02
A23C9/142
A23L2/46
A23L2/00 F
A23C9/13
A23L2/38 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535460
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020064691
(87)【国際公開番号】W WO2021119540
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,924
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/009,553
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520277357
【氏名又は名称】グランビア ニュートリショナルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンセン アール
(72)【発明者】
【氏名】ウォード ローレン
【テーマコード(参考)】
4B001
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC07
4B001AC31
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC14
4B001BC99
4B001EC05
4B117LC04
4B117LC15
4B117LK15
4B117LK18
4B117LK23
4B117LK25
4B117LP01
4B117LP05
4B117LP14
4B117LP16
4B117LP17
(57)【要約】
約50センチポアズ~約20,000センチポアズの粘度である、常温保存可能なヨーグルト製品を製造するための方法が開示され、該ヨーグルト製品は少なくとも約12パーセントの総タンパク質含量を有し、該製品においてホエイタンパク質のうち少なくとも約75%は未変性である。本方法によって製造された製品もまた開示され、これはたとえば、総タンパク質を少なくとも約12パーセント含む、常温保存可能なヨーグルト飲料などであり、ここで、ホエイタンパク質のうち少なくとも約75%は未変性の状態にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約12パーセントの総タンパク質含量を有する、少なくとも1種の常温保存可能なヨーグルト製品を製造するための方法であって、以下の段階:
(a) 発酵可能なヨーグルト乳において約20:80~約90:10のホエイ/カゼイン比を与えるために、少なくとも1種のカゼイン含有成分および/または少なくとも1種のホエイタンパク質含有成分を乳に添加することによって、発酵可能なヨーグルト乳を調製する段階;
(b) 少なくとも1種のヨーグルト製品を製造するために、少なくとも1種の細菌培養物とともに、発酵可能なヨーグルト乳を培養する段階;ならびに
(c) 常温保存可能なヨーグルト製品を提供するために、ヨーグルト製品を無菌的に包装する段階
を含み、
段階(a)および/または段階(b)の後で、ホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントをその未変性の状態で維持するパスチャライゼーション条件下で、少なくとも1回の加熱処理が実施される、
方法。
【請求項2】
カゼイン含有成分が、乳、クリーム、脱脂乳、MPC、MPI、無脂肪粉乳(NFDM)、UF乳、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホエイタンパク質含有成分が、乳、クリーム、脱脂乳、MPC、MPI、無脂肪粉乳(NFDM)、UF乳、WPC、WPI、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乳が、液状乳および/または乳粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
総タンパク質含量が、約12パーセント~約25パーセントを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ホエイタンパク質のうち少なくとも約95パーセントが、未変性の状態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品が、高タンパク質ヨーグルト飲料である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト飲料が、タンパク質を少なくとも約12パーセント含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質を少なくとも約12パーセント含む、常温保存可能な液状ヨーグルト
を含む、組成物。
【請求項10】
飲料におけるホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントが、天然のタンパク質である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
液状ヨーグルトが、約50~約2000センチポアズの粘度を有する、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、冷却することなく保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品を製造するための方法に関連する。より具体的には本発明は、全て常温保存可能である、ヨーグルト飲料を含めた、広範囲にわたる粘度を有する高タンパク質ヨーグルト製品を製造するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
ヨーグルトは、ストレプトコッカス亜種サーモフィルス(Streptococcus subsp. thermophilus)およびラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)の混合物からなる細菌培養物を用いて乳を発酵させることによって、調製される。ヨーグルトには、主に2種類のタイプがある - 静置型と撹拌型である。静置型ヨーグルト(果物が底に入っている(fruit-on-the bottom)製品、と表現される)は容器内で形成されて、連続したゲル構造が生じる。撹拌型ヨーグルトに関し、大きな発酵タンクにおけるインキュベーションの間に形成されたゲルは、撹拌によって崩壊し、そして撹拌された製品はその後、滑らかであるが粘性のある食感を製品に与えるために、濾し網を通過させてポンプでくみ上げられ得る。
