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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】慢性移植片対宿主病の処置用抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230213BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230213BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P37/06
A61K45/00
A61P17/00
A61K31/573
A61P43/00 121
C07K16/28
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535607
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020064010
(87)【国際公開番号】W WO2021119128
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/945,842
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/110,111
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318007502
【氏名又は名称】シンダックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】オルデントリヒ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】モリソン,ブリッグス・ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZC512
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB08
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗CSF-1R抗体、特にアキサチリマブの特定用量で硬化症状態を処置する方法、特に、慢性移植片対宿主病を処置する方法に関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片を、慢性移植片対宿主病(cGVHD)の処置を必要とする患者に投与する工程を含む、慢性移植片対宿主病(cGVHD)の処置方法。
【請求項2】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号23で与えられる配列を含む重鎖;
および
配列番号15で与えられる配列を含む軽鎖
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27で与えられる配列を含む重鎖および配列番号19で与えられる配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、3週間に1回から毎週4回の間で投与する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、2週間に1回投与する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約0.3mg/kgから3mg/kgの間の用量で投与する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約0.3mg/kgの用量で投与する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約1mg/kgの用量で投与する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、2週間ごとに約0.3mg/kgの用量で投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、4週間ごとに約3mg/kgの用量で投与する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記慢性移植片対宿主病が、皮膚の慢性移植片対宿主病、眼の慢性移植片対宿主病、口の慢性移植片対宿主病、食道の慢性移植片対宿主病、上部GIの慢性移植片対宿主病、下部GIの慢性移植片対宿主病、肝臓の慢性移植片対宿主病、肺の慢性移植片対宿主病、関節およびファシアの慢性移植片対宿主病、または全体的慢性移植片対宿主病から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記慢性移植片対宿主病が、皮膚の慢性移植片対宿主病、眼の慢性移植片対宿主病、肺の慢性移植片対宿主病、関節およびファシアの慢性移植片対宿主病、口の慢性移植片対宿主病、下部GIの慢性移植片対宿主病、および食道の慢性移植片対宿主病の1つまたは複数から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、1つまたは複数の事前治療中に増悪した、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、少なくとも2つの事前治療中に増悪した、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、事前のイブルチニブ処置から増悪した、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、少なくとも2つの事前治療中に増悪し、前記事前治療の1つがイブルチニブであった、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
単球のレベルが、CSF-1R阻害剤の用量間で完全には下がらない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
単球のレベルが、CSF-1R阻害剤の用量間で完全に下がる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記単球が、非古典的単球、中間単球、および/または古典的単球である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記CSF-1R阻害剤または抗CSF-1R抗体が、アキサチリマブである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記cGVHDが強皮症である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記cGVHDが、潰瘍形成を伴う強皮症である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アキサチリマブ抗体の重鎖の末端C末端リジンが不在である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
コルチコステロイドである第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
プレドニゾンである第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、参照によりその各々の開示の全体が組み込まれている、2019年12月9日に出願した米国仮出願第62/945,842号および2020年11月5日に出願した同第63/110,111号の優先権および利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、抗CSF-1R抗体アキサチリマブの好ましい用量で硬化性皮膚状態を処置する方法、特に、慢性移植片対宿主病を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)としても知られるコロニー刺激因子(CSF-1)は、内皮細胞および線維芽細胞を含む様々な細胞によって産生されるサイトカインである。CSF-1は、生物学的に活性な二量体CSF-1タンパク質を形成する2つの「モノマー」ポリペプチドからなる。CSF-1は、選択的RNA(alternative R A)スプライシング、タンパク質前駆体のタンパク質分解プロセシング、ならびにグリコシル化およびプロテオグリカンの付加を含む翻訳後修飾に起因する、少なくとも3つの成熟型で存在する(Cerretti DP等、1988年、Mol Immunol、25(8)、761;Pixley FJおよびStanley ER、2004年、Trends in Cell Biology、14(1 1)628~38ページ;Douglass,TG等、2008年、Int Immunopharmacol、8、1354~76ページを参照)。CSF-1タンパク質の様々な型は、2つの分泌分子を含み、一方はグリコシル化されたものであり、他方は、より長いアミノ末端配列およびプロテオグリカン修飾からなるものである。他のバリアントは、グリコシル化されているもののプロテオグリカン部分は有さない膜貫通型(TM)分子である。この膜型は、タンパク質分解的切断により切り離され得て、活性可溶性分子を放出する。すべての型は、アミノ末端にある32アミノ酸シグナル配列、カルボキシル末端近くにあるおよそ23アミノ酸の推定膜貫通領域、および短いCOOH末端細胞質尾部を有する前駆体ポリペプチドとして産生される。続いて前駆体ペプチドは、受容体結合ドメインと同一であって受容体結合ドメインをなす1~149残基を有する、CSF-1の成熟型を産生するためにアミノ末端およびカルボキシル末端でのタンパク質分解的切断によりプロセシングされる。vivoでは、CSF-1モノマーは、グリコシル化されており、ジスルフィド結合により二量体化されている。CSF-1は、血液細胞の産生を促進する生物学的アゴニストの一群に属する。特に、CSF-1は、単核食細胞系統の骨髄前駆細胞に対する増殖、分化および生存因子として作用する。さらに、CSF-1は、応答細胞上の特異的受容体を介して、マクロファージの生存、増殖および機能を刺激する。
【0004】
CSF-1受容体(CSF-1R)は、c-fms遺伝子産物またはCD115とも呼ばれる。CSF-1Rは、III型受容体チロシンキナーゼファミリーに属する165kDaの1型TM糖タンパク質である。CSF-1に加えて、構造的に類似するものの配列非関連分子であるIL-34も同じく、CSF-1Rのリガンドであることが示された(Lin等、2008年、Science 320:807~811ページ)。CSF-1Rの発現は、主に、単球マクロファージ系統の細胞に限定され、破骨細胞を含む、循環集団および常在組織集団の両方ともである。さらに、CSF-1Rは、卵母細胞、脱落膜細胞および栄養膜を含む女性生殖器系の多数の細胞において発現される(Pollard JWおよびStanley ER、1996年、Advances in Developmental Biochemistry、4巻、1996年、153~193ページ(Pleiotropic Roles for CSF-1 in Development Defined by the Mouse Mutation Osteopetrotic);Arceci RJ、PNAS 1989年、86(22)、8818~8822ページ(Temporal Expression and Location of CSF-1 and its Receptor in Female Reproductive Tract are consistent with CSF-1-Regulated Placental Development);Arceci, RJ等、1992年、151(1)、1~8ページ; Dev Biol; Regenstreif LJおよびRossant J,Dev Biol 1989年5月;133(1):284~94ページ(Expression of the c-fms-oncogene and of the cytokine,CSF-1,during mouse embryogenesis),Pampfer S等、Biol Reprod 1992年、46(1)、48~57ページ(Expression of the CSF-1 receptor(c-fms proto-oncogene product)in the human uterus and placenta;Jokhi PP等、Lab Invest 1993年、68(3)、308~320ページ(Expression of the CSF-1 Receptor(c-fms product)by cells at the human uteroplacental interface);Kauma SW等、J Clin Endocrinol Metab 1991年、73(4)、746~751ページ(CSF-1 and c-fms expression in human endometrial tissues and placenta during the menstrual cycle and early pregnancy)、Byrne J Cell Biol 1981年 91(3 Pt 1)848~53ページ、Hofstetter W等、Bone 1995年、17、(2)、145~151ページ;Tanaka S等、1993年、J Clin Invest、91:257~63ページ;Weir EC等、1993年、J Bone Miner Res、8(12)1507~18ページ。
【0005】
CSF-1受容体へのリガンドCSF-1の結合は、受容体自身のチロシンキナーゼドメインの作用により、受容体の1つまたは複数のチロシン残基上でのリン酸化を引き起こす。このリン酸化は検出可能である。なぜなら、リン酸化後に限り受容体に結合する抗体が入手可能であるからである(例えば、Cell Signaling Technology製のホスホ-M-CSF-受容体(Tyr546)抗体#3083)。
【0006】
レシピエント組織に対するドナー由来造血細胞の免疫応答である慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種造血幹細胞移植(HSCT)の、重篤な、潜在的に生命を脅かす併発症である。cGVHDは、移植レシピエントのおよそ40%で発現すると推定され、米国では14,000例の患者をもたらすと推定され、何年も持続し得る。慢性GVHDは、典型的には多器官系にわたり現れ、一般的に皮膚および粘膜が関与し、かつ線維化組織の発現を特徴とする。移植片対宿主病(GVHD)は、移植関連の罹患率および死亡率の実質的な一因となる免疫介在性疾患である。GVHDの全発生率は、依然として、30%から60%の間であり、およそ50%の死亡率を伴う。急性および慢性のGVHDは、新しい有望な処置を必要とする複合的な臨床現象である。慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、依然として、同種造血幹細胞移植(HSCT)後の罹患率および非再発死亡率の主な原因である。cGVHDは典型的に、HSCT後1年目の間に頻繁に起きるもののHSCT後1年目を超えても発現し得る多臓器病変と共に現れる(Jagasia、2015年)。cGVHDの処置は、現時点ではステロイド投与に基づく。長期的な生存転帰の改善により進歩がなされた一方、現在利用可能な療法は著しい毒性を伴い、かつ現在利用可能な多くの救済salvage療法は、免疫抑制immunosuppressionの強化increase、感染性合併症infectious complication、および移植片対白血病(GVL)効果の潜在的損失を伴う。したがって、移植後の長期転帰およびHSCTレシピエントの生活の質を改善するためには、cGVHDに対するより新しい治療戦略(treatment strategy)の開発のアンメット・ニーズが存在する(Hill、2018年)。
【0007】
アキサチリマブは、CSF-1Rに対する高い親和性を有するヒト化IgG4モノクローナル抗体(mAb)である。アキサチリマブは、CSF-1Rに結合して、CSF-1Rの2つの公知のリガンド、コロニー刺激因子1(CSF-1)およびインターロイキン34(IL-34)による活性化を阻害することにより、TAMの遊走、増殖、分化および生存に影響を及ぼし得る。
【0008】
