(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】金属富化環境内のコイルによって生じた磁界のスパース較正
(51)【国際特許分類】
A61B 5/06 20060101AFI20230213BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230213BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20230213BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20230213BHJP
【FI】
A61B5/06
G01R33/02 X
G01R35/00 M
G01R33/02 R
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536782
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2020060834
(87)【国際公開番号】W WO2021123957
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフソン・ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】モンタグ・アブラム・ダン
(72)【発明者】
【氏名】バル-タル・メイル
(72)【発明者】
【氏名】ピンスキー・ヨアフ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒリ・ノーム
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD04
2G017CB01
2G017CB10
2G017CB20
(57)【要約】
較正方法は、複数の実磁気送信機(26)によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を受信することを含む。実磁気送信機の近似位置が受信される。近似位置を使用して、それぞれの複数の仮想磁気源(55)が、磁界摂動要素(40)内で特徴付けられる。測定された磁界値、近似位置、及び特徴付けられた仮想源を使用して、(i)領域内の実磁気源及び仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)実際の位置での実磁気源及び仮想磁気源から生じるモデル化した磁界値が反復的に計算される。計算した位置、及びグリッド上の複数の位置でモデル化した磁界値を使用して、領域の磁界較正関数を導出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
較正方法であって、
複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を受信することと、
前記実磁気送信機の近似位置を受信することと、
前記近似位置を使用して、前記磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付けることと、
前記測定された磁界値、前記近似位置、及び前記特徴付けられた仮想源を使用して、(i)前記領域内の前記実磁気源及び前記仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)前記実際の位置で前記実磁気源及び前記仮想磁気源から生ずるモデル化した磁界値を反復的に計算することと、
前記計算した位置、及び前記グリッド上の前記複数の位置の前記モデル化した磁界値を使用して、前記領域の磁界較正関数を導出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記磁界値を受信することが、プローブを前記領域に位置付けることと、前記複数の位置にわたって前記プローブにおいて生成された磁界を測定することと、を含む、請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
前記仮想磁気源を特徴付けることが、前記摂動要素内の前記仮想磁気源の各々の位置を推定することを含む、請求項1に記載の較正方法。
【請求項4】
前記磁界較正関数が、前記磁界値を測定するために使用される前記グリッドよりも高密度である、較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして提供される、請求項1に記載の較正方法。
【請求項5】
前記磁界較正関数を導出することが、前記実磁気源及び前記仮想磁気源によって生成された前記磁界を球面調和関数の線形組み合わせとしてモデル化することと、前記実際の位置で前記モデル化した磁界を評価することと、を含む、請求項1に記載の較正方法。
【請求項6】
装置であって、
複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を記憶するための、及び前記実磁気送信機の近似位置を記憶するためのメモリと、
プロセッサであって、
前記実磁気送信機の前記近似位置を使用して、前記磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付け、
前記測定された磁界値、前記近似位置、及び特徴付けられた前記仮想源を使用して、(i)前記領域内の前記実磁気源及び前記仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)前記実際の位置で前記実磁気源及び前記仮想磁気源から生ずるモデル化した磁界値を反復的に計算し、
