(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】革をなめすのに好適なゼオライト組成物
(51)【国際特許分類】
C14C 3/02 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
C14C3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536661
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 NL2020050773
(87)【国際公開番号】W WO2021118351
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522235283
【氏名又は名称】スミット・タンニング・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SMIT TANNING B.V.
【住所又は居所原語表記】Nijverheidslaan 48,1382 LK Weesp,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクセン、ボウター・エフベルト-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フォン・ベア、ディリック・ヨプスト・アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ビルゲンブルフ、ピム・ヤン-ビレム
【テーマコード(参考)】
4F056
【Fターム(参考)】
4F056CC02
4F056CC37
4F056DD02
4F056DD04
(57)【要約】
本発明は、革用のなめし剤に関し、ゼオライト、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物に関する。このゼオライト組成物により、効率的かつ効果的なクロムフリーなめしが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物であって、前記第1、前記第2および前記第3の弱酸が異なる酸であり、ゼオライトの量が、前記ゼオライト組成物の総重量ベースで、少なくとも34重量%、好ましくは少なくとも50重量%であり、水の量が、前記ゼオライト組成物の総重量ベースで、25重量%未満、好ましくは20重量%未満であり、前記第1の弱酸、前記第2の弱酸および存在する場合は前記第3の弱酸が、有機酸、カチオンを含む有機酸の塩、弱無機酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、前記カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される、ゼオライト組成物。
【請求項2】
前記第1の弱酸の量が、前記ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~35重量%の範囲、好ましくは5重量%~25重量%の範囲にあり、前記第2の弱酸の量が、前記ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲、好ましくは5重量%~20重量%の範囲にあり、存在する場合は前記第3の弱酸の量が、前記ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲、好ましくは5重量%~20重量%の範囲にある、請求項1に記載のゼオライト組成物。
【請求項3】
- 前記第2の弱酸が、カルボン酸、有機スルホン酸カチオンまたはカチオンを含む弱無機酸塩であり、前記カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、
- 存在する場合は前記第3の弱酸が、ポリカルボン酸、有機スルホン酸カチオンまたはカチオンを含む弱無機酸塩であり、前記カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される、
請求項1または2に記載のゼオライト組成物。
【請求項4】
前記第1の弱酸がジカルボン酸であり、前記第2の弱酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり、前記カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される、請求項1~3の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項5】
前記第3の弱酸が存在する、請求項1~4の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項6】
前記第3の弱酸が存在し、前記第1の弱酸、前記第2の弱酸および前記第3の弱酸が、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;好ましくは前記第3の弱酸が存在し、前記第1の弱酸が、ギ酸およびシュウ酸からなる群から選択され、前記第2の弱酸が、クエン酸、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択され、前記第3の弱酸が、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択される、請求項1~5の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項7】
粉末である、請求項1~6の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項8】
なめし塩を含まず、好ましくは前記ゼオライト組成物が、なめし塩も、合成なめし剤も、植物性なめし剤も含まない、請求項1~7の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のゼオライト組成物を調製するための方法であって、
a)前記第1の弱酸、前記第2の弱酸および存在する場合は前記第3の弱酸が、20℃で固体である場合
i)前記第1の弱酸、前記第2の弱酸、前記ゼオライトおよび存在する場合は前記第3の弱酸を、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること;
または
b)前記第1の弱酸、前記第2の弱酸または存在する場合は前記第3の弱酸の何れか1つが、20℃で液体である場合
ii)20℃で液体である1種の前記弱酸、または20℃で液体である複数の前記弱酸を、前記ゼオライトと、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること、および
iii)残りの1種の弱酸または残りの複数の弱酸を、工程ii)で得られた混合物と、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により得られる、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物。
【請求項11】
革を生産するための方法であって、なめし工程を含み、請求項1~8または10の何れか1項に記載のゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させ、前記ゼオライト組成物の濃度が、前記皮の重量ベースで1重量%~15重量%の範囲にある、方法。
【請求項12】
前記なめし工程前、中または後に、クロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよび鉄塩ベースのなめし剤を前記皮と接触させない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の再なめし工程、加脂工程、仕上げ工程またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
- 収縮温度60℃超、好ましくは70℃超、および
- 3~5の範囲の、好ましくは3.5~4.5の範囲の等電点
を有する革であって、
前記革の乾燥重量ベースで0.5重量%超のアルミニウムおよび前記革の乾燥重量ベースで0.5重量%超のケイ素を含む、
革。
【請求項15】
平行に伸びる上側表面および下側表面、およびこれらの表面に対し垂直である垂直断面を含み、
前記垂直断面の中心において、アルミニウムの濃度が、前記垂直断面の各表面側の濃度の少なくとも30%であり、および/または前記垂直断面の中心において、ケイ素の濃度が、前記垂直断面の各表面側の濃度の少なくとも30%である、
請求項14に記載の革。
【請求項16】
前記第1の弱酸および前記第2の弱酸が、フタル酸、コハク酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;好ましくは前記第1の弱酸が、フタル酸、コハク酸およびシュウ酸からなる群から選択され、前記第2の弱酸が、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択される、請求項1~5の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【請求項17】
前記第1の弱酸および前記第2の弱酸が、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;好ましくは前記第1の弱酸が、ギ酸、二硫酸ナトリウムおよびシュウ酸からなる群から選択され、前記第2の弱酸が、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択される、請求項1~5の何れか1項に記載のゼオライト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革製造の分野およびゼオライトを含む単一のなめし剤に関する。
発明の背景
革の生産は、傷みやすい皮または生皮を耐久性の革に変換することに関する。そうするため、前処理された皮がなめし剤でなめされる。数種のなめし剤が当技術分野で公知である。典型的に3つの群のなめし剤が特定されている;合成なめし剤、金属塩なめし剤および植物性なめし剤。
【0002】
合成なめし剤つまりシンタンは概して反応性アルデヒドであるが、フェノールベースの縮合ポリマーも合成なめし剤として使用される。革にとって高い品質基準を達成するため、典型的に反応性アルデヒドおよびフェノールベースの縮合ポリマーの組み合わせが、革をなめすのに使用される。これらの用途は、限られた数の革製品の種類に限定される。さらに、アルデヒド合成なめし剤は人にとって健康に良くなく、ゆえに工業的なめし処理において特別な注意を必要とし、さらになめし処理から出るなめし廃水が合成なめし剤で汚染されるおそれがある。
