(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】テクスチャード植物タンパク質製品および方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/14 20060101AFI20230213BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20230213BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20230213BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20230213BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20230213BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20230213BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20230213BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20230213BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20230213BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20230213BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L11/00
A23L29/256
A23L29/25
A23L29/262
A23L29/238
A23L29/231
A23L29/269
A23L13/60 A
A23L13/60
A23L13/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535468
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020064927
(87)【国際公開番号】W WO2021119614
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520277357
【氏名又は名称】グランビア ニュートリショナルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オラトゥンデ ベンガ
(72)【発明者】
【氏名】デマーリー ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4B020
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LG09
4B020LK04
4B020LK05
4B020LK06
4B020LK07
4B020LK09
4B020LK19
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4B020LP08
4B020LP15
4B020LP30
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH05
4B041LH07
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4B041LH10
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4B041LK24
4B041LK44
4B041LK50
4B041LP03
4B041LP12
4B041LP25
4B042AC05
4B042AD03
4B042AD36
4B042AE03
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK12
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP14
4B042AP21
4B042AP27
(57)【要約】
少なくとも1種類の植物タンパク質とトランスグルタミナーゼとの混和物を用いてテクスチャード植物タンパク質製品を生成するための方法が開示される。前記方法は、例えば、様々な用途、特に、ビーガン向け代替肉を含む食品において使用することができるテクスチャードエンドウタンパク質製品を形成するための手段を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャード植物タンパク質製品を生成するための方法であって、
(a)水/トランスグルタミナーゼ植物タンパク質混和物を生成するために、水とトランスグルタミナーゼと植物タンパク質とを混和する工程;
(b)該混和物を、ゼラチン化タンパク質ケーキを生成するのに十分な期間にわたって保持する工程;
(c)粉砕されたタンパク質製品を生成するために、該ゼラチン化タンパク質ケーキを粉砕する工程;ならびに
(d)テクスチャード植物タンパク質製品を生成するために、該粉砕されたタンパク質製品を摂氏約60~約300度の乾燥温度で乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
植物タンパク質が、少なくとも1種類のエンドウタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、混和物を0.5分~約60分の期間にわたって保持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
混和物中の水:エンドウタンパク質の比が、約0.5:1~約5:1を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
トランスグルタミナーゼが、混和物の約0.0001重量パーセント~約10重量パーセントで添加される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
