(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】抗CEA抗体-エキサテカン類似体複合体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230213BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230213BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230213BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230213BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20230213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230213BHJP
C07D 491/22 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/30
C12N15/13
C07K16/46
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/4375
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
C07D491/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535918
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2020136396
(87)【国際公開番号】W WO2021121204
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】201911294912.3
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】応 華
(72)【発明者】
【氏名】毛 浪勇
(72)【発明者】
【氏名】王 斯佳
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG04
4C050HH04
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA51
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗CEA抗体-エキサテカン類似体複合体及びその医薬用途である。具体的に、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗CEA抗体-エキサテカン類似体複合体であり、そのうち、Pcは、抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、Lはリンカーユニットであり、Yは-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-、-O-CR
1R
2-(CR
aR
b)
m-、-O-CR
1R
2-、-NH-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-及び-S-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-から選ばれ、nは1~10であり、nは小数又は整数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CEA抗体又はその抗原結合断片を含む抗体薬物複合体であって、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は任意選択的にリンカーにより毒性薬物に結合され、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
i)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:8配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、
ii)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:10配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、
iii)前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3はSEQ ID NO:11配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同じであり、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:12配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iv)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1及びLCDR3はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1及びLCDR3と同じであり、前記軽鎖可変領域のLCDR2はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有する、
抗体薬物複合体。
【請求項2】
前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
v)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
vi)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:47及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
vii)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
viii)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1及びHCDR3、及びSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1及びLCDR3、及びSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2を含む、
請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項3】
前記抗CEA抗体はマウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1又は2に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、又はSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、又はSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(b)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(c)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:11に示され、又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示され、又はSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(d)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示され、又はSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示され、又はSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、
請求項1~3の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項5】
前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(e)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39、40、41又は42に示され、又はSEQ ID NO:39、40、41又は42に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43、44、45又は46に示され、又はSEQ ID NO:43、44、45又は46に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、又は
(f)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:48、49、50、51又は52に示され、又はSEQ ID NO:48、49、50、51又は52に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53、54又は55に示され、又はSEQ ID NO:53、54又は55に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、又は
(g)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:56、57又は58に示され、又はSEQ ID NO:56、57又は58に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59、60、61、62又は63に示され、又はSEQ ID NO:59、60、61、62又は63に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、又は
(h)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:65、66、67又は68に示され、又はSEQ ID NO:65、66、67又は68に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75又は76に示され、又はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75又は76に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有する、
請求項1~4の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項6】
前記抗CEA抗体はヒト化抗体であり、前記ヒト化抗体はヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、前記フレームワーク領域変異体は、ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ多くとも10個のアミノ酸復帰変異を有し、
好ましくは、前記フレームワーク領域変異体は、下記の(i)~(l)の何れか1項に記載のものから選ばれ、
(i)配列がそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:15に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(j)配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:21に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、66K、67A、69L、71V、73K、82F、
82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(k)配列がそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び
(l)配列がSEQ ID NO:35に示されるLCDR1、配列がSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及び配列がSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:33に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
そのうち、前記復帰変異の部位はKabat番号付け規則によって番号付けられる、
請求項1~5の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項7】
前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は、抗体の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域とその通常の変異体から選ばれ、前記軽鎖定常領域はヒト抗体κ及びλ鎖定常領域とその通常の変異体から選ばれ、より好ましくは、前記抗体は配列がSEQ ID NO:77に示される重鎖定常領域、及び配列がSEQ ID NO:78又はSEQ ID NO:79に示される軽鎖定常領域を含み、
最も好ましくは、前記抗CEA抗体は、
(m)配列がSEQ ID NO:80に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:81に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、
(n)配列がSEQ ID NO:82に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:83に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、
(o)配列がSEQ ID NO:84に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:85に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、又は
(p)配列がSEQ ID NO:86に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:87に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、を含む、
請求項1~6の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項8】
一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体薬物複合体であって、
【化1】
そのうち、
Yは-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-、-O-CR
1R
2-(CR
aR
b)
m-、-O-CR
1R
2-、-NH-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-及び-S-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-から選ばれ、
R
a及びR
bは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、又は、R
a及びR
bは、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基及びヘテロシクリル基を形成し、
R
1はハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、R
2は水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、又は、R
1及びR
2は、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
又は、R
a及びR
2は、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは0~4の整数であり、
nは1~10であり、nは小数又は整数であり、
Lはリンカーユニットであり、
Pcは、請求項1~7の何れか1項に記載の抗CEA抗体又はその抗原結合断片である、
請求項1~7の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項9】
nは2~8、好ましくは4~6の小数又は整数である、請求項8に記載の抗体薬物複合体。
【請求項10】
Yは-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-であり、
R
a及びR
bは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン又はアルキル基から選ばれ、
R
1はハロアルキル基又はC
3-6シクロアルキル基であり、
R
2は水素原子、ハロアルキル基及びC
3-6シクロアルキル基から選ばれ、
又は、R
1及びR
2は、それらに連結する炭素原子とともにC
3-6シクロアルキル基を形成し、
mは0又は1である、
請求項8に記載の抗体薬物複合体。
【請求項11】
Yは、
【化2】
から選ばれ、そのうち、YのO端はリンカーユニットLに連結する、
請求項10に記載の抗体薬物複合体。
【請求項12】
一般式(Pc-L-D)で示される抗体薬物複合体であって、
【化3】
そのうち、
Lはリンカーユニットであり、
Pcは抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは1~10の小数又は整数である、
請求項8~11の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項13】
リンカーユニット-L-は-L
1-L
2-L
3-L
4-であり、
L
1は-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH
2-C(O)-NR
3-W-C(O)-及び-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC
1-8アルキル基、C
1-8アルキル基-シクロアルキル基又は1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、前記ヘテロアルキル基はN、O及びSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、前記C
1-8アルキル基、C
1-8アルキル基-シクロアルキル基及び1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
L
2は-NR
4(CH
2CH
2O)p
1CH
2CH
2C(O)-、-NR
4(CH
2CH
2O)p
1CH
2C(O)-、-S(CH
2)p
1C(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、p
1は1~20の整数であり、
L
3は2~7個のアミノ酸からなるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸は、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸におけるアミノ酸により形成されたアミノ酸残基から選ばれ、且つ、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
L
4は、-NR
5(CR
6R
7)
t-、-C(O)NR
5-、-C(O)NR
5(CH
2)
t-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
R
3、R
4及びR
5は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
R
6及びR
7は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる、
請求項8~12の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項14】
リンカーユニット-L-は-L
1-L
2-L
3-L
4-であり、そのうち、
L
1は
【化4】
であり、s
1は2~8の整数であり、
L
2は化学結合であり、
L
3はテトラペプチド残基であり、好ましくは、L
3はグリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン(GGFG, SEQ ID No:92)のテトラペプチド残基であり、
L
4は-NR
5(CR
6R
7)t-であり、R
5、R
6又はR
7は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、tは1又は2であり、
そのうち、前記L
1端はPcに連結しており、L
4端はYに連結している、
請求項8~13の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項15】
-L-は、
【化5】
である、
請求項8~14の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項16】
-L-Y-は、任意選択的に、
【化6】
から選ばれる、
請求項8~15の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項17】
一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される抗体薬物複合体であって、
【化7】
そのうち、
W、L
2、L
3、R
5、R
6、R
7は請求項13に定義された通りであり、
Pc、n、R
1、R
2、mは請求項8に定義された通りである、
