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特表2023-506838新生血管形成因子を阻害するための化合物およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】新生血管形成因子を阻害するための化合物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/54 20060101AFI20230213BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230213BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C07F9/54 CSP
A61K31/662
A61K9/08
A61P27/02
A61P27/06
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536658
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2020018475
(87)【国際公開番号】W WO2021125800
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0168238
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(71)【出願人】
【識別番号】522235168
【氏名又は名称】スマーティン バイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SMARTIN BIO INC.
【住所又は居所原語表記】A-16ho 3rd Fl., 194-25, Osongsaengmyeong 1-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do 28160 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ナムグ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャンウク
(72)【発明者】
【氏名】パク ドンホ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC35
4C086ZC52
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本出願は、新生血管形成因子を阻害するための化合物およびその用途に関する。さらに、本出願は、前記化合物を用いた新生血管形成性疾患の治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグ:
[化学式1]
ここで、
、R、R、R、およびRは、それぞれH、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~5アルキル、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、C1~5アルキニル、およびC1~5アルコキシから選択され、
(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、また(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、
Lは、-(CH-を含み、また
nは、5~12の整数であることを特徴とする。
【請求項2】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
およびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであり、
およびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
n=10であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化学式1は、下記の化学式2~5から選択されるいずれかで表されることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項9】
下記の化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグを有効成分で含むことを特徴とする新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物:
[化学式1]
ここで、
、R、R、R、およびRは、それぞれH、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~5アルキル、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、C1~5アルキニル、およびC1~5アルコキシから選択され、
(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、また
(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、
Lは、-(CH-を含み、また
nは、5~12の整数であることを特徴とする。
【請求項10】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項11】
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項12】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項13】
およびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項14】
は、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、
およびRは、それぞれC1~5アルコキシであり、
およびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項15】
n=10であることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項16】
前記化学式1は、下記の化学式2~5から選択されるいずれかで表されることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物:
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項17】
前記薬学的組成物は、点眼投与用であることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項18】
前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患、網膜新生血管形成疾患、網膜下新生血管形成疾患、角膜新生血管形成疾患、虹彩新生血管形成疾患、新生血管形成性緑内障であることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項19】
前記新生血管形成性眼疾患は、網膜新生血管形成疾患であり、
前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症または網膜静脈閉塞症であることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【請求項20】
前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患であり、
前記脈絡膜新生血管形成疾患は、ウェット型加齢黄斑変性症(AMD)であることを特徴とする請求項9に記載の新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新生血管形成因子を阻害するための化合物およびその用途に関する。さらに、本出願は、前記化合物を用いた新生血管形成性疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新生血管形成(Neovascularization)は奇形形成された血管の周辺に新しい血管が形成される身体的現象であり、異常発生する場合、病気または疾患の原因となる恐れがある。本出願で言及される新生血管形成は、奇形形成された血管から新しい血管が伸びて出る血管新生(angiogenesis)を含み、2つの用語を区別することなく使用する。
【0003】
例えば、癌細胞は新生血管形成因子(Neovascularization factor)を過剰生成することによって過剰成長した癌組織に微細血管を形成し、これを介して酸素および養分を供給して癌細胞の生存能力を高める。また、眼球構造(ocular structure)で新生血管形成因子が過剰生成されると、様々な眼疾患(ocular disease)の原因になることが知られている。
【0004】
このような新生血管形成性疾患(neovascular disease)を治療するための既存の研究は、主要な新生血管形成因子であるVEGFを阻害することに主に焦点を当てている[1、2]。具体的には、VEGF阻害治療法は、次の三種類のアプローチによっている。そのアプローチとして、まず、VEGFリガンド(VEGF ligand)がVEGF受容体(VEGF receptor)に結合することを防ぐためにVEGFリガンド特異的抗体を使用する方法(e.g.bevacizumab,aflibercept,ranibizumab);VEGF受容体特異的抗体を使用する方法(e.g.ramucirumab);またはVEGF受容体を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosin kinase inhibitor;TKI)を投与する方法(sorafenib,sunitinib,pazopanib)である。
【0005】
この中で、抗体を使用するアプローチは抗体の物理的限界が問題となる[3]。抗体は分子量が大きくなると薬物動態学的特性が改善されるが、血管透過度が低くなって組織浸透能が低くなる問題がある。モノクローナル抗体(monoclonal antibody)は薬物動態学的特性が改善されるが組織浸透能が低下し、単鎖可変領域フラグメント抗体(Single-chain variable fragment;ScFv)等の抗体の断片は組織浸透能が改善されるが薬物動態学的特性が劣る。これによって多くの抗体治療法は薬物が異常組織に直接作用するようにするために注射投与による侵襲的(invasive)方法に依存しており、経口投与(oral administration)、皮膚経路投与(transdermal delivery)等の非侵襲的(non-invasive)方法は不可能である。
【0006】
また、抗体を介してVEGFを直接阻害すると、副作用が発生する可能性がある[4]。VEGFは様々な機能を有する成長因子であるため、VEGF阻害剤が全身に作用する場合、組織の正常な成長に影響を及ぼす可能性がある。これによってVEGF阻害治療法は異常組織に直接投与したり、誘導治療されなかった場合、安全性が大きく低下する問題がある。このような欠点によって、現在、VEGF阻害治療法は主流の治療法であるが、その限界が明らかであり、VEGF阻害ではない新しい機序による治療法の研究が必要である。
【0007】
TRAP-1はVEGFの上位調整因子の中の1つであるHIF-1αを調整することが知られている。TRAP-1はHSP90のパラログの中の1つであり、従来はHSP90の阻害剤が活発に研究されてきたが、このような阻害剤はHSP90およびそのパラログに非選択的に作用して高い毒性を示す問題を有していた(韓国特許公開公報KR20150109540A参照)。本出願の発明者は、TRAP-1がVEGFに代わることができる治療学的ターゲットになり得ることを認識し、TRAP-1を選択的に阻害できる新規な方法を発明し、本出願に至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】[1] Kellen L.Meadows and Herbert I.Hurwitz,Anti-VEGF Therapies in the Clinic,Cold Spring Harb Perspect Med.2012 Oct 1;2(10).
【非特許文献2】[2] Katja Zirlik and Justus Duyster,Anti-Angiogenics:Current Situation and Future Perspectives,Oncol Res Treat.2018;41(4):166-171.
【非特許文献3】[3] Patrick Chames,Marc Van Regenmortel,Etienne Weiss and Daniel Baty,Therapeutic antibodies:successes,limitations and hopes for the future,Br J Pharmacol.2009 May;157(2):220-33.
【非特許文献4】[4] T Kamba and DM McDonald,Mechanisms of adverse effects of anti-VEGF therapy for cancer,Br J Cancer.2007 Jun 18;96(12):1788-95.
【非特許文献5】[5] Peter A.Campochiaro,Ocular Neovascularization,J Mol Med (Berl).2013 March;91(3):311-321.
【非特許文献6】[6] Barbara Onnis,Annamaria Rapisarda and Giovanni Melillo,Development of HIF-1 inhibitors for cancer therapy,J.Cell.Mol.Med.Vol 13,No 9A,2009 pp.2780-2786.
【非特許文献7】[7] Young Chan Chae,M.Cecilia Caino,Sofia Lisanti,and et al.Control of Tumor Bioenergetics and Survival Stress Signaling by Mitochondrial HSP90s,Cancer Cell.2012 Sep 11;22(3):331-44.
【非特許文献8】[8] Stuart K.Calderwood and Thomas L.Prince,Chaperones:Methods and Protocols,Humana Press,2018,pp.424-432.
【非特許文献9】[9] Daniel T.Gewirth,Paralog specific Hsp90 Inhibitors - a brief history and a bright future,Curr Top Med Chem.2016;16(25):2779-2791.
【非特許文献10】[10] Ionica Masgras,Carlos Sanchez-Martin,Giorgio Colombo and Andrea Rasola,The Chaperone TRAP1 As a Modulator of the Mitochondrial Adaptations in Cancer Cells,Front Oncol.2017 Mar 29;7:58.
【非特許文献11】[11] Verba KA,Wang RY,Arakawa A,Liu Y,Shirouzu M,Yokoyama S,and Agard DA,Atomic structure of Hsp90-Cdc37-Cdk4 reveals that Hsp90 traps and stabilizes an unfolded kinase,Science.2016 Jun 24;352(6293):1542-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願によって開示される1つの課題は、新生血管形成因子を阻害するための化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供することである。
【0010】
本出願によって開示される他の課題は、前記化合物、その薬学的に許容可能な塩またはそのプロドラッグを含む薬学的組成物を提供することである。
【0011】
本出願によって開示されるまた他の課題は、前記化合物、その薬学的に許容可能な塩またはそのプロドラッグを含む薬学的組成物を処方することを含む新生血管形成性疾患を治療するための方法を提供することである。
【0012】
さらに、本出願によって開示されるまた他の課題は、新生血管形成性疾患のうちの新生血管形成性眼疾患を治療するための方法を提供することである。
【0013】
さらに、本出願によって開示されるまた他の課題は、新生血管形成性眼疾患を治療するための点眼投与用の薬学的組成物を提供することである。
【0014】
また、本出願によって開示されるまた他の課題は、前記薬学的組成物を経口投与または眼球点眼投与することを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願は、下記[化学式1]で表される構造を有する化合物、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグを提供する、
【0016】
[化学式1]
【0017】
ここで、
、R、R、R、およびRは、それぞれH、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~5アルキル、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、C1~5アルキニル、およびC1~5アルコキシから選択され、
(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、また(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、
Lは、-(CH-を含み、また
nは、5~12の整数であることを特徴とする。
【0018】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであることを特徴とする化合物を提供する。
【0019】
または、前記化学式1でRおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする化合物を提供する。
【0020】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、RおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする化合物を提供する。
【0021】
または、前記化学式1でRおよびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする化合物を提供する。
【0022】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、RおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであり、RおよびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする化合物を提供する。
【0023】
または、前記化学式1でLは-(CH-を含み、ここでn=10であることを特徴とする化合物を提供する。
【0024】
または、前記化学式1は、下記[化学式2]~[化学式5]から選択されるいずれかで表されることを特徴とする化学物を提供する。
【0025】
[化学式2]
【0026】
[化学式3]
【0027】
[化学式4]
【0028】
[化学式5]
【0029】
さらに、本出願は下記[化学式1]で表される構造を有する化合物、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグを有効成分として含むことを特徴とする新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物を提供する。
【0030】
[化学式1]
【0031】
ここで、
、R、R、R、およびRは、それぞれH、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~5アルキル、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、C1~5アルキニル、およびC1~5アルコキシから選択され、
(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、また(R、R)は、これらのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、
Lは、-(CH-を含み、また
nは、5~12の整数であることを特徴とする。
【0032】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0033】
または、前記化学式1でRおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0034】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、RおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0035】
または、前記化学式1でRおよびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0036】
または、前記化学式1でRは、H、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり、RおよびRは、それぞれC1~5アルコキシであり、RおよびRは、それぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0037】
または、前記化学式1でLは-(CH-を含み、ここでn=10であることを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0038】
または、前記化学式1は、下記[化学式2]~[化学式5]から選択されるいずれかで表されることを特徴とする新生血管形成性眼疾患治療用の薬学的組成物を提供する。
【0039】
[化学式2]
【0040】
[化学式3]
【0041】
[化学式4]
【0042】
[化学式5]
【0043】
また、本出願は、下記[化学式6]で表される構造を有する化合物、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグを含む新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物を提供する。
【0044】
[化学式6]
【0045】
ここで、
はメチルであり、
Lは-(CH-を含み、nは5以上12以下の整数であることを特徴とする。
または、前記構造において、Lは-(CH10-であることを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が本出願により提供される。
【0046】
さらに、本出願の薬学的組成物は点眼投与用であることを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が提供される。
【0047】
または、前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患、網膜新生血管形成疾患、網膜下新生血管形成疾患、角膜新生血管形成疾患、虹彩新生血管形成疾患または新生血管緑内障であることを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が提供される。さらに、前記新生血管形成性眼疾患は、網膜新生血管形成疾患であり、前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症または網膜静脈閉塞であることを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が提供される。さらに、前記網膜新生血管形成疾患は糖尿病性網膜症であることを特徴で新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が提供される。
【0048】
さらに、前記脈絡膜新生血管形成疾患は、ウェット型加齢黄斑変性症(wet AMD)であることを特徴とする新生血管形成性眼疾患を治療するための薬学的組成物が提供される。
【発明の効果】
【0049】
本出願の薬学的組成物によって新生血管形成性疾患の治療が可能である。その中で、特に新生血管形成性眼疾患の治療が可能である。本出願の薬学的組成物を用いて以下の効果を得ることができる。
【0050】
本出願の薬学的組成物を用いると、非侵襲的治療が可能である。本出願のSMxおよび新規化合物分子は蛋白質ではない低分子(small molecule)であり、組織浸透能が高い。これによって異常組織への直接注射投与が不要であり、経口投与または眼球点眼投与のような非侵襲的治療が可能な利点がある。
【0051】
また、本出願によって開示される薬学的組成物またはこの薬学的組成物を用いた治療法は、既存の治療剤または治療法よりも高い安定性を有する。これは、既存の治療剤は異常細胞と正常細胞の両方で発現される因子をターゲットとするのに対し、本出願によって開示される薬学的組成物であるSMxおよび新規化合物分子は異常細胞で過剰に発現される因子をターゲットとするためである。従って、異常細胞に対する特異的治療を可能にする。これによって正常細胞に対する副作用を示さないことによって、本出願によって開示される薬学的組成物はより毒性が改善された利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】TRAP-1およびそれに関連する新生血管形成因子のシグナル経路を示す図である。
図2】TRAP-1とHIF-1αとの間の具体的なシグナル経路を示す図である。
図3】TRAP-1の構造およびその動作過程を示す図である。
図4】TRAP-1+/+マウスおよびTRAP-1+/-マウスで調製された酸素誘導網膜症モデルの網膜血管写真である。
図5図4において、TRAP-1+/+マウスおよびTRAP-1+/-マウスで調製された酸素誘導網膜症モデルの網膜血管写真を統計処理した結果である。
図6】TRAP-1をノックダウンさせた細胞に対する管形成アッセイ(tube formation assay)結果を示す図である。
図7図6による管形成アッセイ結果を統計処理した結果である。
図8】SMxの濃度によるHIF-1αの発現変化を確認したウェスタンブロットの結果を示す図である。