トランスグルタミナーゼが、微生物トランスグルタミナーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(c)が、肉挽き機を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
トランスグルタミナーゼが、約0.01重量%~約10重量%で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
植物タンパク質が、レッドレンチル、グリーンレンチル、イエローレンチル、ブラウンレンチル、ヒヨコマメ、ガーデンピー、ササゲ、サヤインゲン、ソラマメ、インゲンマメ、ならびにその組み合わせに由来するタンパク質からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
(a)水/トランスグルタミナーゼ/植物タンパク質混和物を生成するために、水とトランスグルタミナーゼと植物タンパク質とを混和する工程;該混和物を、ゼラチン化タンパク質ケーキを生成するのに十分な期間にわたって保持する工程;粉砕されたタンパク質製品を生成するために、該ゼラチン化タンパク質ケーキを粉砕する工程;ならびにテクスチャード植物タンパク質製品を生成するために、該粉砕されたタンパク質製品を摂氏約60~約300度の乾燥温度で乾燥させる工程、を含む方法によって作製された、少なくとも1つのテクスチャードタンパク質製品;
(b)少なくとも1種類の植物タンパク質;ならびに
(c)トランスグルタミナーゼ、少なくとも1種類の親水コロイド、およびその組み合わせからなる群より選択される、つなぎ剤
を含む、形成された代替肉製品。
【請求項11】
少なくとも1種類の植物タンパク質が、少なくとも1種類のエンドウタンパク質を含む、請求項10記載の形成された代替肉製品。
【請求項12】
親水コロイドが、チア粘液、アマ粘液、カラゲナン、アラビアガム、イナゴマメメチルセルロース、グアーガム、ゲランガム、タラガム、コンニャクガム、改変アラビアガム、キサンタンガム、ペクチン、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項10記載の形成された代替肉製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、肉を含まないタンパク質製品、および肉を含まないタンパク質製品を作製する方法に関する。さらに具体的に言うと、本発明は、テクスチャード植物タンパク質製品を作製する方法、およびこれらの方法によって作製された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国だけで、植物ベース代用肉市場は8億ドルから14億ドルになると見積もられている。アナリストたちは、代用肉市場が今後10年以内に1400億ドルになり、1兆4000億ドルの世界食肉市場のうち約10%を獲得する可能性があると予想している。植物ベース代替肉は消費者にますます受け入れられており、これは、主に、植物ベース栄養分の健康上の利点と、増加し続けている人間集団のニーズを満たす食肉生産の環境上の影響を減らす可能性の組み合わせによって駆り立てられている。多くの新たな、肉を含まないタンパク質製品とブランドが開発されており、これらの全てが、肉の味と食感のある植物ベースタンパク質製品を提供することを目標としている。
【0003】
代替肉に利用される最も一般的なタンパク質はダイズタンパク質とコムギグルテンであり、その主な理由は、加工面で利点があり、豊富にあること、入手可能なこと、費用が安いことである。しかしながら、消費者はダイズフリーおよびグルテンフリーの製品への関心が高くなってきており、そのため、エンドウタンパク質はますます魅力的な選択肢となっている。エンドウタンパク質はアミノ酸ロイシンが最も豊富にある植物タンパク質であり、アルギニンとリジンも多く含んでいる。さらに、エンドウタンパク質の加工に必要な水の量はダイズタンパク質または食肉タンパク質の加工よりもかなり少なく、そのため、食事性タンパク質源として環境的に持続可能な選択肢が提供される。
【0004】
しかしながら、多くのタイプの代替肉として用いられるか、またはその中にある成分として用いられるテクスチャード植物性タンパク質は、従来より、ダイズ粉、ダイズ濃縮物、および/またはダイズ分離物から作られてきた。エンドウタンパク質は魅力的な代用品であるが、エンドウタンパク質の使用は、いくつかの課題を示してきた。Shandらが述べたように、エンドウタンパク質製品は「類似するダイズタンパク質製品と同等かつ補完的な機能を示すと報告されているが、エンドウタンパク質の熱誘導性ゲルはダイズタンパク質ゲルより弱いと述べられている」(Shand, P.J., et al., Physicochemical and textural properties of heat-induced pea protein isolate gels, Food Chemistry 102 (2007) 1119-1130(非特許文献1))。代替肉の作製は一般的に、1種類または複数種の植物タンパク質を含むゼラチン化マトリックス、すなわちゲルを生成することを伴うので、このことは重要である。
【0005】
テクスチャードタンパク質製品は、一般的に、繊維、細片、チャンク、小片、顆粒、薄切り、または同様の食品形態として生成される。テクスチャード植物性タンパク質は、「食事中の肉の完全または部分的な代わりとなり、かつ食肉製品と同様の外観、食感、および栄養含有率を有する食品と説明することができる」(Riaz, M.N., Texturized vegetable proteins, Handbook of Food Proteins (2011) p. 395-418, Woodhead Publishing Series in Food Science, Technology and Nutrition(非特許文献2))。テクスチャード植物性タンパク質(TVP)は50年以上にわたって販売されており、広く用いられている用語である「TVP」は1960年代にアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社によって商標登録されている。しかしながら、肉を含まないタンパク質製品への関心とその需要が高まるにつれて、もっと良いフレーバーがあり、食感があり、ダイズフリーでグルテンフリーの新たな植物性タンパク質製品の開発が、食材会社、ビーガン向けおよびベジタリアン向けの食品を生産する会社、さらには従来食肉生産でしか知られていなかった一部の会社にとって、目標になってきた。