【0003】
金属塩なめし剤も、鉱物なめし剤またはなめし塩として当技術分野で公知であり、原子価3以上を有するカチオン、例えばクロム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよび鉄を含む。このようなカチオンは、革のコラーゲンと相互作用しうる。クロムなめしは、優れたなめし結果をもたらすことから、圧倒的に最も主流のなめし方法であるが、クロムを含む革と同じくなめし処理から出る廃棄物に関しても、クロムの環境への影響に関連する広く認識された欠点を有する。クロムなめしは、革に青い外観ももたらす。別のなめし塩、例えばアルミニウム塩(大抵は硫酸アルミニウムつまりミョウバン)によるなめしは、不十分な耐水性を有する革をもたらす;さらに、得られた革は、アルミニウムの固着がクロムと比較して弱いことから、アルミニウムの可溶化に影響される。ゆえに当技術分野では、アルミニウムなめし革は不完全になめされたものとみなされる。さらなる金属塩の代案、例えば鉄によるなめしは、発色の悪さおよび革の後処理における制限により阻まれる。ジルコニウムおよびチタンは、ともに原子価4(IV)を有し、なめしにおけるこれらの用途は限定される。原子価4を有するカチオンの浸透は皮への浸透率がはるかに低いことを含意し、さらにこれらのカチオンは、カルボキシル基の完全飽和を達成することができず、クロムなめし革よりも高い硬さを有する革が得られる。カチオン(IV)塩によるなめしにおける他の問題は、限られた革の用途の種類および材料の経済的入手性である。
【0004】
植物性なめし剤は、植物、例えばオークおよびトウヒ樹皮由来である。これらの植物中のなめし剤はポリフェノールである。植物性なめしは、相当量の植物性なめし剤が革に取り込まれる必要があるため時間を要する。さらに、限られた色の選択肢により、広範な革製品における経済的な使用が妨げられる。
【0005】
従来のなめし方法は、処理効率、人の健康、環境への影響または革の性能に関して欠点を有するため、新たな方法およびなめし材料、例えばケイ酸アルミニウムなめし剤ベースのゼオライトなめしが調査されている。
【0006】
WO 2013/114414 A1は、ゼオライトが、革をなめすための中和剤およびなめし材料と組み合わされるなめし方法について記載する。例では、完全ななめしのための合成なめし剤との組み合わせが実証される。この方法の水の使用は多く、なめし後のなめされた皮の望ましくない休息が必要とされる。
【0007】
WO 2013/045764 A1は、ゼオライトがモノカルボン酸と組み合わされ、なめし剤として使用される方法について記載する。この方法の水の使用は多い。ゼオライトモノカルボン酸の組み合わせは、共なめし剤(co-tanning agent)、例えば硫酸アルミニウムおよびポリカルボン酸とさらに組み合わされてもよい。なめし剤は、好ましくは2工程なめし処理において使用される。
発明の概要
環境に優しく人にとって有害(毒性)でない、強力で効率的ななめし剤の継続的な必要性がある。さらに、様々な革特性および革用途に調整するのが容易な、強力で効率的ななめし剤の必要性がある。適用において安全であり、出発材料が豊富ななめし剤の必要性もある。
【0008】
収縮温度が増大しても、当技術分野のゼオライト組成物は、なめした際の浸透が満足のいくものでなく、取り込みが不十分であり、および/または生産された革の革品質が商業利用に好適でないことから、なめし剤として不足である。さらに、商業規模での革生産は、革品質の過度の変動が発生することから強力でない。これらのなめし剤を利用する際の水の使用も大きい。ゼオライト組成物に追加のなめし剤、例えばなめし塩、合成なめし剤または植物性なめし剤を添加するという従来の改善策は、なめし結果および効率を改善しないか、またはこのようななめし剤の公知の難点を併発するかの何れかである。
【0009】
驚くべきことに発明者らはここで、ゼオライト、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物であって、第1、第2および第3の弱酸が異なる酸である、ゼオライト組成物により、上記の必要性が満たされうることを見出した。このゼオライト組成物は、さらなるなめし剤、例えば合成なめし剤、金属塩なめし剤および植物性なめし剤の必要性のないなめしにとって効果的であることが見出された。本発明のゼオライト組成物は、1工程で適用可能であり、なめし時間が従来の業界標準なめし処理と同等であることから、従来のなめし処理に組み入れるのが容易である。
【0010】
発明者らは、1工程なめし処理で利用される場合、1種の弱酸を含むゼオライト組成物では、得られた革が十分な収縮温度を有するにもかかわらず、革の浸透不足および満足でない革の官能特性がもたらされることを見出した(例1)。工業規模の革なめしにスケールアップすると、浸透不足がよりいっそう明確に観察される。浸透不足により、不均等な表面を有し(外見、物理的および化学的特性が表面全体で異なる)、分割に好適でない革がもたらされる。取り込みが不十分であることも見出され、これによりゼオライト組成物の非効率的な使用および相当量のゼオライト組成物を含む廃水がもたらされる。
【0011】
驚くべきことに、ゼオライト組成物が2種の特定の弱酸(例2)または3種の弱酸の任意の組み合わせ(例3)を含む場合にのみ、十分な浸透が実現され、革品質および取り込みが良好である。具体的に、2種の特定の弱酸による十分な取り込みは既に理解されている。さらに驚くべきことに、発明者らは、金属なめし塩、例えば硫酸アルミニウムの非存在下で、優れたなめし結果が得られることを見出した。硫酸アルミニウムは、カチオンを含む多価の弱無機酸塩であり、カチオンはアルミニウムである。驚くべきことに発明者らは、このようななめし塩が逆効果であることを理解した。金属なめし塩、例えば硫酸アルミニウムが革のコラーゲンに対してカチオン性表面電荷を作り出し、ゼオライトがアニオン性表面電荷を作り出すことの結果として、金属なめし塩、例えば硫酸アルミニウムはゼオライトを妨害し、これによって効率のより悪いなめしがもたらされる。結果として、浸透、収縮温度、革特性および/または取り込みが悪化する。このことが、より大部分の組成物が廃棄物に入ることから、なめし廃水流中のより高レベルの望ましくないアルミニウムおよびゼオライト組成物の非効率的な使用につながりうる(例4)。
【0012】
驚くべきことに発明者らは、ゼオライト組成物がなめし剤として好適となるには、効果的かつ効率的ななめしに必要な相互作用全てをもたらすために、数種の弱酸が存在する必要があることを見出した。必要とされる様々な相互作用は、ゼオライトの水への分散、ゼオライトとコラーゲンとの間の相互作用、および一部の場合でpH安定化の必要性に関連する。様々な必要とされる相互作用には複数の酸が必要である;1つの酸はゼオライトの水への分散に役立ち、別の酸はゼオライトと皮のコラーゲンとの間の相互作用に役立ち、別の酸はこれらの相互作用をさらに支持してもよく、および/またはpH安定化を支持してもよい。各種の酸は、革特性において具体的に観察可能な、ゼオライトおよび/または皮のコラーゲンの何れかとの特定の相互作用を有する。
【0013】
本発明のゼオライト組成物により、良好な浸透を保ちつつ、革特性、例えば革の感触および革の収縮温度を調整することが可能となる;調整は、弱酸の特定の組み合わせを選択することにより実現可能である。本発明のゼオライト組成物によるなめしにより得られる革は、ウォッシュアウトとも呼ばれる優れた可溶化特性を有し、本発明のゼオライト組成物によるなめし処理は、取り込みとも呼ばれる、良好ななめし取り込みを有する。なめし取り込みは概して、なめし工程中に供給されたなめし剤の量で割った、なめしの際に革により取り込まれたなめし剤の量の比である。単一のなめし剤としての本発明のゼオライト組成物によるなめしでは、なめし取り込みは、なめし工程中に供給されたゼオライト組成物中に存在するアルミニウムの量で割った、なめしの際に革により取り込まれたアルミニウムの量である。なめし取り込みはパーセンテージで表される。
【0014】
さらに、本発明のゼオライト組成物によるなめしにより得られる革は、白い外観を有し、発色の悪さ、例えばクロムなめしにより得られるウェットブルー革およびウェットホワイト革をもたらさない。ゆえに、革を着色する自由が広がり、鮮やかな色が適用可能である。
【0015】
本発明のゼオライト組成物は、改変の必要性なしに、従来のなめし処理に組み込むことができる。ゼオライト組成物は、さらなるなめし剤の使用なしに、単一のなめし剤として使用可能である。さらに、2工程なめし処理の必要性がない;ゼオライト組成物は単一のなめし工程において効果的である。単一のなめし工程は、なめし剤が1回添加される必要があるのみであり、なめし時間がより短いことから、より効率的である。これに加えて、大抵の場合で、2工程処理におけるなめし剤の組み合わされた量は、1工程処理に必要な量より大きい。
【0016】
本発明は、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物、ゼオライト組成物を調製するための方法、調製するための方法により得られるゼオライト組成物、ゼオライト組成物を含むなめし組成物と皮を接触させる、革を生産するための方法、および革を生産するための方法により得られる革に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】SEM-EDXにより決定された、例5から得られた革の断片の垂直断面全体のアルミニウム分布。X軸:垂直断面にわたる長さ目盛り(ミクロメートル);左側は肉面であり、右側は銀面である。Y軸:強度。上側の破線は革の断片の垂直断面の表面における濃度であり、下側の破線は中心における濃度である。
【
図1B】SEM-EDXにより決定された、例5から得られた革の断片の垂直断面全体のケイ素分布。X軸:垂直断面にわたる長さ目盛り(ミクロメートル);左側は肉面であり、右側は銀面である。Y軸:強度。上側の破線は革の断片の垂直断面の表面における濃度であり、下側の破線は中心における濃度である。発明の詳細な説明 第1の態様において、本発明は、ゼオライト、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物であって、第1、第2および第3の弱酸が異なる酸であり、ゼオライトの量が、ゼオライト組成物の総重量ベースで、少なくとも34重量%、好ましくは少なくとも50重量%であり、水の量が、ゼオライト組成物の総重量ベースで、25重量%未満、好ましくは20重量%未満である、ゼオライト組成物に関する。
【0018】
さらに本発明は、ゼオライト組成物を調製するための方法であって、
