(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】電気熱量ポリマー、それを含むインク及びフィルム、並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08F 214/22 20060101AFI20230213BHJP
H01G 4/18 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C08F214/22
H01G4/18 600
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535857
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 FR2020052388
(87)【国際公開番号】W WO2021116618
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】スレスタン,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ル・グピル,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】カリトシス,コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】アジーアヌー,ジョルジュ
【テーマコード(参考)】
4J100
5E082
【Fターム(参考)】
4J100AC24P
4J100AC25Q
4J100AC26Q
4J100AC27Q
4J100AC28Q
4J100AC30R
4J100AC31R
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA41
4J100EA05
4J100HA25
4J100HA62
4J100HC45
4J100JA43
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG06
5E082FG34
(57)【要約】
本発明は、変動電界の影響下で電気熱量効果を有するVDFベースの単位を含むポリマーに関する。このポリマーは、0.1~10.0mol%の二重結合を含み、これらは実質的に非共役である。本発明はまた、対応する組成物及び対応するフィルム、並びに様々な使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動電界の影響下で電気熱量効果を示すポリマーであって、
- 30mol%~90mol%の式-(CF
2-CH
2)- (III)の単位、
- 1mol%~59.9mol%の式-(CX
1X
2-CX
3X
4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0mol%~(20-N)mol%の式-(CY
1Y
2-CY
3Z)- (V)の少なくとも1単位、
- Nmol%の-(CY
3=CF)-、-(CY
3=CX
1)-、-(CY
3=CX
2)-、-(CY
1=CY
3)-、-(CY
2=CY
3)-及びその組み合わせからなるリストから選択されるエチレン単位
[式中、
X
1及びX
2は、独立して、-H、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
X
3及びX
4は、独立して、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、ただし、X
1及びX
2が両方とも-Hであること、及びX
3及びX
4が両方とも-Fであることを除き、
Y
1及びY
2は、独立して、-H、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Y
3は、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Zは、-F以外のハロゲン原子を示し、
Nは0.1~10.0の範囲の数である。]
を含み、
本質的に共役炭素-炭素二重結合を示さない、
ポリマー。
【請求項2】
X
1が-H又は-Fを示し、X
2、X
3及びX
4が3つとも全て-Fを示す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Zが-Clを示す、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
Y
3が-Fを示し、Y
1及びY
2がいずれも-H又は-Fを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、少なくとも1mol%、優先的には少なくとも2mol%、より好ましくは少なくとも3mol%、極めて好ましくは少なくとも4mol%の式(V)の単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーがリラクサ強誘電性である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、20mC/m
2以下の残留分極及び/又は25V.μm
-1以下の保磁場を有し、残留分極及び保磁場の測定がいずれも25℃、1Hzの周波数及び150V/μmの電界で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
200000g/mol以上、好ましくは300000g/mol以上、好ましくは400000g/mol以上の重量平均分子量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
10J/g以上の融解エンタルピー、優先的には15J/g以上の融解エンタルピーを有し、該融解エンタルピーが規格ISO11357-2:2013に従って10℃/分の温度勾配を有する2回目の加熱で測定される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
少なくとも5℃、優先的には少なくとも10℃、より優先的には少なくとも20℃、極めて優先的には少なくとも30℃の温度範囲にわたり、15以上、優先的には20以上、より優先的には40以上、きわめて優先的に55以上である比誘電率を有し、該比誘電率は1kHzで測定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項11】
60℃以下の温度で、好ましくは50℃以下の温度で、より好ましくは40℃以下の温度で誘電率の最大値を有し、該比誘電率は1kHzで測定される、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーが以下を含む方法によって得ることができる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー。
a) ポリマーの総モル数で以下を含む初期ポリマーの提供:
- 40mol%~90mol%の式-(CF
2-CH
2)- (III)の単位、
- 9.9mol%~59.9mol%の式-(CX
1X
2-CX
3X
4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0.1mol%~20mol%の式-(CY
1Y
2-CY
3Z)- (V)の少なくとも1単位、
[式中、X
1、X
2、X
3、X
4、Y
1、Y
2、Y
3及びZは請求項1に定義された通りである。]
b) 前記初期ポリマーの脱ハロゲン化水素化(ただし、前記脱ハロゲン化水素は、本質的に、少なくとも部分的に-Z及び隣接水素の脱離からなる)。
【請求項13】
少なくとも1つの測定温度において、前記初期ポリマーの断熱温度の変動に対して、少なくとも0.5℃大きく、優先的には少なくとも1℃大きく、さらにより優先的には少なくとも1.5℃大きい断熱温度の変動を有し、断熱温度の変動の測定が、86V/μmに等しい最大振幅を有する変動電界において実施される、請求項10に記載のポリマー。
【請求項14】
前記初期ポリマーの誘電率の最大値に対して、少なくとも5%大きく、優先的には10%大きく、より優先的には25%大きい比誘電率の最大値を有し、該比誘電率は1kHzで測定される、請求項12又は13に記載のポリマー。
【請求項15】
少なくとも0.1の反応進行、優先的には少なくとも0.2の反応進行で前記脱ハロゲン化水素反応が行われる、請求項12~14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマー、及び該ポリマーの少なくとも1種の液体ビヒクルを含む組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマーを含むフィルム。
【請求項18】
0.1マイクロメートル以上の厚さを有し、優先的には1マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲の厚さを有し、より好ましくは1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さを有し、さらにより好ましくは1マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する、請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
熱伝達システム、特に冷却システムにおける、特にフィルムの形態の請求項1~15のいずれか一項又は請求項21及び22のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項20】
エネルギー貯蔵システム、特に、キャパシタ、有機トランジスタ、アクチュエータ又は静電クラッチにおける、特にフィルムの形態の請求項1~15のいずれか一項又は請求項21及び22のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項21】
X
1が-Hを示し、X
2、X
3及びX
4が3つとも全て-Fを示し、Y
3が-Fを示し、Y
1及びY
2がいずれも-Hを示し、Zが-Clを示し、