図9】HIF-1αSMxを処理したときの新生血管形成因子の発現変化を確認したウェスタンブロットの結果を示す図である。
図10】既存の論文で確認されたHSP90とクライアント蛋白質の結合構造を示す図である。
図11図10によるHSP90-クライアント蛋白質間結合位置と図12によるTRAP-1-SMx間結合位置とをオーバーラップしたものである。
図12】TRAP-1とSMxの結合構造のX線クリスタログラフィ(X-ray crystallography)分析結果である。
図13】TRAP-1上でSMxとの結合に関与する位置の種間保存性分析の結果を示す図である。
図14】SMxがクライアント蛋白質と競合的にTRAP-1に結合することを検証するためのプルダウンアッセイ結果を示す図である。
図15】TRAP-1上でSMxとの結合に関与する位置がTRAP-1上でクライアント蛋白質との結合に関与する位置と同一であることを確認するための実験結果である。左側は当該位置を変形させた後に行ったプルダウンアッセイ結果であり、右側は当該位置を変形させた後に行ったSIRT3活性実験結果である。
図16】SMxとPU-H71を処理した野生型(wild type)および突然変異型(mutant)のTRAP-1に対するATPase活性アッセイ(ATPase activity assay)結果を示す図である。
図17】SMxとEylea(Aflibercept)を眼球注射した酸素誘導網膜症マウスモデルの網膜血管分析結果を示す図である。
図18】SMxを点眼投与した酸素誘導網膜症マウスモデルの網膜血管分析写真である。
図19】SMxを点眼投与した酸素誘導網膜症マウスモデルの網膜血管分析写真を統計処理した結果である。
図20】(10-(2-ブロモ-5-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムホルメート((10-(2-bromo-5-hydroxy-3,4-dimethoxy-6-methylphenyl)decyl)triphenylphosphonium formate)を製造するステップを示す模式図である。
図21】(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミド((10-(3-bromo-4,5,6-trimethoxy-2-methylphenyl)decyl)triphenylphosphonium bromide)を製造するステップを示す模式図である。
図22】(10-(2-ブロモ-3,4,5-トリメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミド((10-(2-bromo-3,4,5-trimethoxy-6-methylphenyl)decyl)triphenylphosphonium bromide)を製造するステップを示す模式図である。
図23】(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドを製造するステップを示す模式図である。
図24】SMxおよび新規化合物分子(SB-U005、SB-U009、SB-U011、SB-U012)がクライアント蛋白質と競合的にTRAP-1に結合することを検証するためのプルダウンアッセイ結果を示す図である。
図25】MIO-M1 HRE細胞株にSMxおよび新規化合物分子(SB-U005、SB-U009、SB-U011、SB-U012)を処理した時のIC50値を示す図である。
図26】網膜色素上皮細胞であるARPE-19細胞株にSMxおよび新規化合物分子(SB-U005、SB-U009、SB-U011、SB-U012)を処理した時の新生血管形成因子(HIF-1α)の発現変化を確認したウェスタンブロットの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
1.用語の定義(Definition)
「アルコキシ」という用語は、アルキル基、好ましくは低級アルキル基であり、それに酸素が結合していることを意味する。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。
【0054】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を意味する。また、一般式としてはアルキル-O-アルキルで表されてもよい。
【0055】
「アルケニル」という用語は、本出願で使用される限り、脂肪族残基として少なくとも1つの二重結合を含むことを意味する。また、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含むように意図され、この中で後者はアルケニル基として前記アルケニル基の1つ以上の炭素上で水素に代わる置換基を有することを意味する。このような置換基は、1つ以上の二重結合に含まれるか含まれない1つ以上の炭素上に存在し得る。さらに、このような置換基は、安定性が問題となる場合を除いて、以下で論じるように、アルキル基に関して考慮することができる全てのものを含む。例えば、1つ以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基へのアルケニル基の置換を考慮することができる。
【0056】
「アルキル」基または「アルカン」は、鎖状または分岐状の非芳香族炭化水素として完全に飽和したものである。代表的には、鎖状または分岐状のアルキル基は、特に定義しない限り、1~約20個の炭素原子を有する。鎖状および分岐状のアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルおよびオクチルが含まれる。C-C鎖状または分岐状のアルキル基は、別名として「低級アルキル」基と呼ばれる。
【0057】
さらに、本明細書、例示、および特許請求の範囲で使用される「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むように意図され、この中で後者はアルキル基として前記炭化水素の1つ以上の炭素上で水素に代わる置換基を有することを意味する。前記置換基は、特に明記しない限り、例示的に、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボニル(例えば、カルボキシ、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシ、ホスホリル、リン酸塩、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸塩、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族またはヘテロ芳香族基を含むことができる。置換することが適切な場合、炭化水素鎖上の置換された残基がそれ自体で置換されてもよいことは当業者に理解され得る。例えば、置換アルキルの置換基は、置換形態および非置換形態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(硫酸塩、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基を含んでもよく、エーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF、-CNなども同様に含み得る。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル-置換アルキル、-CF、-CNなどで追加的に置換されてもよい。
【0058】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1つのヒドロキシ置換基を有するアルキル基であり、例えば、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換され、1~6個の炭素原子を含む直鎖状の一価炭化水素ラジカルまたは3~6個の炭素原子を含む分岐状の一価炭化水素ラジカルを意味するが、2つのヒドロキシ基が存在する場合、これらの両方は同じ炭素原子に存在しない。具体的には、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチルおよび2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピルなどを含む。
【0059】
「アルキニル」という用語は、本出願で使用される限り、少なくとも1つの三重結合を含む脂肪族残基を意味する。また、「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含むように意図され、この中で後者はアルキニル基として前記アルキニル基の1つ以上の炭素上で水素に代わる置換基を有することを意味する。このような置換基は、1つ以上の三重結合に含まれるか含まれない1つ以上の炭素上にあり得る。また、このような置換基は、安定性が問題となる場合を除いて、上記で論じたように、アルキル基に関して考慮された全てのものを含む。例えば、アルキニル基を1つ以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基で置換することが考えられる。
【0060】
「Cx-y」という用語は、例えば、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシのような残基とともに使用される場合、鎖にx~y個の炭素を含む残基を含むように意図される。例えば、「Cx-yアルキル」という用語は、置換または非置換の飽和炭化水素基であり、鎖状のアルキルおよび分岐状のアルキル基として鎖にx~y個の炭素を含むものを含み、例示的にはトリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルなどのハロアルキル基を含むことを意味する。Cアルキルは、末端位置にある場合は水素を、内部にある場合は結合を意味する。「C2-yアルケニル」および「C2-yアルキニル」という用語は、前記アルキルに対する定義で説明されたように、長さおよび可能な置換に関する定義が適用される置換または非置換の不飽和脂肪族残基であるが、それぞれが少なくとも1つの二重または三重結合を含むことを意味する。
【0061】
「アリール」という用語は、本出願で使用される限り、置換または非置換の単環芳香族基として環のそれぞれの原子が炭素であることを含む。好ましくは、前記環は5~7員環であり、より好ましくは、6員環である。「アリール」という用語は、また多環式環系として2個以上の環式環を有し、互いに接している2つの環が2個以上の炭素を共有し、少なくとも1つの前記環が芳香族であることを含み、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが含まれる。
【0062】
「カルボサイクル」および「カルボ環式」という用語は、本出願で使用される限り、飽和または不飽和環として環のそれぞれの原子が炭素であることを意味する。カルボサイクルという用語は、芳香族カルボサイクルおよび非芳香族カルボサイクルの両方を含む。非芳香族カルボサイクルは、すべての炭素原子が飽和された、シクルロアルカン環および少なくとも1つの二重結合を含む、シクルロアルケン環を含む。
【0063】
「カルボサイクル」という用語は、5-7員環単環式および8-12員環二環式環を含む。二環式カルボサイクルのそれぞれの環は、飽和、不飽和または芳香環から選択することができる。カルボサイクルは、二環式分子として、2または3またはそれ以上の原子が2つの環の間で共有されているものを含む。「縮合カルボサイクル」という用語は、二環式カルボサイクルであり、それぞれの環が異なる環とともに隣接した2個の原子を共有することを意味する。縮合カルボサイクルのそれぞれの環は、飽和、不飽和および芳香環から選択することができる。例示的な実施例では、芳香環(例えば、フェニル)が飽和または不飽和環(例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクルロヘキセン)と縮合することができる。飽和、不飽和および芳香族二環式環のすべての組み合わせは、価数によって許容される限り、カルボ環式の定義に含まれる。例示的な「カルボサイクル」は、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクト-3-エン、ナフタレンおよびアダマンタン(adamantane)を含む。例示的な縮合カルボサイクルは、デカリン(decalin)、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エンを含む。「カルボサイクル」は、水素原子を有することができるすべての1つ以上の位置で置換されてもよい。
【0064】
「シクロアルキル」基は完全に飽和した環状炭化水素である。「シクロアルキル」は単環式および二環式環を含む。特に定義しない限り、一般に、単環式シクロアルキル基は3~約10個の炭素原子を有し、より一般的には3~8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキルの二番目の環は、飽和、不飽和および芳香環から選択することができる。シクロアルキルは、二環式分子として、1、2または3またはそれ以上の原子が2つの環の間で共有されているものを含む。「縮合シクロアルキル」という用語は、二環式シクロアルキルとしてそれぞれの環が異なる環とともに隣接する2個の原子を共有することを意味する。縮合した二環式シクロアルキルの二番目の環は、飽和、不飽和および芳香環から選択することができる。「シクロアルケニル」基は、1つ以上の二重結合を含む環状炭化水素である。
【0065】
「ヘテロアリール」および「ヘタリール(hetaryl)」という用語は、置換または非置換の芳香族単環構造であり、好ましくは、5~7員環であり、より好ましくは、5~6員環であり、その環構造が少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含むことを含む。
【0066】
また、「ヘテロアリール」および「ヘタリール」という用語は、多環式環系として2個以上の環式環を有し、互いに接している2つの環が2個以上の炭素を共有し、少なくとも1つの前記環がヘテロ芳香族であることを含み、例示的に、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどが含まれる。
【0067】
「ヘテロ原子」という用語は、本出願で使用される限り、炭素または水素ではないすべての元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、および硫黄である。
【0068】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロサイクル」、および「ヘテロ環状」という用語は、置換または非置換の非芳香族環構造であり、好ましくは3~10員環であり、より好ましくは3~7員環であり、その環構造が少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子を含むことを意味する。また、「ヘテロシクリル」および「ヘテロ環状」という用語は、多環式環系として、2個以上の環式環を有し、互いに接している2つの環が2個以上の炭素を共有し、少なくとも1つの前記環がヘテロ環状であることを含み、例示的に、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基には、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが含まれる。
【0069】
「低級」という表現は、例えば、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシのような化学的残基とともに使用される場合、置換基中に10個以下、好ましくは6個以下の水素でない原子が存在する残基を含むことが意図されている。「低級アルキル」は、例えば、アルキル基として、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含むことを意味する。
【0070】
「共有結合(covalent bond)」という用語は、原子間の化学結合であり、イオン結合ではないことを意味する。
【0071】
「X含有残基(functional group comprising X)」という用語は、化学的残基としてX原子を含むことを意味する。例えば、代表的なO含有残基としては、ケトン、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシなどが挙げられる。
【0072】
「hsp90s」は、シャペロン蛋白質であるHSP90(Hsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-β)および体内に存在するそれらのパラログ(grp94、TRAP-1)の両方を指す。「HSP90」は、特に言及がない限り、細胞質に存在するhsp90sであるHsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βを総称する。
【0073】
「結合能(binding ability)」は、2つの分子間の静電力(electrostatic force)および/または疏水性相互作用(hydrophobic effect)によって発生する生物化学的および/または物理的現象の全てを指し、特定のレベル以上の強度を有する相互作用に限定するためのものではない。
【0074】
「プロドラッグ(prodrug)」は、生体内に投与した後、目的とする医薬作用物質に変換されるものを指し、ここで変換は酵素的や非酵素的なものであり得る。活性化合物のプロドラッグは、活性親(parent)化合物に対して通常の操作によってまたは生体内で改変が切断されるように活性化合物内の官能基を改変(modify)して製造することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が任意の基に結合している化合物を含み、すなわち、活性化合物のプロドラッグは、対象体に投与される時、切断してそれぞれ遊離(free)ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基を形成する。プロドラッグの例として、活性化合物中のアルコールまたはアセトアミドの、アセテート、ホルメートおよび安息香酸誘導体と、アミン官能基のホルムアミドおよびベンズアミド誘導体などを含むか、これらに限定されない。
【0075】
「薬学的に許容可能な塩」は、様々な生理学的に許容可能な有機および無機対イオンに由来する化合物の塩を指す。前記対イオンは、当該技術分野で周知であり、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウム、例えば、テトラアルキルアンモニウムなど(分子が酸性官能基を含む場合);および分子が塩基性官能基を含有する場合、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸硝酸塩(nitrate hydrobromide)、酒石酸塩、メシレート、アセテート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマレート、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、ステアレート、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、およびシュウ酸塩などの有機または無機酸の塩を含む。適切な薬学的に許容可能な塩には、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, pg.1418 (1985)およびP.Heinrich Stahl, Camille G.Wermuth (Eds.), Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection、and Use;2002]に記載されたものが含まれている。酸付加塩の例としては、例えば、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの酸、および有機酸として、例えば、アルギン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、安息香酸、カンポル硫酸、クエン酸、エンボン酸(embonic acid)(パモ酸)、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、イソニコチン酸、イソチオン酸、ラント酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、サッカリン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、トリフルオロ酢酸およびアリールスルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸から形成された塩が含まれる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属および有機塩基で形成された塩基付加塩の例として、クロロプロカイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、およびクロカイン、ならびに内部で形成された塩が含まれる。非生理学的に許容可能なアニオンまたはカチオンを有する塩は、生理学的に許容可能な塩の製造のための、および/または非治療的に、例えば、試験管内の状況で使用するための有用な中間体として本発明の範囲内にある。本出願による薬学的に許容可能な塩には、ハロゲン塩、すなわちフッ素塩、臭素塩、ヨウ素塩などが含まれる。
【0076】
2.本出願の化合物構造
本出願は、TRAP-1を阻害するための薬物分子を提供する。
【0077】
本出願による薬物分子は、下記[化学式7]で表される構造を有する化合物である。
【0078】
[化学式7]
B-L-C
【0079】
ここで、BはTRAP-1ユニットに対する親和力のある結合部(bonding moiety)であり、Lは結合部と正電荷部を連結するための連結部(linking moiety)であり、Cは正電荷を帯びる正電荷部(cationic moiety)である。
【0080】
この場合、結合部は、環式環を含んでもよく、さらに4~10の単環式環を含んでもよく、さらに5~7の単環式環を含んでもよい。また、前記環式環は、カルボ環式環であっても複素環式環であってもよい。ここで、複素環式環を構成するヘテロ原子は、例示的に窒素、酸素、硫黄またはリンであり得る。また、前記環式環はアリールであり得る。また、前記環式環は二環式環などの多環式環であり得る。
【0081】
または、前記環式環は、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。この場合、前記置換基は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る。または、前記置換基はヘテロ原子含有残基であり得る。
【0082】
ここで、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0083】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシまたはメチレンジオキシであり得る。
【0084】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0085】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0086】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル((CH)を含むことができる。
【0087】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0088】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0089】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0090】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0091】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0092】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0093】
Cは、正電荷部(cationic moiety)として正電荷を帯びる部位またはその還元形態である。
【0094】
この場合、正電荷部は正電荷を帯びることができる。
【0095】
この場合、正電荷部は酸化された原子(oxidized atom)を含むことができる。さらに、酸化された原子はNまたはPであり得る。
【0096】
あるいは、この場合、正電荷部は酸化された原子を含む残基を含むことができる。
【0097】
この場合、前記残基はアミン基、ホスフェン基(phosphane)であり得る。
【0098】
あるいは、この場合、正電荷部はその還元形態であり得る。
【0099】
あるいは、正電荷部は、環式環を含んでもよく、さらに4~10の単環式環を含んでもよく、さらに5~7の単環式環を含んでもよい。また、前記環式環は、カルボ環式環であっても複素環式環であってもよい。ここで、複素環式環を構成するヘテロ原子は、例示的に窒素、酸素、硫黄またはリンであり得る。また、前記環式環はアリールであり得る。また、前記環式環は二環式環などの多環式環であり得る。
【0100】
あるいは、前記環式環は、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。この場合、前記置換基は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり得る。または、前記置換基はヘテロ原子含有残基であり得る。
【0101】
あるいは、正電荷部が酸化された原子を含む場合、前記環式環は酸化された原子に結合した置換基であり得る。
【0102】
あるいは、分子全体の位置関係における結合部および正電荷部の間の距離は、5~60オングストロームであり得る。さらに10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0103】
本出願による薬物分子は、化学式8の構造を有する化合物であり得る。
【0104】
[化学式8]
【0105】
ここで、左側の結合部を構成する6員環はカルボ環式環であっても複素環式環であってもよい。6員環の内部に示されている点線と「?」は、前記環を構成する原子間の結合が許容される範囲内で任意に単結合または多重結合を構成できることを意味する。この場合、複素環式環を構成するヘテロ原子は、例示的に窒素、酸素、硫黄またはリンであり得る。また、前記6員環はアリールであり得る。
【0106】