請求項8~16の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項18】
一般式(Pc-L
b-Y-D)で示される抗体薬物複合体であって、
【化8】
そのうち、
s
1は2~8の整数であり、
Pc、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは請求項17に定義された通りである、
請求項8~17の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項19】
【化9】
から選ばれ、
そのうち、Pc及びnは請求項8に定義された通りである、
請求項8~18の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項20】
【化10】
から選ばれ、
そのうち、nは請求項8に定義された通りであり、
Hu63-13は、配列がSEQ ID NO:80に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:81に示される軽鎖を含み、
Hu47-14は、配列がSEQ ID NO:82に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:83に示される軽鎖を含み、
Hu67-14は、配列がSEQ ID NO:84に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:85に示される軽鎖を含み、
Hu103-32は、配列がSEQ ID NO:86に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:87に示される軽鎖を含む、
請求項8~19の何れか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項21】
一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される抗体薬物複合体を調製する方法であって、
【化11】
Pcを還元させた後、一般式(L
a-Y-D)とカップリング反応を行い、一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される化合物を得るステップを含み、
そのうち、
Pcは、請求項1~7の何れか1項に記載の抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは請求項17に定義された通りである、
方法。
【請求項22】
請求項1~20の何れか1項に記載の抗体薬物複合体、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含む、薬物組成物。
【請求項23】
請求項1~20の何れか1項に記載の抗体薬物複合体又は請求項22に記載の薬物組成物の、CEA媒介の疾患又は病症を治療するための薬物の調製における用途。
【請求項24】
前記CEA媒介の疾患又は病症はCEA高発現がんである、請求項23に記載の用途。
【請求項25】
請求項1~20の何れか1項に記載の抗体薬物複合体又は請求項22に記載の薬物組成物の、腫瘍及びがんを治療及び/又は予防する薬物の調製における用途であって、前記腫瘍及びがんは、好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんであり、より好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる、
用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月16日に提出された中国特許出願(出願番号CN 201911294912.3)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、抗CEA抗体-エキサテカン類似体複合体、その調製方法、それを含む薬物組成物、及びそのCEA媒介の疾患又は病症を治療する薬物の調製に用いられる用途、特に、抗がん薬の調製に用いられる用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0004】
がん胎児性抗原(CEA, CEACAM-5やCD66eとも呼ばれる)は、最初に発見された腫瘍関連抗原の1つで、約180 kDaの分子量を有する糖タンパク質であり、CEAは免疫グロブリン超分子群のメンバーの1つであるとともに、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞膜に連結される7つのドメインを含む(Thompson J.A., J Clin Lab Anal.5:344-366, 1991)。CEAは、最初にGold P及びFreedman SOによって結腸がんの組織抽出物において発見されて報告(Gold and Freedman 1965、Gold and Freedman, 1965)され、その後、高感度の放射免疫測定法により結腸がん患者と他の腫瘍患者の血清にCEAが検出されたが、健康な人又は他の疾患患者の血清にCEAの含有量が非常に低いと報告された(Thomson, Krupey et al., 1969)。CEAは、がん細胞において発現が高くなり、高くなったCEAにより、細胞間の接着が促進され、更に細胞の移転が促進される(Marshall J., Semin Oncol., 30(増刊8):30-6, 2003)。CEAは、胃腸、気道と尿生殖路の細胞、及び結腸、子宮頸、汗腺と前立腺の細胞(Nap et al., Tumour Biol., 9(2-3):145-53, 1988、Nap et al., Cancer Res., 52(8):2329-23339, 1992)を含む上皮組織に発現されていることがよく認められる。
【0005】
抗体-薬物複合体(antibody drug conjugate, ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片を、安定した化学リンカー化合物により生物活性を有する細胞毒素に連結し、抗体の正常な細胞と腫瘍細胞の表面抗原への結合の特異性及び細胞毒性物質の高性能を活用しているとともに、前者の治療効果が比較的低い、及び後者の毒性と副作用が大きすぎるといった欠陥を回避している。つまり、これは、従来の化学療法薬と比べ、抗体-薬物複合体が腫瘍細胞とより正確に結合するとともに、正常な細胞への影響を低減することができることを意味する。
【0006】
CEAを標的とする抗体及びADC薬物についての特許、例えばWO2015069430が既に報告されている。しかし、CEA関連腫瘍の治療により良く用いられるために、現在、依然として、より効果的且つ安全な抗CEA抗体-薬物複合体を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、抗CEA抗体又はその抗原結合断片を含む抗CEA抗体-薬物複合体及びその医薬用途に関し、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は任意選択的にリンカーにより毒性薬物に結合され、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
i)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:8配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、
ii)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:10配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、
iii)前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3はSEQ ID NO:11配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同じであり、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:12配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iv)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、前記軽鎖可変領域のLCDR1及びLCDR3はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1及びLCDR3と同じであり、前記軽鎖可変領域のLCDR2はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有する。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
v)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
vi)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:47及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
vii)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
viii)前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1及びHCDR3、及びSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1及びLCDR3、及びSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2を含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:64及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
又は、
好ましくは、前記重鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域はそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:64及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記抗CEA抗体はマウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、又はSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、又はSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(b)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(c)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:11に示され、又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示され、又はSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(d)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示され、又はSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示され、又はSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。
【0012】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記抗CEA抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(e)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39、40、41又は42に示され、又はSEQ ID NO:39、40、41又は42に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43、44、45又は46に示され、又はSEQ ID NO:43、44、45又は46に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、
好ましくは、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:42に示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:44に示され、又は
(f)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:48、49、50、51又は52に示され、又はSEQ ID NO:48、49、50、51又は52に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53、54又は55に示され、又はSEQ ID NO:53、54又は55に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、
好ましくは、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:52に示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53に示され、又は
(g)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:56、57又は58に示され、又はSEQ ID NO:56、57又は58に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59、60、61、62又は63に示され、又はSEQ ID NO:59、60、61、62又は63に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、
好ましくは、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:58に示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:62に示され、又は
(h)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:65、66、67又は68に示され、又はSEQ ID NO:65、66、67又は68に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、及び/又は、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75又は76に示され、又はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75又は76に示されるアミノ酸配列の何れか1つと少なくとも90%の同一性を有し、
好ましくは、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:68に示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:76に示される。
【0013】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体はヒト化抗体であり、前記ヒト化抗体はヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、前記フレームワーク領域変異体は、ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ多くとも10個のアミノ酸復帰変異を有し、
好ましくは、前記フレームワーク領域変異体は、下記の(i)~(l)の何れか1項に記載のものから選ばれ、
(i)配列がそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:15に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(j)配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:21に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、48I、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(k)配列がそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び
(l)配列がSEQ ID NO:35に示されるLCDR1、配列がSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及び配列がSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:33に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(m)配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、配列がSEQ ID NO:21に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
そのうち、前記復帰変異の部位はKabat番号付け規則によって番号付けられる。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体はヒト化抗体であり、前記ヒト化抗体はヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、前記フレームワーク領域変異体は、ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ多くとも10個のアミノ酸復帰変異を有し、
好ましくは、前記フレームワーク領域変異体は、下記の(i)~(l)の何れか1項に記載のものから選ばれ、
(i)配列がそれぞれSEQ ID NO:18に示されるLCDR1、SEQ ID NO:19に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は
配列がSEQ ID NO:15に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(j)配列がそれぞれSEQ ID NO:24に示されるLCDR1、SEQ ID NO:25に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は
配列がSEQ ID NO:21に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、48I、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(k)配列がそれぞれSEQ ID NO:30に示されるLCDR1、SEQ ID NO:31に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は
配列がそれぞれSEQ ID NO:27に示されるHCDR1、SEQ ID NO:28に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び
(l)配列がSEQ ID NO:35に示されるLCDR1、配列がSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及び配列がSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は
配列がSEQ ID NO:33に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域のフレームワーク領域には、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
そのうち、前記復帰変異の部位はKabat番号付け規則によって番号付けられる。
【0015】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体又はその抗原結合断片は、抗体の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域から選ばれ、前記軽鎖定常領域はヒト抗体κ及びλ鎖定常領域から選ばれ、より好ましくは、前記抗体は配列がSEQ ID NO:77に示される重鎖定常領域、及び配列がSEQ ID NO:78又はSEQ ID NO:79に示される軽鎖定常領域を含み、
最も好ましくは、本開示に使用される抗CEA抗体は、
(m)配列がSEQ ID NO:80に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:81に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、
(n)配列がSEQ ID NO:82に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:83に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、
(o)配列がSEQ ID NO:84に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:85に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、又は
(p)配列がSEQ ID NO:86に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:87に示され、又はそれと少なくとも85%の同一性を有する軽鎖、を含む。