Nが、0.1~2、優先的には0.1~1.5、より優先的には0.1~1で選択される、請求項1又は請求項5~15のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項22】
X
1が-Hを示し、X
2、X
3及びX
4が3つとも全て-Fを示し、Y
1、Y
2及びY
3が3つとも全て-Fを示し、Zが-Clを示し、
Nが、0.1~10.0、優先的には1.0~8.0、より優先的には2.0~7.5、極めて好ましくは2.2~7.0で選択される、請求項1又は請求項5~15のいずれか一項に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気熱量材料の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ポリマーが変動電界にさらされた場合に、有意な電気熱量効果、すなわち、断熱温度の有意な変動を示す電気活性ポリマーに関する。
【0003】
本発明はまた、電気活性ポリマーをベースとするインク及びフィルムに関する。
【0004】
本発明は、最終的に、ポリマーの様々な可能な使用、特にフィルムの形態での使用に関する。
【背景技術】
【0005】
電気熱量効果は、ある双極性誘電体材料が変動電界にさらされた場合に、温度の変動によって自ら現れる該材料の性質である。この現象の物理的起源は双極子秩序の変化に関係し、したがって電界の印加によって誘起される双極子エントロピーの変動に関係する。電界Ecの印加はこれらの物質の双極子を秩序化させ、配向させるが、これは断熱条件下でのそれらの双極子エントロピーの減少及びそれらの温度の増加をもたらす。逆に、電界の減少又は抑制は、断熱条件下でのそれらの双極子エントロピーの増加及びそれらの温度の低下をもたらす。したがって、電気熱量材料は、所定の実験条件下で、断熱条件下での印加電界Ecに対する断熱温度の変動ΔTECを特徴とする。あるいは、また電気熱量材料は、等温条件下での印加電界Ecに対する等温エントロピーの変化ΔSECを特徴とする。
【0006】
電気熱量効果は、現在、ガス圧縮に基づいて動作するシステムよりも環境に優しく、エネルギー効率がより高い新しい冷却システム開発のための、熱電効果又は磁気熱量効果の多くの研究の主題である[SHI,Junye、HAN,Donglin、LI,Zichaoら、Electrocaloric cooling materials and devices for zero-global-warming-potential、high-efficiency refrigeration.Joule,2019参照]。強誘電材料及びリラクサ強誘電体は、印加電界及びその双極子構造との間の強いカップリングにより、高い電気熱量性能を有する可能性が高いため、これらの用途に最も関心を集めている材料である。特に、このカップリングは、特に電界下でのこれらの材料の分極における強い可逆的変動、及び高い誘電率のために、強誘電体→常誘電体(FE→PE)又はリラクサ強誘電体→常誘電体(RFE→PE)という相転移に近いかそれよりわずかに上の最大値にある。換言すれば、相転移FE→PE又はRFE→PEに近いところでは、電界の比較的弱い変動がエントロピー及び温度の著しい変動を発生させる。表面積の大きい薄膜の形態のこれらの材料の良好な柔軟性及び加工の容易さは、それらを固体冷凍システムでの使用に特に適したものとする他のパラメーターである。
【0007】
「強誘電性」及び「リラクサ強誘電性」ポリマー材料の中で、VDF及びTrFEをベースとするフルオロポリマーが最も研究されている。それらは現在までのところ最高の性能品質を示す。
【0008】
P(VDF-TrFE)型の強誘電性コポリマーの電気熱量特性は、強誘電体→常誘電体(FE→PE)転移に近い最大値にある。この種のポリマーのFE→PE転移は狭く、すなわち、それは小さな範囲の温度で起こり、比較的高温、典型的には厳密に60℃超に位置する。これは、周囲温度の近く及び/又は広範囲の温度にわたって動作しなければならない冷却システムでのそれらの使用を妨げる。
【0009】
リラクサ強誘電性ポリマーの使用により、上記の欠点の少なくともいくつかを克服することが可能となる。これは、照射されたP(VDF-TrFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)又はP(VDF-TrFE-TrFE-CTFE)型のリラクサ強誘電性ポリマーが、強誘電性ポリマーのFE→PE相転移と比較して拡大した、すなわち、これはより広範囲の温度で起こる(RFE→PE)相転移を有するからである。また、RFE→PE転移は、強誘電性ポリマーのFE→PE転移の温度よりも一般的に低い温度に位置する。したがって、これにより、変化に富んだ冷却システム、特に周囲温度の近傍及び/又は広範囲の温度にわたって動作しなければならない冷却システムにおいて、リラクサ強誘電性ポリマーの使用を想定することが可能になる。
【0010】
材料の電気熱量性能品質は、その誘電特性から、以下のMaxwellの関係式から得られる方程式を用いて、理論的に(間接的な方法で)推定することができる。
【0011】
【数1】
式中、
ΔT
ECは、材料の断熱温度の変動を示し、
Tは、材料の温度を示し、
C
Eは、材料の熱容量を示し、
Pは、材料の誘電分極を示し、
Eは、最小値E
1~最大値E
2の間で変化する電界を示す。
【0012】
例えば、Neeseらは、約70℃のキュリー温度(FE→PE転移)を有する、55mol%のVDF及び45mol%のTrFEで構成されるP(VDF-TrFE)型の強誘電性コポリマーが、209V/μmの高電界に対して12℃から約80℃への断熱温度の変動(ΔTEC)をもたらすことができることを、「間接」法によって推定することができた。Neeseらはまた、1kHz~100kHzの範囲の周波数に対して20℃~40℃で誘電率ピークを有する59.2/33.6/7.2mol%の組成を有するP(VDF-TrFE-CFE)ターポリマーが、307V/μmの高電界に対して12℃から約55℃程度の断熱温度の変動(ΔTEC)をもたらすことができることを推定することができた[参照:NEESE,Bret、CHU,Baojin、LU,Sheng-Guoら、Large electrocaloric effect in ferroelectric polymers near room temperature.Science、2008、321巻、No.5890、pp.821~823参照]。
【0013】
しかし、ΔTECを推定するための間接的方法の信頼性は、現在、ある種の材料、特にフルオロポリマーについて疑問視されている[LU,S.G.、ROZIC,B.、ZHANG,Q.M.ら、Comparison of directly and indirectly measured electrocaloric effect in relaxor ferroelectric polymers.Applied Physics Letters、2010、97巻、No.20、p.202901参照]。
【0014】
「直接」として知られる他の測定法は、材料の性能品質を相互に比較することができ、したがって少なくとも部分的には、間接的方法の上述の欠点を克服するために開発された[LU,S.G.、ROZIC,B.、ZHANG,Q.M.ら、Comparison of directly and indirectly measured electrocaloric effect in relaxor ferroelectric polymers.Applied Physics Letters、2010、97巻、No.20、p.202901参照]。
【0015】
例えば、Liらは、59.2/33.6/7.2mol%の組成のP(VDF-TrFE-CFE)リラクサターポリマーが、40℃程度の温度の拡大範囲において有意な電気熱量効果を示すことができることを直接測定することができた。このようにして7.6℃までの断熱温度の変動ΔTECは100V/μmの電界下で30℃で測定できた[LI,Xinyu、QIAN,Xiao-shi、LU,S.G.ら、Tunable temperature dependence of electrocaloric effect in ferroelectric relaxor poly(vinylidene fluoride-trifluoroethylene-chlorofluoroethylene termpolymer).Applied Physics Letters、2011、99巻、No.5、p.052907参照]。
【0016】
効果的な冷却装置を開発できるようにするために、現在、所定の変動電界において、改良された電気熱量特性、すなわち、断熱温度のより大きな変動ΔTECを示すVDFベースのフルオロポリマーを提供する必要性が存在する。断熱温度の高い変動を得るために使用される電界は、エネルギー消費を制限し、高価で危険な制御電子機器の使用を制限するために、できるだけ低くなければならない。
【0017】
この観点から、Zhang,G.らは、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)ナノワイヤなどのナノメートルの充填剤を62.3/29.7/7.8mol%のP(VDF-TrFE-CFE)に加えることを提案した。このように充填剤を提供されたP(VDF-TrFE-CFE)配合物は、75V/μmに等しい振幅の電界下で、0~60℃の測定温度の範囲にわたって少なくとも7.5℃を超える最大値を有するΔTECを測定することを可能にした。これとは対照的に、充填剤を含まないP(VDF-TrFE-CFE)について、75V/μmに等しい振幅の電界下で0~60℃の測定温度の範囲にわたって、3.5~4.5℃のΔTECが測定された[ZHANG,G.ら、Ferroelectric Polymer Nanocomposites with Complementary Nanostructured Fillers for Electrocaloric Cooling with High Power Density and Great Efficiency. ACS Applied Energy Materials、2018、1(3)、pp.1344~1354]。
