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特表2023-506858クルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】クルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 29/02 20060101AFI20230213BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20230213BHJP
   B63B 34/00 20200101ALI20230213BHJP
【FI】
B63B29/02 Z
B23K20/12 360
B63B34/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536745
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2020061479
(87)【国際公開番号】W WO2021123999
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019000024072
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514146829
【氏名又は名称】フィンカンティエリ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌッティ,ルチアーノ
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
(57)【要約】
本発明は船の側部に固定されるクルーズ船のバルコニーの組み立て式構造に関する。組み立て式構造は、船の側部に結合する要素を備える少なくとも2つの支持梁(11,12)と、バルコニーの床を規定する上面に対向する下面において、2つの支持梁に機械的に接続されたプラットフォームであって、使用中に船の側部に面する内縁と、内縁に対向する外縁とを備える、前記プラットフォーム(20)と、外縁においてプラットフォームに機械的に接続され、手すりを固定するために予め配置されたプロファイル要素(30)と、を備える。プラットフォームは、アルミニウム又はアルミニウム合金の2枚の薄板(23、24)によって規定されたボードにより構成され、2枚の薄板は、互いに平行に配置され、アルミニウム又はアルミニウム合金製フォーム(25)で充満されるキャビティを形成し、フォームは、2枚の薄板を構造的に接続して一緒に単一体を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船の側部に固定されるクルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造であって、
前記船の側部に結合する要素を備える少なくとも2つの支持梁(11,12)と、
前記バルコニーの床を規定する上面に対向する下面において、2つの前記支持梁(11,12)に機械的に接続されたプラットフォーム(20)であって、前記プラットフォーム(20)は、使用中に前記船の側部に面する内縁(21)と、前記内縁(21)に対向する外縁(22)とを備える、前記プラットフォーム(20)と、
前記外縁(22)において前記プラットフォーム(20)に機械的に接続され、手すりを固定するために予め配置されたプロファイル要素(30)と、
を備え、
前記プラットフォーム(20)は、アルミニウム又はアルミニウム合金の2枚の薄板(23、24)によって規定されたボードにより構成され、前記2枚の薄板(23、24)は、互いに平行に配置され、アルミニウム又はアルミニウム合金製フォーム(25)で充満されるキャビティを形成し、前記フォーム(25)は、前記2枚の薄板(23、24)を構造的に接続して一緒に単一体を形成する、
組み立て式構造。
【請求項2】
前記2枚の薄板(23、24)は、マグネシウム及びシリコンを含むアルミニウム合金、好ましくは6000系合金、更により好ましくはアルミニウム合金6082で作製される、
請求項1に記載の組み立て式構造。
【請求項3】
前記2枚のアルミニウム製薄板(23、24)のそれぞれは、2mmから5mmの厚さである、
請求項1又は2に記載の組み立て式構造。
【請求項4】
アルミニウム又はアルミニウム合金の前記フォーム(25)は、0.5から2.0g/cmの間の密度を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項5】
