(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】信号操作所連携型作業員警報システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/06 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
B61L23/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536852
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2020082789
(87)【国際公開番号】W WO2021121853
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シュースター
(72)【発明者】
【氏名】ゴットフリート シュースター
(57)【要約】
本発明は、作業用軌道(2)の警告区域(14)内に位置する運行用軌道(5)上の鉄道車両(6)の接近を人員(8)に警告するための信号操作所連携型作業員警報システム(9)であって、作業用軌道(2)を作業するための軌道敷設機(1)と、軌道敷設機(1)の位置特定のための位置特定システムと、警告情報を生成するためのコンピュータ支援監視システム(10)と、音響的または光学的または触覚的警告信号を生成するための警告手段(26,27)と、無線データ伝送のための無線システムと、を含む作業員警報システム(9)に関する。この場合、コンピュータ支援監視システム(10)は、軌道敷設機(1)の現在位置に基づいて警告区域(14)の境界(16)を規定し、警告区域(14)のための警告情報を自動的に生成するように構成されており、軌道敷設機(1)は、警告情報を処理するために中央制御ユニット(18)を備えており、この中央制御ユニット(18)は、無線システムを介してコンピュータ支援監視システム(10)に結合されている。このようにして、警告区域も、移動中にある線路敷設機と共に移動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用軌道(2)の警告区域(14)内に位置する運行用軌道(5)上の鉄道車両(6)の接近を人員(8)に警告するための信号操作所連携型作業員警報システム(9)であって、
前記作業用軌道(2)を作業するための軌道敷設機(1)と、
前記軌道敷設機(1)の位置特定のための位置特定システムと、
警告情報を生成するためのコンピュータ支援監視システム(10)と、
音響的または光学的または触覚的警告信号を生成するための警告手段(26,27)と、
無線データ伝送のための無線システムと、
を含む作業員警報システム(9)において、
前記コンピュータ支援監視システム(10)は、前記軌道敷設機(1)の現在位置に基づいて前記警告区域(14)の境界(16)を規定し、前記警告区域(14)のための警告情報を自動的に生成するように構成されており、
前記軌道敷設機(1)は、前記警告情報を処理するために中央制御ユニット(18)を含み、該中央制御ユニット(18)は、前記無線システムを介して前記コンピュータ支援監視システム(10)に結合されていることを特徴とする、作業員警報システム(9)。
【請求項2】
前記位置特定システムは上位の列車制御システム(12)に統合されており、前記コンピュータ支援監視システム(10)は、前記警告区域(14)のための警告情報を生成するために前記列車制御システム(12)の情報を処理するように構成されている、請求項1記載の作業員警報システム(9)。
【請求項3】
前記無線システムは、保護された移動無線網の移動無線モジュール(13)を含んでいる、請求項1または2記載の作業員警報システム(9)。
【請求項4】
前記中央制御ユニット(18)は、データネットワークを介して前記軌道敷設機(1)に配置された警告手段(26,27)に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項5】
前記中央制御ユニット(18)は、該中央制御ユニット(18)を構成するためにデータネットワークを介して前記軌道敷設機(1)に配置された操作機器(20)に接続されている、請求項4記載の作業員警報システム(9)。
【請求項6】
前記中央制御ユニット(18)は、警告信号のためにデータネットワークを介して前記軌道敷設機(1)に配置されたトリガーユニット(23)に接続されている、請求項4または5記載の作業員警報システム(9)。
【請求項7】