【0016】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗原結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、単鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(二重抗体)及びジスルフィド安定化V領域(dsFv)から選ばれる。
【0017】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される抗体薬物複合体であり、
【化1】
そのうち、
Yは-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-、-O-CR
1R
2-(CR
aR
b)
m-、-O-CR
1R
2-、-NH-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-及び-S-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-から選ばれ、
R
a及びR
bは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、又は、R
a及びR
bは、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基及びヘテロシクリル基を形成し、
R
1はハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、R
2は水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、又は、R
1及びR
2は、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
又は、R
a及びR
2は、それらに連結する炭素原子とともにシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは0~4の整数であり、
nは1~10であり、nは小数又は整数であり、
Lはリンカーユニットであり、
Pcは、上記のような抗CEA抗体又はその抗原結合断片である。
【0018】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、nは0~10の整数又は小数であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の平均値であってもよく、好ましくは1~8、より好ましくは2~8、最も好ましくは4~6であり、nは小数又は整数の平均値である。
【0019】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、nは3~5の小数又は整数の平均値である。
【0020】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、nは6~7の小数又は整数の平均値である。
【0021】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される通りであり、そのうち、
Yは-O-(CRaRb)m-CR1R2-C(O)-であり、
Ra及びRbは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン及びアルキル基から選ばれ、
R1はハロアルキル基又はC3-6シクロアルキル基であり、
R2は水素原子、ハロアルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれ、
又は、R1及びR2は、それらに連結する炭素原子とともにC3-6シクロアルキル基を形成し、
mは0又は1である。
【0022】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、Yは、
【化2】
から選ばれ、そのうち、YのO端はリンカーユニットLに連結する。
【0023】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、Yは、
【化3】
であり、そのうち、YのO端はリンカーユニットLに連結する。
【0024】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、下記から選ばれ、
【化4】
そのうち、
Lはリンカーユニットであり、
Pcは抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは1~10であり、nは小数又は整数である。
【0025】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、下記から選ばれ、
【化5】
そのうち、
Lはリンカーユニットであり、
Pcは抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは1~10であり、nは小数又は整数である。
【0026】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、リンカーユニット-L-は-L1-L2-L3-L4-であり、
L1は-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH2-C(O)-NR3-W-C(O)-又は-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基又は1~8個の原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、前記ヘテロアルキル基は、N、O又はSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、前記C1-8アルキル基、シクロアルキル基及び直鎖ヘテロアルキル基はそれぞれ独立して任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
L2は-NR4(CH2CH2O)p1CH2CH2C(O)-、-NR4(CH2CH2O)p1CH2C(O)-、-S(CH2)p1C(O)-又は化学結合から選ばれ、そのうち、p1は1~20の整数であり、
L3は2~7個のアミノ酸からなるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸は、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸におけるアミノ酸により形成されたアミノ酸残基から選ばれ、且つ、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
L4は、-NR5(CR6R7)t-、-C(O)NR5、-C(O)NR5(CH2)t-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
R3、R4及びR5は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
R6及びR7は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0027】
幾つかの実施形態において、L1は-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH2-C(O)-NR3-W-C(O)-又は-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC1-8アルキル基、C1-8アルキル基-C3-6シクロアルキル基又は1~8個の鎖原子の直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、前記ヘテロアルキル基はN、O又はSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、前記C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-C3-6シクロアルキル基又は1~8個の鎖原子の直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0028】
幾つかの実施形態において、L2は-NR4(CH2CH2O)p1CH2CH2C(O)-、-NR4(CH2CH2O)p1CH2C(O)-、-S(CH2)p1C(O)-又は化学結合から選ばれ、そのうち、p1は1~20の整数である。
【0029】
幾つかの実施形態において、L3は2~7個のアミノ酸からなるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸は、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸におけるアミノ酸により形成されたアミノ酸残基から選ばれ、且つ、任意選択的に更にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0030】
幾つかの実施形態において、L4は-NR5(CR6R7)t-、-C(O)NR5-、-C(O)NR5(CH2)t-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数である。
【0031】
幾つかの実施形態において、R3、R4及びR5は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0032】
幾つかの実施形態において、R6及びR7は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0033】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体において、リンカーユニット-L-は-L
1-L
2-L
3-L
4-であり、
L
1は
【化6】
であり、s
1は2~8の整数であり、
L
2は化学結合であり、
L
3はテトラペプチド残基であり、好ましくは、L
3はグリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン(GGFG, SEQ ID No:92)のテトラペプチド残基であり、
L
4は-NR
5(CR
6R
7)t-であり、R
5、R
6又はR
7は相同又は相異であり、且つそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、tは1又は2であり、
そのうち、前記L
1端はPcに連結しており、L
4端はYに連結している。
【0034】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示され、又は一般式Pc-L-Dで示され、そのうち、-L-は、
【化7】
である。
【0035】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示され、又は一般式Pc-L-Dで示され、そのうち、-L-Y-は任意選択的に、
【化8】
から選ばれる。
【0036】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される抗体薬物複合体であり、
【化9】
そのうち、
W、L
2、L
3、R
5、R
6、R
7は、リンカーユニットLに定義された通りであり、
Pc、n、R
1、R
2、mは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである。
【0037】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L
b-Y-D)で示される抗体薬物複合体であり、
【化10】
そのうち、
s
1は2~8の整数であり、
Pc、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、一般式(Pc-L
a-Y-D)に定義された通りである。
【0038】
本開示の幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体は、下記から選ばれ、
【化11】
そのうち、Pc及びnは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである。
【0039】
本開示の幾つかの実施形態において、前記抗体薬物複合体は、下記から選ばれ、
【化12】
そのうち、nは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りであり、
前記抗体は下記の通りである。
Hu63-13は、配列がSEQ ID NO:80に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:81に示される軽鎖を含み、
Hu47-14は、配列がSEQ ID NO:82に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:83に示される軽鎖を含み、
Hu67-14は、配列がSEQ ID NO:84に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:85に示される軽鎖を含み、
Hu103-32は、配列がSEQ ID NO:86に示される重鎖、及び配列がSEQ ID NO:87に示される軽鎖を含む。
【0040】
選択的に、そのうち、nは0~10の非零整数又は小数であってもよく、好ましくは1~10の整数又は小数であり、より好ましくは2~8であり、整数であってもよく、小数であってもよく、最も好ましくは3~8であり、整数であってもよく、小数であってもよく、選択的に、nは3~5の小数又は整数であり、選択的に、nは6~7の小数又は整数である。
【0041】
本開示は、
【化13】
Pcを還元させた後、一般式(L
a-Y-D)とカップリング反応を行い、一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される化合物を得るステップを含み、そのうち、
Pcは抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、一般式(Pc-L
a-Y-D)に定義された通りである、一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される抗体薬物複合体を調製する方法を更に提供する。
【0042】
本開示は、
【化14】
Pcを還元させた後、一般式(L’-D)とカップリング反応を行い、化合物を得るステップを含み、そのうち、
Pcは、上記のような抗CEA抗体又はその抗原結合断片であり、
nは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義された通りである、一般式(Pc-L‘-D)で示される抗体薬物複合体を調製する方法を更に提供する。
【0043】
別の態様で、本開示は、前記何れか1項に記載の抗体-薬物複合体と、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体とを含む薬物組成物を提供する。
【0044】
別の態様で、本開示は、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体又はそれを含む薬物組成物の薬物としての用途を提供する。
【0045】
別の態様で、本開示は、前記何れか1項に記載の抗体-薬物複合体又はそれを含む薬物組成物の、CEA媒介の疾患又は病症を治療するための薬物の調製における用途を提供する。そのうち、前記CEA媒介の疾患又は病症はCEA高発現がんである。又は、前記CEA媒介の疾患又は病症はCEA中発現がんである。
【0046】
別の態様で、本開示は、前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体又はそれを含む薬物組成物の、腫瘍及びがんを治療又は予防するための薬物の調製における用途を提供し、前記腫瘍及びがんは、好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんであり、より好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0047】
別の態様で、本開示は更に、腫瘍を治療及び/又は予防するための方法に関し、当該方法はそれを必要とする患者へ治療有効量の前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体又はそれを含む薬物組成物を投与するステップを含み、好ましくは、前記腫瘍がCEA高発現に関連するがんである。
【0048】
別の態様で、本開示は更に、がんを治療又は予防するための方法に関し、当該方法はそれを必要とする患者へ治療有効量の前記何れか1項に記載の抗体薬物複合体又はそれを含む薬物組成物を投与するステップを含み、前記腫瘍及びがんは、好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイドーシス及びメルケル細胞がんであり、より好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0049】
活性化合物(例えば、本開示に記載のリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩)を任意の適切な経路での投与に適する形態にすることができ、活性化合物は単位用量の形態、又は被験者が単剤で自己投与可能な形態であることが好ましい。本開示に係る単位用量の形態はトローチ剤、カプセル、カシェ剤、瓶詰めの薬液、散薬、顆粒剤、錠剤、坐剤、再生粉末又は液体製剤であってもよい。
【0050】
本開示に係る治療方法で使用される活性化合物又は組成物の投与量は、一般に疾患の重症度、被験者の体重及び活性化合物の有効性によって変わる。ただし、一般的な目安として、好適な単位用量は0.1~1000 mgであってもよい。
【0051】
本発明に係る薬物組成物は、活性化合物の他に、1種又は複数種の添加物を含んでもよく、前記添加物は充填剤、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、賦形剤などの成分から選ばれる。組成物は、投与方法により、0.1~99重量%の活性化合物を含んでもよい。
【0052】
本開示により提供されるCEA抗体及び抗体薬物複合体は、細胞表面抗原と良好な親和性を持ち、細胞によるエンドサイトーシス効率が良くて腫瘍阻害効率が高いだけではなく、より広い薬物応用用途を有し、薬物の臨床応用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】ヒト化抗体の細胞レベルでのヒトCEAとの結合のFACS検出結果である。
【0054】
【
図2】ADC分子のバイスタンダー効果細胞毒性である。データ結果から示されるように、全てのADC分子は、非常に高いバイスタンダー効果細胞毒性を有し、MKN45とHCT116を共培養する場合には、ADC分子は2種の細胞の増殖を阻害することができるが、HCT116を単独で培養する場合には、2-Aに結合したADC分子は細胞に対してほぼ毒性がない。
【0055】
【
図3】LS174T移植腫瘍モデルにおける、腫瘍体積に対するADC分子の影響である。データ結果から示されるように、対照群PBSと比べ、全てのADC分子は、腫瘍体積の増大を阻害する効果を有し、3 mpk群の腫瘍阻害効果は1 mpk群よりも高く、3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu63-13-2-A、その次はHu47-14-2-A、更に次はHu67-14-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。
【0056】
【
図4】LS174T移植腫瘍モデルにおける、腫瘍重量に対するADC分子の影響である。データ結果から示されるように、対照群PBSと比べ、全てのADC分子は、低用量及び高用量下で腫瘍重量の増加を阻害する効果を有する。3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu63-13-2-A、その次はHu47-14-2-A、更に次はHu67-14-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。
【0057】
【
図5】MKN45移植腫瘍モデルにおける、腫瘍体積に対するADC分子の影響である。データ結果から示されるように、対照群PBSと比べ、全てのADC分子は、腫瘍体積の増大を阻害する効果を有し、3 mpk群の腫瘍阻害効果は1 mpk群よりも高く、3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu67-14-2-A、その次はHu103-32-2-A、更に次はHu63-13-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。
【0058】
【
図6】MKN45移植腫瘍モデルにおける、腫瘍重量に対するADC分子の影響である。データ結果から示されるように、対照群PBSと比べ、全てのADC分子は、低用量及び高用量下で腫瘍重量の増加を阻害する効果を有する。3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu67-14-2-A、その次はHu103-32-2-A、更に次はHu63-13-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
一、用語
別途に限定のない限り、本願で用いられる技術及び科学用語の全ては、本開示の属する分野の当業者により一般的に理解されている意味と一致する。本願に記載のと類似又は同等の任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験に用いることができるが、本願は好ましい方法及び材料を記載している。本開示を記載及び特許請求する場合、次の定義に従って下記用語が使用されている。
【0060】
本開示で商品名が使用される場合、当該商品名を有する製品の製剤、当該商品名を有する製品の非特許薬及び活性薬物部分を含むことを意図する。
【0061】