【0018】
それにもかかわらず、ポリマーマトリックスへのナノメートルの充填剤の導入はいくつかの欠点を示す。まず、それはこれらの充填剤の非常に良好な分散を必要とするため、材料の成形が複雑になる。加えて、ポリマーの製造方法におけるナノ粒子の取り扱いは、遊離状態のナノ粒子のヒトの健康に対する潜在的リスクのために複雑である。最後に、充填剤の存在は、材料を機械的に弱め、その絶縁耐力を低下させる傾向がある。
【0019】
WO2019075061号は、例を挙げずに、式(I)のポリマーが有利な電気熱量性を有するであろうことを仮定する。
【0020】
【化1】
式中、単位の各例で、n及びmは1~1000の間で独立して選ばれる整数であり、pはn+mより大きい整数であり、R
1、R
2、R
3及びR
4は、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NHZ、-NZ
2、-BH
2、-BHZ、-BZ
2、OZ、-SeZ、-TeZ、-SO
2Z、-OCOZ、-NHCOZ、-COOZ、-CONH
2、-CONHZ、-CONZ
2、-CH
2F及び-CHF
2から独立して選択され、Zは、単位の各例で、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基から独立して選択される。
【0021】
ポリマー(I)の製造方法が開示されており、脱ハロゲン化水素をもたらすために、初期ポリマー(II)をLiOH、NaOH、KOH又はCsOHのようなアルカリ性水酸化物(強塩基pKa>14)と接触させることからなり、ポリマー(II)は以下の式を有する。
【0022】
【化2】
式中、n、m、p、R
1、R
2、R
3及びR
4は式1のポリマーについて定義された通りである。
【0023】
WO2019075061号の唯一の例は、二重結合を含むポリマーの製造を示し、このポリマーは、イソプロパノール中の水酸化ナトリウムの飽和溶液によるジメチルアセトアミド中のPVDFの脱フッ化水素から製造される。
【0024】
製造されたポリマーの電気熱量特性の測定は行われなかった。製造されたポリマー中の二重結合の種類も特性決定されなかった。
【0025】
それにもかかわらず、PVDFの脱フッ化水素化のための同様の方法に関するUS4904739号に照らすと、製造されたポリマーは、高い割合の共役二重結合を含むようである。
【0026】
さらに、強塩基の作用による結果脱フッ化水素化により得られる共役二重結合を含むフルオロポリマーは、熱に対しあまり安定ではなく、黄色に変わり、容易に分解し、強塩基の作用中に架橋しやすいポリマーをもたらすことが当業者に知られている。
【0027】
また、この方法には、有害(接触/吸入による)でCMR(胎児に害を与える可能性がある)であるジメチルアセトアミドを溶媒として使用するという処理上の欠点もある。
【0028】
したがって、効果的な冷却装置を開発できるようにするために、現在、所定の変動電界及び所定の環境(温度条件)において、電気熱量特性を改良した、すなわち断熱温度のより大きな変動ΔTECを示すVDFベースのフルオロポリマーを提供する必要性が存在する。断熱温度の高い変動を得るために使用される電界は、エネルギー消費を制限し、高価で危険な(高電圧)制御電子機器の使用を制限するために、優先的にできるだけ低くなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開第2019/075061号
【特許文献2】米国特許第4904739号明細書
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】SHI,Junye、HAN,Donglin、LI,Zichaoら、Electrocaloric cooling materials and devices for zero-global-warming-potential、high-efficiency refrigeration.Joule,2019
【非特許文献2】NEESE,Bret、CHU,Baojin、LU,Sheng-Guoら、Large electrocaloric effect in ferroelectric polymers near room temperature.Science、2008、321巻、No.5890、pp.821~823
【非特許文献3】LU,S.G.、ROZIC,B.、ZHANG,Q.M.ら、Comparison of directly and indirectly measured electrocaloric effect in relaxor ferroelectric polymers.Applied Physics Letters、2010、97巻、No.20、p.202901
【非特許文献4】LI,Xinyu、QIAN,Xiao-shi、LU,S.G.ら、Tunable temperature dependence of electrocaloric effect in ferroelectric relaxor poly(vinylidene fluoride-trifluoroethylene-chlorofluoroethylene termpolymer).Applied Physics Letters、2011、99巻、No.5、p.052907
【非特許文献5】ZHANG,G.ら、Ferroelectric Polymer Nanocomposites with Complementary Nanostructured Fillers for Electrocaloric Cooling with High Power Density and Great Efficiency. ACS Applied Energy Materials、2018、1(3)、pp.1344~1354
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、変動電界にさらされた場合に、有意な電気熱量効果を示す、従来技術のものと比較して改良されたフルオロポリマー、並びにそれに由来する組成物及びフィルム、並びに関連する使用を提供することを提案する。
【0032】
また、その目的は、少なくともある実施形態によれば、破壊を伴わずに多数の電界のサイクルに耐えるために、高い絶縁耐力を示す改良されたフルオロポリマーを提案することである。
【0033】
その目的は、さらに、少なくともある実施形態によれば、装置におけるポリマーの持続的かつ信頼性のある使用を想定するために、良好な熱的及び/又は化学的安定性を示す改良されたフルオロポリマーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、変動電界の影響下で電気熱量効果を示すポリマーであって、
- 30mol%~90mol%の-(CF2-CH2)- (III)の単位、
- 1mol%~59.9mol%の式-(CX1X2-CX3X4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0mol%~(20-N)mol%の式-(CY1Y2-CY3Z)- (V)の少なくとも1単位、
- Nmol%の-(CY3=CF)-、-(CY3=CX1)-、-(CY3=CX2)-、-(CY1=CY3)-、-(CY2=CY3)-及びその組み合わせからなるリストから選択されるエチレン単位(複数可)
[式中、
X1及びX2は、独立して、-H、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
X3及びX4は、独立して、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、ただし、X1及びX2が両方とも-Hであること、及びX3及びX4が両方とも-Fであることを除き、
Y1及びY2は、独立して、-H、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Y3は、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Zは、-F以外のハロゲン原子を示し、
Nは0.1~10.0の範囲の数である。]
を含む。
【0035】
本発明によるポリマーは、本質的に共役炭素-炭素二重結合を示さない。
【0036】
本発明の発明者らは、まったく驚くべきことに、電界の変動という同じ条件下及び1つの同じ測定温度で、そのようなポリマーが、実質的に同一の組成を有するが二重結合を有さないポリマー及び/又は実質的に同一の組成を有するが共役二重結合を有するポリマーよりも、良好な電気熱量特性を有することを見出した。それらの知見は、本発明によるポリマーについて、
図1に代表されるような試験ベンチ1で実施された断熱温度の変動の測定に基づいている。これらの測定値を、電界の変動という同じ条件下及び1つの同じ測定温度で、実質的に同一の組成を有するが炭素-炭素二重結合を有さないポリマー及び/又は実質的に同一の組成を有するが共役炭素-炭素二重結合を有するポリマーについて実施した測定値と比較した。
【0037】
また、本発明者らは、これらのポリマーの少なくともいくつか、実際にはこれらのポリマーの大部分でさえ、化学的及び熱的に安定であり、良好な絶縁耐力を有することを観察した。
【0038】
いくつかの実施形態によると、X1は-H又はFを示すことができ、X2、X3及びX4は、3つ全て-Fを示すことができる。
【0039】
いくつかの実施形態によると、Zは-Clを示す。
【0040】
いくつかの実施形態によると、Y3は-Fを示し、Y1及びY2の両方は-H又はFを示す。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるポリマーは、少なくとも1mol%、優先的には少なくとも2mol%、より好ましくは少なくとも3mol%の式(V)の単位、極めて好ましくは少なくとも4mol%の式(V)の単位を含む。
【0042】
いくつかの具体的な実施形態によれば、X1が-Hを示し、X2、X3及びX4の3つ全てが-Fを示し、Y3が-Fを示し、Y1及びY2の両方が-Hを示し、Zが-Clを示すポリマーは、0.1~2、優先的には0.1~1.5、さらにより優先的には0.1~1で選択されるNの値を有する。