アルミニウムのフォーム又はアルミニウム合金の前記フォーム(25)は、前記ボードの総体積の65%から75%を占め、好ましくは、前記ボードの総体積の70%を占める、
請求項1から4のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項6】
前記フォーム(25)は、マグネシウム及びシリコンを含むアルミニウム合金、好ましくは、6000系合金、更により好ましくはアルミニウム合金6082により構成され、好ましくは、前記フォームは1.5から2.0g/cmの密度を有し、更により好ましくは、1.9g/cmに等しい密度を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項7】
前記フォーム(25)は、マグネシウムを含むアルミニウム合金、好ましくは5000系合金、更により好ましくはアルミニウム合金5754で作製され、好ましくは、前記フォームは0.5から1.0g/cmの密度を有し、更により好ましくは、0.7g/cmに等しい密度を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項8】
前記ボードは、40mmから50mmの総厚さを有し、好ましくは、45mmに等しい総厚さを有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項9】
前記プラットフォーム(20)は、直線状ではない、好ましくは、湾曲のプロファイルに従って成形された外縁(22)を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項10】
前記プラットフォーム(20)の外縁(22)は、フライス加工又はウォータージェット切断によって成形される、
請求項9に記載の組み立て式構造。
【請求項11】
前記プラットフォーム(20)は、ボルト締めによって前記支持梁(11、12)に接続され、好ましくは、前記ボルト締めは、前記フォーム(25)、及び前記プラットフォーム(20)の前記下面を規定する前記薄板(23)のみに関わる、
請求項1から10のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項12】
前記プロファイル要素(30)は、
第1のC字形部分(31)であって、前記第1のC字形部分(31)において、前記プロファイル要素が前記外縁(22)に沿って前記プラットフォーム(20)に結合される、前記第1のC字形部分(31)と、
手すりのハウジング座部として機能する第2のC字形部分(32)と、
を備える、
請求項1から11のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項13】
水溝(40)を備え、
前記水溝(40)は、前記プラットフォームの前記内縁(21)と前記外縁(22)とのうちの1つ、好ましくは、前記内縁(21)に接続される、
請求項1から12のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項14】
前記水溝(40)は、アルミニウム又はアルミニウム合金で作製され、溶接によって、好ましくは、FSW(摩擦攪拌溶接)技術を用いて前記プラットフォームに接続される、
請求項13に記載の組み立て式構造。
【請求項15】
前記プラットフォーム(20)は、前記内縁(21)と平行に長さ方向に延びて、船の1つの客室のバルコニーのみを規定する、
請求項1から14のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項16】
前記プラットフォーム(20)は、前記内縁(21)と平行に長さ方向に延びて、船の2つ以上の連続する客室のバルコニーを規定し、好ましくは、前記プラットフォーム(20)は、単一体を形成するように、長さ方向の延びる方向に対して横方向において一緒に溶接された2枚以上の前記ボードによって構成されている、
請求項1から14のいずれか1項に記載の組み立て式構造。
【請求項17】
2枚以上の前記ボードは、FSW(摩擦攪拌溶接)技術を用いて、2枚の前記薄板(23、24)のそれぞれにおいて2枚ずつ一緒に溶接されている、
請求項16に記載の組み立て式構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造に関する。
【0002】
具体的には、本発明によるクルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造を使用して、クルーズ船の客室のバルコニーを構築することができる。
【0003】
有利的には、このような組み立て式構造は、単一の客室のバルコニーを別々に構築することと、2つ以上の隣接する客室のバルコニーを単一体に構築することとの両方に使用することができる。
