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特表2023-506795回転タイヤが走行した距離を取得する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】回転タイヤが走行した距離を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20230213BHJP
   B60C 23/06 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C23/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535871
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 FR2020052368
(87)【国際公開番号】W WO2021116610
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1914223
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】アルフ デニス
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA02
3D131LA21
(57)【要約】
タイヤが走行した距離を取得する方法であって、本方法は、
受ける加速度に比例した信号を生成することのできるセンサを半径方向位置RCでクラウンに直角に固定するステップと;荷重Zが掛かった状態でタイヤを回転速度Wで回転させるステップと;時間間隔Tの後に、クラウンに垂直な方向の加速度の振幅を含む第1信号Sigiを取得するステップであって、閾値N未満の値が第1信号の長さの40%未満に対応する、ステップと;第1信号Sigiの平均値の平方根である基準量Vi referenceを特定するステップと;時間Tの間に走行した距離Dを、[数式1]D=A*T*Vi reference、で決定するステップであって、ここでAはタイヤの回転半径の平方根に比例する、ステップと;
を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装された組立体を形成するためにホイールに取り付けられた状態のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法であって、前記タイヤケーシングは、自然回転軸の周りを回転する、地面と接触できるトレッドを備えたクラウン、2つサイドウォール、及びビードと、子午面とを有し、前記子午面と前記自然回転軸の交点がホイール中心を規定するようになっており、
-前記タイヤケーシングに対して前記クラウンと垂直に少なくとも1つのセンサを固定するステップであって、前記センサは、ホイールに取り付けられた状態で前記自然回転軸に対して半径方向位置RCを有し、前記タイヤケーシング内で前記センサが受ける加速度に比例した少なくとも1つの出力信号を生成することができる、ステップと、
-前記実装された組立体を、回転速度Wで回転できかつ荷重Zが掛けられる条件下に置くステップと、
-時間間隔Tの後に、前記クラウンに垂直な方向の加速度の振幅を少なくとも含む第1信号Sigiを取得するステップであって、前記第1信号Sigiの値は、前記第1信号Sigiの長さの40%未満に対応する閾値N未満である、ステップと、
-前記第1信号Sigiの平均値の平方根として定義される第1基準量Vi referenceを特定するステップと、
-前記時間間隔Tの間に走行した距離Dを、
[数式1]
を用いて決定するステップであって、ここで、Aは前記タイヤケーシングに依存し、荷重が掛けられた状態下で前記ホイール中心と地面との間の最小距離に対応する回転半径の平方根に少なくとも比例する、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記時間間隔Tは、各測定間で同じままであり、時刻tで第1信号Sigiを得ることができない場合、前記基準量Vi referenceは、設定値Vsetをとり、前記タイヤケーシングが走行した総距離Dfは、
[数式3]
を用いて決定される、請求項1に記載の、タイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項3】
前記関数Aは定数であり、前記総走行距離Dfは、
[数式4]
を用いて決定される、請求項2に記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項4】
前記第1信号Sigiは、ホイール回転の回数NTdRに亘って区分化され、NTdRは1以上であり、NTdRは好ましくは整数であり、ホイール回転信号SigTdR iを構築するために、前記基準量Vi referenceは、1回転に亘る前記ホイール回転信号SigTdR iの平均値の平方根である、請求項1から3のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項5】
閾値Bを超える少なくとも第1信号Sigiの横座標値uに対応する、第1の連続した増分Iを特定した後で、前記第1信号Sigiは、
[数式5]
で定義される整数回NTdRのホイール回転に亘って、第1増分Iminと第2増分Imaxの間で区分化され、maxはmin+2kに等しく、kは厳密に正の自然整数の整数である、請求項4に記載の、タイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項6】
前記第1の連続した増分Iは、
-前記第1信号Sigiの少なくとも1つの部分の少なくとも1つの最大値の0.1から0.5の間で構成される値である閾値Bを規定するステップと、
-前記第1信号Sigiの前記少なくとも1つの部分及び前記閾値Bに依存する横座標値uの第2信号を決定するステップと、
-前記第2信号が閾値Eを超える前記第1信号Sigiの前記少なくとも1つの部分の前記横座標値uに対応する前記第1の連続した増分Iを特定するステップであって、前記第2信号が好ましくは前記第1信号Sigiと前記閾値Bの差であり、前記閾値Eが値ゼロである、又は、前記第2信号が前記第1信号Sigiと前記閾値Bとの比率であり、前記閾値Eは単一性である、ステップと、
の組み合わせを用いて特定される、請求項5に記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項7】
前記増分の前記特定は、
-連続する同一パリティの増分Iの前記横座標値uの間の中間横座標値uに対応する第2の連続した増分Jを作成するステップと、
第1増分Jminと第2増分Jmaxとの間に前記ホイール回転信号SigTdR iを構築するステップであって、minとmaxが同じパリティであるステップと、
を含む、請求項5又は6に記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項8】
前記タイヤケーシングの前記回転速度Wは、
[数式6]