【0043】
いくつかの具体的な実施形態によれば、X1が-Hを示し、X2、X3及びX4の3つ全てが-Fを示し、Y1、Y2及びY3の3つ全てが-Fを示し、Zが-Clを示すポリマーは、0.1~10.0、優先的には1.0~8.0、より優先的には2.0~7.5、極めて好ましくは2.2~7.0で選択されるNの値を有する。
【0044】
本発明によるポリマーは、有利には、リラクサ強誘電性ポリマーである。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記ポリマーは、20mC/m2以下の残留分極及び/又は25V.μm-1以下の保磁場を有し、残留分極及び保磁場の測定はいずれも、温度25℃、周波数1Hz及び150V/μmの場で実施される。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、200000g/mol以上、好ましくは300000g/mol以上、好ましくは400000g/mol以上の重量平均分子量を有する。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは10J/g以上の融解エンタルピー、優先的には15J/g以上の融解エンタルピーを有し、融解エンタルピーは、10℃/分の温度勾配を用いる2回目の加熱において、規格ISO11357-2:2013に従って測定される。
【0048】
高い重量平均分子量によりは、特にポリマーの高い結晶化度を達成することが可能になる。高い重量平均分子量及び/又は高い結晶化度を有するポリマーは、特に、より良好な絶縁耐力及び特に有利な機械的特性を有し、十分に機械的に強いフィルムの製造が可能になる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、少なくとも5℃、優先的には少なくとも10℃、優先的には少なくとも20℃、極めて優先的には少なくとも30℃の温度範囲にわたり、15以上、優先的には20以上、より優先的には40以上、極めて優先的には55以上の比誘電率を有し、前記比誘電率は1kHzで測定される。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下の温度での誘電率の最大値を有し、前記具誘電率は1kHzで測定される。
【0051】
本発明によるポリマーは以下を含む方法によって得ることができる。
a) ポリマーの総モル数において以下を含む初期ポリマーの提供:
- 40mol%~90mol%の式-(CF2-CH2)- (III)の単位、
- 9.9mol%~59.9mol%の式-(CX1X2-CX3X4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0.1mol%~20mol%の式-(CY1Y2-CY3Z)- (V)の少なくとも1単位、
[式中、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びZは上記に定義された通りである。]
b) 前記初期ポリマーの脱ハロゲン化水素化(ただし、脱ハロゲン化水素は、本質的に、少なくとも部分的に-Z及び隣接水素の脱離からなる)。
【0052】
いくつかの実施形態によると、得られたポリマーは、少なくとも1つの測定温度において、初期ポリマーの断熱温度の変動に関して、少なくとも0.5℃大きく、優先的には少なくとも1℃大きく、さらにより優先的には少なくとも1.5℃大きい断熱温度の変動を有し、断熱温度の変動の測定は、86V/μmに等しい振幅を有する変動電界で行われる。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、前記初期ポリマーの誘電率の最大値に対して少なくとも5%大きく、優先的には少なくとも10%大きく、より優先的には少なくとも25%大きい比誘電率の最大値を有し、前記比誘電率は1kHzで測定される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、前記方法における脱ハロゲン化水素段階は、少なくとも0.1の反応進行で行われ、優先的には少なくとも0.2の反応進行で行われる。
【0055】
本発明はまた、本発明による1種以上のポリマー及び1種以上の液体ビヒクルを含む組成物に関する。
【0056】
本発明はまた、本発明によるポリマーを含むフィルムに関する。このフィルムは0.1マイクロメートル以上の厚さを有する。優先的には、それは1マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。より好ましくは、それは1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さ、特に1マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。フィルムの厚さが薄すぎると、後者は機械的に弱すぎる。フィルムの厚さが厚すぎると、所定の電界を得るために過度に高い電圧を印加しなければならない。
【0057】
本発明は、最後に、ポリマーの可能な使用、特にフィルムの形態のポリマーの使用に関する。
【0058】
本発明によるポリマーは、熱伝達システム、特に冷却システムに使用することができる。
【0059】
本発明によるポリマーはまた、エネルギー貯蔵システム、特に、キャパシタ、有機トランジスタ、アクチュエータ、又は静電クラッチに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
<本質的に非共役二重結合を含むフルオロポリマー>
本発明によるポリマーは以下を含むか、優先的には本質的に以下からなるか、より好ましくは以下からなる。
- 30mol%~90mol%の式-(CF2-CH2)- (III)の単位、
- 1mol%~59.9mol%の式-(CX1X2-CX3X4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0mol%~(20-N)mol%の式-(CY1Y2-CY3Z)- (V)の少なくとも1単位、
- Nmol%の-(CY3=CF)-、-(CY3=CX1)-、-(CY3=CX2)-、-(CY1=CY3)-、-(CY2=CY3)-及びその組み合わせからなるリストから選択されるエチレン単位(複数可)
[式中、
X1及びX2は、独立して、-H、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
X3及びX4は、独立して、-F又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、ただし、X1及びX2が両方とも-Hであること、及びX3及びX4が両方とも-Fであることを除き、
Y1及びY2は、独立して、-H、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Y3は、-F、-Cl又は部分的に又は完全にフッ素化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基を示し、
Zは、-F以外のハロゲン原子を示し、
Nは、0.1~10.0の範囲の数である。]
【0061】
フルオロポリマー中の単位のモル組成は、赤外分光法又はラマン分光法のような種々の手段によって決定することができる。X線蛍光分光法のような、元素炭素、フッ素及び塩素又は臭素又はヨウ素の元素分析の従来の方法により、ポリマーの重量による組成を明白に計算することが可能になり、ポリマーの重量からモル組成が推定される。また、適切な重水素化溶媒中のポリマーの溶液の分析により、多核NMR技術、特にプロトン(1H)及びフッ素(19F)NMR技術を使用してもよい。NMRスペクトルは多核プローブを装備したFT-NMR分光計で記録する。次に、それぞれの核に応じて生成されるスペクトルの中で、種々モノマーによって与えられる特異的なシグナルが位置づけられる。したがって、例えば、VDFの重合によって生じる単位は、プロトンNMRでは-CH2-基に特異的なシグナル(3ppmを中心とした広範囲の未分解のピーク)を与える。同様に、TrFEから生じる単位は、プロトンNMRにおいて-CFH-基に特徴的な特異的シグナル(およそ5ppm)を与える。フッ素NMRでは、CFE及びCTFEの-CF2-単位及び-CFCL-単位から生じるシグナルと、-90~-132ppmのVDF及びTrFEの-CF2-単位のシグナルとが混ざっている。TrFEの-CHF-単位は-194~-220ppmで特徴的なシグナルを与える。プロトンNMRスペクトル及びフッ素NMRスペクトルの組合せにより、ポリマーのモル組成を明白に推定することが可能になる。フルオロポリマー中の共役二重結合及び非共役二重結合の存在は、異なる分光法、特にラマン分光法によって評価することができる。1720cm-1の原子価振動帯は-CF=CH-結合に起因する単一種類のC=C二重結合の存在に対応する。共役二重結合は、1500~1700cm-1のより広くより低い波数である原子価振動帯によって観察される。二重結合の存在は、6.0~6.7ppmのシグナルが出現することから、プロトンNMRによって定量できる。
【0062】
本発明者らは、0.1%~N%の、炭素-炭素二重結合(これらの二重結合はポリマーの構造中で非共役である)を有する単位の存在により、高い比絶縁定数及び/又は大きな電気熱量効果を有するポリマーを得ることが可能になることを実証することができた。
【0063】
加えて、これらのポリマーは、少なくともいくつかの実施形態によれば、使用及び実施の通常の条件下で経時的に安定である。すなわち、通常の使用条件下では、特に、本特許出願において提供された用途において、それらは分解しない又はわずかにしか分解しない、黄変しない又はわずかにだけ黄変し、架橋しない又はわずかにしか架橋せず、それらの粘度は、溶液中又は溶融物中で、変化しないか、又はわずかにしか変化しない。
【0064】