【背景技術】
【0004】
知られているように、クルーズ船の客室のバルコニーは組み立て式構造によって構築され、組み立て式構造は、特別な固定システムによって船の側部に固定される。
【0005】
従来技術では、側部から片持ち梁式で延びるデッキの部分によってバルコニーの構造を構築することとなるが、現在では、そのような従来技術は、組み立て式構造を利用するバルコニーの構築によってほぼ完全に代えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、金属の薄板(metal sheet)の溶接を含み、美的な観点から完全に満足のいく構造を構築することはできなかった。実際に、溶接によって引き起こされた収縮により、バルコニープラットフォームを形成する薄板金属のうねりが生じる。これによって、バルコニーの床の目に見える表面に不規則性が発生し、バルコニー自体の美的な仕上げが損なわれることとなる。
【0007】
これらの問題は、組み立て式のバルコニーで完全に解決される。
【0008】
典型的には、図1に示されるように、組み立て式のバルコニー構造は、
船の側部Mに結合するための要素を備えた少なくとも2つの支持梁Tと、
前記2つの支持梁に機械的に接続されたプラットフォームPと、
前記プラットフォームの外縁(側部に面している縁部の反対側)に機械的に接続され、手すり(parapet)Bを固定するために配置されたコーミング(coaming)Qと、
前記コーミングと前記プラットフォームとの間に統合された水溝(water gutter)Sと、
を備える。
【0009】
一般に、これらの組み立て式構造では、プラットフォームは、アルミニウム押し出し成形又はアルミニウムハニカムの組み立て式ボードにより構成される。
【0010】
より詳細には、図2に示されるように、押し出しボードは、ボードの2つの主面を形成する2枚のアルミニウム製プレートと、2枚のプレートの間の内部接続要素とによって構成される。一般に、そのような内部接続要素は、プラットフォームの長さに沿って配置された、互いに平行な一連のリブL3からなる。あるいは、そのような内部接続要素は、ハニカム構造により構成することができる。したがって、ボードは、内部が中空で、耐久性があり、軽い構造である。
【0011】
プラットフォームは、溶接及び/又はボルト締めによって支持梁に固定される。
【0012】
上記組み立て式構造は、直線状の外側プロファイルを有するバルコニーを構築するには理想的であるが、成形された外側プロファイル(直線状ではない、例えば湾曲のプロファイル)を有するバルコニーを構築するには不適切である。実際、後者の場合、プラットフォームは切断操作によってその外縁に沿って成形する必要がある。このような切断操作は、プラットフォームの構造的メカニカルシール(mechanical seal)の避けられない劣化によって、当該構造の完全性に影響(内部接続要素の切断)を与えるだけでなく、プラットフォームを開放させることで、内部が水や汚れの蓄積に晒されることによって、腐食現象が生じる。このような切断操作の後にプラットフォームの構造的完全性を回復するための処理は、非常に複雑で費用がかかるため、組み立て式のバルコニーの使用は不経済である。
【0013】
そのような理由で、現在、湾曲の外側プロファイルを持たなければならないバルコニーは、従来技術、すなわち、側部又はデッキに溶接された薄板でプラットフォームを構成することによって構築されている。実際、薄板は、任意の方法でその構造的強度を損なうことなく、容易に成形することができる。
【0014】
近年、クルーズ船の美学的特徴づける傾向の増加に連れ、成形された、直線状ではない外側プロファイルを有するバルコニーの数を増やす需要がある。
【0015】
これまで、前述した理由により、この需要性は、組み立て式のバルコニー構造を使用して満たすことができず、薄板金属プラットフォームを用いた従来技術を利用してバルコニーを構築することにのみよって満たすことができる。
【0016】
これにより、同等の数量のバルコニーを構築するためのコストが大幅に増加する。
【0017】
したがって、薄板金属プラットフォームに頼る必要なく、経済的に持続可能な方法で成形されたプラットフォームを有する組み立て式バルコニー構造を構築することが求められ、その需要が未だに満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、クルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造を提供することであって、当該組み立て式は、非直線形状の外側プロファイルを有し、経済的に構築することができ、同時に構造的に耐久性を有する。