cGVHDの病態生理学の理解が明らかになってきている一方、cGVHDを有する患者に対する療法の有意義な進展はほとんどなかった。現在のところ、処置の主力であるプレドニゾンに対する長年の信頼が依然として存在する。ステロイド投与は、症状を和らげ得て、疾患の進行を遅延させ得るが、このアプローチは、著しい毒性、および耐性の出現を伴う(FlowersおよびMartin、2015年;MacDonald、2017年)。コルチコステロイド用量を低下させる取組みは、他の免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスをコルチコステロイドと組み合わせた後のさらなる有効性を支持する臨床的証拠の欠如にもかかわらず、1次治療または2次治療での、これらの薬剤と組み合せたコルチコステロイドの使用をもたらした(Miklos、2017年)。
【0009】
cGVHDを有する患者のおよそ50%から60%が、初回全身治療(systemic treatment)から2年以内に2次処置を必要とする。薬剤の最適選択に関するコンセンサスがないにもかかわらず、処置は典型的に、リツキシマブまたはイマチニブを含んだ(FlowersおよびMartin、2015年)。2017年には、BTK阻害剤であるImbruvica(登録商標)(イブルチニブ)が、cGVHDを有する成人患者の処置用の最初のFDA承認の療法となり、1次以上の治療を受けた患者に対して適応であった。イブルチニブの副作用は著しく、患者の38%が、有害事象のため中止し、患者の31%が、cGVHDを有する患者でのイブルチニブのピボタル評価において用量を低下させる。さらに、調査者は、臨床開発計画に参加した患者の器官系の関与に起因し、自身が、そのcGVHD患者の大部分にイブルチニブを投与していないということに注意した。cGVHDに関する最近の洞察は、疾患関連炎症性シグナル伝達経路、例えば、BTK、JAK1/2、およびSykに関与するキナーゼを標的とする介入を評価させた。
【0010】
これらの経路を標的とする、非臨床サンプルおよび患者サンプルの相関性研究は、期待できる結果を示した(MacDonald、2017年)。
【0011】
アキサチリマブは、CSF-1Rを阻害するその高親和性に基づき、cGVHDおよび他の強皮状態を処置するための免疫療法アプローチを提供する可能性を有する。強皮症は、様々な徴候、および様々な、治療上の意味を有する。強皮症は、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、および皮膚硬化のない強皮症を含む(Smith、2000年)。限局性強皮症は、線維症、および皮膚に限定された徴候を伴うまれな皮膚病である一方、全身性硬化症は、多臓器疾患であり、内臓関与の可変リスクおよび皮膚病の異なる程度を伴う。全身性硬化症は、びまん性または限局性であり得る。限局全身性硬化症は、CREST(石灰沈着症、レイノーの食道機能障害、強指症、毛細血管拡張症)とも呼ばれる。強皮症様障害は、産業環境曝露に関連すると思われている。皮膚硬化のない疾患では、皮膚の変化を伴わない内臓関与が存在する。強皮症、特に全身性硬化症の主な徴候は、不適切に過剰なコラーゲンの合成および沈着、内皮機能障害、痙攣、虚脱、ならびに線維症による閉塞である。硬化症および肺関与を含む慢性GVHDを有するこれらの患者は、処置が頻繁に困難であり、かつ不良な転帰を伴うため、これらの患者、特に、2次療法またはさらに高次の療法を必要とする患者では、罹患率および死亡率が依然として高い。したがって、慢性GVHDおよびそれらの関連状態を処置するための新規薬剤の開発が、依然としてアンメット・メディカル・ニーズである。
【発明の概要】
【0012】
CSF-1R活性の阻害剤は、硬化症状態および慢性移植片対宿主病の治療において活性である。アキサチリマブは、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片であり、重鎖を含み、ただし、該重鎖の可変ドメインが、配列番号4で与えられるCDR-H1の配列を有するCDR、配列番号5で与えられるCDR-H2の配列を有するCDR、および配列番号6で与えられるCDR-H3の配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む;ならびに/または軽鎖を含み、該軽鎖の可変ドメインが、配列番号1で与えられるCDR-L1の配列を有するCDR、配列番号2で与えられるCDR-L2の配列を有するCDR、および配列番号3で与えられるCDR-L3の配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、重鎖および軽鎖を含み、ただし、該重鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-H1の配列が、配列番号4で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-H2の配列が、配列番号5で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-H3の配列が、配列番号6で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有する;ならびに該軽鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-L1の配列が、配列番号1で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-L2の配列が、配列番号2で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-L3の配列が、配列番号3で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号23で与えられる配列を含む重鎖、および配列番号15で与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片が、全長の重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子、そのFab断片、修飾Fab’断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、VH断片、VL断片およびscFv断片からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27で与えられる配列を含む重鎖および配列番号19で与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、CDR-L1に対する配列番号1、CDR-L2に対する配列番号2、CDR-L3に対する配列番号3、CDR-H1に対する配列番号4、CDR-H2に対する配列番号5、およびCDR-H3に対する配列番号6で与えられる6つのCDRを含む抗体の結合を交差ブロックする。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に定義される抗CSF-1Rが、アキサチリマブである。
【0019】
いくつかの実施形態では、アキサチリマブの投与が、0.3mg/kg Q2W、1mg/kg Q2W、または3mg/kg Q4Wである。いくつかの実施形態では、アキサチリマブの投与が、硬化性皮膚状態の予防または処置を対象とする。いくつかの実施形態では、アキサチリマブの投与が、慢性移植片対宿主病の予防または治療を対象とする。
【0020】
本開示の詳細は、以下の添付する明細書に記載される。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本出願の実践または試験において使用できるが、例示的な方法および材料を次に記載する。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が照合することになる。さらに、材料、方法および実施例は一例にすぎず、限定的であるとは意図されない。本開示の他の特徴、主題および利点は、明細書、および特許請求の範囲から明らかになる。明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、単数形は複数も含む。異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本開示が帰属する技術分野の当業者の1人が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0021】
本出願を通じて引用されるすべての参考文献(文献参照、交付済み特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の内容は、ここに明確に、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。本明細書に引用した参考文献は、本出願の先行技術であるとは認められない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本特許または本出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報の複写は、要請および必要な手数料の納付があった場合、官庁から提供される。
【0023】
図1】本発明による抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片を用いた、cGVHDの処置に関する概略図を示す。
図2】cGVHDでのCSF-1Rシグナル伝達の経路を示す。
図3】本発明による臨床試験の概略図を示す。
図4】本発明の様々な実施形態により処置された様々なコホートを示す。
図5】抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片の1mg/kg Q2W(2週間ごと)の用量で、CSF-1R阻害が、cGVHDでの応答を誘導する最初の証拠を示す。
図6】抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片の3mg/kg Q2W(2週間ごと)の用量で、CSF-1R阻害が、cGVHDでの応答を誘導する証拠を示す。
図7】健康被験者および患者において、観察された抗体濃度、および循環性のCD14CD16非古典型およびCD14++CD16中間型の単球を含む単球数の動態が一致することを示す。3mg/kg q2wkの用量において、患者は、循環抗体をトラフ値で依然として有し、<3mg/kgの用量では検出できず、同じく右側では、中間型および古典型と比べた場合に著しく重大である、非古典型単球の顕著な低下を示す。
図8】複数回の処置後に、いくつかの器官系にわたって観察された応答を示す。
図9】アキサチリマブの用量漸増・用量拡大を示す。
図10】慢性GVHDの特性を示す。
図11】患者の人口統計値および特性を示す。
図12】cGVHDの器官系にわたる応答を示す。
図13】様々な用量のアキサチリマブの様々な間隔での投与による症状コントロールを示す。
図14】患者の大多数での滝グラフおよび改善Lee症状スコアを示す。
図15】アキサチリマブの概要および進行中の試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
いくつかの実施形態では、本出願が、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片を使用した移植片対宿主病の処置を対象とする。いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体がアキサチリマブである。いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、重鎖を含み、ただし、該重鎖の可変ドメインが、配列番号4で与えられるCDR-H1の配列を有するCDR、配列番号5で与えられるCDR-H2の配列を有するCDR、および配列番号6で与えられるCDR-H3の配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む;ならびに/または軽鎖を含み、該軽鎖の可変ドメインが、配列番号1で与えられるCDR-L1の配列を有するCDR、配列番号2で与えられるCDR-L2の配列を有するCDR、および配列番号3で与えられるCDR-L3の配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、重鎖および軽鎖を含み、ただし、該重鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-H1の配列が、配列番号4で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-H2の配列が、配列番号5で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-H3の配列が、配列番号6で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有する;ならびに該軽鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-L1の配列が、配列番号1で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-L2の配列が、配列番号2で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-L3の配列が、配列番号3で与えられる配列に対する少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号23で与えられる配列を含む重鎖、および配列番号15で与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体が、配列番号27で与えられる配列を含む重鎖、および配列番号19で与えられる配列を含む軽鎖を有する。該重鎖および該軽鎖が、配列番号27で与えられる配列を含む重鎖および配列番号19で与えられる配列を含む軽鎖と少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%または98%)同一または類似である、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片も提供される。
【0028】
いくつかの実施形態では、軽鎖が、配列番号19で与えられる配列を有するか、または配列番号19で与えられる配列からなり、重鎖が、配列番号27で与えられる配列を有するか、または配列番号:27で与えられる配列からなる。他の実施形態では、軽鎖が、配列番号19で与えられる配列を有するか、または配列番号19で与えられる配列からなり、重鎖が、配列番号27で与えられる配列を有するか、または配列番号27で与えられる配列からなり、ただし、配列番号27の453位のアミノ酸リジンが欠落または欠失している。
【0029】
本開示の抗体、特に、重鎖配列gH2(配列番号27)および/または軽鎖配列gL7(配列番号19)を含む抗体969.g2が結合する、ヒトCSF-1Rの特異的な領域またはエピトープも本開示により提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片が、全長の重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子、そのFab断片、修飾Fab’断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、VH断片、VL断片およびscFv断片からなる群から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27で与えられる配列を含む重鎖および配列番号19で与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、CDR-L1に対する配列番号1、CDR-L2に対する配列番号2、CDR-L3に対する配列番号3、CDR-H1に対する配列番号4、CDR-H2に対する配列番号5、およびCDR-H3に対する配列番号6で与えられる6つのCDRを含む抗体の結合を交差ブロックする。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、エピトープがブロックする抗体と同じエピトープに結合することにより、結合を交差ブロックする。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片が、エピトープがブロックする抗体と同じエピトープに結合することにより、結合を交差ブロックする。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、週に1回投与する。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、2週間に1回投与する。いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、週に2回投与する。