a)第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸が、20℃で固体である場合
i)第1の弱酸、第2の弱酸、ゼオライトおよび存在する場合は第3の弱酸を、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること;
または
b)第1の弱酸、第2の弱酸または存在する場合は第3の弱酸の何れか1つが、20℃で液体である場合
ii)20℃で液体である1種の弱酸、または20℃で液体である複数の弱酸を、ゼオライトと、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること、および
iii)残りの1種の弱酸または残りの複数の弱酸を、工程ii)で得られた混合物と、混合中の混合物の温度を100℃未満に保ちつつ混合すること
を含む、方法に関する。
【0019】
本発明は、この方法により得られる、単一のなめし剤として好適なゼオライト組成物にも関する。
【0020】
本発明は、革を生産するための方法であって、なめし工程を含み、ゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させ、ゼオライト組成物の濃度が、皮の重量ベースで1重量%~15重量%の範囲にある、方法にも関する。
【0021】
本発明は、
- 収縮温度60℃超、好ましくは70℃超、および
- 3~5の範囲の、好ましくは3.5~4.5の範囲の等電点
を有する革であって、
革の乾燥重量ベースで0.5重量%超のアルミニウムおよび革の乾燥重量ベースで0.5重量%超のケイ素を含む、
革にさらに関する。
【0022】
本発明は、なめし取り込みを改善するための、本発明のゼオライト組成物の使用をさらに含み、ゼオライト組成物は単一のなめし剤である。
【0023】
本発明は、革浸透を改善するための、本発明のゼオライト組成物の使用も含み、ゼオライト組成物は単一のなめし剤である。
【0024】
ゼオライト
ゼオライト組成物はゼオライトを含む。ゼオライトはアルミノケイ酸塩とも呼ばれる。当技術分野で公知のゼオライトは結晶構造を有する鉱物であり、その孔のサイズ、化学的組成および/または結晶構造を特徴としていてもよい。本発明では好ましくは、ゼオライトは、一般式(Cat2/nO)X(Al2O3)(SiO2)Yを有するゼオライトであり、Catはカチオンであり、Oは酸素であり、Siはケイ素であり、Alはアルミニウムである。好ましい態様において、カチオンが一価n=1である場合、Xは0.5~1.8であり、Yは0.8~40であり、H2Oが結晶水として存在し、またはカチオンが二価n=2である場合、Xは0.5~1.8であり、Yは0.8~40であり、結晶水が存在する;より好ましくは、カチオンは一価かつn=1であり、Xは0.5~1.8であり、Yは0.8~14であり、結晶水が存在する;最も好ましくは、カチオンはナトリウム(Na)であり、Xは0.5~1.8であり、Yは0.8~14であり、結晶水が存在する。好ましくは、Al2O3重量パーセンテージは、ゼオライトの総重量ベースで25重量%~40重量%の範囲にあり、SiO2重量パーセンテージは、ゼオライトの総重量ベースで28重量%~40重量%の範囲にある。好ましくは、ゼオライトの孔サイズは3オングストローム以上、さらにより好ましくは4オングストローム以上、最も好ましくは5オングストローム以上である。オングストローム(Å)は長さの単位であり、10-10メートルに等しい。より大きい孔サイズにより、ゼオライトと弱酸との間の相互作用が改善される。好ましくは、ゼオライトは、A、Y、X、またはP型ゼオライトであり、より好ましくは、ゼオライトはA型ゼオライトである。好ましくは、ゼオライトは、強熱減量含有率40重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満を有する。強熱減量は当技術分野で公知であり、初期重量を測定し、ゼオライトを800℃に加熱し、重量が安定になるまで重量減少を測定して測定可能である。強熱減量は、重量パーセンテージで表される、初期重量で割った、初期重量と加熱後の安定な重量との差である。強熱減量が小さいことは、含水率が小さいこと、ゆえに生産環境下で使用するのにより容易なより高濃度の生成物に等しい。典型的に、本発明のゼオライトは、弱酸と接触させる前に含水率を有し、ゆえにゼオライトは含水率を有する。この含水率は典型的に、ゼオライトの総重量の1重量%~25重量%の範囲にある。
酸
本発明のゼオライト組成物は、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む。弱酸は当技術分野で公知であり、水に溶解させた際にプロトン(H+)およびアニオンに完全には解離しない酸に関する。弱酸は、酸解離定数(pKa)値-1.74超を有する。
【0025】
弱酸は、有機酸、有機酸の塩、弱無機酸および弱無機酸塩に分類されうる。弱酸塩は、カチオンおよびアニオンを含む。好ましくは、本発明のゼオライト組成物の、有機と無機の両方の弱酸塩のカチオンは一価または二価カチオンであり、より好ましくは、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、さらにより好ましくは、カチオンはナトリウムまたはカリウムであり、最も好ましくは、カチオンはナトリウムである。
【0026】
環境に悪いこと、人にとって有害であること、高価であること、ゼオライト組成物の不十分な溶解特性をもたらすこと、革の変色をもたらすことおよび/またはなめしにおけるゼオライト組成物の有効性に影響することから、他のカチオンは望ましくない。例えば、クロムは環境に悪く、人にとって有害であり、革に青い色をもたらす。鉄は革を変色させ、一方でアルミニウム塩はその不十分な可溶化結果で知られ、このことは、使用の際に革がアルミニウムを失い、これが不十分な革特性につながることを意味する。さらにアルミニウム塩は、ゼオライト組成物と比較して、コラーゲンとより非効果的に結合し、排水中の望ましくないより高濃度のアルミニウムおよびより低い収率につながる。
【0027】
さらに、ゼオライト組成物のなめし効果が、弱酸およびゼオライトの組み合わせの結果であることから、なめし特性を有する、カチオンを有する他のなめし塩、例えばクロム、アルミニウム、チタン、ジルコニウムまたは鉄塩の必要性がない。さらに悪いことに、ゼオライト組成物にこのようななめし塩を取り込むことは逆効果である。なめし塩はゼオライトを妨害する;ゼオライトは、ゼオライトのファンデルワールス会合を介してコラーゲンと相互作用し、ゼオライトを含有する革の低い等電点につながるが、なめし塩はカチオン性会合を介してコラーゲンと相互作用し、なめし塩を含有する革の高い等電点につながる。この妨害により、ゼオライト組成物は、なめしにおいて効果がより小さくなる。相互作用の効果は、なめし塩でなめされた革では6.5超(pI値)、本発明に従ってなめされた革では3~5である、ゼータ電位により測定される等電点に反映される。
【0028】
好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、有機酸、カチオンを含む有機酸の塩、弱無機酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択される;カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、好ましくは、カチオンはナトリウムまたはカリウムであり、最も好ましくは、カチオンはナトリウムである。
【0029】
好ましくは第3の弱酸が存在する。
【0030】
好ましくは、有機酸は、カルボン酸および有機スルホン酸からなる群から選択され、より好ましくは、有機酸は、カルボン酸および芳香族スルホン酸からなる群から選択され、さらにより好ましくは、有機酸は、カルボン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレン-スルホン酸およびスルファニル酸からなる群から選択され、最も好ましくは、有機酸はカルボン酸である。
【0031】
カルボン酸は、モノカルボン酸またはポリカルボン酸である。モノカルボン酸は1分子あたり1つのカルボキシル基を有し、ポリカルボン酸は1分子あたり1つ超のカルボキシル基を含み、ジカルボン酸は1分子あたり2つのカルボキシル基を有し、トリカルボン酸は1分子あたり3つのカルボキシル基を有し、テトラカルボン酸は1分子あたり4つのカルボキシル基を有する。好ましくは本発明では、有機酸がカルボン酸である場合、有機酸はモノカルボン酸であり、または反対に、好ましくは本発明では、有機酸がカルボン酸である場合、有機酸はポリカルボン酸であり、より好ましくは、有機酸がカルボン酸である場合、有機酸はジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、さらにより好ましくはジカルボン酸である。あるいは、有機酸がカルボン酸である場合、好ましくは、有機酸はモノカルボン酸またはジカルボン酸である。
【0032】
好ましくは、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ブテン酸、ペンタン酸、アジピン酸、クエン酸、シュウ酸、ガラクタル酸、没食子酸、グルコン酸、グルクロン酸、グリコール酸、乳酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、フタル酸、サリチル酸、4-フェノールスルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、スルファニル酸、コハク酸からなる群から選択され、より好ましくは、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ブテン酸、ペンタン酸、アジピン酸、クエン酸、シュウ酸、ガラクタル酸、没食子酸、グルコン酸、グルクロン酸、グリコール酸、乳酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、フタル酸、ナフタレン-2-スルホン酸、スルファニル酸からなる群から選択され、さらにより好ましくは、有機酸は、ギ酸、没食子酸、シュウ酸、クエン酸および酒石酸からなる群から選択され、最も好ましくは、有機酸は、ギ酸、没食子酸、シュウ酸および酒石酸からなる群から選択される。
【0033】
好ましくは、カチオンを含む有機酸の塩は、カチオンカルボン酸塩および有機スルホン酸カチオンからなる群から選択され、より好ましくは、カチオンを含む有機酸の塩は、カチオンカルボン酸塩、カチオンフェノールスルホン酸塩、カチオンナフタレン-スルホン酸塩およびカチオンスルファニル酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。さらにより好ましくは、カチオンを含む有機酸の塩は、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムおよびナフタレン-2-スルホン酸ナトリウムからなる群から選択され、より好ましくは、カチオンを含む有機酸の塩は、ギ酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0034】