前記中央制御ユニット(18)は、該中央制御ユニット(18)を構成するために前記無線システムを介して移動型操作機器(21)に結合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項8】
前記中央制御ユニット(18)は、警告信号のために前記無線システムを介して移動型トリガーユニット(24)に結合されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項9】
前記中央制御ユニット(18)は、少なくとも1つのいわゆる個人用警報機器(28)に結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項10】
前記中央制御ユニット(18)は、いわゆるERRIインターフェース(30)を備えている、請求項1から9までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項11】
前記軌道敷設機(1)はGNSS受信装置(31)を備えており、前記GNSS受信装置(31)は、前記中央制御ユニット(18)に結合されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の作業員警報システム(9)を動作させるための方法であって、
軌道敷設機(1)を用いて作業用軌道(2)上で軌道作業が実施され、
運行用軌道(4)上の鉄道車両(6)が接近したときに、コンピュータ支援監視システム(10)を用いて警告情報が生成される、方法において、
前記コンピュータ支援監視システム(10)を用いて前記警告情報が生成される前に、前記軌道敷設機(1)の現在位置に基づいて警告区域(14)の境界(16)が規定され、
前記生成された警告情報は、無線システムを介して前記軌道敷設機(1)の中央制御ユニット(18)に送信され、
前記中央制御ユニット(18)を用いて警告手段(27,28)が始動されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記軌道敷設機(1)の位置データおよび接近してくる前記鉄道車両(6)の位置データは、前記列車制御システム(12)の情報から導出される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記鉄道車両(6)の接近は、前記警告区域の前後に規定された接近区間(17)への進入として検出される、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記軌道敷設機(1)に配置されたGNSS受信装置(31)を用いて前記軌道敷設機(1)の現在位置データが求められ、前記位置データが前記コンピュータ支援監視システム(10)に伝送される、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用軌道の警告区域内に位置する運行用軌道上の鉄道車両の接近を人員に警告するための信号操作所連携型作業員警報システムであって、作業用軌道を作業するための軌道敷設機と、軌道敷設機の位置特定のための位置特定システムと、警告情報を生成するためのコンピュータ支援監視システムと、音響的または光学的または触覚的警告信号を生成するための警告手段と、無線データ伝送のための無線システムと、を備える作業員警報システムに関する。さらに、本発明は、作業員警報システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道区間の敷設や保守の際には、通常、軌道敷設機が使用される。その際、機械ユニットを制御したり作業工程を監視したりするために、軌道上には人員(作業員)がとどまっていることが多い。これらの人員の安全を確保するために、いわゆる作業員警報システムが使用されている。これにより、危険地帯にいる人員に、音響的、光学的、そして場合によっては触覚的に(例えば、警告型ベストの振動によって)列車の接近を警告している。なぜなら、作業用軌道の隣には、通常、継続的に往来のある運行用軌道が延在しているからである。
【0003】
最新の列車制御システム(例えば、欧州列車制御システム;European Train Control System,ETCS)および鉄道運行用のデジタル移動無線システム(例えば、鉄道向け移動無線通信用グローバルシステム;Global System for Mobile Communications-Railway,GSM-R)は、鉄道運行の上位管理システム(例えば、欧州列車運行管理システム;European Rail Traffic Management System,ERTMS)の重要な構成要素を形成している。そのような技術的な解決手段は、警報システムを自動化するための手段を提供する。既知の信号操作所連携型作業員警報システム(信号制御式警報システム;Signal Controlled Warning Systems,SCWS)は、コンピュータ支援監視システムを用いて作業員のための警告情報を生成するために、信号操作所情報を利用している。