前記ポリマーは、ポリマーの組成の単位の総モル数に対して、30mol%~90mol%の、ビニリデンジフルオライドから生じる単位を含む。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、30mol%~35mol%、35mol%~40mol%、40mol%~45mol%、45mol%~50mol%、50mol%~60mol%、60mol%~70mol%、70mol%~80mol%、80mol%~85mol%又は85mol%~90mol%、ビニリデンジフルオライドから生じる単位を含むことができる。
【0066】
前記ポリマーは、ポリマーの組成の単位の総モル数に対して1mol%~59.9mol%の式(IV)の単位を含む。いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、5mol%~10mol%、10mol%~15mol%、15mol%~20mol%、20mol~30mol%、40mol%~50mol%、50mol%~55mol%又は55mol%~59.9mol%の式(IV)の単位を含むことができる。
【0067】
前記ポリマーは、式(IV)の単一の単位を含み得るか、又は逆に式(IV)のいくつかの異なる単位を含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、式(IV)の単位(単数又は複数)は、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン及びペンタフルオロプロペン、特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンからなるリストから選択されたモノマー単位(複数可)から生じる。
【0069】
いくつかの代替形態によれば、いくつかの異なるフルオロモノマーから生じる式(IV)の単位がポリマー中に存在し得る。
【0070】
いくつかの実施形態によると、X1は-H又は-Fを示すことができ、X2、X3及びX4は、3つ全て-Fを示す。換言すれば、これらの実施形態によれば、本発明によるポリマーは、したがって、トリフルオロエチレン(TrFE)及び/又はテトラフルオロエチレン(TFE)から生じる単位を含むコポリマーであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、Zは、-Cl、-Br又は-Iを示すことができる。有利には、Zは-Clを示すことができる。
【0072】
前記ポリマーは、ポリマーの組成の単位の総モル数に対して0mol%~(20-N)mol%の式(V)の単位を含み、Nは0.1~10.0の範囲の数である。
【0073】
いくつかの実施形態によると、前記ポリマーは、少なくとも1mol%、優先的には少なくとも2mol%、より好ましくは少なくとも3mol%、極めて好ましくは少なくとも4mol%の式(V)の単位(複数)を含むことができる。式(III)及び式(IV)の単位に加えて、式(V)の単位が存在することにより、一般にリラクサ強誘電型のポリマーを得ることが可能となり、その利点を以下に詳述する。特に、前記ポリマーは4mol%~15mol%の式(V)の単位(複数可)を含むことができる。
【0074】
前記ポリマーは、式(V)の単一の単位、又は逆に式(V)のいくつかの異なる単位を含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、式(V)の単位(単数又は複数)は、1,1-クロロフルオロエチレン(1,1-CFE)、1,2-クロロフルオロエチレン(1,2-CFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン及び1,1,2-トリクロロ-2-フルオロエチレンからなるリストから選ばれるモノマー単位(複数可)から生じることができる。
【0076】
有利には、Y3は-Fを示すことができ、Y1及びY2は両方とも-H又はFを-示すことができる。換言すれば、これらの実施形態によれば、前記ポリマーは、1,1-CFE及び/又はCTFEから生じる単位を含むことができる。
【0077】
特に、いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーはフッ化ビニリデン(VDF)、TrFE及びCFEから生じる単位を含むか、VDF、TrFE及びCTFEから生じる単位を含むか、VDF、TrFE、CFE及びCTFEから生じる単位を含むか、VDF、TFE及びCFEから生じる単位を含むか、VDF、TFE及びCTFEから生じる単位を含むか、VDF、TFE、CFE及びCTFEから生じる単位を含み、該ポリマーは、全て本質的に非共役炭素-炭素二重結合をさらに含む。また、上記リストのポリマーは、例えば、HFPから生じる単位のような、1つ以上の追加のモノマーから生じる単位を含むことができる。
【0078】
前記ポリマーは、-(CY3=CF)-、-(CY3=CX1)-、-(CY3=CX2)-、-(CY1=CY3)-、-(CY2=CY3)-及びそれらの組み合わせからなるリストから選択されたNmol%のエチレン単位(複数可)を含む。「N」は、ポリマーの組成の単位の総モル数に対する前記エチレン単位のモルパーセントに対応する0.1~10の間の数である。Nは、特に、0.1~0.2の範囲、又は0.2~0.3の範囲、又は0.3~0.5の範囲、又は0.5~1.0の範囲、又は1.0~2.0の範囲、又は2.0~3.0の範囲、又は3.0~4.0の範囲、又は4.0~5.0の範囲、又は5.0~6.0の範囲、又は6.0~7.0の範囲、又は7.0~8.0の範囲、又は8.0~9.0の範囲、又は9.0~10.0の範囲の数であり得る。「N」という数は、ポリマーに対して想定される使用温度において、誘電率及び/又はΔTECが最大になるように、有利に選択することができる。
【0079】
前記ポリマーがフッ化ビニリデン(VDF)、TrFE及びCFEから生じる単位を含む実施形態では、特にポリマーが初期ポリマーとしてP(VDF-TrFE-CFE)から生じる場合、Nは、優先的には0.1~2、より優先的には0.1~1.5、極めて好ましくは0.1~1で選択される。Nの数は、特に0.1~0.5で選択することができる。
【0080】
前記ポリマーがVDF、TrFE及びCTFEから生じる単位を含む実施形態では、特にポリマーが初期ポリマーとしてP(VDF-TrFE-CTFE)から生じる場合、Nは優先的には0.1~10.0、優先的には1.0~8.0、より優先的に2.0~7.5、極めて好ましくは2.2~7.0で選択される。Nの数は、特に3.0~6.5で選択することができる。
【0081】
前記ポリマーは本質的に共役炭素-炭素二重結合を示さない。「共役炭素-炭素二重結合」という用語は、π-σ-π型の単結合(複数可)と二重結合とがあらゆる交互になることを意味すると理解される。
【0082】
したがって、前記ポリマーは、炭素-炭素二重結合の総数に対して、一般に、10%以下、又は9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下の共役炭素-炭素二重結合の割合を示す。有利には、前記ポリマーは、炭素-炭素二重結合の総数に対して、1%以下、又は0.1%以下の共役炭素-炭素二重結合の割合を示し、理想的には0に向かう傾向がある。
【0083】
前記ポリマーはランダムかつ線状であり得る。
【0084】
本発明によるポリマーは、変動電界の影響下で電気熱量効果を示す。
【0085】
有利には、前記ポリマーは、少なくとも1つの測定温度において少なくとも1℃の断熱温度の変動ΔTECを示し、断熱温度の変動の測定は、所定の振幅ΔEの電界で行われる。測定温度は、電気熱量効果を引き起こす電界の変動ΔEを受ける前に試料がさらされる温度に相当する。
【0086】
好ましくは、前記ポリマーは、所定の測定温度において、所定の変動場において、少なくとも1.5℃、又は少なくとも2℃、又は少なくとも2.5℃、又は少なくとも3℃、又は少なくとも3.5℃、又は少なくとも4.0℃、又は少なくとも4.5℃、又は少なくとも5℃、又は少なくとも6℃、又は少なくとも7℃、又は少なくとも8℃、又は少なくとも9℃、又は少なくとも10℃の断熱温度の変動ΔTECを示す。
【0087】
電気熱量効果を示すために用いる電界は、可変でなければならない。これは電気熱量効果を引き起こすのが電界の変動であるからである。
【0088】
一般に電界の振幅が大きいほど、電気熱量効果は大きくなる。しかし、電界の最大振幅は、ポリマーの破壊電圧に達しないように適切でなければならない。さらに、高電圧の生成には、必ずしも望ましくないエネルギー消費の大きい特定の電気器具が必要である。いくつかの実施形態によれば、以下に記載される使用のために顕著な電気熱量効果を示すために使用される電界は、500V/μm以下、又は400V/μm以下、又は300V/μm以下、又は200V/μm以下、又は150V/μm以下、又は140V/μm以下、又は130V/μm以下、又は120V/μm以下、又は110V/μm以下、又は100V/μm以下、又は90V/μm以下の最大振幅を有することができる。
【0089】
いくつかの実施形態によると、電界は、30V/μm以上、又は40V/μm以上、又は50V/μm以上の振幅を有することができる。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは、200V/μm以上、優先的には300V/μm以上、より優先的には400V/μm以上、極めて好ましくは500V/μm以上の絶縁耐力を有する。絶縁耐力は、規格ASTM D3755-97に従って測定することができる。
【0091】
最大値がΔEに等しく、最小値が0に等しい方形波型の電界を典型的には使用することができる。
【0092】
ΔTECを適切に測定するためには、電界の周波数は、熱がポリマーを通って拡散することを可能にするように十分低いものでなければならない。1mHz~100Hzの範囲の周波数、優先的には0.1Hz~10Hzの範囲の周波数を使用することができる。
【0093】