逆の説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は下記意味を有する。
【0062】
「薬物」という用語は、体の生理機能及び病理的状態を変更し、又は明らかにすることができ、疾患の予防、診断及び治療に用いることができる化学物質を指す。薬物は、細胞毒性薬物を含む。薬物と毒物の間には厳格な境界がないが、毒物とは、比較的小さい用量だけで体に毒害作用を及ぼし、人体の健康に損傷を与える化学物質を指し、任意の薬物も用量が大きすぎると、毒性反応を生じ得る。
【0063】
細胞毒性薬物とは、細胞の機能を阻害又は防止し、及び/又は細胞の死亡若しくは破壊を引き起こす物質である。細胞毒性薬物は原則的に、十分に高い濃度でも腫瘍細胞を殺すことができるが、特異性の欠如のため、腫瘍細胞を殺すとともに、正常な細胞のアポトーシスを引き起こし、重篤な副作用になることもある。細胞毒性薬物は細菌、真菌、植物又は動物由来の小分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、毒性薬物、化学療法薬、抗生物質及び核酸分解酵素を含む。
【0064】
「リンカーユニット」、「リンカー」又は「連結断片」という用語は、一端がリガンドに連結し、他端が薬物に連結する化学構造の断片又は結合を指し、他のリンカーに連結した上で薬物に連結してもよい。
【0065】
リンカーは、1つ又は複数のリンカー要素を含んでもよい。例示的なリンカー要素は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロピオニル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」又は「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエ一卜(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」、本願では「MCC」とも称する)及びN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。リンカーは、伸長体、スペーサー及びアミノ酸ユニットを含んでもよく、例えば、US2005-0238649A1に記載された方法のような当該分野での既知の方法により合成されることができる。リンカーは、細胞における薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、又は二硫化物を含むリンカー(Chari et al., Cancer Research 52: 127-131(1992)、米国特許No.5, 208, 020)を使用することができる。
【0066】
略号
【0067】
リンカー要素は、
次のような構造である、MC=6-マレイミドカプロイル、
【化15】
Val-Cit又は「vc」=バリン-シトルリン(プロテアーゼ切断可能なリンカーにおける例示的なジペプチド)、
シトルリン=2-アミノ-5-ウレイドペンタン酸、
PAB=p-アミノベンジルオキシカルボニル(「自己犠牲」リンカー要素の例示)、
Me-Val-Cit=N-メチル-バリン-シトルリン(そのうち、リンカーペプチド結合は、カテプシンBにより切断されないように修飾されている)、
MC(PEG)6-OH=マレイミドカプロイル-ポリエチレングリコール(抗体システインに付着可能)、
SPP=N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエ一卜、
SPDP=N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、
SMCC=スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、
IT=イミノチオランを含むが、これらに限定されない。
【0068】
「抗体薬物複合体」という用語は、抗体が安定した連結ユニットによって生物活性を有する薬物に連結することを指す。本開示において「抗体薬物複合体」又は抗体-薬物複合体(antibody drug conjugate, ADC)とは、モノクローナル抗体又は抗体断片を安定した連結ユニットによって生物活性を有する毒性薬物に連結することを指す。抗体は、直接的に、又はリンカーを介して薬物に結合することができる。抗体当たりの薬物モジュールの平均個数(平均薬物負荷量又は薬物担持量、n値で示されてよい)は、その範囲として、例えば、各抗体が約0個~約20個の薬物モジュールに結合してもよく、ある実施形態では、各抗体が1個~約10個の薬物モジュールに結合し、ある実施形態では、各抗体が1個~約8個の薬物モジュールに結合する。
【0069】
「平均薬物負荷量」又は「薬物担持量」という用語は、式(I)の分子にそれぞれのリガンドに担持された細胞毒性薬物の平均数量を指し、薬物量と抗体量との比率として表されてもよく、薬物担持量の範囲としては、各リガンド(Pc)が0~12個、好ましくは1~10個の細胞毒性薬物に連結してもよい。本開示の実施形態において、薬物担持量はnで示され、DAR(Drug-antibody Ratio)値と称されてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値である。UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験やHPLCのような従来の方法により、カップリング反応後の各ADC分子の薬物平均数量を特徴づけることができる。
【0070】
本開示で用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J. biol. chem、243、p3558(1968)に記載される通りである。
【0071】
「抗体」という用語は、2本の重鎖と2本の軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結してなるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。免疫グロブリンの重鎖定常領域のアミノ酸組成及び配列順序により、免疫グロブリンは、5つのクラスに分けるか又は、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンのアイソタイプと呼ぶことができ、その対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一クラスのIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数及び位置の違いによって、異なるサブクラスに更に分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いによってκ鎖又はλ鎖に分けられる。Igの5つのクラスのそれぞれは、いずれもκ鎖又はλ鎖を有することができる。
【0072】
全長抗体重鎖及び軽鎖のN末端に近い約110個のアミノ酸配列は、変化が大きくて、可変領域(Fv領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列は、比較的に安定的であり、定常領域となる。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、配列が比較的に保存的な4つのフレームワーク領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。それぞれの軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ基末端からカルボキシル基末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0073】
「完全ヒト化抗体」、「完全ヒト抗体」又は「全ヒト抗体」という用語は、「全ヒト化モノクローナル抗体」とも呼ばれ、その抗体の可変領域及び定常領域は何れもヒト由来であり、免疫原性及び毒性と副作用を除去する。モノクローナル抗体の発展は、それぞれマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体及び全ヒト化モノクローナル抗体である4つの段階を経た。全ヒト化抗体の調製に関連する技術は主に、ヒトハイブリドーマ技術、EBVによるBリンパ球の形質転換技術、ファージディスプレ技術(phage display)、トランスジェニックマウス抗体調製技術(transgenic mouse)及び単一B細胞抗体調製技術などがある。
【0074】
「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数の断片である。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。「抗原結合断片」に含まれる結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、単鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(二重抗体)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドの抗原結合断片から選ばれ、例えば、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab')2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVH及びVLドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなる単一ドメイン又はdAb断片(Wardet al., (1989)Nature341: 544-546)、及び(vi)単離した相補性決定領域(CDR)、又は(vii)任意選択的に、合成されたリンカーにより連結可能な2つ以上の単離したCDRの組み合わせ、を含む。なお、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、分離した遺伝子でコードされるが、その中のVL及びVH領域がペアになって1価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al. (1988)Science242: 423-426、及びHuston et al. (1988)Proc. Natl. Acad. Sci USA85: 5879-5883を参照)を生成することができるように、組換え法により、合成されたリンカーでそれらを連結することができる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれることが意図される。このような抗体断片は、当業者に知られている従来の技術により得られ、また、完全な抗体と同じように、断片が機能性によってスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又は、完全な免疫グロブリンを酵素的若しくは化学的に切断することにより生成することができる。抗体は、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体のような異なるアイソタイプの抗体であってもよい。
【0075】
通常、Fabは、プロテアーゼであるパパイン(例えば、H鎖を切断する224位のアミノ酸残基)でIgG抗体分子を処理することで得られた断片のうちの、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗体断片であり、そのうち、H鎖のN末端側の一部及びL鎖は、ジスルフィド結合により一緒に結合される。
【0076】
通常、F(ab')2は、酵素ペプシンによりIgGヒンジ領域におけるジスルフィド結合の下方部分を消化することで得られた、分子量が約100,000で抗原結合活性を有するとともに、ヒンジ位置にて連結された2つのFab領域に含まれる抗体断片である。
【0077】
通常、Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得られた、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0078】
なお、Fab'断片をコードするDNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入してベクターを原核生物又は真核生物に導入することにより、Fab'を発現して前記Fab'を製造することができる。
【0079】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーにより連結された抗体重鎖可変ドメイン(又はVH)と抗体軽鎖可変ドメイン(又はVL)の分子を含むことを指す。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有することができる。好適な従来技術のリンカーは、反復のGGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなり、例えば、1~4個の反復変異体(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA90: 6444-6448)が用いられる。本開示に用いられる他のリンカーは、Alfthan et al.(1995), Protein Eng. 8:725-731、Choi et al. (2001), Eur.J.Immuno l. 31:94-106、Hu et al. (1996), Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanov et al.(1999), J.Mol.Biol. 293:41-56及びRoovers et al.(2001), Cancer Immunol.で記載されている。
【0080】
「CDR」という用語は、抗体の可変ドメインにおいて抗原結合を促進する主な6つの超可変領域の1つである。通常、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。様々な公知の解決案のうちの何れか1つによりCDRのアミノ酸配列境界を決定することができる。前記6つのCDRの最もよく使われた定義の1つは、Kabat E. A. et al., (1991)Sequences of proteins of immunological interest. NIH Publication 91-3242)により提供される。本願で用いられるように、CDRのKabat定義は、軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2とCDR3、及び重鎖可変ドメインのCDR2とCDR3にしか応用されない。更に、「Chothia」番号付け規則、「ABM」番号付け規則、「contact」番号付け規則(Martin, ACR. Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains[J]. 2001を参照)及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc M.P., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(2003)などを含む。
【0081】
「抗体フレームワーク」という用語は、可変ドメインVL又はVHの一部を指し、当該可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のステントとして用いられる。それは、本質的に、CDRを有しない可変ドメインである。
【0082】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、抗原における免疫グロブリン又は抗体によって結合される部位である。エピトープは通常、独特な空間的配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続的又は非連続的なアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular B iology, 第66巻, G.E.Morris, Ed.(1996)を参照する。
【0083】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」及び「特異的に結合」という用語は、予め決定された抗原上のエピトープへの抗体の結合である。通常、抗体は、約10-7 Mよりも小さく、例えば、約10-8 M、10-9 M又は10-10 Mよりも小さく、又はそれよりも小さい親和性(KD)で結合する。
【0084】
「KD」という用語は、抗体-抗原が互いに作用する解離平衡定数を指す。通常、本開示の抗体(又は、抗原結合断片)は、約10-7 Mよりも小さく、例えば、約10-8 M又は10-9 Mよりも小さい解離平衡定数(KD)でCEA(又はそのエピトープ)に結合し、例えば、本開示において、抗体と細胞表面抗原との親和性について、FACS法によりKD値が測定される。
【0085】
「競合」という用語は、同じエピトープの抗原結合タンパク質の競合(例えば、抗原結合タンパク質の中和又は抗体の中和)に用いられる場合に、下記アッセイ法により測定される抗原結合タンパク質間での競合を指し、前記アッセイ法において、検出すべき抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその免疫学的機能断片)により、参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンド又は参照抗体)と共通抗原(例えば、CEA抗原又はその断片)との特異的結合を防止又は阻害(例えば、低減)する。様々な競合的結合アッセイは、1つの抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合しているか否かを決定することに用いることができ、これらのアッセイは、例えば、固相直接又は間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methodsin Enzymology 9: 242-253を参照)、固相直接ビオチンーアビジンEIA(例えば、Kirkland et al., 1986, J.Immunol.137: 3614-3619を参照)、固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(例えば、HarlowとLane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual(抗体、実習マニュアル)、Cold Spring Harbor Pressを参照)、I-125マーカーを用いる固相直接標識化RIA(例えば、Morel et al., 1988, Molec.Immunol.25: 7-15を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung et al., 1990, Virology176: 546-552を参照)、及び直接標識化RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand.J.Immunol.32: 77-82)である。通常、前記アッセイ法は、標識されていない検出抗原結合タンパク質及び標識された参照抗原結合タンパク質の何れか1つを担持した固体表面又は細胞に結合する精製した抗原の使用に関する。測定される抗原結合タンパク質の存在下で固体表面又は細胞に結合する標識の量を測定することにより、競合的阻害を測定する。通常、測定される抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合的測定(競合抗原結合タンパク質)により同定される抗原結合タンパク質は、参照抗原結合タンパク質と同一のエピトープに結合する抗原結合タンパク質と、参照抗原結合タンパク質の結合エピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質とを含み、前記2つのエピトープは空間的に互いに干渉し合いながら結合を行う。本願の実施例には、競合的結合を測定するための方法の他の詳細な資料が提供される。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、参照抗原結合タンパク質と共通抗原との特異的結合は、少なくとも40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%又は75%又はそれ以上阻害(例えば、低減)される。ある場合に、結合は、少なくとも80~85%、85~90%、90~95%、95~97%又は97%又はそれ以上阻害される。
【0086】
「核酸分子」という用語は、DNA分子又はRNA分子を指す。核酸分子は、単鎖又は二重鎖であってもよいが、好ましくは、二重鎖DNAである。核酸が別の核酸配列とともに機能的関係に置かれる場合、核酸は「効果的に連結される」ことになる。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーター又はエンハンサーは、前記コード配列に効果的に連結されている。
【0087】
アミノ酸配列の「同一性」とは、アミノ酸配列のアラインメント中に、配列同一性のパーセンテージが最も大きく達成されるように、必要に応じてギャップを導入し、且つ、任意の保存的置換も配列同一性の一部とは見なされずに、第1配列における第2配列中のアミノ酸残基と同一であるアミノ酸残基のパーセンテージである。アミノ酸の配列同一性のパーセンテージを測定するために、アラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に取得可能なコンピュータソフトウェアなどの、当該分野の技術的範囲内の複数の方法により実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するために適用されるパラメータを決定することができる。
【0088】