【0019】
前述の目的に係る本発明の技術的特徴は、以下の特許請求の範囲の内容において明確に分かることであって、その利点は、非限定的な例として提供された1つ又は複数の実施形態を示す添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来タイプの組み立て式のバルコニー構造を示す図であって、当該組み立て式のバルコニー構造は、船の側部に関連して示され、アルミニウム製押し出しボードで作られたプラットフォームを有する。
図2】アルミニウム合金製押し出しボードで作られたプラットフォームを有する組み立て式のバルコニー構造を示す図であって、その内部形状を示すために部分的に断面図で示す図である。
図3】本発明の具体的な実施形態に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造を、船の側部に関連して示す直交側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造であって、直線状の外縁を有するプラットフォームを提供する組み立て式のバルコニー構造を示す概略斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造であって、湾曲のプロファイルに従って成形された外縁と水溝とを備え、アルミニウム製フォーム構造によって作製されたプラットフォームを提供する組み立て式のバルコニー構造を示す概略斜視図である。
図6】本発明の具体的な実施形態に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造の概略上面図であって、湾曲のプロファイルに従って成形された外縁を有するプラットフォームを含み、プラットフォームは、互いに溶接された3枚のボードにより構成されている。
図7】本発明に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造のプラットフォームを構築するために使用されるボードの一部の写真である。
図8】アルミニウム製フォームボードの3枚の写真を示す図であって、それぞれは、アルミニウム合金棒を挿入して、FSW技術(摩擦攪拌接合)で2枚のボードを溶接することにより得られる。
図9】本発明の代替の実施形態に係るクルーズ船用の組み立て式のバルコニー構造の概略斜視図であって、当該組み立て式のバルコニー構造は、湾曲のプロファイルに従って成形された外縁と、内部が中空のアルミニウム押し出しプロファイルで構成された水溝とを備えるプラットフォームを有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、クルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造に関する。
【0022】
本発明によるクルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造は、添付の図面において符号1によって示されている。
【0023】
有利的には、組み立て式構造1を使用して、客室のバルコニーを構築することができる。特に、このような組み立て式構造1は、単一の客室のバルコニーを別々に構築することと、2つ以上の隣接する客室のバルコニーを単一体に構築することとの両方に使用することができる。
【0024】
図3に示すように、組み立て式構造1は、船の側部Mに固定されることを意図したものである。
【0025】
一般に、特に図4及び図5に示すように、組み立て式のバルコニー構造1は、船の側部に結合するための要素(図3において符号50で示されている)を有する少なくとも2つの支持梁11及び支持梁12を有する。好ましくは、結合領域では、側部は、反対の形状の要素が配置され、これにより、組み立て式構造を側部自体にすばやく結合することができる。有利なことに、固定は、溶接及び/又はボルト締めによって構造的に完了することができる。
【0026】
組み立て式のバルコニー構造1は、プラットフォーム20を備え、プラットフォーム20は、バルコニーの床を規定する上面に対向する下面において、前述した2つの支持梁11,12に機械的に接続されている。
【0027】
プラットフォーム20は、使用中に船の側部に面するように意図された内縁21と、内縁に対向する外縁22とを備えている。
【0028】
一般に、図4、5、及び6に示されるように、内縁21は、プラットフォームが側部に接着することを可能にする直線状のプロファイルを有する。外縁22は、具体的な美的要求に従って任意のプロファイルを有することができる。特に、外縁22は、直線型(図4)又は湾曲型(図5及び図6)とすることができる。