測定温度は、ポリマーのガラス転移温度~融点の間とすることができる。「ガラス転移温度」という用語は、10℃/分の加熱速度を用いる2回目の加熱において、規格ISO11357-2:2013に従った示差走査熱量測定(DSC)により測定された、少なくとも部分的に非晶質のポリマーがゴム状態からガラス状態に変化する温度、又はその逆を示すと理解される。「融点」という用語は、10℃/分の加熱速度を用いる2回目の加熱において、規格ISO11357-3:2018に従った示差走査熱量測定(DSC)により測定された、少なくとも部分的に結晶性ポリマーが粘性液体状態になる温度を示すと理解される。
【0094】
したがって、測定温度は特に-20℃~150℃、優先的には0℃~100℃、より優先的には15℃~60℃、極めて好ましくは20℃~40℃とすることができる。
【0095】
ポリマーは強誘電性であり得る。P(VDF-TrFE)型の「通常の強誘電性」ポリマーは、しばしば単に「強誘電体」と表記されるが、電気変位-印加電界曲線の広いヒステリシスループを特徴とする。これらの材料の場合、このループは、25℃で、典型的には45V/μmよりも絶対値が大きい高い保磁場、及び25℃で典型的には50mC/m2よりも大きい高い残留分極を特徴とする。これらの材料は、キュリー温度に近い温度で電気熱量特性の最大値を示す。この温度で、キュリー転移と呼ばれる強誘電性→常誘電性(FE→PE)結晶構造転移が起こり、巨視的強誘電性ドメインの急激な脱分極に対応する。この転移は一次の狭さで、誘電率の狭い極大を特徴とし、その位置は電界の印加周波数に依存しない。キュリー温度はポリマーの組成に応じて調整でき、フッ化ビニリデンの割合が高いほど、キュリー温度が高くなる。この温度は典型的には、55mol%~82mol%のP(VDF-TrFE)コポリマー中のフッ化ビニリデンのmol%に対して60~150℃で変化する。強誘電性ポリマーは有利な電気熱量特性を有するが、これらの特性は、多くの用途に適した冷蔵装置で使用することができないほど高すぎる温度に限定される。さらに、キュリー転移の狭さに伴う電気熱量性能ピークの狭さは、それらの用途を制限する。
【0096】
有利には、このポリマーはリラクサ強誘電性であることができる。「リラクサ強誘電性」ポリマーは広範囲の温度にわたってリラクサ強誘電性(RFE)→常誘電性(PE)結晶転移を特徴とする。この転移のレベルでは、誘電率の幅広いピークが観察され、この最大値の温度は印加電界の周波数に依存し、電界の周波数が低いほど、誘電率の最大値は低温側にシフトする。(RFE)→(PE)転移の温度又はわずかに高い温度では、電界の印加によりナノ極性領域を発生させ、整列させることが可能となり、エントロピーの変動を誘発し、その結果、広範囲の温度にわたって大きな電気熱量効果をもたらす。
【0097】
リラクサ強誘電性ポリマーは、25℃、周波数約1Hzにおいて、強誘電性ポリマーのヒステリシスループよりはるかに微細な、「印加電界」曲線に応じた「電気変位」のヒステリシスループを特徴とする。それらは典型的には、絶対値45V/μm以下の保磁場及び40mC/m2以下の残留分極を有する。いくつかの優先的実施形態によれば、本発明によるポリマーは、25V/μm以下の保磁場及び20mC/m2以下の残留分極を有することができる。リラクサ強誘電性ポリマーは一般に、強誘電性ポリマーの結晶構造に欠陥を導入することによって得られるので、極性ドメインのサイズが小さくなる。これは、例えば、従来の強誘電性ポリマーに照射することによって行うことができる。しかし、CFE又はCTFEのような特定のモノマーから生じる単位の存在により、リラクサ強誘電性を得ることが好ましい。
【0098】
従来の強誘電性ポリマーと比較することにより、誘電率の最大値及び/又はΔTECの最大値に対応する相転移が、より低い温度、特に0~100℃、場合によっては20~60℃で得られる。このように、リラクサ強誘電性ポリマーは、広い範囲の温度、特に周囲温度に近い温度において、有利な電気熱量特性を有する。したがって、それらは電気熱量装置の製造に特に有利である。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリマーは、200000g/mol以上、好ましくは300000g/mol以上、好ましくは400000g/mol以上の重量平均分子量を有することができる。これにより、本発明によるポリマーから生じるフィルムについて適切な機械的特性を付与することが可能となる。分子量分布は、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液とし、多孔度が大きくなっていく3つのカラムの組を用いて、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)により推定できる。固定相はスチレン-DVBゲルである。検出方法は屈折率の測定に基づいており、校正はポリスチレン標準で行われる。試料を0.5g/lのDMFに溶かし、0.45μmナイロンフィルターで濾過する。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、ポリマーは10J/g以上の融解エンタルピー、優先的には15J/g以上の融解エンタルピーを有し、融解エンタルピーは、10℃/分の温度勾配を用いる2回目の加熱において、規格ISO11357-2:2013に従って測定される。一般に、融解エンタルピーが高いほど、あるいは同様に結晶性の度合いが高いほど、ポリマー中の電気熱量効果は強くなる。
【0101】
誘電率は、所定の電界に対する所定の媒体の応答を説明する物理的特性である。それは所定の測定温度で1kHzで測定可能である。誘電率を測定する方法を、実施例に注目した部分で詳細に説明した。
【0102】
本発明によるポリマーは、少なくとも5℃、優先的には少なくとも10℃、優先的には少なくとも20℃、極めて優先的には少なくとも30℃の温度範囲にわたり、15以上、優先的には20以上、より優先的には40以上、極めて優先的には55以上の比誘電率を有することができる。
【0103】
いくつかの実施形態によると、ポリマーの誘電率の最大値は、60℃以下の測定温度、好ましくは50℃以下の温度、より好ましくは40℃以下の温度におけるものである。
【0104】
<製造方法>
本発明によるポリマーは、以下を含む方法によって得ることができる。
a) ポリマーの総モル数で以下を含む、優先的には以下から本質的になる、より優先的には以下からなる初期ポリマーの提供:
- 40mol%~90mol%の式-(CF2-CH2)- (III)の単位、
- 9.9mol%~59.9mol%の式-(CX1X2-CX3X4)- (IV)の少なくとも1単位、
- 0.1mol%~20mol%の式-(CY1Y2-CY3Z)- (V)の少なくとも1単位、
[式中、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びZは本発明によるポリマーに対して定義した通りである。]
b) 前記初期ポリマーの脱ハロゲン化水素化(ただし、脱ハロゲン化水素は、本質的に、少なくとも部分的に-Z及び隣接水素の脱離からなる)。
【0105】
得られたポリマーは本質的に非共役炭素-炭素二重結合を示す。より詳細には、前記ポリマーは、-(CY3=CF)-、-(CY3=CX1)-、-(CY3=CX2)-、-(CY1=CY3)-、-(CY2=CY3)-及びそれらの組み合わせ、並びに適宜、-(CF2)-(CH2)-単位の一部を形成しない単離された-(CF2)-単位及び/又は式(IV)の単位(複数可)の一部を形成しない単離された-(CX3X4)-単位及び/又は式(V)の単位(複数可)の一部を形成しない単離された-(CY1Y2)-単位からなるリストから選択されたNmol%のエチレン単位(複数可)を含む。
【0106】
このポリマーは、初期ポリマーの断熱温度の変動に対して、少なくとも1つの測定温度では、少なくとも0.5℃大きく、優先的には少なくとも1℃大きく、さらにより優先的には少なくとも1.5℃大きい断熱温度ΔTECの変動を有し、断熱温度の変動の測定は、86V/μmに等しい最大振幅を有する変動電界で行われる。
【0107】
初期ポリマーは、先行技術から知られた方法に従って得ることができる。初期ポリマーは、特に、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法又はマイクロエマルション重合法に従ってラジカル重合により調製することができる。
【0108】
共重合反応は一般にラジカル開始剤の存在下で行われる。後者は、例えば、tert-ブチルペルオキシピベレート(又はTBPPI)又はtert-アミルペルオキシピベレートなどのtert-アルキルペルオキシエステル、ビス(4-(tert-ブチル)シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム又は過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル及びその誘導体、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどのtert-アルキルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシドなどのtert-アルキルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンなどのtert-アルキルペルオキシアルカンであることができる。その代わりに又はそれに加えて、アゾ開始剤又は酸化還元系をラジカル開始剤として用いることができる。このポリマーはまた、P(VDF-CTFE)型のコポリマーを還元してP(VDF-TrFE-CTFE)型のコポリマーを得ることによって得ることができる(WANG,Zhiming、ZHANG,Zhicheng及びCHUNG,T.C. Mike.High dielectric VDF/TrFE/CTFE terpolymers prepared by hydrogenation of VDF/CTFE copolymers: synthesis and characterization. Macromolecules、2006、39巻、No.13、pp.4268~4271)。
【0109】
初期ポリマーは、その既知の電気熱量特性に応じて選択することができる。本発明によるポリマーの使用温度に近い温度で良好な電気熱量特性を有する初期ポリマーを有利に選択することができる。