【0003】
ヨーグルト製造に関連する段階は、一般的に以下を含む:ヨーグルト乳を標準化する段階(たとえば、乳粉末、ホエイタンパク質粉末等の添加によってなされる)、ヨーグルト乳をホモジナイズする段階(一般的には、2ステージのホモジナイゼーションプロトコルにおいてなされる)、ヨーグルト乳をパスチャライズする段階、スターター細菌培養物の増殖を促進する温度(一般的にはセ氏約42度)へと、該乳を冷却する段階、スターター培養物を添加する段階、およびスターター培養物とともにヨーグルト乳をインキュベートする(すなわち「培養する」)段階。しかしながら、ヨーグルト製造の段階を説明する際、パスチャライゼーション段階はしばしば、パスチャライゼーションではなく「加熱処理」として挙げられている - なぜならば当業界においては、パスチャライゼーション段階は実際には、複数の目的を果たすからである。第1に加熱処理は、病原性細菌を死滅させるために - および、スターター培養物中の細菌と競合する可能性がある細菌を死滅させるために、使用され得る。一方で加熱処理はまた、タンパク質を変性させ得る手段、特に、変性した場合にカゼインタンパク質と架橋してヨーグルトゲルを形成するホエイタンパク質を変性させ得る手段をも、提供するものである。この変性は、細菌を死滅させるのに最低限必要な温度よりも高い温度で実施されるため、業界標準では、タンパク質の変性を目標とする、より高い温度、および温度/時間の組み合わせが使用されてきた。ヨーグルト産業において一般的に使用される、パスチャライゼーション段階のための温度/時間の組み合わせは、セ氏85度で30分間、またはセ氏90~95度で5分間、を含む。時には、非常に高温で短時間(セ氏100度~セ氏130度で4~16秒間)、または超高温(UHT)(セ氏140度で4~16秒間)が使用される。
【0004】
細菌培養物によるヨーグルト乳の発酵は、ラクトースを乳酸に変換して、該乳のpHを低下させる。この発酵は、ヨーグルトに特有の食味を作り出す。酸性化の間、pHは6.7から、pH4.6未満または約4.6に低下して、粘弾性を有するゲルが生成される。ヨーグルトの粘度の上昇はまた、乳の総固形分含量が増加した際にも観察される。
【0005】
加熱段階(パスチャライゼーション)は、食品の安全性にとって重要であるが、ヨーグルト乳からヨーグルト製品を生成する、粘弾性を有するゲルの形成にとっても重要であると考えられている。LeeおよびLucey(Formation and Physical Properties of Yogurt, Asian-Aust. J. Anim. Sci. (2010) 23(9):1127-1136)(非特許文献1)によれば、未加熱乳由来の天然のホエイタンパク質は、ヨーグルトにおける「不活性充填剤」である。これは、ヨーグルトゲルの形成に有用なタンパク質を生成するために、加熱段階を必要とする。乳がセ氏70度を超えて加熱されると、主要なホエイタンパク質、たとえばβ-ラクトグロブリンなどは変性し、β-ラクトグロブリンはジスルフィド架橋によりκ-カゼインと相互作用して、結果として、ゲル硬度の上昇およびヨーグルトの粘度の上昇を引き起こす。LeeおよびLuceyは、カゼインミセルの表面への、変性したホエイタンパク質の結合が、加熱された乳から生成されるヨーグルトゲルの剛性の増大に重要であることを開示している。
【0006】
「ホエイタンパク質」とは、乳の水性画分において見いだされるタンパク質であって、チーズ製造の間に除去されるタンパク質を言い表す総称である。ホエイ中に見いだされるタンパク質、ペプチド、および酵素は、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、グリコマクロペプチド(GMP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、免疫グロブリン、ラクトフェリン、およびラクトペルオキシダーゼを含む。ホエイタンパク質の変性はまた、ヨーグルトゲルの剛性、硬度、粘度、および保水能力の増大に重要であるとも考えられている(Pakseresht, S., et al. Optimization of low-fat set-type yoghurt: effect of altered whey protein to casein ratio, fat content and microbial transglutaminase on rheological and sensorial properties, J Food Sci Technol. (2017) 54(8): 2351-2360(非特許文献2))。しかしながら、天然の(未変性の)ホエイタンパク質は、変性したホエイタンパク質のものよりも優れた、いくつかの栄養上の恩恵をもたらす。たとえば、1回の筋力トレーニング後に、20 gの天然のホエイは、20 gのMWP、WPH、WPC-80、および乳と比べて、血中のロイシン濃度の、有意により迅速な上昇および有意により高いピーク値を誘導した(Hamarsland, H., Native whey induces higher and faster leucinemia than other whey protein supplements and milk: a randomized controlled trial, BMC Nutrition (2017) 3:10(非特許文献3))。マウスにおける研究に基づき、天然のホエイはまた、変性したホエイと比べて、免疫応答の改善、およびより高いグルタチオンレベルを促進することも提案されている(Bounous, G. et al. The Biological Activity of Undenatured Dietary Whey Proteins: Role of Glutathione, Clin. Invest. Med. (1991) 14: 296-309。(非特許文献4)
【0007】