【0037】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、週に3回投与する。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、約0.1mg/kgから約30mg/kgの間の範囲の用量で投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約0.1mg/kgから約10mg/kgの間の範囲の用量で投与する。いくつかの実施形態では、慢性移植片対宿主病の処置用に、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約0.1mg/kgから約10mg/kgの間の範囲の用量で投与する。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kg、または約10mg/kgの用量で投与する。
【0041】
いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.15mg/kgの用量で毎週投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.5mg/kgの用量で毎週投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、1.0mg/kgの用量で毎週投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、3.0mg/kgの用量で毎週投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.15mg/kgの用量で2週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.5mg/kgの用量で2週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、1.0mg/kgの用量で2週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、3.0mg/kgの用量で2週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.15mg/kgの用量で3週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.5mg/kgの用量で3週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、1.0mg/kgの用量で3週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、3.0mg/kgの用量で3週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.15mg/kgの用量で4週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、0.5mg/kgの用量で4週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、1.0mg/kgの用量で4週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、アキサチリマブを、3.0mg/kgの用量で4週間ごとに投与する。いくつかの実施形態では、循環古典的単球のレベルに基づいて、週ごとに用量を上昇または低下させる。
【0042】
好ましくは、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、2週間に1回投与する。好ましくは、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、1mg/kgの用量で投与する。好ましくは、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、3mg/kgの用量で投与する。好ましくは、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1Rの阻害剤を、2週間ごとに1mg/kgの用量で投与する。
【0043】
いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤を投与し、循環古典的単球を低下させる。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤を投与し、循環古典的単球を除去する。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤を投与し、古典的単球のレベルを完全に下げる。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤の初回投与が、古典的単球のレベルを、所定の割合だけ下げる。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤の初回投与が、古典的単球のレベルを所定の割合だけ下げ、CSF-1R阻害剤の続く投与は、古典的単球のレベルが上昇したら行われる。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤の初回投与が、古典的単球のレベルを所定の割合だけ下げ、CSF-1R阻害剤の続く投与は、古典的単球のレベルが、所定の割合へと上昇したら行われる。いくつかの実施形態では、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%である。
【0044】
いくつかの実施形態では、処置を必要とするヒトに対して薬学上有効量のアキサチリマブを投与する工程を含む方法が、ヒトでの慢性移植片対宿主病(cGVHD)の処置を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書の処置法が、強皮症を対象とする。いくつかの実施形態では、処置法が、慢性移植片対宿主病(cGVHD)の症状の予防または緩和を対象とする。いくつかの実施形態では、cGVHDが肝cGVHDである。いくつかの実施形態では、cGVHDが腎cGVHDである。いくつかの実施形態では、cGVHDが食道cGVHDである。いくつかの実施形態では、cGVHDが胃cGVHDである。いくつかの実施形態では、本明細書の処置法が、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症様障害、皮膚硬化のない強皮症を対象とする。いくつかの実施形態では、本明細書の処置法が、全身性硬化症を対象とする。いくつかの実施形態では、本明細書の処置法が、びまん性または限局性である全身性硬化症を対象とする。いくつかの実施形態では、本明細書の処置法が、CREST(石灰沈着症、レイノーの食道機能障害、強指症、毛細血管拡張症)を対象とする。強皮症様障害は、産業環境曝露に関連すると思われている。皮膚硬化のない疾患では、皮膚の変化を伴わない内臓関与が存在する。強皮症、特に全身性硬化症の主な徴候は、不適切に過剰なコラーゲンの合成および沈着、内皮機能障害、痙攣、虚脱、ならびに線維症による閉塞である。いくつかの実施形態では、細胞移植が、造血細胞移植である。いくつかの実施形態では、GVHDが急性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDが慢性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDが強皮症GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDがステロイド耐性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDがシクロスポリン耐性GVHDである。いくつかの実施形態では、GVHDが難治性GVHDである。いくつかの実施形態では、GHVDが口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが網状口腔(reticular oral)GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDがびらん性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが潰瘍性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが、口腔のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが、口腔咽頭部のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが咽頭部のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが、食道部のGVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが、急性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、口腔GVHDが、慢性口腔GVHDである。いくつかの実施形態では、患者が、1つまたは複数のGVHDの症状を示す。いくつかの実施形態では、患者が、同種骨髄移植または同種造血幹細胞移植を有する、または受けることになる。
【0045】
いかなる理論によって拘束されることもないが、単球/マクロファージの存在は、有利な影響および不利な影響の両方ともを与える。いかなる理論によって拘束されることもないが、単球/マクロファージは、本明細書で考察される状態において、有利な影響および不利な影響を有することが見出され、いくつかの実施形態では、状態が、本明細書で考察される硬化性皮膚状態、および/または慢性移植片対宿主病である。いくつかの実施形態では、循環古典的単球の存在が、低下した量で存在できる場合は有益な影響を有する。CSF-1R阻害剤/抗体の投与間に単球/マクロファージのレベルを上昇可能にすると、処置が、循環単球/マクロファージの有利な影響を利用でき、不利な影響は回避される。いくつかの実施形態では、抗体が、単球の増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、例えば米国特許第8,206,715 B2号明細書に記載されるアッセイを使用して、単球増殖の量が少なくとも50%だけ低下する場合、抗体が「単球の増殖を阻害する」と見なされる。いくつかの実施形態では、抗体が、単球増殖の量を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%低下させる。そのようないくつかの実施形態では、該抗体が、単球増殖を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%等阻害すると言われる。
【0046】
ヒト単球は、様々な疾患の状況において、炎症誘発性の特徴を示す。ヒト単球は、CD14の発現により同定された。ヒト単球はさらに、CD16発現(高親和性のFc受容体)に基づいて分類され得る。CD16-細胞は、通常、健康人の全単球の約90%であるため、古典的単球と呼ばれる。CD16+細胞は、多くの炎症性疾患において増殖するようであり、かつケモカインに応じて、内皮層を横切る優先的遊走を示す。したがって、CD16+細胞は、通常、非古典的単球または炎症誘発性単球と呼ばれる(非古典的(CD14+/CD16+)単球および古典的(CD14+/CD16-)単球)。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明のCSF-1R阻害剤を投与する工程が、循環単球を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%減少させる。そのようないくつかの実施形態では、該抗体が、単球増殖を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%等阻害すると言われる。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤のその後の用量を投与する前に、循環単球のレベルが、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%だけ上昇可能である。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤のその後の用量を投与する前の1週間、循環単球のレベルが上昇可能である。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤のその後の用量を投与する前の2週間、循環単球のレベルが上昇可能である。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤のその後の用量を投与する前の3週間、循環単球のレベルが上昇可能である。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤のその後の用量を投与する前の4週間、循環単球のレベルが上昇可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、単球が非古典的である。いくつかの実施形態では、単球が古典的である。いくつかの実施形態では、単球が、古典的単球と非古典的単球との組合せである。いくつかの実施形態では、単球が、古典的単球と中間単球との組合せである。
【0049】
いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤がアキサチリマブである。いくつかの実施形態では、CSF-1R阻害剤を、以下の投与計画に従って投与する。いくつかの実施形態では、用量スケジュールが、循環マクロファージの利益を最大限にし、不利な影響を最小限に抑える。いくつかの実施形態では、用量を、次の投与スケジュールと逆に上昇させる。
【0050】
【表1】
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の方法が、硬化性皮膚状態の処置を対象とし、ただし、患者は、1つまたは複数の事前治療中に増悪(progress)した。一実施形態では、硬化性皮膚状態が、活性の慢性移植片対宿主病である。一実施形態では、患者が、少なくとも2つの事前治療中に増悪した。一実施形態では、該事前治療が、イブルチニブであった。一実施形態では、該事前治療の少なくとも1つが、イブルチニブであった。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の方法が、cGVHDの処置を対象とし、ただし、患者は、1つまたは複数の事前治療中に増悪した。一実施形態では、患者が、少なくとも2つの事前治療中に増悪した。一実施形態では、該事前治療が、イブルチニブであった。一実施形態では、該事前治療の少なくとも1つが、イブルチニブであった。
【0053】