【0006】
食感を与えるためにエンドウ粉およびエンドウ濃縮物が以前に用いられたことがある。しかしながら、Riazは、「これらの原材料はやや変わりやすく、押出し前に広範囲にわたって熱処理されていることが多く、従って、食感を与えることが非常に難しい」と述べた(Riaz, M.N., Texturized vegetable proteins, Handbook of Food Proteins (2011) p. 402, Woodhead Publishing Series in Food Science, Technology and Nutrition(非特許文献3))。ほとんどのテクスチャード植物性タンパク質製品は熱押出し技術を用いて生成される。これには、食感を与えるプロセスの目標であるゼラチン化マトリックスの発生の助けとなるデンプンなどの追加成分を用いた高温(重大なタンパク質変性を生じる)及び高圧処理が必要とされてきた。例えば、米国特許第8,728,560号(Boursier et al., 20 May 2014)(特許文献1)は、タンパク質中のジスルフィド架橋の形成を減らすソディウムメタサルファイト(sodium metasulfite)の添加とテクスチャード製品を強化する石膏の添加を開示している。しかしながら、ほとんどの消費者は、成分が少ししかない「クリーンラベル」製品を好み、消費者にとってさらにいっそう重要なのは、これらの成分が安全で単純な食品成分だと簡単に認識できるという考えである。
【0007】
50年以上にわたって、テクスチャライズドタンパク質の生産分野における最新技術は押出し技術であった。この技術を改善する取り組みは引き続き行われている。しかしながら、本当に必要とされるものは、このタンパク質が与えることができる栄養価を保持しながら、代替肉および/またはミートエクステンダーとして使用される成分を加工するための費用対効果の大きい選択肢を提供する、テクスチャードタンパク質ベース製品を作製するための新規かつより優れた加工方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,728,560号(Boursier et al., 20 May 2014)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shand, P.J., et al., Physicochemical and textural properties of heat-induced pea protein isolate gels, Food Chemistry 102 (2007) 1119-1130
【非特許文献2】Riaz, M.N., Texturized vegetable proteins, Handbook of Food Proteins (2011) p. 395-418, Woodhead Publishing Series in Food Science, Technology and Nutrition
【非特許文献3】Riaz, M.N., Texturized vegetable proteins, Handbook of Food Proteins (2011) p. 402, Woodhead Publishing Series in Food Science, Technology and Nutrition
【発明の概要】
【0010】
本発明は、テクスチャード植物タンパク質製品を生成する方法であって、水/トランスグルタミナーゼ/タンパク質混和物を生成するために、水とトランスグルタミナーゼと植物タンパク質とを混和する工程;混和物を、ゼラチン化タンパク質ケーキを生成するのに十分な期間にわたって保持する工程;粉砕されたタンパク質製品を生成するために、ゼラチン化タンパク質ケーキを粉砕する工程;ならびにテクスチャードエンドウタンパク質製品を生成するために、粉砕されたタンパク質製品を摂氏約60~約300度の乾燥温度で乾燥させる工程を含む、方法を提供する。本発明はまた、前記方法によって作製されたテクスチャードタンパク質製品、およびこれらのテクスチャードタンパク質製品を用いて作製された代替肉にも関する。
【0011】
本発明の様々な局面において、植物タンパク質はエンドウタンパク質である。様々な局面において、混和物中の水:タンパク質の比は、重量で約0.5:1~約5:1である。様々な局面において、トランスグルタミナーゼは、混和物の約0.0001重量パーセント~約10重量パーセントで添加され、様々な局面において、ゼラチン化タンパク質ケーキを生成するための保持時間は約0.5分~約60分間でもよく、当業者は、使用されるトランスグルタミナーゼの量または濃度に応じて保持時間が変化する場合があることを認識している。本発明の様々な局面において、粉砕は肉挽き機を用いて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】テクスチャードエンドウタンパク質の物理的外観に及ぼす湿潤度の影響を示す。
図1Aは、75%の湿潤度(1:3比のエンドウタンパク質:水)で生成し、210℃で乾燥させたテクスチャードエンドウタンパク質製品の写真である。
図1Bは、60%の湿潤度(1:1.5比のエンドウタンパク質:水)で生成し、210℃で乾燥させたテクスチャードエンドウタンパク質製品の写真である。
図1Cは、長方形に作製し、60%の湿潤度(1:1.5比のエンドウタンパク質:水)で生成し、210℃で乾燥させたテクスチャードエンドウタンパク質製品の写真である。
図1Dは、押出しプロセスを用いて作製した市販のテクスチャードエンドウの写真である。
【
図2】(エンドウタンパク質を用いて)本発明の製品を用いて作製し、新たに丸めたミートボール(上)と、新たに丸め、1%アマを含む衣を用いて包んだ同じタイプのミートボール(下)の写真である。
【
図3】新たに調理した植物性タンパク質(エンドウタンパク質)ミートボール(
図3A)と調理済みの牛肉ベースミートボール(3B)を示した写真である。
【
図4】一枚目が、新たに作製したビーガン向けパティ(4A)、二枚目が、新たに調理したビーガン向けパティ(4B)の、2枚の写真を示す。
【
