IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テュニス,アドリアヌス マルティヌス ゲラルダスの特許一覧

特表2023-506782射出成形によりレコード盤を製造するための方法
<>
  • 特表-射出成形によりレコード盤を製造するための方法 図1
  • 特表-射出成形によりレコード盤を製造するための方法 図2
  • 特表-射出成形によりレコード盤を製造するための方法 図3
  • 特表-射出成形によりレコード盤を製造するための方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】射出成形によりレコード盤を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/70 20060101AFI20230213BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B29C45/70
B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535620
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 NL2020050762
(87)【国際公開番号】W WO2021118344
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】2024410
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522230428
【氏名又は名称】テュニス,アドリアヌス マルティヌス ゲラルダス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】テュニス,アドリアヌス マルティヌス ゲラルダス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ホウト,ペトラス ヨハネス フレデリク ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA24
4F202AF01
4F202AG01
4F202AG05
4F202AG19
4F202AH40
4F202AR06
4F202AR12
4F202AR15
4F202CA11
4F202CA19
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK18
4F206AA24
4F206AF01
4F206AG01
4F206AG05
4F206AG19
4F206AH40
4F206AR06
4F206AR12
4F206AR15
4F206JA03
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM05
4F206JQ81
(57)【要約】
射出成形によりレコード盤を製造するための方法であって、射出成形によりレコード盤を製造するための方法は、ポリマー材料を加熱して該材料を液化させるステップと、液体ポリマー材料(2)を、ノズル(11)を介して、2つの成形金型部(3、5)の間の空間(7)に供給ゾーン(33)からを圧力下で供給するステップとを含む。液体ポリマー材料(2)は、前記金型部のうちの一方に位置する単一の通路を通過し、該ノズル(7)を介して圧力下で前記空間(7)内に押し込まれる。ポリマー材料(2)としてポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーが用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成型によりレコード盤を製造するための方法であって、
ポリマー材料を加熱して該材料を液化させることと、液体ポリマー材料を、注入ノズルを介して、2つの成形金型部の間の空間に、供給ゾーンから圧力下で供給することとを含み、該液体ポリマー材料は、前記金型部のうちの一方に位置する単一の通路を通過し、前記ポリマー材料は前記注入ノズルを介して圧力下で前記空間に押し込まれ、前記ポリマー材料としてポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーが用いられる、方法。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー中のモノポリマーイソフタル酸の量は、1.5~2.5%である、請求項1に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項3】
前記ポリマー材料を前記2つの金型部の間の空間に注入する前に、前記ポリマー材料は250~300℃の温度に加熱される、請求項1又は2に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項4】
注入の間、前記金型部は40~60℃の温度で維持される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項5】
前記ポリマー材料を前記2つの金型部の間の空間に注入する間に、これらの金型部は互いに1~5mm離れており、注入直後に、前記金型部は互いに対して動かされて、レコード盤の形状を有する型穴を形成する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項6】
前記ポリマー材料は、真っすぐな注入流路を備えた単一の注入ノズルを介して、前記2つの金型部の間の空間内に注入される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項7】
前記ポリマー材料は、前記金型部の金型表面に垂直な又は略垂直な方向で前記2つの金型部の間の空間に注入される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項8】