好ましくは、カチオンを含む弱無機酸塩は、硫酸カチオン、二硫酸カチオン、硫酸水素カチオンからなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、好ましくは、カチオンは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される。好ましくは、カチオンを含む弱無機酸塩は二硫酸ナトリウムである。
【0035】
好ましくは、弱無機酸は、ホウ酸、リン酸、ケイ酸またはアミノスルホン酸である。
【0036】
好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸のうちの1つ以上が、分子径20Å未満、好ましくは12Å未満、より好ましくは8Å未満、最も好ましくは4Å未満を含む有機酸である;より好ましくは、第1の弱酸は、分子径20Å未満、好ましくは12Å未満、より好ましくは8Å未満、最も好ましくは4Å未満を含む有機酸である。
【0037】
動力学径または臨界径としても公知の分子径は、孔に入るための最小の分子径である。理論に縛られるものではないが、低分子はゼオライトと有益に相互作用することができると考えられる。ゼオライト構造の孔サイズにより、より低分子の有機酸のゼオライト構造への浸透が可能となる。それゆえに、ゼオライト構造の孔サイズに対する酸の分子サイズが浸透に役立つ。浸透した低分子の酸はゼオライトと有益に相互作用することができ、適用中に液相へのより良好な分散を可能にする。
【0038】
一態様において、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、二ギ酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム、スルファニル酸、2-アミノペンタン二酸、2-オキソプロパン酸、2-ヒドロキシエタン酸および3-オキソブタン酸からなる群から選択され、好ましくは、二酢酸ナトリウム、スルファニル酸、2-アミノペンタン二酸、2-オキソプロパン酸、2-ヒドロキシエタン酸および3-オキソブタン酸からなる群から選択される。
【0039】
別の好ましい態様において、第1の弱酸は有機酸であり、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、有機酸、カチオンを含む弱無機酸塩、弱無機酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり;カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。より好ましくは、
- 第1の弱酸はカルボン酸、最も好ましくはモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、
- 第2の弱酸はカルボン酸、好ましくはジカルボンまたはトリカルボン酸であり、
- 第3の弱酸は、硫酸カチオン、二硫酸カチオン、硫酸水素カチオンおよびナフタレンスルホン酸カチオンからなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、より好ましくは、第3の弱酸は、ナフタレンスルホン酸カチオンまたは二硫酸カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、さらにより好ましくは、第3の弱酸は二硫酸カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。
【0040】
本発明のさらなる態様は、
- 第2の弱酸が、カルボン酸、有機スルホン酸カチオンまたはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、
- 存在する場合は第3の弱酸が、ポリカルボン酸、有機スルホン酸カチオンまたはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される、
ゼオライト組成物に関する。
【0041】
別の好ましい態様において、第1の弱酸はカルボン酸、最も好ましくはモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、有機酸、カチオンを含む弱無機塩またはカチオンを含む弱無機酸塩であり;カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、より好ましくは、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、有機酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり;カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。さらにより好ましくは、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、カルボン酸、ナフタレン-スルホン酸、フェノールスルホン酸、カチオンカルボン酸塩、有機スルホン酸カチオン、ナフタレンスルホン酸カチオン、硫酸カチオン、二硫酸カチオン、硫酸水素カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。いっそうさらに好ましくは、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、カルボン酸、ナフタレンスルホン酸カチオン、二硫酸カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。特に好ましい態様において、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、カルボン酸、ナフタレンスルホン酸カチオン、二硫酸カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択され、最も好ましくは、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、カルボン酸または二硫酸カチオンであり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。
【0042】
別の好ましい態様において、第3の弱酸が存在する。この態様では、第1、第2および第3の弱酸は、カルボン酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。好ましくはこの態様では、第1、第2および第3の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の弱酸はカルボン酸であり、第2の弱酸はカルボン酸であり、第3の弱酸はカルボン酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。さらにより好ましくは、第1の弱酸はモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、第2の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であり、第3の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。好ましくはこの態様では、カチオンはナトリウムまたはカリウムである。
【0043】
好ましい態様において、第1の弱酸はカルボン酸、好ましくはモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、第2の弱酸はカルボン酸、好ましくはモノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であり、第3の弱酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の弱酸はモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、第2の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であり、第3の弱酸はジカルボン酸またはカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、ギ酸、アジピン酸、クエン酸、二硫酸ナトリウム、シュウ酸、フタル酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸およびマレイン酸からなる群から選択される。より好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、ガラクタル酸、没食子酸、フタル酸、コハク酸、酒石酸および二硫酸ナトリウムからなる群から、最も好ましくは、ギ酸、没食子酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択される。さらにより好ましくは、第1の弱酸は、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、フタル酸およびコハク酸からなる群から選択され、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、クエン酸、二硫酸ナトリウム、ガラクタル酸、没食子酸、シュウ酸および酒石酸からなる群から選択され;さらにより好ましくは、第1の弱酸はギ酸またはシュウ酸であり、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は、クエン酸、二硫酸ナトリウム、没食子酸、シュウ酸および酒石酸からなる群から選択される。
【0045】
本発明のさらなる態様は、第3の弱酸が存在し、第1の弱酸、第2の弱酸および第3の弱酸が、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;好ましくは、第3の弱酸が存在し、第1の弱酸が、ギ酸およびシュウ酸からなる群から選択され、第2の弱酸が、クエン酸、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択され、第3の弱酸が、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択される、ゼオライト組成物に関する。