【0004】
従来技術によれば、作業員警報システムは、定置型装置と移動型装置とからなっている。定置型装置は、軌道工事現場の設置の際に作業用軌道の隣に構築され、軌道区間を複数の警告区域(警告領域)に分割する。移動型装置は、安全監視員によって携帯されるか、または作業用軌道上にある軌道敷設機に取り付けられる。そのようなシステムは、例えば、欧州特許出願公開第2085286号明細書から公知である。この場合、軌道敷設機上に構築された移動型装置が、異なる警告区域を自動認識するように構成されている。このようにして、軌道敷設機の警報装置がそれぞれの警告区域に関連して始動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が基礎とする課題は、冒頭に述べたような形式の信号操作所連携型作業員警報システムを、軌道敷設現場の敷設のための労力を最小限に抑えるように改善することである。さらに、現場に存在する人員の安全性も高めるべきである。さらなる課題は、作業員警報システムを動作させるための最適な方法の提示にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これらの課題は、独立請求項1および12の特徴によって解決される。従属請求項は、本発明の好適な実施形態を示している。
【0007】
この場合、コンピュータ支援監視システムは、軌道敷設機の現在位置に基づいて警告区域の境界を規定し、警告区域のための警告情報を自動的に生成するように構成されており、軌道敷設機は、警告情報を処理するために中央制御ユニットを備えており、この中央制御ユニットは、無線システムを介してコンピュータ支援監視システムに結合されている。ここで重要なのは、警告区域を規定するために軌道敷設機の位置データを用いることである。このようにして、警告区域も、移動中にある軌道敷設機と共に移動する。これにより、警告区域から警告区域への転送は無用である。さらに、中央制御ユニットは、警告情報の自動処理のために軌道敷設機に統合されている。これにより、軌道敷設機は、移動型自動警報システム(移動型AWS)として用いられる。軌道上の付加的な警報装置は不要である。
【0008】
好適な発展形態では、位置特定システムは上位の列車制御システムに統合されており、コンピュータ支援監視システムは、警告区域のための警告情報を生成するために列車制御システムの情報を処理するように構成されている。この場合、列車制御システムによって生成された位置データは、危険な状況を自動的に識別するために使用される。それにより、列車制御システムは、コンピュータ支援監視システムを用いて警告情報を生成するための付加的な情報源として用いられる。
【0009】
無線システムは、好適には、保護された移動無線網の移動無線モジュールを備えている。例えば、LTE(Long Term Evolution)や5G(Fifth Generation)をベースにしたGSM-R(Global System for Mobile Communications-Railway)またはFRMCS(Future Railway Mobile Communication System)が使用される。ここでは、コンピュータ支援監視システムも中央制御ユニットも、固有の移動無線モジュールに結合されている。
【0010】
警告機能を特に効率的に使用できるようにするために、好適には、中央制御ユニットは、データネットワークを介して軌道敷設機に配置された警告手段に接続されている。このようにして、警告手段同士を容易に補完し、相互調整することができる。この場合、中央制御ユニットには、特にTCP/IP端子を備えたネットワークモジュールが含まれている。
【0011】
さらなる改善例によれば、中央制御ユニットは、該中央制御ユニットを構成するためにデータネットワークを介して軌道敷設機に配置された操作機器に接続されていることが想定される。ここでは、複数の操作機器が設けられてもよい。このケースでは、1つの操作機器が使用されている場合、その持続時間の間は他のすべての操作機器が非作動にされるように構成されている。
【0012】