で定義される閾値Wthresholdよりも大きい場合に、前記第1信号Sigiが取得され、ここでDevは、1回転でタイヤケーシングが走行する距離である、請求項1から7のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項9】
前記基準量Vreferenceに関する2つの評価の間の前記時間間隔Tは、10分以下であり、好ましくは5分以下であり、非常に好ましくは2分未満である、請求項1から8のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項10】
前記タイヤケーシングは、回転半径RPを規定し、関数Aは、
[数式7]
の比率Bに比例する、請求項1から9のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項11】
前記回転半径RPは、前記タイヤケーシングが支える前記荷重Zに依存する、請求項1から10のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項12】
前記タイヤケーシングは、膨張圧Pまで膨張され、前記回転半径RP及び前記半径方向位置RCは、前記タイヤケーシングの前記膨張圧Pに依存する、請求項1から11のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項13】
前記回転半径RPは、前記タイヤケーシングが走行した前記総距離に依存する、請求項1から12のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項14】
前記第1信号Sigiは、一定のサンプリング周波数で取得される、請求項1から13のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【請求項15】
前記第1信号Sigiのサンプリングの前記空間離散化は、10度未満、好ましくは6度未満、非常に好ましくは3度未満である、請求項1から14のいずれかに記載のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装された組立体のその使用条件下でタイヤケーシングが走行した距離を取得するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤケーシングが走行した総距離を知ることは、例えば、その摩耗及び経時変化の両方の観点から、タイヤケーシングの状態を評価するために重要である。これは、タイヤケーシングの状態を反映する容易に入手可能な量である。従って,この量を知ることにより、タイヤケーシングを装着した車両の可動性を維持するためのタイヤケーシングの点検又はタイヤケーシングの交換さえも行うために、タイヤケーシングの保守作業を計画することが可能となる。もちろん、タイヤケーシングを設計及び製造したタイヤメーカにとってタイヤケーシングの状態を評価するのに最も適しているので、この量を知ることはより価値がある。最後に、この総走行距離は、タイヤケーシングの耐用期間中、定期的に走行した距離の合計である。また、この定期的に走行した距離を入手することは、タイヤケーシングの状態、特にタイヤケーシングの寿命の予測に関して良好な指標を提供する。
【0003】
従来技術では、走行距離を評価するための装置の2つの主たる系統があり、それらは、実装された組立体の構成の結果である。例として、米国特許第9566834(B2)号には、実装された組立体のホイールに取り付けられるTPMS装置が開示されており、それにより、実装された組立体が走行した走行距離を、加速度計で測定された遠心力の正しい評価を通して決定することができる。この場合、非変形性の固体である実装された組立体のホイールに加速度計を取り付けることが必要である。さらに、加速度計からの信号を実装された組立体の温度に対して補正する必要があり、この温度はTPMS装置で測定される。
【0004】
この装置の欠点は、さらに加速度を測定し、ホイールに、例えばバルブリムに取り付けられるTPMS(タイヤ圧監視システムの頭字語)を設ける必要があることである。
過酷な使用条件下では、ブレーキディスクから発生する熱に起因して、ブレーキディスクとホイールとの間の熱交換に起因する温度補正が必要とされる。最後に、この装置は、このためにだけ加速度計の使用を必要とし、これは、静止時に装置出力を節約するために、加速度計を用いて実装された組立体が回転しているか又は静止しているかを検出できるとしても、高価である。
【0005】
第2の系統の装置の中では、米国特許第9050865(B2)号を挙げることができ、これは、タイヤケーシングが走行した距離を評価する目的で、TMS(タイヤ監視システムの頭字語)に含まれる加速度計をタイヤケーシングのトレッド上に配置することを提案する。その場合、操作は、所定の時間間隔に亘ってホイール回転の回数を評価して、走行距離及び平均回転速度を評価できるようにすることにある。この測定は、所定の時間間隔後に繰り返す必要がある。タイヤケーシングの回転速度は、2つの測定フェーズの間に、例えば2つの測定フェーズ間の補間によって推定される。ホイール回転の回数を検出するために、少なくとも1つの衝撃感知型加速度計を使用して、タイヤケーシングのトレッドが地面と接触する領域に対応する接地面に進入する又はそこから離脱する時に現れる大きな加速度変化を記録することが推奨される。従って、半径方向の加速度の絶対値は決して必要ではない。しかしながら、接地面長さの検出に関する角度精度により、実装された組立体が支えることになる荷重の推定値を得ることができる。
【0006】
このような装置の欠点は、接地面への進入又はそこからの離脱の検出に関して必要とされる角度精度にある。さらに、システムの消費電力も大きい。様々な時間間隔、測定フェーズの時間間隔、及び測定フェーズ間の時間間隔を評価し、実装された組立体の回転数を計算する必要があり、この回転数は、各測定フェーズの回転速度と、測定が行われない持続時間とに基づいて計算される。この結果は正確であり、真の加速度を測定するための加速度測定センサは一切必要とされないが、このシステムは、長寿命の測定装置の電源にはあまり適していない。さらに、電源、一般にバッテリは、タイヤケーシングの回転軸に対して半径方向外部に位置するので、遠心力を減少させるために一般に小さく、従って低容量であり、すなわち、この装置は、実際の、特に長寿命タイヤケーシングでの使用にはあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9566834(B2)号明細書
【特許文献2】米国特許第9050865(B2)号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤケーシングにクラウンと垂直に取り付けられた電子デバイスを備えるタイヤケーシングが走行した距離を取得するための方法に関し、この方法は、エネルギ効率が良くてリアルタイムで実行され、走行距離を電子デバイスで直接取得することができる。
【0009】