ここで、R~Rはそれぞれ独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にR~Rのいずれかはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0107】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0108】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0109】
好ましい一例として、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシまたはカルボニリルであり得る。
【0110】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0111】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0112】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0113】
前記化学式8中のLは連結部(linking moiety)として結合部と正電荷部を連結する部位である。
【0114】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル((CH)を含むことができる。
【0115】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0116】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0117】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0118】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0119】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0120】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0121】
本出願による薬物分子は、化学式9の構造を有する化合物であり得る。
【0122】
[化学式9]
【0123】
ここで、R~Rはそれぞれ独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にR~Rのいずれかはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0124】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0125】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0126】
好ましい一例として、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシまたはカルボニリルであり得る。
【0127】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0128】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0129】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0130】
前記化学式9中のLは連結部(linking moiety)として結合部と正電荷部を連結する部位である。
【0131】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル((CH)を含むことができる。
【0132】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0133】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0134】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0135】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0136】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0137】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0138】
あるいは、本出願による薬物分子は、化学式9の構造を有する化合物の還元形態の化合物であり得る。
【0139】
本出願による薬物分子は、下記の化学式10の構造を有する化合物であり得る。
【0140】
[化学式10]
【0141】
ここで、R~Rはそれぞれ独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にR~Rのいずれかはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0142】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0143】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0144】
好ましい一例として、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシまたはカルボニリルであり得る。
【0145】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0146】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0147】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0148】
前記化学式10中のLは連結部(linking moiety)として結合部と正電荷部を連結する部位である。
【0149】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル((CH)を含むことができる。
【0150】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0151】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0152】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0153】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0154】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0155】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0156】
本出願による薬物分子は、下記の化学式6の構造を有する化合物であり得る。
【0157】
[化学式6]
【0158】
ここで、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にRはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0159】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0160】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0161】
好ましい一例として、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシまたはカルボニリルであり得る。
【0162】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0163】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0164】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0165】
前記化学式6中のLは連結部(linking moiety)として結合部と正電荷部を連結する部位である。
【0166】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル((CH)を含むことができる。
【0167】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0168】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0169】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0170】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0171】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0172】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0173】
あるいは、本出願による薬物分子は、化学式6の構造を有する化合物の還元形態の化合物であり得る。
【0174】
本出願による薬物分子は、下記の化学式11の構造を有する化合物であり得る。
【0175】
[化学式11]
【0176】
ここで、R~RはH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にR~Rはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0177】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0178】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0179】
好ましい一例として、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシまたはカルボニリルであり得る。
【0180】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0181】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0182】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0183】
また、連結部の構造のうち炭化水素の部分においてnは1以上の整数である。この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。この場合、前記炭化水素の部分は許容される範囲内で多重結合を含むことができる。
【0184】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0185】
例示的に、前記化学式6による化合物は、以下のいずれかであり得る。
【0186】
さらに、本出願による化合物分子は、下記の化学式1の構造を有する新規化合物であり得る。
【0187】
[化学式1]
【0188】
ここで、R~Rはそれぞれ独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロ原子含有残基であり得る。例示的にR~Rのいずれかはアルキルであり得、さらに前記アルキルはC1-5アルキルであり得、さらに前記アルキルはメチルであり得る。
【0189】
この場合、前記ヘテロ原子含有残基は酸素含有残基であり得る。
【0190】
この場合、酸素含有残基は、例示的にヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、カルボニル、ホルミル、アルコキシカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはメチレンジオキシ基であり得る。
【0191】
一例では、前記酸素含有残基は、C1-5アルコキシであり得、さらにメトキシであり得る。また、他の好ましい一例として、前記酸素含有残基はヒドロキシ、ヒドロキシアルキルであり得る。
【0192】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基はハロゲン含有残基であり得る。この場合、ハロゲン含有残基は、例示的にF、Cl、BrまたはIであり得る。
【0193】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は窒素含有残基であり得る。この場合、窒素含有残基は、例示的にアミド、アミン、アンモニウム、イミン、イミド、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ピリジン、アジドまたはカルバメートであり得る。
【0194】
あるいは、この場合、前記ヘテロ原子含有残基は硫黄含有残基であり得る。この場合、硫黄含有残基は、例示的にチオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルホネート、チオン、チアル、チオエートまたはジチオエートであり得る。
【0195】
一例として、前記R、R、R、R、およびRは、それぞれH、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシC1~5アルキル、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、C1~5アルキニル、およびC1~5アルコキシから選択することができる。
【0196】
この場合、R、R、R、R、およびRのいずれかがヒドロキシである場合、ヒドロキシと対向する方向に位置する置換基はヒドロキシでなくてもよい。ここで、対向する方向に位置する置換基とは、例えば、(RおよびR)または(RおよびR)であり得る。具体的には、RおよびRは、それらのうちのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではなく、またはRおよびRは、それらのうちのいずれかがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではない可能性がある。ここで、「(xおよびy)」は、xおよびyからなる集合を意味する。
【0197】
前記R、R、R、R、およびRのうち対向する置換基が全てヒドロキシである場合、例えば、RおよびRが全てヒドロキシである場合、またはRおよびRが全てヒドロキシである化合物の場合、化合物自体の元素の電磁気交換により酸化/還元反応を起こすことができる。したがって、前記化学式2の化合物の対向する置換基中の1つがヒドロキシである場合、残りの1つはヒドロキシではないことを特徴とするので、化合物自体で起こる酸化/還元反応を失活させる効果を有することができる。
【0198】
具体的には、前記化学式1中、RはH、C1~5アルキル、C1~5アルケニル、またはC1~5アルキニルであり得、さらにC1~5アルキルであり得、さらにメチルであり得る。
【0199】
あるいは、前記RおよびRはそれぞれC1~5アルコキシであり得る。
【0200】
あるいは、前記RおよびRはそれぞれヒドロキシ、アルコキシまたはハロゲンであり、ここで、RおよびRの中の少なくとも1つはハロゲンであり得る。
【0201】
さらに、前記化学式1中のLは連結部(linking moiety)としてR~R置換基を含む結合部(左)とトリフェニルホスホニウム(右)を連結する部位である。
【0202】
この場合、連結部は、脂肪族残基、例えば、アルキル(-(CH)を含むことができる。
【0203】
この場合、nは1以上20以下の整数であり得る。さらに、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5、6、7、8、9、10、11、12から選択された2つの数の間の整数であり得る。さらに、nは5以上12以下の整数であり得る。好ましい例では、nは10であり得る。
【0204】
あるいは、この場合、前記連結部はアルケニルまたはアルキニルを含むことができる。
【0205】
あるいは、この場合、前記脂肪族残基は、ヘテロ原子を介して結合部、陽電子部、または他の脂肪族残基と結合することができる。この場合、前記ヘテロ原子は、例示的に酸素、窒素、硫黄を含む。例えば、例示的な1つの連結部は、-(CH-O-(CH-の構造を有することができる(x、yは0以上の整数)。
【0206】
あるいは、連結部は、エチレンオキシ単位((CO)m)を含むことができる。この場合、mは1以上の整数または0であり得る。
【0207】
あるいは、連結部は、アルキルおよびエチレンオキシ単位を含むことができる。
【0208】
あるいは、連結部は、特定の範囲の長さを有することができる。この場合、連結部の長さは5~60オングストロームであり得る。さらに、10~50オングストローム、さらに20~40オングストローム、さらに25~35オングストロームであり得る。
【0209】
好ましい一例として、前記化学式1は、下記の化学式2で表される化合物であり得る。
【0210】
[化学式2]
別の一例として、前記化学式1は、下記の化学式3で表される化合物であり得る。
【0211】
[化学式3]
【0212】
また他の一例として、前記化学式1は、下記の化学式4で表される化合物であり得る。
【0213】
[化学式4]
【0214】
また他の一例として、前記化学式1は、下記の化学式5で表される化合物であり得る。
【0215】
[化学式5]
【0216】
前記化学式1~11で表される本出願による化合物は、その薬学的に許容可能な塩、またはそのプロドラッグの形態で提供することができる。特定の一例では、前記薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩またはハロゲン塩であり得る。好ましくは、前記薬学的に許容可能な塩は臭素塩であり得る。
【0217】
3.新生血管形成因子と新生血管形成性疾患の関係
新生血管形成性疾患は異常な新生血管形成により発生する。新生血管形成は原発組織への円滑な血液供給のための正常な恒常性維持行為である。ただし、このような新生血管形成が正常な組織よりも過剰な場合、このような異常な新生血管形成によって新生血管形成性疾患が発症することになる。新生血管形成性疾患の発生要因はいくつかの共通点を共有しているが、同じ病理機序を有しているとは見えない。概して詳細な病理機序は明確には知られていない。しかし、一般的に、ほとんどの新生血管形成性疾患では、新生血管形成因子が主な原因として関与している。
【0218】
新生血管形成性疾患において、異常細胞は正常細胞と比較して新生血管形成因子を過剰生成する。重要であることが知られている新生血管形成因子のうち代表的なものは、VEGF(血管内皮細胞成長因子:Vascular endothelial growth factor)である。VEGFリガンドとVEGF受容体(VEGFR)およびそれらのシグナル送達に関与する因子を阻害すると、このような異常な新生血管形成が改善されることが知られている。
【0219】
また、最近、HIF-1α(HIF-1-alpha、Hypoxia-inducible factor(低酸素誘導因子) 1-alpha)が新生血管形成に関与するという研究結果が発表されている。例えば、HIF-1αが眼球で網膜および網膜下の新生血管形成を誘導するという結果がある[5]。HIF-1αは低酸素状態で過剰発現する因子として細胞の成長および生存に関与する因子として知られている。これに加えて、HIF-1αは新生血管形成に関与し、VEGFの上位調整因子(parent moderator)の中の1つである。HIF-1αの新生血管形成シグナル送達経路は図1の通りである。HIF-1αの直接的な阻害治療の可能性が研究されているにも関わらず、現在までは予想外の毒性によって大きな成果が出ていない状況である[6]。
【0220】
さらに、HIF-1αの下位調整因子(child moderator)のうち、EPO、PGF、ANGPTL4、SDF-1、VEGFR1、VEGFR2、PDGFRβ、CXCR4も新生血管形成因子として機能する。
【0221】
4.TRAP-1の阻害による新生血管形成性疾患の治療
本出願の発明者は、既に主なターゲットとして扱われたVEGFおよびHIF-1αではなく、その上位調整因子として、異常細胞にのみ発現される因子を同定した。本出願は、それを阻害する方法および阻害する効果を有する物質、ならびにそれを含む剤形および治療方法も含んでいる。
【0222】
TRAP-1(Tumor necrosis factor receptor-associated protein-1)は、シャペロン蛋白質であるHSP90(heat shock protein-90)のパラログ(paralog)であり、ミトコンドリアにのみ存在するミトコンドリア蛋白質(mitochondrial protein)である。
【0223】
HSP90は、体内蛋白質のかなりの部分を担うシャペロン蛋白質として細胞の恒常性(homeostasis)を調整する機能に関与することが知られており、これによって抗癌ターゲットとして研究されている[7]。しかし、HSP90は異常細胞または正常細胞を区別することなく発現される一般的なシャペロン蛋白質であるため、これを阻害することは予想外の副作用を生むことが多かった。これにより、1999年から臨床実験段階に入ったHSP90阻害剤は18だったが、2018年まで臨床実験が持続しているHSP90阻害剤は5つに過ぎなかった[8]。
【0224】
TRAP-1を含むhsp90sは、2つのユニット(protomer)が結合している構造を有している。ここで、各ユニットを第1ユニット、第2ユニットと称する。hsp90sは、hsp90sに対して特異的なクライアント蛋白質(client protein)が結合すると、互いに離れて配置されていたユニットが接近してATPが結合して分解され、クライアント蛋白質の立体構造を形成する。各ユニットは、N-末端部位(N-terminal domain)、中間部位(middle domain)、C-末端部位(C-terminal domain)から構成されている。N-末端部位は、ATPが結合してhsp90sの活性のためのエネルギーを産生する部位である。中間部位は、各hsp90sに特異的なクライアント蛋白質が結合する部位である。C-末端部位は、2つのユニットが連結される部位である。例示的にTRAP-1の構造と動作過程が図3に示されている。
【0225】
hsp90sは、パラログ間のN-末端部位の相同性が非常に高いが、中間部位の相同性は低い特徴がある。従来のHSP90阻害剤はATPと相同性があるアデノシンバックボーンを含んでおり、hsp90sのN-末端にATPが結合するのを競合的に阻害することによってHSP90を阻害した。これによって、従来のHSP90阻害剤はすべてのhsp90sに対して非選択的に作用する問題があった[9]。これにより、各パラログに対して相同性の低い部位をターゲットとする選択的阻害剤の必要性に関する問題意識があったが、実用的な薬物分子の開発には結びつかなかった[10]。
【0226】
本出願の発明者は、hsp90sおよびその阻害剤を研究したところ、新生血管形成性疾患において、細胞質のhsp90sではなく、ミトコンドリア内部のhsp90sが異常細胞の物質代謝に積極的に関与していることを確認した。これに着目して、HSP90の阻害剤として知られるゲルダナマイシンにミトコンドリア膜透過能のある残基を付着したガミトリニブ(Gamitrinib)を開発し、優れた治療効果があることを確認した。ただし、ガミトリニブは依然として細胞質のhsp90sに対しても阻害能を示し、強い毒性を示す問題があった(韓国特許公開公報KR20150109540A参照)。
【0227】
さらに、本出願の発明者は、新生血管形成性疾患が発生した組織を分析している間、ミトコンドリアhsp90sにおけるTRAP-1が異常組織部位にのみ発現していることを見出した。TRAP-1に対する選択的阻害の必要性を認識し、TRAP-1を阻害する実験を進めた結果、TRAP-1が新生血管形成性疾患を治療するための有効なターゲットであることを検証した。その後、TRAP-1を選択的に阻害できる阻害剤を継続的に研究した後、TRAP-1の選択的阻害剤を最初に開発することができた。そのうちの1つである本出願による化合物は、TRAP-1のユニットの中で相同性の低い中間部に結合することによって、TRAP-1の選択的阻害を可能にする。
【0228】
TRAP-1は、HIF-1αの上位調整因子であり、同定されたTRAP-1とHIF-1αのシグナル送達スキームは図2の通りである。
【0229】
5.本出願の化合物によるTRAP-1の阻害
本目次では、本出願による化合物の構造とTRAP-1との間の相互作用について同定することを目的とする。また、これと関連する化合物の構造的特徴を開示することを目的とする。
【0230】
本出願による薬物分子は、化学式7の構造を有する化合物である。
【0231】
[化学式7]
B-L-C
【0232】
ここで、BはTRAP-1ユニットに対する親和力のある結合部(bonding moiety)であり、Lは結合部と正電荷部を連結するための連結部(linking moiety)であり、Cは正電荷を帯びる正電荷部(cationic moiety)である。
【0233】
この場合、結合部は、TRAP-1ユニットのN-末端部位、中間部位、またはC-末端部位に対する結合能を有し得る。この場合、結合部は、TRAP-1ユニットの活性部位(active site)に対する結合能がなければならず、その中でも中間部位に対する結合能があることが好ましい。
【0234】
また、結合部は特定の体積を有することが好ましい。これは、TRAP-1ユニットの特定部位に対する結合能を有するために適した体積を有することが好ましいからである。好ましいいくつかの実施例では、結合部は置換基としてアルコキシ基を含むことができる。さらに、結合部は置換基として2個以上のアルコキシ基を含むことができる。好ましいいくつかの実施例では、結合部は置換基としてカルボニル基を含むことができる。さらに、結合部は置換基として2個以上のカルボニル基を含むことができる。好ましいいくつかの実施例では、結合部は置換基としてアルキル基を含むことができる。好ましいいくつかの実施例では、結合部は置換基としてアルコキシ基およびカルボニル基を含むことができる。さらに、結合部は置換基として2個以上のアルコキシ基、2個以上のカルボニル基およびアルキル基を含むことができる。
【0235】
この場合、連結部の長さは、TRAP-1と本出願の薬物分子との間の相互作用に影響を及ぼし得る。TRAP-1と薬物分子との間の相互作用は、(1)TRAP-1の2つの前駆体の特定部位にそれぞれ薬物分子が結合する場合、(2)TRAP-1の2つの前駆体の特定部位に1つの薬物分子が全て結合する場合、(3)TRAP-1の前駆体の特定部位に薬物分子が結合できない場合があり得る。(3)の場合を除いて、例示的に連結部の長さが特定の長さ未満の場合、(1)の比率が(2)の比率より高くてもよい。また、連結部の長さが特定の長さ以上の場合、(2)の比率が(1)の比率より高くてもよい。また、連結部の長さが特定の長さである場合、(2)の比率が一番高いように最適化される可能性がある。