操作者による追加警告のトリガーのために、中央制御ユニットは、好適には、警告信号のためにデータネットワークを介して軌道敷設機に配置されたトリガーユニットに接続されている。
【0013】
さらなる改善例は、移動型機器の配置によって得られる。ここでは、好適には、中央制御ユニットは、該中央制御ユニットを構成するために無線システムを介して移動型操作機器に結合されている。また、この操作機器は、使用時に他の操作機器を一時的にブロックするようにも構成されている。
【0014】
また、警告信号の始動のために無線システムを介して中央制御ユニットに結合された移動型トリガーユニットも有利である。このようにして、軌道上にいる安全監視員による追加警告がいつでも可能になる。
【0015】
本発明の好適なさらなる発展形態は、個人にかかわる警告に関するものである。この場合、中央制御ユニットは、少なくとも1つのいわゆる個人用警報機器に結合される。この種の警報機器は、軌道上で作業する人員が携帯している。これは、光学的、音響的、および/または触覚的な警告信号を送信する警報発生器を含む。特に、この警報機器は、無線システムを介して中央制御装置の警告通知を受信するために無線モジュールを備えている。間近な機械近傍において実行すべき活動の場合には、有線式の警報機器も使用することができる。これらは、例えばTCP/IPインターフェースを介して中央制御ユニットに結合される。
【0016】
様々な警報システム構成部品を統合するために、好適には、中央制御ユニットは、いわゆるERRIインターフェースを備えている。これにより、一般的なメーカーの構成部品を中央制御ユニットに結合して使用することができるようになる。ERRIインターフェースは、この種の構成部品用の給電電圧も供給する。
【0017】
本発明のさらなる改善例によれば、軌道敷設機はGNSS受信装置を備えており、GNSS受信装置は、中央制御ユニットに結合されていることが想定される。この衛星測位システムを用いて、軌道敷設機の位置が連続的に検出される。中央制御ユニットを介して、コンピュータ支援監視システムへの位置データの伝送が行われる。そこでは、これらのデータが、警告区域の規定のために直接使用されるか、または最初に他の測位システムのデータと照合される。
【0018】
説明された作業員警報システムを動作させるための本発明による方法では、コンピュータ支援監視システムを用いて警告情報が生成される前に、軌道敷設機の現在位置に基づいて警告区域の境界が規定され、生成された警告情報は、無線システムを介して軌道敷設機の中央制御ユニットに送信され、中央制御ユニットを用いて警告手段が始動される。このようにして、軌道敷設機は移動型自動警報システムとして利用される。
【0019】
ここでは、好適には、軌道敷設機の位置データおよび接近してくる鉄道車両の位置データは、列車制御システムの情報から導出される。列車制御システムの情報は、信号操作所において入手可能であり、コンピュータ支援監視システムを用いて警告情報の生成のために評価される。
【0020】
さらなる改善例によれば、鉄道車両の接近は、警告区域の前後に規定された接近区間への進入として検出される。特に、対応する接近区域の境界は、軌道敷設機の現在位置に基づいて規定される。これにより、様々な警報シナリオが実現可能になる。
【0021】
位置特定システムの機能は、好適には、軌道敷設機に配置されたGNSS受信装置を用いて軌道敷設機の現在位置データが求められ、この位置データがコンピュータ支援監視システムに伝送されることによって拡張される。付加的に、軌道沿いの地上波ラジオシステムの利用も有利である。具体的には、ここではディファレンシャルGNSSシステム(DGNSS)の基準アンテナが、軌道敷設機の高精度な位置特定を達成するために使用される。
【0022】
以下では、本発明を例示的な手法で添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】軌道システム上の軌道敷設機を示した図である。
【
図2】作業員警報システムのブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示されている軌道敷設機1は、軌道システム3の作業用軌道2に対して作業を実施している。軌道敷設機は、例えば、様々な作業ユニット4を有するタンピングマシン、清掃機、軌道安定機、転換列車などである。例示的な軌道システム3は、作業用軌道2に隣接して延在する運行用軌道5を含む。作業の実施中、作業用軌道2は他の鉄道車両6に対して閉鎖されている。それに対して、運行用軌道5では列車の運行が継続している。鉄道運行を制御および監視するために、軌道システム3には信号操作所7が割り当てられている。