図5】一枚目が、新たに作製し、調理したエンドウタンパク質由来ソーセージ(5A)、二枚目(5B)が、本発明の方法によって作製した製品を用いて作製した新鮮なソーセージの切断面図の、2枚の写真を示す。
【
図6】一枚目(6A)が、本発明の製品を用いて作製した、新たに作製した「チキン」ナゲット、二枚目(6B)が、天ぷら衣に浸し、油で揚げた後のナゲットの、2枚の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本発明者らは、押出し加工に必要とされる広範囲の温度/圧力レベルの従来の使用を必要としない、テクスチャード植物タンパク質製品を生成する方法を開発した。この方法は、本発明者らが、肉を含まない様々なタンパク質製品、例えば、ビーガン向けミートボール、ビーガン向けパティ(例えば、バーガー、ソーセージ)、ビーガン向けソーセージリンク、ビーガン向けクランブル、およびビーガン向けチキンナゲットタイプの製品を作製するために使用した、費用対効果がより大きく、よりクリーンラベルのテクスチャードタンパク質を提供する。異なるカテゴリーの製品を生成するように異なるタイプのフレーバーと香辛料の添加することで、これらの製品は肉によく似た食感と良いフレーバーを示す。
【0014】
本発明は、テクスチャードエンドウタンパク質製品を生成する方法であって、水/トランスグルタミナーゼ/エンドウタンパク質混和物を生成するために、水とトランスグルタミナーゼとエンドウタンパク質とを混和する工程;混和物を、ゼラチン化タンパク質ケーキを生成するのに十分な期間にわたって保持する工程;粉砕されたタンパク質製品を生成するために、ゼラチン化タンパク質ケーキを粉砕する工程;ならびにテクスチャードエンドウタンパク質製品を生成するために、粉砕されたタンパク質製品を摂氏約60~約300度の乾燥温度で乾燥させる工程を含む、方法を提供する。
【0015】
本発明の様々な局面において、混和物中にある水とエンドウタンパク質との比は、約1:1~約3:1を含む。様々な局面において、トランスグルタミナーゼは、混和物の約0.001重量パーセント~約0.003重量パーセントのレベルで添加される。様々な局面において、香料は、混和物の約0.01重量パーセント~約20重量パーセントで添加される。本発明の様々な局面において、粉砕する工程は肉挽き機によって行われる。混和物を保持するための保持時間は約0.5分~約60分の範囲でもよく、当業者は、必要時間が、使用したトランスグルタミナーゼの量に従って変化することがあることを認識している。
【0016】
エンドウ(Pisum sativum)(ガーデンピー(garden pea)、フィールドピー、スプリングピー(spring pea)、イングリッシュピー(English pea)、コモンピー(common pea)、グリーンピー(green pea))は、タンパク質源として、いくつかの国で栽培されている豆類の一種である。Tulbekらは、エンドウの栽培、栄養価、および加工について述べている(Tulbek, M.C. et al. Pea: A Sustainable Vegetable Protein Crop, Sustainable Protein Sources (2017) p.145-164)。トランスグルタミナーゼを用いてエンドウタンパク質を架橋できることが以前に報告されたが、Tulbekらは、「最新の研究から、エンドウタンパク質製品が卵、ダイズ、および肉タンパク質と比較して弱いゲル強度、粘性、および食感を示す傾向があると分かった」と開示している。しかしながら、本発明者らは、例えば、テクスチャードダイズタンパク質の代わりに使用できるテクスチャードエンドウタンパク質製品を生成して、代替肉製品、例えば、ビーガン向けソーセージ、バーガー、「チキン」ナゲット、ミートボールなどのためのダイズフリーグルテンフリー代替肉または成分を提供するために、トランスグルタミナーゼの架橋結合作用を利用して、サイズを小さくすることができ、乾燥することができる、ゲルの一種を得ることに成功した。本発明者らは、テクスチャードタンパク質製品を生成する最も一般的な方法の使用-高温高圧押出しを必要としない、これらの製品を生成するための方法を開発することを選択した。
【0017】
本発明の方法において、本発明者らは、肉によく似ており、代替肉として容易に使用することができる食感と粘稠性をもつクリーンラベル製品を生成するために、酵素架橋結合、タンパク質水和、フレーバー、水和と架橋結合に起因するゲルの粉砕、および乾燥温度の組み合わせを使用した。しかしながら、「粉砕する」という用語が用いられる場合、この用語は、粉砕すること、微粉砕すること、細かく砕くこと、つぶすこと、挽くこと、押しつぶすこと、摩砕すること、およびタンパク質ケーキのサイズを小さくして、テクスチャライズドタンパク質製品として使用するのに適したサイズのより小さな断片を形成する他の類似方法を説明するために本明細書において用いられると当業者によって理解されるはずである。例えば、製品が金属板を通るように押し付けられた時に製品の断片が形成されるように、前記製品は、望ましい形状の少なくとも1つの開口部を備える金属板を通るように押し付けられることがある。このような板は、様々なサイズおよび形状のテクスチャード植物タンパク質製品を形成するための、望ましいサイズおよび形状の開口部を提供するダイとして使用することができる。これらは、例えば、当技術分野において「クランブル」、ストリップ(例えば、肉を含まないステーキストリップ、肉を含まないチキンストリップ)、ベーコンストリップ、および他の製品として知られるものを含む様々な異なるタイプの製品を生成するのに望ましいことがある。
【0018】
トランスグルタミナーゼ(2.3.2.13,タンパク質-グルタミン:アミンγ-グルタミルトランスフェラーゼ)は、あるタンパク質のグルタミン残基のγ-カルボキシアミド基を同じタンパク質または別のタンパク質のリジン残基のε-アミノ基に転移することによってタンパク質を架橋する。トランスグルタミナーゼは様々な用途のために食品産業において一般的に用いられ、例えば、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)、ストレプトマイセス・リバニ(Streptomyces libani)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス・ラダカナム(Streptomyces ladakanum)などの様々な細菌によって産生することができる。1989年に、ストレプトベルチキリウム属(Streptoverticillium)の種から微生物トランスグルタミナーゼが単離された。トランスグルタミナーゼは特に食品産業での大規模用途では粉末の形で提供されることが多く、様々な民間の提供業者から入手可能である。本発明の方法における使用に適したトランスグルタミナーゼ酵素には、例えば、微生物由来のトランスグルタミナーゼ酵素が含まれ、これらは広く市販されている。