【0236】
また、連結部の長さは、TRAP-1がATPと結合していない状態において、第1ユニットの特定構成要素と第2ユニットの特定構成要素との間の距離に近い値であり得る。この場合、各ユニットの特定構成要素はそれぞれN-末端部位、中間部位またはC-末端部位であり得る。さらに、この場合、各ユニットの特定構成要素のうち少なくとも1つは中間部位であり得る。または、この場合、連結部の長さは、TRAP-1がATPと結合した状態において、第1ユニットの特定構成要素と第2ユニットの特定構成要素との間の距離と近い値であり得る。この場合、各ユニットの特定構成要素はそれぞれN-末端部位、中間部位またはC-末端部位であり得る。さらに、この場合、各ユニットの特定構成要素のうち少なくとも1つは中間部位であり得る。
【0237】
あるいは、正電荷部は高い脂肪親和性(lipophilicity)を有することができる。例示的に脂肪親和性が大きな分子は、体積が大きな無極性部位を有するか、極性部位が無極性部位で囲まれているか、または大きな分子量を有することができる。正電荷部は、ミトコンドリアの膜を透過することによって薬物分子がミトコンドリアの内部に送達されることを可能にする。
【0238】
さらに、正電荷部は、ユニットのN-末端部位、中間部位、またはC-末端部位に対する結合能を有し得る。正電荷部がユニットに対して結合能を示す場合、治療学的に有効な薬物分子の最小量を効率的に低減できるからである。ただし、正電荷部のユニットに対する結合能は結合部と同等である必要は全くない。
【0239】
また、結合部の特定部位は特定の体積を有することが好ましい。これは、ユニットの特定部位に対する結合能を有するために適した体積を有する必要があるからである。この場合、前記特定部位は環状構造を有することができる。
【0240】
6.眼疾患の分類
眼疾患はいくつかの方法で分類することができる。まず、眼疾患は異常が発生した眼球構造(ocular structure)に応じて分類することができる。
【0241】
この場合、異常が発生する眼球構造は眼球を囲んでいる眼球周辺構造(eyeball surrounding structure)であり得る。眼球周辺構造はまぶたまたは涙腺であり得る。
【0242】
あるいは、異常が発生する眼球構造は眼球を構成する眼球構成要素(component of eyeball)であり得る。眼球構成要素は、結膜、強膜、角膜、虹彩、毛様体、水晶体、脈絡膜、網膜、硝子体、視神経または眼筋肉であり得る。この場合、網膜に発生する眼疾患は網膜症または網膜病症(retinopathy)と呼ばれる。
【0243】
また、眼疾患は新生血管形成(neovascularization)の有無により分類することができる。
【0244】
特定の眼球構造または眼球全体の新生血管形成によって発生する眼疾患を新生血管形成性眼疾患(neovascular ocular disease)と呼ぶ。新生血管形成は、奇形形成された血管の周辺に新しい血管が形成される身体的現象をいい、本出願では、奇形形成された血管から新しい血管が伸びて出る現象である血管新生(angiogenesis)を含む。異常な血管の弱化、虚血(ischemia)または新生血管形成因子(neovascularization factor)の過剰生成によって眼球構造で異常な新生血管形成が発生する可能性がある。これにより、血管構造が密集し、血管が十分に厚く成長できないことによって、血管の圧力が上昇し、血管が眼球構造から分離されるなど異常症状が発生することになる。
【0245】
新生血管形成性眼疾患は、新生血管形成が発生する眼球構造により分類することができる。この場合、新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成(choroidal neovascularization)、網膜新生血管形成(retinal neovascularization)、網膜下新生血管形成(subretinal neovascularization)、角膜新生血管形成(corneal neovascularization)または虹彩新生血管形成(Rubeosis iridis;iris neovascularization)であり得る。
【0246】
そのうち、網膜新生血管形成は、網膜の内部から始まる新生血管形成が網膜と硝子体の境界まで突出して発生する。新生血管によって引き起こされる虚血によって硝子体の汚染、網膜分離などの症状が現れる。これによる眼疾患は、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、未熟児網膜症(retinopathy of prematurity)または網膜静脈閉塞(retinal vein occlusion)等がある。網膜新生血管形成疾患は、網膜血管の虚血症状が伴い、虚血性網膜症(ischemia retinopathy)とも呼ばれる。
【0247】
網膜下新生血管形成は、網膜の下部構造から始まる新生血管形成が下部構造と網膜の境界まで突出して発生する。この場合、網膜下新生血管形成は脈絡膜新生血管形成によって発生する可能性がある。これによる代表的な眼疾患は湿式加齢黄斑変性(wet age-related macular degeneration;wet AMD)等がある。湿式加齢黄斑変性の場合、黄斑の下に浸透した新生血管で発生した虚血によって黄斑の光受容体および黄斑細胞の変性が発生する。
【0248】
あるいは、新生血管形成性眼疾患は特定の眼球構造に特定されず、症状に従って分類することができる。例えば、新生血管緑内障(neovascular glaucoma)がこれに属する。
【0249】
特定の眼球構造または眼球全体で新生血管形成が観察されない眼疾患を非新生血管形成性眼疾患(non-neovascular ocular disease)と称する。乾式加齢黄斑変性(dry age-related macular degeneration;dry AMD)がこれに属する。
【0250】
本出願において、治療対象となる眼疾患は新生血管形成性眼疾患に該当する。
【0251】
7.本出願による薬学的組成物
本出願は、本出願による化合物から選択される1つ以上を有効成分として含む薬学的組成物を提供することができる。ここで、本出願による化合物は、化学式1~11で表される化合物を意味し、前記化学式1~11については、「2.本出願の化合物構造」の内容を準用する。
【0252】
特定の一例において、本出願による薬学的組成物は、新生血管形成性眼疾患治療用であり得る。さらに、前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患、網膜新生血管形成疾患、網膜下新生血管形成疾患、角膜新生血管形成疾患、虹彩新生血管形成疾患、新生血管形成性緑内障であり得る。一例では、前記新生血管形成性眼疾患は、網膜新生血管形成疾患であり得る。さらに、前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症または網膜静脈閉塞症であり得る。好ましくは、前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症であり得る。他の例では、前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患であり得る。さらに、前記脈絡膜新生血管形成疾患は、ウェット型加齢黄斑変性症(wet AMD)であり得る。
【0253】
特定の一例において、本出願による薬学的組成物は、経口用または点眼投与用であり得る。好ましくは、本出願による薬学的組成物は点眼投与用であり得る。
【0254】
本出願は、本出願による化合物から選択される1つ以上を投与することを含む新生血管形成性眼疾患の治療方法を提供することができる。ここで、本出願による化合物は、化学式1~11で表される化合物を意味し、前記化学式1~11については、「2.本出願の化合物構造」の内容を準用する。
【0255】
特定の一例において、前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患、網膜新生血管形成疾患、網膜下新生血管形成疾患、角膜新生血管形成疾患、虹彩新生血管形成疾患、新生血管形成性緑内障であり得る。一例では、前記新生血管形成性眼疾患は、網膜新生血管形成疾患であり得る。さらに、前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症または網膜静脈閉塞症であり得る。好ましくは、前記網膜新生血管形成疾患は、糖尿病性網膜症であり得る。他の例では、前記新生血管形成性眼疾患は、脈絡膜新生血管形成疾患であり得る。さらに、前記脈絡膜新生血管形成疾患は、ウェット型加齢黄斑変性症(AMD)であり得る。
【0256】
特定の一例において、本出願による新生血管形成性眼疾患の治療方法は、本出願による化合物を経口経路で投与すること、または点眼経路で投与することを含み得る。好ましくは、本出願による新生血管形成性眼疾患の治療方法は、本出願による化合物を点眼経路で投与することを含み得る。
【0257】
本出願の組成物および発明は、それを必要とする対象を治療するために使用することができる。特定の実施例では、対象はヒトなどの哺乳類であるか、または非ヒトの哺乳類である。対象、例えば、ヒトに投与される場合、組成物または化合物は、例えば、本出願の化合物および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物として投与されることが好ましい。薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野で周知であり、例えば、水のような水溶性溶液または生理学的に緩衝された食塩水またはグリコール、グリセロール、オリーブ油などの油、または注射可能な有機エステルのような他の溶媒または担体を含む。好ましい実施例では、そのような薬学的組成物がヒトを投与対象とするとき、特に侵襲的経路で投与される場合(すなわち、注射または移植のように、上皮上壁を通る輸送または拡散を回避する経路)、水溶液は発熱物質が存在しないか、または実質的に発熱物質がない。添加剤は、例えば、製剤の持続的な放出に寄与するか、または1つ以上の細胞、組織または器官を選択的に対象とするために選択することができる。薬学的組成物は、丸薬、カプセル(スプリンクルカプセル(sprinkle capsule)、ゼラチンカプセルを含む)、顆粒剤、再成形可能な凍結乾燥物、粉末、溶液、シロップ、坐剤、注射または他の投与単位剤形として提供されてもよい。また、組成物は、経皮送達システム、例えば、皮膚パッチとして提供されてもよい。また、組成物は、局所投与に適した溶液、例えば、目薬として提供されてもよい。
【0258】
薬学的に許容可能な担体は、生理学的に許容可能な製剤として、例えば、安定化したり、溶解度を増加させたり、または本出願の化合物と同じ化合物の吸収を増加させる機能をすることを含み得る。そのような生理学的に許容可能な製剤には、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンのような酸化防止剤、キレート剤、低分子量蛋白質または他のスタビライザーまたは添加剤が含まれる。薬学的に許容可能な担体、例えば、生理学的に許容可能な製剤の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。前記薬学的組成物の製剤は、自己乳化薬物送達システム(self-emulsifying drug delivery system)または自己マイクロ乳化薬物送達システム(self-microemulsifying drug delivery system)であり得る。薬学的組成物(製剤)は、リポソームまたは他のポリマー基質であり、それらの内部に、例えば、本出願の化合物が含まれるものであり得る。リポソームは、例えば、リン脂質または他の脂質で構成されており、毒性がなく、生理学的に許容可能であり、代謝可能(metabolizable)な担体として製造して投与することが比較的容易である。
【0259】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または副作用を示さず、対象の組織と接触させるのに適しており、合理的な利益/リスク比率(benefit/risk ratio)を有する化合物、物質、組成物、および/または投与剤形を指す。
【0260】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体」という用語は、薬学的に許容可能な物質、組成物または担体として、例えば、液体または固体フィラー、希釈液、添加剤、溶媒またはカプセル化物質を意味する。各担体は、「許容可能」でなければならず、これは剤形の他の成分と互換性があり、また対象に損傷を与えてはいけないことを意味する。薬学的に許容可能な担体として機能し得る物質の一部の例には、以下が含まれる。(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖類;(2)トウモロコシ澱粉またはジャガイモ澱粉のような澱粉;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテートのようなセルロース、およびその誘導体;(4)トラガカント粉末(powdered tragacanth);(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび坐剤用ワックスのような添加剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および豆油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリポール;(12)エチルオレイン酸およびエチルラウリン酸のようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張性蒸溜水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)薬学的剤形に含まれる他の無毒性互換可能物質。
【0261】
薬学的組成物(製剤)は、対象に様々な投与経路を介して投与することができる。投与経路には、例えば、経口(例えば、水溶性または非水溶性の溶液または懸濁液のようなドレンチ、丸薬、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、塊、粉末、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト);口腔粘膜による吸収(例:舌下);肛門、直腸または膣(例えば、ペッサリー、クリームまたはフォーム);非経口(筋肉内、静脈内、皮下または脊髄腔内に、例えば、滅菌溶液または懸濁液による);鼻腔;腹腔内;皮下;経皮(例えば、皮膚に貼り付けるパッチ);および局所的(例えば、クリーム、軟膏または皮膚に塗布されるスプレー、または目薬)投与が含まれる。または、化合物は吸入できるように調製されてもよい。特定の実施例では、化合物は単に滅菌水に溶解または懸濁することができる。適切な投与経路およびそれに適した組成物の具体的な例は、例えば、U.S.Pat.Nos.6,110,973、5,763,493、5,731,000、5,541,231、5,427,798、5,358,970および4,172,896、ならびにそれらが引用する特許に記載されている。
【0262】
剤形は、単位投与単位剤形として都合よく提供することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって製造することができる。単一投与剤形を製造するために担体物質と混合することができる有効物質の量は、治療対象、特定の投与方法に応じて変化する。単一投与剤形を製造するために担体物質と混合することができる有効物質の量は、一般に治療学的効果を示すための化合物の量である。一般に、100%を基準として、上記の量は有効物質1%~約99%であり、好ましくは約5%~約70%であり、最も好ましくは10%~30%である。
【0263】
このような剤形または組成物の製造方法は、有効化合物、例えば、本出願の化合物を担体および場合により1つ以上の追加成分と結合させるステップを含む。一般に、剤形は、本出願の化合物を液体担体、または微粉化した固体担体、またはその両方に均一かつ親密に結合させ、その後、必要に応じて製品を成形することによって製造される。
【0264】
経口投与に適した本出願の剤形は、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、カシェ(cachets)、錠剤、丸薬、トローチ(lozenge)(風味付けされたベースを使用し、主にスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用する)、凍結乾燥物、粉末、顆粒剤、または水溶性または非水溶性液体の溶液または懸濁液、または油中水または水中油液体エマルション、またはエリクサーまたはシロップ、またはキャンディ(不活性ベースを使用し、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用する)および/または含水剤などであり、それぞれ有効物質として所定の量の本出願の化合物を含む形態であり得る。また、組成物または化合物は、塊、軟膏またはペーストの形態で投与することができる。
【0265】
固体投与剤形を製造するために(カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、丸薬、錠剤、糖剤(dragee)、粉末、顆粒剤およびその他)、有効成分は1つ以上の薬学的に許容可能な担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸ジカルシウム、および/または以下のいずれかと混合される:(1)澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マニトール、および/またはケイ酸のようなフィラーまたは増量制;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアのような結合剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、カルシウムカーボネート、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤(disintegrating agent);(5)パラフィンのような溶液遅延剤(solution retarding agent);(6)第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤(absorption accelerators);(7)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤(wetting agents);(8)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム(lauryl sulfate)、およびその混合物などの潤滑剤;(10)改質および非改質されたシクロデキストリンのような錯化剤(complexing agents);および(11)着色剤。カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、丸薬および錠剤の場合、薬学的組成物は緩衝剤も含み得る。同様の種類の固体組成物も同様に、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールおよびその他を使用して軟質および硬質のゼラチンカプセルのフィラーとして使用することができる。
【0266】
丸薬は、選択的に1つ以上の追加成分と共に圧縮または成形することで作ることができる。圧縮丸薬(compressed tablet)は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、非活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、澱粉グリコール酸ナトリウムまたはクロス結合カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して製造することができる。成形丸薬(molded tablet)は、適切な機械で粉末形態の化合物を不活性液体希釈剤で濡らした混合物を成形することによって製造することができる。
【0267】
丸薬および薬学的組成物の他の固体投与剤形は、例えば、糖剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤および顆粒剤は、腸溶性コーティングおよび薬学的剤形の当該技術分野で周知の他のコーティングのようなコーティングおよびシェルで選択的に包まれるか、または製造されてもよい。また、このような剤形は、例えば、所望の放出プロファイルを示すために、これらの内部に含まれる活性成分が遅延または調整して放出されるように、様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマー基質、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して製造することができる。このような剤形は、例えば、バクテリアフィルターを介して濾過するか、または滅菌水に溶解することができる滅菌された固体組成物の形態の滅菌剤を結合させるか、または使用直前に滅菌用注射物質を適量入れることによって滅菌することができる。このような組成物は選択的に不透明化剤を含み得、そして有効成分を必然的にまたは優先的に消化管から特定の量で放出し、選択的に、遅延放出する組成物の形態であり得る。使用することができる包埋組成物(embedding composition)の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。また、有効物質は、それが適切な場合、1つ以上の上記の添加剤とともにマイクロカプセルの形態として提供することができる。
【0268】
経口投与に有用な液体投与剤形は、薬学的に許容可能なエマルション、再成形できる凍結乾燥物、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリクサーを含む。有効成分に加えて、液体投与剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水またはその他の溶媒、シクロデキストリンおよびその誘導体、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(具体的には、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚乳、オリーブ油、キャスター油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物を含み得る。
【0269】
不活性希釈剤に加えて、経口用組成物は、湿潤剤、乳化剤または懸濁剤、甘味料、調味料、着色料、着香料および保存性物質のようなアジュバントを含み得る。
【0270】
懸濁液は、活性物質に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース(microcrystalline cellulose)、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁剤を含むことができる。
【0271】
直腸、膣、または尿道投与のための薬学的組成物の剤形は、坐剤として提供することができ、1つ以上の活性化合物と1つ以上の適切な無刺激性添加剤または担体として、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックスまたはサリチル酸塩、および常温で固体であるが、体温で液体であり、これによって、直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出することを含むものを混合することによって製造することができる。
【0272】
口腔内投与用の薬学的組成物の剤形は、含水剤、または口腔スプレー、または口腔軟膏で提供することができる。
【0273】
代替的または追加的に、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤー、または他の管腔内治療器具(intraluminal device)を介した送達のために調製することができる。このような器具を介した送達は、特に膀胱、尿道、尿管、直腸、または腸への送達に有用であり得る。
【0274】
また、膣投与に適した剤形には、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー剤形として適切な技術分野で周知の担体を含むものも含まれる。
【0275】
局所または経皮投与のための投与剤形は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。有効化合物は、滅菌環境で薬学的に許容可能な担体、および必要に応じて任意の保存剤、緩衝剤、または噴射剤と混合することができる。
【0276】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、活性化合物に加えて、動物および植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物などの添加剤を含み得る。
【0277】
粉末およびスプレーは、活性化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、または前記物質の混合物などの添加剤を含み得る。さらに、スプレーは、クロロフルオロヒドロカーボンおよびブタンおよびプロパンのような揮発性非置換ヒドロカーボンのような一般的な噴射剤を含み得る。
【0278】
経皮用パッチは、本出願の化合物を身体に調整して送達するようにするさらなる利点を有する。このような投与剤形は、適切な賦形剤に活性化合物を溶解させるか、または分散させて作ることができる。皮膚を通過する化合物の流れを増加させるために吸収増強剤が使用されてもよい。このような流れの速度は、速度調整のための膜を提供するか、または化合物をポリマー基質またはゲルに分散させることによって調整することができる。
【0279】
また、眼科剤形、眼軟膏、粉末、溶液などは、本出願の範囲内であると考えられる。例示的な眼科剤形は、参考資料としてその内容が本出願に含まれるU.S.公報番号:2005/0080056、2005/0059744、2005/0031697および2005/004074およびU.S.特許番号:6,583,124に記載されている。所望であれば、液体眼科剤形は、涙液、水様液または硝子体液と類似の物性を有するか、またはこのような流体と互換性があり得る。好ましい投与経路は局所投与である(例えば、目薬またはインプラントによる投与などの局所投与).