本発明は、実装された組立体を形成するためにホイールに取り付けられた状態のタイヤケーシングが走行した距離を取得する方法であって、タイヤケーシングは、自然回転軸の周りを回転する、地面と接触できるトレッドを備えたクラウン、2つサイドウォール及びビード、並びに子午面を有し、子午面と自然回転軸の交点がホイール中心を規定し、本方法は、
-タイヤケーシングに対してクラウンと垂直に少なくとも1つのセンサを固定するステップであって、センサは、ホイールに取り付けられた状態で自然回転軸に対して半径方向位置RCを有し、タイヤケーシング内でセンサが受ける加速度に比例した少なくとも1つの出力信号を生成することができる、ステップと、
-実装された組立体を、回転速度Wで回転させることができ、荷重Zが掛けられる条件下に置くステップと、
-時間間隔Tの後に、クラウンに垂直な方向の加速度の振幅を少なくとも含む第1信号Sigiを取得するステップであって、第1信号Sigiの値が、第1信号Sigiの長さの40%未満に対応する閾値N未満である、ステップと、
-第1信号Sigiの平均値の平方根として定義される第1基準量Vi referenceを特定するステップと、
-時間間隔Tの間に走行した距離Dを、
[数式1]
用いて決定するステップであって、ここで、Aはタイヤケーシングに依存し、荷重が掛けられた膨張状態下におけるホイール中心と地面との間の最小距離に対応する回転半径の平方根に少なくとも比例する、ステップと、
-随意的に、時刻t0から時刻t+Tまでに走行した総距離Dfを、
[数式2]
を用いて決定するステップであって、ここで、D0は、時刻t0から時刻tまでにタイヤケーシングが走行した総距離である、ステップと、
を含む。
【0010】
この方法はまず、センサをクラウンブロックと垂直に配置することを可能にし、これにより、センサを他の目的に、例えば実装された組立体が支える荷重の推定などに使用することができる。加えて、ブレーキディスクなどの車両の加熱要素からセンサが離れていることで、実装された組立体の温度に影響されない垂直加速度の測定が保証される。従って、垂直加速度の値を温度補正する必要がない。加えて、実行される数学演算は、比較、合計、平均値、及び時間間隔による乗算の計算に限定されるため、エネルギ効率が良い。従って、タイヤケーシングに統合された電子デバイス内でその演算を実行することが完全に想定されるが、通信手段、例えば無線周波数通信手段を用いて、これらの演算の一部を車両又はサーバに転送することも可能である。この場合、無線周波数通信の周期性は、2つの測定フェーズ間の周期性よりも高いことが好ましく、とりわけ、通信が多くの電力を消費する場合に好ましい。最後に、第1信号Sigiの値が少なくとも比例的に閾値Nより上に位置付けられることを保証することで、時間間隔内の走行距離Dの推定が現実的、又は良質であることが保証される。加えて、時間間隔中の走行距離の推定値が有意であることも保証される。具体的には、閾値Nにより、測定システム関連又は地面関連の信号外乱を許容することが可能となる。加えて、第1信号の値の大部分が負であるか又はゼロ値に近い場合、それは、信号の不一致、又は小さい遠心加速度、又は接地面に対応するタイヤケーシングの方位角での測定の兆候である。これら全ての場合、走行距離は現実を表していないので、評価しないことが推奨される。閾値Nにより、第1信号Sigiのこれら特定値を検出することができる。
【0011】
タイヤケーシング上にクラウンに隣接してセンサを位置決めすることにより、ホイール上にセンサを位置決めする従来技術の米国特許第9566834(B2)号とは逆に、特に、センサが接地面に進入する又はそこから離脱する時にセンサが記録する衝撃に起因して、又は実装された組立体がその上方を通過する地面の粗度に起因して、多くのノイズが加速度測定信号に付加される。例えば、センサが接地面を通過することは、遠心加速度を全く表さないゼロに近い垂直加速度値の測定につながる。
【0012】
このような影響は、走行状態下でタイヤケーシングに対して変形しない物体であるホイールにセンサが組み込まれる場合に、大きく軽減される。従って、信号の記録時におけるセンサの角度位置に関わらず、信号/ノ雑音比を改善することにより、遠心加速度の良好な近似値が得られる。これは、従来技術において垂直加速度の単一測定が行われることの正当性を示している。
【0013】
この問題を解決するために、第1信号において閾値N未満の値が過半数を占めない限り、センサの垂直加速度の平均を計算して、遠心加速度の現実的な値を得るようにすることが必要である。例えば、この閾値Nはゼロ値である。
【0014】
最後に、走行距離D及びDfの推定には、2つの変数を知ることが必要とされる。第1は、2つの連続する測定値の間に経過した時間間隔Tである。第2は、関数Aであり、回転半径Rpの平方根に比例する。ここで、回転半径Rpとは、走行状態において、ホイール中心と装着されて荷重が掛けられたタイヤケーシングの外周点との最小距離のことである。荷重Zが掛けられた結果としてタイヤケーシングが地面に対して押し付けられるため、この距離は一般に、地面へのホイール中心の正射影である。一般にタイヤケーシングの車両への初使用に対応する時点から、タイヤケーシングが走行した総距離Dfに関して、これは、時間間隔Tに先行する各時間間隔T’中に走行した距離を加えて距離D0を取得し、これに時間間隔T中に走行した距離Dを加算すれば十分である。もちろん、これらの時間間隔T’は、必ずしも時間間隔Tと同一又は等しいとは限らない。同様に、タイヤケーシングの関数Aは、実装された組立体の外部要因又は内部要因の結果として、1つの時間間隔から次の時間間隔に変化する可能性がある。
【0015】
好ましくは、時間間隔Tが各測定の間で同じままであり、時刻tで第1信号Sigiを得ることができない場合、基準量Vi referenceは、設定値Vsetをとることが好ましく、タイヤケーシングが走行した総距離Dfは、
[数式3]
式を用いて決定される。
【0016】
このように、総和から時間間隔Tをくくり出すことができる。従って、これは実行すべき計算回数を減少させ、電力及び時間の観点でより経済的であり、タイヤに統合された電子デバイスにおける計算時間の点で、本方法を効率的なものにする。
【0017】
加えて、実装された組立体に対する特定の機械的、熱的又は電磁的応力の結果として、加速度測定信号の記録が、非常にノイズが多い場合、総走行距離を歪めないように、単独の測定値の代わりに、基準量に対する設定値を用いることができる。この設定値は、例えば、基準量の前の値Vi-1 reference、又はその一部分、又はゼロ値をとることさえできる。
【0018】
好ましくは、関数Aは定数であり、総走行距離は、
[数式4]
を用いて決定される。
【0019】