「発現ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を輸送可能な核酸分子を指す。一実施形態において、ベクターは「プラスミド」であり、他のDNAセグメントをそれに連結することができる環状二重鎖DNAループを指す。別の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、そのうち、他のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。本願に開示のベクターは、それらを導入した宿主細胞において自己複製することができ(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーマル哺乳動物ベクター)、又は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに整合されることで、宿主ゲノムとともに複製することができる(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)。
【0089】
従来技術でよく知られている抗体及び抗原結合断片の製造及び精製方法は、例えば冷泉港の抗体実験技術マニュアルの5~8章及び15章の通りである。抗原結合断片は同じく、従来の方法により調製することができる。発明に記載される抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒト由来のCDR領域に1つ又は複数のヒト由来のFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系配列は、IMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系遺伝子のデータベースとMOEソフトウェアをアラインメントすることにより、ImMunoGeneTics(IMGT)のウェブサイトhttp://imgt.cines.frから取得し、又は免疫グロブリン雑誌Lefranc, G., The Immunoglobulin FactsBook, Academic Press, 2001ISBN012441351から取得することができる。
【0090】
「宿主細胞」という用語は、その中に発現ベクターを導入した細胞を指す。宿主細胞は、細菌、微生物、植物又は動物の細胞を含んでもよい。形質転換しやすい細菌は、大腸菌(Escherichia coli)やサルモネラ菌(Salmonella)の菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を含む。好適な微生物は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア酵母(Pichia pastoris)を含む。好適な動物宿主細胞系は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)及びNS0細胞を含む。
【0091】
本開示の工学的な抗体又は抗原結合断片は、従来の方法により、調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンして発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、宿主細胞を安定してトランスフェクションすることができる。更に好ましい従来技術の1つとして、哺乳動物発現系は、特にFc領域のN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。陽性クローンは、バイオリアクターの培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体を分泌した培養液は、従来の技術により精製することができる。例えば、A又はG Sepharose FFカラムで精製する。非特異的結合の成分を洗い流す。更にpH勾配法により結合した抗体を溶出し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、従来の方法により濾過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子篩、イオン交換などの従来の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0092】
「ペプチド」という用語は、アミノ酸とタンパク質との間の化合物断片を指し、2つ以上のアミノ酸分子をペプチド結合により互いに連結してなるものであり、タンパク質の構造と機能断片である。
【0093】
「糖」という用語はC、H、Oの3つの元素からなる生体高分子を指し、単糖、二糖と多糖などに分けることができる。
【0094】
「アルキル基」という用語は1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基である飽和脂肪族炭化水素基を指し、好ましくは1~12個の炭素原子を含むアルキル基、より好ましくは1~10個の炭素原子を含むアルキル基、最も好ましくは1~6個の炭素原子(1個、2個、3個、4個、5個又は6個の炭素原子を含む)を含むアルキル基である。その非限定的な例はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその様々な分岐鎖異性体などを含む。より好ましくは1~6個の炭素原子を含む低級アルキル基であり、その非限定的な実施例はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は置換されても置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、前記置換基は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基から独立して選ばれる1つ又は複数の基である。
【0095】
「ヘテロアルキル基」という用語は、上記に定義された通りである、N、O又はSから選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子を含むアルキル基である。
【0096】
「アルキレン基」という用語は、親アルカンの同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して誘導される2つの残基を有する飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を含み、より好ましくは1~6個の炭素原子(1個、2個、3個、4個、5個又は6個の炭素原子を含む)を含むアルキレン基である。アルキレン基の非限定的な例はメチレン基(-CH2-)、1,1-エチレン基(-CH(CH3)-)、1,2-エチレン基(-CH2CH2)-、1,1-プロピレン基(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン基(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン基(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)及び1,5-ブチレン基(-CH2CH2CH2CH2CH2-)などを含むが、これらに限定されない。アルキレン基は置換されても置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、前記置換基は、好ましくは、独立して任意選択的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びオキソ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0097】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換シクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基又はシクロアルキル基は上記のように定義される。アルコキシ基の非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は任意選択的に置換されても置換されなくてもよく、置換される場合、置換基は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から独立して選ばれる1つ又は複数の基である。
【0098】
「ハロアルキル基」という用語は、上記のように定義される、水素が1つ又は複数のハロゲンで置換されたアルキル基を指す。
【0099】
「重水素化アルキル基」という用語は、上記のように定義される、水素が1つ又は複数の重水素原子で置換されたアルキル基を指す。
【0100】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は、上記のように定義される、水素が1つ又は複数のヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0101】
「ヒドロキシ基」という用語は-OH基を指す。
【0102】
「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0103】
「アミノ基」という用語は-NH2を指す。
【0104】
用語「ニトロ基」という用語は-NO2を指す。
【0105】
用語「シアノ基」という用語は-CNを指す。
【0106】
本開示は、種々の重水素化形態の式(I)化合物を更に含む。炭素原子に連結されるそれぞれの利用可能な水素原子は、独立して重水素原子で置換されてもよい。当業者は、関連文献を参照して重水素化形態の式(I)化合物を合成することができる。重水素化形態の式(I)化合物は、調製する場合、市販の重水素化出発物質を使用してもよく、又は、従来の技術により重水素化試薬で合成されてもよく、重水素化試薬は、重水素化ボラン、三重水素化ボランテトラヒドロフラン溶液、重水素化水素化アルミニウムリチウム、重水素化ヨードエタン及び重水素化ヨードメタンなどを含むが、これらに限定されない。
【0107】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしもそうであるとは限らないことを意味し、当該表現には当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的にアルキル基によって置換されたヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在してもよいが、必ずしもそうであるとは限らないことを意味し、当該表現にはヘテロシクリル基がアルキル基で置換される場合とヘテロシクリル基がアルキル基で置換されない場合が含まれる。
【0108】
「置換された」とは基の1つ又は複数の水素原子、好ましくは最大5つまで、より好ましくは1つ、2つ又は3つの水素原子が互いに独立して置換基で置換されることを指す。置換基は化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者は過度の努力をしなくても(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基は、不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子に結合する場合、不安定になる可能性がある。
【0109】
「薬物組成物」という用語は、1種又は複数種の本願に記載の化合物又は生理学的に/薬学的に許容されるその塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物、及び例えば生理学的に/薬学的に許容される担体及び賦形剤などの他の成分を含むことを意味する。薬物組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物学的活性を発揮することを目的とする。
【0110】
「薬学的に許容される塩」又は「薬用可能な塩」という用語は、本開示の抗体薬物複合体の塩、又は本開示に記載の活性化合物の塩を指し、このような塩は、被験者に用いられる場合、安全性及び有効性を有するとともに、必須の生物活性を有し、本開示のリガンド薬物複合体は、少なくとも1つのアミノ基を含むため、酸と合わせて塩を形成することができ、薬学的に許容される塩の非限定的な実例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、ソルビン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、サリチル酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0111】
本開示の一実施形態において、細胞毒性薬物は、連結ユニットにより抗体のメルカプト基に結合される。
【0112】
下記を含む非限定的な方法により、リガンド細胞毒性薬物複合体の担持量を制御することができ、
(1)連結試薬とモノクローナルのモル比の制御、
(2)反応時間及び温度の制御、
(3)異なる反応試薬の選択。
【0113】
従来の薬物組成物の調製は中国薬典を参照する。
【0114】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本開示の薬物に用いられ、薬物の被験者への入り込み方式及び体内での分布を変更し、薬物の放出速度を制御して薬物を標的器官へ輸送する系を指す。薬物担体放出及び標的系は、薬物の分解及び損失を減少させ、副作用を低下させ、生体利用率を向上させることができる。例えば、担体とされる高分子界面活性剤は、その独特な両親媒性構造のため、自己集合することで、様々な形態の凝集体を形成することができ、好ましい例としては、ミセル、マイクロエマルジョン、ゲル、液晶、小胞などである。これらの凝集体は、薬物分子を封入する能力を有するとともに、膜に対して良好な浸透性を有するため、良い薬物担体とすることができる。
【0115】
「賦形剤」という用語は、薬物組成物における活性化合物以外の付加物であり、添加物と呼ばれてもよい。例えば、トローチ剤中の粘着剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、半固体製剤である軟膏剤やクリーム剤中の基質部分、液体製剤中の防腐剤、酸化防止剤、矯味剤、芳香剤、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、着色剤などは何れも、賦形剤と呼ぶことができる。
【0116】
「希釈剤」という用語は充填剤とも呼ばれ、トローチ剤の重量及び体積を増加させることがその主な用途である。希釈剤を加入することにより、一定の体積の大きさを確保するだけでなく、主成分の用量偏差を低減し、薬物の圧縮成形性などを改善する。トローチ剤の薬物に油性成分が含まれる場合、「乾燥」状態を維持してトローチ剤を調製するように、吸収剤を加えて油性物質を吸収する必要がある。例えば、澱粉、乳糖、カルシウムの無機塩、微結晶性セルロースなどである。
【0117】
薬物組成物は、滅菌注射用水溶液の形態であってもよい。使用される許容可能な溶媒及び溶剤には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム液があってもよい。滅菌注射製剤は、その活性成分が油相に溶解した滅菌注射水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を大豆油とレシチンの混合物に溶解する。その後、油溶液を水とグリセリンの混合物に加えて処理してマイクロエマルジョンを形成する。局所で大量に注射することにより、注射液又はマイクロエマルジョンを被験者の血液に注入してもよい。又は、最も好ましくは、本発明に係る化合物の一定のサイクル濃度を維持できる方法で溶液及びマイクロエマルジョンを投与する。このような一定の濃度を維持するためには、連続静脈内送達装置を使用することができる。このような装置の例としては、Deltec CADD-PLUS.TM.5400型の静脈内ポンプである。
【0118】
薬物組成物は、筋肉内及び皮下投与に使用される滅菌注射水又は油性懸濁液の形態であってもよい。当該懸濁液は、既知の技術に従って、上記好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて調製することができる。滅菌注射製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶剤において調製された滅菌注射液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールにおいて調製された溶液であってもよく。なお、滅菌固定油を溶剤又は懸濁媒体として使用することを容易にすることができる。このために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の混合固定油を使用することができる。なお、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤を調製することもできる。
【0119】
本開示は、開裂可能な特定構造の連結アームと特定構造の活性物、及び連結アーム、活性物と抗体からなる抗体薬物複合体(ADC)に関する。このようなADCは、スペーサーを介して1つの毒性物質を抗体に連結してなる複合体である。当該抗体複合薬物(ADC)は、インビボで分解して活性分子を放出することで、抗腫瘍作用を果たす。
【0120】
二、合成方法
合成の目的を達成するために、以下の合成技術案が採用される。
一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される化合物の調製方法であって、
【化16】
Pcを還元させた後、一般式(L
a-Y-D)とカップリング反応を行い、一般式(Pc-L
a-Y-D)で示される化合物を得るステップを含み、還元剤は、好ましくはTCEPであり、特に好ましくは、抗体上のジスルフィド結合を還元させ、
そのうち、
Pc、W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、一般式(Pc-L
a-Y-D)に定義された通りである化合物の調製方法。
【0121】
上記明細書には、本開示の1つ又は複数種の実施形態の詳細が提出されている。本開示は、本願の記載と類似又は同様の任意の方法と材料により実施又は試験することができるが、以下、好ましい方法と材料を説明する。明細書と特許請求の範囲により、本開示の他の特徴、目的及び利点は明らかになる。明細書と特許請求の範囲において、文脈で特に明記しない限り、単数形は複数の指示対象を含む。特に定義しない限り、本願で用いられる技術及び科学用語の全ては、本開示の属する分野の当業者により理解されている一般的な意味を有する。明細書に引用される特許及び出版物の全ては、引用により組み込まれている。下記実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に全面的に説明するために提出される。これらの実施例は決して、本開示の範囲を限定するものと理解すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲により限定される。
【0122】
実施例1:CEA組換えタンパク質及び安定的にトランスフェクションした細胞の調製
一、組換えCEA抗原及び細胞表面にCEAタンパク質が発現される配列
Fc、Hisタグ付きのヒトCEAアミノ酸配列をコードしてそれぞれ哺乳動物細胞発現ベクターにクローンし、293E細胞において発現して精製した後、組換えタンパク質を取得し、その後の各実施例の実験に使用した。同時に、タグ無しのヒトCEA遺伝子、ヒトCEACAM1遺伝子及びサルCEA遺伝子をCHO細胞にトランスフェクションし、細胞表面にCEAタンパク質が発現されるCHO細胞株を形成し、その後の抗体のスクリーニングと同定に使用した。関連するタンパク質のアミノ酸配列は、以下の通りである。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
二、関連するタンパク質の精製
1、Hisタグ付きのタンパク質の精製
細胞発現上清試料を高速で遠心分離して不純物を除去した。PBS緩衝液(pH 7.4)でニッケルカラムを平衡化し、2~5倍のカラム体積で洗い流し、上清試料を一定の流速でNi Sepharose excelカラムに導入した。A280読取値が基線に低減されるまで、PBS緩衝液でカラムを洗い流し、更にPBS+10 mMのイミダゾールでクロマトグラフィーカラムを洗い流し、非特異的結合のヘテロタンパク質を除去し、流出液を収集し、最後に、イミダゾールを300 mM含むPBS溶液で目的タンパク質を溶出し、溶出ピークを収集した。収集された溶出液を濃縮した後、脱塩カラムにより試料の緩衝液をPBS溶液に変換し、その後の実験の使用に備えた。
【0130】
2、Fcを含むタンパク質、キメラ抗体及びハイブリドーマ抗体の精製
細胞発現上清試料を高速で遠心分離して不純物を除去し、Fcを含む組換えタンパク質、キメラ抗体発現上清をProtein Aカラムで精製し、ハイブリドーマ発現上清をProtein Gカラムで精製した。上清液を一定の流速でカラムに導入した。A280読取値が基線に低減されるまで、PBSでカラムを洗い流した。pH 3.0の100 mMの酢酸で目的タンパク質を溶出し、pH 8.0の1 MのTris-HClで中和した。溶出試料を濃縮してPBSに変換した後、分注して使用に備えた。
【0131】
実施例2:マウス抗ヒトCEAモノクローナル抗体の調製
1、免疫と融合
マウスの免疫は、hCEA-Hisタンパク質とcyno-CEA-Hisタンパク質、又はhCEA-CHO細胞とcynoCEA-CHO細胞により交差免疫を行った。タンパク質免疫の用量は、1回目の免疫が50 μg、その後の免疫が25 μgであり、細胞免疫は1回当たり107個の細胞であり、2週間ごとに1回免疫した。3回免疫した後、採血して血清中抗体の力価を測定し、血清中抗体価が高くて安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行い、PEG媒介の融合ステップで脾リンパ球と骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録少量)CRL-8287TM)を融合してハイブリドーマ細胞を得た。融合済みのハイブリドーマ細胞を0.5~1×106個/mLの密度でMC半固形完全培地(20%のFBS、1×HAT、1×OPI及び2%のMethyl celluloseを含むRPMI-1640培地)により再懸濁し、35 mmの細胞培養皿に分注し、37℃、5%のCO2で7~9日間インキュベートした。融合した後7~9日目に、細胞クローンサイズに基づき、単細胞を選び出して、200 μl/ウェルのHT完全培地(20%のFBS、1×HT及び1×OPIを含むRPMI-1640培地)を加えた96ウェル細胞培養プレートにクローンし、37℃、5%のCO2で3日間培養して検出した。