【0025】
軌道敷設機1周りの領域には、作業員と称される人員8が位置している。これらの人員8は軌道敷設機1の操作要員とみなされ、安全監視員として勤務し、または他のやり方で作業工程にかかわっている。いずれにせよ、これらの人員8には、運行用軌道5上の鉄道車両6の接近を警告する必要性がある。この目的のために、信号操作所連携型作業員警報システム9が設置されている。この作業員警報システム9の構造は、
図2に示されている。そのようなシステム9は、自動警報システム(AWS)または自動列車警報システム(Automatic Train Warning System;ATWS)とも称される。
【0026】
作業員警報システム9の定置型構成部品は、好適には、信号操作所7の建物内に配置されている。これには、警告情報を生成するためのコンピュータ支援監視システム10が含まれる。このコンピュータ支援監視システム10はAWSセンターとして機能し、軌道敷設機1の位置データと接近する鉄道車両6からの位置データとを処理する。ここでは、コンピュータ支援監視システム10は、鉄道安全システム11(電子制御式信号操作所メインシステム)に結合されている。この鉄道安全システム11には、列車走行、入換走行、および補助走行を制御および監視するために、すべてのポイント、信号、車軸カウンター、空き軌道通知システムなどが組み込まれている。
【0027】
好適には、信号操作所7は上位の列車制御システム12に組み込まれており、この場合、鉄道安全システム11は、この列車制御システム12の要素を形成する。その一例は、欧州列車制御システム(European Train Control System,ETCS)である。列車制御システム12には測位システムが統合されており、この測位システムを介して軌道敷設機1および他の鉄道車両6が継続的にそれらの現在位置を通知する。これらの位置データの伝送は、無線システム、例えば、鉄道運行用のデジタル移動無線システム(例えば、Global System for Mobile Communications-Railway,GSM-R)を介して行われる。信号操作所7は、移動無線モジュール13を用いて無線システムに接続されている。
【0028】
本発明によれば、軌道敷設機1の位置データが、コンピュータ支援監視システム10を用いて作業員警報システム9の警告区域14を規定するために利用される。他の鉄道車両が警告区域14に進入するか、または接近するとただちに警告情報が生成される。その際、警告区域14は、作業用軌道を走行する軌道敷設機1と共に自動的に移動する。
【0029】
警告区域14を規定するために、例えば、軌道敷設機1の作業箇所15から出発する。この作業箇所15は、位置データおよび軌道敷設機1のタイプから既知である。例えば、作業箇所15は、タンピングマシンのタンピングユニットによって定められる。作業箇所15から予め定められた距離に、警告区域14の境界16が生じる。これらの距離は、接近する鉄道車両6の速度も共に考慮する場合は可変であってよい。その場合、速度がより大きくなると警告区域14の拡張が生じ、そのため、区域境界16から作業箇所15まで常に一定の接近時間が生じる。さらに、警告区域14の前後に接近区間17を規定することも有利である。接近区間17の走行により、事前警告段階が対応する警告情報と共にトリガーされる。その上さらに、警告区域14の規定の際には、軌道敷設機1の長さも考慮される。その際には、作業用軌道2上に存在する複数の機械からなるグループを連結された軌道敷設機械1として規定する可能性もある。
【0030】
生成された警告情報は、無線ネットワークを介して軌道敷設機1に伝送される。この目的のために、軌道敷設機1は移動無線モジュール13を備えている。情報は、好適には軌道敷設機1の機械制御部に結合されている中央制御ユニット18において処理される。さらに、中央制御ユニット18は、ネットワークインターフェース(TCP/IPインターフェース)および電源19を有している。
【0031】
軌道敷設機1には少なくとも1つの操作機器20が配置されており、この操作機器は、ネットワークインターフェースを介して中央制御ユニット18に直接接続されている。そのような固定の操作機器20は、システムオペレータ(安全監視員、SiPo)が軌道敷設機1の内部で安全活動を実施する場所に設置される。軌道敷設機1の外部での安全作業については、移動型操作機器21が設けられている。この移動型操作機器21は、移動無線モジュール13を含んでいる。移動型操作機器21の接続のために、中央制御ユニット18は、インターフェースモジュール22を介して軌道敷設機1の移動無線モジュール13に接続される。