一実施形態では、アキサチリマブを、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、経口非吸収性コルチコステロイド、例えば、ブデソニドまたはジプロピオン酸ベクロメタゾン、免疫調節剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、チロミソール、イムチオール、抗胸腺細胞グロブリン、抗TNF剤、アザチオプリン、イノシン5’-一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、アゾジアカルボニド(azodiacarbonide)、ビスインドリルマレイミドVIII、ブレキナル、クロラムブシル、CTLA-4Ig、コルチコステロイド、シクロホスファミド、デオキシスペルグアリン、デキサメタゾン、グルココルチコイド、レフルノミド、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、メチルプレドニゾロン、ミゾリビン、ミゾリビン一リン酸、ムロモナブCD3、ミコフェノール酸モフェチル、OKT3、rho(D)免疫グロビン、ビタミンD類似体、MC1288、ダクリズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トシリズマブ、アレムツズマブ、メトトレキセート、抗胸腺細胞デニロイキンジフチトクス、キャンパス-1H、表皮細胞増殖因子、アバタセプト、レメステムセル-L、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ペントスタチン、サリドマイド、メシル酸イマチニブ、シクロホスファミド、フルダラビン、OKT3、メルファラン、チオペタ(thiopeta)およびリンパ球免疫グロブリン、抗胸腺細胞およびグロブリンの群から選択される、移植片対宿主病の処置において有用な1つまたは複数の添加剤と共に投与する。
【0054】
核酸、ポリペプチド
CDR-L1:LASEDIYDNLA(配列番号1)
CDRL2:YASSLQD(配列番号2)
CDR-L3:LQDSEYPWT(配列番号3)
CDR-H1:GFSLTTYGMGVG(配列番号4)
CDR-H2:NIWWDDDKYYNPSLKN(配列番号5)
CDR-H3:IGPIKYPTAPYRYFDF(配列番号6)
【0055】
ラットAb 969 VL領域:
【化1】
【0056】
ラットAb 969 VL領域:
【化2】
【0057】
下線付き斜字体のシグナル配列を含むラットAb 969 VL領域:
【化3】
【0058】
下線付き斜字体のシグナル配列を含むラットAb 969 VL領域:
【化4】
【0059】
ラットAb 969 VH領域:
【化5】
【0060】
ラットAb 969 VH領域:
【化6】
【0061】
下線付き斜字体のシグナル配列を含むラットAb 969 VH領域:
【化7】
【0062】
下線付き斜字体のシグナル配列を含むラットAb 969 VH領域:
【化8】
【0063】
969 gL7 V領域:
【化9】
【0064】
969 gL7 V領域:
【化10】
【0065】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gL7 V領域:
【化11】
【0066】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gL7 V領域:
【化12】
【0067】
969 gL7軽鎖(V+定常):
【化13】
【0068】
969 gL7軽鎖(V+定常):
【化14】
【0069】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gL7軽鎖(V+定常):
【化15】
【0070】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gL7軽鎖(V+定常):
【化16】
【0071】
969 gH2 V領域:
【化17】
【0072】
969 gH2 V領域:
【化18】
【0073】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gH2 V領域:
【化19】
【0074】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gH2 V領域:
【化20】
【0075】
969 gH2重鎖(V+定常-hu IgG4P):
【化21】
【0076】
969 gH2重鎖(V+定常-hu IgG4P、エクソンに下線):
【化22】
【0077】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gH2重鎖(V+定常-hu IgG4P):
【化23】
【0078】
下線付き斜字体のシグナル配列を含む969 gH2重鎖(V+定常-hu IgG4P、エクソンに下線):
【化24】
【0079】
ヒトVK1 2-1-(1)O12 JK4アクセプターフレームワーク:
【化25】
【0080】
ヒトVK1 2-1-(1)O12 JK4アクセプターフレームワーク:
【化26】
【0081】
ヒトVH2 3-1 2-70JH3アクセプターフレームワーク:
【化27】
ヒトVH2 3-1 2-70JH3アクセプターフレームワーク:
【化28】
【0082】
CSF-1Rのアミノ酸配列:
【化29】
【0083】
CSF-1Rのアミノ酸配列:
【化30】
【0084】
CSF-1Rのアミノ酸配列:(SNP V32G、A245S、H247P、V279M、部位は下線付き)
【化31】
【0085】
CSF-1R
用語「コロニー刺激因子1受容体」または「CSF1R」は、本明細書で使用する場合、CSF1およびインターロイキン34(IL34)の細胞表面受容体として作用するチロシンプロテインキナーゼを指し、造血前駆細胞、特に単核食細胞、例えば、マクロファージおよび単球の生存、増殖および分化の制御において欠かせない役割を果たす。CSF1Rは、IL34およびCSF1に応じて、炎症誘発性ケモカインの放出を促進し、その際に、自然免疫および炎症性過程において重要な役割を果たす。CSF1Rはさらに、破骨細胞の増殖および分化の制御、骨吸収の制御において重要な役割を果たし、正常な骨の発生および歯の発生に必要である。CSF1Rは、男性および女性の正常な生殖能、ならびに妊娠中の乳腺における乳管および腺房構造の正常な発達に必要である。さらに、アクチン細胞骨格の再組織化を促進し、膜ラッフルの形成、細胞接着および細胞遊走を制御し、細胞浸潤を促進する。
【0086】
CSF1は、マクロファージの産生、分化および機能を管理するサイトカインであり、CSF1Rは、CSF1の生物学的効果のすべてではないが大部分を媒介する。
【0087】
用語「Ab969.g2」は、本明細書で使用する場合、CSF1-Rに特異的に結合する抗体を意味し、(a)それぞれ配列番号1、配列番号2および配列番号3で定義されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖、ならびに(b)それぞれ配列番号4、配列番号5および配列番号6で定義されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖を含む。このAb969.g2抗体は、以前に、PCT/EP2014/068050に記載されている。
【0088】
用語「CSF1Rに特異的に結合する(specifically binds to CSF1R)」、「CSF1Rに特異的に結合する(specifically binding to CSF1R)」および同等物は、抗体を参照して本明細書で使用する場合、該抗体が、生物学的に有意義な効果を達成するために十分な親和性および特異性でCSF1Rに結合することを意味する。選択される抗体は、通常、CSF1Rに対する結合親和性を有し、例えば、抗体は、CSF1Rに100nMから1pMの間のKd値で結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイ、例えばBIAcoreアッセイ;酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);および競合アッセイ(例えばRIA法)により特定可能である。本発明の意味の範囲内では、CSF1Rに特異的に結合する抗体は、さらに他の分子に結合してもよく、非限定的な例として、二重特異性抗体の場合である。
【0089】
処方物および処置法
本明細書に開示されるいずれかの抗体(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体)を、本開示の方法、キットまたは組成物に使用できる。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物が、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤、および薬学的に許容可能なキャリアを含む。
【0091】
特定の実施形態では、本明細書に記載される組合せを、皮膚状態の処置に使用する。いくつかの実施形態では、方法が、全身性強皮症、汎発型強皮症、限局性強皮症、モルフェア強皮症、線状強皮症、CREST症候群、びまん性強皮症、斑状強皮症、石灰沈着症、レイノー現象、食道蠕動低下、強指症、毛細血管拡張症、皮膚硬化のない硬化症および/またはびまん性強皮症の処置に対する抗CSF-1R抗体またはその結合断片の使用を対象とする。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法が、急性移植片対宿主病(aGvHD)の処置に対する抗CSF-1R抗体またはその結合断片の使用を対象とする。いくつかの実施形態では、方法が、慢性移植片対宿主病(cGvHD)の処置に対する抗CSF-1R抗体またはその結合断片の使用を対象とする。
【0093】
いくつかの実施形態では、cGVHDを有すると同定されたヒト患者を処置する方法が、該患者における古典的単球の初期レベルを特定する工程を含む。いくつかの実施形態では、cGVHDを有すると同定されたヒト患者を処置する方法が、該患者における古典的単球の初期レベルを特定する工程に続いてアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体の有効用量を投与する工程;および続く期間において古典的単球の第2のレベルを特定する工程を含む。いくつかの実施形態では、cGVHDを有すると同定されたヒト患者を処置する方法が、該患者における古典的単球の初期レベルを特定する工程に続いてアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体の有効用量を投与する工程;および続く期間において古典的単球の第2のレベルを特定する工程、および該第2の古典的単球レベルが所定の割合よりも大きければアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体での処置を継続する工程を含む。いくつかの実施形態では、cGVHDを有すると同定されたヒト患者を処置する方法が、該患者における古典的単球の初期レベルを特定する工程に続いてアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体の有効用量を投与する工程;および続く期間において古典的単球の第2のレベルを特定する工程、および初期の古典的単球レベルと該第2の古典的単球レベルとの間の比率が所定の割合よりも大きければアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体での処置を継続する工程を含む。いくつかの実施形態では、本出願が、cGVHDの処置を必要とする患者を、アキサチリマブの治療上有効量で処置する工程を含む、cGVHDを処置する方法を対象とし、ただし、該アキサチリマブは、病原性単球由来マクロファージを標的とする。いくつかの実施形態では、本出願が、cGVHDの処置を必要とする患者を、アキサチリマブの治療上有効量で処置する工程を含む、cGVHDを処置する方法を対象とし、ただし、該アキサチリマブは、病原性単球由来マクロファージを標的とし、非古典的単球には最小限に影響を与える。いくつかの実施形態では、本出願が、cGVHDの処置を必要とする患者を、アキサチリマブの治療上有効量で処置する工程を含む、cGVHDを処置する方法を対象とし、該アキサチリマブは、病原性単球由来マクロファージを標的とし、中間単球には最小限に影響を与える。
【0094】
ヒトでの移植片対宿主病(GvHD)を処置する方法は、GvHDの処置を必要とするヒトにアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体を投与する工程を含み、ただし、該抗体を、循環古典的単球のレベルにより特定した用量で投与する。ヒトでの移植片対宿主病(GvHD)を処置する方法は、GvHDの処置を必要とするヒトにアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体を投与する工程を含み、ただし、該抗体を、循環中間単球のレベルにより特定した用量で投与する。ヒトでの移植片対宿主病(GvHD)を処置する方法は、GvHDの処置を必要とするヒトにアキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体を投与する工程を含み、ただし、該抗体を、循環非古典的単球のレベルにより特定した用量で投与する。
【0095】
用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」および「処置(treatment)」は、障害、疾患もしくは状態、または該障害、疾患、もしくは状態と関連する症状の1つまたは複数の緩和または抑止;あるいは該障害、疾患もしくは状態それ自体の原因の緩和または根絶を含む。本明細書で使用する場合、「予防する(preventing)」または「予防する(prevent)」は、該疾患、状態、もしくは障害の症状または併発症の発症の軽減または消失を記載する。
【0096】
本明細書で使用する場合、用語「緩和(alleviate)」は、障害の徴候または症状の重症化が低下する過程を記載すると意味する。重要なことに、徴候または症状は、消失することなしに緩和し得る。好ましい一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物の投与が、徴候または症状の消失をもたらすものの、消失は必要ではない。有効用量は、徴候または症状の重症化を低下させると予想される。例えば、複数部位で生じ得る、cGVHDのような障害の徴候または症状は、cGVHDの重症化が、複数部位のうちの少なくとも1つの範囲内で低下した場合には緩和する。
【0097】
本明細書に列挙される状態の処置は、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を含む、本明細書に記載される状態の発生の予防、またはcGVHDの重症化の軽減をもたらす。症状の軽減は「退縮」とも呼ばれ得る。好ましくは、処置後、重症化が、処置前と比べて5%以上軽減し、さらに好ましくは、重症化が10%以上軽減し、さらに好ましくは20%以上軽減し、さらに好ましくは30%以上軽減し、さらに好ましくは40%以上軽減し、さらに好ましくは50%以上軽減し、特に好ましくは75%以上超、軽減した。重症化は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。重症化は、目的の面積の直径としてまたは様々な医師用はかり(physician scales)により測定され得る。
【0098】
「医薬組成物」または「治療用組成物」は、本明細書に開示される活性成分、例えば、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を含有する、対象への投与に適切な形の処方物である。いくつかの実施形態では、該医薬組成物が、バルクまたは単位剤形である。該単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器のシングルポンプ、またはバイアルを含む様々な形のいずれかである。組成物の単位用量中の活性成分(例えば、開示される化合物、またはそれらの塩、水和物、溶媒和物、もしくは異性体の処方物)の量は、有効量であり、関与する特定の処置によって異なる。当業者は、患者の年齢および状態に応じて、用量の日常的な変化を行うことが時には必要であることを理解するであろう。用量はさらに、投与経路に依存することになる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、バッカル、舌下、胸腔内、髄腔内、鼻腔内等を含む様々な経路が考えられる。本開示の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形は、粉末、噴霧、軟膏、ペースト剤、クリーム、ローション、ジェル、溶液、パッチ、および吸入剤を含む。一実施形態では、活性化合物を、無菌条件下、薬学的に許容可能なキャリア、および必要とされる任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と混合する。
【0099】