計算した前記位置、及び前記グリッド上の前記複数の位置の前記モデル化した磁界値を使用して、前記領域の磁界較正関数を導出するように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記摂動要素内の前記仮想磁気源の各々の位置を推定することによって、前記仮想源を特徴付けるように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記磁界較正関数を、前記磁界値を測定するために使用される前記グリッドよりも高密度である、較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして提供するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記実磁気源及び前記仮想磁気源によって生成された前記磁界を球面調和関数の線形組み合わせとしてモデル化し、前記実際の位置で前記モデル化した磁界を評価することによって、前記磁界較正関数を導出するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生体内に配置された物体の位置を感知すること、特にその位置のセンサに影響を与える磁気擾乱を補償することに関する。
【背景技術】
【0002】
磁界を使用する器官の空洞内の侵襲的プローブの追跡を支援する技術は、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2012/0165656号は、複数の磁気送信機を使用して、領域に磁界を生成することと、その領域の中に磁界摂動要素を導入することとからなる方法を記載している。本方法は、磁界摂動要素内の各磁気送信機の複数画像を特徴付けることと、特徴付けられた画像に基づいて、領域中で反応磁界を計算することと、を含む。本方法は、領域中にプローブを位置付け、プローブにおける摂動した磁界を測定することと、測定された摂動した磁界及び計算した反応磁界に対応してプローブの位置を決定することと、を更に含む。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0011288号は、磁気共鳴撮像システムと、撮像域内の磁気不均質性を補償するための磁気補償コイルと、撮像域を中心として回転するように動作可能なガントリと、ガントリの角度位置及び角速度を測定するための位置センサと、ガントリ内の少なくとも1つの磁界歪み構成要素と、機械実行可能命令及びフィールド補正データを記憶するメモリとを備える、医療装置を記載する。命令は、プロセッサに、位置及び角速度データを位置センサから受信することと、フィールド補正データ、位置データ、及び角速度データを使用して磁気補償コイルを制御するためのコイル制御コマンドを決定することと、コイル制御コマンドを使用して、撮像域内の磁気不均質性を補償するように磁気補償コイルを制御することと、磁気共鳴データを取得することと、を実行させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を受信することを含む較正方法を提供する。実磁気送信機の近似位置が受信される。近似位置を使用して、それぞれの複数の仮想磁気源が、磁界摂動要素内で特徴付けられる。測定された磁界値、近似位置、及び特徴付けられた仮想源を使用して、(i)領域内の実磁気源及び仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)実際の位置で実磁気源及び仮想磁気源から生じるモデル化した磁界値が反復的に計算される。計算した位置及びグリッド上の複数の位置でモデル化した磁界値を使用して、領域の磁界較正関数を導出する。
【0005】
いくつかの実施形態では、磁界値を受信することは、プローブを領域中に位置付けることと、複数の位置にわたってプローブにおいて生成された磁界を測定することと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、仮想磁気源を特徴付けることは、摂動要素内の仮想磁気源の各々の位置を推定することを含む。
【0007】
一実施形態では、磁界較正関数が、磁界値を測定するために使用されるグリッドよりも高密度である、較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして提供される。
【0008】
別の実施形態では、磁界較正関数を導出することは、実磁気源及び仮想磁気源によって生成された磁界を球面調和関数の線形組み合わせとしてモデル化することと、実際の位置でモデル化した磁界を評価することと、を含む。
【0009】
また、本発明の別の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを含む装置が更に提供される。メモリは、複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を記憶するために、及び実磁気送信機の近似位置を記憶するために、構成される。プロセッサは、(a)実磁気送信機の近似位置を使用して、磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付け、(b)測定された磁界値、近似位置、及び特徴付けられた仮想源を使用して、(i)領域内の実磁気源及び仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)実際の位置で実磁気源及び仮想磁気源から生じるモデル化した磁界値を反復的に計算し、(c)計算した位置、及びグリッド上の複数の位置のモデル化した磁界値を使用して、領域の磁界較正関数を導出する、ように構成される。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による、磁気位置追跡サブシステムを含む耳鼻咽喉(ear-nose-throat、ENT)システムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、