【0032】
操作装置20、21の1つが利用されるとただちに、この利用の持続時間の間、他の操作機器20,21が非作動にされる。これらの操作機器20,21を用いることにより、中央制御ユニットの構成も実施可能になる。例えば、国別仕様の警告信号(RO1,RO2,RO3)が設定される。
【0033】
中央制御ユニット18には、警告信号のトリガーのために、固定のトリガーユニット23(例えば手動アラームボタン)が接続されている。移動型トリガーユニット24は、移動無線モジュール13およびさらなるインターフェースモジュール25を介して中央制御ユニット18に結合される。トリガーユニット23,24は、危険発生時における追加警告のために設けられている。警告信号トリガーは、通常、軌道敷設機1の内外のさらなる安全監視員によって行われる。
【0034】
音響的警告信号を生成するために、軌道敷設機1には電源を備えた音響的警告手段26(AWM)が配置されており、それぞれのネットワーク接続を介して中央制御ユニット18に接続される。具体的には、音響的警告手段26は、軌道2,5において作業する人員8の可聴領域内に取り付けられる。ノイズ放出を低減するためには、音響的警告手段26の的を絞った作動が有利である。このようにして、作業がなされる場所にピンポイントで警告することができる。その際には、軌道敷設機1の騒音源も共に考慮される。音響的警告手段26は、軌道敷設機1よりも3dB(A)大きい音量で確実に知覚することができるように設定される。
【0035】
光学的警告信号を発するために、電源を備えた光学的警告手段27(OWM)が配置されており、ネットワーク接続を介して中央制御ユニット18に接続される。この光学的警告手段は、軌道2,5上で作業する人員8の視野内で軌道保守機1に取り付けられている。
【0036】
さらに、軌道2,5上で作業する各人員8が個人用警報機器28を装備することが有利である。そのような個人用警報機器28を中央制御機器18に接続するために、固有のインターフェースモジュール29が設けられている。各個人用警報機器28は、少なくとも1つの警告手段26,27を備えている。軌道敷設機1内の固定の作業場所には、有線式個人用警報機器28が配置されてもよい。移動式個人用警報機器28は、無線システムに接続するための移動無線モジュール13を備えている。
【0037】
好適な発展形態では、個人用警報機器28、移動型操作機器21、および移動型トリガーユニット24の機能は、移動型機器に統合される。
【0038】
既存の警報システムの構成部品を組み込むために、好適には、電源を備えたERRIインターフェースボックス30が配置されている。
【0039】
さらなる好適な補足は、軌道敷設機1に配置されたGNSS受信装置31である。これにより、軌道敷設機1の現在のGNSS位置データが検出され、中央制御ユニット18に伝送される。無線システムを介して信号操作所7への伝送が行われ、そこでデータがコンピュータ支援監視システム10を用いて処理される。具体的には、GNSS位置データは、警告区域を規定したり、既存の位置データの妥当性検査を行ったりするために利用することができる。
【0040】
説明された作業員警報システム9は、様々な動作モードを有している。「安全確認」動作モードでは、中央制御ユニット18は、警告信号の際の安全監視員による応答確認がない場合、信号操作所7を介して別の軌道車両6の停止機能をトリガーする。例えば、警告信号のトリガーの後では、危険箇所からの退避と、操作機器20,21を用いた応答確認の実施のために、30秒の時間が残されている。警告信号を発するために、例えば、軌道敷設機1の光学的警告手段24が始動される。この警告手段24は、鉄道車両6が作業箇所15を完全に通過したときに再び非作動にされる。
【0041】
「警告」動作モードでは、鉄道車両6が警告区域14に進入する前の予め定められた持続時間の間(例えば30秒間)、警告信号が発せられる。その際、予め定められた接近区間17は、鉄道車両1の速度に適合される。
【0042】
中央制御ユニット18と軌道敷設機1の機械制御部との結合およびその構成は、誤作動時に「フェイルセーフ」機能、安全性確保レベル3に従って、安全な状態がもたらされることを保証する。警報システム9の安全性にかかわる構成部品のあらゆる誤作動が中央制御部18によって認識される。その後、自動的に誤作動アラーム(RO3)がトリガーされ、機械1は安全な状態にもたらされる。これには、機械1および作業ユニット14の停止が含まれる。
【国際調査報告】