【0280】
本出願で使用される「非経口投与」および「非経口で投与される」という用語は、腸管および局所投与を除く投与方法であり、一般に注射によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、脊椎腔内、皮膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管経由、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。
【0281】
非経口投与に適した薬学的組成物は、1つ以上の活性化合物が1つ以上の薬学的に許容可能な滅菌された等張性水溶性または非水溶性溶液、分散物、懸濁液またはエマルション、または滅菌された粉末として使用する直前に滅菌された溶液または分散物で再成形することができるものと混合して含まれ、酸化防止剤、緩衝剤、細菌発育阻止剤、剤形を意図された投与対象者の血液に投与する場合、等張性を示すように調整する溶質または懸濁剤または濃厚剤を含むことができる。
【0282】
本出願の薬学的組成物に使用できる適切な水溶性または非水溶性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用、分散物である場合は必要な粒子の大きさの維持、および界面活性剤の使用を通じて維持することができる。
【0283】
また、このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含むことができる。微生物活動の阻害は、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、および他の様々な抗細菌および抗真菌剤を含むことで確実にすることができる。また、糖類、塩化ナトリウム、および他の等張剤を組成物に含むことが好ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる製剤を含むことによって注射可能な薬学的剤形の延長吸収をもたらすことができる。
【0284】
場合によっては、薬物の効果を延長するために、皮下および筋肉内注射から薬物の吸収を遅らせることが好ましい。これは、水溶性の低い結晶性または非晶質物質の液体懸濁液を使用して達成することができる。この場合、薬物の吸収速度は物質の溶解速度に依存し、すなわち、結晶の大きさおよび結晶の形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物剤形の遅延吸収は、薬物を油担体に溶解または懸濁させることによって達成することができる。
【0285】
注射可能なデポー剤形(depot form)は、対象化合物がポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマーの内部にあるマイクロカプセル化された基質を形成することによって作られる。薬物に対するポリマーの比率および使用される特定のポリマーの特性に応じて、薬物の放出速度を調整することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)が含まれる。デポー注射可能剤形は、薬物を人体組職と互換性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに閉じ込めることによって製造することもできる。
【0286】
本出願の方法で使用するために、活性化合物は、それ自体、または、例えば、0.1~99.5%(より好ましくは、0.5~90%)の活性成分を薬学的に許容可能な担体とともに含む薬学的組成物として提供することができる。
【0287】
また、導入方法は、再充電可能または生分解性装置を介して提供することができる。最近、蛋白性バイオ医薬品を含む、薬物の放出を調整するために様々な徐放性ポリマーデバイス(slow release polymeric device)が開発され、生体内で実験されてきた。生分解性および非分解性ポリマーの両方を含む、様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)が特定の標的場所で化合物を持続的に放出するためのインプラントを作るために使用され得る。
【0288】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量は、特定の患者、組成物、および投与方法に対して患者に毒性を示さず、所望の治療学的反応を達成するのに有効な量の活性成分を得るために変わり得る。
【0289】
選択された投与量は、特定の化合物または使用される化合物の組み合わせ、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と共に使用される他の薬物、化合物および/または物質、年齢、性別、体重、状態、一般健康および治療中の対象の病歴、および他の医学分野で周知の要因を含む様々な要因に依存するであろう。
【0290】
その分野で通常の知識を有する医師または獣医師は、薬学的組成物の必要とされる治療学的有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物または化合物の投与量を所望の治療学的効果を達成するために必要な程度より低い数値から開始し、所望の効果が達成されるまでゆっくりと投与量を増加させることができる。「治療学的有効量」は、所望の治療学的効果を導出するのに十分な化合物の濃度を意味する。一般に、化合物の有効量は、対象の体重、性別、および病歴によって変わり得ると理解されている。有効量に影響を与える他の要素には、対象の状態の重症度、治療対象の障害、化合物の安定性、および所望の場合、本出願の化合物と共に投与される他の種類の治療剤が含まれるか、これらに限定されない。大量の総投与量は、製剤を複数回投与することによって送達することができる。効果および投与量を決定する方法は当業者に知られている(Isselbacher et al.(1996) Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814-1882、本明細書に参考文献として組み込まれる)。
【0291】
一般に、本出願の組成物および方法に使用される活性化合物の適切な1日投与量は、治療効果を生じるのに効果的な最低投与量の化合物であろう。このような効果的投与量は一般に上記の要因に依存するであろう。
【0292】
特定の実施例では、本出願の化合物は、単独または他の種類の治療剤と一緒に投与することができる。本出願で使用される通り、「共同投与(conjoint administration)」という用語は、その前に投与された治療化合物がまだ身体で有効である間に第2化合物が投与されるように2つ以上の異なる治療化合物を投与する任意の方式である(例えば、2つの化合物は対象に同時に効果的であり、2つの化合物の同伴上昇効果を含み得る)。例えば、異なる治療化合物は、同じ剤形または別途の剤形で、付随的にまたは逐次的に投与することができる。特定の実施例では、異なる治療化合物は、互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または1週間以内に投与することができる。したがって、そのような治療を受ける対象は、異なる治療化合物の併用効果から利益を得ることができる。
【0293】
特定の実施例では、本出願の化合物と1つ以上の追加的な治療剤(例えば、1つ以上の追加的な化学療法制)の共同投与は、本出願の化合物または1つ以上の追加的な治療剤をそれぞれ個別投与することと比較して改善された効果を提供する。このような特定の実施例では、共同投与は付加的効果を提供する。ここで付加的効果は、本出願の化合物および1つ以上の追加的な治療剤の個別投与の効果のそれぞれを合わせたことを意味する。
【0294】
本出願は、本出願の組成物および方法における本出願の化合物の薬学的に許容される塩の用途を含む。特定の実施例では、本出願の意図された塩は、アルキル、ジアルキル、トリアルキルまたはテトラアルキルアンモニウム塩を含むが、これらに限定されない。特定の実施例では、本出願の意図された塩は、L-アルギニン、ベネンタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、および亜鉛塩を含むが、これらに限定されない。特定の実施例では、本出願の意図された塩は、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩を含むが、これらに限定されない。
【0295】
また、薬学的に許容可能な酸付加塩は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、および他の様々な溶媒和物として存在し得る。このような溶媒和物の混合物も製造することができる。このような溶媒和物の供給源は結晶化される溶媒からであり得、これは製造または結晶化される溶媒の固有の特徴によるものであるか、または前記溶媒による不測の原因によるものであり得る。
【0296】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味料および着香剤、保存剤および酸化防止剤も前記組成物にあり得る。
【0297】
薬学的に許容可能な酸化防止剤の例には、以下が含まれる:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムおよびその他の水溶性酸化防止剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレートおよびα-トコフェロール、およびその他の油溶性酸化防止剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、およびその他の金属-キレート剤。
【0298】
具体的な実施例
実施例1.以下の実験のための実験実施方法
-酸素誘導網膜症マウスモデルおよびSMX眼球注射
酸素誘導網膜症マウスモデルは、誕生後7日(P7)のC57BL/6J(ヒョチャンサイエンス)子マウスを高酸素チャンバー(Coy lab.in vivo chamber、75%O)で5日間飼育した後(P12)、正常酸素環境で5日間飼育する(P17)ことで誘導した。高酸素チャンバーで子マウスを取り出した後(P12)、SMXを1回、0.15mM濃度(0.1% DMSO)で1ul眼球注射した。眼球注射に使用したSMXは、1xPBS(Phosphate buffer saline)で0.1%に希釈した後使用し、コントロールマウスには1XpbsにDMSO 0.1%を使用した。Eylea(Aflibercept、anti-VEGF ab)の場合、40ugを1ulに希釈して1ul眼球注射した。
【0299】
-網膜血管分析
酸素誘導網膜マウスモデルを形成した後、1XPBS、4%PFAで灌流(perfusion)した。マウスの目を摘出し、4%PFAで固定した後、網膜を分離した。分離した網膜を1XPBSで洗浄した後、1時間常温でブロッキング(Blocking)(0.1%BSA、0.1% Tryton X-100 in 1XPBS)した。4℃で1日間、CD31血管染色抗体(CD31、cell signaling、1:100)で染色した。翌日、1XPBSで洗浄した後、二次抗体(2nd antibody)で4℃で1日間染色した。(alexa flour 594-anti rabbit antibody、1:500)翌日、1XPBSで洗浄した後、マウンティング(mounting)した。蛍光顕微鏡で血管染色を分析した(Zen、axio zoom)。分析はZENソフトウェア(Zen software)を使用した。
【0300】
-細胞培養
ミュラー細胞(MIO-M1)を37℃、5%COで培養し、培地をDMEM-low glucose(sigma)+10% Fetal bovine serum+1% penicillin&streptomycinの条件で使用した。低酸素チャンバーは37℃、5%CO、1%Oに維持した。
【0301】
-ウェスタンブロット(western blot)
ミュラー細胞(MIO-M1)を60ミリプレートに4x105の水で細胞を分注し、3mlの培地で24時間培養した。翌日、ミトコンドリア熱蛋白質90(TRAP1)阻害剤であるSMXを図に示す濃度別に処理し、低酸素チャンバーで6時間培養した。培養された細胞から全細胞溶解物(Whole cell lysates)を調製して電気泳動し、PVDF膜に移動させた後、一次抗体を4℃で18時間処理した。翌日、二次抗体を1時間処理し、ウェスタンブロッティング検出試薬を用いて蛋白質発現を分析した。
【0302】
-Total RNA抽出およびRNA level分析
ミュラー細胞にガミトリニブ(Gemitrinib)とSMXを3uMで処理し、1%O環境で8時間培養後、total RNAを抽出した(Quiazen、total RNA extraction kit)。1ugのtotal RNAでcDNAを合成した(NEB、cDNA synthesis kit)。angiogenic factorをPCRを用いて合成した後、アガロース電気泳動してRNA levelを分析した。
【0303】
-管形成アッセイ(tube formation assay)
ミュラー細胞でsiRNAを用いてTRAP1をノックダウン(knock down)した。培地(media)を変えた後、1%O環境で24時間培養して条件培地(conditioned media)を調製して86℃で保管した。96ウェルプレートにマトリゲル(matrigel)でコーティングし、HUVECセル(cell)と条件培地を混合して分注した。37℃のインキュベーター(incubator)で4時間培養後、管形成(tube formation)を分析した。バイオ画像ナビゲータ(Bio image navigator)顕微鏡を用いて画像を撮影し、image jプログラムで分析した。
【0304】
-ATPase活性アッセイ
ATPase活性は、メーカーのマニュアルに従ってPiColorLock Gold Phosphate Detection Kit(Innova Biosciences)を介して非有機リン酸塩の放出を測定することによって測定した。TRAP1(0.5μM)を0.2mM ATPとともに100mM Tris、20mM KCl、および6mM MgClで、pH7.0、37℃の条件で3時間培養した。その後、100μLのATP加水分解物サンプルにPiColorLock Gold reagentと促進剤(100:1)を添加した。25℃で5分間培養した後、10μL停止液(stop solution)を添加して色変化を停止させ、SYNERGY NEO microplate reader(BioTek Instruments)を介して620nmでの吸光度を測定した。
【0305】
阻害能分析のために、TRAP-1を所定の濃度(0.520μM)の阻害剤とともに30分間培養した後、ATPと撹拌した。吸光度の値をDMSO対照群で正規化し、データを%ATPase活性として表した。
【0306】
実施例2.TRAP1の阻害は新生血管形成性眼疾患の治療効果を有する。
実施例2.1.TRAP1+/+、+/-マウスを用いた酸素誘導網膜症マウスモデルの調製
TRAP1+/-(メス)とTRAP1+/-(オス)を交配し、同じ腹から出たTRAP1+/+とTRAP1+/-マウスを使用した。
【0307】
TRAP1 wild、hetero子マウスを誕生の7日から12日まで(P7-P12)高酸素チャンバー(Coy lab.in vivo chamber、75%O)で飼育した後、12日から17日まで正常酸素環境で飼育して網膜症マウスモデルを作成した。
【0308】
実施例2.2.TRAP-1+/+、+/-酸素誘導網膜症マウスモデルの網膜血管分析
酸素誘導網膜マウスモデルを形成した後、1XPBS、4%PFAで灌流した。マウス目を摘出して4%PFAで固定した後、網膜を分離した。分離した網膜を1XPBSで洗浄した後、常温で1時間ブロッキング(0.1%BSA、0.1% Tryton X-100 in 1XPBS)した。4℃で1日間CD31血管染色抗体(CD31、cell signaling、1:100)で染色した。翌日、1XPBSで洗浄した後、二次抗体で4℃で1日間染色した。(alexa flour 594-anti rabbit antibody、1:500)翌日、1XPBSで洗浄した後、マウンティングした。蛍光顕微鏡で血管染色を分析した(Zen、axio zoom)。分析はZENソフトウェアを用いた。
【0309】
網膜血管分析の結果、TRAP-1+/+酸素誘導網膜症マウスモデルは網膜の無血管領域(avascular area)が増加し、同時に新生血管領域(neovascular area)が増加したことが観察され、酸素誘導網膜症の症状が明確に観察された。逆に、TRAP-1+/-酸素誘導網膜症マウスモデルは、網膜の無血管領域(avascular area)と新生血管領域(neovascular area)の変化が明らかに小さく観察され、酸素誘導網膜症が大幅に改善されたことを確認できた(図4図5)。また、TRAP-1+/-酸素誘導網膜症マウスモデルは、酸素誘導網膜症が改善されたほか、野生型マウスと異なる表現型が観察されず、阻害による副作用がないことを確認できた。これをまとめると、TRAP-1は網膜新生血管形成疾患を治療または予防するための有効で安全なターゲットであると結論を導き出すことができた。
【0310】
実施例2.3.TRAP-1を阻害すると、新生血管形成因子の生成が阻害される。
TRAP-1は、HIF-1αの上位調整因子として同時にVEGFなどの新生血管形成因子の上位調整因子であることを前述した(図2)。糖尿網膜症の場合、代表的な網膜新生血管形成疾患であるため、TRAP-1を阻害すると新生血管形成因子が阻害され、糖尿網膜症も治療されるであろう。
【0311】
TRAP-1が新生血管形成因子の上位調整因子であることを検証するために管形成アッセイを行った。
【0312】
ミュラー細胞(MIO-M1)を37℃、5%COで培養し、培地をDMEM-low glucose(sigma)+10% Fetal bovine serum+1% penicillin&streptomycinの条件で使用した。低酸素チャンバーは37℃、5%CO、1%Oに維持した。ミュラー細胞でsiRNAを用いてTRAP1をノックダウンした。培地を変えた後、1%O環境で24時間培養して条件培地(conditioned media)を調製して86℃で保管した。96ウェルプレートにマトリゲル(matrigel)でコーティングし、HUVECセルと条件培地を混合して分注した。37℃で4時間培養後、管形成を分析した。バイオ画像ナビゲータ顕微鏡を用いて画像を撮影し、image jプログラムで分析した。
【0313】
管形成アッセイ結果(図6図7)、TRAP-1をノックダウンさせたミュラー細胞から作った条件培地を使用したグループでチューブの長さ、枝の数、交差点が減少して新生血管形成が阻害されることが確認できた。
【0314】
実施例3.SMx分子はTRAP-1の阻害能を有する。
実施例3.1.実験に使用した物質および入手先
実験実施のために下記の構造式のSMx分子を得た。SMx分子はMedchemExpressから入手した(CAS No.845959-50-4)。
【0315】
また、SMxとの比較のために、hsp90sのN-末端部位阻害剤であるPU-H71および発明者が以前に開発したガミトリニブを得た。PU-H71はTocrisから入手し、ガミトリニブはレゴケムバイオサイエンスから入手した。
【0316】
実施例3.2.TRAP-1とSMxの結合構造