【0132】
2、ハイブリドーマ細胞の選別
抗体の一次スクリーニングは、細胞表面抗原に基づく酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)により行われた。細胞をElisaプレート(Corning, Cat# 3599)に敷き、37℃のインキュベーターで一晩培養し、細胞が完全に壁に付着してもうすぐウェルにおいていっぱいになると、上清液を除去し、PBSで1回洗浄し、細胞固定液(Beyotime, Cat# P0098)を加え、室温で45分間放置し、固定液を除去し、プレートウォッシャーでプレートを3回洗い、5%の脱脂粉乳を加え、37℃で3 h以上ブロッキングした。ブロッキング液を除去し、プレートウォッシャーでプレートを3回洗った。ブロッキング済みの細胞プレートは、-20℃で置いて保存してもよく、そのまま使用してもよい。使用時に、勾配希釈されたハイブリドーマ細胞培養上清液を加え、37℃で1時間インキュベートし、プレートウォッシャーで3回洗い、10000倍希釈されたGoat anti-mouse IgG H&L(HRP)二次抗体(Abcam, Cat# ab205719)を100 μl加え、37℃で1 時間インキュベートし、プレートウォッシャーで3回洗い、TMB(KPL, Cat# 5120-0077)を100 μl加えて37℃で置いて10分間発色し、1 Mの硫酸を100 μl加えて反応を終了させ、マイクロプレートリーダーにより450 nmの吸光値を読み取った。試験抗体が可溶性CEA(sCEA)によって競合的に除去されずに細胞表面のCEAに結合すると、抗体とsCEAを30分間インキュベートしてから細胞プレートに入れた。
【0133】
スクリーニングされた陽性クローンを増幅して種として凍結保存し、且つ単細胞クローンが得られるまで2~3回サブクローンした。選択されたハイブリドーマクローンから無血清細胞培養法により更に抗体を調製、精製した。得られたハイブリドーマ抗体について、フローサイトメーターにより抗体と細胞表面のCEAタンパク質との結合状況(方法は本開示の試験例1を参照)を検出し、結合活性の良いハイブリドーマ細胞株を選択した。そのうち、モノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb47、mAb63、mAb67及びmAb103の結合活性の検出結果は、表1に示されている.
【0134】
【0135】
3、ハイブリドーマ抗体配列の測定
モノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb47、mAb63、mAb67及びmAb103を選択し、モノクローナル抗体の配列をクローンした。プロセスは次の通りである。対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集し、Trizol(Invitrogen, Cat# 15596-018)でRNAを抽出し、cDNAに逆転写した。cDNAをテンプレートとしてPCRの増幅を行った後、シークエンシングするためにシークエンシング社に送り、得られたDNA配列に対応する抗体アミノ酸配列は、下記の表2に示されている。
【0136】
【0137】
【0138】
4、ヒトIgG1キメラ抗体の調製
上記ハイブリドーマのスクリーニングにより得られたmAb47、mAb63、mAb67及びmAb103候補分子を増幅してシークエンシングすることで、可変領域コード遺伝子配列が得られ、シークエンシングにより得られた配列をもって両端部のプライマーを設計し、シークエンシング遺伝子をテンプレートとして、PCRにより各抗体VH/VK遺伝子断片を組み立て、発現ベクターpHr(シグナルペプチド及びhIgG1/hkappa/hlambda定常領域付きの遺伝子(CH1-Fc/CL)断片)と相同的組換えを行い、組換えキメラ抗体全長発現プラスミドVH-CH1-Fc-pHr/VL-CL-pHrを構築し、更にそのキメラ抗体Ch47、Ch63、Ch67及びCh103を得た。
【0139】
実施例3:マウス抗ヒトCEAモノクローナル抗体のヒト化
IMGTヒト抗体重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子のデータベースとMOEソフトウェアをアラインメントすることにより、テンプレートとして相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をそれぞれ選択し、マウス抗体のCDRを対応するヒト化テンプレートにそれぞれgraft(グラフト)し、シーケンスがFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である可変領域配列を形成した。下記の例において、抗体のCDRアミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定されて注釈される。
【0140】
1、マウス抗体mAb47のヒト化
相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb47のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV6-21*01及びIGKJ2*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV7-4-1*02及びIGHJ6*01を選択し、マウス抗体mAb47のCDRを対応するヒト化テンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行い、マウス抗体mAb47のヒト化復帰変異の設計は、下記の表4に示されている。
【0141】
【0142】
また、更に、重鎖可変領域h47VH3にD61S変異(即ち、抗体HCDR2配列がWINTYSGVPTYADDFKG(SEQ ID NO:16)からWINTYSGVPTYASDFKG(SEQ ID NO:38)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入して、重鎖可変領域h47VH4が得られたが、抗体は依然として、良好な活性を有する。
【0143】
マウス抗体mAb47のヒト化後の具体的な配列は、表5に示されている。
【表5】
【0144】
2、マウス抗体mAb63のヒト化
相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb63のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV1-39*01及びIGKJ4*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV1-46*01及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb63のCDRを対応するヒト化テンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行い、マウス抗体mAb63のヒト化復帰変異の設計は、下記の表6に示されている。
【0145】
【0146】
また、更に、重鎖可変領域h63VH1にN54S変異(即ち、抗体HCDR2配列がDIFPKNGNTDYNRKFKD(SEQ ID NO:22)からDIFPKSGNTDYNRKFKD(SEQ ID NO:47)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入して、重鎖可変領域h63VH5が得られたが、抗体は依然として、良好な活性を有する。
【0147】
マウス抗体mAb63のヒト化及び変異後の具体的な配列は、表7に示されている。
【表7】
【0148】
3、マウス抗体mAb67のヒト化
相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb67のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV4-1*01及びIGKJ4*01、IGKV3-15*01及びIGKJ4*01、又はIGKV1-39*01及びIGKJ4*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV1-3*01及びIGHJ1*01、又はIGHV5-51*01及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb67のCDRを対応するヒト化テンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行い、マウス抗体mAb67のヒト化復帰変異の設計は、下記表8に示されている。
【0149】
【0150】
マウス抗体mAb67のヒト化後の具体的な配列は、表9に示されている。
【表9】
【0151】
4、マウス抗体mAb103のヒト化
相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb103のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGLV4-69*01及びIGLJ2*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV7-4-1*02及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb103のCDRを対応するヒト化テンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行い、マウス抗体mAb103のヒト化復帰変異の設計は、下記表10に示されている。
【0152】
【0153】
また、更に、重鎖h103VH1にD61S変異(即ち、抗体HCDR2配列がWINTYSGVPTYADDFKG(SEQ ID NO:16)からWINTYSGVPTYASDFKG(SEQ ID NO:38)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入し、軽鎖h103VL3にD56E変異(即ち、抗体LCDR2配列がLKKDGSHSTGD(SEQ ID NO:36)からLKKDGSHSTGE(SEQ ID NO:64)に変異するように、抗体LCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入したが、抗体は依然として、良好な活性を有する。
【0154】
マウス抗体mAb103のヒト化後の具体的な配列は、表11に示されている。
【表11-1】
【表11-2】
【0155】
5、ヒト化抗体の調製
抗体軽鎖及び重鎖の発現ベクターをそれぞれ構築し、ヒト化した抗体軽/重鎖をそれぞれクロスペアリングして組み合わせ、293E細胞をトランスフェクションした後、上清を収集して培養し、精製するとヒト化した全長抗体を得た。ヒト化抗体重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びその変異体の定常領域から選ばれてもよく、例えば、ヒト重鎖IgG1定常領域(SEQ ID NO:77に示される)を用いて前記ヒト化重鎖可変領域に連結することで抗体全長重鎖が形成され、ヒト化抗体軽鎖定常領域は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の定常領域から選ばれてもよく、例えば、ヒト軽鎖定常領域κ鎖(SEQ ID NO:78に示される)又はヒト軽鎖定常領域λ鎖(SEQ ID NO:79に示される)を用いて前記ヒト化軽鎖可変領域に連結することで抗体全長軽鎖が形成される。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
例示的に、前記mAb47由来の表5に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長重鎖を形成するとともに、表5に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長軽鎖を形成し、下記表12に示すような一連のmAb47ヒト化抗体を得た。
【0160】
【0161】
例示的に、前記mAb63由来の表7に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長重鎖を形成するとともに、表7に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長軽鎖を形成し、下記表13に示すような一連のmAb63ヒト化抗体を得た。
【0162】
【0163】
例示的に、前記mAb67由来の表9に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長重鎖を形成し、表9に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長軽鎖を形成し、下記表14に示すような一連のmAb67ヒト化抗体を得た。
【0164】
【0165】
例示的に、前記mAb103由来の表11に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長重鎖を形成し、表11に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:79に示されるヒト軽鎖λ定常領域のアミノ基末端に連結して抗体全長軽鎖を形成し、下記表15に示すような一連のmAb103ヒト化抗体を得た。
【0166】
【0167】
例示的に、ヒト化抗体軽/重鎖全長配列は、下記表16に示されている。
【表16-1】
【表16-2】
【0168】
現在知られているCEAを標的とする2つのADC分子は、SAR-408701及びlabetuzumab govitecan(Lmab-CL2A-SN38とも呼ばれる)であり、その中の抗体軽/重鎖配列が下記の通りである。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
従来の遺伝子クローニング、組換え発現の方法により上記抗体をそれぞれクローニングし、発現し、精製した。
【0174】
実施例4:化合物の調製
【0175】
本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、従来の条件に従い、又は原料や商品のメーカーにより勧められた条件に従う。具体的な供給源が明記されていない試薬は、市販される従来の試薬である。
【0176】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は質量分析(MS)によって決定される。NMRの測定は、Bruker AVANCE-400核磁気共鳴装置が使用され、測定溶剤は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)、重水素化メタノール(CD3OD)であり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)であり、化学シフトは10-6(ppm)単位で示される。
【0177】
MSの測定は、FINNIGAN LCQAd(ESI)質量分析計(メーカー:Thermo、方盤:Finnigan LCQ advantage MAX)が使用される。
【0178】
UPLCの測定は、Waters Acquity UPLC SQD液体クロマトグラフ質量分析計が使用される。
【0179】
HPLCの測定は、アジレント1200DAD高速液体クロマトグラフ(Sunfire C18 150×4.6 mmクロマトグラフィーカラム)及びWaters 2695-2996高速液体クロマトグラフ(Gimini C18 150×4.6 mmクロマトグラフィーカラム)が使用される。
【0180】
UV-HPLCの測定は、Thermo nanodrop2000紫外線分光光度計が使用される。
【0181】
増殖阻害率及びIC50値の測定は、PHERA starFSマイクロプレートリーダー(独BMG社)が使用される。
【0182】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとしては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートが使用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されるシリカゲルプレートの仕様は0.15 mm~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる製品の分離精製用のシリカゲルプレートの仕様は、0.4 mm~0.5 mmである。
【0183】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に、煙台黄海200~300メッシュのシリカゲルを担体として使用する。
【0184】
本開示に係る既知の出発物質は、本分野での既知の方法を採用して又はそれに従って合成してもよく、又はABCR GmbH & Co.KG、Acros Organnics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社より購入してもよい。
【0185】
実施例で特別な説明がなければ、反応は、何れもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気において行われる。
【0186】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容量約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0187】
水素雰囲気は、反応フラスコに容量約1 Lの水素バルーンが接続されていることを指す。
【0188】
加圧水素化反応は、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用される。
【0189】
水素化反応は一般的に、真空排気して水素を注入する操作を3回繰り返してから行われる。
【0190】
マイクロ波反応は、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用される。
【0191】
実施例で特別な説明がなければ、反応中の溶液は、水溶液を指す。
【0192】
実施例で特別な説明がなければ、反応温度は室温である。
【0193】
室温は最適な反応温度であり、温度範囲が20℃~30℃である。
【0194】
実施例におけるpH=6.5のPBS緩衝液の調製は、以下の通りである。8.5 gのKH2PO4、8.56 gのK2HPO4・3H2O、5.85 gのNaCl、1.5 gのEDTAを取ってフラスコに入れ、2 Lに定容し、超声波によりそれを全て溶解させ、振り混ぜると得た。
【0195】
化合物の精製に使用されるカラムクロマトグラフィーの溶出剤系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、A:ジクロロメタン及びイソプロピルアルコール系、B:ジクロロメタン及びメタノール系、C:石油エーテル及び酢酸エチル系を含み、溶剤の体積比は化合物の極性によって調節されてもよく、少量のトリエチルアミン及び酸性又は塩基性試薬などを加えて調節されてもよい。
【0196】
本開示の化合物の一部は、Q-TOF LC/MSにより特徴づけられる。Q-TOF LC/MSは、アジレント6530精確質量四重極-飛行時間型質量分析計及びアジレント1290-Infinityの超高速液体クロマトグラフ(アジレント Poroshell 300SB-C8 5 μm、2.1×75 mmクロマトグラフィーカラム)が使用される。
【0197】
本開示の抗体薬物複合体のY-D薬物部分は、PCT/CN2019/107873を参照し、関連する化合物の合成と試験が本特許に引用されている。その中の非限定的な実施例の合成は、下記のように引用されている。
【0198】
1、本開示に係る毒性薬物の合成
(S)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド 1-A
(R)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド 1-B
【化17】
【化18】
【0199】
1b(4 mg, 7.53 μmol)に2 mLのエタノール及び0.4 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、アルゴンで3回置換し、氷水浴で0~5℃に冷却させ、0.3 mLのN-メチルモルホリンを滴下し、清澄になるまで反応液を撹拌した。反応液に、2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸1a(2.3 mg, 19.8 μmol, 特許出願「WO2013106717」に開示される方法で調製して得られた)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3 mg, 22.4 μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(4.3 mg, 22.4 μmol)を順に加えた後、0~5℃で1時間撹拌しながら反応させた。氷水浴を取り外し、30℃に加熱して2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗化合物1を高速液体クロマトグラフィーにより精製し(分離条件:クロマトグラフィーカラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、流動相:A-水(10 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル、勾配溶出、流速:18 mL/min)、対応する成分を収集し、減圧濃縮し、表題生成物(1-A:1.5 mg, 1-B:1.5 mg)を得た。