従って、総和から関数Aをくくり出すことができる。従って、これは実行すべき計算回数を減少させ、電力及び時間の観点でより経済的であり、タイヤに統合された電子デバイスにおいて本方法を効率的なものにする。このために、回転半径RPがタイヤケーシングの耐用期間に亘って変化しないような近似を行う必要がある。その場合、回転半径RPは、タイヤケーシングの刻印に含まれる情報に基づいて、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機構(European Tyre and Rim Technical Organisation)の頭字語)の計算規則を適用することにより、一度だけ計算される。例えば,タイヤケーシングに印加される荷重Zは、タイヤケーシングのサイドウォールに刻印された荷重指数とETRTOの計算規則とによって指定される荷重である。加えて、膨張圧Pがもしあれば、それは、サイドウォール上に、随的にETRTOの計算規則により表示された推奨膨張圧である。
【0020】
特定の実施形態によれば、第1信号Sigiは、ホイール回転の回数NTdRに亘って区分化され、NTdRは1以上であり、NTdRは好ましくは整数であり、ホイール回転信号SigTdR iを構築するために、基準量Vi referenceは、1回転に亘るホイール回転信号SigTdR iの平均値の平方根である。
【0021】
ここで、第1信号Sigiは、実装された組立体の少なくとも1つの完全な回転に対応するので、低レベルの値は、必然的に第1信号Sigiの長さの40%未満に相当することが保証される。さらに、ホイールの1回転に亘るクラウンに垂直な加速度の平均値は、実装された組立体の回転に固有の量であり、これにより、例えば1日単位の評価に関して、特に短い距離で、走行距離の推定の品質を大幅に向上させることができる。第1信号Sigiが複数のホイール回転に亘って区分化される場合には、ホイール回転の繰り返しにより、第1信号Sigiの記録に関する空間離散化の重みを減少させることで、求める固有量を平滑化することができる。従って、予測の品質を向上させるために、第1信号Sigiは、複数のホイール回転に相当することが好ましい。加えて、信号が整数回のホイール回転に相当しない場合であっても、その残余は、求める固有量に大きな影響を与えない。このようにして、実装された組立体が走行する距離について非常に高品質の近似が得られる。もちろん、残余がない場合、離散化誤差は別として、これは整数回のホイール回転に亘って第1信号Sigiを区分化することになり、求める固有量がより高い精度で得られ、走行距離の最良の推定につながる。
【0022】
特定の1つの実施形態によれば、閾値Bを超える少なくとも第1信号Sigiの横座標値uに対応する第1の連続した増分Iを特定した後で、第1信号Sigiは、
[数式5]
で定義される整数回NTdRのホイール回転に亘って、第1増分Iminと第2増分Imaxの間で区分化され、maxはmin+2kに等しく、kは厳密に正の自然整数の整数である。
【0023】
これは、値に対する複雑な演算を最小限にする、整数回のホイール回転に亘る第1信号Sigiの区分化に関する簡単なやり方である。それは、計算時間及びメモリ空間の点で効率が良く、これにより、高い電力消費を回避しながら、タイヤケーシングに統合された電子デバイスでの実装が可能となり、従って電子デバイスの電源サイズを制限することができる。ここで、閾値Bを上から超えるか又は下から超えるかを判定することは求められず、横切ったことだけが記録される。従って、整数回のホイール回転に亘って第1信号Sigiを区分化するためには、偶数又は奇数の増分だけを使用する必要がある。閾値Bを超える方向を評価する場合、偶数又は奇数の増分Iのいずれかに対応する横座標値uだけを直接特定することになる。これは想定内であるが、計算コストが高くなる。
【0024】
特定の1つの実施形態によれば、第1の連続した増分Iは、
-第1信号Sigiの少なくとも1つの部分の少なくとも1つの最大値の0.1から0.5の間で構成される値である閾値Bを規定するステップと、
-第1信号Sigiの少なくとも1つの部分及び閾値Bに依存する横座標値uの第2信号を決定するステップと、
-第2信号が閾値Eを超える第1信号Sigiの少なくとも1つの部分の横座標値uに対応する第1の連続した増分Iを特定するステップであって、第2信号が好ましくは第1信号Sigiと閾値Bの差であり、閾値Eが値ゼロである、又は、第2信号が第1信号Sigiと閾値Bとの比率であり、閾値Eは値1である、ステップと、
の組み合わせ用いて特定される。
【0025】
この方法は、実行される数学演算が簡単であるため、タイヤケーシングに統合された電子デバイスに容易に実装することができる。閾値の決定には、第1信号Sigiの一部分の最大値を保持することが必要とされる。具体的には、このような荷重が掛けられた回転するタイヤケーシングのクラウンに垂直な加速度の特定形態は、タイヤケーシングの接地面の通過に対応する第1信号Sigiの部分を取り除くことができる閾値Bが生成されることを保証する。しかしながら、この領域を他に対して区分化して増分Iを位置決めするだけで十分である。その後、第2の関数を第1信号と閾値との差又は比率として選択することによって、電子デバイスにおけるデータ処理時間を制限し、簡単な閾値交差関数を使用することができる。
【0026】
有利な1つの実施形態によれば、増分の特定は、
-連続する同一パリティの増分Iの横座標値uで規定される長さの、好ましくは8分の1から8分の7に位置し、非常に好ましくは長さの中点に位置する、中間横座標値uに対応する第2の連続した増分Jを作成するステップと、
-第1増分Jminと第2増分Jmaxとの間にホイール回転信号SigTdR iを構築するステップであって、minとmaxが同じパリティであるステップと、
を含む。
【0027】
この実施形態では、第1信号を整数回のホイール回転に亘って区分化することができる。しかしながら、今回は、接地面への進入又はそこからの離脱よって信号が明示的に区分化されるのではなく、中間位置、非常に好ましくは接地面の反対側の位置によって区分化される。実際、タイヤケーシングのクラウンのあらゆる点の垂直加速度に大きな変動を生じさせる、接地面への進入又はそこからの離脱の両方に対応する領域から離れることが必要である。従って、中間点は、同一パリティの増分Iで規定される8分の1と8分の7との間に位置することが一般的に好ましい。その結果、第1信号Sigiの増分の平均値は、ホイール回転の空間離散化によって生じる誤差の影響を受けにくくなる。具体的には、接地面への進入又はそこからの離脱における垂直加速度の感度が高いため、小さな定位誤差が垂直加速度の大きな変動をもたらし、走行距離の推定精度を向上させるためには、より多くの測定点の平均をとる必要がある。信号の区分が接地面の影響領域外にある場合は、記録される値が求める固有の値に概ね近いため、空間離散化による誤差が小さくなる。従って、第1信号Sigiの長さをホイールの一回転に制限することが容易であり、これにより、測定点の数も制限される。
【0028】
有利には、タイヤケーシングの回転速度Wは、
[数式6]
で定義される閾値Wthresholdよりも大きい場合に、第1信号Sigiが取得され、ここでDevは、1回転でタイヤケーシングが走行する距離である。
【0029】