ヨーグルトは、多くの国々において重要な食品である。ヨーグルトは、タンパク質、カルシウム、リン、ビタミンB(リボフラビンおよびB12)、トリプトファン、ビタミンC、葉酸、ならびに亜鉛の、供給源である。しかしながら、ヨーグルトは腐敗しやすい製品であり、この点は、その流通、および広範な顧客基盤に対するその訴求力を制限し得る。ヨーグルトは通常、冷却された状態で輸送および保存される。常温保存可能なヨーグルト製品(高タンパク質ではない)は市販されているが、それらは通常、以下の2種類の処理方法 - 無菌処理またはレトルト処理 - のうちの1種類を用いて、長期保存用に包装されている。レトルト処理は、一般的に金属缶を伴うものであり、かつしたがって、製品に金属味を与え得る。レトルト処理はまた、約30~45分間の加熱(カ氏約250~300度)という、長い処理時間をも伴うが、一方で無菌処理のための処理時間は、一般的にカ氏300度でわずか約4~5分間である。無菌処理において使用される、より穏やかな処理条件は、製品におけるタンパク質の変性レベルを低下させる - レトルト処理を用いて処理された製品において、タンパク質の約85+パーセントは変性するが、一方で、無菌処理を用いて包装された製品においては、タンパク質の15パーセント未満しか変性しない。無菌処理の条件はまた、レトルト処理と比較して、製品中のビタミンの喪失を、少なくとも50パーセント低下させ得る。
【0008】
常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品は、アスリートが使用するのに望ましいものであり得(彼らは、容器をジムバッグまたはバックパックに単に投げ入れるだけでよく、かつ製品を冷却しなくてはならない点を心配しなくてよいであろう)、たとえば学校などのような、多数の人々に食事を提供し、かつ冷却スペースが限られている組織が使用するのにも望ましいものであり得、かつ、他にとっても、使用するのに望ましいものであり得る。たとえば自然災害の後など、冷却装置に動力を供給する電気が利用可能ではない状況においても、常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品は非常に有用であり得る。必要とされているものは、常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品の製造手段であり、かつ、さまざまな形態 - カスタードおよびディップから、高タンパク質飲用ヨーグルトまで - の、常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品を提供するための方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】LeeおよびLucey(Formation and Physical Properties of Yogurt, Asian-Aust. J. Anim. Sci. (2010) 23(9):1127-1136)
【非特許文献2】Pakseresht, S., et al. Optimization of low-fat set-type yoghurt: effect of altered whey protein to casein ratio, fat content and microbial transglutaminase on rheological and sensorial properties, J Food Sci Technol. (2017) 54(8): 2351-2360
【非特許文献3】Hamarsland, H., Native whey induces higher and faster leucinemia than other whey protein supplements and milk: a randomized controlled trial, BMC Nutrition (2017) 3:10
【非特許文献4】(Bounous, G. et al. The Biological Activity of Undenatured Dietary Whey Proteins: Role of Glutathione, Clin. Invest. Med. (1991) 14: 296-309。
【発明の概要】
【0010】
本発明の概要
本発明は、少なくとも約12パーセントの総タンパク質含量を有する、少なくとも1種の常温保存可能なヨーグルト製品を製造するための方法に関連し、該方法は以下の段階:(a) 発酵可能なヨーグルト乳において約20:80~約90:10のホエイ:カゼイン比を与えるために、少なくとも1種のカゼイン含有成分および/または少なくとも1種のホエイタンパク質含有成分を乳に添加することによって、発酵可能なヨーグルト乳を調製する段階;(b) 少なくとも1種のヨーグルト製品を製造するために、少なくとも1種の細菌培養物とともに、発酵可能なヨーグルト乳を培養する段階;ならびに(c) 常温保存可能なヨーグルト製品を提供するために、ヨーグルト製品を無菌的に包装する段階、を含み、段階(a)および/または段階(b)の後で、ホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントをその未変性の状態で維持するパスチャライゼーション条件下で、少なくとも1回の加熱処理が実施される。さまざまな局面において、カゼイン含有成分は、乳、クリーム、脱脂乳、MPC、MPI、無脂肪粉乳(NFDM)、UF乳、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さまざまな局面において、ホエイタンパク質含有成分は、乳、クリーム、脱脂乳、MPC、MPI、脂肪粉乳(NFDM)、UF乳、WPC、WPI、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本発明のさまざまな局面において、乳は、液状乳、および/または水と混合された乳粉末である。
【0011】
本方法のさまざまな態様において、常温保存可能なヨーグルト製品の粘度は、約50 cP~約20,000 cPの範囲であり得る。本発明のさまざまな局面において、常温保存可能なヨーグルト製品における総タンパク質含量は、約12~約25パーセントである。さまざまな局面において、無菌的に包装されたヨーグルト製品は、少なくとも約75パーセントがその天然型であるタンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、低粘度(たとえば飲用)のヨーグルト製品の写真であり、該製品は、1150 cPの粘度を与えるためにタンパク質比を調節し、80% 全乳および20% wpi(20% タンパク質)を使用し、カ氏166度で15秒間加熱処理(パスチャライズ)し、そして2500 psiでホモジナイズすることによって製造されている。常温保存可能な飲用ヨーグルトを提供するために、たとえばこの飲用ヨーグルトなどの製品は、無菌充填技術を用いて容易に包装することが可能である。