【0029】
組み立て式構造1は、プロファイル要素30も備える。プロファイル要素30は、前述の外縁22でプラットフォーム20に機械的に接続され、手すり(図3において符号60で概略的に示されている)を固定するために配置される。
【0030】
本発明によれば、図4及び図5に概略的に示すように、前述したプラットフォーム20は、2枚のアルミニウム又はアルミニウム合金製薄板(sheets)23及び24によって規定されるボードにより構成される。2枚の薄板23と24とは、互いに平行に配置され、アルミニウム又はアルミニウム合金製フォーム(foam)25で充満されるキャビティを形成する。フォーム25は、2枚の薄板23、24を構造的に接続して一緒に単一体を形成する。
【0031】
本発明によるプラットフォーム20を構築するために使用されるボードの例が、図7の写真に示されている。以下では、このタイプのボードを簡単に、「アルミニウム製フォームボード」とも称す。
【0032】
従来のアルミニウム製押し出しボード又はハニカムボードを、アルミニウム製フォームボードに置き換えることで、ボードの構造的完全性、そしてその機械的特徴を復元することを目的とした特別な処理を必要とすることなく、任意のプロファイルを有する外縁を持つプラットフォームを構築することができる。
【0033】
より詳細には、アルミフォームは、2枚の薄板23と24との間の全ての隙間を埋める事実により、ボードの全ての部分において、2枚の薄板の間の実質的に連続した構造的接続を保証する。したがって、2枚の薄板23と24との間の接続が常に保証されるため、アルミニウム製フォームボードは、構造的完全性を失うことなく、任意の場所で切断することによって成形することができる。
【0034】
これに対して、バルコニーのプラットフォームを構築するために従来使用されてきた、内側リブ又はハニカム構造を有するアルミニウム製ボードでは、薄板間の接続が常に保証されているわけではない。前者の場合は接触ポイントが限られているためであり、後者の場合は、ハニカム構造が2枚の薄板の間に不連続な要素を形成するためである。そのようなボードを切断して成形すると、当該作業には不連続な接続要素が関与するため、切断を受ける部分において、構造的完全性が失われる。
【0035】
したがって、作業上、アルミニウム製フォームボードは、切断/成形された後、構造的完全性を回復するための処理を必要とせず、切断を受けていないボードとして使用することができる。
【0036】
好ましくは、アルミニウム製フォームボードの上記2枚の薄板23、24は、マグネシウム及びシリコンを含むアルミニウム合金、好ましくはアンチコロダルとして商業的に知られている6000系合金で作製される。
【0037】
特に、6000系合金(主な合金剤:マグネシウム0.4~1.7ウエイトパーセント、マンガン0.5~1ウエイトパーセント、シリコン1~5ウエイトパーセント)は、優れた機械的特徴及び優れた耐食性を特徴とし、したがって、海軍分野での使用に適している。特に、2枚の薄板23、24は、6082アルミニウム合金で作製することができる。
【0038】
好ましくは、2枚のアルミニウム製薄板23、24のそれぞれは、2mmから5mmの間の厚さを有し、より好ましくは、2.5mmに等しい厚さを有する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、ボードは、40mmから50mmの間の総厚さを有し、好ましくは、45mmに等しい総厚さを有する。
【0040】
好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金製フォーム25は、ボードの総体積の65%から75%を占め、好ましくは、ボードの総体積の70%に等しい体積を占める。
【0041】
アルミニウム製フォームボードの製造技術は、それ自体が当業者に周知されており、ここでは詳細に説明しない。
【0042】
アルミニウム製フォームの製造は、出発金属の状態、すなわち、液体、粉末、蒸気相、又は金属イオンに依存し、異なるプロセスを介して行うことができる。
【0043】
好ましくは、本発明で使用されるボード20は、フォーム、典型的には金属水素化物と混合された金属粉末から生成されるフォームから作製される。2つの成分を混合して押し出し、加熱して溶融金属内に気泡を生成する。この技術により(他の製造プロセスと比較して)、2枚のアルミニウム製薄板の間でより均一な密度を有するフォームを得ることができる。
【0044】