従って、回転速度が閾値を超えている場合、第1信号Sigiを閾値Nに関して分離することは容易ではあるが、非予見的である。第1信号Sigiは、例えば、マクロ粗度の大きな車道、測定システムに影響を与える電磁干渉、及び/又はタイヤケーシングの振動の結果として変化する。この閾値Wthresholdに達しない場合、基準量Vi referenceとして、ゼロ値とすることもできる設定値Vsetを採用することができる。
【0030】
基準加速度γreferenceは、タイヤケーシングの中立状態、すなわち荷重がゼロである状態に対応する。実際には、これ自体は、接地面を形成するような変形を行うことなく地面を転がる、実装された組立体を構成する組み込まれた組立体に現れる。最終的に、これは、タイヤケーシングがその自然回転軸の周りに自由回転する状態でセンサをタイヤケーシングに取り付けた場合にセンサが受けることになる加速度に相当する。
【0031】
結果として、基準加速度γreferenceは、単に自由回転するタイヤケーシングに取り付けた場合にセンサが受ける遠心加速度である。従って、基準加速度を特定するためには、以下の2つのパラメータが必要とされる。すなわち、自然回転軸に対するセンサの半径方向位置RCと、センサが固定されているタイヤケーシングの回転速度Wである。
【0032】
第2の実施形態によれば、基準加速度γreferenceは、ホイール回転信号SigTdRの平均値に基づいて決定される。
【0033】
具体的には、本方法は、回転速度Wで自由回転している状態で、タイヤケーシング又はそれに取り付けられた何らかのセンサが、自然回転軸に対するその半径方向位置に比例した遠心加速度を受けると仮定する。タイヤケーシングが固い地面に押し付けられて荷重を受けると、タイヤケーシングは、この荷重によって発生する変形エネルギを2つの状況の間で分配するように変形する。第1の状況は、接地面が必要とする動きに関する条件に対応し、遠心力エネルギを減少させる傾向がある。第2の状況は、接地面の外側のタイヤケーシングに送達されるエネルギに関する条件である。この送達エネルギは、第1の状況に対応する遠心力エネルギの減少を補完するものである。その結果として、タイヤケーシングが荷重Zを受けているか否かに関わらず、整数回のホイール回転に亘るホイール回転信号の平均値は、センサが受ける遠心加速度に対応する。
【0034】
好ましくは、タイヤケーシングの所定の角度位置に対してホイール回転信号SigTdRの位相を固定した後、地球の重力の影響を考慮するために、ホイール回転信号SigTdRに補正Corrを行う。
【0035】
地球の重力に対する補正により、特に低回転速度において、タイヤケーシング変形時の誤差を最小限に抑えることができる。具体的には、タイヤケーシングが回転している時、センサは、自然回転軸の周りを回る。このとき、センサが出力する信号は、半径方向加速度に比例するため、地球の重力の影響を受ける(taint)ことになる。ホイールの1回転に亘って、地球の重力により、地球基準系でのセンサの高さに依存する振幅gの正弦波信号が生成されることになる。それゆえ、この寄生信号Corrを第1信号Sigiから取り除く必要があり、これは、第1信号Sigiをタイヤケーシングの角度位置に対して同期させることを必要とする。
【0036】
もちろん、タイヤケーシングの回転速度Wが高いほど、センサが受ける遠心加速度は、この寄生信号に対して支配的になる。
【0037】
非常に有利には、基準量Vreferenceに関する2つの評価の間の時間間隔Tは、10分以下、好ましくは5分以下、非常に好ましくは2分未満である。
【0038】
この方法の簡潔さは、部分的にこの時間間隔Tに基づいている。すなわち、それが大きければ大きいほど、統合された電子デバイスで実行する必要のある計算が少なくなり、これにより、エネルギを節約することができる。しかしながら、推定の品質を犠牲にしてエネルギを節約する必要はない。一般的な考え方は、1日、1週間、1月、又はタイヤケーシングの耐用期間における走行距離を得ることなので、所定の時間毎に正確な測定値を得る必要はない。具体的には、統計的にその結果が所望の時間規模で正しいものであれば、目的は達成される。このために、10分毎に1回測定することで、1日単位の正しい推定値を得ることができる。しかしながら、タイヤケーシングの使用プロファイルを無関係なものとするには、この時間間隔Tを5分に低減する必要がある。最後に、数時間規模での評価に関して正確であるには、時間間隔を2分に低減する必要がある。しかしながら、タイヤケーシングの使用について少なくとも1時間という時間規模で総走行距離の推定の品質を向上させるために、時間間隔を30秒未満にする必要はない。タイヤケーシングの標準的な使用の場合、30秒未満の時間間隔を使用することでは、それ以上大幅な精度向上を達成することはできない。
【0039】
さて、タイヤケーシングは回転半径RPを規定し、関数Aは、
[数式7]
の比率Bに比例する。
【0040】
具体的には、関数Aは、回転半径RPとセンサ位置半径RCとの比率Bで規定することができる。これら2つの半径は、実装された組立体の自然回転軸に対して決定される。しかしながら、半径RPがタイヤケーシングの負荷状態で評価されるのに対し,センサ位置半径RCは、実装された組立体の無負荷状態で決定される。もちろん、関数Aと比率Bの比例関係は、単一性(unity)又は別のパラメータとすることができる。
【0041】
詳細には、回転半径RPは、タイヤケーシングが支える荷重Zに依存する。
【0042】
タイヤケーシングが所定の直径及び所定の幅のリムに取り付けられ、場合によってはその荷重指数で示される最大公称荷重以下であり、場合によっては推奨圧力まで膨張している場合、地面の平坦部分に押し付けられたタイヤケーシングの半径の値は、公称RP値に設定することができるが、実際には、回転半径RPの値は支える荷重Zと共に変化する。しかしながら、一次近似としては、回転半径RPの実際値に対する回転半径の変動は無視することができるので、代表量を採用するか又は各測定の瞬間に適用される荷重依存性によって変動を考慮するかのいずれかとすることで十分である。
【0043】
詳細には、タイヤケーシングは膨張圧Pまで膨張され、回転半径RP及び半径方向位置RCはタイヤケーシングの膨張圧Pに依存する。
【0044】
同様に、膨張したタイヤケーシングの場合、回転半径RP及び位置半径RCは、タイヤケーシングの膨張圧に影響される可能性がある。この場合、必要に応じて、タイヤケーシングが走行した距離に亘って得られる精度を高めるために、これら2つの半径の膨張圧による変動を考慮することが必要となる場合がある。一次近似として、ETRTOの規則を適用して決定された膨張圧を使用し、総走行距離の非常に満足のいく第1の推定値を得るようにすることができる。
【0045】
詳細には、回転半径RPは、タイヤケーシングが走行した総距離Dfに依存する。
【0046】
回転半径RPは、トレッドの自然な摩耗の結果として変化する。トレッドの摩耗は、タイヤケーシングの総走行距離Dfに一次的に比例する。従って、この依存性を考慮することで、走行距離の評価精度が向上する。例えば、2回の測定の間の時間間隔Tよりも遥かに長い長時間に亘る総走行距離に対して設定された依存性によって、その変動を考慮する必要がある。しかしながら、一次近似として、回転半径RPの実際値に対する回転半径の変動は無視することができるので、上述のように回転半径RPの代表量を採用すればよい。