図1の金属ベースに取り付けられた磁気放射体アセンブリの概略描写正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2の金属ベース内の実磁気源及びそれぞれの仮想磁気源の概略描写図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、仮想磁気源の使用の有無の両方における、反復計算位置の収束をプロットするグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態による、反復計算中の実磁気源及び仮想磁気源の位置の収束のプロットである。
【
図6】本発明の一実施形態による、金属富化物体の存在下での磁界のスパース較正の方法を概略的に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
プローブの遠位端にある磁気位置センサを使用して患者の臓器内のプローブを追跡することは、外部磁気追跡システムの較正を必要とする。場合によっては、システムによって生成される磁界は、システムの磁界生成器の近くの機器など、磁界摂動金属富化要素の存在によって摂動される。摂動は、空間内の較正された位置の高密度グリッドの使用を必要とするため、較正を複雑にする。典型的には、そのような複雑な較正は、較正プローブを使用して3D空間における数万の磁界値を1日がかりで測定することを必要とし得る。
【0013】
本発明の実施形態は、位置追跡システムのコイル磁界生成器のセット(以下、「実磁気源」又は「コイル送信機」とも呼ばれる)に機械的支持を提供する金属ベースなどの、静的金属富化要素の近傍での摂動磁界の高速較正方法を提供する。
【0014】
摂動要素、例えば、コイルの金属ベースの存在を考慮に入れるために、本発明の実施形態は、各コイル送信機が摂動要素内の渦電流を生成すると仮定する較正モデルを提供する。これらの渦電流は、1つ以上の想像(又は仮想)磁気源としてモデル化することができる。較正モデルは、各仮想磁気源が、線形重ね合わせに基づいて磁界の摂動を引き起こすそれぞれの反応場を生成することを更に仮定する。
【0015】
開示された高速較正方法は、(a)複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を受信することと、(b)実磁気送信機の近似位置を受信することと、(c)近似位置を使用して、磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付けることと、(d)測定された磁界値、近似位置、及び特徴付けられた仮想源を使用して、(i)領域内の実磁気源及び仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)実際の位置で実磁気源及び仮想磁気源から生じるモデル化した磁界値を反復的に計算することと、(e)計算した位置、及びグリッド上の複数の位置のモデル化した磁界値を使用して、領域の磁界較正関数を導出することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、各仮想磁気源は、磁気多極、すなわち、双極子、四重極、及び/又は高次多極子の組み合わせとして、特徴付けられる。各仮想磁気源の特性はまた、とりわけ、仮想磁気源を生成する実際の送信機フィールドにも依存する。較正モデルは、仮想磁気源の特性に応じて球面調和関数展開によって磁界が表されることができると仮定することによって、多極仮想磁気源の各々から多反応磁界を計算する。球面調和関数は、この用途にとって特に便利であるが、ウェーブレットなどの他の拡張も有効である。
【0017】
実コイル送信機の実際の位置及びそれぞれの仮想磁気源のモデル化された位置は、反復計算を使用することによって解決されるパラメータとして残される。したがって、開示された方法は、実コイル送信機の事前指定された位置を調整することを含み、これは、例えば、送信機ベースアセンブリを製造する際の機械的再現性がないために不正確であり得、したがってシステムごとに異なり得る。
【0018】
一実施形態では、位置追跡システムは、各三軸送信機が3つの相互に直交するコイルを含むので、5つの三軸磁気送信機、合計で15個の実際のコイル送信機を含む。15個の実際のコイル送信機の各々は、位置追跡システムの位置パッドの金属ベースに仮想コイル送信機を生成する。較正測定値を適用し、実際の送信機フィールド及び仮想送信機フィールドが球面調和関数モデルによって与えられると仮定すると、較正は、実際の送信機及び仮想送信機の有効位置を提供し、これらの位置を使用して、可動範囲の任意の時点での磁界を求める。較正プロセスにスパースグリッドを使用することで、以前の較正プロセスよりも領域全体で、必要とする測定データ点が少なくとも10倍(x10)少なくなる。このシステムでは、開示された技術は、較正手順の典型的な持続時間を約1日から約1時間に短縮する。
【0019】
一実施形態では、プロセッサは、測定で使用されるスパースグリッドよりも密度が高い位置の較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして、磁界較正関数を提供するように構成される。