【0046】
別の好ましい態様において、第1および第2の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。より好ましくは、第1の弱酸はモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、第2の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。さらにより好ましくは、第1の弱酸はジカルボン酸であり、第2の弱酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびカチオンを含む弱無機酸塩からなる群から選択され、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。最も好ましくは、第1の弱酸はジカルボン酸であり、第2の弱酸はカチオンを含む弱無機酸塩であり、カチオンは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される。好ましくはこの態様では、カチオンは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択され、より好ましくはこの態様では、カチオンを含む弱無機酸塩は二硫酸ナトリウムである。この態様の酸の組み合わせにより、他のなめし剤の必要性なしに単一のなめし剤として好適であり、他の酸の組み合わせと比較して改善された取り込みを有するゼオライト組成物がもたらされる。
【0047】
一態様において、好ましくは、第1の弱酸および第2の弱酸は、フタル酸、コハク酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;より好ましくは、第1の弱酸は、フタル酸、コハク酸、ギ酸、シュウ酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され、第2の弱酸は、二硫酸ナトリウム、酒石酸、シュウ酸および没食子酸からなる群から選択され、さらにより好ましくは、第1の弱酸は、フタル酸、コハク酸およびシュウ酸からなる群から選択され、第2の弱酸は、二硫酸ナトリウム、酒石酸、シュウ酸および没食子酸からなる群から選択され、最も好ましくは、第1の弱酸は、フタル酸、コハク酸およびシュウ酸からなる群から選択され、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである。この態様の酸の組み合わせにより、他のなめし剤の必要性なしに単一のなめし剤として好適であり、他の酸の組み合わせと比較して改善された取り込みを有するゼオライト組成物がもたらされる。
【0048】
好ましい態様において、第1の弱酸および第2の弱酸は、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、没食子酸および二硫酸ナトリウムからなる群から選択され;好ましくは、第1の弱酸は、ギ酸、二硫酸ナトリウムおよびシュウ酸からなる群から選択され、第2の弱酸は、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択され、より好ましくは、第1の弱酸は、ギ酸およびシュウ酸からなる群から選択され、第2の弱酸は、二硫酸ナトリウム、酒石酸、没食子酸およびシュウ酸からなる群から選択される。この態様の酸の組み合わせにより、他のなめし剤の必要性なしに単一のなめし剤として好適であり、他の酸の組み合わせと比較して改善された浸透および取り込みを有するゼオライト組成物がもたらされる。
【0049】
好ましい態様において、第1の弱酸および第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸の組み合わせは、以下の組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は酒石酸である、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸は二硫酸ナトリウムであり、第2の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は没食子酸である、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はクエン酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は酒石酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はクエン酸であり、第3の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は没食子酸であり、第3の弱酸は酒石酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は酒石酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸であり、第3の弱酸は没食子酸である。
【0051】
より好ましくは、第1の弱酸および第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸の組み合わせは、以下の組み合わせからなる群から選択される。
【0052】
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はクエン酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は酒石酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はクエン酸であり、第3の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は没食子酸であり、第3の弱酸は酒石酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は酒石酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸であり、第3の弱酸は没食子酸である。
【0053】
最も好ましくは、第1の弱酸および第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸の組み合わせは、組み合わせ:
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸であり、第3の弱酸は二硫酸ナトリウムである
からなる。
【0054】
好ましい態様において、第1の弱酸および第2の弱酸の組み合わせは、以下の組み合わせからなる群から選択される。
【0055】
- 第1の弱酸はフタル酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はコハク酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は酒石酸である、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸は二硫酸ナトリウムであり、第2の弱酸はシュウ酸である、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はギ酸であり、第2の弱酸は没食子酸である。
【0056】
より好ましい態様において、第1の弱酸および第2の弱酸の組み合わせは、以下の組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
- 第1の弱酸はフタル酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はコハク酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである、
- 第1の弱酸はシュウ酸であり、第2の弱酸は二硫酸ナトリウムである。
【0058】
ゼオライトと混合する前の弱酸は、水を含んでいてもよい。ゼオライト組成物の含水率を低く保つため、かつゼオライト組成物の有効性を改善するため、好ましくは、弱酸は高濃度の弱酸である。好ましくは、弱酸の濃度は、弱酸の総重量ベースで少なくとも80重量%、より好ましくは弱酸の総重量ベースで少なくとも90重量%、さらにより好ましくは弱酸の総重量ベースで少なくとも95重量%である。
【0059】
好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および/または第3の弱酸は20℃で固体であり、より好ましくは、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸は20℃で固体である。別の態様において、好ましくは、第1の弱酸、第2の弱酸および/または第3の弱酸は20℃で液体であり、より好ましくは、第1の弱酸は20℃で液体である。好ましくは、1種以上の弱酸が20℃で液体である場合、液体弱酸全体対ゼオライトの比は、液体弱酸およびゼオライトの組み合わせを混合した後に、固体の塊、好ましくは粉末を形成するものである。好ましくは、液体弱酸全体対ゼオライトの比は70重量%未満、より好ましくは55重量%未満、最も好ましくは35重量%未満である。これらの比についての重量%は、パーセンテージで表される、ゼオライトの重量で割った液体弱酸全体の重量である。
【0060】
ゼオライト組成物
本発明の文脈において、なめし剤は革なめし剤であり、なめしは革なめしである。本発明のゼオライト組成物は水を含む。好ましくは、ゼオライト組成物は、ゼオライト組成物の総重量ベースで25重量%未満の水、より好ましくはゼオライト組成物の総重量ベースで20重量%未満、最も好ましくはゼオライト組成物の総重量ベースで15重量%未満の水を含む。高い含水率は加工性にマイナスの形で影響する。さらに、水はなめしに対して機能性を付加しないため、より高い含水率は望ましくない;水の存在により輸送コストが増大する。さらに発明者らは、低い含水率はゼオライト-酸相互作用を改善するため、プラスのなめし結果に必須であると考える。
【0061】
ゼオライト組成物はゼオライトを含む。好ましくは、ゼオライト組成物は、ゼオライト組成物の総重量ベースで少なくとも34重量%のゼオライト、より好ましくはゼオライト組成物の総重量ベースで少なくとも50重量%のゼオライト、最も好ましくはゼオライト組成物の総重量ベースで少なくとも60重量%のゼオライトを含む。革のコラーゲンと相互作用しなめしをもたらすのはゼオライトであるため、より高いゼオライト濃度により、単一のなめし剤としてのゼオライト組成物のより経済的な使用がもたらされる。好ましくは、ゼオライトの構造はゼオライト組成物中で無傷である、すなわち、分析により、ゼオライト構造の分解も崩壊も存在しないことが実証される。