本明細書で使用する場合、「活性成分」は、関連する用量で薬理効果、例えば治療効果を有する成分を指す。
【0100】
「薬学的に許容可能なキャリア」は、概して安全、非毒性であって生物学的にもその他の点でも有害でない、かつ獣医用途にもヒト医薬用途にも許容可能な賦形剤を含む医薬組成物の調製に有用なキャリアを意味する。例えば、薬学的に許容可能なキャリアそれ自体は、組成物の投与を受ける個体にとって有害な抗体の産生を誘導せず、かつ毒性でない。適切なキャリアは、ゆっくりと代謝される大きな高分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子であり得る。
【0101】
薬学的に許容可能な塩としては、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩、または有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩を使用し得る。
【0102】
治療用組成物中の薬学的に許容可能なキャリアはさらに、液体、例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含有し得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質が、そのような組成物中に存在してもよい。そのようなキャリアは、医薬組成物を、患者による摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリーおよび懸濁液として調合可能にし得る。
【0103】
投与の適切な形は、非経口投与用に適切な形を含み、例えば、注射または注入、例えば、ボーラス注射または持続注入による形を含む。製品が、注射または注入用である場合、油性または水性のビヒクル中での懸濁液、溶液または乳液の形を取り得て、調合剤、例えば、懸濁化剤、防腐剤、安定化剤および/または分散剤を含有し得る。その代わりに、抗体分子は、使用前に適切な滅菌液で再構成する乾燥型であり得る。
【0104】
調合したら、本開示の組成物は、対象に直接に投与可能である。
【0105】
特定の実施形態では、最終処方物のpHが、抗体または断片の等電点(pI)の値と類似せず、例えば、処方物のpHが7である場合、8~9以上のpIが適切であり得る。理論に拘束されることは望まないが、それにより、最終的に、改善された安定性を有する最終処方物が提供され得ると考えられ、例えば、抗体または断片が、溶解状態にとどまる。
【0106】
一例では、4.0~7.0の範囲のpHの医薬処方物が、以下を含む:1~200mg/mLの本開示による抗体、1~100mMの緩衝液、0.001~1%の界面活性剤、a)10~500mMの安定化剤、b)10~500mMの安定化剤および5~500mMの等張化剤、またはc)5~500mMの等張化剤。
【0107】
本開示の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内(intraventricular)、経皮、皮内(例えば、国際公開第98/20734号を参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内、または直腸経路を含むがこれらに限定されない、任意の数の経路により投与され得る。皮下噴射器も、本開示の医薬組成物を投与するために使用できる。典型的に、治療用組成物は、溶液または懸濁液のいずれかである注射剤として調製され得る。注射前の、液体ビヒクルへの溶解、懸濁に適切な固形も調製可能である。
【0108】
組成物の直接送達は、概して、注射により、皮下、腹腔内、静脈内もしくは筋肉内になされるか、または組織の間質腔へと送達されることになる。組成物はさらに、病変にも投与され得る。投与処置は、単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールであり得る。
【0109】
組成物中の活性成分は、抗体分子であり得ると理解される。そういうものとして、活性成分は、胃腸管内での分解に感受性である。したがって、胃腸管を用いる経路で投与する場合、組成物は、抗体を分解から守るものの、胃腸管から吸収されたら抗体を放出する薬剤を含有する必要がある。
【0110】
薬学的に許容可能なキャリアに関する徹底的な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesで利用可能である(Mack Publishing Company、N.J.1991年)。
【0111】
一実施形態では、処方物が、吸入を含む局所投与用の処方物として提供される。
【0112】
適切な吸入可能調合物は、吸入可能な粉末、噴射ガスを含有する測定エアロゾル、または噴射ガスを含まない吸入可能な溶液を含む。活性物質を含有する、本開示による吸入可能な粉末は、単に前記の活性物質からなり得るか、または前記の活性物質と生理学的に許容可能な賦形剤との混合物からなり得る。
【0113】
【0114】
それらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコースもしくはアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロースおよびマルトース)、オリゴ糖および多糖(例えばデキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、またはそれらの互いの混合物を含み得る。単糖または二糖は、適切に使用され、ラクトースまたはグルコースの使用は、それに限定されないが、特に、それらの水和物の形である。
【0115】
肺での沈着用の粒子は、10ミクロン未満、例えば1~9ミクロン、例えば0.1~5μm、特に1~5μmの粒子サイズを必要とする。活性成分(例えば、抗体または断片)の粒子サイズが最も重要である。
【0116】
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用できる噴射ガスは、当技術分野で公知である。適切な噴射ガスは、炭化水素、例えば、n-プロパン、n-ブタンまたはイソブタン、およびハロゲン化炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタンの塩素化および/またはフッ素化誘導体から選択される。前記の噴射ガスは、それ自体で、またはそれらの混合物中で使用され得る。
【0117】
特に適切な噴射ガスは、TG11、TG12、TG134aおよびTG227のうちから選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。前記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、およびそれらの混合物が特に適切である。
【0118】
噴射ガスを含有する吸入可能なエアロゾルはさらに、他の成分、例えば、共溶媒、安定化剤、界面活性剤、抗酸化剤、潤滑剤、およびpH調整手段を含有し得る。これらの成分はすべて、当該技術分野で公知である。本開示による、噴射ガスを含有する吸入可能なエアロゾルは、5重量%までの活性物質を含有し得る。本開示によるエアロゾルは、例えば、0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%、または0.5~1重量%の活性成分を含有する。
【0119】
その代わりに、肺への局所投与はさらに、溶液処方物または懸濁液処方物の投与によってもよく、例えば、ネブライザ、例えば、コンプレッサに接続されたネブライザのような装置を使用してもよい(例えば、Pari Master(R)コンプレッサに接続されたPari LC-ジェットプラス(R)ネブライザ、Pari Respiratory Equipment,Inc.(Richmond、Va)製)。
【0120】
本開示の抗体は、溶媒中に分散した状態、例えば、溶液または懸濁液の形で送達され得る。抗体は、適切な生理溶液、例えば、生理食塩水、または他の、薬理学的に許容可能な溶媒、または緩衝液中に懸濁され得る。当該技術分野で公知の緩衝液は、約4.0~5.0のpHを達成するために、1mlの水当たり0.05mg~0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mg~9.0mgのNaCl、0.15mg~0.25mgのポリソルベート、0.25mg~0.30mgの無水クエン酸、および0.45mg~0.55mgのクエン酸ナトリウムを含有し得る。懸濁液は、例えば、凍結乾燥抗体を使用し得る。
【0121】
治療用の懸濁液処方物または溶液処方物は、1つまたは複数の賦形剤を含有し得る。賦形剤は、当該技術分野で公知であり、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、および重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトールおよびグリセリンを含む。溶液または懸濁液は、リポソームまたは生分解性マイクロスフェア中に封入され得る。処方物は概して、無菌製造工程を使用して、実質的に無菌の形で提供されることになる。
【0122】
その製造工程は、処方物に使用する緩衝溶媒/緩衝液の産生およびろ過による滅菌、無菌緩衝溶媒溶液中への抗体の無菌懸濁、ならびに当業者にはよく知られた方法による、無菌容器への処方物の分注を含み得る。
【0123】
本開示による噴霧可能な処方物は、例えば、フィルム袋(foil envelope)に包装された単一用量単位(例えば、密封されたプラスチックのコンテナまたはバイアル)として提供されてもよい。各バイアルは、単位用量を、例えば2mLの体積の溶媒/溶液緩衝液中に含有する。
【0124】
本明細書に開示される抗体は、噴霧化による送達に適切であり得る。
【0125】
さらに、本開示の抗体が、遺伝子療法の使用により投与され得ることが想定される。それを達成するためには、適切なDNA成分の制御下にある、抗体分子の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を、抗体鎖がDNA配列から発現されてin situでアセンブルするように患者に導入する。
【0126】
医薬組成物は、適切に、治療上有効量の抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体、またはそれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤を含む。用語「治療上有効量」は、本明細書で使用する場合、標的の疾患もしくは状態を処置、改善、もしくは予防するため、または検出可能な治療効果、薬理効果、もしくは予防効果を示すために必要な治療剤の量を指す。例えば、本明細書に開示されるいずれかの抗体に関して、治療上有効量は、最初のうちは、例えば新生細胞の細胞培養アッセイ、または通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタもしくは霊長類である動物モデルのいずれか一方により評価できる。動物モデルはさらに、適切な濃度範囲および投与経路を特定するために使用できる。そのような情報を、次いで、ヒトでの投与に有用な用量および経路を特定するために使用できる。
【0127】
治療/予防有効性および毒性は、細胞培養または実験動物における標準薬学的方法、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)により特定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、比率LD50/ED50として表され得る。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。用量は、その範囲内を、使用する剤形、患者の感受性、および投与経路に応じて変動し得る。
【0128】
用量および投与は、活性剤の十分なレベルをもたらすため、または所望の効果を維持するために調整される。考慮され得る要素は、病態の重症化、対象の健康全般、年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物相互作用、反応感度、ならびに療法に対する寛容性/応答を含む。概して、用量は、状態の重症化を遅らせる、好ましくは退行させるために十分である。用量は、1日当たり約0.01mg/kg~1日当たり約10mg/kgに及び得る。いくつかの実施形態では、用量が、約0.1mg/kgから、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、または3mg/kgに及び得る。いくつかの実施形態では、用量が、約0.1mg/日から約5mg/kgの範囲になる。医薬組成物は、都合よく、用量当たり、本開示の活性剤の所定量を含有する単位剤形で示され得る。
【0129】
本開示による抗体(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体)の治療用量は、in vivoで明らかなまたは限られた毒物学効果を示さない。
【0130】
特定の実施形態では、アキサチリマブまたは抗CSF-1R抗体を、毎日、1日おき、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、11週間ごと、12週間ごと、13週間ごと、14週間ごと、15週間ごと、16週間ごと、17週間ごと、18週間ごと、19週間ごと、または20週間ごと、または毎月投与する。
【0131】
用語「抗体」は、当該技術分野で一般的に公知の意味により使用する。本開示の抗体分子は、全長の重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子、またはその結合断片を含み得て、それらに限定されないが、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VHもしくはVLもしくはVHH)、scFv、2価抗体、3価抗体、4価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、および前記のいずれかのエピトープ結合断片であり得る(例えば、HolligerおよびHudson、2005年、Nature Biotech.23(9):1126~1136ページ;AdairおよびLawson、2005年、Drug Design Reviews-オンライン2(3)、209~217ページを参照)。これらの抗体断片を創生および製造する方法は、当該技術分野で公知である(例えば、Verma等、1998年、Journal of Immunological Methods、216:165~181ページを参照)。本開示で用いる他の抗体断片は、国際特許出願の国際公開第05/003169号、同第05/003170号および同第05/003171号に記載されるFab断片およびFab’を含む。多価抗体は、多重特異性、例えば二重特異性を含み得る、または単一特異性であり得る(例えば、国際公開第92/22853号、同第05/113605号、同第2009/040562号および同第2010/035012号を参照)。
【0132】
抗体の結合断片は、本明細書で使用する場合、断片を抗原に対して特異的であると特徴づける親和性で該抗原に結合できる断片を指す。
【0133】
一実施形態では、本開示による抗体が、免疫グロブリン部分、例えば、Fab断片またはFab’断片、およびその断片に直接的または間接的に結合した1つまたは2つの単一ドメイン抗体(dAb)を含むCSF-1R結合抗体融合タンパク質として提供され、例えば、国際公開第2009/040562号、同第2010/035012号、同第2011/030107号、同第2011/061492号および同第2011/086091号に記載され、すべて参照により本明細書に組み込まれている。