【0020】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実施することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0021】
システムが較正されると、プロセッサは、医療セッション中に磁気的に摂動された領域内の医療プローブの位置を高精度で追跡することができる。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、磁気位置追跡サブシステム23を含む耳鼻咽喉(ENT)システム20の概略描写図である。以下の説明では、患者28の頭部内のENTツール21による医療処置において、ツール21は、磁気位置追跡サブシステム23によって処置中に追跡される1つ以上の磁気センサ34、典型的には単軸コイル若しくは三軸コイルを備える。
【0023】
追跡を有効にするため、システム20において、患者28及び磁気位置追跡サブシステム23のCT(コンピュータ断層撮影)画像の座標系が登録される。医療処置の前、及びその間の両方に、磁気放射体アセンブリ24からなる磁気追跡システムが、患者の頭部の下に位置付けられる。
【0024】
本明細書に記載されるような磁界送信システムを使用するために、磁気放射体アセンブリ24を金属ベース40に取り付ける必要がある。(金属ベース40は、患者28が横たわっている又は着座しているベッド又は椅子に存在し得る干渉金属から送信機をシールドする)。しかしながら、送信機及びベース(それ自体が磁界に摂動を導入する)を較正する必要がある。
【0025】
アセンブリ24は、5つの磁界三重コイル送信機26を含み、定位置に固定され、患者28の頭部が位置する領域30に交番磁界を送信する。領域30内のセンサ34による磁界に応答して生成された電位は、磁気追跡システムの基準フレーム内でのその位置及びその方向の測定を可能にする。位置は、3つの線形寸法(3D)で測定することができ、一方、ツール21の遠位端の方向は、センサ34のコイルのうちの1つを使用して決定することができ、その軸は、遠位端の長手方向軸と整列している。
【0026】
一例として、アセンブリ24の5つのコイル送信機26は、患者28の頭部の周りに、ほぼ蹄鉄形に配置される。しかしながら、アセンブリ24のコイル送信機について代替的な構成が使用され得、そのような全ての構成は、本発明の範囲内に含まれると仮定される。コイル送信機26の各々は、磁界を生成する3つの相互に直交するコイルを備える。したがって、システム20は、合計15個の送信機コイルを有する。
【0027】
処置に先立って、画像の既知の位置(例えば、患者の頭頂)に磁気センサを位置付けることによって、磁気追跡システムの座標系とCT画像との位置合わせが行なわれてよい。
【0028】
コイル送信機26及びセンサ34などのシステム20の要素は、システムプロセッサ41の全体的な制御の下にある。プロセッサ41は、コンソール50に取り付けられてもよく、このコンソールは、マウス又はトラックボールなどのキーパッド及び/又はポインティングデバイスを通常含む、動作制御部58を備えている。コンソール50は、コイル送信機26及びセンサ34に無線で及び/又は1つ以上のケーブルを介して接続する。医師54は、動作制御装置58を用いて、システム20を用いるENT処置を実行しつつ、プロセッサと相互作用する。処置を実行している間、プロセッサは画面56に処置の結果を表示することができる。
【0029】
システム20は、メモリ42を更に備える。プロセッサ41は、メモリ42内に記憶されたソフトウェアを使用してシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ41に電子形態でダウンロードすることができるか、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供及び/又は保存され得る。具体的には、プロセッサ41は、
図6を含めて本明細書で開示されるような専用のアルゴリズムを実行し、このアルゴリズムは、以下で更に説明されるように、開示されるステップをプロセッサ41が実施することを可能にするものである。
【0030】
いくつかの実施形態では、メモリ42はまた、以下に説明するように、開示された較正スキームの一部として、測定された磁界値及びコイル送信機36の近似位置を記憶するために使用される。
【0031】
金属富化環境内のコイルによって生じた磁界のスパース較正
図2は、本発明の一実施形態による、
図1の金属ベース40に取り付けられた磁気放射体アセンブリ24の正面図である。また、コイル送信機26によって金属ベース40内に生成され、コイル送信機26によって生成された磁界に摂動を引き起こす渦電流も見られる。
【0032】
図3は、本発明の別の実施形態による、
図2の金属ベース40内の実磁気源26(例えば、コイル送信機26)及びそれぞれの仮想磁気源55の概略描写図である。コイル26によって生成された振動磁界は、金属ベース40内の渦電流を誘導する。渦電流は、単一の仮想源55を仮定することによってモデル化される反応磁界を生成する。較正のために、本方法は、スパース測定された全磁界を使用して、自己一貫性較正関数を有するように、コイル26の正確な実際の位置及び仮想源55のモデル化された位置を繰り返し見出す。
【0033】
開示された較正モデルは、実源26及び仮想源55の両方が、以下によって与えられる磁界を生成する球面調和関数の線形結合として記述できることを仮定している。
【0034】
【0035】