図2図2は、高粘度の(濃厚な)ヨーグルト製品の写真であり、該製品は、30,000 cPの粘度を与えるためにタンパク質比を調節し、80% 全乳、10% MPI、および10% WPI(20% タンパク質)を使用し、カ氏166度で15秒間加熱処理し、そして2500 psiでホモジナイズすることによって製造されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
常温保存可能なヨーグルト製品を製造するための方法が開示され、ここで、約50 cP~約20,000 cPの範囲内を目標とし得る粘度を有するヨーグルト製品を製造するために、穏やかなパスチャライゼーション条件が、カゼイン-対-ホエイ比の調節と組み合わせられる。低粘度の製品は、飲用ヨーグルト製品、ヨーグルトシロップ、および流動性を有する他の製品を含み得、これらは、常温保存可能な飲用ヨーグルト、シロップ等を提供するために、無菌包装技術を用いて包装され得る。高粘度の製品、たとえば常温保存可能なヨーグルトディップなどもまた、冷却することなく輸送、保存、および使用するために、本発明の方法によって製造することが可能である。約20:80~約90:10の範囲のホエイ-対-カゼイン比において、より高いカゼイン-対-ホエイ比は、より高粘度の製品の方向へと粘度を変化させ、かつより高いホエイ-対-カゼイン比は、より低粘度の、流動性のより大きい製品のものの方向へと、粘度を変化させる。ヨーグルト製品の粘度に対するカゼイン/ホエイ比の影響の例は、以下の表1に示される。
【0014】
(表1)ヨーグルト製品の粘度に対するカゼイン/ホエイ比の影響
【0015】
本方法によって製造されるヨーグルト製品は、少なくとも約75パーセントがその未変性の状態(すなわち天然の状態)にある、ホエイタンパク質を有するであろう。
【0016】
別途指定されない限り、量(特にホエイおよびカゼインの量)は、製品そのままの状態において表される(たとえば、100 gの最終製品1つあたりのグラム数)。本明細書において使用される場合、「常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品」との用語とは、本発明の方法によって製造された、発酵させた乳製品である。本発明者の方法にしたがって製造されたヨーグルト製品は、約50 cP~約200,000 cPの範囲にわたる粘度を有し得るが、無菌充填技術を用いて包装された常温保存可能な製品として、ヨーグルト製品を製造するという目的には、約50 cP~約20,000 cPの範囲を目標とすることが好ましい。「ヨーグルト」とは、たとえば、乳酸産生細菌を用いて乳製品原材料を培養することによって製造された製品として、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)により定義されている。本明細書における開示を踏まえれば、本方法はまた、他の培養された乳製品、たとえば、ケフィア、ラブネ、イメール(ymer)、およびバターミルクなどの製造にも適用可能であることを、当業者は理解するであろう。したがって、「ヨーグルト製品」および「飲用ヨーグルト」との用語は、類似したタイプの培養された乳製品、たとえば上に列挙したものなどを含むように、より広く解釈され得る。ヨーグルト製造のための乳製品原材料は、クリーム、乳、部分脱脂乳、脱脂乳、およびそれらの組み合わせを含む。他の任意選択の原材料は、たとえば、濃縮脱脂乳、無脂肪粉乳、バターミルク、ホエイ、ラクトース、ラクトアルブミン、およびラクトグロブリンを含む。本発明の方法によって製造される製品は、この定義を満たすとともに、消費者に優れた選択肢を提供する、広範囲にわたる製品 - 飲料から、塗り広げられる高粘度の製品まで - を、提供する。「天然のタンパク質」と「未変性のタンパク質」とは、本明細書において互換性をもって使用され得、両者とも、機能的なタンパク質であって、パスチャライゼーション/加熱処理において使用された熱に起因する変性による変化が概してない、タンパク質を指す。ヨーグルト製品に対して適用される場合、「常温保存可能な」との用語は、常温の保存条件下(たとえば、冷却も凍結もしない)で、約6~約12か月の期間にわたり、該製品が安定である(すなわち、該製品がそれらの硬さおよびそれらの品質を維持し、腐敗しない、等)ことを意味する。本発明の文脈における「高タンパク質」とは、少なくとも約12%のタンパク質レベルを意味する。「高タンパク質」ヨーグルトとは、当業界において一般的に、少なくとも約8%のタンパク質含量を有するヨーグルト製品である。本発明は、ヨーグルトを発酵させる前に実質的に全てが添加されたタンパク質を用いて、それら製品のレベルを著しく超えることを可能にする(すなわち、包装された製品におけるタンパク質を増加させるために、発酵後にタンパク質を単に添加する、というわけではない、そのような添加は、製品の食味に悪影響を及ぼし得る)。
【0017】
ヨーグルトによってもたらされる栄養面での恩恵、およびヨーグルト製品に対する幅広い消費者の支持を踏まえ、常温保存可能なヨーグルト製品は、長い間必要とされてきた。しかしながら、ヨーグルトとしての望ましい食味および硬さを有する常温保存可能なヨーグルト製品を製造すること、およびヨーグルトとしての望ましい食味および硬さを有する高タンパク質ヨーグルトを製造することは、両者が提起する課題を組み合わせずに行うことが、相当に困難であった。そうした中で、本発明者は、常温保存可能でもある、高タンパク質ヨーグルトを製造する方法を開発した。さらに、本発明者によって開発された方法は、その異なる局面において、異なる粘度のさまざまなヨーグルト製品 - 高粘度のプディングタイプのヨーグルト製品、ディップ、および高タンパク質のギリシャタイプヨーグルトから、ヨーグルトシロップおよびヨーグルト飲料までの範囲にわたる - を製造するために使用することができる。
【0018】