【0047】
具体的な1つの実施形態によれば、第1信号Sigiは、一定のサンプリング周波数で取得される。
【0048】
サンプルを規則的に取得する場合、実装された組立体の回転速度Wの変動が少数回のホイール回転に亘って小さいため、空間的に実質的に一定である第1信号Sigiの空間離散化が得られる。従って、基準量Vreferenceは、サンプルが空間的に分布するホイール回転セグメントの平均値であることを考慮すると、この方法は堅牢である。加えて、この一定のサンプリングは、タイヤケーシングに統合された電子デバイスに実装するのが容易である
【0049】
有利な実施形態によれば、第1信号Sigiのサンプリングの空間離散化は、10度未満、好ましくは6度未満、非常に好ましくは3度未満である。
【0050】
必須ではないが、実装された組立体の通常の回転条件下で、接地面、すなわち地面と接触するタイヤケーシングの領域を特定できるようにするために、回転ホイールの加速度の空間離散化が最小化されることが好ましい。特に、信号Sigiの長さが大きい場合、この情報により、接地面の通過を区分化する増分を間接的に特定することができる。もちろん、第1信号Sigiの空間離散化が細かいほど、検出が高精度となり、第1信号の必要な長さが短くなる。その場合、単一回のホイール回転に亘って、又は少数回のホイール回転に亘って、基準量Vreferenceの非常に良好な評価を得ることできる。このように、第1信号Sigiの長さは、高位の離散化を伴って少数回のホイール回転に亘るか又は低位又は中位の空間離散化を伴って多数回のホイール回転に亘るかの2つの測定方法で、常にほぼ同じになる。どちらの解決策も、少なくとも1回のホイール回転が完了している限り、走行距離の正しい評価をもたらす。
【0051】
例えば、タイヤケーシングが走行した距離をホイール-タイヤ組立体で評価することが望まれる場合、センサは、マイクロコントローラ、メモリ空間、バッテリ及びクロックを備える電子ユニットと関連付けする必要がある。その場合、一定のサンプリング周波数での空間離散化が想定されるため、マイクロコントローラで簡単な演算を行うことができ、バッテリの消費が最小限に抑えられる。加えて、ホイール1回転当たり約36点程度の最小の離散化により、メモリ空間への演算及び転送の回数を制限することが可能となる。それでも、タイヤケーシングの変形に関して得られる精度は良好に保たれ、一方で電子ユニットのバッテリが節約される。つまり、本方法の中間スカラ値だけを保存又は転送する必要がある。
本発明は、空気圧タイヤへの適用例に関する以下の説明を読むとより良く理解されることになる。この適用例は、単に例示的に与えられ、以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本方法の2つの実施形態による第1の信号Sigiの例を示す。
図2】サンプリング周波数と信号の長さに応じた、本方法の複数の第1の信号Sigiを示す。
図3】第1の実施形態についてホイール回転信号SigTdRとその識別を示す。
図4】別の実施形態についてホイール回転信号SigTdRとその識別を示す。
図5】可変回転速度Wで回転している時のホイール回転信号SigTdRを示す。
図6】日常使用される道路車両の速度プロファイルを示す。
図7】一方では本方法によって評価された、他方では車両で測定されたところによる日常の走行距離の差異を、本方法の時間間隔Tの関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明を実施するために、タイヤケーシングには、センサ、マイクロコントローラ、クロック、メモリ空間及びエネルギ貯蔵手段、及び送信可能及び場合により受信可能な無線周波数通信手段を備える電子ユニットを装備しなければならない。タイヤケーシングは、自然回転軸の周りに回転するクラウンと、2つのサイドウォールと、2つのビードとを備える。また、ケーシングは、2つのビードから等距離にある子午面を備え、子午面と自然回転軸の間の交点がホイール中心を規定する。
【0054】
センサは、均一剛性の領域である突出した材料要素又は長手溝に向かって、ホイールに取り付けられた状態で自然回転軸に関して固定された半径方向位置RCでタイヤケーシングに対してクラウンと垂直に固定される。センサは、タイヤケーシング内でセンサが受けるクラウンに垂直な加速度に比例する少なくとも1つの出力信号を生成することができる。実際、このセンサは単軸センサとすることができ、その場合、単軸センサは半径方向に位置決めする必要がある。また、複数の単軸センサで構成することもできる。その場合、タイヤケーシングのクラウンに対して垂直な加速度を再構成するために、各単軸センサの向きは、タイヤケーシングの座標系に関して明確に識別する必要がある。センサは、加速度の連続成分を考慮する。センサは、ピエゾ抵抗技術又は静電容量技術を使用する加速度センサとすることができる。
【0055】
電子ユニットは、エネルギ貯蔵手段によって給電され、マイクロコントローラによってクロックを利用して制御され、マイクロコントローラには、例えば、センサ要素が生成する信号を用いてタイヤケーシングの基準量Vreferenceを決定するのを可能にする計算アルゴリズムもインストールされている。無線周波数通信の送信手段は、計算された情報を送信するために使用され、無線周波数通信の受信手段は、計算アルゴリズムに対する動作命令又は使用情報を受信するために使用される。理想的には、この電子ユニットは、構成要素を共有して運用コストを最適化できるように、他の測定要素(例えば、膨張圧、実装された組立体の内部空洞の温度、トレッドの摩耗状態などを評価する手段)を含む又はそれらと関連付けされる。
【0056】
この場合、センサは、タイヤケーシングが走行状態にある時に、マイクロコントローラによって作動状態にされる。もちろん、回転速度Wに対する閾値を選択することができ、その閾値からセンサが出力する信号が取得される。電子ユニットは、実行することが望ましい解析のタイプに適したメモリ空間を利用することができる。実際、このメモリ空間の容量は、電子ユニットの使用に従って事前に規定される。メモリ空間へのセンサからの値の格納を制御するのはマイクロコントローラである。加えて、マイクロコントローラは、少数のデータに対して簡単な数学演算及び論理演算を実行することができる。数学演算及び論理演算がかなり複雑な場合又は操作すべきデータ数が増大した場合に、マイクロコントローラは、マイクロプロセッサに置き換えられる。最後に、電子ユニットは、エネルギ貯蔵手段によって給電される。最も簡単な貯蔵手段はバッテリである。しかしながら、ピエゾ素子を用いて再充電することができる大型キャパシタも想定される。
【0057】
電子ユニットのサンプリング周波数により、10度未満の空間離散化で回転速度Wの広範囲をカバーすることができる。1つの特定の実施形態によれば、サンプリング周波数は、要求に応じて又は例えばタイヤケーシングの回転速度Wのような信号に応じて適応可能である。
【0058】