MS m/z (ESI): 534.0 [M+1]。
【0200】
単一配置の化合物1-B(比較的短い保持時間)
UPLC分析により、保持時間が1.06分間であり、純度が88%(クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、流動相:A-水(5 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル)である。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.37 (d, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.30 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 5.58-5.56 (m, 1H), 5.48 (d, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.32-5.29 (m, 2H), 3.60 (t, 1H), 3.19-3.13 (m, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.20-2.14 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.83 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.34-1.28 (m, 1H), 0.86 (t, 3H), 0.50-0.39 (m, 4H)。
【0201】
単一配置の化合物1-A(比較的長い保持時間)
UPLC分析により、保持時間が1.10分間であり、純度が86%(クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、流動相:A-水(5 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル)である。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.35 (d, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 5.58-5.53 (m, 1H), 5.42 (s, 2H), 5.37 (d, 1H), 5.32 (t, 1H), 3.62 (t, 1H), 3.20-3.15 (m, 2H), 2.40 (s, 3H), 2.25-2.16 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.21-1.14 (m, 1H), 0.87 (t, 3H), 0.47-0.35 (m, 4H)。
【0202】
2、本開示に係るリンカー毒性薬物の合成
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデシル-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル-1-イル)ヘキサンアミド 2-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデシル-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル-1-イル)ヘキサンアミド 2-B
【化19】
【化20】
【0203】
ステップ1
2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸ベンジル2a
1a(1.3 g, 11.2 mmol, 特許出願「WO2013/106717」に開示される方法で調製して得得られた)を50 mLのアセトニトリルに溶解し、炭酸カリウム(6.18 g, 44.8 mmol)、臭化ベンジル(1.33 mL, 11.2 mmol)及びテトラブチルヨウ化アンモニウム(413 mg, 1.1 mmol)を順に加えた。反応液を室温で48時間撹拌し、珪藻土により濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(10 mL)で洗浄し、濾液を合わせて減圧濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより展開溶媒系Cで精製し、表題生成物2a(2 g, 収率86.9%)を得た。
【0204】
ステップ2
10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレニル-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-酸ベンジル 2b
2a(120.9 mg, 0.586 mmol)及び2g(180 mg, 0.489 mmol, 特許出願「CN105829346A」に開示される方法で調製して得られた)を反応フラスコに入れ、4 mLのテトラヒドロフランを加え、アルゴンで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温させ、カリウムtert-ブトキシド(109 mg, 0.98 mmol)を加え、氷浴を取り外し、室温に昇温させて40分間撹拌し、10 mLの氷水を加え、酢酸エチル(20 mL×2)及びクロロホルム(10 mL×5)で抽出し、有機相を合わせて濃縮した。得られた残留物を4 mLのジオキサンに溶解し、2 mLの水を加え、炭酸水素ナトリウム(49.2 mg, 0.586 mmol)及びクロロギ酸-9-フルオレニルメチル(126 mg, 0.49 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。20 mLの水を加え、酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより展開溶媒系Cで精製し、表題生成物2b(48 mg, 収率19%)を得た。
MS m/z (ESI): 515.0 [M+1]。
【0205】
ステップ3
10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレニル-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-酸 2c
2b(20 mg, 0.038 mmol)を4.5 mLのテトラヒドロフランと酢酸エチル(V:V=2:1)の混合溶剤に溶解し、パラジウム炭素(12 mg, 含有量10%, 乾燥型)を加え、水素ガスで3回置換し、室温で1時間撹拌しながら反応させた。反応液を珪藻土で濾過し、濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄し、濾液を濃縮し、粗表題生成物2c(13 mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次の反応を行った。
MS m/z (ESI): 424.9 [M+1]。
【0206】
ステップ4
(9H-フルオレニル-9-イル)メチル(2-(((1-シクロプロピル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カーバメート 2d
1b(10 mg, 18.8 μmol)を反応フラスコに入れ、1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、アルゴンで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温させ、トリエチルアミンを1滴滴下し、粗生成物5c(13 mg, 30.6 μmol)を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(16.9 mg, 61.2 μmol)を加え、氷浴で40分間撹拌しながら反応させた。10 mLの水を加え、酢酸エチル(10 mL×3)で抽出し、有機相を合わせた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(10 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残留物を薄層クロマトグラフィーにより展開溶媒系Bで精製し、表題生成物2d(19 mg, 収率73.6%)を得た。
MS m/z (ESI): 842.1[M+1]。
【0207】
ステップ5
2-((2-アミノアセトアミノ)メトキシ)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アセトアミド 2e
2d(19 mg, 22.6 μmol)を2 mLのジクロロメタンに溶解し、1 mLのジエチルアミンを加え、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、1 mLのメチルベンゼンを加えて減圧濃縮し、2回繰り返した。残留物に3 mLのn-ヘキサンを加えてスラリー化し、静置後に上清液を注ぎ出し、固体を残した。固体残留物を減圧濃縮し、オイルポンプで乾燥させて粗表題生成物2e(17 mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次の反応に用いた。
MS m/z (ESI): 638.0[M+18]。
【0208】
ステップ6
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデシル-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル-1-イル)ヘキサンアミド 2-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデシル-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル-1-イル)ヘキサンアミド 2-B
粗生成物2e(13.9 mg, 22.4 μmol)を0.6 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、アルゴンで3回置換し、氷水浴で0~5℃に降温させ、2f(21.2 mg, 44.8 μmol, 特許出願「EP2907824」に開示される方法で調製して得られた)の0.3 mLのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加え、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(18.5 mg, 67.3 μmol)を加え、氷浴で10分間撹拌しながら反応させ、氷浴を取り外し、室温に昇温させて1時間撹拌し、反応して化合物2を生成した。反応液を高速液体クロマトグラフィーで精製し(分離条件:クロマトグラフィーカラム:XBridge Prep C18 OBD 5 μm 19*250 mm、流動相:A-水(10 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル、勾配溶出、流速:18 mL/min)、対応する成分を収集し、減圧濃縮し、表題生成物(2-A:2.4 mg, 2-B:1.7 mg)を得た。
MS m/z (ESI): 1074.4 [M+1]。
【0209】
単一配置の化合物2-A(比較的短い保持時間):
UPLC分析により、保持時間が1.14分間であり、純度が85%(クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、流動相:A-水(5 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル)である。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.60 (t, 1H), 8.51-8.49 (d, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.96 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.15 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.65-5.54 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m, 3H), 4.74-4.62 (m, 1H), 4.54-4.40 (m, 2H), 3.76-3.64 (m, 4H), 3.62-3.48 (m, 2H), 3.20-3.07 (m, 2H), 3.04-2.94 (m, 1H), 2.80-2.62 (m,12H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.15 (m, 2H), 2.15-2.04 (m, 2H), 1.93-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 5H), 0.87 (t, 3H), 0.64-0.38 (m, 4H)。
【0210】
単一配置の化合物2-B(比較的長い保持時間):
UPLC分析により、保持時間が1.16分間であり、純度が89%(クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7 μm 2.1*50 mm、流動相:A-水(5 mmolのNH4OAc)、B-アセトニトリル)である。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.68-8.60 (m, 1H), 8.58-8.50 (m, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.94 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.13 (m, 3H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.60-5.50 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m,2H), 4.78-4.68 (m, 1H), 4.60-4.40 (m, 2H), 3.76-3.58 (m, 4H), 3.58-3.48 (m, 1H), 3.20-3.10 (m, 2H), 3.08-2.97 (m, 2H), 2.80-2.72 (m, 2H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.13 (m, 2H), 2.13-2.04 (m, 2H), 2.03-1.94 (m, 2H), 1.91-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 4H), 0.91-0.79 (m, 3H), 0.53-0.34 (m, 4H)。
【0211】
実施例5:抗体薬物複合体(ADC)の調製
ADC原液薬物担持量の分析
実験の目的及び原理
ADC原液は抗体架橋剤類薬物の1つであり、その疾患を治療するメカニズムとしては、抗体の標的指向性により毒素分子を細胞に送達し、更に細胞を殺す。薬物の担持量は、薬効に決定的な役割を果たしている。紫外線法によりADC原液の薬物担持量を測定した。
【0212】
実験方法
コハク酸ナトリウム緩衝液が入ったキュベットをそれぞれ参照吸収セル及び試料測定吸収セルに置いてから、溶剤ブランクを除去した後、供試品溶液が入ったキュベットを試料測定吸収セルに置き、280 nm及び370 nmでの吸光度を測定した。
結果の算出:紫外線分光光度法(使用機器:Thermo nanodrop 2000紫外線分光光度計)によりADC原液担持量を測定し、その原理は、ある波長下でのADC原液の全吸光値が細胞毒性薬とモノクローナル抗体の当該波長での吸光値の和に等しいことであり、即ち、
( 1 ) A280
nm=εmab-280bCmab+εDrug-280bCDrug
εDrug-280:薬物の280 nmでの平均モル吸光係数が5100である;
CDrug:薬物の濃度;
εmab-280:モノクローナル原液の280 nmでの平均モル吸光係数が214600である;
Cmab:モノクローナル抗体原液の濃度;
b:光路長が1 cmである。
【0213】
同様に、試料の370 nmでの全吸光値の方程式を得ることができる。
( 2 ) A370
nm=εmab-370bCmab+εDrug-370bCDrug
εDrug-370:薬物の370 nmでの平均モル吸光係数が19000である;
CDrug:薬物の濃度;
εmab-370:モノクローナル抗体原液の370 nmでの吸光係数が0である;
Cmab:モノクローナル抗体原液の濃度;
b:光路長が1 cmである。
【0214】
(1)及び(2)の2つの方程式により、モノクローナル抗体及び薬物の2つの検出波長下の吸光係数及び濃度のデータと合わせて薬物の担持量を算出することができる。
薬物担持量=CDrug/Cmab。
【0215】
1、本開示に係る抗体薬物複合体ADCの調製
毒性化合物1-Bは、DNAトポイソメラーゼI阻害剤の1つであり、トポイソメラーゼI及びDNAで形成された複合体とともにDNA単鎖の切断を引き起こし、DNAの複製を阻止することができ、細胞内で細胞の増殖を効果的に阻害することができる。
【0216】
ADCの調製過程は下記の通りである。ヒト化抗体(Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14又はHu103-32から選ばれる)をpH 6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液(抗体濃度10 mg/mL)に置き、抗体の5.3倍のモル量に相当する10 mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(Innochem, CAS:51805-45-9, Cat# B45573)を加え、37℃の恒温振とうインキュベーターに置き、3時間反応させた。上記反応液を氷浴に置いて25℃に降温させた。
【0217】
抗体の15倍のモル量に相当する毒性化合物2-Aをジメチルスルホキシドに溶解し、上記反応液に加え、室温下の振とう器に置き、3時間反応後に反応を停止させた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩して精製し(溶出相:pH 6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.01 MのEDTA含有)、所望の抗体薬物複合分子を得て、薬物抗体のモル比(DAR, n値)が6~8である。
【0218】
当業者は、反応条件と試薬の調整によって、異なるDAR値の複合体を得ることができる。例えば、抗体とTCEP、毒性化合物とのモル比を調整し、抗体の2.5倍のモル量に相当する10 mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液及び10倍のモル量の毒性化合物2-Aを加えることにより、薬物抗体のモル比(DAR, n値)が3~5であるADC分子が得られる。
【0219】
具体的には、調製して得られたADCは下記の通りである。
【表17】
【0220】
【0221】
試験例の要求に応じて、本開示は、他のDAR値のADCを更に調製し、詳しくは試験例に示されている。
【0222】
2、対照ADC Lmab-CL2A-SN38(ADC-4)の調製
本開示における構築されたADCと対照ADC分子Lmab-CL2A-SN38との相違を評価するために、WHO Drug Information Vol. 30, No. 1, 2016における構造及び文献Mol Pharm. 2015 Jun 1; 12(6):1836-47における方法を参照して毒素CL2A-SN38を合成し、CL2A-SN38をLmabに結合し、ADC分子Lmab-CL2A-SN38を形成し、上記ADC調製方法を参照して反応条件を調整し、異なるDAR値のADC分子を得て、調製済みのADC分子を-20℃で保存して使用に備えた。
【0223】
試験例
試験例1:FACS結合実験
抗体と細胞表面CEAタンパク質との結合状況を検出するために、細胞表面にCEAが発現された細胞を用いてFACSにより抗体の結合活性を検出した。細胞を収集し、400 g、4℃で5分間遠心分離し、最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBSを加え、400 g、4℃で5分間遠心分離し、上記操作を2回繰り返し、細胞を105個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに割り当て、各ウェルに勾配希釈された抗体溶液を100 μl加え、4℃で60分間インキュベートし、遠心分離して上清を除去し、各ウェルに最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBSを250 μl加えて細胞を再懸濁し、400 g、4℃で5分間遠心分離し、上清液を除去し、上記操作を2回繰り返し、1:200で希釈された二次抗体Alexa Fluor@488ヒツジ抗ヒトIgG(H+L)(Lifetechologies, Cat# A11013)を50 μl加え、4℃で遮光で45分間インキュベートし、遠心分離して上清液を除去し、各ウェルに最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBSを250 μl加えて再懸濁し、400 g、4℃で5分間遠心分離し、上記操作を2回繰り返し、各ウェルに予冷されたPBSを100 μl加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメーターにより検出し(BD, FACSverse)、蛍光シグナル値を得て、シグナルが高いほど、抗体と細胞表面のタンパク質との結合活性が高くなることが示される。検出結果について、PRISM分析ソフトウェアにより結合グラフを作成し、フィッティングによって抗体と細胞表面タンパク質ヒトCEA(MKN45ヒト胃がん細胞, 南京科佰生物科技有限公司, Cat# CBP60488)、cynoCEA-CHO、CEACAM1-CHOとの結合活性のEC50値が得られた。ヒト化抗体の結合活性は、下記表17、18に示されている。