常温保存可能な高タンパク質ヨーグルト製品を製造するために使用される方法においては、ヨーグルト乳において約20:80~約90:10のホエイ/カゼイン比を与えるために、少なくとも1種のカゼイン含有成分、少なくとも1種のホエイタンパク質含有成分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1種のタンパク質含有成分を該乳に添加することによって、ヨーグルト乳が調製される。ヨーグルト乳はその後、ホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントをその未変性の状態で保持するパスチャライゼーション温度で、加熱処理され得る。これは通常、たとえば、米国食品医薬品局の、パスチャライズ乳についての規則(Pasteurized Milk Ordinance)の要件を満たすパスチャライゼーション温度を使用することによって達成され得、該要件を満たす温度範囲の下限の温度か、または、その組み合わせが乳のパスチャライゼーションという目標を達成する、より短いパスチャライゼーション時間でのより高い温度であって、かつホエイタンパク質のうち少なくとも約75をその未変性の状態で維持する、という温度が選択される。当業界においては、ヨーグルトゲルを生成させる目的で、パスチャライゼーションの間にホエイタンパク質を変性させることは一般的であるが、本発明者は、変性は必須ではないことを見いだした。培養されたヨーグルト製品を製造するために、ヨーグルト乳には、少なくとも1種の細菌培養物が接種される。少なくとも1種のタンパク質含有成分の添加は、少なくとも約12パーセント(たとえば約12パーセント~約25パーセント)の、この培養されたヨーグルト製品における総タンパク質含量をもたらす。ヨーグルト乳に添加されるタンパク質含有成分の量および比を調節することで、それに対応する、約50 cP~約200,000 cPというヨーグルト製品の粘度がもたらされる。無菌充填技術を用いて包装された常温保存可能な製品を製造するという目的には、目標の粘度は、一般的に約50 cP~約20,000 cPの範囲内であり得る。
【0019】
例示として、シロップ、たとえばコーンシロップなどは、典型的には50~100 cPの粘度を有し、かつピーナッツバターは、典型的には約150,000 cP~約200,000 cPの範囲内の粘度を有する。市販のギリシャヨーグルトの粘度は、概して約21,000 cP(センチポアズ、本明細書においてはcpsとも略記される)である。したがって本方法は、たとえば、飲用ヨーグルト製品、標準的な粘度を有するヨーグルト製品、ギリシャヨーグルトの粘度と同様の粘度を有するヨーグルト製品、および高粘度のピーナッツバターの粘度と同様の粘度を有するヨーグルト製品を製造するという選択肢を、製造者に提供する。
【0020】
ヨーグルトを製造するための標準的な方法は当業者に公知であり、かつこれらの方法は、ホエイタンパク質の大部分をその天然の状態に維持するのに、かつ、たとえば、より粘性のあるヨーグルト製品(たとえば、塗り広げられるヨーグルト製品)のためのより高いカゼイン-対-ホエイ比をもたらす原材料か、または飲用ヨーグルト製品のためのより高いホエイ-対-カゼイン比をもたらす原材料の大部分を維持するのに十分に穏やかなパスチャライゼーション温度を採用して、本発明の方法にしたがって製品を製造するために使用可能である。本方法においては、加熱処理は、常温保存可能なヨーグルトを製造および包装するプロセスの間の2つの時点のうちの、片方または両方において実施され得る。加熱処理、好ましくはパスチャライゼーションとしての加熱処理は、ヨーグルトの細菌培養物を添加する前が、有益であり得る。保存期間の間に腐敗を引き起こし得る細菌が、包装された製品中に存在しないことを確実にするための、加熱処理(パスチャライゼーション)は、製品の安全性のために重要である。本発明の方法にとって重要なことは、これらの加熱処理のいずれかが、原材料をパスチャライズする目的でなされた場合でも、またはそれらからの製品をパスチャライズする目的でなされた場合でも、常温保存可能なヨーグルト製品において、ホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントがその天然の状態のままであるように、パスチャライゼーション条件を選択すべきである、という点である。つまり、常温保存可能なヨーグルト製品において、ホエイタンパク質のうち約25パーセント以下しか、パスチャライゼーションプロセスによって変性しないように、パスチャライゼーション条件を選択するべきである。当業界において「最低限のパスチャライゼーション条件」として公知であるものは、通常、これらのパスチャライゼーション条件を満たすものであり得る。
【0021】
ヨーグルト製造のための原材料は、以下から選択され得る:たとえば、生のまたはパスチャライズされた乳、生のまたはパスチャライズされた、分離されたクリーム、生のまたはパスチャライズされた脱脂乳、無脂肪粉乳(NFDM)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、乳タンパク質濃縮物(MPC)、液状UF乳リテンテート(liquid UF milk retentate)(「UF乳」、標準的な乳と比べて、低ラクトース、高タンパク質産物を有するように濾過された乳)、および乳タンパク質単離物(MPI)。さまざまな局面において、タンパク質含有成分は、乳、クリーム、脱脂乳、WPC、WPI、MPC、MPI、無脂肪粉乳(NFDM)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。これらの原材料のさまざまな組み合わせが、約50センチポアズ(cP)~約20,000センチポアズ(cP)の範囲内の粘度を有する製品を製造するために使用される。たとえば、以下の表2に示されるように、ヨーグルト乳に添加されるWPIおよびMPCの量を変化させると、さまざまなレベルのタンパク質、およびさまざまな粘度を有する製品を製造することが可能であり、その際ヨーグルト製品は、該製品のホエイタンパク質画分において、高レベルの未変性ホエイタンパク質を維持している。
【0022】
(表2)タンパク質の供給源および量 - ヨーグルト製品
【0023】