TRAP-1上でSMxが結合する位置を確認するために、TRAP-1とSMxの結合構造に対するX-ray diffraction(XRD)測定を行った。TRAP-1はゼブラフィッシュ(zebrafish)のTRAP-1を使用した。TRAP-1とSMxの結合構造を観察した結果は図12のとおりである。図12の右側には、TRAP-1上でSMxとの結合に関与した主なアミノ酸残基を示した。前記残基が有する機能を理解するために、当該残基の種間保存性を分析した。分析の結果、当該残基は、種間保存性が非常に高い部位としてTRAP-1の機能に重要な役割を果たすと予想できた(図13)。
【0317】
これらの役割をもう少し理解するために、前記結合構造をTRAP-1のホモログ(Homolog)であるHsp90の構造と比較分析した。既存の論文から、Hsp90とそのクライアント蛋白質であるCDK4の結合構造を導き出した[11]。両構造を比較分析した結果、TRAP-1上のSMxとの結合位置がHsp90上のクライアント蛋白質との結合位置と一致することを構造比較により確認することができた。当該位置は、TRAP-1の中間部位に属する残基であり、SMxがクライアント蛋白質と競合的にTRAP-1に結合することを予想することができた(図11)。
【0318】
実施例3.3.SMxはクライアント蛋白質と競合的にTRAP-1に結合する。
SMxがTRAP-1のクライアント蛋白質として知られているSIRT3およびSDHBと競合的に結合するかを確認するために、プルダウンアッセイ(Pull down assay)を行った。GSTフュージョン(GST fusion)形態のTRAP1蛋白質をバクテリアセル(bacteria cell)から精製した後、グルタチオンベース(Glutathione bead)に結合させてTRAP1-bead形態を作製した後、マンマリアンセル(mammalian cell)からアイソレーション(isolation)したミトコンドリアと(Thermo scientific mitochondria isolation kit)4℃で薬物と共に18時間結合させた。薬物としては、SMxと以前に開発されたhsp90sのN-末端部位阻害剤であるガミトリニブおよびPU-H71を図に示す濃度別に処理した。プルダウンアッセイの結果(図14)、SMxの濃度に応じてクライアント蛋白質の結合が有意に減少することを確認した。これは、SMxがTRAP-1の中間部位に対する結合能を有するという強力な証拠である。ガミトリニブおよびPU-H71の処理結果では、SIRT3およびSDHBの発現があまり変化しなかったという事実はこれを支持する。
【0319】
また、実施例2.2で確認されたTRAP-1上のSMxの結合部位を変形させたミュータントのTRAP1 mutant-bead形態を調製した後、プルダウンアッセイを行った(図15、左側)。実験の結果、当該位置を変形させたミュータントの場合、クライアント蛋白質と正しく結合することができないことが観察された。これは、SMxがTRAP-1と結合する位置が、TRAP-1がクライアント蛋白質と結合する部位と同一であることを交差検証している。
【0320】
実施例3.4.SMxによって血管生成因子の発現が減少する。
ミュラー細胞(MIO-M1)を37℃、5%COで培養し、培地をDMEM-low glucose(sigma)+10% Fetal bovine serum+1% penicillin&streptomycinの条件で使用した。低酸素チャンバーは37℃、5%CO、1%Oに維持した。ミュラー細胞(MIO-M1)を60ミリプレートに4x105の水で細胞を分注し、3mlの培地で24時間培養した。翌日、ミトコンドリア熱蛋白質90(TRAP1)阻害剤であるSMX、以前に開発されたhsp90sのN-末端部位阻害剤であるガミトリニブおよびPU-H71を図に示す濃度別に処理し、低酸素チャンバーに24時間の間培養した。培養された細胞から全細胞溶解物(Whole cell lysates)を調製して電気泳動し、PVDF膜に移動させた後、一次抗体を4℃で18時間処理した。翌日、二次抗体を1時間処理し、ウェスタンブロッティング検出試薬を用いて蛋白質発現を分析した。
【0321】
また、ウェスタンブロットと定量的重合酵素連鎖反応の結果、SMxによってHIF-1αをはじめとする(図8)周知の新生血管形成因子の発現(図9)が阻害されることが確認できた。
【0322】
実施例3.5.SMxは既存のhsp90s阻害剤と異なる新規機序でTRAP-1を阻害する。
実施例3.3の結果によってSMxがTRAP-1の機能を成功裏に阻害していることが確認できた。次に、SMxが既存のhsp90s阻害剤とは異なる新規機序によってTRAP-1を阻害することを検証するために、TRAP-1にSMxとPU-H71をそれぞれ処理してATPase活性アッセイを行った。
【0323】
既存のhsp90s阻害剤(ガミトリニブ、PU-H71)は、ATPaseとして機能するhsp90sのN-末端部位と結合する特性を有しており、TRAP-1のATPase活性を低下させる特性を有している。ただし、hsp90sのN-末端部位はパラログ間の相同性が非常に高く、このような阻害剤が非選択的にhsp90sを阻害する問題があった。hsp90sを非選択的に阻害する場合に発生する可能性のある問題については、先に「4.TRAP-1の阻害による新生血管形成性疾患の治療」で述べた。
【0324】
したがって、SMxが前述のようにTRAP-1のN-末端部位に結合せずにTRAP-1を阻害することができれば、既存のhsp90sの問題点を革新的に解決することができるであろう。また、これはSMxを処理した後にTRAP-1のATPase活性を測定することによって検証することができる。
【0325】
ATPase活性は、メーカーのマニュアルに従ってPiColorLock Gold Phosphate Detection Kit(Innova Biosciences)を介して非有機リン酸塩の放出を測定することによって測定された。TRAP1(0.5μM)を0.2mM ATPとともに100mM Tris、20mM KCl、および6mM MgClで、pH7.0、37℃の条件で3時間培養した。その後、100μLのATP加水分解物サンプルにPiColorLock Gold reagentと促進剤(100:1)を添加した。25℃で5分間培養した後、10μL停止液(stop solution)を添加して色変化を停止させ、SYNERGY NEO microplate reader(BioTek Instruments)を介して620nmでの吸光度を測定した。
【0326】
阻害能分析のために、TRAP-1を所定の濃度(0.520μM)の阻害剤とともに30分間培養した後、ATPと撹拌した。吸光度の値をDMSO対照群で正規化し、データを%ATPase活性として表した。
【0327】
ATPase活性アッセイの結果、TRAP-1にPU-H71を処理した場合、濃度によってTRAP-1のATPase活性は全て有意に減少したが、SMxを処理した場合とは反対に濃度によってTRAP-1のATPase活性が有意に増加することが観察された(図16)。これは、SMxがTRAP-1のN-末端部位に結合しないことを示すと同時に、クライアント蛋白質の結合位置に結合することによってATPの結合を促進することを強く示している。
【0328】
実施例4.SMx分子は新生血管形成性眼疾患の治療効果を有する。
酸素誘導網膜症マウスモデルは、誕生後7日(P7)のC57BL/6J(ヒョチャンサイエンス)子マウスを高酸素チャンバー(Coy lab.in vivo chamber、75%O)で5日間飼育した後(P12)、正常酸素環境で5日間飼育する(P17)ことで誘導した。高酸素チャンバーで子マウスを取り出した後(P12)、SMXを1回、0.15mM濃度(0.1%DMSO)で1ul眼球注射した。眼球注射に使用したSMXは、1xPBS(Phosphate buffer saline)で0.1%に希釈した後使用し、コントロールマウスには1XpbsにDMSO 0.1%を使用した。既に糖尿網膜症の治療効果があることが知られているEylea(Aflibercept、anti-VEGF ab)の場合、40ugを1ulに希釈して1ul眼球注射した。
【0329】
酸素誘導網膜マウスモデルを形成した後、1XPBS、4%PFAで灌流した。マウスの目を摘出し、4%PFAで固定した後、網膜を分離した。分離した網膜を1XPBSで洗浄した後、1時間常温でブロッキング(0.1%BSA、0.1% Tryton X-100 in 1XPBS)した。4℃で1日間、CD31血管染色抗体(CD31、cell signaling、1:100)で染色した。翌日、1XPBSで洗浄した後、二次抗体で4℃で1日間染色した。(alexa flour 594-anti rabbit antibody、1:500)翌日、1XPBSで洗浄した後、マウンティングした。蛍光顕微鏡で血管染色を分析した(Zen、axio zoom)。分析はZENソフトウェアを使用した。
【0330】
コントロールマウス、Eylea注射マウス、SMx注射マウスの網膜血管の分析結果(図17)、まずSMx注射マウス網膜の新生血管領域がEylea注射マウス網膜と同等に減少し、糖尿網膜症の治療効果があることを確認できた。また、例外的に、SMx注射マウス網膜の無血管領域がEylea注射マウス網膜と比較して著しく減少することが確認された。これにより、SMxがEyleaとは異なって網膜の血管生成パターンを正常化する効果を有することが確認できた。
【0331】
実施例5.本出願の分子は低分子(small molecule)薬物として口腔/点眼投与が可能である。
既存の糖尿網膜症治療剤は、VEGFに対する抗体薬物として分子量が大きいため、組織への侵襲性が低く、従って、眼球注射による処方のみが可能であった。本出願によるSMxおよび新規化合物分子は、低分子薬物として、送達の面で著しく改善すると考えられ、マウスモデルに対する点眼投与を実施した。
【0332】
酸素誘導網膜症マウスモデルは、誕生後7日(P7)のC57BL/6J(ヒョチャンサイエンス)子マウスを高酸素チャンバー(Coy lab.in vivo chamber、75%O)で5日間飼育した後(P12)、正常酸素環境で5日間飼育する(P17)ことで誘導した。
【0333】
酸素誘導網膜症マウスモデルは、誕生後7日(P7)のC57BL/6J(ヒョチャンサイエンス)子マウスを高酸素チャンバー(Coy lab.in vivo chamber、75%O)で5日間飼育した後(P12)、正常酸素環境で5日間飼育する(P17)ことで誘導した。正常酸素に出て酸素誘導網膜症が誘導される時期であるP12~P17(5日間)にSMxをリポジック(溶媒)に1mMに希釈した後、1日に3回点眼投与した。右目にはSMxを、左目には対照群であるリポジックを投与した。
【0334】
酸素誘導網膜マウスモデルを形成した後、1XPBS、4%PFAで灌流した。マウスの目を摘出し、4%PFAで固定した後、網膜を分離した。分離した網膜を1XPBSで洗浄した後、1時間常温でブロッキング(0.1%BSA、0.1% Tryton X-100 in 1XPBS)した。4℃で1日間、CD31血管染色抗体(CD31、cell signaling、1:100)で染色した。翌日、1XPBSで洗浄した後、二次抗体で4℃で1日間染色した。(alexa flour 594-anti rabbit antibody、1:500)翌日、1XPBSで洗浄した後、マウンティングした。蛍光顕微鏡で血管染色を分析した(Zen、axio zoom)。分析はZENソフトウェアを使用した。
【0335】
点眼投与後の網膜血管分析した写真およびプログラム分析の結果は、図18図19のとおりである。各個体の右目にSMxを点眼投与し、左目はSMxを投与せず、対照群とした。その結果、SMxを注射した眼球において新生血管領域および無血管領域が有意に減少し、網膜新生血管形成疾患が改善されたことを確認することができた。
【0336】
実施例6.本出願の新規化合物の合成方法
本出願の[化学式2]~[化学式5]で表される新規分子の製造方法を提供する。
【0337】
前記化合物を製造する方法は、下記の具体的な実施例に限定されるものではなく、当業者に周知の方法を用いて製造することができる。
【0338】
実施例6.1.(10-(2-ブロモ-5-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムホルメート((10-(2-bromo-5-hydroxy-3,4-dimethoxy-6-methylphenyl)decyl)triphenylphosphonium formate)を製造する方法(SB-U009)
本出願において[化学式2]で表される化合物の製造方法を説明する(図20)。前記化学式2の化合物を製造する方法は下記のステップ1~7の製造ステップを含む。
【0339】
ステップ1:5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(5-(10-bromodecyl)-1,2,3-trimethoxy-benzene)の製造
テトラヒドロフラン(THF、20mL)に5-ブロモ-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(1.3g、5.26mmol、1eq)を溶解した溶液に、-78℃でn-ブチルリチウム(n-BuLi、2.5M、2.10mL、1eq)を滴下した。
【0340】
添加後、前記混合物を同じ温度で1時間撹拌し、その後、THF(10mL)に1,10-ジブロモデカン(3.16g、10.52mmol、2eq)溶液を-78℃で滴下した後、得られた混合物を20℃で11時間撹拌した。
【0341】
液体クロマトグラフィー質量分析計(LCMS)により所望の質量の50.6%が検出されたことを確認した。
【0342】
残留物を飽和NHCl(10mL)で希釈し、EtOAc(50mL*3)を用いて抽出した。
【0343】
混合有機層(combined organic layers)を[NaSO]で乾燥後、濾過し、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0344】
前記残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=100/0~95/5)で精製し、無色油状の5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(580mg、1.02mmol、収率19.35%、純度68%)化合物を得た。
【0345】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=6.40(s、2H)、3.86(s、6H)、3.83(s、3H)、3.42(t、J=6.8Hz、2H)、2.59-2.52(m、2H)、1.86(quin、J=7.2Hz、2H)、1.60(br d、J=5.5Hz、2H)、1.48-1.38(m、2H)、1.38-1.26(m、10H)
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1931BrO)の質量を測定し、387.4;m/z 実測値、387.1[M+H]であることを確認した。
【0346】
ステップ2:6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒドの製造
無水ジクロロメタン(dry CHCl、2mL)に溶解した5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(580mg、1.02mmol、1eq)溶液を、0℃でAlClのdry CHCl(8mL)に滴下した。
【0347】
前記混合物を同じ温度で、45分間撹拌し、続いて、ジクロロ(メトキシ)メタン(188.97mg、1.64mmol、145.36uL、1.61eq、収率68%)のdry CHCl(2mL)溶液を10分間撹拌した。滴下後、前記混合物を0℃で5分間撹拌した。
【0348】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0349】
前記反応混合物を氷水30mLに注ぎ、ジクロロメタン(methylene chloride)相を分離した後、前記水相をジクロロメタン(methylene chloride、50mL)を用いて2回抽出した。
【0350】
前記混合有機層を[NaSO]で乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0351】
前記粗生成物(crude product)をさらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0352】
無色油状の6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒド (510mg、858.27umol、収率84.29%、純度69.9%)化合物を得た。
【0353】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=10.41(s、1H)、6.53(s、1H)、4.00(s、3H)、3.95(s、3H)、3.89(s、3H)、3.43(t、J=6.9Hz、2H)、2.99-2.92(m、2H)、1.93-1.82(m、2H)、1.49-1.39(m、4H)、1.32(br s、10H)
【0354】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2031BrO)の質量を測定し、415.4;m/z 実測値、415.1[M+H]であることを確認した。
【0355】
ステップ3:6-(10-ブロモデシル)-2-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-ベンズアルデヒドの製造
三塩化ホウ素(BCl、1M、1.9mL、2.21eq)を0℃でCHCl(10 mL)に溶解した6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒド(510.00mg、858.27umol、1eq、純度69.9%)溶液に滴下した。
【0356】
前記混合物を0℃で30分間撹拌した後、20℃で30分間撹拌した。
【0357】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0358】
前記残留物を氷水(30mL)に注ぎ、CHCl(50mL*3)を用いて抽出した。
【0359】
前記混合有機層を[NaSO]を用いて乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0360】
前記残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=100/0~95/5)を用いて精製し、無色油状の6-(10-ブロモデシル)-2-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-ベンズアルデヒド(300mg、583.06umol、収率67.93%、純度78%)化合物を得た。
【0361】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1929BrO)の質量を測定し、401.3;m/z 実測値、401.1[M+H]であることを確認した。