【0134】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質が、例えば、場合によりジスルフィド結合で結合された、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)の一対としての2つのドメイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質のFabまたはFab’要素が、単一ドメイン抗体と同じまたは類似の特異性を有する。一実施形態では、FabまたはFab’が、単一ドメイン抗体と異なる特異性を有し、つまり、融合タンパク質が多価である。一実施形態では、本開示による多価融合タンパク質が、アルブミン結合部位を有し、例えば、その中にアルブミン結合部位を提供するVH/VL対を有する。本開示の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案された機能、特に必要とされ得るエフェクタ機能を考慮して選択され得る。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMドメインであり得る。特に、ヒトIgG定常領域ドメインが使用可能であり、特に、抗体分子が治療用用途であり、かつ抗体エフェクタ機能が必要である場合、IgG1およびIgG3アイソタイプの定常領域ドメインが使用可能である。その代わりに、抗体分子が治療目的用であり、かつ抗体エフェクタ機能が必要でない場合、IgG2およびIgG4アイソタイプが使用可能である。
【0135】
さらに、抗体は様々な翻訳後修飾を受け得ることを当業者は理解する。それらの修飾の種類および程度は、頻繁には、抗体を発現するために使用される宿主細胞株と同様に培養条件に依存する。そのような修飾は、グリコシル化の差異、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化およびアスパラギン脱アミド化を含み得る。頻繁な修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用に起因する、カルボキシ末端塩基性残基(例えば、リジンまたはアルギニン)の損失である(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129~134ページ、1995年に記載される)。したがって、抗体重鎖のC末端リジンは不在であり得る。
【0136】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」は、その重鎖および/または軽鎖が、ドナー抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)からアクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖の可変領域フレームワークへとグラフトした1つまたは複数のCDR(望ましければ、1つまたは複数の修飾CDRを含む)を含有する抗体または抗体分子を指す(例えば、米国特許第5,585,089号明細書;国際公開第91/09967号を参照)。概観には、Vaughan等、Nature Biotechnology、16、535~539ページ、1998年を参照のこと。一実施形態では、全CDRが移植されるよりはむしろ、本明細書で前記されるCDRのいずれか1つからの特異性決定残基の1つまたは複数のみをヒト抗体フレームワークへと移植する(例えば、Kashmiri等、2005年、Methods、36:25~34ページを参照)。一実施形態では、本明細書で前記されるCDRの1つまたは複数からの特異性決定残基のみを、ヒト抗体フレームワークへと移植する。他の実施形態では、本明細書で前記されるCDRの各々からの特異性決定残基のみを、ヒト抗体フレームワークへと移植する。CDRまたは特異性決定残基がグラフトされる場合、CDRが由来する、マウス、霊長類およびヒトのフレームワーク領域を含むドナー抗体のクラス/種類を考慮して、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が使用され得る。
【0137】
本明細書で使用する場合、目的の1つまたは複数の値に適用される用語「およそ」および「約」は、表示参照値に類似する値を指す。特定の実施形態では、異なる指定がない限り、または文脈から特に明白でない限り、用語「およそ」または「約」が、表示参照値のいずれかの方向に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下(上回るまたは下回る)範囲内に入る値の範囲を指す(そのような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)。例えば、ナノ粒子組成物の脂質成分中の所与の化合物の量に関して使用する場合、「約」は、列挙された値の+/-10%を意味し得る。
【0138】
特許請求の範囲および明細書において使用する冠詞、例えば、「a」、「an」および「the」は、反する指定がないか、または文脈から特に明白でない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。一群の1つまたは複数の一員の間での「or」を含む特許請求の範囲または明細書は、反する指定がないか、または文脈から特に明白でない限り、該群の一員のうちの1つ、2つ以上、またはすべてが、所与の生成物もしくは工程中に存在する、所与の生成物もしくは工程中で使用される、または他のやり方で所与の生成物もしくは工程に関連する場合に、満たされると見なす。本開示は、該群のまさに一員が、所与の生成物もしくは工程中に存在する、所与の生成物もしくは工程中で使用される、または他のやり方で所与の生成物もしくは工程に関連する実施形態を含む。本開示は、該群の2つ以上の一員または全員が、所与の生成物もしくは工程中に存在する、所与の生成物もしくは工程中で使用される、または他のやり方で所与の生成物もしくは工程に関連する実施形態を含む。
【0139】
「処置(Treatment)」または「処置する(treating)」は、臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。有益なまたは所望の臨床結果は、以下の1つまたは複数を含み得る:疾患に起因する1つまたは複数の症状の低下;(ii)疾患の程度の低下および/または疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の遅延);(iii)疾患の拡散の遅延;(iv)疾患の発症もしくは再発および/または疾患の進行の遅延または減速;(v)病態の改善および/または疾患の寛解(部分的であろうと全体的であろうと)および/または疾患の処置に必要とされる1つまたは複数の他の投薬の用量の低下;(vi)生活の質の向上、ならびに/または(vii)生存の延長。
【0140】
疾患または状態の進展の「遅延(Delaying)」は、疾患または状態の進展を延ばす、妨げる、減速させる、遅らせる、安定化させる、および/または延期することを意味する。この遅延は、疾患または状態の前歴および/または処置対象に応じて、期間が変わり得る。疾患または状態の進展を「遅延させる」方法は、その方法を使用しない場合と比べて、所与の時間枠内に疾患または状態が進展する可能性を下げる、および/または所与の時間枠内に疾患または状態の程度を軽減する方法である。そのような比較は、典型的に、統計的に有意な数の対象を使用した臨床研究に基づく。疾患または状態の進展は、標準的方法、例えば、日常的な身体検査、マンモグラフィー、イメージングまたは生検を使用して検出可能である。進展は、最初のうちは検出不可能であり得る、疾患または状態の進行をも指し得て、発生、再発および発症を含む。
【0141】
さらに、用語「含む(comprising)」は、オープンであると意図され、さらなる要素または工程の包括を許容するが必要とはしないということを指摘する。したがって、用語「含む(comprising)」を本明細書で使用する場合、用語「から本質的になる(consisting essentially of」および「からなる(consisting of)」も含まれ、開示される。組成物または組合せが、特定の成分または段階を有する(having)、含む(including)、または含む(comprising)と記載される明細書を通じて、組成物または組合せは同じく、列挙される成分から本質的になる、または列挙される成分からなると考えられる。同じく、方法または工程が、特定の工程段階を有する(having)、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、該工程は同じく、列挙される工程段階から本質的になる、または列挙される工程段階からなる。さらに、段階の順序または特定の動作を行う順序は、本発明が依然として操作可能である限り、重要でないと理解される。さらに、2つ以上の段階または動作は、同時に行ってもよい。
【0142】
範囲が与えられる場合は評価項目を含む。さらに、異なる指定がないか、または文脈および当業者の理解から特に明白でない限り、範囲として表される値は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、本開示の異なる実施形態での指定範囲内の、該範囲の下限の単位の10分の1までの任意の特定値または部分範囲を想定し得ると理解される。
【0143】
技術的に適切である場合、本発明の実施形態を組み合わせてもよい。本明細書に具体的および明示的に列挙される任意の実施形態は、単独または1つもしくは複数のさらなる実施形態と組み合わせてのいずれかでディスクレーマの基盤を形成し得る。
【0144】
本明細書に引用したすべての刊行物および特許文書は、そのような各々の刊行物または文書が具体的かつ個別に参照によって本明細書に組み込まれていると示されるかのように参照によって本明細書に組み込まれている。刊行物および特許文書の引用は、いずれかが関連する先行技術であるという承認とは意図されず、その内容または日付に関するいかなる承認もなさない。
【実施例
【0145】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するために含まれる。当業者は、本明細書に記載される具体的な実施形態に対する変更が可能であり、なおかつ本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく類似の結果が得られることを理解する。
【0146】
実施例1:cGVHDの処置におけるアキサチリマブ安全性および有効性
臨床試験が、2次以上の事前治療を受けた、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を有する30例までの患者において、抗CSF-1R(Ab535;アキサチリマブ)の安全性および予備的有効性を評価した。イブルチニブ、ステロイド、およびカルシニューリン阻害剤による事前処置を受けた検査対象の全患者を、3つの用量のコホートにわたって登録した:1例の患者は0.15mg/kgで2週間ごとに処置され(Q2W、コホート1)、1例は0.5mg/kg Q2Wの用量の投与を受け(コホート2)、3例の患者は1.0mg/kg Q2Wの投与を受けた(コホート3)。
【0147】
データカットオフ時点に評価可能な全患者において応答を観察し、用量制限毒性(DLT)は報告されなかった。コホート3(1mg/kg Q2W)で投与された3例の患者のうち、1例の患者は、最近にDLT期間を通過し、2例の患者は部分奏効を体験し、全患者は依然として治療中である。イブルチニブ、ならびにcGVHDの処置に向けて現在調査中である2つの薬剤Jakafi(登録商標)(ルキソリチニブ)およびKD025の両方ともによる事前処置を受けた後であったコホート2の患者は、部分奏効を体験し、現在、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片による処置の9ヵ月目である。第1の患者(コホート1)は、一時的な部分奏効を達成したものの、肝cGVHDの進行(progression)に起因する肝機能検査(LFT)の上昇ゆえ、続いて中止した。3mg/kg Q2W用量を調査するコホート4が、登録を募集している。
【0148】
データは、CSF-1R阻害が、動物モデルにおける疾患を予防および処置し得ることを証明した。初期データは、CSF-1R依存性マクロファージの標的化が、cGVHDを有する患者に役立ち得ることの最初の臨床的証拠をもたらす。現在までのところ、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、安全かつ忍容性が良好であり、用量制限毒性は観察されていない。試験の第1相部において用量漸増が進行中である。好ましい初期投与スケジュールは、1mg/kgのアキサチリマブ抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片の2週間ごとの投与である。
【0149】
この試験の最初の結果は、効果的な代案を必要とする、cGVHDを有する患者に対する効果的な療法として使用される、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片の可能性を明白にする。処置が困難なこの疾患を有する患者において活性の初期徴候が認められることは、かなり励みになる。さらなる患者を、1mg/kgおよび3mg/kgにおいて評価する。
【0150】
実施例2。2次以上の全身治療後の慢性移植片対宿主病に対するCSF-1Rヒト化抗体アキサチリマブ(SNDX-6352)の研究
慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、同種造血細胞移植後の罹患率および晩期非再発死亡率の主な原因であり、一般的に長期的な免疫抑制を伴う。ステロイドに対する応答が不十分な患者(pts)は、効果的な治療選択肢が少なく、アンメット・メディカル・ニーズを表わす。利用可能な療法は、著しい毒性、免疫抑制、および上昇した感染リスクを伴う。前臨床研究は、CSF-1/CSF-1Rが、cGVHDを媒介するドナー由来マクロファージの拡大および浸潤に関与する主要制御経路であることを示す。アキサチリマブ(axa)は、CSF-1Rに対する高親和性を有するヒト化、全長IgG4抗体である。いかなる理論に拘束されることもないが、アキサチリマブは、CSF-1Rへの結合、ならびにその2つの公知のリガンドCSF-1およびIL-34による活性化の阻害により、単球およびマクロファージの遊走、増殖、分化および生存に影響を及ぼす。アキサチリマブは、それらの患者の処置を対象とした新規の治療選択肢を提供する。
【0151】
方法:2次以上の事前治療にもかかわらず活性症状cGVHDを有する>6歳のptsにおける安全性、忍容性、薬物動態(PK)/薬力学(PD)、およびアキサチリマブの有効性を評価する第1/2相の用量漸増および用量拡大の研究。第1相の評価項目は、最適な生物学的用量を定義するという主要目標を有する、安全性、忍容性、PKおよびPDであった。第2相研究の主要評価項目は、6ヵ月までの全奏効率(CR+PR)である。患者には、28日周期で投与した。
【0152】
結果:12例の患者を第1相研究に登録した。登録時の年齢中央値は58歳(範囲、29~73歳)であり、8例の患者が男性であった。患者は、中央値5次の事前処置(4~9の範囲)に失敗した。用量は、2週間ごとの0.15mg/kg(n=1)、0.5mg/kg(n=1)、1mg/kg(n=3)、3mg/kg(n=6)(q2w)、および3mg/kg q4w(n=1)を含んだ。そのうち、5pts(42%)が、なおもアキサチリマブの投与を受けている。全患者に対する周期数中央値は5である(1~12の範囲)。開始用量が3mg/kg q2wであり、依然として研究中の3例の患者のうち、2例は減量した。1例は2mg/kg q4wであり、1例は1mg/kg q2wであった。7例の患者(58%)は、以下の理由から中止した:有害事象(3mg/kg q2w、n=2);外傷性転倒(traumatic fall)による死亡(1mg/kg q2w、n=1);調査者の決定(0.5mg/kg q2w、n=1);進行性cGVHD(1mg/kgおよび0.15mg/kg q2w、各n=1);およびノンコンプライアンス(3mg/kg q2w、n=1)。
【0153】
3mg/kg q2wの用量での6ptsうちの2例(17%)は、用量制限毒性(DLT)と見なされる、処置下で発現した有害事象を報告した:1例は、1回目用量後の、筋炎の症状を伴う、CTCAEグレード4のクレアチニンキナーゼ上昇であり、第2例は、3回目用量を>2週間遅らせたアミラーゼ/リパーゼの上昇を伴った。後者の患者は、1mg/kg q2wで治療を再開し、5周期後に依然として処置中である。
【0154】
4例の患者(1例は0.15mg/kg、3例は3mg/kg q2w、33%)は、≧グレード3の関連処置下で発現した有害事象を有した:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの上昇(n=2);クレアチンホスホキナーゼの上昇(n=2);およびγ-グルタミルトランスフェラーゼの上昇(n=2)。そのような生化学的上昇は、それらの酵素のクリアランスの阻害をもたらす、クッパー細胞上でのCSF-1R阻害の結果であり得て、axaの作用機序と一致し、無症状の場合、肝炎、膵炎、または横紋筋融解症の臨床兆候を伴わなかった。眼窩周囲浮腫が、2ptsで観察された(≦グレード2);さらなるCSF-1Riクラス効果関連のTEAEは観察されなかった。