【0062】
ゼオライト組成物は、第1の弱酸、第2の弱酸および任意に第3の弱酸を含む。好ましくは、ゼオライト組成物は、第1の弱酸、第2の弱酸および第3の弱酸を含む。好ましくは、第1の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~35重量%の範囲にあり、より好ましくは5重量%~25重量%の範囲にあり、さらにより好ましくは7.5重量%~20重量%の範囲にある。好ましくは、第2の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲にあり、より好ましくは5重量%~20重量%の範囲にあり、最も好ましくは10重量%~15重量%の範囲にある。好ましくは、存在する場合は第3の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲にあり、好ましくは5重量%~20重量%の範囲にあり、最も好ましくは10重量%~15重量%の範囲にある。
【0063】
好ましくは、第1の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~35重量%の範囲にあり、より好ましくは5重量%~25重量%の範囲にあり、さらにより好ましくは7.5重量%~20重量%の範囲にあり、好ましくは、第2の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲にあり、より好ましくは5重量%~20重量%の範囲にあり、最も好ましくは10重量%~15重量%の範囲にあり、好ましくは、存在する場合は第3の弱酸の量は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、2重量%~25重量%の範囲にあり、好ましくは5重量%~20重量%の範囲にあり、最も好ましくは10重量%~15重量%の範囲にある。
【0064】
好ましくは、ゼオライト組成物はなめし塩を含まず、より好ましくは、ゼオライト組成物は、なめし塩も、合成なめし剤も、植物性なめし剤も含まない。好ましくは、ゼオライト組成物は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、20重量%未満のなめし塩、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満を含む;より好ましくは、ゼオライト組成物は、ゼオライト組成物の総重量ベースで、20重量%未満のなめし塩、合成なめし剤および植物性なめし剤全体、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満を含む。好ましくは、ゼオライト組成物は、ゼオライト組成物の総重量ベースで5重量%未満の硫酸アルミニウムを含み、最も好ましくは、ゼオライト組成物は硫酸アルミニウムを含まない。
【0065】
好ましくは、ゼオライト組成物は粉末である。
【0066】
ゼオライト組成物の製造方法
ゼオライトは粉末である。ゼオライト組成物を調製するための方法において、ゼオライトは2種以上の弱酸と混合される。弱酸の凝集状態次第で、製造方法が選択される必要がある。
【0067】
第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸が20℃で固体である場合、粉末の混合が関係する。粉末の混合のための技術は当技術分野で一般的である。一部の場合では、ゼオライト粉末が弱酸粉末とある程度相互作用しうることから、熱を除去するために一般的に公知の手段が必要とされてもよい。ゆえに、第1の弱酸、第2の弱酸および存在する場合は第3の弱酸が20℃で固体である場合、ゼオライト組成物を調製するための方法において、混合中の混合物の温度は、100℃未満、好ましくは90℃未満、最も好ましくは60℃未満に保たれる。弱酸全てが固体である場合、異なる成分を混合する順序は特に問題ではない。
【0068】
第1の弱酸、第2の弱酸または存在する場合は第3の弱酸の何れか1つが20℃で液体である場合、ゼオライトおよび1種または複数の液体弱酸を組み合わせると、ゼオライト組成物の生成物構造に影響しうる多量の熱が産生されうる。さらに、液体弱酸を固体弱酸と、ゆえに20℃の液体と20℃の固体とを組み合わせると、塊形成が引き起こされる可能性があり、これがゼオライトとのさらなる混合における不十分な取扱特性、および望ましくない不均質性につながる。ゆえに、第1の弱酸、第2の弱酸または存在する場合は第3の弱酸の何れか1つが20℃で液体である場合、ゼオライト組成物を調製するための方法において、1種の液体弱酸または複数の液体弱酸がまずゼオライトと混合され、その後ようやくさらなる固体弱酸が、得られた混合物と混合される。粉末および液体の混合は当技術分野で一般的である。ゼオライトおよび液体弱酸の混合は、WO 2013/045764 A1より公知である。
【0069】
第1の弱酸、第2の弱酸または存在する場合は第3の弱酸の何れか1つが20℃で液体である場合、ゼオライト組成物を調製するための方法において、混合中の混合物の温度は、100℃未満、好ましくは90℃未満、最も好ましくは60℃未満に保たれる。
【0070】
ゼオライトを調製するための方法において、好ましくは、混合は密閉容器内で行われ、例えば冷却ジャケットが、混合物を冷却するのに使用される。ゼオライトを調製するための方法の一態様において、第1の弱酸、第2の弱酸または存在する場合は第3の弱酸の何れか1つが20℃で液体である場合、20℃で液体である1種の弱酸、または20℃で液体である複数の弱酸が、工程ii)を実行する間、少なくとも10分間の期間にわたって継続的に供給される。
【0071】
革を生産するための方法
革の生産は当技術分野で周知である。概して、革の生産において、皮がまず前処理され、その後なめされる。一般的に、なめし前の最後の前処理工程は、浸酸液中での皮の浸酸である。大抵の場合で、なめし工程の後に、革特性をさらに調整するための1つ以上のなめし後工程が続く。
【0072】
一態様において、本発明は、革を生産するための方法であって、なめし工程を含み、本発明のゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させ、ゼオライト組成物の濃度が、皮の重量ベースで1重量%~15重量%の範囲にあり、好ましくは、ゼオライト組成物の濃度が、皮の重量ベースで3重量%~10重量%の範囲にあり、最も好ましくは、ゼオライト組成物の濃度が、皮の重量ベースで4重量%~8重量%の範囲にある、方法に関する。
【0073】
本発明の文脈において、皮の重量は石灰漬けされた皮の重量である。
【0074】
好ましくは、本発明のゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させることは、10~1500分、より好ましくは50~500分、さらにより好ましくは100~300分の範囲の期間実行される。好ましくは、本発明のゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させることは、10℃~95℃、好ましくは15℃~75℃、より好ましくは20℃~55℃の範囲の温度で実行される。好ましくは、なめし液の濃度は、皮の重量ベースで100重量%以下、より好ましくは皮の重量ベースで50重量%以下、さらにより好ましくは皮の重量ベースで35重量%以下である。低濃度のなめし液により、なめし効率が改善され、環境への影響が低く保たれる。
【0075】
当技術分野で一般的であるように、なめし前に皮が浸酸される。浸酸により、皮の繊維がなめしをより受け入れやすくなる。好ましくは、革を生産するための方法において、皮はなめし前に浸酸され、浸酸は、1種以上の酸および塩を含む浸酸液と皮を接触させることである。好ましくは、浸酸液の濃度は、皮の重量ベースで100重量%以下、より好ましくは皮の重量ベースで50重量%以下、さらにより好ましくは皮の重量ベースで35重量%以下である。
【0076】
好ましくは、浸酸液は有機酸を含む。有機酸は、革の良好な品質に必要である。好ましくは、浸酸液中の有機酸の濃度は、皮の重量ベースで1重量%~5重量%の範囲にあり、より好ましくは皮の重量ベースで2重量%~3重量%の範囲にあり、最も好ましくは皮の重量ベースで2.25重量%~2.75重量%の範囲にある。好ましくは、浸酸液中の有機酸は、ギ酸、酢酸およびシュウ酸からなる群から選択される1種以上である。イオン強度のバランスを取るため、塩が浸酸液中に存在する。浸酸液は、好ましくは、皮の重量ベースで1重量%~10重量%の範囲の塩、より好ましくは皮の重量ベースで4重量%~8重量%の範囲の塩を含む。好ましくは、浸酸液の初期pHは3.5未満、より好ましくは3未満、最も好ましくは2.8未満である。浸酸液の初期pHは、なめし剤が皮を含む浸酸液に添加される直前の液のpHである。
【0077】
好ましくは、革を生産するための方法において、なめし液は、皮を含む浸酸液に本発明のゼオライト組成物を添加することにより得られる。
【0078】
当技術分野で一般的であるように、なめし工程の終わり近くで、皮を含むなめし液がより高いpHにされる。この工程において、ゼオライトは皮のコラーゲンと相互作用するように活性化される。好ましくは、革を生産するための方法において、なめし工程の終了時に、皮を含むなめし液のpHが、好ましくはpH4.0~6.0、より好ましくはpH4.5~5.5、最も好ましくはpH4.8~5.3に増大される。好ましくは、pHは、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ソーダ灰、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトおよび水酸化カリウムからなる群から選択される1種以上の塩基性薬剤を添加することにより増大される。好ましくは、塩基性薬剤は様々な瞬間に添加され、好ましくは、瞬間は少なくとも5分間離れている。好ましくは、塩基性薬剤は、添加された皮の重量ベースで、総量1重量%超、より好ましくは2重量%で添加される。
【0079】
革
一態様において、本発明は、革を生産するための方法であって、なめし工程を含み、本発明のゼオライト組成物を含むなめし液と皮を接触させ、ゼオライト組成物の濃度が、皮の重量ベースで1重量%~15重量%の範囲にある、方法により得られる革に関する。本発明は革にさらに関する。
【0080】
本発明の革は、いくつかの方法で特徴付けることができる。革の収縮温度または収縮温度(Ts)がASTM D6076-08に従って決定可能であり、完全に湿らせた革標本が収縮を起こす温度を表す。収縮温度は革の水熱安定性を表し、なめし革の品質管理のための業界標準に発展してきた。好ましくは、本発明の革は、収縮温度60℃超、より好ましくは70℃超を有する。好ましくは、本発明の革は、収縮温度100℃未満、より好ましくは90℃未満を有する。高い収縮温度はクロムなめし革に特有のものである。