【0110】
それに代えて又はそれに加えて、初期ポリマーを、その誘電率が最大になる温度に応じて選択することができる。本発明によるポリマーの使用温度に近い温度で誘電率の最大値を有する初期ポリマーが有利に選択される。
【0111】
初期ポリマーの脱ハロゲン化水素により、炭素-炭素二重結合を得ることが可能になる。形式的には、主に-Z原子及び-Z原子が脱離する炭素に隣接する炭素上の水素の脱離からなる。-Clが脱離するハロゲン原子の場合の脱塩酸とよばれる脱ハロゲン化水素は、ハロゲン-Zの脱離を促進し、-Fの脱離を防ぐために、特定の濃度で、特定の温度条件下、特定の時間、特定の塩基を混合することにより行われる。
【0112】
塩基は、-Fを脱離させることなく、-Zを脱離できるほど強い塩基でなければならない。塩基は、特に、8~12の範囲、好ましくは9~11の範囲のpKaを有することができる。塩基は、トリエチルアミンなどの非芳香族及び非求核性の第三級アミンであることが有利である。塩基、例えば、トリエチルアミンは、式(V)の単位のモル数に対して0.01~2モル当量に相当することができる。いくつかの実施形態によれば、塩基、例えば、トリエチルアミンの割合は、脱ハロゲン化水素段階の終了時に、ポリマー内に式(V)の単位を保持するように調整することが好ましい。塩基は、特に、式(V)の単位のモル数に対して、0.1~1モル当量、又は0.15~0.5モル当量に相当することができる。
【0113】
また、塩基の濃度、脱ハロゲン化水素の温度条件、したがって脱ハロゲン化水素の持続時間は、脱ハロゲン化水素反応の進行を調整するため、及び/又は共役炭素-炭素二重結合の形成を制限するために、当業者によって適応させることができる。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、脱ハロゲン化水素は少なくとも0.1の反応進行で行われ、優先的には少なくとも0.2の反応進行で行われる。
【0115】
いくつかの実施形態において、初期ポリマーと塩基とを反応させる段階後、過剰である塩基の除去の段階が続くことができる。
【0116】
いくつかの実施形態によれば、脱ハロゲン化水素は、炭素-炭素二重結合の総数に対して、10%以下、又は9%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下の炭素-炭素二重結合の割合を得るように行われる。有利には、脱ハロゲン化水素は、炭素-炭素二重結合の総数に対して、共役炭素-炭素二重結合の割合が1%以下、又は0.1%以下、又は0に向かう傾向があるように行われる。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、脱ハロゲン化水素段階は、特に、20~80℃、好ましくは30~60℃の範囲の温度で、1~10時間、好ましくは2~8時間の範囲の時間行うことができる。
【0118】
脱ハロゲン化水素から生じる生成物は、精製され、及び/又は、例えば、インクのような、該生成物を含む組成物中に配合され、又は、例えば、フィルムのような対象を形成するように成形され得る。
【0119】
<組成物>
本発明によるポリマーは、組成物内に配合することができる。前記組成物は、単一の本発明によるポリマー、あるいは本発明によるポリマーの混合物を含む。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、前記組成物は、本発明による少なくとも1種のポリマー、及び前記少なくとも1種のポリマーのための少なくとも1種の液体ビヒクルを含むことができる。一般的に「インク」と呼ばれるこの組成物は、本発明によるポリマー(複数可)を液体ビヒクル中に溶解又は懸濁することによって調製することができる。好ましくは、液体ビヒクルは溶媒である。有利には、この溶媒は、特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン、フラン、特にテトラヒドロフラン、エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、カーボネート、特にジメチルカーボネート、リン酸、特にリン酸トリエチル、又はそれらの混合物から選択することができる極性非プロトン性溶媒である。液体ビヒクル中のポリマーの重量による総濃度は、特に、0.1%~30%、好ましくは0.5%~20%であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態によると、前記組成物は、本発明のポリマー以外の有利な電気熱量効果を示すことができる1種以上のポリマーを含むことができる。例えば、前記組成物は、炭素-炭素二重結合を有さない1種以上の強誘電性ポリマー又はリラクサ強誘電性ポリマーを含み得る。前記組成物は、特に初期ポリマーを含み得る。
【0122】
いくつかの実施形態によると、組成物は、特に極性官能基又は反応性官能基を有し、所定の基材への組成物の接着性を改善することを可能にする、本発明のポリマー以外の1種以上のポリマーを含むことができる。
【0123】
前記組成物は、任意に、1種以上の添加剤、特に表面張力改質剤、レオロジー改質剤、熱容量改質剤、耐老化性改質剤、接着性改質剤、顔料又は染料、難燃剤又は架橋助剤添加剤から選択される1種以上の添加剤を含むことができる。
【0124】
前記組成物は、任意に、充填剤、特に、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)ナノワイヤなどのナノフィラーを含むことができる。
【0125】
<フィルム>
本発明によるポリマーは、少なくともいくつかの実施形態によれば、それをフィルムの形態に成形することができるように十分な機械的特性を有する。
【0126】
フィルムは、本発明によるポリマー又はそれを含む組成物を用いて、例えば、基材へのインクの塗布、又はホットメルト圧縮若しくは押出によって調製することができる。
【0127】
基材は任意の性質のものであり得、特に1種以上のガラス又は金属又は有機(特にポリマー)層からなる。
【0128】
必要に応じてフィルムを任意に延伸させることができる。延伸(実施する場合)は、少なくとも10%~700%の比で実施することが好ましい。フィルムは、特に、少なくとも150%、又は少なくとも200%、又は少なくとも250%、又は少なくとも300%、又は少なくとも350%、又は少なくとも400%の延伸比を有し得る。延伸比は、延伸前のフィルムの表面積に対する延伸後のフィルムの表面積の比に相当する。
【0129】
このフィルムはまた、任意に延伸させた後、アニールすることができ、すなわち、70℃~140℃の範囲、好ましくは100℃~120℃の範囲で数時間加熱した後、冷却する。
【0130】
延伸及びアニーリングの両方は、一般的に結晶性およびその絶縁耐力を高めることを可能にする。
【0131】
本発明は、0.1マイクロメートル以上の厚さのフィルムを得ることを可能にする。電気熱量効果を最適に利用するためには、その厚さは1マイクロメートル~100マイクロメートルであることが有利である。これらの厚さの中で、最小の厚さは、過度に高い電圧を発生させてはならないために好ましい場合がある。したがって、厚さ1~50μm、さらには1~10μmのフィルムが特に好ましい。
【0132】
電極は、特に、金属化によって、又は導電性材料(銀、銅、導電性ポリマー、銀ナノワイヤ、カーボンブラック、CNTなど)の堆積によって、フィルム上に堆積され得る。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるポリマーから調製されたフィルムは、多層フィルムの層であり得るが、他の層については、本発明によるポリマー、同一組成物又は異なる組成物、別のポリマー又は非ポリマー材料を含むことが可能である。
【0134】
<用途>
その電気熱量特性のために、本発明によるポリマーは熱伝達システムに使用することができる。熱伝達システムは、本発明によるポリマー、特にフィルムの形態の本発明によるポリマーを含む。フィルムは、冷却されるべき積み荷及び/又は加熱されるべき積み荷及び/又は熱伝達流体と熱的接触することが可能である。また、このシステムは、プレートに印加されることを意図した電圧源を備える。
【0135】
熱伝達システムは、熱を除去するか、又は電気部品又は電子部品などの別の装置に熱を供給することができる。
【0136】
その焦電特性のために、本発明によるポリマーは熱エネルギー回収システムに使用することができる。
【0137】
その高い誘電率のために、本発明によるポリマーはエネルギー貯蔵システム、特に、キャパシタ、有機トランジスタ又は静電クラッチにも使用することができる。
【0138】
その電気活性特性、特に強誘電特性又はリラクサ強誘電特性のために、本発明によるポリマーはアクチュエータ(触覚、マイクロ流体、ラウドスピーカーなどのため)にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】
図1は、温度の関数としてポリマーの電気熱量性能品質を測定するために使用される試験ベンチ1を表す。
【
図2】
図2は、高さΔEを有する方形波電界の印加中の試験ベンチ1内のプレート2の温度の典型的な変動を表す。ΔEは、印加電界の最大振幅に対応し、ボルト/メートル(V/m)で表される。断熱温度変動に匹敵する温度変動ピークΔTは、ケルビン(K)で表される。表されるx軸は、秒(s)で表される時間に対応する。
【
図3】
図3は、比較例1及び実施例1~5のBruker Advance DPX 400MHz電気器具を用いて測定した液体
1H NMRスペクトログラムを示す。x軸はppmで表される化学シフトδ
Hに対応する。
【
図4】
図4は、未変性(比較例1)及び変性(実施例1~5)のP(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマーの775~950cm
-1の間-CF
2-に対応する振動帯に関して標準化されたラマンスペクトログラムである。x軸はcm
-1で表される波数に対応し、y軸は相対強度に対応する。
【
図5】
図5は、未変性(比較例2)及び変性(比較例3及び実施例6~7)のP(VDF-TrFE-CFE)ターポリマーの775~950cm