【0019】
本発明は、エンドウタンパク質から作製された製品を生成する方法と説明される。しかしながら、本明細書に記載の方法が、エンドウタンパク質濃縮物、エンドウタンパク質分離物、および他のタンパク質濃縮物、ならびに、例えば、レッドレンチル(red lentil)、グリーンレンチル(green lentil)、イエローレンチル(yellow lentil)、およびブラウンレンチル(brown lentil)、ヒヨコマメ(チャナーまたはガルバンゾマメ)、ガーデンピー、ササゲ、サヤインゲン、ソラマメ(broad bean)(ソラマメ(fava bean))、およびインゲンマメなどの他の豆類に由来する分離物からなる群より選択されるタンパク質源にも使用できることは当業者に明らかなはずである。イネタンパク質分離物、イネタンパク質濃縮物、およびダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質分離物、コムギタンパク質濃縮物、コムギタンパク質分離物、テフタンパク質濃縮物、テフタンパク質分離物、カラスムギタンパク質濃縮物、カラスムギタンパク質分離物、トウモロコシタンパク質濃縮物、トウモロコシタンパク質分離物、オオムギタンパク質濃縮物、オオムギタンパク質分離物、ソルガムタンパク質濃縮物、ソルガムタンパク質分離物、ライムギタンパク質濃縮物、ライムギタンパク質分離物、雑穀タンパク質濃縮物、雑穀タンパク質分離物、アマランサスタンパク質濃縮物、アマランサスタンパク質分離物、ソバタンパク質濃縮物、ソバタンパク質分離物、キノアタンパク質濃縮物、キノアタンパク質分離物、およびその組み合わせからなる群より選択されるタンパク質も有用である。
【0020】
前記方法は、一際優れたテクスチャードエンドウタンパク質製品(TG-TPP)および肉を含まないタンパク質製品のずば抜けて素晴らしいクリーンラベル選択肢を調製するために、わずかな工程しか必要とせず、費用対効果が非常に高い、すなわち、タンパク質と酵素と任意でフレーバーと香辛料しか必要としない。簡単に言うと、前記方法は、一般的に、少なくとも1種類のエンドウタンパク質を容器に添加することによって行うことができ、この容器の中で製品を混合/撹拌することができる。例えば、エンドウタンパク質などの植物タンパク質は、例えば、粉末の形で(または、例えば、タンパク質と水を含む液体組成物として)タンパク質分離物またはタンパク質濃縮物として市販されている。トランスグルタミナーゼ酵素がエンドウタンパク質と混和される。本発明の方法は、肉を含まない様々なタンパク質製品を生成するのに使用することができるので、任意で、望ましい最終生成物に応じてフレーバー、香辛料、デンプン、炭水化物、脂質、ならびに他の多量栄養素および微量栄養素を添加して、望ましい機能上および/または栄養上の特徴を向上させることができる。混合(例えば、撹拌)は、ある期間にわたって、通常、30分未満の期間にわたって行われる。例えば、10分間の混合が本発明者らによって大成功を収めて用いられている。タンパク質/酵素混合物には、約2分未満にわたって連続撹拌しながら(約55℃の温度の)水道水が添加される(液体タンパク質組成物が出発物質として用いられる場合、水の添加が不要な場合がある、またはその量が減らされる場合があると当業者によって理解されるはずである。すなわち、液体タンパク質組成物は前記の量および比の水とタンパク質とを提供し得る)。非限定的な例として、結果として生じたバッターを容器に移して、適度の圧縮力を加えた「ケーキ」を形成することができ、圧縮されたケーキを室温で短時間そのままにすることができる(場合によっては、例えば、30分以下である必要がある)。次いで、ケーキを、例えば、肉挽き機を用いて挽く。様々な食品用途において使用できるテクスチャードエンドウタンパク質(TG-TPP)を生成するために、粉砕された製品は、例えば、熱風乾燥方式を用いて乾燥される。これらの用途のいくつかは、本明細書中の実施例で説明される。粉砕されたタンパク質製品を乾燥させる適切な方法は当業者に公知であり、例えば、様々な種類の熱風乾燥方式を含む。
【0021】
本明細書で使用する「ゼラチン化タンパク質ケーキ」とは、比較的形成された、いくらかゼラチン状のローフ、ブロック、ランプなどを生じるように、混合物中にあるトランスグルタミナーゼによって十分に架橋されているタンパク質の塊であり、この塊は、例えば、製品が金属板などに通されて押し付けられた時に製品の断片が形成されるように、ローフを、例えば、望ましい形状の少なくとも1つの開口部を備える金属板に通して粉砕する、押し付けるなどの様々な手段によって、より小さな断片に小さくすることができる。
【0022】
いくつかの、形成された、肉を含まないまたはビーガン向けの製品を生成するためには、本発明の方法によって作製された少なくとも1つのテクスチャードタンパク質製品(例えば、テクスチャードエンドウタンパク質)を、テクスチャードタンパク質のつなぎとして働く、例えば、エンドウタンパク質とトランスグルタミナーゼの混合物、エンドウタンパク質と少なくとも1種類の親水コロイドの混合物、またはその両方の混合物と組み合わせることが有益である。この場合、トランスグルタミナーゼは乾燥成分の約0.001重量%~約10重量%で用いられる。適切な親水コロイド供給源には、例えば、植物供給源、例えば、アマ、チア、およびその組み合わせ、ならびにガム、例えば、カラゲナン、アラビアガム、イナゴマメメチルセルロース、グアーガム、ゲランガム、タラガム、コンニャクガム、改変アラビアガム、キサンタンガム、ペクチン、およびその組み合わせが含まれる。簡単に言うと、例として、ビーガン向けミートボールなどの製品は、この方法によって、(上記の方法により調製されるような)テクスチャード植物性タンパク質を添加することにより形成され、これを、エンドウタンパク質、1種類または複数種の親水コロイド(例えば、約40:約60の重量比のアマタンパク質とエンドウタンパク質を混和することによって調製されたガム系)、油(例えば、水添パーム核油)、およびシーズニングブレンドと一緒に沸騰水と混和し、10分間調理することによって、再構成されてもよい。テクスチャード植物性タンパク質は乾燥ブレンドに添加され、十分に混ぜ合わされる。油と水が添加および混合されてもよく、結果として生じたバッターがボールに成型され、卓上で30分間静置された後に、結果として生じた製品が調理されてもよい。もちろん、例えば、沸騰水をTG-TPPに添加し、その混合物を卓上またはカウンター上で15分間静置してテクスチャード植物性タンパク質を再構成するなどのTG-TPPを再構成する別の方法が、この方法における使用に適している。