N個の実源26の配列の場合、モデルは2N個の異なるB(r,θ,φ)関数(仮想源ごとに1つを含む)を計算し、ここで、
図2ではN=5である。実際には、各実源26は三軸コイルであり、各コイルは、固有の周波数で振動する磁界を送信する。典型的には、各周波数について、未知の15個の球面調和係数が存在するが、これは、式1の15 Y
l,m(θ,φ)項を取ることに対応しており、lは1~3まで、かつmは0~lまである所定の周波数での磁界を表す。各三軸コイルごとに未知の3つの位置座標がそれに加えられる。仮想源は、実際のソースと同数の未知の数を有する。したがって、三軸コイルごとに48個の未知数(すなわち、45個の球面調和係数+3個の位置係数)が存在する。したがって、
図2の構成については、すなわち、N=5の場合、検出できる未知数の総数が480となる。
【0036】
この最適化手順では、P個の較正データ点からの入力が使用される。空間の各点で、3つのフィールド成分が測定される。したがって、周波数(送信コイル)ごとに合計3P方程式が存在する(ここで、Pは数百であり、通常は1000を超えるデータポイントがあることを意味する)。これは、例えば、5倍又はそれ以上で過剰に決定されるため、一連の方程式(例えば、480個の未知数を有する)は、最適化によって解かれる。
【0037】
仮想磁気源55の初期位置は、機械的図面に基づいて推定され、開示された技術を使用して反復的に計算される。更に、各実磁気源26の位置は、機械的図面を使用して、例えば、患者28の体内にあるツール21の遠位端を十分に正確な追跡には広すぎる所与の許容誤差内でのみほぼ既知であるが、初期条件としては十分に正確である。
【0038】
開示された反復計算は、MATLABなどの商用ソフトウェアのライブラリ機能を使用して実行することができる。例えば、磁気源の正確な位置は、例えば、MATLABのf_min_search関数を使用して見出すことができ、ここで、前述の一連の方程式の解は、例えば、pinv(ムーア・ペンローズ擬似逆行列)関数を使用して、実行することができる。M回目の反復後の誤差の一般的なコスト関数は、M回目の反復で計算された磁界
【0039】
【数2】
と測定された磁界B
Measの差の平方根和であり、スパースグリッド位置で合計されたものである。
【0040】
【数3】
ここで、(i,j,k)は3Dグリッド位置指数である。式2は、各フィールド成分測定に1つずつ、合計3つの式を表す。
【0041】
一実施形態では、式1を使用して、プロセッサは、測定に使用されるスパースグリッドよりも密度の高い較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして、磁界較正関数を提供するように構成されている。
【0042】
図4は、本発明の別の実施形態による、仮想磁気源55(70)を使用せず、仮想磁気源55(72)を使用した場合の反復計算位置の収束をプロットしたグラフである。このように、仮想磁気源を使用し、各反復で解く方程式の数を2倍にすることにより、較正誤差が事前指定された受け入れ値を下回るまでの反復数は、10倍超減少する(例えば、M=8K反復対約Mが0.8K反復未満、ここでKは整数)。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態による、反復計算中の実磁気源及び仮想磁気源の位置の収束のプロットである。
図5に示す結果は、
図1のシステム20に適用された開示された較正プロセスのものである。白丸は、位置の中間値である。黒丸126は、システム20の実送信機26の最終位置であり、黒丸150は、較正モデルによって使用されるそれぞれの仮想源55の最終位置である。
【0044】
図6は、本発明の別の実施形態による、金属富化物体の存在下での磁界のスパース較正の方法を概略的に説明するフローチャートである。
【0045】
本実施形態によるアルゴリズムは、モデルアップロードステップ70において、磁界摂動要素内の仮想磁気送信機をプロセッサに組み込む開示されたモデルをアップロードすることから始まるプロセスを実行する。次に、モデル初期化ステップ72で、実磁気源の初期位置が、例えば、開示されたモデルに従って較正アルゴリズムを実行する人によって、プロセッサ内のモデルに入力される。初期位置は、例えば、実送信機の近似位置及び摂動要素の寸法を示す技術図面から取得され得る。初期位置は、典型的には、メモリ42に記憶される。
【0046】
典型的には、アルゴリズムは、上述のように、例えば、対称軸に対する実源の鏡反射として、仮想磁気源のそれぞれの位置のセットを自動的に生成する。
【0047】
ステップ70及び72は、典型的には、所与のモデルの全てのシステムに共通であり、ハードウェア依存データを必要とせずに、事前に実行できる。
【0048】
システム較正開始ステップ74で、較正される特定のシステムからの較正データは、例えば、較正を実行する人によってプロセッサにアップロードされる。このデータは、典型的には、空間内の位置のスパースグリッド上に、磁界読み取り値を電圧の形態で記憶するファイルをアップロードすることを含み、ファイル内のデータは、較正モデルの実行に関連するステップとは独立して、例えば、ステップ90~94で以下に記載されるように、システムの製造フロアで測定を実行することによって、測定される。
【0049】
較正データを使用して、プロセッサは、ステップ76~80で、特定のシステムの必要な較正関数を反復的に計算する。
【0050】
第1の反復ステップ76では、プロセッサは、領域内の実磁気源(26)及び仮想磁気源(55)の位置、並びにこれらが生成するそれぞれの磁界を計算する。次に、誤差計算ステップ78で、プロセッサは、上記のようなコスト関数を使用して、計算された磁界と測定された磁界との間の誤差を計算する。