【0155】
2014年NIH cGVHDコンセンサス基準により定義される臨床応答が、全用量レベルにわたって7pts(58%)において観察された。応答までの時間の中央値は12週間であった。器官特異的応答が、食道(n=1/1)、眼(n=3/10)、関節/ファシア(n=5/9)、口腔(n=1/7)、および皮膚(n=3/8)において観察された。応答者が受けた事前治療は、イブルチニブ(6pts)、ルキソリチニブ(5pts)、およびKD025(3pts)を含んだ;応答した患者のうちの3例は、それらのすべての投与を受けた。6例の患者(50%)は、Lee症状スコアにおいて少なくとも7点の改善を報告した。循環性のCD14CD16非古典型およびCD14++CD16中間型の単球動態を含む、観察された予備的PKプロファイルおよび薬力学の評価項目は、健康被験者および患者において一致する。
【0156】
結論:これらのデータは、アキサチリマブが、許容可能な安全性プロファイル、および活性cGVHDを有する患者において観察される応答を伴いつつ、臨床的に活性であることを示す。本研修は3mg/kg q4wにおいて、および第2相研究が1mg/kg q2wの用量で進行中である。
【0157】
実施例3:アキサチリマブ(Ab535)の臨床試験
cGVHDの病態生理学の理解が明らかになってきている一方、cGVHDを有する患者に対する療法の有意義な進展はほとんどなかった。現在のところ、処置の主力であるプレドニゾンに対する長年の信頼が依然として存在する。ステロイド投与は、症状を和らげ得て、疾患の進行を遅延させ得るが、このアプローチは、著しい毒性、および耐性の出現を伴う(FlowersおよびMartin、2015年;MacDonald、2017年)。コルチコステロイド用量を低下させる取組みは、他の免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスをコルチコステロイドと組み合わせた後のさらなる有効性を支持する臨床的証拠の欠如にもかかわらず、1次治療または2次治療での、これらの薬剤と組み合せた使用をもたらした(Miklos、2017年)。cGVHDを有する患者のおよそ50%から60%が、初回全身治療から2年以内に二次処置を必要とする。薬剤の最適選択に関するコンセンサスがないにもかかわらず、処置は典型的に、リツキシマブまたはイマチニブを含んだ(FlowersおよびMartin、2015年)。2017年には、BTK阻害剤であるImbruvica(登録商標)(イブルチニブ)が、療法向けの最初のFDA承認の療法となった。イブルチニブの副作用は著しく、患者の38%が、有害事象のため中止し、患者の31%が、cGVHDを有する患者でのイブルチニブのピボタル評価において用量を低下させる。さらに、イブルチニブは、臨床開発計画に参加した患者の器官系の関与に起因し、それらのcGVHD患者の大部分には投与されていない。cGVHDに関する最近の洞察は、疾患関連炎症性シグナル伝達経路、例えば、BTK、JAK1/2、およびSykに関与するキナーゼを標的とする介入を評価させた。これらの経路を標的とする、非臨床サンプルおよび患者サンプルの相関性研究は、期待できる結果を示した(MacDonald、2017年)。アキサチリマブは、CSF-1Rを阻害するその高親和性に基づき、cGVHDを処置するための免疫療法アプローチを提供する可能性を有する。アキサチリマブは、目下、cGVHDを有する患者での第1/2相研究において評価されている。
【0158】
慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、依然として、同種造血幹細胞移植(HSCT)後の罹患率および非再発死亡率の主な原因である。cGVHDは典型的に、HSCT後1年目の間に頻繁に起きるもののHSCT後1年目を超えても発現し得る多臓器病変と共に現れる(Jagasia、2015年)。
【0159】
cGVHDの処置は、現時点ではステロイド投与に基づき、さらなる免疫抑制剤、紫外線B(UVB)光線療法および体外循環式光化学療法(ECP)を含む多数の他のアプローチが一般的に使用されるが、いずれも明らかに効果的とは証明されていない。
【0160】
コロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)の阻害を介して、病原性単球由来マクロファージの分化および生存を妨げることによる、病原性単球由来マクロファージの標的化は、動物系において非常に効果的であると証明された。
【0161】
アキサチリマブは、マクロファージ活性の阻害によりcGVHDを処置する可能性を有する、CSF-1Rに対するヒト化IgG4モノクローナル抗体(mAb)である。cGVHDを有する患者における目下のアキサチリマブ第1/2相研究からのデータは、アキサチリマブが、生物学的および臨床的に活性であり、著しい有害事象なく、器官特異的応答および症状改善を誘導することを示す。これらのデータは、アキサチリマブのさらなる評価を支持する。
【0162】
研究包括基準
本研究への参加資格を有するために、参加者は以下のすべてを満たす必要がある。
【0163】
年齢
患者は、同意書に署名する時点で6歳以上である必要がある。
【0164】
参加者および疾患特性の種類
全身性免疫抑制を必要とする活性cGVHDを有する、同種HSCTレシピエントである患者。
活性cGVHDは、cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクト(Jagasia、2015年)によるcGVHDの徴候および症状の存在として定義される。
少なくとも2次以上の全身治療後に難治性または再発性の活性cGVHDを有する患者。
患者は、器官特異的アルゴリズムもしくは全体的評価のいずれかの点で、NIHの2014年コンセンサス基準により定義される記録された進行性疾患、または医師がその治療には新ライン(new line)の全身治療が必要であると信じる活性症状cGVHDを有する必要がある。
患者は、cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクトにより定義される、持続性の活性急性cGVHD兆候(オーバーラップ症候群)を有し得る。
【0165】
診断評価
≧60のカルノフスキーパフォーマンススケール(16歳以上である場合);≧60のランスキーパフォーマンススコア(<16歳の場合)
無作為化前の14日間中に評価して以下のような、十分な器官および骨髄の機能:
好中球絶対数≧1.5×109/L(研究加入から1週間以内は増殖因子なし)
血小板数≧50×109/L(研究加入から2週間以内は輸血なし)
総ビリルビン量、ALT、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦正常の上限(ULN)
肝cGVHDの疑いのある患者の場合、ALTおよびAST≦3X ULNならびに総ビリルビン量≦ULN
成人患者ではコッククロフト・ゴールト式および小児患者ではシュワルツ式に基づくクレアチニンクリアランス(CrCl)≧50mL/min/1.73m2。
【0166】
性別
男性および/または女性の参加者。
男性または女性による避妊具の使用は、臨床研究に参加する者に対する避妊法に関する地方条例と一致している必要がある。
【0167】
男性患者:性交を抑制しておらず、妊娠可能な女性パートナーとの性行為を意図する非不妊男性患者は、スクリーニングの時から研究介入処置期間の全期間にわたって、かつ研究介入の最終用量後の90日間は、男性用コンドーム+殺精子剤を使用する必要がある。ただし、定期禁欲、周期避妊法および膣外射精法は、許容される避妊法ではない。男性患者は、この期間は終始、精子提供を控えるべきである。
【0168】
女性患者:閉経後状態または閉経前女性患者については尿妊娠検査もしくは血清妊娠検査が陰性であることの証拠。他の医学的原因がなく12ヵ月間にわたり無月経であった女性は閉経後と見なされる。以下の年齢特異的要件が適用される:
【0169】
<50歳の女性は、外因性ホルモン処置の停止から12ヵ月以上無月経であった場合、ならびに施設用の閉経後範囲にある、黄体ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンのレベルを有するか、または避妊手術(両側卵巣摘出術または子宮摘出術)を受けた場合、閉経後と見なされ得る。
【0170】
≧50歳の女性は、すべての外因性ホルモン処置の停止から12ヵ月以上無月経であった場合、放射線誘発閉経に伴い最後の月経が1年より前である、化学療法誘発閉経に伴い最後の月経が1年より前である、または避妊手術(両側卵巣摘出術、両側卵管摘除術または子宮摘出術)を受けた場合、閉経後と見なされ得る。
【0171】
性交を抑制しておらず、非不妊男性パートナーとの性行為を意図する妊娠可能な女性患者は、スクリーニングの時から研究介入処置期間の全期間にわたって、かつ研究介入の最終用量後の90日間は、少なくとも1つの非常に効果的な避妊法を使用する必要がある。妊娠可能な女性患者の非不妊男性パートナーは、この期間は終始、男性用コンドーム+殺精子剤を使用する必要がある。その時点後の産児制限の停止は、担当医師と話し合う必要がある。定期禁欲、周期避妊法、および膣外射精法は、許容される産児制限法ではない。女性患者はさらに、この期間は終始、授乳を控えるべきである。
【0172】
cGVHDを有する患者において0.3mg/kg Q2W、1mg/kg Q2W、および3mg/kg Q4Wでのアキサチリマブの全奏効率(ORR)を評価する。
【0173】
cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクトにより定義される最初の6周期中のORR。
【0174】
臨床的利益に関する2次措置を評価する。
cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクトにより定義される研究中ORR。
PRまたはCRの最良応答から、cGVHDの記録された増悪、新療法の開始、または何らかの理由による死亡までの時間として定義される奏効期間(DOR)(定義1)。
PRまたはCRの初期応答から、cGVHDの記録された増悪、新療法の開始、または何らかの理由による死亡までの時間として定義されるDOR(定義2)。
【0175】
持続的奏効率(SRR)
器官特異的奏効率は、cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクトに基づく。関節およびファシアの奏効率は、cGVHDに関する精巧NIH応答アルゴリズムに基づく。評価は、1)修正Lee症状スケールスコアにおける≧5点の改善を有する患者の割合;2)コルチコステロイドの平均1日量(または同等物)の減少率;3)研究加入後にコルチコステロイドの使用を中止した患者の割合;4)カルシニューリン阻害剤の平均1日量(または同等物)の減少率;5)研究加入後にカルシニューリン阻害剤の使用を中止した患者の割合を含む。
【0176】
2次-PK/薬力学
cGVHDを有する患者におけるアキサチリマブの血漿母集団PK(pop PK)プロファイルを評価すること。薬物曝露量のばらつきを説明し得るアキサチリマブPKパラメータおよび患者要因
アキサチリマブの薬力学プロファイルを評価するために、コロニー刺激因子1(CSF-1)、インターロイキン34(IL-34)のレベルの、ベースラインからの変化、およびその、cGVHD応答との関連を測定した。応答による単球レベルの変化を特定または評価するために、循環単球の数および表現型(CD14/16)のベースラインからの変化を測定した。
応答による単球レベルのベースラインを特定または評価すること。ベースライン循環単球数および表現型(CD14/16)を測定した。
【0177】
2次-免疫原性
抗薬物抗体(ADA)の存在を測定した。
薬力学
アキサチリマブでの処置後のバイオマーカの変化を評価すること。ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞を含む、末梢循環中の免疫細胞の頻度を測定した。応答による循環炎症バイオマーカの変化を特定または評価するために、循環炎症バイオマーカのベースラインからの変化を測定した。応答によるベースライン循環炎症バイオマーカを特定または評価するために、ベースライン循環炎症バイオマーカを測定した。皮膚および肺のcGVHDを有する患者でのさらなる評価において、アキサチリマブ処置前およびアキサチリマブ処置の3周期後の皮膚または肺生検における、皮膚マクロファージ、ランゲルハンス細胞および樹状細胞の、ベースラインからの変化を測定した(皮膚が関与する患者に対する任意の皮膚/肺生検の同意)。
【0178】
有効性
臨床的利益の可能なさらなる証拠を調査するために、Lee cGVHD活性評価患者自己報告に基づき、症状の活性の変化を測定した。7周期の1日目および1年目に、FFSである患者の割合を特定した。FFSは、無作為化から死亡までの時間、またはcGVHDの明らかな増悪、または原発の悪性腫瘍の再発、または他の全身性免疫抑制療法の追加、または毒性に起因する研究処置の中止と定義される。全生存期間(OS);応答までの時間;次回処置までの時間;医師報告の転帰の評価;医師報告の全体的cGVHD活性評価に基づくcGVHD重症化の変化。
【0179】
全体的デザイン
疾患の進行、非忍容性または毒性に起因して少なくとも2次以上の事前全身治療を受けた、再発性または難治性の活性cGVHDを有する患者において、3つの異なる用量レベルでのアキサチリマブの有効性、安全性および忍容性を評価するための、多施設第2相非盲検無作為化研究。器官特異的アルゴリズムもしくは全体的評価のいずれかの点で、NIHの2014年コンセンサス基準により定義される疾患進行、または活性症状cGVHD、またはさらなるもしくは新ラインの全身治療を必要とする者。
【0180】
本研究は、3期間:スクリーニング、処置および追跡調査からなる。研究中終始、患者を評価する。登録時に、適格患者を、3用量コホート(アキサチリマブの0.3mg/kgを2週間ごと[Q2W]、1mg/kg Q2W、および3mg/kg Q4W)の1つに無作為に割り付ける。患者は、無作為化/登録から3日以内に処置(周期1の1日目)を開始し、周期1の1日目から、4週(28日)の処置周期で、疾患進行(NIHの2014年コンセンサス基準により定義)、同意の撤回、または許容できない毒性まで、アキサチリマブの投与を受けることになる。処置の中止後、患者は、試験薬の最終用量から30日後に処置終了(EOT)の来院(visit)、ならびに試験薬の最終用量から60日後および90日後に、さらに2回の安全性および疾患評価の来院をすることになる。
【0181】
各用量コホート内でSimonの最適2段階デザインを実施する。第1段階では、27例の患者を、3つの用量コホートの各々に無作為に割り付ける。無効量に患者が曝露される可能性を制限し、発生による中断の必要性を未然に防ぐために、最初の無益性解析は、初期評価項目に基づく(すなわち、最初の3周期での全奏効)。各用量を、無益性および許容できない毒性に関して評価し、無益性および許容できない毒性に関する停止境界は次のとおり:
・最初の3周期中の応答に基づく無益性評価:この評価は、コホート内の各患者が治療の3周期を完了する機会を有した場合に行うことになる。≦6例の患者が、最初の3周期中にアキサチリマブに対する応答を達成した場合、この用量レベルへの無作為化は、無益性のため停止してもよい。
・最初の6周期中の応答に基づく無益性評価:この評価は、コホート内の各患者が治療の6周期を完了する機会を有した場合に行うことになる。≦9例の患者が、アキサチリマブに対する応答を達成した場合、この用量レベルへの無作為化は、無益性のため停止する。