【0023】
本発明の方法、本発明の方法によって作製された製品、およびこれらの製品を用いて作製された代替肉は、「含む」という用語を用いて本明細書中で説明される。しかしながら、「含む」は、その範囲内に、もっと狭く解釈される用語である「からなる」および「から本質的になる」を包含すると理解されるはずである。従って、本発明の方法、本発明の方法によって作製された製品、およびこれらの製品を用いて作製された代替肉も、これらの用語で説明することができる。前記方法は、「1つの(a)」テクスチャードタンパク質製品を作製する方法として説明されたが、本明細書における開示を考えると、前記方法のバリエーションを用いて前記製品のバリエーションを作製することができ、その結果として、本明細書において開示される方法を用いて実際に作製できる様々な異なる製品が生じることも当業者によって理解されるはずである。すなわち、本発明の方法によって少なくとも1つのテクスチャードタンパク質製品を作製することができる。本発明の方法に従って作製される製品は以下の非限定的な例によってさらに説明することができる。
【実施例】
【0024】
テクスチャードエンドウタンパク質(TPP)を作製する際にエンドウタンパク質(Glanbia Pic., USA)とトランスグルタミナーゼ,TG-S802(Taixing Dongsheng Bio-Tech Co., LTD., China)を使用した。エンドウタンパク質は、以下の特徴:タンパク質含有率(>80%d.b)、灰分(<8%)、脂肪(<10%)、および水分(<9%)を有する。
【0025】
TPPを生成するための加工条件の最適化
完全要因計画(3x3x3x2)を用いてテクスチャードエンドウタンパク質(TPP)の最適化条件を確立した(表1)。簡単に言うと、500gのエンドウタンパク質を、スタンドミキサー(Model KSM6573C0B, KitchenAid(登録商標), USA)のミキシングボールに入れて、0.1g精度のデジタル計量天秤(Model ML4002E, Mettler Toledo, Switzerland)を用いて計量した。望ましい量のトランスグルタミナーゼを測定し、pea protein(登録商標)に加え、KitchenAid(登録商標)ミキサーの撹拌速度をレベル2に設定することによって10分間混ぜ合わせた。水道水(55℃)を測定し、撹拌しながら混合物に添加した。混和物への温水添加から混合動作の停止までの全体の混合操作は1分以下であった。バッターをボールに注ぎ、適度の圧縮力を加えてケーキを形成した。ケーキを、表1に示した時間にわたって室温で静置した。
【0026】
容器の底と側面をそっと軽くたたくことで、ゲル化したテクスチャードエンドウケーキを容器から取り出した。その後に、ケーキを、肉挽き機(Model HL200, Hobart, USA)で挽くことを容易にするサイズに薄く切った。肉挽き機は保持部分とミリングチャンバーとを備えた。ミリングチャンバーは、主に、電気モーターに接続しているスクリューコンベヤとカッティングブレードとダイ/シェーパー(1/4'')とを備えた。スクリューコンベヤは、ケーキを押しつぶす時計回りの運動をもたらし、ケーキを、ミリングチャンバーの出口に位置するダイに輸送する。スクリューコンベヤがバッターをダイの表面に押し付けた時に、カッティングブレードは、長く連なったTVPの形成を阻止するように、バッターを薄く切る。次いで、TVPをすぐに2等分し、それぞれ、60℃と210℃の予め設定した温度で産業用コンベクティブドライヤ(CO41408, MIWE condo, Arnstein Germany)に入れて乾燥させた。
【0027】
(表1)テクスチャード植物性タンパク質を生成するためのパラメータの最適化
【0028】
TPPを評価するために、20gの乾燥TPPを、ビーカーに入っている200gの沸騰水に10分の保持時間にわたって添加した。孔径が600μmのふるいに試料を注ぐことによって水を除去した。その後に、試料の味、香り、色、水吸収、食感プロファイル分析、かたさ、付着性、凝集性、弾力性、および噛み応えを分析した。乾燥TPPのアミノ酸含有率、タンパク質含有率、炭水化物含有率、灰分、および脂質含有率を分析した。後の実験には最適化されたTPPを選択した。
【0029】
試験の第二部では、食肉類似食品であるナゲット、ミートボール、ソーセージ、ミートパティ、およびミートクランブルそれぞれの6種類の配合物を、表2に示した雛形に従って開発した。例えば、TPPを2つの異なる等級の(細かい、および粗い)粒子に挽き、沸騰水に10分間、予め浸漬し、次いで、スクリーンメッシュを用いて押しつぶして水を取り除いた。成分を全て混合した後に、望ましいバッターを、望ましい用途(ナゲット、ミートボール、ソーセージ、クランブル、およびミートパティ)に応じて成型した。クランブルの場合、水とシーズンブレンドを沸騰させ、TPPを添加した。全ての水がTPPに吸い込まれるまで、または完全に蒸発するまで混和物を調理した。
【0030】
10%TGエンドウ成分は、10:100の重量比のトランスグルタミナーゼとエンドウタンパク質の混和物である。デンプンとガム系は、40:60の重量比のアマとエンドウタンパク質の混和物である。キャノーラ/ヤシ油ブレンドは、60:40の重量比のキャノーラ油とヤシ油の混和物である。
【0031】
(表2)肉類似食品ナゲット、ミートボール、ソーセージ、およびパティ用の配合物
【0032】
水吸収指数