前記レコード盤の中央部分において、前記ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー材料上にラベルがUVプリンタにより直接印刷される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレコード盤を製造するための方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法で製造されるレコード盤であって、当該レコード盤は、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーからなるか又は主にポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーからなる、レコード盤。
【請求項10】
前記ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー中のモノポリマーイソフタル酸の量は1.5~2.5%である、請求項9に記載のレコード盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形によりレコード盤(gramophone records)を製造するための方法に関し、当該方法は、ポリマー材料を加熱して該材料を液化させることと、2つの成形金型部分の間の空間に供給領域からノズルを介して液体ポリマー材料を圧力下で供給することとを含み、当該方法では、液体ポリマー材料は、前記金型部分のうちの一方に位置する単一の通路を通過し、前記ポリマー材料は、前記ノズルを介して圧力下で前記スペースに入れられる。
【背景技術】
【0002】
レコード盤は、蓄音機で再生される音声キャリアである。それは、少なくとも一方の側の端から中心近くに及ぶ螺旋状の溝を有する平坦な円盤であり、螺旋状の溝には、螺旋形状からの小さい水平及び/又は垂直のずれの形で音楽情報が記録されている。これらのずれは、左右及び底部に存在し、回転する円盤上で針を用いて走査でき、聴くことができる。
【0003】
そのようなレコード盤は、長時間再生(long-playing)レコードの実施形態で知られており、それは、両側に螺旋状の溝を備えた、直径30cm(12インチ)のビニル製のビニールレコードである。既知のレコード盤は、ディスク状の溝付きプレートにPVCのロールを押し込むことによって作られる。長時間再生レコードの材料としてのPVCは、発癌性物質であるPVCに関連して、頻繁に接触した場合に健康上のリスクがある。さらに、長時間再生用のプレートにPVCのロールを押し込むには、比較的多くのエネルギーを要し、サイクル時間が比較的長くなる。
【0004】
特許文献1から、射出成形用の材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる、レコード盤を製造するための方法が知られている。PETは、機械的及び寸法上の安定性、融点、透明度等の材料の特徴を改質するために共重合によって変性可能なホモポリマーである。例えば、グリコール変性PETを射出成形できることがよく知られている。この既知のプロセスに従って製造されたレコードは、外観、摩耗及び音質に関する特徴が劣っているようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1353953号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、既知の方法で製造されたレコード盤よりも特徴がより良好なレコード盤を製造するための方法を提供することである。この目的のために、本発明に係る方法は、射出成形用の材料として、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー(polyethylene terephthalate isophthalic acid modified copolymer)(PET-IPA変性コポリマー)を用いることを特徴とする。
【0007】
改質剤がイソフタル酸であるPET-IPA変性コポリマーは、例えばトレー又はブリスターパックを作るために用いられる熱成形等の特定の成形用途に有利であることが知られている。この既知のコポリマーは、延伸ブロー成形によるボトルの製造にも用いられる。後者の用途では、コポリマーにおいて少量のイソフタル酸しか用いられない。少量のコモノマーだけを用いた場合、結晶化は遅くれるが、それを完全に防ぐことはない。
【0008】
射出成形の間、液体材料は、高圧下で異なる流路を介して押圧されるため、摩擦(せん断)に遭遇する。これはプラスチックの流れを良好にする(粘度が低下する)。そのため、例えば、注入速度が速ければ、溶融物はより容易に流れる。しかしながら、PET-IPA変性コポリマーは「せん断」依存粘度(“shear” dependent viscosity)が小さい。PET-IPA変性コポリマーには(他の熱可塑性プラスチックが有する)この利点がほとんどない。これが、PET-IPA変性コポリマーが射出成形で、とりわけ、レコード盤等の長い/薄い流路を有する製品に加工することが困難な理由である。
【0009】
PET-IPA変性コポリマーは射出成形で一般的な材料ではなく、長く薄い流路に注入するのが困難であるが、45種類を超える異なるプラスチック材料を試験した結果、レコード盤として適用に良好な特性を有することが判明した。高い機械的安定性及び寸法安定性により、耐摩耗性が高く、外観が透明で、音質も良好である。
【0010】
包括的な試験の後、PET-IPA変性コポリマーの特徴は、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー中のモノポリマーイソフタル酸(monopolymer isophthalic acid)の量が1.5~2.5%の間の場合、好ましくは、この量が約1.8%の場合に、レコード盤を製造するための射出成形プロセスでの適用に最適であると思われる。
【0011】
また、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーはリサイクルが容易であるため、本方法で製造されたレコード盤は他の既知のレコード盤よりも持続可能性が高い。
【0012】
射出成形製造プロセスを最適化するために、注入すべき材料は、ポリマー材料を2つの金型部の間の空間に注入する前に、250~300℃、好ましくは270~290℃の温度で加熱される。
【0013】
射出成形製造プロセスをさらにより最適化するために、2つの金型部の間の空間に材料を注入する間に、金型部は40~60℃の温度で維持される。