本発明にしたがってヨーグルト製品を製造するために、パスチャライゼーション条件は、たとえば、適切な保持時間で最低限のパスチャライゼーション温度、フラッシュ・パスチャライゼーション(flash pasteurization)(高温で短時間、カ氏166度で15秒間)、バッチ・パスチャライゼーション(batch pasteurization)(カ氏150度で30分間)、またはより高熱でより短時間(higher heat shorter time)(HHST、カ氏194度で0.5秒間)を含み得る。ヨーグルト乳、および添加された原材料はホモジナイズされ、そしてカ氏95~112度(セ氏約42度)の発酵温度に冷却される。細菌のスターター培養物が添加され、そして混合物は、4.3~4.75の最終pHまで発酵させて、その後撹拌され、剪断され、そしてカ氏35~50度まで冷却される。ヨーグルトのための細菌培養物は、一般的にはストレプトコッカス亜種サーモフィルスおよびラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ブルガリクスを含むが、本発明の方法にしたがったヨーグルト製品の製造においては、さまざまな乳酸産生細菌および/またはさまざまなプロバイオティクス細菌もまた、使用され得る。これらの細菌は、たとえば以下を含む:ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L. ファーメンタム(L. fermentum)、L. パラカゼイ(L. paracasei)、L. ブレビス(L. brevis)、L. ガセリ(L. gasseri)、L. プランタルム(L. plantarum)、L. ブルガリクス(L. bulgaricus)、L. ヘルベティカス(L. helveticus)、L. ロイテリ(L. reuteri)、L. カゼイ(L. casei)、L. ジェンセニイ(L. jensenii)、L. ラムノサス(L. rhamnosus)、L. クリスパタス(L. crispatus)、L. ジョンソニイ(L. johnsonii)、L. サリバリウス(L. salivarius)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、B. ブレベ(B. breve)、B. ロンガム(B. longum)、B. アニマリス(B. animalis)、B. インファンティス(B. infantis)、B. サーモフィルム(B. thermophilum)、B. ビフィダム(B. bifidum)、およびB. ラクティス(B. lactis)。この時点において、香味料が添加されてよく、ヨーグルトは果物等と混合されてよく、かつヨーグルトは、保存、輸送、および販売のための適切な容器へと分注されてよい。
【0024】
ホエイタンパク質は、一般的にはホエイタンパク質単離物(WPI)またはホエイタンパク質濃縮物(WPC)として提供される。乳タンパク質単離物(MPI)はホエイタンパク質を含むが、ホエイタンパク質組成物は、総タンパク質含量のうちの1画分であるにすぎない - 乳において最上位のタンパク質成分は、カゼインである。ホエイタンパク質濃縮物およびホエイタンパク質単離物は、さまざまな手段によって製造可能であり、該手段は一般的に、分離技術、たとえば濾過法などを伴う。好ましいホエイタンパク質組成物は、ホエイタンパク質単離物を含み、該ホエイタンパク質単離物は、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、グリコマクロペプチド(GMP)、免疫グロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、およびラクトフェリンを含む、主要なホエイタンパク質を提供する。ホエイタンパク質を天然の(未変性の)状態に維持することで、得られるヨーグルト製品において、その栄養価を強化する、タンパク質の機能性がもたらされる。たとえば、β-ラクトグロブリンは、グルタチオンの合成において重要なアミノ酸である、システインに富んでいる。α-ラクトアルブミンは、生物活性を有するペプチドの重要な供給源であり、かつ、トリプトファン、リジン、分枝鎖アミノ酸、および含硫アミノ酸を含む必須アミノ酸の、重要な供給源である。グリコマクロペプチド(GMP)は、κ-カゼインのC末端部分(106位~169位)であり、これは、チーズの製造時にホエイ中に放出される。グリコマクロペプチドは、歯垢およびう蝕の形成の制御および阻害に役立ち得るものであり、満腹感を促進するものであり、かつ、抗微生物性の、抗う蝕性の、胃酸抑制性の、コレシストキニン放出性の、プレバイオティクス上の、および免疫調節上の、恩恵を有することが報告されている。ウシ血清アルブミンは、脂肪酸を結合する効果、抗変異原性の効果、およびがん予防の効果を有する。ラクトフェリンは、胃および腸の潰瘍、下痢、ならびにC型肝炎感染の処置に有益であり得る。ラクトフェリンは抗酸化活性を有し、かつ細菌感染およびウイルス感染からの保護作用を有する。ラクトフェリンは免疫調節因子であって、加齢に関連する組織のダメージを予防するものであり、健全な腸内細菌を活発にさせるものであり、がんのいくつかの型を予防し得るものであり、かつ身体が鉄を処理する様式を制御する。表3に、本発明の方法において本発明者が使用した市販のホエイタンパク質単離物の、主要なタンパク質画分およびそれらの相対的パーセンテージを列挙する。
【0025】
(表3)市販のホエイタンパク質単離物のタンパク質組成*
* - Provon(登録商標)、Glanbia Nutritionals, Inc., Monroe, Wisconsin
【0026】
最低限のパスチャライゼーション条件は、乳製品製造の分野において、当業者に公知である。これらの条件は通常、ヒトにおいてQ熱を引き起こす生物である、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)を死滅させるのに必要な、最低限の処理条件である。C. バーネッティイは、乳において現在認識されている、最も耐熱性の病原体である。米国においては、たとえば、パスチャライズ乳についての規則(PMO)により、最低限のパスチャライゼーション条件を達成するという目的のために満たさなくてはならない条件が、定められている。しかしながら興味深いことに、パスチャライゼーションは、乳において見いだされ得る重要なタンパク質の変性を最低限のレベルに抑えて - たとえば、ホエイタンパク質のうちの5パーセント以下に抑えて - 達成することが可能であるが、ヨーグルト製造およびヨーグルトゲルの形成にはホエイタンパク質(特にβ-ラクトグロブリン)の変性が必要であるという一般的なコンセンサスのために、当業界においては、PMOが要求していないにもかかわらず、タンパク質の変性をもたらすように設計されたパスチャライゼーション条件の使用が慣習となってきた。本発明者は、ホエイタンパク質を変性させることなく、所望のゲル強度および粘度のヨーグルト製品を製造可能であることを発見し、かつ実際に、未変性の状態のタンパク質を維持するパスチャライゼーション条件を採用して、ヨーグルト乳に添加され得るタンパク質の量を調節することによって、かついっそうより重要なことには、カゼインタンパク質とホエイタンパク質との比を調節することによって、乳製品製造者が明確に目標とすることができる、さまざまな粘度の製品を製造可能であることを発見した。表4に、C. バーネッティイを破壊するのに十分であるとみなされており、かつパスチャライゼーションのための法的基準を満たす、温度と時間との組み合わせを列挙する。これらの温度/時間の組み合わせは、本発明の方法において、パスチャライゼーションを達成し、その際にホエイタンパク質のうち少なくとも約75パーセントをその未変性の状態で維持するために、使用可能である。これらの組み合わせは通常、所望のパスチャライゼーション効果を生じさせることが可能であり、その際、最小限の変性しか引き起こさない(たとえば、ホエイタンパク質のうち10%未満の変性)。