好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金製フォーム25は、0.5から2.0g/cmの間の密度を有する。これは剛性構造であると同時に可能な限り軽量化とする折衷案である(密度を上げると構造の剛性が上がるが、同様に重量が増える)。
【0045】
第1の実施形態によれば、フォーム25は、マグネシウム及びシリコンを含むアルミニウム合金、好ましくはアンチコロダルとして商業的に知られている6000系合金により作製される。特に、フォーム25は、2枚の薄板23、24を形成するために使用されるのと同じ合金、例えば、アルミニウム合金6082から作製される。
【0046】
好ましくは、6000系合金が使用される場合、フォームは1.5から2.0g/cmの間の密度を有し、更に好ましくは、1.9g/cmに等しい密度を有する。
【0047】
第2の実施形態によれば、フォーム25は、マグネシウムを含むアルミニウム合金、好ましくは、ペラルマンとして商業的に知られている5000系合金により作製される。
【0048】
より具体的には、5000系合金は、その主要な合金剤としてマグネシウムを有する(5.6ウエイトパーセントまで)。マグネシウムは、これらの合金に、海洋環境であっても耐食性、優れた溶接性、及び優れた延性といった素晴らしい特徴を与える。そのため、海軍分野での使用にも適している。
【0049】
特に、フォーム25は、アルミニウム合金5754で作製することができる。
【0050】
好ましくは、5000系合金を使用する場合、フォームは、0.5から1.0g/cmの間の密度を有し、更に好ましくは、0.7g/cmに等しい密度を有する。
【0051】
既に述べたように、プラットフォーム20の内縁21は、プラットフォーム自体が側部に接着することを可能にする直線状のプロファイルを有する。一方、外縁22は、得られるべき具体的な美的要求に従って任意のプロファイルを有することができる。
【0052】
好ましくは、図5及び図6に示すように、外縁22は湾曲のプロファイルを有する。
【0053】
アルミニウム製フォームボードの切断は、フライス加工(milling)によって、又はレーザ、プラズマ、及びウォータージェット切断を含む従来とは異なる方法によって行うことができる。
【0054】
レーザ及びプラズマ切断は電熱技術であり、電力源から処理中の材料の表面に熱エネルギーを伝達する。様々なタイプのレーザ切断の中でも、特に、金属フォームに最も適しているのがファイバーレーザである。
【0055】
一方、ウォータージェット切断は機械的プロセスであり、研磨剤を追加可能である高圧ウォータージェットが用いられる。
【0056】
この特定のケースでは、熱が材料を変形させるのを防ぐために、より低い熱インプットを伴うため、機械的処理が好ましい。
【0057】
好ましくは、プラットフォーム20の外縁22は、フライス加工又はウォータージェット切断によって成形される。
【0058】
プラットフォーム20の支持梁11、12への接続は、任意の技術によって、特に、溶接及び/又はボルト締めによって実現することができる。
【0059】
好ましくは、前述したプラットフォーム20は、ボルト締めによって支持梁11、12に接続される。
【0060】
ボルト締めによる接続は、溶接とは異なり、大きな熱インプットを伴わないため、溶接による接続よりも好ましい。これによって、プラットフォームの熱による変形のリスクを回避することができる。
【0061】
フォームが材料に連続性を与えるため、2枚の薄板23と24との間にフォーム25が存在することによって、ボルト締めによる接続の選択が可能となる。これとは異なり、従来、バルコニーのプラットフォームを構築するために使用されていたアルミニウム製ボードは、支持梁に溶接する必要があった。これは、従来のアルミニウム製ボードは、内部が中空であるため、堅固な接続を得ることができず、構造が片持ち梁のように動作するためである。
【0062】
好ましくは、ボルト締めは、フォーム25、及びプラットフォーム20の下面20aを規定する薄板23のみに関わり、プラットフォームの上面20bを規定する薄板24には影響を及ぼさない。これにより、ボルト締めがバルコニーの床の美的仕上げを妨げるのを防止する。
【0063】
前述したように、組み立て式構造物1はプロファイル要素30を備え、プロファイル要素30は、前述した外縁22においてプラットフォーム20に機械的に接続され、手すり60を固定するために配置される。
【0064】
好ましくは、特に図4及び図5に示されるように、前述したプロファイル要素30は、
第1のC字形部分31であって、当該第1のC字形部分31においてプロファイル要素が外縁22に沿ってプラットフォーム20に結合される、前記第1のC字形部分31と、