【0081】
本発明の革は、表面電荷および等電点(pI)も有する。等電点は、当技術分野で公知であるように決定可能である。等電点を決定する方法は、Wangら(JALCA、Vol. 112、2017、p224)に記載されており、そこでは革のゼータ電位が様々なpH値で測定され、pIは、ゼータ電位がゼロとなるpHとみなされた。好ましくは、革の等電点は、様々なpH値での革のゼータ電位を測定することにより決定され、等電点は、ゼータ電位がゼロとなるpH値である。革のpIはなめし剤の種類によって決まる。金属がカチオン性会合を介して革と相互作用する(正に荷電した金属イオンが負に荷電したコラーゲンと相互作用する)ため、金属塩なめし革は等電点6.5超を有する。合成または植物性なめし剤の活性基がアニオン性会合を介して革と相互作用する(負に荷電した活性基が正に荷電したコラーゲンと相互作用する)ため、合成または植物性なめし革は等電点5未満を有する。発明者らはここで、本発明のゼオライト組成物によるなめしによって、等電点5未満を有する革が得られることを見出した。好ましくは、本発明の革は、3~5の範囲にある、より好ましくは3.5~4.5の範囲にある等電点を有する。
【0082】
革におけるなめし剤
本発明の革は、元素アルミニウム(Al)とケイ素(Si)の両方を含む。アルミニウムとケイ素の両方が、本発明の革において均等に分布する。好ましくは、革は、革の乾燥重量ベースで0.3重量%超のアルミニウム、より好ましくは革の乾燥重量ベースで0.5重量%超、さらにより好ましくは革の乾燥重量ベースで1重量%超を含む。好ましくは、革は、革の乾燥重量ベースで0.3重量%超のケイ素、より好ましくは革の乾燥重量ベースで0.5重量%超、さらにより好ましくは革の乾燥重量ベースで1重量%超を含む。アルミニウムの量は、方法、消化後の革における鉱物なめし剤の含有率ISO 17072-2:2019により決定可能である。ケイ素については、量は、ISO 17072-2:2019の方法の改変、またはSEM-EDX分析におけるアルミニウムおよびケイ素の相対強度に基づいていてよい。好ましくは、革の乾燥重量ベースでのアルミニウム(Al)の量は、ISO 17072-2:2019に従って決定される。この方法では、革が分析前に乾燥される。アルミニウムおよびケイ素濃度について言及される革の乾燥重量は、ISO 17072-2:2019に従って乾燥させた革の重量である。
【0083】
革の生産において、なめし剤の均等な分布が求められる。なめし剤としてのゼオライト組成物によるなめしでは、なめし後、革により取り込まれたゼオライトは、無傷なだけでなくその元素まで分解もされないと考えられる;ゼオライトは、ネットワークの形態で革に存在すると考えられる。ゼオライトによるなめしでは、革におけるアルミニウムおよびケイ素の分布を測定することにより、均等な分布が立証されてもよい。好ましくは、本発明では、革はゼオライト組成物の均等な分布を有する、言い換えれば、好ましくはアルミニウムおよびケイ素が革に均等に分布する。物理的および化学的安定性としての外観と特性の両方が均等な分布によることから、均等な分布は重要である。均等な分布は、完全な浸透として当技術分野で公知であり、当技術分野で公知の試験により決定可能である。浸透は、なめし剤の革表面全体への分布と、なめし剤の革表面に対して垂直な分布の両方を指す。表面全体への分布は、官能検査:表面全体の革の色および/または感触に大きな差がないかどうかを確かめることにより立証される。なめし剤が均等に分布していれば、すなわちなめし剤が革表面全体へのかつ革表面に対して垂直な均一の分布を有していれば、良好な浸透または完全な浸透が実現される。なめし剤としてのゼオライト組成物によるなめしでは、革におけるアルミニウムおよび/またはケイ素の最小局所濃度が、革におけるアルミニウムおよび/またはケイ素の最大局所濃度の少なくとも20%であれば、均一の分布が存在する。完全に浸透していない革は、表面の異なる領域間での色の差、ならびに表面の異なる領域間での感触および物理化学的特性の差を示す可能性がある。さらに、典型的に革はなめし後に削られるため、なめし前およびなめし中には表面の下にあった新たな表面が形成される。典型的に、表面に対して垂直な面への浸透が十分でなければ、すなわち革が完全には浸透していなければ、削った際に新たに形成される表面に、焦げた領域が現れる。
【0084】
好ましくは、革はゼオライト組成物の均等な分布を有し、均等な分布は革が完全に浸透していることを意味する。
【0085】
革がゼオライト組成物の均等な分布を有するかどうかを立証するための方法は、革におけるアルミニウムおよびケイ素の分布を測定することである。ケイ素およびアルミニウムの空間分布は、SEM-EDXにより決定可能である。SEM-EDXにより、(相対)濃度分布がアルミニウムおよびケイ素について測定可能である。垂直断面を露出させて、表面方向に対して垂直な革の断片が切り出されてよい。垂直断面の表面が、微細に集束させた電子ビームにより走査されうる(SEM)。電子ビームによる励起の結果として放出されるX線が、エネルギー分散型X線分光により測定可能である(EDX)。このようにして、垂直断面上の各位置について、元素組成が決定可能である。アルミニウムおよびケイ素についての、革の断片の垂直断面全体の強度曲線が、この測定に基づいて作成されうる。強度は(局所)濃度と直線的に相関する。
【0086】
革は、平行に伸びる上側表面(銀面)および下側表面(肉面)およびこれらの表面に対して垂直な垂直断面により定められてよい。好ましくは、本発明の革では、垂直断面の中心におけるアルミニウムの濃度は、垂直断面の各表面側における濃度の、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも50%であり、および/または本発明の革では、垂直断面の中心におけるケイ素の濃度は、垂直断面の各表面側における濃度の、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも50%である。好ましくは、垂直断面は、長さ少なくとも0.5ミリメートル、より好ましくは少なくとも1ミリメートル、最も好ましくは少なくとも2ミリメートルを有する。
【0087】
他のなめし方法、例えばなめし剤としてのゼオライトおよびアルミニウム塩の組み合わせによるなめしにより得られる革と比較して、ケイ素対アルミニウムの比は、本発明の革では一定である。一定の比により、表面被覆率および革全体にわたって同等の関連する表面電荷が保証され、このことは革のさらなる加工および均一な革品質にとって有益である。好ましくは、革の垂直断面の中心におけるアルミニウム対ケイ素の比は、垂直断面の各表面側におけるアルミニウム対ケイ素の比の、40%以内、より好ましくは60%以内、最も好ましくは75%以内である。
【0088】
可溶化
可溶化値が総含有量に対して小さければ、なめし相互作用が強く、なめし剤が十分に固定されているとみなされる。特定の鉱物元素についての革の可溶化は、業界標準方法、「革における可溶性鉱物なめし剤の決定」ISO 17072-1:2019により決定可能である。なめし剤の取り込みが良好になればなるほど、革の含有率が高くなり、なめし相互作用が良好になり、可溶性鉱物なめし剤が少なくなる。可溶性鉱物なめし剤は、なめし革についての特定の金属元素ごとの、革における鉱物なめし剤の総含有量についてのパーセンテージとみなされる。好ましくは、Siについての、革におけるなめし剤全体に対する可溶性鉱物なめし剤は、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。好ましくは、Alについての、革におけるなめし剤全体に対する可溶性鉱物なめし剤は、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。
【0089】
ゼオライト組成物が優れたなめし結果をもたらすことを考えると、他のなめし剤は利用される必要がなく、本発明の革は他のなめし剤を含まない。好ましくは、本発明の革はクロムを含まず、より好ましくは、本発明の革は、クロム、チタンおよびジルコニウムを含まず、さらにより好ましくは、本発明の革は、クロム、チタン、ジルコニウムおよび合成なめし剤を含まず、最も好ましくは、本発明の革は、クロム、チタン、ジルコニウム、合成なめし剤および植物性なめし剤を含まない。
【0090】
[例]
例1-ゼオライトおよび弱酸を含む単一のなめし剤による革なめし
調製
ゼオライト粉末(ゼオライト粉末の総重量に対して含水率20重量%未満を有する)および弱酸を混合することにより、単一のなめし剤を調製した。単一のなめし剤全てについて、利用されたゼオライトはA型ゼオライトであった。
【0091】
弱酸が室温で液体である場合、WO 2013/045764 A1の方法に従って単一のなめし剤を調製した(例2)。手短に言えば、ダイナミックミキサーを使用して、混合しながらゼオライトに高濃度の液体弱酸をゆっくりと継続的に添加した。混合および外部冷却により、温度を85℃未満に保った。粉末を得た。
【0092】
弱酸が固体である場合、ゼオライトおよび弱酸を乾式混合した。乾式混合の間、ある程度の熱産生が発生したが、温度は50℃を超えず、冷却は必要でなかった。調製された単一のなめし剤が表2に列挙される。弱酸を有しない参照も試験した(変種1A)。含水率20重量%未満を有する、高濃度形態の各弱酸をゼオライトに添加した。各単一のなめし剤について、ゼオライト含有率は総重量に対して65重量%であり、弱酸含有率は総重量に対して35重量%であった。最終の単一のなめし剤の含水率は、全ての場合で、単一のなめし剤の総重量に対して20重量%未満であった。皮約12kgを各例においてなめした。
【0093】
なめし
脱毛されたブルハイドが、業界標準方法に従って、石灰漬けされ、脱灰され、酵解され、洗浄された後に、皮の浸酸およびなめしが実施される。表1の製法に従う。この表において、浸酸およびなめしについての成分の重量パーセンテージは、石灰漬けされた皮重量に対するものである。括弧の中は、添加される成分の希釈率である。成分は添加前に水で希釈される。希釈前の濃度は、硫酸については98%(総重量に対する重量%)であり、ギ酸については85%(総重量に対する重量%)である。表1および2に列挙される濃度(「なめし剤濃度」)で単一のなめし剤が添加される。業界標準では、浸酸液中に皮を一晩放置することになっている。ゼオライトなめしでもこれは可能である。例1~3の変種について一晩の浸酸が試験され、結果に影響しなかった。1時間あたり5分間回転させる際の最終の硫酸添加後に、皮を一晩放置した。朝には必要に応じてpHの最終調整が行われ、単一のなめし剤が添加される。