【0051】
誤差チェックステップ80で、プロセッサは、誤差を事前に指定された値と比較する。誤差が事前指定された値よりも大きい場合、プロセッサは、ステップ76にループして、次の反復で計算を精緻化する。誤差が事前指定された値よりも小さい場合、プロセッサは、較正ステップ82で、実磁気源及び仮想磁気源の計算された位置を使用して、較正されているシステムの磁界較正関数を導出する。最後に、プロセッサは、較正記憶ステップ84で、導出された磁界較正関数をメモリ42に記憶する。
【0052】
上記のように、開示されたモデルは、特定のシステムを較正するために適用される。予備ステップ90で、システムは、例えば実送信機26によって、摂動要素(例えば、プレート40)を含む領域、例えばシステム20の領域30の磁界を生成するように、動作される。
【0053】
次に、測定ステップ92で、磁界は、例えば、ENTツール21の磁気センサ34などの三軸磁気センサを備えた較正プローブを使用して、領域内のグリッド上の複数の位置にわたって測定される。最後に、測定された較正データは、較正ステップ74~84におけるその後の使用のために、データ記憶ステップ94でメモリ42に記憶される。
【0054】
上述の較正プロセスが完了すると、システム20のプロセッサ41は、医療処置中にツール21の遠位端を正確に追跡する際に較正データを適用する。
【0055】
本明細書に記載の実施形態は、主にENT医療ナビゲーションシステムに対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、心臓、肺、及び消化器系の処置などの他の用途、並びに環境内の静的導体を有する任意の磁気トラッカにも使用することができる。
【0056】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 較正方法であって、
複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を受信することと、
前記実磁気送信機の近似位置を受信することと、
前記近似位置を使用して、前記磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付けることと、
前記測定された磁界値、前記近似位置、及び前記特徴付けられた仮想源を使用して、(i)前記領域内の前記実磁気源及び前記仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)前記実際の位置で前記実磁気源及び前記仮想磁気源から生ずるモデル化した磁界値を反復的に計算することと、
前記計算した位置、及び前記グリッド上の前記複数の位置の前記モデル化した磁界値を使用して、前記領域の磁界較正関数を導出することと、を含む、方法。
(2) 前記磁界値を受信することが、プローブを前記領域に位置付けることと、前記複数の位置にわたって前記プローブにおいて生成された磁界を測定することと、を含む、実施態様1に記載の較正方法。
(3) 前記仮想磁気源を特徴付けることが、前記摂動要素内の前記仮想磁気源の各々の位置を推定することを含む、実施態様1に記載の較正方法。
(4) 前記磁界較正関数が、前記磁界値を測定するために使用される前記グリッドよりも高密度である、較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして提供される、実施態様1に記載の較正方法。
(5) 前記磁界較正関数を導出することが、前記実磁気源及び前記仮想磁気源によって生成された前記磁界を球面調和関数の線形組み合わせとしてモデル化することと、前記実際の位置で前記モデル化した磁界を評価することと、を含む、実施態様1に記載の較正方法。
【0058】
(6) 装置であって、
複数の実磁気送信機によって生成され、かつ磁界摂動要素を含む領域内のグリッド上の複数の位置で測定された磁界値を記憶するための、及び前記実磁気送信機の近似位置を記憶するためのメモリと、
プロセッサであって、
前記実磁気送信機の前記近似位置を使用して、前記磁界摂動要素内のそれぞれの複数の仮想磁気源を特徴付け、
前記測定された磁界値、前記近似位置、及び特徴付けられた前記仮想源を使用して、(i)前記領域内の前記実磁気源及び前記仮想磁気源の実際の位置、並びに(ii)前記実際の位置で前記実磁気源及び前記仮想磁気源から生ずるモデル化した磁界値を反復的に計算し、
計算した前記位置、及び前記グリッド上の前記複数の位置の前記モデル化した磁界値を使用して、前記領域の磁界較正関数を導出するように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
(7) 前記プロセッサが、前記摂動要素内の前記仮想磁気源の各々の位置を推定することによって、前記仮想源を特徴付けるように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記プロセッサが、前記磁界較正関数を、前記磁界値を測定するために使用される前記グリッドよりも高密度である、較正された位置のグリッド上の値の3次元アレイとして提供するように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記プロセッサが、前記実磁気源及び前記仮想磁気源によって生成された前記磁界を球面調和関数の線形組み合わせとしてモデル化し、前記実際の位置で前記モデル化した磁界を評価することによって、前記磁界較正関数を導出するように構成されている、実施態様6に記載の装置。
【国際調査報告】