水吸収指数を試験する手順は、米国大豆協会技術公報(American Soybean Association technical bulletin)(1988)から改変されたものであった。この試験では、所定の重量の製品と所定の時間でTPPが吸収する水の量を分析する。20グラムのテクスチャードコムギグルテンを100mLの室温の水に20分間浸漬した。浸漬後に、水和した製品をスクリーン上に置いて5分間水切りした。最終重量を記録した。水吸収指数を計算するために、以下の式を使用した。
【0033】
テクスチャープロファイルアナリシス(TPA)
再水和したTPP試料の食感特性をテクスチャーアナライザ(TA-XT plus, Stable Micro Systems, UK)を用いて測定した。TA-42ブレードは3mm厚、7cm幅であり、典型的に製品の全歯応えの測定に推奨される45°チゼルエッジを有する。5gの抵抗が検知されるまでブレードが1mm/secで移動するように、TPPの4つの断片をブレードに対して垂直に並べた。次いで、ブレードは0.5mm/secまで減速し、製品を通って進路の90%を継続した。分析から得られるパラメータは、かたさ、付着性、凝集性、弾力性、ガム性、および噛み応えを含んだ。
【0034】
色の測定
色の変化に及ぼすTPPの影響を評価するために、乾燥したTPPと再水和したTPPとを使用した。L*(明度)、a*(赤色度)、b*(黄色度)、C*(彩度)、および°h(色相角)の値を、分光光度計(モデル45/0, ColorFlex EZ USA)を用いてCIELAB表色系によって測定した。分析前に白色のキャリブレーションプレートを用いて装置を標準化した。
【0035】
アミノ酸組成
AOAC(1990)を用いて完全アミノ酸プロファイルを行った。本発明の方法によって作製された製品のアミノ酸組成は、押出し技術を用いて作製された市販のTPP製品のアミノ酸組成と同様であった。
【0036】
統計解析
全ての実験を3回繰り返して行い、データを平均±SDで表した。平均間の有意差を、p≦0.05でダンカンの多重比較を用いて分散分析(ANOVA)によって求めた。
【0037】
官能評価
合計10人の官能試験員がTPPナゲット、ミートボール、ソーセージ、およびパティの官能検査を行った。9段階の快不快尺度を使用した。特質は、外観、色、食感、香り、味、および全許容性であった。ナゲット、ミートボール、ソーセージ、およびパティを全て長方形に切断し、偏見を避けるために、ランダムな3桁のコード化された数字の付いた皿に載せて官能試験員に提示した。スコアは、1(とても嫌い)~9(とても好き)の9段階の快不快尺度に基づいた。
【0038】
製品の物理的外観に及ぼす湿潤度の影響
テクスチャードエンドウタンパク質の物理的外観に及ぼす湿潤度の影響を
図1に示した。結果から、湿潤度が増えると、テクスチャードエンドウ表面の表面粗さが滑らかになり、乾燥中に熱によって誘導される褐変の程度が大きくなることが分かった(
図1A)。しかしながら、65%未満の湿潤度で得られたテクスチャードエンドウの外観は市販のテクスチャードエンドウと同等であった。表3は、テクスチャードエンドウの分析と市販製品の分析とを示す。平均して、本発明の方法によって生成されたテクスチャードエンドウタンパク質は85%のタンパク質含有率を有するのに対して、市販のテクスチャードエンドウタンパク質は65%のタンパク質含有率を有する。アミノ酸分析および比較から、本発明のテクスチャードエンドウタンパク質と市販製品との間には有意差がないことが分かった。さらに、70℃での乾燥と比較して、210℃での乾燥した結果、熱分解はなかった。しかしながら、高湿潤度での低温乾燥(70℃未満)は、長期間の乾燥、および熱によって誘導される褐変の原因となることがある。
【0039】
(表3)テクスチャードエンドウ製品と市販製品との比較分析
*-Glanbia TVPは、本発明の方法によって作製されたテクスチャードエンドウタンパク質製品である; Nutri-Crisps(登録商標)(Cereal Ingredients, Inc., Leavenworth, KS); ProFood (ProFood International, Chicago, IL)。
【0040】
色プロファイルに及ぼす湿潤度の影響
テクスチャードエンドウタンパク質および2つの異なる市販製品の色プロファイルに及ぼす湿潤度の影響を表4に示した。Delta Eは、以下のカテゴリーに基づいた、2つの所与の色の視覚認知変化の尺度である:<=1.0-人間の目では認知できない;1~2-注意深く観察することで認知できる;2~10-一目で認知できる;11~49-色が、反対のものより似ている;100-色が正反対である。市販製品1と、0.0010%および0.0030%のトランスグルタミナーゼ含有率を用いた本発明の製品との間の色の対比を表4に示した。結果から、得られたDelta Eは、2種類の製品が一目で認知できることを示していることが分かった。市販製品2でも同様の結果(表5)が得られた。しかしながら、湿潤度が60%を超えた時に、本発明者らが開発したテクスチャードエンドウと市販のテクスチャードエンドウ製品のそれぞれと比較すると、相違の認知のしやすさは有意に増えた。(1:1)で示された湿潤度は1グラムのエンドウタンパク質分離物:1グラムの水を意味する。
【0041】
(表4)本発明の製品対市販のテクスチャードエンドウタンパク質製品1の色分析のDelta E結果
【0042】
(表5)本発明の製品対市販のテクスチャードエンドウタンパク質製品2の色分析のDelta E結果
【0043】
製品を沸騰水に10分間浸漬することの影響-かたさの程度
3つの異なる湿潤度(50%、60%、および75%)ならびにタンパク質を架橋するのに使用した2つの異なるトランスグルタミナーゼレベル(0.0010%対0.0030%)を用いて生成した製品の、かたさの程度を測定することによって、加工(湯で10分間煮ることで表される)の影響を評価した。実験を10回繰り返し、結果を平均と標準偏差()で表した。結果を表6に示した。
【0044】
(表6)かたさのレベル
*の比較
(
*-かたさのレベルは、3つの異なる湿潤度(50%、60%、および75%)ならびにタンパク質を架橋するのに使用した2つの異なるトランスグルタミナーゼレベル(0.0010%対0.0030%)を用いて生成された製品に及ぼす加工(湯で10分間煮る)の影響を反映している。