【0014】
本発明に係る方法の一実施形態では、2つの金型部の間の空間にポリマー材料を注入する間に、金型部は、互いに1~5mmの距離で維持され、注入直後に、これらの金型部が互いに対して動かされて、レコード盤の形状を有する型穴を形成する(所謂、射出圧縮)。この方法は、金型部の間のフロー空間の寸法がより大きいため、注入の間に摩擦が少ないため、必要なエネルギー(温度、圧力)が大幅に少ない。これら2つの金型部の間の閉じた穴に材料を注入する間に、金型部が互いに接触している場合、特許文献1に記載の方法と同様に、金型部の溝を充填するのがより難しいため、材料がより液体(粘度がより低い)になるため、より高い温度、故により多くのエネルギー材料が必要になるか又は別の組成の材料が必要になり、レコード盤の音質がより低いものとなる。
【0015】
少なくとも一部が円周方向に向けられた通路を有するノズルでポリエチレンテレフタレート材料を注入する特許文献1の技術水準の知識と比較して、本発明に係る方法では、ポリマー材料は、真っすぐな注入流路を備える単一のノズルを介して、2つの金型部の間の空間内に注入される。このように注入することにより、目に見え、使用の間に可聴なレコードの部分の間の遷移(visible and during use audible transitions between parts of the record)が回避される。
【0016】
また、穴に注入されるポリエチレンテレフタレート材料が、材料の回転運動を引き起こす速度成分を有する特許文献1の技術水準の知識と比較して、本発明に係る方法では、ポリマー材料は、金型部の金型面に対して垂直又はほぼ垂直な方向で2つの金型部の間の空間に注入される。これも、目に見え、使用の間に可聴なレコードの部分の間の遷移の回避に寄与する。
【0017】
本発明に係る方法のさらなる実施形態は、レコード盤の中央部に、ラベルがUVプリンタによりポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー材料上に直接印刷されることを特徴とする。そのため、レコードにプレスされる別個のラベルがないため、本発明に係るレコードは完全にリサイクルでき、既知のレコードをリサイクルする場合のように、ラベル部分を切り取って、別個に取り扱う必要がない。そのため、本発明に係る方法によって製造されるレコード盤はリサイクルが容易であるため、持続可能性が高い。
【0018】
本発明は、本発明に係る方法で製造されたレコード盤にも関する。レコード盤に関して、本発明は、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーからなるか又はポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーから実質的になることを特徴とする。
【0019】
ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマー中のモノポリマーイソフタル酸の量は1.5~2.5%であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面に基づいて、本発明を以下でさらに説明する。これらの図面は、本発明に係るレコード盤を射出成形するための射出成形装置の一実施形態を示す。
図1図1は、注入流路が閉じた状態の、本発明に係るレコード盤を製造するための射出成形装置の金型の概略図である。
図2図2は、注入流路が開いた状態の射出成形装置である。
図3図3は、注入管が閉じた状態の射出成形装置の射出ノズルである。
図4図4は、注入管が開いた状態の射出成形装置の射出ノズルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
レコード盤を射出成形するための射出成形装置は金型1を有する。図1に、この金型を概略的に示す。金型1は、間に空間7を有する2つの金型部3及び5で構成されている。金型部が互いに接触すると、空間7は、レコード盤の形状を有する型穴8(図2参照)を画定する。金型部5には、注入ノズル11を受容するための差し込み部9がある。注入ノズルの前部のみが図示されている。金型部3には、レコード盤の一部ではない残りの中央注入片を排出するためにエジェクタ17が変位可能な中央ブッシュ15がある。さらなるエジェクタ19は、レコード盤を排出するためにブッシュ上で摺動可能である。金型部3と5との間には、排出リング21がある。型穴8は、それぞれプッシャー27、29を備える2つのミラー部23、25によって囲まれている。
【0022】
図3に注入ノズル11を詳細に示す。注入ノズルはノズル片31を備え、入口開口33は供給領域の一部である。注入ノズル11内では、入口開口とノズル片との間に注入流路35が存在する。注入流路35は完全に真っすぐであり、回転可能な弁37によって閉じられている。この弁はアーム39によって調節可能である。図4では、注入ノズル11は、弁37が開位置にある状態で示されている。
【0023】
レコード盤をスプレーする場合、成形材料に最適な特性を与えるために添加剤を有するPETの成形材料(通常は顆粒の形態)が液体状態に加熱される。液体材料は、単一の通路12を介して、金型部3と5との間の空間7に圧力下で注入され、成型材料がこの空間に溶融する場所からの成型材料の材料ストリームは、後で再び一緒になるサブストリームに分割されない。液体材料は、注入ノズル11を通って空間7に流入する。2つの金型部3と5との間の空間7にポリマー材料を注入する間、金型部は、互いに約3mm離れている。図1を参照。注入直後に、これらの金型部3と5とが互いに対して動かされ、レコード盤の形状を有する型穴8を形成する。図2を参照。
【0024】
射出成形のために用いられるポリマー材料2は、ポリエチレンテレフタレートイソフタル酸変性コポリマーである。改良のための従来の添加剤をこのベースポリマー材料に添加できる。
【0025】
なお、所与の図面に基づいて本発明を上記で説明したが、本発明は、図面に示す実施形態に何ら限定されるものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で、図面に示す実施形態から逸脱する全ての実施形態にも及ぶ。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】