・安全性評価:安全性評価は、無益性解析が存在し、かつ試験薬に起因する、いずれかの重篤または重度(≧グレード3)のTEAEと定義される毒性事象を有する、許容できない毒性の境界が、27例の患者のうちの≧8例である場合には必ず行うことになる。処置関連であり、かつ医学的介入または入院の原因となるグレード2の事象は、毒性事象と見なされる。中間解析からのデータが評価されている間は、研究無作為化は中断されない。独立データモニタリング委員会が、データカットの時点で利用可能な全データを評価し、所定の無益性および毒性境界に照らして、どの用量へは患者をもう登録しないことにするかを決定する。無益性または安全性境界に直面しない用量は、研究の第2段階において評価され続けることになり、その用量レベルにはさらなる43例の患者が登録される。最終有効性解析は、すべての患者が、アキサチリマブによる6周期の処置を完了する機会を有した場合に行う。ある用量レベルは、≧29例の患者が、NIHの2014年cGVHD基準により定義して、アキサチリマブに対する応答(PRまたはCR)を有した場合に成功と見なされる。Q2Wレジメンに登録された患者は、研究中にQ4Wレジメンへと変更される資格を有し得る。0.3mg/kg Q2Wレジメンに登録された患者は、その用量を1mg/kg Q2Wへと漸増させる資格を有し得る。オントリートメント(on-treatment)応答基準は、4週間ごと、およびEOT来院時または研究介入の中止時に、cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクト:CR、PR、応答の欠如(無変化、混合型、または増悪)を使用して評価する。
【0182】
患者数:
・第1段階では、27例の患者を各処置群(0.3mg/kg Q2W、1mg/kg Q2W、および3mg/kg Q4W)に登録する。
・第2段階では、第1段階からの無益性・安全性評価に合格した処置群に、さらなる43例の患者を登録する。
【0183】
投与群および処置期間:
3つの投与群:0.3mg/kg Q2W、1mg/kg Q2W、および3mg/kg Q4Wが存在する。全研究期間は、次のように16ヵ月である:
【0184】
【表2】
【0185】
投与法:
患者は、アキサチリマブの静脈内投与を、次のように無作為に割り付けられた投与コホートに従う用量およびレジメンで受ける:
・0.3mg/kg Q2W
・1mg/kg Q2W
・3mg/kg Q4W
【0186】
何らかの特定の理論に拘束されることなく、異なるアキサチリマブQ2W投与レジメンにより処置された患者集団での、時間平均した非古典的単球(NCMC)および中間単球(IMMC)の分布のPK/薬力学モデリングシミュレーションを行った。モデリングは、0.15mg/kg Q2WではNCMCおよびIMMCの両方ともベースラインまたはその近くであるのに対して、0.5mg/kg q2wではNCMCは<25%低下してIMMCはベースラインに近いことを示す。1mg/kg Q2Wの用量は、NCMCおよびIMMCの両方ともに関して、数をおよそ50%低下させるのに対して、3mg/kg Q2Wは、2週間の投与間隔にわたりNCMCおよびIMMCの完全な低下をもたらす。3mg/kg Q4Wでは、モデリングは、1mg/kg Q2Wと2mg/kg
【0187】
Q4Wとの間にある、NCMCおよびIMMCのレベルの時間平均の低下を示す。応答の見込みに関する薬力学マーカとしての単球数の臨床的関連性は未定であるものの、循環単球のレベルは、CSF-1R阻害の生物学的な直接のリードアウトであり、用量およびスケジュールの最適化の手引きに使用され得る。0.3mg/kg Q2Wの用量は、時間平均したNCMCおよびIMMCの、比較的少ないとはいえ、ある程度の低下をもたらすと予想され、続いて行う任意の研究に対するおよその最適用量レジメンをより確実に与える十分な用量範囲を設定する。
【0188】
患者内の用量漸増
0.3mg/kg Q2W用量レベルに登録された、処置関連の≧グレード2のいずれかのTEAEを体験しなかった患者は、明らかな増悪を体験し、そうしないと全身治療の追加または変化を必要とする患者は、時機にかかわりなく、その用量を1mg/kg Q2Wに増加させた場合がある。
0.3mg/kgの用量レベルが無益であると示された場合、患者は、この用量レベルへの登録を停止するという決定に従い、その用量を1mg/kg Q2Wに増加させた場合がある。用量漸増は、新たな周期の開始時にのみ行う。
【0189】
投与スケジュールに対する変更
Q2Wレジメンに登録された患者は、与えられた基準を満たす場合、その投与レジメンをQ4Wに変更させた場合がある。
Q2WからQ4Wへのスケジュール変更後に、患者が増悪した場合、Q2Wスケジュールへと戻してもよい。Q2WからQ4Wへの、およびその逆のスケジュールの変更の時点では、用量強度を必ず同じままとし、すなわち、変更直前の用量強度は、変更直後の用量強度と同じである必要がある。
【0190】
1mg/kg Q2W用量スケジュールに登録された患者
評価がなされて、少なくとも20週間維持されたPR/CRを達成したか、または増悪しなかった患者は、その用量スケジュールを、Q2WからQ4Wへと変更してもよい。1mg/kgから2mg/kgとすることで、その用量強度を維持することになる。新たな用量は、2mg/kg Q4Wである。
【0191】
0.3mg/kg Q2W用量スケジュールに登録された患者
評価がなされて、少なくとも20週間維持されたPR/CRを達成したか、または増悪しなかった患者は、その用量スケジュールを、Q2WからQ4Wへと変更してもよい。0.3mg/kgから0.6mg/kgとすることで、その用量強度を維持することになる。新たな用量は、0.6mg/kg Q4Wである。
【0192】
用量スケジュールを0.3mg/kg Q2Wから1mg/kg Q2Wへと漸増させた患者
1mg/kg Q2Wへの用量漸増後に、患者がPR/CRを体験したか、または増悪せず、その最良応答が20週間維持された場合、その用量スケジュールをQ2WからQ4Wへと変更してもよい。1mg/kgから2mg/kgとすることで、その用量強度を維持することになる。新たな用量は、2mg/kg Q4Wである。
【0193】
減量レベル
【表3】
【0194】
AST、ALT、ビリルビン、CK、アミラーゼまたはリパーゼの上昇に起因する、アキサチリマブの用量変更ガイドラインは、以下の表に具体的に挙げる。
AST、ALT、ビリルビン、CK、アミラーゼおよびリパーゼ:投与日(投与前の2日以内)の検査結果に基づく、アキサチリマブの用量変更ガイドライン
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
他の非血液毒性:アキサチリマブの用量変更ガイドライン
【表6】
【0198】
血液毒性
予定された投与の時点での血液学的状態に基づく用量変更の決定には血液毒性表のガイドラインに従う。
【0199】
血液毒性:アキサチリマブの用量変更ガイドライン
【表7】
【0200】
アキサチリマブの注入関連反応
患者が、アキサチリマブ注入関連反応を体験した場合、提示のガイダンスどおりに研究介入処置を継続してもよい。以前に注入関連反応を体験した患者は、続くアキサチリマブの各用量のおよそ30~60分前に、25~50mg IVの前投薬レジメン、または経口同等物ジフェンヒドラミンおよび650 mg IV、または経口同等物アセトアミノフェン/パラセタモールの投与を受けることになる。
アキサチリマブの注入関連反応に関する処置変更は、表中に概説する。
【0201】
アキサチリマブの注入関連反応
【表8】
【0202】
表示した変更(注入速度の50%の低下を含む)の実施後にグレード2の注入関連反応が改善または悪化しない場合、調査者は、コルチコステロイドでの処置を考慮してもよく、その日は注入を停止する必要がある。次の周期では、抗ヒスタミン剤および解熱剤の経口での前投与が必要である。予防的なステロイドは許容されない。必須前投薬にさらなる投薬を加えて、または加えずに注入速度を50%下げた際に患者がグレード2以上の第2の注入関連反応を有した場合、注入を停止し、患者のアキサチリマブ処置を止める。
【0203】
アキサチリマブ用量レベルの無作為化
対話式応答技術(IRT)を使用して、全患者を、1:1:1の無作為化比でアキサチリマブ用量に一元的に割り付ける。患者の割付けは、cGVHDの重症化(軽度/中等度に対する重度)、および以下の治療:イブルチニブ、ルキソリチニブ、およびKD025の少なくとも1つの事前使用(事前治療に対する事前治療なし)に関して層別化する。
【0204】
投与法
アキサチリマブ製剤は、注入バッグ中で提供される0.9%生理食塩水溶液(塩化ナトリウム注)で50mLに希釈する必要がある。アキサチリマブを含有する注入用溶液には他の薬物は添加しない。
【0205】
アキサチリマブ注入溶液を調製するために必要な用量は、患者の体重(kg)に基づく。すべての患者は、投与前の3日以内に体重を量る。患者の体重が、先の用量の計算に使用した体重と比べて>10%減ったか増えた場合、研究介入の量を再計算する必要がある。<10%の体重変化に関しては、アキサチリマブ用量を再計算するかの決定は、施設の実践に従ってよい。
【0206】
有効性評価
すべてのcGVHD評価は、C1D1評価を完成させた医療提供者が行うことが好ましい。少なくとも、C7D1評価は、C1D1評価を行った医療提供者が行う必要がある。さらに、cGVHD治療の変化につながるいかなる評価も、PIまたは主担当医が必ず確認する。
【0207】
2014年NIHコンセンサス定義に従う応答鑑定
医師評価の総合応答は、cGVHDでの臨床試験基準に関する2014年NIHコンセンサス開発プロジェクトにより定義されるように評価する(Lee、2015年)。CRは、各々の器官または部位でのすべての徴候の解消と定義され、PRは、他のいずれかの器官または部位での増悪のない、少なくとも1つの器官または部位での改善と定義される。表9は、ワーキンググループが提案した、器官特異的応答の評価に関するCR、PRおよび増悪のコンセンサス定義、ならびに全体的応答鑑定を含む。
【0208】
慢性GVHD臨床研究に関する、臨床医評価に基づく応答鑑定
【表9】
【0209】
小児患者に対する応答鑑定
小児患者に対しては、特別評価は行われない。しかしながら、若年患者または応じられない患者の場合、PFT評価が、パルスオキシメトリ、および臨床的に必要であれば、空気獲得を評価するために、吸気相および呼気相を有するCTスキャンを含むことになる。
【0210】
医師報告の全体的および器官特異的なcGVHD活性評価
NIH2014年コンセンサス基準により定義されるcGVHD重症化の変化は、医師報告の全体的および器官特異的なcGVHD活性評価フォームを使用して評価する。臨床医が、記録されたNIH全体的重症化スコアとは関係なく、4点カテゴリースケール(慢性GVHDなし、軽度、中等度、重度)での現在の全体的慢性GVHD重症化の主観的評価、および先の評価以来のcGVHD変化に関する自身の評価を提供することになる。主要器官評価は、皮膚、口、肝臓、上部・下部GI、食道、肺、眼、および関節/ファシアを含む(Jagasia、2015年;Lee、2015年)。
【0211】
患者報告cGVHD活性評価(修正Lee cGVHD症状スケール)
患者報告症状活性の変化は、cGVHD症状を捕捉するための2005年および2014年のNIHコンセンサス会議により使用が推奨されたcGVHD Lee症状スケール(Lee、2002年)を使用して評価する。
【0212】
Lee cGVHD症状質問票は、慢性GVHDによって影響を受ける可能性のある7領域(皮膚、眼および口、呼吸、食事および消化、筋肉および関節エネルギー、精神的苦痛)での症状に起因して過去7日間に体験した「苦痛」の程度を示すよう求める(Lee、2002年)。公開された証拠は、その妥当性、信頼性、およびcGVHD重症化に対する感受性を支持する(Lee、2015年;Merkel、2016年;Teh、2020年)。
【0213】
薬物動態
血漿試料中のアキサチリマブレベルを、検証済み酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して特定する。
【0214】
薬力学およびバイオマーカ
バイオマーカ用の試料の採集が、本研究の一部である。以下の免疫相関解析バイオマーカ探索用の血液試料を行い、本研究に参加する全患者から採取する。
・IFNγ、IL-1β、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、TNFα、CSF1およびIL-34を含み得る血液免疫パラメータのレベル、ならびにPKと比べたベースラインからの変化、安全性評価項目。
・循環古典的単球および循環非古典的単球のレベル、PKと比べたベースラインからの変化、安全性評価項目。
・CD8+T細胞、CD4+T細胞、B細胞、NK細胞を含む循環免疫細胞サブセットの数の解析、およびPKと比べたベースラインからの変化、および安全性評価項目。
・さらに、試料を保存して、アキサチリマブに対する観察された臨床応答とのその関連を評価するために、免疫調節において重要な役割を果たすと思われるバイオマーカバリアントを用いて、RNA、血清分析物、または組織バイオマーカに対する新興候補遺伝子/ゲノムワイド解析を含むがこれに限定されない解析を行ってもよい。
・皮膚または肺のcGVHDを有する患者において、アキサチリマブ投与前およびアキサチリマブ処置の2周期後(C3D1)に、免疫組織化学(IHC)および/または遺伝子発現解析により、皮膚および/または経気管支肺生検でのマクロファージ、ランゲルハンス細胞、および樹状細胞の変化を評価する(皮膚/肺が関与する患者に対する任意の皮膚/肺生検の同意が求められる)。
【0215】
免疫原性評価
アキサチリマブに対する抗体を、全患者から採取した血漿試料中で評価する。血漿試料を、アキサチリマブに結合する抗体に関してスクリーニングし、確証された陽性試料の力価を報告する。他の解析は、アキサチリマブに対する抗体の安定性を検証するため、および/またはアキサチリマブの免疫原性をさらに特徴づけるために行う。
【0216】
アキサチリマブに対する抗体の検出および特徴づけは、検証済みアッセイを使用して行う。アキサチリマブに対する抗体の検出用に採取した全試料はさらに、抗体データの解釈を可能にするために、アキサチリマブ血漿濃度を評価したマッチング試料も有する。抗体はさらに特徴づけられてもよく、および/または研究介入の活性を中和するその能力を評価してもよい。
【0217】
カルノフスキー/ランスキーパフォーマンスステータス
カルノフスキー/ランスキーパフォーマンスステータスは、患者を、その機能障害に従って0~100のスケールで分類することを可能にする。スコアが低いほど、極めて重篤な病気の生存がますます悪くなる。スコアは、異なる治療の有効性の比較および個々の患者の予後の評価に使用できる。カルノフスキースケールは、16歳以上の患者向けにデザインされており、ランスキースケールは、16歳未満の患者向けにデザインされている(Lansky、1987年)。カルノフスキースケールは、癌治療、特にHSCTにおいて広く使用される検証済みツールである(Schag、1984年;Crooks、1991年;O’TooleおよびGolden、1991年)。カルノフスキーおよびランスキーのパフォーマンスステータスを表に示す。
【0218】
カルノフスキー/ランスキーパフォーマンスステータス
【表10】
【0219】
参考文献
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【0220】
均等物
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が、前記の添付する説明に記載される。本明細書に記載されるのと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実践または試験において使用できるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本発明の他の特徴、主題および利点は、説明、および特許請求の範囲から明らかになる。明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、単数形は複数の指示対象を含む。異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が帰属する技術分野の当業者の1人が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0221】
本発明は、その趣旨または本質的な特徴を逸脱することなく他の具体的な形態で実施され得る。前記の説明は、単に説明する目的でのみ示されており、本発明を、開示されるまさにその形態に限定するとは意図されないが、本説明に添付の特許請求の範囲により限定されると意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2023506779000001.app
【国際調査報告】