【0094】
分析
革試料は専門家委員会により官能的に評価された。革は革の感触について評価され、硬さ(つるつるした、引き締まった、硬い、非常に硬い)および充実性(充実していない、ふっくらしている、充実)が立証された。さらに浸透を評価した;切片を視覚的に観察し、等しい分布および浸透について皮の表面領域を観察した。浸透を、様々な位置での断面のSEM-EDX分析によっても観察した。浸透は、「不良」、「部分的」、「完全」、および皮の一部が浸透していなければ「未浸透の斑点」としてまとめられる。当技術分野で公知であるように、ASTM D6076-08に従って示差走査熱量測定(DSC)により、収縮温度を決定した。当技術分野においてDSCは、D6076-08で使用されることが認められた方法である。取り込みをアルミニウムに基づいて決定した。そうであれば単一のなめし剤が効率的であるため、高い取り込みが好ましい。例では、なめし革の乾燥重量あたりのアルミニウムの量をICP-MSにより測定し、乾燥なめし革の総量を乗じて、保持されたアルミニウムの量を求めた。与えられたアルミニウムの量は、添加された単一のなめし剤の量に基づいて算出される。ICP-MSは、ISO 17072-2:2019に従って実施される。
【0095】
【0096】
例の一部では、業界標準方法「革における可溶性鉱物なめし剤の決定」ISO 17072-1:2019に従って可溶化が決定される。可溶化は、なめし剤によるなめし後に革から抽出されうる鉱物の量に関し、鉱物はなめし剤の鉱物である。例では、決定される鉱物はアルミニウムであった。可溶化は、革における鉱物の総含有量のパーセンテージとみなされる。
【0097】
結果
生じた革特性が表2に列挙される。酸の添加を有しない単一のなめし剤としてのゼオライトは、適用された全ての濃度において、不十分ななめし結果をもたらした。ゼオライトは収縮温度を増大させたが、浸透および革の感触が不十分であった。単一のなめし剤に弱酸を導入すると、感触および浸透がいくぶん改善されたが、感触および浸透は未だ満足なものではなかった。革の感触は弱酸の選択により操作可能であった。革は、発色の悪さなくその天然の色を保った。単一のなめし剤の量が大きくなると収縮温度が増大したが、他のパラメーターはそうでなかった。
【0098】
【0099】
例2-ゼオライト、第1の弱酸および第2の弱酸を含む単一のなめし剤による革なめし
ゼオライトおよび第1の弱酸を例1に従って混合した。得られた混合物を第2の弱酸とともに混合して単一のなめし剤を得た。試験された組み合わせが表3に列挙される。含水率20重量%未満を有する、高濃度形態の各弱酸を添加した。各単一のなめし剤について、ゼオライト含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して70重量%であり、第1の弱酸含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して15重量%であり、第2の弱酸含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して15重量%であった。最終の単一のなめし剤の水濃度は、全ての場合で、単一のなめし剤の総重量に対して20重量%未満であった。革を例1(表1)に従ってなめした。なめしの間に添加された単一のなめし剤の量は表3にある。
【0100】
なめし効率および得られた革の評価は例1に従い、結果が表3に列挙される。概して、1種の弱酸を含む単一のなめし剤と比較して、2種の弱酸を含む単一のなめし剤により、なめし性能が改善された。変種2F~2Kで浸透が改善され、より広範な質感特質が得られた。組み合わせ(2D~2K)では、取り込みが改善された。例2での収縮温度は、例1と同じ範囲にある。革は、発色の悪さなくその天然の色を保った。
【0101】
【0102】
例3-ゼオライト、第1の弱酸、第2の弱酸および第3の弱酸を含む単一のなめし剤による革なめし
ゼオライトおよび第1の弱酸を例1に従って混合した。得られた混合物を第2の弱酸および第3の弱酸とともに混合して単一のなめし剤を得た。試験された組み合わせが表4に列挙される。含水率20重量%未満を有する、高濃度形態の各弱酸をゼオライトに添加した。各単一のなめし剤について、ゼオライト含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して60重量%であり、第1の弱酸含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して10重量%であり、第2の弱酸含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して15重量%であり、第3の弱酸含有率は、単一のなめし剤の総重量に対して15重量%であった。最終の単一のなめし剤の水濃度は、全ての場合で、単一のなめし剤の総重量に対して20重量%未満であった。革を例1(表1)に従ってなめした。なめしの間に添加された単一のなめし剤の量は表4にある。例1および2と異なり、各試行における皮の平均総重量は約65kgである。
【0103】
【0104】
得られた革の評価は例1に従い、結果が表4に列挙される。概して、1種または2種の酸を含む単一のなめし剤と比較して、3種の酸を含む単一のなめし剤により、なめし性能が改善された。浸透および取り込みが改善され、より広範な質感特質が得られた。さらに収縮温度が増大した。革は、発色の悪さなくその天然の色を保った。
【0105】
驚くべきことに、ゼオライトおよび3種の酸を含む単一のなめし剤は、さらなるなめし剤の添加なしに優れたなめし結果をもたらす。単一のなめし剤は、粉末として添加可能であるため使いやすさをもたらす。さらに、従来のなめし剤の公知の難点、例えば毒性(例えばクロムおよびアルミニウム塩、アルデヒド)、長い浸透時間(天然のタンニンおよびタンニン抽出物)、可溶化(アルミニウム、ジルコニウムチタン塩)、限られた革製品適用(アルミニウム、ジルコニウムチタン塩)、均一な革品質(アルミニウム、ジルコニウムチタン塩)、限られた色(天然のタンニンおよびタンニン抽出物)および革の変色(例えばクロム塩、鉄塩)が防止可能である。
【0106】
例4-アルミニウムを含む弱無機酸塩を含む単一のなめし剤による革なめし
例3への追加として、3種の弱酸を含み、1種の酸がアルミニウムを含む弱無機酸塩である単一のなめし剤を用いて、例3の方法の類似物により革がなめされる。例3と比較して、なめしの終了時にpHを増大させるために炭酸水素ナトリウムの代わりにMgOを使用し、MgOは炭酸水素ナトリウムと比較して取り込みを改善することが公知である。単一のなめし剤が例3に従って調製される。結果が表5に列挙される。この単一のなめし剤での革の感触および浸透は不十分である。例2aの単一のなめし剤(ゼオライト、ギ酸およびクエン酸を含む単一のなめし剤)の弱酸部分を硫酸アルミニウムで置きかえると、収縮温度が低下し、革の感触が悪化し、さらに、pHを増大させるためにMgOを使用しても、取り込みがほとんど改善されない。
【0107】
【0108】
例5-単一のなめし剤の大規模適用
表4の組成3Cによるゼオライト組成物を、大規模試験における単一のなめし剤として適用した。ゼオライト組成物を例3に従って調製した。
【0109】
なめし
脱毛されたブルハイドが、業界標準方法に従って、石灰漬けされ、脱灰され、酵解され、洗浄された後に、皮の浸酸およびなめしが実施される。表6の製法に従う。この表において、浸酸およびなめしについての成分の重量パーセンテージは、石灰漬けされた皮重量に対するものである。括弧の中は、添加される成分の希釈率である。成分は添加前に水で希釈される。希釈前の濃度は、硫酸については98%(総重量に対する重量%)であり、ギ酸については85%(総重量に対する重量%)である。表6および7に列挙される濃度(なめし剤濃度)で単一のなめし剤が添加される。大規模工業的革なめしにおいて適用される一般的な量である、皮の総重量550kgを用いて大規模試行が実施される。革を以下の表に従ってなめした。
【0110】
【0111】
表7に、大規模試験の結果が列挙される。大規模実験により、完全な浸透、非常に高い取り込みおよび良好な収縮温度を伴う優れたなめし結果が実証される。
【0112】
表7のアルミニウム含有率は、ISO 17072-2:2019に従ってICP-MSにより測定された。
【0113】
さらに、大規模試験により得られたなめし革の断片をSEM-EDXにより分析した。SEM-EDXにより、(相対)濃度分布をアルミニウムおよびケイ素について測定した。垂直断面を露出させて、表面方向に対して垂直な革の断片を切り出した。垂直断面の表面を、微細に集束させた電子ビームにより走査した(SEM)。電子ビームによる励起の結果として放出されるX線を、エネルギー分散型X線分光により測定した(EDX)。Oxford Instruments X-Max 80X線源を備えるTescan Vega 3 SEMを用いて分析を行い、装置の供給業者により提供された、対応するソフトウェアを用いて結果を分析した。
【0114】
このようにして、垂直断面上の各位置について、元素組成が決定可能である。アルミニウムおよびケイ素についての、革の断片の垂直断面全体の強度曲線を、この測定に基づいて作成した(
図1Aおよび1B)。左側(200μmあたり)が肉面であり、右側(1800μmあたり)が銀面である。強度は濃度と直線的に相関する。上側の破線は革の断片の垂直断面の表面における濃度/強度であり、下側の破線は中心における濃度/強度である。約1900μm以上からの強度増大は、画像の傾きに関連する異常によるものであり、増大した測定領域を測定することでさらに高い強度につながる。
【0115】
図1Aおよび1Bは、単一のなめし剤が革全体に完全に浸透したことを実証する。革は通常、ケイ素およびアルミニウムを含まず、図は、単一のなめし剤由来のケイ素とアルミニウムの両方が、垂直断面全体に存在することを実証する。垂直断面の中心におけるアルミニウムの濃度は、表面における濃度の約50%である(7000/14000=50%)。垂直断面の中心におけるケイ素の濃度は、表面における濃度の約40%である(8000/20000=40%)。アルミニウム対ケイ素の強度比は、断面全体で一定である。
【0116】
革の等電点は3.8である。固体表面分析用動電分析装置(SurPass(商標)、Anton Paar)により等電点を決定した。革試料は空気中で乾燥され、直径12.7mmまで分割および切断され、ギャップセルにはめ込まれる。出発溶液は、KOHによりpH9.8に調整された0.01M KClを含み、実験中に、0.01M HClにより滴定される。実験中、ゼータ電位の算出を可能にするため、圧力勾配および電流が測定される。
【0117】
【国際調査報告】