【0362】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=12.30-12.20(m、1H)、10.24-10.03(m、1H)、6.34(s、1H)、3.96(s、3H)、3.89(s、3H)、3.43(t、J=6.9 Hz、2H)、2.90-2.83(m、2H)、1.88(quin、J=7.1 Hz、2H)、1.70-1.60(m、2H)、1.50-1.38(m、3H)、1.49-1.29(m、1H)。
【0363】
ステップ4:3-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-6-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシ-ベンズアルデヒドの製造
クロロホルム(CHCl、2.5mL)および四塩化炭素(CCl、2.5mL)に溶解した6-(10-ブロモデシル)-2-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-ベンズアルデヒド(250mg、622.92umol、1eq)溶液を0℃でN-ブロモスクシンイミド(NBS、N-Bromosuccinimide、133.04mg、747.51umol、1.2eq)に添加した。
【0364】
前記混合物を0℃で1時間撹拌した後、20℃で11時間撹拌した。
【0365】
このとき、LCMSにより反応が完了したことを確認した。
【0366】
前記混合物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO、10mL)およびエチルアセテート(EtOAc、20mL*3)を用いて抽出した。
【0367】
前記混合有機層を[NaSO]を用いて乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0368】
前記残留物を分取TLC(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=4:1)で精製して、黄色油状の3-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-6-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシ-ベンズアルデヒド(200mg、307.77umol、収率49.41%、純度73.9%)化合物を得た。
【0369】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1928Br)の質量を測定し、480.2;m/z 実測値、481.0[M+H]であることを確認した。
【0370】
ステップ5:5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノールの製造
0℃でCHCl(4mL)に溶解した3-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-6-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシ-ベンズアルデヒド(190mg、292.38umol、1eq、純度73.9%)およびトリエチルシラン(TES、EtSiH、169.99mg、1.46mmol、233.50uL、5eq)をトリフルオロ酢酸(TFA、Trifluoroacetic acid、708.40mg、6.21mmol、460uL、21.25eq)に添加漏斗(addition funnel)で5分間滴下した。
【0371】
前記反応混合物を0℃で2時間撹拌した。
【0372】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0373】
前記混合物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO、50mL)にゆっくりと注ぎ入れた後、100mLのCHCl(100mL*3)を用いて抽出した。
【0374】
前記混合有機層を[NaSO]で乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0375】
前記残留物を分取TLC(SiO、Petroleum ether:Ethyl acetate=4:1)を用いて精製し、無色油状の5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノール(130mg、241.64umol、収率82.65%、純度72%)化合物を得た。
【0376】
ステップ6:4-ブロモ-5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノールの製造
酢酸(AcOH、5mL)に溶解し、撹拌した5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノール(130mg、241.64umol、1eq、純度72%)および臭化ナトリウム(NaBr、37.29mg、362.46umol、11.65uL、1.5eq)溶液を過酸化水素(H、41.09mg、362.46umol、34.82uL、純度30%、1.5eq)に添加した後、20℃で3時間撹拌した。
【0377】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0378】
前記残留物を30mLの10:1比の飽和NaHCO/Naで希釈した後、EtOAc(30mL*3)を用いて抽出した。
【0379】
前記混合有機層を塩水(brine、10mL)で洗浄した後、[NaSO]で乾燥させ、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0380】
前記粗生成物をさらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0381】
これにより、黄色油状の4-ブロモ-5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノール(140mg、195.18umol、収率80.77%、純度65%)化合物を得た。
【0382】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1930Br)の質量を測定し、466.3;m/z 実測値、466.9[M+H]であることを確認した。
【0383】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=5.73(s、1H)、3.86(s、3H)、3.78(s、3H)、3.34(t、J=6.9 Hz、2H)、2.71-2.64(m、2H)、2.14(s、3H)、1.84-1.76(m、2H)、1.37(br d、J=4.1Hz、7H)、1.24(br s、7H)
【0384】
ステップ7:(10-(2-ブロモ-5-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムホルメートの製造
トルエン(toluene、2mL)に溶解した4-ブロモ-5-(10-ブロモデシル)-2,3-ジメトキシ-6-メチル-フェノール(140mg、195.18umol、1eq、純度65%)およびトリフェニルホスフィン(PPh、255.96mg、975.88umol、5eq)の撹拌溶液をN2下で、125℃で8時間加熱した。
【0385】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0386】
前記溶媒を真空状態で除去して残留物を得た。
【0387】
前記残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=100/0~0/100;Ethyl acetate:MeOH=100/0~92/8)を用いて精製した。
【0388】
前記残留物を分取HPLC(FA条件;カラム:Xtimate C18 100*30mm*3um;移動相:[water(0.225%FA)-ACN];B%:40%-70%、8分)を用いて精製した。
【0389】
無色ガム状(gum)の(10-(2-ブロモ-5-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムホルメート(6mg、8.61umol、収率4.41%、純度99.54%)を得た。
【0390】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C3745BrO)の質量を測定し、648.6;m/z 実測値、649.2[M+H]であることを確認した。
【0391】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=8.56(br s、1.309H)、7.78-7.59(m、15H)、3.84(s、3H)、3.76(s、3H)、3.44(br s、2H)、2.70-2.59(m、2H)、2.13(s、3H)、1.50(br s、4H)、1.40-1.12(m、12H)
31P NMR(162MHz、CDCl)δ=24.17(s、1P)
【0392】
実施例6.2.(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドを製造する方法(SB-U005)
本出願において[化学式3]で表される化合物の製造方法について説明する(図21)。前記化学式3の化合物を製造する方法は、下記のステップ1~4の製造ステップを含む。
【0393】
ステップ1:10-ブロモ-1-(2-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチル-フェニル)デカン-1-オンの製造
新たに粉末化したAlCl(457.89mg、3.43mmol)をdry DCE(10mL)下で、10-ブロモデカノイルクロリド(10-bromodecanoyl chloride)(0.536g、1.89mmol)および1,2,3-トリメトキシ-5-メチル-ベンゼン(312.86mg、1.72mmol)溶液に添加した後、25℃で40時間撹拌した。
【0394】
このとき、LCMSにより所望の物質が主要成分として生成したことを確認した。
【0395】
前記混合物を氷水に注ぎ入れ、CHCl(50mLx2)を用いて抽出した。
【0396】
前記混合した抽出物を水で洗浄した後、NaSOを用いて乾燥し、濃縮して油を得た。前記得られた油をカラムクロマトグラフィー(SiO、10:0~10:1 Petroleum ether/EtOAc)で精製して無色の油状物質(520mg、収率66.56%)を得た。
【0397】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1929BrO)の質量を測定し、400.12;m/z 実測値、402.8[M+H]であることを確認した。
【0398】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.21-1.55(m、10H)、1.56-1.78(m、2H)、1.85(m、2H)、2.46(s、3H)、2.89(t、J=7.4Hz、2H)、3.41(t、J=6.8Hz、2H)、3.88(d、J=12.3Hz、6H)、6.31(s、1H)、10.38(s、1H)。
【0399】
ステップ2:2-(10-ブロモデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-フェノールの製造
10-ブロモ-1-(2-ヒドロキシ-3,4-ジメトキシ-6-メチル-フェニル)デカン-1-オン(520mg、1.14mmol)をトリフルオロ酢酸(TFA、10mL)に溶解させ、その後、EtSiH(2mL)を添加した後、80℃で12時間撹拌した。
【0400】
このとき、LCMSによりスターティングケトン(starting ketone)が消費され、1つの新しいピークが形成されたことを確認した。
【0401】
前記反応混合物を蒸発乾燥させ、これをカラムクロマトグラフィー(SiO、5:0-5:1 Petroleum ether/EtOAc)で精製して無色の油状物質(410mg、収率82.34%)を得た。
【0402】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1931BrO)の質量を測定し、386.15;m/z 実測値、388.9[M+H]であることを確認した。
【0403】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.22-1.55(m、14H)、1.86(quin、J=7.1Hz、2H)、2.26(s、3H)、2.51-2.65(m、2H)、3.42(t、J=6.9Hz、2H)、3.86(m、6H)、5.82(s、1H)、6.29(s、1H)。
【0404】
ステップ3:4-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-フェノールの製造
2-(10-ブロモデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-フェノール(410mg、940.98umol)およびNaBr(145.23mg、1.41mmol)を酢酸(AcOH、10mL)に溶解させた後、過酸化水素(H、160.04mg、1.41mmol、30%)を添加し、その後、25℃で2時間撹拌した。
【0405】
このとき、LCMSにより出発物質(starting material)が消費され、1つの新しいピークが形成されたことを確認した。
【0406】
前記反応混合物を50mLの水にクエンチし、EtOAc(40mLx2)を用いて抽出した。
【0407】
前記混合有機相をpH>7になるまで飽和NaHCOで洗浄した後、NaSOで乾燥し、濃縮して無色の油状物質(300mg、crude)に濃縮した。
【0408】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1930Br)の質量を測定し、464.06;m/z 実測値、466.9[M+H]であることを確認した。
【0409】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.22-1.55(m、14H)、1.86(quin、J=7.1Hz、2H)、2.26(s、3H)、2.51-2.65(m、2H)、3.42(t、J=6.9Hz、2H)、3.85(s、3H)、3.93(s、3H)、5.77(s、1H)。
【0410】
ステップ4:(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドの製造
4-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-フェノール(300mg、597.11umol)およびトリフェニルホスフィン(PPh、939.68mg、3.58mmol)をトルエン(toluene、1mL)に溶解させた後、N2下、130℃で18時間撹拌した。
【0411】
薄層クロマトグラフィー(TLC、DCM:MeOH=10:1、Rf=0.2)により、OPPhの下に1つの主要な新しいピークが形成されたことを確認した。
【0412】
前記反応混合物を蒸発させて褐色の残留物を得、これを分取HPLC(カラム:3_Phenomenex Luna C18 75*30mm*3um;移動相:[water(0.2%FA)-ACN];B%:52%-82%、6分)で精製した。
【0413】
凍結乾燥後、白色固体の所望の生成物(16mg、収率12.24%、純度97.2%)を得た。
【0414】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C3745BrO)の質量を測定し、647.23;m/z 実測値、649.3[M+H]であることを確認した。
【0415】
H NMR(400MHz、CHLOROFORM-d)δ1.13-1.70(m、16H)、2.34(s、3H)、2.56-2.76(m、2H)、3.65-3.79(m、2H)、3.68-3.77(m、1H)、3.83(s、3H)、3.88(s、3H)、7.61-7.93(m、15H)、8.76(s、1H);31P NMR(162MHz、CHLOROFORM-d)δ24.47(s、1P)。
【0416】
実施例6.3.(10-(2-ブロモ-3,4,5-トリメトキシ-6-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドを製造する方法(SB-U012)
本出願において[化学式4]で表される化合物の合成方法について説明する(図22)。前記化学式4の化合物を製造する方法は、下記のステップ1~5の製造ステップを含む。
【0417】
ステップ1:5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼンの製造
THF(30mL)に溶解した5-ブロモ-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(2g、8.09mmol、1eq)溶液を-78℃でn-BuLi(2.5M、3.24mL、1eq)に滴下した。
【0418】
添加後、前記混合物を同じ温度で1時間撹拌し、その後、THF(10mL)に溶解した1,10-ジブロモデカン(4.86g、16.19mmol、2eq)溶液を78℃で滴下した。
【0419】
前記得られた混合物を20℃で11時間撹拌した。
【0420】
このとき、LCMSにより所望の質量の20%が検出されることを確認した。
【0421】
前記残留物を飽和NHCl(10mL)で希釈し、EtOAc(50mL*3)で抽出した。
【0422】
前記混合有機層を[NaSO]で乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0423】
前記残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=100/0~95/5)を用いて精製して無色油状の5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(430mg、395.86umol、収率4.89%、純度35.66%)化合物を得た。
【0424】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C1931BrO)の質量を測定し、387.4;m/z 実測値、389.1[M+H]であることを確認した。
【0425】
ステップ2:6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒドの製造
5-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-ベンゼン(430mg、395.86umol、1eq、35.66% purity)のdry CHCl(2mL)溶液を0℃で徐々にAlCl(178mg、1.33mmol、72.95uL、3.37eq)のCHCl(6mL)溶液に滴下した。
【0426】
前記混合物を同じ温度で45分間撹拌し、ジクロロ(メトキシ)メタン(140mg、1.22mmol、107.69uL、3.08eq)のCHCl(2mL)溶液を10分間かけて徐々に滴下した。
【0427】
前記反応混合物を30mLの氷水に注ぎ入れ、塩化メチレン相(methylene chloride phase)を分離した後、水相(aqueous phase)を50mLの塩化メチレンで2回抽出した。
【0428】
前記混合有機層を[NaSO]で乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0429】