【0045】
製品を沸騰水に10分間浸漬することの影響-水吸収指数
3つの異なる湿潤度(50%、60%、および75%)およびタンパク質を架橋するために使用した2つの異なるトランスグルタミナーゼレベル(0.0010%対0.0030%)を用いて生成した製品、ならびに2つの別々の市販製品の、水吸収指数を測定することによって、加工(湯で10分間煮ることで表される)の影響を評価した。結果を表7に示した。市販製品1および2の水吸収指数は、それぞれ、220.7および225.9であることが見出された。
【0046】
【0047】
ビーガン向けミートボール中の成分としてのTVP
ビーガン向けミートボールの一般的な成分を表8に列挙した。テクスチャード植物性タンパク質を測定し、沸騰水に添加し、10分間調理した(別の方法では、沸騰水をテクスチャード植物性タンパク質に添加し、卓上で15分間静置した)。エンドウタンパク質(Glanbia Nutritionals Inc., Monroe, WI)を測定してボールに入れ、10%TGエンドウを添加し、十分に混合した。混合物にガム系、水添パーム核油、およびシーズニングブレンドを添加し、全てを混合した。乾燥ブレンドにテクスチャードエンドウタンパク質を添加し、十分に混ぜ合わせた。その後に油と水を添加し、混合した。バッターを成型してミートボールにし、卓上で30分間静置した。溶解状態の1%アマを用いることで衣系(coating system)を開発した。
図2および
図3は、それぞれ、調理前の新たに作製したミートボールと調理済みのミートボールを示す。
【0048】
(表8)TG-TPPを用いたビーガン向けミートボールの成分
【0049】
10%TGエンドウ成分は、重量比が10:100のトランスグルタミナーゼとエンドウタンパク質との混和物である。ガム系は、40:60の重量比のアマとエンドウタンパク質との混和物である。キャノーラ/ヤシ油ブレンドは、60:40の重量比のキャノーラ油とヤシ油との混和物である。シーズニングブレンドは、天日乾燥したトマト、パプリカ、ニュートリショナルイースト(nutritional yeast)、ニンニク、塩、オレガノ、およびフレーバーの混合物である。
【0050】
表9は、市販の牛肉ベースミートボールと比較した、テクスチャードエンドウを用いて作製されたミートボールの食感分析を示す。
【0051】
(表9)テクスチャードエンドウベースミートボール対(市販の)牛肉ベースミートボール(10%TGのつなぎ)の食感分析
【0052】
ビーガン向け「ミート」パティを作製するためのTG-TPPの使用
ビーガン向けミートパティの成分を表10に列挙した。テクスチャード植物性タンパク質を測定し、沸騰水に添加し、10分間調理した(別のプロセスでは、沸騰水をTG-TPPに添加し、卓上で15分間静置した)。エンドウタンパク質を測定してボールに入れ、10%TGエンドウを添加し、十分に混合した。混合物にガム系、水添パーム核油、およびシーズニングブレンドを添加し、混合した。乾燥ブレンドにテクスチャード植物性タンパク質を添加し、十分に混ぜ合わせた。その後に油と水を添加し、混合した。バッターを成型してミートボールにし、卓上で30分間静置した。
図4は、調理前と調理後の新たに作製したベジパティを示した。
【0053】
(表10)ビーガン向けミートパティの成分
シーズニングブレンドは、熏液、パプリカ、ニュートリショナルイースト、ニンニク、塩、オレガノ、およびフレーバーの混合物である。
【0054】
ビーガン向けソーセージ中のTG-TPPの使用
ビーガン向けソーセージの成分を表11に列挙した。テクスチャード植物性タンパク質を測定し、沸騰水に添加し、10分間調理した(または沸騰水をテクスチャード植物性タンパク質に添加し、卓上で15分間静置した)。HarvestPro pea 85(登録商標)(Glanbia Nutritionals, Monroe, WI)を測定してボールに入れ、10%TGエンドウを添加し、十分に混合した。混合物にガム系、水添パーム核油、およびシーズニングブレンドを添加し、さらに混合した。乾燥ブレンドにテクスチャード植物性タンパク質を添加し、十分に混ぜ合わせた。その後に油と水を添加し、混合した。バッターを成型してミートボールにし、卓上で30分間静置した。
図5は、新たに調理されたソーセージの写真である。
【0055】
(表11)ビーガン向けソーセージの成分
シーズニングブレンドは、熏液、パプリカ、ニュートリショナルイースト、ニンニク、塩、オレガノ、およびフレーバーの混合物であった。
【0056】
ビーガン向けチキンナゲット中のTG-TPPの使用
TG-TPPを用いてビーガン向けチキンナゲットを作製するための成分を表12に列挙した。テクスチャード植物性タンパク質を測定し、沸騰水に添加し、10分間調理した(または沸騰水をテクスチャード植物性タンパク質に添加し、卓上で15分間静置した)。テクスチャード植物性タンパク質を添加し、ブレンダーに入れて他の成分と混合した。約21gのブレンドを測定し、円板形にし、冷凍庫に10分間入れた。その後、(2分間)油で揚げる準備としてナゲットに小麦粉をまぶし天ぷら衣に浸した。
図6は、新たに作製したナゲット(
図6A)と、天ぷら衣に浸し、油で揚げた後のナゲット(
図6B)の写真を示す。
【0057】
(表12)TG-TPPチキンナゲットの成分
シーズニングブレンドは、ニンニク、タマネギ、塩、コショウ、およびフレーバーの混合物であった。
【0058】
ビーガン向けクランブル中でのTG-TPPの使用
TG-TPPを用いてビーガン向けクランブル製品を作製するための成分を表13に列挙した。テクスチャード植物性タンパク質を測定し、沸騰水に添加し、10分間調理した(または沸騰水をテクスチャード植物性タンパク質に添加し、卓上で15分間静置した)。シーズニングブレンドを望ましい量の液体混合物(水、熏液、およびダイズソース)に添加した。混和物を2分間ゆでた後に、テクスチャード植物性タンパク質を添加した。液体系が完全に吸収されるまで、または蒸発するまで混和物を調理した。
図7は、新たに作製したビーガンクランブルの写真である。
【0059】
(表13)TG-TPPクランブルの成分
シーズニングブレンドは、チリ粉末、ニンニク粉末、タマネギ粉末、赤トウガラシフレーク、オレガノ、パプリカ、クミン、塩、および黒コショウを含んだ。
【国際調査報告】