【0027】
(表4)乳製品のパスチャライゼーションのための温度および時間の組み合わせ
乳製品が濃縮されている(凝縮されている)場合、温度はセ氏3度(カ氏5度)上昇する。情報源:国際乳食品協会(International Dairy Foods Association)(IDFA)、
https://www.idfa.org/news-views/media-kits/milk/pasteurization
【0028】
一定のパーセンテージの未変性のホエイタンパク質を有するヨーグルト製品が、他のグループにより以前に記述されている(EP3042565A1、Jorgensenら。)しかしながらJorgensenらは、ヨーグルト乳の成分を単離するために分離技術を使用しており、そしてその後、それらを再度混合している。より重要なことに、Jorgensenらは、カゼインおよび天然のホエイタンパク質の混合物を、該混合物の天然のホエイタンパク質のうち30~70パーセントの変性が生じるのに十分な温度および時間で加熱することを教示している。本発明は、ヨーグルト乳の成分のそのような分離を必要とせず、かつ本発明者は、そのような顕著な量のホエイタンパク質を変性させることなく、所望の粘度のヨーグルト製品を容易に製造可能であることを発見した。実際に本発明者は、検出可能な変性タンパク質をその中に有さない、いくつかの製品 - 飲用ヨーグルトから塗り広げられるヨーグルトまで - を製造した。
【0029】
本明細書において提供される情報を踏まえて、当業者は、本発明の方法を用いて製造される特定の製品のためのパスチャライゼーション条件を、容易に決定することができる。最低限の法的要件は周知であり、かつβ-ラクトグロブリンの変性についてのキネティクスは、以前に報告されている(Sava, N. et al. The Kinetics of Heat-Induced Structural Changes of β-Lactoglobulin, J. Dairy Sci. (2005) 88:1646-1653)。
【0030】
本発明は、さまざまな局面において、実際に発酵させた液状ヨーグルトである、常温保存可能な飲用ヨーグルト製品を提供する。一般的にヨーグルト飲料は、標準的なヨーグルトまたはギリシャヨーグルトを、液体へと添加される原材料として使用して、ヨーグルト風味を有する飲料を作ることによって、製造される。従来の方法によって製造されたヨーグルトが使用されており、そのため、得られるヨーグルト飲料中のタンパク質は、その変性した状態にある。本方法は、100%のヨーグルト(高タンパク質ヨーグルトを提供するための、添加されたタンパク質を有する)として調製することが可能な液状ヨーグルトを提供するものであり、かつそれらの飲料は、75%超が未変性であるホエイタンパク質を含み得る。好ましくは、ホエイタンパク質のうち約90%が未変性である。したがって、本発明の方法によって製造される飲用ヨーグルトは、上で論じた恩恵であって、それらの中に包含される未変性のホエイタンパク質によってもたらされる恩恵を、提供することが可能である。本発明の方法によって製造される飲用ヨーグルトは、冷却を必要とすることなく輸送および保存可能である、常温保存可能な製品を製造するために、無菌的に包装することが可能である。ヨーグルト製品を無菌的に包装するための方法は当業者に公知であり、かつヨーグルトのカップ、パウチ、ボトル等に無菌的に充填するための機械が利用可能である。当業者に公知である無菌技術は、H2O2スチーム、パルス光、UVC照射、PETボトルの予備成形物を加熱するステージの直前での、該予備成形物への過酸化水素蒸気の注入、等を含む。無菌充填の方法は、たとえば、冷却または保温のいずれかがなされている無菌充填技術を含み得る。ヨーグルトおよびヨーグルト飲料に適した無菌包装は、パウチ、バッグインボックス包装、プラスチックボトル等を含み得る。当業者は、適切な方法および包装資材を容易に選択することが可能である。無菌充填の装置は、たとえば、Syntegon Technology GmbHなどの企業から、商業的に入手可能である。
【0031】
本発明の方法によって製造されるヨーグルト製品はまた、ヨーグルト製品の製造者が所望する、着色料、香味料、および他の原材料をも含み得る。しかしながら、それらヨーグルト製品はまた、原材料として、乳、ホエイタンパク質、およびカゼイン - 全て天然の原材料 - を有するとして、「クリーンラベル」とすることもできる。
【0032】
本発明のヨーグルト製品は、以下を含み得る:液状ヨーグルト、ヨーグルトシロップ、標準的なヨーグルト、ギリシャヨーグルト、ヨーグルトペースト、塗り広げられるヨーグルト製品、スリーブまたはチューブに入ったヨーグルトであって、チューブを絞ることによって、または、アイスクリーム菓子、たとえばプッシュポップとして知られているもの(たとえば、Push-Up(登録商標)、Pop-Up(登録商標)、およびPush-Em(登録商標)などの商品名で販売されているもの)の包装手段と類似した包装手段によって、食べることができるヨーグルト。
【0033】
指摘しておくべき、本発明によって提供される追加の利点の1つは、本方法が、従来の市販のヨーグルト製品のものよりも高いタンパク質レベルを有する、高タンパク質ヨーグルト製品の製造を可能にする点である。表5に、さまざまな市販のヨーグルト製品のタンパク質含量を列挙する。より高いタンパク質含量の製品はギリシャヨーグルトであるため、以下の一覧がギリシャヨーグルト製品しか含んでいない点は、驚くにはあたらない。現在市販されている製品はまた、冷却された状態で保存しなければならず、この点は、全体的なコストを増大させ、かつ常温保存可能な製品と比べて、利便性を低下させ得る。
【0034】