随意的に、電子ユニットは、タイヤケーシングの識別情報を含む又は取得することができる。この情報は、電子ユニットで使用される計算アルゴリズムに有用なデータセットの選択に関して有用である。電子ユニットがタイヤケーシングの識別情報を取得する必要がある場合又は測定を行う命令を受信する必要がある場合、電子ユニットには、無線周波数受信手段が装備される。無線周波数受信手段は、タイヤケーシングの金属領域及び車両内でその周辺環境が発生させる干渉がないように低周波数領域で、理想的には125kHzの周波数で作動する、
【0059】
1つの特定の実施形態によれば、電子ユニットは、具体的にUHF(極超短波)帯域内、特に433MHz又は900MHz近傍又は空き周波数帯域であるBLE(ブルートゥース(登録商標)低エネネルギ)帯域として公知の高周波数送信手段を有する。加えて、UHF帯域は、小さなアンテナサイズを有することを可能にし、電子ユニットをタイヤケーシングの中に組み込みやすくする。
【0060】
この送信通信は、本方法のデータを車両へ又は車両の外部に送信するのに有用である。第1信号Sigi又はホイール回転信号SigTdRの取得に対応するデータ列を送信すること、又は電子ユニットで計算されることになる中間結果を送信するかのいずれかが可能である。2つの送信モードは、データの流れがそれほど大きくないため、電子部材の電力消費が必然的に小さくなる。具体的には、高周波数送信は、数学演算及び論理演算よりも多くの電力を消費する。
【0061】
図1は、一定の回転速度Wで回転するトラックタイヤケーシングのクラウンに垂直な加速度に対応する第1原信号1bを灰色で示す。規則的かつ周期的に、曲線1bは低い、近ゼロ値を通過している。この周期的な現象は、センサがタイヤケーシングの接地面を通過することに対応する。センサがタイヤケーシングの接地面を通過することとタイヤケーシングの他部分を通過することとの間の移行は、センサが接地面に進入しているか又はそこから離脱しているかに応じて、立ち下がり側又は立ち上がり側で急激に発生する。加えて、第1信号1bは、ホイール1回転の尺度で搬送波を辿り、ホイールの回転周波数よりも高い周波数でこの搬送波の周りで振動することに留意されたい。これらの振動は、センサからの第1の信号1b上のノイズに対応し、このノイズは、道路のマクロ粗度を含む様々な予測不能な影響に起因している。
【0062】
黒色の1の添字で示した曲線は、地球の重力のみに関して補正された同じ加速度計の信号を表し、この信号は、補正された第1信号1と呼ぶことにする。ここでの補正は、正弦波であり、接地面の中心に位置する点、すなわち、近ゼロ値である信号の部分の境界を定める2つのエッジから等距離に位置する点に適用される。第1信号1は、接地面を特徴付ける領域間でより平坦であることが分かる。必須ではないが、本方法の様々なステップは、この補正された第1信号1に対して実行されることが好ましい。
【0063】
図2は、空間離散化及び第1信号Sigiの長さが、基準量Vreferenceが基づいている基準加速度値γreferenceに与える影響と、タイヤケーシングが走行した距離D及びDfを評価する方法を示す。従って、濃い灰色の連続する曲線は、重力で補正された垂直な加速度に対応する第1信号(1で参照される)を、複数回のホイール回転に亘って1度の角度ステップで示し、その描写は、意図的に約1回転に限定されている。この信号の平均値は、定義上、基準加速度γreferenceに向かう傾向があり、連続する直線4で表されている。この信号が重力補正されているか否かに関わらず、整数のホイール回転に関して同じ平均値が得られるであろう。この値は基準として使用され、デフォルトでは100に等しい。
【0064】
黒色の三角形(10で参照される)で表される第2の第1信号Sigiは、同じ信号1に対応するが、この場合、信号の空間離散化は10度である。ホイール回転信号SigTdRを形成するために、近ゼロ値に位置するサンプルを結び付けることによって、この信号の長さをホイールの1回転に制限することが可能である。この信号10は、1つのサンプルが接地面ごとに必然的に近ゼロ値を有するため、このレベルの空間離散化によって、最低でも加速度測定信号をホイールの1回転に分離することができ、この事象を従来のタイヤケーシングの標準使用条件下で検出できるということを教示している。もちろん、この最大限の角度的離散化を超えると、加速度測定信号を用いてセンサの接地面通過を識別できない可能性がある。ホイールの完全な1回転のSigTdRに限定して考えると、基準加速度γreferenceの値の99%に等しい、この信号の平均値が得られ、これは非常に満足のいくものである。
【0065】
最後に、薄灰色の円で表されて11として参照される第3の第1信号Sigiは、同じ信号1に対応するが、この場合、信号の空間離散化は10度であり、サンプリングは最初の5増分、すなわちホイール1回転の一部分に制限される。図2では、直線の破線(3で参照される)は閾値Nを表す。ここで、閾値Nは、1回転を超える重力補正なしの加速度測定信号について最大値の50パーセントに相当する。信号10及び11の点の内、この閾値Nを下回るものはほとんどないことに留意されたい。さらに、信号10及び11の長さは、信号長の少なくとも60パーセントがこの閾値Nよりも上に位置するように選択される。信号11の場合、信号11の長さが5に等しく、2つの値がこの閾値Nよりも下にある(信号の40パーセントを表す)ので、信号11の長さの正確に60パーセントが、この閾値よりも上に位置している。この場合、信号11の平均値は、基準加速度γreferenceの90%に等しく、それを用いて走行距離の有効な推定値を得ることができるので、これは満足のいくものである。この信号11が最初の4つの値に限定されていたとすると、その場合、上記Nを超える信号の長さに関する条件は満たされず、平均値は基準加速度の79%に低下するであろう。さらに、信号11の最後の4つの値が使用されたとすると、その場合、閾値Nに関する条件は満たされ、平均値は基準加速度の110パーセントとなり、これは、依然として非常に満足のいくものであろう。同様に、閾値Nを変更しても、結果はあまり変わらないことに留意されたい。しかしながら、重力補正されていない生の加速度測定信号を使用する場合は、重力の値に起因して信号がゼロを通過しない可能性があるため、この閾値Nを慎重に選択しなければならない。
【0066】
図3は、整数回のホイール回転に亘るホイール回転信号SigTdR(図中2で参照される)を決定する方法を示している。ここでは実施例のより良い説明を与えるために補正された第1信号Sigiから、破線3で示される閾値Eが決定される。ここで、閾値Eは、補正されていない第1信号Sigiの最大振幅の半分に設定される。連続した増分Iが特定され、これらは、例えば下方から、第1信号Sigiが破線3を横切る箇所であり、これは、タイヤケーシングと一体となって回転するセンサが接地面から離脱することに物理的に対応している。従って、ここでは、接地面への進入に対応して、中間増分Iを生成するであろう、第1信号Sigiによる閾値Eの上方からの交差は無視される。従って、第1信号Sigiは、第1増分(ここではI1)と第2増分(ここではI3)との間のホイール回転信号SigTdR(2で参照される)に限定される。ここでのホイール回転信号SigTdRは、ホイールの完全な2回転に亘るセンサの加速度測定信号を表す。