前記粗生成物をさらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0430】
無色油状の6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒド(410mg、384.97umol、収率97.25%、純度39%)化合物を得た。
【0431】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2031BrO)の質量を測定し、415.4;m/z 実測値、415.2[M+H]であることを確認した。
【0432】
ステップ3:1-(10-ブロモデシル)-3,4,5-トリメトキシ-2-メチル-ベンゼンの製造
TFA(3mL)を6-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-ベンズアルデヒド(410mg、384.97umol、1eq、純度39%)およびEtSiH(447.64mg、3.85mmol、614.89uL、10eq)混合物に添加した。
【0433】
前記混合物を20℃で12時間撹拌した。
【0434】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0435】
前記混合物を飽和NaHCO(50mL)にゆっくりと注ぎ、CHCl(50mL*3)を用いて抽出した。
【0436】
前記混合物有機層を[NaSO]で乾燥し、濾過した後、減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0437】
前記残留物を分取TLC(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=4:1)で精製して無色油状の1-(10-ブロモデシル)-3,4,5-トリメトキシ-2-メチル-ベンゼン(120mg、152.18umol、収率39.53%、純度50.9%)化合物を得た。
【0438】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2033BrO)の質量を測定し、401.4;m/z 実測値、402.8[M+H]であることを確認した。
【0439】
ステップ4:1-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-4,5,6-トリメトキシ-3-メチル-ベンゼンの製造
1-(10-ブロモデシル)-3,4,5-トリメトキシ-2-メチル-ベンゼン(120mg、152.18umol、1eq、純度50.9%)およびNaBr(15.66mg、152.18umol、4.89uL、1eq)をAcOH(4mL)に溶解した撹拌溶液にH(17.25mg、152.18umol、14.62uL、純度30%、1eq)を添加し、20℃で12時間撹拌した。
【0440】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0441】
前記残留物を飽和NaHCO:Na=10:1(30)mLで希釈し、EtOAc(30mL*3)を用いて抽出した。
【0442】
前記混合有機層をbrine(10mL)で洗浄した後、[NaSO]で乾燥し、濾過後減圧下で濃縮して残留物を得た。
【0443】
前記粗生成物をさらに精製することなく、次のステップに使用した。
【0444】
黄色油状の1-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-4,5,6-トリメトキシ-3-メチル-ベンゼン(130mg、crude)化合物を得た。
【0445】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2032Br)の質量を測定し、480.3;m/z 実測値、480.9[M+H]であることを確認した。
【0446】
ステップ5:1-ブロモ-2-(10-BLAHデシル)-4,5,6-トリメトキシ-3-メチル-ベンゼンの製造
1-ブロモ-2-(10-ブロモデシル)-4,5,6-トリメトキシ-3-メチル-ベンゼン(130mg、162.41umol、1eq、純度60%)およびPPh(212.99mg、812.04umol、5eq)をトルエン(toluene、2mL)に溶解した撹拌溶液をN2下、125℃で12時間加熱した。
【0447】
このとき、LCMSにより前記反応が完了したことを確認した。
【0448】
前記溶媒を真空下で除去して残留物を得た。
【0449】
前記残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、Petroleum ether/Ethyl acetate=100/0~0/100;Ethyl acetate:MeOH=100/0~92/8)で精製し、無色油状の1-ブロモ-2-(10-BLAHデシル)-4,5,6-トリメトキシ-3-メチル-ベンゼン(30mg、39.69umol、収率24.44%、純度98.234%)化合物を得た。
【0450】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C3847BrO)の質量を測定し、662.7;m/z 実測値、663.2 [M+H]であることを確認した。
【0451】
H NMR(400MHz、CDCl)δ=7.93-7.66(m、15H)、3.94-3.78(m、11H)、2.78-2.67(m、2H)、2.22(s、3H)、1.64(br s、4H)、1.50-1.34(m、4H)、1.25(br d、J=10.1Hz、8H)。
31P NMR(162MHz、CDCl)δ=24.54(s、1P)。
【0452】
実施例6.4.(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドを製造する方法(SB-U011)
本出願において[化学式5]で表される化合物の製造方法について説明する(図23)。前記化学式5の化合物を製造する方法は、下記のステップ1~4の製造ステップを含む。
【0453】
ステップ1:10-ブロモ-1-(2,3,4-トリメトキシ-6-メチル-フェニル)デカン-1-オンの製造
4-ブロモ-1,2,3-トリメトキシ-5-メチル-ベンゼン(449.11mg、1.72mmol)および0-ブロモデカノイルクロリド(536.94mg、1.89mmol)をDCE(10mL)に溶解した撹拌溶液にAlCl(206.41mg、1.55mmol)を添加した後、25℃で18時間撹拌した。
【0454】
このとき、LCMSにより所望の生成物が主要成分として生成したことを確認した。
【0455】
TLC(Petroleum ether:EtOAc=3:1、Rf=0.4)によって1つの主要な新しいスポットが形成されたことを確認した。
【0456】
前記反応混合物を氷水に注ぎ入れ、DCM(30mLx3)で抽出した後、NaSOで乾燥し、濃縮して黄色の油状物質を得た。
【0457】
前記黄色の油状物質をシリカゲル(0~100% EtOAc in petroleum ether、30分)でフラッシュカラム(Flash column)で精製して無色の油状物質(215mg、収率29.1%)を得た。
【0458】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2031BrO)の質量を測定し、414.14;m/z 実測値、416.8[M+H]であることを確認した。
【0459】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.32(m、8H)、1.38-1.49(m、2H)、1.67(m、2H)、1.86(quin、J=7.2Hz、2H)、2.19(s、3H)、2.75(t、J=7.4Hz、2H)、3.41(t、J=6.9Hz、2H)、3.77-3.92(m、9H)、6.48(s、1H)。
【0460】
ステップ2:4-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-5-メチル-ベンゼンの製造
TFA(10mL)に溶解した10-ブロモ-1-(2,3,4-トリメトキシ-6-メチル-フェニル)デカン-1-オン(210mg、455.03umol)の撹拌溶液に25℃でEtSiH(1.46g、12.52mmol、2mL)を添加した後、80℃で2時間撹拌した。
【0461】
このとき、LCMSにより所望の生成物が主要成分として生成したことを確認した。
【0462】
TLC(petroleum ether:EtOAc=4:1、Rf=0.45)を介して1つの主要な新しいスポットが形成されたことを確認した。
【0463】
前記反応混合物を真空下で蒸発させ、乾燥して無色の油状物質を得、前記無色の油状物質をシリカゲル(silical gel、25g、0~50% EtOAc in petroleum ether、30分)でフラッシュカラムクロマトグラフィー(Flash Column chromatography)を用いてさらに精製し、無色油状の所望の生成物4-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-5-メチル-ベンゼン(118mg、250.93umol、収率55.15%)を得た。
【0464】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2033BrO)の質量を測定し、400.16;m/z 実測値、403.0[M+H]であることを確認した。
【0465】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.20-1.54(m、14H)、1.77-1.96(m、2H)、2.27(s、3H)、2.46-2.64(m、2H)、3.42(t、J=6.8Hz、2H)、3.76-3.97(m、9H)、6.49(s、1H)。
【0466】
ステップ3:1-ブロモ-5-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-6-メチル-ベンゼンの製造
4-(10-ブロモデシル)-1,2,3-トリメトキシ-5-メチル-ベンゼン(118mg、250.93umol)およびNaBr(38.73mg、376.39umol)をAcOH(5mL)に溶解した撹拌溶液にH(42.68mg、376.39umol)を添加した後、25℃で2時間撹拌した。
【0467】
このとき、LCMSにより所望の生成物が主要成分として形成されたことを確認した。
【0468】
前記反応混合物をEtOAc/HO(80mL/60mL)の間に分配した。
【0469】
前記有機層をPH>7になるまでsat.aq.NaHCO(60mL)を用いて洗浄した。
【0470】
前記収集された有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮して黄色の油状物質(140mg、crude)を得た。
【0471】
このとき、HNMRにより次のステップのための十分な純度の所望の生成物であることを確認した。
【0472】
また、エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C2032Br)の質量を測定し、478.07;m/z 実測値、481.0[M+H]であることを確認した。
【0473】
H NMR(400MHz、CDCl)δ1.20-1.52(m、14H)、1.78-1.94(m、2H)、2.36(s、3H)、2.62(m、2H)、3.42(t、J=6.9Hz、2H)、3.81-3.98(m、9H)。
【0474】
ステップ4:(10-(3-ブロモ-4,5,6-トリメトキシ-2-メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミドの製造
1-ブロモ-5-(10-ブロモデシル)-2,3,4-トリメトキシ-6-メチル-ベンゼン(140mg、279.13umol)およびPPh(366.06mg、1.40mmol)をtoluene(1mL)に溶解した後、撹拌溶液をN2下、130℃で18時間加熱した。
【0475】
このとき、LCMSにより所望の生成物が生成したことを確認した。
【0476】
また、TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf =0.2)により、OPPhの下に1つの主要な新しいピークが形成されたことを確認した。
【0477】
前記反応混合物を蒸発させて褐色の残留物を得、これをシリカゲル(25g、0~15% MeOH in DCM、30分間)でフラッシュカラムクロマトグラフィー(Flash Column chromatography)を用いて精製した。
【0478】
前記所望の生成物を凍結乾燥して、白色固体(108.5mg、収率51.41%、純度98.2%)を得た。
【0479】
エレクトロスプレー質量分析法(MS-ESI)により前記得られた化合物(C3847BrO)の質量を測定し、661.24;m/z 実測値、663.3[M+H]であることを確認した。
【0480】
H NMR(400MHz、CHLOROFORM-d)δ1.12-1.50(m、12H)、1.64(m、4H)、2.34(s、3H)、2.52-2.71(m、2H)、3.77-3.97(m、11H)、7.60-7.97(m、15H);31P NMR(162 MHz、CHLOROFORM-d)δ24.53(s、1P)。
【0481】
実施例7.本出願のSMxおよび新規化合物分子はクライアント蛋白質と競合的にTRAP-1に結合してTRAP-1を阻害する。
-細胞培養
22Rv1細胞株を37℃、5%COで培養し、培地をRPMI(Gibco)+10% Fetal bovine serum+1% penicillin&streptomycinの条件で使用した。
【0482】
-ウェスタンブロット(western blot)
22Rv1細胞株を6-wellプレートに3x105の水で細胞を分注し、2mlの培地で24時間培養した。翌日、ミトコンドリア熱蛋白質90(TRAP1)阻害剤であるSB-シリーズ(SB-U005、SB-U009、SB-U011、SB-U012)とSMXを5μMで処理し、2時間培養した。培養された細胞から全細胞溶解物(Whole cell lysates)を調製して電気泳動し、PVDF膜に移動させた後、一次抗体を4℃で18時間処理した。翌日、二次抗体を1時間処理し、ウェスタンブロッティング検出試薬を用いてプルダウンアッセイを介して蛋白質発現を分析した(図24)。
【0483】
薬物としては、SMx分子と前記実施例6で合成した新規化合物分子SB-U005、SB-U009、SB-U011、およびSB-U012を処理し、DMSOで正規化した。
【0484】
プルダウンアッセイの結果(図24)、各新規化合物分子を処理した場合、実施例3.3のSMxを処理した場合の結果とともにクライアント蛋白質(SIRT3、SDHB)の濃度が有意に減少することが確認できる(図24)。すなわち、このような結果は、本出願の新規化合物分子がClient蛋白質と競合的にTRAP-1の中間部位に結合してTRAP-1を阻害するという強力な証拠となり得る。
【0485】
実施例8.本出願のSMxおよび新規化合物分子は糖尿網膜症(DR)に対する治療効果を有する。
-MIO-M1 HRE細胞株を用いた薬物活性分析
MIO-M1ミュラー細胞に5HRE/GFPプラスミド(addgene.#46926)をトランスフェクション(jetprime kit)した後、選択マーカー(selectable marker)であるG418(Neomycin) 1mg/mlを用いてプラスミドがトランスフェクションされた細胞を選別した。シングルセル(Single cell)でコロニー(colony)形態を呈し成長する細胞を選別して安定発現細胞株(stable cell line)を作製した。作製したMIO-M1-HRE/GFP stable cell lineを96wellに分注し、翌日薬物を濃度別に処理した。低酸素環境で(1%O)24時間露出させた後、GFP(Ex/Em:488/507)蛍光シグナルをSYNERGY NEO microplate reader(BioTek Instrument)で測定した。陰性対照群としては薬物を溶解した溶媒であるDMSOを使用し、陰性対照群を100%基準で計算した。
【0486】
MIO-M1細胞株にSMxおよび新規化合物分子を処理した場合、新血管生成因子であるHIF1-αを阻害することが確認できる(図25)。このような結果から、本出願のSMxおよび新規化合物分子の糖尿網膜症(DR)に対する治療効果があることがわかる。
【0487】
実施例9.本出願のSMxおよび新規化合物分子のウェット型加齢黄斑変性症(wet-AMD)に対する治療効果を有する。
-細胞培養
網膜色素上皮細胞(human retinal pigmented epithelium)であるARPE-19細胞は、10%FBSと1%抗生剤が含まれたDMEM/F-12細胞培養液で5%CO、95%大気空気および37℃細胞培養器で60mm細胞培養プレートに3X105細胞水で播種(seeding)した後、2日間培養した。2日後、DMSO(0.5%)、SMx、SB-U005、SB-U009、SB-U011、およびSB-U012を1μMで処理し、Hypoxia chamberで1%酸素条件で6時間培養した後、ウェスタンブロット(western blot)実験を行った。
【0488】
-ウェスタンブロット(western blot)
細胞培養実験完了後、細胞培養液を除去し、冷たいPBSで1回洗浄した後、RIPA溶液(50mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、0.25% Na-deoxycholate、1% NP-40)を入れ、細胞スクレーパー(cell scraper)で細胞を採取(harvest)した。細胞を十分に溶解させた後、低温遠心分離して得た細胞浮遊液に6×サンプルバッファー(sample buffer)を混合し、95℃で5分間煮沸した後、12%SDS-PAGEを実施した。電気泳動が完了したゲル(gel)の蛋白質をPVDF membraneで350mA、1時間20分間トランスファー(transfer)した後、ブロッキング(10% skim milk)し、常温で1時間反応させて非特異的抗体の結合を防いだ。一次抗体HIF-1α(1:1000)とActin(1:3000)を抗体溶液(Antibody solution)(TBS-T with 0.02% sodium azide、1mg/ml BSA)で希釈し、4℃で皮膜(membrane)と一晩(overnight)反応させた。
【0489】
その後、TBS-T(Tris-Buffered Saline+Tween-20)で2回洗浄した後、二次抗体(1:5,000で希釈)と常温で1時間反応させた。MembraneはTBS-Tで2回洗浄した後、Clarity Western ECL Substrate(Bio-rad)を使用してChemidoc system(GE、LAS4000)で蛋白質発現量の変化を測定した。
【0490】
その結果、SMxおよび本出願の新規化合物分子がARPE-19細胞株においてHIF-1αを効果的に阻害することが確認できた(図26)。これにより、本出願の化合物がウェット型加齢黄斑変性症(wt-AMD)に対する治療効果を有することが分かる。
図1
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【国際調査報告】