(表5)タンパク質含量 - 市販のギリシャヨーグルト
【0035】
上に示されるように、より高タンパク質のギリシャヨーグルトにおいてさえも、タンパク質レベルは通常11%以下である。本発明の方法は、所望するようにその粘度を変化させることが可能なヨーグルト製品を提供し、これはまた、少なくとも約12パーセントであり得る総タンパク質含量を有する(すなわち、カゼイン画分およびホエイタンパク質画分の両方を含む)ヨーグルト製品を提供する。さまざまな態様において、総タンパク質含量は、たとえば約12~約25パーセントを包含し得る。
【0036】
本明細書において「含む」との用語が使用される場合、特許請求の範囲のより狭い解釈が意図され得る際に本発明およびその段階を記述するために、「からなる」、および「から本質的になる」との用語もまた使用され得ることが、理解されるべきである。
【0037】
本発明はこれより、以下の非限定的な実施例を用いて説明される。
【実施例
【0038】
常温保存可能な、常温保存用ヨーグルトの製造
タンパク質を15%含むヨーグルト乳組成物を作るため、全乳、ホエイタンパク質単離物(WPI)、および乳タンパク質単離物(MPI)が混合された(88% 全乳、11% WPI、1% MPI)。タンパク質は、20分間カ氏90度で30分間含水させ、その後パスチャライゼーションが、カ氏167度で20秒間実施された。パスチャライズされた生成物は、2500 psiでホモジナイズされ、カ氏108度(セ氏約42度)に冷却され、そして該生成物には、市販のヨーグルト培養物が接種された。接種された混合物は、pHが4.65に達するまで(5時間)、カ氏108度でインキュベート(培養)され、そして静置型ヨーグルトは撹拌により崩壊させた。ヨーグルト製品は、カ氏166度で6秒間パスチャライズされ、香味料が無菌的に混合され、そして無菌の容器に充填された。
【0039】
常温保存可能なヨーグルト調製物の比較
表6に示される4種類の調製物は、ヨーグルト飲料の4種類のバッチを調製するために使用された。(表6における原材料は、重量でのパーセンテージとして表される。)最初に、全ての原材料が組み合わされ、そしてカ氏90度で30分間保持された。パスチャライゼーションは、カ氏167度で20秒間実施された。パスチャライズされた混合物は、2500 psiでホモジナイズされ、その後カ氏110度に冷却された。冷却された混合物にヨーグルト培養物が接種され、そして培養生成物がpH 4.65に達した際に撹拌され、その後、カ氏166度で6秒間再度加熱処理された。得られたヨーグルト製品はカ氏70度に冷却され、そして滅菌された容器に無菌的に充填された。
【0040】
(表6)常温保存可能なヨーグルト飲料調製物
【0041】
4種類の調製物のそれぞれを表す製品の容器は、0~120日間の期間の経過後に開封され、試験された全ての製品は、保存期間の全てのステージにおいて、微生物安全性試験に合格した。製品は、pHを決定することによって、ならびに色、食味、分離の度合い、製品中に存在する沈殿物の量、および製品の粘度を観察することによって、評価された。結果は、表7~10に示される。
【0042】
(表7)調製物1 - 120日間にわたる保存の評価
【0043】
(表8)調製物2 - 120日間にわたる保存の評価
【0044】
(表9)調製物3 - 90日間にわたる保存の評価
【0045】
(表10)調製物4 - 60日間にわたる保存の評価
【0046】
室温で安定な、15パーセントがタンパク質のヨーグルト製品
固形分(MPC 85が11 kg、およびWPI 1092が105 kg)を、666 kgの乳および11 kgのパスチャライズされたクリームの中に分散させ、そして30分間セ氏52度で含水させた。混合物はその後、セ氏70度に加熱され、2500 psiでホモジナイズされ、それからセ氏75度で30秒間パスチャライズされた。混合物はその後、セ氏44度に冷却され、そして該混合物にはヨーグルト培養物が接種された。生成物は、pH 4.6に達した後で(10~12時間のインキュベーションの後で)、撹拌により崩壊させた。
【0047】
ペクチン(5 kg)が、発酵させたバッチに添加された。得られた混合物は、セ氏75度で15秒間加熱およびパスチャライズされ、その後セ氏25度に冷却され、そして滅菌された容器に無菌的に充填された。分析により、以下が明らかとなった:15.8% タンパク質、2.9% 脂肪、28.4% 固形分、450 mPas 粘度、TPC 200、酵母 <10、カビ <10、大腸菌群 <10、スタフィロコッカス(Staphylococcus) <10、および細菌胞子 180。
【0048】
室温で安定な、17パーセントがタンパク質のヨーグルト製品
固形分(MPC 85が10 kg、およびWPI 1092が68 kg)を、318 kgのパスチャライズされた全乳および7 kgのパスチャライズされたクリームの中に分散させ、そして30分間セ氏52度で含水させた。混合物はその後、セ氏70度に加熱され、2500 psiでホモジナイズされ、そしてそれから、セ氏75度で30秒間パスチャライズされた。混合物はその後、セ氏44度に冷却され、そして該混合物にはヨーグルト培養物が接種された。生成物は、pH 4.6に達した後で(10~12時間のインキュベーション)、撹拌により崩壊させた。
【0049】
次に、糖(30 kg)、ペクチン(5 kg)、ゲランガム(0.8 kg)、および1ガロンの香味料が、発酵させたバッチに添加された。次に該生成物は、セ氏75度で15秒間加熱およびパスチャライズされ、その後セ氏25度に冷却され、そして滅菌された容器に無菌的に充填された。分析により、以下が明らかとなった:17.2% タンパク質、3.0% 脂肪、29.9% 固形分、650 mPas 粘度、TPC 300、酵母 <10、カビ <10、大腸菌群 <10、スタフィロコッカス <10、および細菌胞子 120。
【0050】
乳粉末/タンパク質粉末由来の高タンパク質ヨーグルト
ヨーグルトはまた、粉末を水と組み合わせることによっても製造された。2種類の別々の製品が製造された。第1のものは、80%の水を、10%の全乳粉末および10%のホエイタンパク質単離物と組み合わせた。第2のものは、83%の水を、8%の無脂肪粉乳、2%の乳タンパク質単離物、および7%のホエイタンパク質単離物と組み合わせた。これらのヨーグルト製品もまた、室温で保存可能であった、かつこれらのヨーグルト製品は概して、出発原材料として液状乳を用いて製造されたものと、区別不可能であった。
図1
図2
【国際調査報告】