手すり60のハウジング座部として機能する第2のC字形部分32と、
を備える。
【0065】
特に、プロファイル要素30の第1のC字形部分31は、プロファイルセクション30のプラットフォーム20との形状結合を可能にする。アルミニウム製フォームボードで作製されたプラットフォーム20は、外縁22がカット/成形されても、完全性及び耐性が維持されるため、この方法はいつでも採用できる。
【0066】
好ましくは、形状結合による接続に加えて、プロファイル要素30は、溶接及び/又はボルト締めによってプラットフォームに接続することができる。
【0067】
有利的には、前の請求項のいずれか1つによる組み立て式構造物1は、プラットフォーム20の内縁21と外縁22とのうちの1つに接続された水溝40を備える。
【0068】
好ましくは、添付の図面に示されるように、水溝40は、プラットフォーム20の内縁21に接続され、これによって、前述したように、直線状でなくてもよい形状の外縁22に接続しないようにすることができる。
【0069】
外縁22が直線のプロファイルを有する場合、水溝30は同様に外縁22に沿ってプラットフォーム20と接続することができる。
【0070】
有利なことに、前述した水溝40は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作製することができ、溶接によって、好ましくはFSW(摩擦攪拌溶接)技術を用いてプラットフォームに接続することができる。
【0071】
特に、水溝40は、押し出し成形されたアルミニウムプロファイル(図9に概略的に示すように、内部が中空)で作製することができ、又は、プラットフォーム20と同様に(図4及び図5に概略的に示されているように)、アルミニウム製フォームボードの一部から作製することもできる。
【0072】
既に前述したように、組み立て式構造1は、特に、単一の客室のバルコニーを別々に構築することと、2つ以上の隣接する客室のバルコニーを単一体に構築することとの両方に使用することができる。
【0073】
第1のケース(1つのバルコニー)では、プラットフォーム20は、内縁21と平行に長さ方向に延びて、船の1つの客室のバルコニーのみを規定する。好都合なことに、一般にバルコニーの長さは約3mであるという事実を考慮すると、プラットフォーム20は、好ましくは、例えば、3m×2mのサイズを有する1枚のアルミニウム製フォームボードから得ることができる。
【0074】
第2のケース(複数のバルコニー)では、プラットフォーム20は、内縁21と平行に長さ方向に延びて、船の2つ以上の連続する客室のバルコニーを規定する。好ましくは、この場合、プラットフォーム20は、単一体を形成するように、長さ方向に対して横方向において一緒に溶接された2枚以上の単一の組み立て式ボード(例えばサイズが3m×2m)からなる。
【0075】
図6では、個々の組み立て式ボード(2枚ずつ溶接された)は、参照番号20'、20''、及び20'''で示され、溶接線は破線で表し、Xで示されている。
【0076】
好ましくは、前述した2枚以上のボードは、FSW(摩擦攪拌溶接)技術によって、2枚の薄板23、24のそれぞれにおいて2枚ずつ一緒に溶接される。
【0077】
FSW溶接技術は、それ自体が当業者に周知されており、ここでは詳細に説明しない。FSW溶接技術は、溶接される材料が溶融温度に達しないが、その75~80%が溶融温度に達するタイプの固体摩擦溶接である。
【0078】
好都合なことに、アルミニウム製フォームは、2枚の薄板23、24を、所定の距離に保ちながら互いに接続する機能のみを有するため、溶接は、アルミニウム製薄板のみに限定することができる。好ましくは、図8に示されるように、溶接は、2枚の溶接されたボード要素の間の接合領域で2枚の薄板の間にアルミニウムバー25を挿入することによって実現される。
【0079】
FSW技術の代替として、材料添加技術を用いて溶接を実現することができる。ただし、FSW技術と比較して、材料添加方法では、ボードの外面から突き出ている溶接継目が形成される。表面仕上げに関連する理由から、少なくともボードの上面において、溶接継目の金属素材を除去する必要がある。これは、FSW技術に比べて、時間及びコストの増加が発生する。
【0080】
本発明に係るクルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造を製造するための可能なプロセスのステップについて、特に前述したとおりに、記載される。
【0081】
第1の操作ステップ(a)は、プラットフォーム20を構築するためにアルミニウム製フォームボードを準備することである。