-1の間-CF
2-に対応する振動帯に関して標準化されたラマンスペクトログラムである。x軸はcm
-1で表される波数に対応し、y軸は相対強度に対応する。
【
図6A】
図6Aは、比較例1(下側曲線)に従う未変性のP(VDF-TrFE-CTFE)及び実施例4(上側曲線)に従う変性のP(VDF-TrFE-CTFE)について、印加電界の最大振幅(MV/mで表される)の関数として、25℃の測定温度における、
図1のもののような試験ベンチ上で測定された断熱温度の変動ΔT
ECを表す。
【
図6B】
図6Bは、比較例1(下側曲線)に従う未変性のP(VDF-TrFE-CTFE)及び実施例4(上側曲線)に従う変性のP(VDF-TrFE-CTFE)について、10℃/分の測定温度勾配(℃で表される)及び最大振幅ΔE=86MV.m
-1の電界下で、
図1のもののような試験ベンチ上で測定された断熱温度の変動ΔT
EC(Kで表される)を表す。
【
図7A】
図7Aは、比較例3(下側曲線)に従う未変性のP(VDF-TrFE-CFE)及び実施例8(上側曲線)に従う変性のP(VDF-TrFE-CFE)について、印加電界の最大振幅(MV/mで表される)の関数として、25℃の測定温度における、
図1のもののような試験ベンチ上で測定された断熱温度の変動ΔT
ECを表す。
【
図7C】
図7Cは、比較例2(下側曲線)に従う未変性のP(VDF-TrFE-CFE)及び実施例8(上側曲線)に従う変性のP(VDF-TrFE-CFE)について、10℃/分の測定温度勾配(℃で表される)及び最大振幅それぞれΔE=60MV.m
-1及びΔE=75MV.m
-1の電界下で、
図1のもののような試験ベンチ上で測定された断熱温度の変動ΔT
EC(Kで表される)を表す。
【
図8】
図8は、実施例1~5及び比較例1によるポリマーの110℃で1時間アニールしたフィルムの測定温度の関数としての比誘電率を表す。x軸は℃で表される温度に、y軸は比誘電率に対応する。
【
図9】
図9は、実施例1~5及び比較例1によるポリマーの110℃で1時間アニールしたフィルムの25℃における電界の関数としての分極を表す。x軸はMV/mで表される電界に、y軸はμC/cm
2で表される分極に対応する。
【
図10】
図10は、実施例7並びに比較例2及び3によるポリマーの110℃で1時間アニールしたフィルムの温度の関数としての比誘電率を表す。x軸は℃で表される温度に、y軸は比誘電率に対応する。
【
図11】
図11は、実施例8による及び比較例2によるポリマーの110℃で1時間アニールしたフィルムの25℃における電界の関数としての分極を表す。x軸はMV/mで表される電界に、y軸はμC/cm
2で表される分極に対応する。
【
図12】
図12は、110℃で1時間、5時間及び3日間保存した後の実施例3によるポリマーの重ね合わせた赤外スペクトログラムを示す。x軸はcm
-1で表される波数に、y軸は標準化された吸光度に対応する。
【実施例】
【0140】
<ポリマーの特性決定>
<ポリマーフィルムの電気活性性能品質及び電気熱量性能品質の測定>
図1を参照して、ポリマーフィルム21を、それが可溶性である溶媒中の100mg/ml溶液から出発してブレードコーティングすることによって調製する。以下の実施例で試験したポリマーについて、使用した溶媒はシクロペンタノンであった。
【0141】
この溶液は、24時間磁気撹拌ながら周囲温度(25℃)で調製する。14μmのフィルム21を基材22上に堆積させる。基材22はPETで作られており、厚さは50μmで、予め金属化させた(Crを10nm、Agを100nm)。90℃で2時間乾燥させた後、上部電極23を蒸発させる。その後、真空下、105℃で12時間のアニーリングを行う。特性決定されるべきポリマーのフィルムを含むプレート2を得る。
【0142】
「Solartron 1296誘電体インターフェース」インターフェースを備え、温度の制御のためにLinkam Scientificが販売する「TP94 Linkam」チャンバーを備えた、Solartron Analyticalが販売する「Solartron SI 1260」装置で低電界誘電体データを得る。測定は異なる温度で1kHzで行う。
【0143】
Treckが販売する「Treck 20/20C-HS」高電圧増幅器を備えたaixACCT Systemsが販売する「aixACCT TF Analyzer 2000」装置で、分極曲線(電界(E)の関数としての電気変位(D))を生成する。
【0144】
図1に示す試験ベンチ1からの温度及び印加電界の関数として電気熱量性能品質を測定する。試験ベンチをそれ自体が加熱手段5上に置かれたヒートシンク4上にそれ自体が置かれた熱電対3上に置かれたプレート2を含む。熱電対3は、プレート2の表面の温度及びプレート2の温度の変動を測定する。熱電対3の下のヒートシンク4は、加熱手段5、熱電対3及びフィルム21の間の可能な限り最良の熱的接触を保証する。加熱手段5は、システムをサーモスタットを使用して測定温度に制御することを可能にする。10℃/分の温度勾配を適用することができる。
【0145】
最小値が0に等しく、最大値が+ΔEであり、約90秒に等しい周期を有する方形波電界を印加し、これが温度の極めて急激な変動を引き起こし、この変動のピークΔTは、測定することができ、本発明において断熱温度の変動によって示されるものに対応する。
【0146】
<P(VDF-TrFE-CTFE)ポリマーの化学変性による本質的に非共役なC-C二重結合の形成>
重量平均モル質量が400000~600000g/molの間であり、モル組成が62/30/8のP(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマー5gを、250mlの丸底フラスコ中のジメチルスルホキシド(DMSO)100mlに溶解した。溶解後、磁気撹拌しながらトリエチルアミン(TEA)を加える。反応後、ポリマーを水からの沈殿によって精製し、真空下で乾燥させ、アセトンに溶解し、重量で60/40のエタノール/水混合物から沈殿させる。生成物を40℃で12時間真空乾燥させる。
【0147】
様々な例について、反応パラメータ(TEAの量、持続時間及び温度)を表1に示す。ターポリマー中の-Cl原子数に対してTEAの当量数を計算する。モルパーセントで表した二重結合DBの含有率を、以下の関係に従ってシグナルを統合することにより、液体
1H NMRスペクトル(
図3参照)から評価した。
【0148】
【0149】
【0150】
試料のラマンスペクトル(
図4参照)では、結合(-CF=CH-、非共役)に起因する単一型のC=C二重結合の出現に対応する1720cm
-1での単一シグナルの出現を観察する。
【0151】
<P(VDF-TrFE-CFE)ポリマーの化学変性によるC-C二重結合の形成>
推定重量平均モル質量が400000~600000g/molの間であり、モル組成が66/27/7のP(VDF-TrFE-CFE)ターポリマー5gを、250mlの丸底フラスコ中のDMSO100ml中に溶解する。溶解後、磁気撹拌しながらトリエチルアミン(TEA)を加える。反応後、ポリマーを水中での沈殿により精製し、真空下で乾燥させ、アセトン中に溶解し、60/40エタノール/水質量混合物中で沈殿させる。生成物を40℃で12時間真空乾燥させる。
【0152】
異なる反応パラメータ(TEAの量、持続時間及び温度)を表2に示す。ターポリマー中の-Cl原子数に対してTEAの当量数を計算する。二重結合数は液体1H NMRスペクトルから既に説明されているように計算する。
【0153】
【0154】
試料のラマンスペクトル(
図5参照)上で、1750~1500cm
-1の間の複数のシグナルの出現を観察する。1552cm
-1での振動帯は、最も高い変性度(比較例3)のポリマーに対して非常に極度に増加し、共役二重結合の存在を示した。最も変性された生成物(最初は白色又はわずかに黄色)の褐色の着色によって、共役二重結合の存在を確認する。
【0155】
<試料の電気熱量特性>
図6を参照すると、二重結合を含まない類似の構造のポリマー(比較例1)と比較して、本発明による非共役二重結合を含むポリマー(実施例4)の電気熱量特性、特に所定の測定温度及び所定の最大振幅の電界下での断熱温度の変動値の著しい改善に注目する。約35℃の温度で約2.6KのΔT
EC(MAX)の最大値を決定した。ΔT
ECは、約28℃~50℃の摂氏数十度の間隔にわたって少なくとも0.85*ΔT
EC(MAX)に等しい。
【0156】
図7A、7B及び7Cを参照すると、本発明による非共役二重結合を含むポリマー(実施例7)の電気熱量特性、特に所定の測定温度及び所定の最大振幅の電界下での断熱温度の変動値は、共役二重結合を含む類似の構造のポリマー(比較例1)の断熱温度の変動値よりも良好であることに注目する。特に、
図7B及び7Cを参照すると、ΔT
EC値は、測定温度の間隔にわたってほとんど変化せず、すなわち、25℃~50℃の範囲の測定温度に対して、20%未満の変動を観察する。
【0157】
<誘電特性>
図8及び
図10を参照すると、本発明による非共役二重結合を有するポリマーは、二重結合を含まない(比較例1、比較例2)又は共役二重結合を含む(比較例3)類似の構造のポリマーの絶縁定数よりも高い絶縁定数(実施例1~5、6~7)を有することに注目する。
【0158】
また、実施例1~3及び5によるポリマーと比較して、実施例4によるポリマーに対して相対的な誘電率の最大値を観察する。
【0159】
<分極>
図9及び11を参照すると、本発明による非共役二重結合を有するポリマー(実施例1~4、6~7)はリラクサ強誘電性ポリマーである。
【0160】
さらに、二重結合の割合の増加が、残留分極及び保磁場の増加につながることに注目する。
【0161】
<融解>
融点及び融解エンタルピーは、10℃/分の加熱勾配で、2回目の加熱において、規格ISO11357-3:2018に従い測定した。
【0162】
【0163】
<熱安定性>
図12を参照すると、炭素-炭素二重結合に相当する、実施例3に従ったポリマーに対する1700cm
-1での原子価振動帯は、110℃での3日間の保存後も依然として存在し、ポリマーの良好な熱安定性を示す。
【国際調査報告】