【0067】
破線3によって表される閾値Eは、この場合、可変サンプリング周波数を用いた第1信号Sigiの一部分において評価される。取得された最大離散化値は、第1信号のこの部分から抽出され、MAXと名付けられる。従って、閾値Eは、値MAXの10から50%の間からなる値であり、この例では、この値は約50%である。
【0068】
黒色実線4で表された基準加速度γreferenceに対応する、1回転に亘るホイール回転信号SigTdR(2で参照される)の平均値が計算される。これは、第1ホイール回転信号SigTdRの増分uの値を合計し、その合計をホイール回転信号SigTdRの終了時に、第1ホイール回転信号SigTdRの増分数で割ることによって、リアルタイムに評価される。このためには、閾値Eについて第1信号による下方からの最初の交差を見つけるだけで十分であり、これがホイール回転信号SigTdRの開始点を決定する。もちろん、この計算は、ホイール回転信号SigTdR(2で参照される)の全記録が記録されてメモリに保存された後で行うこともできる。
【0069】
図4は、加速度測定信号からホイール回転信号SigTdR(7で参照され、灰色で示す)の区分化を示す。ここで、この区分化に使用されるのは、第2の実施形態である。
【0070】
この例をより良好に説明するために、補正されたセンサが送達する信号から、破線5で示される閾値Bが決定される。連続した増分Iが特定され、これらは、第1信号が破線5を横切る箇所であり、これは、タイヤケーシングと一体となって回転するセンサが接地面に進入するか又はそこから離脱することに物理的に対応している。次に、この説明図では奇数番号の増分Iだけを考慮して、奇数番号の増分Iから等距離に位置する連続した増分Jを構築する。これらの増分は、図3において垂直の点線で識別される。もちろん、選択された増分が、2つの増分IiとIi+1の間に含まれる信号長の8分の1から8分の7である限り、この方法を適用することができる。
【0071】
次に、ホイール回転信号SigTdR(7で参照される)が、第1増分(ここではJ1)と第2増分(ここではJ3)との間で区分化される。ここでのホイール回転信号SigTdRは、ホイールの完全な2回転に亘ってセンサが送達する加速度測定信号を表す。
【0072】
破線5によって表された閾値Bは、この例では、可変サンプリング周波数で加速度測定信号の一部分において評価される。取得された離散化最大値は、加速度測定信号のこの部分から抽出され、MAXと名付けられる。従って、閾値Bは、値MAXの10から50%の間でなる値であり、この例では、この値は約50%である。
【0073】
黒色実線6で表された基準加速度γreferenceは、第1ホイール回転信号SigTdR(7で参照される)の平均値を計算することで決定される。こは、増分J1とJ3の間でホイール回転信号の増分uの値を合計し、次にその合計をホイール回転信号の終了時に、第1ホイール回転信号SigTdR(7で参照される)の増分uの個数で割ることによって、リアルタイムに評価される。
【0074】
この第2の実施形態は、ホイール回転信号SigTdRの極値における離散化誤差が、基準加速度の計算において僅かな変動しか引き起こさないので、より良い方法である。具体的には、これらの極値においては、信号の感度が増分Iについての信号レベルの感度に対して低い。
【0075】
図5は、地球の重力に対して予め補正され、可変回転速度Wで回転するトラックタイヤケーシングのクラウンに垂直な加速度に対応する加速度測定信号を示す。
【0076】
ここでは、破線3で表される閾値Eが、ホイール回転信号SigTdR(淡い灰色で示され、2として参照される)に関して決定される。
【0077】
閾値Eにより、例えばセンサが接地面から離脱することに対応する、増分Iを特定することが可能になる。この解析では、ホイール回転信号SigTdRは、タイヤケーシングの回転速度Wの変動と関係する誤差を制限するために好ましいので、ホイールの1回転に制限される。閾値Eは、整数回のホイール回転に亘って区分化され、ホイール回転信号2より前にある第1信号の基準加速度の半分に対応するように選択される。また、基準加速度γreferenceは、ホイール回転信号2から、連続曲線(4で参照される)で示されたホイール回転信号2の平均値を計算することによって決定される。
【0078】
また、ここでは加速段階において回転速度Wが可変であるため、ホイール回転と関係する周期が減少して、ますます間隔の狭い立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジをもたらすことに留意されたい。
【0079】
図6は、ヨーロッパで地域的に使用されているトラックの速度プロファイルを説明する。この車両は、本発明によるセンサを備えた実装された組立体を装備し、組立体は、車両の前部に取り付けられる。センサの応答を約1分の所定の時間間隔Tで記録した。測定フェーズの間、信号長及び最小角度ステップサイズの条件が速度の使用関連範囲全体で満たされるように、センサのサンプリング周波数を選択した。1日単位の走行距離は、1分の測定頻度で統合装置によって推定した。そのために、関数Aを比率Bとなるように選択した。回転半径RPとセンサの位置半径RCは、ETRTOの規則を適用して、負荷状態及び無負荷状態においてテストベッド上で事前に較正した。さらに、信号を外部メモリ空間に保存し、これにより、測定フェーズ間の時間間隔Tを変更し、ひいては他の評価を行うことが可能となった。さらに、1日の間に車両が走行した距離は、車両の速度計によって直接的に、また市販のGPSデバイスを介して記録した。
【0080】
図7は、車両が記録した走行距離と、測定フェーズ間の時間間隔Tだけが異なる、1分から40分まで1分刻みで変化させた本方法の種々の評価との差異をまとめたものである。1分における最初の評価は、実装された組立体に組み込まれた装置のものであった。それ以外の評価は、生データを削除して測定間の時間間隔Tを長くすることで行った。ここで、日常の走行距離に関する所与の評価では、時間間隔Tは一定のままであった。
【0081】
時間間隔Tが10分未満である場合、車両が記録し距離と本方法が評価した距離との距離の差は5パーセントを超えないことに留意されたい。この特定の日程について、時間間隔が20分に設定されるならば、推定値の誤差は依然として10パーセントを超えない。さらに、時間間隔Tが短いほど、車両が記録した基準値と本方法による評価値との差は小さくなる。測定フェーズ間の時間間隔Tが5分未満では、誤差はさらに僅かなものとなる。
【符号の説明】
【0082】
1 重力補正された垂直加速度に対応する第1信号
3 破線(閾値)
4 連続直線(信号の平均値)
10 第2の第1信号
11 第3の第1信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】