【0082】
好ましくは、前記ボードは予め製造され、所定の寸法を有する。有利的には、1枚のボードは、1つの客室のバルコニーのプラットフォームの寸法に対応する寸法で作製される。これにより、1つのバルコニー用の組み立て式のバルコニー構造を作製する場合、1枚のボードを使用するのみで十分である。
【0083】
第2の操作ステップ(b)は、複数のバルコニー用の組み立て式のバルコニー構造の場合のように、1枚のボードよりも大きな寸法を有するプラットフォームを作製する必要がある場合には、2枚以上の前記ボードを一緒に溶接することである。ただし、このような第2のステップ(b)は、1枚のボードが既にプラットフォームの寸法を有する場合には必要がない。これは、構築される組み立て式構造が単一のバルコニーの場合である。また、プラットフォームの寸法を既に有するボードを使用して、複数のバルコニーを備えた組み立て式構造を作製する場合にも発生する可能性がある。ただし、この状況は、少なくとも長さが2倍又は3倍の寸法のボード(製造、輸送、及び保管)を管理することを意味するため、好ましくはない。
【0084】
好ましくは、ボード間の溶接は、FSW技術を用いて実現される。
【0085】
第3の操作ステップ(c)は、好ましくは、フライス加工又はウォータージェット切断によって、プラットフォーム20の外縁22を、所望のプロファイルに従って、特に、例えば、図6に示されるように、湾曲のように成形することである。
【0086】
第4の操作ステップ(d)は、支持梁と接続するためにプラットフォーム20を準備することである。特に、このステップ(d)は、プラットフォーム自体の下面に固定ボルトを挿入するための座部(seats)を得るために、プラットフォームの少なくとも部分的な穴あけを含むことができる。好ましくは、前述したように、プラットフォームの穴あけは、プラットフォームの上面20bを規定する薄板24に影響を与えないように実行される。これにより、ボルト締めがバルコニーの床の美的仕上げを妨げるのを防止する。
【0087】
第5の操作ステップ(e)は、好ましくは、ボルト締めによって、支持梁をプラットフォームの下面20bにおいてプラットフォームに結合することである。支持梁は、構成要素準備の具体的な操作ステップで準備されている。
【0088】
第6の操作ステップ(f)は、プロファイル要素30(手すりをプラットフォーム20に固定するために提供される)を結合することである。プロファイル要素30は、構成要素準備の具体的な操作ステップで準備されている。特に、プロファイル要素30は、プラットフォームの外縁のプロファイルに適合するように、例えば、カレンダー処理(calendaring)によって予め成形されている。プロファイル要素をプラットフォームに固定するのは、好ましくは、溶接及び/又はボルト締めによって行われる。
【0089】
次に、組み立て式構造を仕上げるステップ(g)が続いて行われる。特に、このステップ(g)は、
プラットホームボードの上面20bにコーティング、例えば、模造チーク(imitation teak)を施し、その研磨及び仕上げを行うことと、
手すり及び隣接する客室のバルコニーの間の仕切りを組み立てることと、
を含むことができる。
【0090】
本発明は、いくつかの利点を得ることができ、そのうちのいくつかは前述において既に説明されている。
【0091】
本発明によるクルーズ船用のバルコニーの組み立て式構造によれば、直線状ではない外側プロファイルを経済的に、同時に構造的に耐性を有するように構築することができる。
【0092】
従来のアルミニウム製押し出しボード又はハニカムボードをアルミニウム製フォームボードで置き換えることにより、ボードの構造的完全性、そしてその機械的特徴を復元することを目的とした特別な処理を必要とすることなく、任意のプロファイルを有する外縁を有するプラットフォームを構築することが可能となる。
【0093】
実際、アルミニウム製フォームは、2枚の薄板の間の隙間の全てを埋めるという事実によって、ボードの全ての部分において2枚の薄板の間の実質的に連続した構造的接続を保証する。したがって、アルミニウム製フォームボードは、2枚の薄板の間の接続が常に確保されているため、構造上の完全性を失うことなく、任意の箇所において切断することによって成形することができる。
【0094】
この特徴はまた、組み立て式構造の一部を形成する更なる構成要素、特に、手すりを支えるプロファイル要素のプラットフォームへの接続を容易にする。
【0095】
したがって、このように着想された本発明は、意図された目的を達成している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】