【0224】
【0225】
細胞表面CEAタンパク質(MKN45, cynoCEA-CHO)への他のヒト化抗体の結合活性の検出結果は、下記表18に示されている。
【表19】
【0226】
実験結果から明らかなように、本開示においてスクリーニングされたヒト化抗体は、マウス抗体と類似の結合活性を保っており、何れも細胞表面ヒトCEAタンパク質に結合することができ、本開示においてスクリーニングされたヒト化抗体は、細胞表面サルCEAタンパク質に結合可能であるとともに、サルCEAタンパク質との結合活性が陽性対照抗体よりも優れる。
【0227】
試験例2:可溶性CEA(sCEA)との競合実験
sCEAが存在する場合にも、抗体が細胞膜表面のCEAに優先的に結合するか否かを検出するために、勾配希釈された抗体と一定の溶解度のsCEA(5 μg/mL)を30分間プレインキュベートし、その後、MKN45細胞を収集し、細胞を96ウェルプレートに割り当て、各ウェルに勾配希釈された抗体、及び抗体とsCEAをプレインキュベートした混合溶液をそれぞれ加え、4℃で60分間インキュベートし、遠心分離して上清を除去し、最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBSを加えて細胞を洗浄し、上記操作を2回繰り返し、1:200で希釈された二次抗体Alexa Fluor@488ヒツジ抗ヒトIgG(H+L)(Lifetechologies, Cat# A11013)を50 μl加え、4℃で遮光で45分間インキュベートし、遠心分離して上清液を除去し、最終濃度10%のFBSの予冷されたPBSを250 μl加えて細胞を洗浄し、上記操作を2回繰り返し、各ウェルに予冷されたPBSを100 μl加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(FACS)により検出し(BD, FACSverse)、蛍光シグナル値を得た。sCEAを加えない場合にも、sCEAを加えた場合にも、シグナルの各抗体濃度での比率が2よりも小さいと、抗体はsCEAの存在下でも結合曲線が大きく変わることがなく、抗体が依然として細胞膜表面のCEAに優先的に結合することが示される。実験結果は表19及び表20に示され、そのうち、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合に、Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14、Hu103-32及び陽性対照Lmabは、抗体の濃度が異なる時の蛍光シグナルの比率が下記表19に示され、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合に、他の実験抗体の蛍光シグナルの最大比率は、下記表20に示される。
【0228】
【0229】
【0230】
実験結果から明らかなように、本開示においてスクリーニングされたヒト化抗体Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14、Hu103-32は、様々な抗体濃度で、sCEAを加えない場合にも、sCEAを加えた場合にも、蛍光シグナルの比率が2よりも小さく、例えば、Hu63-13の最大比率は1.59であるのに対して、陽性対照Lmabの最大比率は5.18に達し、本開示においてスクリーニングされた抗体は対照抗体よりも優れる。本開示においてスクリーニングされたヒト化抗体は、sCEAを加えない場合にも、sCEAを加えた場合にも、蛍光シグナルの最大比率が2よりも小さく、且つ陽性対照抗体よりも小さく、本開示においてスクリーニングされたヒト化抗体がsCEAの存在下で、依然として細胞膜表面のCEAに優先的に結合し、且つ陽性対照抗体よりも優れることが示されている。
【0231】
試験例3:Biacoreによる抗体と可溶性CEAとの親和性の測定
Biacore(GE, T200)機器により測定すべきヒト化抗体とヒト、サル可溶性CEAとの親和性を測定した。ヒト抗捕捉試薬キット(GE, Cat# BR-1008-39)の取扱書における方法に従い、ヒト抗捕捉抗体をBiacore機器のバイオセンサチップCM5(GE, Cat# BR-1005-30)と共有結合することで、一定量の測定すべき抗体に親和性捕捉を行った後、チップの表面で一連の濃度勾配の可溶性CEA抗原を流し、Biacoreにより反応シグナルをリアルタイムで検出することにより、結合と解離曲線を得た。各サイクルの解離が完了した後、ヒト抗捕捉試薬キットに配置された再生溶液でバイオチップを洗浄して再生した。実験で得られたデータをBIAevaluation version 4.1ソフトウェアにより(1:1)Langmuirモデルでフィッティングを行い、親和性の値を得た。本開示は、スクリーニングされた抗体と細胞膜表面のCEAとの結合活性が可溶性CEAよりも高いことを求めているため、抗体と可溶性CEAとの親和性が低いほど良くなる。ヒト化抗体と可溶性CEAとの親和性の試験結果は、下記表21に示されている。
【0232】
【0233】
試験結果から明らかなように、ヒト化抗体Hu63-13、Hu47-14及びHu67-14は、可溶性CEAタンパク質との親和性が何れも比較的低く、対照抗体Sanofi及びLmabよりも明らかに低い。これは、Hu63-13、Hu47-14及びHu67-14が体内で血液中の可溶性CEAにより中和されにくく、細胞膜表面にCEAが発現された細胞に結合する抗体が多くあり得ることを示唆している。
【0234】
試験例4:CEA高発現細胞MKN45における抗CEA抗体のエンドサイトーシス活性
本開示における抗CEA抗体複合体は、細胞によりエンドサイトーシスされた後、毒素を放出して細胞を殺す作用を果たすことができるため、CEAが発現された細胞におけるCEA抗体のエンドサイトーシス活性は、ADCによる活性の発揮を促進することができる。MKN45におけるヒト化抗体のエンドサイトーシス活性を評価するために、MKN45を96ウェルプレート(Coring, Cat# 3795)に敷いて一晩培養し、翌日、それぞれヒト化したCEA抗体Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14及びHu103-32とiFL Green Human IgG Labeling Reagent(Invitrogen, Cat# Z25611)を15分間プレインキュベートし、iFL試薬がヒト化抗体のFcに結合した後、抗体とiFLの複合体を細胞培養プレートに入れ、それぞれ6時間及び24時間後、細胞培養液を除去し、PBSを加えて2回洗浄し、消化して細胞を収集し、FACSで細胞中の蛍光シグナル強度を検出し、抗体が細胞によりエンドサイトーシスされた後、抗体Fcに結合したiFLが細胞に持ち込まれることになり、iFLが細胞内部に飲み込まれて、酸性環境でなければ蛍光シグナルを検出することができないので、検出されたシグナルが強いほど、抗体のエンドサイトーシス活性が高くなることを示す。各ヒト化抗体のエンドサイトーシス活性を
図1に示すように、全てのヒト化抗体は、MKN45によりエンドサイトーシスされ可能であり、時間が長くなるほど、エンドサイトーシスされた抗体が多くなる。
【0235】
試験例5:異なるCEA発現レベルのがん細胞に対するADCの細胞毒性
ヒト化したCEA抗体が毒素2-Aに結合された後、異なるCEA発現レベルのがん細胞系に対する各ADCの細胞毒性を評価した。CEA高発現細胞MKN45、CEA中発現細胞LS174T及びCEA発現陰性細胞HCT116をそれぞれ96ウェルプレートに敷き、翌日、細胞において勾配希釈されたADC試料を加え、37℃で置いて5日間培養し、各ウェルにCell Titer-Glo試薬(Promega, Cat# G9242)を50 μl加え、遮光で10分間インキュベートした後、細胞イメージング検出器(BioTek, Cytation5)により発光シグナルを検出した。検出結果について、PRISM分析ソフトウェアにより阻害グラフを作成し、フィッティングによってADCによる細胞増殖への阻害活性のIC50値が得られ、細胞に対する各ADCの毒性は下記の通りである。
【0236】
【0237】
毒素2-Aに結合したADC分子は、CEA発現レベルに依存する細胞毒性を示しており、CEA発現レベルが高いほど、細胞に対するADCの毒性が高くなる。また、高いDAR値でも、低いDAR値でも、CEA発現細胞に対して比較的高い細胞毒性を有し、CEA非発現細胞に対する細胞毒性が比較的低い。一方、対照ADC分子Lmab-CL2A-SN38による3種の細胞系への細胞毒性は何れも同等であり、細胞への毒性には選択性がない。IC50比率の大きさは、ADC分子の安全性を間接的に反映することができ、比率が大きいほど、発現しないCEAに対するADC分子の細胞毒性が低くなり、体内でより良好な安全性を有する可能性があることを示す。
【0238】
試験例6:ADCのバイスタンダー効果細胞毒性
ADCが細胞にエンドサイトーシスされた後、毒素はADCから放出され、細胞に対して毒性を生じ、細胞の死亡及び溶解後、毒素を細胞から放出し、毒素は付近の細胞に更に入り込み、付近の細胞に対しても毒性を生じることができる。
【0239】
ADCのバイスタンダー効果細胞毒性を評価するために、CEA高発現細胞系MKN45及びCEA発現陰性細胞系HCT116を6ウェル細胞培養プレートに入れて共培養し、24時間後に最終濃度が4 nMのADC試料を加え、37℃の細胞インキュベーターに置いて5日間培養し続けた。その後、パンクレアチンで消化して細胞を収集し、最終濃度が10 μg/mLのCEA Monoclonal Antibody FITC(ThermoFisher, Cat# MA1-80578)を加え、氷上において遮光で1時間インキュベートし、PBSで細胞を2回洗浄し、フローサイトメーターにより細胞をカウントし、蛍光シグナルを有する細胞はCEAを発現したMKN45細胞であり、シグナルのない細胞はCEAを発現していないHCT116細胞である。
【0240】
ADC試料のバイスタンダー細胞毒性の結果を
図2に示すように、何れのADC分子も非常に高いバイスタンダー効果細胞毒性を有する。MKN45とHCT116を共培養する場合には、ADC分子は2種の細胞の増殖を阻害することができるが、HCT116を単独で培養する場合には、2-Aに結合したADC分子は細胞に対してほぼ毒性がない。一方、対照ADC分子Lmab-CL2A-SN38は、共培養した細胞に対しても、単独で培養した細胞に対しても、非常高い毒性を有する。
【0241】
実験に使用されたADC分子のDAR値は、下記の通りである。Hu63-13-2-ADAR 6.29;Hu47-14-2-A DAR 6.6;Hu67-14-2-A DAR 6.41;Lmab-CL2A-SN38 DAR 7.0。
【0242】
試験例7:ADC分子の体内腫瘍阻害活性
LS174T及びMKN45移植腫瘍モデルを用いてADC分子の体内薬効を評価した。SPFレベルのBalb/cヌードマウス(常州カ文斯実験動物有限責任公司, 合格証番号:201833814, SCXK(蘇)2016-0010)の飼育条件は、以下の通りである。12/12時間の明/暗周期であり、温度が23±1℃であり、湿度が40~50%であり、標準的な滅菌マウス飼料を投与し、飼料及び水を自由に摂食させた。実験開始前にマウスを実験室環境において10日間適応飼育した後、マウスの右肋部にLS174T細胞(5×105個の細胞/匹)又はMKN45細胞(4×106個の細胞/匹)を皮下接種し、腫瘍が150 mm3程度まで成長すると、1群当たり8匹のマウスになるようにランダムに群分けした。群分けした後、ADC試料の投与量が1 mg/kg又は3 mg/kgであるようにマウスの腹腔に注射投与し、ブランク対照群の腹腔にPBSを注射し、1回しか投与せず、マウスの体における腫瘍のサイズを観察して計測し、データを記録した。腫瘍体積(V)の計算公式はV=1/2×L長×L短
2、腫瘍相対体積(RTV)=VT/V0、腫瘍阻害率(%)=(CRTV-TRTV)/CRTV(%)である。そのうち、V0、VTはそれぞれ実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積であり、CRTV、TRTVはそれぞれ実験終了時のブランク対照群及び実験群の相対腫瘍体積である。
【0243】
ADCの体内薬効結果について、対照群PBSと比べ、全てのADC分子は、低用量と高用量で腫瘍体積の増大と重量の増加を阻害する効果を有するとともに、一定の用量依存効果を有し、3 mpk群の腫瘍阻害効果は1 mpk群よりも優れている。LS174T移植腫瘍モデルにおいて、結果は
図3(腫瘍体積の変化)及び
図4(最後日の腫瘍重量)に示すように、3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu63-13-2-A、その次はHu47-14-2-A、更に次はHu67-14-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。MKN45移植腫瘍モデルにおいて、結果は
図5(腫瘍体積の変化)及び
図6(最後日の腫瘍重量)に示すように、3 mpk群中の腫瘍阻害効果が最も良いのはHu67-14-2-A、その次はHu103-32-2-A、更に次はHu63-13-2-A、最悪なのはLmab-CL2A-SN38である。
【0244】
ADC分子の体内の腫瘍阻害率は下記表23及び表24に示すように、ADCの腫瘍阻害率は、顕著な用量効果を有し、LS174T移植腫瘍モデルにおいて、低用量群(1 mpk)中の腫瘍阻害率が最も高いのはHu63-13-2-A(55.95%)、その次はHu67-14-2-A(43.71%)、最悪なのはHu47-14-2-A(23.04%)であり、高用量群(3 mpk)中の腫瘍阻害率が最も高いのはHu63-13-2-A(77.13%)、その次はHu47-14-2-A(66.87%)、更に次はHu67-14-2-A(47.66%)、最悪なのはLmab-CL2A-SN38(33.44%)である。MKN45移植腫瘍モデルにおいて、低用量群(1 mpk)中の腫瘍阻害率が最も高いのはHu67-14-2-A(15.88%)、その次はHu103-32-2-A(11.39%)、最悪なのはHu63-13-2-A(9.89%)であり、高用量群(3 mpk)中の腫瘍阻害率が最も高いのはHu67-14-2-A(79.51%)、その次はHu103-32-2-A(74.66%)、更に次はHu63-13-2-A(60.26%)、最悪なのはLmab-CL2A-SN38(13.51%)である。
【0245】
【0246】
【0247】
試験例8:ADC分子の体内薬物動態試験
SDラットを用いて体内薬物動態試験を行った。SDラット(西普尓-必凱実験動物有限公司)を1群当たり3匹になるようにランダムに群分けし、投与量が3 mg/kgであるように静脈内注射によって投与し、投与群は、投与前と投与後の5分間、8時間、1日間、2日間、4日間、7日間、10日間、14日間、21日間、28日間後に0.3 mLの全血を採集し、抗凝血剤を加えず、採血した後、4℃で30分間放置し、1000 gで15分間遠心分離し、上層の血清を取ってEP管に置き、-80℃で保存した。ELISA方法により血清中の血中濃度を検出し、Winnolinソフトウェアにより試験薬物の薬物動態パラメータを計算し、検出結果は、以下に示される。
【0248】
【0249】
全てのADC分子は、薬物動態特性が比較的良好であり、抗体の半減期は、ADC分子よりもやや長い。Hu63-13-2-Aの体内半減期は7.1日間であり、抗体の半減期は8日間であり、Hu47-14-2-Aの体内半減期は6.6日間であり、抗体の半減期は7.9日間であり、Hu67-14-2-Aの体内半減期は7.1日間であり、抗体の半減期は7.5日間であり、Hu103-32-2-Aの体内半減期は5.63日間であり、抗体の半減期は6.58日間である。
【0250】
試験例9:ADC分子のインビトロ血漿安定性試験
ADC分子のインビトロ血漿での安定性を評価するために、ADC分子をそれぞれヒトとサルの血漿に加え、濃度が100 μg/mLであり、37℃で21日間放置し、週に1回試料を取ってLC/MS/MS(Shimadzu, LC-30AD超高速液体クロマトグラフィーシステム, Applied Biosystems, API4000トリプル四重極タンデム質量分析計)により血漿中の遊離毒素の含有量を分析して検出した。検出結果は以下に示される。
【0251】
【0252】
検出結果が0であると、血漿中の遊離毒素の含有量が検出下限よりも低く、検出できないことを示す。全てのADC分子は、ヒトとサルの血漿において良好な安定性を有し、37℃で21日間インキュベートした後、Hu63-13-2-Aのヒトとサルの血漿での遊離毒素の含有量は、それぞれ0.32%及び0.4%であり、Hu47-14-2-Aの人とサルの血漿での遊離毒素の含有量は、それぞれ0.34%及び0.29%であり、Hu67-14-2-Aのヒトとサルの血漿での遊離毒素の含有量は、それぞれ0.4%及び0.24%であり、Hu103-32-2-Aのヒトとサルの血漿での遊離毒素の含有量は、それぞれ1.13%及び0.96%である。
【0253】
試験例10:化合物による腫瘍細胞へのインビトロ増殖阻害試験
一、試験目的
本実験は、本開示の薬物化合物による、U87MG細胞(中国科学院細胞バンク, Catalog # TCHu138)及びSK-BR-3腫瘍細胞(ヒト乳がん細胞, ATCC, 製品番号HTB-30)へのインビトロ増殖阻害活性を検出することを目的とする。異なる濃度の化合物によりインビトロで細胞を処理し、6日間培養した後、CTG(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay, Promega, 製品番号:G7573)試薬を用いて細胞の増殖を検出し、IC50値に基づいて当該化合物のインビトロ活性を評価する。
【0254】
二、実験方法
以下、本発明において本発明の化合物による腫瘍細胞へのインビトロ増殖阻害活性を試験する方法を例示的に説明するために、U87MG細胞へのインビトロ増殖阻害試験方法を例として挙げる。この方法は、同様に、他の腫瘍細胞へのインビトロ増殖阻害活性試験にも適用されるが、これらに限定されない。
【0255】
1、細胞の培養:U87MG及びSK-BR-3細胞をそれぞれ10%のFBSのEMEM培地(GE, 製品番号SH30024.01)及び10%のFBSを含むMcCoy's 5A培地(Gibco, 製品番号16600-108)で培養した。
【0256】
2、細胞の用意:対数増殖期のU87MG及びSK-BR-3細胞を取り、PBS(リン酸塩緩衝液, 上海源培生物科技股ふん有限公司)で1回洗浄した後、トリプシン(0.25% Trypsin-EDTA(1x), Gibico, Life Technologies社)を2~3 mL加えて2~3分間消化し、細胞が完全に消化した後、細胞培養液を10~15 m加え、消化した細胞を溶出し、1000 rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てから、細胞培養液を10~20 mL加えて細胞を再懸濁し、単細胞懸濁液を作製した。
【0257】
3、細胞のプレートへの播種:U87MG及びSK-BR-3の単細胞懸濁液を均一に混合し、細胞培養液で生細胞密度をそれぞれ2.75×103細胞/mL及び8.25×103細胞/mLに調整し、密度が調整された細胞懸濁液を均一に混合し、180 μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加えた。96ウェルプレートの外縁孔に200 μlの培地しか加えなかった。培養プレートをインキュベーターで24時間(37℃, 5%のCO2)培養した。
【0258】
4、化合物の用意:DMSO(ジメチルスルホキシド, 上海泰坦科技股ふん有限公司)で化合物を溶解し、初期濃度が10 mMの保存液に調製した。
【0259】
小分子化合物の初期濃度は500 nMであり、薬物調製方法は下記の通りである。
【0260】
96ウェルのU型底の薬物調製プレートの1列目にそれぞれ異なる測定すべき試料を30 μl加え、試料濃度が100 μMであり、2列目~11列目の各ウェルにDMSOを20 μl加えた。1列目の10 μlの試料を2列目の20 μlのDMSOに入れて均一に混合し、10 μlを3列目に入れ、10列目までこのように類推した。薬物調製プレート中の薬物をウェル当たり5 μl~95 μlを取ってEMEM培地に入れて均一に混合し、使用に備えた。
【0261】
ADCの初期濃度は10 nM又は500 nMであり、薬物調製方法は下記の通りである。
【0262】
96ウェルプレートの1列目にそれぞれ異なる測定すべき試料を100 μl加え、試料濃度が100 nM又は5 μMであり、2列目~11列目の各ウェルにPBSを100 μl加えた。1列目の50 μlの試料を2列目の100 μlのPBSに入れて均一に混合し、50 μlを3列目に入れ、10列目までこのように類推して3倍希釈した。
【0263】
5、試料加入操作:試料当たり2つの二重ウェルであるように、培養プレートに異なる濃度に配置された測定すべき試料を20 μl加えた。培養プレートをインキュベーターで6日間(37℃, 5%のCO2)インキュベートした。
【0264】
6、発色操作:96ウェル細胞培養プレートを取り出し、各ウェルにCTG溶液を90 μl加え、室温で10分間インキュベートした。
【0265】
7、プレート読み取り操作:96ウェル細胞培養プレートを取り出し、マイクロプレートリーダー(BMG labtech, PHERAstar FS)に置き、マイクロプレートリーダーにより化学発光を測定した。
【0266】
三、データの分析
Microsoft Excel、Graphpad Prism 5によりデータを処理して分析した。実験結果は下記表を参照する。
【0267】
【0268】
結論:本開示における小分子断片はSK-BR-3細胞及びU87細胞に対して顕著な増殖阻害活性を有し、キラル中心は化合物の阻害活性に一定の影響を及ぼす。
【配列表】
【国際調査報告】